明日10月3日に、在日ファンクのミニアルバム『連絡』がリリースされる。それを記念して、リーダーのハマケンこと浜野謙太と、ギターの仰木亮彦両名にインタビューを決行! 昨年9月に発売された2ndアルバム『爆弾こわい』からおよそ1年、「大きく変わった」という彼らの変化について聞いてきました!
──今回のミニアルバムはリード曲となっている「嘘」をはじめ、「ホームシック」「ダチ」「肝心なもんか」「不思議なもんでさ」……といった8曲構成になっていますが、タイトルの『連絡』には何か意味があるんですか?
浜野 最初から全体のパッケージを考えて作っていったわけではなく、全部の曲がそろってから、「これをひとつのパッケージにするとしたら?」って考えてつけたんです。
仰木 はじめはけっこういろいろ悩んだんですけど、どれもしっくりこなくて。でも最終的に僕が『連絡網』って思いついて、そこから「網」を消して『連絡』に落ち着いたっていう。
浜野 『連絡』にしようって言ったのは俺だよな?
仰木 でも、最初に『連絡網』って思いついたのは俺だったよね?
──……。今回、これまでのアルバムに比べると全体的にしっとりした、大人めな曲が多かったように思います。
仰木 ほら、いい「連絡」を取れる人は大人ですからね(笑)。
浜野 ただ、実際はそれぞれの曲のテーマを見ると子どもっていうか……むしろ「大人になりたい!」みたいな感じですよね。あ、"大人になりたい"っていいね。やっぱり、これタイトルにしようよ(笑)。
仰木 え!?
──前作のアルバムからおよそ1年ぶりのリリースとなりましたが、何か変化はありましたか?
浜野 やっぱり、「メンバーに曲を作ってもらおう」っていう"寛容な判断"をリーダーがしたっていうことですかねえ。
仰木 ……。
浜野 まあ正直なところ、書いてもらわなきゃいけない状況だったというか……。2ndアルバムを作った時に、実は俺がけっこうテンパってしまって、スタッフからも「メンバーにも曲を書いてもらったらどうですか?」って言われてたんですよ。そんな中、個人の仕事も増えてきて、リアルにメンバーの助けが必要になってきた。お客さんの耳も慣れてきて、1〜2時間のライブをやるのにも、メンバーの意見を取り入れて広がりを出さないと厳しくなっていたし。勢いだけではお客さんを満足させられなくなってたんですよね。
──いろんな要素がないとおもしろくないと。
浜野 そうですね。最近はももいろクローバーZとのライブしかり、イベント的なステージに呼ばれてちょっとやる、という機会が多くて。おかげで話題はそこそこあったんですけど、いざワンマンになると「もうちょっとできるんじゃないのか?」っていう不完全燃焼感があった。(注目される機会が増えたことで)僕たちの音楽を聴こうとしてくれる人たちは増えたのに、それにイマイチ応えられていないのかなと。
仰木 そういう状況を打開するためにも、今回は僕たちも曲を作ろうってことになったんです。
──しかも、今回のミニアルバムは、仰木さんの作った「嘘」がリード曲ですもんね。
仰木 そうなんですよ! いやぁ、ハマケンはすごく寛容になった。
──と、言いますと?
仰木 今までは、"ハマケン以外は曲を作っちゃいけない"っていう空気がありまして。もちろん、最初から自分たちがいろいろやりすぎてたら「在日ファンクとはこうだ」っていうものが明確に作れなかったと思うんですけど、最近少しずつ、いろんなことを振ってくれるようになったんですよ。
「京都」っていう曲で、ライブの時は歌い出しだけ僕がやったりしてるんですけど、スタッフが「次のアルバムは、仰木さんが歌う曲を1曲くらい入れちゃってもいいんじゃないですかね?」なんてボソっと言ったら、ハマケンが「いや、それはダメだ」って頑に拒否したりして(笑)。それが今、俺が作詞も作曲もした曲がリード曲になって、すごく感慨深いんですよ。単純に嬉しかったし。
浜野 俺も大人になったんだな(笑)。
──ちなみに、今回一番思い入れのある曲は?
浜野 在日ファンク全体に影響を与えた曲になったので、やはり「嘘」ですね。悔しいですけど。まず、「嘘」ができてから仰木の顔付きが変わったんですよ。「俺だって、いつまでもいじめられっ子のままじゃないんだぞ!」みたいな。それに、ほかの曲のアレンジにも影響を与えたし、ライブの時にゆったり演奏できるようになりましたから。やっぱり、自分だけが曲を作ってると、内心「これでいいのかな?」って思うんですよ。だけど、メンバーが作った曲をやる時って、「こいつが作った曲なんで、良くなかったらこいつのせいです」って気構えになれる(笑)。
仰木 そういうこと!? まあ、今まではそうやって気の抜けるところがなさすぎたんですよね。「嘘」のほかに、「肝心なもんか」もリズム隊で作ったんですけど、自分の曲以外の曲が入ってきたことで、ハマケンも力が抜けたかなと。
浜野 音楽はリラックスしないとできないですよね。
仰木 前はお客さんにキレてる時とかもあったもんね。
浜野 そ、そうですね……。「なめられちゃいけない!」みたいな気負いがありましたからね。だから、メンバーが作った曲を受け入れることで、「あれもしていいんだ、これもしていいんだ」って思えるようになって、気持ちに余裕が持てるようになったんですよ。この寛容な姿勢は、みんなにも学んでほしいよね。
仰木 ん?
浜野 ほら、国とか大阪市とかにだよ!
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──いきなり話が大きくなりましたね。仰木さんも、思い入れの強い曲ナンバー1は「嘘」ですか?
仰木 もちろん「嘘」もですけど、僕は「不思議なもんでさ」にも思い入れがありまして。今回のミニアルバムは3rdにつながるものに……という思いがあって、この曲を最後にするという配置で曲順を考えたのも、実は僕なんですよ。
浜野 いや、俺が仰木に話を振って決まったんだから、俺だ。
仰木 いや、俺が考えたんだよ(笑)。
──(笑)。ところで、冒頭でも触れていましたが、去年から今年にかけて、岡村靖幸さんリミックスの「爆弾こわい」を発表したり、ももいろクローバーZに関しては対バンライブのほかに、メンバーの有安杏果ちゃんにソロ曲「教育」を提供したり……こうしたコラボを経て、影響を受けた部分もあったのでしょうか?
浜野 うーん、岡村さんに関しては、実は対談した後にちょっとヘコんでしまって。「僕らは岡村さんとは違うことをやらなきゃ!」とは思いましたね。岡村さんて、音楽に対してすごく渇望感があるんですよ。あそこまでしないとあのリズムは作れないんだろうなって思うんですけど……同時に、「僕はリア充なんで、岡村さんと同じ事は思ってません!」って気持ちになってしまって。その時、「これができる」っていうより、「僕にはこれはできない」って感じたんです。でも、「自分はこれが絶対できない」っていう感覚のほうが、本当の意味での個性じゃないですか? そこに気がつかされましたね。
仰木 そういう感覚のほうが、僕ら確信を持ってるもんね。
──「いやいやそういうんじゃないし」っていう引いた感じが、なんだか在日ファンクっぽいですね。ももクロのほうはどうでしたか?
浜野 「教育」は、実は仕上がった後に「本当にあげたくない!」と思って(笑)。それくらい、しっくりきた曲になったんです。あのタイミングじゃなかったらももクロに楽曲提供なんてできなかったと思うし、すごくいいコラボレーションだったと思いますね。ただ、やっぱり終わったあとはまたヘコんで……「ああ、ももクロちゃんてこんなすげえんだ!」って。
仰木 大人だったんですよね。リハーサルの後、廊下で会った時に「あそこのくだりのところ、もう一度やらせてもらえませんか?」って言われて。それで、楽屋にわざわざ来てハマケンとの台詞のやり取りを練習したりしてね。
浜野 それに、ももクロを取り巻くスタッフさんたちもやりたいことをやっていて、それに対してファンが「それを待ってたんだよね!」って応えてた。アイドルとコラボなんかしたら、「でも、どうせ裏で会社がいっぱい動いてるんでしょ〜怖いよね〜」みたいな言い訳を自分がするんじゃないかって思ってたんですけど、それができないくらいももクロはパワフルだったんですよ。率直に、「人気があるってこういうことなんだ」って感じました。
──もうひとつ、これは超勝手に感じたことなんですが、今回のミニアルバムは、いじめ問題に揺れる現代社会の子どもたちの気持ちにもシンクロするのかなと。寂しさだったり、他人とのコミュニケーション不足だったり……これは意図したことではないのかもしれませんが、今後、社会に対して発信していきたいことってありますか?
浜野 前から、何事にも「ブレろ!」って思ってるんですよ。ブレたくない自分に挑戦していかないといけないんです。例えば僕は、今回のアルバムでメンバーに曲を書いてもらったり、メンバーの意見もちゃんと聞いたりしたことで、自分の世界を崩すことを味わった。
大津のいじめ事件で、いじめられた子が死んだ後に、いじめた子が「アイツ死によったで」なんて言ってた、という話がありましたよね? それを聞いて、大人は「極悪非道だ!」って言うじゃないですか。いくらなんでも、自分が加害者で、いじめていた子が死んだらショックを受けてくれるだろうと思ってるから。でも、そこでその子がケロっと見せていたのは、ブレたくなかったからじゃないかなって思うんです。その子は、「ブレたら負けだ」っていう、大人の世界から習ったことをまっとうしている、いわゆる"優等生"なんだと思うんですよ。だから、いい社会とか美しいものを作るためだったら、「ブレてもいいんじゃない」ってことを伝えたいんです。「あ、そうなの? そっちのほうがいいね!」って言う勇気を持ってほしい。これは、むしろ僕たち大人に重要なことかも。
仰木 在日ファンクって、コミカルなバンドだと捉えられがちだと思うんです。実際、笑ってもらえるっていうことは重要な要素だとも思っているし。でも、"笑い"としてしか捉えてないお客さんも多い気がしていて、もう一歩、自分たちの音楽に踏み込んで来て欲しいという時もあります。『爆弾こわい』のリリースツアーで、広島にも行ったんですが、「爆弾こわい」を演奏した時、お客さんのテンションがすごく高くて、鳥肌が立ちました。お客さんの中に共通の問題意識があれば、在日ファンクの曲って、決してコミカルなだけじゃないと思うんですよね。
──原爆の問題とシンクロした、ということですか?
仰木 そうですね。「嘘」を作った時は、"嘘をつくことは罪である"ということは念頭に置きつつも、「嘘も方便」という言葉もありますし、全ての嘘に対して、その人が責任を取るべき"絶対悪"だと言い切れるのかな? って感じていた部分があって。なるべく嘘はつきたくないけど、多かれ少なかれ、社会生活の中で気付かずにそう仕向けられているかもしれない。だから、嘘って「いい」「悪い」じゃなくて、そういう世の中をまわす"カラクリ"みたいなものだと思ったんですよね。
──仰木さん……けっこういろいろ考えてるんですね(笑)。なんだかでは、やっと幅が広がり始めたということで(!?)、今後の展開も、楽しみにしてます!
(構成=編集部/撮影=後藤秀二)
●在日ファンク
SAKEROCKの浜野謙太を中心とし、「日本に在りながらファンクを再認識する」ことを目指した7人組ファンクバンド。2010年1月にファーストアルバム『在日ファンク』でデビュー。11年にリリースした『爆弾がこわい』で注目を集め、さまざまなアーティストとのコラボレーションも展開している。
■RELEASE
『連絡』
10月3日にリリースされる、ミニアルバム。メンバーの仰木亮彦(Gt.)の「嘘」や村上基(Tp.)の「ダチ」など、浜野以外が手がけた楽曲が初めて起用されている。「あれは今回限りのデトックスなんですけど……よかったのかな」(浜野)という、ジェントル久保田(Tb.)の“不思議な語りが聴ける”ボーナストラックにも注目してほしい。
発売日/10月3日(水)、価格/1980円(税込)、発売元/P-VINE RECORDS