2015年、野性爆弾が「結成20周年記念」と銘打ったライブを敢行した。野爆の前に野爆なく、野爆の後に野爆なし、と言ってみたくなるほど、お笑い界の獣道を超然と歩むこのコンビがそんなベタなライブを打つとは、四十路を超えて何か心境の変化が……!? ※なお、20周年ライブで“くーちゃん”こと川島邦裕氏が「くっきー」に改名することを突如発表したため、本稿でも「くっきー」で統一しています。 ――20周年、おめでとうございます。 くっきー ありがとうございます。ただ、ほんまは20周年じゃないんですよ。2015年で21周年。 ロッシー そこはほんま謝らなあきません。 ――そうだったんですか? 「20周年記念ライブ」と銘打ってたんで、てっきりそうなのかと。 くっきー 一昨年、仲いい社員に「20周年記念ライブやってください」と頼まれていたのを、恥ずかしいから断っていて。それが15年に、「21周年で」と言われたので、じゃあ1年ずらしたし、やるわと。そこでキリいいから、20周年ということにして。 ロッシー 後輩に「あれ、野爆さん、20周年でしたっけ?」と聞かれるたび、ドキドキしてました。 ――20周年ライブは、僕もチケット買ってルミネの最前列で見てました。最後、会場が少し感動的な空気になっていたような……。 くっきー でも楽屋戻って相方と抱き合って泣いてるわけじゃないですからね(笑)。なんなら21周年やし。結構やり終えた感はありましたけど。 ――そこはいつもとは違った。 くっきー いつものライブはネタって感じじゃなくて、コーナーばかりなんで。先輩後輩集めて、ざれざれ遊んでるだけ(笑)。 ロッシー わちゃわちゃやってます。 くっきー その点、新ネタだけのライブは緊張するというか、ピリッとしますよね。でも腰重たいんです。〆切に追われないとやらんタイプで……。 ――ネタはどれぐらいで作ったんですか。 くっきー ネタ作りでいうと2日ぐらいです。 ロッシー 僕はネタできるまでなんもなかったんですけど、ネタできてからは早かったですね。1カ月ほど前から「合わすんで、来てください」と呼ばれて。 くっきー それまでは社員さんが会議室おさえて、箱詰めですよ。小道具作りにも1日取られて、監禁ですわ。地獄ですわ。ただ社員さんも「悪い」って気持ちが働くのか、甘いもんを差し入れてくれるのが、疲れてる時にオアシス的な存在になりまして……(笑)。うまいこと踊らされましたね。気がついたら作ってた。 ――20周年ライブはリズムネタや漫才もある中で、幕間に流れる映像が一番強烈でした。 くっきー 師匠のモノマネね。似てたでしょ? ――似てる・似てないという価値観で見てなかったですよ(笑)。オール巨人師匠や欽ちゃんが顔白塗りで……。 ロッシー DVDに入ってますからね。見てない人は、ぜひそっちで見てほしい。 ――あんな大胆な映像が入ってるんですか。怒られません? くっきー 大師匠がうちのDVDなんて見ないですよ!(笑) 絶対にばれない。 ロッシー そうですね。今のところ近場の巨人師匠にも届いてませんし。 ――そのDVDの見どころを教えてください。 くっきー マジメなコントはないんで、気負って見てほしくないです。「キングオブコント」のようなシリアスな大会に出るコントではないんでね。 ロッシー みんなで集まって、話のネタにでもするような感じで。 くっきー 柔らかい脳みそで、いいちこでも飲みながらゆっくり見ていただきたい(笑)。
●「賞レース出たいですよ、それは。だって有名になるんでしょ?(笑)」 ――「キングオブコント」といえば、野性爆弾さんって賞レースの印象がないんです。若手の頃って参加してました? くっきー してましたよ。 ロッシー でも本人が出たいと言っても、なかなかエントリーしてくれないんですよね。「ムリやろ」って。できへんヤツが「進学したい」と言い出したみたいな感じなんです(笑)。 くっきー 「M-1」始まった時もマネジャーに「出てみるわ」と言うたら、「はいはい、わかりました」でエントリー表を渡されないまま終わっていく。それでも「M-1」出た時は3回戦で落ちたのかな。 ――「M-1」に出てたんですか。意外です。 くっきー 芸歴10年目、最後の年に出ましたね。手に寿司乗せて回るというネタやったんですよ。漫才に慣れてなくて距離感わからんから、マイクに手がバーンと当たって、そのままセンターマイクが客席に倒れて。悲鳴の上がる中、僕たちの「M-1」は終わりました(笑)。「キングオブコント」も一回、準決勝までいきましたし。今は出てませんけど。 ロッシー 予選の最後、うちらがコントやるのがボケみたいになってるんですよ。MCのあべこうじ君にいじられて、密着のカメラもついて「名前呼ばれへんやんけ! なんやこれ!」で帰るノリができあがってるみたいな。 ――「俺たちに賞レースは関係ないぜ」というポリシーを持って、参加しないものかと勝手に思ってました。 くっきー 出たいですよそれは。だって有名になるんでしょ?(笑)フフフ。 ロッシー 結局、バッファローさんがくれる賞(バッファロー吾郎が主催する「BGO上方笑演芸大賞」)しかもらってないですね。 くっきー 20周年ライブは「キングオブコント」を狙えるネタや営業で出稼ぎできるネタを目指してたんです。でも作りだしたら気持ち悪くて作られへんで、ああいう形になってしまう。結果、どこにも出せない。 ――今、営業で出稼ぎできるネタはあるんですか。 ロッシー それが営業用のネタが1本あるんです。奇跡的に。 くっきー 前半は結構かわいい、ベタな感じの歌ネタで。そこに「俺も歌いたい」と言い出して、急に弩級の下ネタを放り込みます(笑)。それに相方がキレてケンカになって、僕が鳥になって飛んでいく。 ロッシー で、僕が一人残される。 ――ほとんど野爆さんのコントのような……。 くっきー 反応は悪くないです。下ネタで一瞬お客さんが沈んでも、相方がキレるためのフリなんで、少しヒャッと引いたほうがいいんですよ。ヒャッとなりすぎると大変ですけど。15年ぐらいそれやって、もう目つむってもできます(笑)。
●「大阪時代はクソみたいな扱いだったのが、東京出たら変わりました」 ――今、野爆さんは芸歴21年ですか。東京出てどれぐらい経ちます? ロッシー 僕ら大阪に14年いたんで、7年ですかね。結構しんどい時期に上京しまして。 くっきー レギュラーで出ていた劇場(うめだ花月)がつぶれることになったんです。そこは僕らと先輩の世代がメインだったんですけど、次にできる少し大きめの劇場(京橋花月)は師匠や中堅も出るよと。その話聞いて「それはだりーな」と(笑)。気を使うし、「おはようございます!」と元気に挨拶するのは面倒くせーじゃないですか。 ロッシー その「これからどうする?」のタイミングで、『やりすぎコージー』(テレビ東京)の正月特番で今年もっとも売れる吉本芸人を占ったら、くっきーさんが選ばれたんですよ。じゃあこのタイミングで東京に出ようかと。 ――東京出てきて、仕事は変わりました? くっきー まあまあとんとん拍子にテレビ出て、顔さされるようになりましたね(笑)。 ロッシー 大阪ローカルから全国区の番組に一本出ると、その差だけでだいぶ効果ありましたね。大阪時代はクソみたいな扱いだったのが、東京出たら変わりました。 くっきー 大阪で全然呼ばれなかったテレビ局がすぐ呼んだりして。「わかりやすいなー。はいはい」と(笑)。 ロッシー 急にホテルとってくれるようになったり。何もこっちは変わってなくて、「先月までおったで」って話ですけどね。 ――逆輸入というやつですね。「クソみたいな扱い」と言われましたが、バッファロー吾郎さんが、「大阪時代、ケンコバと野爆は吉本から見放された存在だった」と言われていて。 くっきー 本当、仕事はなかったですね。劇場、たまにテレビ、年にいっぺん『オールザッツ』。 ――『オールザッツ漫才』で披露する野爆さんのコントは輝いてたじゃないですか。 くっきー そうなんです。そこで輝いて、その名残で少し仕事もらえて、くすんできたらまた『オールザッツ』みたいな。その繰り返しでした。 ロッシー バイトもしてましたし。僕はダーツバーで。 くっきー 僕も先輩のカラオケボックスで働いてましたね。だけど、子どもできるとお金必要じゃないですか。そうなると「もっとわかりやすい漫才にしようかな」と思った時期あるんです。商業漫才。お金を稼ぐマニー漫才を(笑)。 ――悪い言葉ですねえ。 くっきー でもできなかったです。なんか違いました。丸みを帯びようとしたら、できなかった。
●「ロック畑育ちなんでね、どうしてもネタにメッセージがね」 ――チャンスをつかんだのはいつなんですか。 くっきー 東京出るギリギリぐらいの時期、ヨシモトファンダンゴTVで『野爆テレビ』(07~08年)が始まったんですよ。それが東京のほうに流れて、それから呼ばれるようになりまして。 ――石野卓球さんが絶賛してた番組ですね。あと上京当時の『笑う妖精』(テレビ朝日/09~10年)も印象に残ってます。 くっきー あの番組はでかかったですね~。 ――そのおかげで商業漫才に進まずとも生活できるようになったと。 くっきー でも今もギリギリですよ……。(編集とライターに向かって)月5万円ずつ振り込んでくださいよ(笑)。 ロッシー それは助かりますわ。 くっきー 年とったら国に金入れること多くなったんでね。「健康保険、こんな払うんかい!」って。 ――それはこっちも同じですよ(笑)。年を重ねて、ネタは変わりました? くっきー 丸くなったりですか? それはないです。昔と変わりません。たぶん、商業漫才、商業コントは一生作れないでしょうね。 ――野爆さんのコントって何が核になってるんでしょうね。 くっきー ストーリーは大事にしてますし、あと意外とメッセージが入ってる。気づかなかったでしょ? ――メッセージ……。入ってましたっけ? くっきー 入ってますよ! 「ゴミを捨てるな」みたいなメッセージが。まあロック畑で育ってるんで、どうしても入ってしまいますね。ずっと僕の横にはロックがあったんで。 ――どんなミュージシャンに影響受けたんですか? くっきー 光GENJIとか(笑)。 ロッシー おかしいですね。ロックないですね。アイドルなのにローラースケートはいてるぐらいですよ、ロック感は。 くっきー そこな。そういう反骨精神な。遊ぼうよパラダイス、っていうタイトルでしたっけ? ――それ歌い出しですね。飛鳥涼さん作詞の。 くっきー ああ……。ね! ロッシー これ何も知りませんね(笑)。 (取材・文=鈴木工/撮影=市村岬) ■DVD情報 野性爆弾 20周年記念単独ライブDVD 『野性爆弾 初! ネタのみGIG』 タイトル通り、野性爆弾にとって初となったオール新ネタライブの様子をDVD化。特典映像には、突如「くっきー」に改名したくーちゃんこと川島の改名発表の裏側を収録 http://goo.gl/kWRO9I





