終わることのない「お笑い戦国絵巻」~ラリー遠田著『M-1戦国史』~

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『M-1戦国史』(メディアファクトリー )
 「M-1グランプリ」は、現代のお笑い界で唯一と言っていいほどの大きな成功を収めているお笑いの大会だ。参加資格は結成10年未満の漫才師であることのみ、審査基準は「とにかく面白い漫才」。そして優勝者に与えられる賞金は1,000万円。  2001年に始まったこの大会は、中川家、アンタッチャブル、ブラックマヨネーズ、チュートリアルなどそうそうたる顔ぶれの優勝者を輩出しており、年を追うごとに大会を生放送する番組の視聴率も高くなっている。  本書はそんなM-1グランプリについて、当サイトでも連載コラムを執筆するお笑い評論家のラリー遠田氏が紹介する本だ。  まず語られるのは、M-1グランプリ誕生の経緯だ。1980年代の漫才ブームよもう一度と「漫才プロジェクト」なる企画を任された吉本興業のプロデューサー、そして漫才ブームによって世に出た大物タレント島田紳助。彼らがM-1を立ち上げたことから、幾多の芸人たちのドラマが始まるのである。  続いての章では過去9大会を振り返る。01年に麒麟が与えた衝撃、もはや伝説となった03年の笑い飯による「奈良県立民俗博物館」、05年に決勝初出場にして優勝を勝ち取ったブラックマヨネーズ、オードリー春日という異様なキャラ芸人が現れた08年...。M-1ファンならば誰の心にも残っているであろう数々の名場面が記されている。  この章の特徴は、単なる「M-1年表」の紹介にとどまらず、主な出場者の漫才の特徴が的確に紹介されていることにある。例えば笑い飯については「二人それぞれが『面白いことを言いたくてしょうがないんだ』というキャラクターになり切」ることに革新性があるとした上で、「バカバカしさこそが彼らの武器」と評している。普段漫才を見てなんとなく「面白かった」「面白くなかった」と感想を持つ程度の人も、この解説によって、それぞれの漫才をどのように楽しめばよいのかのポイントが押さえられるだろう。  さらにM-1決勝の審査員たちの紹介、ヤラセ疑惑の検証と、M-1グランプリの要素でありながら正面から取り上げられることの少なかった話題に切り込んでいく。特に決勝戦のヤラセ疑惑を一蹴する論調は明快かつ爽快だ。  本書を貫いているのは「面白いことは格好いい」という思想だ。自分たちにとって最も面白い漫才を追求して栄光を勝ち取った芸人、惜しくも好成績を残せなかった芸人、そしてこれまでの芸人人生を賭けて賞レースの審査を行う審査員。読み進めていくにつれ、紛れもなく格好いい芸人たちの姿に、そしてM-1の体現する「真剣勝負のスリルと漫才そのものの面白さ」に引き込まれていくことだろう。  が、M-1は格好いいだけのお祭りではない。苦労の末に優勝したところで芸人人生の安泰が約束されるわけではないし、さらにはM-1自体の存続を危ぶむ声も多い。著者は最後の章でそんな現実を直視し、しかしお笑いの可能性を語ることにより決して暗くない未来を提示して締めくくる。著者のお笑い愛を最も強く感じられる章だと言えるだろう。  普段テレビに出ているお笑い芸人たちは、単にバカ騒ぎをしているようにしか見えないかもしれない。しかしその根底にあるのは「芸を磨く」というあまりにもストイックな信念であり、その信念を賭けた終わりのない戦いを目の当たりにできる最も良質なソフトがM-1グランプリである。それゆえに、本書の丁寧な解説に沿ってそのドラマを堪能することは、さながら戦国絵巻を見るような興奮と感動を招くのだ。  読むと必ず「面白いことは格好いい」と思うはずだし、面白い漫才が見たくなるに違いない。M-1を毎年心待ちにしているお笑いファンはもちろん、M-1初心者にもおすすめの一冊だ。 (文=北川ミナミ)
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ダイノジ 雌伏16年──ついに訪れる「二頭の虎が目覚めるとき」

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『KING OF LIVE~手紙~』
(よしもとアールアンドシー)
 ダイノジとは何者なのか? この問いに答えるのは難しい。芸歴16年の彼らは、これまでに実に多彩な活動を展開してきた。どこをどう切り取るかによって、彼らのイメージは大きく変わる。  若手時代には、コントと漫才の両方を器用にこなし、『爆笑オンエアバトル』(NHK)では常連として活躍。02年には「M-1グランプリ」でも決勝進出を果たす。若手らしからぬ貫禄のある風貌を生かして、青空球児・好児などのベテラン漫才師のネタをアレンジした漫才を披露して話題になったこともある。また、二人は音楽にも造詣が深く、DJイベント、音楽イベントを自ら主催している。  さらに、「ダイノジ」の代名詞ともなっているのが「エアギター」である。巨漢の大地洋輔は、重厚なボディに似合わぬ切れのあるパフォーマンスを披露して、06年から07年にかけて「世界エアギター選手権」で二連覇を達成。エアギターの大ブームにも後押しされて、この時期にダイノジはテレビ番組にも多数出演。大胆に虎をあしらった揃いの衣装も印象的だった。  一方、相方の大谷ノブ彦は、サブカルチャー全般に精通し、音楽誌などでコラムを執筆するかたわら、鋭い話術を生かしてトークイベントも精力的にこなしている。  ただ、これだけの経歴と実績がありながら、彼らの名前はお笑いファン以外の世間一般にはまだそれほど浸透しているとは言えない。「エアギター旋風」にも乗り損ねた彼らは、いわゆる「大ブレイク」という状態を経験しないまま、現在に至っているのだ。  ダイノジというコンビが輝くためのカギは、「大谷が大地をどう生かすか」という一点に集約される。エアギターで世界を制した、大地の風貌と憎めないキャラクター。それを、ダイノジの頭脳である大谷がどうプロデュースして、面白さを引き出していくのか。現状打破のポイントはそこに絞られていた。  そして、ふとした偶然からチャンスが舞い降りた。それは、10月9日放送の『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)内の企画「新メンバーオーディション」である。番組の新たなメンバーを選考する会場に、ダイノジの二人も足を運んでいたのだ。  パンツ一枚で姿を現した大地は、大谷に与えられたお題に従って次々に一発ギャグを繰り出した。そして極めつけに、面接官である『めちゃイケ』メンバーに近づき、彼らに自分の局部を覗き見させるという強引なギャグで勝負に出たのだ。ここで、奇跡が起こった。メンバーの一員である加藤浩次が鼻を押さえて、運命的な一言を放ったのだ。 「大地さん、香水をつけてらっしゃる」  パンツ一枚でギャグを連発するデブ芸人が意外な繊細さを見せたことで、面接官一同に衝撃が走った。それに呼応するようにして、大谷は大地の本音を漏らした。実は、大地は自分の局部を見せる芸をすることも、直前まで渋っていたというのだ。大谷に指示されて嫌々やっていただけ、ということをここで暴露してしまった。  そのことを大谷が打ち明けた途端、みるみるうちに大地のたたずまいが輝きを帯び始めた。本来は気取り屋の彼が嫌々やらされているという様子が、より滑稽に、より芸人らしく見え始めたのである。この奇跡を引き寄せたことで、ダイノジは大きな壁を破った。その後、彼らは順調に予選を勝ち抜き、最終選考の10組にまで名を連ねた。  彼らがここで発見したのは、ダイノジというコンビの適切なバランスだった。大地が首をかしげながらも、大谷に振り回され、渋々言うことに従う。彼らがいちばん輝くのは、この関係性を保ったときだったのだ。  売れそうで売れないポジションのままで地道な活動を続けてきた彼らは、どちらも同じくらい不器用なところがある。大地はすべてを振り切ってキャラになりきれるほど単純ではないし、大谷は相方にキャラを強要できるほど自信家でもない。そんな二人の自然な姿をさらけ出したことで、大舞台で大きな笑いが生まれた。それは、別の言い方をすれば、16年間さまよい続けた彼らにしか見いだせなかった一筋の光明でもある。長い眠りから目覚めた二頭の虎は今、ダイノジという物語の新たな1ページを開こうとしている。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田) 【イベント情報】 10月31日(日) ラリー遠田×岩崎夏海トークライブ 「もしM-1芸人がドラッカーの『マネジメント』を読んだら」 出演:ラリー遠田、岩崎夏海 ※前売券はローソンチケット(Lコード:32626)、電話予約、ウェブ予約にて販売。 電話予約:tel.03-3205-1556(Naked Loft) ウェブ予約:http://www.loft-prj.co.jp/naked/reservation/
M-1戦国史 [新書] 10/22発売 amazon_associate_logo.jpg
KING OF LIVE~手紙~ 来るか!? amazon_associate_logo.jpg
●連載「この芸人を見よ!」INDEX 【第94回】 キングオブコメディ 極限の不運と"顔芸人"のレッテルを払拭して掴んだ「コント日本一」 【第93回】 山田邦子 史上初の「天下を取った女芸人」その栄光と転落のタレント人生 【第92回】エレキコミック 一度ハマるとクセになる!?「一点突破の納豆コント」 【第91回】野性爆弾 「遅れてきた吉本最終兵器」がブレイクを果たした秘密とは 【第90回】野沢直子 今振り返るカリスマ女芸人の「先駆者としての比類なき存在感」 【第89回】サバンナ 野生の勘で芸能界を疾走する「発展途上のロジカルモンスター」 【第88回】東京ダイナマイト 破壊なくして創造なし! ハチミツ流「笑いのセメントマッチ」 【第87回】トータルテンボス 進化を止めない本格派コンビを育てた「M-1急転直下の挫折劇」 【第86回】ロッチ  シンプルな構図でコントに魂を吹き込む「関係性のスペシャリティ」 【第85回】山崎邦正 ダウンタウンによって強制開花した「ヘタレの天才」が巻き起こす奇跡 【第84回】フルーツポンチ 確かな演技力でポストバブル世代に現出した「キザ男のリアリズム」 【第83回】よゐこ 爆発力と切れ味で支持層を拡大する「自然体のシュール」 【第82回】バッファロー吾郎 マニアック芸人の権化が極めた「もうひとつの天下」 【第81回】ドランクドラゴン 完璧な構築物に風穴を開けて回る「鈴木拓のガッカリ力」 【第80回】高田純次 還暦過ぎても華衰えぬ「日本一の適当男」が歩み続けた孤高の道程 【第79回】森三中  メンバーの結婚で進化する「ブスとブスとブスの関係性」 【第78回】Wコロン・ねづっち  「整いました!」なぞかけ芸が時代にハマった深い理由 【第77回】所ジョージ  突出した安定感を生み出すボーダレスな「私の世界」 【第76回】土田晃之  元ヤン、家電、ガンダム......でも嫌われない「ひな壇の神」の冴えたやりかた 【第75回】タカアンドトシ  非関西系漫才のツッコミ新境地「欧米か!」が生まれた理由 【第74回】キングコング西野亮廣  嫌われるには理由がある!? 天才を悩ませる「出た杭の憂鬱」 【第73回】椿鬼奴  虚栄心から自由になった女芸人の「自然体が放散する魅力」とは 【第72回】萩本欽一  テレビを作り、テレビに呑み込まれた「巨人の功罪」 【第71回】アンガールズ  キモカワ芸人が精緻に切り出した「人生のNGシーン」に宿る笑い 【第70回】エハラマサヒロ   「究極の器用貧乏芸人」が無限の笑いをコラージュする 【第69回】なだぎ武 R-1二連覇を成した演技派芸人の「本当の運命の出会い」とは 【第68回】いとうあさこ 悲観なき自虐を操る「アラフォー女性のしたたかなリアル」 【第67回】チュートリアル M-1完全優勝を勝ち取った「ひとつもボケない」漫才進化論 【第66回】松村邦洋 己を棄てて己を活かす「笑われる天才」が生きる道 【第65回】キャイ~ン・ウド鈴木 20年目の変わらぬ想い──「満面の笑顔で愛を叫ぶ」 【第64回】しずる 緻密なマーケティングと確かな演技力で突っ走る「腐女子枠のプリンス」 【第63回】青木さやか 仕事も家庭も......不器用に体現する「現代女性の映し鏡」 【第62回】 今田耕司 好きな司会者第3位にランクされる「代弁者としての3つの極意」 【第61回】我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化する 【第60回】ハライチ "ツッコミ"を棄てた関東M-1新世代が生み出す「面の笑い」とは? 【第59回】出川哲朗 稀代のリアクション芸人が「計算を超えた奇跡」を起こし続ける理由 【第58回】中川家 すべてはここから始まった!? 兄弟が奏でる「舞台芸と楽屋芸のハイブリッド」 【第57回】板尾創路 笑いの神に愛された男が泰然と歩む「天然と計算の境界線」 【第56回】清水ミチコ 対象者の心を浮き彫りにする「ものまねを超えた賢人の不真面目芸」 【第55回】とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」 【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」 【第53回】ウンナン内村光良 受け継がれゆく遺伝子「終わらないコント愛」 【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」 【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由 【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」 【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」 【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化 【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」 【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」 【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける 【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感 【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる 【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ 【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末 【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」 【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心 【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは 【第37回】島田紳助 "永遠の二番手"を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」 【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは 【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」 【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」 【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由 【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」 【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」 【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」 【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か 【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは 【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が"竜兵会"で体現する「新たなリーダー像」 【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」 【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 既存イメージと「タモリ的なるもの」 【第24回】ケンドーコバヤシ 「時代が追いついてきた」彼がすべらない3つの理由 【第23回】カンニング竹山 「理由なき怒りの刃」を収めた先に見る未来 【第22回】ナイツ 「星を継ぐ者」古臭さを武器に変えた浅草最強の新世代 【第21回】立川談志 孤高の家元が歩み続ける「死にぞこないの夢」の中 【第20回】バカリズム 業界内も絶賛する「フォーマット」としての革新性 【第19回】劇団ひとり 結婚会見に垣間見た芸人の「フェイクとリアル」 【第18回】オードリー 挫折の末に磨き上げた「春日」その比類なき存在 【第17回】千原兄弟 東京進出13年目 「真のブレイク」とは 【第16回】狩野英孝 「レッドカーペットの申し子」の進化するスベリキャラ 【第15回】サンドウィッチマン 「ドラマとしてのM-1」を体現した前王者 【第14回】小島よしお 「キング・オブ・一発屋」のキャラクター戦略 【第13回】U字工事 M-1決勝出場「北関東の星」が急成長を遂げた理由 【第12回】江頭2:50 空気を読んで無茶をやる「笑いの求道者」 【第11回】バナナマン 実力派を変革に導いた「ブサイク顔面芸」の衝撃 【第10回】山本高広 「偶像は死んだ」ものまね芸人の破壊力 【第09回】東京03 三者三様のキャラクターが描き出す「日常のリアル」 【第08回】ジャルジャル 「コント冬の時代」に生れ落ちた寵児 【第07回】爆笑問題・太田光 誤解を恐れない「なんちゃってインテリ」 【第06回】世界のナベアツ 「アホを突き詰める」究極のオリジナリティ 【第05回】伊集院光 ラジオキングが磨き上げた「空気を形にする力」 【第04回】鳥居みゆき 強靭な妄想キャラを支える「比類なき覚悟」 【第03回】くりぃむしちゅー有田哲平 が見せる「引き芸の境地」 【第02回】オリエンタルラジオ 「華やかな挫折の先に」 【第01回】有吉弘行 が手にした「毒舌の免罪符」

キングオブコメディ 極限の不運と"顔芸人"のレッテルを払拭して掴んだ「コント日本一」

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『キングオブコメディ単独ライブ Vol.6 「葉桜」』
(Contents League)
 お笑い芸人とは、自分たちの知恵や発想だけでなく、趣味、特技なども含めて、手持ちのあらゆる武器を臨機応変に使うことが求められる職業である。そんな彼らが持っている武器の中でも、最も重要なもののひとつが「顔」だ。顔や外見は芸人にとって名刺のようなものだ。顔面で笑いが取れる人、覚えやすい特徴的な顔をしている人は、それだけで他の芸人よりも一歩リードしていることになる。  ただ、「笑いを取るための武器」としての顔の破壊力があまりに大きすぎると、それが時として邪魔になることもある。「悔しいです!」でおなじみのザブングル・加藤歩は、「何やっても顔芸だと言われる」とその苦労を語っていた。  お笑い界には、加藤のように、「何やっても顔芸」という聖域に到達している者がいる。彼らのような「奇跡の顔面」の持ち主は、舞台に上がった瞬間から笑いが取れるというメリットがある一方で、どんなに優れたネタを演じても顔芸のイメージがつきまとう、というデメリットも抱えているのだ。いわば、「名前負け」のように、ネタが顔に負けてしまうという現象がしばしば起こるのである。  そんな「顔面vsネタ」という仁義なき戦いを10年以上も続けてきたのが、キングオブコメディである。日本一の「稲中」フェイスとして名高い今野浩喜の顔面は、一度見たら忘れられないものがある。ただ、その印象があまりに強すぎるために、顔面ばかりが注目されてしまうという悲しい宿命を背負ってきた。  今野はもともと、少し皮肉っぽい鋭い発想力に秀でたタイプの芸人である。それは、彼らのコントにも十分に生かされている。だが、それがなかなか世間には伝わらなかった。いつまで経っても「キンコメ=あの(強烈な)顔」というイメージをずっと引きずってきたのである。そこで彼らも、『爆笑レッドカーペット』などのショートネタ番組に出るにあたっては、顔面を飛び道具として、それを軸にしてネタを組み立てていた。  ただ、そこで今野が女子高生役で連発した「......みたいな」というフレーズがちょっとした流行語になってしまったのも、コント芸人である彼らにとってはむしろ足枷になっていた。一発ギャグのような「フレーズボケ」は、必ずしも彼らの本業ではないからだ。  また、彼らは私生活でも、不幸なアクシデントに巻き込まれて、遠回りを強いられたこともあった。それは、2007年に起こった高橋健一の痴漢騒動である。その年の7月、地下鉄車内における痴漢容疑で高橋は逮捕され、芸能活動休止を余儀なくされた。本人は容疑を否定しており、最終的には不起訴処分となって08年1月に復帰を果たした。  そうやってずっと寄り道、回り道を繰り返してきた彼らが、ようやくその真価を見せつけたのが9月に行われた『キングオブコント2010』だった。ここで彼らは、並み居る強豪を振り切って、爆笑をもぎ取るパワフルな2本のコントで高得点を獲得して快勝。念願のビッグタイトルを手にした。  思えば、「キングオブコメディ」というコンビ名も、かなりの大風呂敷である。芸名に負け、顔面に負け、いつもいろんなものに振り回されてきた彼らが、コントの面白さを真正面から評価された意義は大きい。実はコント芸人としてずっと王道を歩んできた2人は、名実共にコント界の「キング」となることに成功したのである。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田) 【イベント情報】 10月31日(日) ラリー遠田×岩崎夏海トークライブ 「もしM-1芸人がドラッカーの『マネジメント』を読んだら」 出演:ラリー遠田、岩崎夏海 ※前売券はローソンチケット(Lコード:32626)、電話予約、ウェブ予約にて販売。 電話予約:tel.03-3205-1556(Naked Loft) ウェブ予約:http://www.loft-prj.co.jp/naked/reservation/
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●連載「この芸人を見よ!」INDEX 【第93回】 山田邦子 史上初の「天下を取った女芸人」その栄光と転落のタレント人生 【第92回】エレキコミック 一度ハマるとクセになる!?「一点突破の納豆コント」 【第91回】野性爆弾 「遅れてきた吉本最終兵器」がブレイクを果たした秘密とは 【第90回】野沢直子 今振り返るカリスマ女芸人の「先駆者としての比類なき存在感」 【第89回】サバンナ 野生の勘で芸能界を疾走する「発展途上のロジカルモンスター」 【第88回】東京ダイナマイト 破壊なくして創造なし! ハチミツ流「笑いのセメントマッチ」 【第87回】トータルテンボス 進化を止めない本格派コンビを育てた「M-1急転直下の挫折劇」 【第86回】ロッチ  シンプルな構図でコントに魂を吹き込む「関係性のスペシャリティ」 【第85回】山崎邦正 ダウンタウンによって強制開花した「ヘタレの天才」が巻き起こす奇跡 【第84回】フルーツポンチ 確かな演技力でポストバブル世代に現出した「キザ男のリアリズム」 【第83回】よゐこ 爆発力と切れ味で支持層を拡大する「自然体のシュール」 【第82回】バッファロー吾郎 マニアック芸人の権化が極めた「もうひとつの天下」 【第81回】ドランクドラゴン 完璧な構築物に風穴を開けて回る「鈴木拓のガッカリ力」 【第80回】高田純次 還暦過ぎても華衰えぬ「日本一の適当男」が歩み続けた孤高の道程 【第79回】森三中  メンバーの結婚で進化する「ブスとブスとブスの関係性」 【第78回】Wコロン・ねづっち  「整いました!」なぞかけ芸が時代にハマった深い理由 【第77回】所ジョージ  突出した安定感を生み出すボーダレスな「私の世界」 【第76回】土田晃之  元ヤン、家電、ガンダム......でも嫌われない「ひな壇の神」の冴えたやりかた 【第75回】タカアンドトシ  非関西系漫才のツッコミ新境地「欧米か!」が生まれた理由 【第74回】キングコング西野亮廣  嫌われるには理由がある!? 天才を悩ませる「出た杭の憂鬱」 【第73回】椿鬼奴  虚栄心から自由になった女芸人の「自然体が放散する魅力」とは 【第72回】萩本欽一  テレビを作り、テレビに呑み込まれた「巨人の功罪」 【第71回】アンガールズ  キモカワ芸人が精緻に切り出した「人生のNGシーン」に宿る笑い 【第70回】エハラマサヒロ   「究極の器用貧乏芸人」が無限の笑いをコラージュする 【第69回】なだぎ武 R-1二連覇を成した演技派芸人の「本当の運命の出会い」とは 【第68回】いとうあさこ 悲観なき自虐を操る「アラフォー女性のしたたかなリアル」 【第67回】チュートリアル M-1完全優勝を勝ち取った「ひとつもボケない」漫才進化論 【第66回】松村邦洋 己を棄てて己を活かす「笑われる天才」が生きる道 【第65回】キャイ~ン・ウド鈴木 20年目の変わらぬ想い──「満面の笑顔で愛を叫ぶ」 【第64回】しずる 緻密なマーケティングと確かな演技力で突っ走る「腐女子枠のプリンス」 【第63回】青木さやか 仕事も家庭も......不器用に体現する「現代女性の映し鏡」 【第62回】 今田耕司 好きな司会者第3位にランクされる「代弁者としての3つの極意」 【第61回】我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化する 【第60回】ハライチ "ツッコミ"を棄てた関東M-1新世代が生み出す「面の笑い」とは? 【第59回】出川哲朗 稀代のリアクション芸人が「計算を超えた奇跡」を起こし続ける理由 【第58回】中川家 すべてはここから始まった!? 兄弟が奏でる「舞台芸と楽屋芸のハイブリッド」 【第57回】板尾創路 笑いの神に愛された男が泰然と歩む「天然と計算の境界線」 【第56回】清水ミチコ 対象者の心を浮き彫りにする「ものまねを超えた賢人の不真面目芸」 【第55回】とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」 【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」 【第53回】ウンナン内村光良 受け継がれゆく遺伝子「終わらないコント愛」 【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」 【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由 【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」 【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」 【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化 【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」 【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」 【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける 【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感 【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる 【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ 【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末 【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」 【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心 【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは 【第37回】島田紳助 "永遠の二番手"を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」 【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは 【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」 【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」 【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由 【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」 【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」 【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」 【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か 【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは 【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が"竜兵会"で体現する「新たなリーダー像」 【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」 【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 既存イメージと「タモリ的なるもの」 【第24回】ケンドーコバヤシ 「時代が追いついてきた」彼がすべらない3つの理由 【第23回】カンニング竹山 「理由なき怒りの刃」を収めた先に見る未来 【第22回】ナイツ 「星を継ぐ者」古臭さを武器に変えた浅草最強の新世代 【第21回】立川談志 孤高の家元が歩み続ける「死にぞこないの夢」の中 【第20回】バカリズム 業界内も絶賛する「フォーマット」としての革新性 【第19回】劇団ひとり 結婚会見に垣間見た芸人の「フェイクとリアル」 【第18回】オードリー 挫折の末に磨き上げた「春日」その比類なき存在 【第17回】千原兄弟 東京進出13年目 「真のブレイク」とは 【第16回】狩野英孝 「レッドカーペットの申し子」の進化するスベリキャラ 【第15回】サンドウィッチマン 「ドラマとしてのM-1」を体現した前王者 【第14回】小島よしお 「キング・オブ・一発屋」のキャラクター戦略 【第13回】U字工事 M-1決勝出場「北関東の星」が急成長を遂げた理由 【第12回】江頭2:50 空気を読んで無茶をやる「笑いの求道者」 【第11回】バナナマン 実力派を変革に導いた「ブサイク顔面芸」の衝撃 【第10回】山本高広 「偶像は死んだ」ものまね芸人の破壊力 【第09回】東京03 三者三様のキャラクターが描き出す「日常のリアル」 【第08回】ジャルジャル 「コント冬の時代」に生れ落ちた寵児 【第07回】爆笑問題・太田光 誤解を恐れない「なんちゃってインテリ」 【第06回】世界のナベアツ 「アホを突き詰める」究極のオリジナリティ 【第05回】伊集院光 ラジオキングが磨き上げた「空気を形にする力」 【第04回】鳥居みゆき 強靭な妄想キャラを支える「比類なき覚悟」 【第03回】くりぃむしちゅー有田哲平 が見せる「引き芸の境地」 【第02回】オリエンタルラジオ 「華やかな挫折の先に」 【第01回】有吉弘行 が手にした「毒舌の免罪符」

山田邦子 史上初の「天下を取った女芸人」その栄光と転落のタレント人生

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『ゴールデン☆ベスト 山田邦子』
(ビクターエンタテイメント)
 お笑い芸人の出世の歩みは、しばしば戦国武将に例えられる。激しい競争を勝ち抜いて、自分の名前が付いた冠番組を獲得した芸人は「一国一城の主」となり、それが高視聴率をキープして、レギュラー番組が際限なく増えていく波に乗り始めると、「天下を取った」と言われるようになる。現在では、テレビに出る芸人の頭数も増えて、若手がゼロからスタートして天下を取ることは容易ではなくなってきた。  1980年代後半から90年代前半のバラエティー業界を振り返ると、そこには何人かのスタープレーヤーがいた。その中でも、女性芸人で唯一、「天下を取った」と言われていた人物がいた。それが、山田邦子である。  一時期の彼女の勢いにはすさまじいものがあった。89年に『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)が終了した後、そこに出ていた芸人と、携わっていたスタッフの遺伝子は、いくつかの番組に引き継がれた。その1つが、ひょうきんメンバーの紅一点である山田邦子の冠番組『邦ちゃんのやまだかつてないテレビ』だった。  ここでは、山田の持ちネタである物真似芸やフジテレビ独特のパロディコントなどをベースにしながらも、音楽を使った企画も取り入れて、「ポスト・ひょうきん族」の新しい形を示して人気を博した。KANの「愛は勝つ」、大事MANブラザーズバンドの「それが大事」など、数々のヒット曲を世に送り出して、一世を風靡した。  『クイズ!年の差なんて』(同)『MOGITATE!バナナ大使』(TBS系)などの人気番組を多数抱え、バラエティーの女王として君臨した山田は、確かにこの時期、天下を取っているという表現にふさわしい状況にあった。事実、彼女は88年から95年まで、NHK『好きなタレント調査』の女性部門で8年連続1位を獲得していた。女性芸人としてこの上ない地位まで上り詰めたのだ。  ただ、彼女が一度その頂に立ってしまったことの代償は大きかった。不倫騒動などをきっかけにして、90年代半ばから、山田の人気が急落を始めたのだ。レギュラー番組は減り、バラエティーでも居場所を失っていった。週刊誌などでは、手のひらを返したようにバッシング記事が掲載されるようになった。バラエティーの世界でかつてメインMCを務めていた人が、ゲストとして脇役に甘んじている姿は痛々しいものがある。そして当時はまだ、そんな痛々しさを楽しむほどの余裕が世間にはなかった。  例えば、当時の山田邦子と、現在の森三中、ハリセンボン、柳原可奈子などを比べた場合、純粋なネタのクオリティや実力で考えれば、どちらもさほど見劣りはしないだろう。だが、当時の山田が厳しいバッシングを受けていた一方で、最近の女性芸人がそのような非難の声にさらされることはほとんどない。  つまり、時代が変わったのだ。女性芸人をお笑い界でどういうポジションに置いて、それを見る側はどういうふうに受け止めればいいのか。その認識が固まったことで、視聴者は肩ひじ張らず気軽に女性芸人を見ることができるようになった。  現代から振り返ってみれば、山田は、生まれる時代が悪かったとしか言いようがない。結果的に「天下を取らされてしまった」ことで、人気がピークを越えると、彼女のタレントイメージは地に落ちた。いろんなものに配慮できるバランス感覚も裏目に出て、あちこちにご機嫌を取る八方美人に見えてしまう。  栄華を極めた全盛期と、その直後の劇的な凋落。そんな激動の時期を過ぎて、山田は今、タレントとして程よいバランスで活動できるようになった。医学番組の出演をきっかけに乳がんを発見し、手術を経てがんをすべて摘出した。この経験から、がんに関するチャリティー活動にも携わっている。  テレビバラエティーの世界は、刻一刻と状況が移り変わる戦場のようなものだ。ひとたび機を逸してしまえば、「何でもできる器用な人」が、「何にもできないみじめな人」へとあっという間に落ちていってしまう。大衆に愛され、大衆から見離された悲劇のヒロイン。バラエティー史上空前の栄光と挫折を経験した女性芸人・山田邦子は、お笑い界のマリー・アントワネットだ。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田) 【イベント情報】 10月31日(日) ラリー遠田×岩崎夏海トークライブ 「もしM-1芸人がドラッカーの『マネジメント』を読んだら」 出演:ラリー遠田、岩崎夏海 ※前売券はローソンチケット(Lコード:32626)、電話予約、ウェブ予約にて販売。 電話予約:tel.03-3205-1556(Naked Loft) ウェブ予約:http://www.loft-prj.co.jp/naked/reservation/
ゴールデン☆ベスト 山田邦子 天下取れただけいいじゃん! amazon_associate_logo.jpg
●連載「この芸人を見よ!」INDEX 【第92回】エレキコミック 一度ハマるとクセになる!?「一点突破の納豆コント」 【第91回】野性爆弾 「遅れてきた吉本最終兵器」がブレイクを果たした秘密とは 【第90回】野沢直子 今振り返るカリスマ女芸人の「先駆者としての比類なき存在感」 【第89回】サバンナ 野生の勘で芸能界を疾走する「発展途上のロジカルモンスター」 【第88回】東京ダイナマイト 破壊なくして創造なし! ハチミツ流「笑いのセメントマッチ」 【第87回】トータルテンボス 進化を止めない本格派コンビを育てた「M-1急転直下の挫折劇」 【第86回】ロッチ  シンプルな構図でコントに魂を吹き込む「関係性のスペシャリティ」 【第85回】山崎邦正 ダウンタウンによって強制開花した「ヘタレの天才」が巻き起こす奇跡 【第84回】フルーツポンチ 確かな演技力でポストバブル世代に現出した「キザ男のリアリズム」 【第83回】よゐこ 爆発力と切れ味で支持層を拡大する「自然体のシュール」 【第82回】バッファロー吾郎 マニアック芸人の権化が極めた「もうひとつの天下」 【第81回】ドランクドラゴン 完璧な構築物に風穴を開けて回る「鈴木拓のガッカリ力」 【第80回】高田純次 還暦過ぎても華衰えぬ「日本一の適当男」が歩み続けた孤高の道程 【第79回】森三中  メンバーの結婚で進化する「ブスとブスとブスの関係性」 【第78回】Wコロン・ねづっち  「整いました!」なぞかけ芸が時代にハマった深い理由 【第77回】所ジョージ  突出した安定感を生み出すボーダレスな「私の世界」 【第76回】土田晃之  元ヤン、家電、ガンダム......でも嫌われない「ひな壇の神」の冴えたやりかた 【第75回】タカアンドトシ  非関西系漫才のツッコミ新境地「欧米か!」が生まれた理由 【第74回】キングコング西野亮廣  嫌われるには理由がある!? 天才を悩ませる「出た杭の憂鬱」 【第73回】椿鬼奴  虚栄心から自由になった女芸人の「自然体が放散する魅力」とは 【第72回】萩本欽一  テレビを作り、テレビに呑み込まれた「巨人の功罪」 【第71回】アンガールズ  キモカワ芸人が精緻に切り出した「人生のNGシーン」に宿る笑い 【第70回】エハラマサヒロ   「究極の器用貧乏芸人」が無限の笑いをコラージュする 【第69回】なだぎ武 R-1二連覇を成した演技派芸人の「本当の運命の出会い」とは 【第68回】いとうあさこ 悲観なき自虐を操る「アラフォー女性のしたたかなリアル」 【第67回】チュートリアル M-1完全優勝を勝ち取った「ひとつもボケない」漫才進化論 【第66回】松村邦洋 己を棄てて己を活かす「笑われる天才」が生きる道 【第65回】キャイ~ン・ウド鈴木 20年目の変わらぬ想い──「満面の笑顔で愛を叫ぶ」 【第64回】しずる 緻密なマーケティングと確かな演技力で突っ走る「腐女子枠のプリンス」 【第63回】青木さやか 仕事も家庭も......不器用に体現する「現代女性の映し鏡」 【第62回】 今田耕司 好きな司会者第3位にランクされる「代弁者としての3つの極意」 【第61回】我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化する 【第60回】ハライチ "ツッコミ"を棄てた関東M-1新世代が生み出す「面の笑い」とは? 【第59回】出川哲朗 稀代のリアクション芸人が「計算を超えた奇跡」を起こし続ける理由 【第58回】中川家 すべてはここから始まった!? 兄弟が奏でる「舞台芸と楽屋芸のハイブリッド」 【第57回】板尾創路 笑いの神に愛された男が泰然と歩む「天然と計算の境界線」 【第56回】清水ミチコ 対象者の心を浮き彫りにする「ものまねを超えた賢人の不真面目芸」 【第55回】とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」 【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」 【第53回】ウンナン内村光良 受け継がれゆく遺伝子「終わらないコント愛」 【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」 【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由 【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」 【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」 【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化 【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」 【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」 【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける 【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感 【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる 【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ 【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末 【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」 【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心 【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは 【第37回】島田紳助 "永遠の二番手"を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」 【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは 【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」 【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」 【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由 【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」 【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」 【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」 【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か 【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは 【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が"竜兵会"で体現する「新たなリーダー像」 【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」 【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 既存イメージと「タモリ的なるもの」 【第24回】ケンドーコバヤシ 「時代が追いついてきた」彼がすべらない3つの理由 【第23回】カンニング竹山 「理由なき怒りの刃」を収めた先に見る未来 【第22回】ナイツ 「星を継ぐ者」古臭さを武器に変えた浅草最強の新世代 【第21回】立川談志 孤高の家元が歩み続ける「死にぞこないの夢」の中 【第20回】バカリズム 業界内も絶賛する「フォーマット」としての革新性 【第19回】劇団ひとり 結婚会見に垣間見た芸人の「フェイクとリアル」 【第18回】オードリー 挫折の末に磨き上げた「春日」その比類なき存在 【第17回】千原兄弟 東京進出13年目 「真のブレイク」とは 【第16回】狩野英孝 「レッドカーペットの申し子」の進化するスベリキャラ 【第15回】サンドウィッチマン 「ドラマとしてのM-1」を体現した前王者 【第14回】小島よしお 「キング・オブ・一発屋」のキャラクター戦略 【第13回】U字工事 M-1決勝出場「北関東の星」が急成長を遂げた理由 【第12回】江頭2:50 空気を読んで無茶をやる「笑いの求道者」 【第11回】バナナマン 実力派を変革に導いた「ブサイク顔面芸」の衝撃 【第10回】山本高広 「偶像は死んだ」ものまね芸人の破壊力 【第09回】東京03 三者三様のキャラクターが描き出す「日常のリアル」 【第08回】ジャルジャル 「コント冬の時代」に生れ落ちた寵児 【第07回】爆笑問題・太田光 誤解を恐れない「なんちゃってインテリ」 【第06回】世界のナベアツ 「アホを突き詰める」究極のオリジナリティ 【第05回】伊集院光 ラジオキングが磨き上げた「空気を形にする力」 【第04回】鳥居みゆき 強靭な妄想キャラを支える「比類なき覚悟」 【第03回】くりぃむしちゅー有田哲平 が見せる「引き芸の境地」 【第02回】オリエンタルラジオ 「華やかな挫折の先に」 【第01回】有吉弘行 が手にした「毒舌の免罪符」

キングオブコメディを優勝に導いた「リアリティの追求」と「勝利への執念」

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「KOC2010」公式HP
 9月23日、コント日本一を決めるお笑いイベント「オロナミンCキングオブコント2010」が東京・赤坂のTBSで行われ、キングオブコメディが優勝を果たした。彼らは2本演じたいずれのコントでも900点を超える高得点をマーク。2位のピースを大差で引き離して、賞金1,000万円と優勝の栄冠を手にした。キングオブコメディがこのような結果を残すことができたのはなぜなのか? 「リアリティの追求」と「勝利への執念」という2つの観点から考えてみたい。  一般に、コントを作る上では、「リアリティ」を追求することが欠かせない。極端にナンセンスに走るような特殊なネタを除いて、大半のコントには一定レベルのリアリティが求められる。それは、観客の共感と理解を誘って、笑いを生むためにはどうしても必要なものだ。  もちろん、天使や悪魔など、空想上の非現実的なキャラクターが登場するコントもある。また、実際にはあり得ないような奇抜な設定を題材にしたコントというのも決して珍しくはない。ただ、その場合にも、コントを組み立てる要素のどこかには必ず、現実を基盤にした部分がなければいけない。そこを足場にして、常識から非常識に橋渡しをすることで、笑いが生まれるのだ。  キングオブコメディのコントでは、今野が粘着質でうっとうしいキャラクターを演じて、高橋演じる常識人を一方的に振り回す。今野が演じる人物は、近寄りがたい怪しい雰囲気を漂わせていて、現実離れした危なさがある。ただ、それでも、その人物には、本人の中で倫理や思考の一貫性があり、そこにはきちんとリアリティが感じられるのだ。それがあるからこそ、今野の破天荒なキャラクターは気味悪がられたり敬遠されたりせずに、直接大きな笑いを獲得するのである。  また、ツッコミ役の高橋の演技もすばらしい。彼は、今野の横暴に振り回されながらも、決して大声で怒鳴り散らしたりはしない。その都度、相手を無視したり、軽くいなしたり、自然な反応をする。それは、私たちが実際におかしな人と出会ってしまったときの行動パターンにかなり近いのである。キングオブコメディのコントは、徹底的にリアルを基盤として成り立っているのだ。  さらに、今大会では、他の7組の芸人と比べても、彼らのネタは圧倒的によく練られていた。しっかりした起承転結があり、台詞や動きのひとつひとつにぶれがなく、同じネタを何度見ても楽しめるほどの質の高さがある。彼らが決勝で演じた2本のコントは、いずれも予選で見せたものだが、部分的に台詞が変わっているところがある。予選から決勝までのわずかな期間に、何度もネタを練り直し、ベストの状態になるまで推敲を繰り返したのだろう。そこには、とにかく優勝を成し遂げたいという彼らの執念が感じられた。  映画『キング・オブ・コメディ』では、ロバート・デ・ニーロ演じる主人公の冴えない男が、売れっ子人気コメディアンを誘拐して、彼の代わりに舞台に上がって「一夜の王」となる。キングオブコメディの2人は、正々堂々と実力で「一夜の王」となり、その芸名に恥じない偉大な称号を手にしたのだった。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田) ●サイゾーテレビ『ニコニコキングオブコメディ』緊急生放送決定! 本日24日22時よりニコニコ動画のサイゾー公式チャンネル「サイゾーテレビ」で『ニコニコキングオブコメディ』生放送スペシャルを放送いたします。 http://live.nicovideo.jp/gate/lv27645329 ・過去の『ニコニコキングオブコメディ』一覧 http://www.cyzo.com/2010/08/post_5162.html サイゾーテレビ http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120 ●ラリー遠田×岩崎夏海トークライブ 「もしM-1芸人がドラッカーの『マネジメント』を読んだら」 【出演】ラリー遠田、岩崎夏海 10月31日(日) ※前売券はローソンチケット(Lコード:32626)、電話予約、ウェブ予約にて販売。 電話予約:tel.03-3205-1556(Naked Loft) ウェブ予約:http://www.loft-prj.co.jp/naked/reservation/
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野沢直子 今振り返るカリスマ女芸人の「先駆者としての比類なき存在感」

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『アップリケ』(ワニブックス)
 8月18日、米在住の「出稼ぎ芸人」として知られる野沢直子が、初めての小説『アップリケ』(ワニブックス)を出版した。この作品は、社会に適応できない子どもたちの青春を描いた群像劇。劇作家・本谷有希子も絶賛するほどの本格的な純文学に仕上がっている。  現在30代以上のテレビ視聴者ならば、野沢直子の名前を知らない者はいないだろう。彼女は、1980年代後半から90年代初頭にかけて、女性芸人としては空前の大ブレイクを果たし、数々のバラエティー番組に出演して人気を博していた。特に、『夢で逢えたら』(フジテレビ系)でウッチャンナンチャンやダウンタウンと並んでコントを演じたり、『クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!』(日本テレビ系)で珍解答を連発したりしていた姿が記憶に焼き付いている人も多いだろう。元気いっぱいで明るく振る舞う一方、時には鋭く本質を突く発言で笑いを取るセンスもあり、都会的でアカ抜けた奇抜な髪形やファッションでも注目を集めていた。  だが、そんな野沢は、91年、人気の絶頂期に突如としてすべてのレギュラー番組を降板し、単身ニューヨークへと旅立ってしまった。その理由は、本人の発言によると、日本でのタレント活動に行き詰まりを感じていたためだという。  その後、野沢はアメリカ人男性と結婚して、生活の拠点を米国に移した。現在では、年に一度だけ帰国をして、日本のバラエティー番組に顔を出すのが通例になっている。  野沢のテレビタレントとしての最大の魅力は、その自由奔放さにあった。彼女がデビューした80年代当時、テレビに出る女性タレントの多くは、「女」らしく振る舞うことを求められていた。それは、女性芸人も例外ではなかった。たとえ、自分がブスやデブであることをネタにするとしても、それはそれでステレオタイプな「女らしさ」への反発にしかならない。いずれにせよ、そこに縛られていることには変わりがないのだ。  だが、野沢はデビュー当初から、そういうものをあまり意識させない特殊なタイプの女性タレントだった。それは恐らく、祖父が作家の陸直次郎、叔父が演出家・声優の野沢那智、といった芸術家気質の家系に育ったということも関係しているのだろう。彼女は、テレビの中でもごく自然に、男言葉に近い話し方でしゃべり、好き勝手にギャグを連発していた。  約20年前に野沢がテレビで見せていた自由で自然な振る舞いは、2010年現在の基準に照らし合わせると、ごく普通で当たり前のように見える。だが、当時はあれが画期的だったのだ。野沢は、女性はおしとやかに振る舞うべきだという社会通念に対する堂々たる反逆者であり、カリスマだった。女性視聴者にとって嫌みにならず、男性視聴者にも嫌われない。そのバランスを保つことができたのが、彼女が成功した最大の要因だ。  また、野沢は、いわゆる「お笑い」という枠にも縛られていなかった。お笑いの世界には、持ちネタがあり、間合いがあり、技術がある。また、先輩後輩の上下関係があり、求道的なプロ意識がある。野沢は、吉本興業に所属する女性芸人という立場でありながら、初めからそういったものに背を向けて生きてきたようなところがある。もともと、コミックソングを歌うパフォーマーとして世に出てきたということもあり、舞台で漫才やコントを演じる芸人の本道とは全く違うルートから、芸能界に入ってきたのだ。  本人の発言によると、彼女は、『夢で逢えたら』で共演したダウンタウンやウンナンといった男性芸人のお笑いセンスに打ちのめされて、日本での活動を断念したのだという。ただ、率直に言えば、芸人の誰もがダウンタウンやウンナンを目指す必要はない。野沢には野沢にしか持っていないキャラクターがあり、彼女にしかできない仕事があった。『夢で逢えたら』という番組の屋台骨を支えていたのは、自由に動いて場をかき回す野沢の存在だった。そんな器用さを備えていたのは、当時彼女しかいなかったのだ。  目の前にある山の頂上を一心不乱に目指すような立場から見ると、絶頂期にその地位をあっさりと手放す野沢の生き方は不可解にも見える。だが、野沢のそんな身軽で自由奔放な生き様こそが、そのまま彼女のタレントとしての魅力でもあった。日本とアメリカをまたにかけて活躍する野沢は、時代を先取りした天性のエンターテイナーである。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田)
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●連載「この芸人を見よ!」INDEX 【第89回】サバンナ 野生の勘で芸能界を疾走する「発展途上のロジカルモンスター」 【第88回】東京ダイナマイト 破壊なくして創造なし! ハチミツ流「笑いのセメントマッチ」 【第87回】トータルテンボス 進化を止めない本格派コンビを育てた「M-1急転直下の挫折劇」 【第86回】ロッチ  シンプルな構図でコントに魂を吹き込む「関係性のスペシャリティ」 【第85回】山崎邦正 ダウンタウンによって強制開花した「ヘタレの天才」が巻き起こす奇跡 【第84回】フルーツポンチ 確かな演技力でポストバブル世代に現出した「キザ男のリアリズム」 【第83回】よゐこ 爆発力と切れ味で支持層を拡大する「自然体のシュール」 【第82回】バッファロー吾郎 マニアック芸人の権化が極めた「もうひとつの天下」 【第81回】ドランクドラゴン 完璧な構築物に風穴を開けて回る「鈴木拓のガッカリ力」 【第80回】高田純次 還暦過ぎても華衰えぬ「日本一の適当男」が歩み続けた孤高の道程 【第79回】森三中  メンバーの結婚で進化する「ブスとブスとブスの関係性」 【第78回】Wコロン・ねづっち  「整いました!」なぞかけ芸が時代にハマった深い理由 【第77回】所ジョージ  突出した安定感を生み出すボーダレスな「私の世界」 【第76回】土田晃之  元ヤン、家電、ガンダム......でも嫌われない「ひな壇の神」の冴えたやりかた 【第75回】タカアンドトシ  非関西系漫才のツッコミ新境地「欧米か!」が生まれた理由 【第74回】キングコング西野亮廣  嫌われるには理由がある!? 天才を悩ませる「出た杭の憂鬱」 【第73回】椿鬼奴  虚栄心から自由になった女芸人の「自然体が放散する魅力」とは 【第72回】萩本欽一  テレビを作り、テレビに呑み込まれた「巨人の功罪」 【第71回】アンガールズ  キモカワ芸人が精緻に切り出した「人生のNGシーン」に宿る笑い 【第70回】エハラマサヒロ   「究極の器用貧乏芸人」が無限の笑いをコラージュする 【第69回】なだぎ武 R-1二連覇を成した演技派芸人の「本当の運命の出会い」とは 【第68回】いとうあさこ 悲観なき自虐を操る「アラフォー女性のしたたかなリアル」 【第67回】チュートリアル M-1完全優勝を勝ち取った「ひとつもボケない」漫才進化論 【第66回】松村邦洋 己を棄てて己を活かす「笑われる天才」が生きる道 【第65回】キャイ~ン・ウド鈴木 20年目の変わらぬ想い──「満面の笑顔で愛を叫ぶ」 【第64回】しずる 緻密なマーケティングと確かな演技力で突っ走る「腐女子枠のプリンス」 【第63回】青木さやか 仕事も家庭も......不器用に体現する「現代女性の映し鏡」 【第62回】 今田耕司 好きな司会者第3位にランクされる「代弁者としての3つの極意」 【第61回】我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化する 【第60回】ハライチ "ツッコミ"を棄てた関東M-1新世代が生み出す「面の笑い」とは? 【第59回】出川哲朗 稀代のリアクション芸人が「計算を超えた奇跡」を起こし続ける理由 【第58回】中川家 すべてはここから始まった!? 兄弟が奏でる「舞台芸と楽屋芸のハイブリッド」 【第57回】板尾創路 笑いの神に愛された男が泰然と歩む「天然と計算の境界線」 【第56回】清水ミチコ 対象者の心を浮き彫りにする「ものまねを超えた賢人の不真面目芸」 【第55回】とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」 【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」 【第53回】ウンナン内村光良 受け継がれゆく遺伝子「終わらないコント愛」 【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」 【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由 【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」 【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」 【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化 【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」 【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」 【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける 【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感 【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる 【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ 【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末 【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」 【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心 【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは 【第37回】島田紳助 "永遠の二番手"を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」 【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは 【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」 【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」 【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由 【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」 【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」 【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」 【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か 【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは 【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が"竜兵会"で体現する「新たなリーダー像」 【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」 【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 既存イメージと「タモリ的なるもの」 【第24回】ケンドーコバヤシ 「時代が追いついてきた」彼がすべらない3つの理由 【第23回】カンニング竹山 「理由なき怒りの刃」を収めた先に見る未来 【第22回】ナイツ 「星を継ぐ者」古臭さを武器に変えた浅草最強の新世代 【第21回】立川談志 孤高の家元が歩み続ける「死にぞこないの夢」の中 【第20回】バカリズム 業界内も絶賛する「フォーマット」としての革新性 【第19回】劇団ひとり 結婚会見に垣間見た芸人の「フェイクとリアル」 【第18回】オードリー 挫折の末に磨き上げた「春日」その比類なき存在 【第17回】千原兄弟 東京進出13年目 「真のブレイク」とは 【第16回】狩野英孝 「レッドカーペットの申し子」の進化するスベリキャラ 【第15回】サンドウィッチマン 「ドラマとしてのM-1」を体現した前王者 【第14回】小島よしお 「キング・オブ・一発屋」のキャラクター戦略 【第13回】U字工事 M-1決勝出場「北関東の星」が急成長を遂げた理由 【第12回】江頭2:50 空気を読んで無茶をやる「笑いの求道者」 【第11回】バナナマン 実力派を変革に導いた「ブサイク顔面芸」の衝撃 【第10回】山本高広 「偶像は死んだ」ものまね芸人の破壊力 【第09回】東京03 三者三様のキャラクターが描き出す「日常のリアル」 【第08回】ジャルジャル 「コント冬の時代」に生れ落ちた寵児 【第07回】爆笑問題・太田光 誤解を恐れない「なんちゃってインテリ」 【第06回】世界のナベアツ 「アホを突き詰める」究極のオリジナリティ 【第05回】伊集院光 ラジオキングが磨き上げた「空気を形にする力」 【第04回】鳥居みゆき 強靭な妄想キャラを支える「比類なき覚悟」 【第03回】くりぃむしちゅー有田哲平 が見せる「引き芸の境地」 【第02回】オリエンタルラジオ 「華やかな挫折の先に」 【第01回】有吉弘行 が手にした「毒舌の免罪符」

サバンナ 野生の勘で芸能界を疾走する「発展途上のロジカルモンスター」

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『サバンナのハイエナ』R and C Ltd.
 特定のテーマのもとに集められた芸人たちが、ひな壇に座って毎週熱いトークを展開する。雨上がり決死隊が司会を務めるトーク番組『アメトーーク』は、現代を代表する人気バラエティ番組となった。  高い視聴率を保ち、業界内での注目度もあるこの番組からは、今までに何人もの売れっ子芸人が輩出されてきた。企画との組み合わせ次第で、今まで世間で目立たなかった芸人が、急にその魅力を引き出され、脚光を浴びることがある。  その代表例ともいえるのが、サバンナの高橋茂雄だろう。高橋は、「中学のときイケてない芸人」「太鼓持ち芸人」という2つの企画で、情けなくて調子のいい自分のキャラクターを打ち出して、視聴者のハートをつかんだ。  中学時代に内向的な性格から暗い青春を過ごしたことも、先輩芸人に媚びへつらっていることも、一般人ならば隠しておきたい格好悪い一面である。ただ、お笑いの世界では、やり方次第で欠点やコンプレックスは強力な武器になる。コンプレックスを前向きにさらけ出して笑いに変えることで、高橋は『アメトーーク』が生んだスターの1人に名を連ねることになった。  吉本興業は言わずと知れたお笑い界の最大手であり、吉本芸人たちは巨大な派閥を形成している。だからこそ、バラエティ番組では、その内部での人間関係が常に話題にのぼり、それが番組や企画のキャスティングなどに影響を与えることも多い。  そんな中で、吉本芸人である高橋は、あえて「太鼓持ち芸人」という企画の先導役になった。そこで、吉本芸人同士の閉鎖的な上下関係が視聴者に与えるネガティブなイメージを逆手に取って、目上の人を喜ばせるヨイショの技術を、誰にでも応用可能なテクニックとして面白おかしく提示したのだ。そのことによって、高橋は『アメトーーク』でブレイクすることができた。  一方、相方の八木真澄は、数々の一発ギャグを持ち、日常でも常識外れのボケを連発する、一種の「天然キャラ」として知られている。ただ、八木の天然には、他のタレントや芸人の天然っぽさとは一線を画する特徴がある。それは、一見訳の分からないボケの中にも、彼なりのロジックがあり、一本筋が通っているということだ。  例えば、八木は『人志松本のゆるせない話』の中で、「ね・うし・とら・う・たつ・み・うま・ひつじ・さる......」という干支の覚え方に納得がいかないと語った。序盤はともかく、「うま」以降の並びでは、動物名をそのまま覚えなくてはいけないのは非合理だ、というわけだ。また、十二支の中で「たつ(辰)」だけが架空の動物であるのも納得がいかないという。そこで八木は、十二支すべてが架空の動物から成る新しい干支を提案する。  八木がこの話をしたとき、スタジオでは爆笑が起こっていた。ただ、ここで八木が語っていることは、あまりに突飛で奇想天外ではあるが、それなりにしっかりした理屈に裏打ちされている。大人の常識に縛られず、自由に発想できるからこそ、そういう考えが生まれるのだ。  八木は、最新刊『世界一長続きするダイエット』の中で、22年間続けてきたダイエット術の極意を記している。そこで書かれている内容は、ダイエット本としてはかなりしっかりしたもので、書いてあることもきわめて常識的でオーソドックスだ。  いわば、八木の天然は、知識や知恵が足りない、というよりも、自分なりのロジックを持って物事を見ている、という感じなのである。こういうタイプの人は芸術家に多い。最後には笑いに落とし込むことを義務付けられた「芸人」という職業だからこそ、たまたま「天然」というレッテルを貼られてしまっただけなのだ。  吉本興業が生んだ日本一の太鼓持ち芸人である高橋と、ロジカルな天然ボケを繰り出す八木。サバンナの2人は、それぞれが野生動物のように自分だけの武器を隠し持ち、それを売りにしてお笑い界を渡り歩いている。  彼らの唯一の欠点は、いずれの能力も先輩芸人と絡むことで最も有効に機能するため、必然的に1人の仕事が多くなり、コンビで活躍する機会を奪われてしまうことだ。彼らがお互いを生かすような方法論を身につけ、抜群のコンビネーションを発揮するようになったときにこそ、サバンナがコンビとして真にブレイクしたと言えるようになるだろう。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田)
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●連載「この芸人を見よ!」INDEX 【第89回】東京ダイナマイト 破壊なくして創造なし! ハチミツ流「笑いのセメントマッチ」 【第88回】トータルテンボス 進化を止めない本格派コンビを育てた「M-1急転直下の挫折劇」 【第87回】ロッチ  シンプルな構図でコントに魂を吹き込む「関係性のスペシャリティ」 【第86回】山崎邦正 ダウンタウンによって強制開花した「ヘタレの天才」が巻き起こす奇跡 【第85回】フルーツポンチ 確かな演技力でポストバブル世代に現出した「キザ男のリアリズム」 【第84回】よゐこ 爆発力と切れ味で支持層を拡大する「自然体のシュール」 【第83回】バッファロー吾郎 マニアック芸人の権化が極めた「もうひとつの天下」 【第82回】ドランクドラゴン 完璧な構築物に風穴を開けて回る「鈴木拓のガッカリ力」 【第81回】高田純次 還暦過ぎても華衰えぬ「日本一の適当男」が歩み続けた孤高の道程 【第80回】森三中  メンバーの結婚で進化する「ブスとブスとブスの関係性」 【第79回】Wコロン・ねづっち  「整いました!」なぞかけ芸が時代にハマった深い理由 【第78回】所ジョージ  突出した安定感を生み出すボーダレスな「私の世界」 【第77回】土田晃之  元ヤン、家電、ガンダム......でも嫌われない「ひな壇の神」の冴えたやりかた 【第75回】タカアンドトシ  非関西系漫才のツッコミ新境地「欧米か!」が生まれた理由 【第74回】キングコング西野亮廣  嫌われるには理由がある!? 天才を悩ませる「出た杭の憂鬱」 【第73回】椿鬼奴  虚栄心から自由になった女芸人の「自然体が放散する魅力」とは 【第72回】萩本欽一  テレビを作り、テレビに呑み込まれた「巨人の功罪」 【第71回】アンガールズ  キモカワ芸人が精緻に切り出した「人生のNGシーン」に宿る笑い 【第70回】エハラマサヒロ   「究極の器用貧乏芸人」が無限の笑いをコラージュする 【第69回】なだぎ武 R-1二連覇を成した演技派芸人の「本当の運命の出会い」とは 【第68回】いとうあさこ 悲観なき自虐を操る「アラフォー女性のしたたかなリアル」 【第67回】チュートリアル M-1完全優勝を勝ち取った「ひとつもボケない」漫才進化論 【第66回】松村邦洋 己を棄てて己を活かす「笑われる天才」が生きる道 【第65回】キャイ~ン・ウド鈴木 20年目の変わらぬ想い──「満面の笑顔で愛を叫ぶ」 【第64回】しずる 緻密なマーケティングと確かな演技力で突っ走る「腐女子枠のプリンス」 【第63回】青木さやか 仕事も家庭も......不器用に体現する「現代女性の映し鏡」 【第62回】 今田耕司 好きな司会者第3位にランクされる「代弁者としての3つの極意」 【第61回】我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化する 【第60回】ハライチ "ツッコミ"を棄てた関東M-1新世代が生み出す「面の笑い」とは? 【第59回】出川哲朗 稀代のリアクション芸人が「計算を超えた奇跡」を起こし続ける理由 【第58回】中川家 すべてはここから始まった!? 兄弟が奏でる「舞台芸と楽屋芸のハイブリッド」 【第57回】板尾創路 笑いの神に愛された男が泰然と歩む「天然と計算の境界線」 【第56回】清水ミチコ 対象者の心を浮き彫りにする「ものまねを超えた賢人の不真面目芸」 【第55回】とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」 【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」 【第53回】ウンナン内村光良 受け継がれゆく遺伝子「終わらないコント愛」 【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」 【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由 【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」 【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」 【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化 【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」 【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」 【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける 【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感 【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる 【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ 【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末 【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」 【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心 【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは 【第37回】島田紳助 "永遠の二番手"を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」 【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは 【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」 【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」 【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由 【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」 【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」 【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」 【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か 【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは 【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が"竜兵会"で体現する「新たなリーダー像」 【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」 【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 既存イメージと「タモリ的なるもの」 【第24回】ケンドーコバヤシ 「時代が追いついてきた」彼がすべらない3つの理由 【第23回】カンニング竹山 「理由なき怒りの刃」を収めた先に見る未来 【第22回】ナイツ 「星を継ぐ者」古臭さを武器に変えた浅草最強の新世代 【第21回】立川談志 孤高の家元が歩み続ける「死にぞこないの夢」の中 【第20回】バカリズム 業界内も絶賛する「フォーマット」としての革新性 【第19回】劇団ひとり 結婚会見に垣間見た芸人の「フェイクとリアル」 【第18回】オードリー 挫折の末に磨き上げた「春日」その比類なき存在 【第17回】千原兄弟 東京進出13年目 「真のブレイク」とは 【第16回】狩野英孝 「レッドカーペットの申し子」の進化するスベリキャラ 【第15回】サンドウィッチマン 「ドラマとしてのM-1」を体現した前王者 【第14回】小島よしお 「キング・オブ・一発屋」のキャラクター戦略 【第13回】U字工事 M-1決勝出場「北関東の星」が急成長を遂げた理由 【第12回】江頭2:50 空気を読んで無茶をやる「笑いの求道者」 【第11回】バナナマン 実力派を変革に導いた「ブサイク顔面芸」の衝撃 【第10回】山本高広 「偶像は死んだ」ものまね芸人の破壊力 【第09回】東京03 三者三様のキャラクターが描き出す「日常のリアル」 【第08回】ジャルジャル 「コント冬の時代」に生れ落ちた寵児 【第07回】爆笑問題・太田光 誤解を恐れない「なんちゃってインテリ」 【第06回】世界のナベアツ 「アホを突き詰める」究極のオリジナリティ 【第05回】伊集院光 ラジオキングが磨き上げた「空気を形にする力」 【第04回】鳥居みゆき 強靭な妄想キャラを支える「比類なき覚悟」 【第03回】くりぃむしちゅー有田哲平 が見せる「引き芸の境地」 【第02回】オリエンタルラジオ 「華やかな挫折の先に」 【第01回】有吉弘行 が手にした「毒舌の免罪符」

東京ダイナマイト 破壊なくして創造なし! ハチミツ流「笑いのセメントマッチ」

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『東京ダイナマイト グレートダイナ
マイトフロムヘル』
よしもとアール・アンド・シー
 8月3日、東京ダイナマイトのハチミツ二郎と元・メロン記念日のリーダーである斉藤瞳が入籍した。2人は今年初めから交際を開始。5月にメロン記念日が解散した際、それを機に故郷に帰ると言った斉藤に対して、ハチミツが「俺が一生面倒見るから新潟に帰るな」と言って指輪を渡したという。  東京ダイナマイトは、不思議なポジションにいる芸人である。一言で表すなら、「メジャーの中のマイナー」または「マイナーの中のメジャー」ということになる。ここ数年はテレビに出る機会もほとんどなかったので、世間での認知度はそれほど高いとは言えない。  だが、お笑い業界の内部に一歩足を踏み入れると、その評価は一変する。芸人、業界関係者、お笑いファンの間では東京ダイナマイトの名は知れ渡っていて、熱烈な愛好者も多い。セオリーから外れたことをやって笑いを取るという確かな実力があり、それが業界内では高く評価されているのだ。彼らが醸し出す「何かやってくれそう」という空気は唯一無二のもので、それが魅力になっている。  東京ダイナマイトというコンビを実質的に引っ張っているのは、ハチミツ二郎である。西口プロレス所属の現役プロレスラーでもあり、重量級の体格を誇る彼は、酒を豪快に飲み干す豪傑のようなイメージがある。だが、一方で、彼の中には計算高くて真面目な一面もある。だからこそ、身体表現力に優れた松田大輔を招き入れ、自分の理想とするネタを演じるためのパートナーに選んだのだ。  彼らの漫才は、ある程度お笑いに精通している人が専門的な目で見れば見るほど、ますます引き込まれてしまうようなところがある。ありがちなネタ運びやボケのパターンを極力避けて、何重にもひねってオリジナルな笑いを生み出していく彼らの芸風は、お笑いマニアの琴線に触れる。声を張らず、日常会話のトーンで淡々とツッコむハチミツの話術は、他の漫才師には真似できない奇妙で独創的なスタイルだ。  ただ、彼らが好まれるのは、そんな独自の芸風の裏に、どこか半笑いのハッタリ臭さが感じられるということだ。例えば、漫才の冒頭で日本刀を持って舞台に現れ、「刀持って来たぞー!」と高らかに宣言するパフォーマンスは、典型的なハッタリ芸である。もちろん、それがネタの本筋とは関係ないただのハッタリであることは、ハチミツも十分に自覚している。彼は、その点ではかなり戦略的に見る者の期待を煽り、自分たちの世界観を印象付けているのだ。彼自身も、初めてM-1の決勝に上がった2004年の時点で、漫才の冒頭で刀を持ち込むことについてこう語っている。 「それをやっても意味なんてないんだけど、なんかすごそうっていうのが好きなんです」  意味はないけど、なんかすごそう。恐らくこれが、「東京ダイナマイト」というコンビをプロデュースするにあたって、ハチミツが常に念頭に置いていることだ。  漫才中に松田が服を着替え、トレーニングマシーンに乗ってエクササイズを始める。漫才が始まってかなりの時間が経過した後に「どうも、東京ダイナマイトです」と自己紹介をする。「カヴァー」と称して、他の芸人の持ちネタをそのまま完全コピーして演じる。  こういった行動はすべて、「なんかすごそう」と思われたいがためにハチミツが仕掛けたものだ。そんな彼の発想の原点にあるのは、恐らく「プロレス」である。プロレスの世界では、ある種のハッタリがエンタテイメントになっている。ルールのもとで真剣に戦うことが求められる他の格闘技とは違って、プロレスではエンタテイメント性が何よりも重視される。ハッタリ、演出、予定調和。いかなる形でも、観客を盛り上げ、彼らの気持ちをつかまなくてはいけない。  いわば、ハチミツはプロレスラーの魂を持ってお笑いの世界を生きている数少ない芸人なのである。豪快にハッタリをかまし、自分の生き方を誇示して、リングに上がれば本気を見せる。たとえ芸人であっても、サラリーマンのように真面目に生きることを強いられがちな時代に、ハチミツはあえてそれを拒否して、型破りなファイトスタイルにこだわることで、同世代の芸人の中でも並外れた存在感を獲得することができた。  芸人にプロレス好きが多いのは偶然ではない。お笑いとは、現代日本で唯一、プロレス的な美学を残して生き延びている珍しいタイプのエンタテイメントだとも言えるからだ。ルチャリブレ(メキシコプロレス)のライセンスも取得している異色の芸人・ハチミツ二郎率いる東京ダイナマイトは、身も心もお笑い界最強のプロレスラーである。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田)
東京ダイナマイト グレートダイナマイトフロムヘル エンターティナーってやつ。 amazon_associate_logo.jpg
●連載「この芸人を見よ!」INDEX 【第88回】トータルテンボス 進化を止めない本格派コンビを育てた「M-1急転直下の挫折劇」 【第87回】ロッチ  シンプルな構図でコントに魂を吹き込む「関係性のスペシャリティ」 【第86回】山崎邦正 ダウンタウンによって強制開花した「ヘタレの天才」が巻き起こす奇跡 【第85回】フルーツポンチ 確かな演技力でポストバブル世代に現出した「キザ男のリアリズム」 【第84回】よゐこ 爆発力と切れ味で支持層を拡大する「自然体のシュール」 【第83回】バッファロー吾郎 マニアック芸人の権化が極めた「もうひとつの天下」 【第82回】ドランクドラゴン 完璧な構築物に風穴を開けて回る「鈴木拓のガッカリ力」 【第81回】高田純次 還暦過ぎても華衰えぬ「日本一の適当男」が歩み続けた孤高の道程 【第80回】森三中  メンバーの結婚で進化する「ブスとブスとブスの関係性」 【第79回】Wコロン・ねづっち  「整いました!」なぞかけ芸が時代にハマった深い理由 【第78回】所ジョージ  突出した安定感を生み出すボーダレスな「私の世界」 【第77回】土田晃之  元ヤン、家電、ガンダム......でも嫌われない「ひな壇の神」の冴えたやりかた 【第75回】タカアンドトシ  非関西系漫才のツッコミ新境地「欧米か!」が生まれた理由 【第74回】キングコング西野亮廣  嫌われるには理由がある!? 天才を悩ませる「出た杭の憂鬱」 【第73回】椿鬼奴  虚栄心から自由になった女芸人の「自然体が放散する魅力」とは 【第72回】萩本欽一  テレビを作り、テレビに呑み込まれた「巨人の功罪」 【第71回】アンガールズ  キモカワ芸人が精緻に切り出した「人生のNGシーン」に宿る笑い 【第70回】エハラマサヒロ   「究極の器用貧乏芸人」が無限の笑いをコラージュする 【第69回】なだぎ武 R-1二連覇を成した演技派芸人の「本当の運命の出会い」とは 【第68回】いとうあさこ 悲観なき自虐を操る「アラフォー女性のしたたかなリアル」 【第67回】チュートリアル M-1完全優勝を勝ち取った「ひとつもボケない」漫才進化論 【第66回】松村邦洋 己を棄てて己を活かす「笑われる天才」が生きる道 【第65回】キャイ~ン・ウド鈴木 20年目の変わらぬ想い──「満面の笑顔で愛を叫ぶ」 【第64回】しずる 緻密なマーケティングと確かな演技力で突っ走る「腐女子枠のプリンス」 【第63回】青木さやか 仕事も家庭も......不器用に体現する「現代女性の映し鏡」 【第62回】 今田耕司 好きな司会者第3位にランクされる「代弁者としての3つの極意」 【第61回】我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化する 【第60回】ハライチ "ツッコミ"を棄てた関東M-1新世代が生み出す「面の笑い」とは? 【第59回】出川哲朗 稀代のリアクション芸人が「計算を超えた奇跡」を起こし続ける理由 【第58回】中川家 すべてはここから始まった!? 兄弟が奏でる「舞台芸と楽屋芸のハイブリッド」 【第57回】板尾創路 笑いの神に愛された男が泰然と歩む「天然と計算の境界線」 【第56回】清水ミチコ 対象者の心を浮き彫りにする「ものまねを超えた賢人の不真面目芸」 【第55回】とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」 【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」 【第53回】ウンナン内村光良 受け継がれゆく遺伝子「終わらないコント愛」 【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」 【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由 【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」 【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」 【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化 【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」 【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」 【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける 【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感 【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる 【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ 【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末 【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」 【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心 【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは 【第37回】島田紳助 "永遠の二番手"を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」 【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは 【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」 【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」 【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由 【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」 【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」 【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」 【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か 【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは 【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が"竜兵会"で体現する「新たなリーダー像」 【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」 【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 既存イメージと「タモリ的なるもの」 【第24回】ケンドーコバヤシ 「時代が追いついてきた」彼がすべらない3つの理由 【第23回】カンニング竹山 「理由なき怒りの刃」を収めた先に見る未来 【第22回】ナイツ 「星を継ぐ者」古臭さを武器に変えた浅草最強の新世代 【第21回】立川談志 孤高の家元が歩み続ける「死にぞこないの夢」の中 【第20回】バカリズム 業界内も絶賛する「フォーマット」としての革新性 【第19回】劇団ひとり 結婚会見に垣間見た芸人の「フェイクとリアル」 【第18回】オードリー 挫折の末に磨き上げた「春日」その比類なき存在 【第17回】千原兄弟 東京進出13年目 「真のブレイク」とは 【第16回】狩野英孝 「レッドカーペットの申し子」の進化するスベリキャラ 【第15回】サンドウィッチマン 「ドラマとしてのM-1」を体現した前王者 【第14回】小島よしお 「キング・オブ・一発屋」のキャラクター戦略 【第13回】U字工事 M-1決勝出場「北関東の星」が急成長を遂げた理由 【第12回】江頭2:50 空気を読んで無茶をやる「笑いの求道者」 【第11回】バナナマン 実力派を変革に導いた「ブサイク顔面芸」の衝撃 【第10回】山本高広 「偶像は死んだ」ものまね芸人の破壊力 【第09回】東京03 三者三様のキャラクターが描き出す「日常のリアル」 【第08回】ジャルジャル 「コント冬の時代」に生れ落ちた寵児 【第07回】爆笑問題・太田光 誤解を恐れない「なんちゃってインテリ」 【第06回】世界のナベアツ 「アホを突き詰める」究極のオリジナリティ 【第05回】伊集院光 ラジオキングが磨き上げた「空気を形にする力」 【第04回】鳥居みゆき 強靭な妄想キャラを支える「比類なき覚悟」 【第03回】くりぃむしちゅー有田哲平 が見せる「引き芸の境地」 【第02回】オリエンタルラジオ 「華やかな挫折の先に」 【第01回】有吉弘行 が手にした「毒舌の免罪符」

トータルテンボス 進化を止めない本格派コンビを育てた「M-1急転直下の挫折劇」

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『漫才ベストライブ「しのびねぇな。
かまわんよ。』
(よしもとアール・アンド・シー)
 トータルテンボスは、今年で芸歴13年を数える中堅芸人だ。ツッコミの藤田憲右のアフロヘアーがトレードマークの彼らは、今では正統派漫才師として確固たる地位を築いている。だが、彼らが現在のポジションを手に入れるまでには多くの苦労があった。  トータルテンボスの2人は、1997年にコンビを結成。もともとコントを専門に演じていた彼らは、M-1をきっかけにして漫才の世界にのめり込んでいった。キャリアを重ねてネタを磨き、次第に観客の笑いを取れるようになってきたものの、M-1ではなかなか決勝に上がれなかった。そんな彼らが初めての決勝進出を果たしたのは、04年のことだ。  このとき決勝に上がることができた理由については、彼らは雑誌のインタビューなどでも冗談めかして語っている。それは、「今年のトータルテンボスはすごいらしいよ」という噂を、自分たちから流す、というものだ。そういう評判が口コミで広まることで、お笑いの専門家であるM-1審査員たちが、彼らに目を付けるきっかけができるのではないか、と考えたのだ。  ただ、もちろんそれだけが理由ではないだろう。04年の時点で、彼らには漫才の実力があったし、さらに、M-1で評価されるようなトリッキーな小技もあった。それは、「ハンパねえ!」「......じゃなくねえ?」などと若者言葉を連発したり、漫才の結末部分で「今日のネタのハイライト」と称して、いま演じたばかりの漫才のワンシーンをスロー再生の要領で演じたりしたことだ。  これらの技は、それだけで爆笑を取るほどの威力はない。だが、他の芸人がやっていないような斬新な試みをすることで、それがトータルテンボスという漫才師の個性となり、審査員からの評価につながったのだろう。この年には決勝7位に終わったが、彼らは確かな手応えを得た。  その後も彼らの挑戦は続いた。06年には二度目の決勝進出。この年には、漫才のライブで全国を回るツアーを開催していた。これは、単に漫才の実力を磨いて全国にファンを増やしていくという効果だけではなく、M-1の審査員に対して、自分たちが漫才に真剣に打ち込んでいることをアピールするという副次的効果も狙ったものだろう。M-1をめぐる戦いは、予選の前からすでに始まっていたのだ。この年の結果は決勝5位だったが、決勝審査員の松本人志からも好評価を得て、彼らはさらに自信をつけた。  翌年の07年には、彼らは優勝候補の一角にいた。前年に引き続いて漫才の全国ツアーも行って、技術はさらに洗練されていった。ここでの経験も生かされて、彼らはこの年も順調に決勝進出。決勝では、2本目のネタであえて1本目とは違ったパターンのオチを見せることで、審査員の心をつかもうとした。これは、M-1で戦い慣れている彼らならではのとっておきの秘策だった。2本目のオチでもきっちり笑いを取り、作戦は功を奏した。ここで勝利すれば、出場資格ギリギリの最後の1年で念願の優勝ということになる。ドラマのお膳立ては整っていた。  ところが、この年のM-1で笑いの神様が用意したシナリオは、彼らの予想の斜め上を行く衝撃的なものだった。それは、敗者復活戦から勝ち上がったサンドウィッチマンの優勝である。M-1史上空前の大逆転劇の前には、優勝に向けて一つ一つ着実に積み上げてきたトータルテンボスの努力さえもかすんでしまうほどだった。彼らにとってのM-1はここで終わった。  だが、芸歴10年を過ぎてから彼らの本当の快進撃が始まった。M-1という難関に正面からぶつかって得たものは、自分たちのネタに対する確固たる自信と、与えられたチャンスを着実にものにする堅実さだった。その後は、M-1での経験を生かして、08年から10年まで、『爆笑オンエアバトル』(NHK)のチャンピオン大会で前人未踏の三連覇を達成。また、お笑い映像コンテスト「S-1バトル」でも、大村朋宏が藤田を罠にかける「今月のいたずら」という企画で、二度の月間王者に輝いている。  悲運のM-1戦士は、あと一歩のところで優勝を逃した悔しさを乗り越えて、どんな舞台でも確実に笑いが取れる安定感抜群の頼もしい芸人になった。彼らは今もなお、押しも押されもしない「ハンパねえ漫才師」へと進化を続けている最中だ。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田)
漫才ベストライブ「しのびねぇな。かまわんよ。」 パねぇ! amazon_associate_logo.jpg
●連載「この芸人を見よ!」INDEX 【第87回】ロッチ  シンプルな構図でコントに魂を吹き込む「関係性のスペシャリティ」 【第86回】山崎邦正 ダウンタウンによって強制開花した「ヘタレの天才」が巻き起こす奇跡 【第85回】フルーツポンチ 確かな演技力でポストバブル世代に現出した「キザ男のリアリズム」 【第84回】よゐこ 爆発力と切れ味で支持層を拡大する「自然体のシュール」 【第83回】バッファロー吾郎 マニアック芸人の権化が極めた「もうひとつの天下」 【第82回】ドランクドラゴン 完璧な構築物に風穴を開けて回る「鈴木拓のガッカリ力」 【第81回】高田純次 還暦過ぎても華衰えぬ「日本一の適当男」が歩み続けた孤高の道程 【第80回】森三中  メンバーの結婚で進化する「ブスとブスとブスの関係性」 【第79回】Wコロン・ねづっち  「整いました!」なぞかけ芸が時代にハマった深い理由 【第78回】所ジョージ  突出した安定感を生み出すボーダレスな「私の世界」 【第77回】土田晃之  元ヤン、家電、ガンダム......でも嫌われない「ひな壇の神」の冴えたやりかた 【第75回】タカアンドトシ  非関西系漫才のツッコミ新境地「欧米か!」が生まれた理由 【第74回】キングコング西野亮廣  嫌われるには理由がある!? 天才を悩ませる「出た杭の憂鬱」 【第73回】椿鬼奴  虚栄心から自由になった女芸人の「自然体が放散する魅力」とは 【第72回】萩本欽一  テレビを作り、テレビに呑み込まれた「巨人の功罪」 【第71回】アンガールズ  キモカワ芸人が精緻に切り出した「人生のNGシーン」に宿る笑い 【第70回】エハラマサヒロ   「究極の器用貧乏芸人」が無限の笑いをコラージュする 【第69回】なだぎ武 R-1二連覇を成した演技派芸人の「本当の運命の出会い」とは 【第68回】いとうあさこ 悲観なき自虐を操る「アラフォー女性のしたたかなリアル」 【第67回】チュートリアル M-1完全優勝を勝ち取った「ひとつもボケない」漫才進化論 【第66回】松村邦洋 己を棄てて己を活かす「笑われる天才」が生きる道 【第65回】キャイ~ン・ウド鈴木 20年目の変わらぬ想い──「満面の笑顔で愛を叫ぶ」 【第64回】しずる 緻密なマーケティングと確かな演技力で突っ走る「腐女子枠のプリンス」 【第63回】青木さやか 仕事も家庭も......不器用に体現する「現代女性の映し鏡」 【第62回】 今田耕司 好きな司会者第3位にランクされる「代弁者としての3つの極意」 【第61回】我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化する 【第60回】ハライチ "ツッコミ"を棄てた関東M-1新世代が生み出す「面の笑い」とは? 【第59回】出川哲朗 稀代のリアクション芸人が「計算を超えた奇跡」を起こし続ける理由 【第58回】中川家 すべてはここから始まった!? 兄弟が奏でる「舞台芸と楽屋芸のハイブリッド」 【第57回】板尾創路 笑いの神に愛された男が泰然と歩む「天然と計算の境界線」 【第56回】清水ミチコ 対象者の心を浮き彫りにする「ものまねを超えた賢人の不真面目芸」 【第55回】とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」 【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」 【第53回】ウンナン内村光良 受け継がれゆく遺伝子「終わらないコント愛」 【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」 【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由 【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」 【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」 【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化 【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」 【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」 【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける 【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感 【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる 【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ 【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末 【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」 【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心 【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは 【第37回】島田紳助 "永遠の二番手"を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」 【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは 【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」 【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」 【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由 【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」 【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」 【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」 【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か 【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは 【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が"竜兵会"で体現する「新たなリーダー像」 【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」 【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 既存イメージと「タモリ的なるもの」 【第24回】ケンドーコバヤシ 「時代が追いついてきた」彼がすべらない3つの理由 【第23回】カンニング竹山 「理由なき怒りの刃」を収めた先に見る未来 【第22回】ナイツ 「星を継ぐ者」古臭さを武器に変えた浅草最強の新世代 【第21回】立川談志 孤高の家元が歩み続ける「死にぞこないの夢」の中 【第20回】バカリズム 業界内も絶賛する「フォーマット」としての革新性 【第19回】劇団ひとり 結婚会見に垣間見た芸人の「フェイクとリアル」 【第18回】オードリー 挫折の末に磨き上げた「春日」その比類なき存在 【第17回】千原兄弟 東京進出13年目 「真のブレイク」とは 【第16回】狩野英孝 「レッドカーペットの申し子」の進化するスベリキャラ 【第15回】サンドウィッチマン 「ドラマとしてのM-1」を体現した前王者 【第14回】小島よしお 「キング・オブ・一発屋」のキャラクター戦略 【第13回】U字工事 M-1決勝出場「北関東の星」が急成長を遂げた理由 【第12回】江頭2:50 空気を読んで無茶をやる「笑いの求道者」 【第11回】バナナマン 実力派を変革に導いた「ブサイク顔面芸」の衝撃 【第10回】山本高広 「偶像は死んだ」ものまね芸人の破壊力 【第09回】東京03 三者三様のキャラクターが描き出す「日常のリアル」 【第08回】ジャルジャル 「コント冬の時代」に生れ落ちた寵児 【第07回】爆笑問題・太田光 誤解を恐れない「なんちゃってインテリ」 【第06回】世界のナベアツ 「アホを突き詰める」究極のオリジナリティ 【第05回】伊集院光 ラジオキングが磨き上げた「空気を形にする力」 【第04回】鳥居みゆき 強靭な妄想キャラを支える「比類なき覚悟」 【第03回】くりぃむしちゅー有田哲平 が見せる「引き芸の境地」 【第02回】オリエンタルラジオ 「華やかな挫折の先に」 【第01回】有吉弘行 が手にした「毒舌の免罪符」

ロッチ シンプルな構図でコントに魂を吹き込む「関係性のスペシャリティ」

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『ロッチラリズム』(ジェネオン・
ユニバーサル)
 笑いを取るための方法には、大きく分けて2つの種類がある。それは、言葉で笑わせる方法と、動きで笑わせる方法だ。漫談や漫才では、前者の手法が主に使われる。また、はんにゃの「ズクダンズンブングンゲーム」や志村けんの「だっふんだ」は、後者の手法の典型である。ちなみに、芸人が実際にネタを演じるときには、それらを組み合わせて用いることが多いので、その区別は必ずしも明確ではない。  さて、そのような視点から考えてみると、ロッチの2人が演じるコントは、かなり特殊なものであるということが分かる。彼らのコントの多くは、言葉や動きで直接笑わせようとするつくりにはなっていない。だが、だからこそ、他の芸人のネタにはない何とも言えない味わいがあり、それが彼らの魅力になっている。彼らのネタは、どのように構築されているのだろうか。  ロッチのコントは、設定がとてもシンプルだ。2人の間にひとつの関係性があって、それを最初から最後まで延々となぞり続ける、というパターンが多い。その多くは、中岡創一が内気で情けないキャラクターを演じて、何らかの格好悪い部分を見せてしまい、それをコカドケンタロウが指摘して、しつこく延々といじり倒す、という形である。ひとつの関係性を保ったままでそれを最後まで引っ張っるというのは、かなり珍しいスタイルである。だが、それで笑いを取れるのは、彼らが笑いにつながるポイントを正確につかんでいて、そこだけを集中的に攻めているからだ。  ロッチのコントのテーマは「情けなさ」である。ほんの少しの下心や気取りが原因で恥ずかしい思いをするというのは、誰でも一度は経験があるだろう。格好悪くて情けない自分の姿は、できればずっと他人の目に触れないようにしたいものだ。だが、それがふと、何らかのアクシデントで他人に気付かれてしまうときがある。こういうときに人間は「情けない」という感覚を味わう。  ロッチのコントでは、中岡がその役回りを引き受けて、情けない姿をさらけ出す。そして、コカドはそれを見逃さずに素早くえぐり出し、その一点だけをどこまでも深く掘り下げて、中岡の格好悪い部分を徹底的にあぶり出していく。  ここで注目すべきは、コカドの怒濤の攻撃を堂々と真正面から受けきる中岡の芯の強さである。彼は、コカドに絡まれて、自分の中の気恥ずかしさを際限なく増幅され、厳しい立場に追い込まれる。それでも、中岡はコカドの攻撃を全部受け止めて、きっちりそれを自分の中に留めるのだ。無闇に反論したり、すねたりしない。とぼけた表情ですべてを受け入れるのである。これがなかったら、彼らのコントは目も当てられないものになりかねない。コカドが中岡を一方的にいじめているように見えてしまうだけだ。そうならないのは、中岡があの風貌とたたずまいで、コカドの波状攻撃をきちんと受けきってしまうからだ。  ロッチのコントには、特定のフレーズや動きに限定されるような笑いどころが少ない。彼らがひとつの関係性を演じることで、気まずい状況そのものを楽しむことができる。ただ、ロッチにはキャラクターやフレーズの飛び道具もある。コカドが演じるリアクション芸人「こんにちは根岸」や、中岡が演じる売れない俳優「十文字アキラ」は、『爆笑レッドシアター』でも人気キャラとして定着しているし、「笑ってまうくらい怒られてるやん!」に代表されるような、独特の言語感覚も魅力である。  ロッチは、言葉にも動きにも頼らず、人間同士の関係性だけを切り取ってコントを作る。それは、短絡的に目先の笑いを欲しがらないという点で、若手芸人の中でも類を見ない芸風だ。たったひとつの関係性を貫く独創的なネタを量産しているロッチは、一点突破主義のコント職人だ。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田) ●お笑いトークラリーpresents 「笑う犬の告白 ~人生で大切なことは全部お笑いで学んだ~」 【日時】8月4日(水) OPEN 18:30 / START 19:30 【出演】ラリー遠田、岩崎夏海 【Guest】吉田正樹 【会場】新宿ロフトプラスワン 前売¥2000/当日¥2500(共に飲食代別) ※前売券は7/3(土)よりローソンチケットにて発売。(Lコード:38927)
ロッチ 単独ライブ 「ロッチラリズム」 新世代、着々と。 amazon_associate_logo.jpg
●連載「この芸人を見よ!」INDEX 【第86回】山崎邦正 ダウンタウンによって強制開花した「ヘタレの天才」が巻き起こす奇跡 【第85回】フルーツポンチ 確かな演技力でポストバブル世代に現出した「キザ男のリアリズム」 【第84回】よゐこ 爆発力と切れ味で支持層を拡大する「自然体のシュール」 【第83回】バッファロー吾郎 マニアック芸人の権化が極めた「もうひとつの天下」 【第82回】ドランクドラゴン 完璧な構築物に風穴を開けて回る「鈴木拓のガッカリ力」 【第81回】高田純次 還暦過ぎても華衰えぬ「日本一の適当男」が歩み続けた孤高の道程 【第80回】森三中  メンバーの結婚で進化する「ブスとブスとブスの関係性」 【第79回】Wコロン・ねづっち  「整いました!」なぞかけ芸が時代にハマった深い理由 【第78回】所ジョージ  突出した安定感を生み出すボーダレスな「私の世界」 【第77回】土田晃之  元ヤン、家電、ガンダム......でも嫌われない「ひな壇の神」の冴えたやりかた 【第75回】タカアンドトシ  非関西系漫才のツッコミ新境地「欧米か!」が生まれた理由 【第74回】キングコング西野亮廣  嫌われるには理由がある!? 天才を悩ませる「出た杭の憂鬱」 【第73回】椿鬼奴  虚栄心から自由になった女芸人の「自然体が放散する魅力」とは 【第72回】萩本欽一  テレビを作り、テレビに呑み込まれた「巨人の功罪」 【第71回】アンガールズ  キモカワ芸人が精緻に切り出した「人生のNGシーン」に宿る笑い 【第70回】エハラマサヒロ   「究極の器用貧乏芸人」が無限の笑いをコラージュする 【第69回】なだぎ武 R-1二連覇を成した演技派芸人の「本当の運命の出会い」とは 【第68回】いとうあさこ 悲観なき自虐を操る「アラフォー女性のしたたかなリアル」 【第67回】チュートリアル M-1完全優勝を勝ち取った「ひとつもボケない」漫才進化論 【第66回】松村邦洋 己を棄てて己を活かす「笑われる天才」が生きる道 【第65回】キャイ~ン・ウド鈴木 20年目の変わらぬ想い──「満面の笑顔で愛を叫ぶ」 【第64回】しずる 緻密なマーケティングと確かな演技力で突っ走る「腐女子枠のプリンス」 【第63回】青木さやか 仕事も家庭も......不器用に体現する「現代女性の映し鏡」 【第62回】 今田耕司 好きな司会者第3位にランクされる「代弁者としての3つの極意」 【第61回】我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化する 【第60回】ハライチ "ツッコミ"を棄てた関東M-1新世代が生み出す「面の笑い」とは? 【第59回】出川哲朗 稀代のリアクション芸人が「計算を超えた奇跡」を起こし続ける理由 【第58回】中川家 すべてはここから始まった!? 兄弟が奏でる「舞台芸と楽屋芸のハイブリッド」 【第57回】板尾創路 笑いの神に愛された男が泰然と歩む「天然と計算の境界線」 【第56回】清水ミチコ 対象者の心を浮き彫りにする「ものまねを超えた賢人の不真面目芸」 【第55回】とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」 【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」 【第53回】ウンナン内村光良 受け継がれゆく遺伝子「終わらないコント愛」 【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」 【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由 【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」 【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」 【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化 【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」 【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」 【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける 【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感 【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる 【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ 【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末 【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」 【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心 【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは 【第37回】島田紳助 "永遠の二番手"を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」 【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは 【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」 【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」 【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由 【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」 【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」 【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」 【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か 【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは 【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が"竜兵会"で体現する「新たなリーダー像」 【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」 【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 既存イメージと「タモリ的なるもの」 【第24回】ケンドーコバヤシ 「時代が追いついてきた」彼がすべらない3つの理由 【第23回】カンニング竹山 「理由なき怒りの刃」を収めた先に見る未来 【第22回】ナイツ 「星を継ぐ者」古臭さを武器に変えた浅草最強の新世代 【第21回】立川談志 孤高の家元が歩み続ける「死にぞこないの夢」の中 【第20回】バカリズム 業界内も絶賛する「フォーマット」としての革新性 【第19回】劇団ひとり 結婚会見に垣間見た芸人の「フェイクとリアル」 【第18回】オードリー 挫折の末に磨き上げた「春日」その比類なき存在 【第17回】千原兄弟 東京進出13年目 「真のブレイク」とは 【第16回】狩野英孝 「レッドカーペットの申し子」の進化するスベリキャラ 【第15回】サンドウィッチマン 「ドラマとしてのM-1」を体現した前王者 【第14回】小島よしお 「キング・オブ・一発屋」のキャラクター戦略 【第13回】U字工事 M-1決勝出場「北関東の星」が急成長を遂げた理由 【第12回】江頭2:50 空気を読んで無茶をやる「笑いの求道者」 【第11回】バナナマン 実力派を変革に導いた「ブサイク顔面芸」の衝撃 【第10回】山本高広 「偶像は死んだ」ものまね芸人の破壊力 【第09回】東京03 三者三様のキャラクターが描き出す「日常のリアル」 【第08回】ジャルジャル 「コント冬の時代」に生れ落ちた寵児 【第07回】爆笑問題・太田光 誤解を恐れない「なんちゃってインテリ」 【第06回】世界のナベアツ 「アホを突き詰める」究極のオリジナリティ 【第05回】伊集院光 ラジオキングが磨き上げた「空気を形にする力」 【第04回】鳥居みゆき 強靭な妄想キャラを支える「比類なき覚悟」 【第03回】くりぃむしちゅー有田哲平 が見せる「引き芸の境地」 【第02回】オリエンタルラジオ 「華やかな挫折の先に」 【第01回】有吉弘行 が手にした「毒舌の免罪符」