2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を

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『川の底からこんにちは』『悪人』『モテキ』でも好演した満島ひかりの主演作『カケラ』。旬の女優・満島の今まで見せたことのないフェティッシュな魅力が詰め込まれている。
(c)ゼロ・ピクチュアズ
 年の瀬ということで今回は趣向を変えて、2010年に映画界で活躍したミューズたちをプレイバック。現在もっとも目が離せない若手女優といえば、『愛のむきだし』『プライド』(09)でブレイクした満島ひかり。2010年も潰れかけたシジミ工場を建て直す『川の底からこんにちは』、桜沢エリカ原作のガールズムービー『カケラ』の2本に主演、賞レースの本命『悪人』では事件の鍵を握る性悪女・石橋佳乃役を好演、さらに大根仁監督の深夜ドラマ『モテキ』(テレビ東京系、DVDリリース中)では神聖かまってちゃんの「ロックンロールは鳴り止まないっ」を絶唱するという弾けっぷりを見せた。もう、満島ひかりが止まらないって感じですな。『川の底から』では「どーせ、私は中の下ですから」と自己否定しながら、川の底でキラリと光る。うざいけど、チャーミング。むかつくけど、ベリキュート。満島ひかりは、面倒くさい女を演じさせたら日本一! 謹んで満島ひかりさんに、日本映画"面倒くさい女"大賞を進呈します。  12月22日にDVDリリースされた『カケラ』は、女子大生・ハルちゃん(満島ひかり)とメディカルアーティストのリコ(中村映里子)との親友以上、レズ未満の微妙な関係を描いた作品。奥田瑛二の長女で、ロンドン&NY留学を経験した安藤モモ子の監督デビュー作だが、表参道近辺を舞台にした桜沢エリカの原作コミック『ラブ・ヴァイブス』(祥伝社)を思い切って脚色。大塚・早稲田近辺に舞台を置き換え、70~80年代のATG作品を思わせる邦画テイストな作品に仕立てている。満島は得意としているハイテンション演技を封印して、「好きになるのに男も女も関係ない」と公言するリコの積極さに戸惑う地味めな女子大生・ハルちゃんをフワフワと演じている。満島の付けるブラとパンティーは上下バラバラだったり、最後に着るワンピースも満島に絶妙に似合わないようにデザインするなど、安藤監督の繊細な演出が見どころ。  実は安藤監督がもうひとりのヒロイン・中村映里子を現場で付きっきりで演出していたため、あえて放置状態にされていた満島ひかりは撮影後半で蓄積したモヤモヤが爆発し、安藤監督とマジでケンカを始めたそうだ。「もう撮影やめよ。いいよ、帰って。映画も終わり」「そんな無責任な監督でいいんですかッ」と安藤監督と満島の間でガチな言葉がぶつかり、胸ぐらをつかまんばかりの迫力だったらしい(本人たちの談)。もっとも、近くでケンカを見守っていたスタッフの「その感情を溜め込んだ感じが、ハルちゃんじゃない?」のひと言で2人はピタッとケンカを止めたそうだが。劇中でもヒートアップしたハルちゃんとリコが居酒屋で激ビンタし合うシーンがあり、女同士のケンカの壮絶さを伺わせる。本気モードで怒っている女性に、男は迂闊に近づけませんよ。
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ボーイフレンドのいる大学生のハル(満島ひか
り)だが、ミステリアスなリコ(中村映里子)
に引き寄せられていく。満島はてっきりリコ役
を演じると思っていたそうだが、ふだんと真逆
のフワフワした役に挑んだ。
 また、『カケラ』で話題を呼んだのが、劇中で満島ひかりがワキ毛を無防備に見せているシーン。安藤監督いわく「優柔不断そうに見えるハルちゃんだが、実はしっかり生きている芯の強い子」という演出意図らしいが、人気女優の脇からヘアが伸びているシーンはインパクト大。ネットで"満島ひかり"と検索すると、もれなく"ワキ毛"が関連キーワードとして出てくるので、本人的にはけっこー気にしている様子。でもまぁ、『川の底から』の新鋭・石井裕也監督との入籍、おめでとうございます。新藤兼人&乙羽信子夫妻のように今後も二人三脚で日本映画史に名作を残してください。  2010年の上半期を猛ダッシュで駆け抜けたのは、仲里依紗。実写版『時をかける少女』(DVDリリース中)で母親想いの健気な高校生を演じた直後に、三池崇史監督の『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』(DVDリリース中)で"悪の化身"ゼブラクイーンに変身し、レディー・ガガばりのセクシーダンス&ボーカルを披露した。本人に聞いたところ「自分じゃないみたい。撮影中は役に集中してて、記憶が全然ないんですよ~」というからスゴい。"多重人格女優"と呼んでいいですか。大竹しのぶが四重人格者を演じたNHKドラマ『存在の深き眠り』(96)をリメイクする際は、ぜひ仲里依紗主演作としてお願いしたい。"最多出演女優賞"を贈りたいのは谷村美月。青春ボクシング映画『ボックス!』(DVDリリース中)でぽっちゃりした女子マネジャー、三池監督の時代劇『十三人の刺客』では稲垣吾郎演じるバカ殿に手込めにされる人妻、阪本順治監督の『行きずりの街』ではスーパーマーケットのお勤め品を漁るどんよりした女の子。さらに秋以降にはクリクリの坊主頭を披露した実録闘病もの『おにいちゃんのハナビ』、業界コメディ『明日やること ゴミ出し 愛想笑い 恋愛。』、現在公開中の文芸オムニバス『海炭市叙景』と3作連続で主演。よく働くなぁと感心していたら、「大阪の実家にいたときのほうが、高校に通いながらだったので大変でした。今は仕事に専念できるから楽なんです」とニッコリ微笑むのだった。ええ子やなぁ。
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『カケラ』でも微妙なレズシーンがあるので、満島
ひかりファンは見逃せません。
 "エロス系アカデミー賞"があればノミネート確実なのが、『ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う』の佐藤寛子、『アウトレイジ』(DVDリリース中)と『nude』の渡辺奈緒子。『ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う』は、『花と蛇』(04)、『花と蛇2 パリ 静子』(05)の石井隆監督からのオファーに脱アイドルを図る佐藤寛子がしっかり応えたもの。佐藤寛子をインタビューした際に「杉本彩は『花と蛇2』に主演したときに、"肉体をさらせない者に、魂をさらせるわけがない"という名言を残したけど......」と振ると、「脱げば、魂をさらせるわけではないと思うんです」とさらりと返答。大胆ヌードを披露しながらも、インテリジェンスを感じさせる女優ですな。石井隆監督に続いて、彼女の魅力を存分に引き出す骨のある監督が現われて欲しいところ。渡辺奈緒子主演の『nude』(1月17日DVDリリース)はAVから引退したみひろの自伝小説の映画化。演技力はまだまだ発展途上中の渡辺奈緒子だが、『nude』ではAV女優みひろに少しでも近づくためにフルヌードで男優との3Pなどの過激シーンに体当たりで挑んだ。メイキング映像を見ると、AVに出演するかどうかで悩むシーンをリアルに撮るために、小沼雄一監督が「渡辺さんの演技はまったくなってない。本当に主演でいいの?」と厳しい言葉を浴びせている。監督の愛のムチに、奥歯を噛み締めた演技で応える彼女のガッツに思わずもらい泣き。『nude』『アウトレイジ』で見せた度胸の良さで、これからの飛躍を期待してます。  最後にもうひとり、2010年の活躍を特筆したいのが中村ゆり。ホラー映画『恐怖』(DVDリリース中)ではマッドサイエンティストの母親(片平なぎさ)からオカルト手術のモルモットにされる長女、佐藤純彌監督のシリアス時代劇『桜田門外ノ変』では主人公(大沢たかお)の身代わりで拷問死する芸者、公開中の『ばかもの』では新興宗教の教祖に全財産を貢いでしまう信者。身内から利用され、裏切られ、見捨てられるという、美人なのに幸せに縁遠い役ばかり。これまで木村多江、麻生久美子が十八番としていた"幸薄き女"のポジションを、今では中村ゆりが受け継いだ感がある。世の中の不条理を一気に引き受ける"身代わり地蔵"みたいで神々しいじゃないですか。ありがたや、ありがたや。  年末のドサクサに好き勝手なこと言って、女優のみなさんごめんなさい。映画ファンを魅了した女優の方々のさらなるご活躍を楽しみにしています! (文=長野辰次) 『カケラ』 原作/桜沢エリカ 監督・脚本/安藤モモ子 撮影/石井浩一 音楽/ジェームズ・イハ 出演/満島ひかり、中村映里子、津川雅彦、かたせ梨乃、光石研、根岸季依、志茂田景樹、大堀恵 発売・販売元/アミューズソフト DVDレンタル&発売中 <http://love-kakera.jp>
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●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第98回] 大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』 [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

天才芸術家が残した"死なない住宅" 花粉症が治り、ダイエット効果あり!?

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2005年10月に芸術家・荒川修作とパートナーのマドリン・ギンズが"死に抗する建築"として建てた「三鷹天命反転住宅」。生命の無限の力を体験できる新しい住宅なのだ。
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 富と権力を極めた秦の始皇帝が唯一叶えることができなかったのが"不老不死"だと言われる。しかし、始皇帝でも手に入れられなかった"死なない住宅"が現代の東京郊外にあることはご存知だろうか? コーデノロジスト(哲学、芸術、科学を総合し、実践する者)を自称した国際的芸術家・荒川修作とパートナーのマドリン・ギンズが建築した「三鷹天命反転住宅」がそれだ。ミステリアスでオカルティックな屋敷を想像しがちだが、JR中央線の武蔵境駅から10分ほどバスに乗って現われたその集合住宅は、何ともカラフルでまるでアミューズメントパークのよう。中に入って、さらにビックリ! 3LDKタイプの内装はユニークすぎ。キッチンを核にしたドーナツ状のリビングは傾斜している上に凸凹しており、フラットな部分がない。南向きの1室は完全な球形となっており、家具を置くことが不可能。そもそも、この住宅には収納スペースがなく、各部屋やトイレにはドアさえ付いていないのだ。こんなヘンテコで不便そうな住宅で暮らすと"死なない"というのは本当なのか? 天命反転住宅での自身の生活と生前の荒川修作の講演の様子などを交えたドキュメンタリー映画『死なない子供、荒川修作』を完成させた山岡信貴監督に、"死なない住宅"の住み心地と現時点での"死なない"手応えを聞いた。 ──"死なない住宅"で暮らしたことで体調の変化が現われたって本当ですか? 山岡信貴監督(以下、山岡) 2006年12月から約4年間暮らしたんですが、体重が7~8kg減りました。単純にここに暮らし始めて運動量が増えたんです。それまで考えごとは机に向かってうんうん唸っていたんですが、ここに来てからは自然と回廊型のリビングをぐるぐる回るようになりました。それにキッチンからちょっと離れたところに換気扇のスイッチが付いていたりするので、こまめに体を動かすようになりました。あえて便利すぎないような設計になっているんです。第一、この明るいカラフルな色彩の部屋で暮らしているとイライラすることが減り、過食することがなくなりましたね。毎年悩まされていた花粉症も引っ越して1年目で治ったんです。床に傾斜があるので、知らず知らずにバランス感覚や普段使わない筋肉も鍛えられるみたいです。荒川さんは生前、「小さな目立たない筋肉を鍛えることで、免疫は改善できる」と語っていました。ここで暮らすこと自体が、軽いヨガをやっているような状態なんでしょうね。 ──なるほど、監督への効果はテキメンだったようですが、監督のご家族はどうなんでしょうか。 山岡 最初に住宅見学会に家族3人で来たときに、息子が帰りたがらなかったんです。ボクも自宅に帰った後もずっとワクワク感が残っていましたし、妻も反対しなかったので、思い切って入居を決めました。家賃は高め(月20万円)ですが、こういう住宅に住める機会はそうないですから。ここに引っ越してから妻は08年2月に長女を産んだんですが、ものすごい安産でした。妊婦にとってもここでの家事が適度な運動になっていたんだと思います。ここで生まれ育った長女は本当にバランス感覚に優れ、公園でもよく木登りして遊んでいます。女の子なのに、まるで猿みたいなんですよ (笑)。
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カラフルな上に凸凹した床が印象的な室内。
山岡監督いわく「カラフルさにはすぐに慣れ
ます。でも、暮らしていて飽きのこない住宅
なんです」とのこと。
──ドアがなくてプライベート空間がないことに不便さは感じませんか? 山岡 トイレはシャワー室の裏に隠れているんですが、ドアがないので子どもの友達のお母さんたちが遊びに来たときは使いづらそうでしたね。でも、家族で使う分には気になりません。トイレの壁もガラス張りで、見晴らしがいいんです。まるで外でしているみたいで気持ちいいですよ(笑)。引っ越してきて一時的に夫婦喧嘩が増えました。顔を付き合わせる時間が増えるので、コミュニケーション量が増えるんです。でも、結局どの部屋にもドアがなくて逃げる場所がないから、いつまでも喧嘩してられなくて仲直りしてしまいます。強いて不便な点を挙げるとすれば、ベランダに出る窓が低くて潜らなくてはいけないので、妻がよく頭をぶつけていることかな。あと、四方に窓が付いているので風通しがよく、夏は冷房なしで過ごせるんですが、床が凸凹しているので冬場にカーペットが敷きにくいことですかね。 ──多少の不便さも、そう気にならないと。荒川修作の芸術作品の中で暮らしているような感覚なんでしょうか。 山岡 入居してすぐは、そうでした。「あぁ、これは荒川さんの芸術作品なんだ」と鑑賞しながら暮らしていました。でも、3~4カ月も経ってそれが当たり前に感じられてから、自分の感覚も体調も段々と変わってきたように思います。「ここは芸術家・荒川さんの作品というより、科学者・荒川さんがある理論に基づいて建てた実験室なんじゃないか」と感じるようになりましたね。荒川さんは赤ちゃんを長年観察することで、人間の身体の可能性についての研究をしていたんです。その研究の成果がいろいろと取り入れられているようです。 ■希代の芸術家・荒川修作いわく「人間は死なない」 ──映画『死なない子供』は、荒川さんに見せるためのプライベートビデオとして元々は撮り始めたそうですね。
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お気に入りの球形の部屋の前に佇む山岡監督。
「球形の部屋は昼寝するのに最適の部屋。胎児の
ように丸まって眠ると、すごく気持ちいいんです」。
山岡 そうです。ボクが荒川さんに初めてお会いしたのは、天命反転住宅で暮らし始めて3カ月くらいして。荒川さんから「住んでくれて、本当にありがとう!」と感謝され、反転住宅で起きたこと、感じことをFAXでレポートしてほしいと頼まれたんです。でも、ふだんはNYで暮らしている荒川さんに、メールならともかくFAXでレポートを送るのはなかなか面倒で、FAXしなくなってしまった(苦笑)。でも、先ほど話したように、しばらくして反転住宅に対する感じ方が変わってきたので、これはちゃんと荒川さんに報告したほうがいいと思うようになったんです。それでメモ代わりにビデオ撮影を始めて、かなり溜まってきた段階で編集作業に取りかかったんですが、編集をしているうちに、「これは荒川さんだけに見せるより、もっと多くの人に見てもらうべきじゃないか」と考え、荒川さんの講演の様子を盛り込んだり、物理学者である佐治晴夫さんの視点を交えたりするなどの編集方針に変えたんです。 ──強烈な個性の持ち主だった荒川さんは「死ぬのは法律違反です」「徹底的に間違っているんだよ。人間の生き方は」といった奇天烈な言葉を残していますが、山岡監督は一連の荒川語録は理解されたんですか? 山岡 正直言って、カメラを回し始めた頃は余り理解できていませんでした。でも、ここでの暮らしが落ち着いてきて、身体の方から、「なるほど、そういうことか」と理解していった感じです。自転車に乗ったことのない人に、いくら自転車の乗り方を言葉で説明しても理解できないのと同じですね。反転住宅で暮らしていると、荒川さんが言っていることがすごく腑に落ちるんです。荒川さんには「まだまだだな」と言われそうですが、自分なりに荒川さんの言っていたことは感じ取れてきたかなと思っています。ボクも最初は「人間は死なない」って芸術作品のためのコンセプトくらいに思っていたんですが、荒川さんは本気でそれに向かっていたはずです。 ──えっ、「人間は死なない」と本気で考えていた......? 山岡 決してスピリチュアル的な意味で言っていたわけではないんです。荒川さんは「我々は命のことを一体どれだけ知っているのか? 命について、まず定義し直さなくてはいけないのではないか」と言っていたと思っています。もし心臓が動き、脳が働いているようなことだけを生命だとイメージしているなら、その定義はもっと拡張すべきなんじゃないかと。ボクらは生きているから、わざわざ命とは何かなんて考えないわけですが、もっと命の本当の形態について研究すべきじゃないのかと荒川さんは主張されていた気がします。自分の身体を再認識することで、命の定義をし直すことができるんじゃないかと。そのための実験室として、天命反転住宅を造ったんだと思います。 ──命を定義し直す......? ざっくり言うと、従来の常識に囚われるな、みたいなことですか? 山岡 そうですねぇ、荒川さんは講演の中で「ボクが使うボキャブラリーは、何ひとつ君たちには分からないだろう」と言っているんです。それは今ある定義を一度捨てて、まっさらな形でゼロから考え直す必要があるということ。自分たちの曖昧に定義された言葉で荒川さんの話すことを聞いても、理解できないよということですね。常識なんて、荒川さんからしてみれば、ただの手抜きでしかないんです。常識に基づかないと会話をはじめ人間としての知的活動が成り立たないわけですが、その常識=利便性の使い方が間違っていると、その土台の上にいくら積み上げていっても全部間違っているよということでしょうね。生きてるとか死んでるとか言うけど、本当に分かっているのか、もっとちゃんと考えてみるべきではないのか、と荒川さんはボクらに問いかけていたように思います。 ──「人間は死なない」と語っていた荒川さんは、映画の完成を待たずに2010年5月にNYで亡くなったわけですが......。
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NYを拠点に世界的な芸術家として活動した荒川
修作(1936~2010)。岐阜県養老町にアミューズ
メントパーク「養老天命反転地」を建てた他、
天命反転住宅を拡大した街の構想を宮崎駿監督
と共同で取り組み、JR中央線の各駅舎を"自殺
しない"駅舎に改装するなどの企画も考えていた。
NYで2010年5月に病気で亡くなったが、日本
人でその死を確認したものはいない。
山岡 荒川さんには生前、10分ほどにまとめたバージョンは見てもらい、喜んでいただけました。荒川さん、NYでは反転住宅とは全然違うフラットな倉庫みたいな所で暮らしていたんです。でも、そういう無機的な場所で暮らしていたから、反転住宅がきちんと発想ができたのだと思います。本当は荒川さんに映画をチェックしてもらい「まぁまぁ、合格だな」とか「バカモノ! 最初から作り直せ」なんて言ってもらいたかった(苦笑)。でも、荒川さんに何も言ってもらえなくなったことで、逆にボクは一生"人間は死なない"というテーマを考え続けなくちゃいけなくなった。ある意味、それは幸せなことかも知れません。でも、荒川さんは「一万年後に、また逢おう」なんて言葉も残しているんです。一万年後に、「映画のあのシーンは間違っている」とダメ出しされたら、それはちょっと辛いですけど(苦笑)。中にはこの映画を見ることで荒川さんと新たに出会うことになる人もいるわけですよね。それもまた、素晴らしいことだなぁと思います。 ──"死なない住宅"で4年間暮らして、監督は"死なない"ことへの手応えは感じていますか? 山岡 そうですね、ここで暮らすことで自分の身体と常にコミュニケーションが図れるようになったと思います。風邪も引きにくくなったし、疲れて整体に通うことも少なくなりました。もう少し修行を積めば、いい感じになるんじゃないでしょうか(笑)。実は仕事の都合から、2010年9月に反転住宅を退去したんですが、敷金は置いたままなので、いずれ戻ってくるつもりなんです。今日、久しぶりに自分が暮らしていた部屋に入ったら、故郷に帰ってきた以上の懐かしい気持ちがこみ上げてきました。死に別れた恋人と再会し、抱きしめたくなるような感情に近いのかもしれません。部屋とSEXするのはどうすればいいんだろう、なんて考えてしまいました(笑)。それも環境や生活空間と身体との未知の関係性じゃないでしょうか。反転住宅を離れたことで、ますますその魅力を感じているところなんです。  * * *  天命反転住宅の居心地がいいこともあり、ついつい2時間近く山岡監督の話を聞いてしまった。ちなみに天命反転住宅の購入価格は8,000万円。荒川修作は「8,000万円で永遠の命が手に入るなら安い」と語っていたそうだ。"不老不死"にご関心のある方は、まずは映画『死なない子供、荒川修作』をご覧になってはどうだろうか。"死なない"かどうかは別にして、荒川修作という強烈な個性との出会いは充分な刺激を与えてくれるはずだ。 (取材・文=長野辰次) 『死なない子供、荒川修作』 監督/山岡信貴 ナレーション/浅野忠信 音楽/渋谷慶一郎 出演/荒川修作、佐治晴夫、天命反転住宅の住人たち 配給/アルゴ・ピクチャーズ 12月18日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラムにてモーニング&レイトショー公開中 <http://www.shinanai-kodomo.com> ●やまおか・のぶたか 1965年生まれ。初の長編映画『PICKLED PUNK』(93)はベルリン映画祭ほか数多くの映画祭に出品された。浅野忠信の初監督作『トーリ』(04)のプロデューサーとしても知られる。近年の作品にSFサスペンス『天然性侵略と模造愛』(05)。
養老天命反転地―荒川修作+マドリン・ギンズ 建築的実験 アリ地獄。 amazon_associate_logo.jpg
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前バリは逆に恥ずかしい!? 範田紗々が体当たりで挑むサイコホラー

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 人気の絶頂から一転、今年7月に突然のAV引退を宣言した範田紗々。現在は女優として活躍している彼女の初主演ホラー映画『愛のえじき 女教師ハルカの告白』が12月1日より公開される。最新のCG技術を駆使していることでも話題の今作、彼女も血糊まみれになりながらトラウマを抱える女教師「ハルカ」を熱演している。今回、日刊サイゾーでは映画の見所や、それにかける意気込み、そして今だから話せるAVへの想いを語ってもらった。 ■「男優さんに囲まれてドキドキしました」 ――『愛のえじき』はホラーということですが、ホラー映画はよく見るんですか? 「そうですね。好きな映画のジャンルはホラーとかドキュメンタリーなんです。特にホラーは、日本とか韓国の黒髪の女優さんが出ている方が親しみやすくて怖いんですよ。洋画で金髪の女優さんがキャーキャー言ってても、別世界な感じがしちゃってあんまり怖くないんです。母がすごくホラー映画が大好きな人だったので、その影響で小さい時から見ています。もちろん映画館で見るのは怖いんですけど」 ――ホラー映画が情操教育だったんですね。 「逆に普通のアニメを全然見ずに育ってきたんです。だから私、ジブリアニメとか見ていないんですよ」 DSC2381.jpg ――そんな範田さんが主演する今作ですが、撮影期間はどれくらいだったんですか? 「1週間くらいですね。ちょうど一年前くらいに撮影したんですが、廃工場みたいな場所での撮影だったのですごく怖かったんですよ」 ――撮影でのいちばん思い出深い出来事は何でしょうか? 「今作ではバレー部顧問の女教師を演じています。AVでも『いけない!紗々先生』などで女教師ものはやってるんですけど、生徒役のAV男優さんはだいたい40歳くらいの方々なんです。今回は19歳とか20歳とかリアルな学生に近い年齢だったので、ちょっとドキドキしました。私は女子校、女子大出身で若い男の子に囲まれるっていう経験がなかったので、『あ、映画なんだ』って思いました(笑)」 ――今作は「勝ったらおっぱいを見せる」というストーリーですが、これは......あの作品ですよね? 本家を見て参考にされましたか? 「ちょっと監督には聞けなかったんですが......あれですよね? 予告編は見たんですけど、本編は見てないです。だって、別モノですから!」 ――確かに(笑)。ところで、映画の撮影とAVの撮影はやっぱり違うものなのでしょうか? 「スタッフさんがいっぱいいるのはAVと変わらないんですが、映画だとリハがあるのが違いますね。AVは一発本番なので」 ――慣れない環境だったかと思いますが、緊張しましたか? 「いや、もう楽しくて仕方なかったんです。監督さんがすごく優しい方で、何をやっても『素晴らしい!』と褒めてくれたんです。その言葉で頑張れました」 ――そこまで褒められると逆に不安になりませんか? 「なりました(笑)。歩くだけでも『素晴らしい!』って褒めてくれるんですよ。監督さんとの相性もよくて、大好きなホラー映画で、しかも初主演ということで、すごく楽しい撮影になりました」 ■「本当は前バリはしたくない」 ――範田さんにとって、AVと映画ではどちらが楽しいんでしょうか? 「うーん、AVの方が気持ちいいですね(笑)。今回もセクシーシーンはあるんですが、残念ながら前バリがあるので......。股間が肌色になる方が、パイパンみたいで逆に恥ずかしいんですよ。剥がすのもすごく痛いので、本当は前バリなしのほうがいいですね。日活ポルノとか昔の映画では前バリをしない人もいたらしくて、『いいなー』って思うんですよね」 DSC2388.jpg ――人前でセックスするのは、もう抵抗ないんでしょうか? 「AVを4年間やって慣れたっていうか、撮影を楽しめるようになりましたね。だからカメラがあった方が安心してセックスができるんです。プライベートでは全然してないんで、カメラが回ってないと恥ずかしいんです......」 ――それってちょっと変態なんじゃ......。 「病気ですね(笑)」 ――今年の7月にAVを引退してから生活は変わりましたか? 「そうですね。よくファンの方から『どうやって欲求不満を解消するんですか?』って聞かれるんですが、元のオナニストに戻りました」 ――AVに復帰したいと思うことは? 「引退した当初はしばらくはありましたね。いつか熟女路線とかで戻って来られたらと思っています(笑)。スーパー帰りの人妻みたいなシチュエーションでやれたらいいなー」 ――今の範田さんの夢は何でしょうか? 「ずっと昔から将来台湾に住みたいと思ってるんです。日本だとモテないんですけど、台湾だとすごくモテるんですよ! すごくかわいがってもらえるんで、もう台湾が私を呼んでいるんじゃないかと思っちゃいます。総統の愛人とかにしてくれないですかね」 ――愛人ですか!? 「体張って頑張りますよ! 中学校の頃から『紗々は愛人タイプだ』って言われていたので、結婚よりは愛人の方が向いてるんだろうなと思っているんです」 ――最後に読者のみなさんにメッセージをお願いします! 「ホラーが大好きなので、初主演でやらせてもらってすごくうれしいです。ホラーが苦手な人もいると思いますが、紗々が体当たりで血飛沫を上げながら頑張ってます! ホラーといっても残酷なだけではなく、しっかりとメッセージ性が込められた作品なので、ぜひ劇場に見に来てほしいです!」 (取材・文=萩原雄太[かもめマシーン]/撮影=佐久間ナオヒト〕 aieji.jpg 『愛のえじき 女教師ハルカの告白』 校内でのレイプ事件をきっかけに、加害者の男子高校生3人が姿を消した。被害者である女性教師(範田紗々)は、その事件を隠しながら、自分の過去に向き合おうとする。人気AV女優としてSODの一世代を築いた範田紗々が、ゆうばり映画祭出身でハリウッドからも評価される筒井勝彦監督によって初主演を飾るホラー作品。  東京では12月1日〜5日まで原宿KINEATTIC(1日は舞台挨拶、2~5日はトークショーあり)、大阪では12月18日〜30日までシネ・ヌーヴォと来年1月8日〜14日までプラネットプラスワンで公開。 監督・脚本/筒井勝彦 出演/範田紗々、野崎純平、未童、尾田量生、佐藤英征他 制作/オルスタックピクチャーズ 配給/『愛のえじき』配給委員会 HP <http://oveneyes.com/haruka/int.html>
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格差社会の行く末か!? 近未来ディストピアSF『デイブレイカー』

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11月、新宿バルト9他全国ロードショー
(C)2008 Lionsgate and Paradise Pty Limited, Film Finance Corporation Australia Limited and Pacific Film and Television Commission Pty Limited.
 かつて古典ホラーの定番だったバンパイア映画やゾンビ映画などのクロスジャンル化が進んで久しいが、中でもバンパイアものは、青春ロマンス仕立ての『トワイライト』シリーズ(最新作『エクリプス トワイライト・サーガ』が公開中)を代表格に、アノ手コノ手のアレンジがますます盛んだ。そんな流れに乗って登場する新作『デイブレイカー』(ブロードメディア・スタジオ配給、11月27日公開)は、近未来ディストピアSFとバンパイアものというユニークな組み合わせの意欲作だ。  物語の舞台は2019年。世界中を襲った疫病により、人類の大多数がバンパイアへと変貌していた。知性を備えた不老不死のバンパイアたちが、絶滅危惧種の人類を支配する社会。全人口の5%まで減少した人間の大半は血液銀行の地下施設で拘束されたまま血液を採取され、残りは身を潜めて生きのびている。血液の不足で暴動が起き、飢えのあまり同じバンパイアの血を吸って変異したモンスターによる殺傷事件も発生。代用血液の開発を急ぐバンパイアの研究者エドは、生き残りの人間たちと出会い、バンパイアと人類を共に救済し得る"解決策"があることを知らされ......。  監督・脚本・視覚効果を務めたピーター&マイケル・スピエリッグは、長編デビュー作の低予算ゾンビSF映画『アンデッド』(03)が各国の映画祭で話題になった双子の兄弟。出演はイーサン・ホーク、ウィレム・デフォー、サム・ニールほか。  人の生き血を飲み、日光を浴びると死ぬといったバンパイアの属性が、血液入りの飲み物を売るコーヒーショップや、日光を遮断して運転可能な自動車といった未来社会の描写に活きている。また、広大な血液銀行施設の光景をはじめ、青と黒を基調とするクールな映像により、暗鬱なディストピアが説得力をもって描き出される。  見方によっては、格差社会が究極的に進んだ時代に起きるであろう、搾取する支配層に対する搾取される側の生き残りと闘い、と捉えることもできる。皆が人間性を取り戻し、陽光の下で分け隔てなく暮らせる未来を拓くにはどうしたらいい? そんな問題提起も含む『デイブレイカー』は、ジャンル映画のファン限定でない、幅広い層に訴える魅力に満ちている。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 「デイブレイカー」作品情報 <http://eiga.com/movie/55184/>
アンデッド 怖え~!! amazon_associate_logo.jpg
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"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』

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鴨志田穣氏の体験エッセイを浅野忠信、永作博美のキャストで
映画化した『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』。
(c)2010シグロ/バップ/ビターズ・エンド
 監督の力量と俳優陣のアンサンブルが、原作の魅力をグイグイと引き出した秀作だ。アルコール依存症で精神病院の閉鎖病棟に入院した鴨志田穣氏による同名エッセイを映画化した『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』がたまらなく面白くて哀しい。説明するまでもなく、鴨志田氏は漫画家・西原理恵子氏のコミックに元夫"鴨ちゃん"として度々登場してきたフリージャーナリスト。戦場カメラマンとしてタイ、カンボジア、ミャンマー、ボスニア、ザイールなどの危険地帯を巡り、カメラを回してきた。1995年にバンコクで出会った西原氏と翌年入籍して一男一女をもうけるが、アルコールへの依存が増していき、西原氏とは2003年に離婚。その後、入退院を繰り返すも、アルコール依存症を克服し、06年に西原氏と復縁。腎臓がんを患い、07年に西原氏や子どもたちに看取られて、42歳の生涯を閉じている。  断酒中に寿司屋で出された奈良漬けをひと切れ食べたばっかりに再飲酒を始めてしまい病院に運び込まれた経緯や、アルコール病棟で出会ったユニークすぎる患者仲間や医者たちと過ごした日々を、鴨志田氏は明るく平易で澄み切った文章で描いている。そのペンの走り方には、担当医から「あの世ゆきにリーチがかかってるよ」と宣告された病人とは思えない生命力が満ちている。病院の食堂で毎週火曜日に出されるカレーライスに異常なまでに執着を見せ、若くてかわいい看護師の名前はすかさずフルネームでチェック。その一方、育ち盛りで目に入れても痛くない2人の子どもたちともう一度生活するために懸命にリハビリに取り組む。不幸と幸福が絶妙にブレンドされた、独特の深みのあるエッセイなのだ。中島らもの小説『今夜、すべてのバーで』(講談社)と肩を並べる名著と言っていい。
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父親が酒乱だったこと、戦地でロシアンルー
レットに興じる兵士を目撃したことなど複合的
要因から、カメラマン塚原のアルコール依存症が
悪化していく。
 人生の哀歓をブルージーに煮詰めた原作エッセイを、映画化したのはベテランの東陽一監督。被差別部落を舞台にした『橋のない川』(96)、石原さとみ&浅野忠信出演作『わたしのグランパ』(03)など硬軟織り交ぜた作品を撮り続けてきた東監督が、本作でも76歳と思えない瑞々しい演出を見せている。アルコール依存症患者が離脱症状として見る幻覚というと、小人の大名行列が部屋の隅から現われ......というイメージが一般的に知られているが、東監督はそういった既成のビジュアルイメージやCG表現などに頼らず、依存症患者が現実と妄想の境界線を見失っていく様を実に巧みに描いてみせる。主人公の塚原を演じた浅野忠信の内側から、黒い浅野忠信が出てきて暴言・暴力を振るうシーンは秀逸だ。大手映画会社に所属することなく、インディペンデントシーンを渡り歩いてきた東監督は、今年8月には2本合わせてわずか5日間で撮り終えたエロティック・バリアフリー・ムービー(略称:エロバリ)『ナース夏子の熱い夏』『私の調教日記』が公開されたばかり。こちらは障害者と健常者が一緒にピンク映画を楽しもうという意欲作だ。東監督は年齢を重ねても枯れることなく、映像の中で"生"を鮮やかに描いてみせる。
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退院を控えた塚原は患者仲間の前で、依存症に
なった経緯から克服するまでの体験発表すること
に。精神病院内の人間模様がリアルだ。
 キャスティングも巧妙だ。『地雷を踏んだらサヨウナラ』(99)で戦場カメラマン・一ノ瀬泰造の生涯を演じた浅野忠信だけに、本作では戦場での回想シーンを挿入せずとも戦場カメラマンとしての既視感が漂う。西原理恵子氏がモデルとなっている元妻の園田由紀役の永作博美は『その日のまえに』(08)で家族に看取られる主婦を演じたが、今回は逆に看取る側となっている。一度は離縁した夫が家族のためにアルコール病棟で弱い自分自身と闘う姿を、近すぎず遠すぎない距離を保って見守り続ける。クライマックス、依存症を克服して退院を果たした塚原が子どもたちと手をつないで歩く様子を、やはり少し離れた距離から彼女は見つめる。左目で目の前にある幸福を噛み締め、右目にはやがて訪れるだろう別れの日を予感した哀しみの色が浮かんでいる。永作博美が見せるガチャ目チックなラストの表情が映画の余韻をより深いものにしている。  父親の帰還を待っている家族のためにリハビリに努める依存症患者の主観で描いたのが『酔いがさめたら、うちへ帰ろう。』なら、放蕩を繰り返す父親を家で待つ妻と子どもの立場から捉えたのが西原理恵子氏のベストセラーコミック『毎日かあさん』(毎日新聞社)だ。コミック版の『毎日かあさん』は"とうさん"との別居、闘病、復縁、そして永遠の別れ、さらには残された家族が立ち直っていく様子が綴られている。一方、テレビ東京系でオンエア中のアニメ版『毎日かあさん』では、気のいい家族想いの"とうさん"が今も元気に酔っぱらいながら登場する。現実世界では退院後はわずかな時間しか家族と過ごせなかった鴨志田氏だが、アニメーションの世界では今も子どもたちと楽しそうに暮らしている。アニメ版『毎日かあさん』は、『サザエさん』(フジテレビ系)のように時間が止まったユートピアと化している。それはまるで、西原家の最も幸福な記憶の1ページが永遠に増殖しているかのようだ。 (文=長野辰次) yoisame04.jpg 『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 原作/鴨志田穣 監督・脚本/東陽一 主題歌/忌野清志郎 出演/浅野忠信、永作博美、市川実日子、利重剛、藤岡洋介、森くれあ、高田聖子、柊瑠美、甲本雅裕、渡辺真紀子、堀部圭亮、西尾まり、大久保鷹、滝藤賢一、志賀廣太郎、北見敏之、螢雪次朗、光石研、香山美子 配給/ビターズ・エンド、シグロ  12月4日(土)よりシネスイッチ銀座、テアトル新宿ほか全国公開 <http://www.yoisame.jp>
酔いがさめたら、うちに帰ろう。 2010年はゲゲゲとサイバラブームだったようです。 amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

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左から桃生亜希子、塚本晋也監督、エリック・ボシック。
 世界的な映画監督の初期作品でモノクロームの低予算映画は──と考えて東西を見渡したとき、思い浮かぶひとつはリュック・ベッソンの『最後の戦い』。もうひとつは塚本晋也の『鉄男』だろう。『最後の戦い』はベッソンの長編デビュー作にして1983年アヴォリアッツ国際ファンタスティック映画祭の審査員特別賞・批評家賞受賞作品。『鉄男』は1989年のローマ国際ファンタスティック映画祭グランプリ作品。それぞれ、商業映画監督としてのジャンピングボードとなっている。ジャン・レノ、田口トモロヲが「発見」された映画としても興味深い。  1992年の『鉄男II BODY HAMMER』以来となるシリーズ第3作『鉄男 THE BULLET MAN』が今年公開され、このたびBlu-ray/DVD化、同時に『鉄男』三部作のサウンドトラック音源を収録した『鉄男 ~コンプリート・サウンドトラック~』(SMJ)も発売された。  11月3日に立川シネマシティで行われた「『鉄男 THE BULLET MAN』DVD&Blu-ray発売記念"世界初!鉄男全作一挙上映"」は、映画を見ていながら、最強のノイズミュージックライヴを体験しているかのような不思議なイベントだった。  サウンド・スペース・コンポーザーの井出祐昭が音響設計した立川シネマシティは、剥き出しのスピーカーが暴力的な印象を与える「kicリアルサウンド」を採用。その音質は映画館という域を越えているが、ヴィジュアルそのものが前衛的な異空間ともいえ、『鉄男』に非常にマッチしている。  上映前と各作品のインターバルには、塚本晋也監督、「『鉄男 THE BULLET MAN』出演のエリック・ボシックと桃生亜希子、音楽の石川忠、漫画家の深谷陽らが登壇してのトークショーが行われ、ファンを楽しませた。  『鉄男』をはじめとする塚本作品に石川忠の音楽は欠かせない。ノイズ・インダストリアルバンド「ツァイトリッヒ・ベルゲルター」のメタルパーカッショニストだった石川(現DER EISENROST)に、塚本はこう注文したという。 「カシオサンプルトーンで猫の声でドレミファソラシドをやっているのが面白くて、だったら鉄の音で音階を作ろう、と思った。石川さんに依頼したときは、『とにかく鉄で。なるべく鉄だけで、普通の楽器なしで作れたらうれしい』と(笑)。」  石川はツァイトリッヒ・ベルゲルターで自作のメタルを叩いていたが、それでも普通の楽器を使わないという縛りには、かなり戸惑ったという。  その結果があの「爆音」「轟音」である。  1本目の『鉄男』上映開始直後には塚本が自ら実際の仕上がりをチェック、微調整を施していた。攻撃的なサウンドがさらに活性化。会場を埋め尽くしたオーディエンスを圧倒した。  この日は関連グッズがバカ売れ。塚本もファンサービスの時間を増やし、できるかぎりサインをし続けた。  その合間を縫って、塚本、エリック、桃生が控え室で取材に応じてくれた。 *** ――シンプルに訊きたいのですが、これほどまでに長く愛され、影響を与え続ける『鉄男』とは、みなさんにとってなんなのでしょうか。 エリック それシンプルな質問じゃないでしょ(苦笑)。 塚本 一番楽しめる遊び場所、です。一番自由に、かしこまりすぎず、羽がピッと伸びるような。また『鉄男』を撮るとは(今の時点では)言わないですけど、そのことを考えると、フフッと楽しい。 ──いますぐに続編と言われると、ちょっと困りますか? 塚本 前もそう言って、17年もかかっちゃったわけだから(苦笑)。『鉄1』が公開されたのはサイバーパンクが出てきたときですよね。その頃、インダストリアル音楽ができたじゃない? 暗い、ラフなサイファイ。人間、肉体、マシーン、鉄、大きいビルや街と人間のアイデンティティをどう合わせるかというテーマを、それぞれのアーティストが考えていた。でも『鉄男II』は作り方がちょっと変わった。鉄男のデザインが変わって、ストーリーもナラティヴになった。シュールだけじゃなくて、ストーリーが入った。(いろいろな作品を経ての『鉄男 THE BULLET MAN』で)現場でたまに言ってたんですよね、これは大人の鉄男だと。以前よりもセンシティヴに細かく静かに作られている。内包されている哲学も変わったと思いますよ。 桃生 塚本監督という人間に私はまず感動しました。自分の作りたいものを作るために時間をかけ、本当に大事に作っていて。監督が作るものを愛している人たちが集まって、お金とかそういうことだけじゃないところでものを作っていく姿勢とか、いろいろなことを教えてもらいました。スタッフの方とみんなで一緒に作品を作り上げていく時間が私は好きなんだな、と気付かされました。この先もいろいろな作品に出会っていくと思いますが、本当に大事にしたい作品に会えた、大きな出会いだなと、すごく感謝しています。 ***  熱心な塚本ファンであるエリックをはじめ、「お金だから」とか「仕事だから」という以上のモチベーションが制作者を衝き動かす類の作品であることを、桃生は明確に語っている。20年以上も『鉄男』が続く理由の一端が垣間見える。  20周年記念として、月刊コミックビーム(エンターブレイン)でコミック版の連載が始まるという。熱狂の渦が新たな支持者を獲得し、巻き込んで、さらなる運動へとつながりそうな気配だ。 (取材・文・写真=後藤勝)
鉄男 THE BULLET MAN 体感せよ! amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 デビュー作『鉄男』の衝撃から20年! 塚本晋也監督の変わらない製作スタイル 黒き鋼鉄と化した男の爆音復讐譚『鉄男 THE BULLET MAN』 「走れ、考えろ、そして行動に移せ!」SABU監督の熱気溢れる『蟹工船』

朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走

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布枝(吹石一恵)としげる(宮藤官九郎)はお互いのことを何も知らないまま、見合いから5日後に結婚する。売れっ子になる前の水木しげるは痩せていたことから、細身のクドカンが配役された。(c)2010水木プロダクション/『ゲゲゲの女房』製作委員会
 松下奈緒&向井理が主演した朝ドラ版『ゲゲゲの女房』(NHK)のような爽やかな感動のリフレインを求めて、吹石一恵&宮藤官九郎主演の映画版『ゲゲゲの女房』を見ると、ずぶずぶずぶりとドロ沼に足を踏み入れたような感覚を覚えるに違いない。朝ドラ版で描かれた片腕の漫画家のビンボー生活は、『ゲゲゲの鬼太郎』がテレビアニメ化され大ヒット、国民的人気漫画家として成功するという幸福なゴールが予め見えているドラマだから朝から楽しむことができた。ノスタルジーとしての甘美なビンボーだった。それに対して映画版の漫画家夫婦は、自分たちが将来的には報われることを知らず、ビンボーに耐え、ビンボーと格闘し、そしてビンボーを友達とし、ビンボーのままエンディングを迎える。映画版の主演俳優コンビが朝ドラ版よりも細かい演技が達者なだけに、よりリアルなビンボー生活が観客の前に横たわる。  1961年、布枝(吹石一恵)と貸本漫画家のしげる(宮藤官九郎)はお見合いで結婚した。東京の郊外にあるしげるの自宅兼アトリエで暮らし始めるまで、ろくに会話も交わさなかった。恋愛感情はとくにない。女の幸せは結婚して、嫁いでいくことだと当時は一般的に思われていたから、布枝は従っただけだ。戦争で左腕を失ったしげるには軍人恩給が支給されているはずだったが、その恩給はしげるの実家が全額受け取っていた。結婚前に聞かされた話と違って、夫婦の生活は汲々としている。新妻らしくご飯を用意しようにもお米がなく、道に生えている野草を摘んできたり、黒ずんで店で売れなくなったバナナを安く分けてもらい腹を満たす日々が続く。貸本漫画は斜陽産業で、しげるが根を詰めて描いた漫画を出版社に届けても「もっと売れる漫画をくれよ」と約束の原稿料の半分しか払ってもらえない。新宿中村屋のチキンカリーは贅沢すぎて手が届かない。これが世間でいう"女の幸せ"なのだろうか、布枝は不思議に思う。
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布枝は主婦兼アシスタントとして夫・しげるの仕事
を支えることに。2人3脚ならぬ、2人3本の腕
で漫画を仕上げていく。
 翌日に締め切りが迫ったしげるの漫画の手伝いを、布枝は頼まれる。漫画なんて一度も描いたことはないが、アシスタントも雇えない2人きりの暮らしだから手伝わざるを得ない。寒い夜、しげるの背中を見ながら、布枝はベタ塗りや背景を慣れない手つきで懸命に手伝う。現実の生活が苦しければ苦しいほど、二次元の世界のキャラクターたちは逆に生き生きとしてくる。漫画のことは全然知らない布枝でも、しげるの描く漫画は生きていることがハッキリと分かった。しげるの漫画を見ていると、まるで鏡の世界を覗き込んだような気分になる。異形の生き物である妖怪たちは、お金や名声とは無縁の着の身着のままの生活をしており、どこか人間臭く、ユーモラスでもある。しげると布枝の合作として命を吹き込まれた鬼太郎は、夜更けに漫画のコマの中から飛び出し、ダンスを踊り始める。恋愛感情のないまま結婚したしげると布枝だったが、少しずつ2人の心の距離が縮まっていく。  "漫画の神様"手塚治虫が明るい未来社会を予測したSF漫画でメジャー路線を走り続けたのに対して、妖怪や戦争を題材にした水木しげるは長らく貸本漫画をベースにアンダーグランド路線を歩み続けた。手塚治虫と水木しげるの関係は漫画界の"光と影"によく例えられる。でも"光と影"といった表現は傍観者たちが後から勝手に付けたもので、水木しげる本人は日々食べるのに懸命なだけ。ただ、食べるため、生きていくためにガムシャラに漫画を描き続けた。そしてアンダーグランド路線をひたすら歩み続けることで、気がつけば追随する者がいないその道の第一人者となっていた。手塚治虫が『W3』事件で週刊マガジンから週刊サンデーに移ったのをきっかけに、水木しげるの代表作『墓場鬼太郎』は『墓場の鬼太郎』、さらに『ゲゲゲの鬼太郎』と改題され、週刊マガジンで連載開始。ついにメジャーシーンで自分の椅子を得ることになる。手塚治虫が亡くなった現在ではメジャーシーンとアンダーグランドを線引きする境界線もなくなってしまい、88歳の水木しげるは漫画界の大巨人として崇められている。
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アニメーションパートでは「霧の中のジョニー」
の1シーンを再現。洗練されていない貸本漫画時代
の鬼太郎が動き出す。(c)水木プロ
 映画版『ゲゲゲの女房』を撮ったのは、鈴木卓爾監督。この人も"光と影"に縁のある人物だ。矢口史靖監督の傑作ブラックコメディ『裸足のピクニック』(93)と『ひみつの花園』(97)に共同脚本として参加。矢口監督のデビュー時代を支えた盟友として知られている。矢口監督はその後、ヒット作『ウォーターボーイズ』(01)、『スウィングガールズ』(04)を経て、オールスターキャストによる『ハッピーフライト』(08)へと明るくポップなエンタテイメント路線に羽ばたいていく。一方の鈴木監督はオムニバスホラー映画『コワイ女』(06)の一編『鋼』などの短編を監督する他、『トキワ荘の青春』(96)では俳優として若き日の藤子不二雄(A)を演じ、また『中学生日記』(NHK)の脚本を担当するなどして映像業界をサバイバルしてきた。今、振り返ると鈴木監督が脚本参加していた『裸足のピクニック』『ひみつの花園』のキャラクターたちには最近の矢口監督作品にはない陰影が付いていたように感じる。矢口監督とは対称的に地道にキャリアを積んできた鈴木監督が念願の長編デビューを飾ったのが、星野真里主演の『私は猫ストーカー』(09)。路地裏にたむろする野良猫たちを追いかけるイラストレーター志望の女の子のお話だ。好むと好まざると、人生の裏道を描くことでリアリティーを発揮する監督なのである。  最後に水木しげるが描いてきた"妖怪"とは何ものなのか考えてみたい。水木しげるにとって戦地として赴いたパプアニューギニアは手つかずの大自然に溢れ、貨幣の存在を知らない純朴な人々がのどかに暮らす"南洋の楽園"だった。戦争がなければ、水木しげるはパプアニューギニアに行くこともなかったが、無麻酔で片腕を切断されることも戦友たちが総員玉砕するという大惨事を体験することもなかった。乱暴な言い方をすれば、天国の陽気さと地獄の恐怖が水木しげるの記憶の中で渾然一体化したものが水木ワールドの妖怪たちなのだろう。水木しげるが生み出していった妖怪たちは、いわば生き物が生きていく上での"矛盾"の結晶体だ。水木しげるが妖怪を描くということは現実社会の矛盾を肯定するということであり、矛盾を肯定するということは現実社会で生きていくということでもある。布枝夫人と同様に水木しげるファンは、漫画界の大巨人のこの不思議な生命力に惹き付けられているのではないだろうか。 (文=長野辰次) gegege04.jpg 『ゲゲゲの女房』 原作/武良布枝 監督/鈴木卓爾 アニメーション/大山慶 出演/吹石一恵、宮藤官九郎、坂井真紀、村上淳、宮崎将、唯野未歩子、夏原遼、平岩紙、柄本佑、鈴木慶一、寺十吾、徳井優、南果歩 配給/ファントム・フィルム 11月20日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開 <http://www.gegege-eiga.com>
墓場鬼太郎 第一集 「人間世界で生きていくのも、楽じゃねえな」 amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走

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布枝(吹石一恵)としげる(宮藤官九郎)はお互いのことを何も知らないまま、見合いから5日後に結婚する。売れっ子になる前の水木しげるは痩せていたことから、細身のクドカンが配役された。(c)2010水木プロダクション/『ゲゲゲの女房』製作委員会
 松下奈緒&向井理が主演した朝ドラ版『ゲゲゲの女房』(NHK)のような爽やかな感動のリフレインを求めて、吹石一恵&宮藤官九郎主演の映画版『ゲゲゲの女房』を見ると、ずぶずぶずぶりとドロ沼に足を踏み入れたような感覚を覚えるに違いない。朝ドラ版で描かれた片腕の漫画家のビンボー生活は、『ゲゲゲの鬼太郎』がテレビアニメ化され大ヒット、国民的人気漫画家として成功するという幸福なゴールが予め見えているドラマだから朝から楽しむことができた。ノスタルジーとしての甘美なビンボーだった。それに対して映画版の漫画家夫婦は、自分たちが将来的には報われることを知らず、ビンボーに耐え、ビンボーと格闘し、そしてビンボーを友達とし、ビンボーのままエンディングを迎える。映画版の主演俳優コンビが朝ドラ版よりも細かい演技が達者なだけに、よりリアルなビンボー生活が観客の前に横たわる。  1961年、布枝(吹石一恵)と貸本漫画家のしげる(宮藤官九郎)はお見合いで結婚した。東京の郊外にあるしげるの自宅兼アトリエで暮らし始めるまで、ろくに会話も交わさなかった。恋愛感情はとくにない。女の幸せは結婚して、嫁いでいくことだと当時は一般的に思われていたから、布枝は従っただけだ。戦争で左腕を失ったしげるには軍人恩給が支給されているはずだったが、その恩給はしげるの実家が全額受け取っていた。結婚前に聞かされた話と違って、夫婦の生活は汲々としている。新妻らしくご飯を用意しようにもお米がなく、道に生えている野草を摘んできたり、黒ずんで店で売れなくなったバナナを安く分けてもらい腹を満たす日々が続く。貸本漫画は斜陽産業で、しげるが根を詰めて描いた漫画を出版社に届けても「もっと売れる漫画をくれよ」と約束の原稿料の半分しか払ってもらえない。新宿中村屋のチキンカリーは贅沢すぎて手が届かない。これが世間でいう"女の幸せ"なのだろうか、布枝は不思議に思う。
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布枝は主婦兼アシスタントとして夫・しげるの仕事
を支えることに。2人3脚ならぬ、2人3本の腕
で漫画を仕上げていく。
 翌日に締め切りが迫ったしげるの漫画の手伝いを、布枝は頼まれる。漫画なんて一度も描いたことはないが、アシスタントも雇えない2人きりの暮らしだから手伝わざるを得ない。寒い夜、しげるの背中を見ながら、布枝はベタ塗りや背景を慣れない手つきで懸命に手伝う。現実の生活が苦しければ苦しいほど、二次元の世界のキャラクターたちは逆に生き生きとしてくる。漫画のことは全然知らない布枝でも、しげるの描く漫画は生きていることがハッキリと分かった。しげるの漫画を見ていると、まるで鏡の世界を覗き込んだような気分になる。異形の生き物である妖怪たちは、お金や名声とは無縁の着の身着のままの生活をしており、どこか人間臭く、ユーモラスでもある。しげると布枝の合作として命を吹き込まれた鬼太郎は、夜更けに漫画のコマの中から飛び出し、ダンスを踊り始める。恋愛感情のないまま結婚したしげると布枝だったが、少しずつ2人の心の距離が縮まっていく。  "漫画の神様"手塚治虫が明るい未来社会を予測したSF漫画でメジャー路線を走り続けたのに対して、妖怪や戦争を題材にした水木しげるは長らく貸本漫画をベースにアンダーグランド路線を歩み続けた。手塚治虫と水木しげるの関係は漫画界の"光と影"によく例えられる。でも"光と影"といった表現は傍観者たちが後から勝手に付けたもので、水木しげる本人は日々食べるのに懸命なだけ。ただ、食べるため、生きていくためにガムシャラに漫画を描き続けた。そしてアンダーグランド路線をひたすら歩み続けることで、気がつけば追随する者がいないその道の第一人者となっていた。手塚治虫が『W3』事件で週刊マガジンから週刊サンデーに移ったのをきっかけに、水木しげるの代表作『墓場鬼太郎』は『墓場の鬼太郎』、さらに『ゲゲゲの鬼太郎』と改題され、週刊マガジンで連載開始。ついにメジャーシーンで自分の椅子を得ることになる。手塚治虫が亡くなった現在ではメジャーシーンとアンダーグランドを線引きする境界線もなくなってしまい、88歳の水木しげるは漫画界の大巨人として崇められている。
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アニメーションパートでは「霧の中のジョニー」
の1シーンを再現。洗練されていない貸本漫画時代
の鬼太郎が動き出す。(c)水木プロ
 映画版『ゲゲゲの女房』を撮ったのは、鈴木卓爾監督。この人も"光と影"に縁のある人物だ。矢口史靖監督の傑作ブラックコメディ『裸足のピクニック』(93)と『ひみつの花園』(97)に共同脚本として参加。矢口監督のデビュー時代を支えた盟友として知られている。矢口監督はその後、ヒット作『ウォーターボーイズ』(01)、『スウィングガールズ』(04)を経て、オールスターキャストによる『ハッピーフライト』(08)へと明るくポップなエンタテイメント路線に羽ばたいていく。一方の鈴木監督はオムニバスホラー映画『コワイ女』(06)の一編『鋼』などの短編を監督する他、『トキワ荘の青春』(96)では俳優として若き日の藤子不二雄(A)を演じ、また『中学生日記』(NHK)の脚本を担当するなどして映像業界をサバイバルしてきた。今、振り返ると鈴木監督が脚本参加していた『裸足のピクニック』『ひみつの花園』のキャラクターたちには最近の矢口監督作品にはない陰影が付いていたように感じる。矢口監督とは対称的に地道にキャリアを積んできた鈴木監督が念願の長編デビューを飾ったのが、星野真里主演の『私は猫ストーカー』(09)。路地裏にたむろする野良猫たちを追いかけるイラストレーター志望の女の子のお話だ。好むと好まざると、人生の裏道を描くことでリアリティーを発揮する監督なのである。  最後に水木しげるが描いてきた"妖怪"とは何ものなのか考えてみたい。水木しげるにとって戦地として赴いたパプアニューギニアは手つかずの大自然に溢れ、貨幣の存在を知らない純朴な人々がのどかに暮らす"南洋の楽園"だった。戦争がなければ、水木しげるはパプアニューギニアに行くこともなかったが、無麻酔で片腕を切断されることも戦友たちが総員玉砕するという大惨事を体験することもなかった。乱暴な言い方をすれば、天国の陽気さと地獄の恐怖が水木しげるの記憶の中で渾然一体化したものが水木ワールドの妖怪たちなのだろう。水木しげるが生み出していった妖怪たちは、いわば生き物が生きていく上での"矛盾"の結晶体だ。水木しげるが妖怪を描くということは現実社会の矛盾を肯定するということであり、矛盾を肯定するということは現実社会で生きていくということでもある。布枝夫人と同様に水木しげるファンは、漫画界の大巨人のこの不思議な生命力に惹き付けられているのではないだろうか。 (文=長野辰次) gegege04.jpg 『ゲゲゲの女房』 原作/武良布枝 監督/鈴木卓爾 アニメーション/大山慶 出演/吹石一恵、宮藤官九郎、坂井真紀、村上淳、宮崎将、唯野未歩子、夏原遼、平岩紙、柄本佑、鈴木慶一、寺十吾、徳井優、南果歩 配給/ファントム・フィルム 11月20日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開 <http://www.gegege-eiga.com>
墓場鬼太郎 第一集 「人間世界で生きていくのも、楽じゃねえな」 amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

成長著しい"若手実力派"谷村美月『海炭市叙景』ほか出演作続々と公開!

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映画『海炭市叙景』で兄想いの女の子・帆波を演じた谷村美月ちゃん。「帆波は自分の感情をうまく外に出せない女の子。映画で描かれた物語の後、彼女がどうやって生きていくのか考えると、ちょっと切ないですね。見終わった後、深い余韻が残る作品です」
 日刊サイゾーいち押しの若手女優、谷村美月。14歳のときに映画『カナリア』(05)で注目を集め、その後も出演作ごとにひたむきな演技を見せている目が離せない存在なのだ。昨年高校を卒業し、女優業に専念して1年半。この秋だけでも、クリクリ頭を披露した『おにいちゃんのハナビ』、地方出身の新米ADを等身大で演じたコメディ『明日やること ゴミ出し 愛想笑い 恋愛。』、そして東京国際映画祭のコンペ部門に選ばれた『海炭市叙景』と主演作が3本続けて公開。さらにアクション時代劇『十三人の刺客』、ハードボイルドサスペンス『行きずりの街』でも短い出番ながら作品のアクセントになるキャラクターを演じている。加速する20歳、谷村美月の素顔に迫った。 ──この秋は『おにいちゃんのハナビ』『明日やること ゴミ出し 愛想笑い 恋愛。』『海炭市叙景』と主演作が3作続けて公開。スゴいじゃないですか。 谷村美月(以下、谷村) はい、でも撮影したのは昨年とかだったりするので、自分では「あ、この時期に続けて公開されるんだぁ」って感じなんです。確かに昨年は『海炭市叙景』の函館ロケを含めて忙しかった気はしますが、大阪にいたときのほうが高校に通いながらだったので、自分では以前のほうが頑張っていたように思います(笑)。今はお芝居に集中して取り組むことができるので、高校生の頃よりかは随分と楽ですね。 ──三池崇史監督の『十三人の刺客』、阪本順治監督の『行きずりの街』でも味のあるキャラクターを好演。
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幼い頃に両親を失った颯太(竹原ピストル)
と帆波(谷村美月)の兄妹は、小さな街
で寄り添うように生きてきた。大晦日
の夜、2人は初日の出を見にいくことに。
(c)2010佐藤泰志/『海炭市叙景』製作委員会
谷村 三池監督の『神様のパズル』(08)にも出させていただきましたが、三池監督の作品に出演するのは楽しみ。出番が少なくても、「一体、どんな作品に完成するんだろう」とワクワクしちゃうんです。『行きずりの街』は、私はまだ見てないんです。どうでしたか? ──美月ちゃんがスーパーマーケットで値引き商品を漁ったり、お釣りに手を延ばすシーンは爆笑ものでした。 谷村 よかったぁ。私の出演シーンは、スーパーマーケットの場面だけだったので、カットされていたらどうしようと不安だったんです。 ──以前は、『死にぞこないの青』『おろち』(08)など、人間じゃない変わった役が多かったけど、最近は『海炭市叙景』をはじめ生活感のある普通の女の子の役が増えてきましたね。 谷村 はい、10代の頃は変わった役に偏ってましたね(笑)。今年、20歳になったんですけど、生活感のある役が増えました。どうやって生活感、現実感を出すのか演じ甲斐がありますが、難しくもありますね。 ──大阪の実家を離れて、ひとり暮らし中。日常生活の過ごし方は俳優業に影響する? 谷村 う~ん、少なからず影響するんでしょうね。どうしても撮影に入ると慌ただしくなっちゃいますが、なるべく普段の生活もきちんとしていたいなと思っています。自分の生活を感じる時間を持つようにしたいですね。忙しくても、自分で料理を作って、ご飯を食べて「美味しいな」と感じられる時間を大切にしたいと思うんです。夏場は材料が痛みやすいので控えていましたが、料理はけっこうするんです。母親直伝の煮物は、なかなかの味ですよ(笑)。 ■新人の頃に戻った最新作『海炭市叙景』 ──『海炭市叙景』は5つのエピソードが交差する群像劇。美月ちゃんが出演したオープニングエピソード『まだ若い廃墟』は、仕事もお金もない若い兄妹の生活がリアルに描かれていますよね。
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兄の颯太は父も働いていた造船所に勤めていたが、
リストラされてしまう。造船所を守ろうと懸命に
働いていただけにショックは大きかった。
谷村 そうですね、私の出演したシーンの撮影期間は1週間くらいだったんですけれど、熊切和嘉監督をはじめとする一流のスタッフと、地元・函館の方たちがとても居心地の良い現場を用意してくださったので、私はあまり無理に考え込まずに新人に戻ったようなつもりで、ポンと現場にいさせていただきました(笑)。 ──カメラマンはセミドキュメンタリーの傑作『谷村美月17歳、京都着。』(07)を撮った近藤龍人氏。 谷村 やっぱり知っている方がスタッフの中にいると心強いですね。私にとって『京都着。』は特別に親しみのある作品なんです。カメラマンの近藤さんもそうですが、『京都着。』を演出された山下敦弘監督、脚本の向井康介さん、編集の松江哲明さんは、私にとってスタッフというよりも親戚のお兄ちゃんみたいな感じですね(笑)。 ──函館在住の方たちがキャスト、エキストラなどで出演していますが、『海炭市叙景』の作品の中にとても溶け込んでいるのが印象的。 谷村 本当に私もそう思います。函館のみなさんの支えがあっての作品ですね。いつもは「お芝居しなくちゃ」というプレッシャーが現場ではあるんですが、今回は何も背負うことなく過ごすことができた現場だったんです。『海炭市叙景』は自分が主演とは思っていません。なので、エンドロールで私の名前が最初に出たときは「え~!」って思うくらい驚いたんです。そのくらい責任感なく、リラックスして楽しく過ごしました(笑)。 ──朝、寝ているお兄ちゃん(竹原ピストル)をまたいだり、蹴っ飛ばして起こしたりするシーンはとても自然。 谷村 あのシーンが初日だったんですが、そんなことが気にならないくらい自然に蹴っ飛ばしてましたね(笑)。私のアドリブか、熊切監督の指示だったのかは忘れましたけれど、竹原さんとは初日から自然とそういう親しい距離感になれたんです。えっ、実家でも家族をまたいだり、足蹴りする? しませんよ~! 家族とは仲がいいんですが、そんなことしたらぶっ飛ばされます(笑)。そういう意味じゃ、実家にいるとき以上に寛いでいたのかも。普段できないことでも、撮影だと自然にできてしまうのが、不思議ですね。
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オール函館ロケ作品。路面電車を軸にして
『まだ若い廃墟』『ネコを抱いた婆さん』
『黒い森』『裂けた爪』『裸足』の5つの
ドラマが交差する
──函館山の展望台から日の出をみんなで拝むシーンは、お正月っぽい雰囲気がすごく出ています。 谷村 実際に山に登って、日の出が出てくるのをみんなで震えながら、でもワクワクしながら待っていたんです。1日目は曇っていてダメでしたが、2日目でうまく撮れました。普段の撮影現場だと時間の都合上、日の出だけ別撮りすることが多いんですが、『海炭市叙景』は実際の日の出を見ながら自然と湧いてくる感情をそのまま撮ろうという幸せな現場でした。お芝居ではない、ライブ的なものがいっぱい映っている映画だと思います。日の出が出てくるのを待つ間、お兄ちゃん役の竹原さんとも家族のこととか仕事のこととか、いろいろ話しましたね。 ──初日の出に願を掛けながら、失業中のお兄ちゃんの顔を何度も覗き込む表情が切ないですよ。熊切監督から表情やタイミングの指示があった? 谷村 ないです、ないです。演技に関しては、まったく自由だったんです。熊切監督はカメラの横でニコニコと私たちのことを見守っているだけでした。ああして、こうしてとは言わない方でしたね。多分、役者がお芝居しやすい現場を作ることをいちばんに考えている監督だと思います。これまでは現場の雰囲気を考えながら芝居することが多かったので、すごく新鮮で、お芝居にだけ集中すればいいという素晴らしい環境でした。私の経験では、映画デビュー作の『カナリア』以来だったかも。でも、これまで自分のことで一杯いっぱいだった私も、どういう現場なのかとか感じられる余裕が多少できてきたのかもしれませんね。 ■大阪時代の、ちょっと恥ずかしい過去? ──『海炭市叙景』は故郷から離れられない人々の群像劇ですが、美月ちゃんにとっての故郷とは? 谷村 大阪で生まれ育ったんですが、私にとっての故郷とは"何も変えられない場所"かなぁ。昔の思い出って、削り取ることができませんよね。幼稚園から小学校まで過ごした街に行く機会があり、昔遊んでいた公園にブランコや滑り台がそのまま残っていたんですが、すごく小さくなっていて不思議な気持ちになりました。自分は大きくなったけれど、思い出は変わらず、そのままなんだなぁって。 ──『スタンド・バイ・ミー』(86)の大人になった主人公みたいですね。故郷を離れて、センチメンタルになった? 谷村 自分でも、ひとり暮らしを始めることでホームシックになったりするのかなぁと楽しみにしていたんです(笑)。でも、舞台の全国公演などの機会に、家族にはよく会っているし、地方ロケに行くことも多いので、いまだに東京に移住したっていう実感がないんですよ。 ──女優・谷村美月の居場所はスクリーン、テレビの画面、舞台の上ということですね。
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谷村 ふふふ、そういう風に言われると、すっごくカッコいいですね(笑)。でも、実家を離れたことで、当たり前だと思っていたことがとても大事だったんだと思い知らされています。母の手料理の美味しさや父の存在など改めて実感しています。実家を出たことで、いろいろと見えてきたものがあるように思いますね。 ──NHK大阪制作の朝ドラ『まんてん』(02)で女優デビュー。当時から女優を目指していた? 谷村 はい、ずっと憧れていました。"谷村美月として、もっと世に出たい"という欲があったんです。あの頃の私はすごかったです(笑)。もっともっと上に行きたい、周囲を驚かせてやりたいという気持ちが強かったんです。先日、母と電話で話したんですが、「ずいぶん変わったね」と言われました。母は私のインタビュー記事を全部読んでくれていて、「考え方が変わってきたね」「昔のまま大きくなっていたら、すごくイヤな人になってたよ」と母に言われ、私もそうだなぁと思いました。『カナリア』みたいな役だったらいいんでしょうけれど、何にでもガツガツして、いつも前に出たがる女の子って、作品全体で見たらうっとおしいですよね。近頃は作品全体の中で自分に求められていることを精一杯やればいんだと考えるようになりました。昨年、今年と舞台を経験したことが大きいと思います。でも、雑誌や新聞の記事を読んで、母が娘の成長ぶりを知るっていうのも、この仕事ならではですよね。 ──お母さんは記事を全部ファイルしている!? じゃあ、日刊サイゾーも変な記事は書けませんね。 谷村 はい、お願いします(笑)。 ──大阪時代に「モーニング娘。」のオーディションを受けたって本当? 谷村 自分からは進んでは言いたくない過去なんですけれど、本当です(苦笑)。小学生のときに地元の劇団に入っていたんですが、仕事のことで悩んで、「もっと上の世界を目指したい」と考え、母に相談して「モーニング娘。」のオーディションを受けました。アイドルになるのが、自分のやりたいことをやるための近道だと考えたんです。あの頃の自分は、思い出すと少し照れくさいです。でも、今さら過去は変えられません。いいネタにしていただければと思っています(笑)。 (取材・文=長野辰次) 『海炭市叙景』 村上春樹と並ぶ現代文学の旗手と評されてきた佐藤泰志(1949~90)が故郷・函館市をモデルにして描いた連作短編小説を、『ノン子36歳(家事手伝い)』(08)の熊切和嘉監督が映画化。路面電車が走る地方都市・海炭市では造船所が縮小し、大幅なリストラが行なわれた。職を失った兄妹はなけなしの小銭を集めて、初日の出を見るために山に登ることに。冬の海炭市を舞台に、街で暮らす人々の物語が交差する。 原作/佐藤泰志 監督/熊切和嘉 音楽/ジム・オルーク 出演/谷村美月、竹原ピストル、加瀬亮、三浦誠己、山中崇、南果歩、小林薫、伊藤裕子、黒沼弘巳、大森立嗣、あがた森魚、東野智美、森谷文子、村上淳、西堀滋樹、中里あき 配給/スローラーナー 11月27日(土)より函館先行ロードショー 12月18日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開 <http://www.kaitanshi.com> ●たにむら・みつき 1990年大阪府出身。『カナリア』(05)のヒロイン役で映画デビューを飾り、第20回高崎映画祭新人賞を受賞。05~06年には海賊版撲滅キャンペーンのCFで黒い涙を流し、話題を呼んだ。主な出演映画に『ユビサキから世界を』『かぞくのひけつ』『酒井家のしあわせ』『時をかける少女』(06)、『檸檬のころ』『魍魎の匣』『茶々 天涯の貴妃』(07)、『リアル鬼ごっこ』『神様のパズル』『死にぞこないの青』『おろち』『コドモのコドモ』(08)、『蟹工船』『おと・な・り』『サマーウォーズ』(09)、『ボックス!』(10)ほか多数。主演ドラマに『生物彗星WoO』(06/NHK)、『キャットストリート』(08/NHK)、『太陽と海の教室』(08/CX)、『必殺仕事人2009』(09/ABC)、舞台出演作に『雨の日の森の中』(09)、『2番目、或いは3番目』(10)。現在は連続テレビドラマ『医龍3』(フジテレビ系)、『モリのアサガオ』(テレビ東京系)に出演中。11月には単発ドラマ『心の糸』(NHK総合)、『ストロベリーナイト』(フジテレビ系)がオンエア。11月20日(土)から出演作『行きずりの街』が公開される他、『HESOMORI-へそも り』も公開待機中。
谷村美月17歳、京都着。~恋が色づくその前に~ 初々しい。 amazon_associate_logo.jpg
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A・ロメロの幻の傑作が蘇る! 緊張と迫力のホラー映画『クレイジーズ』

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11月13日(土)より、シネマサンシャイン池袋、
TOHOシネマズ 六本木ヒルズ他全国ロードショー!
(C)2010 Overture Film, LLC ALL RIGHTS RESERVED.
 ジャンルも別々でオリジナルの知名度も異なるが、ともに注目度の高いリメイク作品が2本、偶然にも11月13日にそろって公開される。  最初に紹介する『ゴースト もういちど抱きしめたい』(パラマウント+松竹配給)は、死者の霊と残された恋人のラブストーリーという斬新な筋立てが大当たりし、世界中で大ヒットを記録した『ゴースト ニューヨークの幻』(90)を基に、舞台を日本に移して再構成したアジア版リメイク。オリジナル版ではビジネスマンの男性が命を落としてゴーストになり、残された陶芸家のヒロインを守るという設定だったが、本作では会社経営者の七海(松嶋菜々子)が不運の死を遂げ、陶芸を志す青年ジュノ(ソン・スンホン)が後に残されるという、男女の立場の逆転も重要な変更点だ。  七海はある日、日本に留学して陶芸を学んでいるジュノと出会い、恋に落ちる。だが、2人で幸せな生活を始めた矢先、事件に遭遇し命を落としてしまう。七海の魂は天国に行くことを拒否し、ゴーストとなってジュノのそばに留まることを選ぶ。ジュノの身にも危険が迫っていた。七海は果たして、ジュノを敵から守ることができるのか。そして、大切な想いをジュノに伝えることができるのか。  日韓を代表するスターの豪華な共演に加え、物語のカギを握る霊媒師役には樹木希林が配され、独特の存在感で好演。オリジナルの名場面もしっかり再現されている。旧作を観た人なら懐かしさを覚えながら、また未見の人なら新鮮な驚きとともに、不朽のラブストーリーに心から感動することだろう。  2本目の『クレイジーズ』(ショウゲート配給)は、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(68)でデビューし『ゾンビ』(78)で世界的大ヒットを放ったホラーの巨匠、ジョージ・A・ロメロ監督が73年に手がけた同名の"幻の傑作"がオリジナル。今回のリメイクでメガホンを取ったのは『サハラ/死の砂漠を脱出せよ』のブレック・アイズナーで、製作総指揮にはロメロ監督も名を連ねる。  アメリカ中西部に位置する人口1,000人余りの小さな田舎町。顔見知り同士のどかに暮らしていた住民たちが、ある日を境に突然発狂し、他の人々を襲い始める。異常な事件が相次ぐ中、保安官のデビッド(ティモシー・オリファント)らは、川に墜落した軍用機から流れ出た何かが、飲み水を通じて体内に入り、住民を凶暴化させていると推測。給水を遮断するも、暴徒化した"クレイジーズ"の殺戮と破壊は広がり続ける。その頃、軍隊が出動し町全体を封鎖。細菌兵器流出の証拠隠滅のため、クレイジーズだけでなく正常者も抹殺し町ごと焼却しようと目論む。デビッドと身重の妻ジュディ(ラダ・ミッチェル)は生き残りをかけ、町からの脱出を図るが......。  『バイオハザード』や『28日後...』といった感染サバイバル映画の原点とも言える傑作に、現代的な感覚が加味され、緊張と迫力に満ちた最新ホラーとして蘇った本作。ロメロ監督がかつて作品に込めた社会批評が、現代のリメイク作の中でどう再解釈されているかを読み解くのもまた一興だ。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 「ゴースト もういちど抱きしめたい」作品情報 <http://eiga.com/movie/54873/> 「クレイジーズ」作品情報 <http://eiga.com/movie/55359/>
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