「また“ゴリ押し”ですか?」巨匠・宮崎駿引退の裏で白眼視される、実写版『魔女の宅急便』

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小芝風花オフィシャルブログより
 『となりのトトロ』や絶賛公開中の『風立ちぬ』で知られる巨匠・宮崎駿監督が、長編映画の製作から引退を発表。6日、都内で記者会見を行った。  この衝撃ニュースに、スポーツ紙やワイドショーはこぞって取り上げ、宮崎監督の功績をたたえたが、その裏でビミョーな空気となっているのが、来年公開予定の実写版『魔女の宅急便』だ。ヒロインのキキ役には、2011年11月の「イオン&オスカープロモーションガールズオーディション2011」でグランプリを獲得した、新人女優の小芝風花が抜擢。同作は宮崎アニメとは一切関係がなく、作家・角野栄子の同名児童書を原作として製作されているが、世間一般のイメージとしては「魔女の宅急便=ジブリ」が定着しており、宮崎引退の報を機に、このキャスティングについてネット上で再び物議を醸しているのだ。  オスカーといえば、米倉涼子を筆頭に上戸彩、武井咲、剛力彩芽ら人気女優を次から次へと生み出しているが「その手法は一貫していて、売り出したい子をまずはタダ同然のギャラで連ドラに主演させ、箔を付ける。その後、連ドラ主演の看板を武器に、CMなどの広告で回収するんです」(芸能プロ関係者)という。  だが、最近では世間一般にも「オスカー手法=ゴリ押し」の解釈が定着。とりわけ武井や剛力には、いわれなき誹謗中傷が相次いでおり、テレビに映っただけで「またゴリ押しか!」と声が上がり、これにはオスカーも頭を抱えているという。  その矢先の『魔女──』での小芝の抜擢。ネット上では早くも「武井と剛力が“終わった”から、今度は小芝押しかよ!」と、邪推の声があふれている。  ただ、同作関係者によると「決してゴリ押しではなく、小芝さんが本当にキキにソックリだったことが抜擢の大きな理由」で「本当に実力で主演の座を勝ち取っても、オスカー所属というだけで偏った目で見られてしまうのはかわいそう」という。  『魔女──』には、宮沢りえや尾野真千子ら人気女優も出演予定。これ以上“風評被害”が広がらなければいいが……。

「それってネタバレじゃ……」『風立ちぬ』タバコ描写問題で、日本禁煙学会に映画界からブーイングの声

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『風立ちぬ』公式サイトより
 大ヒット中の映画『風立ちぬ』の中で頻出する登場人物たちの“喫煙シーン”に、NPO法人「日本禁煙学会」が要望書を出した問題が波紋を広げている。  12日、日本禁煙学会は『映画「風立ちぬ」でのタバコの扱いについて(要望)』という文章を公開。同文書を製作担当者に提出したことを明かした。文書では「教室での喫煙場面、職場で上司を含め職員の多くが喫煙している場面、高級リゾートホテルのレストラン内での喫煙場面など、数え上げれば枚挙にいとまがありません」などとし、同作品が“タバコ広告にあたる”として「タバコ規制枠組み条約」13条違反、また「学生が『タバコくれ』と友人にタバコをもらう場面などは未成年者の喫煙を助長」しているとして「未成年者喫煙禁止法」にも抵触するおそれがあると指弾している。  これを受けて、ネット上では賛否の意見が噴出。掲示板などでは大きな議論を呼んでいるが、映画関係者からは「この要望書そのものがマナー違反だ」という声が聞こえている。 「要望書の中で『肺結核で伏している妻の手を握りながらの喫煙描写は問題』と言っていますが、このシーンで主人公は、妻の手を握りながら喫煙をするかしないかを逡巡するんです。映画は“吸うか・吸わないか”を迷う人物を描写しているのに、この要望書が広まったおかげで、観客は“吸う”ことを事前に知ってしまう。公開中の映画の、クライマックスに近い時間帯での、非常に重要な葛藤が描かれている大切なシーンですよ。その結末を軽々しくネタバレさせるような人たちに、喫煙マナーなんかを語る資格があるんですかね。これから劇場に足を運んでくれるお客さんに失礼ですよ」(映画製作会社関係者)  要望書は「映画制作にあたってはタバコの扱いについて、特段の留意をされますことを心より要望いたします」と締められているが、禁煙学会側にも、要望にあたっては特段の留意が必要だったかもしれない。

「子どもは飽きて走り回り……」ジブリ宮崎駿最新作『風立ちぬ』に賛否両論

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『風立ちぬ』公式サイトより
 『崖の上のポニョ』以来、5年ぶりとなる宮崎駿監督の長編映画『風立ちぬ』が7月20日に公開される。同作は、東京、名古屋、ドイツを舞台に、1982年に亡くなった航空技術者の堀越二郎をモデルとした主人公の半生を描いた、フィクション作品だという。  主演声優を『新世紀エヴァンゲリオン』などで知られる映画監督・庵野秀明が務め、主題歌は松任谷由美が担当(楽曲は荒井由美時代のもの)。映画を見た松任谷は、「嗚咽が出てしまうくらい感動した」と絶賛し、宮崎監督自身も上映会で号泣してしまったという。  また、業界関係者からの評判もよく、6月の関係者向け試写会後、『サマーウォーズ』などのヒット作を手掛ける細田守監督は、Twitterで「こんなにいい映画はいままでになく、そしてこれからもない」と大称賛。これに、アニメファンらの期待は急上昇した。  しかし7月に入り、一般向けに1万人以上を招待した大規模な試写会が行われると、ネットには賛否両論が書き込まれた。「心にじわじわきて涙が止まらなかった」「作画の美しさはジブリ作品一」という感想の一方で、「話が分からなかった」「退屈で寝てしまった」いった声も多いようだ。  また、子連れで訪れた親からは、「子どもが退屈して、席に座っていられなかった」「子どもに感想を聞いても『意味分らなかった』としか言わない」といった不満が出たほか、「ジブリなのに、トトロやポニョみたいなキャラが出てこないじゃない!」と逆ギレする親まで。 「派手さはなく、笑えるシーンや盛り上がりもほぼありません。公開前から、大人向けの内容であることは伝えられていましたが、それを知らないお母さんたちが『ジブリだから』と小さな子どもを連れていき、上映中に退屈で泣き出す子どもや、走り回る子どもが頻発したようです」(映画ライター)  72歳にして、“子どもに届かない”作品を完成させた宮崎駿。観客側も、先入観を捨てて見に行く必要がありそうだ。

鈴木敏夫の引き出す力 『仕事ハッケン伝』で見せたジブリの真髄

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『NHK 仕事ハッケン伝』より
中田の出演回は、7月3日(水)午後4時05分~4時53分に再放送予定。
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。 「頑張る必要ない。才能出してくれれば」 これはスタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫が、オリエンタルラジオ中田敦彦に初対面で言い放った言葉だ。 「あなた、才能あるんでしょ?」という鈴木の問いかけに、「…や、頑張ります」と中田が答えたのを受けてのものだった。  『仕事ハッケン伝』(NHK総合)は「もし今と違う仕事についていたら、どんな人生を送っていたのだろう」をコンセプトに、各界の著名人がさまざまな職種の企業に実際に1週間程度“入社”し、その仕事を体験するというドキュメンタリー。2011年5月に第1シーズンが始まり、現在第3シーズンを迎える。今回のシーズンではこれまでも、吉木りさがバスツアー企画、平山あやがファッションエディター、小島よしおが食品スーパーなどと、実にさまざまな職種に挑戦している。ちなみに13年4月11日に放送された「冨永愛×左官」は、ギャラクシー賞月間賞を受賞した。  6月27日放送回で中田が“入社”したのは、憧れの会社「スタジオジブリ」。巨匠・宮崎駿を擁し、名プロデューサー鈴木らが『となりのトトロ』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』など、数々の大ヒット作を生み出してきた、世界を代表するアニメ映画制作会社だ。中田が配属されたのはプロデューサー室。映画のヒットに直結する広告やパンフレット、公式グッズなどを制作する部署だ。そこで鈴木が中田に課したのは、宮崎監督5年ぶりの新作『風立ちぬ』の新聞広告のデザインだった。  そんな“難問”に対し、中田は実に彼らしいやり方で、その“解答”を導き出そうとする。中田は自ら「受験パンク」と呼ぶように、ベッドを破壊して椅子に自分を縛り付けて寝ずに勉強して倒れ病院に運ばれたり、“右脳と左脳を交互に休ませれば、眠る必要はない”という独自の理論から眼帯をつけて勉強したほど、学生時代、勉強に没頭した。受験勉強に最も大切なのは「傾向と対策」だ。出題者の意図をくみ取り、相手の求めていることを探るのが解答への近道。中田はお笑い芸人としても、受験と同じようにこの傾向と対策を徹底的に分析しネタを作り、自分の立ち位置を選び取っていった。だから、今回も彼はその方法論を採用する。  まずは絵コンテを読み込み、印象的なシーンやセリフを抜き出しメモを取っていく。さらに“過去問”にあたるようにジブリの過去の新聞広告をひとつひとつ、つぶさに見て、その傾向を分析していく。会議では自分が発言するよりも、その様子をじっくりと観察していく。そうして中田の手元には、膨大な量の書き込みであふれるメモの山ができ上がっていた。  「強烈なビジョンを鈴木さんが持っていて、それをみんなで削りだしていくっていう作業」だと、中田はジブリの企画会議の傾向を挙げ、「まったく新しいアートというか、僕がいいっていう、ひとりよがりのものは絶対はじかれる」と対策を練っていった。  さらに中田は、過去の新聞広告から“解答”には「(1)メインコピー (2)オリジナルコピー (3)テーマ (4)煽り (5)劇中セリフ (6)歌 (7)宮崎語録」の7つのバリエーションが存在すると分析。そして「ジブリ」が「熱風」という意味であることに目をつけた中田は、“解答”を導き出してコピーを作り上げた。 「『風の谷のナウシカ』から29年。/この夏、ジブリに新たな『風』が吹く。」  自信作だった。しかし鈴木は「基本的には面白い」と評価する一方で「まだ終わったわけじゃないから」と納得しない。そして2人の話し合いの中から、宮崎による企画書を全文掲載するという斬新なアイディアが生まれる。  「しゃべってると刺激を受けるんですよ。自分ひとりで考えていたって(いいアイディアは)出てこない」という鈴木の言葉に、中田は「『今話してて思いついたんだよ』って強調してくれたのは『お前がいてよかったよ』っていうメッセージですから、うれしかった」と素直に喜んだ。  「人数が多いほうが面白いものができる」というのが、鈴木の信念なのだという。それは宮崎も同じだ。彼はありとあらゆることを他人に訊いて回るのだという。そうしてその反応を作品に反映させていく。ひとりで考えていただけでは、いいものは完成しないのだ。中田はそのことに苦しんできた。デビュー以来、ネタはほぼすべて自分ひとりで考えてきた。しかし、近年、それに限界を感じ始めていたのだ。  鈴木から中田は新たな課題を出される。企画書を全文掲載したポスターに添える煽りコピーを考えてほしい、というものだ。  鈴木がこれまでの最高傑作と考える「天才・宮崎駿の/凶暴なまでの情熱が/世界中に吹き荒れる!」という『もののけ姫』の煽りコピーを超えるものを、というのだ。  中田はデビュー当時、100個ネタを書くことを自らに課した。それが、中田が思う芸人としての“通過儀礼”であり、最善の策だったのだ。今回もまた、中田は「天才・宮崎駿」に代わるものを見つけるため、100個コピーを考えることを自らに課す。  最初は、言葉から発想し、別の言葉を探していた中田。しかし、それでは言葉が「記号化」してしまう、と気づき、鈴木の過去の言葉と傾向を頭の中からいったん“捨てた”。そして、中田自身が作品を見て感じたことを言語化していった。すると、止まっていたペンが一気に動き出したのだ。その膨大なコピーの中から、どれを選ぶのか? 「自分で作るけど、選ぶのは他人かもしれない」  デビュー当時、100個のネタの中から、あの大ブレイクした「武勇伝」の原型となるネタ「中田伝説」をやろう、と言い出したのは相方の藤森だった。中田はデビューの頃と同じように、藤森に意見を聞いた。  そして中田は藤森たちからの反応が良かった、 「『誰かのため』ではなく/『自分のため』に作った。/宮崎駿、七十二歳の覚醒。」 「トトロの姿が見えなくなった大人たちへ。/宮崎駿がもう一度、夢を見せます。」 「どう生きるか。どう愛すか。/大人には教科書がない。/でも宮崎アニメがある。」 など、13個の案まで絞り、鈴木に提出した。 「すごいね、君、才能あるね!」鈴木は、それらのコピーを見て称賛する。そして、あるひとつのコピーに眼の色を変えた。 「『巨匠・宮崎駿』ではなく、/『人間・宮崎駿』としての処女作。」  「これいいねえ。刺激を受けた。だって新鮮だもん! 『人間・宮崎駿』だけでもすごいですよ。まったく自分の中になかった」と絶賛したのだ。そして「欲を言えば、完成度」と、その仕上げを中田に求めたのだ。  「自分だったら……?」。そう中田は自問自答する。「大事な局面で素人が案を出しても、100%使わない」と。だったら「鈴木さんの中にある言葉を削りだす」と戦略を立て、中田は再び自分の言葉を“捨てた”。それが、相手が求めている答えのはずだと考えたのだ。これまでの対話の中で鈴木から出た言葉の中から組み合わせて、中田はコピーをひねり出す。それを見て「最後はやっぱり難しいよね」と鈴木はつぶやき、自分が考えてきたという1枚を机に広げようとした。その瞬間の中田の表情は、明らかに落胆していた。自分が傾向と対策を分析し導き出した解答は間違っていたのだ、と。やっぱり、すでに鈴木の中には鈴木なりの答えがあったのか、というような一瞬の表情だった。  しかし、中田は実際にポスターに添えられたコピーを読んで驚愕する。 『人間・宮崎駿、七十二歳の覚悟。』  それは中田が生み出した言葉から発想されたコピーだった。中田は解答を間違えた。しかし、間違えたのは生み出した言葉ではない。少年漫画のような気持ちのいい逆転劇。 鈴木の答えは、中田の中にあったのだ。  「君が考えたことをテクニックでまとめることだけをやろうと思ってた」と鈴木は言う。けれど、中田の出した中に使えるものがひとつもなかったらどうしたのだろうか?「あるんだよ!」と鈴木は力強く即答する。「それは自信があるの、俺。いろんな人と付き合ってきて。大概の人は、一個は持ってる」と。  鈴木の引き出す力で、中田の言葉を引き出し、完成された“作品”に昇華させた。それが、鈴木敏夫の真骨頂であり、スタジオ・ジブリの真髄だ。 「もし俺が『君の案はダメ。自分で考えます』とやったとするじゃん。そうしたら俺の負け。その人から引き出せないってことだから」  鈴木が引き出したのは中田の言葉だけではない。彼の芸人としての向き合い方、方法論。そして他人との信頼関係。その苦悩、すべてを削りだした。それらは決してひとりだけで傾向と対策を練るだけでは辿りつけない“解答”のヒントだった。  「全部間違えてた。人を使うって難しいんですよ。(略)その結果、ひとりでネタ作るって結論に戻っちゃってたんですよね。人がうまく使えなくて。今日の鈴木さんの言葉に、お笑いに対する向き合い方の答えがあった気がする」  鈴木は、そうやって「人間・中田敦彦」を削りだし、その魅力を引き出したのだ。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) 「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

鈴木敏夫の引き出す力 『仕事ハッケン伝』で見せたジブリの真髄

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『NHK 仕事ハッケン伝』より
中田の出演回は、7月3日(水)午後4時05分~4時53分に再放送予定。
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。 「頑張る必要ない。才能出してくれれば」 これはスタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫が、オリエンタルラジオ中田敦彦に初対面で言い放った言葉だ。 「あなた、才能あるんでしょ?」という鈴木の問いかけに、「…や、頑張ります」と中田が答えたのを受けてのものだった。  『仕事ハッケン伝』(NHK総合)は「もし今と違う仕事についていたら、どんな人生を送っていたのだろう」をコンセプトに、各界の著名人がさまざまな職種の企業に実際に1週間程度“入社”し、その仕事を体験するというドキュメンタリー。2011年5月に第1シーズンが始まり、現在第3シーズンを迎える。今回のシーズンではこれまでも、吉木りさがバスツアー企画、平山あやがファッションエディター、小島よしおが食品スーパーなどと、実にさまざまな職種に挑戦している。ちなみに13年4月11日に放送された「冨永愛×左官」は、ギャラクシー賞月間賞を受賞した。  6月27日放送回で中田が“入社”したのは、憧れの会社「スタジオジブリ」。巨匠・宮崎駿を擁し、名プロデューサー鈴木らが『となりのトトロ』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』など、数々の大ヒット作を生み出してきた、世界を代表するアニメ映画制作会社だ。中田が配属されたのはプロデューサー室。映画のヒットに直結する広告やパンフレット、公式グッズなどを制作する部署だ。そこで鈴木が中田に課したのは、宮崎監督5年ぶりの新作『風立ちぬ』の新聞広告のデザインだった。  そんな“難問”に対し、中田は実に彼らしいやり方で、その“解答”を導き出そうとする。中田は自ら「受験パンク」と呼ぶように、ベッドを破壊して椅子に自分を縛り付けて寝ずに勉強して倒れ病院に運ばれたり、“右脳と左脳を交互に休ませれば、眠る必要はない”という独自の理論から眼帯をつけて勉強したほど、学生時代、勉強に没頭した。受験勉強に最も大切なのは「傾向と対策」だ。出題者の意図をくみ取り、相手の求めていることを探るのが解答への近道。中田はお笑い芸人としても、受験と同じようにこの傾向と対策を徹底的に分析しネタを作り、自分の立ち位置を選び取っていった。だから、今回も彼はその方法論を採用する。  まずは絵コンテを読み込み、印象的なシーンやセリフを抜き出しメモを取っていく。さらに“過去問”にあたるようにジブリの過去の新聞広告をひとつひとつ、つぶさに見て、その傾向を分析していく。会議では自分が発言するよりも、その様子をじっくりと観察していく。そうして中田の手元には、膨大な量の書き込みであふれるメモの山ができ上がっていた。  「強烈なビジョンを鈴木さんが持っていて、それをみんなで削りだしていくっていう作業」だと、中田はジブリの企画会議の傾向を挙げ、「まったく新しいアートというか、僕がいいっていう、ひとりよがりのものは絶対はじかれる」と対策を練っていった。  さらに中田は、過去の新聞広告から“解答”には「(1)メインコピー (2)オリジナルコピー (3)テーマ (4)煽り (5)劇中セリフ (6)歌 (7)宮崎語録」の7つのバリエーションが存在すると分析。そして「ジブリ」が「熱風」という意味であることに目をつけた中田は、“解答”を導き出してコピーを作り上げた。 「『風の谷のナウシカ』から29年。/この夏、ジブリに新たな『風』が吹く。」  自信作だった。しかし鈴木は「基本的には面白い」と評価する一方で「まだ終わったわけじゃないから」と納得しない。そして2人の話し合いの中から、宮崎による企画書を全文掲載するという斬新なアイディアが生まれる。  「しゃべってると刺激を受けるんですよ。自分ひとりで考えていたって(いいアイディアは)出てこない」という鈴木の言葉に、中田は「『今話してて思いついたんだよ』って強調してくれたのは『お前がいてよかったよ』っていうメッセージですから、うれしかった」と素直に喜んだ。  「人数が多いほうが面白いものができる」というのが、鈴木の信念なのだという。それは宮崎も同じだ。彼はありとあらゆることを他人に訊いて回るのだという。そうしてその反応を作品に反映させていく。ひとりで考えていただけでは、いいものは完成しないのだ。中田はそのことに苦しんできた。デビュー以来、ネタはほぼすべて自分ひとりで考えてきた。しかし、近年、それに限界を感じ始めていたのだ。  鈴木から中田は新たな課題を出される。企画書を全文掲載したポスターに添える煽りコピーを考えてほしい、というものだ。  鈴木がこれまでの最高傑作と考える「天才・宮崎駿の/凶暴なまでの情熱が/世界中に吹き荒れる!」という『もののけ姫』の煽りコピーを超えるものを、というのだ。  中田はデビュー当時、100個ネタを書くことを自らに課した。それが、中田が思う芸人としての“通過儀礼”であり、最善の策だったのだ。今回もまた、中田は「天才・宮崎駿」に代わるものを見つけるため、100個コピーを考えることを自らに課す。  最初は、言葉から発想し、別の言葉を探していた中田。しかし、それでは言葉が「記号化」してしまう、と気づき、鈴木の過去の言葉と傾向を頭の中からいったん“捨てた”。そして、中田自身が作品を見て感じたことを言語化していった。すると、止まっていたペンが一気に動き出したのだ。その膨大なコピーの中から、どれを選ぶのか? 「自分で作るけど、選ぶのは他人かもしれない」  デビュー当時、100個のネタの中から、あの大ブレイクした「武勇伝」の原型となるネタ「中田伝説」をやろう、と言い出したのは相方の藤森だった。中田はデビューの頃と同じように、藤森に意見を聞いた。  そして中田は藤森たちからの反応が良かった、 「『誰かのため』ではなく/『自分のため』に作った。/宮崎駿、七十二歳の覚醒。」 「トトロの姿が見えなくなった大人たちへ。/宮崎駿がもう一度、夢を見せます。」 「どう生きるか。どう愛すか。/大人には教科書がない。/でも宮崎アニメがある。」 など、13個の案まで絞り、鈴木に提出した。 「すごいね、君、才能あるね!」鈴木は、それらのコピーを見て称賛する。そして、あるひとつのコピーに眼の色を変えた。 「『巨匠・宮崎駿』ではなく、/『人間・宮崎駿』としての処女作。」  「これいいねえ。刺激を受けた。だって新鮮だもん! 『人間・宮崎駿』だけでもすごいですよ。まったく自分の中になかった」と絶賛したのだ。そして「欲を言えば、完成度」と、その仕上げを中田に求めたのだ。  「自分だったら……?」。そう中田は自問自答する。「大事な局面で素人が案を出しても、100%使わない」と。だったら「鈴木さんの中にある言葉を削りだす」と戦略を立て、中田は再び自分の言葉を“捨てた”。それが、相手が求めている答えのはずだと考えたのだ。これまでの対話の中で鈴木から出た言葉の中から組み合わせて、中田はコピーをひねり出す。それを見て「最後はやっぱり難しいよね」と鈴木はつぶやき、自分が考えてきたという1枚を机に広げようとした。その瞬間の中田の表情は、明らかに落胆していた。自分が傾向と対策を分析し導き出した解答は間違っていたのだ、と。やっぱり、すでに鈴木の中には鈴木なりの答えがあったのか、というような一瞬の表情だった。  しかし、中田は実際にポスターに添えられたコピーを読んで驚愕する。 『人間・宮崎駿、七十二歳の覚悟。』  それは中田が生み出した言葉から発想されたコピーだった。中田は解答を間違えた。しかし、間違えたのは生み出した言葉ではない。少年漫画のような気持ちのいい逆転劇。 鈴木の答えは、中田の中にあったのだ。  「君が考えたことをテクニックでまとめることだけをやろうと思ってた」と鈴木は言う。けれど、中田の出した中に使えるものがひとつもなかったらどうしたのだろうか?「あるんだよ!」と鈴木は力強く即答する。「それは自信があるの、俺。いろんな人と付き合ってきて。大概の人は、一個は持ってる」と。  鈴木の引き出す力で、中田の言葉を引き出し、完成された“作品”に昇華させた。それが、鈴木敏夫の真骨頂であり、スタジオ・ジブリの真髄だ。 「もし俺が『君の案はダメ。自分で考えます』とやったとするじゃん。そうしたら俺の負け。その人から引き出せないってことだから」  鈴木が引き出したのは中田の言葉だけではない。彼の芸人としての向き合い方、方法論。そして他人との信頼関係。その苦悩、すべてを削りだした。それらは決してひとりだけで傾向と対策を練るだけでは辿りつけない“解答”のヒントだった。  「全部間違えてた。人を使うって難しいんですよ。(略)その結果、ひとりでネタ作るって結論に戻っちゃってたんですよね。人がうまく使えなくて。今日の鈴木さんの言葉に、お笑いに対する向き合い方の答えがあった気がする」  鈴木は、そうやって「人間・中田敦彦」を削りだし、その魅力を引き出したのだ。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) 「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

『家政婦のミタ』40%でも4冠王届かず!? 日本テレビが青ざめる"ジブリの誤算"

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『借りぐらしのアリエッティ』
(スタジオジブリ)
 平均視聴率40.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)を記録した『家政婦のミタ』(日本テレビ系)最終回。日テレ局内は、暮れに来て喜びで浮足立っているが、その直前、関係者が青ざめる事態が起こっていた。  16日、「金曜ロードショー」でジブリ作品『借りぐらしのアリエッティ』が「地上波初登場」という冠付きで放送されたが、この結果に局内が騒然としているというのだ。  「当然、関係者は期待に期待をするわけです。ジブリ作品の視聴率の最初の放送は、20%超えを宿命付けられている。その前の週に放送された『天空の城ラピュタ』は、13回目のオンエアにもかかわらず15.9%を弾き出した。ところが......」と局関係者は憂うつな表情をさらに曇らせる。 「『アリエッティ』は16.5%でした。普通に考えれば及第点なんでしょうけど、ハッキリ言って、ジブリ作品としては落第点です。関係者は衝撃を受けていたようで、コメントは出しません、という感じでした」(テレビ誌ライター)  『崖の上のポニョ』の初放送は29.8%だった。そのため『アリエッティ』も大いに期待されていたが、「相当、いや、かなりがっかり」と局映画担当者も本音を打ち明ける。  日テレは現在、視聴率でここしばらく後塵を拝しているフジテレビと、久しぶりの年間4冠王の座を競っている。 「FIFAクラブワールドカップ、そしてジブリ作品で年末の勢いをさらに上げようという戦略を描いていたようですが、ちょっと水をさされた感じですね」(前出テレビ誌ライター)  実は『アリエッティ』はジブリ作品といえども、同社の大看板の宮崎駿監督ではない。同じく宮崎駿作品ではない『ゲド戦記』も、初回放送時は16.4%と低調。要は、宮崎駿作品以外に過剰な期待をする日テレは懲りていないのだ。4冠王も心配だが、それ以上に、ジブリ作品のブランド力にいまだすがり続ける日テレの姿勢が心配だ。 (文=中谷泉)
借りぐらしのアリエッティ 力不足ですいません! amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・『崖の上のポニョ』地上波初登場も30%割れで日本テレビ局内は真っ青!?視聴率40%!『家政婦のミタ』長谷川博己の"共演者食い"はPRのためのリークばかり!?「事務所はホッ......?」離婚の宮崎あおい 高岡のヤバすぎる交友関係に囲まれた10年愛

ジブリVS.ピクサー 日米国民的アニメ映画、夏の陣! 

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(C)2008 WALT DISNEY PICTURES/PIXAR ANIMATION STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.
 いよいよ夏休み映画の封切りラッシュが始まる7月。今年も各ジャンルの作品が盛り沢山だが、やはり子どもも大人も一緒に楽しめる良質なアニメ映画は夏の風物詩だ。  中でも、ディズニー傘下のピクサーによる『トイ・ストーリー3』(7月10日公開)と、スタジオジブリによる『借りぐらしのアリエッティ』(7月17日公開)の2作品は要チェック。日米の国民的アニメスタジオの新作がほぼ同時期に公開され、興行レースへの関心もさることながら、内容の興味深い関連性や、制作面での共通点など、注目ポイントには事欠かないライバル2作品なのだ。  まず『トイ・ストーリー3』は、ピクサーの名を世界に知らしめた史上初のフルCGアニメ長編映画『トイ・ストーリー』(95)のシリーズ第3作。かつてカウボーイ人形のウッディや宇宙レンジャー人形のバズ・ライトイヤーらと遊んだアンディも、成長して大学に進むのを機に、おもちゃを整理することに。だが手違いで、おもちゃは近所の保育園に寄付されてしまう。「アンディに捨てられた」と傷つき、幼児たちに遊んでもらえる新天地を選んだおもちゃたちだったが、そこには予想外の試練が。一方ウッディは、ただ一人アンディを信じて保育園からの脱出を試みるも......。  監督のリー・アンクリッチは、シリーズ第1作や『バグズ・ライフ』(98)で編集、第2作『トイ・ストーリー2』(99)などでは共同監督を務めたが、単独でメガホンを取るのは本作が初。1作目で監督、2作目で共同監督を務めたジョン・ラセターは今回、製作総指揮に回っている。  一方『借りぐらしのアリエッティ』は、英女流作家メアリー・ノートンの児童文学が原作。身長10センチのアリエッティと両親は、人間が住む屋敷の床下で、「人間に見られてはいけない」という掟を守りながら、さまざまな生活品を借りて暮らしていた。だがアリエッティは、屋敷に引越してきた少年に姿を見られてしまい......。  米林宏昌監督もまた、96年にジブリに入社して以来、多数の宮崎駿監督作品に参加し、今作が長編デビュー。40年前に一度本作の映画化を企画したという宮崎は、企画・脚本を担当。  両作品共に、幼い登場人物が他者との出会い(と別れ)を通じて精神的に成長するという、ファミリー映画の王道をしっかり踏襲。また、サイズが人間の10分の1以下しかない主要キャラからの視点が描かれ、普段見慣れた小物が巨大サイズで見える新鮮さと、それらを小さき者が工夫して生活や冒険に活用する楽しさも共通する。さらには、『トイ・ストーリー3』のおもちゃ群の中に、ジブリ映画のある有名キャラも登場!  そんな具合に、大きなテーマから細部の描写まで、両作品の共通点や相違点、関係性などを家族や友人、カップルで語り合うのも盛り上がるはず。日米アニメ映画界の次世代ホープ同士による"夏の陣"といった趣の2作品は、笑いと涙と感動だけでなく、親しい人との豊かな語らいのひとときももたらしてくれる、まさに夏休みにピッタリの作品たちだ。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 『トイ・ストーリー3』作品情報 <http://eiga.com/movie/53487/> 『借りぐらしのアリエッティ』作品情報 <http://eiga.com/movie/55169/>
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