「ガールズトークって、やっぱり楽しい」水島努監督新作は、まさかのほのぼの系アニメ!?

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(C)久米田康治・ヤス・講談社/女子落語協会
 『侵略!イカ娘』『よんでますよ、アザゼルさん。』『BLOOD-C』『Another』などなど、話題のアニメを立て続けに発表し続ける水島努監督。その最新作『じょしらく』が、7月よりTBS・MBS系列で放送スタートした。  寄席の楽屋を舞台に、女子落語家たちが些細なネタからどんどんトークを展開していく会話劇を描く本作だが、5月某日、「5月も終わりだというのに、まだ取材来ず。このままオンエア突入確定かー(゜゜;)」と水島監督自らツイート。そのアニメマスコミからのあまりの注目されなさぶりに、アニメクラスタは騒然となった。「ならば!」ということで、さっそく日刊サイゾーがコンタクトを開始。放送開始を目前に控えた6月某日、水島監督にインタビューを敢行した。  『ジャングルはいつもハレのちグゥ』『撲殺天使ドクロちゃん』『ムダヅモ無き改革』のような、カッ飛んだギャグが見られるのだろうか。それとも『侵略!?イカ娘』『ケメコデラックス!』などで見せた、奇妙キテレツなアクションが今回も飛び出すのか? はたまた『BLOOD-C』『Another』のような、血みどろ残虐描写が繰り広げられるのか!? エッジな作品を多く生み出してきた水島監督の新作に期待が募る一方だが、そんな取材陣を待っていたのは「萌えアニメを作っている」という予想外のコメントだった! ■水島努、「萌え」を考える ──今回、取材させていただこうと思ったきっかけは、監督の「まだ取材が来ない」というツイートだったのですが、その後、取材はありましたか? jyoshi006.jpg 「はい、何件か取材していただきました。言ってみるもんですね(笑)」 ──なかなかない展開ですよね(笑)。そんな監督が手掛けられる新作アニメ『じょしらく』ですが、本作は「萌えアニメ」……ですよね。 「そうなんです。これは釣りじゃなくて、本当にそのつもりで作っています。やっぱりお客さんにDVDを買ってもらいたいので、過激なことに走り過ぎずに、かわいい女の子を描くということをベースに作ろうと考えています。それで売れるのかというと、分かりませんけど」 ──以前、取材させていただいた際に、水島監督が「萌えが分からない」とおっしゃっていたことをよく覚えているのですが、そんな監督が「萌えアニメを作る」と公言されていることに驚いています。 「私が“萌えアニメ”を作るってウソ臭く感じました? ただ、いまだに“萌え”はよく分かってないんです(笑)。でも、分からないと言っていても始まらないので、とりあえず難しく考えずに、普通の女の子の会話をきちんと描こうと思っています。個人的に“エロ”と“萌え”は絶対に別物で、“愛おしいな”と思えることが“萌え”かなと考えています。そうなると動物とかも当てはまるので、厳密には違うと思うんですが……。そんなことを考えながら作っている最中です(笑)」 ■水島努的アニメ論とは? ──水島監督作品というと、物語の中で突如出現するトリッキーな動き(『ケメコデラックス!』プリップリン体操や、『侵略!?イカ娘』レディオ体操の振り付けなど)や、過剰すぎるバイオレンス描写(『BLOOD-C』クライマックスや『Another』の殺人シーン、『よんでますよ、アザゼルさん。』など)がしばしばアニメファンの間で話題になりますが、『じょしらく』ではどんな動きで我々を驚かせてくれるのか気になります。 jyoshi005.jpg 「やっぱり絵を動かすことって楽しいんですよね(笑)。ただ『じょしらく』に関しては、そこまでトリッキーな動きはないと思います。もしかしたら、今までの中で一番まったりした作品になるかもしれない」 ──室内での会話劇を描く『じょしらく』ですが、それをどのようにアニメとして描くのでしょうか。 「まず、本編を3つのパートに分けることにしました。AパートとCパートは原作通り室内劇にして、Bパートには外に出るアニメオリジナルの話を入れることにしました。ただ、そこで動きがあるかというと逆で、AパートとCパートは会話が多いので見てる側も疲れちゃうと思うので、Bパートは箸休めみたいなポジションでゆったりと風景を描く感じになっています。そのようにした理由は、単純にキャラクターを外に出したいというのと、私服が見たかったからです」 ──原作は『さよなら絶望先生』などでも知られる久米田康治さんということで、かなり際どいネタも作中には盛り込まれていますが、アニメではどの程度再現されますか? 「そこはかなりバランスを取っていますね。私としてはなるべく忠実に原作を再現したいのですが、今回はテレビで放送する作品なので、やはり制限はあります。自分で責任を取れるんだったら全開でやりたいんですけどね(苦笑)。どこまでやれるのかな、という駆け引きをやっている最中ですね。スポーツでいうと、ぎりぎりルール違反でないラフプレーを探っている感じです。 jyoshi014.jpg  ただ、『じょしらく』では、できれば女性たちが話すほのぼのとしたところを楽しんでほしいと思います。そう言うとフリだろうと疑われると思うのですが、これは本心です(笑)。人によっては過激なものを私に期待されているみたいなんですが、それだけじゃ作品にならないと思うんですよね。まず“普通の女の子”っていう部分をきちんを描かないと、その上にどんなものを盛ったとしても心に響かないと思います。だから、基本を忘れちゃいけないと常に心がけています。小ネタを出していくのは自分も楽しいんですが、そちらにばかりを気を取られないように気をつけています」 ──では、水島監督が作品を作る上で、最も心がけていることはなんですか? 「一度方向性が決まったらブレないことですね。作り始めると、あれもこれもと欲が出ちゃうんですが、ベースはブレちゃいけないなと思います。仮に1話がものすごく評判が悪かったとしても、急に軌道修正せずに作り切らないといけないと思いますね。長丁場の作品ならともかく」 ──ここ最近、ウェブ上では「まとめサイト」に視聴者の評判や感想が編集されて、結果的にそこにまとめられたコメントが作品の評価に影響を与えてしまうことも多々あります。 「そうやって話題にしていただけることはありがたいと思います。インターネット上で私が何を一番気にしているかというと、褒められる、けなされるではなく、作品を気にしてくれているかどうかですから」 jyoshi010.jpg ■『じょしらく』の魅力はガールズトーク! ──視聴者には、どういうふうに『じょしらく』を見てもらいたいですか? 「一生懸命作ってはいるんですけど、だからといってかしこまって見る必要はまったくなくて、うすらぼんやりと見てほしいです。重いテーマもありませんし、そもそもストーリーもあるかどうか怪しい作品なので(笑)。乱暴な言い方ですが、アニメって、それでいいんじゃないかと思っています。とくにサイゾーさんの読者のような、アニメファン以外の方にも見ていただけるとうれしいですね。ガールズトークって、男性陣だけかもしれないけど、楽しいじゃないですか。そのガールズトーク要素をきちんと作っているつもりなので、そこを純粋に楽しんでほしいですね。その上で、もっともっと広がっていければいいなと思います」 jyoshi004.jpg ──広がる、というと。 「一つ一つの作品そのものというよりもアニメ市場が、ですね。アニメはもっと外側に広がる努力をしないといけないと個人的には思っていて、そのためにはいろんなジャンルがあっていいと考えています。『じょしらく』は萌えアニメとはいっても、王道の作品ではないのは間違いないと思います。だからこそ“こういう萌えもあるんだよ”とアニメファン以外の方にも知っていただいて、その結果、どんどんとアニメを気にしてくれる人の幅が広がっていくといいなと思います」 ──ちなみに監督の理想とするアニメとは、どんな作品ですか? 「そこまで真面目に考えてアニメを作ってないからなあ(笑)。理想はとくにありません。明日ご飯が食べられればいいなと日々思いながら、『仕事があるうちが花だよ』と常に自分に言い聞かせつつ、一生懸命こつこつと、難しいことを考えずにアニメを作っています」 (取材・文=有田シュン) ●『じょしらく』 MBS 毎週木曜26:25~放送中 TBS 毎週金曜26:25~放送中 CBC 7/12~ 毎週木曜27:05~放送 BS・TBS 7/14~ 毎週土曜24:30~放送 *放送日時は変更になることがあります。 <http://www.starchild.co.jp/special/joshiraku/

「表現の限界とは何か──」 DVD『ムダヅモ無き改革』制作陣が挑んだ自由の臨界点

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各国首脳がマージャンで勝負!
 小泉が! ブッシュが! ジョンイルが! そして毛沢東が! 世界各国を代表する大物政治家たちが、卓という名のリング上でガチンコ闘牌を繰り広げる!  そんな前代未聞の麻雀漫画『ムダヅモ無き改革』(竹書房「近代麻雀」連載中)が、なんとアニメになってしまった。  監督を務めるのは、自主規制も条例も何のその。表現の自由に挑み続ける、日本で一番パンクなアニメ監督・水島努だ。今回は水島監督と、このブッ飛んだアニメの企画立ち上げから完成までを見守り続けた川瀬浩平プロデューサーによる、本作の見どころと制作ウラ話を無修正でお送りします! ──『ムダヅモ無き改革』がアニメになるとは、最初は全く信じられませんでした。しかも、完成した作品は予想以上にとんでもない仕上がりで(笑)。 水島努監督(以下、水島) 「水島さんが受けなかったら、この企画がなくなる」と川瀬さんに頼まれてしまいまして(笑)。ただ、作るからには原作のもうワンランク上のヤバさを出したいとは思っていました。 川瀬浩平プロデューサー(以下、川瀬) 最初は原作の大和田秀樹先生も交えて三人で「和民」で飲みながらで、何となく「東アジアいっとく?」みたいな流れになりましたね。
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麻生氏、鳩山幸氏、金正男氏など、
脇役も熱い!
水島 やっぱり話題性を出すなら、北の将軍様をやるしかないかなと。 ──世界各国の首脳がズラリと登場して麻雀で戦うという本作ですが、キャラが立ちまくりでどの登場人物も強烈ですよね。 川瀬 政治家ってエピソードが面白い人が多いんですよ。だから登場人物たちのキャラも立っているんだと思います。 水島 やっぱりキャラが濃くないと、国を切り盛りしていけないんでしょうね。 ──例えば麻生(太郎)さんもクレー射撃の選手ということで、作中では暗殺者をライフルで狙撃してみたり。 水島 『ムダヅモ』の中の麻生さんは、カッコいいですよね。ああいうカッコいい政治家がもっと出てきてほしいです。キャラの立った政治家が上でグイグイやってくれるといいなと思いますね。 ──鳩山首相の口から金星人が出てきて、宇宙からの侵略者であるミユキに操られていたっていうエピソードもすごい発想ですよね。 水島 だったらいいなって願望です(笑)。僕も大和田さんのシナリオを読んで、「だからか!」と全てのピースがカチッとはまったという感じです。 ──そういった一連のシーンに政治的な意図は全く込めていないのでしょうか? 水島 込めていないです。『ムダヅモ』を作る時に自分の中で決めたルールが二つあって、ひとつは政治的な意思を出さないということ、もうひとつがナショナリズムに走りすぎない。つまり、「日本はこんなに素晴らしい」という方向にいかないということです。それよりも、戦う男たちの暑苦しい国境を越えたカッコよさを出すように気を付けました。 ──作品が発表されてから、周囲の反響はいかがでしたか? 水島 いろいろな人から反響がありまして、「本当に大丈夫なの?」「拉致られないの?」みたいな心配ばかりされました(笑)。でも、圧力も批判も特になかったんです。みんな思った以上に大人だったんじゃないのかな? 川瀬 最近はネット上の小さな声も必要以上に大きく取り上げられてしまう。それがきっかけとなって問題になるなら、(過激な表現を)やめちゃおうっていう考え方がとりわけテレビでは顕著だと思いますが、それだとやっぱり作品は面白くならないと思います。特に今回は、せっかく水島さんを使うのならそれくらいの覚悟をもって追求しないといけないなと思っていました。 水島 それに本物の大物だったら、こんなところで何かやってても、「それがどうした」って思うはずですよね。 川瀬 だから鳩山さんに関しても、何も気にしてませんでした。むしろリリースする時に私人になっていたという点で、小泉(純一郎)さんや太蔵(杉村)さんとかの方が危ないと思いました。公人はいくらいじっても大丈夫なんですけどね。
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ティモシェンコ氏、温家宝氏も登場!
──表現の限界に挑戦しているという感覚でしょうか。 水島 そんなに大層なもんじゃないです(笑)。 ──表現ということでいくと、東京都の条例の件をはじめとして自主規制の縛りがが年々が強まってきつつあるように感じますが、ヤバいネタに挑戦している水島監督としてはどう感じているのかお伺いしたいのですが。 水島 実は、自分は取り締まれるものなら取り締まってもいいよってスタンスです。それに多少制約あった方が燃えるんですよね。燃えるというか、制約があるからこそアイデアが生まれるという風に思っています。日本のアニメだっていろんな制約があるからさまざまな作品が生まれてきたわけで、制約が増えることについては特に何も思わないです。まあ怒られたら怒られたで、全力で謝る準備はいつでもできています(笑)。 ──視聴者としてはここが一番気になるところだと思うのですが、続編が作られる予定はあるのですか? 水島 政治ネタということで、タイミングがなかなか難しいんですよね。それに北を超えるネタというと、ミドル・イーストあたり? あっちの方にはいきたくないなあ。怖いなあ?。 川瀬 ただこの手のギャグって、エスカレートしていかざるを得ないんですよね。そうなってくると、禁断の地に足を踏み入れないといけなくなってくる。でもそれが面白いかというと、必ずしもそうではない。 水島 その結果、1巻よりも下回る内容ならば作る意味がないと思います。おかげ様で思ったよりは売れてくれているのでたぶん出せるのではないかな? とは思いますので、ご期待ください。 ──では最後に、『ムダヅモ無き改革』の「ここが見どころ」というのを教えてください。 水島 みんながよく知っている人たちが、よく知っている麻雀を熱くうっている。そのバカバカしいけど清々しい、「熱い思い」を受け取ってほしいですね。政治家の写真と合わせてみてもらったら面白いと思います(笑)。 (取材・文=有田シュン)
ムダヅモ無き改革-The Legend of KOIZUMI- デラックス版:5,040円(税込)GNBA-1589 通常版:2,940円(税込)GNBA-1599 発売/ジェネオン・ユニバーサル 【デラックス版特典】 封入特典/スペシャルCD ・「ムダヅモ無き改革」オリジナルサウンドトラック ・テーマ曲  「ムダヅモ無き改革~勝利の闘牌ジュンイチロー~」  歌:小泉ジュンイチロー(森川智之) 映像特典/激突!麻雀大会(轟盲牌禁止ルール)  (出演:大和田秀樹、水島 努、玄田哲章、伊藤静) 音声特典/オーディオコメンタリー(大和田秀樹×水島努) 【通常版との共通特典】 大和田秀樹描きおろしジャケット ・各国首脳ブロマイド(5種類の内1枚封入) amazon_associate_logo.jpg
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