「"あたしが時代よ"ってアイドルはオーラが全然違う」 篠山紀信が明かすアノ人の素顔

shinoyama01.jpg
サービス精神旺盛な篠山氏。
 日本で最も有名な写真家、篠山紀信。手掛けた写真集は300冊以上。かつて「GORO」(小学館)の連載が生んだ「激写」は流行語となり、宮沢りえのヌード写真集『Santa Fe』(朝日出版社)は社会現象に。そして現在も有名雑誌の表紙を多数手掛ける一方で、新しい切り口のヌード写真を発表し続ける。  半世紀に渡り第一線でシャッターを切り続けた篠山氏が撮影秘話を綴ったエッセー集、『元気な時代、それは山口百恵です 31日間の現在写真論』(講談社)が発売となった。この本の話を聞くため、カメラマンと共に本人の事務所を訪れると、そこにいたのは「写真撮られるの好きじゃないんだよね~。撮りゃあお金もらえるけど、撮られたってお金もらえないじゃない(笑)」などと冗談を言ってはククッと笑い、子どものようにくるくると表情を変えながら語る、お茶目な70歳の写真家だった。 ――現在、毎週・毎月のレギュラーのお仕事って、何本くらいあるんですか? 篠山紀信(以下、篠山) 300本くらいかなあ(笑)。 ――わっ! そんなに回せるものなんですか!? shinoyama02.jpg 篠山 回せますよ。撮影なんてあっという間だもん。5分で終わっちゃう。 ――休日ってあるんですか? 篠山 ここ100年くらいは休んでないですね。休んだらダメでしょ。写真家ってスポーツマンと同じなの。野球のバッターが打てなくなったからって、山の中で座禅なんか組んでも打てるようにならないでしょ。やっぱり、毎日毎日バッド振ってないとね。 ――そんな日々の撮影エピソードが詰まった『元気な時代、それは山口百恵です 31日間の現在写真論』が発売となりましたが、意外にもエッセー集は初だそうで。 篠山 「初のエッセー集」なんて、はっきり言って恥ずかしい! だってこれ、たまたま講談社の人が「本にする」って言うからしちゃったけど、元々はスポニチの芸能面の片隅で連載してたコラムだもん。当時は海老蔵の殴打事件があったから、でっかい字と写真がガーッてある横で、ひーっそりと連載してたの(笑)。それにしてもこの本、1,200円は安いよねえ。 ――確かに、エッセー集と言っても写真満載ですし、山口百恵、ジョン・レノン、三島由紀夫、ミッキーマウス、宮沢りえ、ダライ・ラマ、AKB48......と、このラインナップが一冊に収録されているとは贅沢ですね。 篠山 よく皆、写真の掲載許可出してくれたよねえ......。 ――そういえば、KARAのページだけ、写真が「掲載不可」って記載されてますね。
shinoyama03.jpg
『元気な時代、それは山口百恵です 31日間の現在写真論』より(以下、同)
篠山 KARAは今、いろいろ大変なんでしょ? 僕、写真は"時代が生んだものを頂けばいい"って考えだから、社会が日々変わっていく中で、こういうことが起こるのはしょうがないって思ってるんです。それより、他の写真が全て載せられたのがラッキーだったと思うよ。 ――本のタイトルにもなっている"山口百恵から、AKB48まで"、長年トップアイドルを撮り続けてきたわけですが、篠山さんはどんなアイドルを撮るのがお好きですか? 篠山 僕はアイドルが好きなわけじゃなくて、「時のアイドル」が好きなんです。だから、人気のあるアイドルが好きだね。「あたしが時代よ」って人は、普通に撮っててもオーラやエネルギーが全然違う! そういう意味でもAKB48は本当に元気。元気の国から元気を広めに来たような人たちだね! ――篠山さんとAKB48のエピソードは、今回のエッセー集でも度々綴られていますが、中でも「篠田麻里子は僕を撮ってすぐブログに載せる」という話が面白かったです(笑)。 篠山 彼女はね、僕を見るといつも「あら、紀信ちゃ~ん? 一緒に撮って~」って来て、すぐブログに載せちゃうの。 ――世間からは巨匠と呼ばれてるのに、現場では随分フランクなんですね。 篠山 僕、巨匠なんて誰からも呼ばれたことないよ。「紀信ちゃん♪」って呼ばれてるよ。写真撮ってる時に上下関係なんてないですから。一番良いのはタメ口。
shinoyama05.jpg
――正直、もっとどっしり構えてる方なのかと思ってました。 篠山 どっしりしてなくて悪かったわね(笑)! ――いやいや、こんなに気さくな方だと思ってなかったもので......。とても70歳とは思えません。 篠山 あたし、本当はもう120歳よ。「きんさん、ぎんさん、きしんさん」で3人姉妹なの。薬飲んで50歳若返ってまだ生きてんの。それでもうすぐ死ぬのよ~、ふふふ。 ――何でいきなりオネエ口調なんですか(笑)。ところで、ディズニーのお話も聞きたいのですが。 篠山 なんでも、聞いてちょうだい。 ――2009年に出された写真集『篠山紀信 at 東京ディズニーリゾート MAGIC』(講談社)では、"閉園後のキャラクターたち"をテーマに撮られてますが、今回のエッセーでも"ディズニー愛"を熱く綴られてますよね。ディズニーキャラクターと、人間の撮影では、気持ち的に違いますか? 篠山 当たり前じゃない、全然違うよ! 人間は、ただの人間でしょう? ミッキーたちは特別な世界の、夢のような存在だもの。撮る時は、テンションも違うし、心のわななきも全然違うよ~。 ――エッセー集に掲載されている、ミッキー&ミニーにキスされてる篠山さんの写真ですが、篠山さんがすごくいい顔してますね!
shinoyama04.jpg
篠山 これは篠山じゃなくて、「シノラマン」っていうキャラクターなの。ミッキーたちと同じ種類の生き物になってるから、閉園後にも入ることが許されるわけ。閉園後は皆が遊んでて、見たこともない光景が広がってるから楽しいよ~ん。でも、あなたは入れないよ、人間だから。 ――は、はい、私はただの人間です。篠山さんが「シノラマン」に変身するのは、テーマパークのゲートを入る瞬間ですか? 篠山 魔法の扉があるの♪ 魔法の扉を開けると、瞬間的にそうなるの。扉の場所は~~、教えられないのっ!! ――わあ、「ゲート」とか言っちゃって、ごめんなさい! 篠山 そう。さてはミッキーの前で「中に入ってるの、本当は女でしょ」とか言ったの、あんたでしょう! そんなこと言ったら、ミッキー傷付くよ~。ミッキーはミッキーなの。ミニーはミニーなの。分かる? ――はい、すいません! あの、この辺で話題を変えて、エッセー集でも取り上げている三島由紀夫さんのお話を伺いたいのですが。 篠山 じゃあ、論調も変えないとね。(低い声で)どうぞ。 ――三島さんの「聖セバスチャンの殉教」の撮影エピソードとして、当時の心境を「映画のスチール写真を撮らされているような気分だった」と書かれてますが。 篠山 そりゃそうだよ。だって「"男の死に方"を演じるから撮ってくれ」って言われたけど、死の本質を語るわけでもなく、「血糊はマックスファクターの何番がいいんじゃない? 篠山君」とか、そんな話ばっかしてくるんだよ。切腹やら溺死やらいろんなのを撮ったけど、そんな作り物を撮影してても面白くないじゃない。 ――その後、本当に自決するなんて思いませんもんね。 shinoyama06.jpg 篠山 死んだことで、写真の意味がガラッと変わっちゃった。僕にとっては単なるフィクションだったけど、彼にとっては自分の死のドキュメンタリーだったんだよね。写真っていうのはさあ、撮ってる時と状況が変わるものなんだよ。これと同じようなのがジョン・レノンだよね。 ――『ダブル・ファンタジー』のジャケ写ですね。 篠山 あれだって撮ってる時は「2カ月半後に死ぬ」なんて思ってないもん。写真家っていうのはね、死に立ち会わざるを得ないことも間間ありますよ。 ――三島さんの"男の死に方"の写真は、数々撮った中でなぜ「聖セバスチャンの殉教」だけが世に出てるんですか? 篠山 これだけは、亡くなる前に発表したから。未発表の写真は、遺族を慮って出してないんですけど、当人の意思を思えばいつか出さないと、とは思ってます。まあ僕としては、そんなもん預けられちゃっていい迷惑だよね。 ――ところで、1968年に『篠山紀信と28人のおんなたち』(毎日新聞社)で、黒柳徹子さんのヌードを発表されていますが、撮影時の様子で覚えていることはありますか? 篠山 あの人ね、撮影前に化粧台で、どっちかのおっぱいを上げたりして、セロテープ貼ってたんだよね(笑)。「ちょっと黒柳さん、どうしたの!?」って聞いたら、「あたしこっちのおっぱいが小さいからさあ、こうやって上げてるの」だって。だから僕が「そんなことしなくても、僕が魔法のレンズでキュッキュッてやったら大丈夫だから」って言ったら、「あら、そういうもんなの~? ああ良かった」ってセロテープ剥がしてましたけど。 ――わ~、いい話! 篠山 「サイゾー」はこういうこと聞きたいんでしょ? 僕のとっておきの話をしたんだから、君、ちょっと脱いでごらんなさいな。今、撮るから。あなたキレイなおっぱいしてるよ。今んとこ乳首もピンクだし。 ――え!? 脱いでないのに分かるんですか? 篠山 顔と全体を見りゃあ、分かるさ~。それ以上も分かるけど、セクハラになるから言わない。......って、もう十分セクハラだよな(笑)。でもカメラマンなんてセクハラが商売みたいなもんだからしょうがないんですよ。あっはっは! はあ......、もう今日取材3つ目だから、このくらい相手をイジらないとやってらんなくなっちゃったね。早く終わりにしようよ(笑)。 ――では最後に、篠山さんが写真家以外にやってみたい職業ってありますか? 篠山 ないよ。だって写真家しか出来ないもん。写真家以外、何にも出来ない!! (取材・文=林タモツ/撮影=後藤匡人)
元気な時代、それは山口百恵です 31日間の現在写真論 定価1,200円/講談社刊 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 「二十年経ってやっと自分の写真になった」 森山大道が見た東南アジア 注目の若手写真家・梅佳代的ファミリーポートレイトの極意! 177人のママを撮った写真家・山田なおこの「現代スナック論」

フォトグラファー腰塚光晃の写真展「Japanese」の先にある野望

koshizuka01.jpg
 NIKE、docomo、資生堂などの広告や、「Numero TOKYO」(扶桑社)、「GLAMOROUS」(講談社)などのファッション誌、あるいは安室奈美恵のアーティスト写真などで幅広く活躍するフォトグラファーの腰塚光晃氏が、東京・渋谷で9月3日より写真展「Japanese」を開催している。  この催しは単なる「カメラマンの作品を集めた個展」ではなく、写真、あるいは表現の現状に対する「このままでいいのか」という強い思いがあるという。写真展開催の直前、港区湾岸の自らのスタジオで準備に追われていた腰塚氏を直撃した。 ──今回の写真展の経緯は? 腰塚光晃(以下、腰) 今回の写真展「Japanese」は、9月にリリースする、同タイトルの写真集の出版に際してものです。会場となる代官山のSPEAK FORは、2~3万円くらいの写真プリントをインテリア的に展示して販売しているギャラリーで、今回作った写真集に収録されているカットも、その場で買えるようになってます。 ──この写真集『Japanese』はパッケージそのものが写真のフレームにもなっていて、収録されている52枚の写真シートを入れ替えることで、インテリアとしても機能するという、ユニークな装丁ですね。  写真集って、買ってきて一度眺めて、本棚に入れちゃったらほとんど見ないじゃないですか。でもこういう装丁なら、インテリアとして飾れるから、例えばプレゼントにしてもらってもいいし、2人で1冊を買ってもらって、好きな写真を分け合ってもいい。写真っていうものは、生活の中でだってもっと活用できると思うんですよね。 ──では、収録されている写真の内容は、どのようなテーマに沿ったものになっているのでしょうか?  タイトル通り、"日本"がモチーフです。例えば、ここ数年、自分がライフワークとして撮り続けているものに、「着物の型紙シリーズ」があるんです。着物を染めるときに使う型紙の向こうにモデル置いて、こちらから光を当てて撮影すると、モデルの肌に落ちる影が刺青みたいになって面白いんです。そういう実験的な写真のほかに、光の幾何学模様や風景ものなど、部屋に飾りやすいものを意識して取り入れたりもしてますね。
koshiduka03.jpg
──今回の写真集『Japanese』は、制作費を持ち出しで制作されたとか。これまで多くのファッション雑誌や広告で活躍されてきた腰塚さんが、ここにきて、なぜ自主制作なのでしょう?  出版不況や電子書籍という時代の流れでの中で、ファッションを扱うウェブマガジンなども最初は考えていた。でも、やっぱり紙で残すべきものは紙で残していきたいなと思ったんです。あとは最近、自由な表現の場がないということも感じていて。 ──というのは?  自分より下の世代のカメラマンって、「仕事でだって自由に写真を撮れる」ってことを知らない人が多いと思うんです。例えば、90年代半ばに「ジャップ」(光琳社出版)という雑誌があった。その雑誌では、次号の特集テーマを電話で聞いて、メイクやスタイリストと一緒に企画を考えて、編集長だった伊島薫さんにプレゼンして、面白ければその企画が通る、といったような作り方をしていた。いちいちラフを描いてタレント側の意向を確認して──みたいなことは一切なく。まあ、その代わり制作費は少ししかもらえないんだけど(笑)、それでもあの当時のカメラマンとかは、みんな「ジャップ」で仕事をやりたがったんです。 ──では、それがいまは「自由でなくなった」のはなぜなのでしょう?  ひとつに、「デジタル化」の影響は大きいと思う。デジカメだと、撮影現場ですべての写真が見られちゃうというか、逆に言うと、すべて見せなければ現場が終わらない、というような風潮になっちゃった。昔は逆で、最初にポラを切ってOKカットさえ見せたら、あとは結構好きにやれたんですよ(笑)。なんだかいまは、写真だけじゃなく、世の中全体がシステマティックになっている気がしますね。 ──そういう状況に対し、自由な表現の場を作るための「自主制作」なんですね。  僕は、これからが本当の「クリエイターの時代」だと思っています。ウェブを使えば、ユーザーはどんなマニアックな情報にもアクセスできる。だからこそ、薄っぺらな「情報」ではなく、クリエイターが本物の「クリエイション」を発表しさえすれば、それをユーザーがきちんと謳歌するという時代が来ると思うんですよね。  だから「Japanese」は、そうした本物の「クリエイション」の発表の場だと考え、さまざまなフォトグラファーやクリエイターが参加できるアート写真集シリーズとして、今後も定期発行していきたいなと思っています。だから、1冊目今回は、個人的にはまだスタートラインに足を乗っけただけという段階。これから先、もっと自由で面白い流れが生まれるといいなと思っています。 (構成=エリンギ) kosiduka02.jpg ●腰塚光晃(こしづか・みつあき) 1969年生まれ。プランナー、レーシングドライバー、編集者、スタジオアシスタントを経て、97年、写真家として活動開始。数多くのファッション誌のほか、AMEX、IPSA、Kanebo、Levi'sなどの広告写真、BONNIE PINK、m-flo、Perfume、SPITZ、安室奈美恵などのアーティスト写真などを手がける。小社発行の月刊誌「サイゾー」の表紙写真を撮影したことも。 公式サイト<http://www.morevisiontokyo.com/> ●写真展「Japanese」 「着物の型紙シリーズ」など、フォトグラファー腰塚光晃氏が撮りためてきた「日本」をテーマにした写真の数々を一挙公開。その場に展示された写真を購入できると同時に、展示された写真がプリントされた同タイトルの自主制作写真集『Japanese』(1万2000円)の購入も可能。 期間:2010年9月3日(金)~15日(水)(ただし。毎週木曜は会場休業日) 会場:GALLERY SPEAK FOR(東京都渋谷区猿楽町28-2 SPEAK FOR B1F) 時間:11時~20時(最終日のみ18時まで) 会場公式サイト<http://blog.galleryspeakfor.com/?eid=317497
へんで、いいよ。 うん、いいよ。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 スタイリッシュな動物の骨格と機能美 動物の"ホネ"を集めた写真集『BONES』 歴史的瞬間を追体験する──重大事件を報じた写真集『世界を変えた100日』 芋虫、キノコ、魚の内臓......写真家・うつゆみこが創り出すキモカワ・エロのカオス