"検察史上最大の汚点"も!? 元「噂の眞相」西岡氏が検察の悪事を暴く!

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「週刊朝日」10月29日号
●第63回(10月13日~10月18日発売号より) 第1位 「三井環の『口封じ逮捕』に利用された!! 元暴力団組長が『獄中手記』」(「週刊朝日」10月29日号) 第2位 「スクープ 日中『尖閣密約』あった」(「AERA」10月25日号) 第3位 「AKB秋元才加 56歳オヤジと『自宅お泊まりデート』撮った!」(「週刊文春」10月21日号)    秋晴れ、巨人は阪神に勝つし、アパパネで少し儲けさせてもらったし、言うことなしだが、今日発売の「現代」と「ポスト」にはガッカリだ。  「現代」のトップはお決まりの仙谷由人官房長官批判「仙谷さまのお通りだ!」。だが、内容に新味なし。  お得意の13ページ大特集「人生もう悩まない」を読んでみたが、結論は「自分を見つめ、欲をなくせば悩みというものは自然と消えていくのである」だとさ。こんなことは「現代」に教えられなくても分かっちゃいる。だけど、それができないから悩んでいるんじゃないのかね、世の人たちは。  「ポスト」はもっとひどい。目次の右トップは、その週一番ウリの記事を持ってくるものだが、それが「53人乱交パーティの仰天密室」だから仰天する。これって、先週木曜発売の「新潮」がすでに「50人『乱交パーティ』検挙までの『実況中継』」で報じている。〆切の関係かもしれないが、他誌はよく読んでおくべきだろう。  さて、今週の第3位は、「文春」の専売特許になった感のある「AKB48」のスキャンダル。チームKリーダーの秋元才加(22)が、ゲームクリエイターで、最近はAKBの舞台演出まで手がける広井王子氏(56)とラブラブだそうな。  グラビアには、秋元のマンションに通う広井氏の(ワシも他人のことは言えんけど)、冴えな~い姿が写っている。  秋元はフィリピン人の母親を持ち、自分の父親が高齢だったためファザコンらしいというのだ。広井氏は、深夜、彼女の家に行って早朝出てきたことは認めているが、芝居の話をしていただけだと答えている。「私には彼女と同年代の娘もいるんですよ」。だからどうしたと言うんじゃ(いきなり河内弁風になる)。  ま、恋に年の差はないからね。それにしても、他のメディアはなぜ「AKB48」のスキャンダルを追いかけないのか。もはや「SMAP」並みの人気者でタブーになってしまったということか。「フライデー」がんばれや!  第2位。中国漁船の船長逮捕問題で、いまだに中国では反日デモが起きている。この難しい尖閣諸島をめぐる問題は、小泉政権のときに日中双方が了解した「密約」があったという「AERA」の地味だが、大事な記事。  2004年に中国の活動家7人が尖閣に上陸し、沖縄県警が逮捕して強制退去処分にしたことがあった。その後、川口順子外相が訪中して「密かな約束」をしたというのだ。  それは、「日本側は原則的に上陸しないよう事前に押さえる。重大事案に発展しないかぎり日本側は拘留しない。中国側は、抗議船団の出航を控えさせる」ことなどを約束するというものだった。  だが、この約束は、政権交代した民主党側には引き継がれていないようだ。その理由は、政治主導をいい張っている菅・仙谷に、外務官僚がそっぽを向いてしまっているからではないか。  中国側の傲慢なやり方には腹ふくるる思いはするが、ここは胸襟を開いてお互い話し合う、大人の対応が必要だろう。  今週のグランプリは、元「噂の眞相」にいて、最近は元後藤組組長の語りおろし本で乗っている西岡研介氏の署名記事。今回は、逮捕された大坪弘道前大阪地検特捜部長がヒラ検事だった頃の"悪事"を、元暴力団組長が、獄中から明かすというのだからすごい。  検察は、事前にストーリーを作り上げておいて、それに合わせて自白させていくというのは、これまで何人もの事件の被告たちが訴えている。  02年4月22日に、検察の裏金問題を告発していた三井環大阪高検公安部長が、テレビで実名告発しようとした日に、大阪地検特捜部に逮捕されたが、その容疑事実は、でっち上げられた可能性が大だというのだ。  その逮捕容疑は微罪だったため、三井氏を、暴力団関係者から飲食や1度ならず2度までも女の接待を受けていたという収賄容疑で再逮捕したのだ。これによって、三井は悪徳検察官だというイメージが出来上がり、検察が苦慮していた裏金問題がどこかへ消えてしまったのである。  だが、三井氏と同じ時期に逮捕された山口組二代目「佐藤組六甲連合」会長(当時)亀谷直人受刑者が、獄中で書いた「手記」にはこう書かれていた。  逮捕され、三井を接待したと自白したTという男から聞いたが、三井に女を1回は世話したが、2度目は、三井のほうからキャンセルしてきたというのだ。このTを取り調べたのが、話題の大坪検事で、当時はヒラ検事だった。  公判供述では、2度目に女を世話するTと三井氏の具体的な会話まであり、リアリティたっぷりだが、Tは「大坪検事が調書を捏造した」と話したという。  大坪がTの供述をヒントにこのストーリーを作り上げた時には、そのデートクラブは潰れていて、三井と情交に及んだというデート嬢は、別の事件で殺されていたのだ。  死人に口なし。大坪はその後、デート嬢を接待したというホテルの風景をビデオに撮り、Tに繰り返し見せて復習させたという。  だが、この2度目の接待は公判段階で、Tの運転手の日報や証言から、Tがその日はまったく別のところにいたことが判明し、裁判所もこれに関しては、三井を無罪にしたのである。  しかし、それでも他の微罪ではすべて有罪とし、三井は1年8カ月の実刑判決を受け、最高裁へ上告するが棄却され、刑に服するのだ。  西岡氏は大坪がやった捏造は、検察組織からの要請だったのではないかと推測している。  亀谷受刑者は、「今回の厚労省の事件(郵便不正事件)での前田(元主任検事)の捏造も『大坪流』の、(大阪地検)特捜部のやり方だ」と書いている。  当時、大坪がTに言った「特捜部は何でも可能なんや」という言葉は、私も、何人かの特捜部出身のヤメ検弁護士から聞いたことがある。この驕りが、多くの冤罪を作り出しているのではないか。  逮捕された連中が関わった事件を、もう一度検証し直す必要があるはずだ。  西岡氏は、亀谷受刑者が犯した射殺事件の背後には、三井事件に端を発する「検察史上最大の汚点」が隠されているという。その真相は近く「朝日」で詳報するというから、楽しみにしたい。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ) 1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
検察との闘い 巨大権力ってコワいね。 amazon_associate_logo.jpg
検察に天罰を! 小沢起訴に噛みつく「週刊朝日」の意気込み 人権派弁護士・弘中惇一郎氏が明かす、郵政不正事件裁判3つの勝因 「特捜部は解体せよ!」検察捜査の盲点に週刊誌が切り込む!

検察に天罰を! 小沢起訴に噛みつく「週刊朝日」の意気込み

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「週刊朝日」10月22日号より
●第62回(10月5日~10月12日発売号より) 第1位 「『小沢起訴』は無効である」(「週刊朝日」10月22日号) 第2位 「テレビ局は放送しない"斜陽"という名のバラエティー」(「週刊新潮」10月14日号) 第3位 「性の秘密兵器で追求する究極の快楽」(「週刊ポスト」10月22日号)  このところセックス特集では「ポスト」に勢いがある。先駆けの現代はちと息切れしているようだ。  今回はいきなり、オナニーの未来がやってきたとして、ペニスを挿入する「オナニーカップ」の革命的商品TENGA が発売5年で1,200万個を突破したというのだ。あのビートたけしもご愛用というのだから、どんなものか気にはなる。  30代の会社員が感想をこう語っている。「挿入口は少しきついという印象でしたが、インサートは意外とスムーズ。ペニスがクニャクニャと包みこまれる感じが最高です」  スタンダードシリーズは750円で、全体の売れ行きの1割近くを個室ビデオ店で売り上げているようだ。しかし、こんな独りよがりグッズが売れるのでは、少子化の歯止めがきかないはずだ。  その他にも、世界のオカモトが目指す「使用感ゼロの至高のコンドーム」「女を感じる体に改造する膣エクササイザー」など至れり尽くせり。  2位は「新潮」の記事だが、タイトルがいい。日本テレビが先日「36時間ストライキ」をやって話題になったが、日テレ社員によると、きっかけは「定期昇給をなくす代わりに、査定ポイントが溜まると上のステージに昇格できる制度です。ところが、昇格のハードルが高すぎて入社10年頃から昇給がなくなる可能性が高い。若手の場合、従来4億円ほどだった生涯賃金が1億円以上、減ってしまうんです」ということらしいが、平均年収が減ったとはいえ、09年は1,263万円もあるのでは、殿様ストライキとでもいうしかない。  だが、テレビも往時のような優雅な商売でなくなってきていることは間違いない。  日テレは04年に2898億円あった放送収入が、09年には22%減の2259億円と大幅減。深夜・早朝のタクシーも4人相乗り、会合費も5,000円以上は事前に稟議書が必要とか。  テレビのなかでも一番深刻なのはTBSだそうだ。売上高は日テレを上回っているが、これは赤坂サカスや赤坂Bizタワーの賃貸収入など1500億円を含めてだから、「放送する不動産屋」と陰口を叩れるのも無理はない。  マスコミと言われる新聞、テレビ、出版はどこもお先真っ暗。広告収入減の上にデジタル化が重い枷になっている。メディア界にビル・ゲイツや スティーブ・ジョブズのような天才は出てこないものかね。  今週の第1位は、村木厚生労働省局長の裁判を冤罪だとキャンペーンを張り、見事な結果を出した朝日が、今度は、東京第五検察審査会が2回目の「起訴議決」を出したことに噛みついた大特集。  土地取得と代金支払いの時期が2カ月ずれていた、たったそれだけの「期ずれ」「記載ミス」なのに、起訴相当はないだろうというのだ。  大新聞は、これから裁判が始まるのに「推定無罪」という原則を忘れて、議員辞職せよと迫るのは、検察官の起訴と検審の起訴の違いを理解してないのではないかと批判する。  おなじみの元検事・郷原信郎氏も加勢して、2回目の検審の議決書には、新たな「事実」が付け加えられていたと指摘する。  それは、1回目にはなかった、小沢氏から現金4億円が提供されたという、不動産取得の原資となった収入も含めて、虚偽記入の犯罪事実として書かれているというのである。 「1回目の議決で『起訴相当』とされた事実について、検察が再捜査して再び『不起訴』とした事実の範囲を超えた事実を、2回目の議決で『起訴すべき事実』にするのは、検審の強制起訴手続きの趣旨からいっても、明らかにおかしいと思います。検察が再捜査の対象にせず、当然、再聴取を受けた小沢氏にも弁解の機会を与えていない『犯罪事実』が、突然現れて、それで起訴されるなんてことがあっていいわけがありません」(郷原氏)  さらに「検審の闇」として、審査員の平均年齢が30.9歳というのは「コインが10回連続して表を出す確立に近い」(吉沢光雄桜美林大学教授)から、選んだ側に作為があったのではないか。裁判員制度のように、前もってレクチャーもなく、配られる資料は難しい法律用語ばかりだから、素人の審査員は「結論」を検察に誘導された可能性があるのではないかと追及している。  同じ「朝日」で、小沢研究20年という政治記者・渡辺乾介氏が小沢氏のこれからについてこう語っている。 「今回の議決は、小沢にとって代表選での敗北に続く予想外の結果であり、誤算です。私の知るかぎり、小沢の政治生活でこれほど誤算が時期を同じくして襲ったのははじめてです」として、「日本が健全な法治国家の原則に基づく国であると世界に示すためにも、この戦いから逃げることはできません。政治家としても人間としても、小沢にとって最大にして最高の真剣勝負です」。さあ、手負いの獅子を怒らせてしまったようだ。検察対小沢、菅・仙谷対小沢はどうなるのか。「朝日」は「日刊ゲンダイ」と同じように、小沢と心中する気があるのか。週刊誌同士の戦いも見物だ。  同じような特集を「ポスト」でもやっているが、検察に天罰をという意気込みを感じる「朝日」に軍配を上げた。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ) 1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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人権派弁護士・弘中惇一郎氏が明かす、郵政不正事件裁判3つの勝因 「特捜部は解体せよ!」検察捜査の盲点に週刊誌が切り込む! 「最前線に行かないのはメディアの責任放棄」 常岡浩介が語ったアフガン監禁生活

電子書籍時代に"定期購読専門誌"を創刊! 北尾トロと考える、本と雑誌の未来

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「別に世のため人のために雑誌をやるわけではない。
同業者の後輩が育ち、若い人が出版業界に来てくれないと
読むものがなくなって自分がつまらなくなっちゃうからね」
と北尾氏。
 電子書籍元年と騒がれ、iPadやらキンドルやら出版業界は大騒ぎ。そんな状況にあって、「紙媒体」「定期購読」「ノンフィクション限定」という時代を無視したかのような雑誌「レポ」が創刊された。発行・編集は、ライターとして『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』(文春文庫)や『全力でスローボールを投げる』(文藝春秋)など数々の著書を持つ、ノンフィクションライターの北尾トロ氏。はたして、「レポ」は時代へのアンチテーゼなのか? それとも風変わりな視点から社会を見つめる北尾トロ一流の考えがあるのだろうか? ■コンセプトは"手紙" ――「レポ」創刊おめでとうございます。とにかく変わった雑誌、という印象があるんですが、まず「ノンフィクション限定」というスタイルにした理由を教えてください。 「いろいろな理由があるんですが、一つはノンフィクションを書く場所(媒体)が少なくなってきているということですね。だんだん雑誌が減ってきて、ノンフィクションが書ける場所も限られてきているんです。かつてなら、たとえば『別冊宝島』がノンフィクションライターの目標となり、『月刊プレイボーイ』はお金も時間もかけたノンフィクションを掲載していました。あとはエロ本ですね。エロ本の活字ページは、若いライターが好きにできる場所だったんです。雑誌の目的がエロだったから活字はどうでもよかったんですね。そういう場所でかつてはいろんな人がしのぎ合っていたんです」 ――巷では電子書籍が騒がれていますが、どうしてこのタイミングで紙の雑誌を創刊しようと思ったのでしょうか? 「やるなら今だなと思ったんです。あと3年後とか5年後になってしまうと出版業界がどうなっているか分からない。もしかしたら、その時に紙の雑誌はもはやノスタルジーになっているかもしれないですよね。今だったら読者としても出版する側としても、ぎりぎりノスタルジーにならないんじゃないかと思ったんです」 ――定期購読という販売方法も特殊ですね。このような方法を選んだ理由は? 「最初から通販で売る雑誌にしようと考えていました。通販っていうことはポストに届く、それはある種の手紙じゃないかということで『手紙』をコンセプトにしたんです。......ちょっと無理矢理ですが(笑)。けど、手紙というコンセプトなら直接読者とやり取りできますよね。手紙って、届くとうれしいじゃないですか。自分の宛名があって、開封する楽しみがある。本屋で購入するのとは別の楽しみが生まれるんじゃないかと思ったんです。ただ、さすがにそういう販売方法だけでは『ひどい』と言われることも多いので(笑)、定期購読だけではなく各号ごとの通信販売も行う予定です。現実的な問題として、書店との清算といった事務作業が苦手なんですよ。だから通販がメインで、書店は買い切りのみにしようと」 ――「手紙」というコンセプトなら読者との距離も縮まりますね。 「やっぱりダイレクトに届くのが一番いいと思うんです。手紙じゃなくて、例えばTwitterでもDM(ダイレクトメール)のうれしさがある。名指しで送られてくるというのはうれしいんですよ。だから、そんな『手紙』に対して返事を書いてくれる人もいるんじゃないかと期待しています」
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「レポ」は分厚い手紙(本誌)と年間定期購読者への手紙「ちびレポ」がセット。
本誌は年4回発行、「ちびレポ」は本誌発行月以外の月に発行。
年間定期購読者だけには毎月「レポ」からの手紙が届くというしくみ。
■電子書籍に"みんな騒ぎ過ぎ" ――北尾トロ"編集長"としては、雑誌の未来をどう考えていますか? 「マスメディアではない"ミドルメディア"は結構イケるんじゃないかと思っています。広告ではなく、その雑誌を読みたい人が支えるような形です。出版不況と言われていますが、面白いものを作ってしっかりそれが読者に伝われば、500円や1000円をケチるっていうのはないと思うんです」 ――ミドルメディアというのは具体的にどのくらいの規模でしょうか? 「『レポ』で考えると、5,000部から1万部程度ですね。広告なしでもなんとかやっていくために必要な部数が5,000部かな。逆に1万部を超えるといろんな人に喜んでもらわなきゃならならなくなって、雑誌がつまんなくなってしまう気がします。ミドルメディアの範囲で欲張らずにやって行けば、ウェブではできないことができるんじゃないでしょうか? 出版界全体の流れは電子書籍に行くんでしょうが、みんなちょっと騒ぎ過ぎなんじゃないかとは思います。媒体が何であれソフトが命なんだから、紙でいいものを作れない人は、電子書籍をつくってもロクなものはできません」 ――『本』というモノについてはどうでしょうか? 北尾さん自身、愛着もかなりあると思うんですが。 「装丁やデザイン、重さなど、モノとしても魅力的ですね。それは電子書籍とは違うところです。そんな本の魅力を知っている人にとってはしばらく忘れがたい物だと思います。けど、最初から本に触れずに育つ子どもにとっては別。次の世代にとっては趣味的なものになっていくんでしょうね。ただ、本好きな人も、ある一定の数いればいいじゃんと思うんですよね。授業で読み聞かせをしたりしてまで、『本は素晴らしい』と言う必要はないと思うんです。僕自身は本が好きなので、好きな人を集めて、ブックフェスをやったり、『本の町』を作りたいと思っていますが」 ――長野県の高遠町での活動ですね。手応えはどうでしょうか? 「ヨーロッパにたくさんある『本の町』を日本にも作りたいなと思っていたんですが、誰もやらないだろうからちょっとやってみようかと始めてみました。高遠は自然も歴史もあり、町のサイズも歩いて回れる程度のイメージに近い町だったんです。ただ、肝心の本屋がなかったので、まず自分たちで本屋をつくりました。ただ、町の人に『本の町をつくりたい』と話しても何のことだかよく分かってもらえない。だから『高遠ブックフェスティバル』を始めたんです。2年間やってようやくイベントとして独り立ちし始めた感じがしますね。9月に終了したばかりなんですが、町の人にも気に入ってもらってすでに来年の話が始まっています」 ■みんなが集う"場"としての「レポ」 ――ゆくゆくは「レポ」をどういう雑誌にしていきたいと思っていますか? 「今はプロの書き手がメインですが、ゆくゆくはもっとアマチュアというか若い人に参加してもらえるような媒体にしていきたいですね。面白ければ何でも構わないので、ページもじゃんじゃん与えます。やりたい人がいたら誰でも企画を送るなり原稿を送るなりしてほしいですね。その辺はオープンにしたいと思っています。現在も拘置所から"書きたい"と言ってくれている人なんかもいますから」 ――いろんな人を集めてくるという意味で"メディア"としても成立していますね。 「場があればそこに人は集うんです。だからそれはそんなに難しいことではないし特別なことをしているわけでもありません。おそらく今後、この雑誌から本が生まれてくると思うんです。『レポ』に書いたことがきっかけで本を出して世に認められる、そういった場になればいいですね」 (取材・文=萩原雄太[かもめマシーン]) ●きたお・とろ 1958年、福岡市生まれ。 ライターとしての数々の執筆活動の他に、インターネット古書店「杉並北尾堂」の運営や、長野県伊那市高遠町での「本の町」プロジェクト、「高遠ブックフェスティバル」の開催など、本に関するあらゆる活動を行う。近著に『テッカ場』(講談社文庫)、『裁判長! 死刑に決めてもいいすか』(朝日文庫)など。
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「レポ」
ライター・北尾トロの編集・発行によるノンフィクション専門の季刊誌。北尾トロの他にも、コラムニスト・えのきどいちろうや漫画家・やまだないと、SM女王様ライター・早川舞などによるノンフィクション14本を掲載。定期購読(年間4,000円+税)か、一部書店のみでの取扱い。 <http://www.repo-zine.com/> ・映画『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 北尾氏の同名ベストセラーエッセイがついに映画化!"愛と感動の裁判映画"の脚本を書くため、三流ライター南波タモツ(設楽統)は、生まれて初めて裁判所に足を踏み入れる。が、法廷では"愛と感動"どころかツッコミどころ満載のワイドショーネタばかり。ある時、美人鬼検事マリリン(片瀬那奈)に、「楽しいでしょうね、他人の人生を高見の見物して!」とキツい言葉を浴びせられ......。 原作/北尾トロ 脚本/アサダアツシ 監督/豊島圭介 出演/設楽統(バナナマン)、片瀬那奈、螢雪次朗、村上航、尾上寛之、鈴木砂羽ほか 配給/ゼアリズエンタープライズ 11月6日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー <http://www.do-suka.jp/>
怪しいお仕事! 個人的にはこれが一番好きです。 amazon_associate_logo.jpg
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人権派弁護士・弘中惇一郎氏が明かす、郵政不正事件裁判3つの勝因

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「AERA」10月10日号
●第62回(9月30日~10月4日発売号より) 第1位 「現代の肖像 弘中惇一郎」(「AERA」10月10日号) 第2位 「スクープ どん底TBS 横浜ベイスターズ身売りへ!」(「週刊文春」10月7日号) 第3位 「グラビア AKB48」(「週刊朝日」10月15日号) 次点 「懐かしい昭和の『エロス雑誌』大全」(「週刊ポスト」10月15日号)   いやー、「凱旋門賞」のナカヤマフェスタは惜しかったね。英国ダービー馬のワークフォースの頭差2着。11年前、やはり2着に泣いたエルコンドルパサーのリベンジができたかと思ったけど、楽しみは先に延ばしておこう。それにしてもナカヤマフエスタは強い。ジャパンカップ、有馬記念はこの馬で決まりかな。  今週は、まずグラビアに目がいく。「ポスト」のセックス企画、今週は懐メロである。私が中学生の頃、胸をドキドキさせながら、古本屋から買ってきた『100万人のよる』『夫婦生活』を、友だちたちと原っぱの隅で回し読みしたことを思い出した。  「PLAYBOY」などはビニールにくるまれている「ビニ本」で、高嶺の花だった。仲間で金を出し合って、ページをめくるときの何とも言えないやるせない想いまでもが甦ってくる。素晴らしいプロポーションの女性のヌードが、当時最高の印刷技術で載っているのだが、あそこは無情にも、黒いマジックのようなもので塗りつぶしてあるのだ。無理だとは思っても、一生懸命、消しゴムや濡れた布でこすったが、拝めたことはなかった。性春時代を思い起こさせてくれるちょっといい特集である。  「朝日」がAKB48のグラビア連載を始めた。大島優子というファン投票1位の子を始め、何人か登場させた後、第1回の「AKB写真館」を飾っているのは、総合プロデューサーの秋元康をして「AKB48とは、高橋みなみのこと」といわしめた子だ。まだ19歳のあどけなさが、中年おじさんにはたまらないのだろうか。「朝日」は、ロリコン雑誌へ変貌しようとしているのかな。  今回の選には漏れたが、「現代」の「国『性』調査」というタイトルがいい。47都道府県別のSEXの県民性を調べたそうだ。「国勢調査」の語呂合わせだが、すっきりしていて編集長のセンスが感じられる。  2位には、さほどのスクープではないが、ペナント終盤ということもあってか、予想外に大騒ぎになった、横浜ベイスターズの身売り話。  3年連続最下位で、3年連続90敗以上という不名誉な記録を達成したベイスターズ。だが、内情はTBSの思った以上の経営悪化にある。「会社と組合の交渉がモメにモメて、六月末の予定だった夏のボーナスの支給が延び延びになり、ようやく九月末に支給されることになりました」(ベイスターズ関係者・「文春」)  TBSの人間が「うちは不動産屋ですから」と自嘲する赤坂サカスの家賃収入も、高いといって撤退するテナントもあるようで、減収気味だという。   そこで、お荷物ベイスターズを売り飛ばそうというのだが、意外にも、リーグ加盟料30億円+広告宣伝費20億円=50億でも買い手はいるようである。  ここでは仮名になっているが、報道によれば、住宅関連企業の大手「住生活グループ」、大手食品会社「日清食品ホールディングス」、IT企業「フェイス」の3社だそうだ。  それに新潟県に本拠地を移す計画もあると言う。ここまで野球が斜陽スポーツになったのは、長年、巨人軍におんぶに抱っこしてきたが、その巨人人気が転けそう、いや、完全に堕ちてしまったからだ。  挽回するには、セパ両リーグ制をやめ、クライマックスシリーズなどというバカなことをしないで、12チームがガチンコで優勝を争い、秋に、韓国・アメリカとワールドシリーズを開催するのだ。そうすれば、もう一度野球熱は高まるに違いない。  耄碌した新聞界の老害を辞めさせ、若い連中で野球界の改革を断行しないと手遅れになる。  第1位は、人権派弁護士の中で、いま最も輝いている弘中惇一郎弁護士を、ノンフィクション・ライターの江川紹子がルポしている「現代の肖像」だ。  泣き言を言うようだが、私も編集長時代は、弘中弁護士にずいぶん訴えられた。訴状に弘中弁護士の名前があると、それだけで暗い気持ちになったものである。  敏腕、切れ者弁護士であるのはもちろんだが、この人の訴状には、こちらに有無を言わせない迫力があった。  彼が時の人になっているのは、郵便不正事件で無罪判決を勝ち取った村木厚子さんの弁護人であるからだが、これまでも、ロス疑惑の三浦和義、薬害エイズ事件の安部英を弁護して無罪判決を勝ち取っている。  それ以外でも、弁護を引き受けているのは、鈴木宗男、守屋武昌、堀江貴文、野村沙知代、叶姉妹、花田勝など、「個性的で、メディアの格好の標的になりそうな"濃いキャラ"の持ち主が多い」(江川)  今回の村木さんの無罪判決は、弘中をして「初めて」と言わせるほど、好意的に受け止められた。それはなぜかと、江川が問うと、三つあると弘中は言うのである。一つは、村木さんのいかにも善人風の風貌、記者が彼女の粗探しをしたが、悪い話は何も出てこなかったこと。第二には、「特捜部の事件だったこと。特捜部は常に正義であるかのような"神話"への批判が出ている時期でもあり、そこで特捜部とガチンコ勝負をやって正面から反撃し、こちらが圧勝した」。そして第三に、「裁判が比較的短期間で終わり、その間に法廷で検察側の証人が証言をひっくり返す劇的な展開になった。これが何年もかかったら、人々の関心をつなぐのは難しかったかもしれない」と話す。  信念の人・弘中でも、薬害エイズ事件の安部英の弁護には二の足を踏んだという。一度は断ったが、「これも運命だ」と引き受ける。それまで、クロロキン薬害、六価クロム職業病、クロマイ薬害などの患者側の弁護をしてきた。患者たちの中から裏切りという声も出たという。  だが、「問題は世界のあちこちで起きているし、当時の医学の水準では防ぎきれない悲劇だったと思われた。事実を調べ、文献にあたり、世界のエイズ問題の最先端の研究者にも話しを聞き、弘中の思いは確信となった」(江川)  数多い弁護士活動の中では、引き受けたものの思いがけない展開で苦い思いをするケースもある。消費者金融・武富士がジャーナリストと「週刊金曜日」を相手に損害賠償請求訴訟を起こしたが、完全敗訴する。  光市母子殺人事件の被告の弁護をした、私の知人の安田好弘弁護士は、「引き受けた以上、殺人犯であろうと弁護するのが弁護士の務め」だと言った。その通りである。だが、刑事弁護はカネにならないから、引き受ける弁護士が少ない。弘中弁護士や安田弁護士のところには、日本中から依頼が舞い込む。  先日、私の知人の息子が、雌伏10年を経てようやく司法試験に受かったと訊ねてきた。11月末から研修生となるが、終わってからどこかの弁護士事務所に就職したいが、なかなか大変なようだ。弁護士になっても、半数は就職できないという数字もある。  刑事弁護はどうかと聞くと、それは考えていないという。生活できないからだ。  検察という組織を相手に、一人の弁護士ができることには限りがある。若くて志のある弁護士が、こうした分野に入ってこなければ、崩れつつあるとはいっても、まだまだ強大な権力を持つ検察と闘うのは容易ではない。  短くて読みたりないが、取材相手との距離感のとり方がとてもいい読み物である。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ) 1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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「特捜部は解体せよ!」検察捜査の盲点に週刊誌が切り込む!

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(「週刊朝日」10月8日号)
●第61回(9月22日~9月29日発売号より) 第1位 「崩壊 検察特捜部」(「週刊朝日」10月8日号) 第2位 「中国衝突船は『スパイ船』だった!」(「週刊文春」9月30日号) 第3位 「本誌は見ていた!内野聖陽『飲酒運転』一部始終」(「フライデー」10月8日号)  フライデーは先週号で、NHKドラマ『蝉しぐれ』の主人公・牧文四郎やNHK大河ドラマ『風林火山』で、主役の山本勘助役を好演した俳優・内野聖陽が「人妻との車中情事と飲酒運転」と報じた。  所属事務所は、人妻との密会の事実は認めたが、飲酒運転については否定したから、フライデーが怒った。ならば、われわれは検察と違って証拠物件を改竄するようなことはしないと、内野がコンビニで「アサヒ スタイルフリー」を買って車中で飲む姿や、中華料理店で「アサヒ スーパードライ」をゴクゴクやるところがバッチリ写っている写真を大放出した。  テレビで、内野の弁護士が話していたが、極めて歯切れが悪かった。  この件はフライデー側の圧勝に終わったようだ。内野は42歳、中年男の道交法違反に、皆様のNHKはどういう処分を下すのか、注目である。  さて、中国漁船の船長釈放で、弱腰の菅内閣に、日本中から怨嗟の声が起きている。今回の日本人の怒りは、小泉元首相の靖国参拝のときとは違って、これまで眠っていた大方の日本人の反中国&ナショナリズムが、一気に燃え上がる危険がある。  これもテレビだが、中国人の、この問題についてのインタビューの中に、こんな主旨の発言があった。 「日本のような小国が、わが国のような大国に逆らうのは許せない」  ごく一部の者であろうが、中国は、これほどまでに驕ってきたのかと慄然とした。  文春は、この漁船は「スパイ船」ではなかったかと、日米の情報のプロたちは推測していると書いている。なぜなら、漁船の大きさが、これまでのより大きく、突撃しても支障のない大型船を用意して、日本側がどうでてくるかを見る、中国側の「作戦」ではなかったかというのだ。  また、深夜に丹羽大使を呼びつけた国務委員は、外交の裏も仕切り、諜報機関さえも従えている「裏外交」の最高責任者だという。これらを総合して考えると、今回の事件は、中国が最初から「国家の意志」として仕組んだので、さらなる強行手段に出でてくる可能性が高いと警告する。  ポストの櫻井よしこ氏のように、「尖閣諸島で譲歩すれば、中国は次に沖縄を奪りにくる!」とは、私は思わないが、中国が、東シナ海のガス田開発を強行に推し進め、これまで以上に漁業権を浸食してくることになれば、最西端の与那国島の漁民たちは漁ができなくなり、結果的には日本国民の生活が脅かされることになる。  だから中国と事を構えろというのではない。こういうときこそ外交が重要になるのだ。そのためには、就任したばかりで可哀想だが、民間の中国大使では荷が重すぎる。プロの外交官に代え、前原外相は、アメリカ、韓国と考え方を詰めながら、決然として中国首脳と話し合うことが重要であろう。  朝日新聞の大スクープで始まった、郵便不正事件の前田恒彦主任検事の逮捕は、大阪地検の検事正、特捜部長を含めた組織全体の犯罪に広がりそうだが、この問題を追及してきた朝日の誌面が、やはり一番充実している。よって今週の第1位。  中でも、ジャーナリストの魚住昭氏と作家の佐藤優氏の談話は、読み応えがある。魚住氏は「特捜部は解体せよ!」と主張し、佐藤氏は「特捜部は維持すべき!」と、正反対のタイトルが付いている。魚住氏はこう主張している。 「もはや特捜部は解体すべきです。本来の検察の役割は、警察の捜査をチェックして裁判にかけることですが、特捜部は独自調査をして、何の外部チェックを受けずに起訴している。『公訴』と『捜査』を同時に行っているところに、システムの欠陥があります。そして、少なくとも被疑者・参考人に対する取り調べの全面可視化を実現しなければいけない。でなければ、特捜部が事件を作り出す"性癖"は治りません」  佐藤氏はこうだ。 「特捜検察を断固維持すべきだ。特捜検察を解体すると、その機能を担うのは警察になる。行政に直結した警察が『国策捜査』の機能を果たすようになると、戦前の『特高警察』が復活することになる。政治に大きな影響を与える政治家や高級官僚を摘発する機関は、行政から独立した検察に委ねた方がいい。特捜事件について、直ちに『全面可視化』を導入するならば、検察が取り調べで無理をすることも少なくなる」  どちらも、こうしたことをなくすには、取り調べの全面可視化が即刻必要だといっている。  かつて、某検事総長は「巨悪は眠らせない」といったが、いまでは、特捜検察が巨悪になりつつあるのではないか。国民に根強い検察不信を払拭するためにも、最高検は、身内の悪を徹底的に調べ、国民に公開すべきだ。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ) 1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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「週刊朝日」10月1日号より
●第60回(9月15日~9月21日発売号より) 第1位 「常岡浩介が味わった怒りと絶望『死を2度覚悟した』」(「週刊朝日」10月1日号) 第2位 「山口組二代目弘道会『壊滅作戦』が動いた!」(「週刊アサヒ芸能」9月30日号) 第3位 「独走スクープ 野球場ビアガールがやっている『SEX営業』衝撃実態」(「週刊大衆」10月4日号)  私事だが、10月中旬に私も参加する予定だった日中友好団が、中国側の事情でキャンセルになった。理由は今回の中国漁船の船長逮捕問題で、日本から来る人間と中国側要人との会談は、当分中止するということが決まったからだという。  尖閣諸島をめぐる問題は、日本人の多くが考えているような簡単な問題ではなく、アメリカをも巻き込んで大きく広がりそうだ。こんな時に、岡田外相を幹事長にして前原を据えるのは、菅直人総理に危機感が欠如しているからだろう。  前原を国土交通相から引っぺがすことで、八ッ場ダム問題はこのまま塩漬けになってしまうのだろうか。総理大臣は何人替わってもいいが、長期的な視野が必要な厚生、国土、外務はコロコロ替えてはいけないこと、言うまでもない。  さて、いまだに小沢がどうしたと騒いでいる週刊誌にはウンザリだから、何かないかと探していたら、新聞広告も表紙にもドカーンと、野球場のビアガールがSEX営業しているというタイトル。タイトルに惹かれて買ってみたが、アレレ、どこにあるのか見つからない。  何と、巻末にちょこっと2ページの記事じゃん。これだから「大衆」はと、ブツブツいいながら読み始める。  私は野球大好き人間だから、野球場に行くと、まずホットドックとビールを買い込み、一試合でホットドック3本とビールを5杯は飲む。球場のビアガールにお目当てはいないが、背中に重いタンクを背負い、短パンで、上り下りを繰り返す彼女たちは大変だなと、いつも思っている。  彼女たちの方も客の奪い合いが壮絶で、中には、最大の武器である色気を駆使して売っている女の子もいると書いてある。ビールを渡すとき、おっぱいを押しつけたりしてリピーターを増やす手も使うというのだ。  客のほうも、おカネを払うとき1万円出し、釣りはいいとチップをくれて、お札の下にメールアドレスが書いてあって、場外デートに誘われることもあるのだそうだ。  彼女たちは歩合制で、1試合3時間として5,000~6,000円ほど。1万円のチップで、デートしてもいいかなと思う女の子がいても不思議はないとは思うが、タイトルほど衝撃的な話じゃないね。  ヤクザ屋さんたちにとって、「実話」→「大衆」→「アサヒ芸能」と週刊誌のランクが上がり、「アサ芸」の記事が一番クオリティが高いのだそうだ。  司忍山口組六代目の出所が来年4月に迫り、警察対山口組の死闘が激しくなってきている。特に、安藤隆春警察庁長官が山口組の中核組織である弘道会に狙いを定め、「弘道会の弱体なくして山口組の弱体はなく、山口組の弱体化なくして暴力団の弱体化はない」と檄を飛ばし、田岡一雄三代目時代の「第1次頂上作戦」以来ともいわれる、集中捜査を本格化させているのだ。 「その結果、10年上半期の二代目弘道会関係者の検挙数は1,022人と昨年の36.1%増と大幅に増加した。また、集中取締り指令を発した翌月の昨年10月から、今年の9月13日までに全国の警察は二代目弘道会の直系組長9人を逮捕している」  中でもこの組は、名古屋最大の繁華街である栄地区を縄張りにしているため、愛知県警は、地元商店街と一緒に官民挙げての暴力排斥運動を激化させている。  大衆も同じ内容の記事をやっているが、他の週刊誌では、こうした記事にはお目にかかれない。どうしてやらないのか不思議だ。暴力団の構成員、準構成員の数は09年末で約8万900人で、山口組が46.0%を占めているそうだから、約3万7,000人もいることになる。  大騒ぎになっている大相撲の野球賭博でも、逮捕されたのは山口組組員。いまや世界一と言われる大組織になった山口組に対して、メディアは注目し、監視していかなくてはいけないと思うのだが、そんな勇気を大メディアに求めても無駄なんだろうな。「実話」、「大衆」、「アサ芸」、頑張れ!  今週第1位は、アフガニスタン北部のクンドゥズ州で武装勢力に誘拐され、5カ月ぶりに開放されたジャーナリスト・常岡浩介氏(41)のインタビュー。  アフガンを愛し、復興の足取りを取材してきた常岡氏を誘拐したのは、タリバーンなんかではなく、政府側の軍閥で身代金目当ての「泥棒集団」だった。要求額は100万ドル。  スパイ容疑をかけられた農民が同じ部屋に入れられたが、2日後、羊をさばくように処刑されたという。  耐え難い退屈と深い絶望を味わった。大使館は身代金を払わなかったが、9月4日にようやく開放された。常岡氏は、アフガン政府が誘拐犯の正体を知りながら、タリバーンの仕業だと発表したことに怒り、こう語っている。 「救いは日本政府が身代金要求に応じなかったことです。成功体験を与えたら、他の軍閥もこれに倣い、アフガンは誘拐ビジネスの国になってしまう。復興の目が摘まれてしまうところでした」  何と冷静で沈着なジャーナリストだろう。外務省の退避勧告に逆らって危険地帯を訪れ、拘束されたことに対しても、こう言う。 「批判を受けるのは当然だと思います。(中略)しかし、危険だから行くなと言われて、メディアが『そうですね』と従うのは責任放棄です。紛争地域は最前線の情報こそいちばん重要なのだから、メディアはそれを黙殺してはいけないと思います」  こうした勇敢なジャーナリストがいることによって、大新聞や大テレビは安全な場所にいながら、貴重な情報を手に入れることができるのだ。  内田樹氏が『街場のメディア論』(光文社新書)の中でこう言っている。「情報を評価するときに最優先の基準は『その情報を得ることによって、世界の成り立ちについての理解が深まるかどうか』ということです」。下劣な永田町の権力争いに、こうした情報価値があるはずはないこと、言うまでもない。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ) 1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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「週刊文春」9月16日号 中吊り広告より
●第59回(9月8日~9月14日発売号より) 第1位 「スクープ入手!テレビ局が封印した小沢一郎と青木愛『京都の密会映像』」(「週刊文春」9月16日号) 同1位 「ご寵愛No.1の小沢ガールズ『青木愛代議士』が偽名の男と『不倫お泊まり』デート」(「週刊新潮」9月16日号) 第2位 「独占 村木厚子元厚生労働省局長が激白『検察は欲深き者...』」(「週刊朝日」9月24日号) 第3位 「ゴマすりコメンテーター大谷昭宏がもらった『講演料50万円』」(「週刊文春」9月16日号)  3位は、小品ながらピリッとした記事。代表選挙中は、テレビ嫌いの小沢一郎氏も、一局一回だけという条件で似合わない笑顔で出演していたが、その中には多くの「小沢氏の気持ちを忖度する『ゴマすりコメンテーター』が増殖していた!」(文春)ようだ。  中でも、9月3日の『スーパーモーニング』(テレビ朝日系)に出ていた、山口一臣『週刊朝日』編集長、大谷昭宏氏、三反園訓氏が挙げられている。山口編集長は、小沢と俳優・菅原文太の小沢ヨイショ対談をやり、三反園氏は、政治部記者時代から小沢氏に近く、7月の参議院選挙に出るのではと噂された人だから、という根拠。やや八つ当たり気味だが、大谷氏は、「〇七年八月『小沢一郎政治塾』で講演し、五十万円の謝礼を受けとっている」(文春)という理由だ。  金額に驚くが、大谷氏はこう釈明している。「後援会活動、選挙運動にかかわる催しは拒否しているが、勉強会などには参加している。講演料については他の講演会と同様の基準で受領している。破格の金額や無償のほうが利益供与につながる」  講演一回が50万円。それが破格な額ではないという感覚に、疑問を感じるのは私だけではないだろう。大谷氏が敬していたノンフィクション作家の本田靖春さんは、生涯社会部記者でありたいと言っていた。彼は取材の時、相手が出したコーヒーにも口を付けなかったほど、自分を厳しく律していたのだ。大谷氏の、元社会部記者という肩書きが泣きはしないか。  第2位は、今月10日に、無罪判決を勝ち取った村木厚子元厚生労働省局長のインタビューである。  「朝日」は当初からこれは冤罪であると主張し、取材を重ねてきた。見事な週刊誌の功績として記憶されるに違いない。  1年以上にも及ぶ検察との闘いは、村木氏にとってどんなものだったかという問いに、こう答えている。 「長くもあり、短くもありました。無実であることは自分が一番知っていましたが、早い段階で周囲の人間が『信じている』と言ってくれたことは大きかった。検察は必要な組織ですし、人間のやることだから、絶対に間違えないということはありえない。ただ、もっと丁寧に捜査してほしかった。今は、二度とこうしたことが起こらないよう、問題点を自らの手で検証してほしいと思っています」  次のページには、民主党の代表選が佳境になった時期に、最高裁から上告を棄却する決定を下された鈴木宗男氏がインタビューに答えている。 「私の『心友』の佐藤優さんがこんなことを言っていますね。村木厚子さんの無罪判決が出て検察批判の声が高まるのを恐れ、先手を打ってやったのではと。(中略)私が収監されることで、外交機密費の不正使用などへの追及がゆるみ、喜んでいるのは外務官僚たちだとね」  鈴木氏は熱烈な小沢支持だったが、この時期に最高裁がこうした決定を下したことに、ある強い「意志」を感じる。  次に触れる、小沢氏と青木愛代議士の密愛写真の流失や、同じ青木代議士と小沢氏の政策秘書との「不倫お泊まり」報道にも、肌がゾクッとするような陰湿なものを感じてならない。  民主党の代表選が終わり、新聞の予想通り、菅直人氏が党員、サポーター票を大量に獲得して、代表に選ばれた。  菅729票、小沢491票。これだけを見れば大差だが、国会議員票では、412対400と、6人の差でしかない。  なぜ、党員、サポーター票で大差がついたのか。ポストが書いているように、「大新聞も官邸も常軌を逸している『小沢嫌い』ここに極まれり!」と、読売新聞を筆頭に、大新聞の、小沢を総理にしてはならないという世論作りが功を奏したのだろう。そうでなければ、これほどの大差がつくはずがない。  その上、9日発売の「文春」が「スクープ入手! テレビ局が封印した小沢一郎と青木愛『京都の密会映像』」と謳って、二人が手を組んでいるかのような意味深な写真と記事を掲載した。  だが不思議なことに、この記事にはどこのテレビ局が撮影したか書いていないのだ。  「新潮」も同じ情報源ではないかと思われるが、青木代議士が茨城県の水戸駅近くのホテルで小沢氏の政策秘書と不倫していると報じた。おまけにこの秘書氏、代表選の票固めに地方を回っているはずなのに、一日に何時間もパチンコをやっている姿まで撮られている。  一連の報道が、「朝日」のように「謀略」ではないかと疑うのは当然だろう。それも、「朝日」によれば、流れたのは、小沢嫌いの読売系列、日本テレビの映像だというのだ。 「その映像は8月17日の同局のニュース番組『news every.』で放送されました。しかし、この番組では青木氏が現れた場面は使われていない。あまりに微妙な時期の微妙な映像だったため、上層部の判断でお蔵入りしたと言われています」(朝日)  その幻だったはずの素材映像が、党員・サポーター票の締め切り直前の微妙な時期に流失し、報道されたのだ。  誰が流したかは分からないが、意図ははっきりしている。そして、代表選で菅氏が圧勝したのは、党員・サポーター票で大量リードしたからだ。  市民派対剛腕対決と言われた今回の代表選だが、情報戦で勝利したのは意外にも市民派陣営だった。この代表選が新たな小沢の権力闘争の始まりになる。そんな嫌な予感がしてならない後味の悪い結末だったが、大きな影響を与えたであろう二誌の記事を同率1位とする。 (文=元木昌彦)
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●元木昌彦(もとき・まさひこ) 1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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「週刊朝日」9月17日号より
●第58回(8月31日~9月7日発売号より) 第1位 「村木厚子・元厚生労働省局長 いよいよ無罪へ」(「週刊朝日」9月17日号) 第2位 「独占120分インタビュー 菅原文太が聞く永田町の仁義なき戦い」(「週刊朝日」9月17日号) 第3位 「『山本モナ』結婚引退宣言に『たけし』が怒った!」(「週刊新潮」9月9日号) 「『大槻教授』に宣戦布告された怪しい『アグネス・チャン』」(「週刊新潮」9月9日号) 「沢尻エリカCNNサイトで『ウソ泣き』暴露の内幕」(「週刊朝日」9月17日号)  土曜日(9月4日)朝、われわれの業界では有名人だった親友・猪坂豊一さんが、2カ月近くの入院の末、亡くなった。マスコミ業界はもちろんのこと、大使館にもすごい人脈を持っていた人で、ロシアを始め多くの国の大使には、アポなしでいつでも会えた。外務省にも、これほどの人間関係を持っている人間はいない。享年64歳。惜しい人を亡くしてしまった。  今週は、腹の立つ芸能人の記事ばかりを集めて書こうと思ったが、小粒な話ばかりなので、まとめて3本を第3位にした。  沢尻エリカほど腹の立つタレントはいないと思っている。「別に~」事件などはどうでもいいが、その後の生き方が無様である。今回は、米CNNが運営する情報サイトで、「別に~」への謝罪は「ウソ泣き」だったと暴露した。歌った曲が連続でオリコンで1位になったそうだが、歌謡曲みたいで好きじゃなかったと「応援してくれたファンまでバカにする始末」(朝日)。とうに賞味期限の切れた半人前のタレントは、無視するに限る。  ユニセフ親善大使という肩書をもった元(?)歌手・アグネス・チャンの「怪しいビジネス」におかしいと声を上げたのは、早稲田大学の大槻義彦名誉教授。自身のブログに、「アグネス・チャンとパワーストーン業者の深いつながりがあるという疑惑」と書いて、そこで販売している「風水パワーストーン」は霊感商法そのものだと批判する。また、「五色霊芝」は、その辺に生える「マンネンタケ」で、貧血やガンに効くというのは、薬事法に抵触する可能性があると指摘したのだ。 「彼女がやっているのは、オカルト集団が壺や掛け軸を売りつけるのと同じ霊感商法です」(大槻名誉教授)  しかも、アグネスの夫で、「チャンズ」の社長・金子力氏は、「すべて私の管理不行届」と平謝り。「新潮」の書いているように、即刻、「ユニセフ親善大使」の肩書は返上せよ。だいぶ前に、某月刊誌でアグネスの講演料のことを書いたとき、社長にまで直訴して、誌面で大々的なお詫びをさせたことがある。講演料なしでボランティアでやっているのを、多額の講演料をもらっていると書いたのならお詫びは当然だが、ハッキリ額は覚えていないが、30万円を50万円と書いたに過ぎない。だが、そのお詫びの仕方が大げさすぎると、社長の逆鱗に触れ、その雑誌はお取り潰しになってしまった。  モナのことなどどうでもいいが、たけしが怒っているというので読んでみた。その理由は、モナが結婚して引退すると言ったことに起因する。 「モナちゃんだってよ、ウチにまだだいぶ借金残ってんじゃないの?(中略)何たって2回も仕事降ろされてるわけだしな。(中略)カミさんが借金を残して引退したいってんなら、ダンナが代わりに借金返せっての!」(たけしの親しい知人が代弁)  モナの男好きはビョーキの域に達しているのではないか。大方の見方は、すぐ別れるというもののようだ。まあ、たけしも人間を見る目がなかったということで、諦めるしかないんじゃないのかね。  14日の代表選に向けて、菅と小沢の舌戦はヒートアップしているが、どちらが勝つかについても、週刊誌対新聞の戦争の様相を呈してきた。新聞は、「民主党代表にふさわしいのは? 菅氏66% 小沢氏18%」(読売新聞9月6日朝刊)と、世論は菅を支持しているとしているようだが、週刊誌のほとんどは、「とうとう小沢総理」(現代)と、小沢楽勝ムードである。  さらに新聞のいけないところは、見出しと内容が違いすぎるのだ。よく読むと、日本経済をどちらが立て直せるかという質問には、菅37%、小沢36%。政治主導の実現では、菅39%、小沢43%。ねじれ国会を乗り切ることができるのは、菅37%、小沢32%と、ほぼ拮抗しているのだ。  内容は大同小異なので、小沢のインタビュアーに「仁義なき戦い」の広能昌三役で知られる俳優の菅原文太を起用した、朝日を選んだ。120分も聞いたわりには中身はごく薄い水割り程度だが、小沢の目指しているのは、鳩山や菅と違って、小さな政府だということが分かる。 「約30兆円ある政策的予算(裁量的予算)も、介護や生活保護などをすべて地方に任せてしまえば必ずコストダウンできる。それは、他の政策実現に使える財源が生まれるということです。地方にできることを地方に任せれば、いま国でやっている仕事の半分以上はなくなります」(小沢)  「ポスト」の「小沢一郎が7年前から書き進めていた『新日本改造計画』仰天の500頁」と併せて読むと、小沢のやりたいことの(できることではない)幾分かは分かろうというものだ。  「朝日」の「菅VS.小沢『私はこちらを支持する』で、森永卓郎氏、佐藤優氏、岸博幸氏、孫崎享氏が、菅よりも小沢に期待している。私も小沢有利と読んではいるが、その後が怖いというのも本音だ。  さて、郵便不正事件で逮捕・起訴された村木厚子元厚生労働省局長の判決が、9月10日に下される。「朝日」は、事件当初から、大阪地検の強引な捜査のやり方を批判し、数々の重要証言を取材してきた。  9月7日には、緊急出版として『私は無実です 検察と闘った厚労省官僚 村木厚子の445日』(朝日新聞出版)を出す。  この事件は、政権交代目前だった民主党に狙いを定めて、東京地検が小沢一郎、大阪地検が副代表の石井一を落とす意図を持ってやられたというのだ。特に、大阪地検は、強引なストーリーをもとに、自白を強要し、都合のいい供述調書をつくっていたことなどが、出廷した証人たちから次々と暴露された。ある大阪地検幹部も、「今回はヤバい」と漏らしているという。  元大阪市助役で弁護士の大平光代氏もこう語っている。 「9月10日、村木さんに無罪判決が下されることを確信していますが、大阪地検には控訴してほしくありません。無実の彼女を逮捕・起訴した上、さらに控訴することは、彼女の人生を二重に奪うことになる。それよりも、どう責任をとるのか、どうやって彼女の名誉を回復するのかを考えてほしいと思っています」  「朝日」が心血を注いだキャンペーンが、「村木無罪」で実を結ぶのか。だが検察という組織は、そう簡単に自分たちの恥部を見せたり、謝罪したりしないところである。この注目の判決が、検察のこれからを変える可能性がある。注目である。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ) 1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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麻酔なしで腕をナイフで切られる以上の痛さ! 小錦が明かした男性不妊治療の実情

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「週刊ポスト」9月10日号中吊り広告より
●第57回(8月24日~8月30日発売号より) 第1位 「小錦 涙の壮絶不妊治療告白『キン●マ切開手術は気絶するほど痛かったよ』」(「週刊ポスト」9月10日号) 第2位 「雅子さまの新作『フェンディ』バックが波紋を呼んだ」(「週刊新潮」9月2日号) 第3位 「ショーケン萩原健一『60歳過ぎて女ができるとは』」(「週刊現代」9月11日号)   小沢一郎前幹事長と菅直人総理大臣の代表の座を巡る争いは、菅が鳩山由紀夫前総理を介して、小沢に「和議」を申し入れるそうだから、小沢が代表選に出馬してもしなくても、小沢の復権は間違いないだろう。少しでも総理を長くやりたいために、国民を蔑ろにした民主党内の茶番劇で、腹立たしい限りである。  このところ、100歳以上の老人たちの行方不明が大きな問題になっているが、それで言えば、60歳なんぞはハナタレ小僧だが、その小僧の代表、ショーケンこと萩原健一が、カリスマ元主婦モデルの冨田リカ、41歳と結婚するという、誠におめでたいインタビューが第3位。  雑誌の対談で知り合ったとき、彼女は結婚していたが、その後離婚。晴れて結婚を前提に付き合っているそうだ。彼女を口説いたメールを萩原が紹介しているが、これがなかなかいい。 「おはようございます。リカさん、私はあなたに会うまでいつも、『もう60歳なんだ』と、トシを意識しすぎていたことに気づきました。リカさん、きみと出会った日から『まだ60歳なんだ』という言葉に変えました。(中略)あなたのような素敵な女性でしたら、たくさんの男性からお誘いがあると思います。私は、隅っこで結構でございます。正式におつきあい願えますでしょうか」  60歳には60歳の恋がある。「ひとりぐらいは、本当に幸せにしないといけない。(中略)おれはいままで、一度も完投してないから」(萩原)。前期高齢者の星よ、頑張れ。  2位は、タイトルに惹かれて読んでしまった。8月16日夕刻、東北新幹線の那須塩原駅に降り立ち、市民たちの歓迎を受けた雅子さまの手に提げられていたバッグが、波紋を呼んでいるというのだ。  これは「フェンディのバゲットバッグ」で、市価は税込みで11万1300円だそうだが、それがなぜか、皇室関係者の間ですこぶる評判がよくないという。  その代表的な意見は、皇室評論家の渡辺みどり氏のこの言葉だ。 「そもそも皇室の方々は、外国のブランド品はまずお使いになりません。(中略)原則的に日本のブランドを身につけることがほとんどで、しかも当然、どこのブランドだと分かるようなものをお召しになることもない」  バッグ一つに目くじらを立てなくてもと、こちとらは思うのだが、皇室の一員となるとそうもいかないのか。その上、適応障害で公務に出られなくなったころから、雅子さまのファッションが様変わりして、バランスが悪く、周囲からどう見られるか気に留めていないファッションになってきた、とまでいわれる。 「確かにバッグなどはご自分で購入されるほか、友人や妹たち家族からのプレゼントもあるでしょう。でも、それを公の場で身につけるなど、やはり判断を誤っているとしか言えない。私は最早、雅子さまはご自分で行動の是非を判断できなくなっているのではと心配しています」(皇室ジャーナリストの松崎敏弥氏)  皇室とはかくも大変なものかと、雅子さまに同情してしまう俺って、正常な判断ができてないのだろうか。  今週の1位は「キン●マ」の勝利。一読して、ドキッとするタイトルである。だが内容はいたって真面目な記事だ。  「新潮」では、不妊治療に取り組んでいた野田聖子議員が米国の病院で卵子提供を受け、現在妊娠15週だと告白しているが、こちらは昔体重が300キロ超あった小錦の、涙ぐましい不妊治療の話だ。  彼自身10人兄弟だったことから、大家族に憧れていたが、結婚してからなかなか子どもが授からないため、夫婦で検査に行った。すると、問題があったのは奥さんではなく、小錦のほうで、「精子がない」と医者から言われたのだ。  日本では、不妊に該当する夫婦は10組に1組で、WHOの調査によると、男性に原因があるケースは48%もあるという。  こうなると残されているのは、精巣(精子が造られる場所)から直接取り出す手術しかなかった。手術を受けたのは今年の6月下旬。麻酔をするが、その痛さは、「麻酔なしで腕をナイフで切られる倍以上といえば分かるかな」(小錦)というすさまじいものだった。  それだけの痛みに耐えたが、残念な結果に終わってしまった。今後いろいろやっても、どうしてもダメだったときは、兄弟から精子をもらうことを考えているという。今回告白したのは、男性の不妊治療への理解が少しでも世の中に広まってくれれば、という思いがあったという。 「不妊に悩む夫婦は、奥さんだけでなく、自分も精液検査をしてみて。その際、一緒に行くこと。パートナーの理解と協力が何より必要だからね」(小錦)  ネバーギブアップだ小錦! (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ) 1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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芸能レポーター・梨元勝さんの死を悼む

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謹んでご冥福をお祈りいたします。
  梨元勝さんが8月21日に亡くなった。享年65歳。 「梨もっちゃん」と私の付き合いは長い。彼が、講談社の女性誌「ヤングレディ」で芸能モノの記者をしていた頃からだから、40年近くになる。  私は「週刊現代」(同)の編集者だったが、ほぼ同年ということと、ウマがあったのだろう、よく会っては、学生運動崩れの連中が集まる新宿の居酒屋で、大酒を呑んだものだ。  彼は当時、大宮あたりに住んでいたと思う。お祖父さんに育てられたそうで、両親の話は聞いたのだろうが、忘れてしまった。お祖父さん子で、可愛がられて育ったのだろう、私のようにひねくれてない、明るく、気持ちの優しい、誰からも好かれる好青年だった。 一緒にサウナやトルコ風呂へ行ったり、焼き肉好きな彼とあちこちの焼き肉屋を食べ歩いた。  彼もあちこちでしゃべっていたが、「ヤングレディ」時代は取材の報告をさせると面白いが、原稿を書かせるとからきし駄目な記者だった。  その頃の「ヤングレディ」は、「ギャングレディ」と言われていたぐらい、芸能界では恐れられていた雑誌で、それだけにプロダクションとのトラブルも多く、そのたびに人柄を買われて、彼が謝りに行かせられたようだ。  何度か愚痴を聞いたことがある。今でも怖いプロダクションとして有名なTBS近くの某プロへ行くと、部屋に閉じこめられ、何時間も「バカ野郎! このままで帰れると思っているのか。どう落とし前をつけるんだ」と責められ続け、その間、例の調子で、「恐縮です。すいません」と謝り、数時間後、ようやく開放されたときは、ホットして、涙が出たといっていた。  その「ヤングレディ」が部数に翳りが出始め、芸能ネタをやらなくなってきたというので、私のいる「週刊現代」の記者としてこないかと、声をかけた。  後から聞いた話しだが、「ヤングレディ」時代、テレビで芸能記者座談会などがあると、上から彼に指名がかかり、ときどき出ていたという。持ち前の明るさと、話しの面白さで、テレビ局から芸能記者をテレビでやってみないかと、言われて悩んでいた。   彼から相談を受けたとき、私は反対した。「梨もっちゃん、アンタのような顔の大きな巨体では、テレビ画面に入りきれないよ」。半分冗談だったが、その当時、朝のワイドショーに出てくるレポーターたちは立て板に水の如くしゃべる人が多く、彼のように話しは面白いが、どちらかというと訥々としたしゃべりでは難しいと考えたのだ。  彼は悩んだ末、テレビで勝負してみたいと、雑誌を離れて行った。  そして彼は、それまでのレポーターとはまったく違うやり方を考えて、テレビに登場したのだ。  それは、雑誌と同じ取材方法をテレビでやって見せたのだ。「密愛」がバレた芸能人を、梨元さんが「恐縮です、恐縮です」と言いながら追いかける。その後ろからカメラがその姿を追う。マイクを突きつけるが、何も答えないで、家の中に入ってしまう。インターホンで、彼が、「恐縮です。彼女とはどういう付き合いなんですか?」と問いかけるが、答えは返ってこない。  これが雑誌の取材なら、コメント無しで終わり。無理矢理書いても2,3行にしかならない。だが、テレビで見ると、汗を流しながら、ドタドタ追いかける梨元さんと、無言で逃げる芸能人の姿が、視聴者に何かを伝えるのである。こうして新しい芸能レポーターのスタイルを確立した彼は、元祖芸能レポーターとして、テレビ界の寵児になる。  私の結婚式の披露宴では、出席者たちの声を聞くレポーター役を務めてくれた。故・山城新伍が言い出した「梨元に言いつけるぞ」が流行語になっても、忙しい合間を縫って、私が編集長をしていた「フライデー」や「週刊現代」のパーティに顔を出してくれた。  彼には、私が教えている大学の授業にもたびたび来てもらった。法政大学時代、学生運動の闘士だったこと、書けないダメ記者がテレビ界へ入っていく時、無言で相手に迫っても視聴者にはつまらないので、「恐縮です」という言葉を多用したらこれが受けたことや、芸能界の裏話を、身振り手振りを交えて話し、学生たちは目を輝かせて聞いていた。  彼がテレビ界で成功したのは、人脈の多さや、情報の早さが抜きん出ていたからではあるが、もう一つ忘れてはいないことがある。それは、権力への批判精神である。  この場合の権力は、芸能界を牛耳っている権力のことである。2001年に「SMAP」の稲垣吾郎が逮捕されるという事件が起きた時、ジャニーズ事務所に配慮して報道を控えたい上層部と対立して、『やじうまワイド』『スーパーモーニング』(テレビ朝日系)への出演をボイコットしたことがある。  ジャニーズでもバーニングでも、言うべき時にいうべきことはいう。それが彼と、他の凡庸な芸能レポーターとの決定的な違いであった。  結果的には、そうした反骨精神がテレビ界から疎まれていく。06年6月に、レギュラー出演していた番組が、「これからはジャニーズのニュースは扱わない」との方針を打ち出したことに反発し、降板したことから、テレビへの露出が激減していった。  だが、梨もっちゃんは意気軒昂だった。もはやテレビの時代ではないと、慣れないながら、ネットを駆使して、「梨元芸能!裏チャンネル」などを開設し、芸能情報を発信し続けていった。  私も昔、インターネット・マガジン「Web現代」をやっていたこともあり、彼もよく相談に来ては、これからやらなければならないことを語り合った。  私も30年ほど前、ジャニーズ事務所のジャニー喜多川氏のスキャンダルを記事にして、週刊誌から女性誌にすっ飛ばされたことがある。今や大権力になったジャニーズ事務所について、二人がゲストを呼んできて毎週語り合う、ネット番組をやろうかと話し合っていた。  毎年恒例になった、正月にハワイで過ごす芸能人を追いかけるために、一人でパソコンとビデオカメラを担いで、ネット中継も続けていた。  昨年の、のりピーこと酒井法子夫妻の覚せい剤事件の時は、彼の依頼で、「酒井法子 隠された素顔」(イーストプレス)を緊急出版するプロデュースをした。  そのなかで彼はこう書いている。「芸能人の薬物事件は断固として許さないという姿勢で、社会、そして私たちジャーナリストは臨む必要があります。保釈後の記者会見での酒井法子の姿。それを決して「きれい」で終わらせてはいけないのです」  体のためだと、地方のテレビ局へ出演しても、毎日、1万歩は歩いていた。タバコは吸わず、昔のように暴飲暴食もしなかった。それは、権力にひれ伏し、自分の口を封じようとしたテレビ局や、権力を笠に着てワガママ放題の芸能プロとの闘いを継続するために、彼なりの決意の表れだったのだと思う。  今年6月、突然のがんの告白にビックリした。メールの返事に、「いろいろご心配かけて恐縮です。副作用凄く面会謝絶になってしまいました。頑張ってます。ツィター毎日やってます。面会できるようになったら是非是非お会いしましょう。ありがとうございます」とあったので、退院できるまでに少し時間がかかると思っていたが、これほど長きになるとはと心配していたのだが、残念で仕方がない。  長い友人として、同じ現場で闘った戦友として、梨元勝さんの死を心から悼む。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ) 1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
梨本勝の芸能界暗黒都市伝説 もう「恐縮です」って聞けないんだね。 amazon_associate_logo.jpg
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