「夢は国立競技場で大集会!?」コスプレ界を席巻する、自宅警備隊の秘めたる野望

IMG_3444.jpg
この集団、いったい何者?
 最近、各地のコスプレ会場に出没して話題を呼んでいる黒ずくめの武装(?)集団「自宅警備隊」をご存じだろうか。  ハリウッド映画に出てくる特殊部隊のようなカッコイイ装備で決めているのに、ヘルメットに燦然と輝く「NEET」の文字。そして彼らの守るのは愛する人でも日本でも、ましてや地球の平和でもなく、それぞれの自宅なのだという(主に自分の部屋のみ)。  2011年に初めての出現が確認された時にはたったひとりの部隊だった自宅警備隊も、入隊希望者が殺到して現在では総勢130名を超えているのだとか。彼らは一体何者なのか? そして目的は何なのか? 創始者にして隊長である鰐軍曹隊長(軍曹なんだか隊長なんだかよく分からないが)と隊員のみなさんにサイゾー編集部のある渋谷まで宅外派遣してきてもらい、インタビューを敢行した! ――まずは、この自宅警備隊を始めたきっかけというのは? 鰐軍曹隊長 「私はもともと、コスプレイヤーさんの撮影をするのが好きだったんですが、コスプレ会場で撮影するに当たって、こっちもコスプレしていないと浮いてしまうんですね。だから最初は普通にアニメとかのコスプレをして撮影していたんです。でもアニメキャラのコスプレって、機動性が悪くてバシバシ撮影するのには向いていない。そこで、動きやすくてちょっと面白いコスプレがないかなって考えたのが、この自宅警備隊なんです」 ――ああ、当初はほかのコスプレイヤーさんを撮影するために一応していただけのコスプレだったんですね。 鰐軍曹隊長 「以前からミリタリー系が好きで、サバイバルゲームなどで使う装備も持っていたし、撮影のためのいろんな道具なんかも持ち歩きやすい、実用的なコスプレなんですよ。でも、ただミリタリーのコスプレをしても面白くないので、ネットでよく使われている『自宅警備員』と書かれた紙を背中に貼り付けて会場に行ったんです。こんなにイカツイ格好をしているのに『自宅警備員』って面白いかなって」 IMG_3475.jpg ――確かに、違和感ありまくりですからね。会場での評判もよかったんじゃないですか? 鰐軍曹隊長 「私としては、こういう格好はしていても普通に写真を撮りに行くつもりだったんですが、予想外にウケてしまい、逆にいっぱい写真を撮られちゃいまして。コレはもう少しちゃんとしたコスプレにすれば話題になるんじゃないかと。それでヘルメットに『SWAT』(アメリカの特殊火器戦術部隊)みたいな感じで『NEET』とペイントして、自宅警備隊の腕章を作って着けたりして。そうこうしているうちに、なぜか『ボクもやっていいですか?』みたいな感じで入隊希望者がどんどん増えていったんです」 ――入隊希望する方って、やっぱり「ちょうどサバゲー用の装備を持っているからやってみよう」みたいな人が多いんですか? 鰐軍曹隊長 「いや、実はミリタリー好きの人ってあんまりいないんです」 隊員 「アイドル好きとか、バンドマンとか、アニメおたくとか、趣味はバラバラですからね」 鰐軍曹隊長 「だから、自宅警備隊をやりたくて装備一式を揃えたという隊員もいますし、もともとコスプレイヤーですらなく、自宅警備隊が初めてのコスプレという人も少なくないんですよ」 ――ちなみに、この装備を一式揃えようとすると、いくらくらいかかるもんなんですか? 鰐軍曹隊長 「結構ピンキリですね。安い人だと1万円で全部揃えた方もいますし、まあ上を見ると際限がないですよ。それこそホンモノの装備を揃えた人もいて、そうなるとヘタすりゃ数十万とかかかっちゃいますから」 ――数十万って……ニートにはとても買えない値段ですよ! 鰐軍曹隊長 「そこはね、お母さんのスネをかじって」 ――さすがニート! イチから装備を揃えてでも参加したい自宅警備隊の魅力って、どこにあると思いますか? 「ミリタリー系のお店に行って買ってきさえすれば誰でもできるという気軽さもよかったのかもしれませんけど、何よりこの格好だと顔が隠せるじゃないですか。同じような格好をした人もたくさんいるから、個人が特定されなくて恥ずかしくないというのもあるかもしれませんね」 IMG_3507.jpg ――コスプレイヤーさんて逆に、自己顕示欲が強くて、積極的に個人を特定してほしい! 有名になりたい! ……という人が多そうですけど。 鰐軍曹隊長 「普通はそうでしょうね。自宅警備隊にもたまに目立ちたがりな人が入隊希望してきて『自分だけのオリジナル装備を』とか言ってきたりするんですけど、それはダメということにしています。とにかく没個性な集団を目指しているので、装備も全身真っ黒というのは絶対! やっぱり特殊部隊なので、各自が思い思いの装備をしていたら統率が取れていない感じがするじゃないですか。それぞれが好き勝手にいろんなことをやりはじめたらマズイなと思ったんです。そもそも装備が装備なので、ちゃんとマナーを守った上でやらないと不必要に威圧感を与えてしまう場合もありますからね。ミリタリー系のコスプレがダメなイベントには絶対に行かない。銃器を持つ時は、弾を抜いておくのはもちろんなんですが、万一の可能性を考えて銃口は絶対にテープでふさいで、トリガーに指をかけない!」 ――ニートのわりに厳格なルールがあるんですね。 鰐軍曹隊長 「大人数を束ねるということには責任も伴いますから、もしも違反した人がいたら即除隊というルールになっています。でも以前、隊員じゃない人が勝手に自宅警備隊を名乗ってイベントに参加して、ちょっと問題になったことがあるんですけどね……その人は自宅警備隊の腕章を持っていなかったので、ニセモノだと判明しましたが。実は、各地でニセモノが確認されているんですよ。我々と同じ格好をするなとは言いませんけど、やるんだったらコスプレイヤーとしてのマナーはちゃんと守ってほしいですね」 ――コスプレ会場に限らず、コスプレイヤーさんのマナー問題というのはありますよね。 鰐軍曹隊長 「結構、マナーの悪いコスプレイヤーさんも多くて、一般の方からコスプレに対してあまりよくないイメージを持たれてしまうのが残念で。我々は人数も多いし目立つので、その辺のマナーを徹底していって、コスプレイヤーの模範になれればなとは思っています」 ――なるほど。最近ではコスプレ会場への宅外派遣だけではなく、ボランティア活動などにも力を入れているということですが。 鰐軍曹隊長 「特に深い意味はなく、『一緒にやらないですか?』と誘われたので、秋葉原の歩行者天国の清掃活動に参加したんですけどね。こんな格好した人たちがゴミを拾ってたら面白いじゃないかという発想で。秋葉原でも以前、コスプレイヤーさんのパフォーマンスなどが問題になったことがあったので、こうやって目立つコスプレで清掃活動をすることによって、コスプレイヤーの地位向上につながればいいなと思っています。それに、いくらニートといっても、あまり自宅に引きこもってばかりいると家族やご近所さんの目が気になるので、たまには世の役に立つことでもしなきゃ……っていうのもありますね(笑)」 ――どんどん規模が大きくなっている自宅警備隊ですが、今後の展望などは持っているんですか? 鰐軍曹隊長 「自宅警備隊としての活動も1年たって、いつまでやるのかなぁって感じですけど。もともとこんなに続けるつもりもなかったんですが……でも、やりたいっていう人が増えてきたから、ここまできたら行けるところまで行こうかなと。現在隊員が130人くらいいて、今年の夏のコミケでは30人くらい集まったんですが、そろそろコミケやコスプレイベントの枠じゃ収まらないんじゃないかと思ってまして……。一回、国立競技場みたいなところに自宅警備隊だけ集めて……たとえはアレですが、ヒ●ラーがやったナ●ス党の大集会みたいなことをやってみたいんですよ」 隊員 「バカだ!(笑)」 ――特に主義主張もないニートなのに! 鰐軍曹隊長 「そうです! たまに、我々のことを何か政治的な主張がある組織なんじゃないかと思っている人がいるんですが、そんなの何にもないですからね。国を守るのとかは自衛隊さんにやってもらえばいいんで。我々が守るべきは自宅と家庭ですから! 何の主義主張もなく、面白おかしくコスプレイベントやボランティア活動に参加していければいいかな、と思っています。……まあ私、個人的には自宅警備隊が注目されすぎちゃって、イベントに行っても写真を撮れなくなっているのが、ちょっと問題なんですけどね」 IMG_3633.jpg  いくら話を聞いても、どこまで本気でどこまでネタなのか分からない自宅警備隊。何か深い考えがあるのか、大いなる悪ふざけなのか……? はたまた何かで一儲けでも狙っているのかなー……と思いきや、自宅警備隊は一切の営利活動も禁止しており、夏のコミケで販売した同人誌の売り上げなどもすべて寄付をしているのだという。そして、実は今回の取材のギャラも「寄付してください」と断られてしまったのだ。  うーん、儲けられるもんなら儲けとけば、就職しないで食っていくというニートの夢も叶うし、いいことじゃないかと思うんだけどなぁ~。……そんな話を振ってみたところ「こういうことは仕事にしちゃダメなんですよ、働いたら負けですから!」という言葉を残して去っていった自宅警備隊の皆さん。うーん、ニートの鑑だ! (取材・文=北村ヂン/撮影=尾藤能暢)  ●自宅警備隊 N.E.E.T. 公式Wiki <http://www56.atwiki.jp/hgg01/>

「働かないという選択肢があってもいい」 "リア充ニート"phaが考える社会とのかかわり方

pha.jpg
日本中のニートの憧れ!? リア充ニート・pha氏。
 長引く不況で、一向によくならない失業率。どんな大企業もいつ倒産するか分からない──。誰もが「職」に対して不安を抱えながら暮らしているこんな時代に、あえて「働かない」という選択肢を選び、ゆる~く現代の波間をさすらう謎の男がいる。その男の名前はpha(ファ)。ネット界隈を中心にその特殊な生き方に注目が集まり、今年に入って各メディアがこぞって彼を取り上げ始めた。アルバイト的なソフト開発やメディア出演、ネット上で呼びかけたカンパで生活する彼の"リア充ニート"とも言えるライフスタイルは、およそ現代人の感覚からすると理解しがたいものがある。  pha氏は現在31歳。京都大学卒業後、人並みに就職したものの28歳の時に出会ったインターネットとプログラミングに衝撃を受け退社。その後は「圧縮新聞」などのWebサービスを開発したり、毎日グダグダしながら"日本一のニート"を目指しつつ、日々ブログを更新したり、プログラマーなど理系の人材が共同生活を営むシェアハウス「ギークハウス」を運営している。  いったい彼は何を考え、このようなライフスタイルを貫いているのか。その真意に迫った。 ──そもそも、ニートといわれる生活に入ったに至った経緯は、「インターネットがあれば生きていける」と思って仕事を辞めたことがきっかけだそうですが。 pha ネットで遊んでいたら友達がいっぱいできるし、孤独にはならない。人とのつながりとか社会のつながりとか、そういうものに困ることはないなぁと思ったんです。よく、「ネットでのつながりはフェイクである」的な論調ってありますが、僕はそうは思わない。逆にネットの方が深くコミュニケーションできることもあります。僕は家に居ながら、Twitterやチャットで何百人としゃべっている。そうすると一日中誰かと繋がっているわけです。そういうつながり方ってネットがなければ全くできなかったことだし、そういう面ではネットの方が優れていると思うんですよね。 ──ネット上ではニートに対し、「働かない奴はだめだ」「自分本位すぎる」などという否定的な意見がありますが、こういう意見に対して、ニート側からのリアクションってあんまりメディアに出てこないですよね。phaさんとしては、どのように感じていますか? pha そんなに人を攻撃してくるっていうことは、その人がすごく大変そうだな、と思いますね。その人自身がすごく苦しんでいるんだなぁと。働かなきゃいけないということにすごく囚われて、それで苦しんだりすごく辛かったり、自殺してしまったり......。もうちょっと肩の力を抜いて楽になればいいのに、と思います。 ──働いて社会に認められたい、地位や名声を得たいという欲求って、誰にでも少なからずあると思うんですが......。 pha そういった欲求はあんまりないですね。僕の満足感って植物的というか、ぶらぶら散歩してごはんがおいしかったとか、いい天気で気持ちよかったとかで十分な感じ。よく、「働かないに生活に満足しているのか」という意見もありますが、僕は満足していますね。 ──今、月収はどれくらいですか。 pha だいたい10万円ちょっとくらいです。ブログのアフィリエイトやちょっとしたネットサービスを公開していたり、ネットで本を売ったり。それから時々原稿を書いたりしているのでパラパラと細かい収入があります。年金は滞納してますが......。 ──と言うと、いわゆるフリーのエンジニアさんですよね? そこをあえてニートと名乗るのはどうしてでしょうか? phaさんの場合、プログラミングの知識を生かしてある程度稼げる、という確信のもとに会社を辞めているわけで、ニートではなくて、独立という形なんじゃないかと思うのですが。   pha  仕事を辞めて2年ぐらいは本当にニートだったんですが、いまは厳密に言えばニートじゃないと思います。本当はもっと完全なニートになりたいけど、まだそうもいかないので、ちょこちょこ小銭を稼いでいます。でも、毎日何もせずにプラプラして暮らしていきたいというのは常にあります。ブログを始めたときに、「働かなくてもいいんじゃないか」という主張をネガティブではなく、肯定的に発したかったんです。それで、ニートってキャッチーで伝わりやすいなって思ったんですよね。 ──自分がメディアに出ることでの影響力といったものは意識していますか? pha うーん......あんまりはっきりとは意識していないですね。ただ、ブログを書いていたら時々取材のオファーが来るので、ある程度の需要があるんだろうとは思いますけど。でも、ネットの世界を超えて広がっていくというのはあんまり考えていませんでしたね。 ──なんだかphaさんって、ウッドストックに集まっていたヒッピーみたいですね。俺たちみたいに自由になろうぜ」っていう主張をしているけど、彼らだって本気でみんな自由になればいいと思っているわけじゃない。でもみんなガツガツしすぎだから「たまには僕らの歌を聞きなよ」というメッセージを発信している感覚にすごく近い。みんなでギターを弾いて歌っているというのと、インターネットというツールを使ってみんなで集まって話をしようよっていうのは、同じようなことなんじゃないかと思います。インターネットというツールがあったから、なんとなくニートというパッケージができちゃった、というか。自分では、そういうパフォーマーとして、切り売りしているという感覚はあるんですか? pha  phaっていうコンテンツを自分でプロデュースしている感覚は多少あります。最初はブログでごくごく普通のことを書いていたんですが、ニートっぽいことを書いたらやけにウケて、そういうものを求められているんだったらやろうかなぁと。  僕の知り合いのエンジニアにネット上で面白いことをやってる奴がいて、そいつはすごい借金を抱えていたんですよね。で、彼が借金を苦に死んでしまうのはもったいないって、ネットで知り合った人が100万円くらい彼に貸してあげたんですよ。結局、「ヤバい」とか「面白い」とか、何か本当に伝わるものがあれば、困ったときは誰かがきっと助けてくれる。そういうインターネットの力を信じている部分はありますね。 ──でもそれって、同時にネットの中にいる人たちに対して、存在をアピールし続けなければならない、という現実がありますよね。要は社会に参加し続けていなければセーフティネットも働かないので、その互助システムが動作する状態をキープし続ける。それはもしかしたら労働と呼べるものじゃないのでしょうか。 pha うーん。僕はあんまりお金自体にこだわりがないから、「金くれ」と気さくに言ったり、余ったら自分より金のないやつにあげたりもするし。そんな感じでお金に執着せずに生活ができるように支えてくれる保障があったらいいなぁ、と思います。だからベーシックインカムみたいなのはあったらいいなぁって思いますね。 ──例えば日本憲法で一応、強制ではないにしろ労働の義務が書かれています。結局、Phaさんはそもそも、そういうルールのある日本という国で生きているわけじゃないですか。 pha 憲法に書いてあるから働かなくちゃいけない、とはあんまり思いません。別に働きたい人は働いたらいいけど、働くのに向いてない人が無理して働いてしんどい思いしているほうが、基本的人権が侵されている感じがしますね。 ──将来に対してビジョンってあるんですか。 pha 動き続けていたいですね。今やっていることにこだわって、それをやり続けるとかじゃなくて、自分が心動くものを追いかけていきたいっていうのがあります。だから、歳とったらどうなるかなんてあんまり考えていない。歳をとったらとったで、自分の肉体が変化したり、経験を積んだりして考え方も変わるかもしれない。その時自分が何考えるのかわからないので、あまりイメージできない。 ──ある意味ポジティブというか、ロックンロールですね。 pha もう3年くらいニートって言い続けているので、ちょっと飽きているんです。でもまぁ、僕がニートをやることに需要があるからやってもいいかなぁという感じ。僕みたいな生き方も世の中にはあるし、いま何かで追い詰められて煮詰まっている人も、もっと別の生き方を見たらちょっと楽になるんじゃないかなぁとか。そういうのが伝わればいいなと思いますね。別にニートじゃない人たちを否定するわけではないです。それぞれ向き不向きはあるので。ニートに向いている人、向いていない人はいるし、適材適所ってやつですかね。ニートの状態だと落ち着かないし、社会から必要とされていない気がして不安だとか、そういう人はいると思う。だから、そういう人が働きすぎてしんどくなってしまったら、ちょっとニートもアリだろって目で見てくれればいい。それで楽になればいいなと思います。 (取材=有田シュン/構成=編集部)
「ニート」って言うな! オルタナティブな生き方ってやつ amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 「司法試験を通っても就職できない......」急増する"弁護士ニート"の現実 秋葉原事件は必然!? トヨタ社員が憤る人材の使い捨て いまこそ団結!?「超左翼マガジン ロスジェネ」は若者の味方です