"80後"世代の代弁者 中国売れっ子写真家の「未来系アート」

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「Red Peach Blossom.2」(c)Chen Man
 『AKIRA』『ドラゴンボール』『ドラえもん』......子どものころ、僕らの心をアツくさせた漫画やアニメが、海の向こうに住むアジアの子どもたちの心にも火をつけていた。今や日本人だけのものではなくなった、ジャパニーズ・ポップカルチャー。その影響を受けて育った、アジアの才能豊かなクリエーターたちを紹介します。 第24回 フォトグラファー チェン・マン(陳漫/Chen Man)  中国で、今最もホットな写真家は?  と聞けば、100人中100人がチェン・マン(陳漫)の名前を挙げるだろう。Weibo (ユーザー数3億人超の中国のTwitter+Facebook的SNS)のフォロワー、なんと50万人。コン・リーやフェイ・ウォン、あのベッカムまでもが彼女にポートレートを撮ってほしいと熱望する、スーパーアイドル・カリスマ・フォトグラファーだ。  
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『DRAGON BALL 1』
(集英社)
「子どものころは、いわゆる中国人にとっての昔話の定番『西遊記』よりは、アニメの『天書奇談』や『哪吒鬧海(ナーザの大暴れ:中国の神話小説『封神演義』の一挿話を題材とした中国を代表する長篇アニメーション)』、それに『ドラゴンボール』に夢中になっていましたし、ミッキーマウスやドナルドダックは常に身近な友だちでした。そしてマイケル・ジャクソンの音楽を聞きながら、家族とはテレビの『春節聯歓晩会(年越しに放映される中国版大紅白歌合戦)』を見るという、さまざまなカルチャーがミックスした環境で育ったんです」  彼女は「80後(バーリンホウ)」と呼ばれる世代の代弁者でもある。中国の一人っ子政策の下で1980年代以降に生まれ、蝶よ花よと育てられ、高等教育を受けた、今や中国の産業構造を変えるほどの影響力を持つとされる「80後」は、中国がこの数十年で駆け抜けた超高速近代化の申し子だ。
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「Five Element-Water [Beauty]」(c)Chen Man
「私たちは、空想が実際の物に取って代わられることを目撃した、極めて現実的な世代と言われています。"富める条件のあるものから裕福になれ"という、80年代以降の改革開放政策後の中国の、怒涛のような発展と変化の波を浴びながら育った世代でもあります。インターネットに囲まれ、世界中のさまざまな情報が混沌と渦巻くグローバルな状態で、自分たちのアイデンティティを作り上げてきました」  彼女の作品には、そうした時間や東西の距離を越えた、混沌としたパワーが充満する中国の状態が、過剰なまでに見事に現れている。
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「Vision Golden Fish Goblin」(c)Chen Man
「現代の西洋的な技術革新と中国的な伝統的価値観の共存、というテーマは、私がアート作品を創る原動力でもあり、一貫したコンセプトでもあります」  もともとは絵を描くのが好きだったというチェン・マン。学生時代に写真とフォトショップという「絵画の拡張機能」に出会い、自分のイマジネーションを100%表現できる手法を「発見」したという。一見、どこまでが写真でどこまでがポスト・プロダクションか分からない彼女の作品には、さまざまな「絵解き」が隠されている。一つの要素が物語を語り出すと、カラフルな全体像が別の色を帯びて見え始め、まるで一遍の絵物語を鑑賞しているようだ。  また、チェン・マンは、中国古代からの哲学概念である「天人合一」を常に意識している。これは、自然界を大宇宙とするなら、人(人体)は小宇宙であり、構造は同じものだという考え方で、自然界と人間はお互いに影響し合うものだという。この思想は、現代の中国社会にも脈々と生き続けているが、しかし、急速な経済発展によって、中国の生態環境は憂うべき状態に陥っている。それを改善するためには、人々の意識の改革が求められている、とチェン・マンは言う。
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「Four Seasons-Spring [Beauty]」(c)Chen Man
「難しいことではないんです。私は、内面的な平安や清らかさが、自分を取り巻く外部の環境に影響すると考えています。だから、まずは自分たちを愛し、意識することが大事だと思うんです」  プライベートでは2児の母で、子どもの話になると途端にメロメロになってしまうチェン・マン。彼女がこうした思想を持つに至ったのは、アーティストである以上に、自分が母という存在になったことも大きいのかもしれない。  昨年11月に、上海のMOCA(上海現代美術館)で、チェン・マンの一大回顧展が開催された。オープニング・レセプションでは、31歳にしてチャイナ・ドリームを掴んだ彼女と一緒に写真の収まろうと、中国のセレブやトップモデルが列をなす光景に驚かされた。  そんなスーパースター、チェン・マンの日本での初個展(http://www.diesel.co.jp/art/exhibition.html)が東京で開かれている。
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「Super Woman」(c)Chen Man
「本当にわくわくしています。日本にはまだ行ったことがないのですが、私にとっての日本は『ドラえもん』であり『ドラゴンボール』です。小さいときに日本の漫画に夢中になりましたが、日本の作品は真面目で、すべてをきちんと仕上げる姿勢に影響を受けました」  彼女はまた、環境に対する日本の合理的な思想やアプローチを評価しており、もっと世界に広めるべきだと言う。なぜならそれは、「愛と美のスタイルが見事に調和したものだと思うからです」。  世界中から仕事のオファーが引きも切らないチェン・マン。現在、個人的なアート・プロジェクトも目白押しだという。 「中国と西洋の素晴らしさ共存させ、自分独自の視覚言語としての表現をさらに拡げた新作を考えているところです」  自分の作品から「愛」を感じとってもらえるとうれしい、というチェン・マンの、「未来系アート」を堪能できる機会は、今後も増えていくに違いない。 (取材・文=中西多香[ASHU]) portrait-of-chen-man.jpg ●チェン・マン フォトグラファー。1980年、中国・モンゴル自治区に生まれ、北京で育つ。中国中央美術学院でグラフィック・デザインと写真を専攻する。在学中に開始した中国のファッション誌「VISION」の表紙の連作が中国雑誌史上最もユニークなカバーイメージと評価され、セレブリティから撮影オファーが殺到。「80後(バーリンホウ)」=「一人っ子政策」世代を代表するチェン・マンは、チャイナ・ドリームを象徴する存在でもある。「VOGUE」「ELLE」「Esquire」(いずれも中国版)を始め、世界中のファッション誌でも活躍。作品は、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(ロンドン)や今日美術館(北京)などに収蔵されている。<http://www.chenmaner.com> ●なかにし・たか アジアのデザイナー、アーティストの日本におけるマネジメント、プロデュースを行なう「ASHU」代表。日本のクリエーターをアジア各国に紹介するプロジェクトにも従事している。著書に『香港特別藝術区』(技術評論社)がある。<http://www.ashu-nk.com > オンラインTシャツオンデマンド「Tee Party」<http://teeparty.jp/ashu/>
DRAGON BALL 1 つっかも~ぜ~♪ amazon_associate_logo.jpg
■バックナンバー 【vol.23】「ヤクルトとカップヌードルに洗礼?」MOJOKOのユーモラスな世界 【vol.22】「狂気とポップカルチャーが融合!? 香港のアーティストが追求する"不完全な美" 【vol.21】「人間の欲望を視覚化?」香港人気キャラの生みの親が追求する"醜さの美学" 【vol.20】「故郷・ボルネオ島での原体験が創造力の源」世界で活躍するマレーシアの"ケンヂ" 【vol.19】「人生に起きるすべてのことを細かく観察したい」中国ネット世代のアーティスト 【vol.18】「ヒーローは宮崎駿と奈良美智」シンガポールのマルチスタイル・アーティスト 【vol.17】「ルーツは『天空の城 ラピュタ』」ウォン・カーウァイに見い出された香港の若き才能 【vol.16】怖かわいい魑魅魍魎が暴れ回る! ヤン・ウェイの妖魔的異界 【vol.15】「原点は日本のコミック」東南アジアを席巻する都会派クリエーター 【vol.14】エロ×宗教×故事が混在!? 中国版・寺山修司が造り出すカオスな世界 【vol.13】昼間はOL、夜は寡黙なアーティスト ソン・ニが描く秘密の快楽の世界 【vol.12】まるで初期アニメ ローテクを駆使する南国のアート・ユニット「トロマラマ」 【vol.11】「造形師・竹谷隆之に憧れて......」 1000の触手を持つ、マレーシアのモンスター 【vol.10】"中国のガロ系"!? 80年代以降を代表するコミック・リーダー ヤン・コン 【vol.9】大のラーメンおたく!? シンガポールデザイン界を率いる兄貴、クリス・リー 【vol.8】メイド・イン・ジャパンに憧れて...... 香港の文学系コミック作家・智海 【vol.7】「血眼になってマンガを追いかけた」海賊版文化が育んだ中国の新しい才能 【vol.6】裸人間がわらわら 香港ピクセル・アートティストが放つ"アナログデジタル"な世界 【vol.5】ダメでも笑い飛ばせ! 香港の国民性を体現したグラフィック・ノベリスト 【vol.4】「教科書はガンダムの落書きだらけだった」 香港・原色の魔術師の意外な原点 【vol.3】「懐かしいのに、新しい」 読むほどにクセになる"タイ初の日本漫画家"タムくん 【vol.2】 マイブームはBL!? 香港の腐女子が描きとめる、消えゆく都市の記憶 【vol.1】「 :phunk版ガッチャマンが作りたい」 シンガポール発のデザイン集団が描く夢

漫画で"食える食えない"の壁を乗り越える支援を! トキワ荘プロジェクトの試み

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『マンガで食えない人の壁』
(NPO法人NEWVERY内トキワ荘プロジェクト)
 デビューしたからといって、一生、漫画家で食えていけるほど世の中は甘くない! ならば、どうすれば「安定」を手に入れることができるのか?  漫画家志望者の若者に安価で住居を提供する事業を中心に、漫画家を支援する事業を行っているNPO法人NEWVERYが運営する「トキワ荘プロジェクト」。これまでに事業の一環として、日本初となるプロ漫画家と志望者の実態調査を行った『漫画家白書』や、漫画家志望者が連載獲得まで生き残るにはどうすればよいのかというキャリアプランを明らかにする『マンガでメシを食っていく!』という調査報告を刊行してきた。  今回、新たに発刊される『マンガで食えない人の壁』は13名のそれぞれタイプの違うプロ漫画家に、それぞれがどうやってプロになったのかという点に絞り込んで聞き取り調査を行ったものだ。 「これまで200人以上の漫画家志望者と接している中で見えてきたのは、漫画雑誌志望者が出版社とやり取りを開始した前後辺りから、本当のプロなるにはどうすればよいかという壁に突き当たっている人が多いということです。今回はプロ漫画家に"私はこうして漫画家になった"という過程を語ってもらい、プロ漫画家志望者に、自分が何をすべきか気づいてもらおうと考えて制作しました」(トキワ荘プロジェクトのディレクター・菊池健氏) 通常、商業漫画雑誌で、一人の編集者は20~30人の新人を担当するとされる。その中でも、編集者が直近で連載を持たせる実力を秘めている「強化選手」として見ているのは、2~3人程度だという。  つまり、デビューしてからも激しいサバイバルが待ち構えているということ。今回、自らの来歴を披露している13人の漫画家のラインナップを見ると田中圭一・おおひなたごう・野間美由紀・すがやみつると、名だたる面々。これまで、全体的なデータを調査し、漫画家のキャリア全体を示した。最後に最も難しい部分に注力して多彩なケースを調べたものという位置付けだ。 「『マンガでメシを食っていく!』は、むしろプロとして活躍している漫画家から"若いときにこんな本があればよかった!"という感想をいくつももらいました。でも実は、若いときに読んでもピンとはこない。そこは人によって状況が違いますから、その人の置かれている状況に刺さる言葉が必要です。そこで今回は、質問を『壁』となるポイントに絞り込み、さまざまな方にお話をうかがいしました。」(菊池氏)  漫画といえば、雑誌に掲載し、受賞・デビュー・連載と進む道がスタンダードとされてきた。雑誌や単行本の売り上げが華やかな時代の漫画家志望者は、ただひたすらに面白い漫画を描いていればよかった。しかし現在は、そのような破天荒な生き様を許容してくれない時代ともいえる。漫画家としてデビューする形も、携帯・電子コミックや、ブログやイラストサイト、掲示板などきっかけにデビューするなど多彩な形がある。  この時代にあえて雑誌掲載を選んだことにも理由がある。 「確かにさまざまな形でのデビューが可能になりましたが、プロになっていく、修行を行っていくにあたっては、雑誌連載を目指すことはまだまだスタンダード。ある程度実力がつくまで修行をし、それからそのまま雑誌を目指すか、ほかの方法を選ぶか考えるアプローチもひとつではないか」(菊池氏)  13人の漫画家を並べて「この通りにすればいいよ」とマニュアル的に語るのではなく、志望者がプロ漫画家としてどうすればよいかと、ひらめくチャンスを提供したい。1人の成功パターンだけでは足りず、13人のさまざまなケースを見て、一つか二つでもそこから何かをつかみ取ってほしいと、菊池氏は見ているのだ。 ■デビューした一歩先を教えるシステムを構築  トキワ荘プロジェクトだけでなく、漫画家の養成を目的とした事業は大学・専門学校など、さまざまな形で幾つも行われている。菊池氏は、その先には「プロスクール」すなわち、デビューした漫画家向けに、漫画家として生き残ることを支援するシステムが必要になっていると見ている。世界的規模で見れば、日本の漫画をはじめとしたコンテンツは注目されている。しかし、国内出版産業においては右肩下がりが続いている。それでも、毎年、デビューする漫画家の数は、ほとんど変わっていない。デビュー数が変わらないのに、全体の売り上げは減っているわけだから、漫画家として生活をしていくことは難しくなっていく。商業誌に読み切りが掲載されたまま、次回作が掲載されることもなく消えてしまう可能性は、増しているといえる。  そうした中で1月末に、トキワ荘プロジェクトでは税理士による漫画家向けの確定申告講座「プロ漫画家向け確定申告講習会 ~原稿に集中するための税務・節税対策~」を開催した。 「参加者からは好評でした。"これまで自分で確定申告をしていてもその方法が適切なのかどうかわからない""税理士に頼んでいるが、税金のことは難しくてわからない"といった声に応えることができたと思っています。今後、東京だけでなく関西でも同様の講座を行う予定です」(菊池氏)  芸術家を気取るのではなく、漫画家をフリーランスの職業の一つとして認識すること。ここにも、生き残っていくための一つのカギがあるといえる。また、確定申告の講習が好評を得たということは、漫画家も自身を専門的な職業人たらんとしていると分析することができる。今後は、アンケートや現役プロ漫画家からの声も多い、パソコンを使用した漫画の描き方など、数タイプのプロ向け講座開始を検討している。  漫画家が成功するための道筋をどこまでシステマティックにできるかは、さまざまな議論があるところだ。それでも、トキワ荘プロジェクトのような試みに触れることで「気づき」を得る機会が増えるのは、歓迎すべきことである。 (取材・文=昼間たかし) ●第1回漫画家フォーラム~マンガ教育の過去・現在・未来~ 【日時】 2012 年2月22日(水) 19:00-21:00(開場18:30) 【場所】 新宿コズミックセンター 大会議室 東京都新宿区大久保3-1-2 【定員】 50 名(要・参加申込/先着順) 【参加費】 2,000円 (税込) 【対象】マンガ業界の将来に関心のあるすべての方 【主催】トキワ荘プロジェクト 【登壇者】 - 漫画家 - すがやみつる 代表作『ゲームセンターあらし』『仮面ライダー』(原作:石ノ森章太郎)など。早稲田大学人間科学部eスクール教育コーチ、京都精華大学マンガ学部非常勤講師(2012年4月より) 樹崎聖(きさき・たかし) 代表作:『交通事故鑑定人環倫一郎』『ZOMBIEMEN』『10年メシが食える漫画家入門』『10年大盛りメシが食える漫画家入門』など。現在は電子書籍にて編集長を務める。 鍋島雅治(なべしま・まさはる) 漫画原作者:代表作『検事・鬼島平八郎』『築地魚河岸三代目』『火災調査官・紅蓮次郎』など。 - 司会 - 菊池 健 (きくち・たけし) トキワ荘プロジェクトディレクター、デジタルハリウッド大学院研究員
マンガで食えない人の壁 越えられる? amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・マンガ学部よりも就職はラク? 全国初のポピュラーカルチャー学部は成功するのか?やっぱり!「コミュ力ない人間は不要」アニメ業界の求める人材はコレだ!なんと! PTAも真っ青 "騎乗位"も"近親相姦"も描く地上波エロアニメ過激化の真相

漫画で"食える食えない"の壁を乗り越える支援を! トキワ荘プロジェクトの試み

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『マンガで食えない人の壁』
(NPO法人NEWVERY内トキワ荘プロジェクト)
 デビューしたからといって、一生、漫画家で食えていけるほど世の中は甘くない! ならば、どうすれば「安定」を手に入れることができるのか?  漫画家志望者の若者に安価で住居を提供する事業を中心に、漫画家を支援する事業を行っているNPO法人NEWVERYが運営する「トキワ荘プロジェクト」。これまでに事業の一環として、日本初となるプロ漫画家と志望者の実態調査を行った『漫画家白書』や、漫画家志望者が連載獲得まで生き残るにはどうすればよいのかというキャリアプランを明らかにする『マンガでメシを食っていく!』という調査報告を刊行してきた。  今回、新たに発刊される『マンガで食えない人の壁』は13名のそれぞれタイプの違うプロ漫画家に、それぞれがどうやってプロになったのかという点に絞り込んで聞き取り調査を行ったものだ。 「これまで200人以上の漫画家志望者と接している中で見えてきたのは、漫画雑誌志望者が出版社とやり取りを開始した前後辺りから、本当のプロなるにはどうすればよいかという壁に突き当たっている人が多いということです。今回はプロ漫画家に"私はこうして漫画家になった"という過程を語ってもらい、プロ漫画家志望者に、自分が何をすべきか気づいてもらおうと考えて制作しました」(トキワ荘プロジェクトのディレクター・菊池健氏) 通常、商業漫画雑誌で、一人の編集者は20~30人の新人を担当するとされる。その中でも、編集者が直近で連載を持たせる実力を秘めている「強化選手」として見ているのは、2~3人程度だという。  つまり、デビューしてからも激しいサバイバルが待ち構えているということ。今回、自らの来歴を披露している13人の漫画家のラインナップを見ると田中圭一・おおひなたごう・野間美由紀・すがやみつると、名だたる面々。これまで、全体的なデータを調査し、漫画家のキャリア全体を示した。最後に最も難しい部分に注力して多彩なケースを調べたものという位置付けだ。 「『マンガでメシを食っていく!』は、むしろプロとして活躍している漫画家から"若いときにこんな本があればよかった!"という感想をいくつももらいました。でも実は、若いときに読んでもピンとはこない。そこは人によって状況が違いますから、その人の置かれている状況に刺さる言葉が必要です。そこで今回は、質問を『壁』となるポイントに絞り込み、さまざまな方にお話をうかがいしました。」(菊池氏)  漫画といえば、雑誌に掲載し、受賞・デビュー・連載と進む道がスタンダードとされてきた。雑誌や単行本の売り上げが華やかな時代の漫画家志望者は、ただひたすらに面白い漫画を描いていればよかった。しかし現在は、そのような破天荒な生き様を許容してくれない時代ともいえる。漫画家としてデビューする形も、携帯・電子コミックや、ブログやイラストサイト、掲示板などきっかけにデビューするなど多彩な形がある。  この時代にあえて雑誌掲載を選んだことにも理由がある。 「確かにさまざまな形でのデビューが可能になりましたが、プロになっていく、修行を行っていくにあたっては、雑誌連載を目指すことはまだまだスタンダード。ある程度実力がつくまで修行をし、それからそのまま雑誌を目指すか、ほかの方法を選ぶか考えるアプローチもひとつではないか」(菊池氏)  13人の漫画家を並べて「この通りにすればいいよ」とマニュアル的に語るのではなく、志望者がプロ漫画家としてどうすればよいかと、ひらめくチャンスを提供したい。1人の成功パターンだけでは足りず、13人のさまざまなケースを見て、一つか二つでもそこから何かをつかみ取ってほしいと、菊池氏は見ているのだ。 ■デビューした一歩先を教えるシステムを構築  トキワ荘プロジェクトだけでなく、漫画家の養成を目的とした事業は大学・専門学校など、さまざまな形で幾つも行われている。菊池氏は、その先には「プロスクール」すなわち、デビューした漫画家向けに、漫画家として生き残ることを支援するシステムが必要になっていると見ている。世界的規模で見れば、日本の漫画をはじめとしたコンテンツは注目されている。しかし、国内出版産業においては右肩下がりが続いている。それでも、毎年、デビューする漫画家の数は、ほとんど変わっていない。デビュー数が変わらないのに、全体の売り上げは減っているわけだから、漫画家として生活をしていくことは難しくなっていく。商業誌に読み切りが掲載されたまま、次回作が掲載されることもなく消えてしまう可能性は、増しているといえる。  そうした中で1月末に、トキワ荘プロジェクトでは税理士による漫画家向けの確定申告講座「プロ漫画家向け確定申告講習会 ~原稿に集中するための税務・節税対策~」を開催した。 「参加者からは好評でした。"これまで自分で確定申告をしていてもその方法が適切なのかどうかわからない""税理士に頼んでいるが、税金のことは難しくてわからない"といった声に応えることができたと思っています。今後、東京だけでなく関西でも同様の講座を行う予定です」(菊池氏)  芸術家を気取るのではなく、漫画家をフリーランスの職業の一つとして認識すること。ここにも、生き残っていくための一つのカギがあるといえる。また、確定申告の講習が好評を得たということは、漫画家も自身を専門的な職業人たらんとしていると分析することができる。今後は、アンケートや現役プロ漫画家からの声も多い、パソコンを使用した漫画の描き方など、数タイプのプロ向け講座開始を検討している。  漫画家が成功するための道筋をどこまでシステマティックにできるかは、さまざまな議論があるところだ。それでも、トキワ荘プロジェクトのような試みに触れることで「気づき」を得る機会が増えるのは、歓迎すべきことである。 (取材・文=昼間たかし) ●第1回漫画家フォーラム~マンガ教育の過去・現在・未来~ 【日時】 2012 年2月22日(水) 19:00-21:00(開場18:30) 【場所】 新宿コズミックセンター 大会議室 東京都新宿区大久保3-1-2 【定員】 50 名(要・参加申込/先着順) 【参加費】 2,000円 (税込) 【対象】マンガ業界の将来に関心のあるすべての方 【主催】トキワ荘プロジェクト 【登壇者】 - 漫画家 - すがやみつる 代表作『ゲームセンターあらし』『仮面ライダー』(原作:石ノ森章太郎)など。早稲田大学人間科学部eスクール教育コーチ、京都精華大学マンガ学部非常勤講師(2012年4月より) 樹崎聖(きさき・たかし) 代表作:『交通事故鑑定人環倫一郎』『ZOMBIEMEN』『10年メシが食える漫画家入門』『10年大盛りメシが食える漫画家入門』など。現在は電子書籍にて編集長を務める。 鍋島雅治(なべしま・まさはる) 漫画原作者:代表作『検事・鬼島平八郎』『築地魚河岸三代目』『火災調査官・紅蓮次郎』など。 - 司会 - 菊池 健 (きくち・たけし) トキワ荘プロジェクトディレクター、デジタルハリウッド大学院研究員
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「漫画・アニメのせいで子どもが犯される」「文章も禁止」過激発言満載の児ポ法規制推進派院内集会

 2月14日、衆議院第一議員会館で院内集会「国際エクパット事務局長来日 今こそグローバルスタンダードへ! 児童買春・児童ポルノ禁止法(以下、児ポ法)の改正に向けて」がECPAT/ストップ子ども買春の会(以下、エクパット)の主催で開催された。エクパットの院内集会は、昨年の6月以来のことだ。  この日の集会は、撮影・録音・Twitter禁止、パソコンの使用も禁止というものものしい雰囲気で始まった。冒頭あいさつに立った、エクパット代表の宮本潤子氏は「ぜひとも今国会で改正を行い、子どもたちを残虐な虐待・性暴力から守る法律にしてもらうことを願っている。今一度、全部の政党が子どものために立ち上がってくれればと心から願います。この20年間、ひとつ進歩したことはNGOだけでなく、行政とNGO、ザ・ボディショップのような民間セクター、この問題を改善しようと思っている日本旅行業協会、インターネット協会、そしてスウェーデン大使館、日本ユニセフ協会、ヤフー株式会社のような様々な組織が私たちと共に立ち上がってくれていることです」と力強くあいさつした。続いて登壇した、スウェーデン大使館参事官のカイ・レイニウス氏は、児童ポルノの取締りには国際協調が欠かせないとして、次のように語る。 「世界中のインターネットで配信される児童ポルノだけでも、毎年10億ドルを売り上げていると思われる。犯罪組織は、積極的に子どもを犠牲にしている。捜査機関が働きやすい環境をつくるためには、国際協調が欠かせない。(児童ポルノについて)世界ではさまざまな解釈がなされているが、スウェーデン当局は単純所持禁止によって犯罪活動に対して以前よりも積極的に対応できるようになった。複雑な論点があるので、日本に単純所持に反対する意見があるのは不思議には思わない。スウェーデンでも国民による熱い議論の末に実施できるようになった。その中で出版の自由、表現の自由も論点になった。しかし、表現の自由以上に、子どもの人権擁護が重要だとして国民の合意が得られた。日本もスウェーデンと同じ議論のプロセスを歩んでいると思う」。 ■漫画・アニメは性的虐待を「誘発している」どころか「利用されている」  さて、この集会のメインスピーカーともいえる、国際エクパット事務局長のキャサリン・スピーク氏は「子どもポルノ根絶に向けた国際ECPATの取り組み」と題して講演を行った。スピーク氏は、子どもの商業的性的搾取の定義を改めて解説した上で、正確な把握は不可能としながらも「ILO(国際労働機関)の報告によれば、2002年には世界中でおよそ180万人の子どもが買春またはポルノによる性的搾取の被害にあっているとされている」「子どもや青少年の性的搾取に対する社会的な許容も増加している」「商業目的の子どもポルノは年間数十億ドルの産業規模である」「インターネット上に100万枚以上の子どもポルノ画像が存在する」「児童虐待の既存の手法はインターネットの普及によって、より手軽で危険の少ないものになってしまっている」「ウェブサイトに提示されている画像の児童虐待の深刻さが増しており、被害に遭う子どもの年齢もより幼くなっている」と報告。その上で、日本政府に対しては「子どもを守るために、国際的な基準と最善の取り組みを参考にしながら、法案の作成を行うよう求める。 「表現の自由はあらゆる国において絶対的ではなく、制限の下にあるものである。社会全体が表現の自由に対する制限を認識するのは、特にそれが他の価値や権利と矛盾する場合である。子どもたちが性的搾取から自由な状態の中に生きる権利は、表現の自由に優先されるべき権利の一つである」  これに続く発言はさらに踏み込んだものだった。国際エクパットが、成人向け漫画やアニメに対するスタンスを明らかにしたからである。 「たとえ成人向け内容の物において描写される子どもが実在しないとしても、こうしたヴァーチャルの子ども虐待画像は実際に子どもたちが性的に虐待あるいは搾取を受ける危険を高めている」(スピーク氏)  すなわち、成人向け漫画などを通じて、実在の子どもたちが被害を受ける可能性があると指摘するのだ。スピーク氏は具体的な危険例として「子どもの性的搾取についての社会的許容を推奨している」「子どもとの性的行為を正常であるかのように思わせている」「画像が急速かつ広範囲に流布されるのに寄与している」「子どもの性的虐待描写物への需要を増大させている」そして最後に、「ヴァーチャルな子ども虐待画像は子どもを手なづけたり、誘惑する際に用いられている」とした。 ■漫画・アニメだけではダメ! 「文章も音声も規制対象に」  続いて登壇した国際エクパットの法律担当スタッフ、フランソワ・エックセヴィエ・スーチェ氏も「子どもポルノ/子ども虐待画像と闘うための鍵となる法的な問題と課題への理解に向けて」と題した報告の中で「ヴァーチャルな子どもポルノ」について言及した。スーチェ氏は「児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書」「サイバー犯罪に関する条約」「欧州評議会子どもの性的搾取及び性的虐待からの保護条約」を論拠に、ヴァーチャルな画像や表現も犯罪にあたると主張する。そして、「ヴァーチャルな子どもポルノ」の問題点として、 「そのような視覚的画像は、虐待者の子どもへの不適切な感情や行為を増大し、また子どもの性的虐待や性的搾取に対する社会的許容を生み出す。さらに、これらの描写物が性目的のために子どもたちを誘い出す行為に用いられる」  と、先のスピーク氏の発言を補強する形で述べた。その上で、フィリピン・カナダ・アイルランド・ニュージーランドなどで既に「ヴァーチャルな子どもポルノ」が犯罪となっていると解説。 「子どもの性的行為への関与を助長する、あるいは描写する音声や文章は、犯罪とされるべきである。同時に、関連する国際的な法的基準によれば、子どもを表現した漫画、アニメ、コンピューターゲーム、デッサンなどは禁止されるべきである」(スーチェ氏)  最後に登壇した日本ユニセフ協会広報室長の中井裕真氏は、インターネットのブロッキングが非常に進んできたことに言及し、 「児童ポルノに対する取り組みは、止まっているのではなく進んでいる。ただ、法改正の部分だけは取り残されている」  と、重ねて単純所持禁止の導入を訴えた。 ■単純所持を禁止するために「ウラの人間関係を調整中」  これまでになく、漫画・アニメなど「ヴァーチャルな子どもポルノ」に対する規制にまで踏み込んだこの集会。その最大の目的は、国会議員に向けたアピールだ。日頃の活動の成果なのか、多くの国会議員の発言もあった。  公明党副代表の松あきら参議院議員は 「いったい何年、児童ポルノ法の会議をしなければならないのか。私たち公明党と自民党で単純所持禁止の改正案はもう出している。けれども、残念ながら、その法案が通らない。与野党関係なく、一刻も早く単純所持の禁止を盛り込んだ改定を行いたい」  と力強く述べる。同じく公明党の富田茂之衆議院議員は2年半前の児童ポルノ法改定をめぐる協議における合意点を振り返り、政権交代があってから民主党が、改定の協議に応じなくなったと批判する。 「2年半前の話し合いでは『みだりに児童ポルノを所持してはならない』『ことさらに児童の性的な部位が強調されていること。性的な部位はでん部なども含む』ことは合意していた。また、所持の禁止に関しても"自己の意志によって所持・保管するに至ったもの"であり、かつ当該者であることが明らかに認められるものに限るという文言を挿入することも合意していた。既に所持しているものの取り扱い以外は合意に達していた。協議ができれば、いつでも単純所持の罰則付き禁止は行える」  と、民主党への働きかけを呼びかけた。政権与党でもある民主党を力強く批判する自民・公明党の国会議員。中でも過激だったのが、衆議院の青少年問題に関する特別委員会の理事でもある、自由民主党のあべ俊子衆議院議員だ。質疑応答の際の「民主党に働きかければ、法改正はすぐに行われるのか」という質問に対して、あべ議員は次のように答えた。 「民主党の中に、何人かの表現の自由などを主張される方がいる。これは、その方々をみんなで嗅ぎつけて、なんとかなるものなのかも含めて、いま裏の人間関係を含めて調整しているところです。(表現の自由を主張する議員は)理論的なところではなく、個人的な価値観で指摘している」  いったい「裏の人間関係」とは、どういうものだろうか?  質疑応答では、「バーチャルな児童ポルノと子どもの相関関係を示している文献があれば、教えてほしい」という質問も。対する答えは「残念ながら、明確なものは存在しない」というものであった。 ■規制に慎重な人々を閉め出した目的はどこにあるのか  今回の集会が昨年6月の集会と大きく異なったのは、まず第一に漫画やアニメなど「ヴァーチャルな子どもポルノ」にも、大きく踏み込む形で発言が行われたことだ。そして、もう一つ、集会参加が事前申込み制となっていたこと。その上で、児ポ法改定に慎重な立場を取る市民団体関係者の申込みに対しては「エクパットの趣旨に賛同している方向けの集会」であるという理由で、参加を拒否していることもわかっている。そこまで、集会を秘密にする必然性が、どこにあったのか甚だ疑問である。また、この日、幾人かの登壇者が発言したが、6月には児童ポルノ禁止の熱心な活動家であるスウェーデンのシルヴィア王妃が来日する予定だ。07年に彼女が来日した際にもスウェーデン大使館では児童ポルノの規制強化を求めるシンポジウムを開催している。6月には、ひとつの大きな山があるかもしれない。 (取材・文=昼間たかし)  
LO (エルオー) 2011年 05月号 こんなに好きなのにダメなの? amazon_associate_logo.jpg
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 2月14日、衆議院第一議員会館で院内集会「国際エクパット事務局長来日 今こそグローバルスタンダードへ! 児童買春・児童ポルノ禁止法(以下、児ポ法)の改正に向けて」がECPAT/ストップ子ども買春の会(以下、エクパット)の主催で開催された。エクパットの院内集会は、昨年の6月以来のことだ。  この日の集会は、撮影・録音・Twitter禁止、パソコンの使用も禁止というものものしい雰囲気で始まった。冒頭あいさつに立った、エクパット代表の宮本潤子氏は「ぜひとも今国会で改正を行い、子どもたちを残虐な虐待・性暴力から守る法律にしてもらうことを願っている。今一度、全部の政党が子どものために立ち上がってくれればと心から願います。この20年間、ひとつ進歩したことはNGOだけでなく、行政とNGO、ザ・ボディショップのような民間セクター、この問題を改善しようと思っている日本旅行業協会、インターネット協会、そしてスウェーデン大使館、日本ユニセフ協会、ヤフー株式会社のような様々な組織が私たちと共に立ち上がってくれていることです」と力強くあいさつした。続いて登壇した、スウェーデン大使館参事官のカイ・レイニウス氏は、児童ポルノの取締りには国際協調が欠かせないとして、次のように語る。 「世界中のインターネットで配信される児童ポルノだけでも、毎年10億ドルを売り上げていると思われる。犯罪組織は、積極的に子どもを犠牲にしている。捜査機関が働きやすい環境をつくるためには、国際協調が欠かせない。(児童ポルノについて)世界ではさまざまな解釈がなされているが、スウェーデン当局は単純所持禁止によって犯罪活動に対して以前よりも積極的に対応できるようになった。複雑な論点があるので、日本に単純所持に反対する意見があるのは不思議には思わない。スウェーデンでも国民による熱い議論の末に実施できるようになった。その中で出版の自由、表現の自由も論点になった。しかし、表現の自由以上に、子どもの人権擁護が重要だとして国民の合意が得られた。日本もスウェーデンと同じ議論のプロセスを歩んでいると思う」。 ■漫画・アニメは性的虐待を「誘発している」どころか「利用されている」  さて、この集会のメインスピーカーともいえる、国際エクパット事務局長のキャサリン・スピーク氏は「子どもポルノ根絶に向けた国際ECPATの取り組み」と題して講演を行った。スピーク氏は、子どもの商業的性的搾取の定義を改めて解説した上で、正確な把握は不可能としながらも「ILO(国際労働機関)の報告によれば、2002年には世界中でおよそ180万人の子どもが買春またはポルノによる性的搾取の被害にあっているとされている」「子どもや青少年の性的搾取に対する社会的な許容も増加している」「商業目的の子どもポルノは年間数十億ドルの産業規模である」「インターネット上に100万枚以上の子どもポルノ画像が存在する」「児童虐待の既存の手法はインターネットの普及によって、より手軽で危険の少ないものになってしまっている」「ウェブサイトに提示されている画像の児童虐待の深刻さが増しており、被害に遭う子どもの年齢もより幼くなっている」と報告。その上で、日本政府に対しては「子どもを守るために、国際的な基準と最善の取り組みを参考にしながら、法案の作成を行うよう求める。 「表現の自由はあらゆる国において絶対的ではなく、制限の下にあるものである。社会全体が表現の自由に対する制限を認識するのは、特にそれが他の価値や権利と矛盾する場合である。子どもたちが性的搾取から自由な状態の中に生きる権利は、表現の自由に優先されるべき権利の一つである」  これに続く発言はさらに踏み込んだものだった。国際エクパットが、成人向け漫画やアニメに対するスタンスを明らかにしたからである。 「たとえ成人向け内容の物において描写される子どもが実在しないとしても、こうしたヴァーチャルの子ども虐待画像は実際に子どもたちが性的に虐待あるいは搾取を受ける危険を高めている」(スピーク氏)  すなわち、成人向け漫画などを通じて、実在の子どもたちが被害を受ける可能性があると指摘するのだ。スピーク氏は具体的な危険例として「子どもの性的搾取についての社会的許容を推奨している」「子どもとの性的行為を正常であるかのように思わせている」「画像が急速かつ広範囲に流布されるのに寄与している」「子どもの性的虐待描写物への需要を増大させている」そして最後に、「ヴァーチャルな子ども虐待画像は子どもを手なづけたり、誘惑する際に用いられている」とした。 ■漫画・アニメだけではダメ! 「文章も音声も規制対象に」  続いて登壇した国際エクパットの法律担当スタッフ、フランソワ・エックセヴィエ・スーチェ氏も「子どもポルノ/子ども虐待画像と闘うための鍵となる法的な問題と課題への理解に向けて」と題した報告の中で「ヴァーチャルな子どもポルノ」について言及した。スーチェ氏は「児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書」「サイバー犯罪に関する条約」「欧州評議会子どもの性的搾取及び性的虐待からの保護条約」を論拠に、ヴァーチャルな画像や表現も犯罪にあたると主張する。そして、「ヴァーチャルな子どもポルノ」の問題点として、 「そのような視覚的画像は、虐待者の子どもへの不適切な感情や行為を増大し、また子どもの性的虐待や性的搾取に対する社会的許容を生み出す。さらに、これらの描写物が性目的のために子どもたちを誘い出す行為に用いられる」  と、先のスピーク氏の発言を補強する形で述べた。その上で、フィリピン・カナダ・アイルランド・ニュージーランドなどで既に「ヴァーチャルな子どもポルノ」が犯罪となっていると解説。 「子どもの性的行為への関与を助長する、あるいは描写する音声や文章は、犯罪とされるべきである。同時に、関連する国際的な法的基準によれば、子どもを表現した漫画、アニメ、コンピューターゲーム、デッサンなどは禁止されるべきである」(スーチェ氏)  最後に登壇した日本ユニセフ協会広報室長の中井裕真氏は、インターネットのブロッキングが非常に進んできたことに言及し、 「児童ポルノに対する取り組みは、止まっているのではなく進んでいる。ただ、法改正の部分だけは取り残されている」  と、重ねて単純所持禁止の導入を訴えた。 ■単純所持を禁止するために「ウラの人間関係を調整中」  これまでになく、漫画・アニメなど「ヴァーチャルな子どもポルノ」に対する規制にまで踏み込んだこの集会。その最大の目的は、国会議員に向けたアピールだ。日頃の活動の成果なのか、多くの国会議員の発言もあった。  公明党副代表の松あきら参議院議員は 「いったい何年、児童ポルノ法の会議をしなければならないのか。私たち公明党と自民党で単純所持禁止の改正案はもう出している。けれども、残念ながら、その法案が通らない。与野党関係なく、一刻も早く単純所持の禁止を盛り込んだ改定を行いたい」  と力強く述べる。同じく公明党の富田茂之衆議院議員は2年半前の児童ポルノ法改定をめぐる協議における合意点を振り返り、政権交代があってから民主党が、改定の協議に応じなくなったと批判する。 「2年半前の話し合いでは『みだりに児童ポルノを所持してはならない』『ことさらに児童の性的な部位が強調されていること。性的な部位はでん部なども含む』ことは合意していた。また、所持の禁止に関しても"自己の意志によって所持・保管するに至ったもの"であり、かつ当該者であることが明らかに認められるものに限るという文言を挿入することも合意していた。既に所持しているものの取り扱い以外は合意に達していた。協議ができれば、いつでも単純所持の罰則付き禁止は行える」  と、民主党への働きかけを呼びかけた。政権与党でもある民主党を力強く批判する自民・公明党の国会議員。中でも過激だったのが、衆議院の青少年問題に関する特別委員会の理事でもある、自由民主党のあべ俊子衆議院議員だ。質疑応答の際の「民主党に働きかければ、法改正はすぐに行われるのか」という質問に対して、あべ議員は次のように答えた。 「民主党の中に、何人かの表現の自由などを主張される方がいる。これは、その方々をみんなで嗅ぎつけて、なんとかなるものなのかも含めて、いま裏の人間関係を含めて調整しているところです。(表現の自由を主張する議員は)理論的なところではなく、個人的な価値観で指摘している」  いったい「裏の人間関係」とは、どういうものだろうか?  質疑応答では、「バーチャルな児童ポルノと子どもの相関関係を示している文献があれば、教えてほしい」という質問も。対する答えは「残念ながら、明確なものは存在しない」というものであった。 ■規制に慎重な人々を閉め出した目的はどこにあるのか  今回の集会が昨年6月の集会と大きく異なったのは、まず第一に漫画やアニメなど「ヴァーチャルな子どもポルノ」にも、大きく踏み込む形で発言が行われたことだ。そして、もう一つ、集会参加が事前申込み制となっていたこと。その上で、児ポ法改定に慎重な立場を取る市民団体関係者の申込みに対しては「エクパットの趣旨に賛同している方向けの集会」であるという理由で、参加を拒否していることもわかっている。そこまで、集会を秘密にする必然性が、どこにあったのか甚だ疑問である。また、この日、幾人かの登壇者が発言したが、6月には児童ポルノ禁止の熱心な活動家であるスウェーデンのシルヴィア王妃が来日する予定だ。07年に彼女が来日した際にもスウェーデン大使館では児童ポルノの規制強化を求めるシンポジウムを開催している。6月には、ひとつの大きな山があるかもしれない。 (取材・文=昼間たかし)  

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歴史・人物・雰囲気……同人誌即売会の原点が一挙に集結!『MGM』が5年ぶりに開催

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歴史を刻んできた会場での開催。
今回初めて同人誌を製作し、初サークル参加がMGMという人もいた
 1月22日、創作系同人誌即売会MGM(まんが ギャラリー&マーケット)が、5年ぶりに開催された。MGMは、コミックマーケットの創設母体ともなった同人サークル「迷宮」が主催するコミックマーケットに次ぐ歴史を持つ即売会だ。いったい、どんな顔ぶれが集まるのか、ワクワクしながら会場へと向かった。  98回目の開催となった今回のMGMは、創作漫画オンリーの即売会だ。1980年以来、年2回ペースでの開催は続いていたが、2007年に長らく会場としていた川崎市中小企業婦人会館が閉館されたことで開催が中断。11年には、主催者代表の亜庭じゅん氏が死去し、このまま消滅してしまうのではないかと、危惧されていた。  しかし、昨年8月のコミックマーケットにて、MGM98の開催告知のチラシが配布されたことで心配は期待へと変わった。そして、開催当日を迎えたのである。
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ずらっと並んだ見本誌。
これなら、全部見て回ることもできるから安心だ。
 MGMにおいて注目すべきは、初期の同人誌即売会の雰囲気があちこちに残っていることだろう。参加申込みの必要事項を見ると、特に申込書などは付属しておらず「B5サイズの紙に以下の項目をご記入の上」とあったり、「参加確認書の発送は,開催の10日位前」と、よい意味で妙な緩さが感じられる。  さて、今回の会場は板橋区にある板橋産業連合会館。コミックマーケットの2回目から4回目までが行われた、歴史のある施設である。最寄り駅である地下鉄三田線の板橋区役所前を降りて地上に出ると、早くも「あ、お仲間だな」というにおいをさせている人々の姿が、ちらほらと。ただ、年齢層は高めである。
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伝説の「漫画新批評体系」各号。非売品なのも当たり前だ。残念。
 会場に到着したのは9時50分。サークル参加者は10時集合だったので、早めに到着してよかったなと思っていたら、既に、みんなで机を並べ始めている最中であった......。とりあえず、早めに到着した人は、荷物をそこいらに置いて、みんなで机を並べることに。やっぱり、このイベントには「お客様」は存在しないのだ。なお、準備の時点で筆者が「若手」に属しそうな年齢構成。周囲は、長い歴史を知る人々でいっぱいだ! ■「オタク」以前からの歴史の証人がゴロゴロ  今回の参加サークル数は、約70サークル。中央に見本誌を読めるコーナーを配置しても、ちょっと広々とした雰囲気。ちなみに、第2回のコミックマーケットでは参加サークル数39で、入場者が550人。サークル数が半分とはいえ、この部屋に550人も入ることができたのだろうかと、原田央男氏(コミックマーケット初代代表)に聞いてみると、「人で溢れかえって大変だった」とのこと。第4回目には参加サークル数が80、入場者が700人と収容できなくなり翌年から大田区産業会館へと移転することになった。  とにかく、75年の第1回コミックマーケット以来、いわゆる「オタク」がいかにして巨大な文化として成長していったか、その原点を教えてくれる雰囲気や人物に溢れるイベントであることは間違いない。そんな中で袈裟を着たお坊さんが同人誌を売っていたので「コスプレでもなさそうだし、本職かな? 変わった人だな」と思っていたら、知人が「あの人ご存じですか? 蛭児神建さんですよ」と言われてびっくり。先日、筆者が連載記事で紹介した『ヘイ!バディー』最終号(※記事参照)のロリコン座談会以来だという漫画評論家の永山薫氏は「27年ぶりですね......」と、しみじみと語るのであった(失礼だけど、同誌での写真と比べると2人とも完全に別人である)。  そして、今回の開催にあたって注目を集めていたのは、故・亜庭じゅん氏の執筆した文章を網羅した「迷宮」の30年ぶりの新刊『亜庭じゅん大全 漫画新批評体系vol.16』が発売されたことだ。昨年、冬のコミックマーケットで初売りされたが「重すぎて」少部数しか搬入できなかったので、今回が初売りの本番。亜庭じゅん氏の評論活動を網羅したというだけあって、ハードカバー832ページ。カバーイラストは樹村みのり氏、中表紙には、いしいひさいち氏がイラストを添える同人誌の枠を超えた豪華本である。にもかかわらず、頒価は2,000円だから、かなりの赤字販売だという。ゆえに発行部数は250部程度とかなり少なめ。今後、漫画の歴史を研究する上で欠かせない史料になることは間違いないが、同時にかなり入手困難な史料にもなることだろう。そのためか、購入時に任意ではあるものの、購入者の名前を控えていた。
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このボリュームで頒価2,000円。
1冊あたり製作単価は5,000円を超えているとか。
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別室には故・亜庭じゅん氏を追悼する間が儲けられて故人を偲んだ。
 午後になると、多くの参加者が詰めかけたので「30分ほど延長します」と、ほかの即売会ではありえない展開も見られたMGM。終了後はみんなで机を片付けて反省会と、きわめてアットホームな雰囲気の中で一日を終えた。「あれを買わなきゃ、これも買わなきゃ」と焦る必要もなく、趣味を同じくする人と交流したり、新たな趣味との出会いも見られるこのイベント。小さいながらも、同人誌即売会の本質を凝縮したイベントであることは、間違いない。 (取材・文=昼間たかし) <次回開催案内> ・開催日時:2012年6月10(日) 11時~15時30分 ・場所:板橋区立グリーンホール1階ホール 詳細はMGM99の公式サイトで <http://mgm99.anijun.info/news/y5tbwh>
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歴史・人物・雰囲気……同人誌即売会の原点が一挙に集結!『MGM』が5年ぶりに開催

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歴史を刻んできた会場での開催。
今回初めて同人誌を製作し、初サークル参加がMGMという人もいた
 1月22日、創作系同人誌即売会MGM(まんが ギャラリー&マーケット)が、5年ぶりに開催された。MGMは、コミックマーケットの創設母体ともなった同人サークル「迷宮」が主催するコミックマーケットに次ぐ歴史を持つ即売会だ。いったい、どんな顔ぶれが集まるのか、ワクワクしながら会場へと向かった。  98回目の開催となった今回のMGMは、創作漫画オンリーの即売会だ。1980年以来、年2回ペースでの開催は続いていたが、2007年に長らく会場としていた川崎市中小企業婦人会館が閉館されたことで開催が中断。11年には、主催者代表の亜庭じゅん氏が死去し、このまま消滅してしまうのではないかと、危惧されていた。  しかし、昨年8月のコミックマーケットにて、MGM98の開催告知のチラシが配布されたことで心配は期待へと変わった。そして、開催当日を迎えたのである。
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ずらっと並んだ見本誌。
これなら、全部見て回ることもできるから安心だ。
 MGMにおいて注目すべきは、初期の同人誌即売会の雰囲気があちこちに残っていることだろう。参加申込みの必要事項を見ると、特に申込書などは付属しておらず「B5サイズの紙に以下の項目をご記入の上」とあったり、「参加確認書の発送は,開催の10日位前」と、よい意味で妙な緩さが感じられる。  さて、今回の会場は板橋区にある板橋産業連合会館。コミックマーケットの2回目から4回目までが行われた、歴史のある施設である。最寄り駅である地下鉄三田線の板橋区役所前を降りて地上に出ると、早くも「あ、お仲間だな」というにおいをさせている人々の姿が、ちらほらと。ただ、年齢層は高めである。
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伝説の「漫画新批評体系」各号。非売品なのも当たり前だ。残念。
 会場に到着したのは9時50分。サークル参加者は10時集合だったので、早めに到着してよかったなと思っていたら、既に、みんなで机を並べ始めている最中であった......。とりあえず、早めに到着した人は、荷物をそこいらに置いて、みんなで机を並べることに。やっぱり、このイベントには「お客様」は存在しないのだ。なお、準備の時点で筆者が「若手」に属しそうな年齢構成。周囲は、長い歴史を知る人々でいっぱいだ! ■「オタク」以前からの歴史の証人がゴロゴロ  今回の参加サークル数は、約70サークル。中央に見本誌を読めるコーナーを配置しても、ちょっと広々とした雰囲気。ちなみに、第2回のコミックマーケットでは参加サークル数39で、入場者が550人。サークル数が半分とはいえ、この部屋に550人も入ることができたのだろうかと、原田央男氏(コミックマーケット初代代表)に聞いてみると、「人で溢れかえって大変だった」とのこと。第4回目には参加サークル数が80、入場者が700人と収容できなくなり翌年から大田区産業会館へと移転することになった。  とにかく、75年の第1回コミックマーケット以来、いわゆる「オタク」がいかにして巨大な文化として成長していったか、その原点を教えてくれる雰囲気や人物に溢れるイベントであることは間違いない。そんな中で袈裟を着たお坊さんが同人誌を売っていたので「コスプレでもなさそうだし、本職かな? 変わった人だな」と思っていたら、知人が「あの人ご存じですか? 蛭児神建さんですよ」と言われてびっくり。先日、筆者が連載記事で紹介した『ヘイ!バディー』最終号(※記事参照)のロリコン座談会以来だという漫画評論家の永山薫氏は「27年ぶりですね......」と、しみじみと語るのであった(失礼だけど、同誌での写真と比べると2人とも完全に別人である)。  そして、今回の開催にあたって注目を集めていたのは、故・亜庭じゅん氏の執筆した文章を網羅した「迷宮」の30年ぶりの新刊『亜庭じゅん大全 漫画新批評体系vol.16』が発売されたことだ。昨年、冬のコミックマーケットで初売りされたが「重すぎて」少部数しか搬入できなかったので、今回が初売りの本番。亜庭じゅん氏の評論活動を網羅したというだけあって、ハードカバー832ページ。カバーイラストは樹村みのり氏、中表紙には、いしいひさいち氏がイラストを添える同人誌の枠を超えた豪華本である。にもかかわらず、頒価は2,000円だから、かなりの赤字販売だという。ゆえに発行部数は250部程度とかなり少なめ。今後、漫画の歴史を研究する上で欠かせない史料になることは間違いないが、同時にかなり入手困難な史料にもなることだろう。そのためか、購入時に任意ではあるものの、購入者の名前を控えていた。
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このボリュームで頒価2,000円。
1冊あたり製作単価は5,000円を超えているとか。
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別室には故・亜庭じゅん氏を追悼する間が儲けられて故人を偲んだ。
 午後になると、多くの参加者が詰めかけたので「30分ほど延長します」と、ほかの即売会ではありえない展開も見られたMGM。終了後はみんなで机を片付けて反省会と、きわめてアットホームな雰囲気の中で一日を終えた。「あれを買わなきゃ、これも買わなきゃ」と焦る必要もなく、趣味を同じくする人と交流したり、新たな趣味との出会いも見られるこのイベント。小さいながらも、同人誌即売会の本質を凝縮したイベントであることは、間違いない。 (取材・文=昼間たかし) <次回開催案内> ・開催日時:2012年6月10(日) 11時~15時30分 ・場所:板橋区立グリーンホール1階ホール 詳細はMGM99の公式サイトで <http://mgm99.anijun.info/news/y5tbwh>
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「ヤクルトとカップヌードルに洗礼?」MOJOKOのユーモラスな世界

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Attack on Golden Mountain(c)MOJOKO
 『AKIRA』『ドラゴンボール』『ドラえもん』......子どものころ、僕らの心をアツくさせた漫画やアニメが、海の向こうに住むアジアの子どもたちの心にも火をつけていた。今や日本人だけのものではなくなった、ジャパニーズ・ポップカルチャー。その影響を受けて育った、アジアの才能豊かなクリエーターたちを紹介します。 第23回 アーティスト MOJOKO(モジョコ)  数年前、"シンガポールの裏原宿"と呼ばれる"ハジ・レーン"という小さな路地にある、地元の若者が経営するオシャレブティックで、フリーペーパー「Kult」 を手にしたときの衝撃。ローカルなのか無国籍なのか判然とせず、うさん臭くて尖っている、なのに愛嬌のあるユーモラスな世界に一瞬で引き込まれた。「シンガポールでこんな"変なこと"をしているクリエイターがいる」と、妙にうれしくなった。  その頃、ファンククリス・リーたちの「地元の飲み会」で、いつもゆるゆると和んでいるイギリス人、スティーブ・ローラーがいた。そして彼がイラン生まれの香港育ちで、MOJOKO(モジョコ)というアーティスト名でシンガポールをベースに活動し、さらに「Kult」のクリエイティブ・ディレクターでもあると知ったときの2度目の衝撃。だが同時に、いろいろなことが腑に落ちた。
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『ガンダム30thアニバーサリー
コレクション
機動戦士ガンダム』
(バンダイビジュアル)
 子ども時代を過ごした香港で、MOJOKOはほかの香港人の子どもたちと同様、日本のコミックカルチャーの洗礼をもろに受けて育ったという。その最初の記憶は、テレビで流れる日本のアニメーション。ガンダムやドラえもん、タツノコプロの『ゴールドライタン』や『宇宙の騎士テッカマン』の超ハイパーカラーは、今も鮮明に覚えている。 「僕の人生における最重要品目は、ヤクルトとカップヌードル。それとスーパーマーケットにディスプレイされていた、日本語の商品広告やポスター。意味は全然分からないけど、パッケージやポスターに印刷されているグラフィカルな文字の形に惹かれました。カラフルで生き生きして、子どもの僕にはたまらない刺激だった」  広告であれ娯楽であれ、日本の「グラフィックに妥協しない姿勢」は、彼の作品作りに大きく影響しているという。
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Megadeath02(c)MOJOKO
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Trasher(c)MOJOKO
「特に日本のゲームはすごい。香港の大きなゲームセンターには、カプコンの最新ゲームを宣伝するグラフィックスが店中に飾られていた。僕は、ほとんどの時間をゲームセンターで過ごしていたから、強烈な体験として残っているし、初期のテレビゲームカルチャーや、任天堂のスーパーファミコンには、今でもすごく影響を受けていると感じるんだ」  MOJOKOの手法として知られる、東西津々浦々の大量のグラフィックや文字のコラージュ。ひとつひとつはてんでバラバラのスタイルや意味を持つものが、作品の上では、不思議な統一感を醸し出す。「みんな違うけど、みんなどこか同じ」ということを視覚的に感じる驚きや楽しさ。それは、多くの国で暮らした経験を持つMOJOKOからのメッセージでもある。"MOJOKO語"は、世界共通の"見ることで通じる"言語なのだ。
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CultureFuck(c)MOJOKO
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Nodody can save us(c)MOJOKO
 MOJOKOにとって、アジアで暮らすことは「驚きに満ちあふれたもの」だという。 「古いもの、新しいものに限らず、素晴らしいタイポグラフィやパッケージ、職人の技、建物の装飾などなどが至るところに存在している。シンガポールなんか、一つの標識に、タミル語、マレー語、英語、中国語が書かれているんだよ。みんな、そういうものに普通に囲まれて暮らしているんだ。そんなふうにすさまじくミックスされたカルチャーが、ハイブリッドなアイデアを大量に生み出していく力になるのだと思う」  プロジェクトを構想するときには、現地のカルチャーや感受性に目を配りながら、かつ国際的な視点を持つことが大切だというMOJOKO。 「そのイメージソースは、香港とシンガポールの広告。多文化、多国籍の人たちが暮らす場所だから、広告も言語の壁を越えた多くの人々に狙いを定めている。つまり、そういうものを日常的に見ている人たちは、視覚的なリテラシーが高いということ。僕は"イメージという言語"を探求したい。そしてグラフィックによって、文化や言語を越えて、僕のアイデアを伝えたいと思っているんだ」
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Kult magazine
 これからも「Kult」の活動はもちろん、これまでも数多くこなしてきた展覧会のキューレーションも続けていきたいという。 「アーティストとしては、インドやブラジル、日本で展覧会をするのが夢です。インタラクティブ・アートの展示をしてみたい」  地元のクリエイティブ界でもすっかり"顔"になりながら、そこで収まることなく、飄々と国籍や文化を越えてフィールドを拡げていく。世界中のどこにいても"MOJOKO語"を目にする日は近いかもしれない。 (取材・文=中西多香[ASHU]) Mojoko_portrait.JPG ●スティーブ・ローラー イラン生まれ。シンガポール・ベースの英国人アーティスト。イタリアのファブリカ、ニューメディア部門での訓練後、商業的、個人的な実験的プロジェクトに多数従事。現在Kult magazineのクリエイティブ・ディレクターであると同時に、現地のアンダーグラウンドな活動に、キュレーター、アーティストとして関わっている。グラフィック&インタラクティブ・デザインのバックグラウンドを持つ彼の最近の作品は、世界中のマスメディアに現れる現代における衝撃的なイメージを反映させたもので、世界中の多くのメディアで紹介されている。 <http://www.mojoko.net.> <http://www.stevelawler.com> ●なかにし・たか アジアのデザイナー、アーティストの日本におけるマネジメント、プロデュースを行なう「ASHU」代表。日本のクリエーターをアジア各国に紹介するプロジェクトにも従事している。著書に『香港特別藝術区』(技術評論社)がある。<http://www.ashu-nk.com > オンラインTシャツオンデマンド「Tee Party」<http://teeparty.jp/ashu/>
ガンダム30thアニバーサリーコレクション 機動戦士ガンダム 『機動戦士ガンダム』劇場3部作の第1弾。 amazon_associate_logo.jpg
■バックナンバー 【vol.21】「狂気とポップカルチャーが融合!? 香港のアーティストが追求する"不完全な美" 【vol.22】「人間の欲望を視覚化?」香港人気キャラの生みの親が追求する"醜さの美学" 【vol.20】「故郷・ボルネオ島での原体験が創造力の源」世界で活躍するマレーシアの"ケンヂ" 【vol.19】「人生に起きるすべてのことを細かく観察したい」中国ネット世代のアーティスト 【vol.18】「ヒーローは宮崎駿と奈良美智」シンガポールのマルチスタイル・アーティスト 【vol.17】「ルーツは『天空の城 ラピュタ』」ウォン・カーウァイに見い出された香港の若き才能 【vol.16】怖かわいい魑魅魍魎が暴れ回る! ヤン・ウェイの妖魔的異界 【vol.15】「原点は日本のコミック」東南アジアを席巻する都会派クリエーター 【vol.14】エロ×宗教×故事が混在!? 中国版・寺山修司が造り出すカオスな世界 【vol.13】昼間はOL、夜は寡黙なアーティスト ソン・ニが描く秘密の快楽の世界 【vol.12】まるで初期アニメ ローテクを駆使する南国のアート・ユニット「トロマラマ」 【vol.11】「造形師・竹谷隆之に憧れて......」 1000の触手を持つ、マレーシアのモンスター 【vol.10】"中国のガロ系"!? 80年代以降を代表するコミック・リーダー ヤン・コン 【vol.9】大のラーメンおたく!? シンガポールデザイン界を率いる兄貴、クリス・リー 【vol.8】メイド・イン・ジャパンに憧れて...... 香港の文学系コミック作家・智海 【vol.7】「血眼になってマンガを追いかけた」海賊版文化が育んだ中国の新しい才能 【vol.6】裸人間がわらわら 香港ピクセル・アートティストが放つ"アナログデジタル"な世界 【vol.5】ダメでも笑い飛ばせ! 香港の国民性を体現したグラフィック・ノベリスト 【vol.4】「教科書はガンダムの落書きだらけだった」 香港・原色の魔術師の意外な原点 【vol.3】「懐かしいのに、新しい」 読むほどにクセになる"タイ初の日本漫画家"タムくん 【vol.2】 マイブームはBL!? 香港の腐女子が描きとめる、消えゆく都市の記憶 【vol.1】「 :phunk版ガッチャマンが作りたい」 シンガポール発のデザイン集団が描く夢

マンガ学部よりも就職はラク? 全国初のポピュラーカルチャー学部は成功するのか?

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京都精華大学公式HPより
 昨年12月、全国で唯一マンガ学部を持つ京都精華大学が、今度はポピュラーカルチャー学部を新設することを発表し注目を集めている。この学部には、音楽コースとファッションコースの2つのコースが設置される予定だ。  既に開設されている特設サイトでは、想定される就職先として音楽コースでは「ミュージシャン」「ソングライター」「DJ」「サウンドエンジニア」「音楽サイトや雑誌の編集者・ライター」「音楽プロデューサー」を、ファッションコースでは、「ファッションデザイナー」「バイヤー」「アパレルブランドプロデューサー」「ショップオーナー」「ファッション雑誌やウェブサイトのデザイナー・ライター・編集者」などを挙げている。加えてファッションコースでは「批評眼と伝える技術をもった批評家や編集者という、ファッション文化の担い手も育てる」とも記している。  同大学のマンガ学部は定員200名あまりだが、そのうちデビューしたり、マンガ・アニメ業界に就職できるのは、ごく一握りに過ぎないのは既に知られている通り。  華やかな職業を羅列したところで「そんなに、うまくいくものか?」と疑ってしまう。  ところが、大学事情に詳しい人々に話を聞いてみたところ「これはなかなか手堅い経営戦略だ」という称賛の声ばかり。誰もが口をそろえるのは、学費を払うであろう親に対する訴求力の高さだ。 「才能の有無にかかわらず、音楽系の専門学校を志望する高校生は意外に多いのです。しかし、親は"学費を出すのであれば四年制大学に進学してほしい"と考えるのが当たり前です。このコースは、両者のニーズをうまく一致させているといえるでしょう」(都内大学職員)  つまり、大学での授業内容や卒業後の進路は、「人並みに大学に行ってくれるんなら......」と、親の心をくすぐることができるものといえる。  また、ファッションコースも、手堅い就職を期待させるコースだと分析される。 「全員がファッションデザイナーになるのはとても無理でしょう。でも、ショップの販売員であれば、さほど困難とは感じないハズです。おそらく、販売員になりたいギャル系の女のコあたりを入学志望者に想定しているのではないでしょうか」(同大学職員)  さらに、音楽とファッション、どちらのコースもマンガ学部より「就職」あるいは「デビュー」させるのは簡単にできるのではないかという指摘も。 「マンガ家になるには、最低でも商業誌に16ページくらいの作品をひとつは掲載しなくてはならない。そのハードルは極めて高いといえます。けれど、音楽ライターやファッションライターならどうでしょう? ページの埋め草的な文章を400字でも書けば、デビューしたとしてカウントできますからね」(ファッション誌編集者)  どうも景気のよい話だけれど、やはり「そんなにうまくいくワケがない」という意見もある。ジャンルによって違いはあるものの、ファッションの販売員の出世コースは20歳で店長、25歳を過ぎたあたりで管理職というのが当たり前の世界だ。出世する人材の大半は、高校を中退して17歳くらいで就職した人々だとされる。つまり、大学を出てからでは感性を磨く時間もなく、既に手遅れなわけだ。  また、特設サイトでは「楽器が弾けなくても、服づくりの経験がなくても。音楽とファッションにひたりきれる場所がここにある」という宣伝文が掲載されているのだが、ここには誰もが苦笑する。 「DTMだったら、楽器は弾けなくても作曲できるかもしれませんが、それで音楽業界に就職できるかといえば......」(音楽業界関係者)  開設後、一体どんな学生が集まるのかが注目される。 (文=三途川昇天)
ライターになるための練習問題100 名乗ったモン勝ち。 amazon_associate_logo.jpg
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「漫画家としての誇りは●●」『キャプ翼』高橋陽一が新作発売記念サイン会を開催


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 『キャプテン翼』などのヒット作で知られる人気漫画家・高橋陽一先生の最新作『誇り―プライド―』1巻の発売を記念し15日、SHIBUYA TSUTAYAにてサイン会が開催され、多数のファンたちが詰めかけた。  『誇り―プライド―』は週刊漫画ゴラク(日本文芸社)で連載中の、北海道を拠点とするJ2チーム「函館トゥルーパーズ」を舞台に、それぞれの誇りを持ってサッカーに取り組む男たちの姿を様々な視点から描き出すオムニバス形式のサッカー漫画。 _1190729.jpg _1190734.jpg _1190725.jpg  サイン会後に行われた取材で高橋先生は「日本サッカー界には三浦知良選手をはじめ、ピークを過ぎても"やめない誇り"を持ってプレーし続けている選手たちがたくさんいます。そんな姿を見て自分も頑張ろうと思ってもらいたくて題材に選びました」と語った。  また、エピソードによって主人公が変わっていく本作については、子どものころに大好きだった水島新司先生のオムニバス野球漫画『野球狂の詩』のサッカー版をイメージしているという。  「もしかしたら今後、審判の話だったり、スポーツ記者の話、もちろん女子サッカーなんかも題材にできそうですね」と展望を語り、漫画家としての誇りを問われた際には「手抜きしないで一生懸命、そして締切を守ること! 今まで原稿を落としたことがないのが誇りですね。まあ、プロなんだから当然といえば当然なんですけど(笑)」と笑いを誘っていた。 (取材・文=北村ヂン)
誇り-プライド 1巻 これが大事。 amazon_associate_logo.jpg
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