政界スキャンダルからカルーセル麻紀まで "ワイド特集の元祖"「新潮」の底力

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「週刊新潮」8月11・18日号 中吊り広告より
第1位 「ワイド 『大和なでしこ』漂流譚」(「週刊新潮」8月11・18日号) 第2位 「スクープレポート 東電マネーと朝日新聞」(「週刊現代」8月20・27日号) 第3位 「特別付録 春画の秘宝 四十八手」(「週刊ポスト」8月19日・26日号)  合併号も出揃い、各週刊誌が気合いを入れた企画が並んでいる。中でも第3位選びに苦労した。  候補作は「スクープ撮! 泥酔 TOKIO城島茂に『寄り添いお泊まりする美人OL」』(フライデー)、「AKB48窪田社長『野球賭博の常習者』だった!」(週刊文春)、「スクープ!菅直人『3・11後』を語る」(週刊朝日)、「独占スクープ公開 田畑智子 完全ヘア・ヌード」(週刊現代)、「特別付録 春画の秘宝 四十八手」(週刊ポスト)である。  「フライデー」はTOKIOのリーダー城島が7月下旬、西麻布、六本木と飲み歩き、途中で合流した美女とマンションに入る時にはフラフラの千鳥足だった、という顛末を写したものだ。エレベーターに乗り込む城島の後ろ姿が、いかにも「酔っぱらっちゃいました」感丸出しで、とてもいい。  AKB48スキャンダルは「文春」の独壇場。今回もAKB48の運営会社「AKS」の窪田康志社長が、野球賭博の常習者だったというスクープ。記事中には、胴元が仲介者を経由して窪田の注文を受けるのに使用した携帯電話の写真まで載っている。しかも、窪田が野球賭博で負けた金は数億円にものぼるそうだ。どうするAKB48?  「朝日」は菅直人首相の単独インタビュー108分と謳っているが、予想通り、内容に新味はない。最後に、「いつ辞任するんですか?」と聞かれ、「いずれ去る日が来るその時まで、言うことは言い、やるべきことはやりぬきますよ」と答えている。辞める気なんかまったくないことだけは、よ~く分かる。  「現代」のグラビア&袋とじは、かつてNHKの朝ドラ『私の青空』のヒロイン役も演じた田畑智子のヘア・ヌード。たしかに新鮮ではあるが、そそられるようなエロチシズムは感じられない。  これらの中では、今さらという気もするが、「ポスト」の「春画の秘宝」はやはり迫力もあり、わいせつ感も十分。袋とじをあけるとミニ画集が入っているというのもいいアイデアである。田中優子法政大学教授は、春画の女性たちは、ポルノに出てくる女性のように、視線をこちら(鑑賞者)に向けていないのは、男女どちらでも楽しめるものにしているからだと解説している。  憂きことばかり多き世の中に、幾ばくかの刺激を与えてくれたことを多として、これを3位に選んだ。  先週の「ポスト」も「朝日新聞と菅官邸の『不適切な関係』」をやっていたが、やや消化不良の内容だった。  今週の「現代」は、東電との関係に絞って朝日新聞を追及しているが、私も知らなかった事実関係が明かされていて、興味深く読んだ。  朝日新聞が70年代に原発容認へと路線を変更し、東電からの広告受け入れや東電からの接待、出張旅費肩代わりなどがあったということは、元朝日新聞経済部記者・志村嘉一郎著『東電帝国 その失敗の本質』(文春新書)に詳しい。  今回「現代」は、朝日新聞OBの井田敏夫が社長をしている「井田企画」が発行している「SOLA」という情報誌に注目する。  事実上東電のPR誌であるこの雑誌は、1989年8月に創刊されている季刊誌である。この雑誌は東電本店営業部が一括して買い上げ、各営業所に配布されている。  編集長に元「週刊朝日」副編集長の江森陽弘、看板の要人インタビューには元朝日新聞論説主幹の田中豊蔵、元朝日新聞論説委員の岡田幹治が環境問題にまつわる寄稿をしているという。  また「井田企画」の中に、91年6月に「地球こどもクラブ」という特定非営利活動法人が設立され、東電からも寄付を受けており、北海道電力、東北電力、四国電力、日本原燃も会員企業になっている。  先の元朝日新聞OBはもちろん、中江利忠元朝日新聞社長まで名を連ねている。  「現代」は、朝日新聞は反原発寄りだと見られているが、総論では原発推進に賛成してきたので、その社論をリードしてきたのは田中慎次郎に始まる「田中学校」だったと指摘する。  中でも岸田純之助は科学畑が長く、電力業界とは親密で、関電の広報誌「縁」の監修者にもなっているし、91歳のいまも「日本原子力文化振興財団」の監事を務めているという。  江森は、インタビューに答えて、こう話している。 「(中略)恥ずかしい話ですが、地震が起きてやっと気が付いたんです。これは東電が朝日新聞を巻き込んだ世論操作のための隠れ蓑だったのかもしれない、と。かかわっているメンバーを見れば、それは否定できないですよね。気付くのが遅かったんです」  朝日新聞を叩けば週刊誌が売れた時代があった。いまはそれほどではないと思うが、やはり新聞界の雄であることは間違いない。その朝日新聞に、東電が食指を動かした意図もよく分かる。  そうした東電マネーによって新聞の論調が動かされたのだとすれば、その罪は大きい。  東電との癒着構造は、原子力の父をいただく読売新聞も然りであろう。否、朝日新聞以上のスキャンダルが出てくると思うのだが、どこかやってくれないか。  今週のグランプリは「ワイド特集の元祖」新潮のワイド22本にする。まずは「なでしこジャパン」にちなんだ「大和なでしこ」漂流譚というタイトルがいい。  人選も内容も、他のワイドを圧倒している。  菅総理夫人・伸子が、息子の嫁の浮気を疑って興信所に調査を頼んだという仰天情報でワイドが始まる。 「今年3月、伸子さんに頼まれたという警察庁のキャリアOBがかつての同僚や後輩を頼り、興信所探しをしていました」とある。そもそもは、菅の古くからの支援者(後にこの男は元新聞記者であることが判明)が、彼女が別の男と街中で抱擁しているのを見たという情報を寄せたことから始まったらしい。  結局、この「嫌疑」は晴れたようだが、このことの報告書は警察庁にあるというである。  警察庁の考え方としては、もし中国や北朝鮮の情報機関に、国の権力者の弱点を入手されてしまったら、それを使って外交に利用するかもしれない。したがって、こうした総理の家族の不倫情報なども収集しているのだと、警察庁の初代国際部長・大貫啓行氏は話している。  だいぶ前になるが、橋本龍太郎総理(故人)と中国人美人通訳との「不倫」関係が話題になったことを思い出した。あのときは、中国人女性の出入国申請書の写しが、われわれ週刊誌の間にも出回ったことがあった。  この記事を読んで一番ドキッとしているのは、菅首相と伸子夫人ではないのか。警察関係に強い「新潮」でなくてはとれないネタである。  お次は、筒井信隆農水副大臣と一緒に生活する30歳下の女性との「艶聞」である。グラビアでも、二人連れだって仲良く食事する姿や、帰りに女性が積極的に筒井の腕に手を絡んで歩く姿、地下鉄のシートでも腕を絡めている写真を掲載している。  7月26日、彼の選挙区である新潟が記録的な豪雨に襲われていた夜も、彼女と一緒に天ぷら屋で食事を共にしていた。  その後、いったん彼女と別れた筒井は、「議員パス」を提示して駅構内へと入っていく。地元新潟へ帰ることにしたのか? だが、ほどなく筒井は駅から出てきて、件の女性とタクシーで都内のマンションへと消えて行く。  この日のことを、筒井副大臣は自らのブログに、「29日に地元入りするはずだったが電車不通のため断念」と書いているのだが、「新潮」によると、上越新幹線も長野新幹線もその夜は運行していたのである。  「新潮」の取材に、地元にいる妻は絶句。筒井は、彼女と腕を組んでいたことを聞かれ、目が悪くて段差があると転ぶから「世話」してもらっているのだと取り繕うが、地下鉄のシートでも腕を組んでいたではないかと聞かれると、慌てて「あ、そう? 必要はないんだよね。座っているときは、腕を組む必要性は」としどろもどろである。これで次の選挙はダメかもしれないな。  オウム真理教が裁判所から解散命令を受けて「アーレフ」と名称変更したとき、会長に祭り上げられ、テレビや新聞、雑誌で引っ張りだこだった村岡達子が脱会していた。その当時のことを話しているが、これが面白い。  やがて麻原の妻・三女と四女との勢力争いが激しくなり、四女を支持する村岡は本部から遠ざけられ、飼い殺し状態になり、離れていったという。  61歳になる彼女は、酒もたしなむようになった。だが、麻原への気持ちに変わりはないと話している。麻原の呪詛は信者の中で生き続けるのか?  お次は、国民栄誉賞までもらってしまった「なでしこジャパン」のエースストライカー澤穂希が、あまりのストーカー被害で、引っ越しせざるをえなくなっているという話。なにしろ、年収350万程度といわれる澤だから、オートロックのマンションには住めなかったのだ。  菅首相の人気取りのために利用されたとしか思えない「なでしこ」への国民栄誉賞だが、もらった35人は、これから、その重荷を背負って生きていかなくてはならない。  他には、先日収監されたホリエモンの母親が、福岡の社会福祉法人の「女帝」として君臨している。  人気の女優兼モデルの萬田久子(53)と事実婚を続けていた内縁の夫に、別の女性がいて、隠し子までいることが発覚した。インタビューされた萬田は、そのことをまったく知らなかったようで、つぶらな瞳をさらにまん丸にして遁走したそうだ。  おかしいのは、ニューハーフの草分けで、女性以上に美しい(ずいぶん前の話だが)タレントのカルーセル麻紀(68)が、男の病気にかかったという話。  彼女(?)の美を追究する涙ぐましいほどの摂生ぶりは有名だが、その彼女に昨年9月ごろから体調異変が表れた。右足に違和感を覚え、そのうち右足全体が痛むようになり、激痛が走った。  病院で判明した病名は閉塞性動脈硬化症。50歳代以降の男性に多く見られる、動脈硬化によって血行障害を起こす病気なのだ。  やはり見かけは完全な女でも、体は正直なものである。そういうことで今週は「新潮」の圧勝! (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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「週刊ポスト」8月12日号 中吊り広告より
第1位 「加藤茶が、23歳美女と再婚していた」(「週刊ポスト」8月12日号) 第2位 「石川遼『書類送検』父勝美氏が女性記者を恫喝した!」(「週刊文春」8月4日号) 第3位 「行き先が明確な『寄付金』『義援金』『ファンド』」(「週刊現代」8月13日号)  今週は大ネタ(大特集)に見るべきものがない。  巻頭の特集を並べてみると「菅直人と朝日新聞の薄気味悪い『交響曲』」(「週刊ポスト」)、「『放射能汚染牛』宮城県第一号農家が告発する『致命的な無策』」(「週刊文春」)、「新聞・テレビが報じない中国『恐怖の新幹線』その裏側で」(「週刊現代」)、「プロ13人が注目する31銘柄 日本株来年には1万5千円も!」(「週刊朝日」)、「『仙谷由人官房副長官』に『疑惑の金』の動かぬ証拠」(「週刊新潮」)、「『汚染がれきが』が拡散する」(「AERA」)、「『総理・代表』分離論浮上 菅が橋下府知事と手を組む」(「サンデー毎日」)。  「新潮」を除けば、どれもタイトルを見れば内容が類推できるものばかりである。今どき「朝日」がやっている株の記事を読むのはどんな読者なのだろう。私のような由緒正しい貧乏人の関心の埒外にある記事であることは間違いない。  「新潮」の記事は、2010年4月20日に、不動産の業界団体である「社団法人 全日本不動産協会」から仙谷由人の個人口座に「大臣就任祝金」として20万円が振り込まれていたという告発記事である。  これが政治資金規正法で禁止されている「個人献金」に当たるのではないかというのだ。興味がある方は読まれたらどうか。私には、仙谷由人という人間は、策士策に溺れるタイプで、一時もてはやされたような「政界のドン」になれる力量があるとは思えない。  「ポスト」の記事は、朝日新聞がこのところ菅直人首相"擁護"の論陣を張り、「お庭番」のようになっていると批判する。  朝日幹部は菅とたびたび会い、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)のアメリカ追随、脱原発路線(3.11以前は菅も朝日も原発推進派だった)、消費税10%増税支持と、菅と一体になったかのような論調は大メディアとしていかがなものかと指弾している。  「ポスト」の朝日新聞批判は聞くべきところが多いと思うが、批判だけで終わってしまっているのが物足りない。もう一歩突っ込んでほしいものだ。  今週の3位は、東日本大震災でかなりの額の義援金が集まったが、そのおカネがなかなか被災者に届かない、ならば、どうしたらいいかという「現代」のひと味違った切り口の記事である。  将来、医療人を目指す高校生や専門学校生を対象に、毎月1万5,000円を3年間にわたり支給(返還不要)する「NPO法人AMDA(アムダ)」。  宮城県女川にコンテナハウスを26棟設置し、そのうち8棟を「おながわコンテナ村商店街」としてオープンさせた「NPO法人難民を助ける会」も、自分が寄付したおカネが目に見えるかたちで使われるのが分かるという点では、ユニークな活動だ。  独自に除染や放射線量調査を行っている「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」などもある。  楽天やアマゾンがやっている支援は、被災地の学校などがネット上に要望するものを載せ、それを一般の消費者が代わりに購入するサービスである。  飯舘村を長期的に支援していこうという「NPO法人エコロジー・アーキスケープ」。NPOバンクを利用して、地元の木材と工務店を使って、冬までに仮設ではない住宅を提供するファンド「天然住宅バンク」などもある。  日本赤十字のように3,000億円近い義援金を集めるところもあるが、自分のおカネがどのように使われたのかを知ることはできない。たとえわずかなおカネでも、目に見えるというのはうれしいものである。  もちろん、ネット上には詐欺を目的にしたサイトも多くある。小さな善意を生かすために、ここにリストアップされているところを参考にしたらいかがだろう。  第2位は、無免許運転をスクープした「文春」が、またまた石川遼の父親に噛みついた記事。  日曜日(7月31日)に終わったサン・クロレラクラシックは池田勇太が接戦をものにしたが、石川は今期3度目の予選落ちだった。  今一つ波に乗れない今期の石川だが、その理由の一つに、無免許運転を指摘され、埼玉地裁に書類送検(7月20日)されたことがあるのかもしれない。  かつてはイチローや横峰さくらのパパが出しゃばりすぎてひんしゅくを買ったが、いまは遼パパがダントツであろう。  書類送検の件で聞こうと集まった記者たちに、試合中だから聞くなというのは理解できるとしても、こう言い放つのはいかがなものか。 「遼がいなければ男子ゴルフなんて書くことないだろう。あなたたちは遼のおかげで原稿を書いているんだから」  さらに、こうも言った。 「こっちは、あなたたちみんなの上司を知っているんだ。俺が言えば、ゴルフ担当から外すことだってできるんだ」  自宅近くでコメントをとろうとしていた全国紙の女性記者には、名刺を出させ、顔写真を撮った後「これからあんたに付きまとって、嫌がらせしますからね」と"脅迫行為"まがいのことまでやったそうである。  この遼パパの方こそ、息子のおかげでいまの自分があることを忘れているようだ。  それにしても、全英リコー女子オープンで優勝した台湾のヤニ・ツェンは強かった。女の中に一人だけ男が混じっているような力強いスイングと300ヤードの飛距離。いま石川遼とマッチプレーをやっても勝てるんじゃないかな。  今週のグランプリは、「ポスト」の加藤茶(68)再婚スクープ。再婚した妻は23歳、年の差は45歳になる。  7月8日号で映画監督・鈴木清順(88)が48歳年下の女性と結婚していたことをスッパ抜いたのも「ポスト」だった。年寄りの色恋に強い記者でもいるのだろうか。  彼女は広島出身で、地元で幅広く会社経営をしている名家だそうで、結婚式や披露宴はやらなかったそうだが、親戚を大勢招いて結納をしたという。  それにしても加藤は、5年前に解離性大動脈瘤という難病に罹り、生死の境をさまよった。その時、親身になって看病し、見舞客の応対をしたのは離婚した前妻だった。  退院後も、前妻に炊事洗濯までしてもらっていたが、彼女との結婚が決まってからは「一線を引くことにした」そうだ。  昭和の笑いを引っ張ってきた盟友・志村けん(61)も独身で、夜ごと女性同伴で飲み歩いているようだが、こちらも周囲に「結婚願望」を語り始めているという。  私はこの二人のファンである。円熟味を増し、チャップリンの『街の灯』のような、ペーソス溢れる喜劇を見せてくれるのではないかと期待している。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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すでに100誌近くが……「ぴあ」「PS」だけじゃない2011上半期 休刊雑誌クロニクル

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「PS」小学館と「ぴあ」(ぴあ)。
 もはや有名雑誌の"休刊"のニュースを耳にしたところで、「ふ~ん」「また?」と大した驚きもないほどに不況イメージが定着した出版業界。そんな状況下であっても、39年もの長きに渡りエンタテインメント情報を提供してきた「ぴあ」(ぴあ)の休刊は、同誌のお世話になった多くの人々の心に一抹の寂しさを残し、同時に"情報ゼロ円時代"を浮き彫りにした歴史的な一件であった。  また、7月21日に発売された「ぴあ」最終号の初版は、予想以上の短期間で完売。コンビニやネット書店からも在庫は消え、現在は入手困難となっている。  そんな「ぴあ」休刊の話題から息つく間もなく、小学館が発行する月刊誌「PS(ピーエス)」が11月1日発売号を最後に休刊することが明らかとなった。「PS」は、前身の「プチSEVEN」を誌名・方向性共にリニューアルし、2002年に創刊。裏原宿系ファッション誌として、蒼井優や宮崎あおいを度々表紙に起用し一時は好調だったものの、近年は広告収入不振でページ数も大幅に減少。遂に最後の決断に至った。  しかしこれは氷山の一角。2011年に入り休刊に追い込まれた定期刊行誌は、発行部数1~2万程度の専門誌も含めると既に100誌を超える勢いだ。そんな現状を打破する糸口を探すべく、今年の休刊雑誌を改めて何誌か振り返ってみたい。
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「この映画がすごい!」(宝島社/3月19日発売号にて休刊)  ページを開くと海外セレブのおっぱいポロリや、新恋人事情などゴシップ写真のオンパレード。スキャンダルと映画情報をハイテンションな誌面で紹介してきた同誌だが、かつての競合誌「プレミア」(ハースト婦人画報社)や「ロードショー」(集英社)の後を追っかけるように休刊。その12年の歴史に幕を閉じた。ちなみに発行中の映画雑誌の中では、「次は『キネマ旬報』(キネマ旬報社)がヤバイ」と一部でウワサされているとか。 hanachu.jpg「Hana* chu(ハナチュー)」(主婦の友社/4月1日発売号にて休刊)  女子中学生向けのファッション誌として、2003年に創刊。南明奈や成海璃子などがモデルを務め、一時は約15万部を発行した。しかし、新垣結衣などを輩出した「nicola」(新潮社)をはじめ「ラブベリー」(徳間書店)、「ピチレモン」(学研パブリッシング)といった競合誌にグイグイ押され完全敗北。休刊時の部数はピーク時の約半分になっていた。ローティーン向けファッション誌市場はまだまだ活気を見せているだけに、同業者からは「もっと頑張れたのでは?」「もったいない」といった声もちらほら。 efil.jpg「EFiL (エフィル)」(扶桑社/6月1日発売号にて休刊)  2009年に隔月誌として創刊された、40代以上女性向けライフスタイルマガジン。同版元が発行する「ESSE」よりもワンランク上のミドルエイジ層に向けて、料理、旅行、ファッション、占いなどを特集していた。しかし、宣伝不足のせいもあってかイマイチ定着しないまま休刊に。創刊から一貫して表紙に今井美樹を起用し続けた柔軟性の低さも原因の一つかもしれない。 owarai_poporo.jpg「お笑いポポロ」(麻布台出版社/8月8日発売号にて休刊)  アイドル誌「ポポロ」のお笑い版として2002年に創刊。旬な芸人のインタビューを中心に誌面展開し、2010年6月には年4回の季刊から隔月発行へ変更となるなど一時は好調であった。途中、よしもと芸人ビジュアルムック「お笑い男子校」(ワニブックス)創刊に伴う大人の事情で、よしもと芸人がほとんど誌面に登場していない地味な号が存在(2010年2月号)。読者をハラハラさせたが、以降はきちんとよしもと芸人も登場している。そんな苦難も乗り越えてきた「お笑いポポロ」だが、お笑いブームの終息と共に同誌も静かに幕を閉じる。 tohoku_jaran.jpg「東北じゃらん」(リクルート/3月1日発売号にて休刊)  震災の影響をストレートに受けてしまった月刊の地域情報誌。7月以降は「関東じゃらん」と統合、「関東・東北じゃらん」として発行されている。いつか「東北じゃらん」が復活することがあるなら、それは東北が復興し元気を取り戻したという証明。そういった意味でも今、最も復刊を願う雑誌の一つである。  実は筆者も数誌の休刊・廃刊に関わってしまった経験がある。新雑誌の創刊には実に多大な労力と時間がかかるものだが、それに引き換え休刊とは、大概の場合、それはそれは拍子抜けするほどあっさりと訪れるものだ。今一度、書店から姿を消した多くの雑誌たちを見つめ直すことで、先行き不透明な出版業界が少しでもいい方向へ進んでいくと信じたい。 (文=林タモツ)
ぴあ [最終号] ありがとう。 amazon_associate_logo.jpg
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元・名物編集長がエール「山本太郎よ、日本のジョージ・クルーニーを目指せ」

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「週刊現代」8月6日号 中吊り広告より
第1位 「俳優・山本太郎『原発マネーに汚染されたテレビと芸能界へ』」(「週刊現代」8月6日号) 「坂本龍一 私はなぜ『脱原発』を訴えるのか」(「週刊文春」7月28日号) 第2位 「福島第一原発"最高幹部"が語るフクシマの真実 番外編『放射性物質が200万分の1に減った』はウソ」(「週刊朝日」8月5日号) 第3位 「藤原紀香『外資系イケメンアナリストと電撃再婚へ!』」(「フライデー」8月5日号)  北欧ノルウェーで起きた、右翼と見られる32歳の男による爆弾テロと銃乱射事件は100人近い死者を出した。その動機は、ノルウェー政府がイスラム系移民の受け入れに寛容な政策をとっていることに抗議するためだと見られているようだ。  一見、平和で豊かに見える北欧の街で起きた惨劇だけに、世界へ与えた衝撃は大きい。こうした問題を抱える国は他にも多くある。移民敵視、宗教的対立、多様な文化を受け入れない偏狭な人間ひとり(複数犯行説もあるようだが)が爆弾と銃を持てば、簡単に100人くらいの人間を殺せるのだ。ヨーロッパの大きな潮流となっているネオナチズムやアメリカの右翼運動「ティーパーティー」など、キナ臭い嫌なにおいが立ちこめ始めている。  中国浙江省で23日に起きた高速鉄道路線での事故にも驚いた。私も乗ったことがあるから、ネット中を探し回って情報を貪るように読んだ。  日本の新幹線がこれだけ長い間事故を起こしていないのは、優秀な技術と人間に支えられているからだが、運もあるのは間違いない。昔取材したとき、いま一歩で大事故に結びつく故障や線路へ置かれた妨害物などが発見されたが、寸でのところでことなきを得たことが何度かあると、JR関係者から聞いたことがある。  原発と同じである。チェルノブイリのような事故は日本では起こらないと、技術を過信していた日本の原発が、このていたらくである。JRにも、今回の事故を他山の石としてもらいたいものだ。  14年前、渋谷・円山町のアパートで殺された東京電力のOL事件が、新たな展開を見せてきた。彼女を殺害したとして逮捕され、最高裁で無期懲役が確定したネパール人・ゴビンダ受刑者は、いまでも無罪だと主張し再審請求しているが、またもDNA鑑定で新事実が出てきたのである。  被害者の膣内から採取された精液が、ゴビンダ受刑者とは別人のものだと判明したのだ。しかも、当時の捜査員はこの精液鑑定を、無関係だろうという先入観から、これまで鑑定に出していなかったことまでが判明した。  ノンフィクション・ライターの佐野眞一は著書『東電OL殺人事件』(新潮社)で、ゴビンダは冤罪だと主張してきたが、今週の「朝日」で、有罪判決を出した二審の裁判長(一審では無罪)を痛烈に批判している。  私も事件当時、「週刊現代」でゴビンダ容疑者(当時)を有罪と決め付けるには証拠が乏しいと批判したことがある。今回も新たなDNA鑑定が、再審の扉をこじ開けてくれるのを期待したい。  話はがらっと変わる。読者にはどうでもいいことだが、私の女性の好みの変遷について述べてみたい。私は由緒正しい吉永小百合ファン(生まれ年が同じで、向こうが8カ月お姉さん)で、いまでもシャープのCMを録画したり、駅に貼ってある「大人の休日」のポスターをデジカメで隠し撮りして、ひとり悦に入っている。  一時、松坂慶子に惹かれたり、藤原紀香にボーッとした時期もあるが、ほぼ一貫してサユリストである。だが最近、綾瀬はるかの蠱惑的な瞳によろめいている(古いね!)自分に、腹が立っている。と縷々書き連ねたのは、今週の「フライデー」に「藤原紀香電撃再婚スクープ撮」の見出しを見つけ、買いに走ったことを言いたかったからである。  代官山のゴルフショップで二人が買い物をしているショットが扉写真だが、紀香はもちろんだが、この新恋人、確かにいい男である。  USB証券の証券アナリスト・乾牧夫氏で、彼女より3つぐらい年上。六本木ヒルズに住みフェラーリ612スカリエッティ(市場価格3,600万円以上)を所有し、年収は4,000万円ほどだという。  買い物を終えた二人が向かったのが、渋谷・東急ハンズの先の露地にあるホルモン屋というのが微笑ましい。4時間も飲みかつ食べた二人は、紀香の住む高級マンションへと消えていった。  藤原紀香もいまは四十路である。お笑い芸人・陣内智則との離婚から2年4カ月経ち、周囲も「乾氏を完全に再婚相手と見ています」と話している。今度は「格差婚」とは言われないだろう。  今週の第2位は、「朝日」の「福島第一原発"最高幹部"が語るフクシマの真実 番外編」。この連載は3週連続ランクインになるが、この欄で初めての"快挙"である。  今回は、7月19日に政府と東電が発表した「新工程表」が、国民の目をごまかす辻褄合わせでしかないと批判している。  私も読んだとき、あれと首を傾げた「3年間で燃料プールから核燃料を取り出す作業を始め、廃炉に向けた準備を進める」という箇所である。最高幹部はこう語っている。 「この数字が入ったのは、それこそ『政治主導』ではないでしょうか。経産省、つまり『官僚主導』かもしれない。まだ原子炉を安定的に冷却することもできていない状況で、『3年』と断言するのは到底、無理な話です。また、この新工程表では、外部への放射性物質の放出量が、事故後に比べて『200万分の1』(6月末時点)になったとしています。しかし、爆発時に出た本当の放射線量は、はっきりとしないというのが事実です。一体何を基準にして、この数字が出てきたのかよくわかりません」  彼はまた、政府が避難地域の縮小・解除を前倒しで実現したいとしている点にも危惧を感じている。 「解除すれば大人だけではなく、子どもたちもその地域に住むことになる。子どもへの影響を考えれば、そう簡単にはできません。私自身としてはむしろ、現在、放射線が高いとされながら、何の手も打たれていない福島市や郡山市など中通り周辺の地域について、見直したほうがいいのではないかという思いがある。(中略)本当に住民たちの健康のことを考えれば、いま一度、原点に戻って考え直してはどうかというのが正直なところです」  現在、免震棟の前にある街灯の電源は、太陽光パネルでまかなっているという。「正直なところ、これまで内心では、『しょせん、太陽光なんて』と思っていました。でも、いざこうして実際に世話になってみると、その性能の良さ、パワフルさに感動しつつ複雑な気分です」と話す。  いまのまま新しい原発をつくらなければ、2050年には原発はなくなっているそうだ。脱原発を進め、再生可能エネルギーへの移行を大胆に進めれば、20年も経たずに原発依存から脱却できる。その間をどう凌いでいくのか、日本人の智恵が試されるときだ。  第1位は2本。有名な音楽家である坂本龍一と俳優の山本太郎が、反原発について発言している記事である。  坂本は、原発直後から「すぐに健康上の問題はない」と言い続けてきた枝野官房長官は全然信じていないが、脱原発の方向に転換した菅総理には、自然エネルギー普及の原動力を生み出すまで頑張ってほしいとエールを送る。  彼は、チェルノブイリ原発事故の恐ろしさを友人から聞いて、肌で感じるようになった。「核燃料処理工場からは、通常の原発が三百六十五日で排出する放射性廃棄物が、わずか一日で排出される」という文章を読んで「ストップ・六ヶ所村(青森県六ヶ所村・日本原燃が所有する核燃料の再処理工場がある=筆者)」というプロジェクトを立ち上げた。  坂本は、最近のものいわぬ静かな日本人への疑問も吐露している。 「今は、危機の時代なんですから、国民がそんなにおとなしくしていていいはずがない。何しろ自分たちの命がかかっているんです。母親や子どもたちの命がかかっているんです。何十年も甘い汁を吸ってきた原子力村の人たちにハッキリ『ノー』を突き付ける最大の機会です。国民みんなで声を上げれば、日本のエネルギー政策を大きく変えることは絶対できます」  山本太郎は4月9日のTwitterで「テロ国家日本の片棒担げぬ」と発言し、反原発の意思を表明した。  以来、反原発活動を続けているが、案の定、7、8月に予定されていたドラマから降ろされてしまった。  反原発の立場を明らかにするかどうか悩み抜いた末、事務所にも迷惑を掛けるからと、そこを辞め、明日から仕事がなくなるかもしれないという恐怖とも闘っている。  彼はいま、原発から30km圏外のため、避難勧告がでていない福島県内の母子の避難・疎開を支援する「オペレーション・コドモタチ」というプロジェクトにかかわっている。  北海道に移住した母親が、朝、放射能を気にせずに窓を開け、洗濯物を干せる幸せを語ってくれ、うれしかったと話す。  反原発のデモの先頭にも立つ。原発の安全神話に乗っかってきた自分が許せなかったからだ。  反原発を明確にすると芸能界からもテレビからも閉め出されてしまう現実を、俳優自らが発信する勇気に拍手を送りたい。以前書いたが、「ニューズウィーク日本版」で、俳優のジョージ・クルーニーが語っていた言葉を送りたい。 「『ここ(スーダン)に暮らし、妻子が虐殺されることを恐れている男の訴えを世界に届けることが俺の仕事だ』と、クルーニーはセレブの役割について熱く語る。『彼は山の上で叫びたいだろうが、彼には大きなメガホンもなく、高い山もない。俺にはメガホンもあれば、山もある。彼に自分の代わりに叫んでくれないかと頼まれたら、一も二もなく答えるさ。いいとも、俺が代わりに叫ぶよ、と』」  俳優としてはまだまだの山本だが、日本のクルーニーを目指してほしいものだ。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
母ちゃんごめん普通に生きられなくて そのまま突き進んでください。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 あおり派週刊誌に宣戦布告!? 「ポスト」覚悟の総力大特集、その中身とは? 「井戸端会議で話題にもできない」"ホットスポット"で闘う母親たちの苦悩 経産省ではスキャンダルは出世に響かない!? 愛人発覚・西山審議官の厚顔無恥ぶり

日本の被曝医療構造はピラミッド型? 切り捨てられる低線量被曝

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「週刊朝日」7月29日号
第1位 「福島第一原発"最高幹部"が語るフクシマの真実(後編)『新工程表はデタラメ』」(「週刊朝日」7月29日号) 第2位 「被曝医療 市民の検査はできません」(「AERA」7月25日号) 第3位 「独占スクープ告白『わが子のオシッコからセシウムが出て』」(「週刊現代」7月30日号)    福島の子どもたちを夏の間だけでも北海道あたりへ「疎開」させる運動を、仲間と始めようと思っている。  これは先週(7月13日)、大阪・熊取にある京大原子炉実験所へ小出裕章氏を訪ね、話し合ったことがきっかけになった。  小出氏はかつて原発の平和利用に憧れを抱き、大学で原子力工学を学んだが、その後、原発の危険性に気が付き、現場に踏みとどまり、反原発の先頭に立っている人である。  小出氏の主張は一貫している。低線量でも人体には必ず影響がある。どんなにわずかな被曝でも、放射線がDNAを含めた分子結合を切断・破壊することは、これまで放射線の影響を調べてきた国際的な研究グループが認めている。  しかし、時間を戻せない以上、私たち大人は、放射線によって汚れてしまった環境の中で、汚染された食べ物を食べながら生きるしかない。  だが、放射線への感度が高い子どもたち、原発に何の責任のない子どもたちには、安全なものを食べさせてほしいし、できれば即刻、放射線量の少ないところへ避難させてあげてほしいと語った。私を見つめる目は「深刻」であった。  「現代」の記事は、福島市に住む子ども10人のオシッコを検査した結果、全員からセシウム134と137が検出されたことを受け、その親たちにインタビューしたものである。  この報を受けた斑目春樹原子力安全委員長や高木義明文科相は、健康への影響は考えられないと一顧だにしなかった。  政府のあまりにも無責任な対応に怒り、一人の親は、息子2人を兄の住む街に避難させることを決め、もう一人は、妻と息子を新潟の佐渡へ避難させた。  彼らが選んだ苦渋の決断は、多くの迷っている親たちに勇気を与えたはずである。  本来は、県や市町村、もっと言えば、国がやるべきことであるはずだ。しかし、権力争いに明け暮れるバカな政治家たちに期待しても無駄であろう。  そこで、まずは100人ぐらいの単位で、小学生以下の子どもを北海道へサマーキャンプに行かせ、思う存分自然と遊ばせてあげようという計画である。  苦しい避難生活ではなく、楽しい疎開生活をさせる。それがきっかけになって、多くの親たちが動き出し、国に疎開を求めていけば、いくら無責任な政治家でも動き出さずにはいられないはずだ。  親の世代や高齢者は、戦中のようにその場に踏みとどまり、放射能で汚染されたものを食べながら生き抜いていくしかない。それが原発を止められなかった者の責任と覚悟であると、小出氏から学んだ。  余談になるが、小出氏のところを辞する間際に、電話がかかってきた。そうした時間はないとすぐに切ったが、誰からですかと尋ねると、海江田万里経産相からだと教えてくれた。  面識はないと言う。菅直人に反旗を翻した海江田が、何用あって反原発のカリスマのところへ電話を寄こしたのだろうか。  第2位は、読んでいるうちに腹が立ってしょうがない「AERA」の記事である。  福島県二本松市の三保恵一市長は、独自に放射線量を測っている。原発事故発生当初は毎時5~8マイクロシーベルトもあり、最近は少なくなってはいるが、7月2日は毎時1.30マイクロシーベルトで、福島市や郡山市を上回っている。  悩んだ市長は、子どもたちの外部、内部被曝を調べ、どういう医療を施せばいいのかを検討するため、ホールボディカウンター(全身測定装置、WBC)で調べてもらおうと、福島県立医科大学付属病院に懇請したが、「一般市民の検査はできない」と、あっさり断られてしまったのだ。アメリカでは、被曝医療は感染症対策と同じように、普通の公衆衛生行政として扱われている。  拒否した理由は、日本の緊急被曝医療体制にあるというのだ。被曝医療は厚労省ではなく文科省の担当である。  現在のような緊急被曝医療体制が作られたきっかけは、1999年9月に起きたJCO東海事業所での臨界事故による。多量の放射線を浴びた作業員3人のうち2人が死亡した(この2人のうち、大量の被曝をした大内久さんの、83日間にわたる壮絶な闘病と医師の必死の救命活動を記録した、新潮文庫のNHK東海村臨界事故取材班の『朽ちていった命』をぜひ読んでいただきたい)。  この事故に狼狽した原子力安全委員会は、「緊急被ばく医療のあり方について」という報告書をまとめ、緊急被曝医療を担う医療機関を、初期的・救急的診察をする原発近辺の医療機関を1次にするなど3段階に分けたのである。  今回、診察を断った福島県立医大付属病院は2次機関に位置付けられ、断った理由は、原発構内の高線量被曝者や半径20キロ圏内での警察や消防関係者への対応が役割だからだというのだ。  先の報告書では、放射線によって健康不安を抱く住民への精神的ケアを施すことを促してはいるが、低線量被曝は緊急医療の対象とはしないという原則が明確にされていると、記者は追及している。  さらに、低線量被曝を切り捨て、ピラミッド型の被曝医療構造を文科省に置いたままにしたのは、原発推進派に都合のいい被曝医療体制の構造作りに医学界が協力したのだと言及している。  それは今回のように、大人口が被曝し、医療需要が極端に膨れあがったら、その騒ぎだけで反・脱原発の機運を高めることになる。そのことを恐れてのことだろうと推測している。  数千人以上の被曝者に接してきた肥田舜太郎氏は低線量被曝についてこう語っている。 「微線量でも障害が生じる可能性があることは、海外の医学界の常識です」  こうした医学界ぐるみの原発擁護と重大な情報の隠ぺい体質が、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)のデータ一時隠ぺいや、年間20ミリシーベルトの被曝まで許容するという許し難い校庭利用基準が、文科省から福島県側への通知だけで事足れりとすることに表れているのである。  これほどの事故が起こっても、いまだに原発を守り、東電を存続させようと画策する、政治家、官僚、財界の悪のトライアングルを破壊しない限り、福島の住民はもちろん国民の健康は顧みられることはない。  今週も第1位は、「朝日」の「最高幹部が語るフクシマの真実」の後編である。  前編がきっかけとなり、他のメディアも福島第一原発の現状や、工程表のいい加減さを競って取り上げている。  今回は、東電が4月19日に発表した工程表は、現場の意見を無視したものだったということが明らかにされる。フクイチの現場からは1年半というスケジュールを出したのに、これでは菅総理が納得しないと本社が9カ月に短縮してしまったのだ。  現在の作業を妨げている最大の要因は、汚染水。もし核燃料がメルトスルーしているならば、汚染水は非常な高濃度になっているから、チェルノブイリで日本の技術がしたように、地下にトンネルを通し、セメント、ベントナイト(粘土鉱物)などを注入して固めてしまう方式にしたいが、国土交通省と経産省の連携がうまくいかず、適切な対応策が講じられていないという。  さらに1~4号機から白い煙が出ている。あれは水蒸気だが、その「湯気」の中にはやはり、放射性物質が含まれていると言っている。  また、3月11日午後3時36分に1号機で水蒸気爆発が起きたが、その後の政府の避難指示のやり方が拙かったと率直に話す。 「現場ではもっと広い範囲、少なくとも半径50キロは避難していると思った。(中略)避難範囲が半径30キロ圏内と聞いたときも、『大丈夫か?』と思ったのが正直な印象ですね。(中略)爆発が相次ぐ中、当時私自身、半径30キロどころか、青森から関東まで住めなくなるのではないかと思ったほどです。本社と政府の話し合いで決まったんだろうけど、余震の危険性などを考えれば、最低でも50キロ、万全を期すならば半径100キロでも不思議はなかった。(中略)いま原発は何とか安定していますが、放射性物質がかなり飛散しているのが実態です。避難地域の見直しが必要だと思います。実際、もう半径20キロ圏内は戻れないと、そろそろ発表してもいいんじゃないか。子どもたちが学校に通うのは無理です。最初からもっと広範囲で避難させていればと悔やまれます」  最高幹部は、フクイチから上げられる膨大な量の情報のうち、国民に公表されているのはその10%、いや、1%かもしれないというのである。  現場と本社は衝突ばかりで、情報公開を巡り、本社幹部は、「そんな情報が保安院や政府に分かると、大変なことになる」と言い放ち、最後にこう言ったそうだ。 「私の立場や出世はどうなるんだ。キミは分かっているのか!」  原発を担当してきた官僚たちの責任追及、東電解体をしてからでなくては、脱原発、再生可能ネルギー政策を考えるわけにはいかないと、私は思うのだが。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
朽ちていった命―被曝治療83日間の記録 放射能の恐ろしさ。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 あおり派週刊誌に宣戦布告!? 「ポスト」覚悟の総力大特集、その中身とは? 「井戸端会議で話題にもできない」"ホットスポット"で闘う母親たちの苦悩 経産省ではスキャンダルは出世に響かない!? 愛人発覚・西山審議官の厚顔無恥ぶり

あおり派週刊誌に宣戦布告!? 「ポスト」覚悟の総力大特集、その中身とは?

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「週刊朝日」7月22日号
第1位 「独占スクープ!! 福島第一原発最高幹部がついに語った フクシマの真実(前編)」(「週刊朝日」7月22日号) 第2位 「ウクライナの百倍緩い―チェルノブイリの汚染地域と日本の『規制値』を比べたら...」(「AERA」7月18日号) 問題提起特集 「『恐怖の放射能』の嘘を暴く-原発デマと節電ファッショの酷暑」(「週刊ポスト」7月22・29日号)  「覚悟の総力大特集」と謳ったポストの特集については、後で触れる。  日曜日(7月10日)の朝日新聞の読書欄で、柄谷行人が「いま、憲法は『時代遅れ』か」(樋口陽一著/平凡社)を評している中で、こう書いている。 「憲法は国民が国家権力を縛るものだ、という観点から見ると、現行憲法は『時代遅れ』であるどころか、きわめて今日的である。憲法25条1項には、こうある。《すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する》。たとえば、震災でホームレスとなり職を失った人々を放置するのは、憲法に反する。また、放射性物質の飛散によって人々の生存を脅かすのは、憲法違反であり、犯罪である」  1999年9月に起きたJCO東海村「臨界事故」で作業員2人が被曝して亡くなった。捜査が進むにつれ、手抜き手順を明記した裏マニュアルの存在など違法作業が日常化していたことや、上層部がこれを容認していたことが明らかとなり、幹部社員6人が業務上過失致死罪で逮捕されている。  今回の福島第一原発事故は、東電による「人災」であり、明らかに犯罪を構成すると思うのだが、東電トップの逮捕はないのだろうか。  さて、「AERA」の記事は2ページだが、へぇ~そうなんだと、考え込んでしまった。今回の福島第一原発事故はチェルノブイリの時と同じレベル7である。  しかも旧ソ連時代だから、言い方は悪いが、住民無視の政策をやっていたのではないかと、以前はそう思っていたのだが、原発周辺住民の避難(3年経って強制的に避難させられた人たちもいるが)や、その後の住民たちの健康調査など、思っていたほど悪くはないことを、このところの報道で知った。  ベラルーシやロシア、ウクライナ3国の食品についてのセシウム137の規制値も、日本に比べて驚くほど厳しいというのだ。  ウクライナの飲料水の規制値は1キログラム当たり2ベクレル。日本はセシウム134と137の合算値だが、200ベクレルである。  野菜は7倍以上、肉類で2.5倍、魚では3.33倍、果物は7倍、卵5倍と、日本の方がはるかに緩い。  「AERA」編集部が入手したウクライナ保健省の資料によると、原発事故以来、規制値は繰り返し改定され、徐々に厳しくなってきたようだ。その上、日本にはどこの国にもあるストロンチウム90についての規制値がないのだ。  原発事故による食品汚染問題に詳しい宮崎吉郎さんは、実際に放射能被害に苦しんだ地域から学ばないのはおかしいとした上で、こう語る。 「農産物について、必要な検査とその結果の公表を地道に繰り返し、消費者の信用を取り戻すためにも、日本はウクライナのデータを活用すべきだ」  今の永田町村の醜悪な権力争奪ごっこを見ていると、まだ旧ソ連の方がましだったかもしれないと思ってしまう。日本は「最大不幸社会」になっているのは間違いない。  1位の「朝日」の記事には最高幹部とあるだけで名前はない。文中に吉田昌郎所長のことが出てくる。私は、吉田所長本人が語っているのではないかと推測するのだが、その当否は別にして、なかなか興味深い内容である。  冒頭、玄海原発の再稼働問題について、「フクイチ(福島第一原発)の事故を経験した私に言わせれば、そんなバカなことはやめたほうがいい」と言っている。それは、玄海原発は老朽化が進み、現地はフクイチよりも地盤が軟らかいからだ。  フクイチ事故は、地震による被害も大きかったが、津波対策がおろそかだったため、事故が深刻化した。この心配は全国の原発に当てはまるという。  現場と東電本社との温度差があり、現場ではこれ以上汚染水を海に放出することは許されないと認識しているが、なぜか本社は海に流すことをいとわない雰囲気があるというのだ。  汚染水を循環するシステムは日米仏でやっているが、現場では、日本だけで十分やれると思っていた。それがなぜそうなったのかについては、「政府同士で商取引の約束でも交わしたのでしょうか。本社のある幹部は政府や経産省との絡みも暗ににおわせて、『勘弁してくれ。こちらでもどうにもならない』ということでした」と話す。  また、「安定したら、何とか核燃料を外に取り出したい。しかし、その燃料がどんな状況なのか、すでにメルトダウン、さらにはメルトスルー(原子炉貫通)もないとは言えない。飛び散っていることも考えられる」と、内部の現状把握もまだしていないことを明かした上で、今の一番の課題は、現場で作業をする「人」だという。  これからの暑さと、台風などによる雨の中で仕事ができるかどうかと心配する。吉田所長から聞いた話として、こうも言っている。 「恐らく今後、年内に安定化できるかどうかが焦点になるだろうが、それは正直厳しい」  原発事故から4カ月が経ち、福島第一原発事故が収束方向に向かっているように「錯覚」している国民も多いようだが、まだまだ予断を許さないことは、原発内部の幹部も認めているのである。  最後になったが、「ポスト」の「覚悟の総力特集」について書こう。  まずは巻頭2ページを使ったリードにやや圧倒される。これまで新聞・テレビが政府・東電の発表を垂れ流してきたことを批判している。だが、本丸はライバルである「現代」や「文春」、「朝日」のような「放射能の危険」をことさらあおる週刊誌である。  その連中に共通しているのは「知識の乏しさと科学リテラシーの低さ」で、ありもしない「放射能クライシス」をあおり立てる報道に対して、「これを正すことも報道機関の責務である」と、すごい気合いの入り方だ。  また、こうしたあおり派雑誌に登場する「専門家」は、原子力の研究者というより反米・反日活動家や、間違ったことを主張するために、学会で名誉ある地位を占められなかった人物たちであると難じる。  デマを真実と思いこんだ国民の中には、ノイローゼになったり、子どもを産むことに恐怖心を覚え、人工中絶するケースまで出ていることを憂い、「今回の事故による放射線汚染で、子どもが『奇形』や『遺伝子異常』で生まれる可能性は『ゼロ』だといっても過言ではない」と言い切る。  最後に、「ポスト」は「バイアスや信条、利権に基づいた報道はしないと読者に約束する。それこそがメディアの良心だと信じるからである」と結ぶ。  これだけ気合いが入った特集とは何かと見てみると、まずは、「50年前の日本は『放射線まみれ』だった」。スリーマイル島やチェルノブイリ原発事故があるもっと前、45年にアメリカが大気圏核実験して以降、今日までに世界中で2,000回以上の核実験が行われている。中でも62年には年間178回の核実験が行われ、世界中に「死の灰」がまき散らされたから、その当時の方が今とは比較にならないぐらいの放射線量があったと、「日本分析センター」というところの協力を得て、63年から今年までのセシウム137の測定値を表にしている。  ちなみに63年の秋田は3.36ミリシーベルト/年、東京も1.69ミリシーベルト/年であるが、その後減り続け、86年のチェルノブイリの時にやや上がるが、00年にはほとんど検出されなかったそうだ。  このデータを見れば、今よりもっと高い放射線量を浴びても、その後の日本人のがんの発症率への影響は見られないし、広島・長崎の原爆経験者の妊娠例を調査しても、被爆(「ポスト」は被曝を使っているが、原爆の場合はこちら)の影響による子どもの先天性異常がなかったことは確実であるとしている。  要は、原発周辺は別にして、現在の放射線量など心配しなくていいと言いたいのである。  その後には「逃げ惑う『ノイローゼママ』、離婚、中絶、子づくり延期、そして結婚差別」、「『内部被曝に効く』『放射能を除去する』インチキ商品、未公開株詐欺が横行中」、「『節電しろ』と言う人たちのオフィスの気温を測ってきた」、「灼熱の原発『潜入記』」ときて、ついにおまえもかと思った「放射線汚染量完全マップ」と続く。  この「完全マップ」は、医学博士の加藤洋首都大学東京放射線学科准教授(この大学って石原都知事が旗を振ってできた大学だね)と取材班が、モニタリングポストが使っているのと同じ方式のシンチレーションカウンター(価格は50万円)を使用して、東京の人気公園や関東沿岸の海水浴場を独自調査したというのである。  その結果は、あおり派週刊誌が大声で騒いでいるような計測値は出ないし、国が定めている1時間当たり3.8 マイクロシーベルト(年間20ミリシーベルト)を超えるところはなかったとしている。  わずかに都立葛西臨海公園で2.10 、都立水元公園で1.55という計測値が出たくらいで、心配せずに子どもと一緒に遊びに行ってもらいたいと結んでいる。  「ポスト」は、GM管の方式のカウンターでは2倍以上の数値になるところがあるが、これは安物だからで、信用できないとしている。  私はこうした方面に明るくないが、知人の専門家に言わせると、GM管はガンマ線だけではなくアルファ線、ベータ線なども計測してしまうので、文科省のやっているように覆いをして、ガンマ線だけにして計測すれば、ほぼ同じ値になるそうである。  しかし、今回の原発で使用されているウラン235やMOX燃料が核分裂した際に出てくるさまざまな核種は、主にベータ線を出すものばかりで、自然放射線源との明確な違いは、このベータ線の量の異常な多さだから、ベータ線を測らせない国のやり方はおかしいと、彼は言っている。  私は、国が安全だとしている年間20ミリシーベルトという数値への疑問もあるが、ここでは触れないでおこう。さて、あおり派、デマ週刊誌と「ポスト」から難詰された他の週刊誌は、沈黙するのではなく、挑戦を受けて堂々と反論すべきであろう。  放射能の問題は、子や孫だけではなく、人間が今後どう生きていくのかを考える根源的な問題なのだから。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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【関連記事】 「井戸端会議で話題にもできない」"ホットスポット"で闘う母親たちの苦悩 経産省ではスキャンダルは出世に響かない!? 愛人発覚・西山審議官の厚顔無恥ぶり 「"生命"は維持できても"人生"は奪われている」いまも南相馬市に暮らす住民の訴え

「井戸端会議で話題にもできない」"ホットスポット"で闘う母親たちの苦悩

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「週刊文春」7月7日号より
第1位 「AKB48 芝幸太郎社長 隠された『ドス黒い履歴』」(「週刊文春」7月7日号) 第2位 「<理論物理学者ミチオ・カク教授>福島第一の再爆発に備えよ」(「週刊現代」7月16・23日号) 第3位 「すべての判断は母任せのつらさ 『ホットスポット』柏で闘う母の座談会」(「AERA」7月11日号)  今朝(7月4日)の新聞で、芥川賞と直木賞の候補者が出ていた。その中に、私の友人である石田千さんが、芥川賞にノミネートされていた。石田さんは、作家・嵐山光三郎さんの秘書をしていたころから、自らもエッセーを書き始めた。  最初の本『月と菓子パン』(晶文社)は、彼女にしか書けない何ともホンワカとした文体が魅力的で、多くのファンを獲得した。  その後、エッセーだけではなく、私小説風なものも書くようになった。候補作「あめりかむら」は「新潮」2月号に掲載された100枚の中編である。がん検診の場面から始まり、大学時代の友人の自殺、写真家に誘われて関西旅行へと続いていく。読み終わって、全体的にやや暗いトーンが気にはなったが、芥川賞に十分値する力作である。朗報を待ちたい。  このところ原発関係の本ばかり読んでいるせいか、「ポスト」のように楽観的にはなれない(今週もポストは放射能に関する特集はゼロ)。  「現代」で、広島での被爆体験があり、以来、放射能が人体に及ぼす研究を続けてきた肥田舜太郎医師がこう語っている。 「先日、福島の5歳の子どもに紫斑が出たという相談を受けました。(中略)この子どもさんも被曝の初期症状であることは間違いない」  同じ「現代」で、つくばエクスプレス「柏の葉キャンパス駅」前の側溝で、毎時1.68マイクロシーベルトを計測したとある。早期に対策を求める住民の声が高まっているが、柏市は動いていない。  「AERA」が、その柏市で子どもを育てている母親3人に、現状と不安を語らせている。こうした普通の人たちの声に耳を傾けるのは、意外にどこもやらない。私は好企画だと思う。  彼女たちは毎日、外出時に線量計でチェックし、子どもには通学時にマスクをさせ、休みの日も家の中で過ごさせているという。  食材は西日本や輸入品で、水はミネラルウォーター。  それでも、学校給食が心配だという。学校から産地を出してもらったところ、千葉県産、それも柏産のものが多いという。  国の「安全だ、安全だ」という報道はウソだと感じているが、結局、判断はすべて母親に委ねられていることに戸惑いを隠せない。  柏市の幼稚園や学校によっては独自に砂を入れ替えたり、校庭の表土を削ったりするところも出てきた。しかし、市は「安全だ」というスタンスだから、表沙汰にしたくないため、こっそりとやらざるを得ないそうだ。  もちろん、彼女たちのような意識的な母親ばかりではない。政府の安全だという大本営発表で刷り込みをされている母親たちとは、放射能の話題すらできないため、井戸端会議がめっきり減ったという。  彼女たちと同じように危機感を持っていても、周囲に話せないで孤立してしまっている母親も多くいるそうである。  いくら訴えても動かない市や、放射能への恐怖から、一人の母親は、被災者向けの雇用促進住宅を申し込んだが、仕事は辞められないという夫と殴り合いのケンカになったそうだ。  また、夫が大分に単身赴任している母親は避難したいと思ったが、両方の実家がいわき市にあるため、そのことを話したらわだかまりができ、父親から「もう、うちには娘も孫もいないことにする」とまで言われてしまったそうだ。  福島第一原発事故による放射能の被害は、平凡な普通の家庭の幸せさえも崩壊させてしまうのである。  このところ、工程表通りに原発事故の収束などできないことが明らかになってきた。しかし、それよりも恐ろしい再爆発があるかもしれないから備えろと、全米で最も著名な理論物理学者ミチオ・カク ニューヨーク市立大学教授が「現代」で、ガンガン警鐘を鳴らしている。  ちなみにこのインタビューをしたのは、私の講談社時代の同僚・松村保孝である。彼は定年後、ニューヨークに住んでいる。  カク教授は、福島第一原発は、いつ状態が悪化してもおかしくない時限爆弾だというのだ。教授が考える最悪のシナリオはこうだ。 「仮に巨大余震に襲われて敷地内のパイプやタンクが壊れたとしましょう。その時点で大量の高濃度汚染水が溢れ出し、放射能レベルは一気に上がる。作業員は全員避難せざるを得ない。そこから原発事故は悪化の一途をたどるのです。原子炉内には水が絶えず注入されていないと、すぐ干上がってしまう。しかし、原子炉の破損がよりいっそうひどくなれば、壊れたカップに水を注ぐようなもので、いくら注いでも水はさっと流れ出す。そうなると炉心溶融が再開し、再び爆発が起こる」  カク教授は、福島第一原発が最悪の事態にまでいかなかったのは、東電の吉田昌郎所長が海水注入を決断したためで、奇跡だったという。  だが、彼のコンピュータによる分析で、日本政府や東電の発表した情報は、早くから正確ではないことが分かっていた。このような間違った情報を出し続けたことで、日本政府の威信は地に落ちたという。  原発からの撤退を段階的にしていくのはもちろん、東海大地震の予想震源域に建つ浜岡原発は一刻も早く運転を永久停止するべきだと言い切る。  カク教授がCNNに出たとき、この原発事故によって東北地方全域で人が住めなくなる可能性があると発言した。このインタビューでも、少なくとも、避難している福島の人たちが、もと住んでいた家に帰れることはないと断言する。 「日本政府は『いつかは正常に戻る』という根拠のない話をしていますが、問題は、福島に正常化などはないということです。本当のことを伝えなくてはいけない。さもなければ今後、現実を知らされたとき、人々はパニックに陥る」  チェルノブイリでさえ、25年経った今でも収束していない。福島の事故も、収束までにおそらく50年から100年はかかるだろうと語っている。  永田町の権力亡者どもや無責任な官僚たちは、こうした「極論」を読んでみた方がいい。あんたらの安全宣言は、日本のほとんどの国民に信用されず、アメリカを始めとした世界中で物笑いの種になっているのだから。  さて今週のスクープ大賞は、文春の「オフィス48」芝幸太郎社長の大スキャンダルである。  「AKB48」の名称の由来は、総合プロデューサーの秋元康、運営会社「AKS」の窪田康志、そして芝の3人の名前から取ったと言われている。  「オフィス48」はAKB劇場の管理を担当し、宮澤佐江、秋元才加が所属している。その芝社長の過去はドス黒く汚れ、彼の背中には緋鯉の彫り物まであるというのだから驚く。    高校卒業後、後に"臓器を売ってカネ返せ"と脅して話題になる「商工ファンド」に勤務し、営業マンとしてめきめき頭角を現し、22歳で山口支店長に抜てきされた。  その後も、ヤミ金業、それも振り込め詐欺のようなことをやっていたと、ヤミ金業者が話している。  その手口は、数百万円の融資をにおわせ、客に3万円程度振り込ませる。その後、週に1万円ずつ5回振り込んでくれといって、その後は、1日遅れたなどと難癖をつけ、いつまでも絞り取るやり方だそうである。  ヤミ金業のかたわら、裏カジノの経営にも手を出す。さらに違法なパチンコの裏ロム(大当たりが出やすくなる不正制御基板)まで販売していたというのだ。  「文春」によれば「AKS」の窪田社長とは、裏カジノで知り合ったようだ。そこから秋元とも知り合い、「AKB48」を作り上げていく。  先日、多くのマスコミが挙ってバカ騒ぎした第3回AKB48総選挙なるものがあった。投票するためにはCDを買わなくてはならない。こうやってCDを大量に売りさばく商法は、私にはあくどく見えて仕方なかったが、そこを批判するメディアはほとんどなかった。  こうしたファン心理につけ込む商法は、芝社長の過去の経歴から生み出されたのかもしれない。「AKB48」結成以来の大スキャンダルが勃発したが、私が知る限り、これを後追いしたマスコミは無いようだ。おかしいと思わないか? (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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経産省ではスキャンダルは出世に響かない!? 愛人発覚・西山審議官の厚顔無恥ぶり

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「週刊新潮」6月30日号 中吊り広告より
第1位 「経産省『美人職員』を弄ぶ『西山審議官』」(「週刊新潮」6月30日号) 第2位 「朝日新聞が『(親)原発』に転向した日」(「週刊文春」6月30日号) 第3位 「ガイガーカウンターでは被曝量は測れない<知っていましたか?>」(「週刊ポスト」7月8日号)  先週は1本もなかった「ポスト」に、今週は1本だけ放射能関連の記事が出ている。あおり派批判は一貫しているが、内容は、私も以前から触れていることなので興味を持って読んだ。  通称「ガイガーカウンター(正式にはガイガー=ミュラー計数管)」を持った週刊誌記者たちが日本中で放射線量を測り、特集を組んでいる。  「現代」は「大反響第2弾 列島縦断 放射能はこんなに出ている」。「AERA」も「放射線量マップ 第3弾」をやっている。  また県民の不安に答えるために、福島県は子どもたちと妊婦合わせて30万人に、計数管を配るそうだ。  だが、カウンターの性能は千差万別、オモチャのような計数管も多く売られている。  GM管式とシンチレーション式でも、測れる放射線の種類が違う。そうしたことは、これまでほとんど報じられてこなかった。  「ポスト」によれば、計数管(ここではGM計数管のこと=筆者注)が計測しているのは、放射線の数であり、人体が放射能によって受ける影響を表す単位のシーベルトは分からないのだそうだ。したがって、計測値から対象物のベクレルを「推計」するのがせいぜいだという。  さらに、代表的な放射線にはアルファ線、ベータ線、ガンマ線、エックス線、中性子線があるが、このGM計数管が主に検出するのはベータ線だという。  したがって、人体への影響を正確に調べるためには、「シンチレーション検出器」や「ゲルマニウム半導体検出器」でなくてはいけないのだが、高価なことと動作環境にも制限がある。  だが、いま行政がやっているモニタリングポストはシンチレーション方式だから、素人たちがGM計数管で測った値より信用できるとしている。  週刊誌(ここではそうは書いていないが、「ポスト」はこう言いたいのであろう=筆者注)や市民団体などが公表している数値は、ベータ線を遮断しないなど、測り間違いが多いと、ある技術者に言わせている。  要は、いまあおり派が放射線量が高い高いと騒いでいるが、安物の計数管を使って、しかも測り方を間違えているから、「無知な者が危険をあおるために用いれば、害にしかならない」と決め付けている。  確かに私が知る限り、いまのモニタリングポストも県や市町村が独自に測っているやり方も、ベータ線を遮断している。  こうしないと、さまざまな種類の放射線を計測してしまうため、高い値が出てしまうからだ。そこで疑問なのは、アルファ線やベータ線は測らなくていいのだろうか? これらには危険はないのだろうか?  放射線に詳しい私の知人によると、アルファ線はガンマ線の20倍、人体への危険性があるという。アルファ線やベータ線は衣服やマスク、手袋で遮断できるかもしれないが、すべての子どもたちが外にいるとき、必ずマスクをしているわけではないから、口などから入って内部被曝する危険はあるはずだ。  また、GM管方式では、シーベルトが分からないという決め付け方には違和感を持つ。私の友人が開発した放射線量公開システムはGM管を使っているが、アメリカの認証を取り、この中でも書いてあるように、計算式を用いて10秒ごとの放射線量を記録し、シーベルトで表示できる。  この記事中では、いまのほとんどのモニタリングポストが地上からかなり高いところに置かれ、1日のうち1時間だけしか測定せず、それに24時間かけたものを1日の放射線量としていることに触れていないのは、故意なのだろうか。  シンチレーション方式は、アルファ線やベータ線を測るのには適さないようだ。だが政府や行政がこの方式を使うのは、ガンマ線だけに特定すれば、値が低く抑えられるからではないのか。  一番大事なのは、放射線の影響を受けやすい子どもたちが生活している高さや周辺で、正確に計測して公表することであるはずだ。  年間20ミリシーベルトが人体に影響があるかないかは、10年、20年後までフォローしてから決めるべきもので、少しでも健康に影響があると予想される被曝量なら、即刻子どもたちだけでも、そこから安全なところへ集団疎開させるべきである。  先ほど情報が入った。数日前、福島市の廃棄物処理業者が市民の説明会で、公園の廃棄物の中からプルトニウムが検出されたと発表したそうである。  「ポスト」の記事は、目の付けどころ、問題提起としての意味はある。「ポスト」から批判されるあおり派週刊誌は黙殺しないで、批判や論争を挑むべき記事である。これからの論議を期待したい。  第2位は、「文春」の小さな記事で、自社の宣伝臭が強いが、重要な意味を持っていると思うので、取り上げた。  読売新聞の正力松太郎社主(当時)が「原子力の父」と呼ばれることは、さまざまなところで書かれてきた。  正力の政治的な野心から、原子力の平和利用という名目で、ノーベル賞受賞者・湯川秀樹まで巻き込み、読売の紙面でも原発を礼賛し、次々に原発をつくる世論を形成していった。  それに対して、朝日新聞は反原発派の牙城であった。だがやがて現実に押し流され、原発には「No,but」(基本的には反対)というスタンスでようやく踏みとどまっていたが、1973年の石油危機をきっかけに、原発容認派が大勢を占め、ついに74年7月に1ページの3分の2を占める原子力のPR広告が、朝毎読の三大紙の中でいち早く掲載された。それを契機に、原発に対して「Yes,but」(基本的に賛成)へと大転換していく。  79年には、原子力問題を担当する記者21人が集められ、記者個人が原発に反対するのは自由だが、その記事をボツにするかどうかの権限は編集局にあると、当時の編集担当専務が言い放ったと書いてある。  この「東電帝国 その失敗の本質」を書いたのは元朝日新聞電力担当記者の志村嘉一郎(69)。先の朝日新聞への原子力広告は、読売が2番目で、反原発の連載などをやっていた毎日が、再三毎日側がお願いしても出してもらえず、だいぶ遅れて出広してもらったと本にある。  この朝日の原発容認への転向は、反原発運動にも大きな影響を与えた。原発関連のPR費用は年間3,000億円と志村氏は書く。その莫大なカネを使って政治家、官僚、マスコミからマスゴミまでをたらし込み、安全神話が何の批判にもさらされず、歯止めのきかない原発大国への道をまっしぐらに突き進んできたのである。  その朝日の現在の紙面に、原発批判、東電の責任問題、復興増税問題への追及がゆるいと感じるのは、私だけではないはずだ。  さて、今週の文句なしのスクープ賞は「新潮」の記事。  福島第一原発事故以来、原子力安全・保安院のスポークスマンを務め、日本中に顔が知れ渡ってしまった西山英彦審議官(54)が、あろうことか「経産省の美人職員を弄んでいる」というのだから、驚いた。  書き出しは6月17日の23時過ぎ。20代後半と思しき清楚な女性と西山審議官が、ホテルオークラのオーキッドバーに連れだって現れた。  女性が飲んだのはアマレットなどのカクテルで、西山審議官はテキーラや赤ワインを注文したとある。これほど詳しいのは、目撃していたのだろう。  午前0時半過ぎにホテルから出てきた二人は、アメリカ大使館の前を通り、坂を歩き始める。その間に、西山審議官は彼女の手を握り腰に手を回す。  あるマンションの前、オープンスペースに彼女を引き込むと、西山審議官が嫌がる彼女に迫り、唇を二度三度と奪った。  ぬぬ、ここからは、ホテルへ一直線かと思ったが、期待に反して、彼女はホテルへ戻り、そそくさとタクシーで帰ってしまうのである。  日本を代表する有名官僚の一夜だけの御乱行か。そう思って読み進めると、二人の仲は経産省の仲では有名で、1年前から「特別な関係」が続いているというではないか。  特にデートの回数が増えたのは昨年11月からで、11月7日から1週間開かれたAPECの高級実務者会合で議長を務めていた西山審議官は、何と彼女と6回も夕食を共にしたという。  さらに12月のデートの回数は10回にも上り、1日、3日......27日、28日だとある。しかし、これほど詳しい日にちは、当事者のどちらかが明かさなければ分かるはずはない。  はてどちらか? 二人は食事の後よくカラオケに行ったそうだが、歌も唄わず、ラブホテル代わりにしていたという。さらに、こんなことまでバラされてしまうのだから、有名にはなりたくないものだ。 「西山さんは古いカツラを使っているので、激しい動きをすると、カツラがズレてしまうとか。だからゴルフとかはやらない。笑っちゃいけないけど、セックスする際、上の肌着を脱ぐとカツラが引っ掛かってズレてしまう。そのため、パンツは脱いでも上は着たまま、しちゃうそうです」(事情通)  経産省のスーパーエリートは、原発事故以来のそつのない答弁で、次官の目も出てきていたようだ。彼の長女も東京電力に入社、清水正孝社長ともじっこんで、東電ベッタリ人間だった。  こんな人間が、原発をチェックする側にいたのでは、まともなことができるわけはない。  西山審議官は「新潮」の取材に対して、 「いつもの冷静さを失い、当初、中村さんと(愛人の仮名=筆者注)カラオケ店に行ったことを認めたものの、なぜか直ぐに前言を撤回。最後は『ノーコメント』を連発し、開き直るのであった」  この記事で西山審議官はスポークスマンを外れ、エリート転落かと思っていたら、そうではないというのだから、二度ビックリである。記者に問われた西山審議官は、こう言ったそうだ。 「こういう記事が出ること自体が私の至らなさを示している。深く反省している」  古い流行語だが、反省はサルでもする。聞けば、経産省というのは元々不倫の多いところで、こうしたスキャンダルは出世に響かない伝統があるのだそうだ。  いくら厚顔無恥な御仁でも、この国難の時、これほどのスキャンダルが表沙汰になれば、身を引くのが筋ではないか。そんな常識さえもわからない経産官僚たちに、原発の安全など任しておいたのが間違いだった。つくづくそう思わざるを得ない。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
重要会議ではヅラをかぶろう ヅラより不倫より、やることがあるでしょうが。 amazon_associate_logo.jpg
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「"生命"は維持できても"人生"は奪われている」いまも南相馬市に暮らす住民の訴え

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「週刊現代」7月2日号 中吊り広告より
第1位 「私は放射能から逃げない」(「週刊現代」7月2日号) 第2位 「我が子を守る[『放射能汚染』解毒法」(「サンデー毎日」7月3日号) 第3位 「やめたくないよー、菅直人は僕の前で泣いた」(「週刊現代」7月2日号)   政治家が口を開くとき、そこには何らかの思惑がある。石井一なんて爺さんは海千山千のたぬきである。自分の前で菅直人が泣きながら「辞めたくない」と言ったと明かすのは、自分がそれほどの大物であると見栄を張るだけではなかろう。第3位は「現代」の、なかなか奥が深そうな面白いインタビューである。  石井は、不信任決議案が否決されたのだから、菅は辞める必要がないと言い切り、7月から8月ころまでは続投すると言う。  震災復興の遅れや原発事故の対応の不手際があるではないかという聞き手に対して、石井は、被災地のガレキが片付かないのは処分する場所がないからで、仮設住宅が足りないのも、建設用地が限られているからだと突き放す。  原発問題にしても、誰が総理をやったって放射能がすぐ止まるわけではないのだから、菅が悪いわけではない。従って、辞める必要はない。  だが、彼の言いたいことは他にある。小沢派を敵に菅の回すやり方はまずかったとし、これからは党内融和を進め、マニフェストを見直し、野党自民党に迎合することなく、政策を貫き通して、その先、総選挙をすればいいと語る。  もちろん、そこまで菅がやるわけではなく、遅くとも8月ごろに菅が辞め、しかるべき人材を選ぶべきだと言うが、彼の本意は、次の言葉にあるとわたしは見た。どうだろう。 「今後の1年は、暫定の震災復興特化内閣になるわけです。本当はこういう時、小沢一郎氏が党内では最適な人材なんです。混乱期こそ、小沢氏の出番です」  水谷建設から1億円の資金提供うんぬんの話があるので、求心力は低下しているが、いま必要なのは、ああいう腕力のある人材なんですとも言い添えているのは、ここは小沢しかいないというメッセージであろう。  混迷する民主党をまとめるためには、ポスト菅は小沢か、小沢が無理なら、小沢がウンという操り人形を担ぐしかない。そうして自分の影響力を温存したい、それが本心ではないか。  民主党副代表の思惑を忖度しながら読んだ。久しぶりに面白いインタビューである。  さて、20日、政府の原子力損害賠償紛争審査会は、東京電力の原発事故で避難した住民に対して、彼らが被った精神的苦痛に対する賠償額を1人当たり月額10万円とすることを決めた。避難所に避難した人には、より苦痛が大きいとして2万円を加算するという。  この記事を読んで無性に腹が立った。原発事故の収束がいつとも分からない中で、住民たちは住むところを追われ、不安な日々を過ごしているのである。  賠償はもちろんのことだが、住民が知りたいのは、自分の家にいつ帰れるのか、昔の生活を取り戻せるのかであろう。そうしたことには何も答えず、おカネを配るから我慢してなさいという態度を、傲慢と言わずして何と言う。  浜岡原発を停止させた舌の根も乾かないうちに、各地の原発を再稼働させると言って恥じない菅総理という人間に、ゾッとするほどの冷たさを感じるのは、私だけだろうか。  2位に挙げた「サンデー毎日」の記事は、リンゴにセシウムを排出する効能があるとか、ストロンチウムの吸収率を下げるのにはスキムミルクがいいという、失礼だが、気休めにしかならない記事である。  だが、この中のコラム、鎌仲ひとみという映画監督の言葉を伝えたくて、これを選んだ。彼女は原発問題にも詳しいようだが、その彼女がこう言っている。 「1998年、映画の撮影で訪れたイラクで見つけた劣化ウラン弾の放射線を測ると、毎時3.37マイクロシーベルトでした。福島市の小学校の校庭などで計測された線量とほとんど変わりません。白血病になったイラクの子どもたちは、日々の何気ない暮らしの中で少しずつ被曝していった。倒れるまで元気に走り回っていたのです」  「現代」の「本誌が独自調査 日本全国隠された『放射能汚染』地域」によれば、千葉県の流山市や柏市の公園では、それぞれ毎時1.88マイクロシーベルト、毎時1.08マイクロシーベルトが計測されている。  汚染は確実に広がり、放射性物質が子どもたちの口や鼻から吸い込まれ、内部被曝している可能性が高い。国が、直ちに影響はないと言い続けても、年間被曝量を1ミリシーベルトから突然20ミリシーベルトに上げてしまう国など、信用してくれと言う方が無理というものだ。  ところで今週の「ポスト」は、放射能に関する特集は1本もない。安全デマを流す雑誌と言われても、ことさら恐怖をあおる報道はやらないという一貫した編集姿勢には敬意を表する。  だが、どこまでの放射線量なら安全なのかが分からない現段階では、正しいパニックを起こすのは、特に、小さな子どもを持つ親なら仕方ないのではないか。私が聞いた話では、都内に住む妊婦が関西の方へ移ってお産をするケースが増えているという。  国や大メディアは真実を伝えていないと多くの国民が感じている。そして日本人は歴史に学ばない。「朝日」の中で、原爆症訴訟の証人・物理学者矢ヶ崎克馬氏がこう言っている。「私たちの社会は、広島と長崎の被爆者の訴えを、ないがしろにしてきたように思います。その延長線上に今回の事故があります」  今週の第1位は、「現代」の記事。南相馬市に住む佐々木孝さん(71)は、スペイン思想研究家である。彼の家は原発から25キロ圏内にあり、緊急時避難準備区域にされているが、今も認知症の妻とそこで暮らしている。  彼が反原発なのはもちろんだが、今回の事故後の行政の対応には問題があると憤っている。  原発から同心円で根拠のない線引きをされ、子どもや妊婦、要介護者や入院患者は、この区域に住むなと言われて追い立てられたが、実際に避難した老人や病人はひどい目に遭った。 「患者たちがカルテも付けずに搬送され、十数人が亡くなっている。こうなると医師法違反どころじゃない。もっと重い犯罪ではないか」  避難した人の中には、福島市や郡山市に避難した人もいるが、そこは南相馬市より放射線量が高いのだ。  そこで、知人が南相馬市役所の職員に、なぜこっちが緊急時避難準備区域に指定されているのかと聞くと、向こう(福島市や郡山市)を指定すると、ここの何十倍の住民を動かさねばならず、混乱に陥るからだと、逆ギレされたそうだ。  動物の鼻面を引きずり回すように、国民にあっちへ行け、こっちへ行けと命じる政治家や役人に腹立たしいと言う。 「彼らがやっているのは、民主主義でも何でもない。人間の自由というものを認めていない。それへの怒りもあって、私は避難を拒否しているのです。(中略)しかし彼らは、もっと大事なことがあることを知りません。命を英語で『ライフ』というでしょ。この『ライフ』なる言葉の意味には、生物学的な『生命』と、『人生』の二つがある。大切なのは、前者より後者です。それは、すべての生物が『生命』を持つのに対し、『人生』を持つのは人間だけだからです。避難を余儀なくされた人も、飯舘村など高い放射線量を記録している土地の人も、『生命』を維持できていますが、『人生』は奪われている。そこが彼らの悲劇なんです」  佐々木さんはかつて東京に住んでいたが、南相馬に帰省すると、原発建設で町が潤い、開拓時代のアメリカ西部のように賑やかだった。東電のカネで立派な施設がつくられ、住民にはよくお小遣いが配られていたという。  地元の有力者や町村の首長たちは、おおむね原発推進の先頭に立っていたのに、事故が起きると一転して被害者のような顔をしていることにも怒る。 「彼らはまず、自分たちの不明を詫びるべきです。しかし、みんな被害者になり、誰も責任を取らない。日本人の悪いところです。こんなことをやっているから、政治がまったく国民と向かい合わないのです」  佐々木さんが南相馬に越してきたのは妻の認知症が進んできた02年ごろから。すべて、彼が世話をしなければならなくなった。そして原発事故が起きた。もうジタバタせず、認知症の妻と一緒に、逃げずに自宅にとどまろうと決めた。  家の中はもちろん、外へ出るときも必ず妻と一緒だ。 「そうすると不思議ですね。人間、言葉や記憶を失ってもどうってことはない、と思えてきます。『認知できるかどうかなんてたいしたことではない。人間は存在するだけで意味があるんだ』と妻に教えられるんですね」  いまは、福島原発を全廃して、浜通りの美しい海岸を取り戻すために尽力したい、そう思っていると話す。この人に一度会って、話を聞いてみたい。そう思わせる、ひと味違うインタビューである。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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「ご先祖様に会ったときに恥ずかしくないように」被災地で死者に語り掛ける納棺師

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「週刊文春」6月16日号 中吊り広告より
第1位 「石川遼『無免許運転2カ月』なぜ見逃された」(「週刊文春」6月16日号) 第2位 「被災地の納棺師」(「週刊ポスト」6月24日号) 第3位 「スクープ 原発から60km人口29万人福島市内が危ない」(「週刊現代」6月25日号)  私の友人が緊急開発した「安心生活」という放射線測定システムがある。テレビ、新聞などでもずいぶん取り上げられたから、ご覧になった方もいるかもしれない。  これは10秒ごとに正確な放射線量を測定し公開表示、誰でも見ることができる。また、5分間隔で24時間計測した場合、計測データは2,000日分蓄積でき、累積放射線量の測定表も簡単につくれる。  このシステムは、5月末から6月初めにかけて、福島市、飯舘村、伊達市、南相馬市に設置された。6月下旬からは東京都庁周辺にも設置されるという。  福島市長は、設置することを大変喜んでくれたそうだが、大いなる悩みもあると打ち明けたそうだ。  それは、文科省が毎日発表する福島市の放射線量は、見事に年間20ミリシーベルトを越さない数値で推移しているが、市独自で測ったら、場所によっては20ミリシーベルトをはるかに超える数値になっているからだ。  この公開システムを設置することで、住民がその数値を自分の目で確認できるから、これ以上は隠しようがなくなる。しかし30万人近くがいる福島市の住民がすべて避難できる場所などあるだろうか。  設置したのは市庁舎前の植え込みの中で、高さは幼い子どもと同じぐらいの地上から50センチ。市長の言っていた通り、放射線量は年間20ミリシーベルトを超える数値が出て、連日、それを見ようと市民の人だかりができた。  友人によると、都庁前の植え込みの中でも、かなり高い数値が出たそうだ。今週の「朝日」と「AERA」が広範囲にわたる放射能汚染地図を特集しているが、東京でも葛飾区、足立区、江戸川区などの一部地域で、高い数値が出ていると報告している。  3位は、その福島市内が危ないという「現代」の記事。6月7日に、国際環境NGOグリーンピースが主体となって緊急調査が市内で行われた。  それによると、市役所から車で5分ほどの公園の盛り土から毎時6.3マイクロシーベルト。公園の隅の枯れ葉の固まりからも毎時4.2マイクロシーベルト。トイレ裏の雑草で毎時9.1マイクロシーベルト、入り口の排水路では毎時12.5マイクロシーベルトという高い数値が出たというのだ。  さらに、この公園ではセシウム134、セシウム137に加えてコバルト60も検出されている。  原発から60kmも離れた福島市でコバルトが検出されたのは、原子炉のメルトダウンで放出されたことを証明するものだと、九州大学特任教授の工藤和彦氏は言っている。  私立保育園「こどものいえ そらまめ」の正門周辺では、毎時19.6マイクロシーベルトを計測しているという。  グリーンピースのクミ・ナイドゥ氏は、「いまフクシマは、親が住むのに世界で一番つらい場所かもしれない。誰もサポートしてくれない。子どもに何もしてやれない」と語る。  もはや自主避難しかないと「現代」は書くが、今の政府の方針では、自主避難では原発補償の対象にはならない。しかも29万人全員ではなくても、例えば10万人が避難できる所などどこにあるのだろう。  永田町は、ポスト菅をめぐるバカとアホウの駆け引きがヒートアップしているようだが、そんなくだらないことは即刻やめて、日々刻々放射能を浴びている子どもたちを守るために、早急に手を打つべきだ。それとも永田町を福島に移して、放射能の恐怖を実体験しながら対策を考えさせれば、わが事として考えるようになるかもしれないが。    どちらにしても、国民の多くはポスト菅などに関心はない。  2位は、ノンフィクション作家・石井光太による被災地の納棺師の話。納棺師といえば映画『おくりびと』で一躍その存在を知られたが、これは岩手県釜石市に住む納棺師・千葉淳についてである。  石井氏は、被災地で遺族や遺体と出会うたびに、津波で命を落とした者たちの弔われ方が気になっていた。そのころ、千葉と知り合い、それならば僕の仕事を手伝ってみないかと言われたそうだ。  千葉は3年ほど前に葬儀社を退職して年金暮らしをしていたが、今は依頼があるときだけ納棺師として働いている。  廃校になった旧釜石第二中学校の体育館が遺体安置所になったとき、多くの遺体の取り扱いや葬儀社との交渉を、経験がある自分にやらせてくれと市長に申し出たのだ。  彼は死後硬直した遺体を、「腕や関節を揉み解して柔らかくしたり、それでも入りきらないときは棺を替えたり、向きを変えて袋に入れなければならない」が、千葉はそうするときも必ず遺体に語り掛け、こうささやくという。 「もうちょっと頑張って腕を伸ばそう。旅立つ前に着替えた方がすっきりするからな」  ある女性と亡くなった母親との話が出てくる。彼女が遺体と対面したのは、津波が起きてから1週間以上経ってからだった。時間と気温のせいで少しずつ腐敗が進み、褐色の斑点が皮膚に浮かび上がってきていた。  彼女は母親の遺体をしばらく見つめた後、自分の化粧道具を取り出して、このままの顔ではあまりにも寂しいから、お母さんに化粧をしてあげてくれないかと、千葉に頼んだ。  千葉は化粧をしながら、こう語り掛けた。 「最後にきれいにしてあげるからね。あなたの気に入るようにはできないかもしれないけど、精いっぱいやるから我慢してね。あの世でご先祖様に会ったときに恥ずかしくないようにきれいになるんだよ」  そうして化粧を終えると、千葉は化粧道具をお棺の中に入れるよう提案した。もしやり残した個所があれば、あの世で存分にお化粧するようにと声を掛けながら、それを入れた。  千葉の次の言葉が重く響く。 「遺体は誰からも忘れられてしまうのが一番つらい。だからこそ、僕を含めて生きている者は彼らを一人にさせないようにしてあげなきゃならないんだ」  千葉のような納棺師に送られた死者たちは、少し慰められ、旅立っていったのではないか。6ページだが、もっと読みたくなる、いいノンフィクションである。  今週の第1位は、17日(日本時間)から開幕する全米オープンを前にして、我らが石川遼に降り注いだ、「文春」発のスキャンダル。  大筋はこうだ。今年の2月5日から渡米し、マスターズなど6試合に出場したが、その時に石川は、現地の免許と国際免許を取ったのだそうだ。  4月12日に帰国してからは、自分で運転してゴルフ場へ来る姿がよく見られるようになった。だが、これが無免許運転だというのだ。  その理由は、海外で取得した免許には以下のような条件があるからだ。 「日本人が海外で国際運転免許を取得した場合、道交法により、3カ月ルールが適用されます。つまり、免許取得時の渡航が3カ月未満の場合、その国際免許は無効となり、日本国内で運転すると無免許運転になります」(警察庁交通局)  石川のアメリカ滞在は2カ月と少し。しかし、これを知って記事を書こうとした記者に、豪腕パパの勝美氏が「書かないでくれ」と連絡してきて、初めその記事は出なかった。  石川は「文春」が出た後、アメリカで会見をして無免許運転のことを謝罪した。だが、父親の圧力で記事を書かなかったゴルフ記者も情けない。  大相撲、野球、サッカー、競馬、ゴルフなど人気スポーツでは、事件化しない限り、そこに所属する記者クラブの記者たちは、内部のことや選手を批判する記事は書かない。ようやく20歳になろうかという若い石川には、まだまだ覚えなければいけない世の中のルールが多くあるはずだ。それを教えず、ただチヤホヤしているだけでは、中年おばさんたちの遼ちゃん応援団と同じではないか。  やはり、そうしたことができるのは週刊誌しかない。そう思わせる記事である。  
おくりびと 最期に。 amazon_associate_logo.jpg
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