ジャズマニアはめんどくさい? 『ラズウェル細木のときめきJAZZタイム』でジャズ入門

ジャズマニアはめんどくさい? 『ラズウェル細木のときめきJAZZタイム』でジャズ入門の画像1
『ラズウェル細木のときめきJAZZタイム』(松坂)
 疲れがたまってマイルス、肩がコルトレーン……。  今宵は、みなさんをシブ~いジャズの世界に誘います。ナビゲーターはもちろん私、じゃまおくん(ジャズ歴2週間)。みなさん、普段ジャズって聴きますか? 僕はせいぜい、喫茶店のBGMぐらいでしか聴く機会がないのですが、赤いちゃんちゃんこ着てお祝いされる歳まであと20年を切りましたし、そろそろ大人の音楽も嗜みたいお年頃です。そこでジャズですよ。  しかしね、ジャズといえばクラシック以上に小難しくて、ハードルが高いイメージがあります。ジャズもマンガで気軽に学べればいいのに……ということで見つけたマンガが、本日ご紹介する『ラズウェル細木のときめきJAZZタイム』という作品です。読んで数ページで確信しました。ジャズマニアは相当めんどくさい人種だぞ、と。  ジャズ専門誌「ジャズ批評」(松坂)に1986年から連載されていた漫画をまとめたもので、作者はタイトルにある通り、ラズウェル細木先生。『酒のほそ道』(日本文芸社)などの呑兵衛グルメマンガで有名ですが、実はジャズのマンガでも第一人者なのです。  本作では、ラズウェル先生自ら往年のラッツ&スターのような黒塗りルックで登場します。めちゃくちゃソウルフル! そんな気合入りまくりのラズウェル先生が描く「ジャズファン(ジャズマニア)あるある」が、このマンガの醍醐味なのです。  連載当時の1980年代は、レコードがCDに移行する過渡期です。そのためジャズも、まだまだレコードが主流。とりわけ廃盤になっている稀少レコードが多いため、ジャズファンの間で中古レコードゲットのための想像を絶する過酷なバトルが繰り広げられているのでした。  中古レコードのセール情報があれば、開店前のラーメン二郎のごとく行列ができ、開店と同時に、我先にとレコードをゲットしようとするジャズマニアたち。完全に目が血走ってます。それほどまでに、ジャズの中古レコードって魅力的なものなのでしょうか?  ちなみに、レコード屋さんで中古レコードが収められているダンボール箱を「エサ箱」といい、お目当てのレコードを探す行為を「ディグる」といいます。つまり、エサ箱をディグるのがジャズファンの日常なのです。 「いまやレコード屋で弁当を食うのは常識だ!」  中古レコードを探すのに忙しすぎて飯を食べてるヒマもないので、そのままレコード屋に座り込んで弁当を食っちゃう。これもまた、ジャズファンの日常なのです(ホントかよ)。  生まれながらのCD世代で、レコードなんて見たこともないというヤングな人たちにはすでに一連のジャズファンの行動は理解不能かと思いますが、それもそのはず、正直リアルタイムに80年代を生きてきた僕にもサッパリ理解できません。しかし、ジャズファンのめんどくさい生態はこんなものでは済まされません。  ジャズファンの醍醐味はやはり、ジャズ喫茶などで繰り広げられる自己陶酔感あふれるウンチク語りにあるでしょう。 「調和と破壊の二律背反性というオブスキューなバックグラウンドを持ち…」  何を言っているのかサッパリわからん! オブスキューって、オバQの親戚か何かですか?  ただ、これは鉄道マニアが熱く語ったり、アイドルオタクが熱く語ったりすることにも通じるものがあります。わかってる者同士だけで専門用語てんこ盛りでウンチクを語り合うのって、ある種の快感なんですよね。  ちなみに、当時のジャズ喫茶というのは純粋にジャズを楽しむ場所ですので、でかい声でしゃべったりするのは厳禁です。 「ジャマラディンのサウンドってさー」とか夢中になってペチャクチャ語ったりすると、「テメーの顔のほうがよっぽどジャマだっつーの」と、嫌みのひとつもカマされてしまうのです。ラズウェル先生、酒のツマミには寛容なのに、ジャズのことになるとかなり毒舌ですね。ちなみに、ジャマラディンというのはジャズベーシストです。決してジャマな人ではありませんよ!  そのほかにも、狙ってる女の子とジャズフェスに行った帰りにラブホに連れ込もうとしてひっぱたかれたり、ソニー・ロリンズあたりのカッコイイ演奏に憧れて思わずサックス買っちゃったり……。BOOWYに憧れて布袋モデルのギターを買った黒歴史を持つ筆者としては、この気持ちすごくわかります。でも、現実にはサックスを吹いても…… 「ママー何の音?」 「さあ…キリギリスかしら?」  なーんてことを言われて、ただの置物になるんですよね。まさに、ニッチもサッチモいかない状況です。  最後に初心者のみなさんのために、覚えておいて損はないジャズ豆知識をお教えしましょう。「ヴィレッジ・ヴァンガード」って、実はアメリカの有名なジャズクラブの名前で、決して変なグッズを売ってる本屋さんのことではありません!! このマンガで初めて知りました。  というわけで、ジャズ初心者にもおすすめのマンガ『ラズウェル細木のときめきJAZZタイム』をご紹介しました。ジャズファンのみなさんにとってはいい加減にセロニアス! とばかりにモンクを言いたくなるような文になりましたことを心よりお詫び申し上げます。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

ジャズマニアはめんどくさい? 『ラズウェル細木のときめきJAZZタイム』でジャズ入門

ジャズマニアはめんどくさい? 『ラズウェル細木のときめきJAZZタイム』でジャズ入門の画像1
『ラズウェル細木のときめきJAZZタイム』(松坂)
 疲れがたまってマイルス、肩がコルトレーン……。  今宵は、みなさんをシブ~いジャズの世界に誘います。ナビゲーターはもちろん私、じゃまおくん(ジャズ歴2週間)。みなさん、普段ジャズって聴きますか? 僕はせいぜい、喫茶店のBGMぐらいでしか聴く機会がないのですが、赤いちゃんちゃんこ着てお祝いされる歳まであと20年を切りましたし、そろそろ大人の音楽も嗜みたいお年頃です。そこでジャズですよ。  しかしね、ジャズといえばクラシック以上に小難しくて、ハードルが高いイメージがあります。ジャズもマンガで気軽に学べればいいのに……ということで見つけたマンガが、本日ご紹介する『ラズウェル細木のときめきJAZZタイム』という作品です。読んで数ページで確信しました。ジャズマニアは相当めんどくさい人種だぞ、と。  ジャズ専門誌「ジャズ批評」(松坂)に1986年から連載されていた漫画をまとめたもので、作者はタイトルにある通り、ラズウェル細木先生。『酒のほそ道』(日本文芸社)などの呑兵衛グルメマンガで有名ですが、実はジャズのマンガでも第一人者なのです。  本作では、ラズウェル先生自ら往年のラッツ&スターのような黒塗りルックで登場します。めちゃくちゃソウルフル! そんな気合入りまくりのラズウェル先生が描く「ジャズファン(ジャズマニア)あるある」が、このマンガの醍醐味なのです。  連載当時の1980年代は、レコードがCDに移行する過渡期です。そのためジャズも、まだまだレコードが主流。とりわけ廃盤になっている稀少レコードが多いため、ジャズファンの間で中古レコードゲットのための想像を絶する過酷なバトルが繰り広げられているのでした。  中古レコードのセール情報があれば、開店前のラーメン二郎のごとく行列ができ、開店と同時に、我先にとレコードをゲットしようとするジャズマニアたち。完全に目が血走ってます。それほどまでに、ジャズの中古レコードって魅力的なものなのでしょうか?  ちなみに、レコード屋さんで中古レコードが収められているダンボール箱を「エサ箱」といい、お目当てのレコードを探す行為を「ディグる」といいます。つまり、エサ箱をディグるのがジャズファンの日常なのです。 「いまやレコード屋で弁当を食うのは常識だ!」  中古レコードを探すのに忙しすぎて飯を食べてるヒマもないので、そのままレコード屋に座り込んで弁当を食っちゃう。これもまた、ジャズファンの日常なのです(ホントかよ)。  生まれながらのCD世代で、レコードなんて見たこともないというヤングな人たちにはすでに一連のジャズファンの行動は理解不能かと思いますが、それもそのはず、正直リアルタイムに80年代を生きてきた僕にもサッパリ理解できません。しかし、ジャズファンのめんどくさい生態はこんなものでは済まされません。  ジャズファンの醍醐味はやはり、ジャズ喫茶などで繰り広げられる自己陶酔感あふれるウンチク語りにあるでしょう。 「調和と破壊の二律背反性というオブスキューなバックグラウンドを持ち…」  何を言っているのかサッパリわからん! オブスキューって、オバQの親戚か何かですか?  ただ、これは鉄道マニアが熱く語ったり、アイドルオタクが熱く語ったりすることにも通じるものがあります。わかってる者同士だけで専門用語てんこ盛りでウンチクを語り合うのって、ある種の快感なんですよね。  ちなみに、当時のジャズ喫茶というのは純粋にジャズを楽しむ場所ですので、でかい声でしゃべったりするのは厳禁です。 「ジャマラディンのサウンドってさー」とか夢中になってペチャクチャ語ったりすると、「テメーの顔のほうがよっぽどジャマだっつーの」と、嫌みのひとつもカマされてしまうのです。ラズウェル先生、酒のツマミには寛容なのに、ジャズのことになるとかなり毒舌ですね。ちなみに、ジャマラディンというのはジャズベーシストです。決してジャマな人ではありませんよ!  そのほかにも、狙ってる女の子とジャズフェスに行った帰りにラブホに連れ込もうとしてひっぱたかれたり、ソニー・ロリンズあたりのカッコイイ演奏に憧れて思わずサックス買っちゃったり……。BOOWYに憧れて布袋モデルのギターを買った黒歴史を持つ筆者としては、この気持ちすごくわかります。でも、現実にはサックスを吹いても…… 「ママー何の音?」 「さあ…キリギリスかしら?」  なーんてことを言われて、ただの置物になるんですよね。まさに、ニッチもサッチモいかない状況です。  最後に初心者のみなさんのために、覚えておいて損はないジャズ豆知識をお教えしましょう。「ヴィレッジ・ヴァンガード」って、実はアメリカの有名なジャズクラブの名前で、決して変なグッズを売ってる本屋さんのことではありません!! このマンガで初めて知りました。  というわけで、ジャズ初心者にもおすすめのマンガ『ラズウェル細木のときめきJAZZタイム』をご紹介しました。ジャズファンのみなさんにとってはいい加減にセロニアス! とばかりにモンクを言いたくなるような文になりましたことを心よりお詫び申し上げます。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

高級コールガールが非エコ野郎を抹殺! エコロジー仕置人マンガ『エ恋スト』

高級コールガールが非エコ野郎を抹殺! エコロジー仕置人マンガ『エ恋スト』の画像1
『エ恋スト』(日本文芸社)
 皆さんは普段、どんなエコ活動してますか? スーパーへ買い物に行くときはエコバッグを持参し、外食をするときはマイ箸を持ち歩き、夏になればエアコンの温度を28度に固定して節電……こんなのは当たり前ですよね?  しかし、この程度のヌルいエコ活動で地球温暖化が食い止められると思ったら大間違いです。究極のエコを目指すならば、時には人をあやめなければならない――そんなエコロジストが活躍するマンガ『エ恋スト』をご紹介しましょう。  主人公の回向院清香は、二酸化炭素の削減について研究する大学研究員。しかし、実は裏の顔も持っていました。夜は伝説の超高級コールガール「清香」であり、環境破壊をする非エコ野郎共を抹殺する仕置人でもあるのです。  しかし、清香の行動は、昼も夜もエコ活動ということで一貫しているのです。例えばコールガールになった清香は、客は自分からは一切清香に触れてはいけない、いわゆるマグロ状態厳守というルールを設けています。その驚愕の理由とは…… 「成人が運動をすると、1分間に150リットルの空気を呼吸するの」 「30分間の性的交渉をしても、片方が平静時のままなら浴槽一杯分のCO2を抑制したことになるわ」  そう、客がマグロ状態であれば環境に優しいのです! そのほかにも…… 「唇をつけられるのはお断りよ。仕事のたび、石鹸で洗わなきゃいけないなんて」 「洗剤や石鹸の有機成分が微生物を過剰発生させて生態系を壊しているの」  キスは水質汚染につながるのです。そこらでチュッチュしているカップルは生態系を破壊しているから、今すぐやめるべき!  ほかにも、エッチの後にティッシュを使おうとしたら、こんな豆知識も。 「ティッシュを取るときに必ず2枚取る人が多いでしょう」 「それを1枚にするよう心がければ、日本全体で1年間に木造住宅7万軒分の木を節約することができるのよ」  木造住宅7万軒分とか! ピロートークでそんな話されたら、萎えることこの上なしですね。  コールガール清香の客はたいてい、水質汚染などの環境破壊をしている企業の重役や、見せかけのエコ活動で私服を肥やす偽エコロジストたちです。つまり、コールガール清香は、ターゲットの環境破壊者たちをおびき寄せるための仮の姿なのです。そして、清香のテクニックで昇天しているスキに、髪に仕込んだかんざしでターゲットの首筋をグサッ。そしてこの決めセリフです。 「…地球は誰かのものじゃない」  ちなみに、清香に殺されるターゲットは「パターンD(Death)」と呼ばれますが、生かされるターゲット「パターンL(Live)」というのもあります。ただしパターンLの場合でも、眠っている隙に真夜中の山中に裸で放置されるなど、生きながらにして死の恐怖を味わうことになるのです。 「命の星への冒涜をするものは生きて贖罪を、その罪の十字架を快楽と共に肉に刻み込んであげる」  うへえ……恐ろしすぎる。要するにDでもLでも、どっちも地獄ってことですね。そんな清香の一連のエコ活動をまとめると、こういうセリフに集約されます。 「地球環境に益するものには光の美悦を、害為すものには闇の痛苦を、私はその仕分け作業人……」  というわけで、普段から地球に優しい生活を心がけないと、エコの仕分け人にかんざしでブッ刺されるかもしれませんよ! というマンガ『エ恋スト』でした。まあ、そもそもエコうんぬんの前に、コールガールを呼ばなきゃいいだけのような気もしますけどね。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

高級コールガールが非エコ野郎を抹殺! エコロジー仕置人マンガ『エ恋スト』

高級コールガールが非エコ野郎を抹殺! エコロジー仕置人マンガ『エ恋スト』の画像1
『エ恋スト』(日本文芸社)
 皆さんは普段、どんなエコ活動してますか? スーパーへ買い物に行くときはエコバッグを持参し、外食をするときはマイ箸を持ち歩き、夏になればエアコンの温度を28度に固定して節電……こんなのは当たり前ですよね?  しかし、この程度のヌルいエコ活動で地球温暖化が食い止められると思ったら大間違いです。究極のエコを目指すならば、時には人をあやめなければならない――そんなエコロジストが活躍するマンガ『エ恋スト』をご紹介しましょう。  主人公の回向院清香は、二酸化炭素の削減について研究する大学研究員。しかし、実は裏の顔も持っていました。夜は伝説の超高級コールガール「清香」であり、環境破壊をする非エコ野郎共を抹殺する仕置人でもあるのです。  しかし、清香の行動は、昼も夜もエコ活動ということで一貫しているのです。例えばコールガールになった清香は、客は自分からは一切清香に触れてはいけない、いわゆるマグロ状態厳守というルールを設けています。その驚愕の理由とは…… 「成人が運動をすると、1分間に150リットルの空気を呼吸するの」 「30分間の性的交渉をしても、片方が平静時のままなら浴槽一杯分のCO2を抑制したことになるわ」  そう、客がマグロ状態であれば環境に優しいのです! そのほかにも…… 「唇をつけられるのはお断りよ。仕事のたび、石鹸で洗わなきゃいけないなんて」 「洗剤や石鹸の有機成分が微生物を過剰発生させて生態系を壊しているの」  キスは水質汚染につながるのです。そこらでチュッチュしているカップルは生態系を破壊しているから、今すぐやめるべき!  ほかにも、エッチの後にティッシュを使おうとしたら、こんな豆知識も。 「ティッシュを取るときに必ず2枚取る人が多いでしょう」 「それを1枚にするよう心がければ、日本全体で1年間に木造住宅7万軒分の木を節約することができるのよ」  木造住宅7万軒分とか! ピロートークでそんな話されたら、萎えることこの上なしですね。  コールガール清香の客はたいてい、水質汚染などの環境破壊をしている企業の重役や、見せかけのエコ活動で私服を肥やす偽エコロジストたちです。つまり、コールガール清香は、ターゲットの環境破壊者たちをおびき寄せるための仮の姿なのです。そして、清香のテクニックで昇天しているスキに、髪に仕込んだかんざしでターゲットの首筋をグサッ。そしてこの決めセリフです。 「…地球は誰かのものじゃない」  ちなみに、清香に殺されるターゲットは「パターンD(Death)」と呼ばれますが、生かされるターゲット「パターンL(Live)」というのもあります。ただしパターンLの場合でも、眠っている隙に真夜中の山中に裸で放置されるなど、生きながらにして死の恐怖を味わうことになるのです。 「命の星への冒涜をするものは生きて贖罪を、その罪の十字架を快楽と共に肉に刻み込んであげる」  うへえ……恐ろしすぎる。要するにDでもLでも、どっちも地獄ってことですね。そんな清香の一連のエコ活動をまとめると、こういうセリフに集約されます。 「地球環境に益するものには光の美悦を、害為すものには闇の痛苦を、私はその仕分け作業人……」  というわけで、普段から地球に優しい生活を心がけないと、エコの仕分け人にかんざしでブッ刺されるかもしれませんよ! というマンガ『エ恋スト』でした。まあ、そもそもエコうんぬんの前に、コールガールを呼ばなきゃいいだけのような気もしますけどね。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

マツコも愛した、バブル臭ムンムンのセクシーダイナマイト女教師マンガ『イオナ』

マツコも愛した、バブル臭ムンムンのセクシーダイナマイト女教師マンガ『イオナ』の画像1
『イオナ 全9巻完結』(小学館)
 先日『マツコの知らない世界』(TBS系)を見ていたら、普段全然マンガを読まないというマツコ・デラックスが、学生時代に読んでいた数少ないマンガとして『イオナ』を挙げていました。バブル期を象徴するグンバツなバディのイケイケなナオンが登場する女教師マンガ、それが『イオナ』です。あらためて読んでみると、とんでもなくブッ飛んでいたので、本日はこちらをご紹介しましょう。 『イオナ』は「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)に1990~93年まで連載されていた、澤井健先生の作品。当時は、スピリッツ誌面上で「ミス・イオナコンテスト」が開催されるほどの人気作でした。  舞台は、鴻ノ宮小学校5年4組。産休に入った担任の代わりにやって来た教師がなんとびっくり、ハリウッド女優のようなルックスを持つ絶世の美女。その名も五十嵐一女(イオナ)。どのくらいのインパクトなのかというと、典型的な日本人だらけの生徒&教職員に混じって、1人だけメイクばっちりのアンジェリーナ・ジョリーがいる感じ。しかも、そんな美人教師が先陣を切っておバカをやるという、ドタバタ学園コメディなのです。  イオナは、教師としてはあまりに破天荒な言動を連発します。就任初日から二日酔いで、しかも下着の上にトレンチコートを羽織っただけの、痴女スレスレの格好で登場です。タバコを吸いながら授業をしたかと思えば、2時間目からは学校をサボってデパートのバーゲンに行ってしまい、そのまま帰ってこないという、そんじょそこらの不良教師と同じくくりでは言い表せないレベルです。  以降も、毎回パリコレのような奇抜で露出度の高いファッションで登場。大抵は乳や尻が半分飛び出しているため、生徒も目のやり場に困りまくり。  さらに人間性も、とても教育者とは思えないひどさ。学級委員長、菊池まどかを口ゲンカで泣かしたり、父親参観日の展示テーマを「お父さんのオチンチン」にしておチンチンのデッサンを強制したり、お気に入りの生徒、シュウくんをひいきしまくりで、それをほかの生徒に対して隠そうともしません。 「あたしはえこひいきする女なのよ!」  この開き直り……。そんなシュウくんとは、2人で午後の授業をサボってドライブしちゃいます。 「かわいい男の子をさらって、もてあそぶのが趣味なの」 と、ショタコン丸出しのセリフを吐いたと思えば、そのままディスコやバーに連れていったり、ラブホテルに連れていったり、しまいには「オッパイ吸ってみる?」などと誘ってみたり、小学校の教師でありながら、あらゆるタブーを超越した、怖いものなしの存在です。  しかし、その破天荒さとルックスで生徒たちにカリスマ視され、いつの間にか学校で一番愛される教師になってしまいます。極め付きが、6年生となり卒業を迎えることになったイオナのクラスの生徒たちが、イオナとの別れが惜しいあまりに、まさかの卒業ボイコット。クラス全員が留年して、7年4組「スーパーアダルトクラス」として君臨することになるのです。  学園マンガでは作品継続のために、主人公が留年する設定というのはたまに見かけますが、クラス全員留年で小学7年生という設定は、さすがに斬新すぎですね。  そんなイオナはいったい何者なのか、どうしても気になってしまうところですが、作中では一切明らかにされません。正体を暴こうとする者はなぜか交通事故に遭ったり、落雷に遭ったりと、不幸な出来事に巻き込まれる始末。あくまで、ミステリアスな存在であり続けるのです。  というわけで、留年してまで教わりたい謎の美人教師マンガ『イオナ』をご紹介しました。これでもかと言わんばかりに毎回キメてくるイオナのド派手ファッションを見るだけでも十分楽しめる作品で、マツコがハマるのも納得です。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

“怪物”と呼ばれた漫画家の軌跡……谷口ジロー版まんが道『冬の動物園』

怪物と言われた漫画家の軌跡……谷口ジロー版まんが道『冬の動物園』の画像1
『冬の動物園』(小学館)
 2月11日、谷口ジロー先生が逝去されました。心よりご冥福をお祈りいたします。一昨年『孤独のグルメ2』発売記念イベントに出演させていただいた際、関係者の方から谷口先生の体調があまりよろしくないという話を聞いておりました。いつかまた元気になって『孤独のグルメ』の新作を描いていただけるものと思っていましたが……。  フランスの芸術文化勲章「シュヴァリエ」を受章するなど、海外でも評価が高かった谷口先生ですが、近年の代表作としては『孤独のグルメ』『「坊っちゃん」の時代』といった作品が語られることが多いです。実際、僕も『孤独のグルメ』をきっかけとして谷口先生の作品を読むようになったのですが、ハードな作風の『事件屋稼業』『餓狼伝』『神々の山嶺』、あるいは動物をテーマとした『犬を飼う』『シートン』などの作品に思い入れがある人も多いことでしょう。    実は、そんな谷口先生の自伝マンガがあるのをご存じでしょうか? その名も『冬の動物園』。これ、すなわち谷口ジロー版の「まんが道」というわけです。今回はこの『冬の動物園』から、偉大なる漫画家の軌跡をひもといてみましょう。  主人公は、浜口光夫という19歳の青年。休日に動物園で動物をスケッチするのが趣味で、イケメンだけど、どことなくウブな感じです。  浜口は服飾デザイナーになりたくて京都の織物問屋に就職するのですが、デザインの仕事はまったくやらせてもらえず、浮気がバレて離婚し、出戻ってきた社長の娘・綾子の見張り役をやらされることになります。この綾子、全然懲りておらず、浜口の隙を突いて浮気相手と駆け落ちしてしまうのです。  綾子の駆け落ちで、見張り役だった浜口は会社に居づらくなり、辞めようと思っていたところ、東京にいた友人・田村に、売れっ子漫画家・近藤史郎のアシスタントの仕事を紹介され、浜口のマンガ人生が始まるのです。  谷口先生は実際に京都の繊維会社で働いており、その後に石川球太先生や上村一夫先生のアシスタントとなっています。本作品に出てくる漫画家・近藤史郎は、おそらく石川先生がモデルなのでしょう。  なにしろ、あの谷口先生の「まんが道」ですから、さぞかし漫画家になりたくてメラメラ燃えているのかと思いきや、そうでもありません。  軽い気持ちで漫画アシスタントの見学に行ったら、机とペンを用意され、いきなり実践投入。ベタ塗りだの背景描きだのを徹夜でやらされるハメになるのです。ダチョウ倶楽部でなくても「聞いてないよ!」って言いたくなる状況です。しかし、それがきっかけで、浜口はズブズブとマンガの世界に浸っていくことになるのです。  その後は、しばらくさえないアシスタント生活が続きます。アシスタント仲間の藤田が自分の作品を着実に描き上げ、持ち込みしているのを見て嫉妬する一方、自分はさっぱりマンガが描けず、歌舞伎町のバーで飲み歩いたり、女の子とデートしたり……かなり寄り道の多い「まんが道」です。  そんな浜口に転機が訪れたのが、近藤先生の友人に紹介された18歳の少女・茉莉子との出会いでした。茉莉子は生まれつき病弱で、入退院を繰り返しており、たまに病院の外に連れ出してあげる役目を浜口が引き受けることになります。なんの因果か、女の世話ばかりやらされる人生ですね。女難の相でしょうか。  しかし、茉莉子は浜口のマンガ作りに興味を示し、悩んでいた浜口のマンガのストーリーを一緒に考えてくれます。浜口の得意な動物絵を生かしたファンタジーものにしようとか、とらわれの少女を助ける設定にしようとか、ナイスなアドバイスがバシバシ炸裂。公園デートをしながら一緒にネームを考えているうちに、2人は本当にラブラブになっていくのです。  そんな夢のようなリア充生活も束の間、再び茉莉子の容体が悪化し、面会謝絶状態に。さらに、実家のある仙台の病院に転院してしまい、会えなくなってしまいました。  浜口は茉莉子のために完成させたマンガを見せることができず、会いたいのに会うこともできず、悶々とした日々を送ります。アシスタントの仕事も上の空で、周りに心配かけまくりです。そんな中、何気なく行った動物園で、あの駆け落ち社長令嬢の綾子とまさかの再会。親と絶縁状態にありながらも、愛を信じて力強く生きる綾子の姿を見て、浜口は仙台の茉莉子に会いに行くことを決意します。 そして、仙台の病院でついに茉莉子と再開。腕には点滴が刺さり、すっかりやせ細った茉莉子を抱きしめ…… 「好きだ、君がいたから俺はマンガが描けたんだ」  何このドラマみたいなかっこいいセリフ! このイケメンめ!!  同時に、そのマンガが「少年ホリデー」編集長に気に入られ、増刊号にデビュー作が掲載されることになるのでした。ダブルハッピーで、めでたしめでたし。  というわけで、谷口先生の自伝的マンガ『冬の動物園』をご紹介しました。漫画家の自伝マンガって、娯楽も彼女も何もかも捨て、体もボロボロになりながらストイックにマンガを描いて、持ち込んではボツにされを繰り返してようやっと報われる……みたいなストーリーばかりで、こんなキレイな展開の「まんが道」は正直、見たことないです。もちろん全部がフィクションではないと思いますが、やはり谷口先生の人生は一味違いました。  もし谷口ジロー作品が好きで、本作品を未読の方は、ぜひご一読を。オススメです。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

まるで井之頭五郎の老後……? 谷口ジロー作画の『センセイの鞄』がいい味すぎる!

まるで、井之頭五郎の老後を見ているよう……? 谷口ジロー作画の『センセイの鞄』がいい味すぎる!の画像1
『センセイの鞄』(双葉社)
 自分より、ひと回りもふた回りも年下の恋人ができる――。ほとんどの男性にとって、憧れのシチュエーションですよね。「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載されている『恋は雨上がりのように』は、17歳の美少女が、さえない45歳のバツイチ子持ちファミレス店長を好きになってしまうという年の差恋愛を描く作品で、僕らのようなアラフォー世代をキュンキュンさせてくれます。  しかし文学の世界には、この『恋は雨上がりのように』をも超越する、ハイレベルな年の差恋愛の世界があります。それが『センセイの鞄』という作品。70歳近いおじいさんと、30代後半独身女性の恋を描く本作。それも、加藤茶クラスの大物芸能人の話などではなく、ごく普通の教師と教え子の関係です。 『センセイの鞄』は、芥川賞作家の川上弘美先生の小説で、ドラマ化もされている有名作品ですが、『孤独のグルメ』の谷口ジロー先生が作画を担当するマンガ版も存在します。純文学などまったく縁のない僕ですが……マンガ版があるのか、そうかそうか、そうなれば話は違う。読んでみると、実にいい味を出しているんですよ。まるで『孤独のグルメ』の主人公、井之頭五郎の老後を見ているような、そんな気分で読むことができます。  主人公は、独身OLのツキコさんこと大町月子37歳。お相手はツキコさんが女子高生だった時の古文の先生、松本春綱。ツキコさんより、30歳以上も年上です。30歳の年の差って、冷静に考えるとすごいことですよね。なにしろ、一方が30歳の時に、相手は新生児だったわけですから。  2人の出会いは、お互いの行きつけの居酒屋で、センセイがたまたま隣り合ったツキコさんに声をかけたことが始まりです。  ツキコさんが、「まぐろ納豆」「蓮根のきんぴら」「塩らっきょう」という、女子にしてはゲキ渋なラインナップのメニューを頼むと、隣のセンセイも同じメニューを頼み……。 「大町ツキコさんですね」 「店に出入りするキミに見覚えがあったので」 「名簿とアルバムを見て確かめました」 「あのころキミはおさげにしていたでしょう」  怒涛のセリフ。ちょっ、めちゃくちゃチェック済みじゃないですか! ぶっちゃけ、教え子狙いのナンパじゃないかっていう。センセイもいい年して、なかなかやりますな。しかし、こういうストーカースレスレな行為も、センセイのようなキチンとした身なりの紳士がやると、それっぽく感じさせないのです。  初めは誰だったか思い出せなかったツキコさん。高校時代の先生だったことは思い出したものの、本名が出てこない、そんな流れでセンセイと呼ぶようになります。  それ以来、たびたび行きつけの店で隣り合って飲み、時には2軒目3軒目とハシゴし、時にはセンセイの家に招かれ……次第に、お互い惹かれ合うようになります。それでいて、プラトニックな関係です。  アンチ巨人のツキコさんと巨人ファンのセンセイがナイター中継の最中にケンカして、1カ月も口をきかなかったり、ツキコさんがセンセイの別れた奥さんに嫉妬したり、逆にセンセイがツキコさんの同級生とのデートに嫉妬したり……。しっとりした大人の恋愛だけを描いた作品なのかと思いきや、甘酸っぱい恋の駆け引きもあります。  この作品は、キラキラした若いカップルとも、ギラギラした中年カップルとも違う、適度に枯れた感じで、2人の独特の距離感をほほえましく見守るような、そんな作品なのかもしれません。しかし、僕のように純文学のわからぬ下世話人間にとっては、正直“このカップル、ちょっとキモ……”って思うところもあるんですよ。そんな自分のやさぐれた感情を代弁してくれるキャラが作中に登場します。その名も「名もない酔っ払い」。  この作品きってのヒール役は、おでん屋でセンセイの隣の席に座っており、酔っ払ってベロベロ状態。こんな感じで絡んできました。 「おたくら、どういうんですか」 「年も離れてるんだろうに、いちゃいちゃしちゃってさ」 「いやらしいんだよ、だいたいいい年してさ」 「このじいさんあんたとヤってるの? 月何回くらいヤってるんだよ」  よくぞ言ってくれた! もうド直球ですよ。この男の登場により、作品を読みながらモヤモヤしてた部分がすべて吐き出されるのです。“よかった、自分だけがそう思っていたんじゃないんだ……”。そういう感情とともに。  後半では、年の差恋愛の宿命というのか、センセイの晩年の境遇をツキコさんが悲しむシーンまで描かれており、そのシーンが、またなんとも切ないのです。そう、これは単なる恋愛ではない、究極の愛。「看取ら恋愛(みとらレンアイ)」なのではないでしょうか?  ちなみに谷口先生の描く作品中の食事シーンは、『孤独のグルメ』譲りの美麗さです。さらしクジラ、もずく酢、切り干し大根、茄子のしぎ焼き、塩ウニ、トビウオのしょうが醤油などなど。ツキコさんとセンセイによる、渋すぎるセレクションはさすが年の功! それだけでも十分楽しめる作品です。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

もしも、国がクイズによって統治されたら……衝撃のディストピアマンガ『国民クイズ』

もしも、国がクイズによって統治されたら……衝撃のディストピアマンガ『国民クイズ』 の画像1
『国民クイズ』(太田出版)
 もしも、あらゆることがクイズによって決まる、クイズ至上主義の世界があったなら、あなたはどうしますか? エンタメ感にあふれ、戦争もない、ほのぼのした世界――。ちょっと住んでみたいと思いませんか?  今回ご紹介するマンガ『国民クイズ』(原作:杉元伶一、作画:加藤伸吉)はまさに、もし日本がクイズで統治される国になってしまったら……という世界を描いた作品。  舞台は、世界一の経済大国であり、軍事大国になった近未来の日本。民主主義を捨て、国民クイズ体制に移行してイケイケになった日本には、もはやアメリカも中国も、国連すらも逆らうことができないのです。  なにしろ、日本国憲法に<「国民クイズ」は国権の最高機関であり、その決定は国権の最高意思、最高法規として行政・立法・司法その他のあらゆるものに絶対、無制限に優先する>などと記載があります。ほのぼのどころか、ガチでクイズが支配する社会なのです。  国民の関心の中心は、日本国政府「国民クイズ省」の提供により、毎日夜7時から11時まで放映されるテレビ番組『国民クイズ』。なにしろ、国民クイズで優勝した国民は、どんなあり得ない望みでもかなえてもらえるという、ジャパニーズドリームな番組なのです。国民が熱狂するのもうなずけますね。 「いなくなった愛犬を探してほしい」「アダルトビデオのモザイクを消してほしい」なんてスケールの小さいものから、「お隣の奥さんを殺してほしい 」「100億円欲しい」「エッフェル塔を自分の物にしたい」などというトンデモないものまで、日本国が責任を持ってかなえてくれます。実際、国民クイズで「佐渡島を日本から独立させたい」という望みがかない、佐渡島は佐渡島共和国となっています。  当然ながら、問題は難問ばかりです。国民クイズでは、全国から地方予選を勝ち抜いてきた500名が、一次予選「ふるい落としクイズ」にかけられます。そこから決勝クイズに行けるのは、なんと100問中100問……つまり、全問正解した者だけ。失格者は人間のクズとして、強制労働に従事させられるのです。あまりにハイリスクハイリターンなルール。出場者は、文字通り人生を賭けてクイズにチャレンジしているのです。  では、果たして、どんな難問が出題されるのでしょうか? ちょっと見てみましょう。 「昨年初潮を迎えた日本全国の少女のために炊かれた赤飯の総量は?」 (1)3トン (2)50トン (3)800トン 「新橋の蕎麦屋『長寿庵』のカツ丼には、グリンピースがいくつのっている?」 (1)4個  (2)6個 (3)オヤジの気分次第 「宇宙人はいるでしょうか?」 (1)いる (2)いない (3)わからない  もうね、「そんなん知るか!」としか言いようがない難問・奇問の数々。赤飯の総量とか、どうやって調べるんだよ!? ラストの100問目に至っては、サイコロの目を当てるという、完全に運だけの問題。単に知識があるだけではどうにもならない、クイズ王も涙目のルールです。  奇跡的に決勝クイズに進出できたとしても、決勝クイズで自分の望みに相当する得点に達さなければ失格。当然ながら、望みのレベルが高ければ高いほど、必要な得点は高くなります。 「愛犬を探してほしい」190点 「お隣の奥さんを殺してほしい」110万6,482点 「エッフェル塔が欲しい」 6,021万1,905点 といった具合で、失格者は足りなかった点数によって、最高裁でA~Dの戦犯判決を受けることになります。  A級戦犯は全財産を没収され、その財産および自分自身の身までもが日本武道館でオークションにかけられるという、まさしく身の破滅。B級戦犯でも「刑務所の掃除夫20年」や「シベリア送り」など、やはり地獄のような処遇が待っています。クイズの結果で戦犯扱いって……クイズが、ものすごく恐ろしいものに感じますね。 『国民クイズ』の主人公は、その国民クイズの司会者を務める、K井K一。圧倒的な演出力とカリスマ性で国民支持率98%という絶対的人気を誇る人物なのですが、彼もまた、売れない役者時代に国民クイズに出て失格となり、B級戦犯者として奉仕労働で司会をやらされている身だったのです。  K井K一は次第に、国民クイズ体制を転覆しようとする反体制派のテロリストや佐渡島共和国の国民クイズ打倒計画に共鳴するようになり、表面上は国民クイズを象徴する大人気司会者を演じながらも、国家転覆を謀るスパイとして活動するようになるのですが、果たして……。  そんなわけで、軽い気持ちで読み始めると、予想以上にスケールが大きくて、とてつもなく緻密な設定にグイグイ引き込まれる作品、『国民クイズ』をご紹介しました。もし本当にこんなクイズ至上主義の世の中になったら、一体どうしたらいいんでしょうね? とりあえず、カツ丼にのってるグリンピースを数えるところから始めたいと思います。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

正体不明の老人がバシバシお悩み解決! 異色のグルメ漫画『デパ地下!』

depachika.jpg
『デパ地下!』(日本文芸社)
「デパ地下で 試食しすぎて 出禁かな」(デパ地下川柳)  みなさんは最近、デパ地下に行ってますか? 特に週末になると、デパートのお総菜コーナーってにぎわいますよね。さらに催事場では「北海道うまいもの展」だの「駅弁祭り」だの「ご当地グルメ選手権」だのといった物産展がしょっちゅう開催されて、とんでもない行列ができますし、景気のよくない話が多いデパート業界にあって、いまだにグルメだけは勢いがあるのですが、そこにはデパート担当者の並々ならぬ苦労があるわけで……。  そんなわけで、今回は読むだけでデパ地下ビジネスの秘密がわかる……かもしれないマンガをご紹介したいと思います。その名も『デパ地下!』 。  まずは、デパ地下について軽くおさらいしておきましょう。昨今のデパ地下ブームを語るための重要キーワードとして、「中食」というものがあります。中食とは、外食と内食(家で料理を作って食べる)の中間で、お店で売っているお総菜などを買って家で食べる形態のことです。不況の煽りで外食が減り、その分、中食へシフトしているという話はよくニュースで聞きますね。  そして、そのお総菜がめっちゃ売られてる中食キングダム状態なのが、ご存じデパ地下です。そもそも、なぜデパートの地下フロアに食品売り場が多く集まるのでしょうか? その理由はいくつかあるようです。 ・水回りやガス、電気などの厨房設備が、上階より低コストで設置できる ・地下鉄駅や地下駐車場からダイレクトに集客できる ・食品売り場に集めた客を上層階へ誘う「噴水効果」が期待できる  なるほど、噴水効果! 勉強になりますね。要するに、メントスコーラみたいなもんでしょうか。とにかく、そんな魅惑のグルメスポット、デパ地下に焦点を当てたグルメマンガが、この『デパ地下!』 というわけなのです。  では、ストーリーをご紹介しましょう。主人公は老舗デパート伊勢崎屋の社員、山本勇太(30)です。勇太は広告宣伝部に所属していましたが、ある日、伊勢崎屋立浜店のデパ地下主任を命じられます。   本社広告宣伝部という花形部署からの都落ちということで、テンション下がりまくりの勇太ですが、デパ地下の主任ですから、現場を取り仕切らなければいけません。部下からも上司からもプレッシャーをかけられ、出店している店舗からのお悩み相談も舞い込んできます。実際、老舗の佃煮店・佃平さんが売れ行き不振で撤退すべきか否か悩んでいました。  そんな勇太の前に、救世主が現れます。以前からデパ地下の試食コーナーに頻繁に出没する謎の老人。なんと、この老人が2回以上試食した商品は必ずデパートで行列のできる大ヒットになるという、なんともすごいグルメ嗅覚を持った老人なのです。  勇太はこの救世主、美川老人を尾行して接触。実は超豪邸に住む、謎のグルメ道楽老人だったのです。豪邸に入れてもらった勇太は、美川老人お手製のチャーハンをごちそうになり、意気投合。その後は、事あるごとに美川老人によるプロのコンサルタント顔負けのアドバイスをもらうことで、デパ地下の問題をガンガン解決していく――そんなマンガです。  ところで、先ほどの佃煮が売れなくて困っているデパ地下のお店、佃平ですが、相も変わらず困っています。試食を行っても、お客さんはイマイチのリアクションです。ここで、美川老人の的を射すぎたアドバイスが炸裂! 「ご飯がなくて、なんの佃煮じゃ!」  というわけで、佃煮をホカホカご飯にのせて試食させるようにしたところ、これがバカ売れ!!  さあ、今すぐ全国の佃煮店さんは、ご飯にのせて試食させるべし!  別のエピソードでは、夏の商戦で張り切る勇太が、うなぎフェアをやって、うなぎの焼ける匂いでデパ地下に集客しようというアイデアを出します。勇太の作戦は見事当たり、上々の客の入りだったのですが、ここで問題が発生します。  デパート1階の化粧品売り場にうなぎの匂いが充満してしまい、1階の責任者から大クレームに。香水とか化粧品の香りが一気にうなぎスメルに……。これではシャネルのNo.5がうなぎのNo.5になってしまいます。売り上げへの影響は甚大でしょう。  せっかく好評だったうなぎフェアを、即刻中止にせざるを得ない勇太。しかし、ここで老人のアドバイスが炸裂するのです! 「中がだめなら、外で焼けばいいんじゃ!」  まさに逆転の発想。うなぎを外で焼くって、それはもうすでにデパ地下じゃないんじゃ……というツッコミはさておき、本当にうなぎを外で焼き始めました。外でうなぎを焼いているデパートなんて、前代未聞ですね。しかし、ここからが老人のアドバイスのすごいところです。  なんと、外で焼いたうなぎを、そのまま外で売らずにデパ地下に移動させます。なるほど、うなぎの香ばしい匂いを嗅がせるだけ嗅がせておいて、デパ地下にお客さんを誘導するという、おあずけ作戦です。これはあざとい、あざとすぎる!!  次のお悩みは肉売り場から。ブランド牛である但馬牛の売れ行きが芳しくなくて困っていると、老人からのアドバイスは「音を利用せよ」というものでした。肉のジュージュー焼ける音が食欲をそそるというわけです。  ラジカセにステーキを焼く音を仕込み、人感センサーで但馬牛の売り場を人が通るたびにジュージュー。このシステムの導入の結果、但馬牛がバカ売れというわけです。  というわけで、デパ地下限定グルメマンガ『デパ地下!』 をご紹介しましたが、とにかく正体不明の美川老人がいろいろすごすぎて、ジジイ無双状態。主人公はそれに乗っかっただけの棚ぼたラッキーボーイにすぎないマンガではあるのですが、読んでいるだけで知らないうちにデパ地下のマーケティング戦略についていろいろ勉強になってしまう、すごいマンガなのです。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

正体不明の老人がバシバシお悩み解決! 異色のグルメ漫画『デパ地下!』

depachika.jpg
『デパ地下!』(日本文芸社)
「デパ地下で 試食しすぎて 出禁かな」(デパ地下川柳)  みなさんは最近、デパ地下に行ってますか? 特に週末になると、デパートのお総菜コーナーってにぎわいますよね。さらに催事場では「北海道うまいもの展」だの「駅弁祭り」だの「ご当地グルメ選手権」だのといった物産展がしょっちゅう開催されて、とんでもない行列ができますし、景気のよくない話が多いデパート業界にあって、いまだにグルメだけは勢いがあるのですが、そこにはデパート担当者の並々ならぬ苦労があるわけで……。  そんなわけで、今回は読むだけでデパ地下ビジネスの秘密がわかる……かもしれないマンガをご紹介したいと思います。その名も『デパ地下!』 。  まずは、デパ地下について軽くおさらいしておきましょう。昨今のデパ地下ブームを語るための重要キーワードとして、「中食」というものがあります。中食とは、外食と内食(家で料理を作って食べる)の中間で、お店で売っているお総菜などを買って家で食べる形態のことです。不況の煽りで外食が減り、その分、中食へシフトしているという話はよくニュースで聞きますね。  そして、そのお総菜がめっちゃ売られてる中食キングダム状態なのが、ご存じデパ地下です。そもそも、なぜデパートの地下フロアに食品売り場が多く集まるのでしょうか? その理由はいくつかあるようです。 ・水回りやガス、電気などの厨房設備が、上階より低コストで設置できる ・地下鉄駅や地下駐車場からダイレクトに集客できる ・食品売り場に集めた客を上層階へ誘う「噴水効果」が期待できる  なるほど、噴水効果! 勉強になりますね。要するに、メントスコーラみたいなもんでしょうか。とにかく、そんな魅惑のグルメスポット、デパ地下に焦点を当てたグルメマンガが、この『デパ地下!』 というわけなのです。  では、ストーリーをご紹介しましょう。主人公は老舗デパート伊勢崎屋の社員、山本勇太(30)です。勇太は広告宣伝部に所属していましたが、ある日、伊勢崎屋立浜店のデパ地下主任を命じられます。   本社広告宣伝部という花形部署からの都落ちということで、テンション下がりまくりの勇太ですが、デパ地下の主任ですから、現場を取り仕切らなければいけません。部下からも上司からもプレッシャーをかけられ、出店している店舗からのお悩み相談も舞い込んできます。実際、老舗の佃煮店・佃平さんが売れ行き不振で撤退すべきか否か悩んでいました。  そんな勇太の前に、救世主が現れます。以前からデパ地下の試食コーナーに頻繁に出没する謎の老人。なんと、この老人が2回以上試食した商品は必ずデパートで行列のできる大ヒットになるという、なんともすごいグルメ嗅覚を持った老人なのです。  勇太はこの救世主、美川老人を尾行して接触。実は超豪邸に住む、謎のグルメ道楽老人だったのです。豪邸に入れてもらった勇太は、美川老人お手製のチャーハンをごちそうになり、意気投合。その後は、事あるごとに美川老人によるプロのコンサルタント顔負けのアドバイスをもらうことで、デパ地下の問題をガンガン解決していく――そんなマンガです。  ところで、先ほどの佃煮が売れなくて困っているデパ地下のお店、佃平ですが、相も変わらず困っています。試食を行っても、お客さんはイマイチのリアクションです。ここで、美川老人の的を射すぎたアドバイスが炸裂! 「ご飯がなくて、なんの佃煮じゃ!」  というわけで、佃煮をホカホカご飯にのせて試食させるようにしたところ、これがバカ売れ!!  さあ、今すぐ全国の佃煮店さんは、ご飯にのせて試食させるべし!  別のエピソードでは、夏の商戦で張り切る勇太が、うなぎフェアをやって、うなぎの焼ける匂いでデパ地下に集客しようというアイデアを出します。勇太の作戦は見事当たり、上々の客の入りだったのですが、ここで問題が発生します。  デパート1階の化粧品売り場にうなぎの匂いが充満してしまい、1階の責任者から大クレームに。香水とか化粧品の香りが一気にうなぎスメルに……。これではシャネルのNo.5がうなぎのNo.5になってしまいます。売り上げへの影響は甚大でしょう。  せっかく好評だったうなぎフェアを、即刻中止にせざるを得ない勇太。しかし、ここで老人のアドバイスが炸裂するのです! 「中がだめなら、外で焼けばいいんじゃ!」  まさに逆転の発想。うなぎを外で焼くって、それはもうすでにデパ地下じゃないんじゃ……というツッコミはさておき、本当にうなぎを外で焼き始めました。外でうなぎを焼いているデパートなんて、前代未聞ですね。しかし、ここからが老人のアドバイスのすごいところです。  なんと、外で焼いたうなぎを、そのまま外で売らずにデパ地下に移動させます。なるほど、うなぎの香ばしい匂いを嗅がせるだけ嗅がせておいて、デパ地下にお客さんを誘導するという、おあずけ作戦です。これはあざとい、あざとすぎる!!  次のお悩みは肉売り場から。ブランド牛である但馬牛の売れ行きが芳しくなくて困っていると、老人からのアドバイスは「音を利用せよ」というものでした。肉のジュージュー焼ける音が食欲をそそるというわけです。  ラジカセにステーキを焼く音を仕込み、人感センサーで但馬牛の売り場を人が通るたびにジュージュー。このシステムの導入の結果、但馬牛がバカ売れというわけです。  というわけで、デパ地下限定グルメマンガ『デパ地下!』 をご紹介しましたが、とにかく正体不明の美川老人がいろいろすごすぎて、ジジイ無双状態。主人公はそれに乗っかっただけの棚ぼたラッキーボーイにすぎないマンガではあるのですが、読んでいるだけで知らないうちにデパ地下のマーケティング戦略についていろいろ勉強になってしまう、すごいマンガなのです。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから