マンガ最大のタブー『ワンピース』──誰も語らないヒットの真相【前編】

──いまや、単行本の累計発行部数が2億部を突破したという『ワンピース』。その圧倒的な認知度や支持率の高さから批判的なコメントはもちろん、まともな批評すら許されがたい状況になっている。いったい何がファンを妄信的にとりこにしているのか。
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 2011年1月31日、集英社は「週刊少年ジャンプ」で連載中の尾田栄一郎『ONE PIECE(以下、ワンピース)』【1】の単行本60巻までの累計発行部数が2億部を突破したことを発表。2月末までに発売される同社全33誌の表紙を『ワンピース』にちなんだものにする「表紙ジャックキャンペーン」を展開。「non-no」4月号や「週刊プレイボーイ」8号などで、タレントがキャラのコスプレをして表紙を飾るなどしている。  こんな例を引くまでもなく、ここ数年の『ワンピース』人気の過熱ぶりには目を見張るものがある。ゲームやフィギュアなど、サブカルチャーのニオイのするコンテンツやプロダクトについて、浅い知識を自慢げに開陳し、一家言ある風を装いたがる矢口真里はご多分に漏れず、多くのタレント、芸人、ミュージシャンらがファンであることを公言。明石家さんままでもが、サンジが恩人のもとを離れ、麦わらの一味に加入するシーンで泣いたと発言している。  また、集英社の雑誌のほか、10年7月には「日経エンタテインメント!」(日経BP社)8月号の表紙にもルフィは登場し、この2月には『クローズアップ現代』(NHK総合)も同作のヒットの理由を探る特集を企画。本誌でも10年11月号で『ワンピース』バブルの過熱ぶりについて報じた。そして、09年末公開の映画『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』は興行収入48億円を記録し、1月にはアニメ版の制作や版権管理などを手掛ける東映アニメーションが、10年度の『ワンピース』の国内版権売り上げが第3四半期までに前年度通年の4倍近くとなる24億4900万円に上ると推計するなど、メディアミックス事業の成績も上々だ。

『ワンピース』批評はタブー化してる?

 かようにメガヒットコンテンツと化した『ワンピース』ではあるが、その半面、ベストセラーにはつきものの本格的な批評、評論にはなぜかめったに出くわさない。  前出「non-no」において専属モデル・佐藤ありさが「感動できるエピソードが続々と出てきてハマっちゃう」と語るように、ファンを公言するタレントの『ワンピース』評は「泣ける」「燃える」「熱い友情に感動」など、読後感を表すものばかり。「日経エンタテインメント!」が同作の魅力を「夢を抱き、仲間との友情を信じる熱いメッセージ性」「各キャラクターがそれぞれ人生の物語を持っている」「壮大な世界観」とするなど、メディアでの扱いもそう変わらない。 「それだけに、なぜ『ワンピース』が突出した人気を獲得しているのか。理由がよくわからないんですよ」  そう語るのは、『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』(築地書館)などの著書を持つ紙屋高雪氏だ。紙屋氏は10年6月、自身のブログに「なぜ『ワンピース』はつまらないのか?」というエントリを投稿。『ワンピース』は、続々と登場する強大な敵やライバルに打ち勝つスポーツマンガのように物語が進む作品と見受けられるものの、その割にルフィには敵を倒すための努力や勝つための戦略があるようには見えない。しかし、強い信念や決意を表明するための"名言"をことあるごとに絶叫してみせる。そのロジカルではない精神論は苦手だ、としたところ、はてなブックマークに400ものブックマークが寄せられた。 「あの一件では『読者は努力や理屈なんて求めていないのでは』『あのテンポの良さが魅力』『友情と離別の物語が面白いんだ』という指摘を数多く頂きました。それだけに、ロジックを求めた僕が野暮だったのかなぁ、とも思ったものの、じゃあ、なぜ別のマンガじゃダメなんだろう? という疑問も浮かんでしまった。たとえば『SLAM DUNK』【2】だって同じように友情や仲間との絆を描いた作品ですよね。もちろん『SLAM DUNK』もベストセラーですが、なぜ『ワンピース』はそれすらも飛び越えて、日本一売れているマンガたり得ているのか。はてなブックマークはもちろん、マンガ評論家の書評や雑誌の『ワンピース』特集などもマジメに追いかけてみたんですけど、作中に描かれた絆やバトルの素晴らしさを明確に語ることに成功している言説には、残念ながら出会えませんでした」(紙屋氏)  前出『クローズアップ現代』によると、その読者層の9割は19歳以上が占め、全読者の1割以上は50代以上だという。あまりにも多くの大人をそこまで魅了するワケが明確に説明されないのは不思議な話だが、紙屋氏は、その理由のひとつにファン層があるのではないか、と見る。
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茂木健一郎も大激怒! マスメディアの報道倫理は地に落ちたのか!?

──「日刊サイゾー」で話題のあの記事をただ読む以上に、さらなる知識を知りたいそんなアナタのために、話が100倍(当社比)膨らむ" プレミアム"な記事をサイゾー目線で厳選レビュー!
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『マスメディアは何を伝えないか』
 今月3日、京大カンニング騒動が、大手新聞の一面を飾ったことが波乱を読んでいます。今回の騒動を簡単にまとめると、先月25、26日に行われた京都大学の入学試験時に、受験者が試験問題をネット上に投稿して回答を募集しました。この一連のカンニング行為が、偽計業務妨害罪にあたるとして京都大学は被害届けを提出。刑事事件へと発展したこともあり、大手マスコミは連日この事件を大々的に報じています。  しかしその報道の過熱ぶりに対して、ネットを中心に批判が噴出。脳科学者の茂木健一郎氏は、自身のツイッタ―上で「クズ新聞、クズテレビ、クズ大学」とマスコミや大学を斬って捨てました。事実、同日には民主党幹部の献金疑惑なども取りざたされており、一受験者のカンニング行為をめぐる騒動がトップニュースとして伝えられることに、報道としての意義がどの程度あるのかは疑問が生じるところです。  こうしたマスメディアへの批判は、今回のカンニング騒動だけにはとどまりません。先月25日には、ニュージーランド地震を報じるワイドショー「とくダネ!」(フジテレビ)内の被災者インタビューで、レポーターが無神経な質問を繰り返していたとして非難の声があがりました。このように、現在、報道倫理に対して市民の目は厳しく向けられはじめています。  そこで今回のレベルアップ案内では、マスメディアの報道の意義を問う記事をピックアップ! ウィキリークスが揺るがすマスメディアの価値、大相撲八百長問題の裏にも潜む記者クラブの存在から、知的障害者の犯罪報道をめぐる議論まで──。ネット・ジャーナリズムが隆盛する現代。問われるマスメディアの価値はいかほどか!? 【日刊Pick Up記事】 「得をしたのはワイドショーだけ」京大カンニング騒動 受験生の逮捕は"生贄"か 2011日3月9日付(日刊サイゾー) 倒れた被災者に「ちょっとそのまま!?」 NZ震災報道で問われる日本マスコミのモラル 2011日3月1日付(日刊サイゾー) マスメディアの報道倫理を問う! プレミアムな記事紹介はこちら↓ 【プレミアムな関連記事】 [レベル1:台頭するネット・ジャーナリズム] ニュースサイトは新聞を殺すのか? 2009年1月号(プレミアサイゾー) もう死にかけてますけどね。 ウィキリークスは情報社会の9・11か 『日本人が知らないウィキリークス』 2011年2月21日付(日刊サイゾー) "ジュリアン・アサンジ"しか知らない人もぜひ。 尖閣ビデオとウィキリークスが突きつけた メディアの真価への問い 2011年1月号(プレミアサイゾー) YouTube画面をしたり顔で放送するテレビって......。 [レベル2:ちょう落するマスメディアへの信頼] マスコミ業界──広告費激減に揺れるテレビと堅実経営にシフトする全国紙の明暗 2011年2月号(プレミアサイゾー) テレビ局の使命は広告主の意向を伝えること!? マスコミが利権を持つという末期的状況とその打開策 2008年11月号(プレミアサイゾー) テレビ局・新聞社「俺らが日本全体を守ってる(キリッ)」 「噂の真相」元編集長・岡留安則が嘆く雑誌ジャーナリズムの諸行無常 2010年4月号(プレミアサイゾー) 新聞・テレビはもちろん、週刊誌やネットにもジャーナリズムは感じない!? [レベル3:報道をゆがめる記者クラブの罪] 「親方衆と一緒に旅行も」相撲御用マスコミに八百長疑惑の追及は不可能か 2011日2月19日付(日刊サイゾー) 身内の不祥事は極力報道しない、というプライド。 国民の敵か味方か!? 『記者クラブ』を断罪する!! 2010年2月号(プレミアサイゾー) 記者クラブの良いところを教えてもらいたいな。 [レベル4:マスコミの裏に透けて見える権力] 事件を密着取材していた民放キー局取材班の不可解な動き 2010年12月8日付(日刊サイゾー) 報道しないのがマスコミの正義なんですって。 [レベル5:報道倫理を見つめ直す] 事件報道はいかにあるべきか? "知的障害者"犯罪報道の是非 2009年3月号(プレミアサイゾー) 人権にまでかかわる同問題を真っ向から考えます。 プレミアサイゾー http://www.premiumcyzo.com/
笑う脳 今度の新刊は『キレる脳』かな? amazon_associate_logo.jpg

エジプト反政府デモが世界の経済システムを揺るがす!? 民主化をめぐるアメリカの誤算とは

国家とは、権力とは、そして暴力とはなんなのか......気鋭の哲学者・萱野稔人が、知的実践の手法を用いて、世の中の出来事を解説する──。
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第8回テーマ 「アメリカの覇権、その正当性」 [今月の副読本] 『千のプラトー 資本主義と分裂症』上巻 ジル・ドゥルーズ、フェリックス・ガタリ著/河出文庫(10年)/1260円 複雑に入り組んだ資本主義のダイナミズムをさまざまな手法で読み解いた著者らによる代表作のひとつ。抽象機械や戦争機械など、新たな概念を持ち込んだ、現代人のための倫理指針としても名高い一冊。

 2011年になって中東地域が一気に揺らぎ始めました。まずはチュニジアで大規模な反政府デモが勃発し、23年も続いたベンアリ政権が崩壊しました。次にエジプトでも反政府デモが全土に広がり、30年にわたって強権支配を続けてきたムバラク大統領は、次期大統領選には出馬しないことを表明しました(2月1日現在)。こうした反政府デモの動きは中東各地に飛び火し、この地域の長期独裁政権を次々と揺るがしています。例えばイエメンでも、南北イエメン統合後約20年にわたって大統領の地位に就いていたサレハ大統領が、任期が終わる13年で退陣することを表明しました(2月2日)。ヨルダンでも2月1日に、アブドラ国王が抗議デモを受けてリファイ首相を更迭しています。  もしかしたらこれら一連の動きは、1989~91年に東欧の社会主義国が民主化した動きに匹敵するくらい、大きな歴史的転換をもたらすかもしれません。ただし民主化といっても、今回は、民意を受けたイスラム原理主義がこの地域で広く台頭してしまう可能性もなくはありません。かなり流動的な状況にあるわけですね。  では、何がこうした流動的な状況を中東地域にもたらしたのでしょうか。もちろんそこには、政権の腐敗や失業率の上昇など、さまざまな要因があります。が、もう少し大きな歴史構造的視点から見ると、03年のイラク戦争がひとつの遠因になっていることがわかります。  どういうことでしょうか。それを理解するために、まずはイラク戦争の原因について考えましょう。  なぜブッシュ政権のアメリカがイラクを攻撃したのか、という問題については、いろいろな原因を考えることができます。当初、アメリカはイラクが大量破壊兵器を密かに保有していると主張し、自国の安全保障のためにイラクを攻撃しようとしました。しかし、国連による全面査察が行われても、アメリカが主張するような大量破壊兵器は何も出てこず、結局アメリカは理由が曖昧なままイラク戦争に踏み切りました。イラク戦争後のアメリカによる占領統治においても、大量破壊兵器は見つかっていません。  このような経緯から、アメリカがイラクを攻撃したのは、イラクの石油利権を牛耳りたかったからだ、という説が多くの人から聞かれるようになりました。しかしこの説はそれほど正しくありません。というのも、70年代に産油国では資源ナショナリズムが勃興し、イラクを含めた中東産油国の油田資産はほとんど国有化されてしまったので、たとえアメリカのような覇権国であっても、戦争によって中東地域の石油利権を牛耳るなどということは、そもそも不可能だからです。事実、イラクでは03年4月のフセイン政権崩壊以降、新たな石油開発はほとんどなされず、09年になってようやく、外国の石油資本が油田開発権を獲得するための国際入札が行われました。そして、この入札によってイラク政府が外資と結んだ石油開発契約12件のうち、アメリカ資本は2件しかかかわっていないのです(アメリカ資本がオペレーター企業になれたのは、そのうちの1件だけです)。さらにいえば、アメリカの全石油消費量のうち、中東地域からの輸入原油の比率は1割台しかありません。約9割の日本とはまったく対照的です。中東産の原油に対するアメリカの依存度は驚くほど低いのです。アメリカにとって、イラクの石油利権を軍事力によって無理やり牛耳らなくてはならない必要性はどこにもなく、またそれができる可能性もないのです。  イラク戦争と石油ということでいうならば、むしろ00年にフセインが、今後は石油輸出代金の決済をドルではなくユーロで行うと宣言したことのほうが重要です。なぜなら、それはドル基軸通貨体制の根幹に挑戦するものだったからです。
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ウォール街の保安官を"ハメた"のは誰だ!?

──雪に隠れた岩山のように、正面からは見えてこない。でも、映画のスクリーンを通してズイズイッと見えてくる。超大国の真の姿をお届け。
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『クライアント9/エリオット・スピッツァーの興亡』  圧倒的な票差により、07年のニューヨーク州知事に就任したエリオット・スピッツァーをめぐる政治ドキュメンタリー。あまりの人気ぶりに、一時は「米国大統領に」との声も聞かれたスピッツァーだが、高級デートクラブの上客だったことがニューヨーク・タイムズで報じられた。州知事就任前の州司法長官時代、多くの売春組織を摘発したという彼の経歴が、件のスクープにつながったと見る向きもあるが......。 監督/アレックス・ギブニー 日本での公開は未定。

 2008年3月10日、ニューヨーク・タイムズ紙が、FBIによる高級デートクラブ摘発を報じた。裁判所に提出された書類によると、首都ワシントンのホテルでコールガールと会っていたクライアント(顧客)ナンバー9は、ニューヨーク州知事エリオット・スピッツァーだった。FBIは電話盗聴でその事実を確認した。  スピッツァーはニューヨーク州の司法長官として徹底的に大企業と戦ったヒーローだった。株の違法捜査や独禁法違反を取り締まり、NYSE(ニューヨーク証券取引所)の会長すら収賄で起訴し、「ウォール街の保安官」とたたえられた。ソニーがラジオ局に払っていたペイオーラ(賄賂)を摘発して莫大な罰金を払わせたこともある。  その勢いでスピッツァーは州知事に立候補し、史上最高の得票数で当選。腐敗しきった州政府の浄化を始め、州民の圧倒的支持を集めた。「ユダヤ系で初の大統領になるかも」とすら言われた。  その英雄がコールガールにはまっていたとバレた。成人男女が同意の上で金銭を介在したセックスをすること自体を罰する法律はない。しかしスピッツァーは州司法長官時代にウォール街の高級コールガール組織を取り締まったことがある。「偽善者め」。州民の信頼は既に地に落ちた。スピッツァーは州知事辞任を表明した。記者会見では、スピッツァーの横に奥さんが般若の形相で立っていた。  しかし、スピッツァーのウォール街取り締まりは正しかった。それは08年の金融崩壊で証明された。彼がその後も政治家として活躍していたら、世の中はプラスになっていたかもしれない。 「今回のスピッツァー追及は政治的陰謀だ」。クリントン大統領の選挙ブレーンだったジム・カーヴィルは、スピッツァーは敵を増やしすぎたから標的にされたのだ、と論評した。  確かにおかしい。国家的犯罪を担当するFBIがなぜ、小さなデートクラブをわざわざ捜査したのか? 顧客の中で、なぜスピッツァーだけを盗聴し、特定したのか? そもそも誰がその書類をニューヨーク・タイムズにリークしたのか?
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自殺は個人の問題ではない! 社会問題解決のため、我々がなすべきこと【前編】

若手専門家による、半熟社会をアップデートする戦略提言 ■今回の提言 「社会からの『排除』解消に政権をもっと利用しよう!」
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ゲスト/清水康之[NPO法人ライフリンク代表] ──社会の現状を打破すべく、若手論客たちが自身の専門領域から日本を変える提言をぶっ放す! 今回のゲストは、NPO法人「ライフリンク」代表として自殺問題に取り組む自殺問題に取り組む清水康之氏。13年連続で自殺者が3万人を超えるこの国で、その対策が待ったなしであることは一目瞭然。今為すべきことで、できることはなんなのだろう?

荻上 今回お招きしたのは、自殺対策支援センター「ライフリンク」の代表である清水康之さんです。先日、菅直人首相らが「一人ひとりを包摂する社会」特命チームを作り、「一人暮らし高齢者、児童虐待、不登校、DV、離婚、貧困、非正規雇用、孤独死、自殺」といった問題やその可能性を抱えた人たちが孤立しない社会を作るために邁進するという旨を発信しました。この特命チームのメンバーに、貧困問題の湯浅誠さんと並んで抜擢されたのが、清水さんでした。  これまで、自殺の問題について国が本腰を入れて対策を考えるということはなかなか進まなかったわけですが、「無縁社会」「孤族」といったキーワードを大手メディアが積極的に報道しているように、今まで焦点が当たらなかった個人の悩みや問題行動を社会がケアすべきだという気運が高まっており、政府もようやく重い腰を上げたように映ります。排除型社会から包摂型社会へという流れは、菅直人がかねてから言っていた「最小不幸社会」という理念の延長線上にあるのでしょう。こうした動きを、清水さんはどう評価されていますか? 清水 今回の特命チームは、社会的排除に遭っている人たちへの直接的な支援をするということだけではなく、人が社会から排除されていくメカニズムをちゃんと解明して、その大元になっている問題に修正をかけていく、あるいは拡散のメカニズムを明らかにして、リスクの封じ込めを図れる社会にしていく、という問題意識で行われています。  これまでは自殺の問題にしろ貧困の問題にしろ、虐待、高校中退、あるいは孤独死、介護疲れなど、さまざまな局面で出てきている問題がバラバラにとらえられていて、それぞれで手当てをしようというものでした。あるいは、せいぜいそこから少し踏み込んだ形の対策にしかなってなかった。それらの問題が全体としてどう重なり合っているのか、どういう因果関係を成しているのか、というところまでは分析してこなかったんですね。そもそもそれ以前に、分析できるようなデータがなかった。  そこで特命チームでやりたいと思っているのは、まさにそうした社会問題の噴出の仕方を解明し、そこに踏み込むことです。これまではそうした時代的なニーズを市民の側が訴えてこなかったし、あるいはある程度やり過ごせるくらいの規模の問題だった。しかし、それが今はもうやり過ごせなくなっているし、メディアからの追い風もあるので、この際だからきっちりやろう、ここできっちりやらなければ、ということで、現場で活動してきた私や湯浅さんと官邸とが、一致結束して踏み出しました。水際の自殺対策だけではない、ある分野だけの解決策だけでもない、包括的な枠組みで進めていこうという特命チームの動きが可能になったのだと思います。

セクショナリズムを超える調査法の確立を

荻上 これまでの社会は、制度面でも関心面でも「社会問題のセクショナリズム」に陥っており、そのために効果的な施策に結びつかないという欠点がありました。自殺に限らず、無宿者、売春婦、非行少年など、社会が問題だと考える行為をする者の多くは、経済、家族、教育、病気など、複合的な要因の帰結としてあるわけですが、多くの場合はその表出面としての「社会問題行為」のみを取り締まるだけにとどまり、背景にある問題群に対する総合的なケアの議論は遅々として進まなかった。  しかし気づかされるのは、別々の「社会問題行為」であっても、背景にある要因はかなり似通っているということです。そのため、「社会問題行為」を発見するためのワンストップ窓口と、関連する複数の対策組織のネットワークを作っていく。そうして「自殺対策」に限定されない、さまざまな問題に対しても、より大きな枠組みでの対策を築き上げていく必要がある。それは当然ながら、官僚組織のタテワリを打破しなくては実現しがたいことでもあるわけですね。 清水 そうです。これは行政の枠組みの中では、ある意味パンドラの箱を開けるような行為になるので、各省庁の合意を得てから進めるというのは難しい。だから官邸主導で進めていくしかない。もちろん、そこは単純に官僚を排除するのではなく、それぞれの省庁の枠にとらわれない、本当に国益のことを考えているスーパー官僚といえるような方々に協力していただきながらですが。  我々が腹を決めているのは、「調査をやる」と決めさえすれば、おのずと調査の結果が語りだしてくれるはずだということ。今この社会で何が起きているのか、何が問題でどういう対策が必要なのかを、我々自身が訴えるんじゃなくて、徹底的に調査をして、その客観的なデータに語らせる。そうすればおのずとパンドラの箱は開いて、そこから対策は進めざるを得なくなるだろう。そういう覚悟で今やっています。 荻上 「近代看護の母」であるナイチンゲールは、統計学をふんだんに用いたことで有名です。今から約150年前、クリミア戦争の兵舎病院にて多くの死者を出す原因が、直接の傷にではなく感染症などにあることを突き止め、膨大なデータを政府に突きつけて衛生管理と予防医学の重要さを訴え、医療改革を要求しました。優れた調査は、社会問題を可視化し、早急な応答を要求する力を助けます。しかしこれまで日本では、 本当のニーズを掘り起こすための統計という力を過小評価し、必要なデータが取られずにきました。  反貧困運動のひとつの成果に、民主党政権下における貧困率調査を復活したことが挙げられます。社会の不幸の数というのは、そのまま国政の失点にカウントすべきものですから、「これだけの不幸を放置したままでいるのか」と訴えるためのデータは最大の武器になります。清水さんが携わっておられる自殺統計もその最たる例ですね。まずはデータを取りそろえて国に直談判をし、より大きなデータを取らせて対策を迫っています。今後、清水さんはどういった活動を展開していくのでしょうか?
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不況なんてどこ吹く風 アイドルたちもすがるアダルト業界の深~い話

 雑誌「サイゾー」の中身が月額525円で読めるWEBサイト「プレミアサイゾー」。今ならそんな「プレミアサイゾー」が無料で読めてしまう「無料購読」キャンペーンを2月いっぱいまで実施中です!  そこで、本日は「日刊サイゾー」読者の皆様に「プレミアサイゾー」の魅力を知っていただくべく! オススメの記事をご紹介します。
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中澤裕子写真集『Feather』より。
 長年、叫ばれ続けている日本の不況ですが、特に"テレビ離れ"や"音楽セールスの不振"で、エンタメ業界の景気はいっそうお寒いご様子。そんな中、元モーニング娘。の中澤裕子が昼ドラで濃厚な濡れ場を演じたかと思えば(参照)、後藤真希の弟である後藤祐樹(現在、服役中)にAV出演の噂が浮上するなど(参照)、かつてのアイドルたちもアダルトな路線を目指すことによって、再起をかけることが増えているようです。元々、アダルト業界は不況に強いという定説もあり、同業界は冷え込みが続く日本経済のカンフル剤として奮闘しています。そこで今回は不況下でも元気な『アダルト業界』を大特集! これを読めば無修正のアダルト業界が見えてくる!? 気になる今日のキーワード 『アダルト業界』 【2011年3月号】 ◎世界に冠たるフーゾク大国日本で歴史ある「裏風俗」が壊滅寸前の危機!? 【2010年11月号】 ◎エロサイト閲覧とSNSはヤリまくってもSEXは堅実──デジタルネイティブは性のニュータイプなのか? 【2010年9月号】 ◎ガチ素人、女装ゲイ、尻毛美人妻 ジャンル背景を問い直す問題作──二村ヒトシ[AV監督] 【2010年7月号】 ◎iPadより気持てぃ〜イイ!? 専門家が伝授するオナニー向け最新デバイス 【2010年6月号】 ◎死を賭してでも発射したい"超"快感な「ヤクザなオナニー」ってなんだ? 【2010年4月号】 ◎篠山紀信の"やり方"はまずかった? AV屋が語る"屋外ヌード撮影道" 【2010年3月号】 ◎おとなのおもちゃにもっと光を! エムズが切り開いたエロの荒野 【2010年2月号】 ◎夏目ナナ×森下くるみ「女の子がみんな可愛くなって、平均が上がっちゃった」 【2009年11月号】 ◎もはや"裏"の時代は終わった!! 無修整AV大国ニッポンの実態【1】 【2009年6月号】 ◎オトコなら買わずにどうする! オンナも感じる"ベストエロ"写真集【1】 2月中は無料で全部が読めちゃうキャンペーンの詳細はコチラ↓ プレミアサイゾー「無料購読」キャンペーンのお知らせ

バトル系マンガの名作に学ぶ"サクサク進むこと"の大切さ

アイドルと学ぶ"二次元作品"魅惑の世界──。アニメ、マンガにゲームまで、SKE48の舞台裏講座が開講です! [今月の教材] 『幽☆遊☆白書』
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──9回目にして、ついに二次元同好会の会長であるチームSの松下唯さんにお越しいただきました! 記念すべき今回は、今年1月より冨樫義博先生の『レベルE』(テレビ東京)のアニメが放送開始されたことに絡め、先生の代表作『幽☆遊☆白書』(共に集英社)、通称『幽白』について語っていただきます。 松下唯(以下、) 会長を名乗っておきながら申し訳ないんですが、私、『幽白』よく知らないんですよ......。アニメ放送時にチラチラ観ていた記憶はあるんですけど、幼かったので内容を覚えていなくて。それに基本的には女性向けの作品が好きなんですよね。「ネオロマ」【1】とか。 古川愛李(以下、) お! ウチも最近、「ネオロマ」の作品について勉強中なんですよー。声優の小野坂昌也さんが『ネオ アンジェリーク』シリーズに出ているので。 中西優香(以下、) 小野坂さんって、あいりん推しじゃなかった?  そうなんです。それもあって、小野坂さんにハマり始めました。 ──なんて現金な......。平松さんは『幽白』、ご存じですか? 平松可奈子(以下、) 知ってますよ! 明治時代のお話で......。  違う! それは次回のテーマの作品だよ!(笑)  あ、間違えた。『幽白』は妖狐【2】って人が犬夜叉に似てるやつか。 ゆいみんと同じでアニメは観てたけど、ちっちゃい頃だから記憶が......。  私たち、リアル世代ではないもんね。私もアニメのほうはよく覚えていないんだけど、マンガを読み返して思ったのは、『幽白』はテンポの速さがいい。バトルを軸にしたマンガだと、ひとりの敵との戦いを長く描き過ぎて、「中だるみしちゃってるな」って感じることも多いけど、『幽白』はわりとサクサク決着が付くの。意外と、全部で19巻しかないし。  アニメが3年くらい続いていたせいか、もっと長そうなイメージがありますよね。
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日夜悪魔と戦い続ける男! 「幸福の科学」大川隆法総裁ってどんな人?

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「幸福の科学」公式HPより。
 雑誌「サイゾー」の中身が月額525円で読めるWEBサイト「プレミアサイゾー」。今ならそんな「プレミアサイゾー」が無料で読めてしまう「無料購読」キャンペーンを実施中です!  そこで、本日は「日刊サイゾー」読者の皆様に「プレミアサイゾー」の魅力を知っていただくべく! オススメの記事をご紹介します。  今月17日発売の「週刊新潮」(新潮社)および「週刊文春」(文藝春秋)で伝えられているように、現在宗教法人「幸福の科学」総裁の大川隆法氏とその妻・きょう子氏の争いが取りざたされています。きょう子氏が教団の実態を暴露したかと思えば、負けじと大川総裁も"霊言"(霊を自らの体におろした状態で語られる言葉)で反証するなど、その戦いは過熱する一方。きょう子氏は「週刊文春」で教団側を名誉棄損で訴えることも示唆するなど、この騒動は法廷にまでもつれこむかもしれません。サイゾーでは、そんな「幸福の科学」にかねてから注目してまいりました。そこで今回は「幸福の科学」にまつわる記事をまとめてご紹介。今後の動向を占う意味でも、エル・カンターレ(注:大川隆法総裁のことを指す)の霊言を心に刻み込んでおきましょう! 気になる今日のキーワード 『幸福の科学』 【2011年2月号】 ◎【ワールドゲイナー】──幸福の科学が放ったトレカに、大川総裁が魂の助言! 【2010年12月号】 ◎幸福の科学がついに出版した池田大作守護霊の霊言本の中身 【2010年8月号】 ◎「坂本龍馬の子孫や右翼からクレームはないのですか?」元祖・大川総裁が霊言本のギモンを教団に直撃!! 【2010年5月号】 ◎有名マンガ家が描いた隠れた名作・力作が勢ぞろい! この「宗教マンガ」を読め! 【2010年4月号】 ◎教育改革は宗教から始まった? 歴史から見る宗教と教育の深〜いカンケイ ◎幸福の科学学園理事長が目指す教育改革「ライバルはラ・サール!」 【2009年10月号】 ◎学会との諍いとカルトの壁 幸福実現党元党首、敗戦の弁 【2009年9月号】 ◎大川総裁夫人までドサ回る幸福実現党捨て身のドブ板運動 【2009年8月号】 ◎「政治と宗教は不可分だ!」 動き出した幸福実現党の怪 【2009年7月号】 ◎静かなるベストセラー作家・大川隆法の"華麗なる来歴"【1】 今なら無料で全部が読めちゃうキャンペーンの詳細はコチラ↓ プレミアサイゾー「無料購読」キャンペーンのお知らせ

アメリカを疑心暗鬼にする コモンセンスの欠如と空洞化【前編】

──ビデオジャーナリストと社会学者が紡ぐ、ネットの新境地
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 今年1月、アリゾナ州で起こった下院議員を狙った銃乱射事件は、オバマ政権誕生による保守派とリベラル派の党対立が色濃く投影されているものと見られている。犠牲者を追悼する式典に出席したオバマ大統領は、改めて"アメリカのため"の融和を訴えた。だが、日本屈指のアメリカ研究家である渡辺靖氏は、アメリカ建国の根底には保守思想が色濃く残っていると指摘する。かつて、クリントン政権の民主党がそうであったように、オバマ大統領も保守・共和党との中道政策を見いだすのだろうか? 日本にとって最重要国であるアメリカの"今"を考える──。 今月のゲスト 渡辺 靖[慶應義塾大学環境情報学部教授]

神保 今回のゲストは、最近『アメリカン・デモクラシーの逆説』(岩波新書)を書かれた、アメリカ研究がご専門の慶應義塾大学環境情報学部・渡辺靖教授です。  ここでは、1月8日にアリゾナ州で起こった銃乱射事件を受け、アメリカ国内にある保守とリベラルの対立について掘り下げたいと思います。また、1月20日でオバマ大統領が就任2周年を迎えました。ちょうどその時期に中国の胡錦濤国家主席が国賓としてワシントンを訪問しているので、米中関係についても議論していきます。 宮台 対中問題は、アメリカを考える上での良い切り口になると思います。大統領が誰であれ、中国の台頭には現実的に対処するしかありません。ところが、特にアメリカの場合、現実主義的な路線を選択しようとすると----選択するしかないのですが......国民の間で理想主義という名の感情的表出が生じ、結果として国内の分裂が広がってしまう。渡辺さんの本のタイトルにもある通り、これまでもそうした「逆説」が繰り返されてきましたが、それが今後ますますひどくなるのかと思うと、滅入ります。 神保 さっそくですが、アリゾナの銃乱射事件について議論したいと思います。渡辺さんは、この事件をどう見ますか? 渡辺 ティーパーティー運動の中間選挙での躍進、強硬な移民取締法の可決、そして今回の銃乱射事件──アリゾナ州で起こった3つの出来事は、つながっていると考えます。  根底にあるのは、政府に対する本質的な警戒心であり、「アメリカを連邦政府から取り戻せ」という発想。例えば、ティーパーティーの躍進は、政府が大きくなることについての不満の表出であり、移民取締法の可決は、政府がこれまで移民に対して寛容な態度を取り続けたことに対する不満が表れています。そんな流れの中で、銃乱射事件が起こってしまった。    日本には「政府から国を取り戻せ」という保守は存在せず、これが日米保守の決定的な違いです。アメリカの中には、さまざまな民兵組織や人種差別団体がありますが、よく見ると彼らの主張は共通している。すなわち「連邦政府が寛容な態度を取りすぎた結果、本来アメリカにとってあってはならないことが起きている」という主張です。今回の事件をただの「銃乱射事件」に短絡するのは間違いであり、僕は保守のあり方そのものに関する問題を含んでいるのだという印象を持ちました。 神保 ちなみに、バージニア工科大学でも07年に銃乱射事件が起きています。マイケル・ムーアが『ボウリング・フォー・コロンバイン』で扱った、99年のコロンバイン高校の事件も含め、アメリカでは銃の乱射事件が何度も起きていますが、今回の事件が過去と共通する部分、あるいは異なる部分はなんですか? 渡辺 今回の事件で、民主党の議員の中からは、銃規制を求める声が出てくるでしょう。しかし、これだけの事件を経ても、おそらく銃問題が解決に向かうことはない。アリゾナでは事件発生後、自己防衛のために銃を買う人の数が増えていますし、民主党の議員は全米ライフル協会のようなロビイストの影響から、規制に賛成することができない。そういう意味では、同じようなパターンが繰り返されていると思います。 宮台 僕には、アメリカ国民の「コモンセンスに対する信頼」が失われているとの懸念があります。「銃のせいで凶悪犯罪が増え、それに対する防衛意識で、ますます銃が売れる」という悪循環のせいで、非合理的な水準にまで社会がセキュリティ化し、コミュニティ分断化・相互不透明化・疑心暗鬼化が進んでいます。それが格差放置と犯罪増加につながり、ますます防衛意識が広がって先の悪循環が強化されます。こうしてコモンセンスが崩れます。崩れれば「昔のアメリカはこうじゃなかった」との思いからティーパーティー的表出に拍車がかかります。 渡辺 その結果、コモンセンスの背後に陰謀論を読み取ってしまう。例えば、医療保険改革についても、「民主党は中絶を保険の対象にして、中絶を容認するような社会を作ろうとしているのではないか」と、パラノイア的に分裂しているところがあると思います。 宮台 現状への不満や抑鬱が、政策的な手当の有無という現実主義的問題ではなく、〈最終目標〉たる建国理念への理解無理解という理想主義的問題に、意味加工されちゃう。これでは現実主義的態度が疑心暗鬼の対象になって当たり前。  アメリカの法哲学者ロナルド・ドウォーキンも指摘しますが、オバマ政権の政策は国民一人ひとりの利益を増進させるもので、全体として理に適っているのに、理に適った政策が激烈な対立を生み、オバマ政権への否定的感情を広げています。客観的には理に適った政策でも、主観的には感情的憤激を招き、理に適った政策で救済されるはずの弱者が、政権に敵対する、という逆説です。    日本でも05年総選挙で同じことが起きました。「政府を小さく、社会を大きく」という新自由主義への、誤解に基づく小泉政権の市場原理主義政策で、最も苦しむことになる都市的弱者が、既得権益構造の一掃という一点でカタルシスを得て、小泉政権に熱狂した。「弱者が、感情的表出を、自らの首を絞める政治に結びつける」といった馬鹿げた事態が多くの先進国で起こっています。コモンセンスが空洞化し、不満が不安と結びついた結果、理に適うか否かへの関心よりも、表出機能の有無にばかり関心が集中するようになります。 渡辺 例えば、ダラスの北方に位置する、ある選挙区には、医療保険未加入者が30%もいます。ところが、その地域は医療保険制度改革に猛烈に反対している。また、モンタナ州の小さな農場を訪ねたとき、「政府から補助金をもらうことは考えないのですか?」と聞くと、非常に苦しい生活の中でも、彼らは「今の自分たちの苦境は、政府の力が大きすぎることが原因なんだ」と答えました。もっとも、それに対して「自分たちの生活が苦しいのは、政府が適切な判断をしていないからだ」という人もいて、なかなかコモンセンスが見いだせません。 神保 アメリカ史を勉強する上で必須の本に『コモンセンス』(トーマス・ペイン)がありますが、一般にはそのコモンセンスが共有されてアメリカという国ができたのだと理解されています。しかし、実際には建国時から、そうした対立が内包されていたということでしょうか? 渡辺 おそらくそうでしょう。合衆国憲法が批准されて、ジョージ・ワシントンが初代大統領の宣誓をしたときに、実はノースカロライナとロードアイランドは、まだその憲法を認めていなかった。だから、当初から政府が「自由を保障する存在」なのか、「自由を制限する存在」なのか、という認識が一致していなかったと考えられます。それが地域的にはっきりと顕在化したのが南北戦争であり、特に80年代あたり、レーガン政権から現代的な意味でのコモンセンスのズレが顕著になってきた印象があります。 宮台 ヨーロッパにはフランス革命後の悲劇から「自由こそが社会の〈最終目標〉なのか」をめぐって自由主義と保守主義の対立があります。アメリカは最初から自由が〈最終目標〉で、この意味での保守主義はありません。代わりに自由主義の内部に、「自由になるために必要な前提を整備するのが政府の役割で、政府は自由実現に不可欠」とするリベラルと、「政府に依存する自由は真の自由でなく、個人の内発性を支えとするものだけが自由だ」とするリバタリアンが分岐します。後者は所有物や家族などの近接性以外を信じないので、旧ヨーロッパのアナキズムに似ますが、アメリカと違って政府を懐疑せずに政策を議論するヨーロッパではアナキズムは傍流です。自由懐疑が議論され、国家を疑わない(アナキズムを切除した)ヨーロッパと、国家懐疑が論争され、自由を疑わない(保守主義を切除した)アメリカとの、対比です。 神保 渡辺さんは著書の中で、ヨーロッパでは「リベラルと保守の分裂」だが、アメリカの場合は「自由を前提としたリベラル内のお家騒動」だと書かれています。近親憎悪のようなものも、対立を激しくする要因なのでしょうか?
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まだまだグローバル化は遠い!? 日本企業のアウトソースへの障害

──激変するITビジネス&カルチャーの深層を抉る!  もはや当たり前のように使われる言葉となった「アウトソーシング」。だが日本企業においては、いまだに進んでいないところが大半だ。海外市場で勝つために欠くことができない手法を、なぜ積極的に取り入れないのか? 背景には企業のIT化のいびつさがあった──。
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どこが最初に崩壊するかのチキンレース!?  グ
ローバル化の波はもう足元まで。
 BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)というビジネス手法がある。簡単にいえば、それまで会社の中で行っていた業務をどんどん外部に出してしまうこと。アメリカの産業界ではこのBPOがものすごい勢いで進んでいて、これが結果として中国やインドなどの新興IT国の大きな収入源のひとつとなっている。  どういうことだろうか。わかりやすい例でいえば、パソコンメーカーは従来はサポートセンターを自社で持っていた。この社内サポートセンターを廃止し、外部に出してしまう。同じ国内だと人件費がかかるから、インドやフィリピンなど英語が使えて、しかも人件費が安価な国の企業に外注に出してしまうわけだ。  このBPOで外部化された業務を請け負う「アウトソーシングサービス」と呼ばれる業態はビッグビジネスになっていて、国外アウトソーシングに限っても市場規模はすでに数十兆円ぐらいに達している。その牽引役はアメリカと、請負側としてのインド・中国だ。  BPOのカバーする範囲はサポートセンターや工場だけではない。今では経理や人事、福利厚生、総務関連など管理部門の大半が含まれてきている。さらには営業や技術も外部化することは可能で、極端なことをいえば「経営判断だけの部分を会社に残し、残りはすべてアウトソース!」などということだってあり得る。社員はゼロで、役員しかいない会社になることも考えられるということなのだ。  日本ではどうか。実は日本ではBPOは遅々として進んでいない。少し古くなるが、2008年に経済産業省のBPO研究会が報告書をまとめていて、こんなふうに書いてある。「国内において、BPOを利用して競争力向上をはかろうとする動きは未だ乏しい。また、BPOベンダー企業に着目すると、外国企業がグローバルプレイヤーの大半を占めており、日本企業が高い国際競争力を持ち得ていない状況が推察される」  つまり日本は、企業の側が自社の業務をアウトソース化する熱意に乏しいし、逆にユーザー企業のBPOビジネスを請け負う側にも回れていないということだ。  特にこの前者の「自社の業務をアウトソース化したがらない」という部分が非常に問題だ。報告書では、その理由を次のように並べている。原文はお役所文章なので、かなりわかりやすく超訳して紹介してみよう(原文に当たって正確な言葉を知りたい人は、http://www.meti.go.jp/report/data/g80627aj.htmlへ)。
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