新聞・テレビが伝えない 週刊誌"震災特集"の底力

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「週刊文春」3月31日号
スクープ大賞 「大震災関連特集」(「週刊文春」3月31日号)  日本テレビ会長の氏家齊一郎さんが3月28日、多臓器不全のため亡くなった。享年84歳。  氏家さんとはずいぶん長くお付き合いさせてもらった。読売新聞の経済部長、広告局長などを歴任し、「カミソリ氏家」とうたわれるほどの切れ者で、務臺光雄会長(当時)の後継者だと言われていた。  しかし、自分の座を脅かす存在になってきた氏家さんに、務臺会長はおびえ、日本テレビの副社長に降格させ、さらに、そこからも追い出してしまう。  務臺氏が亡くなり、1992年に日本テレビの社長に返り咲くまで、氏家さんは長い浪人生活が続いた。そのころに取材で知り合い、私のことを気に入ったのか、「おい、モッちゃん、呑まないか」とよく声が掛かり、一緒に呑んだものだった。  不遇の時に知り合ったためか、社長になってからも数カ月に一度は杯を交わし、「ナベツネ(渡邉恒雄・読売新聞主筆)は表の顔、政界の裏工作は俺がやってるんだ」と、政界の裏話を聞かせてくれた。  フジテレビを抜いて視聴率三冠王を奪い取った時、好調の秘訣はと聞くと、「オレは何も分かんねぇから、口を出さないことだ」と言ってニヤッと笑った。  だいぶ前に、氏家さんから「政界秘話」を本にする了解をもらっていたのに、約束を果たすことができなかったのが心残りである。いくつになっても背筋のピンとした格好いい人だった。  さて、福島原発の危機が日を追うごとに深刻になっている。いくら枝野官房長官が「ただちに健康への重大な影響はない」とバカのひとつ覚えのように繰り返しても、国民の大多数は、聞けば聞くほど、不信感と不安感が深まるばかりである。このままでは、日本人総うつ状態になってしまう。  先週号「ポスト」の「日本を信じよう」というコピーは共感を呼んだが、原発危機については何を信じればいいのだろうか。  「朝日」で始まった広瀬隆氏の緊急連載「原発破局を阻止せよ!」を読むと、「体内被曝」の恐ろしさに震え、すぐにでも海外逃亡したくなる。  そうした危機をあおる記事の多い中で、「ポスト」は「新聞・テレビも間違いだらけ『放射能と人体』本当の話」で、「甲状腺がんを誘発するというヨウ素131は、40歳以上は心配しなくていい」「セシウム137は数カ月もすれば体外に排出される」「チェルノブイリ原発事故では、放射性物質や核燃料で死亡した住民はいなかった。汚染された食料を子どもたちが食べてしまったために、甲状腺がんの発生率が激増したが、この病気は治癒できるため2006年時点で死亡したのは15人だった」「被曝者から生まれた子どもの死亡率、染色体異常の発生率、身長・体重などの異常は『全く認められない』という結論が出ている」「今回の事故処理に従事した東電社員より宇宙飛行士のほうが多く被曝している」などと書いている。  確かに生半可な知識で恐怖心をあおるべきではないが、これでは、放射能なんて心配することはないといわんばかりで、政府と東電の記事広告かと見紛うばかりである。「ポスト」さんどうしたの?  「ポスト」の記事はまれで、政府と東電と原子力安全・保安院の大本営発表と、テレビに出ている御用学者の真実から目をそらすコメントがけしからんという週刊誌が圧倒的である。  ならば、御用学者たち(NHKの山崎淑行科学文化部記者か水野倫之解説委員でもいい)と、それを痛烈に批判している広瀬氏やフォトジャーナリスト・広河隆一氏、元原子炉設計者で科学ライター・田中三彦氏らとの「激論対談」を誌上でやってほしいね。  福島原発の現状はどこまで深刻で、これからどう推移するのか。本当に5年後10年後に、健康被害は心配ないのか。原発がなければ日本の電力は賄えないのか否かを、雑誌の全ページ使ってやれば、みんな競って買うと思う。  「現代」の「外国人記者が見た『この国のメンタリティ』『優しすぎる日本人へ』」は好企画である。被災地を取材した外国メディアの記者たちは、多くの日本人があきらめではない、ピンチの時こそ一つになろうという意味で「仕方ない」という言葉を使って、必死で耐えていることに感銘を受けたとある。  そう、この世は仕方ないことばかりなのだ。現状を受け入れる潔さ、諦観こそ日本人の美徳ではある。  だが、その内向的な性向は、原発問題について、「日本政府の対応には問題があるし、日本政府の情報は信用できない。それなのに、日本人は政府を非難しようともしない」し、無責任な対応をする東電に対しても、「不思議と日本のメディアや国民の多くは、東電の責任追及を行う気がないようにも見えます」(「ニューヨーク・タイムズ」東京支局長マーティン・ファクラー氏)。こうした国難の時、優しすぎるのは美徳ではない。  今週のスクープ大賞は、「文春」の大震災関連特集にあげたい。質量ともに他誌を圧している。  巻頭の「御用メディアが絶対に報じない 東京電力の『大罪』」には、「自殺説も流れた清水東電社長」「『津波で原発の8割がダメになる』放置された致命的な欠陥」「佐藤栄佐久・前福島県知事決定的証言『東電が副知事を脅迫した!』」「首相を無視して直接米軍に支援を要請」「内部告発もモミ消す経産省、原子力保安院との黒い癒着」や青沼陽一郎氏のルポ「原発20キロ圏『見捨てられた町』を行く」もいい。  石原慎太郎氏の直言「菅総理はさかんに現地視察に行きたがっているが、市民運動家というのは、やはり御用聞きなんですな。『何かお困りのことはありませんか』と町内を回るだけで、大所高所からのリーダーシップや構想力を持ち合わせていない」は、言い得て妙である。  また一本一本が短いのが残念だが、「震災で消えた『16の事件簿』」もいい。「みずほ銀行ATM停止」「大相撲夏場所」「7月地デジ」「NZ地震」「千葉・鳥インフルエンザ」など、忘れてはいけないことがある。  こういう新聞、テレビがものを言えないときこそ、週刊誌の出番である。有事に強い週刊誌の底力を発揮して、国民の疑問に答えてくれ。 (文=元木昌彦) 
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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「正しいパニックを起こそう」 未曾有の原発危機に広瀬隆氏が提言 元「FRIDAY」「週刊現代」編集長が提言「いま週刊誌がやるべきこと」とは カッコ良すぎ!! "セレブ外交官"ジョージ・クルーニーの生き様

「正しいパニックを起こそう」 未曾有の原発危機に広瀬隆氏が提言

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「週刊朝日」3月25日号
第1位 「福島原発で本当に起きていること 広瀬隆」(「週刊朝日」3月25日号) 佳作 「伊集院静『被災地・宮城から見たこの国』」(「週刊現代」4月2日号)  先週末から関西へ疎開して、今朝(3月22日)東京に帰ってきた。疎開というのは嘘だが、よんどころない仕事があって京都へ行くことになり、それならばと、土曜日に東京を離れることにした。三連休に原発問題があるので、東海道新幹線のキップがとれるか心配したが、11時東京発の新幹線のぞみは空席が目立っていた。  疎開気分を味わおうとしたわけではないのだが、用事で外出した以外は部屋に閉じこもり、原稿を書いて、メシは旅館のすぐ近くの居酒屋とうどん屋で済ませた。  雨が降っていて、ホテルのすぐ裏が墓地ということもあるのだろう。三条京阪駅や先斗町も近いのだが、京都も町全体がどんよりして、活気や華やかさが感じられないような気がしたが、これはこちらの心象風景の投影だろうか。  その間に、新聞2紙と週刊誌2誌から電話があり、「日刊サイゾーを読んだが、地震が起きた日は中国・北京にいて、東京電力のえらいさんと一緒だったというのは本当なのか」と聞かれた。  こちらもメディアの端っこにいる人間だから、事実関係については話をした。この旅行は以前から決まっていた日中友好旅行で、われわれは上海、南京、北京と回ってきたのだが、彼らは北京で合流した。  地震が起こった3月11日、彼らも至急帰国しようとしたのだろうが、成田空港が封鎖され、関空に行っても新幹線は運休だから東京へ帰る術がなかった。そのため、翌日早朝の飛行機で帰ってきたようだ。  だが、「文春」によれば、東京電力・清水正孝社長も所用で名古屋にいて、ヘリで至急帰ろうとしたのだが、空港で止められ、仕方なく防衛省に頼み込んで、夜中に東京へ戻ったとある。  素人判断だが、原発事故で大事なのは、地震や津波による破損や障害の程度を把握して、即刻どうするかを決断する「初動」の速さであろう。  日本でもそうだったように、北京でも夜中まで携帯電話は繋がらなかった。瞬時に判断を下さなければいけないトップの人たちが東京にいなかったことは彼らにとっても不運だが、日本人にとっても不幸だったということにならなければいいのだが。  各誌総力戦で被災地を取材し多くの写真を掲載している。どれを見ても胸が張り裂けそうなものばかりだが、「現代」のカラーグラビアに目が止まった。「宮城県仙台市」とある。津波が引いたあと自宅の階段で発見された犠牲者の写真。逃れようとして階段を上がろうとしたところを津波にのみ込まれた老女だろうか。  今回の死者は2万人を超えるという報道もあるが、その犠牲者の多くが、津波によるものであろう。東海大地震が予想されているようだが、国が早急に進めなくてはいけないのは津波対策である。10メートル以上の津波に備える防波堤をつくることはできるのか。できないとすれば、海から何キロ以内には住んではいけないとする法律を作るのか。そんなことが可能なのか。島国日本の最重要課題である。  さて、被災地ルポも各誌力を入れているが、これはテレビには敵わない。週刊誌に望むのは、なぜ被災地に食料などが届かないのか、菅直人をはじめ枝野や仙谷は、なぜ十全な手を打たないのか、打てないのか、なぜ東京電力は原発の被害状況を正確に発表しないのかなど、国民の疑問を徹底取材し、読者に知らせることである。  有名人たちの手記がいくつか載っているが、中では、仙台在住で地震を体験した伊集院静氏のものが一番読み応えがあった。  地震の描写はさすが手馴れたものだが、それよりも興味深いのは、現地に住んでいる人ならではの怒りや悲しみが、よく伝わってくることだ。  たとえば、地震発生から4日目、ようやく電気が通じ、テレビを点けたときのことである。 「東日本の、被災した人々が共通して思ったこと。それは『この人たちは私たちを見捨てているのか』という驚きと失望ではなかったのか。テレビのキャスターの一人が、『あの波が押し寄せる光景はまるで映画を見ているようです』と口にした。(中略)君にとってこの惨事は劇場の椅子にふんぞり返って眺めるものなのか。言葉の間違いというより、人としての倫理観の欠落、無人格以外の何物でもなかろう。日本人はここまで落ち果てたか」 「唯一の被爆体験を持つ国の一企業が、その怠慢で事故の報告を曖昧にし、原発のことを何一つ勉強していない政治家が右往左往している現状。『計画停電』報道のこの無神経さは何だ? 被災地には夜に光さえない。少しは我慢できないのか。株を投げ売りし、コンビニに買い出しに殺到し、ガソリンも入れるだけ入れておこうとする日本人、いったいいつからこんな国民になりさがったのだ」  地震が起きた夜、彼が空を見上げると「驚くほど星があざやか」だったそうだ。  さて、福島原発の危機はいまだに去ったわけではない。東電の職員をはじめ、自衛隊員などが命がけで作業しているが、安心していい段階まで行くには、まだ時間がかかるはずだ。  関東でも野菜や牛乳に放射能が検知され、相当な放射線物質が空中に飛散していることは間違いない。  広瀬隆氏は、1970年代からずっと原発の危険を訴えてきた人である。私は、広瀬氏が原発の危機を強調したいがために、やや牽強付会なところも目立ったため、このところ、この人の本を読まなくなったのだが、今回のような未曾有の原発危機には、この人の言葉に耳を傾けないわけにはいかない。 ニュース専門チャンネル 「朝日ニュースター」でも広瀬氏がインタビューされているが、「正しいパニックを起こそう」という言葉が腹にしみ込んだ。政府や東電は本当のデータを公表したらパニックが起こることを心配している、という報道があるが、これは間違いだとして、いまは全部公開して、正しいパニックを起こすことが必要なところまできていると言い切る。  「朝日」でも、今回の事故は、炉心溶解が進行し、最後に燃料棒全部が溶け落ち、鋼鉄製の原子炉の容器を溶かしてしまう、いわゆる「チャイナ・シンドローム」が起きるのではないかと、悲観的にならざるを得ないと話している。  この談話は、IAEA(国際原子力機関)が、今回の事故をスリーマイル島の原発事故と同じレベル5に引き上げる前である。  彼は、このような大津波は予想していなかったという東電に、ほんの100年ほど前に明治三陸地震が起きていて、このとき岩手県沿岸の津波が38メートルを記録したとあるではないかと、批判する。  また、13日に、福島原発の周辺で1時間あたり1557.5マイクロシーベルトを記録したのに、枝野官房長官や専門家が、微量だから健康に影響はないといっているのは大嘘だと怒る。 「これに24時間と365日を掛けて年換算すると、通常の年間被爆量の1万3千倍を超えます。それで平気なのでしょうか。レントゲンや航空機に乗ったときの被爆と比較するのは犯罪です」  当然だが、彼も「何とかこの危機を回避してほしい」と願っている。全国にある54基の原発をやめても、電力量には支障ないという。「日本中にある工場の自家発電を全部動かせば、原発分の電気をまかなえるのです」と言い、テレビでも、いまの水力と火力で十分だと言っていた。  こうした彼の言い分も、今後、東電側にすべてデータを公表させた上で、国民が判断すべきことだろう。のど元過ぎれば熱さを忘れるのは、日本人の一番悪いところである。  原発はCO2を出さないから、世界に日本の原発を売り込みたいといった、鳩山由紀夫というアホな首相がいたことも決して忘れてはいけない。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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元「FRIDAY」「週刊現代」編集長が提言「いま週刊誌がやるべきこと」とは カッコ良すぎ!! "セレブ外交官"ジョージ・クルーニーの生き様 還暦まであと5年 桑田佳祐の音楽はどこへ向かう?

元「FRIDAY」「週刊現代」編集長が提言「いま週刊誌がやるべきこと」とは

IMG_2399.jpg ※日刊サイゾーは省エネ運転中です。 ●第82回(特別版)  地震の報は旅行中の中国・北京で聞いた。外交部の副司長と面会に行くバスの中でiPadを開いた瞬間、東北地方でマグニチュード7.7の大地震が発生というニュースが目に飛び込んできた。  私は、すぐ後ろにいる二人に、そのニュースを見せた。その二人は、東京電力のトップである。  我々は一行は約20人、民間の日中友好団体で、上海、南京と周り、前日に北京へ来たのだ。  東電の二人は青ざめたが、停電の報がないのでやや安堵したようだ。しかし私は、ニュースの中に「九段会館の天井が崩れ負傷者が出ている」というニュースを見つけ、東北地方だけではない広範囲にわたる地震ではないかという予感がした。  日本語が堪能な副司長との面談も気がそぞろで、終わるや否や、全員が携帯でニュースを食い入るように見る。マグニチュードも8.8に引き上げられ、10メートルの大津波が沿岸を襲っているというニュースに、悲鳴のような声が上がった。  「福島原発はどうなるのか」という声も聞こえる。  各自、携帯で日本へ連絡するがまったく繋がらない。東電の二人は、日本へ戻る飛行機がないか秘書に探させているが、成田空港はすでに閉鎖されていて、関西空港へ出るしかない。だが、旅客機はもちろんのこと新幹線が動いていないから、東北へ行く交通手段はない。日本の事情を聞くためだろう、北京の東電支社へ行ために、あわただしくバスから降りていった。  訪中はだいぶ前から決まっていたことだが、彼らは、こんなとき日本に居られないことに、居ても立ってもいられなかったことだろう。  訪中団をガイドしている中国の人間から、北京空港などに連絡を取ったが、日本行きは全便ストップしていると伝えられる。明日は、成田空港が再開されれば帰国できるとは思うが、何時になるか分からない。そのため、できる限り早く北京空港へ行って待機してもらうと付け加えた。  その夜会った中国人の一人から、北京でも、その時間に揺れを感じたと聞かされた。どれほどの規模なのか? 想像もつかない巨大地震であることが、ネットを通じた日本の報道で次々に分かってくる。  体験してはいないが、揺れた瞬間の恐怖が、体の奥底からこみ上げてくるようだ。  団の中には、仙台に居を構えている者もいるが、いまだに携帯はつながらない。夜のスケジュールを終えると、全員一目散にホテルへ戻る。  ホテルでは、日本の放送を見ることができるからだ。テレビをつけるとNHKのBSだろう、地震の惨状をライブ中継している。映像は、想像を超えるすさまじさである。  食い入るように見つめながら、都内の家人にメールを打つ。すぐに返事があり、家ではなく駅近くのビルにいたが、揺れが激しく長かった。築40年になる家が潰れているのではないかと心配して戻ったが、本やCD、ファイルが崩れ落ちたぐらいで、大きな損傷はないことを伝えてきた。  次の朝、6時半に北京空港へ向かう。朝が早いことと、この時期、日本人の旅行客が少ないこともあるのだろう、空港内は予想外に閑散としていた。  予定通り、9時過ぎに飛行機は飛び立ち、1時半ごろ成田空港へ着陸。しかし、それからが大変だった。  電車のキップを買うために並んでいると、後ろの母娘が、「あと少しでオランダに行けたのにね」と話しているのが耳に入った。どうしたのかと聞いてみると、彼女たちは11日、午後2時45分の飛行機でオランダ旅行に出かける予定だった。やや出発が遅れたため地震が発生、飛行機は飛ばず、帰ることもできないため、空港近くのホテルに一泊したのだそうだ。  明るい二人は、「あと5分、地震が遅れてくれれば行けたのに」とは言いつつ、さばさばした表情で話してくれた。  JR成田エキスプレスはいつ動くか分からないし、高速道路は閉鎖。結局、京成の各駅停車で八千代台まで行き、上野行きに乗り換え、日暮里で山手線に乗り換えて帰ることになったが、乗客のほとんどが大きなバックを運んでいるため、社内は終戦直後の満員電車もかくやという大混雑。  駅で「文春」(文藝春秋)と「新潮」(新潮社)を買うが、もちろん地震情報はない。月曜日発売の「現代」(講談社)「ポスト」(小学館)も木曜日校了のため、菅直人総理批判や八百長の記事はあるが、地震情報はもちろんのこと、私が以前からい言っていたように、石原慎太郎氏の都知事選出馬表明も入っていない。  新聞社系の「朝日」(朝日新聞出版)と「毎日」(毎日新聞社)は普段ならギリギリ間に合ったはずだが、今号は恒例の「大学合格者高校ランキング」速報のため、先週土曜日発売だったからこれもダメ。かろうじて「AERA」(朝日新聞社)が「太平洋沖地震『想定外超巨大型』次は内陸が震源?」「ツイッターとコンビニだけが頼りになった」「東京23区『倒壊危険度』マップ」を掲載している。  中国旅行中、こんなこともあった。某月刊誌編集長と一緒だったのだが、7日(月曜日)だったと思うが、彼の携帯が何度か鳴った。  相手は、田母神俊雄元空幕長(62)か、その関係者のようだった。「新潮」にスキャンダルを書かれるがどうしようかというものだった。  彼によれば、田母神氏には若い彼女がおり、妻と離婚して、結婚したいそうだ。いい歳をしてとは言うまい。だが、彼女を講演先に同行し、妻だと紹介しているというのだから、バレるのは時間の問題だった。  たいした長い記事ではないが、「新潮」が「離婚前でもフィアンセを見つけた『田母神元空幕長』火宅的有事」で、その顛末が書いてあるが、田母神氏の細君は離婚を否定している。講演料50万円もふんだくる保守派論客の有事はまだまだ続きそうだが、ま、どうでもいい話しだ。  この原稿を、テレビの地震情報を流しながら書いているが、昨夜会った毎日新聞の朝比奈豊社長が言っていたように、死者が1万人以上になることは間違いないようだ。  さらに恐いのは、福島の原発が危険水域を越えそうなことである。枝野幸男官房長官が「格納容器の健全性は維持されている」といっても、国民を安心させるのは難しい。  14日の福島第一原発3号機の爆発で、専門家はこう言っている。 「技術評論家の桜井淳さんは『状況は非常によくない。これ以上怖いのは、3号機に冷却水を注入できなくなり、被覆管がボロボロになって圧力容器の底に落ちると、圧力容器が割れるかもしれない。格納容器まで破裂するかもしれない。そうすると、大量の放射能が環境中に放出される。スリーマイルよりひどい事態になるのでは』と推測する」(asahi.com3月14日より)  原発関係者が、これほどの大地震を想定していなかったなどと寝言をいっていたが、今後、徹底的に追及しなければいけない。原発の是非も、改めて国民的な議論をするべきである。原発の「安全神話」は完全に崩れたのだから。  戦後初めて直面する最大の国難をどう乗り切るのか。こうした未曾有の非常時に「空き菅」総理が居残っていたことは、この国の最大の不運だが、今さら嘆いてばかりいても仕方あるまい。国民一人ひとりが我がこととして、何をなすべきかを考えなくてはいけない。  原発情報の完全な透明性の確保。被災者への迅速で手厚い手当をして、二次災害を防ぐ。何よりもお粗末な、NTTを始めとする通信会社のインフラを早急に増強させ、速やかに携帯で安否確認ができるようにすること。  これから週刊誌がやらなければいけないことは、国や東電を始めとする電力会社が、重大な情報を隠していないか、復興のための膨大な費用をどのように捻出するのかを監視し、逐一伝えていくことだ。  新聞、テレビは、有事の際は国家の公報機関となってしまうこと、歴史が証明している。これからが週刊誌の力を示す正念場である。  今週は、当然ながらスクープ賞に値する記事はなかったため、私の中国旅行中の話を中心にまとめさせてもらった。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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「ニューズウィーク日本版」3月2日号
●第81回(2月22日~2月28日発売号より) 第1位 「セレブ外交官、ジョージ・クルーニー」(「ニューズウィーク日本版」3月2日号) 第2位 「独占公開 佐藤寛子 封印されたヘアヌード」(「週刊現代」3月12日号) 第3位 「独占公開 小向美奈子 in MANILA」(「週刊ポスト」3月11日号)  朝、駅で、「現代」「ポスト」「朝日」「AERA」を買って、早稲田のオフィスへ行く。優れもののタイガー電気ケトルでお湯を沸かし、最近気に入っている伊藤園の「抹茶入り緑茶・プレミアムティーバッグ」で濃いめのお茶を飲み、日本橋錦豊琳の「ねぎみそかりんとう」をボリボリ食べながら、週刊誌を読む。  昔は、甘い物など口にしなかったが、年を取るにしたがって好きになった。ときどき、午後3時頃近くの喫茶店に入り、コーヒー・ケーキセットを食べながら、ぼんやり、早稲田大学の正門通りを闊歩していく大学生を見ている。これって呆けてきたということかな。  今週選んだ二つは、ともにグラビアである。要は、大相撲の八百長記事や菅直人首相への罵詈雑言も聞き飽きたし、他に見るべき記事がなかったためだが、この二本は必見である。  一本目は、フィリピンから帰国し、覚せい剤取締法違反容疑で逮捕された小向美奈子のマニラで撮られたカラー写真。  先週号で「ポスト」が「独占インタビュー」に成功したが、その際撮影したものである。最初に出てくる「ヤシの木の下に佇む」姿は、ポスト記者が「かつての姿とは別人といっても過言ではない」と"断言"するほど変わり果てた(失礼!)小向が写っている。  先週号のモノクログラビアで小向を見たとき、思わず「女相撲」と叫んでしまったが、カラーで見るとさらに迫力を増す。ポールダンスとかいうのだそうだが、天井から伸びたポールにしがみついている小向は、どう見てもダンスというより、ゴリラが木にぶら下がっている図である。  記者が今の心境について聞くと、「自分に一番腹が立つ」と小向は答えているが、己の姿に腹が立っていることだけは間違いなさそうである。これだけ豊満な彼女を見ていると、覚せい剤をやっていたなんて信じられないがね。  お次は現代の人気グラビアアイドル・佐藤寛子のヘアヌードである。もったいぶって袋とじにしてあるが、だいたい、たいした写真でないときに袋とじにしたがるもんだと、ブツブツいいながらハサミで切り、開いた。おやーッ、これはなかなかの迫力である。  映画『ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う』(石井隆監督)の中からのショットだが、26歳になる佐藤の迫力ある肢体とヘアがバッチリ写っている。  こういう写真を評する言葉を持ち合わせないが、久しぶりにそそられる淫猥な雰囲気の漂う写真である。  思わず、DVDを買ってみようかなと思わせるが、佐藤の絡みの相手が竹中直人では、やっぱりやめとこうか。  このところ、ヘアヌードとは名ばかりのグラビアが多くて欲求不満気味だったが、これは汚名返上。こうした、きれいで迫力のあるヘアヌードなら、まだまだ売り物になるはずだ。そう思わせてくれた「現代」に、応援のエールを送る意味で今週の準優勝。  今週のグランプリは久々に「ニューズウイーク」の記事。これはいい。表紙に「セレブは世界を救えるか」とある。俳優のジョージ・クルーニーがさまざまな支援活動をしているのは知っていたが、これほど熱心でスケールの大きなものだとは思わなかった。  ボノ、ショーン・ペン、ディカプリオ、アンジェリーナ・ジョリーをはじめ、多くのスターたちが紛争地や被災した現場に出向き、政治を動かし、社会貢献をしている。  クルーニーもそのひとりである。だが、父親が報道番組のアンカーマンをやっていたこともあるのだろう、彼と北アフリカ・スーダンとの関わり方は、並みの外交官など真似のできない誠意と情熱がある。  アフリカ最大の国スーダンは長い内戦状態を脱し、南部スーダンは住民投票でようやく独立を勝ち取ったが、1983年以来の内戦で200万人以上の命が失われたと言われる。  今でも南北境界線は緊迫し、中央政府は5万5,000人の兵士を派遣している。そこでクルーニーは、「自分で資金を出して監視用の人工衛星を手に入れ、誰でもアクセスできるように公開(http://www.satsentinel.org)した。この衛星は今、緊迫する南北境界線付近の軍隊の動きを上空から監視している。(中略)『俺は国連ともアメリカ政府とも関係なく活動している。そして俺は480マイル上空に監視カメラを据えた』とクルーニーは言う。『いわば反ジェノサイドのパパラッチだ』」  父親と初めてスーダンを訪れたとき、滞在した難民村に、井戸や住居、地域センターを造る資金を寄付したが、その1年後、水や住居を狙う近隣住民に襲われて、何人もが殺されてしまったという体験から、いくらカネをばらまいても問題の解決にはならないことを知ったという。  彼は、貧困にあえぐアフリカ諸国を救済するために、債務の免除を各国に訴え、ブッシュ政権にエイズ治療薬への資金援助を増やすよう働きかけ、成功した。 「商品を売り込む以外にも、セレブの使い道はあるんだ」(クルーニー)  彼は現地を訪れ、緊張が高まる近隣地域の首長と話し、紛争を食い止めようと努力したり、北部から帰還してきたキャンプ地に行き、救援ワーカーたちと一緒に簡易ベッドで寝る。  独立を決める住民投票はほぼ絶望的だと、南部スーダンの人々も思っていた。だが、あと100日まで迫った時点で、クルーニーがメディアを通じて強力なキャンペーンを開始すると、関心は一気に高まり、形勢は大逆転したのである。 「『ここに暮らし、妻子が虐殺されることを恐れている男の訴えを世界に届けることが俺の仕事だ』と、クルーニーはセレブの役割について熱く語る。『彼は山の上で叫びたいだろうが、彼には大きなメガホンもなく、高い山もない。俺にはメガホンもあれば、山もある。彼に自分の代わりに叫んでくれないかと頼まれたら、一も二もなく答えるさ。いいとも、俺が代わりに叫ぶよ、と』」  彼は政治家になる気はないそうだ。「女遊びもドラッグも、散々やってきた」から、何度か誘いはあったが断ってきた。  だが、もし候補者になったらこう言うそうだ。 「クスリをはじめ、悪いことは全部やってきた。隠すつもりはない。さあ、こんな話題はもう終わりだ。この国の問題について話そう」  本当の格好いい男とは彼のようなことをいうのだ。見せかけだけで中身のない、日本の"芸ノー人"たちとは決定的に違う。ますますクルーニーが好きになってきた。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか 〈お知らせ〉ノンフィクション・ライター朝倉喬司さんを偲ぶ会を3月13日(日曜日)、午後5時から一ツ橋の「如水会館」で行います。問い合わせは、03-3261-0781『現代書館』村井まで。 
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還暦まであと5年 桑田佳祐の音楽はどこへ向かう? 大相撲の「八百長」をのさばらせてきた大マスコミ・司法の責を問う 「評価されすぎ!?」副知事辞任で見えた河村名古屋市長の実像と虚像

還暦まであと5年 桑田佳祐の音楽はどこへ向かう?

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「週刊ポスト」3月4日号
●第80回(2月15日~2月21日発売号より) 第1位 「完全独占告白 小向美奈子『覚醒剤と妊娠とイラン人』」(「週刊ポスト」3月4日号) 第2位 「今こそ世に問う元大鳴戸親方『怪死』マル秘メモ」(「週刊ポスト」3月4日号) 第3位 「大復帰インタビュー『桑田佳祐』と生きる」(「AERA」2月28日号)  講談社の社長交代が決まった。夫に早世され、主婦から社長に就任し20余年務めてきた野間佐和子氏が、息子の野間省伸副社長にその座を譲ることになった。  それに伴って、かなりの役員人事も行われるそうだ。1990年代の半ばに約2,000億円あった売上げが毎年のように減り続け、09年度は1300億円程度まで落ち込んだ。これを銀行員出身の彼が立て直せるのか、OBの一人として、大きな期待と少しの不安が入り交じる。  社長交代は2月の株主総会ではなく、4月になるそうだ。その理由は、占いか何かでその日がいいと(現社長の意向だと思われるが)決めたと聞いた。会社再建が神頼みだけにならないよう祈りたい。  さて、昨年7月に食道がんが見つかったが、幸い軽かったため、年末のNHK『紅白歌合戦』で元気な姿を見せた桑田佳祐(55)が、アルバムを発表したこともあるのだろう、引っ張りだこである。  「BRUTUS」3月1日号は「桑田佳祐」緊急特集を組み、「AERA」も巻頭インタビューしている。  それによれば、父も姉もがんで亡くしているがん家系で、「自分も可能性がなくはないな」と思っていたそうだ。がんだと知らされたとき、「呪いはしなかったけど、人生って不条理なもんだなあとは思いましたけどね」と、語っている。  入院中に聞いていたの「ボブ・ディランのテーマ・タイム・ラジオ・アワー」と小唄とジャズだったというのが面白い。  立川談志師匠も食道がんだったが、最悪の場合、声を失ったり声帯が傷つくことがある。もしそうなれば声を使う人間には致命的だが、幸い無事に手術を終えた。  術後、完成したアルバム『MUSICMAN』(ビクターエンタテイメント)にこんな歌詞がある。 「暗闇が目の前に迫り来る 生きるは寂しさを知るためか 涙こらえて口笛吹けば 星が瞬く空の下」(「グッバイ・ワルツ」より)  08年にサザンオールスターズの無期限活動中止を発表した心境をこう述べている。 「だんだん自分も年老いていくわけだし、いま主流の音楽と折り合いをつけるのはちょっと難しいなと思っていたんですね。(中略)周りを意識するほど、、時代とどうしてもすり合わせていこうとする。それで後悔していることもあるんですね。だからもう、年相応じゃないけど、楽になっちゃおうと思った」  桑田サザンと言えば砂浜と恋とサーフィン。だが、50代半ばになった桑田が紡ぎ出す音楽は、これからどこへ向かうのか。  湘南の海の男の象徴だった石原裕次郎は、そのイメージを残したまま52歳で亡くなった。同じイメージを持った加山雄三は70歳を過ぎても海の男を歌い続けている。5年後、60を過ぎた桑田は、どんな歌を歌うのだろうか。  今週の第2位は、数多ある大相撲八百長関連の中で、八百長追及の元祖・「ポスト」の記事にした。記事自体は今から15年ほど前に「ポスト」が書き立て、一部で騒ぎになったが、いまだに不可解な謎の多い「事件」として、私の記憶にも残っている。  当該の記事は96年2月にスタートした「元大鳴戸親方(元関脇・高鉄山)の告発手記」である。友人である橋本成一郎氏と二人で、詳細な八百長についての証言と、角界の薬物汚染や暴力団との交際など、タブーを洗いざらい暴露したのである。  今考えれば大変な重大証言だったが、いつも通り相撲協会も記者クラブも無視した。だが、日本外国特派員協会で講演することが決まり、二人は、これで角界浄化ができると喜んでいた矢先、突然二人とも亡くなってしまうのだ。それも同じ病院で、死因も同じ「重症肺炎」だった。  無念の2人が遺したメモが残っていて、そこにはこう書かれている。 「財団法人を隠れミノにしての脱税、ファンを裏切る八百長、暴力団との交際......。やっていることはデタラメばかり。これで人を殺せばオウム真理教と同じである。(中略)相撲を日本の文化とか国技というのはもってのほか。この世界は騙し合いと私利私欲の世界なのである」  「文春」がスクープした小向美奈子(25)の覚醒剤疑惑だが、今週は「ポスト」が、マニラで小向のインタビューに成功した。この記事が今週のグランプリ。  記事とは別にモノクログラビアで、2月10日に小向の友人が撮影した彼女の写真が載っているが、女相撲かと思うほどの膨れ方である。だが、インタビュー記事の彼女は、さほど太っていないように見えるから、ポールダンスとキャベツだけのダイエットが奏功したのだろうか。  ポスト誌記者は、今年1月4日に小向から電話をもらって、マニラへ行って英語とダンスの勉強をすると聞いていたから、逃亡ありきのフィリピン滞在ではないのではないかと、各メディアの報道に疑義を呈している。  それはともかく、逮捕された覚醒剤密売グループのイラン人が「小向に複数回、覚醒剤を販売していた」と供述したと伝えられていることに、大筋このように話している。  イラン人とは、彼女が付き合っていたシャブ中の彼氏からいわれて、その男のところへ覚醒剤を買いにいったことから始まった。  優しい男で、敬虔なイスラム教徒だから、親しいが小向と男女関係はないし、覚醒剤を買ったこともない。昨年夏前に、そのイラン人から「売人をやめたい」という相談があった。悩んでいる男を見ていて、そばにいずにはいられなかった。だが、親しかったイラン人が、彼女に覚醒剤を販売していたと話しているとすればショックだ。  そして、このことを「日本に戻ってきちんとありのままをお話しします。出頭します。逃げてるつもりなんてそもそもなかった。私はそもそも逃亡犯なんかじゃない」と、断言している。  しかし、グラビアを見る限り、太り方が尋常ではない。クスリを抜くためのマニラ行きだったのではないかという疑念は、インタビューを読んでも消えない。  小向は、10代半ばでグラビア・アイドルとして芸能界に入り、売春まがいの行為まで強要され、精神的に傷つき、シャブ中の男に溺れ、覚醒剤所持で逮捕される。絵に描いたような芸能界転落物語である。  もちろん本人の精神的な弱さが一番問題だが、彼女のような悲劇は枚挙に暇がない。芸能界という「魔界」に身を沈め、傷つき、どれだけ多くのタレントが消えていったことだろう。 「小向美奈子はバカな女だ」で済ましてはいけない。ジャリタレを食い物にしている悪徳プロダクション、暴力団が背後で操るクスリの密売組織などを徹底的に排除しなければ、小向のような悲劇はなくなりはしない。角界とほぼ同じ構造がここにもあるのだから。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか 〈お知らせ〉ノンフィクション・ライター朝倉喬司さんを偲ぶ会を3月13日(日曜日)、午後5時から一ツ橋の「如水会館」で行います。問い合わせは、03-3261-0781『現代書館』村井まで。 
BRUTUS (ブルータス) 2011年 3/1号 国民みんながファンなわけではない。 amazon_associate_logo.jpg
大相撲の「八百長」をのさばらせてきた大マスコミ・司法の責を問う 「評価されすぎ!?」副知事辞任で見えた河村名古屋市長の実像と虚像 ターゲットは高齢者と富裕層 相続税増税で税率80%もあり得る!?

大相撲の「八百長」をのさばらせてきた大マスコミ・司法の責を問う

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「週刊新潮」2月17日号中吊り
●第79回(2月8日~2月14日発売号より) 第1位 「八百長裁判『巨額賠償』で週刊誌を萎縮させた『司法』の暗愚」(「週刊新潮」2月17日号) 第2位 「小向美奈子にまた『逮捕状』!」(「週刊文春」2月17日号) 第3位 「交際2年!『SMAP』稲垣吾郎『スレンダー美女とお泊まり愛』撮った!」(「フライデー」2月25日号)  4月に東京都知事選が行われる。石原慎太郎氏の4選出馬か、蓮舫、東国原、舛添氏らも取り沙汰されている。  今週のポスト「シリーズ 天下の極論」に石原氏の持論が載っている。いつもの「日本はアメリカの妾」論から、日本の現状を「これは平和の毒です。あまりにも長く緊張感のない時代が続いたために、国家としての我欲が張り、社会が堕落してしまったのです」と嘆く。  「無駄に爆発するエネルギーさえ失ってしまった」日本の若者と韓国の若者を比べ、彼の国の若者が人生に対して積極的なのは"徴兵制"があるためだとして、日本の若者にも「自分の生命、存在が脅かされる経験」をさせるために、「高校を卒業した年齢の子供は、1年間か2年間、軍隊か警察か消防に入る義務を課すべき」だと説く。  こうした考えを持つ人物が、首都の顔であり続けることがいいのかどうか、私も都民の一人として、じっくり考えてみたい。  さて、今週の第3位は「SMAP」稲垣吾郎の熱愛をスクープ撮した「フライデー」の記事。  菅野美穂との破局から2年ほど経った稲垣が、「昨年末まで大手芸能プロダクションに所属」していたロングヘアのスレンダー美女と、1月中旬、目黒区の焼き肉店でデートした後、別々にタクシーに乗って、稲垣のマンションへ「お泊まり愛」したという。  翌週も、件の美女が稲垣のマンション近くでタクシーを降り、反対側の路地で佇む彼女を、稲垣がわざわざクルマで迎えに行き、すぐ前のマンションの駐車場に消えていった。  芸能プロ関係者が、「二人とも真剣で、すでにお互いの両親にも紹介済み」だと話している。  オフの日なのだろう。彼女と別れた後、稲垣がゴルフの打ちっ放しで汗を流すショットもあるから、じっくり張り込み取材を続けていたことがわかる。  やや人気に翳りが出てきた「SMAP」とはいえ、「嵐」など人気グループがいるジャニーズ事務所の嫌がる記事をやるには、ある程度の覚悟がいったはずだ。  芸能活動をこれから再開するという彼女の名前や、事務所のコメントがないのを、何らかの事務所側とのやり取りの「痕跡」と見るのは穿ちすぎだろうか。  第2位は、ワイドショーなどがフィリピン・マニラまで追いかけて、バカ騒ぎをしているが、そのきっかけをつくった「小向美奈子に逮捕状が出た」とスクープした「文春」の記事。  新聞、テレビでこの件が報道されたのは8日の火曜日。「文春」が発売されたのは9日、水曜日だが、校了は7日の月曜日、たぶん夕方だろう。おそらく他のメディアは、「文春」の新聞広告を事前に入手して事件を知り、あわてて取材に走ったはずだ。  だが、ちょい気になるのは、記事中で全国紙社会部記者が、小向が付き合っていたイラン人が所属している覚せい剤密売組織が、警視庁に摘発され、小向に逮捕状が出されたと話していることだ。それだけ知っていれば、自分のところの紙面で書けばよかったと思うのだが、ブン屋サンのやることは不可解である。ちなみに「文春」の誌面に載っている「覚せい剤密売9容疑者逮捕」という記事は朝日新聞である。  ともあれ、小向は09年に覚せい剤取締で逮捕され、現在執行猶予中だ。再犯となれば実刑もありうる。ストリッパーとして注目され、ようやくタレント活動も再開の目処が立ったところだった。  覚せい剤犯の再犯率は5割を超えるという。そういえば、最近、本を出したのりピーこと酒井法子は大丈夫なのだろうか。  八百長問題に早くけりをつけたい相撲協会だが、そうは問屋が卸しそうにない。これまで、八百長はない、聞いたことさえもないと言い張ってきたのだから、「ポスト」「現代」の怒りもヒートアップするばかりだ。  「ポスト」が30年も八百長を追及し続けてきたと「本家」を誇れば、「現代」は、うちは59年4月12日号の創刊号で「八百長はやめてくれ」という記事を掲載しているから、52年になるぞと胸を張る。  「現代」は、なにしろ八百長の記事で相撲協会などから訴えられ、総額4,785万円を払えという判決が確定し、その上、昨年の11月27日号で、記事取り消し広告まで掲載したから、はらわたが煮えくりかえっている。  今週号では、「本誌は相撲協会理事長と八百長力士を『詐欺罪』で警視庁に告訴する」と、巻頭で告知し、先の裁判で提出した「八百長を証明する『陳述書』」、「朝青龍と北の湖親方の法廷証言」も公開している。記事中には、朝青龍と北の湖の「良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りのないことを誓います」という宣誓書への署名まで載っている。  八百長関連では、群を抜く怒りとページ数だが、今週は、「新潮」の記事に軍配をあげたい。以前から裁判所攻撃では定評があった「新潮」だが、八百長裁判で最高裁までが出した高額賠償判決は、裁判官の世間知のなさを明るみに出したばかりでなく、週刊誌を萎縮させた「愚行」であったことは間違いない。 「八百長を知っていて書かない、正確に言えば、相撲協会が恐くて書けない大マスコミ。八百長が相撲界で放置されてきた一因は、ここにあろう」(「新潮」)  この問題を取り上げるのは週刊誌だけだと思われていたのに、その足を引っ張ったのが司法だったのだ。  私も名誉毀損で訴えられ、法廷に出たことがあるが、私が裁判官から受けた第一印象は、「週刊誌は悪」だという先入観を持っている人間だというものだった。  週刊誌は嘘ばかり書く。国技といわれ、裸一貫で頑張っている相撲取りを侮辱するような記事は許さん。そうした"偏見"から出されたのが、5,000万円近い賠償金の支払いと、行き過ぎた「記事取り消し」広告の掲載である。  しかも、権力ベッタリの大新聞は、「現代」への一審判決が出たとき、「取材は杜撰」と斬って捨てたのだ。それがいまは、八百長は昔からあったのではないかと、世迷い言を連日書いている。  相撲協会とメディアの癒着を、私の経験から話してみたい。「フライデー」編集長のときは、若貴全盛時代だった。今からは信じられないが、館の前には多くのダフ屋がいて、法外な値段で呼びかけていた。  「フライデー」は記者席に入れないため、仕方なく、高額なカネを出してダフ屋からチケットを買うこともあった。ようやく入っても、遠くからではいい写真を撮ることができないため、通路で、観客の邪魔にならないように写真を撮っていた。  毎号毎号、若貴の写真を掲載していると、相撲協会から何度か撮影をやめるよう申し入れがあった。だが、その代わりに席を用意してくれるわけではないから、何とか算段して、見つからないよう用心して写真を撮っていた。だが、相撲協会の人間が寄ってきて、カメラマンが問答無用で外に放り出されてしまうことが何度かあった。  後で調べてみると、協会にご注進していたのは、新聞やテレビの記者たちだったことがわかった。  体制にベッタリと寄り添い、自分たちだけの特権に胡座をかき、他のメディアを排斥する体質が、八百長問題だけでなく、大相撲改革を遅らせてきた大きな元凶の一つだということに、裁判所だけではなく、新聞、テレビの人間も気付くべきだ。 (文=元木昌彦)
八百長―相撲協会一刀両断 元大鳴門親方はこの本の出版直後に謎の"病死"。 amazon_associate_logo.jpg
ターゲットは高齢者と富裕層 相続税増税で税率80%もあり得る!? 「ポスト」のエロ度がエスカレート! "エロ検定"、あなたは何問正解できる? 「評価されすぎ!?」副知事辞任で見えた河村名古屋市長の実像と虚像

ターゲットは高齢者と富裕層 相続税増税で税率80%もあり得る!?

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「週刊現代」2月19日号 中吊り広告より
●第78回(2月2日~2月7日発売号より) 第1位 「大相撲と八百長」(「週刊現代」2月19日号) 第2位 「相続税は80%になる」(「週刊現代」2月19日号) 第3位 「現代の肖像 阿武野勝彦」(「AERA」2月14日号)  「元連合赤軍最高幹部の永田洋子(ひろこ)死刑囚が5日午後、東京・小菅の東京拘置所で多臓器不全のため亡くなった。65歳だった」(2月7日のasahi.comより)  私と同年である。私は大学時代、バーテン稼業のノンポリだったが、彼女は薬科大生のときから革命運動に走り、過激派の指導者となっていった。1972年、山岳ベースで総括と称して仲間12人をリンチで殺した首謀者として逮捕される。  革命という言葉が夢物語ではないかもしれない、そう思えた時代だった。その後の人生を、彼女は裁判と獄中で過ごし、私は雑誌屋稼業を細々と続けてきた。  若松孝二監督の『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(08年公開)を見ても、彼女たちの"狂気"は理解しがたい。だが、主義主張は別にして、青春を燃焼し尽くせる時代が確かにあったことを、甘酸っぱい感傷とともに思い出させる、彼女の死だった。  今週の3位は「東海テレビ」のプロデューサー阿武野氏を取り上げた「AERA」の「現代の肖像」。80年代初め、訓練生の死亡や行方不明事件で世間を騒がせた戸塚ヨットスクールの軌跡と現在を追ったドキュメンタリー『平成ジレンマ』が、劇場でも公開されて話題になっている。  戸塚ヨットスクール校長の戸塚宏氏とは、私も一時期お付き合いした。嵐のような世の批判を受けながらも、自分の信念を貫く生き方に、会うほどに魅せられた一人である。  行き過ぎた「体罰」の問題はあるが、こうした厳しい訓練で立ち直っていった非行や不登校の若者がいたことも事実である。  阿武野氏は多くの優れたテレビ・ドキュメンタリーを作っている。私も、裁判官の本音を語らせた『裁判長のお弁当』や、光市母子殺人事件の弁護団を、内部から撮った『光と影~光市母子殺人事件 弁護団の300日~』を見ている。  『光と影』は、彼に東京にきてもらって、ドキュメンタリー上映後にシンポジウムをやった。弁護団が日本中から叩かれているとき、弁護団側にカメラを据えて撮り続けることは、相当な覚悟が必要だっただろうが、ご本人は構えたところのない物静かな人だった。  この記事を読むと、こうした社会問題を、一商業テレビで撮り続けることの難しさに直面し、突然左遷されたこともあったという。  いまやドキュメンタリーの主戦場は映画ではなく、テレビに移っている。それも東京キー局ではなく、地方のテレビ局からいい作品が多く生み出されている。 『平成ジレンマ』は現在、名古屋シネマテークや東京・東中野ポレポレ座で上映中。これを書き終えたら見に行ってみよう。  2位は「相続税が80パーセントになる」という「現代」の記事。  私の年下の友人が訪ねてきて、90を超える祖父が先日亡くなったと聞いた。連れ合いはだいぶ前にいないというから、残された家屋とお金をどう分けるのか、なかなか大変なようだ。その上、相続税の控除額が変わるそうだから、その前に遺産分けをやらなくてはならないと、ため息をついていた。  どちらかの親が健在ならば、大きな問題にならないが、両方が亡くなると、兄弟は他人の始まりである。親が見たら嘆くだろうなというほどの醜い遺産をめぐる争いは、私の周りでも多くある。  「現代」によれば、現在の税制が作られたのは占領下、米国のシャウプ博士を中心とする7人の税制使節団が「世界で最も優れた税制」を目指して作ったそうだ。  中でも、冨の集中排除を目指して作られた相続税は「相続税論のテキストブック」と呼ばれている。それが、平成23年度税制改正大綱では、富裕層をターゲットにする「相続税の大増税」が打ち出されたのだ。  今回の相続税のポイントは、最高税率を50%から55%に引き上げることと、基礎控除と呼ばれる非課税枠を4割ほど縮小させたことである。その上、さらなる相続税増税が控えていて、その率は80%にまでなるかもしれないというのだ。 「日本国民が保有する金融資産1,400兆円のうち、その6割ほどは60歳以上の高齢者が持っている。あらゆる控除をなくして、相続税を10%かけただけでも、単純計算で毎年40兆円の税収となる。消費税、所得税をあげるには反発が大きい。そこで政権は大声を出さない高齢者と富裕層をターゲットにしているというわけです」(民間シンクタンクのエコノミスト)  残しておくより使ってしまえと、年寄りのフトコロからカネを吐き出させて、景気を刺激しようなんて、役人の考えそうなことだ。そういえば、麻生元総理も自著の中で、お年寄りからカネをふんだくれと書いていたな。  さて、大相撲春場所を中止にまで追い込んだ八百長問題は、どこまで広がるのか予断を許さない。「大相撲に八百長あり」とキャンペーンをはり続けてきた「ポスト」と「現代」が、どういう切り口でやってくるか楽しみにしていた。  「ポスト」は「角界よ、大新聞、テレビよ、片腹痛いわ!『週刊ポスト』は大相撲八百長を30年間こう報じてきた」と老舗らしく歴史を誇り、2月2日毎日新聞のスクープ「力士が八百長メール」報道など、「何を今さら」とハナで笑う。  「ポスト」が「角界浄化キャンペーン」を始めたのは80年からで、その後、元大鳴戸親方の告発や元小結・板井圭介氏の実名証言など、「国技のタブーに正面から斬り込んできたメディアは本誌だけといっていい」と豪語するが、掲載は後ろのページで4ページ、内容も今ひとつである。  では、「現代」はどうか。さすがに巻頭で10ページの「ぶち抜き大特集」である。内容は、「八百長力士はまだいくらでもいる」「『八百長メール』原資料を公開する」「『八百長』を見て見ぬふりをした相撲ムラのインサイダーたち」「『八百長報道』本誌と相撲協会の1500日戦争」「腐れ相撲協会はさっさと自主解散すべし」と、盛りだくさんである。  中でも、朝青龍や協会などが束になって訴えてきて、最高裁で上告棄却され、4,785万円の賠償金と記事取り消しの広告掲載が確定した、裁判所への恨み辛みが興味深い。裁判所から、取り消し広告には、記事は十分な裏付けを欠くもので、これを取り消しますと書けと求められたそうだが、これってどうなるのかね。このまま出したら、かえって面白いと思うのだが。  朝青龍の八百長告発では、朝青龍が法廷で、八百長など見たことも聞いたこともないと証言したはずだが、これって偽証罪にならないの? 北の湖理事長(当時)も「相撲に八百長なんかない」といい続けていたが、こういう連中を国会喚問したらどうかね。  この記事を、当時の編集長・加藤晴之氏に書いてもらいたかったと思うのは、私だけではないはずだ。そうすれば「本誌は裁判には敗訴したが、『八百長相撲の蔓延』という重要事実を、正確に伝えたと自負している」というような表現にはならず、怒りに充ち満ちた原稿になったはずなのに。  ともあれ、大相撲の八百長問題をときの横綱・朝青龍に結びつけ、読者の関心を引き付けたことや、元序ノ口・時太山が親方や先輩力士の暴力で稽古中に急死したことを告発するなど、相撲界浄化に大きな役割を果たした「現代」に敬意を表して、今週のスクープ賞を与えたい。  それにしても、野球賭博問題や八百長問題を知る立場にいた新聞やテレビの記者たちの「責任」は、もっと追及されてもいいはずである。 (文=元木昌彦)
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「ポスト」のエロ度がエスカレート! "エロ検定"、あなたは何問正解できる? 「評価されすぎ!?」副知事辞任で見えた河村名古屋市長の実像と虚像 "シンブンキシャ"の思考は停止中? なぜ日本の新聞はダメなのか

「ポスト」のエロ度がエスカレート! "エロ検定"、あなたは何問正解できる?

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「週刊ポスト」2月11日号中吊り広告より
●第77回(1月25日~2月1日発売号より) 第1位 「エロ検定50」(「週刊ポスト」2月11日号) 第2位 「ツイッターが生む"反"民主主義」(「AERA」2月7日号) 第3位 「『小沢一派』涙目の覆面座談会 『あさま山荘』内閣の国会リンチ」(「週刊新潮」2月3日号)  遅ればせながらiPadを買った。32GBである。まだ、写真の取り込みや電子書籍は読んではいないが、起動の早さとクッキリ液晶画面で見るYouTubeは、笑えないテレビのお笑い番組よりナンボか面白い。  だが困ったことがある。木造2階建て築45年の我が家の"一畳敷"書斎で、ゆったりiPadを楽しもうとしたら、電波の入りが悪く、検索やメールはできるのだが、YouTubeの動画がスムーズに動かないのだ。「これだからソフトバンクは」と悪態をついているのだが、これを書き終えたらソフトバンク・ショップへ行って相談してこよう。  さて、小沢一郎起訴で風雲急を告げる民主党の、あまりにも情けない内ゲバに、中曽根大勲位が毎日でこうおっしゃっている。 「今後、民主党は小沢氏を巡る対立で深刻な分裂に陥るでしょう。予算成立ですら危うい。一方で解散・総選挙は惨敗が予想され、菅首相は決断できない。事態の収拾には党内有志が決起して菅首相を降ろすしか道はない。民主党の議員は、党と自らの政治人生で最大の決断をするときです」  その通りだろうが、新潮の小沢派面々の涙目匿名(何で名前を出さないのかね)座談会を読むと、菅・仙谷以上に情けない議員たちの本音が吐露されていて、読むほどに「右も左も真っ暗闇じゃござんせんか」と思わざるを得ない。 「若手議員 (中略)私たちの間では、菅政権は『あさま山荘』内閣だと言い合っています。(中略)連合赤軍同様、外に目を向けるのではなく、気に入らない身内。つまり私たちを目の敵にして、『総括だ』と言っては殺しに掛かってくるんですからね」  同じ若手議員が小沢と酒席を共にしたとき、小沢が漏らした本音をこう話す。 「その場でボソっと、『オレがまだ若ければ、自民党に行って、自民党を立て直してやりたい』とこぼしていました」  この親にしてこの子ありだ。  中堅議員も、現在の惨状をこう言っている。 「内ゲバばかりしているうちに、わが党は本当に終わりを迎えてしまいかねない。民主党という船そのものが沈没を始めているのに、『お前たちを船から降ろして溺死させてやる』『いや、あんたたちのほうが先だ』と、執行部と我々が押し合いへし合いしているようなものだ」  党内の影響力ゼロになった鳩山由紀夫氏。次世代を育ててこなかった小沢氏。政策能力もリーダーシップもゼロの菅と仙谷・岡田の面々。  民主党というドロ船に、我々の生活も一緒に沈められてはたまったものではない。しかし、政界にタイガーマスクは出てきそうもないしな。困ったものだ。  チュニジアやエジプトで起きている大規模な反政府デモに、ツイッターやFacebookなどのSNSが大きな役割を果たしたことが報道されている。  極端なIT崇拝者は、既存メディアなんかなくなっても、こうしたものがあれば情報入手には困らないというのまでいる。  だがそうなのか。AERAの2ページ記事だが、日本では、ツイッターは多数意見に流され、他者の意見が気になり、フォロワー長者の顔色をうかがうようになって、ものをいいにくい「反民主主義」的な空気が広がっていると警鐘を鳴らしている。 「もともと日本では、ツイッターなどのデジタルツールは不特定多数の人に意見を表明するために使われるわけではない。むしろ、身内の『ノリ共有装置』。(中略)期待するのはリアクションをもらえること。だから、なるべく同調されるような発言に終始する」(社会学者の鈴木謙介さん)  民主党批判も市川海老蔵袋叩きも、「0か1かの極端しかなく、中間がないデジタル思考」の影響だと指摘するのは、映画監督の森達也さん。「デジタルツールが二元化情報を送り込み、思考の単純化が加速した」とも話している。  スペインの店舗では、試着室の中にFacebookの端末か置いてあり、試着した客は、自分の姿を写真に撮り、その場でFacebookにアップする。すると利用者から感想が届き、そのアドバイスを聞いて、購入を判断する。 「買い物一つにさえ簡単に他人思考が入ってくる。たくさんの情報を集められて便利になった代償として、失ったのは『自分思考』なのかもしれない」(AERA)  されどデジタル、たかがデジタル。大事なのは情報を抱え込んで溺れてしまわないことだ。これからは、洪水のように押し寄せる情報の海から、自分に必要な情報を取りだし、自分で判断できるネット・リテラシーがますます大切になる。  今週の第1位は、最近ますます「エロ度」をエスカレートしているポストの「エロ検定」。その他にも、巻頭のグラビア「ビートたけしの21世紀ワイ談」も面白い。風俗にM専門店『エリカ様』、格差社会に乗じて『並はババア、上なら美女』の牛丼ピンサロ、渡部陽一サンはハメドリ専門の「扇情カメラマン」に転身しなさいなど、ニヤッとさせるギャグが満載。  美人女医5人が講義する「私の女性器研究」もあって、至れり尽くせりである。中でも「エロ検定50」は秀逸。いくつか取り上げてみよう。 「AV男優・志良玉弾吾氏は世界20カ国で20民族の女性とセックスを経験しましたが、ある行為が欧米女性に大好評を博したといいいます。その行為は、次のどれでしょう。a.長時間にわたってクンニリングスをした b.アナルを徹底的に舐めた c.乳房をじっくり揉んで、乳首をしっかり攻めた d.膣に指を入れて念入りに愛撫し、潮を吹かせた」 「1926年に発表され世界的なベストセラーとなった『完全なる結婚』の著者、ヴァン・デ・ヴェルデは、『性交の準備動作で最も重要な道具は( )である』と喝破しました。( )に入る語は、次のどれでしょう。a.唾液 b.会話 c.指先 d.香気」 「日本のAVを好む中国人ファンの間で広がったといわれる日本語は、次のどれでしょう。a.イキソウ b.ヤメテー c.ヌレテル d.イレテ」 「笠井寛司著『名器の科学』(ごま書房刊)によると、日本人の女性器の『上つき』『下つき』の割合は次のどれでしょう。a.『上つき』が『下つき』の3倍 b.『下つき』が『上つき』の3倍 c.『上つき』も『下つき』もほぼ同じ d.ほとんどの女性が『上つき』」 「男性の陰茎を意味する『マラ』という語は元々サンスクリット語ですが、その意味は次のどれでしょう。a.重厚長大 b.修行を妨げるもの c.いうことを聞かない暴れん坊 d.沈まぬ太陽」 「次の性指南書のうち、鎌倉時代に書かれたものは、次のどれでしょう。婚礼秘事袋 b.閨中紀聞枕文庫 c.衛生秘要抄 d.秘事作法」 「遊女向けの性指南書『おさめかまいじょう』は、交合中に絶頂に至りそうになった際に、ある行為をすすめています。次のどれでしょう。a.陰核(クリトリス)を強くつまむ b.膣にウズラの卵を2個入れる c.陰部を冷やし、会陰を押す d.逆立ちする」  答えはc,b,b,a,b,c,cだそうだ。ちなみに40問以上正解の人には「エロ検ブラック」を付与するという。こんなのもらっても名刺に書くわけにはいかないが、私のようにヒマが十分ある人は、やってみてはいかがか。   (文=元木昌彦)
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「評価されすぎ!?」副知事辞任で見えた河村名古屋市長の実像と虚像 "シンブンキシャ"の思考は停止中? なぜ日本の新聞はダメなのか 東京-ロス間90分も夢じゃない!? 人類初・商業宇宙旅行がいよいよスタート

「評価されすぎ!?」副知事辞任で見えた河村名古屋市長の実像と虚像

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「フライデー」2月4日号より
●第76回(1月18日~1月24日発売号より) 注目記事1 「ダルビッシュ『古閑美保と裏切りの連泊愛』撮った!」(「フライデー」2月4日号) 注目記事2 「新芥川賞作家西村賢太『ダメな自分とどう付き合うか』」(「週刊現代」2月5日号) 注目記事3 「河村たかし『庶民革命』の正体」(「週刊文春」1月27日号)  いきなりだが、沢尻エリカ(24)という女優はしたたかな女である。23日都内で、夫の高城剛氏(46)との離婚に合意したことを涙ながらに明かしたと、ワイドショーが騒いでいた。  この程度の女優に振り回される芸能マスコミが情けない。離婚も芸能界復帰もどうぞ御勝手にと、無視すればいいのだ。報道で見る限り、ワガママで、マスコミを振り回すことで自分は人気者なんだと錯覚しているおめでたいだけの女が、女優として大成できるとはとても思えない。  と、まあ、腹の立つことの多い毎日、そうした鬱憤を晴らしてくれるのが週刊誌のはずだが、相も変わらず小沢一郎騒動ばかりで、ますます腹が立ってきた。  「朝日」の小沢熱烈擁護記事「小沢『強制起訴』はやっぱりヘンだ」は、いわんとしていることは分かるが、もう満腹。違う話を読みたいね。  しかし、他にこれといって新味のある記事があるわけではない。残念ながら今週は、大賞も順位もなしに、注目記事3本にせざるを得ない。  まずは名古屋方面を騒がせている河村名古屋市長(62)を批判している「文春」の記事。先頃退任して、東京都知事選出馬を目論んでいるといわれる東国原氏や、地方自治の旗手のようにもて囃されている橋下氏など、どう控えめに見ても「評価されすぎ」ではないかと思われる首長が多いが、この名古屋弁のおっさんもそのひとりのようだ。  発端は、自ら副市長に抜擢した大西聡氏が、1月11日に辞職したことだった。大西氏が市長に愛想を尽かしたというのがその理由だ。  河村市長が選挙で勝ったのは、公約に「市民税10%削減」を掲げたからだが、その上選挙期間中に「市長の年収を800万にする」と後先考えずに言ってしまって、自分の首を絞めるようになったという。  元々ケチだった河村氏は、ケチに拍車をかけたがそれでも間に合わず、河村夫人と私設秘書が大西氏に、「収入が減って苦しいから、私設秘書二人分の給料を負担してくれ」、その上、大西の個人所有の乗用車をいつでも使えるようにしてくれないかと要求したのだ。  実像と虚像の隔たりに、市長選でブレーンを務めた名古屋大の後房雄教授まで、当選後1年で河村市長と訣別したそうだが、その理由をこう述べている。 「議会との対決を煽ってマスコミで目立つことが、公約を通すための手段ではなく、目的になってしまっている。その一方で、減税を担保する歳出削減を政治主導でやる気もないし、勉強もしない。二万七千人の職員のトップとして経営手腕を振るう仕事の重大さがわかっていないのです、あの人には」  この言葉は、小沢一郎氏との対立ばかりを煽り、政治主導を放棄し、この先の国のかたちを決めるための勉強も疎かにしている菅直人総理大臣にもそのまま当てはまる。国の長も自治体の長も、実像はこんなものということか。  2番目は、芥川賞発表の会見で「風俗に行こうと思っていたが、行かなくてよかった」と発言して話題になった、西村賢太氏のインタビュー。  小学5年生のとき父親が性犯罪事件で逮捕され、両親は離婚。中学を卒業して家を飛び出し、肉体労働などのフリーター生活を送ってきた43歳。自身も2度警察のご厄介になっているという。  二昔ぐらい前は、こうした書き手はいっぱいいたが、今どきは珍しい「平成の破滅型作家」の登場である。  今回の受賞作『苦役列車』(新潮社)は、19歳の主人公が中学卒業後、日雇い仕事を続け、安酒を飲み、自慰にふけり、少しずつ貯めた金でソープランドに行く。飲んだくれてすぐにキレ、女性に暴力を振るい、すべて他人のせいにする情けない男だが、描き方はユーモラスで笑いを誘われる私小説だという。  私小説に拘り、「自分を戯画化するって、独りよがりではできないこと。私小説は奥が深いですよ」と語る。  次の言葉が潔い。「自業自得の部分もありますが、僕のように生きてきた人間には、普通に会社に勤めたり家庭を持ったりする資格がないと思っています。一人住まいの部屋で、毎晩11時頃から小説を書き始めますが、書けないときは何日経っても一行も出てこない。その場合は酒を飲み続けます」。  これを読んでいて、私が編集者になった翌年(1971年)、『オキナワの少年』で芥川賞を受賞した東峰夫さんのことを思い出した。  確か訪ねたのは、三鷹あたりの古いアパートだったと思う。沖縄から集団就職で出てきて、小説を書くために路上生活をしたり日雇いのアルバイトを続けながらの日々を送ってきた。  人の目を見ず、下を向きボソボソと話す優しい人だった。ガキだった私にも、こんな繊細な人が、このまま書き続けられるのだろうかと心配になったほどだった。  だが、『オキナワの少年』のような作品を書けと求めた編集者を拒み、以来15年間で4作しか発表せず、81年に『大きな鳩の影』を出した後、姿を消した。02年に『ガードマン哀歌』で復活するが、長い沈黙であった。  私は『赤目四十八瀧心中未遂』で第119回(98年上半期)直木賞を受賞した車谷長吉が好きだ。彼の、自分の臓腑まで抉り取るような私小説が好きだ。このインタビューを読んで、西村氏の作品を読んでみたくなった。  もう一本は「フライデー」の張り込みネタ。この"噂"は、先に「週刊女性」が推測記事を書いている。初出ではないのでスクープ賞はあげられないが、相当な執念をもって張り込んで撮ったことがよく分かる記事である。  野村克也氏をして「かつての南海ホークス・杉浦忠と並ぶ日本球界の大エース」といわしめた日ハム・ダルビッシュ有(24)のお話。  宮崎市で自主トレをしているダルビッシュに、トレーナー、マネジャーの他に、女子プロゴルフ界では有名な古閑美保(28)、それに笠りつ子、古閑のマネジャーとキャディが参加しているが、ダルと古閑が熱愛中だというのだ。  ダルは現在、紗栄子夫人と離婚調停中で、まだ離婚は成立していない。故に不倫ということになる。  二人の熱愛行動は「フライデー」によれば、「自主トレから6日目の1月13日、コンドミニアム内での夕食を終えたダルと古閑が揃って古閑の部屋に消えたのは夜8時半頃。そのまま玄関の明かりは消えた。翌14日の朝9時前、二人は揃って古閑の部屋から姿を現す」  1月15日は、東京から帰ってきたダルが、食事後、古閑と一緒に古閑の部屋に消えていった。翌17日、朝8時50分頃、古閑の部屋から別々に朝食へ。「要は《女性アスリートと自主トレ=関係が怪しい》のではなく、もはや『関係のある男女』が、揃って自主トレをし、『夜も一緒に二人きり同じ部屋で過ごしている』わけなのだ」と「フライデー」は書いている。  二人が親密になったのは昨年7月、古閑の誕生日の頃からだという。二人の関係は紗栄子夫人も気づいているようで、今はダルのほうが年上で豪快な古閑に真剣だそうだ。  慰謝料は24億円とも言われているが、この不倫で、その額がもっと上がらないか、こちとら、そのほうが心配である。 (文=元木昌彦)
おい河村!おみゃぁ、いつになったら総理になるんだ なれないよぉ。 amazon_associate_logo.jpg
"シンブンキシャ"の思考は停止中? なぜ日本の新聞はダメなのか 東京-ロス間90分も夢じゃない!? 人類初・商業宇宙旅行がいよいよスタート 誤植が動かぬ証拠!? 水嶋ヒロ「八百長美談」にポストが斬り込む!

"シンブンキシャ"の思考は停止中? なぜ日本の新聞はダメなのか

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「ニューズウイーク日本版」1月19日号
●第75回(1月13日~1月17日発売号より) 第1位 「だから新聞はつまらない」(「ニューズウイーク日本版」1月19日号) 第2位 「『抗がん剤は効かない』は本当か!?」(「週刊文春」1月20日号) 第3位 「現場の磁力 ルポライター故・朝倉喬司さんが見た〈異界〉の風景」(「週刊ポスト」1月28日号)    今週の「ポスト」と「現代」は共にグラビアで「春画」の大特集。ここまでおおらかにドアップでアソコを見せられる時代が来たのだ。私のように、外国のポルノ小説の翻訳でも、いたずらに性欲を興奮させないように言い替えたり削除したりと苦労した世代には、今昔の感がする。だが、あまりにあっけらかんとしていて、猥褻だとは感じない。  「現代」の大特集「猥褻の研究」では歴史と現状の問題点に触れているが、評論家・芹沢俊介氏の、「ヌードやポルノが、時代に反逆性をもっていた時期がかつてありました。しかし、今はそういう力もなくなってきている」という言葉に頷けた。  さて、私の友人でルポライターの朝倉喬司さんが昨年暮れに亡くなってから、いろいろな人が彼について書いている。少し前の「文春」コラム「さすらいの女王」で、中村うさぎさんが事件を一緒に取材した思い出に触れ、彼が死んだ後、朝倉さんの手元にあった彼女の文庫本を、編集者から渡されたそうだ。  そこには、「朝倉さんの字で書き込みがしてあった。こんなに真剣に読んでくれてたんだ、と思うと、ありがたさに胸がぎゅっと締めつけられた。女王様がホストにねだられてドンペリを入れるシーンには、傍線とともに『バカ!』と書いてあった(笑)」  温かい人柄だった。「ポスト」の連載「現場の磁力」でも"朝やん"のことを取り上げ、彼が愛してやまなかった大阪西成の飛田地区のルポとともに、朝やんの死を惜しんでいる。  新宿ゴールデン街で、酔うと茶碗を割り箸で叩きながら「河内音頭」や「犬殺しの唄」を歌ってくれた。  彼が尽力し、錦糸町で毎年8月に開かれるようになった「河内音頭」は夏の風物詩になった。徹底した取材と達意の文章、それ以上に飄々とした人柄が愛され、多くの友人の輪ができた。「朝やんの視線は真ん中からはずれたもの、市民社会の〈異物〉にいく」人だった。  記事を読みながら、酔っていて、何か気にくわないことがあると飛び出す決まり文句、「ちょっとまたんかい、こら」も、もはや聞けないのかと思うと、本当に寂しい。  「文藝春秋」1月号に掲載された近藤誠氏の「抗がん剤は効かない」が大きな反響を呼んでいるが、それに対する専門医の反論を載せた「文春」の記事が第2位。  同様の記事は「現代」でもやっている。「大論争 抗がん剤治療は本当にダメなのか」がそれだが、同じ社の週刊誌で批判したことを評価して「文春」にした。  このなかで勝俣範之国立がん研究センター中央病院・腫瘍内科医長と上野直人テキサス大学MDアンダーソンがんセンター教授は、近藤氏の意見を「研究を始めたばかりの初心者にありがちな誤り」とバッサリ斬り捨て、患者がこうした論文の影響で間違った選択をしてほしくないという思いから意見を述べるとしている。  まず、近藤氏が、急性白血病や悪性リンパ腫など「血液のがん」の多くに抗がん剤は効くが、肺がんや胃がんのような「固形がん」にはたいした効力がないといったことに、そんなことはないと主張する。  現在使われている抗がん剤の多くは、再発防止や延命効果が実証されているとし、抗がん剤の効果を「寿命が延びているかどうか」だけで判断するのではなく、がんの増殖を防いで症状の悪化を抑えることで、患者の生活の質を維持することなども考慮されるべきだという。  だが、近藤論文の「抗がん剤に延命させる力はない」は間違いだが、統計的に見ると抗がん剤の延命効果は、ものによっては数ヶ月で、これを長いと見るか短いと見るかは人それぞれだといっているが、私などは、そんなに短いんだと思ってしまった。  「文藝春秋」2月号の近藤氏と立花隆さんの対談の中で、芸能レポーターの梨元勝さんが急死したのは抗がん剤で亡くなったという発言については、このケースは分からないが、そうしたことがあることも事実で、その原因は、抗がん剤を投与する医師が専門家でないことがある。したがって医師も患者も「薬が合わないようなら、いつでも抗がん剤治療をやめる」選択をする勇気を持っていなければならないと書いている。  さらに近藤氏が提起した「臨床試験にはインチキがある」という点には、データをねじ曲げたり隠したりすることが事実なら、薬事法違反の大スキャンダルだから告発すべきで、現在は「臨床試験は甘いものではない」と反駁している。  確かに、以前から近藤氏の極論は物議を醸してきた。だが、がんにかかった患者は藁をも掴む想いで医者に自分の命を託すのだが、そうした患者側の願いや疑問に十分に答えない医者が多いのも事実である。  こうした論争をきっかけに、近藤氏と専門医たちが直に向き合って、最良のがん治療とは何かという議論をもっと深めていってもらいたいものだ。  今週の第1位は、日本の新聞記者を「ニューズウイーク」が徹底批判した記事。  なぜ日本の新聞はテレビと並んで「マズゴミ」とまで酷評されているのか。それはよく言われるような記者クラブの閉鎖性や、クラブを通して権力者たちと癒着しているだけではない。問題の本質は「シンブンキシャ」という人種の多くが思考停止していることにある。その原因は、失敗を過度に恐れる文化や硬直した企業体質、それに現場主義と客観報道の妄信にあるとしている。  なかでも政治部記者は、記者会見が始まると一斉にノートパソコンのキーボードをたたきはじめ、その姿はジャーナリストというよりタイピストか速記係のようだと揶揄している。  さらに思考停止する理由は、日本の記者が掲げる「現場至上主義」にあるのではないか。現場に行って取材すればそれで終わりと満足し、ニュースについて深く考える機会を自ら放棄しているというのだ。  高いレベルのジャーナリスト精神や膨大な情報をもっている記者もいるのに、紙面に反映されることがないのは、事実や中立性に重きを置く「客観報道」を理想とあがめ、それを、名誉毀損で訴えられたときの逃げ道にもしていると斬り込んでいる。  日本の新聞が変われないのは、これまでの硬直化したメディア環境を当然だとしてきた読者側にもあり、新聞を批判する側も思考停止に陥っていると結んでいるが、欲をいえば、もっと多くの第一線の記者や編集の責任者のインタビューをして、病根を深く掘り下げてほしかったと思うが、ピリッと胡椒のきいた新聞批判にはなっている。  新聞はもはや、速さを競ったりスクープ合戦できるメディアではない。外国のクオリティペーパーのように、遅いけれど正確な分析記事を書くような新聞にするのか、中立公正・客観報道などという幻想を棄てて、一人ひとりの記者の主観で、読者の読みたい情報を提供する新聞にしていくのか。どちらにしても、新聞を含めたメディアにとって、今年は生き残りをかけた厳しい年になることは間違いない。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ) 1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
新聞・TVが消える日 はい、消えた~。 amazon_associate_logo.jpg
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