2011年12月にオープンした「代官山蔦屋書店」は、“オトナのTSUTAYA”を謳った落ち着いたデザインで人気のスポット。店内には専門のコンシェルジュやiPadを配し、併設したカフェやラウンジでゆったりと書籍や雑誌のバックナンバーを選ぶことができるなど、顧客本位のサービスで注目を集めている。だが意外なことに、代官山店が行っているあるレンタルサービスに対して、映画関係者のひとりが疑問を投げ掛けている。同店では60歳以上のシニアを対象に、新作・旧作を含めてDVDの無料レンタルサービスを3月19日から4月末までの期間限定で行い、好評を博したことから5月末まで同サービスを延期している。この気前のいいサービスが問題なのだという。 「60歳以上のシニア層にもっとDVDレンタルを利用してもらうためのサービスだそうですが、新作の無料レンタルはどうかと思います。おじいちゃんやおばあちゃんに頼めば、誰でも新作映画を無料で鑑賞できるんです。TSUTAYAは代官山店だけでなく、この無料レンタルを全国的に展開するつもりじゃないですか。今は劇場公開から4カ月待てば話題の映画もDVD化されるわけですが、4カ月待てば、映画は無料で観ることができるという風潮が広まると問題です。TSUTAYAが家の近所にある人は、映画館に足を運ばなくなってしまいます。旧作ならともかく、新作まで無料で貸し出すのはやりすぎですよ」(映画関係者) 100円レンタルを上回る無料レンタルとはユーザーにとってはおいしいサービスだが、そのソフトを製作・供給する側としては死活問題だという。前述の映画関係者は、TSUYAYAを全国展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)社の姿勢に疑問を感じているようだ。 「CCC社は映画会社に対して事前に説明したり、許諾を求めることなく、無料レンタルサービスを無断で始めているんです。関東エリアで4月から100円レンタルを始めたときも断りなしで始めたんですが、メジャー系の映画会社が『やりすぎじゃないか』とクレームを付けたところ、ようやくその会社に対してのみ説明を行ったという対応の仕方なんです。映画には著作権があるわけで、著作権を持つ映画製作会社に無断で無料レンタルをやることは問題があるように思う。TSUTAYA側が買取ったソフトなら無料レンタルでもいいでしょうけど、収益に応じて分配するPPT(pay per transaction)方式の場合は無料で貸し出すと監督印税、脚本印税も含めて著作権料が支払われないことになるわけです。映画というのは俳優たちを数カ月も拘束し、多くのスタッフが汗を流し、数億円の大金を投じて作り上げたもの。現場の苦労を無視するかのように無料で貸し出してしまうのは、映画に対してあまりにも愛がない行為ですよ」(同) 5月23日、TSUTAYA広報に代官山店で行われている無料レンタルサービスについて電話で問い合わせてみた。 「TSUTAYAが1,000店舗以上ある中での、1店舗だけでの限定サービスということで理解してほしい。代官山店はTSUTAYAの中でも例外的な店舗でもあります。今回の無料レンタルサービスをほかの店舗で行うことは予定されていません。また、無料レンタルサービスを永続的に行うことはありえません。レンタル事業を生業としているのですから、自分たちの収益にならないようなことはしませんよ。今回の無料レンタルサービスはあくまで、DVDレンタルを楽しむ機会の少ないシニア層の方たちに、もっと映画などのソフトを気軽に楽しんでもらおうという主旨のもの。映画文化の興隆に役立ちたいというのが私どもの考えです」(TSUTAYA広報) DVDの無料レンタルは映画の著作権を侵害するものだろうか? 映像ソフトに関する取り決めを扱う団体「日本映像ソフト協会」に尋ねてみた。 「レンタル店の料金設定はレンタル事業者の経営努力次第によるものなので、メーカー側がレンタル料金を規制することは独禁法に触れることになり、それはできません。ただし、メーカー側とレンタル事業者側がどのような契約を交わしているかではないでしょうか。その契約に“無料で貸し出してはいけない”とあれば、許諾なしで無料レンタルすることには問題があるでしょう。PPT方式のソフトを永続的に無料で貸し出せば、製作者側に著作権料が支払われないことになるので問題が生じるかと思いますが、なんらかの形で製作者側に著作権料が支払われていれば問題ないはず。期間限定での無料レンタルということなら、すぐさま著作権の侵害に当たることにはならないでしょう」 「日本映像ソフト協会」の見解としては、期間限定での無料レンタルは法的には問題ないらしい。とはいっても、TSUTAYAとPPT方式でレンタル契約を結んでいる映画会社に支払われる著作権料が減ることは確かだろう。映画業界に対して断りなしで無料レンタルを始めたTSUTAYA側の独断的なやり方が問題のようだ。レンタル業界に詳しい人物に話を聞いてみた。 「TSUTAYAは業界1位の座を競り合うGEOと合わせて、レンタル市場のシェアの7割を占めるまでになっています。TSUTAYAの機嫌をそこねるとソフトを仕入れてもらえなくなるので、映画業界はTSUTAYAに対して強く発言することができないんです。2011年に一部上場をやめたことも大きいんじゃないですか。巨額の予算を投じた代官山プロジェクトや無料レンタルサービスなど利益に直接結びつかないことは株主に反対されていたはず。一部上場をやめてからは、株主の声を気にしなくていいので、TSUTAYAの自由度がかなり高まっているように感じられますね」 Tカードによるポイントビジネスも好調で、中高年層の取り込みに成功したT会員数は今や4,000万人を突破。CCCグループの2011年3月期の売上高は1,687億円に達している。2011年度の日本映画界全体の年間興収が1,811億円だから、TSUTAYAの存在がどれだけ大きいかが分かる。しかし、TSUTAYA広報の「映画文化の興隆に役立ちたい」というコメントを信じれば、TSUTAYAがソフトを提供する映画業界を軽んじるようなことはないのではないか。 この記事をまとめている5月25日の時点で新しい事実が分かった。TSUTAYAの桜新町店でも60歳以上の無料レンタルサービスが5月からすでに始まっており、6月9日まで行うことが同店に足を運ぶことで確認できた。先日のTSUTAYA広報の電話での説明は一体なんだったんだろうか?『代官山オトナTSUTAYA計画』(復刊ドッ
トコム)
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ブラックなのは居酒屋だけじゃない! 「ワタミの介護」元職員が労災申請拒否を告発

『社長 渡邉美樹』(ポニーキャニオン)
2008年、居酒屋チェーンのワタミフードサービス社員の女性が、入社2カ月後に自殺したのは「長時間労働による精神障害」によるものだったとして、約4年越しに労災認定された。
ところがワタミ側は「(労災認定は)当社の認識と異なっておりますので、今回の決定は遺憾」と回答。さらに同社の渡辺美樹会長も、Twitter上で「ワタミは天地神妙に誓ってブラック企業ではありません」と発言するなど、女性社員の死に関し、あくまで自らの非を認めない構えだ。
そんな中、ワタミグループの新たなブラック事情を告発する声が、記者の元に届いた。
「私も労災の申請を認めてもらえませんでした」
そう話すのは、同社のグループ企業のひとつ 「ワタミの介護」が運営する関東の老人ホーム施設で、昨年末まで勤務していた20代の女性介護福祉士だ。
「私の場合、残業は月に30時間程度でしたが、残業代は一切もらっていません。うちのグループでは施設ごとに厳しい収益ノルマが課せられていて、職員全員で経費軽減に取り組んでいました。そんな中、残業の申告などできない雰囲気。入社半年弱だった私にとってはなおさらでした」(女性介護福祉士)
彼女によると、1日12時間の肉体労働で月収は手取りで17万円ほど。それでいて業務内容は、肉体労働を極め、入浴サービス時の男性利用者からセクハラや肛門に指を突っ込んで排便させる摘便などにも耐えなければならない過酷なもの。こうした労働環境に耐えられず、同僚たちは次々と退職し、施設は慢性的な人手不足だったという。職員一人当たりにかかる負担が増大する中、彼女は腰痛を発症してしまう。
医者の勧めもあり、彼女は休養を申し出るが、 上司に「うちにそんな余裕がないのはあなたも分かっているでしょう」と一蹴されたという。彼女は仕方なく、無理を押して1カ月ほど勤務を続けるが、ベッドから自力で起き上がれないほどに症状は悪化。ついに退職を決意した。
「退職後は、労災の療養給付を利用して通院を続けるつもりでした。しかし、上司は『腰痛なんて我々の職業病みたいなもの。こんなものにいちいちハンを押していられない』と、何度頼んでも労災申請に必要な書類を用意してくれなかったんです。結局、私は労災の申請をあきらめ、実家に身を寄せて自費で療養するしかなかった」(女性介護福祉士)
腰痛は今でも完治せず、再就職もままならないという彼女は、なけなしの貯金を削りながら通院を続けている。こんな環境では、渡辺会長が「会社の存在目的の第一」とする社員の幸せはおろか、利用者の満足いく介護サービスなど、実現できるはずもない......。
(文=牧野源)
"逃亡中"のある獣医師が今も元気に勤務できる理由とは?
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勤務獣医師のための臨床テクニック―必ず身につけるべき基本手技30
スキャンダルの潰し方もね。

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とんでもない獣医師がいたものである。部下である複数の女性スタッフに長年にわたりセクハラ行為を続け、被害を受けた女性らから関係者を通して抗議を受けると、逆恨みに暴力団を名乗る男に依頼して脅迫電話をかけ続けさせ、挙句の果てには勤務先のレジから現金数十万円を盗んで逃走。その後も逮捕されることなく、獣医紹介会社を通して群馬県の大手ペットショップ「P」に潜り込み、今も普通に獣医として働いているという。 「P」に100%出資をしている流通大手の「イオン」は、「当社と直接雇用契約にあるわけでもないのでコメントする立場にない。今後も対応する考えもない」(広報部)とまるで無関心。「P」の店長も「上層部に相談はしていますので、その返事待ち」と実に呑気だ。コンプライアンスを語る以前の異常なこの事件。犯罪的行為を繰り返してきたと告発されてきた獣医師は、なぜ今も捕まらずに野放し状態にあるのか。 事件が最初に表面化したのは5~6年ほど前。静岡県の某動物病院で働いていた獣医師のY(56歳)は、わかっているだけで4人の女性スタッフにセクハラや強制わいせつ行為を繰り返してきた。被害にあった女性たちがその様子を次々に証言する。 「ニ人きりになると、近づいてきて、『俺はパイプカットしているから生でやっても大丈夫だ』『一回くらいやらせろ』と毎日のように言われた」(Aさん) 「後ろからいきなり抱きついたり、胸を揉まれたり、何度も体を触られた」(Bさん) 「夜中に家までやって来られ、『これから飲みに行こう、ホテルはとってある』とわけのわからないことを言われ、断ってもなかなか帰ってくれなかった」(Cさん) これだけでも信じがたい話だが、それだけではない。Y獣医師は静岡県の動物病院を辞した後の2010年夏、神奈川県で新規オープンする動物病院へ院長として雇われる形で赴任。若手スタッフらとオープン準備に携わる中で、ここでも早々から複数の女性スタッフに強制わいせつ行為を行っていた。被害者女性の一人が言う。 「毎日のように性行為を迫られ、あるとき刃物を持って『やらせてよ』と迫られたときに、本気で命の危険を感じて、それで初めてオーナーに相談したんです」 相談を受けた動物病院オーナーが驚いて本人を呼んで確認したところ、自らの行状をあっけなく自供。涙を流して「もうしません」「一からやり直す」と謝罪。ところが、その"号泣謝罪"の数時間後に、地元の警察署へ駈け込んで「勤務先のオーナーからいきなり殴られた!」とデタラメの被害届を出していたことが後に判明。さらに、告発した女性に逆恨みをしたY獣医師は、暴力団を名乗る60代の男に依頼し、女性の携帯電話や自宅に電話をかけさせ、「若い衆を連れてそっちへ行く」「このままでは済まねえぞ」などの脅迫行為を執拗に繰り返した。女性はこれが理由で精神的に不安定になり、手紙を残して動物医院を退職している。 理解不能な奇行を続けるY獣医師に対し、たまりかねたオーナーが厳しく叱責。すると、その数日後の2011年12月、Y獣医師は深夜に動物医院に忍び込むと、現金数十万円を盗んで姿をくらましてしまったのである。 次々に問題を起こしたY獣医師は、世間の目から逃れて永遠の逃亡生活へ......と思いきや、なんと獣医師紹介会社を通して、群馬県の大手ペットショップに何食わぬ顔をして今年1月から勤務していたことが判明した。高崎のショッピングセンター内にある「P」だ。Pの本体は、北海道や東京、愛知、三重、岡山などにも店舗を持ち、動物病院やペット用品の販売などを展開する総合ペットショップ。イオンのディベロッパー事業部の運営下にあり、資本金の3億円は全額がイオンからの出資となっている。 イオン本社にこれまでのY獣医師の行状を説明した上で見解を求めたところ、返ってきたのが冒頭の回答。事実関係の今後の究明や対応についても「考えていない」(広報部)。また、「Y獣医師は紹介会社を通しているので、もし言うことがあるならそちら(紹介会社)へ言ったらどうか」(同)としながらも、紹介会社の名前は「取引先なので言えない」と回答。最後に、今回の回答を電話でなく文書かメールでと求めたが、それも「できない」と拒否。「とにかくコメントはできない」を繰り返した。 一方、実際に勤務しているペットショップの対応だが、イオン本社へ連絡した数日後に勤務先の「P」へ問い合わせたところ、「イオン本社からは何も聞いてない」(店長)と驚いた様子を見せ、「とにかく上司に相談する」と回答したものの、それから半月後の1月下旬に再度問い合わせると、「特に変わりはありませんよ。上層部には相談したので、あとは判断待ち」「Yさんは今日も普通に働いていますよ」と実に呑気。「そちらの女性スタッフが心配ではないのですか?」との問いにも「大丈夫でしょう(笑)」と深刻さをまるで理解していない様子だった。 イオンやペットショップの今回の対応について、企業の危機管理を専門にする某コンサルタントは「あってはならない。信じられない」とあきれ返る。 「イオン系のペットショップで働く前の犯罪的行為なので責任がないと言いたいのでしょうが、認識が甘すぎます。今回の取材に対して、事実確認も含め、なんら対応しないということは、被害拡大の可能性を認知しながら放置することを意味します。イオン本社はショップに連絡すらしていないし、ショップも本人を問い詰めるなどの調査をしていない」 また、善良なる企業としての注意義務である「善管注意義務違反」に問われる可能性も指摘する。 「コンプライアンス重視の世の中で、今は裁判所が企業の善管注意義務に厳しくなっていますから、法的にも大きな問題に発展する可能性もありそうです。特に今回は、暴力団を名乗る男が脅迫行為をしていますから、暴力団排除条例の責任も問われかねません。イオンは今回、法務部や総務部ではなくて広報が最後まで対応しているようなので、その点でも危機意識の薄さを感じますね」 一方、犯罪を取り締まるべき警察は何をしているのだろうか。実は、被害者女性の一人は昨年秋、神奈川県警の港南警察署に電話の録音記録などを持参して相談に行ったが、「証拠が不十分」などの理由で対応してもらえていない。また、女性の今の住所地が他県であることで、「個人案件は住所地の所轄の警察が対応せよという警察内部の通達がある」(司法関係者)との、お役所の手続き上の事情が障害になっていると指摘する声もある。女性の相談を受けてきた友人の一人が吐き捨てるように言う。 「通達とか責任とか手続きとか、どうでもいい。実際に女性が性犯罪の被害を受け、暴力団を名乗る男から脅かされて心を病んで今も職に就けていないのに、警察も企業も『うちは責任ない』で誰ひとり助けようと動かない。こんな世の中狂ってますよ」 諸悪の根源が罪を犯した獣医師であることはもちろんだが、関係機関の一人ひとりが責任逃れをし続けた結果、当の犯人は今も群馬で野放しである。被害者を支援する者の一部は警察への相談を続けながら、今後はイオンの対応へ批判を強めたいとしている。 (文=浮島さとし)
"逃亡中"のある獣医師が今も元気に勤務できる理由とは?
とんでもない獣医師がいたものである。部下である複数の女性スタッフに長年にわたりセクハラ行為を続け、被害を受けた女性らから関係者を通して抗議を受けると、逆恨みに暴力団を名乗る男に依頼して脅迫電話をかけ続けさせ、挙句の果てには勤務先のレジから現金数十万円を盗んで逃走。その後も逮捕されることなく、獣医紹介会社を通して群馬県の大手ペットショップ「P」に潜り込み、今も普通に獣医として働いているという。
「P」に100%出資をしている流通大手の「イオン」は、「当社と直接雇用契約にあるわけでもないのでコメントする立場にない。今後も対応する考えもない」(広報部)とまるで無関心。「P」の店長も「上層部に相談はしていますので、その返事待ち」と実に呑気だ。コンプライアンスを語る以前の異常なこの事件。犯罪的行為を繰り返してきたと告発されてきた獣医師は、なぜ今も捕まらずに野放し状態にあるのか。
事件が最初に表面化したのは5~6年ほど前。静岡県の某動物病院で働いていた獣医師のY(56歳)は、わかっているだけで4人の女性スタッフにセクハラや強制わいせつ行為を繰り返してきた。被害にあった女性たちがその様子を次々に証言する。
「ニ人きりになると、近づいてきて、『俺はパイプカットしているから生でやっても大丈夫だ』『一回くらいやらせろ』と毎日のように言われた」(Aさん)
「後ろからいきなり抱きついたり、胸を揉まれたり、何度も体を触られた」(Bさん)
「夜中に家までやって来られ、『これから飲みに行こう、ホテルはとってある』とわけのわからないことを言われ、断ってもなかなか帰ってくれなかった」(Cさん)
これだけでも信じがたい話だが、それだけではない。Y獣医師は静岡県の動物病院を辞した後の2010年夏、神奈川県で新規オープンする動物病院へ院長として雇われる形で赴任。若手スタッフらとオープン準備に携わる中で、ここでも早々から複数の女性スタッフに強制わいせつ行為を行っていた。被害者女性の一人が言う。
「毎日のように性行為を迫られ、あるとき刃物を持って『やらせてよ』と迫られたときに、本気で命の危険を感じて、それで初めてオーナーに相談したんです」
相談を受けた動物病院オーナーが驚いて本人を呼んで確認したところ、自らの行状をあっけなく自供。涙を流して「もうしません」「一からやり直す」と謝罪。ところが、その"号泣謝罪"の数時間後に、地元の警察署へ駈け込んで「勤務先のオーナーからいきなり殴られた!」とデタラメの被害届を出していたことが後に判明。さらに、告発した女性に逆恨みをしたY獣医師は、暴力団を名乗る60代の男に依頼し、女性の携帯電話や自宅に電話をかけさせ、「若い衆を連れてそっちへ行く」「このままでは済まねえぞ」などの脅迫行為を執拗に繰り返した。女性はこれが理由で精神的に不安定になり、手紙を残して動物医院を退職している。
理解不能な奇行を続けるY獣医師に対し、たまりかねたオーナーが厳しく叱責。すると、その数日後の2011年12月、Y獣医師は深夜に動物医院に忍び込むと、現金数十万円を盗んで姿をくらましてしまったのである。
次々に問題を起こしたY獣医師は、世間の目から逃れて永遠の逃亡生活へ......と思いきや、なんと獣医師紹介会社を通して、群馬県の大手ペットショップに何食わぬ顔をして今年1月から勤務していたことが判明した。高崎のショッピングセンター内にある「P」だ。Pの本体は、北海道や東京、愛知、三重、岡山などにも店舗を持ち、動物病院やペット用品の販売などを展開する総合ペットショップ。イオンのディベロッパー事業部の運営下にあり、資本金の3億円は全額がイオンからの出資となっている。
イオン本社にこれまでのY獣医師の行状を説明した上で見解を求めたところ、返ってきたのが冒頭の回答。事実関係の今後の究明や対応についても「考えていない」(広報部)。また、「Y獣医師は紹介会社を通しているので、もし言うことがあるならそちら(紹介会社)へ言ったらどうか」(同)としながらも、紹介会社の名前は「取引先なので言えない」と回答。最後に、今回の回答を電話でなく文書かメールでと求めたが、それも「できない」と拒否。「とにかくコメントはできない」を繰り返した。
一方、実際に勤務しているペットショップの対応だが、イオン本社へ連絡した数日後に勤務先の「P」へ問い合わせたところ、「イオン本社からは何も聞いてない」(店長)と驚いた様子を見せ、「とにかく上司に相談する」と回答したものの、それから半月後の1月下旬に再度問い合わせると、「特に変わりはありませんよ。上層部には相談したので、あとは判断待ち」「Yさんは今日も普通に働いていますよ」と実に呑気。「そちらの女性スタッフが心配ではないのですか?」との問いにも「大丈夫でしょう(笑)」と深刻さをまるで理解していない様子だった。
イオンやペットショップの今回の対応について、企業の危機管理を専門にする某コンサルタントは「あってはならない。信じられない」とあきれ返る。
「イオン系のペットショップで働く前の犯罪的行為なので責任がないと言いたいのでしょうが、認識が甘すぎます。今回の取材に対して、事実確認も含め、なんら対応しないということは、被害拡大の可能性を認知しながら放置することを意味します。イオン本社はショップに連絡すらしていないし、ショップも本人を問い詰めるなどの調査をしていない」
また、善良なる企業としての注意義務である「善管注意義務違反」に問われる可能性も指摘する。
「コンプライアンス重視の世の中で、今は裁判所が企業の善管注意義務に厳しくなっていますから、法的にも大きな問題に発展する可能性もありそうです。特に今回は、暴力団を名乗る男が脅迫行為をしていますから、暴力団排除条例の責任も問われかねません。イオンは今回、法務部や総務部ではなくて広報が最後まで対応しているようなので、その点でも危機意識の薄さを感じますね」
一方、犯罪を取り締まるべき警察は何をしているのだろうか。実は、被害者女性の一人は昨年秋、神奈川県警の港南警察署に電話の録音記録などを持参して相談に行ったが、「証拠が不十分」などの理由で対応してもらえていない。また、女性の今の住所地が他県であることで、「個人案件は住所地の所轄の警察が対応せよという警察内部の通達がある」(司法関係者)との、お役所の手続き上の事情が障害になっていると指摘する声もある。女性の相談を受けてきた友人の一人が吐き捨てるように言う。
「通達とか責任とか手続きとか、どうでもいい。実際に女性が性犯罪の被害を受け、暴力団を名乗る男から脅かされて心を病んで今も職に就けていないのに、警察も企業も『うちは責任ない』で誰ひとり助けようと動かない。こんな世の中狂ってますよ」
諸悪の根源が罪を犯した獣医師であることはもちろんだが、関係機関の一人ひとりが責任逃れをし続けた結果、当の犯人は今も群馬で野放しである。被害者を支援する者の一部は警察への相談を続けながら、今後はイオンの対応へ批判を強めたいとしている。
(文=浮島さとし)
勤務獣医師のための臨床テクニック―必ず身につけるべき基本手技30
スキャンダルの潰し方もね。

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・続報! 幹部が強制わいせつ疑惑の野村総研が被害者女性を逆提訴!
・年間150億!「50年間発病ゼロ」狂犬病予防行政の実態は獣医師の利権確保?(前編)
航空専門誌『エアワールド』の竹内編集長に聞く 絶好調のJALにつきまとう不安要素とは?
戦後最大の倒産とまでいわれた日本航空(JAL)の会社更生法申請から2年。「堕ちた翼」とまで揶揄された倒産航空会社が、早くも業績を回復させてナショナルフラッグの威厳を取り戻しつつある。
JALが先ごろ発表した「5カ年中期経営計画」によれば、中心となって再建を進めてきた稲盛和夫会長が名誉会長に退き、会長職に大西賢前社長が、新社長にはパイロット出身の植木義晴氏が就任。前社長で「整備畑」出身の大西氏に続く二代続けての"現場上がり"の社長となる。JALといえば、これまで現場の空気を知らない「経理畑」や「総務畑」出身者が長らくトップを務める時代が続き、これが要因の一つとなって経営を破たんさせた。その意味で、実務型の"できる"人物を二代続けてトップに据えた稲盛前会長の人事を、「社内の士気を高める」(業界紙)と評価する声は多い。
JALは2012年3月期連結決算の業績予想を、従来予想より400億円引き上げて1,800億円と上方修正。これは全日空(ANA)のほぼ倍にあたる数字だ。業績回復の理由として「一つには徹底したコスト削減が実を結んだ」と言うのは、航空専門誌『エアワールド』の竹内修編集長だ。
「JALの社員が札幌へ出張するような場合、仮に自社の直行便が一般客で満席の場合は、今まではANAの便などを利用していました。ところが、今は自社便でいったん大阪などを経由して、それから札幌へ行くなどの節約をしているようです。また、整備スタッフが使っている軍手などの消耗品も、今までのようにすぐに捨てずに大事に使うなど、いわば涙ぐましいまでの節約を続けています。もちろん、格安航空会社のLCCでは既に当然のことなのですが、あのJALが2年でここまで節約概念を身につけたという点は評価されていいのではないでしょうか」
また、社内の風通しも、官僚的要素が強かった以前とは比較にならないほどよくなったという。
「大ヒットしたアニメ映画『けいおん!』にJAL本社が協力しており、劇中にも鶴丸のマークが描かれたJALの機体が登場しているんですが、この人気に便乗したJALの関連会社「ジャルパック」が、映画の舞台となったロンドンにからめて「『けいおん!』ロンドンJALパックツアー」を企画して人気を集めています。こうしたかつてのJALでは見られなかった横の連携と、チャンスを最大限に活かして利益を上げていこうという姿勢も、企業の体質が変化してきた表れの一つだと言えるのではないでしょうか」(竹内氏)
しかしその一方で、不安要素もあると竹内氏は言う。
「JALは燃料効率のいい次世代旅客機、ボーイング787(ドリームライナー)を積極的に活用することで、アメリカのサンディエゴやフィンランドのヘルシンキへの便を新たに開設するとしています。ヘルシンキは欧州便の中では比較的短い時間で行けることもあって、意外に人気が高い。その意味で路線の開設そのものはアリだと思うのですが、肝心な787に最近不具合が見つかりました。ボーイング社は問題ないとコメントしていますが、不安を感じている関係者は多いはずです」
また、787の引渡しの遅れには、最近起きた"ある事故"の影響を指摘する声もある。というのも、アメリカのボーイング社の工場で昨年、工員がJALに引き渡す予定の「787」にひかれ、足を切断する事故があったとの情報が流れたのだ。車の納車を大安に選ぶほど縁起を重んじる日本人にとって、こうした機体を引き取ることには抵抗があるはずだ。
事実、この事故との関連は不明ながら、JALは787の引き渡しが当初の予定から大幅に遅れて3月末以降にずれこむとの見通しを明らかにしている。当初のJALの計画では、3月末に「成田―モスクワ線」など3路線に787を就航させる予定だったが、これらについては引き渡しの遅れにより既に延期が決まっている。また、4月22日に新たに開設される新生JALの象徴路線とも言うべき「成田―ボストン線」にも、787の納入が間に合わないとさえウワサされている。
不安要素は787の納期だけではない。業績回復を追い風に9月をめどに目指す再上場についても、巨額の債権放棄を強いられた金融機関の抵抗感は決して小さくないはずだ。竹内氏が続ける。
「いくら業績が回復したといっても、5,800億円の債権放棄と3,500億円の公的資金導入の結果であることは間違いないですから。再上場となれば金融機関は大量の新株購入を求められるわけで、釈然としない銀行が出てくるのも当然です。場合によっては、これが原因で再上場の時期がずれ込むことも考えられそうです」
(文=浮島さとし)
AIR WORLD (エア ワールド) 2012年 03月号
世界の航空宇宙ニュース満載。

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隠ぺいの"家元"三菱自動車がアスベスト被害者遺族に口止め料か

三菱自動車工業株式会社HPより
「弊社の労働環境が原因で死亡されたことは認めますが、(労災補償とは別に)企業として補償することはできません。しかし、解決金をお支払いしますので、本件はここだけの話としていただけますでしょうか?」
今年10月、三菱自動車工業(以下、三菱自動車)本社の会議室で、同社人事部の社員からこう口封じを依頼されたA氏は、「リコール隠しで一時は倒産寸前まで追い込まれた隠ぺい体質が、まったく変わっていない」とあきれたという。
事の発端は2010年4月にさかのぼる。A氏の父親は、岡山県の自宅で咳き込み血を吐いたため、県内の病院に入院。当初は「肺炎か結核では」とみられたが、検査をしても原因が不明であったため、某医科大学付属病院に転院し精密検査を受診した。その結果、肺の「中皮腫」の疑いが高いことが判明した。
中皮腫とは、主に大量に吸引したアスベストなどが原因で肺の中皮が腫瘍化する病気で、アスベストを被曝してから発病までの潜伏期間は30~40年。そのため、発病時にはすでに広範囲に病巣が広がり、発病2年後の生存率がわずか20%という、根治が困難な病気である。
一時、社会問題化したアスベストであるが、正式名称は「石綿」と呼ばれる鉱石で、安価かつ耐久性に優れるため、「奇跡の鉱物」と重宝され、建築資材から自動車、家庭用品まで幅広く使用されてきた。特に、高度成長期を迎えた1960~70年代の日本で、急速な工業化とビルやマンションの建設ラッシュに伴い大量のアスベストが使用された。しかし、70年代中頃になると人体に甚大な悪影響があることが表面化し、75年には吹き付け材として使用することが原則禁止に。現在は、一部例外を除いて製造・使用が禁止されている。
高度成長期に被曝した人の潜伏期間が徐々に終わり始めた90年代以降、アスベストが原因と考えられる中皮腫や肺ガンによる死亡者数が急増、村山武彦氏(早稲田大教授)によると、中皮腫による国内の男性死者数は、「2030年頃には08年の5倍近い年間約4,500人になると推定される」(10年5月10日付け読売新聞)という。
A氏の父親は60年代に、三菱自動車の前身である三菱重工業・自動車部門(三菱自動車は、70年に同部門が独立し発足した)に入社し、以後、岡山県倉敷市の工場で金型成形作業などに長年従事していた。当時、同作業時に使用する養生シートにはアスベストが含まれていたとの情報を耳にしたA氏は、10年6月、倉敷労働基準監督署に父親の労災認定を申請。同年11月に父親は死亡したが、今年1月正式に「病気の原因は工場のアスベストである」と労災が認められた。
A氏はそれと並行して、労働基準監督署が認定する労災補償だけでなく、三菱自動車自らが公に非を認め、同社が被害者救済に乗り出すきっかけをつくるために、10年11月から同社に対し、被害者への企業補償を行うことを求めていた。しかし、今年1年にA氏が問い合わせるまでまったく音沙汰はなく、同月、ようやく同社から来た回答は、「弊社の役員に確認したところ、企業側には一切補償すべき責任はない」というものだった。
この回答は、法的に正当なのか?
「労働基準法上、業務を原因とする社員が受けた災害の補償は、労災認定による保険金の給付により、企業側は補償責任を免れることができます。しかし、アスベスト関連の災害のように、被害者が広範囲に及び、社会問題化し得るケースや、企業側に安全配慮義務違反の疑いがあるケースは、『労災』補償とは別に『企業』補償として、企業が被害者やその遺族に対し、補償金や弔慰金を支払うことがよくあります。例えばアスベスト災害では、JRや三菱重工業などが、元社員やその遺族に対する補償制度を整備し、対応を行っています」(労働問題に詳しい弁護士)
ちなみに、A氏の父親が務めていた前出の倉敷市の工場は、70年に三菱自動車として独立する前は三菱重工業・自動車部門の工場であった。そこでA氏は2月、三菱重工業に対して企業補償を求めたところ、同社内に補償制度が整備されていたこともあり、翌月にはあっさりと補償が認定。再度、三菱自動車へ交渉を申し入れた。
◆三菱自動車をきっかけに自動車業界とアスベストの関係があらわに!?
それに対する同社の対応が、冒頭のシーンである。A氏は語る。
「父は、治癒の可能性が極めて低いことを知りつつ、中皮腫特有の呼吸困難に最後まで苦しみながら、発病からわずか半年で死んでいきました。私の願いは、同社が自らの過ちを認め、同じような犠牲者がいれば、一刻も早く補償などの手を打つとともに、将来発病する可能性のある人に、早期検査を喚起するなどの対策を打ってほしいということです。にもかかわらず、まるで『口止め料を払うから黙っていてくれ』と言わんばかりの同社の対応には、正直怒りを覚えます。まずは同社がこの問題を公にし、広範にわたって適切に対応してもらうためには、どのような手段がより有効なのか、現在いろいろと検討しています」
前出の弁護士も、「同社の対応は、責任や原因をあいまいにしたまま遺族に金銭を支払うことで、内密にことを済ませようとしているように見受けられます。多数存在すると予想される、いまだ病気が潜伏期間中の被害者に対し、早期検査を呼びかけ、発病の抑制を図るべきではないでしょうか」と指摘する。【編註:本件の事実確認や今後の対応方針について三菱自動車広報部に取材を申し入れたところ、書面にて「弊社として、現時点でお答えできることはございません」との回答を受けた】
同社は00年、04年と立て続けに大規模なリコール隠しが発覚。以前より業績不振の同社を、財政的に支援していたダイムラー・クライスラーが支援を打ち切ったり、運輸省(現国交省)が道路運送車両法違反(虚偽報告)の罪で同社を刑事告発したりするなどし、一時は倒産の危機にまで陥ったことは、読者の記憶にも新しいところだろう。
それから約10年。前述の対応がもし本当であるならば、同社の隠ぺい体質はまったく変わっていないと言わざるを得ないであろう。
一方、自動車業界全体に目を転じると、アスベスト問題はあまり認知されていないのが現状だ。とはいえ、昨年10月、本田技研工業(以下、ホンダ自動車)子会社元社員が、「中皮腫を患ったのは勤務先工場で使用されていたアスベストが原因」として、ホンダ自動車に対し損害賠償を求め起こした裁判で、原告である元社員が勝訴。東京地裁は、「アスベストを使用した部品に、空気を吹き付けるといった、同工場内で行われていた清掃方法による粉じん飛散などが原因」として、ホンダ自動車に約5,000万円の賠償金支払いを命じた。
また、昨年2月、厚労省は「製品重量の0.1%を超える量のアスベストを含む製品を製造してはならない」という規制を自動車各社が遵守していないとして、書面にて法令順守徹底の要請を行っている。「幹線道路上の大気のアスベスト含有率の高さなどから考えても、規制以上のアスベストを含有したブレーキ周辺部品を使用した自動車が、ブレーキ摩擦によりアスベスト粉塵を大気中に拡散させながら、現在でも大量に走行している可能性がある」(民間リサーチ会社関係者)との声もある。
隠ぺいの"家元"三菱自動車の振る舞いが、こうした自動車業界とアスベストのただならぬ関係を、世間の目にさらすひとつの契機になるかもしれない。
(文=編集部)
あのわいせつ事件の名も! 世田谷区が「恫喝訴訟」防止に無関心な理由

「恫喝訴訟防止法案」の請願に対して、担当
課長が「必要性がない」との意思表明をした
世田谷区。
本サイトでたびたび報じてきた、いわゆる「野村総研強制わいせつ事件」(※記事参照)が、ここにきて新たな動きを見せている。同事件は、野村総研の上海副支社長(当時)が取引先企業の女性営業担当者に強制わいせつ行為を働きながら、野村総研側が、同問題を告発してきた被害者の支援者だけでなく、被害者女性に対して1,000万円の損害賠償を求める"逆ギレ訴訟"を起こしたというもの。
公判は18日に第4回目を迎えるが、これに先立つ11月14日、東京都の世田谷区議会に提出された「恫喝訴訟防止法案」の成立を求める請願が、この野村総研の"逆ギレ訴訟"を恫喝的な訴訟の象徴的な事例として挙げているのだ。区議会に請願を提出したのは、大手法律事務所と連携しながら各種案件の調査を専門に行っている証拠調査士の平塚俊樹氏。『LAW(ロウ)より証拠』(総合法令出版)などの著書や情報番組のコメンテーターとしても知られる人物である。
一般に恫喝訴訟とは、資本力のある大企業などが自社に不都合な事実を隠ぺいするため、社会的立場の弱い個人への「嫌がらせ」を目的に起こす高額な損害賠償訴訟を指す。被告とされた個人は莫大な訴訟費用や精神的苦痛を強いられるため、企業側は裁判の勝ち負けに関わらず、訴訟を起こすことで個人を追いつめ、結果的に事実の隠蔽を図ることが可能となる。
アメリカではSLAPP(Strategic Lawsuit Against Public Participation=スラップ)とも呼ばれ、80年代以降に横行。主に環境破壊などを訴える市民団体らに対し、企業側が「営業妨害」などを建前上の理由として多額の損賠賠償を請求する民事訴訟が頻発した。これが司法制度の精神を本質的に歪めるものとして社会的に問題視され、現在では多くの州で反SLAPP法が制定されている。
ところが、こうした恫喝訴訟が野放し状態の日本では、資金力のある大企業や団体がその気になればやりたい放題というのが現状だ。これに一定の歯止めをかけるべく、区議会へ提出されたのが今回の請願。その悪しき事例の筆頭に、野村総研が被害者女性に1,000万円の損害賠償を求めた"逆ギレ訴訟"を挙げたのである。「恫喝訴訟」防止の法案成立へ向け、まずは区議会の請願審査を経た上で、区を通して国会へ意見書を提出してもらうのが請願の目的とみられる。
ところが、請願審査が行われた区議会の企画総務常任委員会で説明を求められた世田谷区の淺野康・区政情報課長は、「国内でこの問題の議論は成熟していない」とした上で、「説明」を超えた異例とも言える断定的な答弁を概要以下の通り行っている。
「憲法で認められている訴訟の自由が犯される恐れがある。今の段階で国に"やみくもに"働きかける必要はない」
「区にそうした(恫喝訴訟に関連する性被害者等の)声は一件も届いていない。この時点で"むやみに"国へ提出する必要はない」(" "は筆者註)
こうした淺野課長の答弁に対し、今回の請願の「紹介議員」となった田中優子議員(みんなの党会派)は、「強い違和感を覚える」として次のように疑問を呈する。
「意見書を国に出すかどうかをこれから議会が審議しようというのに、なんで行政側が『必要ない』と言い切ってしまうのか。あの場で課長に求められているのは、あくまで行政の立場を説明すること。その意味で、説明を超えた過剰介入の発言との印象を受けます。法案内容も含めて国で検討をしてほしいというのが請願の趣旨なのに、『やみくもに』とか『むやみに』などという表現を使ってまで阻止を図るのも疑問です。少なくとも、今まではあんな答弁の仕方を行政はしてこなかったはずです。何か圧力でもあるんでしょうか。今回は非常に不自然な流れを感じています」
こうした世田谷区の反応について、請願者である平塚氏が次のように推測する。
「実はつい最近、世田谷区の課税課にいたある女性職員(編注:すでに退職)が、自らの相続問題に絡んで区民の納税証明書を勝手に取るなどの違法行為を繰り返していたとの告発があり、私から区の担当課長宛てに事実確認の内容証明を出すという一件がありました。淺野課長は同じ世田谷区の管理職として、一連の顛末と私の名前をご存じのはずですから、今回の請願に対して一定の警戒心を抱かれたのではないでしょうか」
結局、委員会に出席した他の区議会議員からも「時期尚早」「訴訟の自由を侵害する」「日本とアメリカは違う」などの意見が出され、多数決で「継続審議」というあいまいな決着に。建前上は「今後も時世を勘案しながら継続して審議していく」(企画総務委員長)としながら、事実上の"お蔵入り"との見方も強い。結果的に世田谷区役所と区議会は、性犯罪被害者の人権より、大企業による恫喝的な「訴訟の自由」を優先したとも受けとれる。
今回の請願の紹介議員の所属政党「みんなの党」の、衆議院東京都第6区の落合貴之支部長は、この問題について次にように語る。
「こういった問題は、企業や業界団体とのしがらみのない我々が関心を持たなければならないと考えています。今回の請願にあたり、(野村総研強制わいせつ事件などの)具体的な事例の存在を知り、問題の根深さを再認識しました。今回は継続扱いとなりましたが、今後も区議会議員と協力しながら、地域で問題提起をしていくとともに、立法機関である国会にも声を届けていきたいと考えています」
世田谷区役所については本サイトでも、NPO法人へ2,000万円の補助金が消えた一件で保坂区長や副区長、担当部長らの虚偽答弁の可能性について指摘したところだ(※記事参照)。実は、違法行為を繰り返していたと平塚氏が指摘する元課税課の女性職員についても、筆者のもとへ複数の内部リークが届いている。その中には女性職員が世田谷区役所OBの弁護士と共謀し、区民に対して恫喝まがいの訴訟を在職中に起こしていたという信じ難いものまで含まれている。現在、関係者を通して聴取を進めており、内容が確認でき次第、本サイトを通してお知らせしていきたい。
(文=浮島さとし)
大王製紙100億円使途不明金事件 井川氏を操った"闇のジャンケット"の存在とは――

大王製紙コーポレートサイトより
大王製紙3代目の井川意高氏が100億円もの使途不明金で会社に損害を与えた特別背任事件は、闇のカジノ人脈を浮上させつつある。
すでに井川氏がカジノで散財していたとされることは各所で報じられているが、東京地検特捜部の関係者も「金の使途は大半がラスベガス、マカオ、シンガポールなどのカジノだろう」と言及している。
「カジノで使ったと自ら明かせなかったのは、違法カジノに関与していたか、もしくは闇の人脈と絡んでいた疑いがある。カジノ遊びを仲介するジャンケット人脈には暴力団関係者も多いから、もし井川氏がそういう連中に取り込まれていたなら、この件はさらに広がりを見せるかもしれない」(同関係者)
ジャンケット業者とはカジノ顧客の旅の手配や身の回りの世話を行なうホスト役だが、中には掛け金の貸付金利で稼いだり、負け分を取り立てることまで請け負う者もいて、金持ち客を散財させることにも長けているといわれる。
実際、井川氏が派手に遊んでいた都内の繁華街では、高級クラブのホステスらから「井川さんがカジノにハマったのは、あのクラブに出入りするジャンケットと知り合いになってから」と、井川氏が常連だった六本木のクラブを名指しした話も聞かれる。
「そのクラブは、元アイドルの美人ママが親しい女優や女性タレントを政財界の大物に紹介する場所として有名でした。井川さんもそこでたくさんの女性と知り合ったんですが、知り合ったジャンケット業者はあまり行儀の良くない方だといううわさがありました」(同ホステス)
前出捜査関係者によると、井川氏のカジノ遊びに群がった人間たちは俳優や金融業者など、いずれも暴力団関係者ではなかったというが「その延長線上には暴力団構成員がいて、巧妙に井川氏から金を引き出す構図があった疑いがある」という。
「実際、井川氏と遊んだ人物の中には、父親が山口組直参の大幹部だという者もいて、この息子の方は若いころから企業舎弟のように暴力団の看板を表向き使わず稼ぐタイプだった。こういう厄介な者と付き合ったのは井川氏にとって地雷になった」(同)
事実、井川氏の人脈からは別件で暴力団がらみの刑事事件に関与した者が次々に出てきている。そのひとつは、静岡の岡本ホテルグループが運営した会員制温泉リゾートクラブをめぐる預託金詐欺事件だ。暴力団が深く関与したことがすでに報じられていた同ホテルでは、前出の美人ママの夫が資金運用の面で役立ったことが分かっている。
「井川氏が大株主の証券会社が傘下に入っている神戸の医療法人グループにもキナ臭いうわさが聞こえているし、もし井川氏の事件の背景に反社会的な連中がいたとすれば、この件は父親に金を弁済してもらって終わるような話ではない」(捜査関係者)
芸能界とも派手に交遊してきた井川氏。都暴力団排除条例の施行後だけに、この背任事件の波紋から親交あるタレントの名前が表になることがあるかもしれない。
(文=鈴木雅久)
大王製紙の巨額借り入れ問題 "バカ殿"人脈の解明で有名タレントが顔面蒼白中!?

大王製紙コーポレートサイトより
"バカ殿"の交友関係には誰が浮上するのだろうか?
「エリエール」で知られる大王製紙の井川意高前会長が、使途不明の巨額借り入れをしていた問題で、同社は特別背任の容疑で刑事告訴する構えだ。
さらに佐光正義社長と5人の監査役ら多数の役員も、不透明な貸し付けを意図的に見逃してきた可能性があるとして処分が検討されており、事態は更なる広がりを見せ始めている。
井川氏は4年前、創業2代目の父親から社長を任され今年6月に会長に就任した3代目だが、同社の関係者によると社内では"バカ殿"などと陰口を叩かれたこともあったという。
「仕事熱心だったとも報じられていますが、社内ではまったくそう思っていない人も多いです。とにかく酒、ギャンブル、女が大好きで豪遊ばかりしていた印象が強く、ゴルフ関連の事業に携わったときは、立場を利用して何かと好みの美女タレントに近づいたり、結婚前の藤原紀香さんとも親しいとか、そんな話ばかり聞こえていました。人脈を作るのには長けていたようですが、おそらく多くは彼が引き出せる金目当てだったのでしょう。それでも創業者の孫に面と向かってモノを言える人はいなかったので、陰では"バカ殿"と呼ばれていたんです」(同関係者)
その真偽はともかく、井川氏は郷ひろみの自伝『ダディ』(幻冬舎)にも登場するなど、芸能人との派手な交友で知られてきたのは確かだ。学生時代の恋人と結婚して1男2女を持つ父親だが、六本木や麻布ではグラビアタレントら美女を連れて歩く姿が度々目撃されてきた。芸能人だけでなく政治家や官僚、財界の大物との付き合いでも知られた井川氏だが、ある経済ジャーナリストは「麻布をうろつく連中から、彼を騙して大金を引き出したという話も耳にしたから、外でも"バカ殿"扱いされていたのでは」と話す。
金の切れ目が縁の切れ目となったのか、そうした井川人脈もいまや井川氏との関係はなかったように振舞っている。ある週刊誌の記者によると「マカオにも同行したことがあるという有名女優」が、井川氏からの電話には一切出ないようにしているというのだ。
同記者は現在「井川氏の持ち出した大金で遊ばせてもらった芸能人リストを作っている」というが、犯罪で使われた金の行方を調べるために東京地検特捜部がすでに各方面に捜査を開始しており、肝を冷やしている者がいるかもしれない。
失った金の回収には父・高雄氏が保有株式などで返済する意思を示しているが、不明金の使途の解明でどんな人物の名前が出てくるか興味津々だ。
(文=鈴木雅久)
オリンパス事件は氷山の一角 現役産業医が語る「リアルでブラックなクビ切り術」

写真はイメージです。
勤務先の非合法行為を内部告発したことで不当解雇を迫られた社員が、勤務先である精密機器大手のオリンパス社を相手取り起こした裁判の二審で、9月、原告社員が勝訴(220万円の損害賠償)を勝ち取った。オリンパス社と顧問弁護士、産業医のブラックな連携による悪質な手口が明らかになるに連れ、社会的な反響は増すばかりだ。
同事件の内幕を報じた前回の本サイト記事でも、記事の配信先サイトも含めたリツイートが3,000件を超えるなどの"炎上"状態となり、「悪質すぎて信じられない」「本当にそんなひどい医者がいるのか!?」といった反響が多数寄せられた。
そこで今回、前回の取材に協力してもらった産業医とは別の、他の複数の現役産業医や産業医経験者らからも話を聞き、彼らの周りで起こっている「産業医の今」を語ってもらうことにした。
まずは産業医とは何であるか、基本的な定義から再確認しておきたい。
産業医とは「職場で労働者の健康管理にあたる医師」(大辞林より)とある通り、労働安全衛生法13条により、50人以上の労働者が常時従事する事業所には、労働者の健康管理のために産業医を置くことが義務づけられている。該当する企業が産業医の設置を怠ったり、選任だけして適切な業務を行わせなかったりした場合は、50万円以下の罰金処分が科せられる。
また、同法3項には、「産業医は、労働者の健康を確保するために必要があると認めるときは、事業主に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる」とあり、「オリンパス事件」はこれが企業側により悪用されたケースと言えそうだ。
この「悪用」の詳細については、前回の本サイトの関連記事中で、関係者証言からの概要を以下の通りお伝えした(引用は要約)。
「悪質な企業では、会社にとって都合の悪い社員に『精神的なケアをする』との名目で、会社お抱えの産業医に診断をさせる。会社とグルの産業医は、その社員を『君は精神疾患だ』『重度のウツなので治療が必要』と診断し、精神病院への措置入院を誘導したり、合法的に解雇したりして、事実を隠蔽してしまう」
法を利用した、まさにブラック過ぎる手口と言える。さて、その産業医、大きく以下の2種類に分けることができる。
ひとつは、産業医である前に自身で病院経営をし、産業医は非常勤として受任している医師。産業医をしなくても安定した固定収入があり、あくまで「バイト感覚というか、ボランティアのような気持ちで産業医は引き受けている」(30代開業医)場合が多い。報酬は出勤日数により千差万別だが、一例を挙げれば「月1回か2回出勤して2万から5万程度。それでも何社か掛け持ちすれば20~30万になる」(同)という。
もうひとつは、事業所に常駐する産業医である。年収は「一般企業の役員程度で、金額的には1,500万程度かそれ以下」(40代医師)が一般的。当然ながら、収入はその事業所からの報酬に限定されるため、「立場的には総務部所属の一社員と同じような存在」(同)となる場合が多く、構造的に見て「会社の言いなりになるのも当然」(同)と言えそうだ。
ところで、一般に産業医に就くにはどのようなルートがあるのだろうか。前出の30代開業医は、「同業の紹介で『○○って会社が産業医探してるんだけどやらない? おまえ暇だろ』という誘いもあったし(笑)、自分からなりたい場合は、医師会を通して斡旋してもらう方法もある」と言うが、多くは「産業医専門の派遣会社に登録して紹介してもらうケースが、数としては圧倒的に多い」(同)ようだ。
ためしにネット上で「産業医 派遣会社」で検索すると、関連会社や関係サイトがズラリと検出される。そのうちの一社に業務内容を電話で尋ねると、「産業医になりたいという希望者と事業所の間に入りながら、医師との面接から契約までを、責任を持って行っております」(某社広報)とのこと。仕組みそのものは一般の派遣会社と同じだ。
■「上司からの指示という感覚」でモラルを捨てる産業医
さて、オリンパスなどのブラック企業の報道に見られるような、会社の命令で社員を追い込む悪質な産業医の実態についてはどうだろうか。筆者の質問に対し、ある40代の男性医師は「普通にいますよ」とあっさりと言い切った上で、「自分自身も経験がある」と告白してくれた。数年前に某メーカーでウツ気味の男性社員の相談を受けていたその医師は、結果的に会社側の片棒を担ぐ形で、その社員を解雇に追い込んだことを、今も気に病んでいるという。
「ある日、総務部の人間から書類を渡されて、『これに署名をもらってきてください』と言われたんです。内容は、休職中の補償などが記されている形式的なものだったのですが、実は『いかなる薬であっても常用している場合は復職できない』旨の一文が、小さな文字で隅に記されていたんです。でも、今の時代、睡眠薬を常用している人なんて普通にいますよね。彼もそのパターンで、結果的にその署名が誓約書となり、仕事に戻る上での障害になりました。本人は民事訴訟も考えたようですが、最後は『そんなエネルギーも、もうない』と言って辞めていきました。気づかなかったとはいえ、直接書かせたのは私ですからね。思い出すと気が重くなりますよ」
一方で、こうした産業医の横行を、「世の中に当たり前にある話と感じていた」とも言い、本サイト記事を読んでショックを受けた読者が多かったことを告げると、むしろ驚いた様子を見せた。
「もちろん、まじめにやってる人もいますよ。ただ、開業医と違って常勤の場合はサラリーマンと一緒で、会社から給料をもらっている立場なので上司には逆らえない。『会社とグル』という報道もありましたが、そういう対等な関係というより、上司からの指示という感覚で受け止めている人も多いでしょうね」
また、本サイトで報じた「集団ストーカー」でターゲットを追い込む手口については、実際にストーキングチームに加わり逆に精神を病んだという人物から、個人的に相談を受けた経験があるとして、「一部には存在する」と言う。
「私が相談を受けた集団ストーカーは、かなり大手の外資系会計事務所の法務部が、ある宗教団体の行動部隊へ委託して行われたという、かなり悪質な一件でした。信じ難いことですが、一部の教団にはそういう"業務"を請け負う部隊があり、各企業の法務部とパイプを構築しているのです。裏仕事を暴力団に頼むのと構図は同じです。しかもそのときは、顧問弁護を務めていた女性弁護士も承知していたというのだからひどい話です。道ですれ違いざまに『山田一郎(仮名)、死ね』とささやいたり、ホームの対面からじっと視線を合わせたりするわけです。ノイローゼになって産業医に相談に行くと、『最近、人の視線が気になりませんか』とか、『幻聴は聞こえますか』と誘導する。で、私に相談してきたのは、その集団ストーカーをしたひとり。『上からの指示でこんなことをしたが、もうやりたくない、死にたい』とメールで泣きついてきました。やる方もこたえる。負の連鎖ですよ」

集団ストーカーの参加メンバーのひとりから
医師に届いた相談メール。「納得できない」
「もうやめたい」といった心の叫びがつづら
れていた。
また、別の産業医(40代開業医)も集団ストーカーについて次のように言う。
「企業の法務部と教団ラインの集団ストーカーは、最近はあまり行われなくなったとも聞いています。人を多く使うので、どうしても情報が漏れやすいですからね。やる側も罪悪感から精神を病む人もいますし」
引き受ける教団も教団なら、そんなところへ"業務"として下ろす企業も企業。ここまでブラックな手法が一部の大手企業で常態化していた事実に驚くしかない。
今回の取材に応えてくれた医師らは皆、「産業医は誇りを持ちながらまじめに取り組んでいる人も多い」としながらも、「オリンパス事件」のような事例は「よくあること」と口を揃えた。また、過去に産業医経験があるという40代の開業医は、「誤解を恐れずに言えば、常勤の派遣産業医にはいい加減なのが多いですよ」と証言する。
「言葉は悪いけど、それだけで食ってる連中だし、短期間で勤務先が代わって会社へのロイヤリティーもないから、派遣先の上司のおかしな指示にも簡単に従う。そもそも医師というのは、手術や臨床経験、学会への論文などで実力をつけていくものですが、派遣登録の産業医は会社の中にいるだけだから、医師として能力が低いのも当然です。最近はお寺でも、坊さんが派遣先から電話1本でお経をあげに来るらしいけど、それと似てますよ」
また、最近では「安定して楽に稼げる」ことを理由に、最初から事業所に常勤する産業医を希望する若い医師や医大生も多いといい、「仕事に誇りを持たない医師は簡単に会社の犬になる」とその医師は言い切る。
■産業医を使わないと「不良社員」も解雇できない !?
さらに、その医師は驚くべき以下の事実を教えてくれた。
「これもおかしな話なんだけど、産業医って、法令には『医師のうちから産業医を選任』としか書かれていないんですよ。つまり、内科や精神科でなくても、眼科医でも小児科医でも可なんです。実際にそういう会社を知ってますしね」
前述の通り、産業医を選任だけして適切な業務を行わせなかった事業所は、50万円以下の罰金が科せられると条文には記されている。仮に100人規模の企業で、経験の浅い「目医者さん」をひとり置いている場合、それが産業医としての「適切な業務」と言えるかどうか、一般的な感覚からすれば大いに疑問が残るところだ。
さて、その一方で、産業医を利用したブラックな解雇が横行している現状について、「日本の労働者が『整理解雇の四要件』で手厚く守られ過ぎているため、企業に対して不利益をもたらす社員をクビにするには産業医を使わないと不可能という現実もある」と指摘するのは、労働法に詳しい都内の30代弁護士だ。
「今の労働者優位の体制を作ったのは労組、つまり連合なんですが、相当な条件をクリアしないと正社員を解雇できない国は先進国で日本だけです。役人が『親方日の丸』で働かないと言われていますが、実は民間も含めた日本全体がそうなっているんです。これは、経済の活性化という面では極めてマイナス。制度上は社員の解雇を可能にして、並行してセーフティネットも整える。そういう社会に変えていくべきだと思いますけどね」
そもそも、産業医とは過労死が社会問題になった時代に、労働環境の改善のために導入された制度。従って当時は、「どこの会社も面倒くさがって、産業医なんて置きたくないと嫌がっていたんです。ところが、想定外の使い道があることを各企業が学習してしまい、今では産業医を置く目的や意図が、当初と全く変わってしまったんです」(前出の弁護士)
産業医の問題を考えるには、国内の雇用実態を勘案した上での、幅広い議論が必要のようだ。いずれにせよ、もし自分が「企業→産業医」ラインで"抹殺"される危険を感じた場合、個人はどのように対抗すべきなのか? これについては、「ひとりで抱え込まずに、とにかく仲間に相談しまくる」(先の弁護士)のが、何より効果的だと多くの関係者は言う。
「情報が拡散することを会社は恐れるし、いろんな人に相談していれば知恵を出してくれる人、仲間になってくれる人が現れます」(同)
また、前出の40代医師は「かかりつけの医師への相談が一番」と言う。
「昔は近所にかかりつけの診療所があるのが普通だったんですけどね。自分のことを知ってくれている医師を普段から作っておくのが理想的です。かかりつけでなくても、別の医者に行くのは必要。ただ、最近は、産業医が『一応ここでも診てもらってください』と表向きセカンドオピニオンを勧めながら、実はそこもグルで罠にハメようとしてくる場合がけっこう多いので注意が必要です」
右を見ても左を見ても、何を信じていいか分からない今のご時世。相談仲間をひとりでも多く作っておくというシンプルな戦略が、事前にできる最も簡単で効果的な戦略といえそうだ。
(文=浮島さとし)









