
『非実在青少年〈規制反対〉読本』
(サイゾー)
6月2日、日本国内での「児童ポルノ」の単純所持禁止の必要性、インターネット上の児童ポルノの根絶に向けた国際シンポジウム「第3回児童の性的搾取に反対する世界会議(2008年リオ会議)フォローアップセミナー - インターネット上の児童の性的虐待画像(児童ポルノ)の根絶に向けて」(主催:スウェーデン大使館・公益財団法人日本ユニセフ協会、ECPATスウェーデン、ヤフー株式会社)が東京渋谷区の国連大学で開催された。
シンポジウムの冒頭、挨拶に立ったシルビア・スウェーデン王妃は年間100万人あまりの子供が商業的性的搾取の被害に遭っていることを取り上げ、この被害を防止する効果的な方法として、営利目的である「児童ポルノ」の収益性を絶つことの重要性を強調した。さらに、国際連合の児童の権利条約第二条と選択議定書で示された「児童ポルノ」の定義について触れて日本でも単純所持導入を導入すべきだと訴えた。
「この定義は18歳未満への性的な犯罪のすべてのドキュメンテーションを対象にしています。マンガなども対象になるのです。日本でも単純所持が議論されていることは知っています。スウェーデンでも言論の自由の制限への懸念から反対の声は強かったのですが、1999年から所持は違法化されました。これによって、警察の捜査は円滑化され、犯罪者を裁くことができるようになり、被害児童の特定の可能性が出てきました。日本も我が国の事例にならって欲しいと願います」。
■単純所持で冤罪が立証された例はない!
3時間あまりのシンポジウムでは、多くの人々が発言をしたが、ここでは、閉会後の記者会見で、パネリストのひとりアンダーシュ・ペーション氏に寄せられた質問を紹介したい。ペーション氏は、1997年よりスウェーデン国家警察に所属し、国際刑事警察機構捜査官として、同機構の「子ども虐待画像データーベース(ICAID)」構築に尽力した人物である。
──単純所持の導入すれば冤罪の可能性が懸念される。冤罪に対する予防措置は、どのように行われているのか?
ペーション氏 そういうことに対する懸念は耳にしたことがあります。ただ、警察官として、そういう事件、そういう捜査に出会ったことがありません。ひとつ、警察の捜査官としてコンピューターなどを押収した場合にとる予防策としては、ソフトウェアを探そうとするわけです。冤罪になるような誰かがワザと入れるようなことを可能にするトロイの木馬とか、そういうコンピューターウィルスを探します。でも、警察官として、実際にそうした事態に出くわしたことはありません。
──そうしますとスウェーデンは1999年の1月1日から単純所持を違法化していますが、現在まで10数年あまりの間に冤罪が発生した事例はひとつもないと理解してよろしいでしょうか?
ペーション氏 被告が、画像がコンピューターの中に故意に入れられたということを主張したことはありますが、それが正しいと立証されたことはありません。ですから、他人がコンピューターに画像を入れたということは主張はできるわけですけれども、私が知る限りにおいてそうした情報が事実だったということを掴んだことはありません。
──では、質問を変えましょう。現在、日本ではスウェーデンの漫画翻訳家であるシーモン・ルンドストローム氏が日本の漫画をコンピューター内に所持していた、これが「児童ポルノ」にあたるとして最高裁まで争っている事件が注目を集めています。これについては、スウェーデンの警察はどのような見解を持っているのか、教えて頂ければと思います。
ペーション氏 まだ、裁判所の決定は出ていません。現在、スウェーデンの最高裁判所が、この漫画の問題を検討しているところです。来週に、最高裁判所からの決定が出る予定ですけれども警察はスウェーデンの法律に従って活動するということでありますので、もし裁判所がそれを合法であるといえば、それを尊重します。私の個人的な見解と致しましては児童が描かれていて、実際の子供に見えないとしても、これは児童虐待の画像であると考えられるべきと思っています。鼻や目や耳が違っても、これは児童を描いたものであり、性的虐待をされているところを描いたものでありますから、まずは数日後に出る最高裁判所の判決を待ちたいと思います。
──では、実際に逮捕し起訴したということは現在のスウェーデン警察当局の見解では、日本で一般に流通している漫画をスウェーデンに持ち込んだ場合は「児童ポルノ」に該当するという見解をお持ちということですか? 裁判所が決定する前ですが。
ペーション氏 漫画の画像が、児童を描き性的虐待を描いているのであれば違法な画像とされます。これは、「児童ポルノ」とみなされます。しかし、私が申し上げました通り、最高裁判所が今週にも判決を出すことになっていますので、どのような判決が出るか私は待っているところです。私の個人的な見解ですが、おそらくこういった画像も犯罪化されるものと思います。ただ、まだ公式的な見解は出ていません。
──スウェーデンの警察当局は漫画の「この部分が児童にあたる」と判断する一定の基準を持っているということでよろしいですか?
ペーション氏 はい、基準があります。思春期の児童の成長が終わっていない状態。つまり絵の中で、まだ思春期が終わっていない状況であるということになれば、児童虐待の画像になるということになります。大変、小さな児童、ファンタジーの形の児童であるわけですけれども、身体を見れば子供であることがわかります。思春期が終わっていない状況であることがわかります。ですので、これは児童のポルノグラフィー、児童虐待といわれるべきだと思います。
──スウェーデンでは、日本の漫画はほとんど流通していません。その上で、日本の漫画は非常に多様化しており、年齢の判断は難しい。ゆえに「児童ポルノに漫画を含めるべきではない」という議論がありますが、スウェーデンの警察当局は既に、日本の漫画を読んで、これは何歳であるか、思春期であるかを判断できる自信を持っていらっしゃるということですか?
ペーション氏 私は漫画の専門家ではありません。ただ、私の同僚で捜査をした人から学んだところでは、その特定の画像は漫画ではない。誰かが想像してつくった自分のファンタジーで描き上げたものだと聞いております。漫画については、よくは知らないのですが私が見た、そのイメージ、画像は明らかに子供だったのです。思春期のプロセスが終わっていない人だったのです。ただ、漫画を「児童ポルノ」として自動的に禁止するわけではありません。唯一、性的な児童の虐待が描かれた画像であれば、犯罪になる。それが漫画でなくても、あるいは描いた児童の絵ではあっても、それが虐待されていれば、児童虐待になるわけです。
──スウェーデンの新聞等でも報じられておりご存じだと思いますが、スウェーデンの警察当局は実際の被害児童に対する捜査が疎かになるため、漫画の取締りを重視していないとコメントしています。これが、スウェーデン警察当局のスタンスと理解してよろしいでしょうか?
ペーション氏 警察は、公的な発言はまだしていません。個々の警察官が発言していますが、これは、これは、その公的なスウェーデンの警察の見解として受け止められては困るのです。今年、そんなにたくさんの絵を巻き込んだ事件はないのです。私が推測するに99.9%が写真とか絵ではない実際の児童虐待が描かれたものであり、イラストとかはいくつかだけです。常に疑念のある場合には、釈放します。議論の余地のある場合、子供か成人か判断できないには、これは釈放します。まったく、疑念の余地のない場合には、これは不法な素材といいますが、これは非常に稀です。ですので、公式的な見解はスウェーデンの警察は出していません。個々の警察官の発言のみです。
スウェーデン警察当局が、漫画に描かれたキャラクターの「身体を見れば子供である」「思春期が終わっていない」ことも判断できる基準を持っているというのは、驚きだ。
これについて、シーモン・ルンドストローム氏にコメントを求めたところ、
「スウェーデンの警察は、何かの超能力でも持っているのでしょうか? すごいですね」
と、苦笑した。なお2日現在、ルンドストローム氏には、スウェーデン最高裁から判決の日を知らせる通知は、まだ届いていない。
(取材・文=昼間たかし)
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単純所持違法化の歪み……児ポ根絶セミナーで飛び出すスウェーデン当局の仰天発言

『非実在青少年〈規制反対〉読本』
(サイゾー)
6月2日、日本国内での「児童ポルノ」の単純所持禁止の必要性、インターネット上の児童ポルノの根絶に向けた国際シンポジウム「第3回児童の性的搾取に反対する世界会議(2008年リオ会議)フォローアップセミナー - インターネット上の児童の性的虐待画像(児童ポルノ)の根絶に向けて」(主催:スウェーデン大使館・公益財団法人日本ユニセフ協会、ECPATスウェーデン、ヤフー株式会社)が東京渋谷区の国連大学で開催された。
シンポジウムの冒頭、挨拶に立ったシルビア・スウェーデン王妃は年間100万人あまりの子供が商業的性的搾取の被害に遭っていることを取り上げ、この被害を防止する効果的な方法として、営利目的である「児童ポルノ」の収益性を立つことの重要性を強調した。さらに、国際連合の児童の権利条約第二条と選択議定書で示された「児童ポルノ」の定義について触れて日本でも単純所持導入を導入すべきだと訴えた。
「この定義は18歳未満への性的な犯罪のすべてのドキュメンテーションを対象にしています。マンガなども対象になるのです。日本でも単純所持が議論されていることは知っています。スウェーデンでも言論の自由の制限への懸念から反対の声は強かったのですが、1999年から所持は違法化されました。これによって、警察の捜査は円滑化され、犯罪者を裁くことができるようになり、被害児童の特定の可能性が出てきました。日本も我が国の事例にならって欲しいと願います」。
■単純所持で冤罪が立証された例はない!
3時間あまりのシンポジウムでは、多くの人々が発言をしたが、ここでは、閉会後の記者会見で、パネリストのひとりアンダーシュ・ペーション氏に寄せられた質問を紹介したい。ペーション氏は、1997年よりスウェーデン国家警察に所属し、国際刑事警察機構捜査官として、同機構の「子ども虐待画像データーベース(ICAID)」構築に尽力した人物である。
──単純所持の導入すれば冤罪の可能性が懸念される。冤罪に対する予防措置は、どのように行われているのか?
ペーション氏 そういうことに対する懸念は耳にしたことがあります。ただ、警察官として、そういう事件、そういう捜査に出会ったことがありません。ひとつ、警察の捜査官としてコンピューターなどを押収した場合にとる予防策としては、ソフトウェアを探そうとするわけです。冤罪になるような誰かがワザと入れるようなことを可能にするトロイの木馬とか、そういうコンピューターウィルスを探します。でも、警察官として、実際にそうした事態に出くわしたことはありません。
──そうしますとスウェーデンは1999年の1月1日から単純所持を違法化していますが、現在まで10数年あまりの間に冤罪が発生した事例はひとつもないと理解してよろしいでしょうか?
ペーション氏 被告が、画像がコンピューターの中に故意に入れられたということを主張したことはありますが、それが正しいと立証されたことはありません。ですから、他人がコンピューターに画像を入れたということは主張はできるわけですけれども、私が知る限りにおいてそうした情報が事実だったということを掴んだことはありません。
──では、質問を変えましょう。現在、日本ではスウェーデンの漫画翻訳家であるシーモン・ルンドストローム氏が日本の漫画をコンピューター内に所持していた、これが「児童ポルノ」にあたるとして最高裁まで争っている事件が注目を集めています。これについては、スウェーデンの警察はどのような見解を持っているのか、教えて頂ければと思います。
ペーション氏 まだ、裁判所の決定は出ていません。現在、スウェーデンの最高裁判所が、この漫画の問題を検討しているところです。来週に、最高裁判所からの決定が出る予定ですけれども警察はスウェーデンの法律に従って活動するということでありますので、もし裁判所がそれを合法であるといえば、それを尊重します。私の個人的な見解と致しましては児童が描かれていて、実際の子供に見えないとしても、これは児童虐待の画像であると考えられるべきと思っています。鼻や目や耳が違っても、これは児童を描いたものであり、性的虐待をされているところを描いたものでありますから、まずは数日後に出る最高裁判所の判決を待ちたいと思います。
──では、実際に逮捕し起訴したということは現在のスウェーデン警察当局の見解では、日本で一般に流通している漫画をスウェーデンに持ち込んだ場合は「児童ポルノ」に該当するという見解をお持ちということですか? 裁判所が決定する前ですが。
ペーション氏 漫画の画像が、児童を描き性的虐待を描いているのであれば違法な画像とされます。これは、「児童ポルノ」とみなされます。しかし、私が申し上げました通り、最高裁判所が今週にも判決を出すことになっていますので、どのような判決が出るか私は待っているところです。私の個人的な見解ですが、おそらくこういった画像も犯罪化されるものと思います。ただ、まだ公式的な見解は出ていません。
──スウェーデンの警察当局は漫画の「この部分が児童にあたる」と判断する一定の基準を持っているということでよろしいですか?
ペーション氏 はい、基準があります。思春期の児童の成長が終わっていない状態。つまり絵の中で、まだ思春期が終わっていない状況であるということになれば、児童虐待の画像になるということになります。大変、小さな児童、ファンタジーの形の児童であるわけですけれども、身体を見れば子供であることがわかります。思春期が終わっていない状況であることがわかります。ですので、これは児童のポルノグラフィー、児童虐待といわれるべきだと思います。
──スウェーデンでは、日本の漫画はほとんど流通していません。その上で、日本の漫画は非常に多様化しており、年齢の判断は難しい。ゆえに「児童ポルノに漫画を含めるべきではない」という議論がありますが、スウェーデンの警察当局は既に、日本の漫画を読んで、これは何歳であるか、思春期であるかを判断できる自信を持っていらっしゃるということですか?
ペーション氏 私は漫画の専門家ではありません。ただ、私の同僚で捜査をした人から学んだところでは、その特定の画像は漫画ではない。誰かが想像してつくった自分のファンタジーで描き上げたものだと聞いております。漫画については、よくは知らないのですが私が見た、そのイメージ、画像は明らかに子供だったのです。思春期のプロセスが終わっていない人だったのです。ただ、漫画を「児童ポルノ」として自動的に禁止するわけではありません。唯一、性的な児童の虐待が描かれた画像であれば、犯罪になる。それが漫画でなくても、あるいは描いた児童の絵ではあっても、それが虐待されていれば、児童虐待になるわけです。
──スウェーデンの新聞等でも報じられておりご存じだと思いますが、スウェーデンの警察当局は実際の被害児童に対する捜査が疎かになるため、漫画の取締りを重視していないとコメントしています。これが、スウェーデン警察当局のスタンスと理解してよろしいでしょうか?
ペーション氏 警察は、公的な発言はまだしていません。個々の警察官が発言していますが、これは、これは、その公的なスウェーデンの警察の見解として受け止められては困るのです。今年、そんなにたくさんの絵を巻き込んだ事件はないのです。私が推測するに99.9%が写真とか絵ではない実際の児童虐待が描かれたものであり、イラストとかはいくつかだけです。常に疑念のある場合には、釈放します。議論の余地のある場合、子供か成人か判断できないには、これは釈放します。まったく、疑念の余地のない場合には、これは不法な素材といいますが、これは非常に稀です。ですので、公式的な見解はスウェーデンの警察は出していません。個々の警察官の発言のみです。
スウェーデン警察当局が、漫画に描かれたキャラクターの「身体を見れば子供である」「思春期が終わっていない」ことも判断できる基準を持っているというのは、驚きだ。
これについて、シーモン・ルンドストローム氏にコメントを求めたところ、
「スウェーデンの警察は、何かの超能力でも持っているのでしょうか? すごいですね」
と、苦笑した。なお2日現在、ルンドストローム氏には、スウェーデン最高裁から判決の日を知らせる通知は、まだ届いていない。
(取材・文=昼間たかし)
「漫画・アニメのせいで子どもが犯される」「文章も禁止」過激発言満載の児ポ法規制推進派院内集会
「漫画・アニメのせいで子どもが犯される」「文章も禁止」過激発言満載の児ポ法規制推進派院内集会
2月14日、衆議院第一議員会館で院内集会「国際エクパット事務局長来日 今こそグローバルスタンダードへ! 児童買春・児童ポルノ禁止法(以下、児ポ法)の改正に向けて」がECPAT/ストップ子ども買春の会(以下、エクパット)の主催で開催された。エクパットの院内集会は、昨年の6月以来のことだ。
この日の集会は、撮影・録音・Twitter禁止、パソコンの使用も禁止というものものしい雰囲気で始まった。冒頭あいさつに立った、エクパット代表の宮本潤子氏は「ぜひとも今国会で改正を行い、子どもたちを残虐な虐待・性暴力から守る法律にしてもらうことを願っている。今一度、全部の政党が子どものために立ち上がってくれればと心から願います。この20年間、ひとつ進歩したことはNGOだけでなく、行政とNGO、ザ・ボディショップのような民間セクター、この問題を改善しようと思っている日本旅行業協会、インターネット協会、そしてスウェーデン大使館、日本ユニセフ協会、ヤフー株式会社のような様々な組織が私たちと共に立ち上がってくれていることです」と力強くあいさつした。続いて登壇した、スウェーデン大使館参事官のカイ・レイニウス氏は、児童ポルノの取締りには国際協調が欠かせないとして、次のように語る。
「世界中のインターネットで配信される児童ポルノだけでも、毎年10億ドルを売り上げていると思われる。犯罪組織は、積極的に子どもを犠牲にしている。捜査機関が働きやすい環境をつくるためには、国際協調が欠かせない。(児童ポルノについて)世界ではさまざまな解釈がなされているが、スウェーデン当局は単純所持禁止によって犯罪活動に対して以前よりも積極的に対応できるようになった。複雑な論点があるので、日本に単純所持に反対する意見があるのは不思議には思わない。スウェーデンでも国民による熱い議論の末に実施できるようになった。その中で出版の自由、表現の自由も論点になった。しかし、表現の自由以上に、子どもの人権擁護が重要だとして国民の合意が得られた。日本もスウェーデンと同じ議論のプロセスを歩んでいると思う」。
■漫画・アニメは性的虐待を「誘発している」どころか「利用されている」
さて、この集会のメインスピーカーともいえる、国際エクパット事務局長のキャサリン・スピーク氏は「子どもポルノ根絶に向けた国際ECPATの取り組み」と題して講演を行った。スピーク氏は、子どもの商業的性的搾取の定義を改めて解説した上で、正確な把握は不可能としながらも「ILO(国際労働機関)の報告によれば、2002年には世界中でおよそ180万人の子どもが買春またはポルノによる性的搾取の被害にあっているとされている」「子どもや青少年の性的搾取に対する社会的な許容も増加している」「商業目的の子どもポルノは年間数十億ドルの産業規模である」「インターネット上に100万枚以上の子どもポルノ画像が存在する」「児童虐待の既存の手法はインターネットの普及によって、より手軽で危険の少ないものになってしまっている」「ウェブサイトに提示されている画像の児童虐待の深刻さが増しており、被害に遭う子どもの年齢もより幼くなっている」と報告。その上で、日本政府に対しては「子どもを守るために、国際的な基準と最善の取り組みを参考にしながら、法案の作成を行うよう求める。
「表現の自由はあらゆる国において絶対的ではなく、制限の下にあるものである。社会全体が表現の自由に対する制限を認識するのは、特にそれが他の価値や権利と矛盾する場合である。子どもたちが性的搾取から自由な状態の中に生きる権利は、表現の自由に優先されるべき権利の一つである」
これに続く発言はさらに踏み込んだものだった。国際エクパットが、成人向け漫画やアニメに対するスタンスを明らかにしたからである。
「たとえ成人向け内容の物において描写される子どもが実在しないとしても、こうしたヴァーチャルの子ども虐待画像は実際に子どもたちが性的に虐待あるいは搾取を受ける危険を高めている」(スピーク氏)
すなわち、成人向け漫画などを通じて、実在の子どもたちが被害を受ける可能性があると指摘するのだ。スピーク氏は具体的な危険例として「子どもの性的搾取についての社会的許容を推奨している」「子どもとの性的行為を正常であるかのように思わせている」「画像が急速かつ広範囲に流布されるのに寄与している」「子どもの性的虐待描写物への需要を増大させている」そして最後に、「ヴァーチャルな子ども虐待画像は子どもを手なづけたり、誘惑する際に用いられている」とした。
■漫画・アニメだけではダメ! 「文章も音声も規制対象に」
続いて登壇した国際エクパットの法律担当スタッフ、フランソワ・エックセヴィエ・スーチェ氏も「子どもポルノ/子ども虐待画像と闘うための鍵となる法的な問題と課題への理解に向けて」と題した報告の中で「ヴァーチャルな子どもポルノ」について言及した。スーチェ氏は「児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書」「サイバー犯罪に関する条約」「欧州評議会子どもの性的搾取及び性的虐待からの保護条約」を論拠に、ヴァーチャルな画像や表現も犯罪にあたると主張する。そして、「ヴァーチャルな子どもポルノ」の問題点として、
「そのような視覚的画像は、虐待者の子どもへの不適切な感情や行為を増大し、また子どもの性的虐待や性的搾取に対する社会的許容を生み出す。さらに、これらの描写物が性目的のために子どもたちを誘い出す行為に用いられる」
と、先のスピーク氏の発言を補強する形で述べた。その上で、フィリピン・カナダ・アイルランド・ニュージーランドなどで既に「ヴァーチャルな子どもポルノ」が犯罪となっていると解説。
「子どもの性的行為への関与を助長する、あるいは描写する音声や文章は、犯罪とされるべきである。同時に、関連する国際的な法的基準によれば、子どもを表現した漫画、アニメ、コンピューターゲーム、デッサンなどは禁止されるべきである」(スーチェ氏)
最後に登壇した日本ユニセフ協会広報室長の中井裕真氏は、インターネットのブロッキングが非常に進んできたことに言及し、
「児童ポルノに対する取り組みは、止まっているのではなく進んでいる。ただ、法改正の部分だけは取り残されている」
と、重ねて単純所持禁止の導入を訴えた。
■単純所持を禁止するために「ウラの人間関係を調整中」
これまでになく、漫画・アニメなど「ヴァーチャルな子どもポルノ」に対する規制にまで踏み込んだこの集会。その最大の目的は、国会議員に向けたアピールだ。日頃の活動の成果なのか、多くの国会議員の発言もあった。
公明党副代表の松あきら参議院議員は
「いったい何年、児童ポルノ法の会議をしなければならないのか。私たち公明党と自民党で単純所持禁止の改正案はもう出している。けれども、残念ながら、その法案が通らない。与野党関係なく、一刻も早く単純所持の禁止を盛り込んだ改定を行いたい」
と力強く述べる。同じく公明党の富田茂之衆議院議員は2年半前の児童ポルノ法改定をめぐる協議における合意点を振り返り、政権交代があってから民主党が、改定の協議に応じなくなったと批判する。
「2年半前の話し合いでは『みだりに児童ポルノを所持してはならない』『ことさらに児童の性的な部位が強調されていること。性的な部位はでん部なども含む』ことは合意していた。また、所持の禁止に関しても"自己の意志によって所持・保管するに至ったもの"であり、かつ当該者であることが明らかに認められるものに限るという文言を挿入することも合意していた。既に所持しているものの取り扱い以外は合意に達していた。協議ができれば、いつでも単純所持の罰則付き禁止は行える」
と、民主党への働きかけを呼びかけた。政権与党でもある民主党を力強く批判する自民・公明党の国会議員。中でも過激だったのが、衆議院の青少年問題に関する特別委員会の理事でもある、自由民主党のあべ俊子衆議院議員だ。質疑応答の際の「民主党に働きかければ、法改正はすぐに行われるのか」という質問に対して、あべ議員は次のように答えた。
「民主党の中に、何人かの表現の自由などを主張される方がいる。これは、その方々をみんなで嗅ぎつけて、なんとかなるものなのかも含めて、いま裏の人間関係を含めて調整しているところです。(表現の自由を主張する議員は)理論的なところではなく、個人的な価値観で指摘している」
いったい「裏の人間関係」とは、どういうものだろうか?
質疑応答では、「バーチャルな児童ポルノと子どもの相関関係を示している文献があれば、教えてほしい」という質問も。対する答えは「残念ながら、明確なものは存在しない」というものであった。
■規制に慎重な人々を閉め出した目的はどこにあるのか
今回の集会が昨年6月の集会と大きく異なったのは、まず第一に漫画やアニメなど「ヴァーチャルな子どもポルノ」にも、大きく踏み込む形で発言が行われたことだ。そして、もう一つ、集会参加が事前申込み制となっていたこと。その上で、児ポ法改定に慎重な立場を取る市民団体関係者の申込みに対しては「エクパットの趣旨に賛同している方向けの集会」であるという理由で、参加を拒否していることもわかっている。そこまで、集会を秘密にする必然性が、どこにあったのか甚だ疑問である。また、この日、幾人かの登壇者が発言したが、6月には児童ポルノ禁止の熱心な活動家であるスウェーデンのシルヴィア王妃が来日する予定だ。07年に彼女が来日した際にもスウェーデン大使館では児童ポルノの規制強化を求めるシンポジウムを開催している。6月には、ひとつの大きな山があるかもしれない。
(取材・文=昼間たかし)
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「分裂の危機を回避していきたい」ノイタミナ山本PがTAF問題に言及

東京都青少年健全育成条例(以下、都条例)改正に伴い、これに反発するコミック10社会が参加を取り止め、開催が危ぶまれていた東京国際アニメフェア(以下、TAF)2011だが、最終的には東日本大震災の影響により中止となった。TAFと同日に開催予定だったアニメコンテンツエキスポも中止となり、以後、この分裂状態は解消されていない。
イベントそのものが中止になってしまったため、TAF2011内で実施を予定していた「第10回 東京アニメアワードコンペティション」(以下、アニメアワード)の表彰式と「第7回 功労賞」の顕彰式も延期になっていたが、その式が10月10日、東京ビッグサイトで行われた。
この会場で一歩踏み込んだ勇気ある発言をしたのが、"ノイタミナ"の山本幸治プロデューサー(株式会社フジテレビジョンクリエイティブ事業局映像コンテンツ事業部)だった。ノミネート作品 テレビ部門 優秀作品賞に『四畳半神話大系』が選ばれ、受賞に際してコメントを発したときのことである。
「ノイタミナという放送枠を、もう7年くらいやっているんですが、『四畳半神話大系』という作品と湯浅政明という監督は圧倒的に個性的な人、作品でした。まさか、『ガンダム』(機動戦士ガンダムUC)や『けいおん!!』(2期)に並んで賞がいただけるとは思っていなかったですし、そんなアヴァンギャルドな作品に賞をくれるTAFのアワード、素敵じゃないか、と思っております。
ここからは個人的な話になるんですが、そんな作品やクリエイターを公に評価する、していただける場はなかなかありません。とても貴重な場だと思っておりますが、一連の都条例問題以降のゴタゴタは非常に残念で、力を合わせて、先ほど個人のクリエイターの方のおっしゃってきたように、"日本を元気にする"ため、分裂の危機を回避していきたいと思っております。我々も頑張ります」
公募作品で世界のクリエイターを、ノミネート作品で"アヴァンギャルド"なプロの制作者を、功労賞で道を切り拓いてきた先達を称え、あるいは奨励するアニメアワードは、山本プロデューサーがいうように貴重な場であることは間違いない。
今回、OVA部門では『機動戦士ガンダムUC』が優秀作品賞に輝いているが、同作品の小形尚弘プロデューサーが「なかなかこういった賞とはご縁のないロボットアニメなんですが、こだわりを持ってこれからも作っていきたい」と言うように、賞レース向きではないジャンルアニメに対しても優れた作品であればフェアに評価するという面を持っている。
しかし、それも片肺飛行では意義を失いかねない。TAF2012は来年3月22日から東京ビッグサイトで開催が決まっている。一方、アニメコンテンツエキスポに2回目があるかは未定だ。
統合か、それとも分裂か。あるいは片肺のままTAFだけが開催されるのか。この問題を決着させないとすっきりしない。いつまでも震災でうやむやにしておくわけにもいくまい。
功労賞の顕彰式は素晴らしかった。やはり長い人生を歩んできた人々の言葉は重く、そして深い。
『キューティーハニー』『魔女っ子メグちゃん』『ベルサイユのばら』『聖闘士星矢』で知られるアニメーター荒木伸吾のコメントに込められた思いは多くの制作者に共通するところかもしれない。
「私は約45年間アニメーションの原画を描いてきましたが、その中で自分が一番よかったなと思うのは、アニメを見て育った子どもたちが、私の絵を通して物語の中から素晴らしいものを夢描いてくれたことです。今になって本当に、アニメーションの原画を真剣に描いてきたことを、誇りに思います。アニメーターというのは非常に地味な存在で、でも一番肝心なところを受け持っている絵描きたちです。その人たちが、アニメーションの難しさの中で進んでいくには、目標が必要です。その目標を見失わないように、初めは苦しいんですが、目標に向かって自分を励ましながら描いていってほしいと、後輩たちに言いたいです。
私はこれからもアニメーションや漫画を描いて、その中から、自分としてここまでやってきたんだと、満足できるところまで......手が震えていますが(苦笑)、なんとか自分を励ましながらやっていきたいと思います。今日は本当に私だけじゃなく、アニメーターを代表してこの賞をいただいていきます」

冨永みーなが永井一郎に顕彰状を渡す。
今回は『サザエさん』の加藤みどり(フグ田サザエ役)、永井一郎(磯野波平役)、麻生美代子(磯野フネ役)、貴家堂子(フグ田タラオ役)が顕彰されている。サザエの弟、三代目磯野カツオ役を演じる冨永みーながサプライズゲストのプレゼンターとして呼ばれ、顕彰状を授与する際には、「ねえさん」である加藤みどりから笑いが漏れた。
日本の本格的な商業アニメには『鉄腕アトム』から数えて既に50年近い歴史がある。最大級の地震、津波、原発事故に襲われたことしがほぼ世紀の折り返し地点。ここからアニメをどうしていくのか。課題が突きつけられている。
受賞者と受賞作品は以下の通り。
◆アニメアワード《公募作品》/応募396作品
公募作品グランプリ 『Trois Petits Points』(フランス)
一般部門 優秀作品賞 『Thought of You』(アメリカ合衆国)『フルーティー侍』(日本)
学生部門 優秀作品賞 『HONG』(中国)『MOBILE』(ドイツ)
特別賞 『くちゃお』(日本)
企業賞 東京ビッグサイト賞 『SWING』(台湾)
CortoonsItalia 2011 『CHILDREN』(日本)
入選 『farm music』(日本)『ユートピアン』(日本)
◆アニメアワード《ノミネート作品》/415作品
アニメーション オブ ザ イヤー 『借りぐらしのアリエッティ』
テレビ部門 優秀作品賞 『けいおん!!』『四畳半神話大系』
国内劇場映画部門 優秀作品賞 『借りぐらしのアリエッティ』
海外劇場映画部門 優秀作品賞 『トイ・ストーリー3』
OVA部門 優秀作品賞 『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』
個人部門
監督賞:米林宏昌『借りぐらしのアリエッティ』、脚本賞:丸尾みほ『カラフル』、美術賞:武重洋二/吉田昇『借りぐらしのアリエッティ』、キャラクターデザイン賞:馬越嘉彦『ハートキャッチプリキュア!』、声優賞:豊崎愛生『けいおん!!』、音楽賞:CECIL CORBEL『借りぐらしのアリエッティ』
◆第7回 功労賞
有賀健、荒木伸吾、小隅黎、勝間田具治、浦田又治、雪室俊一、神原広巳、千蔵豊、加藤みどり、永井一郎、麻生美代子、貴家堂子
(取材・文・写真=後藤勝)
マンガ・アニメの未来はどうなる? またまた浮上した児童ポルノ法改定問題の行方

25日に開催された院内集会の登壇者。
(撮影=永山薫)
民主党代表選は野田佳彦氏の勝利に終わり、9月初めに臨時国会で新首相に就任する見通しだ。補正予算や関連法案の審議など、震災対応の課題が山積する臨時国会の中でマンガ・アニメファンから動向が注目されているのが、再び持ち上がった児童ポルノ法改定をめぐる審議である。
2009年6月、当時の与党だった自民・公明両党と民主党との間で一時は改定が合意された児童ポルノ法だが、この時の改定案は会期末の時間切れで廃案、直後の衆院選で規制に慎重な議員が多くを占める民主党が政権を得たことから、改定議論の再浮上はなかった。だが、今年6月になり、改定を求める与野党各党の議員らが改定と規制強化を求める院内集会を開催し、議論が再浮上してきたのだ。
これを経て、8月には自公両党と民主党がそれぞれ改定案を提出し、国会への審議がスタート。8月中には議論はまとまらず、次期国会での継続審議となっている。
2つの案の隔たりは大きい。自公両党は、児童ポルノの所持自体を禁止する「単純所持」規制の導入を柱に、マンガやアニメなどが児童ポルノが絡む犯罪の要因となっていることを重視し、政府による調査・研究も求めている。対して、民主案では「有償かつ反復の取得」を違法とした上で「専ら医学その他の学術研究の用に供するもの」に対する適用除外を明記するなど、犯罪となる基準を厳密にしようとする意思がみられる。また「この法律のいかなる規定も、架空のものを描写した漫画、アニメーション、コンピュータゲーム等を規制するものと解釈してはならない」と、マンガ・アニメへの規制を容認していない。
臨時国会での審議入りを前に、8月25日には規制強化に反対する立場から表現の自由の問題取り上げてきた市民団体・コンテンツ文化研究会主催による「児童ポルノ禁止法改正を考える院内集会」が開催された。平日の10時30分開会という時間設定にもかかわらず、70名あまりの一般参加者を得て開催されたこの集会、発言した上智大学文学部新聞学科の田島泰彦教授は民主案を評価しながらも、問題点を指摘した。田島教授が問題点として指摘したのは、民主案が自公案よりましながら、09年の案よりも後退していることだ。09年の民主案では、誤解を招きやすい「児童ポルノ」という用語についても「児童性行為等姿態描写物」への変更を求めていた。さらに「性欲を興奮させ又は刺激するもの」「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」等の曖昧な定義の改定もなされていたが、今回の案では手がつけられていない。そのため、田島教授は「自公両党との修正協議が心配である」と不安の色を隠さない。
続いて発言した、児童の人権保護に取り組む弁護士で、子どものためのシェルターを運営する「カリヨン子どもセンター」理事長の坪井節子氏は、単純所持の前にやるべきことがあると指摘。実際の性犯罪の被害の現場では、捜査機関が被害児童に対して「気持ちよかったか?」などと平気で聞くような現状があること、性的虐待を受けた子どもが生きていくために援助交際をし、さらに性的搾取されている構造があることなどを述べた。
また、日本インターネットプロバイダー協会の立石聡明氏からは、インターネットでの自主規制の努力が報告された。
さて、この集会は児童ポルノ法の「改悪」を防ぐ上で効果があったのか。
主催者であるコンテンツ文化研究会の代表・杉野直也氏は「議員に事務所関係者を合わせれば、2ケタは参加しているので、関心があることは間違いないでしょう」と話す。
その上で改定は避けられないが最悪の状況を避けなければならないと杉野さんは語る。
「児童ポルノ法を、一度の改定で理想的なものにするのは困難です。現行法でも"3年に1度の見直し"が定められているわけですし、ちょっとずつ理想の方向に持って行きたいと考えています」
多くの人が動向を見守る児童ポルノ法改定の行方だが、実際にできることは少ない。
「規制に慎重な議員の方々は、既に意思表明をしてくれているわけだから、今さらメールや手紙を送っても効果は薄いと思います。できることがあるとすれば、集会の際に坪井さんも話していたように、対策の遅れている実際に性虐待の被害にあっている児童の保護などの問題に(寄付をするなりの行動で)眼を向けることではないでしょうか」
昨年、「非実在青少年」の言葉が象徴となった東京都青少年健全育成条例改定問題では、議員へのメールや手紙は非常に効果があった。ところが、児童ポルノ法改定問題では、事情が違うことは明らかだ。お手軽な方法だけでは、問題は解決できない。
(文=昼間たかし)
「表現の自由」では許されない エロマンガ「自粛案」の顛末と、児童ポルノ法改定強化の危機
あきそら 2 アウアウ?(編)
ついにロリマンガ消滅へ 業界団体が示した「自粛案」の苛烈さ
7月からの改定・東京都青少年健全育成条例(以下都条例)全面施行を前に、出版業界内部で成年向けエロマンガを含めたロリコンものの自粛に向けた取り組みが計画されていることが明らかになった。一部の出版社からは、反発の声も挙がっており対立は深刻になっている。 新たな自粛の取り組みは、業界団体・出版倫理協議会(以下協議会)が設けた「児童と表現のあり方検討委員会」の席上で示されたもの。自粛案は「出版倫理協議会と出版倫理懇話会の申し合せ(案)」のタイトルで 1:いわゆる第二次性徴期を迎える前の、13歳未満と想起させる子どもをモデルとした漫画(コミック)を出版する際には、性交又は性交類似行為を連想させる表現は自粛する。 2:いわゆる第二次性徴期を迎える前の、13歳未満と思われる子どもを大人が凌辱するような行為を描いた漫画(コミック)の出版は自粛する。 以上の二点を求めている。 委員会から示された自粛提案に、出版倫理懇話会(以下懇話会)側の加盟各社は反発を強めている。協議会は64年に設立された日本雑誌協会・日本書籍出版協会・日本出版取次協会・日本書店商業組合連合会の4団体からなる、いわば業界大手を中心とした組織。対して、懇話会は85年に設立された、茜新社・コアマガジン・辰巳出版などが加盟するアダルト系出版社の業界団体だ。 「都条例がターゲットとしているのは、秋田書店や白泉社、双葉社などから出版されている成年向けマークを付与していないにも関わらず、同等の性行為を描写をしている漫画。これまで、区分を徹底してきたアダルト系出版社が煽りを受けるのは納得できない。そもそも、この自粛案は都条例よりも厳しい規制案ではないのか」(懇話会加盟社社員) 昨年の都条例騒動は、あくまで「成年向けマーク」を表示していないにも関わらず「過激な」性描写が行われているものがターゲットで、アダルト系出版社にとっては、いわば「対岸の火事」だった。突然の自粛協力要請は寝耳に水ともいえる。 ■「有害コミック騒動」の再現か アダルト系出版社が自社で発行する雑誌・書籍の表紙に自主的に表示する「成年向け」マーク。このマークの導入も協議会の提案で導入されたものだ。 発案されたのは91年のこと。前年から大手出版社が発行する青年向けマンガの性描写への批判をきっかけに、アダルトも含めて、あらゆるマンガで性描写の自粛が余儀なくされた「有害コミック騒動」への対応の一環であった。ところが、大手各社はマーク付き=有害と見られることから二の足を踏み、結果的に主にアダルト系出版社が利用するものになった。 「アダルト系出版社の間では"再び大手が自分たちのツケを懇話会加盟社に押しつけてきている"との声もある。構図は、90年代の騒動と似ている。もし、懇話会加盟社に(前出の)自粛要求を飲めというならば秋田書店の『チャンピオンREDいちご』は廃刊、双葉社はエロ系をすべてエンジェル出版(成年向けマーク付き出版物を発行する関連会社)に移行するくらいの措置を取って貰わないと納得できない」(アダルト誌編集者) 協議会が自粛案を示した背景には、東京都と出版界の対立構造に警察が介入することへの危機感が伺える。「有害コミック騒動」の最中の91年には、神保町の書泉ブックマートの店長らがワイセツなマンガを販売した容疑で逮捕されエロ同人誌約5,000冊が押収される事件も起こっている。 「東京都は、未だに強硬な姿勢を崩してはいない。7月からの改定都条例の全面施行に併せて成年向けや同人誌も含んだ、みせしめ的な摘発が行われる可能性も否定できない」(業界関係者) 昨年の都条例をめぐる騒動の中で、多数の名の知れたマンガ家や知識人の発言は立派だったが、肝心のエロ表現の是否は見過ごされていた。果たして既に自主規制が徹底され、書店でも18禁コーナーに置かれ、東京都も従来は「問題ない」としてきたマーク付きの雑誌・書籍も含めた「自粛」は必要なのか、感情的な対立も含めて出版社間の意見は簡単にはまとまりそうもない。この問題を扱う懇話会の会合は今月14日に予定されている。 (取材・文=昼間たかし)「LO」2011年5月号
トークライブで対決実現? 都条例をめぐる猪瀬直樹副知事の夕張雪かき騒動が新局面に

雪かきも出来ない夕張市の市街(上)と
ちゃんと雪かきもされている室蘭市(下)。
「ネトウヨは財政破綻した夕張を助けに行け。雪かきして来い」。昨年、東京都の猪瀬直樹副知事のTwitterでのつぶやきから、始まった「夕張雪かき騒動」が新たな展開を見せている。
この騒動、発端は、マンガ・アニメの規制を巡って対立した東京都青少年健全育成条例改定案だ。この最中の昨年12月5日、猪瀬副知事がTwitterで「表現規制ではない。デマゴーグに踊らせられているだけ」とつぶやいたところ、この問題を取材しているジャーナリストの昼間たかし氏が「ならば、その旨を取材させて下さい」と返答、すると猪瀬副知事が取材に応じる条件として、財政破綻で苦しむ夕張市での雪かきを提示したのだ。
これに、昼間氏と共に応じたのが、マンガ家の浦嶋嶺至氏。浦嶋氏は、一足先に今年1月21日に夕張を訪問し同市の社会福祉協議会の案内で雪かきを完了。取材の方法について猪瀬副知事と折衝を始めている。
昼間氏も、今月24日より開催される「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2011」に併せて、夕張を訪問し雪かきを行うことを表明。
「日本国内のみならず、海外からも注目される国際映画祭の開催中に、雪かきを行うことで海外の方々や、マンガ・アニメファンに限らない多くの人に、この問題を考えてもらいたい」(昼間氏)
単に取材しながらアピールするのかと思いきや、昼間氏は、映画祭の「スペシャルプログラム」として出品されている映画「彗星の降る夜に -バイオ・サバイバル@JK-」(監督:やなぎさわやすひこ)には出演者として名を連ねている。
この映画祭は夕張市はもとより、周辺地域の市民も参加し協力する、人の繋がりの濃いもの。猪瀬副知事が繰り返し賛辞を送っている元都庁職員で、夕張市長選に立候補を表明している鈴木直道氏も映画祭に参加するそうで、出演者自ら、雪かきをしながら問題をアピールするインパクトは大きい。
なにより、都条例のインタビューを通して脚光を浴びていることに、地元の人々が、どのような反応を示すかも、目が離せない。
■公開インタビュー実現に向け支援イベントも決定
様々な方向に飛び火し始めた、この騒動。ここに、新たな支援を表明したのがトークライブハウス・ロフトプラスワンをはじめとする「ライブハウスロフトグループ」席亭・平野悠氏だ。
平野氏は2月2日、「プラスワンで猪瀬副知事の公開インタビューをしたいと思っている。中継も行うつもりだ」と表明。早速、昼間氏がTwitterで「猪瀬直樹氏を、お招きしてロフトプラスワンにてトークライブを開催するプロジェクト始動」とつぶやいたところ、猪瀬副知事は即座に「勝手に決めても行きません」と反応。これに対して、平野氏は「それは猪瀬さん。上から目線過ぎませんかね?ミカドの肖像が泣きまする。あっ朝まで文化人でしたか?」と、反応するなど、騒動の加熱はもはや止めることができない。
平野氏は01年2月、当時ワイドショーでバッシングされていた野村沙知代氏が、新宿LOFTで「ニューロティカとサッチーの逆襲」というイベントに出演した際、キャスターの小倉智昭氏がフジテレビの番組『とくダネ!』で「この若者達は、いくらもらって来たの?」と客をサクラ扱いした発言に憤慨。「小倉あやまれ友の会」を結成しフジテレビの前をデモ行進。さらに、フジ株主総会に乱入するなど、フジテレビ役員から謝罪文を勝ち取るまで戦った「戦歴」の持ち主。
そんな熱い人物の参戦に加えて、昼間氏も「行きません」という猪瀬副知事に「ならば、雪かき後に提案する」と返答しており、トークライブでの公開インタビューは着実に実現の方向へと動いているようだ。
こうした熱いエールを受けて2月5日(土)と2月12日(土)には、イベント開催も決定。
トークライブの実現を支援するためにも、多くの人の参加が期待されている。
◆緊急決定!-浦嶋嶺至プロデュース-
「猪瀬副知事が『夕張で雪かきして来い、それなら会う。』と言うので雪かきしてきました。報告会」
▼日程
2月5日(土)
18禁ロリマンガはどう使われた? 東京都青少年課が行った情報隠蔽工作とは

東京都青少年・治安対策本部公式サイトより
昨年末、全国のマンガ・アニメファンを恐怖に陥れた東京都のマンガ規制条例こと「東京都青少年健全育成条例」改定案をめぐる騒動。改定案が成立したことで、騒動も一段落したかと思いきや、改定案の施行はこれからで、まさに「俺たちの本当の戦いはこれからだ」と言うべき状況だ。そうした中で、東京都の新たな情報隠蔽工作が明らかになった。
昨年6月、最初の条例案改定が否決されてから、都青少年課は都内各地のPTA・保護者団体・自主防犯組織などに出向き、条例改定の意義を理解してもらうための説明会を開催した。その回数は80回余り。12月に改定案が可決した最大の理由である民主党が賛成に鞍替えした背景には、このことが大きかったとされる。民主党の一部議員は、PTAなどの支持者から「エロ議員」と非難されることを恐れたのだ。この点で、都青少年課の目論見は成功したと言えるだろう。
問題は、PTAなどに対して都青少年課からどのような説明が行われたかということ。これまでブログやTwitterなどで漏れ聞こえている情報では、18禁マークのついた成年雑誌などを示し、あたかもこうした本が野放しになっているかのような説明が行われたとされていたが、確証を得ることはできなかった。
そこで、筆者は東京都に対して説明の際に使用した雑誌・書籍をすべて公開するよう情報公開請求を行った。
実は、昨年12月の改定案審議中にも民主党の松下玲子議員は非公式の打ち合わせで都青少年課の櫻井美香課長に対して、使用した雑誌・書籍のタイトルを明らかに示すよう求めていたのだが「その都度、誰が、どの本を使って説明したか明らかでない」と、櫻井課長は返答していた。そのため、どこまで公開するかまったく期待はしていなかった。
結論から言うと、公開されたのは表示図書(最初から出版社が18禁マークをつけたもの)と指定図書(都の審議会で不健全図書指定されたもの)が一冊ずつである。表示図書は、「コミックエルオー(LO)」(2010年5月号、茜新社)、指定図書は尾崎晶氏の『人妻爆乳アナウンサー由里子さん』(10年2月、双葉社)である。そして、表示図書・指定図書以外のもの、すなわち新たな条例で都が規制したいと考えているものは、一切が非公開とされてしまった。
正直、理解に苦しむ。「LO」は既に自主規制されており、書店で子どもの手に届くところには絶対に置かれていない。また、『人妻~』も現在の条例で規制されているものだ。つまり、これらを用いたということは、ブログやTwitterなどで喧伝されている「こんな酷いマンガがある」と誤解を招くような説明を行っていたという噂を裏付けることになる(そもそも、どのような説明が行われたかも、ほとんど明らかにはなっていない)。
さらに、表示図書・表示図書以外のものがすべて非公開にされた理由も不明確だ。非公開の理由として示されたのは「当該と書類が不健全図書類の指定の疑いがあると判断され、出版社に不利益を生じさせる」「公開することにより、不健全図書類の指定に関する業務の効果的遂行を不当に阻害するおそれがある」の二つだ。
とは言っても、PTAなどには見せているわけで、説明会を80回開催して一回あたり5人しか来なかったとしても400人。なぜ彼らには見せて、都民に広く公開することができないのか、理解に苦しむ。
PTAへの説明会に関しては、条例反対運動に反対する人物が情報公開請求した説明会を行った先の団体名もすべて非公開となっており、何が説明されたかを必死に隠そうとしているとしか思えない。
そもそも、表示図書・指定図書の公開が一冊ずつだけなのもおかしいと思い、「これだけですか?」と問いただしたところ「明らかなのは、これだけですね」と、都青少年課の小宮山みき係長は返答。この説明会の模様が描かれたブログ(http://hirometai.blog.so-net.ne.jp/2010-08-24-2)では、小宮青少年対策課連絡調整課長が説明を行っている写真が掲載されており、見たところ5冊はあるのだが?
いずれにせよ、改定された都条例の施行を前に情報を明らかにしない都の態度は自らの首を絞めているとしか思えない。自らの改定案に正当性があると思うなら、堂々と公開すべきだろう。それとも、このままのらりくらりと騒ぎが治まるのを、じっと待っているのだろうか......。
(取材・文=昼間たかし@『マンガ論争4』も絶賛発売中)
マンガ論争4 ふむ。
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