電子書籍普及の波は来ているのか? あの「自炊の森」が池袋に2号店をオープン

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 一昨年のコミケ会場でのチラシ撒き、昨年の突然の閉店騒動などで話題を呼んだ「自炊の森」(東京都千代田区)が、近く池袋に2号店をオープンすることがわかった。  同店は、持ち込んだ雑誌や書籍を裁断しスキャナで電子化できると共に、「店内の書籍を店内で電子書籍化して持ち帰ることができる」サービスを展開する店舗だ。一昨年12月末のプレオープンにあたっては、コミックマーケット会場周辺でチラシを配布し、著作権者に対する利益還元やモラルの問題など話題を呼んだ。さらに昨年10月には、突然の閉店を告知。9月に講談社・小学館・集英社ら出版社7社と作家・漫画家ら122人が自炊代行業者約100社に対して「自炊代行は複製権の侵害」とする旨の質問状を送付する事件があり、関連性も取り沙汰された。だが、筆者の取材で、閉店はオーナーの意向であることが明らかに(記事参照)。「なんらかの形で継続を模索する」と話していた同店の店長は、支援者を得て店舗を移転し、事業を継続していた。  今回オープンする2号店は、池袋駅から徒歩5分ほど。豊島区役所に近い、繁華街の外れのビルの1階にある。元は客だったという池袋店の店長は、新たな店舗を開く理由に、昨年の移転後からの客層の変化を挙げる。 「秋葉原の繁華街からは外れたところに店舗を移したのですが、ごく普通のサラリーマンや学生も利用するようになったんです。立地は最初の店舗に比べるとよくないのですが、現在でも新規の客足は絶えません。徐々に電子書籍が一般化してきており、この波はまだまだ続くと考えて2号店を開くことにしました」  最初の店舗があったのは、PCパーツショップが並ぶ、秋葉原の裏通りにあるビルの2階。やはり入りづらい雰囲気があったのか、客層は「ディープな客」が多かったという。対して、現在の秋葉原の店舗は繁華街からは外れたものの、1階にある路面店だ。  「自炊」サービスにおいて、店へ入りやすいか否かは、重要なポイントになるようだ。 事実、「自炊」機材を貸し出すサービスを行う店舗は、オープン後、短期間で閉店しているところも多い。 「他店は、ブースをなるべく狭くし設置するスキャナの数を増やして回転率を上げることを重視しています。対して、うちは1ブース125センチ幅とゆったりとしたスペースです。そこが、成功のカギの一つだと考えています」(池袋店店長)  現在、利用者のうち自分で持ち込んだ雑誌書籍を電子化する人と、店内のものを利用する人の数は1:1の割合。徐々に、自分で持ち込んで電子化する人の数が増えているという。そして池袋で狙うのは、やはり一般の客層だ。 「週末の買い物など、何かのついでに利用してもらうことを目指しています」(同)  元は客だった池袋店店長の助言で、料金体系を変えるなど利用者目線でサービスの充実化を図る同店、電子書籍普及の波に乗ってビジネスが成功するのか、今後も注目していきたい。  なお、池袋店は4月28日午後1時よりオープンする予定。開店記念キャンペーンも今後発表される。 (取材・文=昼間 たかし) ●自炊の森 <http://www.jisuinomori.com/

電子書籍普及の波は来ているのか? あの「自炊の森」が池袋に2号店をオープン

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 一昨年のコミケ会場でのチラシ撒き、昨年の突然の閉店騒動などで話題を呼んだ「自炊の森」(東京都千代田区)が、近く池袋に2号店をオープンすることがわかった。  同店は、持ち込んだ雑誌や書籍を裁断しスキャナで電子化できると共に、「店内の書籍を店内で電子書籍化して持ち帰ることができる」サービスを展開する店舗だ。一昨年12月末のプレオープンにあたっては、コミックマーケット会場周辺でチラシを配布し、著作権者に対する利益還元やモラルの問題など話題を呼んだ。さらに昨年10月には、突然の閉店を告知。9月に講談社・小学館・集英社ら出版社7社と作家・漫画家ら122人が自炊代行業者約100社に対して「自炊代行は複製権の侵害」とする旨の質問状を送付する事件があり、関連性も取り沙汰された。だが、筆者の取材で、閉店はオーナーの意向であることが明らかに(記事参照)。「なんらかの形で継続を模索する」と話していた同店の店長は、支援者を得て店舗を移転し、事業を継続していた。  今回オープンする2号店は、池袋駅から徒歩5分ほど。豊島区役所に近い、繁華街の外れのビルの1階にある。元は客だったという池袋店の店長は、新たな店舗を開く理由に、昨年の移転後からの客層の変化を挙げる。 「秋葉原の繁華街からは外れたところに店舗を移したのですが、ごく普通のサラリーマンや学生も利用するようになったんです。立地は最初の店舗に比べるとよくないのですが、現在でも新規の客足は絶えません。徐々に電子書籍が一般化してきており、この波はまだまだ続くと考えて2号店を開くことにしました」  最初の店舗があったのは、PCパーツショップが並ぶ、秋葉原の裏通りにあるビルの2階。やはり入りづらい雰囲気があったのか、客層は「ディープな客」が多かったという。対して、現在の秋葉原の店舗は繁華街からは外れたものの、1階にある路面店だ。  「自炊」サービスにおいて、店へ入りやすいか否かは、重要なポイントになるようだ。 事実、「自炊」機材を貸し出すサービスを行う店舗は、オープン後、短期間で閉店しているところも多い。 「他店は、ブースをなるべく狭くし設置するスキャナの数を増やして回転率を上げることを重視しています。対して、うちは1ブース125センチ幅とゆったりとしたスペースです。そこが、成功のカギの一つだと考えています」(池袋店店長)  現在、利用者のうち自分で持ち込んだ雑誌書籍を電子化する人と、店内のものを利用する人の数は1:1の割合。徐々に、自分で持ち込んで電子化する人の数が増えているという。そして池袋で狙うのは、やはり一般の客層だ。 「週末の買い物など、何かのついでに利用してもらうことを目指しています」(同)  元は客だった池袋店店長の助言で、料金体系を変えるなど利用者目線でサービスの充実化を図る同店、電子書籍普及の波に乗ってビジネスが成功するのか、今後も注目していきたい。  なお、池袋店は4月28日午後1時よりオープンする予定。開店記念キャンペーンも今後発表される。 (取材・文=昼間 たかし) ●自炊の森 <http://www.jisuinomori.com/

高品質な紙と印刷に支えられてきた日本の出版文化は電子書籍に転換できるか?

 Kindle日本語版発売が間近との情報も流れ、いよいよ日本国内でも電子書籍市場が活発化しそうだ。こうした中、ついに日本国内の出版社も大きく動き出した。4月2日に設立が予定されている「出版デジタル機構」が、それだ。  この組織は、講談社・光文社・集英社・小学館・新潮社・筑摩書房・東京大学出版会など出版社20社が出資する新会社。東京電機大学出版局の植村八潮氏が社長に就任する予定だ。この会社の目的は、大手から中小零細まで、すべての出版社に対して出版物の電子化を請け負うもの。出版社各社は合計12億円を出資。さらに、大日本印刷や凸版印刷にも各5億円の出資を求めているので20億円を超える資金を使った巨大事業になる予定だ。機構がまず目指すのは、中小出版社でも電子化に参入できるインフラの整備である。出版社は、機構に書籍を提供すれば初期費用はゼロで電子書籍化してもらえる。流通に関しても機構がデーターを取次や電子書店に卸す形式を取るので、出版社にとってリスクは少ない。当座の目標としては書籍100万点の電子化を宣言している。現在、国内の電子書籍の数は約20万点なので、一気にその数が膨れあがるというわけだ。  賛同出版社は3月23日の時点で約260社に達している。かなり多くの出版社が参加しているように見えるが『出版年鑑』によれば、国内の出版社数は4,000社を超えたところで推移しており、そう考えるとまだまだ少ない数だ。文京区の本郷あたりに集中している、堅めの人文・社会学系の書籍を出版している「あまり売れなくても志は高い」系の出版社が、ごっそりと入っていないのも気になるところだ。  とはいっても、機構の登場によって日本国内の電子書籍市場が「電子書籍元年」と騒がれた2010年よりも大きく拡大する可能性は高い。2当時、電子書籍端末の購入を躊躇させたのは「興味はあるがラインナップが貧弱すぎる」という状況だった。今回の機構の設立によって、ラインナップは充実することは間違いない。 ■高品質な紙と印刷の恩恵から転換できるか  機構への期待は大きいが、まだ不安は残る。 「デジタル化だけでビジネスになるとは思えません」  と、指摘するのは出版情報誌「出版ニュース」代表の清田義昭氏。清田氏は、機構の設立に至った経緯はやはり、対外資、すなわちAmazonへの対抗策の側面が大きいと指摘する。まず、出版界全体の状況を見ると、2011年は前年から引き続き、書籍の出版点数はさほど減っていないが市場全体は縮小する現象が続いてきた。出版の流通システムでは、出版社は印刷した本を日販・トーハン・大阪屋等々の取次に納品すれば、一旦、取次から一定の金額が振り込まれる(返品後、精算される)。出版点数を減らせばそれだけ儲けが減るわけだから、返品率が高くても本を出し続けなくてはならない自転車操業に追われてきた。  とにかく本が売れない状況が続いている中、出版市場のシェアを拡大し続けているのがAmazonだ。「大手書店よりも本が売れているはず」と清田氏も指摘するが、Amazonがいつ日本でKindleを発売して電子書籍に参入してくるのか、出版社は戦々恐々としてきた。そして、いよいよKindle上陸が現実味を持ってきたことで、国内の出版社は機構を設立して大同団結を決意するにいたったというわけだ。  Kindleが上陸すれば、外資と国内の出版社は競合しながら続々と電子書籍の発行を進めていくという未来像を想像するのだが、その点に清田氏は疑問符を投げかける。 「機構は100万点の電子化をすると発表しています。しかし、『出版年鑑』に掲載されている1950年以降の書籍の数は約180万点あります。そのうち、在庫があるものは約80万点です。そうした状況で、なんでもかんでもデジタル化しても事業として成り立つのでしょうか? なによりも、既存の書籍の中でデジタル化して、もっと売れるものがあるかどうかについても考えなくてはならないでしょう」  さらに、清田氏は電子書籍リーダーに対する紙の優位性についても話す。 「日本人の特性として、紙に対する親和性が高いということが挙げられます。それに、技術が進歩すれば古いハードウェアは次第に使えなくなってしまいます。その点で紙は優位性があります」  アメリカで販売されているペーパーバックと日本の文庫本を見比べれば一目瞭然だが、日本の書籍は印刷がキレイで読みやすい。それは読み捨てにされるような本にも当てはまる。 「電子書籍元年」は、供給されるコンテンツの不足からユーザーを獲得し損ねた。2012年を新たな電子書籍市場拡大の年とするならば、紙の本を読むより電子書籍のほうがよいと思わせるための何かが必要だろう。  電子書籍の普及は、一方で日本人がこれまでどれだけハイレベルな紙と印刷(さらに、それを可能にする技術力)に裏打ちされた出版文化の恩恵を享受してきたかを気づかせる機会ともなっている。  いずれにしても、この問題はまずデジタル機構が動き出さなければ、先行きも見えてこない。また、機構側の戦略も気になるところだ。日本における紙の特性も含めて引き続き取材していく。 (取材・文=昼間たかし)
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日本語版Kindle登場目前で大問題……Amazonは消費税を払わないってホント!?

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Amazon UKより
 「日本語版Kindleは4月にドコモ回線で!」「角川グループとAmazonが契約締結か?」と、今年に入ってから期待を持たせるニュースが続き、日本語版Kindleの登場に向けていよいよ盛り上がってきた。紙の本より安く買えて、かさばらないし持ち運べる。そしてなにより、登録や購入方法が分かりづらくてイマイチな国内の電子書籍サービスに比べて格段に使いやすい、新たな読書ライフが始まるはず……。  ところが、このKindleの参入に際して問題になっているのが「Amazonは電子書籍の消費税を払わなくてもいい」ということだ。 「実は、海外の企業から実際にモノを買ったり、あるいは権利やデータベースといった形のないものを買ったりする場合、条件によっては日本の消費税を払わなくて済むんです。Kindle端末をはじめとした海外の品物を注文する場合、商品本体の代金や輸送費などはかかっていても、日本の消費税を払わなかったという経験がある人もいるはずです」(出版関係者)  Amazonと日本の出版社との契約内容は明らかにされていないが、もし、Amazonの日本法人ではなくアメリカ本社と契約する場合、電子書籍はアメリカのAmazonから配信されることとなる。すると、日本の読者は、電子書籍をアメリカのAmazonから買うことになり、その場合、消費税がかからなくなるというのだ。  たとえば、税抜1,000円の電子書籍を買う場合、ソニーや楽天や紀伊國屋書店などが運営する電子書店では1,050円で売られている。消費税分の50円は、電子書店や出版社など配信にかかわったそれぞれの事業者が、日本政府に納税する。一方、今後Kindle日本語版が上陸した場合、アメリカのAmazonは日本政府に消費税を払わなくてもいいので、そのまま1,000円で配信・販売することができる。 「実はこの問題、出版業界ではすでに問題視されているんです。2010年6月に行われた電子書籍についての懇談会で、紀伊國屋書店の高井昌史社長が『電子取引においては税制の不備がある。海外からのデジタル書籍の購入は消費税がかからず、日本のコンテンツ配信事業においては5%消費税がかかるため、ハンデがつけられている』と発言している記録も残っています」(同関係者)  日本最大級の書店チェーンの社長が、当時の閣僚や、文壇、出版界の重鎮たちが同席する中で「ハンデがある」と訴えたという事実は重い。だがこの1年半のあいだ、新聞・テレビはおろか、雑誌やネットでさえもこれまで報じてこなかった。  実際、Amazonが電子書籍の消費税を払わないとなると、読者は5%も安い値段で買えるし、日本の出版社も売り上げは変わらない上に余計な消費税を申告しなくて済む。さらに、Amazonは消費税分の利益を元に、日本語版Kindleでますます便利なサービスを展開してくれるかもしれない。いいことずくめのようにも見えるが、いったいどんな問題が起こるのだろうか。 「日本の作家や出版社が作った日本語で書かれた電子書籍を日本の読者が買っているのに、消費税を払わなくていいというのは通念として違和感がありますし、“常にAmazonが5%安い”となれば、国内の書店が電子書籍市場に参入できなくなります。消費税が10%、15%になったらハンデはさらに広がっていく。ただでさえ書店の消費が落ち込む中、電子書籍までAmazonの一人勝ちとなっては、この国から本屋さんがなくなってしまいますよ」(同関係者)  国内では市場規模も未知数な電子書籍分野へのKindleの参入、数年後には、この国の出版業界はまったく違う景色を見せているかもしれない。
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「割安感はイマイチ」「表示はモッサリ」日本語版発売が待たれるKindleはちょっと不安? 

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 「4月にも電子ブックリーダー・Kindle日本語版が発売」――と日本経済新聞が報じて以来、多くの人が公式アナウンスを心待ちにしているKindle日本語版。日経に続いて、出版業界紙「新文化」では角川グループ傘下の出版社がAmazonと契約締結に至ったと報じており、いよいよ現実味を増している。「リブリエ」「シグマブック」「GALAPAGOS」「FLEPia」(「FLEPia」は世界初のカラー電子ペーパーを利用した富士通の製品。現在も販売中だが価格は9万9,750円!)と、数々の電子ブックリーダーが現れては消えていった日本の電子ブックリーダー市場。果たして、Kindleは確固たる市場をつくることができるのか。  日経によれば、日本でのKindleのリリースは、1万円台の「Kindle Touch」が主力だと報じられている。  現在、日本国外で販売されているKindleの種類はさまざまで、キーボード付きのKindle Keyboard(Kindle3)や、薄くて軽いKindle4、TouchやFireなども出ている。昨年発売されたfireは、画面がカラーで価格は1万円台。「激安のタブレットPCだ」と話題になっている。  日本語版発売を待ちきれず、まずは1台購入してみるしかないと考えた筆者だが、この時点でどれを買うべきかかなり迷う。「新しくなればなるほど、全機種の機能がアップデートされ多機能化される」と考えがちだが、Kindleは機種ごとに個性があるのだ。簡単にまとめると次のようになる。 ・Kindle Keyboard(Kindle3) キーボードがあるので文字入力が確実。英語の読み上げ機能がある。 ・Kindle4 薄くて軽い。Kindle3よりもページ送りが早い。読み上げ機能なし。 ・Kindle Touch タッチパネルに好き嫌いが分かれる。iPadに比べると、レスポンスのモッサリ感が否めない。 ・Kindle Fire 日本語化させるのはちょっと難しい。  ネット上のさまざまなレビューをまとめるとこんな感じだ。じっくりと検討した結果、Kindle Keyboard(Kindle3)をAmazonで注文。中国から香港経由で成田空港着、そこから自宅へ。月曜の夕方に注文したら木曜日の午後に到着した。早い!  セットアップ方法などは、あえてここで説明しなくてもよいだろう。USBケーブルをPCにつないで充電。ケーブルを外し、パワースイッチをスライドさせたら起動!  ……で、ウェルカムメッセージが表示されるわけだが、このメッセージが長い! 筆者の英語力だと亀の歩みで先に進めないので、読み飛ばしてページを送っているが、ページの進みがモッサリとした感覚でイラっとくるし、ガッカリ感が漂ってくる。前述の通り事前情報で知っていたところではあるが、それ以上に違和感があるのが、ページが切り替わる時に画面が一瞬、白黒反転することだ。電子ペーパーそのものはまったく目に刺激がなくて、その技術力に目を見張るばかりなのだが、白黒反転する時の妙な刺激は違和感がぬぐえない。現時点で2週間ほど使用しているが、そのうち慣れるのだろうか?  Kindleからの書籍の購入はごく簡単に行うことができる。出荷時点でアカウント設定も完了しているので、目当ての本を検索して購入すれば、すぐに読むことができる。ちなみに、英和辞典「英辞郎」を購入してインストールすれば、分からない単語にカーソルをあてると単語の意味を日本語で表示してくれる。こちらも表示が少しモッサリとしているが、紙の本を読みながら辞書を引いている時に比べれば格段に楽だ。  さて、さっそく何かを買ってみることに。こんなに簡単に本を購入できるようになったテクノロジーの進歩を記念して、テッド・ネルソンの『リテラリーマシン――ハイパーテキスト原論』の原書でも購入してみるかと検索したものの、売っていなかった。すでに数多くの書籍がKindleで販売されているが、やはり紙の「売れ筋」から販売されるようになっている様子。マニアックなものは後回し、ということらしい。この感覚、iTunes Storeで音楽がダウンロード販売されるようになった時も味わったような。まぁ、営利企業だから売れるものから売っていくのは、当然だろう。  というワケで、記念すべき1冊目はスタンリー・コーエンの『Folk Devils and Moral Panics』(いい加減、誰か日本語訳してよ)を購入。さらに、ここ2週間ばかりで何冊か購入してみているのだが、紙の本よりは2~3割安いといっても、もともとが高価な本はあまり割安感は感じられない。Kindleを「買ってよかった」と思えるのは、ペーパーバックを多読したいという読書好きな人だろう。また、読み上げ機能を利用したオーディオブックというものも販売されているので、リスニングに重点を置いた英語学習者にも便利かもしれない。  筆者の場合、今のところはKindleに洋書やら青空文庫を入れておき、同時に紙の本もカバンに入れて持ち歩いている。利点としては、電車に揺られながら堅い本を読むのに疲れた時に、すぐに別の本に切り替えられることだ。紙の本を何冊も持ち歩くよりは、軽くてよい。それでも、本を購入するたびに「思ったよりも安くなかった」というガッカリ感が先行してしまうのをぬぐえない。日本語版発売にあたっては、どのような値段設定になるのだろうか。2~3割の値段の違いならば紙と電子書籍、どっちを選ぶ人が多いのか? (文=昼間たかし@Kindleは自腹で購入)
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新登場した「ブックメンテナンス秋葉原」に並んだ製本機材に興奮!

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店の奥に進むと、新しい発見が。そのあたりが
秋葉原のセオリー通りともいえるのでは?
 秋葉原に新しいブームの兆しなのか? 「自炊の森」閉店のニュースが流れた先週末、秋葉原に新たな形態のサービスを提供する「自炊」がオープンした。  10月8日(土)、秋葉原の少し奥まった裏道(最近は『シュタインズ・ゲート』の聖地ともいわれている一帯)に、ひっそりとオープンした「ブックメンテナンス秋葉原店」。店の前には「スキャン」と緑の文字で書かれた看板が置かれ、一目で「自炊」サービス専門店ということが分かる。店に入ると、一方の壁にはスキャナーと接続されたパソコンがずらりと並んでいる。その数は11台。  しかし、この店の注目すべき点はそこではない。店の奥には、手動と電動の裁断機、ページ数が多い物も扱うことができる業務用の製本機。そして、シュリンク機材や、研磨機、紙そろえ機(自動で紙をトントンしてくれる)といったマニアックな機材まで設置されている。インクのにおいがしないだけで、印刷工場のような雰囲気なのだ。 「発想の原点は、ビジネスコンビニの機能限定版です。出版は電子化の方向へ向かっており、自分の持っている雑誌や書籍を、電子化して気軽に持ち歩きたいと思っている人は多いでしょう。同時に、"電子化したいけど蔵書としても保存しておきたい"という需要もあります。ですので、その需要に応えることのできる機材をそろえたんです」(同店)
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シュリンクすれば、断裁した本も
バラけずに収納できる。貴重な
本を保存することも可能。正式
オープン後は、スキャンスペース
にはのれんを設置するので、恥ず
かしい本でも安心して「自炊」で
きる。
 一般家庭用よりも、最大10倍あまり高速かつ、精度も高いスキャナーはウリのひとつだ。しかし、製本機や研磨機などは、それ以上のウリとなると考えているようだ。 「研磨機だけの利用もできるので、店名の通り"本のメンテナンス"にも使っていただけます。"保存用"をシュリンクすることもできますよ」(同店)  シュリンクに関しては「付録を保存する」ことも考えて、ヒートガンも準備されている。この、"かゆいところに手が届く"設備に、「自炊」の一歩先のサービスを目指す意志が強く感じられる。 「カラーレーザープリンターもありますから、製本機と併せて、コピー本よりもきれいな同人誌を作ることもできます。コミケの時には、24時間営業も考えていますよ」(同店)  また、電子化した後に、元の雑誌・書籍が必要ないならば、1キロ50円で引き取るサービスも用意している。こちらも、将来的には機密文書の廃棄も引き受ける法人向けサービス、さらには再生紙の製造まで「野望」を持っているのだとか。  もはや「自炊」の需要を留めることはできない。同店の出現は、さまざまなサービスが勃興することを予感させてくれる。ただ、ちょっとひっそりとオープンし過ぎてしまったためか、今のところ来客は見学が中心だという。  16日までは体験キャンペーンとしてスキャナー利用料は完全無料。加えて、業務用の機材の数々にはワクワクせずにはいられないハズだ。 (取材・文=昼間 たかし)
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「継続を模索中」突然の閉店を決めた「自炊の森」店長を直撃取材!

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閉店を前に営業時間は12時からに前倒し。21時までに入店すれば深夜まで
作業可能のサービスも始めている。
 店内に陳列された書籍を「自炊」(スキャナーなどを使い、自分自身で電子化する行為)できるとして賛否の議論を生んだ「自炊の森」(東京都千代田区)が近く閉店する意向を明らかにし、再び注目を集めている。  秋葉原にある同店は、昨年12月末にプレオープン。「店内の書籍を店内で電子書籍化して持ち帰ることができる」として、12月末にコミックマーケット会場周辺でチラシを配布し、著作権者に対する利益還元やモラルの問題などで議論を巻き起こした。今年3月からは、著作権者への利益還元として「1冊1スキャンに対して定価の10%を支払う」と提案し、営業を行っていた。  突然の閉店告知に対して、今年9月に講談社・小学館・集英社ら出版社7社と作家・漫画家ら122人が自炊代行業者約100社に対して行った「自炊代行は複製権の侵害」とする旨の質問状との関連性も想像されたが、 「質問状に関連してマスコミから取材依頼はあったが、質問状は届いていない」(同店店長)  とのこと。著作権法では「『使用する者が』複製することができる」と定められているため、店員は代行せず、使い方を説明するだけの同店は対象外と判断されたようだ。  そんな中での閉店は、同店のオーナーの判断で店長にも寝耳に水の出来事だったという。 「閉店する意向を告げられたのは、10月3日のこと。本当にTwitterに、閉店の旨をツイートする直前のことでした」(店長)  閉店はオーナー側の意向であり、開店以来、店を切り盛りしてきた店長の無念さは計り知れない。 「開店以来、爆発的ではないにしても、収支はトントンといった具合でした。常連のお客様も増えてきたので、もうちょっと粘れば......と思っていたのですが、"悪名"が轟いたままやめてしまうのは残念です。常連のみなさんにあいさつもしたいので、できるかぎり営業は続けるつもりです」(店長)  店内に陳列された書籍を「自炊」できるシステムにしたために「悪名」が轟いてしまったが、店長は将来的には権利侵害の可能性が高い「自炊代行」に変わって、店頭で客が自分で自分の持ち込んだ雑誌や書籍をスキャンする、本来の「自炊」が主流になっていくのではないかと考えているという。そのため今後は店内に書籍を陳列しなくても経営は成り立つと考えているようだ。 「このまま閉店してしまっては無責任なので、なんらかの形で継続を模索しています」(店長)  ブームともいわれる「自炊」だが、個人で設備を整えることは困難だ。高速なスキャナーや、分厚い雑誌や書籍を一度にバラせる業務用の裁断機を自由に使うことができるビジネスに需要があるのは間違いない。  そこで店長は、早くも公式サイトで「事業ノウハウ、資産の買取などを希望される投資家、企業の方」を募っている。 「今のところ"設備を買い取りたい"という方が多いですね。正直、店の一角や空き倉庫でも営業はできます。また、現在の店舗は少し広すぎるので、家賃の部分はもっと圧縮できると思います」(店長)  すでに設備はそろっているので、場所さえあれば、いつでも新たな形で営業を再開することは可能なようだ。  「自炊」は、まだ普及は始まったばかりの黎明期に過ぎない。閉店が決まったからといって、このビジネスモデルが否定されたわけではない。今後、なんらかの形で再生するのか? 動向に注目したい。 (取材・文=昼間たかし)
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アップル社の勝手な"強制突然バーゲン"で電子書籍市場が大パニック!

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350円の本を買おうとクリックすると、
なぜか表示されるのは250円という価格。
「あれ? アプリの値段が全部下がっている......。システム障害?」  7月14日の朝9時過ぎにApp Storeをのぞいたユーザーはさぞかし驚いたに違いない。App Store上の書籍やアプリを購入しようとクリックしたところ、要求された金額が表示価格より大幅に安かったからだ。驚いたのはユーザーだけではない。出店者側にとってもまったくの寝耳に水。値下げしたつもりのない自社の商品が、アップル社から何の連絡もないままに、値下げして売られていたのである。一体なぜこんなことになったのか。   ことの顛末を知る前に、まずはApp Storeで商品を売る際の価格設定ルールを知っておく必要があるだろう。App Storeでアプリや書籍を売る場合、実は販売価格は売り主が自由に決めることはできない。アップル側があらかじめ決めた価格帯からしか選択できないのだ。  例えば、7月14日午前9時以前までのApp Storeにおける一番安い商品価格は115円。以下、順に230円、350円、450円、600円、700円、800円、900円、1,000円......と上がっていく。つまり、「115円じゃ安すぎて儲からないけど、230円だともらいすぎだから、200円で売りたい」と思っても不可能なのだ。書籍も同様で、「この本は市場動向から見て300円なら売れそうだ」と思っても、売り主の意思で価格を決めることができないのである。
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App Storeでの世界各国の販売価格は帯ごとに決められてい
る。赤い枠内が日本(赤線は編集部)。115円の販売価
格のうち、出店側の取り分が81円(7割)という意味。
 では、なぜそんなルールになっているのか。この件についてアップル社はこれまで公式説明をしていなが、「為替レートの関係でしょう」と言うのはあるITライターだ。 「おそらく1ドル115円くらいのときに決めた"ドル建て価格"なので、あちらの感覚では1ドル、2ドルと、ドル単位で区切っている感覚なんだと思います。ただ、その計算でいうと3ドルは345円で端数になるため350円に切り上げてしまい、5ドルは575円だから600円にしてしまおうと、かなりアバウトに決められているようですね。そういう意味では115円だって端数なんですが、そこらも含めてアバウトなんでしょう。厳密な約束ことはないようです」  その結果、450円の次に高い商品が600円になってしまい、500円台で売ることができないというおかしな事態になってしまっているというのだ。一般に小売店で売られている商品は、製造や流通のコストと需給バランスを勘案し、1~10円単位でシビアに決められるのは当然のこと。スポーツ用品メーカーがサッカーボールを1個1,200円で売りたいと考えているのに、店側から「800円か1,500円かのどちらかを選ばないと売らせない」と言われて困惑している姿を想像してみれば分かりやすいだろう。  今回の突然の"価格改正"により、販売価格は85円(今まで115円)、170円(同230円)、250円(同350円)と、それぞれ大幅に下げられている。ちなみに、App Storeの決済システムを利用した場合、売り上げの30%がいわゆる"場所代"としてアップルに徴収される。この30%という数字は、携帯ゲームのGREEやmixiでアプリを売る場合もほぼ同じだ。  つまり85円で売れた場合の取り分は、わずか約60円。115円で売っていたこれまでと比較して一個あたり20円の収益源となる。より分かりやすい例で言えば、これまで800円で売っていた商品は140円も値下げとなるため、仮にこの商品が1万本売れた場合の誤差は実に140万円ということになる。では、なぜ今回、販売価格が突然下げられてしまったのか。  これについてもアップル社からの説明が一切ないため憶測の域は出ないものの、先のITライターは「円高が1ドル85円くらいまで進んでいるのでレートに合わせて、アバウトに調整しようということでしょう(笑)」と推察する。 「ただ、なんでそれをアップル社がすべての商品を一斉に、しかも出店側に何の告知もしないままにやるかのか、という問題です。円高が進んでしまってアメリカで売れなくなったとしても、それは売る側の責任で対処すべきことです。そもそも、電子書籍のように日本の市場だけをターゲットに出店しているところも多いわけで、余計なことをするなというのが出店者側の気持ちでしょう」  しかも、電子書籍の場合は執筆者に著者印税が発生する。1,000円の本なら3割の300円が相場だ。ただ、今回は突然、アップル側により1,000円の本が800円に下げられてしまった。この場合の印税計算はどうなるのだろうか。本の値段は下がっても、印税だけは同じ額を払わなければならないならば、出店側は大打撃だ。  実際に電子書籍をApp Storeで展開している「グリフォン書店」によると、「印税はあくまで販売価格に対する%で契約しているため、例えば1冊あたり300円でお支払いしていたものが240円に下がるという考え方になります」とのこと。ただ、単純に安売りになってしまうために、出店者も執筆者も収益が減ることは間違いない。しかも、「問い合わせがあったすべての著者さんにそのことをご説明して納得していただくのに、丸二日を要しました。起きてしまったことは仕方ないですが、せめて事前告知は欲しかったというのが正直なところです」と困惑する。グリフォン書店ではしかたなく価格の再設定を進めているが、実はこれにもアップルの審査が必要となる。おそらく今、日本中から数千件規模の価格変更が申請されているはずで、その処理が済んで画面上の表示に反映されるには、かなりの時間を要することになりそうだ。  また、ストア型のアプリ「食べレコ」を運営する「株式会社ハンズエイド」の小室健社長も、「すべての仕事や打ち合わせをキャンセルして、対応に一日が潰された」と憤懣やるかたない。「当社の場合は価格表示の変更をサーバ側で対応できましたけど、ストア型の出店者は大変だと思いますよ。アプリのデータベースもマスターを変えて、アプリ自身を更新する作業をしないといけない場合もありますから」  大幅値下げでたくさん売れて、結果的に売り上げがアップするのでは、という一部のネット上の声に対しては、「そういう考えも確かにありますし、弊社でもあるアプリを実験的にしばらく放置してみたんですが、それまで一日15個くらい売れていなかったのが、30個くらい売れましたからね(笑)。しかし、一時的にちょっと多く売れても、中長期的には経営にプラスになりません。安定した状態で売れ行きデータをとっていかないとマーケティングにもなりませんし」  また、「新興市場としてこれから盛り上がろうというときに、冷や水をかけられたのは業界にとって痛手」と懸念するのは、先のITライターだ。 「価格も自由に決められない上、いつ大幅値下げ、あるいは値上げが起こるか分からない。これでは事業計画も立てられません。革命前夜の社会主義国よりリスクが大きい(笑)。新規参入を検討している事業者はもちろん、著者側からしても二の足を踏みたくなるでしょうね。著者が躊躇すればコンテンツは増えない。業界にとっては大きなマイナスです」  同じことは今後も起こりうると考えるのが妥当のようだが、各社ともその対処にどう向き合っていくべきなのだろうか。前述の小室氏は、「海外市場をにらんだ展開をあらためて痛感した」という。 「アップル社のやり方の是非はともかく、価格変動にも揺るがない経営基盤を構築しないとならないというのが、今回の教訓ですかね。そのためには、国内のみならず、海外で利益を上げなければなりません。今、国内のiPhoneが400~500万台と言われていますが、世界中のIOS(iPhone、iPadなどに搭載のOS)は2億台です。そこを目指した展開を考えていかないとならないでしょうね」  もっとも、強大な資本を持たないベンチャー企業でも参入が可能なのが、この市場の一つの魅力のはず。世界を目指すために国内で地道に稼ぐスタイルがあってもよさそうなものだが、そういう事業者はアンドロイドへ移行すべきということか。いずれにせよ、今回の"アップル大恐慌"が今後の電子マーケットへ深い爪跡を残したことだけは間違いなさそうだ。 (文=浮島さとし)
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海賊版出し放題!? AppleもGoogleも放置状態の電子書籍マーケットの現状

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人気作品が並ぶAppStoreだが......
 11月はじめ、中国のApp Store(AppleのiPhone・iPad用のコンテンツストア)において、日本の作家の作品を許諾を得ずに翻訳し、公開していた業者があったことが発覚した。  まずはじめに発見されたのは、人気作家・村上春樹の『1Q84』などであったが、その後日本のベストセラー作家の作品が次々と見つかった。  コトはAppleのストアだけの話ではない。Android Marketの「コミック」カテゴリを開くと、いくつもの英訳された「MANGA」アプリが見つかる。その大部分は集英社などの大手出版社から発売された、海外でも人気の高い作品である。日本の出版社や著者と、きちんと契約を結んだ上で発行されているかどうか、極めて疑わしい。  App Storeで販売するアプリやコンテンツの審査が非常に厳しいことで有名なAppleだが、実は著作権関連のチェックは行っていない。原則的にアプリ製作者がAppleに出さなければならないのはアプリ本体くらいで、原著者とアプリ製作者との間に結ばれた契約書の提示などを求められることはないのだ。水着の女性の写真集などを作って申請すれば、たちまち審査で弾かれてしまうのだが、無名の作家の小説を密かに翻訳してアップしても、それが正規版であるかどうかのチェックは行われず、審査を通過してしまう。  Android Marketの場合は微妙に異なるが、著作権の確認が行われない点は共通だ。まず、Android Marketの場合、販売開始までのプロセスで審査は行われない。発売後、購買者からの「通報」によりそのコンテンツが違法なものであるかどうかを確認するというシステムを採用しているのだ。  海賊版の流通防止という点において、一見Appleよりマシなシステムに見えるが、実は抑止力は大差ない。あるコンテンツが海賊版かどうかは、契約の当事者である業者と原著作者にしかわからないことで、どんなに怪しくても第三者が「それは海賊版だ」と断じることができないからだ。この「通報」によって海賊版を排除することができるのは、著者本人とオリジナルの版元だけということになる。  すでに当サイトにおいて報じたこともあるが(http://www.cyzo.com/2010/11/post_5901.html)、AppleにしろAndroidにしろ、クリエイターの表現の自由を拘束することにはやたら熱心ではあるが、クリエイターの知的財産を守ろうとする意識は希薄であるように見受けられる。 ◆誰が作家を守るのか?  このように、現状のシステムでは、海賊版の流通による知的財産権の侵害を防ぐ手立てはない。  本来、こうした権利の管理は出版社が手がけてきたものであるが、出版業界の一部には電子書籍全体を敵視する傾向があり、その結果、電子出版で発生する各種トラブルへの対応策が整っていないという現状がある。  先に述べたAndroid Marketの「海賊版とおぼしき」翻訳漫画アプリにしても、日本の版元がチェックすれば本当の海賊版なのかどうかすぐに判明するし、著者の代理人としての立場から彼らが通報を行えば、一発でマーケットから排除することが可能なはずだ。  今後電子出版が盛んになり、作家が個人レベルで作品を刊行するようになると、海賊版問題はさらにあちこちで頻発するようになるだろう。作家は作品を執筆するのが本業であり、刊行した著作物の権利を守ることまでとても手がまわらないからだ。  実は同様の問題はPC用のWeb上でも発生している。この場合主に被害者となっているのは、同人漫画作家だ。違法にスキャンされたデータが、海外で製作された「画像収集ソフト」で集められ、アフィリエイト収入を目的としたサイトに配信されているのだ。同人作家の多くは、自作がそういう形で違法に再配信されていることをほとんど知らないか、知っていてもどうすればいいのかお手上げ、という状態に陥っている。誰か、彼らの代わりに権利を管理する者が必要なのである。  海外には、出版エージェントという業態がある。作家の原稿や規格を出版社に売り込み、ギャラの交渉を行い、契約内容の管理を行うというのがその業務内容だ。日本においては、この機能は出版社が請け負っていた。しかし、電子書籍時代の到来に伴い、出版社がこの機能を喪失すれば、日本でも出版エージェントがその役割を担うことになるのかもしれない。いずれにせよ、誰かが作家たちの権利を守らなければ、夢の電子書籍市場は違法業者が跋扈する荒地となってしまうことは間違いないだろう。 (文=高安正明)
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海賊版『容疑者Xの献身』が暗示する電子書籍の不確かな未来

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『容疑者Xの献身』(文芸春秋)
伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ギョーカイの内部情報を拾い上げ、磨きをかけた秘話&提言。  作家の村上龍自ら、電子書籍制作・販売会社を設立するなど、何かと話題になっている電子書籍だが、早々に海賊版が出回る、という事件が勃発した。  しかもこの海賊版小説、人気売れっ子作家の東野圭吾『容疑者Xの献身』(文芸春秋)だったというから驚きだ。しかも「App Store」で......。  「App Store」はアップルが運営するiPhone、iPadなどに向けるアプリのダウンロードサービスだが、そこにベストセラー作品『容疑者Xの献身』アプリが登場したのは11月初頭だった。値段は115円。だがその内容は、不審だらけのものだったという。 「誤字脱字だらけで、不自然な字間や、文字が追加されている箇所もあったようです。値段も安すぎる。不審に思った購入者が、版元の文芸春秋に問い合わせをしたようです。しかし、文芸春秋側も全く関知していない。そんなアプリがあることも、この問い合わせで知り、大騒ぎになった」(出版関係者)  もちろん、作者の東野もあずかり知らないという完全な無断販売・海賊盤だったのだ。急遽、販売停止の処置を要請したという。  厳格と言われる「App Store」でさえ、こんな事態が起こる。今後、楽天や角川グループなど、日本企業も次々と電子書籍業界に参入が予定されているが、こうしたチェック機能がどこまで働くのか。  電子書籍では、著作権や印税の配分を巡り議論があるが、しばらくは、こうしたさまざまなトラブルが起るのでは、と思わせる一件であった。 (文=神林広恵)
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