
地下にあるノレバンの入り口。ドア裏のポスターを見る限りでは、完全にエロい店だが。
(
前号・ノレバンから続く)
ノレバン(カラオケボックス)の部屋の入り口に並んだのは、もちろん、ルームサロンの女のコみたいな“プロ”ではなく、見るからに素人という女のコたちだった。その中から記者は、吉高由里子似の女子大生っぽい美形の「アラ」を指名した。
さらに、ピョ氏はキャバ嬢っぽい茶髪でミニスカの女のコを、チョ氏はショートヘアーのミニワンピの女のコをそれぞれ選んで隣に座らせ、ソウルの素人女子たちとの楽しいカラオケパーティーは始まった。
フルーツをつまみに焼酎で乾杯し、スマホの指差し会話帳でアラとコミュニケーションを取ろうとするが、どうにもまどろっこしくてしょうがない。助っ人2人に助けを求めようにも、そもそもその2人も女のコと夢中で話し込んでいる……。恨めしそうに2人を見つめたとき、その視線に気付いたピョ氏が言った。
「英語で話せばいいんですよ」
なるほど! アラも達者ではないものの、日常会話程度の英会話ができた。
「アラは何歳なの? 大学生?」
「ううん、26歳」
「(えっ、けっこういってるんじゃん)ふ、ふーん。じゃあ、昼間は何(仕事)やってるの?」
「寝てるよ。朝8時に家に帰って、夕方まで寝ちゃうの」
(ハァ? それって、ノレバンが専業ってこと? なんだよ、全然素人じゃないじゃん!)
久しぶりにプロじゃない女のコと話ができると思ったのに、日本のキャバクラと同じで、ソウルの夜もプロ女子たちの漁場となっていたのだ。
まあ、それもやむなし。女のコと一緒に数少ない日本の歌のカラオケを楽しんだり、ツーショット写真を撮ったりして楽しい時間は過ぎていった。

一番うれしそうだったチョ氏は、大胆に女のコを抱き寄せて甘い歌声を披露していた。
3人で120分飲んで歌って料金は30万ウォン(約3万円)。ルームサロンだと、これの3倍近くかかるので、コスパの高い遊びには違いない。ピョ氏とチョ氏は、ちゃっかり女のコとカカオトーク(韓国ではLineより主流)のID交換もしていたようだ。
が、満足そうな笑みを浮かべて近くの餃子屋で、シメの餃子饅頭入りスープを食べているとき、酔いも冷める大変なことが発覚した。
「デジカメの写真が、ない……」
酔っぱらっているので何かカン違いしているのかと思ったが、デジカメのどこをどうやっても数枚の写真しか現れないのだ。思い当たるのは、他でもないアラだ。彼女が記者のカメラで自撮りしていたのだが、たぶん、その写真を消そうとして、表示される日本語がわからず、すべて消去してしまったに違いない。ノレバンの写真はもちろん、往路の機内や、夕方、3人で歩きながら撮った街の写真もすべてが消えている。かろうじて、消去したあとに撮った数枚の写真だけが残っているのだった。
はぁ~、初日でよかったよ~。
これが最終日だったらと思うと恐ろしくて、それ以降、すべての写真にロックをかけ、しばらくは、1枚すら消去することもできなくなったソウル初日の夜だった。
つづく……。

ノレバンの近くにある餃子屋のシメ。こんな写真しか残ってなくてスミマセン。
(写真、文=松本雷太)