いまやすっかりアニメ、声優ファンの間に定着したライブイベントだが、ここ最近、ファンのマナー低下による問題が噴出している。 その最たるものが、東京・シネマサンシャイン池袋にて6月22日に開催された、テレビアニメ『超次元ゲイム ネプテューヌ』の先行上映イベントで起きた乱入事件だ。同イベント開催中、突如ステージにナイフを持った男が乱入、その後、現行犯逮捕された。来場者のTwitterから、男がイベントに出演していた声優・田中理恵を名指ししていたことなどが明らかとなっている。 田中理恵といえば、昨年、人気声優・山寺宏一と入籍した人気の女性声優。本業以外にも、歌手活動や水着グラビアを披露するなど、多岐にわたる活動でアニメファンにはよく知られる存在だ。 普段は明るく親しみやすい性格の彼女だが、ステージから避難する際に転倒し、膝を打撲。また、精神的なショックを受けたことが所属事務所・リトリートから発表され、イベント前まで頻繁に更新されていた公式Twitterも休止することになった。 今回の件に関して、アニメのイベント運営関係者は「犯人は、以前からマークされていた田中さんのストーカーではないか」と語る。 「以前から田中さんには、執拗なストーカー行為を行うファンがいることは関係者の間では知られていました。警備の目を盗んで控え室に忍び込んだことも、一度ではありません。犯人の顔も事務所には割れていたので、今までは入り口の段階で入場を拒否するなどして対応していたのですが……」(同) イベントの規模の大きさに比例して、犯人が会場に潜り込む隙が大きくなってしまったということか。ともあれ、一日も早い現場復帰を願いたいところだ。 一方、同日、東京・Zepp DiverCity Tokyoにて開催されたアニソンライブイベント「@JAM2013」会場でも、ファン同士による乱闘騒ぎが起きていた。 「アイドルマスター シンデレラガールズ」「μ's」「藍井エイル」など人気の女性アニソンシンガー・声優ユニットが競演する同イベント会場の最前列に、数名の集団が陣取り、ほかの観客の鑑賞を阻害したのみならず、最前列に近づく自分たち以外の観客を引き剥がす、暴行を加えるなどの迷惑行為を繰り返し、三森すずこ出演時にはついに流血騒ぎまで発生。イベント後、これらの暴力行為に対して、出演者もTwitter上で暗に批判を口にしていたことから、ステージ上からもその混乱具合が確認できていたと思われる。 「あちこちのアニメ系イベントに出没し暴れ回る、いわゆる『悪質なイベンター』集団は、実際に問題になっています。彼らはライブやイベントを楽しむというよりも、『目立ちたい』『暴れたい』という目的でイベントに来ています。ここ最近、イベンターたちの狼藉ぶりはますますひどくなってきており、イベントの進行を邪魔するようなコールや声かけ、イベンター同士で肩車してステージ上に上がろうとしたり……。特に分別がつかない若いファンが集まるイベントは、動物園みたいなノリですよ」(レーベルスタッフ) ここでいう「イベンター」とは、本来の「イベントを主催する人」という意味ではなく、「アニメ・声優系イベントに頻繁に行く人」という意味の、オタク界隈で使用されるスラングである。その中でも、先述のように迷惑行為を行うイベンターたちが「悪質なイベンター」である。 そういった「悪質なイベンター」たちの行動により、タレントにも被害が及びかねない事態も増えてきたことから、客席の最前列を使えないようにしてステージと客席の距離を空ける対応をしたイベントもあったそうだが、もっとステージの近くで応援したいという一般来場者から批判を受けてしまったなど、笑えないエピソードもあるそうだ。 このように、これまでは来場者の善意と彼らへの信頼を元にイベントを運営してきたアニメ・声優業界だが、今後は強硬な対応を取らざるを得なくなるのは必至だろう。早速、6月30日に開催される『変態王子と笑わない猫。』イベントでは、身分証の提示と手荷物チェックの実施が発表され、今後もこの流れは続くと思われる。 ファンとの距離感の近さが魅力の一つだったが、ファン人口拡大と質の低下に応じて、業界側のスタンスも再検討すべき時期にきているのかもしれない。 (文=龍崎珠樹)イメージ画像
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ネタ? 本気のSF? ジェットコースターアニメ『革命機ヴァルヴレイヴ』を再検証
そろそろ4月スタートの春クールアニメの最終回ラッシュに突入する、テレビアニメシーンですね。放送前の下馬評どおりに面白かった作品もあれば、「どうしてこうなった」な作品もあり、百花繚乱な今クールアニメらしく、さまざまな結末が描かれることになると思われます。 そんな中、最終話直前の現在もなお「これは面白いのか?」「いや、面白い!」と、いまひとつ評価が定まらないアニメが『ヴヴヴ』こと『革命機ヴァルヴレイヴ』です。 『機動戦士ガンダム』『コードギアス 反逆のルルーシュ』など、多数のヒット作を世に送り出したアニメ制作会社・サンライズによる超王道にして大作ロボットアニメとして、鳴り物入りでスタートした本作。T.M.Revolutionと水樹奈々というアニソン界のスターがデュエットするオープニング主題歌「Preserved Roses」は10万枚超のヒットを記録し、バンダイから発売された主役ロボット・ヴァルヴレイヴのプラモデルも、店頭に並ぶとすぐさま売り切れになってしまうほどのフィーバーぶりを見せています。 そんなグッズ関連が絶好調な『ヴヴヴ』ですが、唯一、賛否両論なのが肝心のアニメ本編のストーリーだったりします。 以前、この連載で「過去の名作ロボットアニメをオマージュしたシーンが続出!」(http://www.cyzo.com/2013/04/post_13198.html)と書いたように、どっかで見たことがあるような設定やシーンが続出する本作。「二国間の戦争に巻き込まれた中立コロニーに住む主人公が、偶然最新鋭ロボットに乗り込み、エースパイロットになる」という第1話を見た視聴者(っていうか筆者)は、てっきりこの後コロニーから脱出なり軍属になるなりして、主人公たちは刻の涙の一つや二つ見ちゃうのかなと推測したりもしたんですが、まったくそんなこともなく学生だけでコロニーに居座り「国家として独立宣言」しちゃったり、ヴァルヴレイヴのパイロットになった主人公・時縞ハルトはなぜか人に噛み付くと人格ごと乗り移る「ヴァンパイア化」しちゃったり。はたまた、元アイドルでありメインパイロットの一人・流木野サキが歌う挿入歌に合わせてミュージックビデオみたいな映像が流れたり、何かあるとSNSに情報を公開して「イイネ!」的なボタンを世界中の人に押してもらったり、その合間に敵が攻めたり撤退したり……。なんだか妙に緊張感がないというか、全体的に文化祭の催しごとみたいに楽しいアトラクション満載の学園生活っぽい雰囲気すら漂っています。 非常に精緻な作画で描かれるキャラクターたちと、一機ごとに異なる性能を持つヴァルヴレイヴたちによる目の離せないロボットバトル。そのヴィジュアルを支える千住明による緊迫感満点のサウンドトラック(ガンダムファン的には『機動戦士Vガンダム』の人でおなじみですね)。 そんなヴィジュアル&サウンドが醸し出すヘビーな作風に対する期待感とはちょっと違う内容に、ネット上では「何がやりたいのかわからない」「ネタアニメなのか、本気のSFアニメなのかわからない」「なんで敵はいちいち手加減してくれるの?」など、突っ込みどころ満載の内容に酷評も少なくありません。 しかし、その一方で「毎回何が起こるかわからなくて面白い」「キャラのセリフや行動がいちいち斜め上をいってて目が離せない」など、ジェットコースター感覚を楽しむ声もあり、その楽しみ方を裏付けるようにアニメ雑誌では「スタッフそれぞれがロボットアニメの中で『見たい!』と思っているもの」をぶち込んだ、極めて快楽原則にのっとった作りになっていることが明かされています。 その結果が、第7話の櫻井アイナの突然の戦死だったり、第10話のハルトきゅんがサキをいきなり押し倒すレイプシーンだったりしたわけですね。スタッフはそういうシーンを見たかったのかもしれないけど、視聴者としてはいきなりすぎてビックリしましたよ~。しかし、この「いきなり」な展開こそ本作最大の魅力であるジェットコースター感覚の最たるもの。 確かにこれらのシーンはネット上でも賛否両論でしたが、実際のところ放送直後はDVD/Blu-rayのアマゾンランキングが急上昇したそうです。その購入者たちが本作のジェットコースター感覚を楽しめているかどうかは定かではありませんが、楽しみ方を理解するファンは確実に増えつつあるのです(購入者たちが単にエログロ好きだったという可能性も、なきにしもあらずですが)。 また物語も佳境に突入していく中で、どこか牧歌的な空気すら漂わせている主人公たちの住むコロニーや、そこを攻め落としたいのかどうかよくわからない動きをするドルシア軍の裏に何やら大きな秘密が隠されていることも明らかになってきました。なぜ敵軍は、本格的に主人公たち学生を殺しに来なかったのか。なぜ主人公たちの住む学校の下に、最新鋭のロボットが隠されていたのか。そして、なぜ主人公たちは、ヴァルヴレイヴのパイロットに選ばれたのか……。 ご都合主義と思われていたストーリーには、すべてちゃんとした理由が存在していたのです。その謎が徐々に明かされていく快感は、今まで途中下車することなくジェットコースターに乗っていた視聴者だけの特権といえるでしょう。 本作は分割2クール作品なので、とりあえず前半のストーリーは6月で終了しますが、続きは10月からスタート。今年いっぱいは『ヴヴヴ』の先の読めないジェットコースターなストーリーを楽しめそうですね。 (文=龍崎珠樹)『革命機ヴァルヴレイヴ』公式サイトより
「『けいおん!』で人生が変わった」将棋界の重鎮“みっち”高橋道雄九段の、ほとばしるアニメ愛
金髪パンチパーマや決めゼリフ「まじやべぇ!」など強烈なキャラで業界内外から注目を浴びる橋本崇載八段、軽妙な語り口やスイーツ大好きという個性的なキャラで将棋ファンに愛される加藤一二三九段といった個性的な棋士が話題になる一方、コンピューターとプロ棋士がガチンコで将棋の強さを競う「電王戦」をニコニコ動画で生放送するなど、最近何かとアグレッシブな動きを見せる将棋界。 そんな中で、いま特に注目を集めている棋士が「みっち」こと高橋道雄九段だ。御年53歳にして、先日開催された第5回AKB48選抜総選挙の上位3位の予想を見事に的中させ、ニコ動で放送された将棋の生中継では解説そっちのけでアニメ『けいおん!』に対する思いを熱く語るなど、将棋のお堅いイメージとは真反対のキャラクターを発揮する氏は、3月より個人ブログを開設。そこでもやはり、アニメやアイドルに対する、ほとばしるパッションを炸裂させている。 こうなったら、思う存分大好きなアニメやアイドルについて語ってもらおう! ということで、本人を直撃した! ──4月にニコニコ生放送で配信された第71期名人戦第2局2日目の解説で、「『けいおん!』で人生が変わった」と発言され、多くの将棋ファン、アニメファンに衝撃を与えた高橋九段ですが、この発言は事実なんですか? 高橋 はい。まさしくそうです。ブログを始めたのも、それが言いたかったからです。昔からずっと漫画──特に少年誌が好きで、「サンデー」「マガジン」「ジャンプ」といった雑誌やコミックスを買っていました。ただアニメとなると、娘が小さい頃は「娘と一緒に『セーラームーン』とかを見ている」という理由付けが世間に対してできていたんですが、この年になって男一人でアニメを見ているというのは、ちょっと恥ずかしくて……(苦笑)。それに最近はアニメがあまりにも多すぎて、どれを見たらいいのか分からなくて少し疎遠になっていたんです。 ──その中でも、特に『けいおん!』がよかった理由はなんだったのでしょうか? 高橋 説明しろと言われて、言えるようなものではないですね。パッと見て「これはいいな」と思ったから、そのままハマっちゃった感じでした。キャラクターの存在もありましたが、何より音楽が絡んでいるのが大きかったです。 ──『けいおん!』のキャラの中では、誰がお気に入りですか? 高橋 (ちょっとはにかみつつ)私はムギちゃん(キーボード担当の琴吹紬)。ホワホワしたところが大好きです。 ──分かります(笑)。しかし、ハマる最大のポイントは音楽だったんですね。 高橋 私の基本は音楽です。アニメも音楽が絡んでくるかどうかですごく違ってきて、今ハマっている『ラブライブ!』もそうなんですが、歌を一緒に歌って楽しめる部分があるかどうかは重要ですね。私にとって音楽は聴くためではなく、歌うためのものです。ほぼ毎日、寝る前に口パクで歌う練習もしています。 ──ちなみに、最近のヒットチューンはなんですか? 高橋 『ラブライブ!』の曲と、『とある科学の超電磁砲』シリーズのオープニングテーマです。 ──『ラブライブ!』といえば先日、「6thシングルセンター争奪第5回総選挙」が行われましたね。 高橋 そうなんですよ。終わってから選挙の存在を知って「あ~、しまったな」と思いましたね。次は絶対に参加したい! ……でも、誰が一番とか選べないですよ(ため息交じりに)。本当は全員に投票したいです。それじゃ、選挙にならないけど(笑)。 ──声優だと、三森すずこさんがお気に入りだそうですね。 高橋 まだあまり声優さんについては詳しくないんですが、とある作品で三森さんの声を聞いて「いい声優さんだな」と思いましたね。彼女以外にもPileさんは歌もダンスもうまいし、飯田里穂さんも明るい感じでいいですね。でも、私にとってアニメの基本は『けいおん!』なので、声優さんも「あ、『けいおん!』に出ていたあの人は、次はこのアニメに出るんだ」っていうふうに見ちゃいますね。
──もし誰か一人、声優さんにお会いすることができるとしたら、どなたと会ってみたいですか?
高橋 もしできることならば、豊崎愛生さんと一緒に歌いたい! やっぱり『けいおん!』の曲を歌いたいです。「GO! GO! MANIAC」「Utauyo!!MIRACLE」とかかなり速くて大変な曲をあんなに楽しく歌っているのを聴いていると、自分も一緒に歌いたくなります。
──そろそろ4月スタートの春クールアニメもクライマックスに突入していますが、高橋九段が今ハマっているアニメはなんですか?
高橋 一概にどれが一番とかは言えないのですが、やっぱり『とある科学の超電磁砲S』かなあ。あとは『翠星のガルガンティア』がすごくいいですね。ほかには、世間的に注目されている『進撃の巨人』を、個人的にはどう判断すべきか悩ましいところですねえ。面白いんだけど、あのストーリーはどうだろう、とか(笑)。ただ画面の作りが素晴らしいので、見ていて面白いですよね。
──アイドルにも精通されている高橋九段ですが、最近はAKB48関連でメディアに出ることも多いですね。
高橋 アイドルも好きで、アニメに行く前はそっちに傾いてました。基本的に、それぞれの時代に注目されている人たちは見てきました。最初は恐らく桜田淳子、山口百恵、森昌子の三人娘で、それからキャンディーズ、ピンク・レディー、おニャン子クラブ、モーニング娘。とハマって、必然的にAKB48に行きました。要するに、テレビが好きだったんです。テレビを見ていて面白いなと思ったのが、アニメやアイドル、音楽だったわけです。昔は音楽番組も花盛りでしたから、ずっとテレビを見ていました。
──ちなみに、高橋九段の推しメンは誰ですか?
高橋 ゆきりん(柏木由紀)です。
──でも今回の総選挙では、NMB48の山田菜々さんに投票されたそうですね。
高橋 彼女のことが好きというか、評価しているんです。チームのため、仲間のためにすごく努力していて、もう少しみんなに知られてもいいんじゃないかなという人って何人もいて、山田さんもその一人です。NMBの中でも、トップ2の陰にちょっと隠れがちなので、もっと前に出てほしいなと思って入れさせていただきました。そんな山田さんは今回28位。大躍進しましたね(第4回では46位)。ちゃんと評価してくれる人が、ほかにもいてくれるのはありがたいです。
──最近では、ももいろクローバーZなんかが人気ですが、そちらはいかがですか?
高橋 (ももクロは)佐々木彩夏さんはかわいいと思うんですが、歌があまりピンとこなくて……。
──やっぱり、音楽が重要な判断基準になっているんですね。
高橋 はい。結局、自分が歌いたいかどうかなんですよね。AKBは、だいたい30曲くらいは歌えますよ。ただ、確かにアニメとかアイドルを見るのも好きなんですけど、週に2回くらい、かなり向上心に燃えつつ30年くらいテニスをやってるんです。だから私の趣味は、アニメ、アイドル、テニスの三本柱ですね。
──こうやってお話を伺っていると、娯楽に対する感度がすごく高いことに驚かされます。一方、高橋九段の本業である将棋界は、既存のイメージだと非常に堅い印象もあったのですが、ここ最近は「電王戦」やネットでの実況中継など新たなメディアを活用した展開や、個性的な棋士がメディア露出する機会が増えて話題を呼んでいます。
高橋 対局している姿だけ見ると、将棋の世界って難しそうなイメージがあると思いますが、実のところは比較的伸び伸びとしています。拘束時間は少ないし、完全に実力主義なので、年齢に関係なく尊敬される方も、そうでない方もいますし、上下関係もあまりない。意外と「こうしなきゃいけない」というルールがないので、自分なりの個性を出せる方が多いのではないかなと思います。そうは言いつつも、恐らく今までの将棋界だと何かと堅い意見も出てきたと思うんですけど、時代も世代も変わっていく中で、今の時代に合わせていこうという人たちが増えてきていることは確かですし、当然そうせねばいけないと思います。
──一時は人気が低迷した時期もありましたが、最近では、子どもたちの間で将棋人口が増えていると聞きます。
高橋 はい。子ども大会みたいな催しをやると、どの会場にも何百人と子どもたちが集まります。人間同士でゲームを楽しむことで、考える力や人とのコミュニケーション能力もつくと思いますし、テレビゲームに負けず劣らず、子どもたちに娯楽として受け入れられている現状はうれしい限りです。現在、ネットの世界でも将棋が受け入れられているのも、やはり将棋という存在そのものに魅力があるということだと思います。
──ネット時代になって、新たな魅力を発信している将棋界ですが、「まじやべぇ!」で有名な橋本八段など、若くて個性的な新世代の棋士が出てきていますし、人気の若手声優・岡本信彦さんはかなりの実力者だという話も聞きます。
高橋 私としてはAKB48のグループの中で、将棋を指す子が出てこないかなという希望があるんです。将棋のプロや達人の中からアイドルが出てくるのではなく、アイドルの中から将棋の強い子が出てきてもいいんじゃないかなと思います。
──そういう子たちを集めて、高橋九段プロデュースの将棋ユニットとか作ってみたり……。
高橋 やれるものならやってみたい(笑)。それはたぶん、その人自身のためになると思います。あれだけ多くのアイドルがいたら、かわいいだけだと個性が埋没してしまいますし、「アニメが好き」とか言っても、そこまで注目されないですしね。そこで「将棋をやっている」ってなったら、注目されると思いますよ。まあ将棋界だと、私みたいにアニメが好きとかいうと、異端ということで注目されるんですけど。……本当にプロデュースさせてくれないかなあ。
──ところで、『けいおん!』好きをカミングアウトしたニコ動での解説に関して、将棋連盟から何か言われましたか?
高橋 たぶん将棋連盟の人たちは、なんの話をしているか分かっていないと思います。だから特に何も言われていません。ただ従来の将棋番組だと将棋の話しかできなかったし、そうであるべきだったんですけど、今回のニコ動での実況を含めて、ネットのおかげで自分の本当の姿を出せるようになりました。
──ネットというメディアは、今までテレビでは出せなかった個性を出せる自由なメディアだと思いますか?
高橋 それは思いますね。以前より世間には将棋に対する固定観念があって、ごく一面しか見てもらえていない。素の自分が出せていないと、ずっとじれったく思っていたんです。今回ブログを始めたのも、本当の自分、素の部分を出したかったというのが最大の理由ですね。
──いい大人がアニメを見るなんて、という風潮はまだ世の中にあると思いますが、そんな中で高らかにアニメ愛、アイドル愛を掲げる高橋九段に勇気づけられる同世代も多いと思います。
高橋 それが一番言いたいことなんです! 私も、この年代でアニメを見るなんて恥ずかしい、って思っていたことが恥ずかしいです。何歳になっても、好きなことは好きって言っていいんじゃないか。それが一番大事なことだと思います。「みんな好きなことは、好きなようにやっていこうよ」って、同年代の人たちに言ってあげたいですね。もちろん、やるべきことはちゃんとやりながらですよ(笑)。でも、「人生は一回しかないから、しっかりやりたいことはやっていこうよ」というメッセージに共感していただけたらうれしいです。
(取材・文=有田シュン)
●たかはし・みちお
1960年4月23日生まれ。将棋棋士。タイトルを5期獲得、順位戦A級を13期に渡って在籍。重厚・沈着な棋風と無口な印象から「地道高道」と呼ばれる、棋界の重鎮。また、AKB48の大のファンであり、漫画・アニメや特撮などのサブカルチャーから英会話、テニスまで幅広い趣味を持つ。
ブログ「みっち・ザ・わーるど」
<http://ameblo.jp/t-mitch142/>
「秋葉原みたいにエロに溢れかえるのはダメ」と宣言する、「阿佐ヶ谷アニメストリート」って……?
JR東日本都市開発が、高円寺駅~阿佐ヶ谷駅間の高架下に予定している「阿佐ヶ谷アニメストリート」計画。これには、単に地元の杉並区だけではない、広い地域の発展が見込まれている。 杉並区は、全国で練馬区に次いで2番目にアニメ関連企業が集中する地域。これまで、日本最初の施設アニメ関連展示施設である「杉並アニメーションミュージアム」や、西武新宿線上井草駅前に作られた「ガンダムモニュメント」が知られるところだ。 今回の計画で使われるのは、高円寺駅~阿佐ヶ谷駅間の、これまで駐車場や倉庫として使用されていたところ。2つの駅の間の高架下は、地元の人にはよく知られた生活道路。どちらも駅からしばらくは、ちょっと味のある飲食店やショップ並ぶ商店街となっている。 ここに新たに登場するストリートの長さは約100メートル、敷地面積は約2,000平方メートルで、そこにフィギュア工房、コスプレ衣装のオーダーメイド店、撮影スタジオ、配信スタジオなどの「クリエイターズ・アンテナショップzone」、キャラクターグッズやCD・DVDなどの「物販zone」、さらには「製作スタジオzone」、展示・イベントスペースを併設した「カフェ」、専門学校のサテライト教室や就業体験ができる「大学・専門学校zone」と多種多様な店舗が軒を連ねることになる。いわば、歩いているだけでも楽しめる、アニメの商店街ができるわけである。 そこで気になるのは、都内のほかの地域との連携だ。本サイトでも幾度か報じているように、秋葉原は従来の利用者を超えて、観光地として国内はもとより国外からの訪問者を増やそうと模索している。高円寺のお隣・中野区の中野駅前商店街からつながる中野ブロードウェイも、オタク文化の中心軸のひとつだ。JR東日本都市開発の担当者は、次のように説明する。 「そうした地域と対抗しようとは思っていません。むしろ、総武線の黄色い電車がアニメ文化のひとつの軸となることを目指しているんです」 と、実はここまでは電話取材で「なるほど」と聞いていたワケなのだが……なぜか電話の向こうの担当者は、聞いてもいないのに、こんなことを言い出した。 「でね、出店にエロはダメなんです」 何を言いたいのか? 「やはり、マンガやアニメにはエロもあるじゃないですか。秋葉原の街なんか、そんなもので溢れ返っている。でもね、阿佐ヶ谷アニメストリートは、エロはダメなんです」 聞いてもないのに、いったいこの人は何を言い出すのだろう。その話の最後に、電話口の担当者は、こう言った。 「私は、もう異動なんですよ」 ううむ、どうせ異動するから何を話しても構わないと思ったんだろうか? いずれにしても「秋葉原にエロが溢れている」なんて思い込んでいる人間が担当していたら、うまくいくハズもない。この人事異動は正解だね! (取材・文=昼間たかし)阿佐ヶ谷駅(Wikipediaより)
公式自ら“作画崩壊”宣言『スパロウズホテル』1期は、本当にダメアニメだったのか
味がありすぎる作画とドライブ感あふれる内容で、一部のアニメファンの間で中毒患者を続々と生み出しているのが、現在放送中のアニメ『スパロウズ・ホテル』(ニコニコ動画、AT-X、KBS京都、テレ玉など)です。 本作は、繁華街のど真ん中に立地するビジネスホテルを舞台とした「まんがライフ」(竹書房)連載中のコミック(原作・山東ユカ)を原作とする、およそ3分間のショートアニメ。本作は第1話放送直後に、公式サイトに「一話から作画崩壊しておりますが、DVD商品ではディレクターズエディションとして、全話数の作画・キャラクターデザインを一新します。先ずは、あたたかい目でお見守り下さいますと幸いです」というコメントを掲載。公式自ら「作画崩壊」を認め、異例の全話リメイクを放送開始直後に発表し、アニメファンを驚愕させました(現在は「作画崩壊」に関する文言は削除されている)。 「公式で作画崩壊を認めるのか」と、この状況を面白がる声が上がる一方で、「仕込ではないのか」「話題づくりでは」と指摘する声もあり、この一連の出来事は多くがアニメ系まとめサイトやニュースサイトを賑わせたことを覚えている読者も少なくはないのでは? その後、本作は第6話をもって「SEASON1」を終了。第7話より「あいまいみー」を手がけた、いまざきいつきを監督・脚本・キャラクターデザイン・絵コンテ・演出・作画に迎えた「SEASON2」をスタートさせたわけですが、両シーズン間の違いは主に以下のとおり。 ・90年代のギャルゲーを彷彿とさせるトラディショナルなタッチのキャラクターデザインの「SEASON1」に対し、「SEASON2」はいわゆるここ数年の「萌え」文脈に則ったキャラクターデザインへとリファイン。 ・作画が安定しなかったりやたら動画枚数が少ない「SEASON1」に対し、「SEASON2」の作画は全体的に安定し、動きも心なしかなめらかな仕上がりとなっている。 ・「SEASON1」はともすれば不条理ともとられかねない唐突でハイテンポな展開やギャグが多かったが、「SEASON2」はキャラ描写やストーリー構成が比較的丁寧に。 といった具合に、とがりまくっていた「SEASON1」に対して、全体的にマイルドに、より多くの視聴者に受け入れられる内容に軌道修正したのが「SEASON2」といえます。 確かにアニメも「商品」である以上、より多くの人に受け入れてもらえる内容に整えていくのは、正しい判断です。しかし、公式が制作側に「NG」を出した「SEASON1」は、本当に「ダメなアニメ」だったのでしょうか。ここから先は限りなく個人的な感想になるのですが、微妙に下手クソな作画と唐突で暴力的なまでにハイテンポなシナリオが共存していた「SEASON1」には、「絵のおかしさで笑わせる」「唐突な展開が生み出す不条理ギャグ」「異常にハイテンポな構成が生み出すドライブ感」といった要素が渾然一体となり、あたかもドラッグムービーのような中毒性を醸し出していたように思うのです。 もちろん「SEASON2」もちゃんと面白いアニメとして成立しています。誤解を恐れずにいうと、確実に「SEASON1」よりも完成度は高いです。しかし、どこか物足りなさを感じてしまうのも事実なのです。例えるならば、演奏は下手くそだけどすさまじくエッジな楽曲でメジャーデビューしたロックバンドが、その後、演奏スキルは向上したものの売れ線狙いのポップな路線になっちゃった。そんな一抹の寂しさすら感じてしまうのです。 ニコニコ動画のコメントには、「こっちの(SEASON2の)ほうがいい」「SEASON1は全体的にダメだけど癖になる」などなど賛否両論が渦巻き、ファンの間でも「SEASON1」派と「SEASON2」派といった派閥が生まれつつある模様です。1期と2期の制作体制の違いで賛否両論が起こった例として、『みなみけ』シリーズが挙げられますが、本作でもそれ以上の対立が起こるのでしょうか? ともあれ、テレビ放送期間である6月末まで、DVD未収録のテレビ放送版の「SEASON1」が全話無料で配信されているので、興味を持った方は現在放送中の「SEASON2」と見比べてみてはいかがでしょうか。派閥闘争に身を投じるかどうかは別として、あなたも週に一回は『スパロウズホテル』を見ないと落ち着かない、中毒患者になるかもしれませんよ。 (文=龍崎珠樹)右がSEASON1、左がSEASON2(テレビアニメ『スパロウズホテル』公式サイトより)
ハナガサイタヨの秘密を語った『惡の華』ハナガサイタヨ会vol.2レポート!
現在放送中のテレビアニメ『惡の華』のイベント「惡の華 ~ハナガサイタヨ会vol.2~」が6月2日、東京・パセラリゾーツ銀座店内銀座Benoaにて行われた。今回のゲストは、「ハナガサイタヨ」のフレーズで視聴者を恐怖のどん底に叩き込んだASA-CHANG、超絶ハイテクアンサンブルを礎に変幻自在のアヴァンポップバンド「宇宙人」ヴォーカル・しのさきあさこ、モジュラーシンセを駆使した音響ユニット「電子海面」の一員でもある作曲家・深澤秀行の3名だ。 ロトスコープでしかできない表現できない「2.5次元」映像、原作のエッセンスを濃く抽出したとにかく痛いストーリーでも注目を集める『惡の華』だが、放映開始前の予告PVから第1回終了に至るまでのサウンドインパクトは絶大で、「これは一体なんだ!?」と視聴者をビビらせていたことを忘れてはいけない。ざわざわビリビリとテンションを高める音響系BGM、その緊張感からの解放を狙ったかのように斜め上に突き抜ける破天荒なOP曲、主人公3人の惡の華が開いていく様子と完全一致するED曲。いずれも、メジャーな商業音楽として表に出していいのだろうか、と思わせる音ばかりだった。 「カテゴライズされたくない」と長濵博史監督が再三発言していた通り、アニメとも実写映画ともつかない同作。仮にアニメと規定した場合でも、既存のジャンルに回収不能な映像には、こうしたカテゴリー不明の音楽が必要不可欠だったのかとも思えてくる。 その「ノンカテゴライズアニメ」を志向した結果が、受け取る側のノンカテゴライズだ。プライベートでふらりと会場を訪れたニッポン放送の吉田尚記アナウンサーが、休憩時間、ハーフタイムショー代わりに即興のトークを始めた際に「客層がまったく読めない」と漏らしたとおり、音に惹かれ画に惹かれ演技に惹かれ、さまざまな方向からアンテナを尖らせた人々が集った。 すっかりおなじみとなった、実写でも声でも山田役の松崎克俊(やさしい雨)をMCに、春日高男役の植田慎一郎、原作者の押見修造、そして長濱博史監督が、代わる代わるゲストを迎えていく。最初に登壇したのは、ED曲を提供するASA-CHANGだった。 前説で、キングレコードの宮本純乃介がテーマソングのプロデューサーとして主題歌を導きつつも、ED「花-a last flower-」に関しては押見の強い要望で採用されたことが明らかにされていたが、長濱監督があらためて経緯を説明。原曲が発売されたのは、2001年3月28日で、「ちょうど僕が一番堕落しきっていたときです。(この曲に)救われました」(押見)という。 カテゴライズの話になり、ASA-CHANGいわく「FacebookやTwitterの話ですけど、ASA-CHANG&巡礼(ASA-CHANGを中心としたユニット)は、アニメ界の枠組みでいうと『サブカル』、Subcultureではなくカタカナの『サブカル』らしいですね」 ここで「花」のオリジナル譜面(ASA-CHANGによれば「設計図」)をスクリーンに映す。20拍で区切ったこの譜面があったからこそ、今回『惡の華』のためにリアレンジできたとASA-CHANGは言う。「変わらないのは、声をカットアップして切り絵みたいに貼っていく作業をするところ」
ミュージックコンクレートなどの現代音楽、抽象的な表現の多いシンセサイザーによる電子音楽、ウィリアム・S・バロウズの文章に対するカットアップ&コラージュ技法、それらの影響下にあった80年代のノイズインダストリアル音楽といった、ストレートに楽器を弾くだけではない類の音像は、なかなか一般に広く流通するものではない。深澤秀行の音楽もそうだが、ASA-CHANGの「花」にしても、「サブカル」判定をされてしまうのはやむを得ないことかもしれない。「宇宙人」にしてもフリージャズやカンタベリー音楽、プログレッシヴロックの影響を云々できる種類の音を聴かせてくれるバンドであり、こうした音をアニメの一部としてメジャーな回路に載せてしまった『惡の華』は、音楽業界に対しても多大な貢献をしているように思える。
昨年秋にASA-CHANG&巡礼の公演があり、パフォーミングアーツとして再構築する過程にこの作品が巡ってきたことで、今回『惡の華』版を作りやすかったという意味でも、タイミングがよかったとASA-CHANG。
「詞をあまり書いたことがない人間の詞なんですよね。歌の詞じゃない。Aメロ、Bメロという書き方をしたことがないから、こういう詞になっちゃったのかもしれない。もともと打楽器奏者なので」
「万葉集の時代には日本語が異なっていたらしいんです。そういう言葉にも音楽、リズムをつけていたりするんですけど。はひふへほではなくぱぴぷぺぽに近いらしいんですが、現存していないので誰にもわからない」(ASA-CHANG)
音、言葉を元素レベルから構築していく姿勢が「花」を生んだのか。トークは、「宇宙人」のしのさきあさこが登場する第2部へと移っていく。
OP曲「惡の華」のMVがフルで流れる。木更津でロケーションしたという渾身の映像は圧巻だ。金色のブルマはダンサーさんの私物だとしのさきがこぼれ話を開陳すれば、長濱監督は寺山修司のようだと絶賛、楽しげに会話が転がっていく。
「UFOみたいなラスボスが出てきて、3人はラスボスに操られていた、というオチです。結末。ふふっ(微笑)」(しのさき)
UFOは、芸術家が車のボンネットやベランダの柵などの廃材でこのMVのためだけに作り、撮影が終わるとともに廃棄されたという。
「惡の華」は4ヴァージョンある。群馬県桐生市ヴァージョン以外は主人公3人を表現したものだ。春日、仲村、佐伯のキャラクターが強烈すぎ、全部一緒のメロディだと違うだろう、との判断で種々のヴァージョンが作られた。1週間で50曲を作ったうちの4曲で、しかも元の音源はUSBメモリを紛失してしまったため、もう聴くことができないという。もはや実際にあったのかどうかを証明することすらできない。
3ヴァージョンの歌い手はそれぞれキャストとは異なり、後藤まりこ(元ミドリ)、の子(神聖かまってちゃん)、南波志帆が担当している。人選はしのさきによるもので、アニメキャストの人選と並行していたため「後出し」ではない。にもかかわらず、歌手の声質はキャストが歌っているかのように聴こえてくる。アニメ本編制作サイドと主題歌制作サイドの、原作の受け止め方が相似だったのかもしれない。
ちなみに、長濱監督が感動した「仕方がなくってここにいる、どこへいっても同じだ」というフレーズは、後藤の作だという。クレジットを見ると、後藤との子の名がある。仲村ヴァージョンと春日ヴァージョンについては、2人の手が入っているようだ。 休憩時間を挟み、深澤が登壇。モジュラーシンセサイザーとMacによる15分弱の演奏を行った。モジュラーシンセによる電子嵐のような音を基調に長い拍のピアノが響く味わい深い時間が大半を占めたが、終盤には強いビートを刻み、ディス・ヒートの「Horizontal Hold」を彷彿とさせる音楽的な表情をも見せた。 「(モジュラーシンセは)電子楽器の原始的なやつです。でも、普通の音楽に合わせられない。たとえばバッハをプレイするのは至難の業なので、インターフェースとして鍵盤をつけた。シンセサイザーの原点は、これのもっとでかいやつです」(深澤) いちいちプラグを接続しないと命令できない時代のモジュラーシンセだが、ヴィンテージではなく現行品だという点も、深澤は強調した。ピアノやドラムの音はMacから出力して別の卓で調整しているとの説明もあった。 もともと『惡の華』の愛読者だった深澤は、書店で「アニメ化決定」の帯を見て「もう音楽担当は決まっているんだろうな」と肩を落としながら帰宅した。ところが、『惡の華』の音楽をやりたいという気持ちが抑えられない。マネジャーを通じてキングレコードに打診したところ、まだ音楽は誰がやるか決まっておらず、デモテープを聴いてもらえることになったのだという。 「初めに『惡の華』の原作を読んで作った一曲は『ハリー・ポッター』のようで、いま聞くとすごく恥ずかしい」(深澤) 本人によればファンタジーの作風。これを長濱監督は「異世界ものだったら合う」と評していた。 「物事を広く捉えている。いろいろなものが集約されて入っていて、壮大な光景が浮かぶ音楽だった。ポーン(という一拍の音)、だけで仲村を、春日を、というお話をそのあとにするんですよね。そうしたら「やります」と。本当にそうなっているじゃないですか」(長濱監督) 最初の一曲がダメだったから、では次の人……とはならず、長濱監督は「狭く、深く、ひとりの足元をずっと掘っていく感じ」と、オーダーをして現在の楽曲に結びつけた。 「とあるシーンで音をくるくる回したいなと思って、回したんです。音の位置を前後左右にして連続した変化にすると音は自分の周りを回るわけです。それを、誰にも言わずに入れておいた。すると、ダビングが終わって最後に落とし込む(ミックスダウンの)際に、音(の定位)を視覚的に確認するメーターがあって、あるシーンでメーターがぐるんぐるんと回っていて、“なんじゃこりゃー!”と驚いたと、のちに指摘されました」(深澤) その場面は、今後に登場するという。OPの「惡の華」も間もなく4ヴァージョン目に突入する。放送が一番早いTOKYO MXでは今週末に最新第10回が放映されるが、植田によればキャストの演技が見ものとなる回らしい。作画も演技もすべてが洗練され、加速する『惡の華』、音にも耳を傾けながら刮目したい。 (取材・文=後藤勝)
篠山紀信バリの凄腕カメラ小僧が大活躍! 淡々とエロスを追求し続ける変態アニメ『フォトカノ』
6月に入り、4月にスタートした春クールアニメの大半が早くも折り返し地点に到達。近年まれに見る豊作だった今クールのアニメ群も、クライマックスに向けてますます勢いを増すこと必至です。そんな中、どこまでもマイペースに淡々とエロスを追求し続けるのが『フォトカノ』です。 父から一眼レフカメラを譲り受け、ファインダーの向こうに広がる世界に没頭するようになったルーキーカメラ小僧の主人公・前田一也と、彼の被写体となる美少女たちの恋模様を描く本作は、『キミキス』『アマガミ』の流れをくむエンターブレイン制作の恋愛シミュレーションゲームのアニメ化作品。 『キミキス』『アマガミ』といえば、下半身と脳が直結した思春期男子の煩悩を刺激してやまないお色気成分高めの恋愛ゲームであり、そのアニメ版もまた原作のテイストをさらに増幅させるようなエロスほとばしる仕上がりとなっていました。とりわけ、2度もアニメ化された『アマガミ』はヒロイン人気もさることながら、主人公・橘純一の変態的な行動に話題が集中。変態紳士としてファンから高い人気を獲得する怪作となったことを覚えているアニメファンも多いことでしょう。 こうなると『フォトカノ』の主人公の活躍に期待してしまうのが人の性。満を持してスタートした最新作の主人公・前田一也君は、一体どんなキャラクターなのかというと、あの手この手でヒロインたちを撮影。紆余曲折ありながらも、最終的にはヒロイン自らセクシーショットの撮影を希望させた挙げ句、自分の恋人にしてしまうという篠山紀信バリの凄腕カメラ小僧だったのだ! 本作は複数のヒロインを攻略する恋愛シミュレーションゲームが原作ということで、一つのスタート地点から複数のエンディングが存在する作品です。誰か一人と主人公がくっついてハッピーエンド……とはならない、なかなかに扱いの難しい題材です。そんな原作のテイストをアニメに再現するべくスタッフが選んだ構成は、第1話から第4話までを登場人物紹介やストーリーの基礎設定を解説するエピソードに充てて(=共通ルート)、そこから先は各ヒロインのルートに分岐させていく(=個別ルート)というアクロバチックなもの。つまり1人目のヒロインとのストーリーが終了すると、再び物語は第4話終了時点にリセットされ2人目のヒロイン、3人目のヒロイン……という具合に異なる世界線の物語が描かれるというわけです。これが今はやりの並行世界モノってことですね! 違いますか。そうですか。 そんなわけで、各ヒロインを続々と攻略していく第5話以降は、毎回のごとくヒロインのお色気シーンと思わず赤面必至の告白シーンがノンストップで押し寄せてきて、ピンク成分がオーバードーズ。学園のヒロインにして幼なじみ・新見遙佳を撮影すれば、なぜか泣きながら告白されつつおっぱいを主人公に揉ませてくれるわ、真面目な風紀委員長・室戸亜岐の弱みを握った主人公はそれをネタにセクシーショットを撮影しまくるのみならず、地面に四つん這いになり「俺の上に乗って!さぁ!」と絶叫するわ(ちゃんと理由もあるんだけど、どう見ても変態紳士です)、巨乳スポーツ少女・間咲ののかと海に行けば彼女は自ら手ブラ撮影を希望。最後は水着のブラに手を突っ込んではにかみつつ「手ブラ風ってことで……」と上目遣い。全体的にどうかしています(褒め言葉)。 しかも、メインヒロインということで攻略に2話使っている新見遙佳以外のヒロインは、1話でカタをつけないといけないので展開スピードもジェットコースターのごとし。休む間もなくモニタ上を肌色が駆け抜けていくのです。 そんなピュアでゲスなパッションが炸裂する本作ですが、映像的にも見どころ満載。まずはエロ漫画直系の思い切りパースを利かせたアングルと、セクシーポイントをこれでもかと拡大したセクシーショットが挙げられます。エロ漫画では「ここぞ!」という見せ場(つまり「抜きどころ」)では、思い切りお尻やおっぱいを強調した絵を用意します。ともすればデッサンが狂っているともいわれがちな演出ではありますが、だがそれがいい! エロスの前にデッサン狂いなど些細な問題なのだ。そんなスタッフの思い切りが伝わってくるかのようです。 さらに、毎回なんだかんだと描かれる水着撮影シーンですが、ここではほぼ必ず3D映像を加工したダイナミックなセクシーショットが挿入されます。なめるようなカメラワークでヒロインの肢体を描くカットは、本作のハイライトシーンといえるでしょう(余談ですが、実原氷里との恋模様を描く第7話では『マインド・ゲーム』監督の湯浅政明が絵コンテで参加。いきなり背景が三次元的にグリグリと動くカットで視聴者の度肝を抜いたことも忘れられません)。 というわけで、ホワイトバランスもISO感度も気にせず、煩悩と情熱のみで美少女たちの眩しい青春をフィルムに収め続ける『フォトカノ』は、間違いなく『キミキス』『アマガミ』の流れをくむ立派な「変態アニメ」といえます。さらに「エロス」をキーワードに、様々な映像的な挑戦をするスタッフの心意気にも脱帽するばかりです。いや~、本当に日本のアニメって懐が深いですね。(前回も似たようなことを言った気がしますが)この表現の自由がいつまでも守られることを、願わずにはいられない今日この頃です。ニヤケ顔を晒しつつこんなことを言っても、全然説得力ないんですけど。 (文=龍崎珠樹)『フォトカノ』公式ホームページより
一日の最後に見るならこれ! 癒やしの日常アニメ『ゆゆ式』
かっこいいロボットがガンガン戦う『翠星のガルガンティア』『革命機ヴァルヴレイヴ』『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』(個人的には『マジェスティックプリンス』が好きです!)。ロトスコープとアクの強い物語がなんだか心地悪い『惡の華』。ダイナミックなアクションと危機的な制作状況が作品に妙な緊迫感をもたらす『進撃の巨人』などなど、この連載でも紹介してきたように、今クールは制作側の気合がビシバシ感じられるアニメが数多く放送されています。 ここ数年続いた「日常系アニメ」ブームの反動ともいえる物語回帰を果たした上記の作品群はいずれも見応え十分な半面、立て続けに見ていると少しおなかいっぱいになってしまうのも事実。ヘヴィな作品の合間にライトな作品を見て、箸休めをしたいのも人の性。そんな欲しがり屋さんな我々アニメファンの心を癒やしてくれるのが、現在TOKYO MX、AT-Xなどで放送中のアニメ『ゆゆ式』です。 野々原ゆずこ、櫟井唯、日向縁の女子高校生3人が繰り広げる、まったりした学園生活を描く本作。ここから何か物語が動き出すのかというとそんなことは一切なく、終始のんびりした雰囲気の中でとりとめのないガールズトークが展開するのです。正直「ここが斬新だ!」とか「この演出がすごい!」みたいな要素は皆無なのですが、何気ない日常を本当に楽しそうに過ごすヒロインたちの姿は、仕事や学業に疲れた現代人の心を癒やしてくれるような気がします。 ちなみに本作のメインキャラクター3人を演じるのは、同年代の若手女性声優たち。まず、ゆずこ役に大久保瑠美、唯役に津田美波が登板していますが、彼女らは日常系百合アニメとしてヒットした『ゆるゆり』でもメインキャラを演じていたというのは、声優ファンならもはや常識。本作でもノリノリのボケ&ツッコミを披露してくれるのも、声ヲタ的には高ポイントです。 そしてもう1人のメインキャラ・縁を演じるのは、昨年『新世界より』でヒロイン・早季を演じた種田梨沙。ほかの2人と一緒に、愉快なガールズトークを繰り広げます。その脇を固めるのが、茅野愛衣、潘めぐみに堀江由衣。爽やかで耳触りのいい女性声優の声が作品に彩りを添えます。 環境映像のようにぼんやりと映像を眺めるもよし。環境音楽のようになんとなく流しているだけでもよし。まさに一日の最後に楽しむのにぴったりなアニメが『ゆゆ式』なのです。 それにしても、世界の命運をかけて戦う大作アニメから、とりとめのない日常を描くアニメまで網羅する今クールのテレビアニメは、言うなれば日本のアニメの持つ懐の深さを象徴するようなラインナップといったところでしょうか。テレビ番組表をチェックするのが妙に楽しい今日この頃です。 (文=龍崎珠樹)テレビアニメ「ゆゆ式」公式サイトより
「初音ミク」長期ブームを支える、販売元クリプトン社の“驚異的な”ライセンス戦略?
サイゾーのニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けします。
■「Business Journal」人気記事(一部抜粋)
アイドル・谷桃子も被害、芸能人を狙う窃盗詐欺の手口を告白「怪しいと思わなかった」
ANAに聞く、AKBとの共同プロジェクトの狙いとは? 搭乗客に握手会取材の権利も
不動産バブルの様相 今は買い時ではないワケ…買ってよい/ダメなエリアとは?
■特にオススメ記事はこちら!
「初音ミク」長期ブームを支える、販売元クリプトン社の“驚異的な”ライセンス戦略? - Business Journal(5月12日)
こんにちは、江端智一です。 前回、記事『初音ミクの画像は勝手に使ってよい? 「初音ミク」の販売元のクリプトン社に聞く』では、「初音ミク」の販売元であるクリプトン社への取材をもとに、『初音ミク』の絵の権利を有するクリプトン社へ許諾の申し入れをすることなく、その絵を自由に使えることを保証する「ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)」についてお話しました。 しかしその最後で、次のような疑問が残ったままでした。 ========================= --「どうしても、PCLから、「初音ミク」のN次著作【編註:初音ミクを使用した他の人の作品を取り込んで、さらに新しい自分の作品を生み出す、いわゆる「他人の著作に依拠して創作された創作物」】が安心して自由に創成される世界が導き出せないのです」と、泣きを入れた私に、クリプトン社の方は、親切に答えてくれました。 「N次創作は、『ピアプロ』(後述参照)が担保しているのです」 --はい?「ピアプロ」って、「ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)」のことではないのですか? 「違います。『ピアプロ』とは、弊社が開発したコンテンツ投稿サイトのことです」 もう、この辺から、私の混乱の度は、最大級に達するのです。 ========================= ※当サイト記事『初音ミクの画像は勝手に使ってよい? 「初音ミク」の販売元のクリプトン社に聞く』(4月16日付)より抜粋 そこで今回は、上記の「ピアプロ」の私の理解のプロセスと、「初音ミク」ブームを支えるクリプトン社のライセンス戦略について、ご説明します。 ●「ピアプロ」とは「文化祭期間中の体育館」である さて、まず「ピアプロ」の解説から始めます。 「ピアプロ」というのは、クリプトン社が開発したコンテンツ投稿サイトです。 投稿サイトというイメージがつかみにくい人もいると思いますので、誤解を恐れずに言い切ってみますと、生徒全員の作品(絵や、彫刻や、手芸)などを展示している、「文化祭期間中の体育館」です。要するに、クリプトン社の常設展示の体育館です(ここでは誰もスポーツができないので、体育館としては機能しませんが)。さらに、この体育館、かなりバラエティに富んでいまして、カラオケボックス、図書閲覧室までが併設されています。 この「クリプトン社の常設展示専用の体育館」(以下、クリプトン社の体育館)は、北海道札幌市中央区にあるクリプトン本社の隣に建てられている、というわけではなく、インターネットに接続したサーバの中につくられています。この「クリプトン社の体育館」が、「コンテンツ投稿サイト『ピアプロ』」のことです。 あなたが、自分の作品を展示してもらうためには、以下の条件が必要となります。 (1)「クリプトン社の体育館(=ピアプロ))の入館証を持っていること つまり、ピアプロの会員になることが必要です。これはクリプトン社のホームページから簡単に入会できます。これで「体育館」に自由に出入りでき、作品を自由に楽しむことができるようになります。 (2)「クリプトン社の体育館(=ピアプロ)」に、インターネット経由で自分の作品を持ち込むこと 自分の作品を「ピアプロ」のサーバにアップロードすることで、作品を持ち込みます。つまり、パソコン上でつくられたもの、加工されたものであって、ファイルとして転送できるもの(電子情報財)に限定されるということで、自分自身で「サーバに持ち込むこと」が必要となります。これを「アップロード」または「投稿」と言います。 ですから、クリプトン社に、自分の絵画や彫刻や、あるいは自分の歌をカセットテープに録音したものを送りつけても、受理してもらえません。 「クリプトン社の体育館」、つまり「ピアプロ」に展示されている作品は、バラエティに富んでいて華やかで楽しいです。 まず、絵画は当然として、音楽、小説(これらは、まとめて「コンテンツ」と呼ばれます)など、パソコンのファイルとして取り扱えるコンテンツであれば、動画以外はほとんど投稿できます。 例えば、「小説」なら、「初音ミク」を主人公とした恋愛小説だけでなく、冒険、推理、SFなど、公序良俗に反しない限りはなんでもOKです。さて、その中でも、ちょっと珍しいコンテンツとして、「歌詞だけの出品」とか、その逆に「歌詞の付いていない楽曲だけの出品」などという、未完成であることを表明した作品の投稿が挙げられます。 これは、「コンテンツ投稿サイト『ピアプロ』」の特徴を説明する上で、極めて重要なことなので覚えておいてください。 ●ピアプロに投稿できない作品 「公序良俗」に反するものは、ピアプロに投稿できません。 第一に、道徳観に反するもの、猥褻なもの、嫌悪感を催させるものを投稿することはできません--といっても、まあ、成人向け同人誌の作者の中には、「これは『エロ』ではない。『愛』だ」と主張する人もいるようですが、最終的には「ピアプロ」の管理人が必要に応じて削除してしまうと思います。 第二に、法律に違反する作品を投稿することはできません。 例えば、「他人の著作物に依拠して創作された著作物のうち、当該他人の許諾を得ていないもの」を投稿することはできません。著作権者に「ピアプロに投稿・第三者に開示すること」の許諾を得ていないドラえもんやワンピース、ポケモンを使った作品は、即時アウトです。 では、著作権的に適法な作品とは、どのようなものでしょうか。 もちろん、あなたが他人の著作物を利用せずに、すべて100%オリジナルの作品であれば、完全に適法な作品です。 また、「初音ミク」を利用した作品も適法です。前回、ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)について説明した通り、公序良俗に反しないで非営利であれば、「初音ミク」を翻案し、または二次的利用した作品は適法です。 しかし、PCLは、別に「クリプトン社の体育館」つまり「ピアプロ」の中だけで有効であるというわけではありません。日本中、いつでもどこでも有効で、YouTubeやニコニコ動画に投稿しようが、まったく問題ありません。 ●「ピアプロ」に投稿するメリットとは? では、わざわざ「ピアプロ」に投稿することのメリットとはなんでしょうか。 まず一つには、初音ミク等以外にも、自由に使えるボーカロイドキャラクター(音声合成ソフトウェアパッケージの箱に描かれているキャラクター)たちがたくさんいるからです。 私が初めてボカロを体験した「結月ゆかり」、歌手で俳優のGACKTさんが音声を提供した「神威がくぽ」ほか、実に、35人のキャラクター【註1】を、「ピアプロ」の中であれば自由に使ってよいことになっています。ですから、この「結月ゆかり」と「神威がくぽ」の2人を主人公とした恋愛小説も、2人の結婚式のイラストも、2人がデュエットしている歌をつくって投稿してもOKです。 仮に、このキャラクターリストの中に「サザエさん」が入ってくれば、当然に「サザエさん」のキャラクターも自由に使えることになるのですが、まあ、ありえないだろうと思います。長谷川町子財団に、このような使用許諾をするメリットがないからです。 比して、コンテンツ投稿サイト「ピアプロ」は、クリプトン社には大きなメリットがあります。クリプトン社にとって、「PCL」と同様に、「ピアプロ」は初音ミクの最大の広告宣伝の場になるからです。 ●前回の「ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)の限界」を復習する さて、ここで前回の問題提起を思い出していただきたいと思います。 「初音ミク」の父方の兄弟の娘であるオリジナルのキャラクター「初芽ミロ」というキャラクターを、「初音ミク」といっしょに記載したAさんのマンガがあったとします。 このAさんのマンガを利用して、さらにあなたがその従兄弟のアパートの隣の住人である第3番目のキャラクター「初出ミレバ」を「初芽ミロ」と「初音ミク」の3人で登場させたマンガを創作したとします。 整理します。 (1)一次著作物:「初音ミク」(権利者はクリプトン社) (2)二次著作物:「初音ミク」+「初芽ミロ」(←Aさんが創作したマンガ) (3)三次著作物:「初音ミク」+「初芽ミロ」+「初出ミレバ」(←あなたがつくったマンガ)筆者提供
あなたは、PCLに基づき「初音ミク」の利用に関しては、クリプトン社への許諾申し入れの電話は不要となりますが、Aさんへの「初芽ミロ」の利用に関しては、許諾申し入れの電話やメールでの交渉は必須となるはずです。 これが、私が問題提起した、「PCLの限界」です。 PCLは「初音ミク」の利用しか担保してくれません。Aさんの創作した「初芽ミロ」については、著作権法(ここでは、21、27、28条)が適用され、あなたのつくったマンガは、Aさんの許諾がない限り、世の中に発表することはできません。つまり、「N次創作の問題」は、解決されていないのです。 ●「PCL」+「ピアプロ」連携によるN次創作問題の解決 コンテンツ投稿サイト「ピアプロ」が、その機能を最大限に発揮するのは、ここからです。 先ほど、「クリプトン社の体育館(=ピアプロ))には、どんな作品を持ち込んでもよい、というお話をしました。しかし、あなたが、自分の作品を体育館に持ち込んだまさにその瞬間、以下のライセンス条項(ピアプロ利用規約第11条第6項)【註2】が発動してしまうのです。 『Aさんが自分の作品を「クリプトン社の体育館(=ピアプロ)」持ち込んだ瞬間、Aさんは、体育館の入館証を持っている全ての人に対して、(1)Aさんの作品を利用して新しい作品をつくることと、(2)その新しい作品が世界中に公開されることを、原則として許諾しなければならない』【註3】 つまり、こういうことです。 (1)Aさんもあなたもピアプロの会員であって、 (2)Aさんが、「初音ミク」+「初芽ミロ」のマンガの作品を「ピアプロ」に投稿している場合、 (3)あなたは、Aさんの許諾をもらわなくても「初芽ミロ」を使用できて、 (4)「初音ミク」+「初芽ミロ」+「初出ミレバ」のマンガの作品を、あなたのホームページで公開することも、また、ピアプロや、他のマンガ投稿サイトでも投稿することができる。 もう一度、説明しますと、「クリプトン社の体育館」に展示された絵を摸写して、ちゃっかり自分の絵に取り込んだ作品を創作して、世界中のどこで公開したとしても、その絵の作者から「おい、なに、人の絵を勝手に使ってやがるんだよ」と文句は言われることは、基本的にはないということです。 整理しますと、 (1)「初音ミク」を利用する作品に関しては、「初音ミク」の利用を許諾するという「PCL」によって保護されることになります→「初音ミク」を利用した2次著作の創作と公開の自由の担保の実現 (2)さらに上記(1)の作品がピアプロに投稿された場合には、その作品を利用した新しい作品は、著作権上の使用許諾の問題がクリアされた状態になっており、全世界への公開が可能となります→「ピアプロ利用規約」による、N-1次著作を利用したN次著作の創作と公開の自由の担保の実現 ここに、「PCL」と「ピアプロ利用規約」の連合チームによって、現行著作権法と一切の齟齬(そご)を起こすことなく、世界に対して完全に開かれた「初音ミク」に関係する著作物の創作の自由が、見事に実現されることになるわけです。 ●「ピアプロ」の厳しい掟 しかし、ピアプロが、「初音ミク」に関係する創作の自由を認められる場所であったとしても、その運用については、以下の厳しいルールが課せられています。 (1)公序良俗に反しないものであること これは、すでにお話ししたので割愛します。 (2)非営利目的に限ること 「私の作品を見たい者は、1回につき10円払え」とかいうような条件を付けることはできません--というのは、まあ普通に理解できますよね。また、ピアプロに投稿されていない創作物を取り入れてN次創作物をつくろうとすれば、当然、前々回に説明した、「N次創作のための、果てしない『お願いツアー』」を行わなければなりません。 ならば、ピアプロの中で無料の広告コンテンツを作って、それを展示すればよい--という、ズルいことを考える人が出てくるかもしれません。例えば、「初音ミク」と「初芽ミロ」と「初出ミレバ」の3人のキャラクターの動画をつくって、「会社の宣伝」や「自社製品の紹介」をさせれば、美味しい広告ができるという発想です。当然、このような行為はアウトです。 また、以下については、ルールではありませんが、強く推奨されています。 (3) ある作品を使用したら、その作者に連絡をすること これも、常識的に当たり前といえば当たり前です。「初音ミク」+「初芽ミロ」+「初出ミレバ」のマンガを発表するのに、使わせてもらった「初芽ミロ」の作者の名前を表示せずに、「自分で全部つくった」というふうに振る舞われたら、誰だって腹が立ちます。 しかし、実は、ピアプロに投稿された作品については、そのすべてに氏名表示の義務があるわけではありません。投稿者は、他者が作品を利用する際に、自分の氏名を表示させることを義務付けするか否かを選ぶことができます。これは、氏名表示を義務化している「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」などとは大きく異なるところです。クリプトン社によると、ピアプロを開設した当時、氏名表示を義務付けするか否かは投稿者の選択に任せたほうがよいと考えてそのようにしたとのことです。 ただ、作者の氏名表示は、最低限の礼儀と言えるでしょう。クリプトン社も、仮に作品の作者が氏名表示を義務付けていないとしても、作品の利用者はできるだけ作者に感謝を伝えることを推奨しています。 また、興味深い選択可能なルールとしては、以下のようなものがあります。 (4) 利用してもよいが、改変してはならない これは、作品を利用したい側から見ると、かなりキツイ条件になります。 例えば、絵画の場合、「初芽ミロ」を使ってもよいが、その場合でも、表情を変えても、ポーズを変えても、ダメということです。「そのまま」を使えということです。 ここで、「歌詞だけの出品」とか、逆に「歌詞の付いていない楽曲だけの出品」などという、未完成であることを表明した作品があったことを思い出してください。このような「未完成作品」などでは、このライセンスは、逆に有効に機能する場合があります。 「歌詞は一文字も変えてほしくない」けど「曲はつくってほしい」とか、逆に、「曲は楽器も音符もリズムも何も変えてほしくない」けど「詞を付けてほしい」というような共同創作を行う場合には、このような「改変禁止」は有効に働くからです。 以前インタビューに応じていただいた、ボカロPさん(ボーカロイドパッケージソフトを使って、ボーカロイド音楽を創作<プロデュース>する人)が、「自分の作品を使って創作された作品が、非常に低レベルなもので、がっかりしたことがある」とおっしゃっていました。 これは、N次創作に自由を与える「ピアプロ」の本質的な問題点ではありますが、しかし、「低レベルとなる作品には許諾しない」などという条件を許せば、ピアプロの理念が崩壊することになります。 だから、ボカロPさんは、「これは、我慢しなければならないことだ」とも、おっしゃっていました。これもまた、「ピアプロの厳しい掟」とも言えると思います。 あと、これはルールでもなんでもないのですが、私からの個人的なお願いとしては、 (5) ピアプロの作品を利用してつくった作品なら、ちゃんとピアプロに投稿しようね! とは言いたいです。 他の人のN-1次の著作物を利用して、自分のN次の著作物をつくって、それを世界に羽ばたかせているなら、当然自分の作品も、他の人が利用できる状態に置いてほしいと思うのが人情です。「人のものを使ったなら、自分のものも使ってもらう」、これが正しい姿であり、ピアプロの理念だと思うからです。 では、最後にまとめたいと思います。 「ピアプロ」とは、 (1)作品が単に展示されているサイトにとどまらず、 (2)その作品を使って、自由に別の作品を創作することが許されており、 (3)その創作された作品は、他人の著作権との調整がすでに完了しており、 (4)誰からもどこからも文句の出ない、世界に公開可能な作品の創作を可能とする、 N次著作物問題を一元的に解決する「ピアプロクリアランス」を発動する、コンテンツ投稿サイトです。 「初音ミク」を提供するクリプトン社は、複雑で難しいコンテンツビジネスの著作権の問題を逆手に取って、 ・著作権の保護と利用の利害関係を調整するライセンス(PCL)を創成し、 ・創作者に、大量の著作物の利用環境と新しい創作意欲を促す場(ピアプロ)を育成し、 ビジネスモデルとして組み上げました。 「初音ミク」ブームが、コンテンツビジネスとしては驚異的に長い期間(5年以上)も続き、そして、今なお発展を続けているのは、関係者全員にメリットを与えるために周到に準備された法律上の仕組みが、精緻に動き続けているからなのです。 では、次回は、クリプトン社が仕掛ける、さらなる2つの仕組み--「創作ツリー」と「ピアプロリンク」についてご説明をして、「初音ミクと著作権」シリーズ最後のまとめをさせていただこうと思います。 (文=江端智一) ※本記事へのコメントは、筆者・江端氏HP上の専用コーナーへお寄せください。 ※後編へ続く。 【註1】投稿可能な他社キャラクターについて http://piapro.jp/license/other_character_guideline 【註2】「会員は、会員コンテンツをアップロードする際にライセンス条件を選択することができるものとし、他会員がライセンス条件の範囲内で会員コンテンツを再複製・再頒布することに合意するものとします。」 http://piapro.jp/user_agreement/ 【註3】厳密にいうと、「許諾しない」というライセンスを選択することも可能です。 ■おすすめ記事 アイドル・谷桃子も被害、芸能人を狙う窃盗詐欺の手口を告白「怪しいと思わなかった」 ANAに聞く、AKBとの共同プロジェクトの狙いとは? 搭乗客に握手会取材の権利も 不動産バブルの様相 今は買い時ではないワケ…買ってよい/ダメなエリアとは? ブラック企業化する医療現場 勤務医や看護師への患者の暴言・セクハラ、長時間労働 ドコモ、iPhone販売拒む3重の壁…「今年確実」「絶対ない」業界内で割れる見方筆者作成
異例のアニメーター募集に、未完成バージョンの放映……アニメ版『進撃の巨人』は大丈夫か
もはや撤退不可能。されど進めば地獄。そんな進退極まる状況にあるのが、現在放送中のアニメ『進撃の巨人』だ。2009年10月より「別冊少年マガジン」(講談社)で連載をスタートした本作は、謎の巨大生物・巨人に蹂躙(じゅうりん)される人類の絶望的な戦いを描く、ファンタジーアクション作品。単行本が発売されるやいなや、「このマンガがすごい!」2011年版オトコ編1位。「全国書店員が選んだおすすめコミック2011」1位。第4回マンガ大賞第7位。第35回講談社漫画賞少年部門受賞といった具合に次々と高評価を獲得。最新巻10巻までに累計発行部数1200万部を突破している大ヒット作である。 そんな本作のテレビアニメが4月よりMBSほかで放送を開始。いろいろな意味で話題を呼んでいる。原作者・諫山創の荒削りながら緊迫感あふれる描線を残しつつも、アニメらしい洗練されたキャラデザインや、CGを駆使することでワイヤーアクションとガス噴出を組み合わせた本作ならではの「立体機動アクション」が乱舞する第1話は、Linked Horizonの壮大な主題歌「紅蓮の弓矢」の迫力も相まって、アニメファンの間で高い評価を獲得。すぐさま主題歌のMADムービーがニコニコ動画に投稿されるなど、ちょっとしたフィーバーとなった。 しかし、第1話放送後に総作画監督・浅野恭司がTwitter上でアニメーターの募集を訴えるツイートを投稿。放送開始早々、本作のアニメ制作体制に対する不安がアニメファンの間でささやかれていた。ついで、先日放送された第4話から不穏な空気が作品に漂い始める。福岡放送で番組をチェックした視聴者の間から、妙に静止画や使い回しのカットが多いという声がネット上で上がり始めたのだ。その後、ファンの手によって福岡放送版と全国放送版の比較動画が制作され、アクションシーンを中心に福岡放送版は画像が差し替えられていることが発覚。そして先週放送された第5話で、事態はより深刻さを増してくる。先述の福岡放送に加え、北海道テレビ、テレビ大分でも静止画像、風景カットなどを多用した未完成バージョンが放送されてしまったのだ。 局によって異なる内容が放送されてしまったという事態に対して、公式サイト上には「制作上及び放送局納品期限の都合」と謝罪文が掲載されたが、果たしてこのまま無事に2クールを乗り切ることができるのか、ファンとしては戦々恐々といったところだろう(『進撃の巨人』の制作元請を担当するのは、『ギルティクラウン』などを制作したProduction I.G 6課のスタッフが2012年に独立し、設立したばかりの制作会社・WIT STUDIOである)。 これまでも、制作スケジュールの遅延や、制作体制の破たんでオンエアに影響を及ぼした作品がなかったわけではない。制作スケジュールの破たんによる動画枚数の削減、ストップモーションの多用。さらに線画の使用まで演出に昇華してしまった『新世紀エヴァンゲリオン』(95年)や、韓国スタジオに丸投げした結果、壮絶な紙芝居を放送する羽目になった『ロスト・ユニバース』(98年)は有名なところだろう。それ以外にも、ここ数年に限るなら、第7話の納品が間に合わず第6話を2週連続で放送せざるを得なくなってしまった『ガドガード』(03年)(本作は全26話のうち、20話で打ち切りとなってしまった)。主にシナリオ面、設定面での作り込みに時間をかけ過ぎたために、あまり作画に時間を割くことができなくなりお粗末な作画でオンエア。その後、ファンからのブーイングを受けてDVDの単品発売が中止。全面的に作画リテイクを施し、放送開始から1年後にBOX形態でようやくソフト化を実現した『咎狗の血』(10年)(BLゲームを原作とする本作において、キャラクターの作画崩壊はもっともクリティカルな問題だったようである)。はたまた超絶低クオリティー映像でアニメファンを震撼させた『MUSASHI -GUN道-』(06年)。「制作会社の都合」により、第6話で放送が中断してしまった『RGBアドベンチャー』(06年)など一連のACCプロダクション作品など、華やかなアニメブームの裏側では惜しくも討ち死にしてしまったアニメたちが死屍累々である。 この中に『進撃の巨人』が新たにリストアップされるのか。それとも、ここで見事踏みとどまり、アクションアニメ大作として歴史に名を残すのか。図らずも本編に負けず劣らずの危機的状況となってしまった(と思われる)『進撃の巨人』の制作状況だが、スタッフの奮戦に期待したいところである。 (文=龍崎珠樹)アニメ『進撃の巨人』公式サイトより











