アニソン業界に異変!? 一世を風靡したシンガーが続々と活動休止するワケ

himeka.jpg
HIMEKA 公式サイトより
「2014年4月1日、本日よりフリーになりました」 という一文で始まる、あるアニソンシンガーのTwitter発言が、アニソンファンを驚かせたのはおよそ1カ月前の4月1日。発言者の名はHIMEKA。2008年にカナダより来日。同年に開催されたアニソンシンガーを発掘するための公開オーディション「第2回全日本アニソングランプリ」で優勝を飾り、ソニー・ミュージックエンタテインメントよりメジャーデビューを果たした外国人アニソンシンガーである。  デビュー当初は『戦場のヴァルキュリア』『テガミバチ』などのアニソンを担当し、一躍知名度を上げたものの、10年よりアニソンタイアップはストップ。11年にアルバムを一枚リリースした後に、12年に5pb.へ移籍。ゲーム主題歌を何作か担当したものの、今年4月1日に契約を終了した模様だ。それに伴い、日本での在留資格を喪失。このまま新たな所属事務所が見つからなければ、5月2日に帰国せねばならないそうだ。  このニュースと前後して、14年に開催を予定されていた「第8回全日本アニソングランプリ」の開催中止が発表された。07年より毎年開催され、先述のHIMEKAも輩出した同オーディションは、日本各地で予選大会を開催後に決勝戦を東京で開催。そこ優勝すれば、必ずアニソンシンガーとしてデビューできるという、アニソンブームの盛り上がりを象徴する一大イベントであった。  これまでに喜多修平、佐咲紗花など多くの新人を輩出し、アニソンシンガーを目指す人々の登竜門として君臨していたアニソングランプリだが、12年開催の第6回優勝者・岡本菜摘の歌唱力に対し視聴者の間で物議を醸しだしたほか、大会委員長の水木一郎がその結果について審査員に対する苦言をTwitterで呈したことから、その優勝者の決定過程に業界内外から疑惑の目が投げかけられていた。なお、今回の大会中止に関しては、「中止」以上のコメントは公式発表されていない。このことも、アニソンファンの間で憶測を呼ぶこととなった。  くしくも「アニソングランプリ」関係ニュースが立て続けにメディアを騒がせたこの春だが、それ以外にも昨年末に『アマガミSS』の主題歌など、アニソン中心に活動していたシンガーソングライター・azusaが、今春にはアニソン歌手・麻生夏子、声優・中島愛がそれぞれ歌手活動休止を発表するといったように(麻生はタレント活動に、中島は声優活動に専念するそうだ)、ここ最近はアニソンで一世を風靡したタレントが続々と歌手活動を休止し始めた。  もちろん、各タレントにそれぞれ異なる事情があるのだろうが、アニソン歌手の活動休止の理由の一つとしてアニソン市場の変化が挙げられるのではないだろうか? 例えば、アニソングランプリが開始された年である07年4月スタートアニメの主題歌を見てみるとおよそ88曲のうち、アニソン歌手(もしくはアニソンを主に歌う歌手)による楽曲が26曲。出演声優・もしくは歌手活動を行う声優による楽曲は7曲だったのに対し、今年4月スタートのアニメ主題歌は、(現時点において)およそ90曲のうちアニソン歌手による楽曲は15曲。一方、声優による楽曲は45曲。その比率は大幅に逆転しており、なおかつアニソン歌手の枠は減少している。  実際にCDの売り上げを見ても、声優が歌うアニソンのほうが売れていることから、制作者側も「アイドル的な人気がある声優が主題歌を歌ったほうが、CDも売れる」という判断を下し、声優を主題歌歌手として多く起用しているということなのだろうか?  アニソンブームと言われて久しいが、どうやらアニソン歌手はその恩恵をあまり受けていないようである。アニソンバブルがはじけた……と単純に言うことはできないが、業界全体が「アニソン」というものに対して、一度歩みを止めて考え直すタイミングなのかもしれない。 (文=龍崎珠樹)

『まどマギ』実写化でアニヲタ×乃木坂46ヲタの全面抗争が勃発! 「21歳で少女って……」

nogizaka0228.JPG
『気づいたら片想い』(ソニー・ミュージックレコーズ)
 大人気アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』(TBS系/以下、『まどマギ』)の乃木坂46による実写化が、アニヲタの間で物議を醸している。  Blu-ray&DVD『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ<新編>叛逆の物語』(アニプレックス)と、乃木坂46のニューシングル「気づいたら片想い」(ソニー・ミュージックレコーズ)の発売日が同じ日だったことから実現したという、このコラボ。乃木坂46の白石麻衣、生駒里奈、生田絵梨花、松村沙友理、西野七瀬が、同アニメの魔法少女に扮し、アクションシーンに挑戦。この映像は、同Blu-ray&DVDのCMとして、2日から放送されている。  これにネット上では、アニヲタから「実写化なんてするなよ」「なんじゃこりゃ」「誰得!?」「何度見ても、どれが主役だか分かんない」「制服着てるのは、杏子なの……か?」「絶対に見ない。見たら死ぬ」といったコメントが相次いでいる。 「『まどマギ』は、コスプレイヤーからの人気も高く、アニメイベントなどには、ピンクや水色など色とりどりのカツラをかぶったレイヤーが集まる。しかし、今回の実写化は、見た目は普段の乃木坂46のメンバーそのもの。衣装はコスプレっぽいものを着ていますが、特にアニメ作品に近づけようという意図は感じられない。なんとも中途半端な実写化の企画に、アニヲタはあきれ返っています」(アニメ誌編集者)  映像のディレクションを手掛けたのは、AKB48やEXILE、安室奈美恵などのミュージックビデオで知られる久保茂昭氏。制作サイドによれば、同映像は「アニメをベースに、世界観をオリジナルで構築したもの」だといい、魔法少女の衣装もオリジナルなのだとか。ゆえに、アニメ作品とかけ離れているのは当然なのだが、この意図をアニヲタに伝えるのは容易ではないだろう。  YouTube上には、「【放送事故】 魔法少女まどか☆マギカ実写化 乃木坂46 が酷すぎて事故」というタイトルでCM動画が投稿されており、コメント欄では「止めて」「ないわぁ……」「なんで劣化させるんだ」「21歳で少女って……」といったアニヲタのコメントに対し、ドルヲタが「乃木坂なめんなよ」「乃木坂をバカにするやつは大抵アニヲタだからな! 二次元とかまじないわー!」「アニヲタ気持ちわり」と返すなど、小競り合いを繰り広げている。  ファン心理を逆なでしてしまった、今回のコラボCM。出演した乃木坂46には、二次元作品が大好きなメンバーもいるようだが、本人はどのような心境なのだろうか?

春はロボットアニメ大豊作! キーワードは「エロス」「美少女」「童貞」!?

toboanime.jpg  いよいよ4月。春クールのアニメも続々とスタートするということで、待ち遠しいアニメファンも多いのではないでしょうか? さまざまなジャンルのアニメが放送されている現在のテレビアニメですが、今春は例年になくロボット物が多いことで話題です。そこで、今回はどれがどんな話か分からないという皆さんのために、簡単に作品をチェックしてみましょう! ●『キャプテン・アース』  五十嵐卓也監督×シリーズ構成・榎戸洋司×制作・ボンズという『STARDRIVER 輝きのタクト』スタッフが再集結した本作は、公式サイトによると、「(『STAR DRIVER』で)閉鎖空間を打ち破ったあとに、いったいどんな物語を描くことができるのか」というところから企画がスタートした作品。  前作は80年代ロボットアニメリスペクトな、ワカメ影やBL塗りつぶしといった作画や、ケレン味のきいた演出で迫力のバトルを描いてくれましたが、今回はどんな濃いメカアクションを見せてくれるのでしょうか。非常に楽しみです。 ●『ブレイクブレイド』  2010~2011年にかけて劇場公開された全6章のアニメを、テレビシリーズとして再構成した本作。ファンタジックな世界観と、鉄の重みを感じる重厚かつリアルなロボットアクションが大きな話題を呼びました。  OP、EDが一新されるほか、劇場版アニメでは描かれなかった「ジルグ対スペルタ部隊」も新作映像で追加される、との情報がすでに発表されています。原作コミックはまだ続行中ですので、今回の放送が終わったタイミングで「第2期制作決定!」のニュースが流れそうな気もします。 ●『シドニアの騎士』  「月刊アフタヌーン」(講談社)連載中のコミックを原作とする、SFロボットアニメです。太陽系が謎の生命体・奇居士(ガウナ)に破壊された1000年後。人類は、播種船・シドニアに乗って繁殖と生産を維持しながら宇宙を旅していた──という、なかなかハードな設定の本作は、古典SFにも通じる重さを感じさせつつ、いわゆる「学園もの」っぽいライトなノリも併せ持つ、異色のタイトル。  制作を手掛けるのは、これまで海外アニメや映画のCG制作中心に活動してきたスタジオ「ポリゴン・ピクチュアズ」。フル3DCGで制作されるそうですが、すでに公開されている映像を見る限り、原作のタッチを生かしつつ見ごたえあるメカアクションが展開しています。硬質なCGも、世界観にマッチしているような? 今春の期待作筆頭です。 ●『テンカイナイト』  夕方枠で放送される、子ども向けロボットアニメです。言うなれば『ダンボール戦機』系でしょうか。不思議なブロックを手に入れた主人公・大神グレンは、異世界キューブに転送されてしまう。そこで赤いロボット・ブレイヴンに変身してしまう能力を手に入れたグレンは、キューブで出会ったほかの子どもたちと共に戦いを繰り広げるという内容。  レゴブロックっぽいデザインがかわいくもあり、カッコいいロボットがどう活躍するのか注目です。 ●『M3~ソノ黒キ鋼~』  監督・佐藤順一×シリーズ構成・岡田麿里×メカデザイン・河森正治というビッグネームが集った本作。特に岡田・河森コンビは『AKB0048』『アクエリオンEVOL』でも、その強烈な個性のぶつかり合いから、他に類を見ない独特の作品を生み出しました。そんな2人の個性を、『カレイドスター』『ARIA』『たまゆら』の佐藤監督がどうまとめあげるのかに注目です! ちなみにメカデザインは、『バスカッシュ!』的なボディに、『コードギアス』に出たきたランドスピナーがくっついたようなイメージです。 ●『風雲維新ダイ☆ショーグン』  巨大ロボットが存在する江戸時代が舞台という本作は、童貞の主人公・徳川慶一郎が生娘とともに乗り込むことで、さまざまな形態に変化するロボット・スサノオに乗って戦うという内容。  確かに、ロボットは男子の身体の拡張願望を象徴している──とはよく言われますが、そこに生娘をもってくるとは! ストレートな題材に興味が沸きますね!  ちなみに本作は、公式Twitterもなければ公式サイトもしょっちゅう落ちていたりします。そんなわけで、今どきのアニメにしてはなかなか情報が見えない本作。どんな内容になるのか、逆に気になります。 ●『健全ロボ ダイミダラー』  悪の組織・ペンギン帝国とHi-ERo粒子(ハイエロりゅうし)をエネルギーに動くロボット「ダイミダラー」の戦いを描く本作。  一見、王道スーパーロボットアニメっぽい本作ですが、主人公・真玉橋孝一は、女子にエッチな行為をすることで粒子を発生させる能力を持っているということで、ヒロインにエッチな行為をしながら戦いに挑む、というかなりアレな設定だったりします。必殺技の名前も「ガリバーティンポ」とか、ストレートすぎるもの。  って、またエロス×ロボットの組み合わせですか! ***  ともあれ、リアルロボット系からスーパーロボット系。子ども向けからファンタジーものまで、多彩なロボットが出そろう今春の新作アニメ。中でも『ダイミダラー』と『ダイ☆ショーグン』は2ダイ・煩悩ロボットアニメとして注目ですね。 (文=龍崎珠樹)

「環境を整えれば、第2、第3の宮崎駿氏は生まれる」老舗アニメスタジオ創業者が語る、アニメ業界の今とこれから

nunokawa0005.jpg
布川郁司氏
「パンプルピンプルパムポップン、ピンプルパンプルパムポップン!」  魔法の呪文で、どこにでもいる普通の小学生の女の子がトップアイドルに変身するという魔法少女アニメ『魔法の天使クリィミーマミ』をはじめ、『ニルスのふしぎな旅』『うる星やつら』『スプーンおばさん』『幽☆遊☆白書』『みどりのマキバオー』『BLEACH』『NARUTO』『キングダム』など、1979年の設立から現在に至るまで、コンスタントに人気アニメを制作し続けるアニメーションスタジオ・株式会社ぴえろ。  その設立者にして、現在、取締役顧問を務める布川郁司氏が、株式会社ぴえろ(設立当初は、株式会社スタジオぴえろ)立ち上げから現在に至るまでの歴史や、アニメ制作のリアルで生々しい裏事情を(ほんのちょっぴり)開陳した書籍が、『「クリィミーマミはなぜステッキで変身するのか?」-愛されるコンテンツを生むスタジオの秘密-』(日経BP社)だ。  本書は、上記のようなアニメ制作秘話的なエピソード、スタジオ運営の苦労といった、アニメファンなら気になるエピソードのみならず、現在、日本動画協会理事長の布川氏ならではの、アニメ業界に対する提言や問題提起も盛り込まれた「経営者・ビジネス的視点で語るアニメ業界本」という、なかなか興味深い内容となっている。そこで今回は、本書の内容に触れつつ、アニメ業界の問題点と今後について率直に語ってもらった! ■きっかけは、後進育成の精神から ──スタジオ経営者視点のアニメ業界本ということで、いろいろと興味深く読ませていただきました。まずは、本書執筆のきっかけを教えてください。 布川郁司氏(以下、布川) やっぱりアニメって、作るよりも見るほうがいいよね、とはよく言うんですが(笑)、その一方で何か作りたい、表現したいという若い人は常にいます。ただ、どう行動したらどうなるのか、というハウツーを示す人は今まであまりいませんでした。また、個人制作アニメは別として、映像作品を作る上でどうしてもお金の問題が付きまといますし、スタッフも必要となります。そこで、スタジオを作った経験がある自分から後の世代に向けて、現場からマネジメントに至るまでの体験を残しておいてもいいかなと思っていたところに、ちょうど日経BP社さんから本書のお話をいただきました。 ──個人的には、ぴえろ立ち上げ時にタツノコプロのスタッフが移籍するような形でやってきた、というエピソードについて、ご本人が詳細に語っているという部分が非常に興味深かったです。そのおかげで、当時はタツノコプロからだいぶ恨まれてしまったそうですが……。 布川 今はもうタツノコさんとは和解していますよ(苦笑)。ただ、やっぱりゼロから始めるスタジオにとって、キャリア、名声を積んだ方をどうコントロールするかというのは非常に大きなことなんです。アニメーションというのは数百人のスタッフで作るものですが、実際のところ、クオリティの素になるのはライターや監督、キャラクターデザイン、作画監督など、10人くらいのメインスタッフのキャスティング次第という側面があります。あとはスケジュールと資金と、どれだけ作業者を募ることができるか。そこを押さえれば、みなさんもすぐにアニメプロダクションを作れますよ。ただ、そのラインを敷く時には、当然生臭い話もあるわけです。お金がないなら、志で誘うしかないわけです(笑)。そこを読み取っていただければ。 ──そんなアニメ業界の「本音」が書かれた本書ですが、布川さんは文中で、クリエイターはモチベーションを維持するためにスタジオを転々と移動し、さまざまな作品に携わるということに対して、肯定的に言及しています。その一方で、株式会社ぴえろは、クリエイターを積極的に新卒採用し、社内に抱えるような動きもしています。 布川 当然、クリエイターとしての要求と会社の体制維持という両者が衝突する面もありますね。ただ、これは人材育成、人材教育につながってくる話です。結局、今は新人が学ぶ場がないんですよね。アニメの制作の数は腐るほどあるけど、やはりフランスで言うところのゴブラン(フランス・パリに存在するアニメーション校。『スペースダンディ』にも参加するロマン・トマをはじめ、多くの人材を輩出している)のような、スペシャリストを育成したり、学べる場が日本のアニメ業界には少ないんです。というのも、プロダクションが人材を育成するのは、非常にコストがかかることなんです。育成するための人材も割けないから、どうしても先輩の背中を見て育ってくれという部分があります。新卒採用は、その場を作るという意味合いもあります。  人材育成という意味では、個人でNUNOANI塾という講座も開いています。ハリウッドなどではプロデューサーや撮影マンが監督したり、ハリウッドスターがプロデュースをやったりと、それぞれの役割は固定されていない。でも、日本はあまりにも監督は監督、みたいに固定的です。そうではなく、映像を作る上でお金をどう集めてくるか、企画書をどう書くか、それをどこに持って行けばお金を持ってこられるのか、といったことができるプロデューサー、監督、演出家が今後のアニメ業界を考える上で必要だと考えています。そういう人材のために、大学や専門学校以外の場で伝えていきたいですね。 ■クールジャパン、その実態 ──近年、不況の影響もあり、アニメ制作における資金調達が困難だという話もちらほらと聞こえてきますし、本書の中でも資金調達の難しさについて言及されています。また、人材教育の機会が減りながらも、そのためのリソースも割きにくいということで、布川さんは今後のアニメ業界の制作体制に対する不安はありませんか? 布川 日本のテレビアニメ史は『鉄腕アトム』以降、もう50年もたっているわけですが、その間、何度も「業界はもうダメだ!」って言われつつ、何度も立ち上がってきました。別に、お上から助成してもらっているわけじゃありません。それって、すごいことだと思います。「まだやってるんだ」みたいなスタジオって、けっこうあるんです(笑)。自助努力でやっていくという業界全体の精神は、これからも変わらないんじゃないかなと思います。ただ、一つでもいい環境を後世に託そうとするならば、正直言って我々の業界だけじゃしんどいというのも事実です。  そこで今、日本動画協会の理事長をやっている関係で(3月で退任)、いろいろな場に行ってそういう話をしているのですが、なかなか我々の産業というものが理解されないんです。海外から言われるようになって、みんな「アニメ、アニメ」と言ってるけど、政府の人たちにはコンテンツ産業──特にマンガ、アニメ、ゲームについての知識がないと思います。フランスやアメリカのイベントで、何万人が来場したとか報道されても、外務省の人なんかは全然現場に来ませんからね。彼らは、そういう文化を、むしろ恥だと思っている節もあります。オタク産業とかコスプレとか言われても困ったもんだね、っていう空気なんだけど、今、世界中の若者がそういう文化の影響を受けていることは事実です。 ──輸出産業、クールジャパンと言いつつも、その程度の認識なんですね。 布川 それと、予算が単年度という点も厳しいです。コンテンツは、単年度の計画で成果を出すことは難しいんです。よく業界外から「アニメ業界に宮崎駿さんの後継者はいるんですか?」って質問されるんですが、継続的に若手のためにチャンスを作ってあげたら、第2、第3の宮崎駿さんのような人はいくらでも生まれると思いますよ。実際に才能がある人は、まだまだ日本にいるんだから。我々のような民間も、そういう人を育てていく努力をしないといけないし、行政側もそういう場を作りやすい社会を作らないといけないと思います。継続的な戦略でないと、人材は輩出されません。  もう一つ、今、日本のアニメは世界中で大量に違法ダウンロードされています。経産省の試算によると、単年度でアメリカで2兆円も奪われている計算です。今頃になってみんな騒ぎだして違法ダウンロードをなんとかしようとしているけど、遅きに失した感はありますが、ようやく官民一体となって撲滅させるべく動きだしました。ただ一つ言えるのは、現にメディアとしてダウンロードは存在している。音楽業界なんかは早い段階からYouTubeでバンバン曲を流して、ライブで生の金をつかもうという方向に転換しているから、我々アニメ業界もビジネスモデルをそういうふうに変えないといけないと思っています。  テレビからネットへとメディアが移行している今、次はどういうスタイルに集約されていくのかは分からないけれども、どのようにインフラを整備してコンテンツを誘導していくのか、ということは民間だけでは厳しいですよね。現在、ハードの進化が先行して、ソフトの権利確保が遅れている状況です。このままいくと、誰も作る人がいなくなっちゃうという不安があります。せっかく作っても、タダで奪われていく状況に、むなしさを覚える人もいるでしょう。そうならないように、今後出るものをどう有償化していくかをみんなで考えていかないと、映像業界全体が沈没すると思います。 ──海外のアニメファンの中には、「作品を応援したい」という善意から違法にアップロードされたアニメを見て、日本のアニメが好きになったというパターンも少なくはないそうです。ファン同士のつながりでアニメ文化が盛り上がる、という文化交流的な側面とは別に、日本のアニメ業界にお金が回ってこないという問題がありますね。 布川 そこに何か黒幕的に仲介する奴がいて、大儲けしているなら、そこを潰せばいいんだけど、そうじゃないからね。なんだかファンのボランティアみたいな形でやっているから。そういう意味で、あえて「奪われている」と言います。だから、これからのアニメビジネスは難しくなると思いますね。スタジオを立ち上げてお金がない、というのとは別の次元でね。 ■組むべきは、大企業よりも海外スタジオ ──テレビ、映画、パッケージ商品、ネット配信など、さまざまな形でアニメが視聴されるようになった現在ですが、布川さんはどんなメディアが理想だと思いますか? 布川 自分たちの作品が正当に評価を受けて、正当な報酬を受けられるメディアじゃないですかね。メディアというものをずっと対象として仕事をしてきたわけだけど、昔はテレビと映画しかなかったわけです。それがビデオが出現して、今はネット配信が出てきた。おそらく、そこ(ネット)が次のメディアの行く末なんでしょう。  今、グーグルなんかがスマートテレビを作っていますし、今後、国境なきテレビを作っていこうというのは戦略としてあると思います。我々は、そういう戦略を感じた上で物作りをしないと、全部奪われるだけになってしまうでしょうね。 ──今後、日本のアニメも、明確に世界をターゲットにした作品作りを意識する必要があると思いますか? 布川 日本ほど幅広いジャンルのアニメや漫画を持っている国は、ほかにはないと思います。毎週、「ジャンプ」(集英社)や「サンデー」(小学館)、「マガジン」(講談社)といった週刊漫画雑誌が発行され、合わせて数百万部も出ている。アニメの『サザエさん』も、45年も放送されている。おまけに深夜にアニメをやっている国なんて、ほかにないでしょ。こんなにアニメが好きな国は、稀有だと思いますよ。それが日本だけじゃなくて、海外に広がっていったという部分だけを見れば、非常に大きなマーケットになっていると思います。これから考えることは、そこでどういう世界戦略を取るかということです。うちだったら、現在も『NARUTO』が60カ国語で放送されているわけで、昔だったら考えられないことです。  最近はアニメスタジオが大手資本の傘下に入ることも増えてきましたが、うちもいい相手がいたら、いつでもタッグを組んでもいいと思っていますよ。まあ、現在代表取締役社長の本間道幸が独立独歩でいきたいという意志があるので、今のところはそういう予定はありませんが。とはいえこれからの問題として、マーケットが世界まで広がるならば、組む相手が日本の企業じゃなくてもいいんじゃないですか? ──最後に、今後ぴえろとしては、どんなアニメを作っていきたいですか? 布川 どんなアニメを作るか、というよりも、アニメを制作するラインを維持するということはけっこう大事なことだと思います。何を理想化するか、という個人の思惑はあるけれども、会社としては常にラインが維持されて、スタッフの才能がそこで発揮されることを願うばかりです。さらに作品がヒットすれば、よりうれしい。そして、いろんな人たちが評価を受ける、ということが一つの目標です。並の答えだけどね(笑)。  もう一つ、可能性として海外のスタジオとの合作をもっとやっていきたい。今までは海外との合作があったとしても、それはどちらかの下請けみたいなもので、合作とは言えないものが多くありました。でも、これからはお互いに企画を出し合い、それぞれの国の戦略でアニメをヒットさせるということを共同でやっていくという方法を模索したいです。 (取材・文=有田俊[シティコネクション]) ●NUNOANI塾 2014年度は4月12日(土)から開塾。現在、応募受付中。詳細はHPにて。 <http://nunoani-project.jp/head.html>

フルCG映画『聖闘士星矢 Legend of Sanctuary』公開決定! あらためてチェックしたい『星矢』作品

saintmovie.jpg
映画『聖闘士星矢 Legend of Sanctuary』公式サイトより
 伝説的バトルコミック『聖闘士星矢』(原作・車田正美)が、今年6月にフルCG映画『聖闘士星矢 Legend of Sanctuary』として復活するということで、全国のマサミストたちが注目しています。 「聖闘士星矢」とは、1985年から1990年にかけて「週刊少年ジャンプ:(集英社)にて連載された、80年代を代表する少年漫画の一つ。星座をモチーフとしたプロテクター「聖衣(クロス)」をまとった美少年たちが、ギリシア神話の女神アテナの生まれ変わりである城戸沙織を守るべく、命がけのバトルに挑むという内容のアクション大作です。  本作の特徴はなんといっても、神話をベースとしたファンタジックな世界観と、端正なビジュアルのキャラクターたち。女子ウケする要素全開の本作は、メインターゲットの男子のみならず、今でいうところの「腐女子」層に大ウケし、大量の薄い同人誌が即売会で飛び交ったそうです。  ちなみに連載の当時の筆者は、カリカリの鼻たれ小学生。そんな大人の世界の盛り上がりとは別に、玩具メーカー・バンダイから発売されていた聖衣の着脱が可能なアクションフィギュア「聖闘士聖衣体系(セイントクロスシリーズ)」に大ハマりしていました。この玩具も大ヒットを記録したそうで、87年度男子玩具最大のヒット商品となりました。  そんな作品の人気は海外にも波及。特にフランスでの過熱ぶりは格別だったようで、当時、新刊が到着する船便を現地のファンが港で待ち構えていたという都市伝説もささやかれていました。  このようにビッグバン的大ヒットを記録した『星矢』だけあって、現在も玩具やアニメ、コミックなどさまざまなメディアでシリーズが展開中なのです。  しかし、あまりにも多岐にわたるメディア展開のために、「それぞれの作品の関係性や内容がよく分からん!」という人も多いはず。そこで、今回はざっくりと現在進行中の『聖闘士星矢』シリーズをチェックしてみたいとと思います! ●『聖闘士星矢 NEXT DIMENSION 冥王神話』
saintmeiou.jpg
 現在、「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)で不定期連載中のコミック。手掛けるのは原作の車田正美。ということで、本作が原作コミックの正統な続編といえます。冥王ハーデスとの決戦で重傷を負った星矢は、ハーデスの呪いで余命3日! そこで、今まで星矢に救われ続けてきた沙織さんは一念発起して、星矢を救うべく立ち上がります。なんだかんだあって、243年前の前聖戦の時代にタイムスリップした沙織さんですが、なんとまたも赤ん坊の姿でアテナ神殿に降臨してしまうのでした! 瞬、紫龍、氷河、一輝といった青銅聖闘士も過去にタイムスリップし、先代ペガサスの聖闘士・天馬とともにハーデス軍との戦いに臨みます。  序盤は車田正美自身も手探りで続編を執筆している感もあった本作ですが、現代とストーリーがリンクするようになったあたりから徐々に筆が乗ってきた様子。ここ最近は「これぞ車田節!」とでもいうべき、ベタながらも熱い展開が続いています。歴史の闇に葬られた十三人目の黄金聖闘士・蛇つかい座の聖闘士が登場したり、劇場用アニメ『聖闘士星矢 天界編~序奏~』の設定やプロットを盛り込みつつ、それをブラッシュアップした先が読めない展開がたまりません。とりあえず『聖闘士星矢』の続編漫画が読みたい! という方には、ぜひ押さえていただきたい作品です。 ●『聖闘士星矢Ω』
91cRezybJJL._AA1500_.jpg
 現在、テレビ朝日系列で放送中の「アニメ版の」続編ともいえるアニメ作品です。ファンなら周知の情報ですが、原作とアニメ版でかなり『聖闘士星矢』の設定は異なっています。  一例を挙げると、原作だと序盤のボスキャラ・教皇の正体は、13年前に当時の教皇であるシオンを暗殺したサガ……という設定でしたが、アニメ版では物語スタート開始の時点で前教皇シオンは存命。しかし、13年前にその弟であるアーレスをサガが暗殺にすり替わり。さらに、物語序盤の銀河戦争開始時にアーレスになりすましたサガが、シオンを暗殺し、アーレスとして教皇の座に就く……という、ややこしい設定になっています。  そのほか、原作には登場しなかった謎の聖闘士・鋼鉄聖闘士(スチールセイント)が出てきたり、「我が師の師は、我が師も同然!」という迷セリフが飛び出したりと、原作とほぼ同時進行で制作されていたがゆえに発生した設定の食い違いが多くあり、アニメ版『星矢』の世界と原作版『星矢』の世界は、パラレルワールドと言ってもいいかもしれません。  そこで、現在放送中の『Ω』は、思い切って「アニメ版」の設定をベースに、数年後の世界の物語を描いています。黄金聖闘士に出世した星矢や紫龍、新生聖衣で登場する氷河、瞬、一輝。ムウのあとを継いで白羊宮を守る貴鬼、後進を育てる二軍青銅聖闘士たち、白銀聖闘士にランクアップするヒドラの市様など、前作ファンには嬉しい要素のほか、まさの鋼鉄聖闘士復活など「アニメ版」愛にあふれる設定や展開が満載。土曜日早朝という、リアルタイムで見るにはなかなかつらい放送時間ではありますが、未見の方はぜひ一度チェックしてみてください! ●『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話』 
nn41Y9J6FYPDL._SL500_AA300_.jpg
 「週刊少年チャンピオン」にて連載されたコミックであり、作画を手掛けたのは車田正美作品の大ファンという漫画家・手代木史織。本作はペガサスの聖闘士・テンマと、冥王ハーデスとして覚醒してしまった親友・アローン。女神アテナとして覚醒した幼なじみの少女・サーシャの3人を中心に前聖戦の戦いを描く作品です。当初は、『聖闘士星矢 NEXT DIMENSION 冥王神話』と同じ物語を、異なる視点で描くという触れ込みでスタートした本作ですが、いつしかそれぞれ異なる展開を見せ始め、現在は同じ時代を舞台としながらもまったく異なるパラレルな存在となりました。  すっきりした絵柄と、原作リスペクトに満ちた内容となっており、古参ファンからも好評だったらしくOVAも全26話にわたって制作されました。現在、本作に登場する黄金聖闘士を主人公にしたオムニバス『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話 外伝』が、「別冊少年チャンピオン」(秋田書店)にて連載中です。 ●『聖闘士星矢 セインティア翔』
saits.jpg
 本作が、一番新しい「星矢」シリーズ作品です。主人公は、女神アテナを直に守る女性聖闘士である聖闘少女(セインティア)・子馬座(エクレウス)の翔。本来、女性聖闘士は女性であることを捨てるために仮面をかぶっていないといけない、という設定が存在しています。ということは、主人公は仮面女子? と思う熱心なファンもいるかと思いますが、そこはアテナの侍女という性格も持ったセインティアだけに、特別に素顔を出したままでも無問題!  物語は十二宮編後の時系列ということで、どうやらポセイドン編開始までの空白期間が描かれる本作は、現在「チャンピオンRED」(秋田書店)にて久織ちまきの作画で連載中。本編に連なる限りなく正伝に近い内容となっており、新たな聖闘士像をどう描くのか、気になりますね! ***  というわけで、簡単ながら現在進行中の『聖闘士星矢』作品を振り返ってみました。今回紹介したタイトル以外にも、昨年完結した若かりし日の黄金聖闘士の活躍を描いた『英闘士星矢 EPISODE G』というコミックも存在しています。これらの作品をまとめて読めば、より『聖闘士星矢』の世界への理解が深まるはず!  ちなみに『聖闘士星矢 Legend of Sanctuary』は、原作屈指の人気エピソードである十二宮編を劇場用アニメとして再構成したものになるそうです。単純に2時間の映画として考えても、1ステージあたり10分弱でケリをつけないといけない、すさまじいドタバタマラソンになる気もしますが、そこはきっと原作を良改変することできちんとまとめ上げてくれるはず(いや、マジでお願いします)!  公開が今から楽しみですネ! (文=龍崎珠樹)

リア充アニメ『ゴールデンタイム』が突きつける、アイデンティティ問題

goldentime.jpg
『ゴールデンタイム』公式サイトより
 現在放送中のアニメの多くがクライマックスに向けて助走を開始した感のある今日この頃ですが、ぶっちぎりで僕の豆腐メンタルを刺激しまくる作品が、『ゴールデンタイム』です。  本作は、テレビアニメ化され、大きな話題を呼んだライトノベル『とらドラ!』原作者・竹宮ゆゆこの最新作。高校生たちの瑞々しい恋愛模様に注目が集まった前作に対し、今回は大学生たちの、ちょっぴり大人な恋愛模様が描かれます。  あらすじは以下の通り。高校時代に交通事故に遭い、記憶喪失となってしまった主人公・多田万里は、東京の大学へ進学。そこで出会ったエキセントリックなお嬢様・加賀香子と、やがて恋人同士となります。しかし、万里は高校時代の同級生にして、現在大学で同じサークルに所属している「リンダ先輩」こと林田奈々のことが好きだったという過去があったのです。万里は、「現在」の自分と「過去」の自分の間で揺れることになる……。というもの。この設定だけでも、なんとも切ないラブストーリーが想像できるのですが、僕にとっては別の部分で切なくなってしまうのです。  というのも、本作の登場人物たちは、そろいもそろってリア充ばかりだからです! 「リア充」とは、「リアル(現実世界)で充実している人たち」を指すネットスラングです。「個人で楽しむ趣味や仕事に没頭していても、それで充実しているならリア充だろ!」という言説もありますが、ここでは広義で捉えられている大学のイベントサークルノリと定義します! 異論は認める!  例えば、「男女問わず友達が多い」「飲み会や合コンをしょっちゅう開いている」「季節のイベントは、みんなで盛り上がる」「なぜかバーベキューをすぐにやりたがる」「コミュニティ内で男女がくっついたり、離れたり」みたいな、それこそ「絵に描いたような理想の大学生活」を送る大学生のノリとでも言いましょうか。『ゴールデンタイム』で描かれる青春像は、まさにこの通りなのです。  いわゆるアニメで描かれる青春ドラマというと、学校とその周辺が世界のほとんどと言える中高生の物語であったり、『げんしけん』のようなオタク趣味を持つ大学サークルの物語がこれまで大半を占めていました。で、実際そういった作品は見ていて非常に楽しいというか、閉じた自分の世界の延長線上にある「理想郷」を思わせて心が落ち着くんですよ。なぜなら、僕は腐れオタクだからね! 「ああ、自分もこういうサークルに参加したいなあ」「こういう学校生活を送りたかったなあ」。これらのアニメは、僕のようなだめなオタク野郎の理想を具現化し、現実逃避させてくれる素晴らしい装置だったのです。『とらドラ!』も同じく、「何か心に闇を抱えている女子を、僕の力で救ってあげたい! でも、心に決めた女子以外はあえてフるけどな!」という、精一杯のマチズモを満たしてくれる最高の作品でした。  しかし、『ゴールデンタイム』はそんな僕らの心の聖域にズカズカと入り込んできて、世の中にはこんなにキラキラと輝く青春を送る若人たちがいるんですよ、男女問わず素晴らしい交友関係を結ぶことができるのですよ、と高らかに歌い上げるのです! うわあああああ! やめてやめてやめてよ! 今まで見ないふりをしていたのに! 気づかないふりをしていたのに! 僕、大学ではボッチだったよ! アニメも本当は一人で見ていたよ! オタクな上にコミュ障だったから、大好きなアニメを誰かと語り合うことすらなかったんだよ!  Twitter上では僕と同じく、「『ゴールデンタイム』見てると、なんかこう胸に来るものがある」「見てるとつらい」「あんなの、大学生いじめだ……」「メンタルがやられる」といった具合に、『ゴールデンタイム』のあまりのキラキラした青春ドラマぶりにダメージを受けている同志もちらほら。  しかし、それでも我々は『ゴールデンタイム』を見続けてしまうのです。それはなぜでしょうか? 非リア充だった僕のような視聴者も、本作を見ていくうちに「ああいう青春を送りたかったなあ」「ちゃんとサークルに入ればよかったなあ」「もっとほかの人と交流すべきだったなあ」などと、自分の過去と向き合い始めている自分に気づくことでしょう。 あるいは「こんな青春なんてないよ!」「やっぱりこういう連中はいけすかない!」と拒絶反応を示す人もいるでしょう。中には「今の大学生活は、こんなに充実していない……」と、逆に現在の自分の姿とのギャップに衝撃を受ける現役大学生もいるかもしれません。 その姿こそ、まさに過去の自分と立ち向かうことになる『ゴールデンタイム』のキャラクターそのもの。  物語も後半に突入した現在、今まさに香子と恋人関係にある万里はリンダが好きだったという過去の記憶と対峙することになりますし、ほかのキャラクターも過去とどう向き合うか、という描写に物語の比重が置かれていきます。過去と現在の相克こそが本作のテーマと捉えるならば、我々視聴者もまた本作を見ることで、否応なくその物語のテーマと向き合わされているのです。一見ただのリア充ラブコメと思わせておいて、ズシンとヘヴィなアイデンティティの問題を我々視聴者に突きつける本作の構成力と描写力は、タダモノではありません。  一本のエンタテインメント作品でありながら、視聴者を巻き込んで考え込ませる問題作『ゴールデンタイム』。その行く末は見逃せません。 (文=龍崎珠樹)

故・永井一郎ラスト『サザエさん』視聴率23.7%、最後のセリフに「感慨深い」「波平らしい」の声

namihei0210.JPG
『バカモン!波平、ニッポンを叱る』(新潮社)
 先月27日に亡くなった声優・永井一郎さん(享年82)が、生前に磯野波平役を演じた最後のエピソードが9日、アニメ『サザエさん』(フジテレビ系)で放送され、平均視聴率23.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と高視聴率を記録したことが分かった。  最後のエピソードは、奇しくも「波平、親切騒動」という波平にスポットを当てた物語。「ただいま。疲れたらから少し休ませてくれ」と帰宅早々、日中にもかかわらず布団に入ってしまった波平。「体の具合が悪くなったんじゃないの?」と心配するサザエに、フネは「出かける時は元気だったんだよ?」といぶかしがる。後にそれが、見ず知らずの人を世話したことによる“親切疲れ”だということが分かる……という心温まるストーリーであった。  このエピソードの波平の最後のセリフは、「うっかり道も教えられんわ!」であったが、これにTwitter上は「最後は波平さんらしいセリフだった」「あれが永井さんが演じる波平さんの最後のセリフかと思うと、自然と涙が出ました」「いやいや、あなたから道を教わった人はたくさんいますよ」などと、温かい投稿であふれた。  また翌10日、波平役の後任が、『ちびまる子ちゃん』(同)の永沢君やヒデじい、『名探偵コナン』(日本テレビ系)の目暮警部などの声で知られる声優・茶風林が務めることが発表された。本人は「永井さんが造り上げた“磯野波平”というキャラクターのイメージを損なうことのないよう、大切に、精一杯務めさせていただきます」とコメントしており、ネット上では「妥当な人選」「声が似てるから、すぐになじみそう」と、好意的な意見が多く見られる。 「2005年に、ワカメ役の声優が二代目の野村道子さんから、三代目の津村まことさんに変わった際には、『声が子どもっぽくない』『違和感が拭えない』『いつまでも慣れない』という意見が相次いだ。ただ、今回の波平役の交代については、歓迎ムード。ベテランの茶風林さんは、アニメファンからの信頼も厚く、視聴者もすぐに声の変化に慣れそうだ」(芸能記者)  新しい声の波平が、これまで通り“日本のお父さん”としてお茶の間に定着するのも、そう時間はかからないのかもしれない。

超豪華エンタメ作からヤマカン最新作まで! 2014年冬クール“極私的”おすすめアニメ

anime127.jpg  1月ももうおしまい! 2014年冬クールアニメも一通り出そろったということで、極私的おすすめアニメを羅列してみたいと思います! 「あれがない」「これがない」というクレームは受け付けません! 極私的だもんね! ■『スペース☆ダンディ』  レトロフューチャーなビジュアルが印象的な本作は、伝説的アニメ『カウボーイビバップ』に参加したスタッフをはじめ、大友克洋、田島昭宇、円城塔、ロマン・トマ、大河原邦夫、宮武一貴など豪華クリエイターが参加。音楽面も菅野よう子、岡村靖幸、やくしまるえつこ、ミト(クラムボン)、川辺ヒロシ(TOKYO No.1 SOUL SET)、☆Taku Takahashi(m-flo)など、そうそうたる面々が集結した超豪華な作品です。  その内容は、絵が動く動く! お話もコミカルで、派手なアクションあり、映画のパロディあり、お色気ありと、なんでもアリな内容。アニメーションの持つ想像力の自由さは無限大だということを再認識させてくれる、エンタテインメント作品となっています。本作を一言で言うなら、「クール」です! ■『バディ・コンプレックス』  来ました来ました来ましたよー! サンライズお得意の、リアルロボットアニメ最新作です。『ガンダム』シリーズをはじめ、多数のロボットアニメを生み出してきた同社の若手スタッフ中心の編成となっており、作品全体にも心なしか勢いが感じられます。  見どころはなんといっても「カップリングシステム」でしょう。渡瀬青葉と隼鷹(じゅんよう)・ディオ・ウェインバーグのイケメン主人公2人が、戦闘中にお互いの乗り込むロボット(劇中ではヴァリアンサーと呼ばれる)を接近させ、「プロポージング!」のセリフを叫ぶと、2人は感覚や操縦技術を共有。さらに機体も変形し、パワーアップしてしまうこのシステム。  ボーイズラブ要素をにおわせる名称が気になりますが、単純にバディものとして見てもなかなか熱い設定です。特に、ピンチのシーンで2人が肩を寄せ合ってからの一発逆転という展開は、ヒーロー物の王道。作画のクオリティも非常に高く、手描きのロボットがグリグリと空中戦を繰り広げる様は痛快です。ロボットアニメ好きなら、チェックして損はありません! ■『いなり、こんこん、恋いろは。』  ふとしたきっかけで変身能力を授かった女子中学生・伏見いなりが、その能力を通じて恋愛や友情を育むというストーリーの本作。本作の魅力を語るなら、とにかく美麗な風景とキャラクターのかわいらしさ。そして、非常に丁寧な人物描写でしょう。二転三転するストーリーの中で、生き生きと動き回るキャラクターたちは、みな素直で優しく、温か。そこで展開するちょっぴり不思議な人間ドラマは、どこか懐かしくもあり、老若男女楽しめる上質なファンタジーです。  この雰囲気は何かに似ているな~と思ったら、80年代にスタジオぴえろが制作していた『魔法少女』シリーズです。あえて言うなら、『魔法のスター マジカルエミ』の空気感に近いのかなあ。  制作を担当するのは、AICから独立したスタッフによって設立された新会社・プロダクションアイムズ。同社初の元請作品となります。 ■『みんなで集まれ!ファルコム学園』  すみません。僕、日本ファルコムのゲームが大好きなんです。『イース』シリーズやら『英雄伝説』シリーズやら、日本ファルコムのゲームキャラたちが集まってドタバタやってるだけで満足なんです。ストーリーとか作画とか、そういうのはどうでもいんです。リリアが、エステルが、ティオが毎週動いてしゃべって、何かワチャワチャやってるだけで感無量なんです。そんな僕らのための作品です。ま、2分枠アニメなんで多くを求めてもね。 ■『となりの関くん』  今期のベスト花澤さんアニメです。毎回、授業中に隣の席で予想外の行動を取る関君に対し、花澤香菜演じる横井るみがすさまじいテンションでツッコミを入れまくる姿は、それだけで笑えます。  また、エンディングテーマ「Set Them Free デスクトップドラムver.」では、カシオペア、熱帯JAZZ楽団で知られるドラマー・神保彰がドラム演奏で参加。関君のコスプレをした神保が、実際に机の前に座り、この曲に合わせて筆箱や茶わんなどを叩いている姿が自身のFacebookで公開され、大きな話題を呼びましたが、とにかく遊び心あふれる本作。一日の最後に、何も考えずゲラゲラと笑えることをお約束します! ■『WakeUp,Girls!』  いろいろな意味で世間に話題を振りまく、ヤマカンこと山本寛監督の最新作です。内容は、東北を舞台にしたローカルアイドルの活躍を描く、といったもの。アイドル物アニメというと、すでに飽和状態と思われていましたが、ヤマカンはどこまでも泥くさく、リアルな「芸能」の姿を描こうとしています。社長の資金持ち逃げから始まり(その後、なし崩し的に元のさやに戻りますが)、スーパー銭湯での水着ライブ&接待、パンチラをも辞さないライブ……。とにかく華やかではなく、露悪的なまでに泥くさい芸能の世界が描かれます。  正直、最初は冷やかし半分で見ていたのですが、第3話まで見た時になぜか感動し「もっと見ていたい」と思っている自分がいました。本作の魅力はどこにあるのでしょうか?  なんの武器も持たず、ビジュアルという時限式の資本だけで芸能界に飛び込んだアイドルたちは、毎回さまざまな「現実」と直面します。芸能界という「現実」、自分たちの知名度という「現実」、男性が自分たちをどう見ているのかという「現実」、そして震災以降の東北という「現実」……。と同時に、そういったシビアでリアルな現実の中で、少女たちは誰かにとっての希望かになれるかもしれないという、自分たち自身の「希望」に気づいていきます。  そういう「少女たちの目覚め」を描こうとしている本作は、ファンがアイドルに何を期待しているのか。アイドルを求める我々は、何に絶望し、何に希望を抱いているのかを浮き彫りにしてくれるのかもしれません。そういったリアルなドラマと、地に足の着いた感動が本作の魅力なのではないでしょうか。  ただ、残念ながら本作が大ヒットに至ることはないかもしれません(だって、作画面が絶望的にダメダメなんです……。これは致命的!)。しかし、だからといって「ダメアニメ」の烙印を押すには惜しすぎる……。本作が内包するテーマとドラマ性に、一抹の期待を感じずにはいられません。 ***  以上、勝手に思うままに書きなぐってみました。ほかにもこんな面白い作品があるよ! という方はぜひ教えてくださいね! ではっ! (文=龍崎珠樹)

同業者、マネジャー、一般人……過去のデータから分析「声優と結婚できる職業」とは?

rips.jpg
『LISP1st写真集~LIS☆Photograph~』(主婦の友社)
「ご報告」  それは声優ファンにとって、最も気がかりなワードの一つです。ある日、普段から応援している声優のブログを何気なくのぞいてみた時、最新記事のタイトルがこう書かれていた場合、その内容はほぼ「結婚のご報告」だと言っても過言ではありません。そのご報告を知った声優ファンは、大好きな声優の幸福を大いに祝福しながらも、今まで応援してきた声優が誰かのものになってしまったことに一抹の寂しさと切なさを覚えるものです。先日も、『ひだまりスケッチ』や『翠星のガルガンティア』『のんのんびより』など人気のアニメに数多く出演する女性声優・阿澄佳奈が「普通のおやじ」(ブログより抜粋)との結婚を発表。多くの祝福の声と慟哭が、ネット上に噴出したものです。  ところで、声優の結婚相手にはどんな人が多いのでしょうか? もちろん、声優もひとりの人間です。さまざまな職業、経歴のパートナーと出会い、結婚することは間違いないのですが、それでも特殊な仕事柄、ある程度出会いやすい職業の傾向というものもあるのではないでしょうか?  そこで今回は、全声優ファンが気になる、「声優と結婚できる(かもしれない)職業」というものを、過去のデータから探ってみたいと思います。 ●声優  声優と結婚できる(かもしれない)職業として、最も可能性が高いのが同業者です。 「やはり普段からスタジオやイベントで共演することも多く、同じ職業ということで仕事の相談などもしやすいのでしょう」(声優・アニメ系ライター)  というわけで、数多くのカップルが声優業界には存在しています。しかし、その一方で離婚も多いのがこのパターンです。 「芸能人ということで、自己主張が強い人や個性の強い人が多いんでしょうね。性格の不一致での離婚も少なくありません」(同) とのこと。出会いのチャンスは多くとも、幸福に添い遂げるのも難しいパターンかもしれません。もちろん、末永く幸福な家庭を築いている声優カップルもちゃんといますので、そこはお間違いなく! ●マネジャー  ありそうで意外とないのがこのパターン。 「一般芸能界に比べて、マネジャーとタレントの結びつきが弱いのが声優業界の特徴です。そのため、あまりマネジャーと声優がくっつくことはないようです」(同)  ひとりのマネジャーが同時に複数の声優を管理することが多い声優業界だけに、一人一人とそこまで密接な関係を結ぶことは難しいのかもしれません。 ●雑誌編集者・ライター  声優グラビア誌も複数存在する現在。専門誌の編集者やライターになれば、声優とお近づきになれる機会も増えるのでは?                                                            「確かに仲良くなれる可能性もあります。時には打ち上げなどで、同席することもありますからね」(同)  かつて、雑誌編集者が自身がファンの某声優の担当になり、そのままゴールインするという事例もあっただけに、狙い目の職業かもしれません! ●一般の会社員  意外と多いのが「一般の会社員」という肩書のパートナーです。しかし、一般の会社員と声優はどこで出会うのでしょうか? それはアニメ、ゲームなどを制作する現場で出会うのです。 「アニメ制作会社もゲーム制作会社も、等しく一般の会社です。そこで働くスタッフも一般の会社員です。つまり、一般の会社員とは、声優が仕事で携わったメーカー、制作会社のスタッフというわけ」(同)  なるほど~。そういえば百合を売りにしていた某女性声優もあっさりと結婚し、ファンを驚かせていましたが、そのお相手も(ゲームメーカー勤務の)一般会社員だとか。こういう話を聞くと、世の中、捨てたもんじゃないなと希望も湧いてきますね!  ほかにもまだまだ声優と出会える職業はあると思いますが、代表的なところだとこんなものでしょうか。もし、「こんな職業なら声優さんと出会えるよ!」という情報をお持ちの方は、ぜひ教えてください。僕も思い切って、そこに転職してみようかなと思います! (文=龍崎珠樹)

効果のほどはいかに? ヒットアニメとヒット祈願の関連性

mikakunin.jpg
『未確認で進行形』TVアニメ公式サイト
 皆さん、あけましておめでとうございます! 今年もアニメ業界の重箱の隅をつついていくのでよろしくね! というわけで、新年一発目の「アニメ時評」は、アニメ作品と神社の関係についてフォーカスしちゃうぞ!  1月7日、放送開始を翌日に控えた新アニメ『未確認で進行形』スタッフ・キャストが、アニメヒット祈願のために日枝神社に参拝したというニュースがアニメ関連媒体にアップされ、ネット上を賑わせた。この「ヒット祈願で神社参り」という一連のプロモーションは本作に限ったものではなく、アニメ以外にもゲン担ぎとしてさまざまなジャンルで行われている、ある種「エンタメ界定番のPR」といえる。  そこで今回は、過去にヒット祈願したアニメを探して、「ヒット祈願とアニメヒットの関係性」についてざっくりと振り返ってみよう! まずはテレビアニメから。 『パパのいうことを聞きなさい!』……神田明神(東京都) 『カンピオーネ!』……新田神社(東京都) 『メガネブ!』……都内某神社 『夏目友人帳』……今戸神社(東京都) 『ゲゲゲの鬼太郎』×『墓場鬼太郎』……赤城神社(東京都) 『有頂天家族』……下鴨神社(京都府) 『魔法少女まどか☆マギカ』……不明 『青の祓魔師』……不明  実際にヒット祈願のために参拝した作品ははるかに多いのだがとりあえず、代表的なものをピックアップ。どことなく和風な世界観の作品、オカルトめいた作品が多い気がするが、やはり厄払い的な意味合いもあるのだろう。『まどマギ』みたいな空前のヒット作もあれば、「あったねえ、そんなアニメも」的な作品もあったりと、あんまりお参りとヒットの間に関係性はなさそうな印象……?  さてさて、お次は劇場用アニメ。 『ドットハック セカイの向こうに』……赤城神社(東京都) 『おおかみこどもの雨と雪』……真田神社(長野県) 『長ぐつをはいたネコ』……今戸神社(東京都) 『劇場版 文学少女』……氷川神社(東京都) 『プレーンズ』……成田神社(千葉県)  こちらもいくつかピックアップ。細田守監督もヒット祈願していたなんて、ちょっと意外! また『長ぐつをはいたネコ』の時は、当時、ロンドン五輪を目指してカンボジア国籍を取得したばかりの猫ひろしも同席。『夏目友人帳』スタッフもお参りした今戸神社は、招き猫発祥の地らしい。そのほか、ピクサー最新作『プレーンズ』が成田神社というのは大変わかりやすい構図である。そんな感じで、よりイベント色が強いのが劇場用アニメの傾向といえる。  といった具合に、かなり乱暴に神社へのヒット祈願とヒットアニメの関係を検証してみると……。よくわからん! というのが正直なところ。ともあれ。アニメがヒットするかどうかなんて、視聴者が見てくれるまでは神のみぞ知ることである。  ただ人事を尽くして天命を待つ、という言葉があるように、ヒット祈願をする作品というのは、スタッフが全力で作品を作り上げて、あとは視聴者が思い切り楽しんでくれるのを期待するばかり、という制作側のアニメにかける本気度の表れともいえる。我々視聴者も、そんな制作者たちの熱い思いをかみしめつつ、アニメを楽しもうじゃないか! (文=龍崎珠樹)