
12年10~11月ごろのアイシャ容疑者
北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏(45)が暗殺された事件で、殺害の実行犯でマレーシアの警察当局に逮捕された、インドネシア国籍のシティ・アイシャ容疑者(25)が、最近になって異様に女子力を高めていたことがわかった。また、同容疑で逮捕された北朝鮮国籍のリ・ジョンチョル容疑者(46)は、爆笑(LOL)動画に興味を持っていたことも判明。もう1人の実行犯で、ベトナム国籍の女が着用していた「LOL」の文字が入ったシャツとのつながりが見えてきた。
ジャカルタのスラム街出身のアイシャ容疑者は、「シャンティ」という別名で、2012年9月にFacebookのアカウントを開設していた。開設当初からシンガポールのすぐ南にあるリアウ諸島州バタム島のショッピングモールで、携帯電話で自撮りしたおすまし写真を次々と公開。自己顕示欲の強い様子が見て取れるが、化粧が薄かったり、太っていたりと、少し残念な感じだ。当時は、ショッピングモールの中にある、パジャマなどを扱うアパレル店の店員だったようだ。

16年5月、アイシャ容疑者は突然、プロフィール画像を攻めの写真に変更した
やがて13年ごろから、歯列矯正を開始。16年5月にはプロフィール写真を、ハリウッド女優のようなキメポーズの白黒写真に変更した。コメント欄には「これ、シャンティなの?」と驚く知人の書き込みがある。北朝鮮工作員と接触を持った時期とみられる昨年12月18日には、高そうな金の腕輪をして、旅客機の座席に気取って座っている写真を公開。その後の更新は途絶えた。

16年12月18日にアイシャ容疑者が公開した、航空機内の写真
民間の北朝鮮研究者は「今回、アイシャ容疑者は、正男氏の正面に回って気を引きつける役割だった。北の工作機関が色好みの正男氏の注意を奪うよう、美容の手助けをした可能性がある」と見るが、キレイになった本当の理由は不明だ。

11年4月に公開された、リ容疑者の写真
一方、一部の現地メディアから「主犯格」扱いされているリ容疑者も11年4~7月にかけてFacebookで写真を公開していた。名前は本名で、学歴欄には高校は米マサチューセッツ州の「イノベーションアカデミー」、大学は平壌の「金日成総合大学」としている。博士課程でインドのコルカタにいるという記述があり、研究室で何か薬品の調合をするリ容疑者らしき人物の写真もある。
注目は、リ容疑者が11年7月に投稿したシェア動画。爆笑エロ動画を装うスパムサイトに誘導されるリンクだが、サイトの紹介に「Laugh out loud」(爆笑)の頭文字「LOL」が読み取れる。リ容疑者が頻繁に「LOL」サイトを閲覧しているうちに、誤ってスパム誘導サイトをシェアした可能性がある。

李容疑者がFacebookでシェアした、LOL動画のリンク
「LOL」といえば、今回の事件で、手袋に毒物を仕掛けるよう工作員らから命じられたベトナム国籍のドアン・ティ・フォン容疑者(28)が着用していたシャツに、大きく「LOL」と印字されていた。
現地メディアによると、リ容疑者はクアラルンプール市内で家族と暮らし、中国系の企業に勤務していたという。前出の研究者は「在外公館の職員でもない北朝鮮の人物が、海外で家族と暮らすのは不自然。あっという間に逮捕されるという脇の甘さから見て、暗殺部隊の中心人物とは思えない」と指摘。
アイシャ、フォン両容疑者は、共にリ容疑者から「いたずら動画の撮影に協力してほしい」と頼まれたと話しているが、リ容疑者は動画の撮影に誘い込むためのニセのプロデューサー役にすぎず、最初から暗殺部隊の捨て駒だった可能性が浮上している。
世界に衝撃を与えている正男氏の暗殺劇だが、果たして真相が明らかになる日はやってくるのだろうか?
(文=金正太郎)