
コミケに次ぐ、日本で2番目に古い同人誌即売会MGM(まんが ギャラリー&マーケット)。6月10日、その99回目となる「MGM99」を開催し、いよいよ次回は記念すべき100回目の開催……と思いきや、次回は「MGM99.5」となることに。
コミックマーケットから分離独立する形で1980年から始まったMGMは、二次創作ジャンルが肥大化する同人誌即売会に背を向けて、創作系を中心にして開催されている。現在では、極めて独自色が際立つ即売会だ。今年1月に5年ぶりに開催された「MGM98」では、69サークルが参加。6月の「MGM99」では62サークルが参加と、規模は小さいながらも、70年代からの同人誌文化を知る人々も多数参加している。
「MGM99」では、いよいよ次回は100回目と参加者も考えていたのだが、会場で配布されたチラシで告知されたのは「MGM99.5」だったのだ。
「MGM99.5」の開催にあたっては、会場の都合などさまざまあるが、根本的には記念すべき100回目を盛り上げるためだ。告知チラシでは「MGM100に新刊で参加したくなるMGM」を宣言し、「次回MGM100を目前にして、前夜祭というか、初めての企画でMGM100準備編をやります」としている。つまり、この99.5回目を利用して、参加者にも100回目を記念碑的な即売会に位置付けるためのアイデアや企画を準備してほしいというのが、主催者の狙いなのだ。
開催日は9月1日、会場の都合で15時から19時30分までという、即売会にはおおよそあり得ない時間設定に。しかも翌日には、創作系同人誌即売会の大手である「コミティア」も予定されている。果たして、参加者が2日間続けてイベントを楽しもう! となるか、あるいは「コミティアがあるからMGMはいいや」となるかが気になるところだ。
毎回、即売会終了後には参加者全員で意見交換会、その後は打ち上げという流れになっており、極めて参加者同士のコミュニケーションの機会が多いのがMGMの特徴だ。単に同人誌を売り買いするだけ、あるいは買った同人誌を家に帰って読むのだけが楽しみ、といったサイクルから脱却したいなら、ぜひ参加してみるべきである。
ほかの同人誌即売会にはない、新たな発見があるはずだ。
(取材・文=昼間 たかし)
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巨大オタクビルの中に博物館「北九州市漫画ミュージアム」に行きたい!

この巨大なビルが新たなマンガとアニメの聖地になるのか。うん、巨大すぎる……

中は完全にオタク系ショップばかりの筋の通った感じがたまらない

さすがに平日の正午頃だったので客は少なかった

内部はまだ工事中だが。告知用の壁紙が、かなりキテていい感じの仕上がりに……

このセンスの独特さが新たな可能性を感じさせてくれるのだ

やはり松本先生といえば『男おいどん』だよ。
筆者もまだ、おいどんみたいな暮らしっぷりだよ
筆者もまだ、おいどんみたいな暮らしっぷりだよ

子供から大人まで楽しめる施設が充実しているのがいいよね

なんともレトロな雰囲気の市場が。こういうのが残っている街は間違いなくアタリだ

内部にも活気が。失われたなにかを思い出したよ……

きっと、この街の人々はフランクで付き合いやすいに違いない

レトロな映画館が残る街にハズレはない

アヤしげな雰囲気の場所も。知らない街の歓楽街で
カメラを出す勇気はありませんでした
カメラを出す勇気はありませんでした
巨大オタクビルの中に博物館「北九州市漫画ミュージアム」に行きたい!

この巨大なビルが新たなマンガとアニメの聖地になるのか。うん、巨大すぎる……

中は完全にオタク系ショップばかりの筋の通った感じがたまらない

さすがに平日の正午頃だったので客は少なかった

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このセンスの独特さが新たな可能性を感じさせてくれるのだ

やはり松本先生といえば『男おいどん』だよ。
筆者もまだ、おいどんみたいな暮らしっぷりだよ
筆者もまだ、おいどんみたいな暮らしっぷりだよ

子供から大人まで楽しめる施設が充実しているのがいいよね

なんともレトロな雰囲気の市場が。こういうのが残っている街は間違いなくアタリだ

内部にも活気が。失われたなにかを思い出したよ……

きっと、この街の人々はフランクで付き合いやすいに違いない

レトロな映画館が残る街にハズレはない

アヤしげな雰囲気の場所も。知らない街の歓楽街で
カメラを出す勇気はありませんでした
カメラを出す勇気はありませんでした
香港フィギュアブームの火付け役! ‟『AKIRA』にヤラれた”作家が手がける近未来物語

「Apexplorers character T-rex 」(c)Winson Ma
『AKIRA』『ドラゴンボール』『ドラえもん』......子どものころ、僕らの心をアツくさせた漫画やアニメが、海の向こうに住むアジアの子どもたちの心にも火をつけていた。今や日本人だけのものではなくなった、日本のポップカルチャー。その影響を受けて育った、アジアの才能豊かなクリエーターたちを紹介します。
第28回
キャラクター・デザイナー
ウィンソン・マー(Winson Ma)
鉄人兄弟(brothersfree) 。アクション・フィギュア好きの人なら、一度は聞いたことがあるだろう。香港のマイケル・ラウ、エリック・ソーと並んで、2000年代初頭に旋風を巻き起こした「香港アクション・フィギュア」ブームの一翼を担い、今もなお世界中に根強いファンを持つ、アクション・フィギュア・クリエイティブユニットだ。
ウィンソン・マーが、友人のケニー・ウォン、ウィリアム・ツァンと共に「鉄人兄弟」をスタートさせたのは2000年。香港で、彼らのごく身近な存在である工事現場の労働者たちをモチーフにしたアクション・フィギュアのシリーズ「brothersworker」は、衝撃的なデビューを遂げた。「フィギュアはアートだ」と、誰しもが実感せずにはいられないほどの世界観と高いクオリティを持った彼らの作品は、フィギュア界に確実に新しいエポックを残した。
しかし06年、「広告代理店のクリエイティブ・ディレクターとしての待遇を捨て、貯金を削ってまで自分たちのアクション・フィギュアを作りたかった」鉄人兄弟の3人は、それぞれの道を選ぶことになる。
「カルチャーとかデザインとかの枠を超えて、あの時期、鉄人兄弟は、頂点に駆け上った。3人でやるべきことのすべてを成し遂げた結果だし、何より僕たちの作品が多くの人に受け入れられたことが自信になった」というウィンソンは、その後、自身の会社Winson Classic Creationを設立。自身初のオリジナル・シリーズ作品「Apexplorers(エイプクスプローラーズ)」を発表する。自らストーリーを作り、全キャラクターデザインを手がけた近未来物語。フィギュアだけでなく、ムービー、イラストなど、メディアミックスで展開されている。

「Apexplorers character Ice & Laser」(c)Winson Ma

「Apexplorers character Otto」(c)Winson Ma

「Apexplorers character Otto & Ice」(c)Winson Ma
「世界初めて三極(北極、南極、エベレスト登頂)を極めた香港の女性冒険家、レベッカ・リーが、探検先から地球に関する貴重な資料をたくさん持ち帰った。彼女は僕の友人なんだけど、鉄人兄弟を立ち上げる前に、彼女のプロジェクトに協力したこともあって……。Apexplorersは、彼女の冒険談や、環境保護データを基にした物語なんです」
鉄人兄弟時代とはかなりかけ離れたコンセプトだったため、ウィンソン自身も「環境をテーマにしてフィギュアをデザインすることが果たして正しいことなのか、迷った」という。「鉄人兄弟のスタート以降、この10年の間に、アクション・フィギュア・ブームも、何度も引き潮を迎えていたし」
しかし、ウィンソンの迷いは杞憂に終わる。
「ラッキーだよ。香港だけでなく、台湾、日本、アメリカ、中国などの市場で受け入れられ、多くのメディアが話題にしてくれた」

「Apexplorers Fashion product 2012」(c)Winson Ma

「hand made Adam figure @ 2004」(c)Winson Ma
ウィンソンに、どんなジャパニーズカルチャーの影響を受けたのか、聞いてみた。
「アニメ、SF映画にゲーム……とくに日本のキャラクターデザインとストーリー作りにはすごいものがある。例えば『Dr.スランプ』のラブリーなキャラクターとクレイジーで笑えるストーリー、『バイオハザード』のエキサイティングな展開と人物像。『AKIRA』は、アニメもコミックも、両方ヤラれました。スクリーニングの表現方法はショックの連続で、広告代理店で働いていた頃は、資料としていつも手元に置いていました」
そして、彼の敬愛する日本のアーティスト、空山基。
「すごくセクシーで、大胆なところがたまらない」

「Ice & Laser sketch」(c)Winson Ma
彼の描く近未来ストーリーやキャラクターの端々には、そうした要素をウィンソン流に咀嚼した片鱗がうかがえる。しかし、それはもはやジャパニーズカルチャーの模倣ではなく、ウィンソン・オリジナルになっている。
昨年、鉄人兄弟誕生10周年を記念する展覧会が香港で行われ、多くのファンが駆けつけた。そのことを喜びながらも、ウィンソンは、将来に向けての自分の計画に焦点を合わせている。目下、中国最大のウェブショップ「Taobao.com」とのコラボ企画であるApexplorersミニフィギュアがローンチを控えているという。

「Taobao 2012 project @ China」(c)Winson Ma
「その後は、Apexplorersのエピソード2を年内に発表し、来年には、Apexplorersファッションブランドを立ち上げたい。それと並行して、中国で僕のブランドをアップグレードするために、もっとたくさんのコラボレーション企画に参加したいと考えています」
かつてウィンソンに大きな影響を与えた『AKIRA』のように、香港発のApexplorersが、さまざまなメディアを通して、中国、そして世界の人たちに衝撃を与え続けている。
(取材・文=中西多香[ASHU])
●ウィンソン・マー
香港生まれ。コマーシャル・アート業界で経験を積み、2000年にケニー・ウォン、ウィリアム・ツァンと共に鉄人兄弟(brothersfree)を設立。アクション・フィギュアのデザインや、著名ブランドとのコラボレーションに従事。05年にWinson Classic Creation設立。自身がデザインしたキャラクター「Apexplorers/Jungle」が、07年HKDA Awardsの銀賞を受賞。リーバイス、ノキア、コカ・コーラ、キヤノンなど、国内外のブランドとのコラボレーションも多く手がける。
<http://www.winsoncreation.com/>
●なかにし・たか
アジアのデザイナー、アーティストの日本におけるマネジメント、プロデュースを行なう「ASHU」代表。日本のクリエーターをアジア各国に紹介するプロジェクトにも従事している。著書に『香港特別藝術区』(技術評論社)がある。<http://www.ashu-nk.com >
オンラインTシャツオンデマンド「Tee Party」<http://teeparty.jp/ashu/>
■バックナンバー
【vol.27】“田名網チルドレン”続々……アジア各地で熱烈支持されるサイケデリック・マスター
【vol.26】『銀河鉄道999』はアップル並みのインパクト? 韓国の催眠術的ポートレイト
【vol.25】ネタ元は日本の特撮ヒーロー? インドネシア式ファンタジー
【vol.24】"80後"世代の代弁者 中国売れっ子写真家の「未来系アート」
【vol.23】「ヤクルトとカップヌードルに洗礼?」MOJOKOのユーモラスな世界
【vol.22】「狂気とポップカルチャーが融合!?」香港のアーティストが追求する"不完全な美"
【vol.21】「人間の欲望を視覚化?」香港人気キャラの生みの親が追求する"醜さの美学"
【vol.20】「故郷・ボルネオ島での原体験が創造力の源」世界で活躍するマレーシアの"ケンヂ"
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【vol.15】「原点は日本のコミック」東南アジアを席巻する都会派クリエーター
【vol.14】エロ×宗教×故事が混在!? 中国版・寺山修司が造り出すカオスな世界
【vol.13】昼間はOL、夜は寡黙なアーティスト ソン・ニが描く秘密の快楽の世界
【vol.12】まるで初期アニメ ローテクを駆使する南国のアート・ユニット「トロマラマ」
【vol.11】「造形師・竹谷隆之に憧れて......」 1000の触手を持つ、マレーシアのモンスター
【vol.10】"中国のガロ系"!? 80年代以降を代表するコミック・リーダー ヤン・コン
【vol.9】大のラーメンおたく!? シンガポールデザイン界を率いる兄貴、クリス・リー
【vol.8】メイド・イン・ジャパンに憧れて...... 香港の文学系コミック作家・智海
【vol.7】「血眼になってマンガを追いかけた」海賊版文化が育んだ中国の新しい才能
【vol.6】裸人間がわらわら 香港ピクセル・アートティストが放つ"アナログデジタル"な世界
【vol.5】ダメでも笑い飛ばせ! 香港の国民性を体現したグラフィック・ノベリスト
【vol.4】「教科書はガンダムの落書きだらけだった」 香港・原色の魔術師の意外な原点
【vol.3】「懐かしいのに、新しい」 読むほどにクセになる"タイ初の日本漫画家"タムくん
【vol.2】 マイブームはBL!? 香港の腐女子が描きとめる、消えゆく都市の記憶
【vol.1】「 :phunk版ガッチャマンが作りたい」 シンガポール発のデザイン集団が描く夢
【清野とおるの、キ○チ○ガ○イと呼ばないで】第3話「恐怖!‟木曜日の男”」
『東京都北区赤羽』でおなじみの漫画家・清野とおるによる、悶絶必死の爆笑コラム。
2011年の師走のある日。東京から大阪に嫁いでいった親戚のユカリ姉ちゃんから、数年ぶりに電話がかかってきた。電話の向こうのユカリ姉ちゃんは、狼狽した様子で声を荒げている。一体何があったというのか? ユカリ姉ちゃんの話を聞いて、俺は恐怖に身震いした。
2011年11月24日木曜日、午後6時。閑静な住宅街が広がる大阪市東成区にて、最初の事件は起こった。

上下薄緑色の作業服に、緑色のママチャリに乗った30前後の男。
その男が、暗い住宅街を歩いていた若い女性を追い抜きざまに、
なんと、顔にウンコを塗りたぐり、猛スピードで走り去ったそうだ……。
※この先もウンコの絵が続くため、あえてウンコの色を一番ウンコっぽくない「ピンク」に塗っておきましたが、実際は茶色極まりないウンコです。
男はその日、30分の間に同じ手口で計5人もの若い女性の顔にウンコを塗りたぐり、行方をくらませたという。
その翌週の木曜である12月1日にも、
男は同じ手口で2人の女性の顔にウンコを塗りたぐって逃走。また、その翌々週の木曜である12月8日にも、
男は同じ手口で2人の女性の顔にウンコを塗りたぐって逃走。被害者の数、3週間で計9人。
犯行は半径1キロ圏内、決まって木曜日の夕方~夜であったことから、いつの間にやら男は「木曜日の男」と呼ばれ、住民たちから畏怖される存在になったという。
ユカリ姉ちゃんの家は、まさにこの1キロ圏内で、いつ顔にウンコを塗りたぐられてもおかしくない状況下に、発狂寸前であった。
近所の主婦たちの間では、「木曜日の男」の話題で持ち切りとなり、さまざまな憶測が飛び交ったそうだ。
また、東成区限定のローカル番組内でも連日、この「木曜日の男」のことが放送され続けたという。
女性たちはただただ恐怖に戦き、男性たちは犯人だと疑われることを恐れ、木曜日には気軽に自転車に乗れない心と身体になってしまったそうだ。
この事態に、大阪府警も立ち上がった。現場に残されたウンコのDNA鑑定をし、60人もの私服警官を街に投入して、厳戒態勢で臨んだという。
そして迎えた4度目の木曜日、2011年12月15日。午後6時半。共働きのユカリ姉ちゃんは、仕事帰りに「1キロ圏内」の保育園に子どもを迎えに行くことになった。
1キロ圏内に突入した姉ちゃんは、帽子とマスクを装備。長い髪をジャケット内に隠し、男っぽい雰囲気でいくことにしたそうな。
それでも万一、ウンコを塗りたぐられた時のために、応急処置用のミネラルウォーターと石鹸とファブリーズまで装備したというから周到だ。
「木曜日の男」のせいか、普段と比べて明らかに人気の少ない東成区。保育園までの道のりは200メートルほどだったが、この時ばかりは「8.5キロくらい」に感じたという。
と、その時。
不気味に静まり返った暗い住宅街で、目つきの鋭い怪しげな男が近づいてくるではないか……!
……彼は、「木曜日の男」を逮捕するために配備された私服警官だった。
保育園に到着したユカリ姉は、娘を抱きかかえると、無我夢中で家まで全力疾走したそうだ。
結局この日、「木曜日の男」は現れなかった。
というのがユカリ姉ちゃんはじめ、近所の主婦の方々の見解だそうだが、真相は闇の中だ。
「木曜日の男」は、2011年12月8日を境に、ピタリと現れなくなった。次いつ現れるのか、大阪市東成区の人々は落ち着かない日々を送っているという。
「木曜日の男」の一刻も早い逮捕を、東京都北区という超安全圏からお祈りしております……!
(文・イラスト=清野とおる)
●せいの・とおる
1980年生まれ。東京都板橋区出身。地元・赤羽に生息する奇妙な人々を生き生きと描いた漫画『東京都北区赤羽』(Bbmfマガジン )が大ヒット中。
ズボラー女子急増中? ちまたで話題沸騰の料理コミック第2巻『花のズボラ飯2』

『花のズボラ飯2』(秋田書店)
「ズボラー」といわれる人が、じわじわと増えているという。ズボラーとは、掃除をしない、洗濯も溜め込む、料理も手抜き……といった、その名のとおりズボラな人たち。平成22年の国勢調査によると、男性の単独世帯は880万4,079世帯、女性の単独世帯は798万428世帯と、単身で生活する人は男女とも年々増え続けている。気兼ねない一人暮らしであれば、さもありなん、ズボラーとなるのも自然なことだろう。
そんなズボラー女子ブームの牽引役となったのが、このマンガ。『花のズボラ飯2』(秋田書店)は、単身赴任中の夫と離れて暮らす主婦・駒沢花のズボラな食生活を描いた料理マンガの最新刊。宝島社「このマンガがすごい!」2012年版オンナ編第1位、「マンガ大賞2011」第4位と、続けて賞を受賞している話題のコミックだ。花の料理のコンセプトは、とにかく「省略」「迅速」「大雑把」。料理マンガは世に数多くあれど、“手抜き”に重点を置いた作品は今までになかったのではないだろうか。花の一人語り&オヤジギャグが軽快で、楽しい。
ある日の仕事帰り、花は電車内で男子大学生の会話を立ち聞きする。自炊についての他愛もない会話だが、その中の「めんたい豆腐バターライス」に、花は激しく心惹かれ、その晩、実際に作ってみることに。<白米に明太子、バター、くだいた豆腐、きざみネギ、かつおぶしを乗せ、レンジで1分半加熱するだけ>という超カンタンなズボラ飯だが、「うんまぁ~~い!」と花はご満悦。明太子とバターの組み合わせが妙なる一品だ。
ほかにも白菜とベーコンをコンソメで煮るだけの「白菜ベーコン鍋」や、茹でキャベツを冷まし、きざみミョウガ、かつおぶしを乗せ、味ポンをかけただけの「ミョーキャベ」など、四季折々のズボラ飯17品が掲載されている。
実際、レシピどおりに料理するのは億劫なものだが、ズボラ飯には見栄も体裁も計量カップも必要ない。忙しい現代人にとって“ズボラ飯”は、合理的かつ経済的なライフスタイルなのだ。
(文=平野遼)
ズボラー女子急増中? ちまたで話題沸騰の料理コミック第2巻『花のズボラ飯2』

『花のズボラ飯2』(秋田書店)
「ズボラー」といわれる人が、じわじわと増えているという。ズボラーとは、掃除をしない、洗濯も溜め込む、料理も手抜き……といった、その名のとおりズボラな人たち。平成22年の国勢調査によると、男性の単独世帯は880万4,079世帯、女性の単独世帯は798万428世帯と、単身で生活する人は男女とも年々増え続けている。気兼ねない一人暮らしであれば、さもありなん、ズボラーとなるのも自然なことだろう。
そんなズボラー女子ブームの牽引役となったのが、このマンガ。『花のズボラ飯2』(秋田書店)は、単身赴任中の夫と離れて暮らす主婦・駒沢花のズボラな食生活を描いた料理マンガの最新刊。宝島社「このマンガがすごい!」2012年版オンナ編第1位、「マンガ大賞2011」第4位と、続けて賞を受賞している話題のコミックだ。花の料理のコンセプトは、とにかく「省略」「迅速」「大雑把」。料理マンガは世に数多くあれど、“手抜き”に重点を置いた作品は今までになかったのではないだろうか。花の一人語り&オヤジギャグが軽快で、楽しい。
ある日の仕事帰り、花は電車内で男子大学生の会話を立ち聞きする。自炊についての他愛もない会話だが、その中の「めんたい豆腐バターライス」に、花は激しく心惹かれ、その晩、実際に作ってみることに。<白米に明太子、バター、くだいた豆腐、きざみネギ、かつおぶしを乗せ、レンジで1分半加熱するだけ>という超カンタンなズボラ飯だが、「うんまぁ~~い!」と花はご満悦。明太子とバターの組み合わせが妙なる一品だ。
ほかにも白菜とベーコンをコンソメで煮るだけの「白菜ベーコン鍋」や、茹でキャベツを冷まし、きざみミョウガ、かつおぶしを乗せ、味ポンをかけただけの「ミョーキャベ」など、四季折々のズボラ飯17品が掲載されている。
実際、レシピどおりに料理するのは億劫なものだが、ズボラ飯には見栄も体裁も計量カップも必要ない。忙しい現代人にとって“ズボラ飯”は、合理的かつ経済的なライフスタイルなのだ。
(文=平野遼)
シュール過ぎるにもほどがある!? 名脇役・小池が大活躍『小池さん!大集合』

『小池さん!大集合』(復刊ドットコム)
藤子不二雄先生の漫画にちょいちょい登場してくる名脇役・小池さんを知っているだろうか。そう、ラーメンばっかり食べているあの人!
チリチリパーマにメガネ、フニャフニャの口(通称・カレーパンマン口)という特徴だらけのルックスでズルズルーッとラーメンをすすっている姿は、昭和生まれ世代ならば一度は目にしたことがあることだろう。いや、それどころか意外と平成生まれの人たちにも認知されているからビックリなのだ。
脳の半分くらいは藤子不二雄関連のことで埋め尽くされている藤子脳なボクは、すごく若い子たちと漫画の話をしていても「ルフィがさぁ」くらいの感覚で「小池さんがさぁ」みたいな話をしてしまいがち。それでも「あー、ラーメン大好きの!」と、ちゃんと反応してくれるからね。
小池さんが藤子漫画に初登場したのは『オバケのQ太郎』なので、おそらく1960年代頃のこと。その後の作品にも登場しているとはいえ、やはり『忍者ハットリくん』『パーマン』など古い漫画が中心なのに、今のヤングにまで認知されているというのはスゴイ! ある意味、ルフィや悟空級の国民的キャラクターと言っても過言ではないだろう(いや、さすがに過言かそれは!?)。そういや、シャ乱Qの「ラーメン大好き小池さんの唄」なんちゅう曲もあったしねぇ……(ま、あれはかなり表層的にしか小池さんを理解していないビミョーな曲でしたが)。
そんな小池さんですが、一般的に持たれているイメージとしては、いっつもラーメン食ってるだけで、大した活躍もしないのに妙に気になってしまう脇役キャラクター……といったところでしょう。確かに、ほとんどの作品でそんな役回りだというのは事実なんだけど、実は小池さんが主人公となり、あまりラーメンも食わず、アクティブに活動している漫画作品というのもあるのだ。……しかも、結構いっぱい。
で、なんとこの度、復刊ドットコムから、そんな小池さんが主人公となっている藤子不二雄A先生の作品(藤子・F・不二雄先生も『カイケツ小池さん』『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』という小池さんが主人公の作品を描かれているんですけどね)を一挙にまとめた作品集『小池さん!大集合』が刊行されたのだ。
どーしてこのタイミングで小池さん作品をまとめようと思ったのか、そもそも「小池さん」だけの作品集にどのくらい需要があるのか……いろいろと疑問は湧いてくるものの、小池さんファンにとっては(もちろん藤子漫画ファンにとっても)大歓迎な一冊と言わざるを得ないだろう!
なんせ、今回収録された『小池さんの奇妙な生活』『オレ係長補佐』『赤紙きたる』『ある暑中休暇』『ゲゲゲのゲー』『添乗さん』といった作品たちは、60~70年代にかけて発表されたものの、そのほとんどが単行本はもちろん、全集などにも収録されてこなかった作品たちなのだ。……やっぱり、パッとしないルックスのおじさんが主人公だけに、「単行本にするほどでもないか」とか思われてたのかなぁ? なので、どうしても読みたければ古本屋で掲載当時の雑誌を探し回るか、国会図書館にでも行くしかないという、なかなか過酷なハードルが課せられていた。そんな作品たちが新刊で手軽に読めるなんて、秀樹カンゲキッ!(昭和ノリ)
というわけで、藤子ファンを自称しているボクにとっても、ほとんどが未読の作品だったのだけれど、いざ読んでみると、これがまたイイ感じに奇妙な雰囲気を漂わせている怪作ばかりなの。時期的に、『オバQ』をはじめ『怪物くん』や『ハットリくん』など、子ども向けの作品が大ヒットし、その反動で『笑ゥせぇるすまん』『魔太郎がくる!!』といった、やや大人に向けたブラックユーモア路線の漫画を描きはじめていた頃なので、まあどの作品もブラック&シュール全開なのだ。
とくに『ゲゲゲのゲー』なんて、主人公のコイケさんがなんだかんだで酒を飲んで泥酔し、最終的に「ゲゲゲェー」とゲロ吐くだけというシュール過ぎるにもほどがあるストーリーなんだもん。しかも連載で、毎回そんなことやってるんだよ!? さすが藤子不二雄A(アヴァンギャルド)。
まあ、おなじみの小池さんが、売れない漫画家、うだつのあがらないサラリーマン、ツアー添乗員……とさまざまなシチュエーションに身を置いて、奇妙な出来事に巻き込まれていくという、この異色作品集『小池さん!大集合』。描く作品、描く作品がヒットを飛ばしていた脂の乗り切った時期のA先生が、メインストリームな作品ではとても描けない実験的な内容に挑戦している作品群としても、読む価値は高いのではないだろうか。
ただ『小池さん!大集合』と謳うならば、2000年代に入ってから突如としてゴルフ誌で連載がはじまった『ホアー!! 小池さん』も収録して欲しかった……(まあ、単行本が出てるけど)。この作品も「ゴルフ+小池さん+笑ゥせぇるすまん」といった雰囲気のかなり珍妙なゴルフ漫画で、精神集中するといきなり小池さんの顔が超リアルタッチ(超怖い!)に変貌したりと、いろんな意味でみどころの多い作品なので、未読の方は『小池さん!大集合』と併せてこちらもぜひ読んでもらいたいところ。「一体、小池さんって何者なんだぁーッ!?」と、ますます小池ワールドが混乱すること必至だ。
余談だけど、小池さんには実在のモデルがいるというのは有名な話。藤子不二雄先生がかつてトキワ荘に住んでいた頃の漫画家仲間・鈴木伸一さんがモデルとなっているのだ(後にアニメの道へ進み、アニメ界の大御所となっている)。

杉並アニメーションミュージアムの柱には、
A先生直筆の「小池さん」が!
しかし、なぜ鈴木伸一さんがモデルなのに「小池さん」なのか。実は、鈴木さんが居候していた家の大家さんの名前が「小池さん」だったのだ。なので、おバケのQ太郎に登場した時も「小池さんの家に居候している鈴木さん」という設定だったのだが、家の表札に「小池」と描かれていたため、ラーメン食ってるあのキャラクター自体が「小池さん」だと勘違いされ、それが定着してしまったということらしい。
ちなみにこの鈴木伸一さん、現在では杉並区にある「杉並アニメーションミュージアム」というアニメ博物館の館長を務めており、ちょいちょいミュージアムにも顔を出しているので、そこに通っていれば、もしかしたらあの「小池さん」の実物に会えるかもしれないぞ! ……それにしても鈴木さん、自分がモデルとなったキャラクターが「ゲゲゲェー」とゲロ吐きまくる漫画を読んで、どう思ってたんだろうなぁ~。
(文=北村ヂン)
シュール過ぎるにもほどがある!? 名脇役・小池が大活躍『小池さん!大集合』

『小池さん!大集合』(復刊ドットコム)
藤子不二雄先生の漫画にちょいちょい登場してくる名脇役・小池さんを知っているだろうか。そう、ラーメンばっかり食べているあの人!
チリチリパーマにメガネ、フニャフニャの口(通称・カレーパンマン口)という特徴だらけのルックスでズルズルーッとラーメンをすすっている姿は、昭和生まれ世代ならば一度は目にしたことがあることだろう。いや、それどころか意外と平成生まれの人たちにも認知されているからビックリなのだ。
脳の半分くらいは藤子不二雄関連のことで埋め尽くされている藤子脳なボクは、すごく若い子たちと漫画の話をしていても「ルフィがさぁ」くらいの感覚で「小池さんがさぁ」みたいな話をしてしまいがち。それでも「あー、ラーメン大好きの!」と、ちゃんと反応してくれるからね。
小池さんが藤子漫画に初登場したのは『オバケのQ太郎』なので、おそらく1960年代頃のこと。その後の作品にも登場しているとはいえ、やはり『忍者ハットリくん』『パーマン』など古い漫画が中心なのに、今のヤングにまで認知されているというのはスゴイ! ある意味、ルフィや悟空級の国民的キャラクターと言っても過言ではないだろう(いや、さすがに過言かそれは!?)。そういや、シャ乱Qの「ラーメン大好き小池さんの唄」なんちゅう曲もあったしねぇ……(ま、あれはかなり表層的にしか小池さんを理解していないビミョーな曲でしたが)。
そんな小池さんですが、一般的に持たれているイメージとしては、いっつもラーメン食ってるだけで、大した活躍もしないのに妙に気になってしまう脇役キャラクター……といったところでしょう。確かに、ほとんどの作品でそんな役回りだというのは事実なんだけど、実は小池さんが主人公となり、あまりラーメンも食わず、アクティブに活動している漫画作品というのもあるのだ。……しかも、結構いっぱい。
で、なんとこの度、復刊ドットコムから、そんな小池さんが主人公となっている藤子不二雄A先生の作品(藤子・F・不二雄先生も『カイケツ小池さん』『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』という小池さんが主人公の作品を描かれているんですけどね)を一挙にまとめた作品集『小池さん!大集合』が刊行されたのだ。
どーしてこのタイミングで小池さん作品をまとめようと思ったのか、そもそも「小池さん」だけの作品集にどのくらい需要があるのか……いろいろと疑問は湧いてくるものの、小池さんファンにとっては(もちろん藤子漫画ファンにとっても)大歓迎な一冊と言わざるを得ないだろう!
なんせ、今回収録された『小池さんの奇妙な生活』『オレ係長補佐』『赤紙きたる』『ある暑中休暇』『ゲゲゲのゲー』『添乗さん』といった作品たちは、60~70年代にかけて発表されたものの、そのほとんどが単行本はもちろん、全集などにも収録されてこなかった作品たちなのだ。……やっぱり、パッとしないルックスのおじさんが主人公だけに、「単行本にするほどでもないか」とか思われてたのかなぁ? なので、どうしても読みたければ古本屋で掲載当時の雑誌を探し回るか、国会図書館にでも行くしかないという、なかなか過酷なハードルが課せられていた。そんな作品たちが新刊で手軽に読めるなんて、秀樹カンゲキッ!(昭和ノリ)
というわけで、藤子ファンを自称しているボクにとっても、ほとんどが未読の作品だったのだけれど、いざ読んでみると、これがまたイイ感じに奇妙な雰囲気を漂わせている怪作ばかりなの。時期的に、『オバQ』をはじめ『怪物くん』や『ハットリくん』など、子ども向けの作品が大ヒットし、その反動で『笑ゥせぇるすまん』『魔太郎がくる!!』といった、やや大人に向けたブラックユーモア路線の漫画を描きはじめていた頃なので、まあどの作品もブラック&シュール全開なのだ。
とくに『ゲゲゲのゲー』なんて、主人公のコイケさんがなんだかんだで酒を飲んで泥酔し、最終的に「ゲゲゲェー」とゲロ吐くだけというシュール過ぎるにもほどがあるストーリーなんだもん。しかも連載で、毎回そんなことやってるんだよ!? さすが藤子不二雄A(アヴァンギャルド)。
まあ、おなじみの小池さんが、売れない漫画家、うだつのあがらないサラリーマン、ツアー添乗員……とさまざまなシチュエーションに身を置いて、奇妙な出来事に巻き込まれていくという、この異色作品集『小池さん!大集合』。描く作品、描く作品がヒットを飛ばしていた脂の乗り切った時期のA先生が、メインストリームな作品ではとても描けない実験的な内容に挑戦している作品群としても、読む価値は高いのではないだろうか。
ただ『小池さん!大集合』と謳うならば、2000年代に入ってから突如としてゴルフ誌で連載がはじまった『ホアー!! 小池さん』も収録して欲しかった……(まあ、単行本が出てるけど)。この作品も「ゴルフ+小池さん+笑ゥせぇるすまん」といった雰囲気のかなり珍妙なゴルフ漫画で、精神集中するといきなり小池さんの顔が超リアルタッチ(超怖い!)に変貌したりと、いろんな意味でみどころの多い作品なので、未読の方は『小池さん!大集合』と併せてこちらもぜひ読んでもらいたいところ。「一体、小池さんって何者なんだぁーッ!?」と、ますます小池ワールドが混乱すること必至だ。
余談だけど、小池さんには実在のモデルがいるというのは有名な話。藤子不二雄先生がかつてトキワ荘に住んでいた頃の漫画家仲間・鈴木伸一さんがモデルとなっているのだ(後にアニメの道へ進み、アニメ界の大御所となっている)。

杉並アニメーションミュージアムの柱には、
A先生直筆の「小池さん」が!
しかし、なぜ鈴木伸一さんがモデルなのに「小池さん」なのか。実は、鈴木さんが居候していた家の大家さんの名前が「小池さん」だったのだ。なので、おバケのQ太郎に登場した時も「小池さんの家に居候している鈴木さん」という設定だったのだが、家の表札に「小池」と描かれていたため、ラーメン食ってるあのキャラクター自体が「小池さん」だと勘違いされ、それが定着してしまったということらしい。
ちなみにこの鈴木伸一さん、現在では杉並区にある「杉並アニメーションミュージアム」というアニメ博物館の館長を務めており、ちょいちょいミュージアムにも顔を出しているので、そこに通っていれば、もしかしたらあの「小池さん」の実物に会えるかもしれないぞ! ……それにしても鈴木さん、自分がモデルとなったキャラクターが「ゲゲゲェー」とゲロ吐きまくる漫画を読んで、どう思ってたんだろうなぁ~。
(文=北村ヂン)
ホモビデオの清野さん
『東京都北区赤羽』でおなじみの漫画家・清野とおるによる、悶絶必死の爆笑コラム。
初めまして、清野(せいの)とおると申す者です。主に漫画やイラストを描いて生計を立てております。
さて連載1回目の今日は、わたくしのお名前を印象付けるためにも、「清野」という名字についてお話ししようと思います。
ある日ふと、こんな疑問を抱いたんですよ。
<日本には、自分以外にどんな「清野」がいるんだろう?>
早速、Yahoo!やGoogleやTwitter的なツールで、「清野」と入力し、調べてみることにした。出てくる出てくる、全国のありとあらゆる清野さんが。
有名どころの清野さんを数人挙げてみよう。
・清野 智秋(せいの ともあき)
プロサッカー選手。ジュビロ磐田やコンサドーレ札幌にて活躍。
・清野静流(せいのしずる)
漫画家。代表作『純愛特攻隊長!』『POWER!!』(ともに講談社)など。
・清野茂樹(きよのしげき)
プロレス実況を中心に幅広く活躍するフリーアナウンサー。
・清野芝香(せいのしこう)
100万人を導いた凄腕の占い師。通称「渋谷道玄坂の母」。「怖いほど当たる」と評判らしい。
・清野(せいの)ゆり
処女を売りにした人気AV女優。
・清野 智(せいの さとし)
JR東日本代表取締役会長。
若干一名、「きよの」が紛れ込んでいるけれど、この際そんな音訓的なことはどうだっていい。
全国の頑張っている清野さんたちを目にして、なんだかうれしくなった。俺も清野の端くれとして、彼らに負けないよう頑張ろう、と。
仮に俺の名字が「清野」でなく、「山田」や「鈴木」や「加藤」だったらここまで仲間意識は抱けなかったと思う。これは、「清野」という微妙な存在感の名字ゆえの仲間意識であろう。
彼らも「清野とおる」であるところの俺を意識して、同じように温かい目で見てくれているのだろうか? そうだったらうれしいなあ。清野冥利に尽きるなあ。
……ところで、長年気になりまくっている、ミステリアスな清野さんがいる。
それが、ホモビデオの「清野さん」。
この方、学生時代にバイト感覚で数本のホモビデオに出演したようなのだが、そのビデオがゲイの間で“伝説”として語り継がれ、今なおカリスマ的な人気を誇っているようなのだ。
一体どんなビデオなのか、気になって探しまくったのだが、なかなか見つけることができず、とりあえずネット上で「清野さん」に関する情報を集めることにした。
出てくる出てくる、不穏な情報がわんさかと。
・基本、常に無表情らしい。
・時折、乳首が陥没するらしい。
・小5で初手淫したらしい。
・ビデオの中で、何度も「アツゥ~イ!」と絶叫しているらしい。「清野=アツゥ~イ!」という図式が成立するほど、ファンの間では定着しているらしい。
・インタビュー内で、本当はラグビー部なのに、アメフト部と微妙なウソをついたらしく、それがキッカケで、ファンの間では「清野さんはウソつきだ!」と批判されているらしい。
・ビデオにはバイト感覚で出演しただけで、本人は女好きらしい。
・とにかくゲスいらしい。なぜゲスいのかは不詳だが、ファンの間では相手をののしる時、「清野さん並にゲスい!」と揶揄されるほど。
・チ○ン○ポは、根元から図って16センチと、大きめらしい。
・「伝説の雨天全裸兎跳び」を決行したらしい。
断片的であやふやな情報ばかりだが、俺の中で「ホモビデオの清野さん」に対する興味は日に日に大きくなっていった。なぜ、無表情の清野さんが、「アツゥ~イ!」と絶叫したのだろうか? 「伝説の雨天全裸兎跳び」ってなんなんだ?
そんなある日、一通のメールが届いた。上記で触れた、フリーアナウンサーの清野茂樹さんからだ。
「同姓であり、漫画家として活動されている清野とおるさんのこと、以前から注目していました。よければ今度、僕のラジオ番組にゲスト出演してくれませんか?」
う……うおおお! 俺のことをちゃんと意識してくれていた清野さんが、いたー!! 俺はテンションが上がり、なんともうれしい気持ちになった。
あがり症で口下手の俺がラジオ、しかも生放送だなんてとんでもない話だったけれど、清野アナからのお願いならばと、快諾した。
打ち合わせを兼ねて、場末の居酒屋で清野アナと初顔合わせ。
やはり清野アナも、ホモビデオの清野さんのことがずっと気になっていたようで、俺たちはすぐに意気投合した。
気づいた時には、熱燗を飲みながら「アツゥ~イ! アツゥ~イ!」と言っている俺と清野アナがいた。
そして、清野さんのラジオ『真夜中のハーリー&レイス』(ラジオ日本)に生出演。
コアなプロレスファンのためのプロレス番組にもかかわらず、話題は主に「ホモビデオの清野さん」のことで終始した。
リスナーからは、「プロレスについて話せ!!」とか「プロレス知らねえ奴をゲストに呼ぶな!」とか、大変厳しいクレームが来たみたいだけど、そんなことは知ったこっちゃないのだ。
ラジオ出演から数カ月後。
ひょんなキッカケで、「ホモビデオの清野さん」の伝説的ホモビデオをついに入手した! どういうルートで入手したかって? それは極秘事項だ!
期待に胸躍らせ、ビデオを再生させる。
清野さんとは、一体どんな人で、どのタイミングで「アツゥ~イ!」って叫ぶのだろう?
清野さんは、スリムな筋肉質で、予想に反してなかなかのイケメンであった。ウワサ通りの無表情で、淡々とインタビューに答える清野さん。腹筋させられたり、バーベルを持ち上げさせられたり、手淫をさせられたりしていたものの、男性と絡み合ったりするシーンはなかった。清野さん単体のイメージビデオといった作りである。
土砂降りの中、どこかの狭~い屋上で、全裸で兎跳びする清野さん。「伝説の雨天兎跳び」ってこれかよ……。
そしてついに、「アツゥ~イ!」の謎が解けた。それは……。
全裸でチングリ返しされ、肛門に熱々のローソクをたらされまくったのだ……。
苦悶の表情を浮かべ、「アツゥイ! アツゥイ!! アツゥ~イ!!!」と何度も絶叫する清野さん。本気で嫌がっている様子が伝わってきた。
「アツゥイ! アツゥ~イ!」「すいまへ~~ん」と、なぜか最後には涙声で弱々しく謝罪していた……。
気づいた時には、俺は涙を流しながら爆笑しており、すっかり清野さんのファンになってしまっていた。
今度、清野アナにこのビデオを見せにいくことにしよう。清野アナなら、きっと気に入ってくれるはずだ。
全国の微妙な存在感の名字を持つ皆さんも、一度、ご自分の名字を検索してみてはいかがでしょうか? 妙な同姓さんがいるかもしれませんよ。ウヒヒのヒー。
(文・イラスト=清野とおる)
●せいの・とおる
1980年生まれ。東京都板橋区出身。地元・赤羽に生息する奇妙な人々を生き生きと描いた漫画『東京都北区赤羽』(Bbmfマガジン )が大ヒット中。