「本を通じて何ができるか」凸版印刷・ブックワゴンと仮設住宅のいま

bw01.jpg
図書館としてのクオリティーも高いブックワゴン。
 凸版印刷をはじめとするトッパングループが行っている、東日本大震災被災地域の仮設住宅を巡回する移動図書館「ブックワゴン」の活動がまもなく4カ月目を迎える。これは、普段から本や印刷物を身近に感じ、本好きが多い印刷会社としてできる復興支援をしたいという社員の声から始まった活動だ。マイクロバスを改造した2台のブックワゴンにそれぞれ2,500冊ほどの本を積み込み、仙台市内の仮設住宅10カ所を巡回している。ワゴンを運営するのは、もちろんトッパン社員。社内公募で選ばれたスタッフが週交代で業務に当たっている。「本と人がふれあう場を提供する」というコンセプトのもと行われているこの活動は、いま仮設住宅において重要課題となっている"コミュニティーづくり"のひとつのきっかけになるのではないか。トッパンブックワゴン事務局に話を聞いた。 ――移動図書館「ブックワゴン」は7月からスタートし、現在までに約3,000名が利用されているそうですが、この話が社内で持ち上がったのはいつごろなんですか? ブックワゴン東京事務局 櫻田かよさん(以下、櫻田) 震災直後からトッパンとして被災地にどのような支援ができるのか社内でいろいろと話し合っていたんですが、その中でこのプロジェクトの発起人である2名の社員から、こういうことをやってみたらどうかというアイデアが出てきたんです。 CSR推進室 山本正己さん(以下、山本) ブックワゴンは弊社としても初めての取り組みだったんですが、3月末には一度現地に入り、震災から1カ月経たないうちに具体的に動き出しました。ブックワゴンを始めるにあたり、トッパンらしい活動であること、全社員が参加できる活動であること、長期的に活動すること、という3つの指標を決め、企画を進めていきました。
bw03.jpg
ワゴンの製造風景。
――ワゴンが動き出すまで準備期間が3カ月ありました。この時期を選んだのには何か特別な理由があるのですか?  山本 移動図書館という本を読んでもらう行為が、現地の復興のフェーズに対してどうフィットするのか分からなかったのでタイミングを見ていたという面もありますが、仮説住宅が立ちあがる時期をひとつの目標にしていました。まだみなさんが避難所にいる段階ではなく、仮設住宅に入って少しでも気持ちが落ち着いたときでないと、この活動の意味がないのではないかと思いまして。 ――全国のトッパングループ社員から約2,000冊の本が寄贈されたそうですね。 櫻田 限りなく新刊に近い本で、社員一人一人が仮設住宅に入居されている人に読んでもらいたい本を選んで寄贈してほしいということをお願いしました。本のおすすめポイントや感想などが書き込めるフォーマットを用意し、それを本の表紙裏に貼って寄贈してもらっています。当初は1,000冊くらいを目標としていたんですが、最終的には倍以上集まりました。中には一人で10冊以上送ってくれた社員も。売れ筋の本だけでなく、印刷会社ならではのマニアックな本もありましたね。その他にも、「<大震災>出版対策本部」をはじめとする、さまざまな団体・企業のみなさまからも寄贈をいただき、幅広いジャンルの本を収集することができました。
bw02.jpg
全国から集まった社員の寄贈本。
一冊一冊、メッセージが添えられている。
――週交代で4人のスタッフがワゴンに乗り込み活動されているそうですが、どのような方が参加されているのですか? 櫻田 このプロジェクトは現段階で2012年3月末まで行うことが決まっているんですが、計132名が参加予定です。1、2日では現地の状況や仕事に慣れないまま行って帰ってくるだけで終わってしまうので、1週間すべて参加できる人に限って応募してもらっています。男女比はちょうど半々くらい。20代中盤から30代前半くらいの社員が比較的多いですね。募集枠に対して応募人数の方が多いんですが、いまブックワゴンをご利用いただいているお客様は、小さなお子さんからご高齢の方まで本当にいろんな方がいらっしゃるので、現地でさまざまなニーズに対応できるよう年齢層や性別がバラけるように留意しています。ブックワゴン事務局は東京と仙台にあり、仙台には3名のスタッフが常駐しています。現地で活動するスタッフには、本の貸し出しや本を探すお手伝いをしたり、現地の方との会話を通じて、ほっとやすらげる空間づくりをしてもらうよう、お願いしています。 ――プロジェクトを立ち上げる上で、一番苦労したのはどんなところですか? 櫻田 現地の方々との調整ですね。すごくデリケートな部分だったので時間を要しました。最初は本当に何も分からず、仮設住宅それぞれを管理されている方がいるのかどうかも分からない状況でした。今回は現地で復興支援活動をされている「NPOみやぎ・せんだい子どもの丘」「株式会社デュナミス」の方々にご協力いただいてワゴンを運営しているんですが、彼らと一緒に巡回する予定の仮設住宅に住んでいらっしゃる方の家を一軒一軒まわって、「今度こういうのをやるんですが、どうですか?」と話を聞くこともありました。  実際に現地に行くまではこのプロジェクトがどう受け止められるか、その温度感がまったく分からず不安はありましたし、仮設住宅にはすごくたくさんのボランティアの方が来ていたので、その中でどう会話を切り出していいのか、今後どう住民の方々と交流を持っていけばいいのか戸惑いましたね。
bw00.jpg
オルゴールの音を鳴らして、ワゴンの到着を知らせる。
――現地の方々の反応はいかがですか? 櫻田 こちらが思っていた以上に、みなさん最初から好意的に受け入れてくださいました。そういう意味では、タイミングがすごく重要だったのかなと思いますね。NPOのみなさんも、「なんだかんだいっても、来てくれて何かしてくれるのはうれしいよ」「企業が自ら行動を起こして何かをやってくれるのはありがたい」と言ってくれています。 ――ブックワゴンに参加したスタッフの感想が現在ホームページにアップされていますが、「本が住民の方々の心のサポートにとても役立っていることを実感した」「本が日常に戻るきっかけをつくってくれている」など、本の力を感じた、という意見が多いですね。 櫻田 本というのはモノとしての価値だけではなくて、本と出会うことで記憶が蘇ったり、本を読むことで気持ちが楽になったり励まされたりするんですよね。もともと本を届けるというよりは、本を通じて生まれるコミュニケーションを届けようというのが活動のベースにあったのですが、現地の方々とコミュニケーションを取っていく中で、やっぱりそちらの方が大事だと気付かされました。 ■仮設住宅の様子 ――現在は仙台市内10カ所の仮設住宅を巡回していますが、巡回先はどのようにピックアップされたんですか? 櫻田 弊社の事業部が仙台にあるので、まずは仙台から一緒に盛り上げていきたいという思いがありました。巡回先10カ所は、NPOの方々に相談しながら、仮設住宅の入居率や、物理的にこのワゴンを駐車するスペースがあるかなども加味して決めました。巡回している仮設住宅の規模はさまざまで、一番大きい「あすと長町」は約240戸、一番小さい「高砂1丁目」は約30戸ですね。 ――仮設住宅の周辺はどのような環境なんですか? 櫻田 場所によって違いますが、だいたい元々ある公園の敷地内に建てられているケースが多いので、住宅地の真ん中だったり、隣接した場所にあります。あとは商業施設の建設予定地や小学校の建設予定地のグラウンドなども。元々人が住んでいるエリアに被災者の方々がバラバラに一気に引っ越してきた感じなので、当初はご近所づきあいもなにもない状況のようでした。 ――お互いコミュニケーションを取りたくてもどうしたらいいのか分からない、という面もありますよね。それこそ、ブックワゴンがそういったつながりを持つ場として機能しそうですが、仮設住宅以外に住む人もブックワゴンを利用しているんですか?
bw04.jpg
少しずつ、横のつながりができ始めている。
櫻田 最初は仮設住宅に住む人にご利用いただきたいと活動していたので周辺住民の方には宣伝していなかったんですが、活動が安定してからは近くの児童館にご協力いただいて、児童館に来ているお子さんたちに広めてもらったりしました。現在では近隣の人も利用してくれています。  トッパンスタッフが現地に行ってみなさんのお話を聞くことも重要だとは思っていますが、わたしたちは半永久的にここで活動ができるわけではないので、現地の方々同士がどうしたらコミュニケーションをより図れるようになるのか、そういったことを考えながら活動することが大事だと思っています。 ――他のボランティアの方はどのような活動をされているのでしょうか? 櫻田 仮設住宅にはそれぞれ集会所か談話室というみなさんが集えるスペースが設けられていているのですが、そういった場所を利用してお茶会や交流会を行い、住民の方のお話を聞いたり、木の板に表札を書くボランティアや、仮設住宅内の使い勝手が悪いところを直す地元の大学生の団体もいましたね。 ――ボランティアとして現地で活動する中で、仮設住宅の問題点はどこにあると思われますか? 櫻田 個人的な意見になりますが、少しずつコミュニティーができ上がる一方で、いつかみんなここを出て行かなければならない。住民のみなさんそれぞれが住宅を出るタイミングには差が出てきます。どんどん人が出て行くのは喜ばしいことではあるけれど、残される人が受ける心の傷はとても大きいですし、そういった方々がどういうモチベーションで自立に向けて歩んでいくのかというのは、すごく難しい問題だと思います。2年間という期限が設けられた中でどう関係性を築いていくのか。若い世代が先に出て、高齢者ほど遅くなる。高齢者だけになってしまったときに出てくる問題というのもあると思います。ただ、現在仮設住宅にいらっしゃるみなさんはおそらく復興住宅に入っていくことになると思いますので、コミュニティーをつくるという過程や経験、つくられたコミュニティーがいかに大切かということは、復興住宅でも活きていくものだと思います。 ■今後の課題 ――現在はワゴン2台、仙台市内10カ所のみでの活動ですが、今後エリアを増やしていく予定はあるんですか?
bw06.jpg
本日も巡回中です。
櫻田 ちょうど検討しているところです。だいぶ運営も慣れてきたので、要望があるところや、ニーズがありそうなところを広げていければと思っています。 ――このプロジェクトの核は「仮設住宅の新しいコミュニティーづくりや、さまざまな団体の活動のきっかけをつくる」ということでもありましたが、その手ごたえを感じていますか? 櫻田 ブックワゴンのようにいろいろな人が集まってこられる場所を持つことによって、新しいつながりができたり、会話が生まれたりするので、住民の方同士のコミュニケーションづくりには非常に効果があるのではないかと思っています。これから先、仮設住宅の中で自治組織ができ上がって住民の方たちが一歩先に進まれる中で、ブックワゴンとして何ができるのかということはもっと深く考えていかなければならないと思っています。本というのは、空いてしまった心の溝を埋めることもできますし、それぞれの方が今後、自立して元の生活に戻っていくにあたって必要な実用的な知識を届けるということもできます。復興のフェーズに合わせて、わたしたちがどういう本を届けていったらいいのか考えていくことは、みなさん同士のつながりやコミュニティーづくりに貢献できるのではないかと思います。  今後はわたしたちだけでなく、ほかの企業や自治体、あるいは地域の図書館という可能性もあるかもしれませんが、さまざまな方と連携して何かできればいいなと思っています。ただ、わたしたちは、「本を通じて何ができるか」ということに最後までこだわって活動していきたいですね。 (取材・文=編集部) ●ブックワゴン トッパングループが行っている、東日本大震災被災地域の仮設住宅を巡回する移動図書館。2台のブックワゴンが、本と人とがふれあう場を提供している。2011年7月~2012年3月末まで社員自らがスタッフとして同乗し、活動を行う。 <http://bookwagon.jp/
ぼくのいい本こういう本―1998‐2009ブックエッセイ集 応援したい。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 「写真はここで生きていたという証」被災者の思い出を取り戻す、被災写真洗浄ボランティア 【6.11 SHARE FUKUSHIMA】大破したコンビニでチャリティーライブ 被災地"圏内"に響く歌声 日本科学未来館に聞く、3.11の教訓とこれからの科学

「本を通じて何ができるか」凸版印刷・ブックワゴンと仮設住宅のいま

bw01.jpg
図書館としてのクオリティーも高いブックワゴン。
 凸版印刷をはじめとするトッパングループが行っている、東日本大震災被災地域の仮設住宅を巡回する移動図書館「ブックワゴン」の活動がまもなく4カ月目を迎える。これは、普段から本や印刷物を身近に感じ、本好きが多い印刷会社としてできる復興支援をしたいという社員の声から始まった活動だ。マイクロバスを改造した2台のブックワゴンにそれぞれ2,500冊ほどの本を積み込み、仙台市内の仮設住宅10カ所を巡回している。ワゴンを運営するのは、もちろんトッパン社員。社内公募で選ばれたスタッフが週交代で業務に当たっている。「本と人がふれあう場を提供する」というコンセプトのもと行われているこの活動は、いま仮設住宅において重要課題となっている"コミュニティーづくり"のひとつのきっかけになるのではないか。トッパンブックワゴン事務局に話を聞いた。 ――移動図書館「ブックワゴン」は7月からスタートし、現在までに約3,000名が利用されているそうですが、この話が社内で持ち上がったのはいつごろなんですか? ブックワゴン東京事務局 櫻田かよさん(以下、櫻田) 震災直後からトッパンとして被災地にどのような支援ができるのか社内でいろいろと話し合っていたんですが、その中でこのプロジェクトの発起人である2名の社員から、こういうことをやってみたらどうかというアイデアが出てきたんです。 CSR推進室 山本正己さん(以下、山本) ブックワゴンは弊社としても初めての取り組みだったんですが、3月末には一度現地に入り、震災から1カ月経たないうちに具体的に動き出しました。ブックワゴンを始めるにあたり、トッパンらしい活動であること、全社員が参加できる活動であること、長期的に活動すること、という3つの指標を決め、企画を進めていきました。
bw03.jpg
ワゴンの製造風景。
――ワゴンが動き出すまで準備期間が3カ月ありました。この時期を選んだのには何か特別な理由があるのですか?  山本 移動図書館という本を読んでもらう行為が、現地の復興のフェーズに対してどうフィットするのか分からなかったのでタイミングを見ていたという面もありますが、仮説住宅が立ちあがる時期をひとつの目標にしていました。まだみなさんが避難所にいる段階ではなく、仮設住宅に入って少しでも気持ちが落ち着いたときでないと、この活動の意味がないのではないかと思いまして。 ――全国のトッパングループ社員から約2,000冊の本が寄贈されたそうですね。 櫻田 限りなく新刊に近い本で、社員一人一人が仮設住宅に入居されている人に読んでもらいたい本を選んで寄贈してほしいということをお願いしました。本のおすすめポイントや感想などが書き込めるフォーマットを用意し、それを本の表紙裏に貼って寄贈してもらっています。当初は1,000冊くらいを目標としていたんですが、最終的には倍以上集まりました。中には一人で10冊以上送ってくれた社員も。売れ筋の本だけでなく、印刷会社ならではのマニアックな本もありましたね。その他にも、「<大震災>出版対策本部」をはじめとする、さまざまな団体・企業のみなさまからも寄贈をいただき、幅広いジャンルの本を収集することができました。
bw02.jpg
全国から集まった社員の寄贈本。
一冊一冊、メッセージが添えられている。
――週交代で4人のスタッフがワゴンに乗り込み活動されているそうですが、どのような方が参加されているのですか? 櫻田 このプロジェクトは現段階で2012年3月末まで行うことが決まっているんですが、計132名が参加予定です。1、2日では現地の状況や仕事に慣れないまま行って帰ってくるだけで終わってしまうので、1週間すべて参加できる人に限って応募してもらっています。男女比はちょうど半々くらい。20代中盤から30代前半くらいの社員が比較的多いですね。募集枠に対して応募人数の方が多いんですが、いまブックワゴンをご利用いただいているお客様は、小さなお子さんからご高齢の方まで本当にいろんな方がいらっしゃるので、現地でさまざまなニーズに対応できるよう年齢層や性別がバラけるように留意しています。ブックワゴン事務局は東京と仙台にあり、仙台には3名のスタッフが常駐しています。現地で活動するスタッフには、本の貸し出しや本を探すお手伝いをしたり、現地の方との会話を通じて、ほっとやすらげる空間づくりをしてもらうよう、お願いしています。 ――プロジェクトを立ち上げる上で、一番苦労したのはどんなところですか? 櫻田 現地の方々との調整ですね。すごくデリケートな部分だったので時間を要しました。最初は本当に何も分からず、仮設住宅それぞれを管理されている方がいるのかどうかも分からない状況でした。今回は現地で復興支援活動をされている「NPOみやぎ・せんだい子どもの丘」「株式会社デュナミス」の方々にご協力いただいてワゴンを運営しているんですが、彼らと一緒に巡回する予定の仮設住宅に住んでいらっしゃる方の家を一軒一軒まわって、「今度こういうのをやるんですが、どうですか?」と話を聞くこともありました。  実際に現地に行くまではこのプロジェクトがどう受け止められるか、その温度感がまったく分からず不安はありましたし、仮設住宅にはすごくたくさんのボランティアの方が来ていたので、その中でどう会話を切り出していいのか、今後どう住民の方々と交流を持っていけばいいのか戸惑いましたね。
bw00.jpg
オルゴールの音を鳴らして、ワゴンの到着を知らせる。
――現地の方々の反応はいかがですか? 櫻田 こちらが思っていた以上に、みなさん最初から好意的に受け入れてくださいました。そういう意味では、タイミングがすごく重要だったのかなと思いますね。NPOのみなさんも、「なんだかんだいっても、来てくれて何かしてくれるのはうれしいよ」「企業が自ら行動を起こして何かをやってくれるのはありがたい」と言ってくれています。 ――ブックワゴンに参加したスタッフの感想が現在ホームページにアップされていますが、「本が住民の方々の心のサポートにとても役立っていることを実感した」「本が日常に戻るきっかけをつくってくれている」など、本の力を感じた、という意見が多いですね。 櫻田 本というのはモノとしての価値だけではなくて、本と出会うことで記憶が蘇ったり、本を読むことで気持ちが楽になったり励まされたりするんですよね。もともと本を届けるというよりは、本を通じて生まれるコミュニケーションを届けようというのが活動のベースにあったのですが、現地の方々とコミュニケーションを取っていく中で、やっぱりそちらの方が大事だと気付かされました。 ■仮設住宅の様子 ――現在は仙台市内10カ所の仮設住宅を巡回していますが、巡回先はどのようにピックアップされたんですか? 櫻田 弊社の事業部が仙台にあるので、まずは仙台から一緒に盛り上げていきたいという思いがありました。巡回先10カ所は、NPOの方々に相談しながら、仮設住宅の入居率や、物理的にこのワゴンを駐車するスペースがあるかなども加味して決めました。巡回している仮設住宅の規模はさまざまで、一番大きい「あすと長町」は約240戸、一番小さい「高砂1丁目」は約30戸ですね。 ――仮設住宅の周辺はどのような環境なんですか? 櫻田 場所によって違いますが、だいたい元々ある公園の敷地内に建てられているケースが多いので、住宅地の真ん中だったり、隣接した場所にあります。あとは商業施設の建設予定地や小学校の建設予定地のグラウンドなども。元々人が住んでいるエリアに被災者の方々がバラバラに一気に引っ越してきた感じなので、当初はご近所づきあいもなにもない状況のようでした。 ――お互いコミュニケーションを取りたくてもどうしたらいいのか分からない、という面もありますよね。それこそ、ブックワゴンがそういったつながりを持つ場として機能しそうですが、仮設住宅以外に住む人もブックワゴンを利用しているんですか?
bw04.jpg
少しずつ、横のつながりができ始めている。
櫻田 最初は仮設住宅に住む人にご利用いただきたいと活動していたので周辺住民の方には宣伝していなかったんですが、活動が安定してからは近くの児童館にご協力いただいて、児童館に来ているお子さんたちに広めてもらったりしました。現在では近隣の人も利用してくれています。  トッパンスタッフが現地に行ってみなさんのお話を聞くことも重要だとは思っていますが、わたしたちは半永久的にここで活動ができるわけではないので、現地の方々同士がどうしたらコミュニケーションをより図れるようになるのか、そういったことを考えながら活動することが大事だと思っています。 ――他のボランティアの方はどのような活動をされているのでしょうか? 櫻田 仮設住宅にはそれぞれ集会所か談話室というみなさんが集えるスペースが設けられていているのですが、そういった場所を利用してお茶会や交流会を行い、住民の方のお話を聞いたり、木の板に表札を書くボランティアや、仮設住宅内の使い勝手が悪いところを直す地元の大学生の団体もいましたね。 ――ボランティアとして現地で活動する中で、仮設住宅の問題点はどこにあると思われますか? 櫻田 個人的な意見になりますが、少しずつコミュニティーができ上がる一方で、いつかみんなここを出て行かなければならない。住民のみなさんそれぞれが住宅を出るタイミングには差が出てきます。どんどん人が出て行くのは喜ばしいことではあるけれど、残される人が受ける心の傷はとても大きいですし、そういった方々がどういうモチベーションで自立に向けて歩んでいくのかというのは、すごく難しい問題だと思います。2年間という期限が設けられた中でどう関係性を築いていくのか。若い世代が先に出て、高齢者ほど遅くなる。高齢者だけになってしまったときに出てくる問題というのもあると思います。ただ、現在仮設住宅にいらっしゃるみなさんはおそらく復興住宅に入っていくことになると思いますので、コミュニティーをつくるという過程や経験、つくられたコミュニティーがいかに大切かということは、復興住宅でも活きていくものだと思います。 ■今後の課題 ――現在はワゴン2台、仙台市内10カ所のみでの活動ですが、今後エリアを増やしていく予定はあるんですか?
bw06.jpg
本日も巡回中です。
櫻田 ちょうど検討しているところです。だいぶ運営も慣れてきたので、要望があるところや、ニーズがありそうなところを広げていければと思っています。 ――このプロジェクトの核は「仮設住宅の新しいコミュニティーづくりや、さまざまな団体の活動のきっかけをつくる」ということでもありましたが、その手ごたえを感じていますか? 櫻田 ブックワゴンのようにいろいろな人が集まってこられる場所を持つことによって、新しいつながりができたり、会話が生まれたりするので、住民の方同士のコミュニケーションづくりには非常に効果があるのではないかと思っています。これから先、仮設住宅の中で自治組織ができ上がって住民の方たちが一歩先に進まれる中で、ブックワゴンとして何ができるのかということはもっと深く考えていかなければならないと思っています。本というのは、空いてしまった心の溝を埋めることもできますし、それぞれの方が今後、自立して元の生活に戻っていくにあたって必要な実用的な知識を届けるということもできます。復興のフェーズに合わせて、わたしたちがどういう本を届けていったらいいのか考えていくことは、みなさん同士のつながりやコミュニティーづくりに貢献できるのではないかと思います。  今後はわたしたちだけでなく、ほかの企業や自治体、あるいは地域の図書館という可能性もあるかもしれませんが、さまざまな方と連携して何かできればいいなと思っています。ただ、わたしたちは、「本を通じて何ができるか」ということに最後までこだわって活動していきたいですね。 (取材・文=編集部) ●ブックワゴン トッパングループが行っている、東日本大震災被災地域の仮設住宅を巡回する移動図書館。2台のブックワゴンが、本と人とがふれあう場を提供している。2011年7月~2012年3月末まで社員自らがスタッフとして同乗し、活動を行う。 <http://bookwagon.jp/
ぼくのいい本こういう本―1998‐2009ブックエッセイ集 応援したい。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 「写真はここで生きていたという証」被災者の思い出を取り戻す、被災写真洗浄ボランティア 【6.11 SHARE FUKUSHIMA】大破したコンビニでチャリティーライブ 被災地"圏内"に響く歌声 日本科学未来館に聞く、3.11の教訓とこれからの科学

グルになって原告をダマす!? 弁護士と裁判官の"不適切な"関係

minji_bengoshi.jpg
東京地方裁判所。裁判官自ら同所内を
ガイドしてくれるツアーも実施している。
(画像はウィキペディアより)
「あなたね、私にこの証拠資料を全部読めって言うんですか? そんな暇ないですよ! 和解って言ったら、和解なんですよ!」  数年前にA氏(原告)が不当配置転換取り消しを求めて、勤務先である某大手メーカー(被告)を相手に起こしたある民事訴訟。A氏は、第1回と第2回口頭弁論の間に行われた裁判官、原告、弁護士による会議(後述参照)で、裁判官から和解を促されたが、「何とか判決を出してほしい」と嘆願していた。すると裁判官がバンバン机をたたきながら声を荒げ発したのが、冒頭の言葉である。A氏はその姿を見て、それまで抱いていた「冷静かつ公平な裁判官」というイメージが、一気に崩れたという。  ローソン子会社訴訟(5月判決)【註1】、JR西日本訴訟(7月判決)【註2】、オリンパス訴訟(8月判決)【註3】など、社員が勤務先の会社を相手に起こした民事訴訟で、原告側が勝訴する例が相次いでいる。しかし、これらのように原告の主張が認められ無事勝訴に至ることは未だに少なく、「その裏では、多くの原告が不条理ともいえる裁判の犠牲となり、泣き寝入りを強いられるケースが多い」(労働組合幹部)という。  その実態を探るため、前述のA氏の民事裁判を取材すると、そこには、裁判官と弁護士の"不適切"ともいえる関係が垣間見えてきた(なお、A氏のプライバシー保護のため、以降、一部曖昧な表現があることをご容赦いただきたい)。  まず、この裁判が始まって間もなく原告のA氏は、依頼人であるA氏の意向をことごとく無視する弁護士の姿勢に疑念を抱いたという。  「私の主張は、とにかく会社が私に行った一連の非人道的な行為の非を認めてもらいたい、不当配置転換を取り消して欲しいという点だけでした。ですので、それをA社が認めない限り、和解【編註:原告側と被告側が互いに譲歩し、争いを止める合意をすること。勝訴/敗訴の判決は出ない】などで妥協する気はまったくありませんでした。もちろん弁護士にも、その強い意向を伝えていましたが、弁護士はことあるごとに私に、『訴訟が公になったことで、あらぬ風評被害を会社側へ与え、ブランドを傷つけたことを詫びる』『配置転換を受け入れる』『和解金は受け取らない』という一方的に会社側が有利な内容で和解をするよう促してきました」(A氏)  こうして、原告と弁護士の意思疎通がぎくしゃくしたまま始まった裁判の途中で、弁護士は原告に対し、「和解は判決で勝訴を得るためのステップですので、戦略的に一旦和解しましょう」と提案してきた。A氏は「判決での勝訴を目指すのであれば」と、弁護士の言葉を信じて、その方向で裁判は進んだが、のちに弁護士は信じられない行為に及んだという。  「実は弁護士が和解して裁判を終わらせようとしていたことが判明し、弁護士に抗議しましたが、なんと弁護士は私の許可なく勝手に和解案を作成して、裁判官にFAXで送付するという暴挙に出たのです【編註:民事訴訟法上、和解が成立した時点で裁判は終了してしまうため、「和解成立後に再度判決を得るのは、実務上極めて困難」(労働問題に詳しい弁護士)】。正式な和解申し入れではなかったため、結局成立には至りませんでしたが、自分の味方をしてくれるはずの弁護士、裁判官、そしてもちろん被告側の全員が敵だと分かったときは、本気で自殺を考えました」(A氏)  そしてA氏は裁判を通じて、裁判官の驚くべき実態も知ることになる。  民事裁判は、原告と被告、及び両者の弁護士が裁判官をはさみ、法廷で主張や事実内容を争う「口頭弁論」が数回行われた後、最後の口頭弁論=結審を経て、通常その1〜2ヵ月後に判決が出される。実際にはその口頭弁論とは別に、法廷外の会議室などで、裁判官、原告、弁護士で裁判の争点や証拠の整理を行う会議(弁論準備手続きなど。通常、原告側と被告側に分けて別々に実施される)が開催される。第1回と第2回口頭弁論の間に実施された最初の会議で、裁判官もA氏に対してしきりに和解を勧めた。しかしその内容は、「配置転換を受け入れる」など到底合意できない内容であったため、A氏は和解ではなく判決を出してもらうよう求めたときの光景は、すでに冒頭で述べたとおりである。  「弁護士の『一旦和解』という偽りの戦術に乗ってしまったため、原告と被告双方が和解する前提で裁判が進み、結審を迎えようとしていました。しかし、弁護士にだまされていたことに気づいた私は、結審数日後に開かれた最後の会議で、和解を拒否し判決を求めたため、会議は大混乱となりました」(A氏)  A氏の話をもとに、その混乱模様を以下に再現してみよう。 裁判官(以下、裁)「それで、やはり和解はしないのですか?」 弁護士(以下、弁)「Aさんも十分に言いたいことは言いましたし、反省もしていますので、和解ということで......」 Aさん(以下、A)「ですから、和解はしません。判決を出してください」 「(裏返った声で)わがままを言うのも、いい加減にしなさい!」 「(Aをにらみ、机をたたきながら)ですから、和解! 和解しかないんですよAさん!」 A「裁判官、この人は私のただの代理です! 話を聞く必要はまったくありません! 今ここでクビにします! 私の話だけを聞いてください!」 「結構です。私は代理人を降ろさせていただきます!」 「(弁護士をにらみつける)」 「いや、ですから、そう意味ではなくて、降りるというのは撤回します......」  その後弁護士は、原告が裁判当初から何度も「払わせてくれ」とお願いしても、なぜか受け取りを拒んでいた着手金を、判決日直前にいきなり請求し、判決日の法廷に姿を現すことはなかった。もちろん判決の結果はいわずもがなであった。  ちなみに後日、裁判所に提出した証拠資料などを別の弁護士に見せたところ、「和解前提ではなく、判決で勝訴を得るための戦術を立てて普通に戦えば、間違いなく勝てたでしょう」と言われたという。 ■大手弁護士事務所は裁判官の"天下り先"!?  それにしても、なぜ裁判官と弁護士が一緒になって原告に和解を迫るなどという事態が起こるのだろうか? 不当解雇などの労働法関連の裁判に詳しい労働組合幹部と、企業のコンプライアンス制度に詳しい経営コンサルタントに尋ねると、「よくあることですよ」と口をそろえ、その理由を教えてくれた。 「社員対会社というA氏の事例のような労働法関連の裁判は、社員側が勝訴になる確率が低い上、たとえ勝訴しても賠償金は数百万円程度なので、弁護士にとってみればたいしたカネになりません。また、勝訴しても被告が控訴すれば、再びカネにならない裁判が延々続くので、判決まで行かずにさっさと和解で終わらせてしまった方が都合がいいのです。一方の裁判官も、労働法がらみの裁判は、判決を出しても負けた方が控訴するケースが少なくなく、控訴審で自分の判決を覆される可能性も出てくるため、できるだけ判決を出さずに済ませたい。結果として、裁判官と弁護士の利益が一致してしまうのです」(同労働組合幹部)  これでは、双方の弁護士と裁判官がグルになって、原告の訴えを潰そうとしていると言われてもおかしくない。そもそも、原告の利益を最大限優先するのが弁護士の使命ではないか? 「弁護士も裁判所あっての弁護士ですから。特に経験の浅い弁護士は、裁判官の機嫌を損ねてしまうと、裁判で必要以上に書類提出を求められたり、しつこく書類や手続きの不備をネチネチ指摘されたりといった意地悪をされてしまいます。また、裁判官の間で『アイツは勝たせてやらない』と裏でささやかれ、以降の裁判でなかなか勝てなくなってしまうこともあります」(同経営コンサルタント)  まるでテレビドラマでよく見る、お局様が新人OLをイジメる風景とまったく変わらないではないか......。  上記のような実態は果たして本当なのか? 裁判所職員OBのB氏に尋ねてみると「まー裁判官も人間ですからね」と答え、その背景にある現行の司法自体が抱える問題について説明してくれた。 「00〜10年の間、合格者の大幅増を目的のひとつとした新司法試験制度(06年開始)の影響もあり、弁護士の数は1.7倍に増えた一方、裁判官は1.3倍しか増えていません。加えて、06年以降消費者金融への過払い請求訴訟が急増し、扱わなければならない裁判の件数は、完全に裁判所の処理能力を超えています。例えば東京地裁の裁判官は、結論(判決、和解など)を出さなければならない事案が1人あたり月間平均40件もあり、みなさん土日も出勤して判決文を書いたりしています」  B氏によると、このように裁判官が激務を強いられている現状が、裁判官と大手弁護士事務所の癒着を生み出していると指摘する。 「はっきり言うと、裁判官は証拠資料をすべて読む時間的な余裕がないので、今回のAさんの裁判のように、原告と被告の主張が真っ向から対立する場合、会社側の代理人に大手弁護士事務所の弁護団がつくと、『大手だから信用できるだろう』と、安易に会社側の主張や証拠資料に基づいた事実認定【編註:証拠に基づき、判決を出すための事実を認定すること】を進めてしまいやすい。そして大手弁護士事務所側は、事務所のブランド力を高めるために毎年定年後の裁判官を一定数受け入れていますが、裁判を有利に進めるため、裁判官に定年後の"見返り"をちらつかせることもあります」  B氏によると、意外とこの方法は効くという。 「定年がない弁護士や、将来ヤメ検弁護士として活躍する道がある検察官と違い、裁判官の定年後の選択肢は狭い。そんな彼らにとって、大手弁護士事務所は、数少ない"おいしい"再就職先のひとつ。恥ずかしい話ですが、"天下り先"に目がくらみ、裁判官が裁判の過程でいろいろな手心を加えてしまうケースがあることは否定できません」  これから訴訟を起こそうと考えている人たちは、よく肝に命じておかなければならない。野田佳彦総理の大好きな相田みつを氏の言葉を借りるまでもなく、「"裁判官だって"人間だもの」という事実を。 (文=編集部) 【註1】 ローソンの完全子会社、九九プラスが運営する安売りコンビニエンスストア「SHOP99」の元店長が、権限のない「名ばかり管理職」として残業代なしの過酷な長時間労働で健康を壊したとして、未払い残業代と慰謝料の支払いを求めた訴訟。 【註2】 JR西日本が業務でミスをした運転士らを対象に行った「日勤教育(通常勤務から外れ、再発防止を教育する取り組みの通称)」で精神的苦痛を受けたとして、同社の運転士と車掌計258人が、同社に対し、損害賠償を求めた訴訟。 【註3】 社内のコンプライアンス窓口に通報したため不当に配置転換されたとして、オリンパスの社員が配転の無効確認などを求めた訴訟の控訴審。 
サマヨイザクラ裁判員制度の光と闇 お世話になりたくない。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 オリンパス敗訴で明らかになった女弁護士のブラック過ぎる手口 続報! 幹部が強制わいせつ疑惑の野村総研が被害者女性を逆提訴! スクープ! 野村総研の経営陣に強制わいせつ疑惑! 担当弁護士にも懲戒請求が出されるドタバタ劇

"業界のタブー"セブン-イレブンの「加盟店いじめ」に下された審判

711_110922_01.jpg
1万3,500店舗以上を誇り、いまだ増え
続ける巨大チェーンの問題とは?
 コンビニ・フランチャイズ業界で、トップに君臨し続ける、鈴木敏文会長率いるセブン-イレブン・ジャパン。同社本部が値下げ販売制限等をめぐって約2,600万円の損害賠償を福岡市内の元加盟店オーナーS氏から求められていた訴訟の第一審判決が、9月15日に出た。福岡地裁は、販売制限を独占禁止法違反(優越的地位の濫用)と認め、同社に220万円の支払いを命じた他、加盟店契約内容が説明不十分だと認定し、本部が一審敗訴となった。  元オーナーであるS氏の訴えを簡単にまとめると、「自身の店舗で弁当等のデイリー品の値下げ販売を実施していたことに、同社本部が散々難癖をつけたことは独占禁止法違反であり、不当だ」とするもの。田中哲郎裁判長は判決理由で「(本部が)値下げ販売をやめるように繰り返し指導したことで、店側の取引を不当に拘束した」と独禁法違反を認定した上で、「値下げすれば利益を上げることができた」とも述べた。また、廃棄や万引きで「ロス」となった商品を売り上げに計上し、チャージを徴収する「ロスチャージ」といわれるコンビニ業界で用いられる特殊会計システムについても「計算方式が一般的な方法と異なることについて、加盟店側に理解できるよう配慮する必要がある」と述べ、説明義務違反を認定した。  要約すると、「価格販売の値下げは、加盟店の自由。廃棄リスクのある商品は値下げをしてでも販売した方が利益が上がるのだから、加盟店がそれを実施するのは当たり前。本部に制限する権限はない。ロスチャージ会計も契約時に加盟店に説明せよ」というもので、いわば、これまでの"本部側の常識"を覆す内容で、セブン-イレブン本部ならずとも、コンビニ各社の経営陣を戦慄せしめる判決なのだ。  筆者は2年前の2009年に2度も同社の井阪隆一社長に直接インタビューしたが(参照記事1)、その際「値下げをしても売上げ・利益が伸びるような効果はないし、会計の説明もきちんとしている」という、今回の判決と180度異なる趣旨を語っている。  S氏は1997年にセブン-イレブン加盟店オーナーになったが、2008年に脱退している。しかし、現役コンビニオーナーたちで作る労働組合「コンビニ加盟店ユニオン」はS氏を支援してきた。ある現役オーナーは「勝てる自信はなかった」と語り、本部から大金星を勝ち取ったことを誇った。九州のコンビニ加盟店ユニオンのメンバーには、契約解除を本部から不当に通告されたとして訴訟を検討しているメンバーもおり、この判決は自信となったようだ。  だが、S氏が求めていた約2,600万円の損害賠償金に対して、判決では10分の1以下の金額である220万円の支払い命令でしかなかったことや、「廃棄分のコストの15%は本部が負担していた」と同社本部が語っていたことは事実ではない、としていたS氏の主張は無視された形で、今回の判決は決して「完勝とは言えない」というのが、裁判関係者一同の見解のようだ。 ■ユニフォームで遺体の身元が分かる  今回の裁判を支援してきたコンビニ加盟店ユニオンの活動を筆者は度々報道してきたが(参照記事23)、今年で結成3年目を迎え、先月8月24日には東日本大震災の影響を考慮して、東京ではなく大阪で定期大会を開催した。
711_110922_02.jpg
コンビニ加盟店ユニオンの定期大会
 同大会には、北海道から九州まで全国のコンビニオーナーが参加し、中には被災地である福島県や宮城県といった東北のオーナーも姿を見せた。  宮城県でセブン-イレブン美里町関根店を経営する中林茂男氏は震災直後の状況を語り、しばらくはお店をまともに開店するどころか自分が食べるものすらなく、九州のオーナー仲間から食料が届いたときのありがたさや、水道供給停止中はトイレ使用を制限せざるを得なかったことや、いまだ行方不明のオーナーや従業員がいる切実な被災地店舗の状況を話した。特に「セブン-イレブンのユニフォームを着た従業員の遺体が発見された時、警察は『良かった。これなら身元が分かる』とホッとしたそうです」という逸話は、被災地の行方不明者たちの発見作業の熾烈さを垣間見せるものだった。  また、東日本大震災や原発事故の影響で、例年より国会議員の挨拶は少なかったが、それでも「フランチャイズ法を考える議員連盟」の事務局長・姫井由美子参議院議員と事務局次長・長尾敬衆議院議員が顔を見せた。震災でストップしていたフランチャイズ議連の活動も8月から再開しており、長尾議員は「政局がどうなろうと、フランチャイズ問題に取り組む」と、フランチャイズ法制定に取り組む強い信念を述べた他、姫井議員は「次の大会では首相を連れてくる」とまで発言した。鉢呂吉雄前経済産業大臣辞任劇に始まりドタバタの船出となった野田佳彦首相を、姫井議員はコンビニ加盟店ユニオンの定期大会に連れてくることができるのか?  福岡地裁の判決で、コンビニ本部による加盟店への不当な締め付けの実態はより明らかになった。こうした店を取り締まるフランチャイズ法の制定は、政界・法曹界の今後の大きなトピックとなりそうだ。 (文=角田裕育)
セブン-イレブンの真実―鈴木敏文帝国の闇 真っ暗。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 オーナーは救われるか......セブン-イレブン「ロスチャージ問題」訴訟が九州で火蓋 セブン-イレブン会長&社長を直撃! "加盟店いじめ"をどう見ているのか?(前編) セブン-イレブン帝国崩壊への序章 "排除命令""労組結成"で激震中!(前編)

オリンパス敗訴で明らかになった女弁護士のブラック過ぎる手口

orinpas01.jpg
「オリンパス社のホームページ」より
「人事部の人間からしつこく『産業医に診てもらえ』と異常なまでに強要され、最後にはストーカーのように追いかけまわされたんです!」  精密機械大手のオリンパス(東京都新宿区)の社員Hさんが、上司の非合法行為を内部通報したために配置転換されたと訴えた裁判で8月31日、東京高裁がオリンパス社の配置転換を無効とし、同社の行為は違法として220万円の損害賠償を命じた事件。判決後の会見でHさんが発した冒頭のコメントに、会場にいた支援者のひとりがこう続けた。 「オリンパスは産業医を使ってHさんを精神異常者に仕立て上げようとしたんですよ。手口がブラック過ぎます!」    意味深な発言にざわめく会見場。今回の判決で浮かび上がった大手法律事務所のブラック過ぎる手口とは何なのか。  すでに多くのメディアが報じている通り、今回のオリンパス敗訴の判決は多くの企業に導入されている「内部通報制度」のあり方に警鐘を鳴らした。と同時に、会社にとって都合の悪い社員が、会社側の顧問弁護士により社会的に抹殺されてしまう悪質な手口が明らかになりつつある。  今回、敗訴となったオリンパス社を弁護した「森・濱田松本法律事務所」(東京都丸の内)は、日本の「四大法律事務所」のひとつと称されるほどの大手である。特に、担当をしたT谷というベテラン女性弁護士は、労働法のエキスパートとしてメディアにも登場した経歴を持つ。ところが、このT谷弁護士がかねてから産業医とグルになり、陰湿な手口で社員を社会的に抹殺してきた疑いがあるという。今回の「オリンパス訴訟」を詳しく知るある人物がその手口を説明する。 「悪質な企業では、会社にとって都合のよくない社員に対して『精神的なケアをする』との名目で、会社お抱えの産業医に診断をさせるんです。この産業医が会社とグルで、その社員を『君は精神分裂症だ』『重度のウツなので治療が必要』などと診断し、精神病院へ措置入院させたり、合法的に解雇してしまい、事実が隠蔽されてしまう。過去にセクハラを訴えた多くのOLなどがこの手口で社会的に抹殺されていますし、今回のHさんもそのひとりの疑いがあります」  つまり、一部の大手企業では、「裏コンプライアンス・マニュアル」として産業医を活用したブラックな手口が常態化しており、オリンパス社もそのひとつである疑いが強いのだという。
orinpasu2xs.jpg
オリンパス社では、社員の休職や復職に産業医の権限が極めて大きく関与している。
写真は「オリンパス職員組合規約集」より(クリックすると大きくなります)。
 実際、オリンパス社に勝訴したHさんは、自身のブログに次のように記している。 <オリンパス人事部長・課長が、しつこく、ねちっと陰湿に、「オリンパス産業医診断」を強要したことと同じく、「あなたの健康のためだから」とか、「従業員の健康が会社の願いだから」、などと、巧みに、「オリンパス産業医の診断を受けてください」、「産業医の診断をうけて欲しいという会社の願いは組合としても同じだから」と、(中略)この、「組織ぐるみでの産業医診断強要作戦」は、「労働者に再起不能のレッテルを貼る(復職したくても、精神的なこを理由とされ、復職許可させないで休職期間満了退職を狙う)」ことを意図する、絶対にしてはならない「禁じ手」に他なりません>(原文ママ)  また、今回の裁判で東京地裁に意見書を提出した関西大学教授の森岡孝二氏も、意見書の中で次のように述べている(カッコは筆者)。 <原告(Hさん)が面談したF氏(オリンパス社人事部)は、原告の通報事実にはほとんど関心を示さず、健康問題が心配だから産業医の診断を受けるように勧めた。その場では原告もそれを了解し、F氏が産業医の予約をとった。しかし、原告はその直後に不審に思い、その日のうちに自ら予約をキャンセルした>
orinpas3.jpg
T谷弁護士が昨秋、オ社の管理職限定で行ったセミナーに関する内部資料の一部。
「E」はエグゼクティブ=監督者を指し、「PゾーンGL」はグループリーダーで管理者(非組合員)を意味する。
 オリンパス社と産業医のブラックな結託が徐々に浮かび上がってきたわけだが、ここで注目すべきは、本サイトで度々報じてきた「野村総合研究所強制わいせつ事件」(記事参照)において、現在裁判中の野村総研側の弁護を担当しているのも、実はこのT谷という女性弁護士なのだ。本事件は、野村総研の上海支社副総経理(副支社長に相当)であるY田氏が、取引先の女性営業担当者A子さんの家に上がり込み、抱きつき、押し倒すなどの強制わいせつを働いた事件。女性は事件後に退社しているが、Y田氏はいまだ何の処分も受けてない。このことを野村総研に抗議したことで「名誉毀損」と・逆ギレ訴訟・を起こされたA子さんの支援者のひとりであるBさんは、裁判所に提出した書面に、森・濱田松本法律事務所のT谷弁護士が過去にも大手コンサルティング会社の弁護活動において、悪質な手口で一般社員を追い込んでいたと告発している(以下、裁判所の公開文書より抜粋)。 <T谷弁護士は(編注:原文は本名)都内の大手コンサルティング会社から労働法の専門弁護士として依頼を受任し(略)、不都合な社員や退職させたい社員がいる際には、まず集団ストーカーと呼ばれる手口で、その社員の周辺に複数の人間が常につきまとい、その社員に精神的苦痛を与え続け、その社員がたまらなくなって、怒鳴ったり暴力を振るったりしやすいようにする、もしくは精神的苦痛で自殺しやすい状況にする行為を続ける> <このような集団ストーカー行為、もしくは産業医の制度を悪用する手口を使って、被害を訴える個人に対し、精神分裂症等の精神病として診断書を作成して被害者の発言の信憑性を低下させ、その上で産業医が治療と称し措置入院等を行う事で、報道、捜査機関、裁判所等を欺いて対応が出来ないようにし、さらに一般市民を自殺や泣き寝入りに追い込む>  まさに、ブラックな企業とブラックな弁護士によるブラック過ぎる手口。大手企業のこうしたやり口は、過去に本サイトでも「<緊急座談会>問題なのは野村総研だけじゃない! 日本企業は海外でセクハラし放題! コンプライアンスはどうなってる !?」(記事参照)で、専門家の意見を通して問題提起してきたところだが、あまりに常軌を逸した手口の陰湿さから、一部の読者からは「劇画的過ぎる。本当にそんな手口あるのか?」との質問が寄せられたほどだ。ところが、日本有数の大手法律事務所で常態化している疑いが、図らずも今回のオリンパス事件で改めて浮かび上がったようだ。  冒頭の裁判関係者が言う。 「問題の女弁護士については、以前から集団ストーカーや嫌がらせ電話などの怪しい手口のウワサが絶えなかった。今回もそのやり方をして敗訴ですからね。これからヤバいんじゃないかって、弁護士や裁判官たちはウワサしてますよ」  おりしも、オリンパスとT谷弁護士は期限(高裁判決から二週間)直前の9日に上告することを決定。さらに野村総研強制わいせつ事件も含めて「どんな悪あがきを続けるつもりなのか」(同)が注目される。なお、多くの産業医は社員の健康のために誠実に勤務しており、一部の悪質な専属産業医の実態を一般化するものではない。念のため付記しておきたい。 (文=浮島さとし) ※当初、記事中でT谷弁護士の年齢を「50代」としておりましたが、一部の読者や関係者から「40代ではないか」との問い合わせをいただき、あらためて確認したところその可能性が高いことがわかり、年齢部分を削除致しました。
ブラック企業、世にはばかる まさに。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 続報! 幹部が強制わいせつ疑惑の野村総研が被害者女性を逆提訴! 日本企業は海外でセクハラし放題! コンプライアンスはどうなってる !? 続報!「野村総研強制わいせつ事件」で内部リークが続出!

「40時間以上も睡眠ナシ」不況直撃のテレビ制作現場 ディレクターの離職が止まらない!

 不況のしわ寄せがスタッフを直撃しているのか、今テレビ界の制作現場から悲鳴が聞こえている。  民放局では2年前ほどからアシスタントディレクター(AD)の離職が顕著だったが、今年はさらに一つ上の立場であるディレクターが次々に業界を去っているのだ。 「もう限界です。今年に入って休日はわずか2日だけ。週に家に帰れるのは多くて4日」  こう語るのは、フジテレビ系列の番組制作を請け負う制作会社勤務の30代男性。キャリア10年以上で関係者の信頼も厚かったが、ついにギブアップ。秋の番組改編に合わせて局を去るという。 「今までこんなにキツい状況になったことはないです。数年前から不況で経費削減になり、そのしわ寄せでスタッフの数が徐々に減りました。例えば、以前なら3人でロケに行っていたのが、今では1人。編集作業まで全部自分一人でやらなくてはいけないんです」(同ディレクター)  こういう忙しい時に雑務をこなしてくれたのがADだったが、そのADの数も減少しているのだという。 「3年前にADの過酷労働が問題になって、制作会社120社以上で組織する全日本テレビ番組製作社連盟が調査した上で、ADを厳しく使いすぎるな、と通達があったんです。それ以来、弁当や小道具の手配などADの仕事も、ディレクターである自分に回ってくるようになりました」(同ディレクター)  以前は"代わりはいくらでもいる"と言われたADも、最近ではテレビ業界に対する憧れが低くなったのか、人材不足が続いている。  日本テレビ系列の情報番組『ヒルナンデス!』のディレクターも、「ADが辞めてしまっても代わりがいないので、1泊2日で行うロケが日帰りになり、40時間以上もまったく睡眠ナシで仕事している」とやつれた顔で語っていた。  また、テレビ朝日の関係者に聞いても同様で「一番キツそうなのは朝の『情報満載ライブショー モーニングバード!』。多彩な出演者のギャラに金をかけている分、制作の人件費が抑えられてしまい、多くのスタッフが睡眠不足のまま」だという。  これらは、労働時間の上限が定められた労働基準法を大きく超える違法な過酷労働というわけだが、給料が高水準である局の正社員と違い、制作会社から派遣されたスタッフたちは報酬も高くはない。  ADのみならずディレクターのピンチには「このままでは人材がどんどんいなくなっていき、番組のクオリティーも落ちる一方」と警鐘を鳴らす関係者もいる。  しかし、制作指揮をとる、ある番組プロデューサーに聞くと「人員の補充をしてあげたいんだが、人が足りないというと無能だというレッテルを貼られるのがテレビ界の悪しき風潮」と改善に踏み切れない理由を打ち明けた。  出演者たちが華々しく活躍する裏で、番組制作側の疲弊は限界に達しつつある。 (文=鈴木雅久)
2011年新聞・テレビ消滅 グッバイ! amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 事件や災害と感覚は同じ!? 日テレ"非"正社員のストライキへの寛容さ 「それでも年収1,000万超」テレビ不況の中『日テレ×労組』の対立が法廷へ!? 「テレビは権威ではない」ものづくりを手放したキー局とローカル局の未来

新聞大不況時代にクーデター勃発!? 日刊スポーツ激震の社長交代劇

nikknasports0706.jpg
崩壊へのカウントダウンがはじまった!?
(日刊スポーツ本社)
 "スポーツ新聞の雄"日刊スポーツに異変が起きている。  3・11東日本大震災の影響で大幅な部数減を強いられ、今夏のボーナスはゼロになる社もあれば40~50%カットは当たり前といった社も多く、スポーツ紙大不況の時代に突入した。当然、経営陣の入れ替えなどが急務となっているが、先日発表された日刊スポーツの社長退任の裏にはなにやらキナ臭さが漂っている。  同社は6月28日に定時株主総会を開き、三浦基裕社長が再任されず、1期2年という異例の短期で退くことになった。創業家出身の川田員之会長が社長を兼務することになったわけだが、実はこれが創業家側のクーデターだったというのだ。同社の関係者が声を潜めてこう語る。 「あれはビックリしましたね。何の前触れもなく、いきなり株主総会で緊急動議が提出されたんです。三浦社長も驚いていましたよ」  緊急動議の中身は、三浦社長への不信任と解任要求だ。しかも、採決を取ったらさらにビックリ! 「だってまさかもまさかですよ! 可決されちゃったんですからね。それで三浦社長の退任が正式に決定したんです」(前出関係者)  一体何があったのか? どうやら創業家側が事前に根回しをして、自分の息がかかっていた人物に緊急動議を提出させて三浦社長を退任に追い込んだというのが真相らしい。理由は、創業家サイドと三浦社長を中心とした現経営陣の確執だ。事情通が次のように証言する。 「三浦社長は、良くも悪くも革新的な思考の持ち主だったんです。これからは紙(新聞)だけではやっていけない。イベント事業などあらゆる分野でビジネス展開できるものはしていかなければダメだ、とね。それで、親会社でもある朝日新聞社の完全傘下に入ることを主張。要は、日刊スポーツは朝日の子どもになって、守られながら生きていく路線を走り出そうとしたんです。それが、創業家側にとっては気に入らなかったみたいですね」  つまり創業家側からすれば、「朝日新聞社の傘下になるくらいなら、日刊スポーツをたたんだほうがマシだ!」というわけだ。自分たちで立ち上げた日刊をそんなおもちゃのように扱われてはたまったものではない、ならば潰す方を選ぶという、まさに昔気質の考え方だ。こうしたドロドロ劇の中、社内では時代が時代だけに三浦社長の理念にはそれなりに賛成してもいいという声は多かった。ところが、そうならなかったのは三浦社長のあまりにも強引な社内人事のやり方だった。  前出事情通によれば「社長はとにかく好き嫌いが激しすぎる。年齢に関係なく子飼いを次々と重要ポストに置いて、仕事ができても社長派でない人は左遷の嵐......。これでは社内がメチャクチャになっちゃいますよ。で、支持する人が減り続けた。創業家サイドにとってはクーデターが非常にやりやすい環境だった」というのだ。再び創業家側が経営を掌握し、日刊スポーツ新聞社の実権を握ったわけだが、「あまりにも古臭いやり方に将来を不安視する社員は少なくない」(同社社員)という。果たして老舗スポーツ紙はどうなるのか......。 (スーパー芸能記者X)
新聞社―破綻したビジネスモデル 刷新しましょ。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 これもテレビ不況の余波!? スポーツ紙から視聴率ランキングが消える日 現場は唖然......スポーツ紙大手「日刊スポーツ」が年収20%カットを労組に提示 内外タイムス倒産の内幕「オーナーの逮捕が決定打だった......」

続報! 幹部が強制わいせつ疑惑の野村総研が被害者女性を逆提訴!

nomura062001.jpg
Y田氏が副支社長として勤務していた野村総研上海支社の受付窓口。
「嫌だと言ってるのに無理やり部屋に上がり込まれて押し倒された」 「仕事の話と呼び出されたら酒を勧められ、帰してもらえなかった」 「酒を勧められ、飲んだら急に意識を失った。気付いたら裸にされていた」  これらはいずれも、日本を代表するシンクタンク「(株)野村総合研究所(以下、野村総研)」北京社上海支社副総経理(副支社長)のY田氏による強制わいせつ行為に関する、複数の女性からの証言である。  2007年12月、Y田氏が取引先の広告代理店営業担当(当時)のA子さんに強制わいせつ行為を働いた事件については、当サイトで過去2回にわたり報じてきたが(12)、記事を読んだという関係者から、新たな証言が複数寄せられている。  「いきなり抱きつかれて性行為を求められ、なんとか断ったが今もトラウマになっている」という日本人女性は、「顛末を詳しく書かれると自分が証言したと特定されてしまい、報復されるのが怖い」とおびえながら、「あんな人間が社会的地位に守られながら平然と暮らしているのは絶対に許せない」と怒りをあらわにした。  また、日本航空や中国東方航空のキャビンアテンダント(CA)からも、「マンションに強引に上がり込もうとして抱きつかれ、断ると玄関で無理やりキスされた」などの証言が数多く寄せられている。以下は、あるCAたちの証言だ。 「とにかくCAに片っ端から声を掛けるので有名でしたけど、『CAなんて低学歴の低所得者だ』とバカにしてましたね。酔わせてタクシーで送るといって、部屋に上がり込んで襲うというのがパターン。大学のレイプサークルと同じで、やることが幼稚なんですよ」(20代の中国東方航空CA) 「被害に遭った子たちは『タクシーに一緒に乗ったおまえが悪い』とか言われるのが怖くて相談できない。実際、同性の先輩から『誘ったんでしょ』と言われた人もいたようです。20代の若い子たちは『野村総研の茶髪のエロおやじには気をつけろ』と言い合ってましたね」(30代の日本航空CA)  被害女性たちの友人有志らで組織する「野村総合研究所(野村総研)のわいせつ、セクハラ被害者を救う会」(以下、救う会)は、これまでこうした情報の中から一次証言をまとめて文書化し、Y田氏本人と野村総研に対して「事実か否か」の照会確認を通知し、事実でないと主張する場合は期限内に回答するよう求めてきたが、いまだ回答は一度もないという。仮に女性たちの証言がすべて虚偽で、Y田氏が潔白であるならば、なぜ公の場で反論しようとしないのだろうか。  この点について、筆者は野村総研に対して2度にわたり電話でコメントを求めたところ、「当人同士で行き違いがあった。社としてはコメントを差し控える」(2010年8月、女性広報担当の回答)、「弁護士と協議中なのでコメントは差し控えたい」(2011年4月、同広報)と、具体的な説明はないまでも、事実関係そのものは否定しなかった。  静観の姿勢を崩さないかに見えた野村総研だが、ここへきて突如動きを見せ始めている。まずは5月20日、「救う会」が運営するブログ「野村総合研究所(野村総研)のわいせつ、セクハラ被害者を救う会」をサーバー管理しているプロバイダーのライブドア社に対し、名誉毀損を理由にサイトの削除を要求。ライブドアがこれを拒否すると、今度は5月26日にサイト管理人らの情報開示とサイトの閉鎖を要求した。「救う会」側の一人が、あきれながら言う。 「プロバイダー責任制限法に基づいて当方の情報を開示しろと言っているらしいのですが、もともと我々は連絡先を野村総研への文書に明示して公開質問を行っているわけで、それに答えもしないで何を今さらという感じです。自社の幹部が性犯罪を繰り返しているのに対処もせず、こちらが照会確認で公に反論の機会を与えているのに、それをも放棄して名誉毀損だという。株主総会が6月23日にあるので、『やることはやってる』という株主に対するアピールなんじゃないですか」
nomura062002.jpg
野村総研は内部統制の基本方針として
「法令遵守体制の実効性を確 保するため(略)必要な諸活動を推進」する
としているのだが......(同社HPより。下線は編集部)。
 「救う会」では直ちに、 ・当方は最初から連絡先を明示して公開で質問している。名誉毀損というなら照会確認に答えないのはなぜか。 ・連絡先を明示しているのに当方に連絡せず、プロバイダーに抗議するのは不当な嫌がらせである。反論するのならば当方に対して訴訟を提起せよ。  などの趣旨をまとめた文書を通知した。  すると野村総研は、「救う会」の一人Bさんと、なぜか被害者の一人であるA子さんを相手に、1,000万円の損害賠償を請求する民事訴訟を提訴。以下は訴状に記された1,000万円という金額の根拠となる部分の抜粋である。 「(略)原告(編注:野村総研)に発生した有形無形の損害は、現時点で原告が把握している事実関係に基づくだけでも、少なくとも1,000万円を下らない。したがって、被告らは、原告に対して、不法行為・共同不法行為に基づく損害賠償として、少なくとも1,000万円を連帯して支払う義務を負っている」  これについて、「金額の根拠があいまいで意味がわからない」と一笑に付すのは、企業の性犯罪事情に詳しい都内法律事務所のT氏だ。 「この前段に辛うじて1,000万円の根拠らしきことが書いてあるのですが、野村総研が『株主や顧客等へ対応を余儀なくされ、原告の業務が妨害された』からとしか書いていない。であるなら、被告側は、原告の株主である野村ホールディングスなどに、『野村総研が1,000万円の損害が出たと言ってますけど、お宅はどんな対応を迫ったのですか』と聞くべきでしょうね」(この点を「救う会」に確認したところ、「すでに野村総研の主要株主に対して質問をまとめた公開通知書を送付済み」とのこと)  またT氏は、訴状の中で野村総研がY田氏の潔白を、決して積極的に主張していない点にも注目する。 「野村総研は被害者側の主張に対して『事実無根だ』という反論を一切していません。これだけ一次証言がそろってしまうと立証されるのを恐れてできないのでしょう。そこで苦し紛れに、『事実はどうあれ、まだ刑事罰が決まっていないのに、決まったかのような誤解を与える表現は名誉毀損だ』というニュアンスで反論をしてるだけなんですが、その時点で『やりました』と言ってるようなもんなんですけどね」  さらに、数多くいる被害者の中からA子さん一人を抽出して提訴した点にも首をかしげる。 「訴状によれば、『救う会』のBさんが運営するウェブサイトが野村総研の名誉を毀損したというのですが、このサイトにA子さんはまったく関係していません。Bさん一人を訴えるならまだしも、なぜA子さんを引っ張り出したのか。立場の弱いA子さんを精神的に追いつめるのが目的でしょう」
NRI0401_01.jpg
「嘉華中心」は05年に完成した上海の高級オフィスビル。
野村総研上海支社はこの29階にある。
 それにしても、野村総研といえば、官公庁や各産業のトップ企業を顧客に持つ日本最大手のシンクタンク企業。就活学生の人気企業ランキングでは毎年上位を占めるなど、学生からの信望は極めて厚い。しかし、これまでの姑息とも言える一連の対応を見る限り、日本を代表する企業としての矜持は見えてこない。  これについて、「ランキングなんてものに左右されずに、学生さんはしっかりと企業体質を分析した方がいい」と言うのは、日本のブラック企業の事情に詳しい「(株)ヴィベアータ」代表取締役で企業アナリストの新田龍氏だ。 「今回の野村総研のやり方は、典型的なブラック企業の手口の一つです。A子さん一人を狙い撃ちしたのも、弱いところから攻めていくという常とう手段。そもそも、社内での違法行為を放置して、証拠不十分なのに逆ギレして個人を提訴なんて、仮にも一部上場企業がやることじゃない。明らかな犯罪隠蔽だし、大企業の権威をかさに着たどう喝行為。今回の件も氷山の一角でしょう」  折しも、この記事を作成している19日現在、Y田氏が上海へ赴任する前にあるアジア圏の国で、性的事件を起こしていたとの証言が届いている。筆者は既に関係者と接触を図りながら事実関係を確認中である。詳細が判明でき次第、続報として公開していきたい。 (文=浮島さとし)
挑戦し続ける野村総合研究所 最大手の名が廃る。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 続報!「野村総研強制わいせつ事件」で内部リークが続出! スクープ! 野村総研の経営陣に強制わいせつ疑惑! 担当弁護士にも懲戒請求が出されるドタバタ劇 「武富士」破たんはこれからが正念場 創業一族=武井家の責任を追及する緊急集会が開催

「観光にさらなる打撃」またまたサーチャージ値上げ! 日本の航空業界はどうなる!?

anaairplane000.jpg
気軽に海外旅行なんて夢のまた夢!?
 中東情勢の混迷や、福島第一原発の事故を受けての世界的な「原発離れ」による原油価格高騰のあおりを受けて、飛行機代がまた上がる。全日本空輸(以下、ANA)では、6月発券分から国際線の燃油サーチャージを値上げすると発表。上げ幅は1,000~7,500円程度で、これにより運賃に上乗せされるサーチャージ(片道1人分)は、北米やヨーロッパで2万5,000円(現行1万7,500円)、ハワイで1万6,000円(同1万1,000円)となる。  また、日本航空(以下、JAL)でも6月から同規模の値上げを行う予定で、これによるサーチャージは北米やオセアニアで2万5,000円(現行1万7,500円)、グアムで8,000円(現行5,000円)、タイやシンガポールで1万3,000円(同8,500円)となる見込み。さらに、外資系航空会社も軒並み値上げを表明している。  各航空会社が一斉にサーチャージの値上げに動くのは、2月の引き上げ(500円~3,500円程度)に続き、今年に入り早くも2回目。路線によっては「昨年末の運賃より1万円以上高くなる便も少なくない」(都内旅行代理店)という。  ローコストキャリア(LCC)と呼ばれる格安航空会社が国内にも急速に浸透しつつある中、今回の値上げがそうしたニーズ拡大に逆風になることはないだろうか。  これについて、今回の値上げで打撃を受けるのは「LCCよりは、正規料金に近い価格でビジネス客を相手にしている大手キャリアのほうが大変」と言うのは、航空専門誌「エアワールド」編集長の竹内修氏だ。 「LCCの利用者は、多少値上げされても他に選択肢はありません。その反面、これまでビジネスクラスで社員を出張に行かせていた企業は、ただでさえ経費削減が求められるのに、これ以上値段が上がるなら出張自体の数を減らすか、出張をするにしても価格の安いエコノミークラスの利用が増えるでしょう。こうした動きが進めば、エコノミーでも高いからLCCを使えという流れにもなりかねません」  さらに3月の震災以降、海外からのビジネス客が減少を続けていることも大きな不安要素だ。 「従って、こうした高価格ゾーンを収益の柱としている大手エアラインにとっては苦しい展開が予想されます。LCCとしてはむしろ、富裕層から流れ込んでくる新たな顧客層が見込めるかもしれません」  総じて"負け組"に甘んじていると言われている航空業界だが、その中でも業態による勝ち負けの二分化が予想されるというわけだ。  また、昨年秋から国際便の運行が一部復活し、「成田より便利な国際空港として今後に大きな期待がかかる羽田空港」(前出の旅行代理店)に、こうした値上げの動きはどんな影響をあたえるのだろうか。竹内氏が言う。 「羽田で国際便が認可されたといっても、北米便やヨーロッパ便の発着は早朝や深夜の時間帯に限定されています。出発が早朝6時ならチェックインは4時ごろまで。となると電車やバスはまだ走ってないので、ホテルに前泊する必要がある。しかも行き先がニューヨークの場合、羽田を6時に出ると時差の関係で到着が朝5時ごろ。あまりの不便さに利用者数は伸びていません。それどころか、欧米のエアラインの中には事実上の撤退を検討している会社もあるという噂です」  各社とも表向きは大震災の影響による「一時的な運休」としてはいるが、利用客が伸びず、儲からない羽田の国際便から、これを契機にフェイドアウトしたいというのが本音のようだ。今回の値上げがこうしたネガティブな動きにさらなる拍車がかかるということなのか。 「ただ、JALやANAと提携関係にあるエアラインは、契約上の問題で自社の一存で撤退するわけにはいきませんし、将来の羽田の発着枠の拡大をにらむと、今ここでフェイドアウトの決断をするのは難しい。今回の値上げで即撤退や運休を決めるエアラインが出てくることはないと思いますが、このままサーチャージが高い水準にとどまれば、前述したように、羽田がメインターゲットにしている企業の海外出張者の数も減少します。苦しい状況になることは間違いないでしょう。逆に、値上げをしない、あるいはしても小額の中東系航空会社は有利になるかもしれません」  また、今回の値上げで打撃をこうむるのは、航空会社よりも観光業界全体だと竹内氏は予測する。 「今年は稼ぎ時のゴールデンウィークが震災の影響で低調でしたので、ホテルや旅館はなんとか夏休みで盛り返したいと考えていたはず。今回の値上げで出鼻をくじかれた感は否めません。震災で激減した中国人旅行者が最近になってようやく戻ってきたといわれていましたが、彼らの旅行形態は大半が極めて低価格のパックツアー。6,000円、7,000円の値上げは正直痛い。観光業界としては間違いなく逆風でしょう」  原油価格が上がればチケットの値段も上昇し、震災やテロが起これば不安感から利用者は激減する。一見、華やかに見える航空業界が、実は極めて不確かな要素に左右される"水商売"的なビジネスである実態が、今回の値上げであらためて露呈したと言えるだろう。 (文=浮島さとし)
ラジコン飛行機を始めるための本 もう自分で飛ばすしかない。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 HISとスカイマークが"貧乏人"相手の商売から脱却! ホントにできるの? 専門家が分析する「スカイマーク国際線進出」の可能性 ほんとにありそう!? 航空業界の群像劇『ハッピーフライト』

日本企業は海外でセクハラし放題! コンプライアンスはどうなってる !?

nomura0405_01.jpg
野村総研上海支社がある
「嘉華中心」ビル(中国上海)。
 当サイトで報じて、多くの反響を呼んだ「野村総研強制わいせつ事件」(http://www.cyzo.com/2011/04/post_6960.html)。その卑劣さに憤慨する向きがある一方で、このようなケースは氷山の一角であり、日本企業での、特に海外におけるわいせつ事件やセクハラ事件は表沙汰にならないものが多いとの指摘もあった。そこで今回は、そうした事情に詳しい人々に集まってもらい、知られざる日本企業の破廉恥な内情を語ってもらった――。 ■参加者 A氏 元テレビ番組制作会社プロデューサー B氏 労働法の実務専門家 C氏 コンプライアンス遵守のためのコンサルティング会社経営 D氏 ブランド防衛のコンサルティング会社経営 進行 浮島さとし(フリーライター) ――最初に皆さんの自己紹介をお願いします。 A もともと、某大手テレビ局関連の番組制作をしていました。そこでセクハラ問題の番組を取り扱ったこともあります。 B 労働法の実務を専門にしていまして、最近は中国など海外からの相談が増えています。 C 日本企業のコンプライアンス遵守におけるコンサルティングをしています。海外では、不正会計や使い込みの摘発などの案件が多いです。 D 企業防衛等を専門的に扱うマーケティングコンサルティング会社を経営しています。企業側が不祥事に対し、どう対応すべきかを専門的に対応していますが、不祥事に際しては、あくまで事実を開示して、正しく加害者を処罰して被害者を救済し、会社のリスクを軽減するべきという立場をとっています。 ――今日のテーマは「日本企業は海外でセクハラし放題! コンプライアンスは一体どうなってんだ!?」というものです。日本企業の海外でのセクハラはそんなに常態化しているのでしょうか? 今、私の手元に知人の中国通の女性記者が、周りの女性から相談を受けてまとめた事例集があります。主に日本企業の中国での事例ですが、これを元にお話を伺っていきたいと思います。まず、最初はこれです。 「社内の忘年会で男性社員が『この中で誰のチン○が大きいと思う?』とか、下ネタを連発して部下の女性たちに迫ってくる」。 一同 あぁ、これはよくある。 D 日本でもありますね。ただ、日本では男女雇用機会均等法があるから、会社が介入せざるを得ない。仮に会社がまともに対応しなければ、厚労省の雇用均等室が会社への指導に乗り出すという流れですね。 B 日本だとそうなんですが、これって海外での話でしょ? 均等法って海外適用がないから、厚労省も法的な権限がなくて手が出せない。そうすると窓口は社内の「セクハラ通報窓口」ぐらいしかないんだけど、そこに通報すると確実に隠蔽される。だから常態化するんでしょうね。 A 僕なんて、ちょっと前に上海へ「○○○○(大手商社)」の役員と一緒に行ったら、接待という名目でホテルのスイートを貸し切って、裸のおねーちゃんをはべらしてパーティーやってたからね。それから考えたら、これぐらいしょっちゅう起きてる話だね。 ――次の事例です。 「会社の取引先に食事を伴っての会合と言われて行くと、なぜか社交ダンスを踊る場所があった。すると、取引先のオッサンがダンスを踊ろうと抱きついてくる。誰も止めてくれず、尻や胸を触られまくった」 D 上司に言っても重要取引先のお偉いさんだからと、なあなあにされるんですよね。 ――他にも、こんなのがあります。 「男性の上司が、いわゆる現地妻を同伴して、取引先が出席する会合に堂々と出てくる。どう反応していいのか分からない。そんなことが日常茶飯事」だと。 B これも中国ではしょっちゅうですね。 nomura0405_02.jpg C 難しいですよね、愛人を作っているだけなら、モラルの問題はあるけれど刑事罰になるわけじゃないから。法的に違法とまでは言えない。 D ですね。中国のカラオケバーって、日本でいうキャバクラだったりして、売春する女性もいるんだけど、そこで愛人を作るのは本当によくある話。売春は非合法だけど、愛人として付き合うなら刑事罰とまでは言えない。ただ、女性も含めて社員も出席するような場、ましてや取引先も出席する公の場にまで同伴させるってのは、常識の範疇を超えているとは思いますけどね。 ――他にも、愛人がらみではこんなのもあります。 「男性の上司が中国人の愛人との間に子どもをもうけた。その問題解決のために部下の中国語の堪能な日本人女性に『愛人と和解交渉をやれ』と通訳させて交渉させる。なんで、あたしがこんなことをしなきゃいけないんだ」という事例。 A もう、平然とそんなことを言ってる状況なんだよね。隠そうともしない。 B でも、これぐらいなら海外だと「セクハラ」と認定されない。 ――では、コンプラ遵守を指導すべき企業側はどんな対応をしているのでしょうか。今回、日刊サイゾーで報じた野村総研の事例についてご意見を伺えますか。 A これについては、隠蔽しようとした証拠も残っているし、加害者を処分していない。「事実ではない」と言ったり、証拠を出されると「会社は関係ない」と言ったり。終いには弁護士を使って被害者に脅迫的対応でしょ。企業の対応としては最悪の部類ですね。こういう企業がコンプライアンス遵守だとか内部統制だとか言いながら、日本最大のシンクタンクとして仕事をしているのが現状なんですよね。 C もはや謝罪するタイミングも逃しているし、事態が沈静化するのを待っているだけでしょう。 D 厚労省の出しているセクハラ対策の指針というのがあって、セクハラ問題が起きた際には、企業は被害者女性も含めて直接面談で対応するのが望ましいとされている。今回、野村総研はどういう対応をしているんですか。 ――今回、野村総研は直接面談はとらず、M法律事務所のT弁護士を「外部の客観的な弁護士」として出していて、被害者女性にも「代理人を通さずに自分で直接相談してください。また、会社にではなく、こちらの指定する弁護士に言ってください、これは野村総研の人事部の規定です」と対応していたようです。 A 「代理人を使うな」ってのもナメてますね(笑)。でも、言われたほうも、素人だと「そういうものなのか」と思ってしまいますよね。 ●事件をもみ消す"裏マニュアル"の存在とは D 確かに、厚労省の指導内容に「コンプラ遵守の相談先を外部の客観的な立場の法律事務所にする」なんてのもあるんだけど、実際には法律事務所と企業が結託していることが多い。まともに機能していませんからね。それを裏マニュアル化していますね。 B 特に海外で起こった案件では、厚労省も動いてくれませんしね。強制わいせつ罪は法的には海外適用があるけど、現実には海外だと日本の警察は捜査ができないので、被害相談があってもなかなか立件できない。実際、今回の野村総研の事件でも、厚生労働省に相談しても海外だからという理由で対応してくれなかったようです。そうすると会社しか動けないけれど、野村総研のように多くの会社は隠蔽に走り、かつ若い女性よりも重鎮の人間のほうが社内の政治力もあるから保護してしまう。 ――現地の警察は動いてくれませんか? B まず無理ですね。今回の例で言えば、中国の警察としては日本人同士のトラブルには介入しにくいんですよ。日本企業とモメたくないし、言葉の問題もあるから捜査もしにくい。そこで、現地の警察ではできる限り外人同士のトラブルには介入しないよう通達が出ている現実があります。それが、日本企業が逃げ道に使う裏マニュアルのひとつとして使われるわけです。 ――裏マニュアルと呼ばれる企業の手口には、他にどんなものがあるのでしょう。 B 悪質な日本の大手シンクタンクや外資系コンサルでも使われている手口でこんなものもあります。被害者の女性社員に「精神的なケアをする」と言って、会社お抱えの産業医に診断をさせる。実際、産業医のサポートをつけることは、残業が多いとか、セクハラ問題があった場合には厚労省も指導している方法なんです。ところが、実際にはこの産業医が会社とグルになっている。 A 産業医という存在は意外に一般に知られていませんが、セクハラ問題で産業医が絡んでいるケースは少なくないんです。もちろん、すべてではありませんが。 B そうなんです。で、産業医は女性を「統合失調症だ」などと診断して、本当に精神病院へ入院させて「治療」する。これで隠蔽が完了というわけです。これをやられると、警察や弁護士が被害者女性に面会を希望しても、医師の診断書を出されて「治療中」とされたら手も足も出ない。かといって他の医者が、後から診断して診断書を再度書いてくれるかというと、同業他者の診断にケチをつけるのも大変ですし、産業医も他の医者の介入を認めないので、救出は簡単ではない。しかも、その後に治療しても自殺しても、保険が使えるから会社のお金は痛まないという手口です。 D 恐ろしいけど、そういう事実はありますね。産業医を派遣する専門の会社まであるほどです。確かに、入院後に抗うつ剤を「治療」として大量に投薬すれば、抗うつ剤って麻薬と同じように薬が効いているときと切れているときで態度が大きく変わるから、誰が見てもおかしく見える。そうすると診断は正しいと。おまけに、その後は被害者女性は自殺するケースが多いから、そうなれば完全に事実は隠蔽される。 ――となると、海外だけではなく国内で受けたセクハラ行為にも制度が対応しきれていないことになります。被害を受けて悩んでいる方はどうしたらいいでしょうか。 B まず、一人で絶対に悩まないことですね。別に弁護士でなくてもいいから、友人などに相談しまくりましょう。そうすると、第三者の客観的な観点で、協力してくれる人が出てきます。すると、監督省庁も警察も急に動きやすくなるんです。そして、より詳しい人に相談が行くようになり、助けてくれる人が増える。被害者本人だけだと、男女の被害は客観的な証明が難しくて動きにくいんですよね。 ――その上で具体的な対策は? B 証拠を確保することです。第三者の証言でもいいですが、できれば発言を録音するとか、録画しておくとか。今はボイスレコーダーやカメラなどが進歩していますから。 D 一人だと精神的にも辛いし、多くの女性は、相手の弁護士から「言いふらせば名誉毀損で法的措置を取る」などと言われて黙ってしまう。でも、まず知ってほしいのは、友達に相談するだけで名誉毀損になるなんて、まずないということ。だから、少しでも頼れる人がいればどんどんと相談する。その中で社内外に味方の輪を広げていくのがいい。 C とはいっても、企業としてもセクハラ通報窓口に来る全ての相談を鵜呑みにできるかというと、それはできない。やっぱり、実際にはおかしなクレームも来るわけで。そのたびに男性社員を飛ばすことはできないよね。 A そりゃあそうでしょう。悪用している会社ばかりではないですし。 B 最近は、被害者は女性だけじゃなくて、男性も多いんですよ。男同士で海外出張に行ったら上司のオッサンが豹変して......なんていうケースが増えています、これ本当に。警察に駆け込んでも助けてくれないのは女性と一緒です。 D そういう話はほとんど表に出てこないですねぇ......。いずれにせよ、海外に赴任している人には「セクハラ天国なんだから俺もやっちゃえ」なんて思わないでほしいですね。軽く考えていると証拠を取られて、報道もされて、強烈なパンチを食らう。 C 確かにメディアにリークするという手もありそうですが。 ●隠蔽工作に大手広告代理店も大活躍!? A でも、テレビ業界にいた立場で言わせてもらうと、報道する側に対しても圧力はあるからね。例えば、「○○○○(大手広告代理店)」はキー局の株主になってたりするので、報道を止めようと思えば大量に出稿している顧客企業から電話一本で止められてしまうこともある。 D 怖い例を言うと、「××××(大手流通会社)」という会社は、昔は大手広告代理店の「■■■■」と組んで、セクハラ事件が起きると被害者女性の家のまわりに暴力団員らしき男をたむろさせたり、女性を助けようとする友人が現れると、その友人が麻薬をやっているとか脱税しているとか噂を広げるという裏マニュアルを使うんだけど、書いた記者に対しても仕掛けてくる場合があるから、気をつけたほうがいいですよ。 B とにかく、週刊紙やテレビのような大手メディアもいいけど、一部のネットメディアも火がつけば拡散して世論が動く可能性もある。ニュースバリューがあることが分かるように粘り強く説得すれば、どこかが載せてくれます。 D 今回はサイゾーが報じてくれたけど、実は「□□□□(某週刊誌)」とか、「■■■■(某テレビ局)」とか、メジャーどころもいくつか取材はしてくれたんだよね。 C まだ出てないですよね。 D あるメディアは「登場人物が有名じゃないからネタにするのは難しい」って。あと、はっきり言わなかったけど、会社同士のしがらみも一部あったようです。たしかにマスコミも慈善事業ではないし、部数や視聴率といった数字も無視はできない。公共性があるとはいっても、ある意味での大人の関係もあるだろうし。 A ただ、「大人の関係」ということで言えば、対抗する側はその「大人の関係」を逆手にとって攻撃する戦略もあるわけですよ。いわゆる裏マニュアルに対抗する裏マニュアルということで、非常に高度な戦いにはなりますけど。そこらは専門のBさんに相談するなりして。 D あと、メジャー誌の記者が言ってたのは、舞台が上海ということで「取材費用が出ない」って。今どこも経営が大変だから。今回は記者さんが上海まで行って関係者数人と会ってるんですが、採算的には赤字でしょうね。 A 考えてみたら、こんな座談会もメジャー誌では記事化されないか。あ、それはそれとして、今日ここで出た代理店とか商社の企業名は伏字にしておいてね。やばいから(笑)。
壊れる男たち―セクハラはなぜ繰り返されるのか ナゼナゼ? amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 続報!「野村総研強制わいせつ事件」で内部リークが続出! スクープ! 野村総研の経営陣に強制わいせつ疑惑! 担当弁護士にも懲戒請求が出されるドタバタ劇 「武富士」破たんはこれからが正念場 創業一族=武井家の責任を追及する緊急集会が開催