「ジャンプ」アシスタントの年収2000万円は都市伝説!? 金と利権の(禁)マンガ事情

――毎月さまざまなタブーに斬り込む月刊誌「サイゾー」では「マンガ」のタブーを徹底解剖。売り上げが低迷する日本の出版業界で唯一といっていいほど景気のいい話が聞かれるコミック業界。出版社ごとの新しいドル箱マンガ分析から、マンガ家アシスタントのギャラ事情、エロ劇画のディープな世界など、さまざまな角度からマンガ業界の行く末を占うサイゾー12月号「カネと欲望のマンガ業界」の読みドコロを(手前味噌ですが)レクチャーいたします!
1312_cyzo.jpg
『サイゾー 2013年 12月号』(サイゾー)
 先月25日、政府と民間企業による「クールジャパン推進機構(株式会社海外需要開拓支援機構)」が発足した。これは、アニメやファッション、食、伝統工芸品などの日本文化の海外進出を後押しする官民ファンド。コンテンツ輸出のなかには、アニメの他にマンガや音楽、映画なども含まれる。また、gooリサーチが昨年行った「マンガに関するアンケート」によれば、15~44歳の約75%が「マンガ好き」と回答したという。これほどみんなが好み、強力な輸出コンテンツとしても期待されるマンガを「月刊誌サイゾー12月号」(11月17日発売)では「カネと欲望のマンガ業界」として特集を組んでいる。  同誌の「マンガ業界、"次の利権"は『食マン』『リバイバル』そして『引き抜き』か!?」によれば「『進撃の巨人』(講談社)はアニメ放送からわずか2カ月で870万部を増刷する破竹の勢いでマンガ市場を牽引した」という。他にも『ONE PIECE』(集英社)や『黒子のバスケ』(集英社)なども大ヒット中だ。ちなみに、出版業界の市場規模は、1996年の2兆6564億円をピークに、ここ数年は2兆円を割り込み、2012年には1兆7398億円と縮小傾向にある。また、2003年には1兆3222億円あった月刊誌・雑誌の販売額は、2012年には9385億円まで落ち込んでいる。  しかし、同記事によれば、単行本は売れても週刊・月刊コミック誌の売れ行きは芳しくないという。「トレンド情報誌『出版月報』2月のデータでは、12年におけるマンガ誌の推定販売部数は4億8303万冊で、97年の12億1617万冊と比較すると半減以下」まで落ち込んでいるという。さらに、「(マンガ誌の)売上は05年から単行本に抜かれ、12年は1546億円となっている。コミック単行本の2202億円と比べると、いかに規模が縮小しているかがわかる」とも。  そうした状況に対し、マンガ誌を発行する出版各社は、ウェブに活路を見出そうとしてるという。同誌の「重い腰をあげて各社一斉スタート『モーニング』『ジャンプ』マンガ誌とウェブの新展開」という記事によれば、これまでは「販売サイトへの作品提供や電子書籍販売企業のオリジナル作品が中心で、出版社自身がウェブ媒体を立ち上げるケースは基本的になかった」という。しかし、昨年、小学館が「裏サンデー」「やわらかスピリッツ」、集英社が「となりのヤングジャンプ」といった無料のウェブマガジンをスタート」させ、大手出版社によるウェブ媒体のオープンラッシュに。こうした出版社のウェブ媒体が狙っているのは「ウェブで無料公開し、紙の単行本で利益を上げる」ビジネスモデルだとのこと。こうしたビジネスモデルの先駆けは、スクエア・エニックスの「ガンガンONLINE」。同サイトは2008年にオープン。「無料で新作が読めるマンガサイトで現在では50作を超える作品が連載されて」おり、「累計発行部数240万部超の『男子高生の日常』や『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』など100万部クラスの作品を」生み出しているという。  ところで、何百万部ものセールスを叩き出す作者やそのアシスタントは、どれくらいの大金を手にしているのか、気になるのが世の常。同誌の「日本一のマンガ家の素顔を知る……『週刊少年ジャンプ』アシスタント座談会」によれば、ジャンプ作家のギャラは比較的良く、『バクマン。』(集英社)のアシスタントは、1日の稼働時間が9~21時、平日5日働いて1日2万円で、この金額は平均的だとか。ドラマ化や映画化もされた『ROOKIES』(集英社)の森田まさのり氏のところは、最初は月給18万円と決して高くはないが、3カ月おきに1万円ずつくらい上がるという。さらに、アニメ化、ゲーム化、映画化などされた『ONE PIECE』の尾田栄一郎氏のチーフアシスタントは年収2000万円。というのは都市伝説で、完全にデマだという。  この他にも「『ゴー宣』小林よしのり『文春報道が真実ならば わしは河西智美を糾弾する!』」、「吉木りさ田母神らサイゾー的"識者"が読む『進撃の巨人』」などのインタビュー記事から、「ついに義務教育化の声も……!? "突っ走る"マンガ教育現場の今」「学校図書館とマンガの不思議な関係―― 『はだしのゲン』はなぜ学校にあるのか?」など、社会派の記事まで並ぶ「サイゾー12月号」。マンガに興味がある人も、そうでない人もマンガ業界の裏側を知ることができるかもしれない。

マンガ最大のタブー『ワンピース』──誰も語らないヒットの真相【前編】

──いまや、単行本の累計発行部数が2億部を突破したという『ワンピース』。その圧倒的な認知度や支持率の高さから批判的なコメントはもちろん、まともな批評すら許されがたい状況になっている。いったい何がファンを妄信的にとりこにしているのか。
1104_figure.jpg
 2011年1月31日、集英社は「週刊少年ジャンプ」で連載中の尾田栄一郎『ONE PIECE(以下、ワンピース)』【1】の単行本60巻までの累計発行部数が2億部を突破したことを発表。2月末までに発売される同社全33誌の表紙を『ワンピース』にちなんだものにする「表紙ジャックキャンペーン」を展開。「non-no」4月号や「週刊プレイボーイ」8号などで、タレントがキャラのコスプレをして表紙を飾るなどしている。  こんな例を引くまでもなく、ここ数年の『ワンピース』人気の過熱ぶりには目を見張るものがある。ゲームやフィギュアなど、サブカルチャーのニオイのするコンテンツやプロダクトについて、浅い知識を自慢げに開陳し、一家言ある風を装いたがる矢口真里はご多分に漏れず、多くのタレント、芸人、ミュージシャンらがファンであることを公言。明石家さんままでもが、サンジが恩人のもとを離れ、麦わらの一味に加入するシーンで泣いたと発言している。  また、集英社の雑誌のほか、10年7月には「日経エンタテインメント!」(日経BP社)8月号の表紙にもルフィは登場し、この2月には『クローズアップ現代』(NHK総合)も同作のヒットの理由を探る特集を企画。本誌でも10年11月号で『ワンピース』バブルの過熱ぶりについて報じた。そして、09年末公開の映画『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』は興行収入48億円を記録し、1月にはアニメ版の制作や版権管理などを手掛ける東映アニメーションが、10年度の『ワンピース』の国内版権売り上げが第3四半期までに前年度通年の4倍近くとなる24億4900万円に上ると推計するなど、メディアミックス事業の成績も上々だ。

『ワンピース』批評はタブー化してる?

 かようにメガヒットコンテンツと化した『ワンピース』ではあるが、その半面、ベストセラーにはつきものの本格的な批評、評論にはなぜかめったに出くわさない。  前出「non-no」において専属モデル・佐藤ありさが「感動できるエピソードが続々と出てきてハマっちゃう」と語るように、ファンを公言するタレントの『ワンピース』評は「泣ける」「燃える」「熱い友情に感動」など、読後感を表すものばかり。「日経エンタテインメント!」が同作の魅力を「夢を抱き、仲間との友情を信じる熱いメッセージ性」「各キャラクターがそれぞれ人生の物語を持っている」「壮大な世界観」とするなど、メディアでの扱いもそう変わらない。 「それだけに、なぜ『ワンピース』が突出した人気を獲得しているのか。理由がよくわからないんですよ」  そう語るのは、『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』(築地書館)などの著書を持つ紙屋高雪氏だ。紙屋氏は10年6月、自身のブログに「なぜ『ワンピース』はつまらないのか?」というエントリを投稿。『ワンピース』は、続々と登場する強大な敵やライバルに打ち勝つスポーツマンガのように物語が進む作品と見受けられるものの、その割にルフィには敵を倒すための努力や勝つための戦略があるようには見えない。しかし、強い信念や決意を表明するための"名言"をことあるごとに絶叫してみせる。そのロジカルではない精神論は苦手だ、としたところ、はてなブックマークに400ものブックマークが寄せられた。 「あの一件では『読者は努力や理屈なんて求めていないのでは』『あのテンポの良さが魅力』『友情と離別の物語が面白いんだ』という指摘を数多く頂きました。それだけに、ロジックを求めた僕が野暮だったのかなぁ、とも思ったものの、じゃあ、なぜ別のマンガじゃダメなんだろう? という疑問も浮かんでしまった。たとえば『SLAM DUNK』【2】だって同じように友情や仲間との絆を描いた作品ですよね。もちろん『SLAM DUNK』もベストセラーですが、なぜ『ワンピース』はそれすらも飛び越えて、日本一売れているマンガたり得ているのか。はてなブックマークはもちろん、マンガ評論家の書評や雑誌の『ワンピース』特集などもマジメに追いかけてみたんですけど、作中に描かれた絆やバトルの素晴らしさを明確に語ることに成功している言説には、残念ながら出会えませんでした」(紙屋氏)  前出『クローズアップ現代』によると、その読者層の9割は19歳以上が占め、全読者の1割以上は50代以上だという。あまりにも多くの大人をそこまで魅了するワケが明確に説明されないのは不思議な話だが、紙屋氏は、その理由のひとつにファン層があるのではないか、と見る。
「プレミアサイゾー」で続きを読む