「死んでも契約解除できない」漫画家・佐藤秀峰がkindleを訴えた裏側を語る

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 今ではごく当たり前に書籍や漫画、専門書まで読めるようになった電子書籍。その一方で作家と配信側との契約トラブルが後を絶たない。勝手に商品を削除するなど、横暴ともいえる電子書籍配給側のやり口に、あの男が動いた。『ブラックジャックによろしく』や『海猿』で知られる漫画家の佐藤秀峰氏だ。  このたび佐藤氏が上梓した『Stand by me 描クえもん』では、新人漫画家の主人公にそんな業界のありとあらゆる理不尽が降りかかる。先日、kindleを運営するAmazonを提訴した佐藤氏だが、電子書籍が台頭した昨今をどう見つめるのか。 ――過去に佐藤さんが著した『漫画貧乏』を読んだ時のことを思い出しまして、あそこで扱ったことを、実際に漫画化した印象を受けました。デビュー当時から漫画家の実情を発信することに、こだわり続けている理由をお聞かせください。 佐藤秀峰(以下、佐藤) 漫画家の実情を描いているという部分は確かに共通しているかもしれませんね。自分のいる業界にまったく疑問を感じないという人はいないと思うんです。だけど、大抵は自分の名前で問題提起しませんよね。それで自分の立場を危ういものにしたくないし、漫画家だったら仕事を干されても困ります。だから、折り合いをつけていくのが大人なのでしょうが、僕は子どもなので。 ――タイトルは、佐藤さんが付けたんですか? 佐藤 そうですね。当時、『STAND BY ME ドラえもん』(2014)という映画がやっていたんで、じゃあ、「Stand by me描クえもん」でいいかくらいで。適当です。適当にやりたいんです。描き始めたのも、WEB雑誌を自分たちで作ろうと思って、そこで何か連載しようと思ったのがきっかけですね。何か描くなら私小説っぽいものが取材もいらないし楽でいいよねと。 でも、こういう題材を扱うと敵に回さなくてはいけなくなる人も出てきますし、適当を貫くのは結構しんどいんですね。 ――『描クえもん』に、どこまで実体験が含まれているんだろうかということは、この漫画を読んだ読者であれば、誰でも気になるところだと思うんです。 佐藤 フィクションが多いです。当時、僕は彼女とかいなかったですしね。作品的に考えた時に、自分の歴史だと『海猿』が連載デビューで、次に『ブラックジャックによろしく』という作品があって、それを丁寧に時間軸に沿って追っていったら、20年間の自分のことを描かなきゃいけない。ダラダラして読者が退屈だろうなとか思ったんで、『海猿』と『ブラックジャックによろしく』のトラブルをまとめてブチ込みました。 ――あと、 やっぱり『ハードタックル』かなと思いました。『描クえもん』1巻の「スポーツ漫画をとりあえず描いとけば〜」的な流れとか。 佐藤 あんな嫌な言い方はされなかったですけど、僕も担当さんに「今、スポーツものがきている」とか、「柔道漫画と卓球漫画があって、もう1本あっても載る」とか、「こういうのはあるから、描いても載らない」とか、そういうことは言われました。例えば、僕がSFやりたいんですと言っても、もう通らない。向こうがやりたいのを「いいですね」と言ってやるしかない (笑)。担当さんに「ラグビーモノで連載しよう」って言われてネームを描いたら、ある日、副編集長がやってきて「海上保安庁モノを描け」と。取材に数回連れて行かれましたが、数回じゃ何もわからない。本を読んだり自分で勉強してなんとか連載にこぎ着けて、それで評判になった頃には「アレはオレが作った」って人がワラワラ出てきて……。「アレオレ詐欺」って呼んでいますけどね。そんなことをもうちょっとわかりやすく娯楽的に描いている感じです。 ――『描クえもん』2巻以降は、大変なことになるんですか? もう既に1巻を読んで地獄だと思ったんですけど。
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佐藤 そうですか? 別に殴られたり、お金取られたりはしていないし、檻の中に入れられて、死なない程度のエサは与えられているじゃないですか。檻から出ようとすると「せっかく飼ってやっていたのに逆らうのか!」ってコテンパンにされるというだけで。2巻以降が本番ですかね。ある程度、過去の自伝的な話を描き切ったところで、これからの話をしていきたいと思っています。紙を離れ、電子書籍の話に向かっていく予定です。おっさんの正体が徐々に明らかになり、人間関係も盛り上がっていって……。 ――2巻以降も楽しみですね。『描クえもん』で印象的なものとして、契約書のシーンがありますが、契約についての状況は変わっていないんでしょうか? 佐藤 僕は散々言ってきたので「あいつはうるさい」って、周囲がわかっているので(笑)。言わなくても向こうから契約書のドラフトを持ってきてくれる。出版契約でも電子配信契約でも、それを叩き台にして内容を詰めるだけなので、楽といえば楽ですね。でも、他の作家さんはどうなのかな……? 昨日もアダルト系の漫画家さんがここ(事務所)へいらっしゃったんですよ。IT系企業と執筆契約をしたそうで、「こんな契約書にハンコを押しちゃったんだけど大丈夫ですか?」ってご相談をいただきました。で、契約内容を伺ったんですけど、とても酷いですね。まず、契約期間が「著作権保護期間」なんです。その人が死んでから50年とかなんですよ。生きている限り契約解除できなくて、死んでも解除できない。 ――違法な気もしますけど……。 佐藤 行政書士に確認したんですが、問題はあるけど、双方の合意があれば違法とまでは言えないという見解でした。契約期間は今話した通りで、作品の独占的な使用を認めるって内容。しかも、印税は0%。事実上、著作権譲渡と変わらないのに、そんな言葉はどこにも書いてない。ハンコを押すとページ数千円の原稿料で作品を盗られてしまうんです。その方は、20年以上やっている方だったんですけど、そんな契約書が普通に取り交されています。昔は漫画に関わる人たちというのは出版社が中心でした。今はIT系企業が漫画アプリを作って、そこでオリジナルコンテンツを作りたいだとか、出版以外の人たちが入ってきているんで、状況はむしろメチャクチャになってきている気がします。IT系は漫画部門がうまくいかない時は、極論すれば切り捨てればいいと思っているんじゃないですかね?事業を継続していく根本的な覚悟がないから、平気で無理難題を言ってくる傾向はありますね。出版社だけの頃は、不平等な契約条件を押し付けられることはあっても、もうちょっとわかりやすかったです。 ――電子書籍のシステムが整備されてきて、収入面と経済面、環境に変化があったと思うのですが、それによって取り組み方が変わりましたか? 佐藤 お金の話をすると、去年は2億円以上を電子書籍で稼いでいます。電子書籍様々というか、紙と完全に逆転していますね。 ――紙はどれぐらいなんでしょうか。 佐藤 紙は原稿料と印税収入を合わせて、2,000万弱じゃないですかね。 去年は紙単行本が出なかったので特に低かったです。 ――2億円以上と聞いて、驚いたんですが、どのように収益を上げているのですか。 佐藤 ただ電子書籍を売るだけではダメで、キャンペーンを組んだり運用が重要ですね。今は他の作家さんの取次もやっていますので、収益としてはそちらも大きいです。電子書籍業界全体でいえば、Kindleが圧倒的に強くて、他にも対立野党がいくつかあるという感じです。各ストアからはKindleができないようなキャンペーンをやろうという提案も多いですが、そうするとKindleは大国にしかできないようなことをしてくる。少し前ですが、Amazonはマーケットプレイス出品者に、競合ECサイトより有利な価格・品ぞろえで出品させるという「最恵待遇条項」を盛り込んだ契約を結ばせていたということで、公正取引委員会が入りました。電子書籍はどうなるのかな? と見守っているところです。今、僕はAmazonに対して訴訟を提起しています。彼らは自分たちに都合が悪いことが起きると、契約条件の変更を求めてきたり、それに従わないとコンテンツの配信を一方的に停止したりします。トライ&エラーのフェーズだと言われればその通りですが、ムチャクチャですよ。海賊みたいな中間業者もウヨウヨいますし。ただ、電子書籍は未発達なシステムなだけに、やり方によっては儲かるという感じでしょうか。 ――紙と電子書籍の立場がここ10年で逆転しましたが、この先さらに10年、漫画はどのように変化すると思いますか?
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佐藤 まず、販売環境について言うと、今より電子書籍のストア数は減っていくと思います。少しずつ統合されていくつか大きいところが決まってきて、「今さら新規参入してもな……」という流れになっていくのかな。そうなった時に、「Kindle一強」になると、当然、足元を見てくるでしょうし、作家や出版社にとってはつらい時代がくると思います。10年後、各ストア間で健全な競争ができる環境になっていれば良いですね。僕がAmazonを訴えるのも、彼らが憎いからじゃなく、フェアであってほしいからなんですよ。フェアじゃない業界は長続きしない。現在の紙業界の衰退は、言ってしまえば殿様商売を続けてきたツケじゃないですか。うまくやれば電子書籍の主役になることもできたのに、既得権益にあぐらをかいていたから主役を他に奪われ、結果的にコンテンツの衰退も招いた。電子書籍業界には、紙業界と同じ失敗を繰り返さないでほしいんです。電子が失敗したら次の主役は現れないかもしれない。そうなると漫画はもうダメですよね。  作家側の制作環境でいうと、先程も言った通り IT系企業の参入で契約関係が不安定になってきています。権利関係もシビアになってきていますが、原稿料が値崩れを起こしていますね。僕は新人の頃は、最低原稿料は7~8000円くらいでした。今は安いところだと1話5万円とか、もっと酷いところだと一次メディア掲載時の原稿料は0円で、書籍化された場合のみロイヤリティが配分される仕組みだったり……。経費を安く抑えられて企業は都合が良いのかもしれませんが、結果的に作品に何が起こっているかといえば、お金がないから作画にコストをかけられない、取材もできないということで、背景描写のない真っ白な原稿、作家の想像力に頼ったストーリーが増えています。お金がなくてもアイデア次第で漫画は面白くできるというレベルじゃない。世界的にエンターテインメントの質が向上している中で、漫画の質が低下しているのだとしたら、漫画はますますローカルなものになっていくんじゃないかな? のらくろからアキラまでマンガの制作コストは上がり続け、今はまたのらくろに戻っていっている。時々、僕が今20歳だったら漫画家を目指していたかな?って考えるんです。作品発表の場所が増えて、誰でも漫画家を名乗りやすくはなったけど、誰も儲かっていない。儲かっているのはごくごく一部のヒット作家のみ。若者の夢に依存して成立しているようでは先が短いでしょうね。 ――『描クえもん』は、『ブラックジャックによろしく』とか『海猿』のことを思い出して、とお話されていましたが、ちょっと前なんですか? それとも完全に現代なんですか? 佐藤 時代設定的には2010年くらいにしています。作品内でも電子書籍はもうあって、そこから5 年くらいを描き、今に追いついてその先の時代を描きます。今ここで話せないことはフィクションの中で描いていきますよ。Kindleの訴訟についても、作品内で触れるかもしれませんね。Kindleを倒すような展開になれば面白いかな? ――Kindleを倒すという前例を作ることで、他の不当な契約がなくなればいいですね。 佐藤 えーと、作品の話と現実の話が交互にくるので、スタンスの切り替えが難しいですね……。現実の話をすると、これまでは漫画家と出版社の間であまりフェアな取引きができなかったという気持ちがあるので、電子が出てきた時は、漫画家が作品を独自に運用できるって、すごく夢を感じたんですよ。でも、いろいろ仕組みがわかってくると、紙以上に がんじがらめで儲からないようにできているんですよね。「電子書籍よ、お前もか!」って。  紙と違うのは先ほども言った通り、電子書籍は未発達なシステムなだけに、穴というか水が漏れている場所がいっぱいあるんです。そこを突くとお金がドバドバと出てくるというか。僕は儲かったら割と公表するようにしているんです。「今月1億儲けました」って公表していくことで、このシステムにはこういう弱さがあるというのを周知しているイメージかな? 昨年は講談社が社員を集めて「佐藤秀峰がやっているのはこういうことだ」って説明会が開かれたそうです。僕が何か公表すると「あいつがやっているのはこういうことだ」って解説したがる人が必ず出てくるんですけど、それこそ思う壺ですね。僕が周知しているのは、実はシステムがフェアじゃないと感じた箇所だけなんです。それで何がしたいかというと、フェアなシステムに切り替えていってほしい。ストア側が自分たちだけに有利に働くシステムを作ったけど、それには穴があった。じゃあ、みんなで穴をつつけば不平等なシステムは立ち行かなくなるだろうと。僕のフォロワーが勝手にシステムを壊してくれる。 ――ここを攻めろ! と。 すごく明快な話ですね。電子書籍については聞きたいことが聞けました。お恥ずかしい話なんですが、Amazonの「Kindle Unlimited」が出てきた時は、すごくありがたいなと思ったんです。でも、本が読み放題で月額900円は、やっぱりおかしい。 佐藤 適切に運営してくれればいいと思います。今は動画やゲームが無料で観られたりプレイできるものがいっぱいある。そういう時代に漫画は一時間もかからず読み終わって500円と思うと手が出ない。読み放題に向かっていくのは自然じゃないですかね。 ――問題はあの仕組みというよりは、それを適切に運営するかどうかにあって、それを問うということですね。
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佐藤 彼らは事前通告も事後報告もなくある日、商品を削除しちゃうんですよ。彼らに都合が悪くなってしまうとある日きます。 ――それが契約違反にならない契約に なっているのでしょうか。 佐藤 契約違反だというのが僕の考えですけど、ストアは「何を売るかを決める自由はある。サービスが赤字で立ち行かなくなったら、ストアは閉鎖する自由だってある。その時はコンテンツ全部の取り扱いをやめるわけだから、そういう裁量をストアは持っているんだ」って、主張してくるんじゃないかな。僕らは契約に従って適切に商品を卸しているんで、契約に従って売ってくださいよと思っているんですけど、彼らは契約を守りたくなくなったら一方的に売るのをやめてしまう。 ――違法のように聞こえます。 佐藤 独占禁止法やいろいろなものに触れそうですけど、契約書は弁解の余地があるような文言になっていますね。こちらがそれを指摘して文言の変更を求めたところで、じゃあ、契約しませんとしかならないんです。とはいえ、Kindleの売り上げは大きいですから、契約してから公正取引委員会に連絡するのが賢いやり方かもしれませんね。 ――『描クえもん』にそういうのが全部入るとかなり画期的な漫画になりますね。 佐藤 そういったことを肌で感じながら、内情がわかっている漫画家は僕しかいないと思うので、自分にしか描けない漫画が描ければいいかなと思っています。 (取材=綾門優季[青年団リンク キュイ])
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“無礼すぎる”フジテレビに「作家NG」が止まらない! 佐藤秀峰、池井戸潤に続き、万城目学まで……

無礼すぎるフジテレビに作家NGが止まらない! 佐藤秀峰、池井戸潤に続き、万城目学まで……の画像1
映画『本能寺ホテル』公式サイトより
「ドラマ班の人たちは『またか……』と頭を抱えていました。漫画家の佐藤秀峰先生、小説家の池井戸潤先生に続いて、3人目ですからね。うちは本当に、作家さんの扱いがヘタなんですよ」(フジテレビ関係者)  綾瀬はるかと堤真一のW主演で公開中の映画『本能寺ホテル』。鈴木雅之監督で、綾瀬が主演して興行収入16.2億円を記録した『プリンセス トヨトミ』のキャスト・スタッフが集結したことで話題性も高かった。 「それが昨年末、作家の万城目学先生がTwitterで『映画のために苦労して書いたオリジナル脚本を全ボツにされたと思ったら、その内容が完成された映画でパクられていた』などとツイートしたんです。作品名は出していませんが、これが『本能寺ホテル』なのは間違いありません。その後、『週刊文春』(週刊文春)など各メディアが後追いしましたが、万城目先生はフジテレビに対して『もう自分の原作を使うな!』と“絶縁宣言”したそうです」(芸能事務所関係者)  実際、撮影中も台本がなかなか仕上がらず、綾瀬や堤をヤキモキさせたという。 「もともと、2人とも万城目さんの脚本ということで出演を決めたんです。それが、フタを開けてみたら先生が途中で降りるわ、本は出てこないわで、現場は騒然となっていたそうです。口には出していませんでしたが、役者さんはみんな、不満そうな顔をしてましたよ」(映画スタッフ)  フジテレビは08年にも、ドラマ『鹿男あをによし』で万城目学の原作を使用するなど、関係は良好だったのだが――。 「一部の人間が礼儀を欠いて、自分たちに都合のいいように話を進めるものですから、原作者が怒るんです。佐藤先生の『海猿』も、先生に相談なく関連書籍を出したことで怒られて、池井戸先生にも『ようこそ、わが家へ』の主人公を勝手に父親から息子に替えたことで怒られて……。フジテレビは本当に反省しない局だと、業界で話題になってますよ」(芸能事務所関係者)  今のままだと、フジにNGを突きつける作家はこれからも増えそうだ。

『ラブひな』赤松健が漫画無料公開 絶版マンガ図書館構想を佐藤秀峰も応援

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公式ブログ「(株)Jコミの中の人」より
 出版業界は大手10社中8社が減収、2社が赤字という出版不況と、電子書籍リーダーの誕生により、一大パラダイムシフトを迎えている。そんな中、『ラブひな』『魔法先生ネギま!』で知られる漫画家・赤松健が、作者の許諾を得て絶版漫画を無料公開し、その広告収益を作者に還元する新サービス「Jコミ」を立ち上げた。同サービスのブログで次のように明かした。  「スキャンされた漫画を収集し、作者の許諾を得て無料公開する。その漫画の中に、広告を入れる。そして、その広告料は作者にお渡しする......と。この方式なら、読者は、合法的に、しかも無料で漫画を読めちゃう。ダウンロードした作品を、お友達にあげちゃってもOK。中に入っている広告がクリックされればされるほど、作者にお金が入る。巻末にアフィリエイトのページを付けて、その作者の新作が買えるようにすれば、新作のプロモーションにもなる。もちろん、そのアフィリエイト料も、作者に行くようにする」  作者の許諾を得て、漫画をスキャンした画像をアップロードし、広告付きで公開することで、"絶版マンガ図書館"を構築。許諾を得た作品限定のため、動画投稿サイト・ニコニコ動画やYouTubeのように、ユーザーもアップロードに参加し、ラインナップの増強を図るプランだ。単行本にならなかった漫画や、単行本未収録の作品なども揃えていく予定。赤松の『ラブひな』全14巻を11月26日から公開し、ダウンロード数、クリック数を調査する。  絶版となった作品は、中古書店などで取引されても、当然作者に利益が還元されるわけではない。だが、広告を付けて読者に公開することで、その広告収入を作者に還元し、赤松は1円も利用料は取らないという。還元される金額は、複数のネット広告業者に相談したところ、「全ての広告ページが5,000クリックあるのなら、広告1ページに対し、10~30万円くらいで販売できるかもしれないそうです。そうなると、1作品(1巻)約70~80万円くらいに」と明かしている。読者、作者、双方にWIN-WINなサービスと言えるだろう。  漫画の無料公開と言えば、『ブラックジャックによろしく』『海猿』の漫画家・佐藤秀峰が9月に、自ら手がけるオンラインコミックサイト「漫画 on Web」で、『海猿』を無料公開。当初、1カ月間の予定だったが、現在も公開を続けている。同サイトによると、公開時から数十億規模のページビューとなり、10月の売り上げは100万円程度となったことを明かしている。さらに、「週刊漫画TIMES」(芳文社)に連載を再開させた『特攻の島』の第1巻のほか、『ブラックジャックによろしく』も無料公開し、同作はユーザーに英訳してもらう"『ブラックジャックによろしく』英訳プロジェクト"をニコニコ動画の画像版であるニコニコ静画で行っている。意欲的な挑戦を続ける佐藤は赤松の「Jコミ」について、Twitterで次のようにサポートを宣言した。 「赤松さんの件は、頑張って欲しいし、僕の作品でよければ、zipでデータを提供しても構わないですけど、あれですね。まず、サーバをどうするのか心配ですね」  自らデータを提供を辞さないことを告げ、膨大なアクセス数が予測されるサイトのサーバーが懸念材料になることを指摘した佐藤。やはり、この点がサイト運営の一番の肝となるようだ。これらのトライアルの背景には、P2Pなどによる、世界的な漫画の違法配信に苦慮し、アクションを起こした面もある。11月12日に開催されたイベント「電子書籍・コミックサミット in 秋葉原」では、集英社の鳥嶋和彦専務取締役が出版社37社が共同して、北米の漫画ファンに向けた総合ポータルサイト「Jマンガポータルサイト(仮称)」の設立を宣言。出版社側も配信への対応を行っている。過渡期を迎える出版業界が、今後どのように収益を確保していくのか、注目だ。
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【関連記事】 佐藤秀峰が漫画『海猿』全話を無料公開 漫画界の新たなスタンダートとなるか? 「マンガを正当なビジネスにしたい」マンガ家・佐藤秀峰 爆弾発言の裏にある思い(前編) 電子書籍なのに手売り販売? ウワサの「電書フリマ」で電子書籍の最前線を体験レポート

佐藤秀峰が漫画『海猿』全話を無料公開 漫画界の新たなスタンダートとなるか?

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佐藤秀峰氏
 「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)連載の『新ブラックジャックによろしく』を7月に完結させた漫画家・佐藤秀峰。映画『THE LAST MESSAGE 海猿』が9月18日に公開される中、佐藤は原作となった自身の漫画『海猿』の全119話を、自ら手がけているオンラインコミックサイト『漫画 on Web』で、1ヵ月間の期間限定で無料公開することを発表。サイトの日記で次のように明かした。 「オンラインコミック版「海猿」全119話を、本日から1ヶ月の期間限定でどーんと無料公開いたします。読者登録の必要もありませんので、こちらからどんどん読よみください」(原文ママ)  さらに、佐藤は『海猿』の1話をYouTubeでも公開。「漫画のコマを1コマずつ切り取って、多少の演出や調整を行い、紙芝居風(?)に閲覧できるようになっています」と説明している。漫画のYouTubeでの公開をめぐっては、「週刊少年ジャンプ」(集英社)掲載の『ONE PIECE』などを違法に投稿したとして、著作権法違反容疑で6月に名古屋市中区の男子中学生が逮捕された。佐藤は自ら公開しているが、彼はその点についてTwitterで次のように見解を示した。 「漫画の違法アップロードが時々問題になるけど、僕は規制をするより、その影響力を宣伝等に利用したほうが建設的だと思います。規制は読者のためにも作品のためにもならないし、ならば規制する側の自己満足」  規制をすることに対しての独自の価値観を明かした佐藤。さらに、「規制が読者の為にならない、ってどういう論拠ですか?」というあるユーザーの質問には、以下のように答えた。 「違法アップロードによって、単行本の売り上げが落ちたと証明するに足るデータがないので、であれば、読者が作品に触れる機会を奪うだけですよね」 「違法であることも多いと思いますが、現行法でも著者が了承すれば合法なので、考え方次第ですね。後、お金を出した人だけを『読者』とすると、図書館の利用者も『読者』ではないことになってしまいますし、読書文化が失われれば、結果的に損失は大きいと思います」  『漫画 on Web』では、手がけた作品を1話10円から販売し、『ブラックジャックによろしく』が「モーニング」(講談社)から「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)への移籍するてん末も暴露してきた佐藤。さらに同サイトでは、『ダービージョッキー』『日本沈没』などで知られる漫画家・一色登希彦との合作漫画の製作ノートも公開するなど、漫画の新たな可能性を探っている。作品の無料公開について、ある出版社の編集者は次のように明かした。 「iPad、Kindleなど電子書籍リーダーの誕生により、出版社は未曾有の岐路に立たされる中、作品の一時的な無料公開は増えています。無料ビジネスから収益を生みだす仕組みを説いた書籍『フリー <無料>からお金を生みだす新戦略』は、1万人限定で無料公開して話題をさらい、ベストセラーとなりました。また、五木寛之の『親鸞』上巻、渡辺淳一の『死化粧』も期限付きで無料公開され、世間の耳目をさらいました。漫画界では『モーニング・ツー』(小学館)が全ページ無料試し読みを行い、一時休止していましたが、9月22日発売号から再開を決めています。一時的に無料で公開して注目を集めるのは、今後出版界でのスタンダードとなるかもしれません」  基本的なサービスを無料で提供し、さらに高度な機能を課金することでまかなうビジネスモデルである"フリーミアム"。過渡期を迎える出版界で、コミックでは12巻もある『海猿』全話を無料公開する佐藤の挑戦が、今後どのような成果をもたらすのか注目だ。 ●漫画 on WEB http://mangaonweb.com/
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【関連記事】 「マンガを正当なビジネスにしたい」マンガ家・佐藤秀峰 爆弾発言の裏にある思い 『ブラよろ』佐藤秀峰 有料公開で1日10万円売上!"脱・出版社"へ加速 佐藤秀峰、出版社にブチギレ!! 『ブラよろ』カバーイラストをボイコット

「マンガを正当なビジネスにしたい」マンガ家・佐藤秀峰 爆弾発言の裏にある思い(後編)

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前編はこちら ――マンガの新たな表現の場を求めて、立ち上げられた『漫画 on Web』について、改めて説明をお願いします。立ち上げたきっかけを教えてください。 佐藤 紙媒体が斜陽化していて、次のメディアを考えたのがきっかけです。自分でサイトを作るのは、金も労力もかかるのですごく面倒で、誰かに作って欲しかったんですけど、誰も作ってくれないんですよね。出版社が動いてくれたら楽だったのに全然動かないから、結局自分で作りました。 ――出版社が作っても莫大なマージンを取りそうですよね。現在アクセス数は1日どの程度でしょう? 佐藤 詳細は言えませんが、アクセスは1日数千。日刊サイゾーで取り上げられて、「Yahoo!トップニュース」になった時で数万ですね。収支は、赤字ではないんですが、平均でランニングコストとサイト用のスタッフ1人の人件費を払って利益が多少出る程度ですね。売り上げも月に数十万円。100万円はいかないですね。昨年9月の有料サービスを開始して、最初は一気にポイント(マンガの閲覧はポイント制で300ポイント315円から)を買ってくれて、初日は10万円売り上げたんですが、そのまま100万円まで行くかと思ったら、落ち着いちゃいましたね。 ――サイトには読者の掲示板もありますが、読者の反応はいかがですか? 佐藤 「意外と読める」という人もいれば、「紙の方がいい」という人も。デジタルになって初めて僕のマンガを読んだ方もいて、年配の方から「マンガコーナーに行って自分がマンガを選んでいる姿が恥ずかしい。それがパソコンだと誰にも探すところを見られなくて30年ぶりにマンガ読んだ」という意見もありました。僕自身はネットで読むことに抵抗はなくて、机の前にパソコンモニターがあって、一日中、メールや資料をパソコンで見ながら作品を描いているので、不便じゃない。でも、マンガを読むためだけにパソコン立ち上げると考えると面倒かもしれませんね。 ――『漫画 on Web』には、『ダービージョッキー』『日本沈没』のマンガ家・一色登希彦、『森繁ダイナミック』のマンガ家・桃吐マキルさんも参加されています。出展者はDEBUTコースなら月額5,250円のみと低料金ですね。 佐藤 システムは正直にやっています。出展するマンガ家さんからは売り上げの手数料は1円ももらってないし、掲載は審査もしていないので誰でもOK。誰でも自由に登録して使ってくださいという形式で、小説も写真集も出展可能です。1話あたりの値段や、読者が閲覧できる期間は、作家さんが自由に決められて、1回購入で最大366日閲覧可能。僕の作品は366日ですね。『ブラックジャックによろしく』は旧作は1話10円。マンガは1冊10話としたら、1冊100円で妥当な値段かと。新作は1話30円で1冊分に相当する10話買うと300円。紙の本より安くないと意味がないし、BOOK OFFと同じ値段じゃないと競合しない。出展はこちらから営業は一切していないので、興味を持ってくれた方に自由に使ってもらえる魅力的なシステムにしたいですね。 ――『漫画 on Web』では、佐藤先生のアシスタントも作品を発表されていますね。テーマを基にネームの出来を競う"ネーム対決"を行っています。 佐藤 アシスタントにはプロになって欲しい。マンガ家は一代限りの才能なので、僕の才能がなくなったら会社も潰れ、みんな雇えなくなってしまう。長く面倒は見られないので、アシスタントには最長3年で辞めてもらうという契約にしています。プロになって辞めてくれるのが一番ですが、3年やって才能の芽が出なければ、若いうちに田舎に帰るのもいいんじゃないかと思うし。 ――佐藤先生のアシスタントからプロになった方もいらっしゃるんでしょうか? 佐藤 去年は5人辞めて、4人連載を持っています。吉田貴司は「モーニング・ツー」(講談社)で『フィンランド・サガ(性)』を、梅澤功二朗は「ヤングジャンプ」(集英社)で『ヤナガオート』を連載中。白鳥貴久は「ヤングキング」(少年画報社)で『タイガーズ』連載して、携帯コミックでも活躍。まぁびんこと藤井五成は「月刊スピリッツ」(小学館)で『DRAGON JAM』が始まりました。こんなにアシスタントがマンガ家になっているのは日本でウチだけだと思います。 ――それは佐藤先生に若手を育成するメソッドがあるのでは? satoshuho_sashikae.jpg 佐藤 才能を拘束しないで、ある程度のお金とゆとりを与えることですかね。週5日、1日12時間拘束で働いてもらいますが、年に2~3カ月有給休暇がある。その間も給料払うけど、「しっかり自分の作品描いてね」と言っています。ボーナスも4カ月分出してます。 ――そんな好待遇を記事にしたら、アシスタント応募殺到しますよ(笑)。佐藤先生にとってマンガ家のプロになる条件は? 佐藤 描くことだけ。雑誌に載ってる人は、描いてる人ですよ。描かないで載る人は一人もいない。マンガ家になれたのは、いっぱい描いた人だけです。なれなかった人は途中で描くの辞めますからね。プロになるまで描いたからなれた。ちゃんと考えながら1,000枚原稿描けば絶対なれますよ。その前にみんな諦めちゃうだけ。 ●改めて問う、佐藤秀峰にとってマンガを描くことの意味とは? ――では、改めてお伺いします。佐藤先生にとってマンガとは何でしょうか? 佐藤 「マンガとは?」ってあんまり聞かれないですよ......(長い沈黙)。マンガはなくてもいいものだと思うんです。マンガのない国もいっぱいあるし、マンガを読まなくても日常過ごしている日本人もいっぱいいる。描くのは好きだけど、ほかのマンガはまったく読まないし、斜に構えてる感じじゃなくて、あってもなくてもいいものだと思う。でも、なんであるか分からない......改めて聞かれるとマンガってなんだろう......(さらに長い沈黙)。実は、仕事してることに罪悪感もあるんですよ。例えば、『ブラックジャックによろしく』でテーマにしている医者だったら、医療がない時代も人は生きて繁殖して、人類は続いてきた。だから「医者ってどこまで必要なのかな?」と考えると分からなくなってしまう。長生きしたいし、病気で苦しんで、治療して楽になったらありがたい存在だけど、自分が医者だったら、結局病気の人からお金を吸い上げて生きている気持ちになる。マンガってなくてもいいものだと思うし、無駄な出費を誰かにさせて暮らしているわけで、無駄なものにお金を使わせている。これを続けてどういう意味があるんだろうと思うこともあります。 ――医者の話は極論だとしても、人は無駄なものに対価を払いませんよ。先生の作品に「本当に救われた」「感動した」という読者の声も届くのでは? 佐藤 感動してくれればうれしいですけど、その人のために描いてないですからね。その人に会ったことないし、その人の顔を思い浮かべて描いたわけじゃないから。「この仕事は何なんだろう」と思いますね。 ――では、誰のために描いてるんですか? 佐藤 当然自分のためだと思います。生活のため、表現欲を満たすため。そのために誰かに何かを伝える言葉だから相手が必要。 ――例えばスティーブン・キングは「すべての小説を夫人に向けて書いている」と聞いたことがあります。また、伊集院光は深夜ラジオで「中2の自分に向かって話している」と語っていました。佐藤先生にとっての想定読者は? 佐藤 自問自答している感じ。でも、自分の作品も基本的には読み返さない。描いていて、整合性取るためには読むけど、それ以外は読まないですね。 ●作品発表は『漫画 on Web』へ 『ブラよろ』の結末は...... ――今後は、『漫画 on Web』メインで、今後は完全に"脱・出版社"の方向で、大手出版社の仕事は受けないつもりなのですか? 佐藤 印税に頼るのはギャンブルなので、制作費をカバーできる正当な原稿料をもらえれば出版社でも描くし、もらえなければやらない。ビジネスパートナーになってくれるのであれば、仕事をするだけです。今の状況では、『漫画 on Web』が一次使用で、それを「原稿料払うので雑誌に載せたい」という話があれば二次使用としてはいいかなと思う。契約の仕方ですね。発表の形態もiPadには期待を寄せているので、今後、7月中を目途に『漫画 on Web』をiPadに対応させてから、その次に翻訳して、海外版もできればと考えています。 ――次回作は、「週刊マンガTIMES」(芳文社)に掲載されて休載中の『特攻の島』ですか? 佐藤 『特攻の島』は途中なので、そこまでは雑誌でやります。『新ブラックジャックによろしく』が終わったら、一カ月程度休んでからやろうと思ってます。掲載期間は、1年から2年ですね。その次の作品もネームはできているので描きたいんですけど。さすがにそれはまだ詳しいことは言えないです。常に描きたいことはいっぱいあるけど、形にするのに苦労します。描きたいことを出し切るには、かなりの時間が必要で、描きたいことがなくなるということは今のところない。 ――描いてみたいテーマはありますか? 佐藤 ジャンルで描きたいものはないんですよ。だから編集者が提案してきたものを受け入れちゃうんですよ。どんな食材を持ってきても、おいしく料理できますよって感じ。マグロしか扱えないとかそういう風になりたくない。どうせ僕が描くと泥臭い感じになるんで。でも、泥臭い風にしかならないけど、なんでもできます、となりたいかな。 ――一色登希彦さんのマンガ家としての半生をマンガにするという企画がお二人のTwitterでのやりとりから始まって、その基となる一色さんへのインタビューをUSTREAMで配信されました。 佐藤 一色さんとのマンガは、『漫画 on Web』ですぐにやりたいと思ってます。取材があまり必要じゃない自分の知ってる世界を書けたらいいなと思ったけど、話を聞いたら意外と大変で......。おそらく「表現者とは何か?」という話になる予定です。 ――では最後に、残り2回となった『新ブラックジャックによろしく』はどのような幕引きとなるのでしょうか? 佐藤 最後回のために取材してきた題材があるので、それを描こうと思っています。医療マンガもまだ描こうと思えば描けます。愛情を持って描いてきたので、寂しい気持ちもありますね......。最終回は"マンガでは誰も描いたことがない終わり方"になると思います。 * * *  佐藤先生の日記での告白に、「激怒」「マジギレ」「暴露」......そんな見出しを付けてきた我々だが、直接生で聞いた先生の声は穏やかで冷静、しかしながらマンガへの強い信念が随所にほとばしっていた。「マンガとは?」という質問に、言葉を選び、熟慮して答えていただいたその様は『ブラックジャックによろしく』の自問自答する主人公・斉藤英二郎そのもの。たゆたう心情をありのままに表現するその姿勢こそが、作品にリアリティを生んでいるように思われた。大手出版社への挑戦状とも言える『漫画 on Web』の未来と、掲載誌を変え、8年にわたって連載されてきた『ブラックジャックによろしく』の"誰も描いたことがない"着地点に期待したい。 (取材・文=本城零次<http://ameblo.jp/iiwake-lazy/>) ●佐藤秀峰(さとう・しゅうほう) 1973年12月8日生まれ。大学在学中よりマンガ家を志し、福本伸行、高橋ツトムのアシスタントを経て、1998年「ヤングサンデー」に掲載の『おめでとォ!』でデビュー。同年開始の『海猿』はNHK BSハイビジョンでTOKIO・国分太一でドラマ化され、さらに伊藤英明主演で映画化、フジテレビ系でドラマ化、今年9月18日には3作目の映画公開も控える。また、02年、「モーニング」に『ブラックジャックによろしく』を連載、03年に妻夫木聡主演でTBS系でドラマ化。単行本1~13巻の累計発行部数は1000万部を突破。07年、「ビッグコミックスピリッツ」に移籍し、『新ブラックジャックによろしく』と改題。09年、オンラインコミックサイト『漫画 on Web』(http://mangaonweb.com/)を立ち上げ、マンガの新天地を模索している。
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「マンガを正当なビジネスにしたい」マンガ家・佐藤秀峰 爆弾発言の裏にある思い(前編)

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 電子書籍デバイス「iPad」「Kindle」の誕生により、過渡期を迎える出版業界。隆盛を誇るマンガ雑誌も2007年に「月刊少年ジャンプ」(集英社)、08年に「週刊ヤングサンデー」(小学館)が休刊し、その後、新雑誌が創刊されるなど各社再編が相次いでいる。そんな中、"脱出版社"に向けて、作品を1話10円から販売するオンラインコミックサイト『漫画 on Web』で新たなマンガの可能性を模索するのが『海猿』『ブラックジャックによろしく』で名を馳せるマンガ家・佐藤秀峰氏。  昨年2月に公式サイトを立ち上げ、『ブラよろ』が「モーニング」(講談社)から「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)へ移籍した顛末のほか、編集部によるネームの無断改変、必要経費の実情、アシスタントからの賃上げ要求までも暴露。さらに広告用のマンガを描くも代理店の不義理な対応から掲載を拒否し、ギャラ540万円の受け取りを放棄した話や、編集者の不手際から『新ブラよろ』のコミックス9巻のカバーイラスト執筆をボイコットするなど、サイトの日記で爆弾発言を連発している。  『新ブラよろ』の雑誌掲載があと2話で最終回となる中、佐藤氏に突撃インタビューを行った。編集部との長年にわたる軋轢やマンガ界の内情、『漫画 on Web』への手ごたえと出版界の未来、プロのマンガ家になる方法、さらに次回作のプランも告白してくれた。前後編でマンガ界の禁断の真実に肉薄する。 ――佐藤先生の"暴露"が世間では大きな反響を呼んでいます。ここまで内情を晒すことに抵抗はなかったのでしょうか? 佐藤秀峰(以下、佐藤) 僕は起こっている出来事を普通に話しているだけなんですよ。今までは発言する場所がなかったのが、ホームページという発言の場ができたから言ってるだけ。怒りがたまっていて、恨みを晴らすためにやってるわけでもないんです。ニュースサイトで記事にされる場合は、"ブチギレ"とか"暴露"と見出しを付けられちゃうんですけど(笑)、僕は平熱なんです。「原稿料の話は外じゃ絶対言っちゃいけない、それは業界のタブー」という空気が支配しているのがむしろおかしい。僕が何か言うと「みんなが黙ってきたのに、何言ってるんだ」というような反応がある方が変。僕はこういうことを普通に話せる空気が欲しいだけ。 ――「単行本の表紙カバーを描いてもギャラが出ない」という話も読者には衝撃的でした。カバーをボイコットする話では、『ムショ医』で知られるマンガ家である佐藤智美夫人と夫婦喧嘩をして、出版社に対して「あいつら、レ○プしといて、『オレが女にしてやった』って言うような奴らだぜ......」と日記で発言。その後、奥さんが部屋から出て行ったところで終わったので、そのまま離婚の危機を迎えるのかと思いましたよ。 佐藤 単行本の表紙は、僕が知る限りどこの出版社もほぼ100パーセント、ギャラが出ませんね。日記を書くときは業界の人より、マンガをあまり知らない一般の方が読むことを想定して、面白おかしく伝えたいという気持ちがあるんです。カバーの話も事実を列挙して説明文を書いても面白くないので、奥さんと喧嘩した様子を実況中継風に書いたほうが読者の興味を引いて読んでもらえるんじゃないかという"演出"です。マンガのストーリーを作るのと同じで、冒頭に衝撃的な事件があって、状況説明のシーンが始まって、まただんだん盛り上がっていく感じ。実は深刻な夫婦喧嘩じゃなくて、奥さんには日記を書くときも相談して、「(喧嘩の時に)レイプって言葉は使ってなかったよ」と言われて「でもそう思ってたんだ」と言ったら、「じゃあ書いてもいいんじゃない」ということで使いました。さらに「一日、日記を空けた方が引きがあるよ」と言われて、文章は先に作っといて、一日空けてから結末は書きました。 ●マンガ界に伝わる都市伝説「編集者は3人新人をつぶして一人前」 ――マンガ編集者の間では、「編集者は3人新人をつぶして一人前」という話もあるそうで......。 佐藤 実際、担当編集者に言われたんですよ。「入社したときに先輩の編集者から編集者の心得として三つ言われたことがある。一つ目が、"編集者は3人新人をつぶして一人前"。二つ目が、"作家に絶対謝るな"。三つ目が、"大物作家とタクシーに乗るときは、作家を奥に入れろ。新人の場合は出口側に座らせろ"」。だから、マンガ家と編集者は根本的に感覚が違うわけですよ。僕らマンガ家は、表現者で自分の表現がしたいのに、編集者は自分たちが"マンガを描かせてる"と思ってるから話が通じない。僕らからすればマンガを多くの人に見せたくて、有名な雑誌に載って、より人目に付くところに発表したいと考える。そのために出版社がパートナーとして存在している、という順番。創作意欲が大前提。でも、編集者は、雑誌を埋めるためのコンテンツが必要で、そこにどの作家を選んで何を描かせるかと考える編集者の企画主導。その点が折り合いつかないことがよくある。それで、自分を傲慢とも思わないでそれが当然だと思ってる。若い頃は、なんで大学出てマンガを描いたこともない人間に、いきなり作品の批評されて「出直して来い」と言われないといけないのかと思ってましたね。何を分かって批評してるんだろう、と。 ss02.jpg ――マンガ家の心情を理解している編集者はいなかったですか? 佐藤 前の「スピリッツ」の担当はすごく好きな人で、その人は「編集者は才能にたかるハイエナで、おこぼれを頂戴しようとして才能の周りにくっついてる人間だと常に自覚しておくべき。ただハイエナにはハイエナのプライドがある」と言ってましたね。「編集者が(マンガを)作ってるというのは思い上がりだと自分は思ってる」と。要は、どこまで相手の立場を尊重できるかだと思う。 ――マンガ家と編集者の関係というと、現在「週刊少年ジャンプ」(集英社)連載中の原作・大場つぐみ、作画・小畑健の『DEATH NOTE』コンビによる『バクマン。』や、土田世紀のマンガ『編集王』でもその内幕が描かれています。佐藤先生は読まれてらっしゃいますか? 佐藤 『バクマン。』は読んでないんですが、『編集王』はアシスタントのころに読んでいて、「これからこんな編集者と付き合っていくのか、でも、ここまで悪い人たちはいないだろう」という思っていたら、もっと悪かったという(一同笑)。熱血な編集者もいるんですけど、どこかで、会社に呑まれるんですよ。作家の味方をしても、「じゃあ辞めるのか」となったら、やっぱり給料とっちゃう。1回負けると角が取れて、かわいくなっちゃう。 ――『海猿』は編集部との表現の方向性をめぐる対立から、連載終了を申し入れたと明かされています。 佐藤 『海猿』の場合は、海上保安官の仕事は、海上の治安の維持という海の平和を保つ仕事。溺れてる人がいたら助けるけど、悪いヤツがいたら時には銃を撃たないといけない。同じ人間が、ある時は命を救い、ある時は人を殺すという矛盾や葛藤を描きたかったんですけど、それは編集部が描かせてくれないわけですよ。「だったらやる意味ないや」と思って、結局止めちゃいましたね。 ――編集部は、正義のヒーローにしようとした。 佐藤 そうですね。単純に人助けをして「かっこいい」「感動した」という話を延々描いてくれと言われると無理ですね。それは僕の表現したいことじゃない。描けと強制されると無理でした。そもそも『海猿』は「ヤングサンデー」の編集者が、当時、映像制作会社に所属していた小森陽一(『海猿』には原案取材としてクレジット)さんと知り合いになって、お互い海が好きということで、海上保安庁の話を描こうとしていた。そこで小森さんが原作を文章で書いて企画会議に出して、「原作としては使えないけど、海上保安庁というのは珍しい」ということで、企画だけが残っていたんです。それを編集者が「佐藤君、描いてみないか」と持ってきて、話を受けたんです。なので、僕は小森さんの書いた原作を読んでいないのですが、小森さんは自分が原作者だと思っていらっしゃるようで、そこからお互い齟齬があったんですよね。 ――『ブラックジャックによろしく』では、編集者の取材内容にミスがあり、抗議が来てから作品に編集者の名前がクレジットされるようになりました。実際、取材はどのようにされていたのでしょうか? 佐藤 『ブラックジャックによろしく』は、まず「モーニング」で描きませんかという話だけがあって、最初は、ヤクザモノはどうだろうとか、いろいろ案はあったのですが、前作の『海猿』が海上保安官だったので、"命の現場"の話が向いているということで、医者になったんです。特に医療に興味があったわけではないです。取材は、打ち合わせで決めた内容を、編集者だけが医療関係者などに取材に行くときもあれば、僕が同行する場合もありました。がん編の途中までは、取材は編集者が主導ですね。つまり、それまでの取材の内容については、彼らの仕事の成果だと思っていますし、彼らが評価されるべきです。逆に言うと、僕にはその当時の取材内容について、責任が取れないし、編集者も、取材の内容については自分たちが保証するという取り決めでやってきたはずです。がん編の途中からと、精神科編以降は、取材も僕が主導ですね。 ――編集者だけが取材に行った内容を掲載した際にクレームが来たんですか? 佐藤 クレームは大小いろいろあるのですが、訴訟に発展しかけた最も大きなクレームについてはそうでしたね。その時も、取材の責任は誰にあるかということで、まずは作品を作る上で役割を決めようという話はしました。データがあっても、それをどう組み込んで、ストーリーを作っていくかは別の作業。編集者がデータを調べると、なぜか"自分の原作"だと思ってしまう。なので、編集者が勝手に台詞を変えて、僕が「なんで台詞を変えるんだ」と言っても通じない。編集者は「原作者と同じ仕事してる」と思い込んでいて、「だっていいものにしようと思ってる」と言うんですが、そこに意識のズレがある。物語を作るのは僕の役目。編集者に作家の領域に踏み込まれると違いますよね。僕はマンガに、そのとき伝えたい思いや表現したい内容がないと描けない。そのためにデータを利用もするし、データは物語を作る材料の一部に過ぎません。編集者の意向でそもそも表現したいことを曲げるのは、本末転倒です。 ――どんないい食材を持ってこられても、結局は調理人の腕次第ですよね。データだけがあっても、それを物語に盛り込んで生かすのは、作家の特殊技能によると思います。 佐藤 データもそうだし、言葉一つとっても、言葉だけがあって物語ができるんじゃなくて、言葉はストーリーにハマるパズルの一つ。物語を作ったことない人は、それがわからなくて、出来上がった物語の中に、自分が調べたデータや言った言葉が混ざってると、自分が作ったものだと思ってしまう。編集者だけでマンガを作っているのなら、作家をバンバン取り替えて、編集主導で100万部ヒットを連打すれば、講談社も黒字になるんじゃないかと思うんですけど。現実は違うわけですよ。それがわからないみたいですね。 ●100万部売れても一生は暮らせない ――ギャラの話もサイトでされていて、『ブラックジャックによろしく』を講談社で描いていた頃、原稿料がページ単価2万3,000円で、アシスタントへの人件費や事務所の賃貸料を考慮すると、原稿料だけでは赤字だったと明かされています。 佐藤 ビジネスですからお金の話は最初にしないといけないし、それができない雰囲気があること自体がおかしい。それをサイトで書いたら問題があるというのがわからない。アルバイトも時給がいくらかわかってから働くのが普通ですよね。編集者に原稿料の話をしても「編集長しか原稿料はわからないので、担当の私は知らない。決定権がない」と言われてしまう。ギャラを明確にせず、契約書もないままマンガを描くのはおかしいので、5~6年前からは契約の専門家を立てるようになりました。マンガ家でもそこまでやる人は少ないでしょうね。そもそも、契約書を交わさないといけないという概念がない。 ――原稿料だけでは赤字だったとしても、コミックスの印税ではガッポリ儲かっているんじゃないんですか? 佐藤 全然そんなことないんですよ。100万冊売れるマンガなんて全体の0.1パーセント以下。有限会社 佐藤漫画製作所という会社組織にしているんですが、零細企業の社長としては全然儲かってない。100万部ヒットといっても1冊500円で印税が5,000万。年4冊出して2億。それって、すごいわけではない。年商2億ですからね。僕の年収じゃない。アシスタント含めて5~6人いる企業ではたいしたことないですよ。しかもそれが全体の0.1パーセントで、平均だけで見れば、悪い商売ですよ。その上、単行本の出ない漫画家のほうが圧倒的に多いですから。トップになった人は桁が違うぐらい儲からないと職業として魅力がない。100万部ヒットを出すと一生遊んで暮らせるというぐらいじゃないとマンガ家は夢がないですよね。半分税金で持っていかれるし。 ――でも、マンガは何巻も出せますし、映像化の際のロイヤリティやグッズ収益などのキャラクタービジネスもウマみがあると思いますが。 佐藤 それはごくごく一部ですよ。言うほど儲からないですって。キャラクタービジネスで儲かるのは、漫画がアニメ化され、ゲーム化され、キャラクターグッズが飛ぶように売れる人ということになりますが、そういう人って何人もいないですよ。『ワンピース』の尾田栄一郎さんとか、『ドラゴンボール』の鳥山明さんとか、本当に限られた何人かですよ。実写ドラマ化されても、キャラクターグッズなんて出ないです。『海猿』の場合、最初の映画化では単行本の増刷がかかったんですけど、次の映画化では単行本はまったく増刷がかかりませんでしたし、テレビドラマの場合、1本30万円弱の原作使用料が入るだけです。映画が70億ヒットと言われても、僕にはロイヤリティは1円も発生しません。決められた原作使用料が1回支払われるだけです。それじゃおかしいということで、次回作ではロイヤリティが発生する契約を結んでいます。子どもの頃は週刊マンガ雑誌に連載してる人は全員大金持ちだと思ってましたけど、まさか原稿料だけでは、赤字でやっているとは思わなかったですね。  * * *  話す内容はラジカルながら、ギャラの話も冷静に臆することなく明かしてくれた佐藤先生。後半では、マンガの新たな可能性を探る『マンガon web』の現状、たゆたう気持ちをありのまま表現していただいた佐藤先生のマンガ観、さらに次回作の構想にも迫る。マンガ界震撼の後編もお楽しみに。 (後編につづく/取材・文=本城零次<http://ameblo.jp/iiwake-lazy/>) ●佐藤秀峰(さとう・しゅうほう) 1973年12月8日生まれ。大学在学中よりマンガ家を志し、福本伸行、高橋ツトムのアシスタントを経て、1998年「ヤングサンデー」に掲載の『おめでとォ!』でデビュー。同年開始の『海猿』はNHK BSハイビジョンでTOKIO・国分太一でドラマ化され、さらに伊藤英明主演で映画化、フジテレビ系でドラマ化、今年9月18日には3作目の映画公開も控える。また、02年、「モーニング」に『ブラックジャックによろしく』を連載、03年に妻夫木聡主演でTBS系でドラマ化。単行本1~13巻の累計発行部数は1000万部を突破。07年、「ビッグコミックスピリッツ」に移籍し、『新ブラックジャックによろしく』と改題。09年、オンラインコミックサイト『漫画 on Web』(http://mangaonweb.com/)を立ち上げ、マンガの新天地を模索している。
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佐藤秀峰、出版社にブチギレ!! 『ブラよろ』カバーイラストをボイコット

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佐藤秀峰「漫画on Web」
 『海猿』『ブラックジャックによろしく』で知られ、手がけた作品を一話10円から販売するオンラインコミックサイト『漫画 on Web』を展開するマンガ家・佐藤秀峰。『ブラックジャックによろしく』が「モーニング」(講談社)から「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)への移籍するてん末などを公式サイトで暴露してきた彼がまたしても出版社との確執を暴露。今度は、現在「スピリッツ」に連載中の『新ブラックジャックによろしく』のコミックス第9巻の表紙であるカバーイラストを描くことをボイコットしたという。佐藤は公式サイトの日記でその理由を次のような点だと指摘した。 「担当の編集者に『○月○日に、デザイナーとアートディレクターのスケジュールを押さえてあるので、その日にイラストがないと単行本の発売が遅れる』と言われたこと。約束の日にイラストを仕上げたけど、編集者が自分で言ったスケジュールを覚えておらず、デザイナーさんとアートディレクターさんのスケジュールを押さえていないばかりか、原稿も受け取らなかったこと。その結果、原稿を描く気が起こらず、雑誌の連載原稿の締め切りまでも落としてしまったこと。そもそもカバーイラストは原稿料がもらえず、仕事ではないこと、だからカバーはもう描かないこと...」  宿年のわだかまりに加え、締め切りを自ら忘れる編集者のズサンさに辟易してしまった佐藤。さらに「カバーイラストは描いても原稿料は出ないし、単行本は出版社の商品であって、僕の商品じゃないので、なぜ他社の商品のために無償で絵を描かなくてはいけないか理解できません」と綴り、単行本のカバーイラストは描いてもギャランティーが発生しないことを暴露。  出版社は表紙として雑誌掲載時に扉絵にカラーを付けて、カバーとしての流用を提案するも、佐藤は、「カバーイラストとしての原稿料を欲しい」としてこれも拒絶した。単行本を"他社の商品"と断言し、切り捨てようとしている様子だ。さらに彼のこの決断は"家庭不和"にも発展し、『ムショ医』などの作品で知られるマンガ家で佐藤の妻である佐藤智美と大喧嘩が勃発したという。佐藤は日記で以下のようなバトルを繰り広げたことを明かした。 妻「編集さんへの当てつけとは言わないけど、読者のことを考えたら、そんな判断にはならないよ。読者と編集者と、どっちを向いてるのよ?」 佐藤「読者に決まってんだろ...。そこがどうでもいいんなら、講談社から連載を移籍した時点で、とっくに漫画なんて、描くのをやめてるよ...。最後まで、読者に物語りを届けなければいけないと思ったから、見苦しくても描き続けてんだろ...? 小学館も講談社も変わりなんかないよ。あいつら、レ○プしといて、『オレが女にしてやった』って言うような奴らだぜ...」 妻「イラストの1枚くらい描きなよ。」 佐藤「1枚くらいって思ってるんでしょ? 編集者と同じことを言うんだね...。」 妻「他の漫画家さんだって、全員、タダでカバーを描いているじゃない...。あなたのやってることは、その漫画家さん達の行為を否定することでしょ? タダで絵を描くヤツはバカだって、言ってるのと同じよ。皆に嫌われて、お金の亡者だと思われるだけじゃない...。」 佐藤「じゃあ、どうすれば描けるんだよ...? 無理矢理、カバーを描くことは出来るかもしれないけど、そしたら、オレはもう、漫画は1枚も描けないよ...。 『たかが、イラスト1枚くらい』って言われることが、どんなに傷つくか想像できないの...? 『減るもんじゃないんだから、一発くらいやらせろ』って言われて、股を開ける? 濡れるの!? オレはせめて、お金をもらってやりたいね!」  長年連れ添い、同じマンガ家として互いの心情を理解し、苦楽を共にしてきた夫婦が故に、双方涙を流し、慟哭しながらの激論となった二人。最終的には、佐藤がボイコットに至った真相をすべて記すことで、妻も引き下がったという。カバーのギャラが出ないことに佐藤は「新人はお金の交渉は出来ないし、売れた漫画家はカバー代なんてもらえなくても、儲かってるから出版社とケンカしないし、『お金が発生しないのはおかしい』って、誰が大声で言えるんだよ...?」と問題提起。  さらに、佐藤はマンガ編集者の間では定説である『編集者は漫画家を3人潰して1人前』というクリシェ(決まり文句)の存在を嘆き、「(小学館刊行で2008年休刊の)ヤングサンデーが潰れて、漫画家は大量に連載を失ったけど、編集者は一人も退社してないじゃん。漫画家って、どんだけお人好しなんだよ」と述懐。「僕はもう紙の本に興味を失ってしまいました。この『漫画 on Web』が、僕の表現の舞台であり、僕はここで発表をするために、漫画を描いています」と宣言した。  佐藤の『漫画 on Web』には、「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)に『日本沈没』を連載していた一色登希彦、「YOU」(集英社)に『胡蝶伝説』を連載の池田ユキオらが作品を公開し、今後も掲載するマンガ家を増やしていく予定だという。ipad、Kindleなど電子書籍リーダーの誕生により、有史以来の岐路に立たされている出版社。佐藤の主張が正しいのか? 自ら告げた締め切りを忘れる出版社が正しいのか? その答えは"時代"が自ずと出すことだろう。 (文=本城零次) ◆佐藤秀峰「漫画on Web」 http://mangaonweb.com/
ムショ医 1 漫画家さん夫婦って意外に多い。 amazon_associate_logo.jpg
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