童話村のことを聞いた時は、正直「またか……」という思いしかなかった。 お年寄りしかいない寂れた町や、いわゆる貧民街を、「アート」と称する派手なばかりの壁画で埋め、観光客を呼び込もうとする手法は、韓国では実にありがちだ。 前回の碑石文化村(参照記事)のように、日本人の墓石の1つや2つあればいいのだが、壁画だけでは珍スポと言うには物足りず。むしろ美大生が描いたようなしょぼいイラストで、せっかくの趣が台無しになった古い町を数多く見てきたものだ。 だから仁川駅前の「松月洞(ソンウォルドン)童話村」も、似たり寄ったりだろうとタカをくくっていた。 しかし、その町が近づくにつれて、私の思いは間違っていたことを知る。夢であってほしい
ゲートの向こうは童話村。遠目に見ても、浮かれっぷりが異常
城まで建てちゃう?
壁画だけにとどまらず、町の至るところに、ものすごい密度で立体物が投入されている! これはアートなんかじゃない。むき出しのファンタジーそのものだ。 そして特筆すべきなのは、店舗がある大通りばかりではなく、一般住宅しかない細い通りまでファンタジーに侵食されているということ。住民たちは、どんなテンションで毎日を過ごしているのだろう?一般住宅が並ぶ細道までハイテンション
一見ラブホテルのようだが、普通のアパート
そして気になるのは、「童話村」と言いつつ、ディ●ニーっぽいキャラクターが多いということである。激似というわけではないので、あくまでインスパイアの範囲ということだろうか? あまりの物量に圧倒され、脳の判断を司る部分が衰弱している私がいる。 気を確かに持って、前に進む。童話村は、30分ほどでぐるりと一周できる。ライフラインは電気ガスではなく、魔法
「花壇にゴミを捨てるな」との警告文が乱立するおじいちゃんの家、というのは日本でもよくある日常だが、その家もファンタジーに侵されており……
この松月洞、かつては外国人の居住地として栄えたが、近年は若者が減少し、建物も老朽化。町を活性化するため、2013年から童話をモチーフにした壁画を描き始めたことから、現在の童話村になったという。それにしても、この手加減のなさは一体どこから?トタン屋根をブロックで固定する家もファンタジー仕様に。お金をかける場所はそこなのか
探訪の最後に、序盤に出会ったお城に行ってみた。こちらはカフェとなっていたのだが、明らかにメニューがおかしい。建物の屋上から童話村を見下ろす。明らかに老朽化が進む一帯と、きらびやかな一帯とのギャップがすごい
英語で「DRUG COFFEE」、韓国語で「麻薬コーヒー」とある! そんなのが普通に売ってたら、そりゃ住民の皆さんもファンタジー過剰になるよ! さっそく注文してみる。ドラッグコーヒー?
ソフトクリームの乗ったアイスコーヒーに、なんと注射器がささっている。なんでも、この液体を少しずつかけて食べるとヤバいとか……。 味見すると、普通のチョコレートソースのようにも感じたが、童話村のハイテンションな空気にやられた私の脳に、サイケデリックなイメージがぶわーっとひろがっては消えていった。 (取材・文=清水2000) ●松月洞童話村 住所 仁川市中区自由公園西路45番キル、51番キル注射器がぶっ刺さっております
















