清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』

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歪んだ家庭で育ったれん(佐藤寛子)は、棄てられたネオンを拾ってきては
修理するロマンチストの紅次郎(竹中直人)に次第に惹かれていく。
(c)2010「ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う」製作委員会
 プニプニとした幼虫が美しくも妖しい成虫へと脱皮していく様に見とれてしまうような魅力が、『ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う』にはある。中学・高校で生徒会長を務め、清純派グラビアアイドルとして活躍した佐藤寛子が"元生徒会長""清純派"という殻を脱ぎ捨て、大人の女優へと艶やかに"変態"してく姿を、『花と蛇』(03)、『人が人を愛することのどうしようもなさ』(07)の石井隆監督がカメラで舐め回すようにじっくりと撮り上げている。芸能界はもちろん、現実社会でもいつまでも清純派、優等生のままではいられない。泥水をすする覚悟と社会悪に対する免疫を身に付けていかないと、自分の思うようには生きていけない。そんな汚物だらけのドブ川のほとりで佐藤寛子演じる石井ワールドのニューヒロイン・れんは蛹から孵化し、広い空へ羽ばたいていくチャンスをうかがっている。  『ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う』は、小劇場出身の余貴美子が名美役を大熱演した前作『ヌードの夜』(93)から7年後という設定だ。"何でも代行屋"の紅次郎、こと村木(竹中直人)は名美に一度は騙されながらも名美の悲惨な境遇に同情して、男の純情を捧げた過去を持つ。だが、もう名美はこの世にはいない。心の中に大きな空洞を抱えたまま生きながらえてきた紅次郎の前に、可憐な少女の面影を残すれん(佐藤寛子)が現れる。れんの依頼は「父の遺灰を散骨した際に、大事な形見のロレックスも落としてしまった。捜してほしい」というもの。富士の樹海から腕時計を探し出せという無茶な案件だったが、紅次郎は運命の悪戯か腕時計を見つけ出してしまう。紅次郎をすっかり信頼したれんは、再び仕事を依頼する。かつて自分が世話になった女性"たえ"が今どうしているのか調べてほしいと。樹海捜査に比べれば楽な仕事かと思いきや、夜のネオン街を尋ね歩いても、なかなか"たえ"の消息はつかめない。ようやく紅次郎は彼女の手掛かりを得るが、それは人間の心の闇へとつながる地獄の扉の鍵だったのだ。  佐藤寛子が体当たりの演技でれん役に取り組んでいるが、れんの家族がまたすごい。石井監督の代表作である『死んでもいい』(92)に出演し、大女優としての底力を発揮してみせた大竹しのぶが母・あゆみ、『フリーズ・ミー』(00)で男たちを次々と血祭りにした井上晴美が姉・桃役を演じている。あゆみ、桃、れんの3人で古びたバーを営み、客の中からうまくカモになりそうな高齢者を見つけるとこっそりと保険金を掛けた後に、富士の樹海まで連れ出して自殺に見せかけて処理していたのだ。人間を食って生きる、現代の"鬼女"たち。この恐ろしい事実に気付いた紅次郎は、「れんは、いやいや人殺しを手伝わされているに違いない」と信じ込む。そして、雨に濡れた子犬のように潤んだ瞳を向けるれんに対し「これが最後の人殺しだからね」とお人好しぶりを発揮し、のこのこと富士の樹海へと付いて行ってしまう。
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バーに来たお客を、まるで食虫植物のように
捕食して生きる鬼母・あゆみ(大竹しのぶ)
と姉・桃(井上晴美)。れんは2人に逆らえない。
 佐藤寛子が1カ月の特訓で修得したセクシーなポールダンスや豊満なバストを披露してのローションプレイ&ヘアヌードで前半から中盤を引っぱり、富士の樹海の奥にある洞窟"ドゥオーモ"でのクライマックスへと突入する。地獄の血の池に白いハスの花が咲くがごとく、石井ワールド全開である。死体置き場となっている巨大洞窟=人間の心の闇なのだ。深い闇の中で母あゆみと姉の桃は金への執着心を剥き出しにし、れんは家族の呪縛から解放され、そして紅次郎は生来の"性善説の男"へと純化していく。  セットではなく、実在する山奥の石切り場で撮影された"ドゥオーモ"シーンが圧巻だ。ここから先はネタバレを含むが、石井作品はネタばれしても、魅力が目減りすることがないと確信している。スタンガンを振り回し、凶行に走るれんの姿は紅次郎の知っているれんではなく、紅次郎が見つけ出すことのできなかった幻の女"たえ"だったのだ。れんは鬼のような母親と姉と一緒に生活するため、否応なくもうひとつの顔である"たえ"を二重人格さながらに使い分けていたのである。そして観客は、さらにそこにもうひとつの顔を見る。清純派のイメージを振り切るかのように暴走する佐藤寛子の素顔を。"ドゥオーモ"の重い暗闇の中で、清純派グラビアアイドルだった佐藤寛子は映画女優・佐藤寛子へと"変態"していく。  グラビアアイドルが本格的な女優へと転身するのは至難の業だ。大手芸能事務所所属のアイドルならまずグラビアで顔と名前を広めてから、テレビタレントや女優として売り出していくという手法が使われるが、一介のアイドルたちにはグラビアから女優へのルートはつながっていない。読書家でもある佐藤寛子は新潮社の文芸誌「波」で読書日記を07年~09年にわたって連載していたが、その中で一時期は自己啓発本を読みあさっていたと記している。プロ意識の強い彼女は、グラビアの仕事に対して否定的な発言は一切していないが、それでも本来は女優志望で芸能界入りしたものの、自分の目指す道になかなか進めない状況を突き破りたい想いが強かったはずだ。そして女優を徹底的に追い込むハードな演出で知られる石井監督作のヒロインという大きなチャンスを、彼女は見逃すことなくがっちりとつかんでみせた。  『ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う』は、グラビアアイドル時代にテレビのバラエティー番組に出ていても、どこか所在なさげに微笑んでいた佐藤寛子に"女優魂"が宿ったメモリアルな1作だ。まさに石井監督は佐藤寛子からグラビアアイドル時代のイメージを惜しみなく奪い去った。 (文=長野辰次) nude03.jpg 『ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う』 監督・脚本/石井隆 出演/竹中直人、佐藤寛子、東風万智子、井上晴美、宍戸錠、大竹しのぶ、 配給/クロックワークス R15+ 10月2日(土)より銀座シネパトス、シネマート新宿ほか全国ロードショー <http://www.nude-ai.com>
ヌードの夜 デラックス版 艶めかしい。 amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

物議を醸すこと必至!? 『BECK』堤幸彦監督が仕掛けた"ある演出"

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(C)2010「BECK」製作委員会
 長く待ち望まれていた人気漫画の実写映画化作品3本が、9月から10月にかけて相次いで公開される。まず先陣を切った堤幸彦監督による『BECK』(松竹配給)は、公開週末の9月4日、5日の2日間で興行収入が3億円を超え、週末興収ランキングでも初登場首位を達成。好調な出足を見せた。  ハロルド作石による原作コミックは、計発行部数1,500万部超を誇る。高校生活に馴染めないでいたコユキが、ニューヨーク帰りの天才ギタリスト竜介と出会ったことでロックに目覚め、新たな仲間たちと結成したバンド「BECK」で夢に向かって突き進んでいく......というストーリー。  コユキが平凡で内向的な高校生から、聴衆を一瞬で魅了するミュージシャンへと成長するさまを、佐藤健が好演。BECKのメンバーを演じる水嶋ヒロ、桐谷健太、中村蒼、向井理も、バンドの"絆"と葛藤をリアルに表現する。女優陣では竜介の妹・真帆役の忽那汐里のほか、益岡弘美役の倉内沙莉のピュアな雰囲気も印象に残る。  まさに今が旬の若手俳優たちが豪華に顔を揃えながらも、やはり人気コミックの映画化『20世紀少年』3部作の成功が記憶に新しい堤監督の演出により、原作のキャラクターの風貌から空気感までもが忠実に再現。観客の想像力を喚起する演奏シーンの「ある演出」は、物議を醸すことさえ計算に入れた監督のしたたかさと言えそうだ。  一方、9月25日公開の『君に届け』(東宝配給)は、現在も連載中ながら単行本が累計1,000万部を突破する椎名軽穂の漫画が原作。純粋で前向きな女子高生だが、見た目の暗さから「貞子」と呼ばれる黒沼爽子(多部未華子)が、人気者のクラスメイト風走翔太(三浦春馬)の優しさに触れ次第に変わっていく姿が描かれる。  こちらは比較的どこにでもありそうな、友情と恋愛を軸とした高校生活が瑞々しく活写される。同世代の若者が共感するのはもちろん、大人世代の観客も過去の体験に重ね合わせて懐かしさを覚えることだろう。監督は『ニライカナイからの手紙』『虹の女神 Rainbow Song』などの熊澤尚人。  前述の2作品とは正反対に、現実とかけ離れた時代と設定を楽しめるのが、よしながふみ原作、金子文紀監督の『大奥』(松竹+アスミック・エース配給、10月1日公開)だ。  謎の疫病がまん延し、男性の人口が激減したことで、女が要職に就き男が体を売る江戸時代。女将軍・徳川吉宗(柴咲コウ)に3000人の美男子が仕える女人禁制の大奥が存在した。貧乏旗本の息子・水野祐之進(二宮和也)は、身分違いで結ばれないお信(堀北真希)への恋心を断ち切るため、大奥へ上がることを決意する。  いわゆる歴史改変ものの原作は、歴史の"IF"に説得力を持たせる緻密な構成が評価され、2009年手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。男女の立場が逆転する世界を映像化した本作で、全長約40メートルの御鈴廊下(大奥を扱った映画では最大最長のセットという)で美装の武士たちがひれ伏し女将軍がその間を闊歩する前代未聞のシーンなどに圧倒されるもよし、現在の男と女の関係を改めて考え直すもよし。  以上3作品、いずれも長期にわたる連載漫画の映画化ゆえ、エピソードやキャラクターの取捨選択は当然ある。また、原作のファンなら一層、キャスティングについても好き嫌いがあるだろう。原作と映画をあれこれ比較して、見終わった後に仲間と語り合うのも楽しいものであり、そうした時間もまた貴重な人生の一コマになることだろう。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 『BECK』作品情報 <http://eiga.com/movie/54662/> 『君に届け』作品情報 <http://eiga.com/movie/55448/> 『大奥』作品情報 <http://eiga.com/movie/55179/>
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死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』

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斬って斬って斬りまくれ! 庶民を虫ケラ扱いする明石藩主(稲垣吾郎)を
亡き者にするため、島田新左衛門(役所広司)ら13人の刺客たちは
明石藩の大名行列を丸ごと壊滅に追い込む。
(c)2010「十三人の刺客」製作委員会
 2時間ドラマ、Vシネマでキャリアを重ね、『オーディション』(00)、『殺し屋1』(01)などのインディペンデント映画で大暴れしてきた三池崇史監督の"荒ぶる魂"がメジャーシーンで見事に結実した。工藤栄一監督の集団抗争時代劇の傑作『十三人の刺客』(63)を、役所広司、市村正親、松本幸四郎、稲垣吾郎ら三池組初参加となるキャストを迎え、超ド派手に甦らせたのだ。すでに『クローズZERO』(07)、『ヤッターマン』(09)といったメジャーヒット作を放っている三池監督だが、本作によって、さらに1ステージ上に上がった感がある。敵味方が入り乱れて殺戮を繰り広げる展開は和風西部劇『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(07)と同じだが、本作は太平の時代において"死に場所"を探し求める侍たちを主人公にしたことで"死を意識することで、ギラギラと輝き出す男たち"という三池作品のメインテーマがくっきりと浮かび上がっている。カリギュラばりの暴君を演じた稲垣吾郎がクライマックスで「迷わずに愚かな道を選べ。その方が面白い」というセリフを吐くが、この言葉こそ三池美学の神髄だろう。  封建制度という確固たる社会システムが200余年にわたって続いた江戸時代も後半。武士はすっかり官僚化し、真剣を抜く機会を失っていた。そんな折、幕府直参の島田新左衛門(役所広司)に密命が下る。暴虐の限りを尽くしている明石藩主(稲垣吾郎)を暗殺せよというもの。将軍の弟でもある明石藩主は次期老中に選ばれており、明石藩はおろか日本全体が地獄絵図と化すことは必至。その前に闇に葬れという。新左衛門のもとに放浪の剣豪・平山九十郎(伊原剛志)をはじめとする選ばれし刺客たちが集う。誰しも命は惜しい。しかし、侍として生まれ、二本差しをしているからには侍らしく生きてみたい。"侍らしく生きてみたい"とは"侍らしく死んでみたい"の同義語だ。しかも、今回の仕事は史上最悪の暴君と刺し違えるという大義がある。それまで安穏と暮らしていた新左衛門たちの瞳が、死を意識することで俄然輝き始める。
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捨て身で明石藩と渡り合う覚悟の新左衛門たち
選ばれし侍たち。果たして、この中の何人が
生き残るのか?
 物語の序盤を牽引するのは、明石藩主の残虐さだ。明石藩主を演じた吾郎ちゃんの歪んだ二枚目ぶりがステキ! 清純派女優・谷村美月をあっさり手込めにするわ、暴政を諌めるために自害した明石藩江戸家老(内野聖陽)の遺族を庭先でハンティングするわ、もうやりたい放題。庶民なんか、それこそ虫ヘラ扱い。明石藩主の暴虐ぶりは、オリジナル版よりかなり膨らませて描いてある。ちなみにリメイク版の脚本は、三池監督とのコンビでSMテイストたっぷりの快作『オーディション』『インプリント ぼっけえ、きょうてえ』(06)を手掛けた天願大介。さすが、人生の最後にエロチックコメディ『赤い橋の下のぬるい水』(01)を撮った巨匠・今村昌平監督のご子息ですな。  インディーズ映画の帝王・若松孝二監督の新作『キャタピラー』には"芋虫男"が登場したが、三池監督は東宝配給のメジャー作品である本作に"だるま女"を登場させる。明石藩主の残酷さによって、この世のものと思えぬ無惨な姿に変えられた女性を目の前にして新左衛門の怒りのエネルギーは沸点に達する。これまでも三池作品には『極道恐怖劇場 牛頭』(03)、『インプリント』『ヤッターマン』『ゼブラーマン2 ゼブラシティの逆襲』(10)と度々にわたって奇妙なクリーチャーが現れた。これは三池監督が自作に押した一種の焼き印だろう。このクリーチャーの異形度を見て、観客は三池監督の本気度を察する。三池作品のご神体であるクリーチャーを目撃したら、もう観客は逃げられない。すでに三池ワールドの虜である。
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13番目の刺客となる"山の民"
木賀小弥太(伊勢谷友介)。封建制
度の枠に捕らわれない自由奔放な男だ。
 新左衛門たち12人の刺客たちは、参勤交代で明石領に帰る道中の明石藩一行を襲撃することに。血戦の場を中山道の小さな宿場町・落合宿と決め、早回りするため山奥の獣道を突き進む。ここで出会うのが、山の民・木賀小弥太(伊勢谷友介)。オリジナル版では落合に住む郷士という設定だった小弥太が、三池版では流浪の民となる。山の民とは"サンカ"ですよ。都市伝説上では縄文人の生き残りとも言われ、日本社会とは異なる独自の文化を持つワイルドな集団。社会のシステムから離れて別個のコミュニティを築いている山の民にとっては、幕府も侍のプライドも全く関係ないのだが、小弥太は「こりゃー、面白いことが起きる」と本能的に嗅ぎ取る。その日その日を面白く生きることが山の民・小弥太にとっての唯一のルール。侍でもないのに、小弥太は自分のルールに従って新左衛門たちに付いていく。こうして"13番目の刺客"が新たに加わる。黒澤明監督の不朽の名作『七人の侍』(54)がラッキーナンバーなのに比べ、なんとも不吉な、されど悪運が強そうな数字ではないか。  落合宿に双方が到着し、13人vs.300人の大決戦がいよいよ始まる。敵も味方も逃げられないように、宿場町から出るための橋は爆破される。同時に三池節も大爆発。オリジナル版の30分に及ぶ激闘は時代劇史上最長の殺陣シーンとされてきたが、それを遥かに上回る50分の大激闘が繰り広げられるのだ。明石藩主だけを殺りゃいいんであって他の明石藩士たちは見逃してあげればいいじゃんと思う人もいるだろうが、三池版の新左衛門は明石藩士たちも主君を守るために体を張った一流の侍と見なし、容赦なく斬り掛かる。自分と同等、もしくは格上の相手に決死の戦いを挑むからこそ、男たちの輝きは増していくのだ。『ワイルドバンチ』(69)のラストさながら、敵も味方も血を噴き出しながらバタバタと倒れていく。そして落合宿は大炎上。後に残るのは、侍としての生をまっとうした男たちの屍と全てが無へと帰するカタルシスのみ。  リメイク版のラスト、意外な人物が血まみれになった新左衛門に「ありがとう」という言葉を投げ掛ける。その言葉はこれだけの血湧き肉踊る力作に参加することができたキャスト&スタッフの喜びの声でもあり、2時間21分の大スペクタクルショーを堪能した観客の声を代弁したかのようでもある。ありがとう、三池監督! そんな言葉が劇場出るアナタの口からも溢れるに違いない。 (文=長野辰次) 13shikaku04.jpg 『十三人の刺客』 原作/池宮彰一郎 脚本/天願大介 監督/三池崇史 出演/役所広司、山田孝之、伊勢谷友介、沢村一樹、古田新太、高岡蒼甫、六角精児、浪岡一喜、近藤公園、石垣佑磨、窪田正孝、伊原剛志、松方弘樹、吹石一恵、谷村美月、斎藤工、阿部進之介、内野聖陽、光石研、岸部一徳、松本幸四郎、稲垣吾郎、市村正親 配給/東宝 9月25日(土)より全国ロードショー PG-12 <http://www.13assassins.jp>
十三人の刺客 11月1日発売。 amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

"企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』

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手取り3万~15万円のギャラでカメラの前で性をさらす企画AV女優たちの生き様を描いた『名前のない女たち』。同名のノンフィクションシリーズを劇映画化したものだ。
(c)「名前のない女たち」製作委員会
 「夢あるの? 変わりたいと思わない? 人生なんて自分の行動次第でどうにでもなるよ。もし、自分でない誰かになってみたら面白いと思わない?」  家庭内で居場所がなく、職場でも地味で目立たない22歳のOL・純子は街でスカウトマンに優しく声を掛けられたのがうれしかった。普段から人から頼まれるとイヤと言えない性格の純子は、そのまま事務所に連れて行かれる。道に落ちている小石のように黙って生きてきた自分が、まさか女優デビューするなんて夢にも思わなかった。ただし、女優といっても"AV女優"。しかもAV女優でもメーカー側がイチオシする"単体女優"ではなく、ギャラが安く、ハードなプレイを要求される"企画女優"として。パッケージに名前がクレジットされることのない"名前のない女"としてである。  純子は初めてのAVの撮影現場でオタク少女"ルル"という名前を与えられる。男優との絡みはどうしようもなくぎこちないものになったが、それがかえって新鮮に映ったらしく、監督からは「ルル、よかったよ」と誉められる。他人から誉めてもらったのなんて、いつ以来だろう。自分を必要としてくれる場所があることを知り、心の中でガッツポーズをする純子。それからの純子は家族や職場に秘密で、週末だけ企画女優・桜沢ルルに変身する。撮影内容はどんどん過酷になるが、頑張れば頑張っただけ事務所の社長やスタッフ、さらにはファンが「よくやったね」と誉めてくれる。企画AVという消耗品の世界で、桜沢ルルは純子という名の窮屈な殻を脱ぎ捨て、ささやかな輝きを放つ。
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人から嫌われないよう、目立たないように生き
てきた平凡なOL・純子(安井紀絵)だが、「自分
ではない誰かになってみたくない?」というスカ
ウトマンの言葉に心が揺れ動く。
 AV専門誌「オレンジ通信」(東京三世社)に9年間にわたって連載された中村淳彦氏の企画AV女優へのインタビューシリーズは、2002年に『名前のない女たち』(宝島社)として単行本化され、その後も『名前のない女たち2』『名前のない女たち3 "恋愛"できないカラダ』『名前のない女たち最終章 セックスと自殺のあいだで』と出版され、累計25万部のベストセラーとなっている。本作は"ピンク四天王"としてピンク映画で活躍後、『刺青』(05)、『乱歩地獄・芋虫』(05)など一般映画に進出した佐藤寿保監督が原作シリーズからエッセンスを抽出して劇映画化したものだ。コスプレ少女・ルルに変身する平凡なOL・純子にオーディションで選ばれた新人女優・安井紀絵、体の奥から湧いてくる怒りの衝動をどうすることもできない元ヤンキーのAV女優・綾乃に園子温監督の『エクステ』(07)、石井隆監督の『人が人を愛するどうしようもなさ』(07)などに出演経験のある佐久間麻由をキャスティング。2人ともヘアヌードシーンを含めた大胆演技に挑んだ。ネームバリューのない若手女優を起用したことで、劇映画ながらノンフィクション度数が高い作品に仕上がっている。  もうひとりのヒロイン・綾乃は、男にお金を貢ぐためにAVだけでなく風俗でも働くようになる。男に依存しなくては生きていけない体質なのだ。AVの世界に足を踏み入れたばかりの純子があまりに不器用で危なっかしいことから、ついつい世話を焼いてしまう綾乃。他人の心配なんかしていられる立場じゃないが、綾乃の世話好きは逆に家族や友人、恋人から自分もかまって欲しかったという寂しさの現われだろう。精液を拭き取ったティッシュペーパーが丸めて捨てられるように、次々と企画女優たちが使い捨てられるAVの世界。人気を誇った単体女優も飽きられれば企画女優に格落ちする。そんな出口のない深い森の中で、綾乃と純子は次第に距離を縮めていく。いつか自分たちのことを誰も知らない遠い南の島に行って、嘘や見栄で塗り固めた自分たちの人生をリセットできればいいよねと夢を共有する。
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事務所の社長(鳥肌実)におだてられ、NGなしの
売れっ子AV女優になっていく純子。業界歴の長い
綾乃(佐久間麻由)は危なかっかしくて見ていら
れない。
 発売されてすぐに原作本を購入したが、原作者・中村氏がセレクトした企画女優たちの精神病歴、自傷歴のあまりのすさまじさに、途中でページをめくる手が止まってしまった覚えがある。小学生時代の大半をホームレスとして過ごした女、セックス依存症で多重人格の女、引きこもりでリスカ癖のある女、有名企業に勤めていたが借金返済のために夫に内緒で出演を続ける主婦......。さらに『名前のない女たち最終章』では中学時代の3年間、実の父親から性的虐待を受け続けたという超弩級のDV体験者も登場する。飯島愛のようなタレントになることを夢想する若い子もいるが、中村氏は断言する。「飯島愛はタレントとしての才能があったから成功したのであって、過去にAV女優だったこととはなんの関係もない」と。それでも男たちのバーチャルな欲望を満たすため、AVの世界に足を踏み入れる女性は後を絶たない。市場規模1,000億円と推定されるAV業界で、年間にリリースされる作品数は2万本。AV女優として働く女性たちの数は、年間でおよそ1万人と言われている。そのうち95%が"企画女優"なのだ。  社会のシステムからはみ出してしまった若い女の子たちの一種の受け皿となっていたAV業界だが、当然ながらそこは女の子たちを更生させるための機関ではなく、女の子たちの性と体と自尊心を切り売りする場所である。倫理観や道徳心を取り払ったAVの現場を繰り返すうちに、彼女たちは女性器だけでなく、心をすり減らし、さらに睡眠薬や精神安定剤をあおるうちに内臓や神経までもが疲弊していく。中村氏が取材した企画女優たちの中には若くして病死した子、自分から死を選んだ子、精神を病んでしまった子が少なくない。その後は消息を断ったケースがほとんどなので、正確な実態は分からないままだ。中村氏は『名前のない女たち最終章』の中で"メディアは人間の足を引っ張ることはあるが、決して人を救うことはできないと悟った"と記している。現在、中村氏はノンフィクションの執筆を続ける傍ら、高齢者のデイサービスの運営に取り組んでいるそうだ。  映画『名前のない女たち』のラスト、AV界で束の間の人気者になったルルは素顔の純子に戻り、ドブ臭の漂う渋谷川を小さなボートに乗って、静かに静かに下っていく。うまくすれば海に出て、綾乃といつか約束したように南の島にまで辿り着けるかもしれない。ボートに横たわる純子は眠っているようにも、死んでいるようにも見える。このエンディングは、消えていった多くのAV女優たちを弔うための"映画葬"ではないだろうか。大勢の女の子たちが自分の肉体と性を捧げ、ボクらの鬱屈としたコドクな夜を慰めてくれた。不器用すぎて、サヨナラも言いそびれたまま去っていったAV女優たちを鎮魂するかのように、小さなボートは海に向かって進んでいく。サヨナラ、名前のない女の子たち。 (文=長野辰次) namaenashi04.jpg 『名前のない女たち』 原作/中村淳彦 脚本/西田直子 撮影/鈴木一博 主題歌/戸川純「バージンブルース」 監督/佐藤寿保 出演/安井紀絵、佐久間麻由、鳥肌実、河合龍之介、木口亜矢、鎌田奈津美、草野イニ、新井浩文、渡辺真紀子ほか 配給/ゼリアズエンタープライズ+マコトヤ 9月4日(土)よりテアトル新宿、新宿K's cinemaほかロードショー <http://namaenonaionnatachi.com>
名前のない女たち ショーゲキ。 amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

映画監督・江川達也の"暴走"トーク!? 第2弾映画は"洗脳の怖さ"が発端だった(後編)

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映画製作の内情を率直に語る江川氏。
歯に衣着せぬストレートな物言いは、江川氏ならでは。
前編はこちら ──ゲームの進行役"白兎"に扮した川村ゆきえちゃんは、まさに江川作品から抜き出てきたようなキャラクター。 江川 オレ、ゆっきーが大好きなの(笑)。『東京大学物語』の映画化も最初は彼女で考えていたんだ。でも、事情があって、見送ったという経緯があったんだ。今回はプロデューサー側のキャスティングだったんだけど、ゆっきーが配役されてて、内心は大喜びしたんだ(笑)。彼女、かわいいだけじゃなくて、すごく素直だし、仕事に対しても熱心なんだよ。白兎が最初に無理に明るいテンションでゲームの説明をするところとか、最後に部屋を退室するときの表情はすごくいいよね。彼女、暗い芝居をやるとかなりうまいよ。 ──明るい笑顔の中に、微妙に影が差してますよね。 江川 そうなんだよ。瞳の奥に何か隠されたものを持っているよね。それはね、主演の石田卓也くんにも感じたことなんだ。彼も一見したところ、爽やかな若者なんだけど、演技にどこか鬼気迫るものを感じさせる。芦名さんが自分から進んでラバースーツを着て、四つん這いになってくれたのもそうだけど、映画って演技の中に役者の人間的な本質がさらけ出されるものなんだろうね。 ──"王様ゲーム"は中世の頃から存在したとのことですが、江川先生は学生の頃に"王様ゲーム"やってました? 江川 ボクの学生時代はもう30年前だからね、少なくとも名古屋では"王様ゲーム"をやってる学生はいなかったよ。"王様ゲーム"をやったのは上京して漫画家になってから。それで、「こんな楽しいゲームがあるんだぁ」と感激した(笑)。それに「フィーリングカップル5対5」とか『あいのり』みたいなテレビ番組のイメージを合体させていったのが今回の企画の発端。それと、あと"自己啓発セミナー"のイメージを組み合わせて、バーチャルリアリティーの世界で描いてみたかったんだ。
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──『BE FREE!』『東京大学物語』『家庭教師神宮山美佳』ほか江川作品は管理教育、マインドコントロールが主要テーマになってますもんね。 江川 そう、ボクの作品のキーワードだからね。心理療法とかグループ・ダイナミックス(集団における人々の思考や行動の研究)をベースに考えていた。もっと言えば、統一教会やオウム真理教などのカルト宗教で、人間がどのように洗脳されるのかを描いてみたかった。ま、そういった要素は全部、プロデューサーにボツにされたんだけどね(苦笑)。 ──なるほど。監禁された男女の精神状態が何者かにコントロールされる怖さは、作品から伝わってきました。 江川 うん、そこだけはね、最低限でも見る人に伝わってほしいと、ボクも何とか頑張ったところなんだ。でも、プロデューサーには映画を完成させてから最後に、「あなたの自己実現のために働くのは、もう嫌です」と言ったけどね(笑)。 ──権力をかざすのが"王様"ではない。 江川 そういうこと。本来、"王道"っていうものは王様がいちばん苦労して、みんなのことを考えなさいということなんだよ。権力を持っている人間は、末端の人間のことまで配慮しなくちゃいけない。でもさ、そういうことは全く理解してもらえなかったなぁ......。今回は本当、与えられた限られた状況の中で何とか最善を尽くした、作品にまとめることができたということだね。今回の現場のスタッフの中で、オレがいちばん大人だったと思うよ(笑)。 ──江川先生は教壇に立った経験もある、元教職者でもあるわけですが、教育とエンタテイメントの関係はどう考えていますか? 字幕付きの洋画は敬遠される、オリジナルストーリーよりもテレビドラマの劇場版のほうがヒットするという最近の映画界の傾向を"ゆとり教育"の弊害だという声を耳にするんです。 江川 教育ってのは先のことを見据え、自分の行動を律して、社会生活が破綻しないよう、幸せをつかむために自分を磨くためにあるものなんだよ。エンタテイメントは、それとは真逆にあるもの。ダメ人間を生み出すのがエンタテイメント。見ているうちにダメ人間になってしまうような作品がヒットするわけですよ。そういう意味では、某国民的アニメ監督の一連の大ヒット作はすごく良くできたエンタテイメント。一見したところ、家族の幸せを健気な少女が願っているかのように見せているけれど、ドロドロとした人間の欲望を増大させるものですよ。主人公たちが空を飛ぶシーンは、爆撃機で敵国を襲撃するような快感じゃないですか。猟奇的なスプラッターシーンやエロティックなシーンもよく見ると入ってますよ。
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江川達也監督がデザインした特注のラバースー
ツ。SMマニア&ゴムフェチには堪らないシー
ンだ。果たしてラバースーツの中は?
──確かに一連の国民的大ヒットアニメは見ていると気持ち良さ、陶酔感を覚えます。 江川 そう、その気持ち良さは、戦争とセックスを想起させるもの。それをね、ふだんエロビデオとか見ない女性は「素敵な映画」と喜んで見ているわけですよ。「子どもに国民的人気アニメを見せておけば安心」なんて考えは危ない。ちゃんとね、エンタテイメント作品に隠されているものは何かということを教育する立場の人間は分析して、知っておかなくちゃいけない。教育とエンタテイメント的なもののバランスをうまくとることが大事。だから、ゆとり教育以前の問題ですよ。ゆとり教育に関しても、それまでマニュアルに従って授業をしていた教師たちが、自由にやりなさいと言われてできるわけがないんだから。ファーストフードのハンバーガー店に勤めている店員に、明日から創作料理を作ってくださいと言ってもできないでしょ。 ──『KING GAME キングゲーム』もエンタテイメント作品ですよね。 江川 『KING GAME キングゲーム』は木村佳乃さんに「私はヘンタイ!」と言わせているように、SMシーンとかも隠さずに見せているからね。国民的人気アニメのように人間の欲望を巧妙に隠したり、パッケージで嘘を付いたりはしてないよ。その点はね、評価してほしいな。まぁ、今回は厳しい状況の中でキャストが頑張ってくれました。"王様"は自分の欲望のみに走っちゃいけませんってことだね。 (取材・文=長野辰次) 『KING GAME キングゲーム』 原案・監督/江川達也 脚本/ナーキカインド、保坂大輔 出演/石田卓也、芦名星、窪塚俊介、前田愛、堀部圭亮、山本浩司、夏目ナナ、ジェイ・ウエスト、佐藤千亜紀、川村ゆきえ、ジェリー藤尾、木村佳乃 配給/ファントム・フィルム 8月28日(土)より新宿K's cinemaにてロードショー <http://king-game.jp> ●えがわ・たつや 1961年愛知県名古屋市出身。愛知教育大学数学科卒業後、中学の数学教師に。本宮プロダクションでのアシスタントを経て、84年に『BE FREE!』で漫画家デビュー。代表作に『まじかる☆タルるートくん』『東京大学物語』『日露戦争物語』『家畜人ヤプー』『家庭教師神宮山美佳』ほか多数。AVの監督を経験後、06年に田中圭&三津谷葉子主演『東京大学物語』で念願の映画監督デビュー。現在公開中の『日本のいちばん長い夏』には俳優として出演している。
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映画監督・江川達也の"暴走"トーク!? 第2弾映画は"洗脳の怖さ"が発端だった(前編)

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『東京大学物語』(06)に続く、監督第2作目となる『KING GAME キングゲーム』
を完成させた江川達也氏。"王様ゲーム"を題材にしたオリジナル作品だ。
 江川達也と言えば、『BE FREE!』『まじかる☆タルるートくん』『東京大学物語』などの大ヒット作を放った人気漫画家。かわいい女の子のキャラクターやエロティックなシーンを盛り込むことで読者の心をつかむ一方、管理されたシステムの中で自分で考えることを止めてしまった現代人への風刺劇を繰り返し描いてきた。漫画連載時のクライマックスには、読者だけでなく担当編集者さえも驚愕する、予定調和をぶち壊す怒濤の展開を度々見せることから、"暴走作家"としても知られている。また、2006年には1,500万部の大ベストセラーとなった『東京大学物語』を自らの手で実写映画化し、映画監督デビューを果たした。監督第2作となる『KING GAME キングゲーム』は、密室に監禁された10人の男女が"王様ゲーム"を延々と続ける心理サスペンス。ルールやシステムに縛られた人間の言動が次第にエスカレートしていく内容は江川作品らしい。ところが、江川監督は本作に関して思うことが多々あるらしく、渋谷区松濤の豪邸でのインタビューは序盤から"暴走"の気配を漂わせていた......。 ──率直にお聞きしますが、今、なぜ"王様ゲーム"なんでしょうか? 江川達也氏(以下、江川) うん、まず、今じゃないんです。『東京大学物語』を撮り終わり、「じゃあ、次は?」という話になって、すぐに5本ほど企画を考えたんです。でも、映画の人ってノンビリしてるよね。やたらとダメ出しするし。それで企画が動き出すのを待っていたら、4年もかかったんだよ。で、なんで"王様ゲーム"かというと、現代は人間が欲望を暴走させている時代なわけです。米国のサブプライムローンの破綻なんかも人間ひとり一人の強欲が膨張しすぎて収集がつかなくなって起きたわけでしょ。そんな現代社会において、"王様ゲーム"をやることでひとり一人の欲望がむき出しになり、でも延々と続けていくことで逆にエゴをコントロールするための修行になるんじゃないかと考えたんです。王様の中には暴君もいるけど、王様は基本的には社会の末端のことまで考えて、人間の欲望を調整する役割を負っているんです。それをね、"王様ゲーム"の中に描こうと考えたんです。 ──密室で行なわれる"王様ゲーム"の中に、現代社会を箱庭的に凝縮して見せようという狙いだった? egawa03.jpg 江川 そうです。それで思いついたアイデアをイメージボードという形でスケッチにしたんです。でも、そういった企画意図は、全部ボツになって、"王様ゲーム"という設定だけが残った(苦笑)。今回の脚本はボクじゃないんです。まぁ、脚本はダメでも、撮影現場で何とかなるだろうと考えたけど、プロデューサーが現場でも「脚本通りにやらなくちゃダメだよ」と言ってきてね。今回は映画が完成しただけでも奇蹟じゃないですか。ボクの考えていた企画意図は全部ひっくり返されて、大変な状況の中で完成に漕ぎ着けたんです。映画って大変だなと思いましたね。 ──漫画より映画のほうがシンドイ? 江川 そうだなぁ、漫画のほうが楽かな。漫画を描くのは大変だけど、一度通った企画はここまでひっくり返されることはないからね。 ──江川先生が漫画執筆時のように"暴走"しないよう、手かせ足かせを付けられたんでしょうか。 江川 いやいや、"暴走"する以前に、話の骨組みも作らせてもらえなかった。脚本家が書き切れなかった部分だけ、「じゃあ、ボクがやらせてもらいます」と自分で書いたんです。現場でカット割り考えるのも楽しみにしていたんだけど、それもできなかった。カメラマンが疲れてカット割り考えられない状態になったときだけ、自分でカット割りしたんです。だから、部分部分に自分の色が出てると思うよ(苦笑)。でも、監督なのにまるで権限が与えられないっていうのはどうなんだろう。逃げてもよかったんだろうけど、とにかく映画を完成させなくちゃという使命感でしたね。プロデューサーの指示に従わないことには、収集がつかない状況でしたから。 ──この取材も記事として成立するのか心配になってきました......。 江川 そうだな、うまいこと言えば、"王様ゲーム"で監督であるボクにはあまり"王様"が回ってこなくて、プロデューサーがやたら"王様"を引き続けたってことかな。こういえば、ギリギリセーフでしょう(苦笑)。でもさ、監督は2本目だけど、オレって映画運ないんだなぁと思ったよ。 ──監督デビュー作『東京大学物語』、面白かったですよ。遥役の三津谷葉子ちゃん、かわいかったし。
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10人の男女が密室で10日間にわたって"王様
ゲーム"を繰り広げる。時間の経過と共に、
王様の命令は次第に過激になっていく。
(c)2009キングゲーム製作委員会
江川 デビュー作も、本当はオリジナルストーリーで勝負したかったんだよ。でも、『東京大学物語』の映画化をと言われてね。じゃあ、原作に忠実に映画化しようとしたら、それもダメだと言われたんだ。映画って何かやろうとすると、すぐにダメって言われるだよなぁ。 ──え~と、ここらでキャストの話題に移りましょうか。石田卓也、芦名星、木村佳乃、窪塚俊介、川村ゆきえ......と主演経験者の多い、かなり豪華なキャスティングじゃないですか。 江川 キャスティングはね、プロデューサーの力量で集まったからね。ボクの力じゃないから。 ──多彩なキャストの中でも、木村佳乃さんのボンテージルックが決まってます。いかにも"SMの女王様"って感じですね。 江川 うん、決まってるよねぇ(テンションが上がってくる)。実は木村佳乃さんはスリムすぎて、基本的にはボンテージルックは似合わないんですよ。衣装合わせのとき、木村さん機嫌が悪くて、その場の空気がピリピリしてましたよ(笑)。女優なんで、自分がどう見られるかについて厳しいんです。黒いシンプルなボンテージ衣装をそのまま着ただけだと"モジモジくん"になってしまうので、SM指導の本職の女王様がふだん使っているベルトを借りたり、バストアップしてセクシーさを強調して、見事にカッコよくなってましたね。衣装合わせに関しては木村さんが"王様"だった(笑)。 ──木村佳乃さん演じる"山咲"の「わたしはヘンタイ!」という台詞を皮切りに、言葉責めが始めるシークエンスは俄然盛り上がりました。 江川 あの言葉責めやSMのシーンはよかったよね。ボクも演出してて楽しかった。監督が未熟な分を、木村佳乃さんがうまくフォローしてくれた。木村さんには世話になったね。 ──ラバーマスク付きの真っ赤なラバースーツの中に入っているのは、芦名星さんなんですか? 江川 そうだよ。あの顔の見えないラバースーツをデザインしたのはボクなんだけど、あんなにスタイルのいい女性はそうそういないからね。鞭を打たれているのも彼女だよ。スタントマンじゃないし、CG合成もしてないから。正直さ、芦名さんを四つん這いにさせて鞭に打たれるシーンはどうやって頼もうかと悩んだんだけど、振り返ったら芦名さん、もう四つん這いになっていたからね(笑)。彼女さ、いつもクールな表情をしているけど、役に関してはすごく熱心なんだよ。1シーン撮るごとに「監督、今のシーンの私、どうでした?」と聞いてくるんだ。でも、11人みんなの表情までチェックできてなかったから「うん、いい感じだったよ」と答えてたんだけどさ(笑)。芦名さん、雰囲気もあるし、ガッツもありしさ、女優としていいもの持ってるよ。 (後編につづく/取材・文=長野辰次) 『KING GAME キングゲーム』 原案・監督/江川達也 脚本/ナーキカインド、保坂大輔 出演/石田卓也、芦名星、窪塚俊介、前田愛、堀部圭亮、山本浩司、夏目ナナ、ジェイ・ウエスト、佐藤千亜紀、川村ゆきえ、ジェリー藤尾、木村佳乃 配給/ファントム・フィルム 8月28日(土)より新宿K's cinemaにてロードショー <http://king-game.jp> ●えがわ・たつや 1961年愛知県名古屋市出身。愛知教育大学数学科卒業後、中学の数学教師に。本宮プロダクションでのアシスタントを経て、84年に『BE FREE!』で漫画家デビュー。代表作に『まじかる☆タルるートくん』『東京大学物語』『日露戦争物語』『家畜人ヤプー』『家庭教師神宮山美佳』ほか多数。AVの監督を経験後、06年に田中圭&三津谷葉子主演『東京大学物語』で念願の映画監督デビュー。現在公開中の『日本のいちばん長い夏』には俳優として出演している。
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非日常のなかにあるリアル 新感覚エンタメ映画『ネック・マシーン』『東京島』

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(C)2010『NECK』製作委員会 シネマサンシャイン池袋、新宿バルト9ほか全国ロードショー
 8月も下旬に入り、万人ウケするファミリー向け映画と少しずつ入れ替わるかのように、クセのある個性的な新作が登場してくるこの時期。そうした作品群の中でも、当代屈指の人気作家の小説や原案を基に映像化された邦画2本、『NECK ネック』(アスミック・エース配給、公開中)と『東京島』(ギャガ配給、8月28日公開)が個性を放っている。  『NECK ネック』は、独特の口語体と奇想天外の展開、確かな構成力でファンを魅了する覆面作家・舞城王太郎による、映像化を前提に書き下ろされたストーリーが原案。相武紗季の映画初主演作で、テレビドラマ演出で活躍してきた白川士監督の劇場映画デビュー作でもある。  少女時代からお化けに興味を持ち、「恐怖心がお化けを作り出す」という持論を実証しようと研究に打ち込む大学院生・真山杉奈(相武)。告白してきた後輩の首藤(溝端淳平)を、自ら開発した装置「ネック・マシーン」の実験台にして、お化けを発生させようとするが......。  過激な描写や残酷シーンこそないものの、コミカルな展開の中で突然ハッと驚かされ、恐怖をごまかすように思わず笑いを漏らしてしまう場面も少なくない。新感覚のホラー・ラブコメムービーといった趣だ。クールな美人編集者役で共演する栗山千明が独特の存在感を放ち、AKB48の河西智美も華を添えている。  『東京島』の原作は、谷崎潤一郎賞を受賞した桐野夏生の同名ベストセラー小説。第二次大戦後に太平洋の孤島で実際に起きた「アナタハン島事件」がモチーフになっているが、映画の時代設定は、小説と同様、ほぼ現代に置き換えられている。  清子と隆の夫婦はクルーザーの旅に出て嵐に遭遇し、太平洋の無人島に漂着。隆が衰弱するなか、与那国島の重労働から逃げ出した16人のフリーター集団が流れ着く。隆が謎の死を遂げると、今度は密航に失敗した中国人の男6人が島に漂着。いつしか「東京島」と呼ばれるようになった南海の孤島で、男22人と清子の奇妙な共同生活が繰り広げられ......。  原作のエロティックなシーンが食欲の描写に置き換えられ、グロテスクなエピソードが笑いに転じられたことで、男性観客のある種の期待は残念ながら外される。だがそのおかげで、孤島サバイバルという状況でありながら清潔感、オシャレ感が保たれ(エルメスがスカーフの提供で特別協力している)、カップルで観ても気まずくならず、女性観客が元気をもらえるようなポジティブな映画に仕上がった。  主演は『ぐるりのこと。』(08)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に輝いた木村多江。共演は窪塚洋介、福士誠治、鶴見辰吾ほか。『犬と歩けば チロリとタムラ』(03)の篠崎誠監督が、無人島の共同生活に現代日本の世相を巧みに投影している。  これら2本は、人気作家による刺激的なストーリー、魅力的なキャスト、ひねりの効いた演出のおかげで、非日常的な設定を意外とリアルに体感できる娯楽作。小説と比較しながらマニアックに鑑賞する層はもちろん、新感覚のエンタメを気軽に楽しみたい人にもオススメだ。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 『NECK ネック』作品情報 <http://eiga.com/movie/55093/> 『NECK ネック』相武紗季&溝端淳平インタビュー <http://eiga.com/movie/55093/interview/> 『東京島』作品情報 <http://eiga.com/movie/55019/>
ぐるりのこと。 こんな妻がほしい。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 "大人が泣けるアニメ"の名手 原恵一監督が手掛ける『カラフル』 「ありえねー!!」 トンデモB級アメリカン・ムービー『特攻野郎Aチーム』 男性顔負け! アンジーがクールにキメるスパイ・アクション『ソルト』

"大人が泣けるアニメ"の名手 原恵一監督が手掛ける『カラフル』

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(c)2010森絵都/「カラフル」製作委員会
 人生を"リセット"できるなら、今日からあなたはどう生きますか――。夏公開のアニメ映画と言えば、小学生以下の子どもを連れた家族が心おきなく楽しめる笑いと感動の娯楽作が多いが、中には冒頭の問いかけのように、生きることの意味や人と人とのつながりといった現実的なテーマを取り上げる作品もある。今回紹介する『カラフル』(東宝配給、8月21日公開)もそうした意欲的な作品だ。  天上界と下界の狭間で漂っていた"ぼく"の魂は、プラプラと名乗る天使から人生に再挑戦するチャンスを与えられ、自殺したばかりの内気な少年・小林真の体に入り込む。真として生き返った"ぼく"は、真の生還を喜び一見幸せそうな家族が実はばらばらの関係だったこと、学校では友達もなく成績も最低で、さらに密かに思いを寄せる後輩「ひろか」が援助交際をしていると知って絶望したことが自殺の理由だったと知る。だが、以前の真とは微妙に違う"ぼく"の言動が周囲に波紋を呼び、やがて周囲の人間関係が少しずつ変わっていく......。  原作は、児童文学畑で着実にキャリアを築きながら『風に舞いあがるビニールシート』(文藝春秋)(06)で直木賞も受賞した作家、森絵都のベストセラー小説。ファンタジックな設定と現実の中学生が直面し得るリアルな問題が交錯する、一筋縄ではいかないストーリーのアニメ映画化に、白羽の矢が立ったのは原恵一監督。原監督は、「クレヨンしんちゃん」シリーズや『河童のクゥと夏休み』(2007)などで、"大人の鑑賞にたえるアニメ"の作り手としての評価を確立。特に『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』(02)は、これを原案として実写映画『BALLAD 名もなき恋のうた』(09)が製作されるなど、その影響力はもはやアニメ界にとどまらない。  1980~90年代にかけて海外でも支持されていった宮崎駿、大友克洋、押井守ら日本アニメ界の"大御所"に対し、原監督は『時をかける少女』(06)や『サマーウォーズ』(09)の細田守監督と共に、これから世界に羽ばたくであろう次世代の担い手として大いに期待される監督として知っておきたい存在。『カラフル』での手描き2Dキャラと背景の3DCG、さらには実写の写真などもミックスさせた表現手法についても、押井監督など先駆者がいるものの、すでに確立されたアニメ手法に安住せず新しい映像表現に挑む心意気が伝わってくる。  孤立、いじめ、援助交際、自殺といった切実な問題や、友達ができることの喜び、家族とのかかわりといった人生で大切な要素が、丁寧に描かれた本作。一つの色ではなく、さまざまな色が混じった"カラフル"な自分を受け入れ、他人も認めることで、人とのかかわりを変えられるし、生き方も変えられる。そんなポジティブなメッセージが鑑賞後に残る映画としてオススメしたい。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 『カラフル』作品情報 <http://eiga.com/movie/55171/>
映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦 ボロ泣き。 amazon_associate_logo.jpg
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原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』

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原恵一監督の新作『カラフル』。一度死んだ"ぼく"の魂は、自殺した中学生・小林真の体に入り、期間限定で生き直すことになる。(c)2010森絵都/「カラフル」製作委員会
 自分の足にぴったりのシューズさえあれば、もっと地に足をつけて生きていけるのに。自分に自信が持てず、フワフワとした毎日を送る10代の少年にとって、自分に合ったシューズがあるかどうかは重大な問題なのだ。原恵一監督の新作アニメ『カラフル』はタイトルとは裏腹に、恐ろしく地味な中学生の日常生活が描かれる。直木賞作家・森絵都の原作小説は一度死んだ"ぼく"が天使に命じられ、自殺した直後の中学生として生き直すという青春ファンタジーだが、原監督はアニメーション的手法を使って色彩感覚溢れる作品に脚色することを抑えている。誰しもが体験した退屈でうっとおしい、大人と子どもの中間にあたる中学生の心の揺れ動きを丁寧にすくい取る。冴えない中学生・小林真として生き直すことになったぼくは、「足元だけでもオシャレに」とネットでレアものシューズを購入するが、すぐさま不良に取り上げられる。そんなとき、小林真の同級生・早乙女くんがイケてるシューズを揃えているディスカウント店の場所を教えてくれた。お手頃価格でお気に入りのシューズを手に入れたぼく/小林真はうれしくてたまらない。新しいシューズと早乙女くんという友達を手に入れたぼく/小林真は、学校に行く足取りも軽やかになる。中学生男子のそんな日常生活を原監督は実写さながらのリアルさで描く。 『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(01)、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』(02)、『河童のクゥと夏休み』(07)と3作続けて高い評価を得ている原監督。『河童のクゥ』で独立するまでは、シンエイ動画に長年勤め、『ドラえもん』『エスパー魔美』(共にテレビ朝日系)などの藤子・F・不二雄原作のテレビアニメシリーズの演出を手掛けてきた。いわば藤子・F・不二雄の提唱する"SF(すこし・不思議)ワールド"の体現者だった。平凡な日常にちょっとした闖入者や時空の歪みが生じることで、愛しい風景へと変わっていく。原監督はその"平凡な日常"を描くのが抜群にうまい。日常をきちんと描くことで、ファンタジーの面白さがより生きてくる。『河童のクゥ』でも上原家の世話になる河童のクゥの居候生活を快活に描いたが、本作では日常描写にますます磨きがかかった。自殺を考えた小林真の鬱屈した生活は、観ているほうも息苦しさを覚えるほどだ。  あの世とこの世の狭間でさまよっていた"ぼく"の魂は関西弁で話す変な天使・プラプラに命じられて、自殺したばかりの中学3年生・小林真の体に入り、期間限定で生き直すことになる。でも、なんで平凡な中学生・小林真は自殺を考えたのか。小林真は勉強ができず、クラスで無視され続けている存在。友達は一人もいない。家族ともコミュニケーションが取れずにいる。唯一の心の拠りどころは美少女・ひろかだったが、想いを寄せているひろかが援助交際をしていることを知り、さらに母親が不倫している現場を目撃したことから、小林真は自殺へと走ってしまった。プラプラに小林真の暗い過去を教えられたぼくは、ため息をつくしかない。
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コンビニで買った何でもないフライドチキンも、
友達の早乙女くんと分け合って食べることで、
ぼく/小林真にとって忘れられない味となる。
 今さら他人の体と頭を使って受験勉強する気にもなれないぼくがどんよりと街を歩いていると、小林真の同級生である早乙女くんとばったり出くわす。名前はかっこいい早乙女くんだが外見はダサ系で、ぼく/小林真はこれまで口を利いたことがなかった。早乙女くんは卓球部に3年間所属しながら、万年補欠だったらしい。成績も小林真といい勝負。そんな早乙女くんは受験勉強もせずに街で何をしていたのかというと、1969年に廃線となったチンチン電車・東急玉川線(玉電)の路線跡に沿って、停留所跡をひとつひとつ訪ね歩いていたのだ。廃線めぐりとは中学生のくせに、何と渋い趣味。愛読誌は「東京人」(都市出版)か「散歩の達人」(交通新聞社)か。しかし、早乙女くんの「思い出すことで、消えてしまったモノが甦る」という言葉に、一度死んでしまっているぼく/小林真は深く共鳴する。玉電のくだりは原作小説にはない映画版のオリジナルエピソードだが、往年の玉電のモノクロ写真が挿入された途端に、それまでぼく/小林真の精神状態と重なって沈んでいたスクリーンが一気に色づいていく。ドラマ運びと演出によって、作品に色彩を施そうという原監督のこだわりに脱帽だ。  早乙女くんと知り合い、さらにシューズを一緒に買いに出掛けたことで、ぼく/小林真の冴えない日常生活にぽつんと灯りがともされる。高校なんてどうでもいいと思っていたが、早乙女くんと同じ公立高校を受験してみようという気になってくる。本作のクライマックスは、家族とコミュニケーションできずにいたぼく/小林真が、家族と夕食を囲むシーン。小林真の唯一の特技である絵の才能を伸ばすために私立高校へ進学するよう母親と兄は熱心に勧め、ぼく/小林真は家族と対立してしまう。「友達と同じ高校を受験したい」「当たり前の高校生活を送ってみたい」と主張する。ぼくの選択が正しいかどうかは問題ではなく、これまで学校に行かない、母親を無視する、自分の命を絶つ......と社会や家族に対して拒絶の形でしか自分の感情を表現できなかった小林真が初めて自分の意思を表示したのだ。家族の台詞のやりとりの中に、考え方の相違、対立、理解、笑い、そして少年が成長の階段を昇り出す鮮やかな一歩が描かれる。食卓を囲んだ家族の会話だけで作品のクライマックスを成立させてしまう原監督の力技がお見事。こんな卓越した演出力を持つ監督は、実写畑を含めても日本映画界にそうそういない。刺激的な非日常的要素をちりばめた作品が氾濫する今のアニメ界において、淡々とした日常生活が展開される原恵一ワールドの存在がファンタジーではないだろうか。  『河童のクゥ』の公開時に原監督をインタビューした。『オトナ帝国』『戦国大合戦』が絶賛された分、ハードルが高くなってプレッシャーを感じるのではと尋ねたところ、原監督は「ハードルはあったほうがいい」と答えた。「劇場版『クレヨンしんちゃん』を作りながら、次のハードルはもっと高く、もっと高くと意識するようになったんです。特に『オトナ帝国』はボクにとって転機になった作品。テクニックに頼っちゃダメ。自分にとっての切実なテーマに誠実に取り組もう。そして、切実なものはちゃんと受け取り手にも届くんだということが分かった作品なんです。だからハードルを意識することで、そのときの気持ちに立ち返ることができるんです」と原監督は語った。作品さながらに誠実さが感じられる人柄だ。  また、これだけリアルな演出ができるなら、実写の監督もやれるのではと尋ねると、「アニメではなく邦画を作っている意識なので、実写の話があれば考えないことはないですけど、自信はありませんよ(笑)。でも、やっぱりアニメならではの良さがあるんです。長年やっているのでうんざりしている部分もあるけど、実写に比べるとアニメは瞬発力が比較的求められない。実写の場合は、日が沈むまでに撮影を終わらせなくちゃいけないとか常に瞬発力が求められますからね。役者さんもひとりひとり自我がありますし。アニメにももちろん瞬発力は必要ですが、コンテを描きながら『さぁ、どうしようか』と立ち止まって考える余裕がアニメにはあるんです。まぁ『河童のクゥ』は立ち止まりすぎて、製作に時間がかかっちゃいましたけど(苦笑)」。  一本気な性格、でも飄々としてマイペース。原監督は本作の名キャラクター・早乙女くんによく似ている。また、『戦国大合戦』の"青空侍"のようでもあるし、『河童のクゥ』の犬の"オッサン"のようでもある。日本の映画界に、こんなマイペースで信頼できる監督がいてくれることが、いち映画ファンとしてうれしい限りである。  小林真としての生をまっとうしたぼくは、晴れて生まれ変わることになる。きっかけを与えてくれた天使のプラプラともお別れ。ドラえもんに依存しきっているのび太に比べ、プラプラはぼくの前に最低限必要なときにしか現れない理想的な距離を保っていた。それも早乙女くんという友達ができてからは、プラプラはほとんど姿を見せなくなる。西原理恵子原作『いけちゃんとぼく』(09)では、父親を亡くした少年を"イマジナリー・フレンド"のいけちゃんが優しく見守る。ネコ型ロボットのドラえもんも天使のプラプラも一種のイマジナリー・フレンドと言っていいだろう。少年が大人へと成長していくと、イマジナリー・フレンドは消滅する運命にある。しかし、それは悲しい別れではなく、祝福されるべき別れなのだ。 (文=長野辰次) color03.jpg 『カラフル』 原作/森絵都 脚本/丸尾みほ 監督/原恵一 声の出演/冨澤風斗、宮崎あおい、南明奈、まいける、入江甚儀、藤原啓治、中尾明慶、麻生久美子、高橋克実 配給/東宝 8月21日(土)よりTOHOシネマズみゆき座ほか全国ロードショー公開 <http://colorful-movie.jp>
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●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』

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戦場で手足を失った久蔵(大西満信)は、名誉の"軍神"として帰ってくる。
テレビ局主導の製作委員会方式では決して作られない、ホンモノの映画だ。
(c)若松プロダクション
 夜店で評判のフリークスをお見せいたしますというオドロオドロしい見せ物感覚と、正義の戦争なんかあるわきゃねぇだろうという明快なメッセージ性が、若松孝二監督の新作『キャタピラー』では見事に両立している。上映時間3時間10分の超大作『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(08)でも自己総括を求められた遠山美枝子(坂井真紀)が自分で自分の顔面を殴り続け、顔面崩壊する過程を延々と描き、観る者の背筋を凍らせた若松監督だが、今回の見せ物感覚はさらに最上級形だ。お国のために日中戦争に出兵した久蔵(大西信満)は妻・シゲ子(寺島しのぶ)の待つ農家に帰ってくるが、久蔵は戦争で両手両足を失い、芋虫状態となっていた。しかも顔半分はケロイドで覆われ、聴覚も失い、しゃべることもできない。だが、食欲と性欲だけは異常にある。生きた"軍神"となって帰ってきた夫の世話するシゲ子は"妻の鑑"として村中で讃えられるが、シゲ子にとっては家の中が戦場である。畑仕事でくたくたとなったシゲ子を、食欲と性欲だけの肉の塊となった久蔵が責め立てるのだった。  最初は久蔵の性のはけ口となっていたシゲ子だが、やがて手足のない久蔵の下の世話から食事の面倒まで全てをひとりでやらなくてはいけない貞淑な妻の反撃が始まる。1日中、部屋で寝ているだけの久蔵の上にシゲ子は股がり、シゲ子から挑発するようになる。戦場での忌まわしい記憶がフラッシュバックする久蔵は、シゲ子の求めに応えることができない。「この役立たず!」とシゲ子は"軍神"となった夫を罵倒する。さらには身動きのできない久蔵をリヤカーに乗せて外へと連れ出す。シゲ子は畑仕事中、久蔵をあぜ道に放置する。通りかかった村人たちは「あぁ、軍神さまだ。ありがたや」と拝んでいく。出兵前に夫の暴力に耐えてきたシゲ子の考え出した陵辱プレイである。そんな日々を重ね、やがてシゲ子は自分なしでは何もできない肉の塊である久蔵に愛おしさを覚えるようになっていく。怒りや憎しみ、悲しみも含めての夫婦愛、家族愛ではないのかと、このフリークスショーは客席に訴えかけてくる。
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食欲と性欲しか残されていない久蔵は、毎晩の
ごとく妻・シゲ子(寺島しのぶ)の体を執拗
に求める。
 ベルリン映画祭のコンペ部門に出品された本作は、若松監督の狙い通りに寺島しのぶに最優秀女優賞が贈られた。「これで宣伝費をかけずに済む」と若松監督はにんまり。常に体制側とは反対の立場から映画を撮り続ける"インディペンデント映画の帝王"若松監督は製作・配給まで全てを自分でやることをモットーにしている希有な映画人だ。自分でお金の管理ができないと、自分の思った通りの作品を撮ることも上映することもできないことを肌身に染みて知っているからだ。前作『実録・連合赤軍』は自宅と名古屋で経営している映画館「シネマスコーレ」を担保にして製作費2億円を捻出。クライマックスの「あさま山荘」での攻防シーンは仙台に所有していた若松監督の別荘でロケを行ない、物の見事に別荘をぶっ壊してみせた。若松監督にとって、映画製作=オノレの人生なのだ。  本作は江戸川乱歩の怪奇小説『芋虫』からインスピレーションを受けていることから、若松監督が日本文藝家協会にタイトル使用の許可を求めたところ、150万円を請求されたそうだ。「冗談じゃない」と若松監督が断ると、「じゃあ、50万円でいいので」と言われたらしい。「バナナの叩き売りじゃあるまいし」と若松監督はとっとと"芋虫"から英訳の"キャタピラー"に変更した。都内での先行上映時に語ったエピソードだが、タイトルが"キャタピラー"になったことで、戦車や戦争を連想させるよりベターなタイトルとなったわけだ。転んでも決してただで起きないのが、若松監督の仕事の流儀である。
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ベルリン映画祭銀熊賞を受賞した寺島しのぶ。
「日本では、"また脱いだんですか?"としか
尋ねられない」と寺島は日本のマスコミをチクリ。
 サイゾー本誌2005年9月号で若松監督をインタビューした際、ヤクザの世界から映画業界に転職した経緯を語ってくれた。17歳のときに父親とケンカして実家を飛び出し、宮城から夜行列車に乗って上京。カリントウ工場で働いていたが、カリントウを煮詰めていた巨大鍋の中に同僚が誤って落ちて死んだことから、マジメに勤めるのがバカバカしくなった。新聞配達、肉体労働などを経て、新宿を拠点にする暴力団の組員となり、縄張り内で撮影される映画やドラマのロケ現場に立ち会ううちに、「映画の世界は面白そうだな」と思うようになったと語る。その後、対立する組との抗争から半年ほど拘置所に入り、塀の中でヤクザ稼業から足を洗い、映画の世界に進むことを決意する。留置所での体験がよほど強烈だったのだろう、若松作品には監禁、もしくは抑圧された若者の怒りが爆発するストーリーが多い。また、このとき取り調べをした警察官たちが横柄な態度だったため、若松作品は終止、反体制的立場から描かれることとなった。若松監督は銃と爆弾の代わりに、映画でもって社会を挑発し続ける。  今年74歳になったと思えないほど過激なアナーキストの若松監督だが、その一方では撮影で余ったロケ弁当はホームレスに配るなど心優しい一面も持つ。また、これは映画館スタッフに聞いた話なのだが、公開初日に若松監督は赤飯を炊いて自分でオニギリを握り、上映館まで自転車を漕いで赤飯のオニギリを運ぶのだそうだ。かっこ良すぎるよ、若松監督!  他人の敷いたレールを走ることなく、無限軌道(キャタピラー)のごとく荒野を突き進む若松監督だが、不合理なものは大キライ。大本営発表に疑問を呈する。入場料がどの作品も1,800円という均一料金になっている日本の映画界に対しても、本作は一石を投じている。「戦争の真実を若い人に知ってほしい」という考えから、高校生は料金500円、大学生・専門学校生800円という格安プライス。大人でも前売り1,000円という安さだ。ベルリン映画祭受賞のニュース以降、『キャタピラー』を上映したいという全国の映画館から申し入れが殺到しており、配給も手掛ける若松監督は「この値段で構わないという映画館とだけ話をしている」という。  本作はリハなし、全シーンほぼ一発撮り、撮影期間わずかに14日間という強行スケジュール(それでも早撮りのため12日間で撮影終了)で撮り上げられたため、全シーンに緊張感がみなぎっている。何もできずに悶え苦しむ久蔵が壁に頭を打ち付けて流血するシーンは血糊ではなく、リアルな出血である。また、それを見たシゲ子は笑い転げるが、これは寺島のアドリブ。共演者の出血を見て笑い出すという寺島の役への没頭ぶりがすごい。そんな中で、女物の着物を羽織ったキチガイ男をゲージツ家のクマさん(篠原勝之)が演じており、コメディリリーフ的な役割を果たしている。元々は脚本になかったキャラクターで、新潟のロケ地に若松監督から呼び出されたクマさんは、よく分からないままキチガイ男を演じていたそうだ。村中が本土決戦に備え、竹槍やバケツリレーの訓練に励む中、キチガイ男は赤フンドシ姿でひとり気ままに村中をゲラゲラ笑いながら徘徊する。  ネタばれになってしまうが、映画のラストでキチガイ男はポツダム宣言受諾を伝える玉音放送を聞き、シゲ子と共に「終戦、ばんざ~い!」と叫ぶ。玉音放送は聴き取りにくかった上に「耐えがたきを耐え......」という言葉から、いよいよ本土決戦かと勘違いした人も多かったという。その玉音放送を聴いて喜ぶキチガイ男は、実はかなりのインテリということだろう。マーティン・スコセッシ監督の『シャッターアイランド』と通じる風刺の効いたエンディングとなっている。世の中が狂っているのなら、まともな人間はキチガイのふりをするしか生き延びる手だてはないのだ。 (文=長野辰次) cata04.jpg 『キャタピラー』 企画・製作・監督/若松孝二 脚本/黒沢久子、出口出 撮影/辻智彦、戸田義久 主題歌「死んだ女の子」元ちとせ 出演/寺島しのぶ、大西満信、河原さぶ、地曳豪、ARATA、篠原勝之、吉澤健 8月6日(金)広島、8月9日(月)長崎にて先行上映、14日(土)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー公開 <http://www.wakamatsukoji.org>
実録・連合赤軍 あさま山荘への道程 カゲキ! amazon_associate_logo.jpg
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