「幻想百物語埼玉 妖怪編」完成記念イベントに監修者・山口敏太郎氏も登場!

null

2af47afa300782d1c041622cf9a4fb9a.jpg  埼玉県では、新しい地域の魅力を掘り下げ、再発見する新たな町おこしの一環として、埼玉県内で語り継がれている多くの妖怪を紹介・解説する冊子『幻想百物語埼玉 妖怪編』を作成。3月21日からの無料配布に先駆け、3月20日に川越市立博物館にて、完成披露イベントが行われた。  イベントでは、冊子作成に監修として携わった山口敏太郎氏による各妖怪の解説や、スピリチュアルアイドルの疋田紗也、妖怪の扮装で演奏を行うバンド・妖怪プロジェクトらによるトークショーや女優であり怪談師でもある牛抱せん夏による埼玉にまつわる怪談の朗読が行われるなど、盛りだくさんの内容。子泣き爺や猫娘も登場し、場を盛り上げた。  最後は冊子中で紹介された「川越城が危機に陥った時は霧を吹いて城を守る」と言う一風変わった妖怪「ヤナ」が住んでいたとされる『霧吹きの井戸』の実物を見学して、イベントは盛況のうちに幕を閉じた。  今回の埼玉県の試みに関し、監修を行った山口敏太郎氏は以下のように語る。 「このような妖怪・伝説、また現代人の見た化け物や都市伝説を使った町おこしはクリプトツーリズムといい、この概念や試みは最初アメリカで始まり、12年前に僕が日本にもこの考えを持ち込みました」  12年前に東京は青梅で地域独自の妖怪・伝説をテーマにした町おこしイベントを行って以来、多くのイベントの仕掛け人となってきた山口氏。 「他にもこのような話は四国や関西方面など各地から来ていて、岐阜では昨年行いました『口裂け女祭り』を今年も引き続き開催します。不況で町おこしの材料を新しい物に求めていくのが困難になる昨今、地元に眠っている資源を使った町おこしの形は今後より盛んになっていくことでしょう」  こう続ける氏は、今回の小冊子作成は「始まりに過ぎない」と話す。 「今後は更に妖怪伝説のイベントやツアーを仕掛けていきたいと思っております。例えば恋愛や試験、出世などに関係したパワースポットによる町おこしなども行っていくつもりです。妖怪は決して不気味な物や怖い物ではなく、そこに親の愛情や祖父母の知恵が含まれている。先祖が残してくれたタイムカプセルのようなもの。だからこそ、21世紀の現在だからこそ、再確認すべき内容が詰まっていると言っても良いのではないでしょうか」  氏はそう言って話を締めくくった。  妖怪のことをあまり知らない人から既に知っている人まで楽しめるよう、埼玉独自の妖怪達を集め詳細に紹介した、この冊子はフルカラー24ページ。3月21日より埼玉県を中心に各地に無料で配布される。 ((株)山口敏太郎タートルカンパニー) 【お問い合わせは、埼玉県広聴広報課:048-830-2864まで】

本当にいる日本の「現代妖怪」図鑑 ギャー。 amazon_associate_logo.jpg
●【山口敏太郎の摩訶不思議ぶった切り】INDEX 【VOL.5】 昭和の子どもたちに愛された "近所の怪獣"ヒバゴン 死因は老衰だった!? 【VOL.4】「世界滅亡の断言」を強要された!? オカルトにかかわるマスメディアの責任とは 【VOL.3】オカルトやホラーを家族で楽しむために「2012年 ハルマゲドン商法」を討つべし 【VOL.2】「いったい誰の仕業か」UFOの大群が飛来する怪事件が指し示すもの 【VOL.1】"オフィシャルか、プライベートか......現代における「妖怪と幽霊の違い」とは?

祝「怪遺産」認定! 妖怪文化が生き続ける街・岩手県遠野市

kaiisan01.jpg
第3回怪遺産認定式の様子。
 「遠野物語」が発刊されてから今年で100年目。物語の舞台となった岩手県遠野市では、年間を通しさまざまイベントが行われています。過日、作家の京極夏彦氏、荒俣宏氏、高橋克彦氏がそんな「遠野物語」の世界観を紐解く「妖怪セミナーin遠野」が開催されました  「遠野物語」は1910(明治43)年、遠野出身の大学生だった佐々木喜善が柳田國男に語ったふるさとの伝承を、柳田がまとめて記した伝説集です。  遠野には「遠野物語」に記されている、妖怪などが出没した場所が未だにたくさん残っています。ただ、今回訪れて初めて知ったのですが、「遠野物語」に記されていない不思議な話もまだまだ、遠野にはあるようです。  まずは、「遠野物語」に出てくる聖地を巡るスタンプラリー「怪フィールドワーク」に参加しました。チェックポイントに設置されたスタンプをぺったんぺったんと押して集めていくと、後日郵送で認定証がもらえるという催しです。  朱色の布が鮮やかな縁結びの卯子酉様や、飢餓の犠牲者を悼んで義山和尚が一人山奥で彫ったと言われている五百羅漢岩などを見て回りました。天候はあいにくの雨でしたが、まだ紅葉前の山の手前で、黄金色の稲穂が雨に打たれて頭を下げる様子は綺麗でした。
kaiisan02.jpg
ちなみに遠野の「伝承園」では河童情報を募集中
らしく、優れた河童情報を提供してくれた方は
記念品が貰えるそうです。
 翌日は、世界妖怪協会(会長・水木しげる)が選んだ「怪遺産」の認定式へと向かいました。  「怪遺産」とは、妖怪文化の普及に貢献したと土地や、文化、地域などを対象に認定するもので、今回で3回目。過去には、鳥取県境港市と徳島県三好市山城町が認定されています。  式典には協会から作家の高橋克彦さん、荒俣宏さんや京極夏彦さん、妖怪研究家の多田克己さんらが出席。本田敏秋遠野市長に認定証と日本物怪観光の造形作家・天野行雄さん作成の楯が手渡されました。  「目に見えない世界の更なる発展を」という協会の言葉に対し、本田市長は「河童は川を、天狗は山を大切に、座敷わらしは家族との絆をと、さまざまな形で物語を通じて交流してきました。今後も妖怪と気迫で街作りをしていきたい」とコメント。  京極さんは「妖怪の伝承を生かした町づくりをしている。百点満点で賞を差し上げたい」、荒俣さんは「遠野は今も妖怪が湧き続ける土地、妖怪との百年以上もの付き合いがあるこの場所がいつか世界遺産にも選ばれるかも」と、お話されていました。  NHKの連続ドラマ小説『ゲゲゲの女房』は放映を終了しましたが、まだまだ妖怪ブームは続きそうですね。  次回は遠野の座敷わらしについてお話します。 (取材・文=田辺青蛙) tanabe_prof.jpgたなべ・せいあ 「小説すばる」(集英社)「幽」(メディアファクトリー)、WEBマガジン『ポプラビーチ』などで妖怪や怪談に関する記事を担当。2008年、『生き屏風』(角川書店 )で第15回日本ホラー小説大賞を受賞。綾波レイのコスプレで授賞式に挑む。著書の生き屏風、共著に『てのひら怪談』(ポプラ社)シリーズ。2冊目の書き下ろしホラー小説、魂追い(角川書店)も好評発売中。
水木しげるの遠野物語 日本妖怪史上最強の黄金タッグ! amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 岩井志麻子が主人公のモデル!? 人情味溢れる泣ける怪談『富士子』 京女は幽霊よりも怖い? 京言葉で綴るスプラッタ怪談『京都怪談 おじゃみ』 トロフィーは青行灯!? 日本で唯一の怪談専門誌が選ぶ、大注目の新人怪談作家

岩井志麻子が主人公のモデル!? 人情味溢れる泣ける怪談『富士子』

taniissyou.jpg
『幽』怪談文学賞授賞式の様子。
 以前、このサイトでもご紹介した(参照記事)、『幽』怪談文学賞授賞式。前回の神狛しずさん(参照記事)に続き、谷一生さんにもインタビューしてみました。神狛さんは京都女のはんなりとした怖さの怪談でしたが、谷さんは同じ新人賞出身なのにまるで違う世界観の作品となっています。二冊を読み比べてみると、その違いがとっても顕著で面白かったです。最近いろんなタイプの怪談本が出ているので、夏の暑い一時を、読書で紛らわせてみてはいかがでしょうか? 私は現在引越したばかりで、クーラーのない灼熱地獄のような部屋でポタポタ汗を垂らしながらこの原稿を書いています。こんなに汗だくになってんのに、体重が減るどころか増えてるのは怪奇現象なのだろうか。そんなことを考えつつ、毎日昼夜を問わず怪談本を読み続けています。怪談で涼を得る......今流行の、エコですよ、ロハスですよ、地球に優しいですよってことで、受賞者の谷一生さんとのインタビュー開始です。 ――谷さんの怪談に出てくるキャラクターは、どれもとても個性的ですね。審査員を魅了した「富士子」というキャラは、ホラー作家の岩井志麻子さんがモデルということですが、本当でしょうか? 谷一生(以下、谷) そうです。ただし、私はその岩井さんを直接存じ上げませんので、あくまで作品世界から受ける印象という意味でモデルにさせて頂きました。単純にイヤなキャラとしての主人公を設定したわけではありません。不機嫌で武装しながらも、その内面は硬質なダイヤモンドのような純真な心を持った女性を書きたかった。勝手な思い込みですが、モデルにさせて頂いた岩井志麻子さんもそのような方ではないかと思っております。 ――実在のホラー作家から怪談の主人公が誕生したと考えると、すごいですね。谷さんの作品には、中間管理職の悲哀そのものみたいなキャラクターもいれば、物すごく切ない恋愛を語る女性が出てきたりしますね。登場人物を書き分ける時に意識していることってありますか?  それはないですね。登場人物に感情移入する方ですので。作中人物になりきって書いていますから、特に書き分けを意識することはありません。ただし、なりきれないキャラもいます。ずばり若い男性です。自分の若い頃を思い出してなりきろうとしても、昭和の若者にしかなりきれず、今の時代に合いません。昭和40~50年代を舞台にするなら別でしょうが。ですから、どうしても中高年が主人公の作品が多くなってしまいます。これはわたしの今の課題でもあるのですが、作中人物になりきるという手法以外で、キャラを書いていくということも、学ぶ必要があると感じています。 ――個人的に収録作の中で、幻の魚を食べるために四苦八苦する先生の出てくる「あまびえ」のお話が好きなのですが、辛い接待の経験はありますか?  一度、仙台、名古屋、広島、伊豆、福岡、長崎と六日連続で移動する出張がありました。「せっかくのお越しですから地元の美味しいものを」と連れて行って下さるお店がすべて魚料理なんです。たくさんの例外はあるでしょうが、やっぱり日本の場合、特にそれが海辺の町だと"地元の美味しいもの"というのは、その地元で獲れた魚ということになるんでしょうね。特に改まった席では、そうではないでしょうか。強行軍の移動と毎日刺身、さすがにこれは堪えました。最後の長崎では琴海湾の近くで泊まってここも美味しい魚の宝庫なのですが、「今夜のお食事は」と先方の担当者に訊かれ、「オムライスなんかいいですね」と答えてしまいました。すぐに「冗談ですよ」と付け加えましたが。 ――あの美味しそうな魚が調理法によって拷問のように感じる......情景描写がすごかったですよ。さて、谷さんは実話怪談も書いていらっしゃいますが、創作怪談と実話怪談を書くうえでそれぞれ気をつけていることはありますか?  創作怪談も発想のもとになっているのは、ほとんどが実話なんです。ですから、それほど気をつけているということはなかったのですが、逆に実話怪談を書くとき、物語の流れと言いますか、自分で読み直しても実話っぽくないんですよね。創作っぽい。今後はそのあたりを注意しなくては思っています。でも正直申し上げて、創作より実話のほうが"書くテクニック"という点では難しいですね。 ――実話怪談の方が書くのが難しいっていう怪談作家さんは多いですよね。やはり怖さを伝える面で、ごまかしが出来ないからでしょうか。ところで谷さんは、収録作の中で特に思い入れ深い作品はありますか?  「恋骸」です。この歳(54歳)だからこそ、切ない恋愛話をぜひ書きたかった、しかも女性のひとり語りで。ついでに申しあげますと、太宰治風に。実はもう一作挑戦したのですが、これはラストまで届きませんでした。閻魔さまの前で、道ならぬ恋を裁かれる女性が切々と想いを語る物語です。またいつか挑戦したいと思います。 ――富士子は非常に魅力的なキャラですが、今後、富士子の話を書かれる予定はありますか?  書きたいですね。「富士子」に続く「浜沈丁」は繋ぎの一作なんです。敵役の外資系ファンド会社がリゾートを開発中、知らずに石敢當(いしがんとう)を壊してしまう。魔物(マジムン)を払う石敢當を壊してしまうわけですから、もうどんどん邪気が流れ込んでくる。それを富士子と兼子が撃退する。「浜沈丁」では敵役だった外資系のふたりも富士子の味方になります。サイキックバトル4人衆ですね。ここで大切なことは邪気と言っても悪者ではない。何らかの理由があって邪なものになっているわけですから、邪を払うということはその対象を救済すると考えたいのです。やみくもに相手を粉砕するのではなく、最後は泣けるバトルにしたい。で、この4人衆のバトルをオムニバス形式であと四作書いて、いよいよ最後は長編になります。4人衆の力を見込んだ米国の本部から邪気払いの依頼が舞い込むんです。舞台は一転沖縄からニューオリンズです。アメリカで私が二番目に好きな場所なのですが、あの土地を初めて訪れた時、ここには絶対何かいると感じました。やりたい放題の続編をぜひ書いてみたいです。 (取材・文=田辺青蛙) ●谷一生(たに・かずお) 1956年、香川県生まれ。関西大学文学部卒業。「井戸のなか」で第1回『幽』怪談実話コンテスト佳作。「住処(「富士子」に改題)」で第4回『幽』怪談文学賞短編部門大賞受賞。 tanabe_prof.jpgたなべ・せいあ 「小説すばる」(集英社)「幽」(メディアファクトリー)、WEBマガジン『ポプラビーチ』などで妖怪や怪談に関する記事を担当。2008年、『生き屏風』(角川書店 )で第15回日本ホラー小説大賞を受賞。綾波レイのコスプレで授賞式に挑む。著書の『生き屏風』、共著に『てのひら怪談』(ポプラ社)シリーズ。2冊目の書き下ろしホラー小説、『魂追い』(角川書店)も好評発売中。
富士子 島の怪談 『幽』怪談文学賞短編部門大賞受賞作。器量も性格も悪い中年女・富士子は、旅行で訪れた沖縄で衝動的に民宿を購入。忙しく毎日を送るうち、彼女は邪悪な何かとつながっていく......。審査員が絶賛したキャラクター「富士子」をはじめ、その民宿を舞台にバトルが繰り広げられた「浜沈丁」、ジェントル・ゴースト・ストーリである「友造の里帰り」、人魚伝説をモチーフに描かれた幻の魚を食す「あまびえ」、深い人間愛を描き、涙なしでは読めない「雪の虹」「恋骸」の全6作品。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 トロフィーは青行灯!? 日本で唯一の怪談専門誌が選ぶ、大注目の新人怪談作家 京女は幽霊よりも怖い? 京言葉で綴るスプラッタ怪談『京都怪談 おじゃみ』 実は春樹好き!? "グッチャネ"ホラー作家・飴村行のイカレタ粘膜世界

京女は幽霊よりも怖い? 京言葉で綴るスプラッタ怪談『京都怪談 おじゃみ』

ojyami02.jpg
第4回『幽』怪談文学賞授賞式の様子。
 ちょっと前まで肌寒かったのに、梅雨入りした途端蒸し暑くなりましたね。暑い季節といえば、アレですよ、アレ。怪談ですよ。ってことで、以前ここでもご紹介した(参照記事)「幽」怪談文学賞受賞者である、神狛しずさんにインタビューをしてみました。京都を舞台に、一人称の京言葉で綴られる『京都怪談 おじゃみ』は、上品さを感じさせる幻想的な作品ながらも、体の中からゾクっとくる怖さがあります。  幽霊も怖いけど、京都の女性も怖いですよ~。 田辺青蛙(以下、田辺) 小説に専念しようと、お仕事を辞められたそうですが、どれくらいのペースで新人賞に応募しましたか? 神狛しず(以下、神狛) 公募ガイドの情報をもとにいろいろ。月に百枚程度は書くように心がけていました(使いものになるか否かは別として)。「おじゃみ」を書いていた頃は公募ガイド社のYA文学短編小説賞(最終候補作にとどまりました)にも出したり、やはり(仕事を)辞めたばかりなのでどんどん書いていましたが、そのうちに、専念してもダメなときは全く書けないということも思い知りましたし、開き直りました。一年間の平均で言えば、応募(童話やショートショートは除く)は二カ月に一本程度。あまり筆が早いほうではないと思います。 田辺 十分速いと思いますよ。私は短いのばかり書いているので、百枚って聞くと、うわってなってしまいます(汗)。さて、受賞の連絡を聞いた時、どう思われましたか? 神狛 一瞬ポカン、としました。「最終に残っていますよ」という連絡は昨年の7月にいただいていたのですが、発表の日とされていた11月9日にはセールスの電話ばかりかかってきて。ああ、駄目だったんだな、ともう諦めて夕食を食べ始めたところだったので。 田辺 ふむふむ、そうだったのですか。で、受賞作となった「おじゃみ」に出てくる、我が子に火を付けて清々しているようなトンデモないお母さんのモデルはいるんですか? 神狛 トンデモ母さんにモデルがいたら、それこそトンデモないはずなのですが、テレビのニュースを観ていたら、世の中には結構たくさんいました。嗚呼、トンデモない。「おじゃみ」ちゃんは、うちのシーズーの女の子の頭のかたちから(アイデアを得ました)。あんこが詰まっていそうな顔をしているんですよ。あと、我が家の壁裏に鼬が入り込んで大変だった時期があって、夜な夜なゴトゴト気味悪くて眠れなかった経験もヒントに。 田辺 イケズな京都人が作中に沢山出てきますが、実際にそのような人に会うことはありますか? 神狛 いいえ、京都の方はほんまに優しいですよ。着物も、街角で見知らぬ方が笑顔でササッ、とおはしょりを整えてくださったり、帯の歪みを直して「ひやぁ、素敵やわぁ」と褒めてくださったり。皆様、怖がらないで京都へ来てください。  ただ、地獄耳だとキズつくこともあるかも知れません。でも、こういうことは全国共通の日常だと思いますよ? 京都(特定地域)の「聴こえよがし」が絶妙なだけで......。 田辺 そ、そうなのですか。私は生まれが大阪で育ちが京都なんですが、それゆえに京都の微妙なニュアンスっていうか、何か言葉遣いとかが肌に合わなかったんですよ。「あらぁ、安物がよぅ似あわはってええねぇ~」みたいなノリが怖い! って私の話になってしまってすみません。確かに「聴こえよがし」だけが絶妙なだけかもしれませんね......。作品を京都弁で書こうと思われた理由は何かあるんですか? 神狛 標準語で書いているつもりが方言だったり、自分のスピーチの録画を観たら、標準語で話していたつもりだったのに、イントネーションが思いきり訛っていたりして。それで、「ええい」と(放言丸出しで)地元近くの伝説の地を舞台にしたミステリーを書いたら賞をいただいたので、やはり自然体がいいのかなと思いまして。でも、京都と言っても<中の人>ではないので、普段はそんなに激しい京都弁では喋っていません。 田辺 そうなのですか。京都在住の私でも、綺麗な京言葉だなーと思って読んでいました。 「虫籠窓」は京都の古い町家が舞台ですが、実際に住まれたことはありますか? 神狛 ありません。京都の田舎の山奥、築三十五年の木造日本家屋に鼬や鼠や百足と一緒に暮らしております。町家は市内に出ると、カフェやギャラリーになっているところがあって憧れますが、実際に住んでいる方のお話を聞くと、ぼっかぶり(ゴキブリ)が多くて大変だそうです。 田辺 授賞式のお着物は何か作品と関連はありますか?「前妻さん」はお着物が幽霊の正体ですが、その発想はどこからですか? 神狛 京都だし、着物で......じゃあ「おじゃみ」っぽく小豆色で......という安直な理由です(普段から着物が好きでよく着ています)。弘法さん(毎月21日)にいっぱい古着物が出ていて、こういう古い着物には前の持ち主の気持ちなんか宿っていそう......と思ったのが「前妻さん」の地になっています。25日は天神さんですが、着物では怖くて行けません。 田辺 京都人の着物を見る目は厳しいですよね。最後に、次回作についてお聞きしたいのですが、今後も京都を舞台として怪談を書かれるんですか? 神狛 そうですね、今はいただけるお仕事を精一杯こなしつつ、新たな展開も見せられたらいいなと思っています。怪談以外にも書きたいお話はたくさんありますし、怪談も、せっかく入口に立たせていただいた分野ですので、ますます深くダイブしていきたいな、と。京都には書き尽くせないほど、いい舞台がありますから。 (取材・文=田辺青蛙) ●かみこま・しず 京都府京都市生まれ。現在、府下五里五里の里(城陽市)在住。同志社大学神学部卒業。図書館勤務を経て、 2008年、別名にて第6回北区内田康夫ミステリー文学賞大賞受賞。2009年、「おじゃみ」で第4回『幽』怪談文学賞短編部門大賞受賞。犬好き。愛犬は二匹のシーズー。 tanabe_prof.jpgたなべ・せいあ 「小説すばる」(集英社)「幽」(メディアファクトリー)、WEBマガジン『ポプラビーチ』などで妖怪や怪談に関する記事を担当。2008年、『生き屏風』(角川書店 )で第15回日本ホラー小説大賞を受賞。綾波レイのコスプレで授賞式に挑む。著書の『生き屏風』、共著に『てのひら怪談』(ポプラ社)シリーズ。2冊目の書き下ろしホラー小説、『魂追い』(角川書店)も好評発売中。
『京都怪談 おじゃみ』 第4回『幽』怪談文学賞・短編部門大賞受賞の京都怪談。京都を舞台に展開される、おんなの想いがつまった6つの短編怪談。古民家に暮らす妻、由緒ある家に嫁いだ若奥様、古くからの町家で祖母・母と暮らす妙齢の女性、京都の大学生、女子高の生徒......。さまざまな「京おんな」の生きざまを描く6つの怪談物語。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 トロフィーは青行灯!? 日本で唯一の怪談専門誌が選ぶ、大注目の新人怪談作家 実は春樹好き!? "グッチャネ"ホラー作家・飴村行のイカレタ粘膜世界 「グッチャネでシコッてくれ」 河童に脳みそをかき回される『粘膜人間』

トロフィーは青行灯!? 日本で唯一の怪談専門誌が選ぶ、大注目の新人怪談作家

yu01_f.jpg
受賞者には、硝子の賞状と作品をモチーフに作られた
世界にただ一つの青行灯トロフィーが贈与される。
 5月11日、メディアファクトリーが主催する「第4回『幽』怪談文学賞授賞式」が行なわれました。「幽」は、本邦唯一の怪談専門誌。年に2回の刊行で、綾辻行人さん、京極夏彦さん、小野不由美さん、謎の覆面作家の山白朝子さん、有栖川有栖さん、福澤徹三さん、平山夢明さん、小池壮彦さん、安曇潤平さん、工藤美代子さん、加門七海さんなどが怪談作品を連載しています。そして「幽」怪談文学賞は、雑誌の「幽」から生まれた怪談文芸の新人賞です。ここからデビュー出来るのは、選考委員に認められた怪談作家だけ。審査員の面子は、小説家の京極夏彦さん、岩井志麻子さん、南條竹則さん、漫画家の高橋葉介さん、そして編集長の東雅夫さん。  同賞には長編と短編の2部門がありますが、今回は短編部門から大賞が2作品選ばれました。神狛しずさんの「おじゃみ」は京言葉の一人称で紡がれる怪奇譚。谷一生さんの「富士子」(「住処」改題)は主人公が発作的に旅先で民宿を購入してしまうことから始まる物語です。  不吉な数字の4がつく回、しかも怪談作品の授賞式と聞いて、会場はお化け屋敷みたいなところで、血のにこごりのような飲み物をみんなが啜りあっているに違いない。そんな風に想像を巡らせながら、会場に到着したのですが......。禍々しそうなのは、入り口近くに置かれた過去に出版された怪談本くらいで、会場は綺麗な白いクロスのかかったテーブルの並ぶホテルの大広間でした。綺麗な背の高い女性に、「お飲み物はいかがですか?」とワインを勧められて手に取り、あたりを見回してみると有名な作家や文芸評論家の方々がズラーリ。ううう......凄いなあと気押されつつも、受賞者のお顔がよく見える最前列をキープ。
yu03.jpg
受賞者の神狛しず氏(左)と谷一生氏(右)。
 最初に、「幽」編集長の東雅夫さんによるスピーチがありました。 「今年は怪談作品の収穫も大きく、受賞作は作風も著者も対照的だった。怪談は生々しさがコアになる、インパクトを秘めたジャンル。これからもどんどん新しい人達を押し出して行きたい」  東編集長の言葉が終わると、選考委員を代表して、漫画家の高橋葉介さんのお話がありました。 「2作品の傑作が出て、めでたさも2倍となった。受賞作の、神狛しずさんの『おじゃみ』は、中身はかなりのスプラッタ怪談なのだけれど、京言葉ではんなりと和らげられている。例えて言うならば、毒のお菓子を砂糖でコーティングしたような感じ。もう一作の受賞作、谷一生さんの『富士子』は、選考委員一致で『いいよね』とコメントが出た。選考委員みんな、富士子さんの大ファンになってしまうほど、魅力的なキャラだった。この作品は、他人に変貌する怖さが書かれている」  高橋さんのコメントの後に、賞の贈呈式が行われました。受賞者に贈呈されたのは、名前が刻まれた、涼しげに透き通った硝子の賞状と、作品をモチーフにして作られた、世界にただ一つしかない青行灯トロフィー。どうして、トロフィーが青行灯かというと、百物語を行うには行灯に青い紙を張った、青行灯のもとでやるという仕来りが江戸時代にはあったそうです。また、百話目を語り終えると行灯のかたわらに立った、髪を逆立てた青行灯という鬼女が出るとも言われています。そんな伝承から、怪談作家に贈呈されるトロフィーとして青行灯が採用されたようです。  今年の「幽」怪談文学賞には512編もの応募が集ったと聞き、怪談作家への登竜門としての盛り上がりを感じさせられてしまいました。500を超える作品の中から受賞を勝ち取った、神狛しずさんは、粋な着物を着こなして登場。「怪談を書いているうちに、怖いが楽しみになって来た、ほんまおおきに」と、作品の舞台ともなっている京都の言葉で締めくくっていました。着物で語られる京言葉っていいなあと余韻に浸っていると、もう一人の受賞者である谷一生さんが壇上に登場。「審査員の岩井志麻子さんから、選評で、「富士子」は悪い女やないという言葉が嬉しかった。器量も性格も悪い中年女だけれど、愛おしい」と作中キャラ富士子を大アピール。  受賞作品については、今現在読んでいる最中なのですが、魅力的で癖のある内容の怪談がギュッと詰まっているといった感じです。詳しい選評を知りたい方や、実は怪談を書いていて、この賞に出してみたいという人や、ちょうど怖い話を先日体験したからこれから書いてみようかなという人。もし、いたら「幽」を読んでみて下さい。怪談小説だけでなく、諸星大二郎や、花輪和一、高橋葉介、押切蓮介、伊藤三巳華と漫画連載も豪華な面子が揃っています。これから先の季節、ぞぞっと怖い読み物を味わってみたいって人にもお勧めの雑誌です。ちなみにお二人の受賞作品は、5月21日に単行本として刊行されます。 (取材・文=田辺青蛙) tanabe_prof.jpgたなべ・せいあ 「小説すばる」(集英社)「幽」(メディアファクトリー)、WEBマガジン『ポプラビーチ』などで妖怪や怪談に関する記事を担当。2008年、『生き屏風』(角川書店 )で第15回日本ホラー小説大賞を受賞。綾波レイのコスプレで授賞式に挑む。著書の『生き屏風』、共著に『てのひら怪談』(ポプラ社)シリーズ。2冊目の書き下ろしホラー小説、『魂追い』(角川書店)も好評発売中。
幽 2010年 01月号 淳二の季節がやってきます。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 後味の悪さが尾を引く、究極のマゾヒズム世界『劇画 家畜人ヤプー』 「げに美しき血と汚物と拷問の世界に溺れる『ダイナー』 「グッチャネでシコッてくれ」 河童に脳みそをかき回される『粘膜人間』