「ヤクルトとカップヌードルに洗礼?」MOJOKOのユーモラスな世界

Attack on Golden Mountain_s.jpg
Attack on Golden Mountain(c)MOJOKO
 『AKIRA』『ドラゴンボール』『ドラえもん』......子どものころ、僕らの心をアツくさせた漫画やアニメが、海の向こうに住むアジアの子どもたちの心にも火をつけていた。今や日本人だけのものではなくなった、ジャパニーズ・ポップカルチャー。その影響を受けて育った、アジアの才能豊かなクリエーターたちを紹介します。 第23回 アーティスト MOJOKO(モジョコ)  数年前、"シンガポールの裏原宿"と呼ばれる"ハジ・レーン"という小さな路地にある、地元の若者が経営するオシャレブティックで、フリーペーパー「Kult」 を手にしたときの衝撃。ローカルなのか無国籍なのか判然とせず、うさん臭くて尖っている、なのに愛嬌のあるユーモラスな世界に一瞬で引き込まれた。「シンガポールでこんな"変なこと"をしているクリエイターがいる」と、妙にうれしくなった。  その頃、ファンククリス・リーたちの「地元の飲み会」で、いつもゆるゆると和んでいるイギリス人、スティーブ・ローラーがいた。そして彼がイラン生まれの香港育ちで、MOJOKO(モジョコ)というアーティスト名でシンガポールをベースに活動し、さらに「Kult」のクリエイティブ・ディレクターでもあると知ったときの2度目の衝撃。だが同時に、いろいろなことが腑に落ちた。
51gEA+iGJNL.jpg
『ガンダム30thアニバーサリー
コレクション
機動戦士ガンダム』
(バンダイビジュアル)
 子ども時代を過ごした香港で、MOJOKOはほかの香港人の子どもたちと同様、日本のコミックカルチャーの洗礼をもろに受けて育ったという。その最初の記憶は、テレビで流れる日本のアニメーション。ガンダムやドラえもん、タツノコプロの『ゴールドライタン』や『宇宙の騎士テッカマン』の超ハイパーカラーは、今も鮮明に覚えている。 「僕の人生における最重要品目は、ヤクルトとカップヌードル。それとスーパーマーケットにディスプレイされていた、日本語の商品広告やポスター。意味は全然分からないけど、パッケージやポスターに印刷されているグラフィカルな文字の形に惹かれました。カラフルで生き生きして、子どもの僕にはたまらない刺激だった」  広告であれ娯楽であれ、日本の「グラフィックに妥協しない姿勢」は、彼の作品作りに大きく影響しているという。
Megadeath02_sm_s.jpg
Megadeath02(c)MOJOKO
Trasher_s.jpg
Trasher(c)MOJOKO
「特に日本のゲームはすごい。香港の大きなゲームセンターには、カプコンの最新ゲームを宣伝するグラフィックスが店中に飾られていた。僕は、ほとんどの時間をゲームセンターで過ごしていたから、強烈な体験として残っているし、初期のテレビゲームカルチャーや、任天堂のスーパーファミコンには、今でもすごく影響を受けていると感じるんだ」  MOJOKOの手法として知られる、東西津々浦々の大量のグラフィックや文字のコラージュ。ひとつひとつはてんでバラバラのスタイルや意味を持つものが、作品の上では、不思議な統一感を醸し出す。「みんな違うけど、みんなどこか同じ」ということを視覚的に感じる驚きや楽しさ。それは、多くの国で暮らした経験を持つMOJOKOからのメッセージでもある。"MOJOKO語"は、世界共通の"見ることで通じる"言語なのだ。
CultureFuck_s.jpg
CultureFuck(c)MOJOKO
nobodycansaves.jpg
Nodody can save us(c)MOJOKO
 MOJOKOにとって、アジアで暮らすことは「驚きに満ちあふれたもの」だという。 「古いもの、新しいものに限らず、素晴らしいタイポグラフィやパッケージ、職人の技、建物の装飾などなどが至るところに存在している。シンガポールなんか、一つの標識に、タミル語、マレー語、英語、中国語が書かれているんだよ。みんな、そういうものに普通に囲まれて暮らしているんだ。そんなふうにすさまじくミックスされたカルチャーが、ハイブリッドなアイデアを大量に生み出していく力になるのだと思う」  プロジェクトを構想するときには、現地のカルチャーや感受性に目を配りながら、かつ国際的な視点を持つことが大切だというMOJOKO。 「そのイメージソースは、香港とシンガポールの広告。多文化、多国籍の人たちが暮らす場所だから、広告も言語の壁を越えた多くの人々に狙いを定めている。つまり、そういうものを日常的に見ている人たちは、視覚的なリテラシーが高いということ。僕は"イメージという言語"を探求したい。そしてグラフィックによって、文化や言語を越えて、僕のアイデアを伝えたいと思っているんだ」
kult.jpg
Kult magazine
 これからも「Kult」の活動はもちろん、これまでも数多くこなしてきた展覧会のキューレーションも続けていきたいという。 「アーティストとしては、インドやブラジル、日本で展覧会をするのが夢です。インタラクティブ・アートの展示をしてみたい」  地元のクリエイティブ界でもすっかり"顔"になりながら、そこで収まることなく、飄々と国籍や文化を越えてフィールドを拡げていく。世界中のどこにいても"MOJOKO語"を目にする日は近いかもしれない。 (取材・文=中西多香[ASHU]) Mojoko_portrait.JPG ●スティーブ・ローラー イラン生まれ。シンガポール・ベースの英国人アーティスト。イタリアのファブリカ、ニューメディア部門での訓練後、商業的、個人的な実験的プロジェクトに多数従事。現在Kult magazineのクリエイティブ・ディレクターであると同時に、現地のアンダーグラウンドな活動に、キュレーター、アーティストとして関わっている。グラフィック&インタラクティブ・デザインのバックグラウンドを持つ彼の最近の作品は、世界中のマスメディアに現れる現代における衝撃的なイメージを反映させたもので、世界中の多くのメディアで紹介されている。 <http://www.mojoko.net.> <http://www.stevelawler.com> ●なかにし・たか アジアのデザイナー、アーティストの日本におけるマネジメント、プロデュースを行なう「ASHU」代表。日本のクリエーターをアジア各国に紹介するプロジェクトにも従事している。著書に『香港特別藝術区』(技術評論社)がある。<http://www.ashu-nk.com > オンラインTシャツオンデマンド「Tee Party」<http://teeparty.jp/ashu/>
ガンダム30thアニバーサリーコレクション 機動戦士ガンダム 『機動戦士ガンダム』劇場3部作の第1弾。 amazon_associate_logo.jpg
■バックナンバー 【vol.21】「狂気とポップカルチャーが融合!? 香港のアーティストが追求する"不完全な美" 【vol.22】「人間の欲望を視覚化?」香港人気キャラの生みの親が追求する"醜さの美学" 【vol.20】「故郷・ボルネオ島での原体験が創造力の源」世界で活躍するマレーシアの"ケンヂ" 【vol.19】「人生に起きるすべてのことを細かく観察したい」中国ネット世代のアーティスト 【vol.18】「ヒーローは宮崎駿と奈良美智」シンガポールのマルチスタイル・アーティスト 【vol.17】「ルーツは『天空の城 ラピュタ』」ウォン・カーウァイに見い出された香港の若き才能 【vol.16】怖かわいい魑魅魍魎が暴れ回る! ヤン・ウェイの妖魔的異界 【vol.15】「原点は日本のコミック」東南アジアを席巻する都会派クリエーター 【vol.14】エロ×宗教×故事が混在!? 中国版・寺山修司が造り出すカオスな世界 【vol.13】昼間はOL、夜は寡黙なアーティスト ソン・ニが描く秘密の快楽の世界 【vol.12】まるで初期アニメ ローテクを駆使する南国のアート・ユニット「トロマラマ」 【vol.11】「造形師・竹谷隆之に憧れて......」 1000の触手を持つ、マレーシアのモンスター 【vol.10】"中国のガロ系"!? 80年代以降を代表するコミック・リーダー ヤン・コン 【vol.9】大のラーメンおたく!? シンガポールデザイン界を率いる兄貴、クリス・リー 【vol.8】メイド・イン・ジャパンに憧れて...... 香港の文学系コミック作家・智海 【vol.7】「血眼になってマンガを追いかけた」海賊版文化が育んだ中国の新しい才能 【vol.6】裸人間がわらわら 香港ピクセル・アートティストが放つ"アナログデジタル"な世界 【vol.5】ダメでも笑い飛ばせ! 香港の国民性を体現したグラフィック・ノベリスト 【vol.4】「教科書はガンダムの落書きだらけだった」 香港・原色の魔術師の意外な原点 【vol.3】「懐かしいのに、新しい」 読むほどにクセになる"タイ初の日本漫画家"タムくん 【vol.2】 マイブームはBL!? 香港の腐女子が描きとめる、消えゆく都市の記憶 【vol.1】「 :phunk版ガッチャマンが作りたい」 シンガポール発のデザイン集団が描く夢

「"ヒドイ画質と翻訳"のほうが大人気」アメリカの日本アニメ市場に何が起きているのか?


bandaienta.jpg
米国法人バンダイ・エンタテインメント
公式サイトより
 今月初め、バンダイナムコグループの米国法人「バンダイ・エンタテインメント」がソフト・マンガの販売事業から撤退することが明らかになり、アニメ業界で大きな話題となった。今後、同社はライセンス販売と管理を事業の柱としていく方針だという。アメリカで日本のアニメDVDの売り上げが芳しくないのは半ば常識だが、『攻殻機動隊』や『涼宮ハルヒ』シリーズなどのヒット作を抱える同社でもソフト販売事業から撤退しなければならないとは驚きだ。いったい、アメリカでは何が起こっているのか?  アメリカのアニメ市場でまず特徴的なのは、ソフトに対するニーズである。日本では、テレビ放映されたアニメが1話、あるいは2話分収録された5,000~6,000円するDVDを"しようがなく"購入している面もあるが、アメリカは事情が違う。3話程度収録されたDVDは1本あたり3,000~4,000円程度。さらに、しばらく待てば同価格帯でシリーズ全話が収録されたボックスセットが発売される。日本貿易振興機構(ジェトロ)が2010年に行った調査でも、「1巻ずつ購入するよりも全巻まとめて安く買える」という理由でニーズが高いことは明らかになっている。  さらに、アニメのユーザーのスタンスも大きな違いがある。日本でも顕著になりつつあることだが、「カネを出すから良質なもの」を求める層と「安く(あるいはタダで)見られるのならば質は問わない」という層が存在し、後者は徐々に拡大しつつある。その象徴ともいうべきものが、「クランチロール(Crunchyroll)」や「フールー(HULU)」に代表されるストリーミングサービス(いわば、著作権処理をクリアした合法的なファンサブ)の拡大だ。  こうしたストリーミングサービスでは、日本で放映されたテレビアニメが、ほぼ時間差なく配信されるようになっている。もちろん、画質は荒いし、何よりも翻訳の質は最悪だ。だが、翻訳の質よりも、"早く見ることができる"ほうがニーズがあるのが現状。そして、ソフト化の際にも翻訳を改善することなどせず、そのまま流用している。それでも多くのユーザーのニーズを満たすことができているのだ。結果、まず干上がりかけているのはアニメの翻訳家たちだ。  そうした現状を、翻訳家の兼光ダニエル真氏は語る。 「アメリカでも一流といわれる知人のアニメ翻訳のプロが、最近は翻訳よりもソフト化の際の字幕つけの仕事のほうが多くなってしまったと嘆いています。翻訳家が他人の、それも質の悪い翻訳の字幕をつけるなんて屈辱的ですが、それしか仕事がなくなっているんです」  ストリーミングサービスの利点は配信が早いことに次いで、多くのサービスが無料で利用できることにある。多くのサービスでは有料会員に登録すれば高画質の動画を視聴できるが、"質"よりも"無料"であることが重きを置かれている印象を受ける。アニメがアメリカでブレークした2000年以降、多くのユーザーが質の悪い翻訳と画質を受容してしまっている現状はいかがなものだろうか。 ■アニメの配信・流通の主導権を確保が課題に  ストリーミングサービスはなぜ、ここまで急成長できたのか。その背景にはストリーミングサービスの戦略と、日本側のニーズの一致があった。かつては、「アメリカで行われている日本アニメの配信サイト=違法」というイメージがあったが、今ではかつてのファンサブから合法的なストリーミングサービスへの転換が行われている。その理由は簡単だ。日本のアニメ会社などの権利者は、違法なアップロードを行わせないために、クランチロールやフールーのような配信サービスと契約を結んでいるのだ。彼らがアメリカ国内の違法なアップロードなどに対しても対処してくれるので、日本側もありがたい。しかし当たり前だが、このシステムでは日本側の利益は減ってしまう。 「これから求められるのは、日本国内で海外に提供できる高品質な翻訳と画質のストリーミングサービスを行うことでしょう。配信の主導権を日本側が握って利益を確保することが求められています。また、そうしたサービスによって、現状のストリーミングサービスで満足しているユーザーを取り込むこともできると思います。もちろん、価格面も含めてローカライズ、あるいは現地法人との提携もありえますが、配信・流通の管理に至るまで日本側が主導権を得る方向に向かわなければならないでしょう」(前出・兼光氏)  前出のジェトロの調査でも、アメリカのユーザーが質の悪いもので満足しているのではなく「インターネットで情報が入手できるので(ソフト化まで)待ちきれない」ことが、ストリーミングサービスのニーズを高めていることがうかがい知れる。  まだ海外には開拓できる未知の市場がある。求められるのは、日本がアニメコンテンツの生産拠点となるのではなく、世界での流通経路まで含めて管理する主導権を握ること。「良質」のアニメコンテンツ製作で満足する時代はもう終わった。 (取材・文=昼間たかし)
もっとわかるアニメビジネス もっと勉強しないとね。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・「やったもん勝ち」なんて当たり前! 海外マンガ・アニメ違法投稿サイトの実情「放送1時間後には英語字幕付きでアップロード」現地のニーズに応える日本アニメの未来形は?「クール・ジャパンなんてウソ」"精子人形"村上隆が日本のアニメ業界に苦言

水樹奈々が歌いながらバトル!? 「戦うヒロイン」アニメに大注目!

animeuta.jpg
(上)『戦姫絶唱シンフォギア』
(下)『ブラック★ロックシューター』
 2012年冬アニメも一通り放送がスタートした。今冬スタートしたアニメは、20タイトル以上を数え、熱心なアニメファンも、どの作品を見ればいいのか頭を悩ませていることだろう。そこで毎回ジャンルをざっくりと分けて、筆者の独断と偏見でおススメアニメを紹介しよう。  初回となる今回のテーマは、「戦うヒロイン」アニメだ。毎シーズン、必ずといっていいほど制作されているこのジャンルは、現代オタクの基礎教養といっても過言ではない。人気、注目度ともに高く、これまで数多くのヒット作が生まれてきた王道ジャンルである。  当然、今クールも魅力的なヒロインたちがド派手なアクションを繰り広げる話題作がスタートしている。  中でも大きな話題を呼んでいるのが、3度のNHK『紅白歌合戦』の出場、声優初の東京ドーム・コンサートを2日間にわたって成功させたアニソン界の歌姫・水樹奈々がヒロインを演じる『戦姫絶唱シンフォギア』(TOKYO MXほか)だ。  ヒロインたちが歌の力をエネルギーに変換して人類の敵・ノイズと戦うという本作の魅力は、キャストからも分かるように「歌」。『マクロスF』で音楽とアクションを融合させた制作スタジオ・サテライトを制作協力に迎えて描かれた第1話のライブシーンの迫力は圧倒的であった。  しかし、最大の見どころは毎回描かれるノイズとの戦闘シーンである。ヒロインたちは、「歌いながら」バトルをするのである。「歌の力で敵を改心させる」とか「歌で味方を応援する」という形で、バトルと歌を融合させてきたアニメはこれまでもあったが、「歌いながら敵をなぎ倒していく」というアニメは前代未聞。  ヒロインたちが、本作の原作を務める上松範康率いる作曲チーム・Elements Gardenによる、ノリノリのキャラクターソングを歌いながら戦うその姿は、まるでミュージカルのごとし。  水樹奈々以外にも、かつて音楽ユニット・TWO-MIXでボーカルを担当していた高山みなみや、音楽大学で声楽を専攻し、圧倒的な歌唱力で声優ファンの度肝を抜く高垣彩陽など歌に定評のあるキャストがメインを張るという盤石ぶりである。  一方、主人公・立花響を演じる悠木碧は、『魔法少女まどか☆マギカ』(毎日放送)のまどか役が大当たりした若手のホープ。まだアーティストとしての音楽活動は行っていない彼女が、本作を通して「歌い手」としてどう成長していくかにも注目したい。  「水樹奈々の歌が売れてるなら、水樹奈々が歌いながら戦えばアニメもCDも売れるんじゃない!?」という、ステルスマーケティングどこ吹く風なド直球企画の本作は、今クールの大本命である。  そしてもう一つ注目したいのが、2月よりスタート予定の『ブラック★ロックシューター』(フジテレビ系)である。  2007年、イラストレーター・hukeが発表したキャラクター「ブラック★ロックシューター」は、彼のイラストにインスパイアされた音楽ユニット・supercellのryoが、08年に動画投稿サイト・ニコニコ動画にオリジナル楽曲「初音ミクがオリジナルを歌ってくれたよ『ブラック★ロックシューター』」を発表したことで大ブレーク。300万以上の再生という驚異的なヒットを記録した。  その後、10年にはOVA化が実現。今回のテレビシリーズは、そのOVA版をベースに全8話で描かれることが発表されている。このテレビ版『ブラック★ロックシューター』の脚本を担当するのは、11年は『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『放浪息子』(ともにフジテレビ系)『花咲くいろは』(読売テレビほか)などの話題作を立て続けに担当した岡田麿里。そしてCG特技監督を務めるのは、『天元突破グレンラガン』(テレビ東京系)『パンティ・ストッキングwithガーターベルト』(TOKYO MXほか)などで、血わき肉躍るアクションを描いた今石洋之である。  エグい人物描写に定評のある岡田が描く女子中学生たちの日常と、今石による虚構の世界での異次元バトルに、supercellのサウンドがどのように彩りを添えるのかに注目したい。  奇しくも「歌」というキーワードを持つ「戦うヒロイン」アニメの話題作が並んだ2012年冬クール。楽曲ともども要チェックである。 (文=龍崎珠樹)
Synchrogazer 倒されたい......。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・ポスト『まどマギ』!? "アニメ界の小室哲哉"が放った力作『輪るピングドラム』を再考『まど☆マギ』視聴難民がネットに殺到! オタク業界変革期を直撃した震災の余波なんと! PTAも真っ青 "騎乗位"も"近親相姦"も描く地上波エロアニメ過激化の真相

ポスト『まどマギ』!? "アニメ界の小室哲哉"が放った力作『輪るピングドラム』を再考

pindora.jpg
『輪るピングドラム1(期間限定版)』
(キングレコード)
 一時期、ブログのエントリや掲示板の書き込みで、「生存戦略」という耳慣れない四字熟語を目にしたことはなかっただろうか? なんでもコレ、進化論の用語で、動植物が生き残るために、種としての最適な行動をとることを指す言葉らしい。こんな専門用語がどうして急に広くネット上に出回り始めたのか。答えは簡単、昨クールのNo.1アニメ『輪るピングドラム』(TBS系)という作品に登場していたからである。  この『輪るピングドラム』を送り出したのは、「アニメ界の小室哲哉」という異名もある(らしい)、イケメンカリスマアニメ監督・幾原邦彦。『美少女戦士セーラームーン』シリーズの中でも、随所に漂う耽美的な雰囲気からファン人気の高い『美少女戦士セーラームーンR』『美少女戦士セーラームーンS』や、天井桟敷などのアングラ演劇的世界観をアニメに導入して高い評価を得た『少女革命ウテナ』などが代表作だ。  本作は、幾原が映画『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』以来、12年ぶりに送り出す完全新作オリジナルアニメーションとして、作品内容の情報露出がかなり絞られていたにもかかわらず、放送前から大きな期待を集めていた。そして、実際にフタを開けてみても、コミカルな味わいもありながら、スリリングでドラマチック、それでいてハートフルな物語と、ピクトグラムなど象徴的な表現を巧みに盛り込んだ先鋭的なビジュアルが同居する、現在のアニメシーンにおいて唯一無二の存在感がある作品として話題を集めた。「生存戦略」という言葉がネット流行語になるのも、むべなるかな。  物語の中心となるのは、冠葉・晶馬・陽毬の高倉三兄弟妹(きょうだい)。長患いの果てに病気で命を落としたはずの陽毬が、奇妙なペンギン帽子に宿った力で生き延びた代わりに、冠葉と晶馬は「ピングドラム」という正体不明のアイテムを探し求めることになる。  ピングドラムの鍵となるのは、荻野目苹果という少女が持つ、彼女の死んだ姉・桃果の日記帳。それを奪い取ろうと画策する人物が次々に現れ、多様な思惑が複雑に交錯する。中盤には、すべての登場人物が、過激派テロリスト集団によって1995年に起こされた地下鉄爆破事件(当然ながら、これはオウム真理教による地下鉄サリン事件を想起せずにはいられない)になんらかの形でかかわっていたことが明かされ、さらに物語は複雑さを増す。過去と現在が交錯しながら、クライマックスへ向けて物語が集約されていく展開は圧巻だ。  また、作中に散りばめられた、物語を読解する補助線となるような要素も魅力的だ。登場人物の名前(「カンパ(ネルラ)」=「冠葉」、ジョバ(ンニ)=「晶馬」)を始めとする宮沢賢治作品を想起させる要素、ロックバンド・ARBの女性ボーカルユニットによるカバー楽曲などが、多様な読解を可能にする深みを作品に与えていた。ARBのカバー曲を全収録したミニアルバム『トリプルH』が2万枚を超える売り上げを記録し、現在も数字を伸ばし続けている。  阪神大震災以来となる3・11の震災や、元・オウム真理教の平田信の自首などで、忘れかけていた95年の記憶が強烈に日本社会全体で思い返されている昨今。また『魔法少女まどか☆マギカ』や『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のヒットで、原作のないアニメオリジナル企画に注目が集まってもいる。放送は終わったものの、まだまだ『輪るピングドラム』は同時代的なインパクトを持ち続けそうだ。未見の人は是非チェックしてみてほしい。 (文=麻枝雅彦)
輪るピングドラム1(期間限定版) クセは強いですが......。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・『まど☆マギ』視聴難民がネットに殺到! オタク業界変革期を直撃した震災の余波なんと! PTAも真っ青 "騎乗位"も"近親相姦"も描く地上波エロアニメ過激化の真相「筋が通らないことをしている」カリスマ同人作家・ZUNが同人ショップを痛烈批判!

「クール・ジャパンなんてウソ」"精子人形"村上隆が日本のアニメ業界に苦言

0116pre-murakami.jpg
「芸術起業論」(幻冬舎)
 "股間の白い液で投げ縄人形"で一躍オタクカルチャーを世界に広めた村上隆氏の発言が波紋を広げている。  これは、朝日新聞デジタルに掲載された村上氏へのインタビューの中で、インタビュアーから「『クール・ジャパン』の旗手として注目されているが」と問われた村上氏が以下のように反論したもの。 「『クール・ジャパン』なんて外国では誰も言っていません。うそ、流言です。日本人が自尊心を満たすために勝手にでっち上げているだけで、広告会社の公的資金の受け皿としてのキャッチコピーに過ぎない。外国人には背景や文脈のわかりづらい日本のマンガやアニメが少しずつ海外で理解され始めてはいますが、ごく一部のマニアにとどまり、到底ビジネスのレベルに達しておらず、特筆すべきことは何もない。僕は村上隆という一人の芸術家として海外で注目されているのであってクール・ジャパンとは何の関係もない」  村上氏の作品といえば、旧来の日本のマンガやアニメからの影響が色濃く、2008年には競売会社・サザビーズが行ったオークションに裸の少年が精液を飛ばすフィギュア『My Lonesome Cowboy』が出品され、1,516万ドル(約16憶円)で落札されたことが大きな話題となった。  そんな村上氏の発言に対し、ネット上では「そんなことは知っているけどお前がゆうな」「オタク文化をパクって無知な欧米人に見せたくせに」「アニメの方からもおまえなんかと一緒にされるのは願い下げだろ」など辛辣なコメントが頻発している。  しかし、その一方で村上氏は、「クール・ジャパン」の問題点についても冷静に指摘。 「(クール・ジャパン戦略は)広告会社など一部の人間の金もうけになるだけ。アーティストには還元されませんし、税金の無駄遣いです。今やアニメやゲームなどの業界は、他国にシェアを奪われて、統合合併が相次ぎ、惨憺(さんたん)たる状態。クリエーターの報酬もきわめて低いうえ、作業を海外に下請けに出すから、人材も育たない。地盤沈下まっただ中です」  こうした村上の指摘に、アニメ雑誌編集者は「うなずける一面もある」と言う。 「確かに、日本のアニメ業界はその苛酷な労働環境から若手が育たず、そればかりか、原画だけ国内で作って動画は海外スタジオへ丸投げするのが当たり前になりつつあります。日本国内の優秀な監督や作画監督も叩き上げのアニメーターが少なくありませんから、このままでは日本のアニメ文化は死んでしまうかもしれません。今の業界のシステムでは、実際に筆を動かしている現場まで金が下りてこないんですよ。局と広告代理店が先導する現在のアニメの在り方は、もはや限界に来ているといえるでしょうね」(同編集者)  現在、2月にカタールで開かれる個展に向け、東日本大震災後の日本をテーマにした全長100メートルの「五百羅漢図」を制作中だという村上氏。同インタビューの中では「サブカルチャーと伝統絵画を結びつけた独自の作風で活躍する美術家」として紹介されている。  作品についてはさておき、「作家が直接的に作品を金に換える」という方法においては比肩する者がないという評価も受ける村上氏。アニメ業界が"アートの錬金術師"に学べることも、もしかしたら少なくないのかもしれない。
芸術起業論 物議を醸してこそアート? amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・フランス人にはまったく無視されていた! 芸術家・村上隆作品展をめぐる反対運動「やったもん勝ち」なんて当たり前! 海外マンガ・アニメ違法投稿サイトの実情Jカルチャーは韓国に"いいとこどり"されている!?  「クール・ジャパン」今後の課題

「クール・ジャパンなんてウソ」"精子人形"村上隆が日本のアニメ業界に苦言

0116pre-murakami.jpg
「芸術起業論」(幻冬舎)
 "股間の白い液で投げ縄人形"で一躍オタクカルチャーを世界に広めた村上隆氏の発言が波紋を広げている。  これは、朝日新聞デジタルに掲載された村上氏へのインタビューの中で、インタビュアーから「『クール・ジャパン』の旗手として注目されているが」と問われた村上氏が以下のように反論したもの。 「『クール・ジャパン』なんて外国では誰も言っていません。うそ、流言です。日本人が自尊心を満たすために勝手にでっち上げているだけで、広告会社の公的資金の受け皿としてのキャッチコピーに過ぎない。外国人には背景や文脈のわかりづらい日本のマンガやアニメが少しずつ海外で理解され始めてはいますが、ごく一部のマニアにとどまり、到底ビジネスのレベルに達しておらず、特筆すべきことは何もない。僕は村上隆という一人の芸術家として海外で注目されているのであってクール・ジャパンとは何の関係もない」  村上氏の作品といえば、旧来の日本のマンガやアニメからの影響が色濃く、2008年には競売会社・サザビーズが行ったオークションに裸の少年が精液を飛ばすフィギュア『My Lonesome Cowboy』が出品され、1,516万ドル(約16憶円)で落札されたことが大きな話題となった。  そんな村上氏の発言に対し、ネット上では「そんなことは知っているけどお前がゆうな」「オタク文化をパクって無知な欧米人に見せたくせに」「アニメの方からもおまえなんかと一緒にされるのは願い下げだろ」など辛辣なコメントが頻発している。  しかし、その一方で村上氏は、「クール・ジャパン」の問題点についても冷静に指摘。 「(クール・ジャパン戦略は)広告会社など一部の人間の金もうけになるだけ。アーティストには還元されませんし、税金の無駄遣いです。今やアニメやゲームなどの業界は、他国にシェアを奪われて、統合合併が相次ぎ、惨憺(さんたん)たる状態。クリエーターの報酬もきわめて低いうえ、作業を海外に下請けに出すから、人材も育たない。地盤沈下まっただ中です」  こうした村上の指摘に、アニメ雑誌編集者は「うなずける一面もある」と言う。 「確かに、日本のアニメ業界はその苛酷な労働環境から若手が育たず、そればかりか、原画だけ国内で作って動画は海外スタジオへ丸投げするのが当たり前になりつつあります。日本国内の優秀な監督や作画監督も叩き上げのアニメーターが少なくありませんから、このままでは日本のアニメ文化は死んでしまうかもしれません。今の業界のシステムでは、実際に筆を動かしている現場まで金が下りてこないんですよ。局と広告代理店が先導する現在のアニメの在り方は、もはや限界に来ているといえるでしょうね」(同編集者)  現在、2月にカタールで開かれる個展に向け、東日本大震災後の日本をテーマにした全長100メートルの「五百羅漢図」を制作中だという村上氏。同インタビューの中では「サブカルチャーと伝統絵画を結びつけた独自の作風で活躍する美術家」として紹介されている。  作品についてはさておき、「作家が直接的に作品を金に換える」という方法においては比肩する者がないという評価も受ける村上氏。アニメ業界が"アートの錬金術師"に学べることも、もしかしたら少なくないのかもしれない。
芸術起業論 物議を醸してこそアート? amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・フランス人にはまったく無視されていた! 芸術家・村上隆作品展をめぐる反対運動「やったもん勝ち」なんて当たり前! 海外マンガ・アニメ違法投稿サイトの実情Jカルチャーは韓国に"いいとこどり"されている!?  「クール・ジャパン」今後の課題

ネット大紛糾! 男性ファッション誌「FINEBOYS」でイケメンがアニメ推しの衝撃


IMG_9748_.JPG
「FINEBOYS」(日之出出版)2月号
 映画版も大ヒットし、今や社会現象になっている『けいおん!』や第15回文化庁メディア芸術祭アニメ部門で大賞を受賞した『魔法少女まどか☆マギカ』など、ここ最近のアニメブームはますます加速している。最近では、ローソンやミニストップなどのコンビニがアニメとのコラボ企画を実施するなど、従来のマニア層だけでなく、一般層の獲得に積極的だ。  そんな中、男性ファッション誌「FINEBOYS」(日之出出版)2月号で、アニメ特集が組まれ、ネット上で話題となっている。  「俺ら、アニメなしじゃ生きてけない!」と題されたこの特集、同誌のイケメン読者モデルがそれぞれ自慢のアニメTシャツを着て登場し、お気に入りのアニメを紹介。『けいおん!』や『あの日見た花の名前を僕達は知らない。』の見どころを「リアルなのになつかしい、そこが魅力!」「俺たち聖地巡礼しちゃいました!」と解説したり、「俺らの行きつけ"アニメイト"は神がかり級にヤバす!」などという見出しでアニメイトを案内するという内容となっている。  また、これとは別に、「リアル"部屋着"、ちょ見して!」という企画内でも、「アニメ特集」に登場した一人の読者モデルが、"アニメ一色"の部屋を紹介。めんま(『あの花』に登場するキャラクターの抱き枕を抱え、「週4、アニメを見ながら寝落ちする」と語っている。  これに対し、ネット上では「セクロスの仕方コーナーより腹立つわ」「こいつら、マジモンのオタが来たらクスクス笑うんだろ」「リア充は何でおれらの楽しみを奪って行くんだよ......」などと、ヲタたちが紛糾している。 「実際、ファッション誌の男性モデルやカメラマンの中にもコアなアニメファンは少なくないですよ。中にはコスプレして毎年コミケに通っているという猛者もいます。ファッション誌が一般的な"流行"のひとつとしてアニメを特集するのも、時代の流れといえるでしょうね」(ファッション誌編集者)  ともあれ、ファン層が広がりソフト購入者が増えれば、より良質な作品が作られていく糧になることだけは間違いない。くれぐれも、「ヲタ vs イケメン」などという対決構図に陥らないことを願いたいが......。
あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。 1 確かに名作。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・『まど☆マギ』視聴難民がネットに殺到! オタク業界変革期を直撃した震災の余波やっぱり!「コミュ力ない人間は不要」アニメ業界の求める人材はコレだ!「照英の画像ください」がついに公式に!? 『FF XI』公式サイトに照英降臨

やっぱり!「コミュ力ない人間は不要」アニメ業界の求める人材はコレだ!

R0029844.jpg
マンガ産業に続いてアニメ産業でも技術職の育成は進む。漠然とした「業界志望」じゃもうダメだ
 アニメ業界が、業界志望者たちに求めるスキルとはなにか。そして、それは大学や専門学校などの育成機関で教えることができるものなのか? 1月13日、日本動画協会が主催する「アニメ・クリエイター育成ビジョンづくり 産学共同推進プロジェクト」のキックオフ・シンポジウム「現場からの報告:教育機関のカリキュラム・産業界の人材育成」が、秋葉原の同協会会議室で開かれた。  アニメが日本のコンテンツ産業の核であり、海外にも輸出できる商品力の高い物であることは、間違いない。ところが、今後のアニメ産業の核となる人材を育成する方法は、いまだ確固たる物とはなっていない。このプロジェクトは教育機関とアニメ産業界の人材育成の考え方を検証し、共同で環境や方法を検討するというものだ。  この日のシンポジウムでは教育界・産業界双方からパネリストが出席し、現状と、これまでの人材育成の状況についての意見交換が行われた。  冒頭、2010年にアニメ製作会社を対象に行ったアンケートについて報告した日本動画協会事業副委員長の増田弘道氏によれば、アニメ産業の人口は製作に関連する部分(脚本・声優なども含む)で2万3,000~2万5,000人規模。これに流通を加えて、3万人程度の産業だとされる。そして、新規の採用数はアンケートに回答したものを推定すると、09年度実績で動画が平均4.5名、美術が平均2.1名、仕上が平均2.7名、撮影が平均2.1名を、それぞれ採用していると報告。実際には、この数の2~3倍が採用されていると増田氏は分析している。つまり、なんからのスキルがあればアニメ産業は、さほど参入が困難な業界ではないことが見て取れる。 ■教育機関に望まれるのは、社会常識やほうれんそう  さて、アニメ産業で必要とされるスキルだが、アンケートの回答では「やはりか!」という結果が出ている。もっとも希望されるスキルは画力。これは、製作現場であれば当然のことだし、単に上手い下手ではなく手の速さまで含んでということだと分析できる。そして、その次に希望されるスキルとしてあげられていたのが「コミュニケーション能力」、間に「パース図法」を挟んで「アニメーションの一般的知識」と続いている。  さらにアンケートで「教育機関に望むこと」として挙げられているは、トップが「常識的な基礎知識」つづいて「社会常識」となっており「専門技術」は3位となっている。上位の2つを具体的に記すと、読む・書く・伝えるなどのコミュニケーション能力、言葉遣いや応対、年金や保険のシステムだそうで、やはりアニメ業界であっても才能以前に一般企業と同じスキルが求められていることがわかる。具体的に必要な物として「ほうれんそう」と記入してきた回答もあったそうで、よほど採用してから後悔するようなことがあったのだろうか?  続いて、教育界から発言したのは東京藝術大学大学院アニメーション専攻の岡本美津子教授だ。岡本教授によれば、同大学院でアーティスト志向なのは半数程度、もう半数は就職志向で近年はゲームメーカーに優秀な人材が流れていることも述べた。その上で、育成にあたっては、短編作品を、一人で一年に一本製作させる課題を課していることを述べた。  続いて発言した日本工学院クリエイターズカレッジ・カレッジ長の佐藤充氏は教育にあたって「自分の作品をプレゼンできる能力」の育成にも力を注いでいることを述べる。同校では、就職に不可欠な人間力の育成として、毎朝、先生がロビーに立ち、あいさつ運動を行ったり「遅刻禁止、毎日登校する、〆切を守る」等が記された学生の心得のようなものを配布している。  教育機関でも、一人で製作させることによって製作の流れを理解させたり、責任感を植え付けるといった行為を通じて「常識」を身につける方法が試されていることがわかる。  アニメ産業側から発言したスタジオジブリの稲村武志氏は業界志望者の現状を次のように語る。 「携帯電話やネットの世代は、感応的なアニメの描き方が苦手、コピーを消費することで満足している人が多い」  その上で、アニメ製作に求められるスキルは、テキパキできる作業能力であり、コミュニケーションを取ってしっかりと学べる人のほうが上達も早いという経験に即した意見を述べた。  この日のシンポジウムでは短時間ながら、パネリストが自身の体験を元にした生の声を聞くことができたと思う。日本動画協会では、教育機関やアニメ製作会社の人材育成を報告書にまとめ、3月の当局国際アニメフェアにて成果発表する予定だ。これをもとに、来年度以降は具体的な人材育成のプロジェクトが行われることになりそうだ。  このシンポジウムは平日の開催であり、観客の多くは業界関係者だったが、他方、業界を志望する学生の参加目立ち、質疑応答では「学生側に、こういうことを発信する機会がもっと欲しい」という意見も。技術職の育成は着実に進んでいるが、それ以外の業界志望者を育成するシステムは、まだこれからだ。 (取材・文=昼間 たかし)
人が怖い ~自分を変える! 対人コミュニケーション改善法~ ペンタブのお供に。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・なんと! PTAも真っ青 "騎乗位"も"近親相姦"も描く地上波エロアニメ過激化の真相"AKB商法"が的中!? 『映画けいおん!』はコケまくり松竹の救世主か警察まで巻き込み......『あの花』聖地巡礼で盛り上がる秩父市の"仕掛け"

なんと! PTAも真っ青 "騎乗位"も"近親相姦"も描く地上波エロアニメ過激化の真相

xb5mg5oy.jpg
『聖痕のクェイサーⅡ』の比較画像。画像上が「テレビ放送版」で、画像下がDVD収録の「ディレクターズカット版」。規制前がいかに激しい描写かがわかるはずだ。
──2000年代から地上波の深夜帯を席巻することとなったテレビアニメだが、昨今エロ描写の過激なものが増加している。自主規制を常態化させながら、放送されている背景には、判然としない規制基準とテレビを利用せんとするアニメ業界の思惑があった──。  近年、23時から27時を中心とした深夜に地上波で放送されている、いわゆる"深夜アニメ"でのエロ描写が過激化している。代表的な例を挙げれば、騎乗位、後背位、正常位とさまざまな体位でじっくりと描くセックスシーンに加え、主人公と実の妹の近親相姦といった倫理的なラインをも軽々と飛び越えた『ヨスガノソラ』(2010年/TOKYO MXほか)を頂点に、バトルとエロを融合させ、ヒロインたちが戦うたびに執拗なまでにおっぱいが露出する『聖痕のクェイサー』(10年/チバテレビほか)シリーズや『魔乳秘剣帖』(11年/全国独立局系)など、その扇情的な描写が一部アニメファンの間で大きな話題を呼んだ。また現在放送中の作品でも、『マケン姫っ!』(11年/テレビ埼玉ほか)や18禁ゲームが原作の『真剣で私に恋しなさい!!』(11年/テレビ神奈川ほか)といった、エロ描写に特化したタイトルが、毎週地上波のテレビで放送されている。  これまでも深夜アニメは、エログロバイオレンスを取り入れた、ハイティーン以上のアニメファンを対象とした作品が多く存在していたが、特に00年代中盤以降、"エロい"アニメが一定の割合を占めるようになっていった。  注目すべきは、前述の作品を含む"エロい"アニメのテレビ放送時には、おっぱいやお尻に黒い線や湯気を重ねて隠す、各作品独自のアイコンで乳首を覆う、女性の体を発光させて裸体を見えなくしてしまう、という具合に、完成した映像に自主的な表現規制が加わっていることだ。こうした規制の対象となるのは、性交シーンや局部はもちろんのこと、主に女子のパンチラ、バストや乳首など。さらに、自慰といった擬似性行為や女性の扇情的な声にまで及び、その範囲は幅広い。近年では、そうした画像処理が画面の半分以上を覆い尽くし、視聴時に何が起こっているのかまったくわからない作品や、規制された状態での放送が常態化している作品が散見される。  こうした作品は、DVDやブルーレイといったパッケージ化の際に、規制を緩めて湯気や光を外したり、絵そのものをエロく描き直すなどの加工が加えられた「ディレクターズカット版」として、一部R15指定がつくものもあるが、基本的に全年齢向けに発売される。どころか、DVDの宣伝文句として、こうした規制が解除されていることを堂々とうたっているものもある。元来避けられるべき表現規制のかかった作品が、かように公然と放送されている裏側には一体、何があるのだろうか? ■密室で決められるアニメの表現規制
2atqfl9n.jpg
ネット上のアニメ配信ポータルサイトでは、「無修正の世界」などとして、それらの作品を集めて、大々的に特集が組まれることもある。
 まず、アニメにおける表現規制は、一律の基準があるわけではない。「最近だと『真剣で私に恋しなさい!!』で、女性の胸がテレビ神奈川での放送では映っていたのに、TOKYO MXではアイコンがかぶせられていた。このように、規制の度合いは、放送するテレビ局で異なる」とアニメ制作会社社員は語る。アニメファンの間では、テレビ局によって規制の基準が違うことは広く知れ渡っており、同一のアニメにおける放送局別の規制度合いをネットで比較し、自分の見たアニメがよりエロい版だったかどうかで一喜一憂するという"エロの地域格差"が生じている。  こうしたテレビ局毎の規制に関して、中でもテレビ東京は、その基準が厳しいことで有名だ。同局は女性のパンチラさえ厳格に規制しているといわれ、実際に、「『チューブトップを着た女の子のバストアップショットはパッと見、裸に見えるから、描くのはやめてくれ』と言われたこともある」(同)といった声もある。同局視聴者センターに、アニメの規制基準について聞いてみたところ、「当局の基準のもと、放送しています」と冷たくあしらわれてしまった。  一般的に東京キー局を中心とした民放VHF各局は規制が厳しく、独立UHF放送局は比較的寛容といわれている。テレビ東京のネットワーク局であるテレビ愛知のアニメ担当者に問い合わせてみると、「民放基準などに沿って判断していますが、一般的に広範囲に放送を配信している局は厳しいです。反対に独立UHF局は審査チェックが甘い傾向にありますよ」と、見解を語ってくれた。また、CSなどで視聴できるアニメ専門チャンネルに関しては、子ども向け番組を多く放送するキッズステーションは厳しく、アニメファン向けで視聴年齢制限がかけられるAT-Xは比較的緩いといわれ、視聴者ターゲットの違いによって基準の度合いが異なっているように見受けられる。 「こうした表現に関する規制の基準は基本的に明文化されておらず、監督や製作プロデューサーといった上層部の人間が、テレビ局や出版社、広告代理店から組織される製作委員会の会議などで、基準を決めています。実際の規制は演出、監督、各社のプロデューサーが集まる編集の最終段階で入れるパターンが多く、局側のプロデューサーが立ち会わない場合もあります。そうした場合、局側でテープをチェックした際に、映像に規制を入れてしまうこともあるようです」(前出・制作会社社員)  このように、規制は作品やテレビ局によってバラバラに決められるのだが、『真剣で私に恋しなさい!!』の公式ブログで、放送を前に「中京地区の某局様には考査の結果断られました」と、放送中止のコメントが発表されるなど、放送可能な表現をめぐる現場の混乱も垣間見られる。規制の基準を統一しようという動きはないのだろうか? 「エロ描写についての統一的なガイドライン策定の動きはありませんね。作品によって描写のされ方がかなり違うので、ケースバイケースにならざるを得ない。10年に、アニメやマンガの性表現をめぐって話題となった都条例改正の時にも議論があったように、『何歳以下だったらこういう描写がダメ』というのも見た目と設定との食い違いがあって、結局主観になってしまうため、明文化は難しいんです」と別のアニメ制作会社の関係者も語るように、作品ごとに対応するほうが効率的だと現場も判断している様子がうかがえる。 ■大人向けに舵を切り問われる倫理観  地上波の深夜アニメにおいて過激なエロ描写が氾濫するようになった背景には、テレビアニメの多くが深夜枠に移動したことと深いかかわりがある。  96年に放送されたアニメ『エルフを狩るモノたち』(テレビ東京)の成功に端を発し、00年代に入る頃にはすっかりテレビの定番プログラムとなった深夜アニメは、日本総合研究所によると、06年に全日帯アニメの116本をはるかに上回る163本という年間製作本数をマークしている。  一方、少子化が進み子どもの数が減っていくことで、従来のアニメ製作スタイルの主流であった"低年齢層をターゲットとした玩具やグッズ展開でのコスト回収"というビジネスモデルが崩壊し始めたのが90年代半ば。それと入れ替わるように、ハイティーン以上のアニメファン向けの作品が登場し、『新世紀エヴァンゲリオン』(95年~)の大ヒットが、"DVD販売などのパッケージ化によるコスト回収"というビジネスモデルを勢いづけた。また、同作はテレビ局や広告代理店、ビデオメーカーなどから出資を募り、一社当たりのリスクを軽減する製作委員会方式を採っていた。この方式は、以前から劇場映画製作で採用されてきたが、この時期からテレビアニメにおいても一般化し始める。ゴールデンタイムに放送されていたアニメと違い、深夜アニメは基本的に製作委員会が枠を局から買い取るパターンがほとんど。そこでより安価にDVDのプロモーションをかけるには、なるべく安い価格の時間帯、つまり深夜枠を購入することとなった。テレビ局としても、放送する番組の少ない深夜枠を売ることにうまみを感じていたようだ。  しかし、その後DVDなどのパッケージ商品市場の縮小といった影響もあり、06年をピークに深夜アニメの製作本数は減少。10年はおよそ70本。11年は11月時点で約50本と、製作タイトル数を減らしている。  こうした流れを受けて、製作側には確実に資金を回収できる戦略が必要とされ、「パッケージを売るために、製作委員会が規制を前提としたお色気描写を含むアニメ作品の企画を立ち上げることも多くなった」(前出・制作会社社員)。  それを裏付けるように、「テレビ放送時の規制解除が、DVD販売の際の売り文句になっているのは事実です。監督もプロデューサーも、テレビは DVDを売るための宣伝媒体としてしか考えていない人もいます」と、前出・制作会社関係者は言い切る。事実、テレビ愛知担当者も「スポンサーも、DVDを買ってもらったほうがいいと言ってますからね」とことも無げに話していた。  しかし、エロ描写を解禁するか否かで、DVDの売り上げはそこまで大きく変わるのだろうか? この疑問に対し、大手レンタルチェーン店の関係者は、「テレビ放送時の規制が解禁されるかどうかで、2~3倍くらい売り上げは変わりますね」と語るから驚きだ。エロの有無が焦点となるならば、18禁のアダルトアニメのほうが需要があるのでは、とも思われるが「テレビで放送した作品は知名度がありますからね。エロ描写を解禁したテレビアニメシリーズのほうが回転率がいい」(同)そうだ。  一方で、こうしたDVD販売というビジネスモデルも限界を来しつつある。不況の長期化で、DVDの売り上げを伸ばせなくなってきたのだ。一般社団法人日本映像ソフト協会によると、アニメのDVDやブルーレイといったビデオグラムの出荷高は、05年の約971億円をピークに、10年には約759億円にまで落ち込んでいる。大きな資金源を失い、行き詰まりを見せ始めたアニメの製作委員会方式に参入してきたのが、パチンコメーカーだ。 「製作委員会としては、ライセンスをメーカーに売ることで多額の製作費が見込める上に、後のパチンコ展開で人気復活も期待できる、ということでパチンコマネーが利益を回収するひとつの手段となってきています」。このように分析するのは『パチンコがアニメだらけになった理由』(洋泉社)を著したジャーナリスト・安藤健二氏だ。安藤氏は「製作委員会は、『○○製作委員会』などとまとめて表記されることが多いので、パチンコメーカーがこっそり参入していることもあるようです」と続ける。  アニメとパチンコの接近が象徴するように、今やアニメ業界全体が18歳以上に向けたビジネスとして志向されているように思われる。エロを際立たせたアニメも、お金を落としてくれるアニメファンの心をつかむために必要不可欠なのかもしれない。  また、アニメ誌で活躍するライター・多根清史氏が「規制すらも演出として取り入れる現在のアニメは、表現としてかなり成熟したところまできています。無茶なことをして人気を博していた、昔のバラエティ番組のメソッドを読み込んでいるようだ」と語るように、逆境を新たな表現として昇華させてきた日本のアニメに新風を呼び込む潮流として、エロ規制描写を評価する向きもある。  今まで見てきたような過激化するテレビアニメのエロ描写を、規制を逆手に取った新たな販売戦略ととるか、それともテレビ局や製作委員会が黙認する"炎上マーケティング"ととるか。考えてみたいところだ。 (文=有田俊/「プレミアサイゾー」より) ■プレミアサイゾーとは? 雑誌「サイゾー」のほぼ全記事が、月額525円読み放題! (バックナンバー含む) 1lineimg.jpg
「聖痕のクェイサーII」ディレクターズカット版Vol.1 [DVD] 観たい......。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・"AKB商法"が的中!? 『映画けいおん!』はコケまくり松竹の救世主か革命的アニメ『TIGER & BUNNY』大ブレークの種明かし警察まで巻き込み......『あの花』聖地巡礼で盛り上がる秩父市の"仕掛け"

なんと! PTAも真っ青 "騎乗位"も"近親相姦"も描く地上波エロアニメ過激化の真相

xb5mg5oy.jpg
『聖痕のクェイサーⅡ』の比較画像。画像上が「テレビ放送版」で、画像下がDVD収録の「ディレクターズカット版」。規制前がいかに激しい描写かがわかるはずだ。
──2000年代から地上波の深夜帯を席巻することとなったテレビアニメだが、昨今エロ描写の過激なものが増加している。自主規制を常態化させながら、放送されている背景には、判然としない規制基準とテレビを利用せんとするアニメ業界の思惑があった──。  近年、23時から27時を中心とした深夜に地上波で放送されている、いわゆる"深夜アニメ"でのエロ描写が過激化している。代表的な例を挙げれば、騎乗位、後背位、正常位とさまざまな体位でじっくりと描くセックスシーンに加え、主人公と実の妹の近親相姦といった倫理的なラインをも軽々と飛び越えた『ヨスガノソラ』(2010年/TOKYO MXほか)を頂点に、バトルとエロを融合させ、ヒロインたちが戦うたびに執拗なまでにおっぱいが露出する『聖痕のクェイサー』(10年/チバテレビほか)シリーズや『魔乳秘剣帖』(11年/全国独立局系)など、その扇情的な描写が一部アニメファンの間で大きな話題を呼んだ。また現在放送中の作品でも、『マケン姫っ!』(11年/テレビ埼玉ほか)や18禁ゲームが原作の『真剣で私に恋しなさい!!』(11年/テレビ神奈川ほか)といった、エロ描写に特化したタイトルが、毎週地上波のテレビで放送されている。  これまでも深夜アニメは、エログロバイオレンスを取り入れた、ハイティーン以上のアニメファンを対象とした作品が多く存在していたが、特に00年代中盤以降、"エロい"アニメが一定の割合を占めるようになっていった。  注目すべきは、前述の作品を含む"エロい"アニメのテレビ放送時には、おっぱいやお尻に黒い線や湯気を重ねて隠す、各作品独自のアイコンで乳首を覆う、女性の体を発光させて裸体を見えなくしてしまう、という具合に、完成した映像に自主的な表現規制が加わっていることだ。こうした規制の対象となるのは、性交シーンや局部はもちろんのこと、主に女子のパンチラ、バストや乳首など。さらに、自慰といった擬似性行為や女性の扇情的な声にまで及び、その範囲は幅広い。近年では、そうした画像処理が画面の半分以上を覆い尽くし、視聴時に何が起こっているのかまったくわからない作品や、規制された状態での放送が常態化している作品が散見される。  こうした作品は、DVDやブルーレイといったパッケージ化の際に、規制を緩めて湯気や光を外したり、絵そのものをエロく描き直すなどの加工が加えられた「ディレクターズカット版」として、一部R15指定がつくものもあるが、基本的に全年齢向けに発売される。どころか、DVDの宣伝文句として、こうした規制が解除されていることを堂々とうたっているものもある。元来避けられるべき表現規制のかかった作品が、かように公然と放送されている裏側には一体、何があるのだろうか? ■密室で決められるアニメの表現規制
2atqfl9n.jpg
ネット上のアニメ配信ポータルサイトでは、「無修正の世界」などとして、それらの作品を集めて、大々的に特集が組まれることもある。
 まず、アニメにおける表現規制は、一律の基準があるわけではない。「最近だと『真剣で私に恋しなさい!!』で、女性の胸がテレビ神奈川での放送では映っていたのに、TOKYO MXではアイコンがかぶせられていた。このように、規制の度合いは、放送するテレビ局で異なる」とアニメ制作会社社員は語る。アニメファンの間では、テレビ局によって規制の基準が違うことは広く知れ渡っており、同一のアニメにおける放送局別の規制度合いをネットで比較し、自分の見たアニメがよりエロい版だったかどうかで一喜一憂するという"エロの地域格差"が生じている。  こうしたテレビ局毎の規制に関して、中でもテレビ東京は、その基準が厳しいことで有名だ。同局は女性のパンチラさえ厳格に規制しているといわれ、実際に、「『チューブトップを着た女の子のバストアップショットはパッと見、裸に見えるから、描くのはやめてくれ』と言われたこともある」(同)といった声もある。同局視聴者センターに、アニメの規制基準について聞いてみたところ、「当局の基準のもと、放送しています」と冷たくあしらわれてしまった。  一般的に東京キー局を中心とした民放VHF各局は規制が厳しく、独立UHF放送局は比較的寛容といわれている。テレビ東京のネットワーク局であるテレビ愛知のアニメ担当者に問い合わせてみると、「民放基準などに沿って判断していますが、一般的に広範囲に放送を配信している局は厳しいです。反対に独立UHF局は審査チェックが甘い傾向にありますよ」と、見解を語ってくれた。また、CSなどで視聴できるアニメ専門チャンネルに関しては、子ども向け番組を多く放送するキッズステーションは厳しく、アニメファン向けで視聴年齢制限がかけられるAT-Xは比較的緩いといわれ、視聴者ターゲットの違いによって基準の度合いが異なっているように見受けられる。 「こうした表現に関する規制の基準は基本的に明文化されておらず、監督や製作プロデューサーといった上層部の人間が、テレビ局や出版社、広告代理店から組織される製作委員会の会議などで、基準を決めています。実際の規制は演出、監督、各社のプロデューサーが集まる編集の最終段階で入れるパターンが多く、局側のプロデューサーが立ち会わない場合もあります。そうした場合、局側でテープをチェックした際に、映像に規制を入れてしまうこともあるようです」(前出・制作会社社員)  このように、規制は作品やテレビ局によってバラバラに決められるのだが、『真剣で私に恋しなさい!!』の公式ブログで、放送を前に「中京地区の某局様には考査の結果断られました」と、放送中止のコメントが発表されるなど、放送可能な表現をめぐる現場の混乱も垣間見られる。規制の基準を統一しようという動きはないのだろうか? 「エロ描写についての統一的なガイドライン策定の動きはありませんね。作品によって描写のされ方がかなり違うので、ケースバイケースにならざるを得ない。10年に、アニメやマンガの性表現をめぐって話題となった都条例改正の時にも議論があったように、『何歳以下だったらこういう描写がダメ』というのも見た目と設定との食い違いがあって、結局主観になってしまうため、明文化は難しいんです」と別のアニメ制作会社の関係者も語るように、作品ごとに対応するほうが効率的だと現場も判断している様子がうかがえる。 ■大人向けに舵を切り問われる倫理観  地上波の深夜アニメにおいて過激なエロ描写が氾濫するようになった背景には、テレビアニメの多くが深夜枠に移動したことと深いかかわりがある。  96年に放送されたアニメ『エルフを狩るモノたち』(テレビ東京)の成功に端を発し、00年代に入る頃にはすっかりテレビの定番プログラムとなった深夜アニメは、日本総合研究所によると、06年に全日帯アニメの116本をはるかに上回る163本という年間製作本数をマークしている。  一方、少子化が進み子どもの数が減っていくことで、従来のアニメ製作スタイルの主流であった"低年齢層をターゲットとした玩具やグッズ展開でのコスト回収"というビジネスモデルが崩壊し始めたのが90年代半ば。それと入れ替わるように、ハイティーン以上のアニメファン向けの作品が登場し、『新世紀エヴァンゲリオン』(95年~)の大ヒットが、"DVD販売などのパッケージ化によるコスト回収"というビジネスモデルを勢いづけた。また、同作はテレビ局や広告代理店、ビデオメーカーなどから出資を募り、一社当たりのリスクを軽減する製作委員会方式を採っていた。この方式は、以前から劇場映画製作で採用されてきたが、この時期からテレビアニメにおいても一般化し始める。ゴールデンタイムに放送されていたアニメと違い、深夜アニメは基本的に製作委員会が枠を局から買い取るパターンがほとんど。そこでより安価にDVDのプロモーションをかけるには、なるべく安い価格の時間帯、つまり深夜枠を購入することとなった。テレビ局としても、放送する番組の少ない深夜枠を売ることにうまみを感じていたようだ。  しかし、その後DVDなどのパッケージ商品市場の縮小といった影響もあり、06年をピークに深夜アニメの製作本数は減少。10年はおよそ70本。11年は11月時点で約50本と、製作タイトル数を減らしている。  こうした流れを受けて、製作側には確実に資金を回収できる戦略が必要とされ、「パッケージを売るために、製作委員会が規制を前提としたお色気描写を含むアニメ作品の企画を立ち上げることも多くなった」(前出・制作会社社員)。  それを裏付けるように、「テレビ放送時の規制解除が、DVD販売の際の売り文句になっているのは事実です。監督もプロデューサーも、テレビは DVDを売るための宣伝媒体としてしか考えていない人もいます」と、前出・制作会社関係者は言い切る。事実、テレビ愛知担当者も「スポンサーも、DVDを買ってもらったほうがいいと言ってますからね」とことも無げに話していた。  しかし、エロ描写を解禁するか否かで、DVDの売り上げはそこまで大きく変わるのだろうか? この疑問に対し、大手レンタルチェーン店の関係者は、「テレビ放送時の規制が解禁されるかどうかで、2~3倍くらい売り上げは変わりますね」と語るから驚きだ。エロの有無が焦点となるならば、18禁のアダルトアニメのほうが需要があるのでは、とも思われるが「テレビで放送した作品は知名度がありますからね。エロ描写を解禁したテレビアニメシリーズのほうが回転率がいい」(同)そうだ。  一方で、こうしたDVD販売というビジネスモデルも限界を来しつつある。不況の長期化で、DVDの売り上げを伸ばせなくなってきたのだ。一般社団法人日本映像ソフト協会によると、アニメのDVDやブルーレイといったビデオグラムの出荷高は、05年の約971億円をピークに、10年には約759億円にまで落ち込んでいる。大きな資金源を失い、行き詰まりを見せ始めたアニメの製作委員会方式に参入してきたのが、パチンコメーカーだ。 「製作委員会としては、ライセンスをメーカーに売ることで多額の製作費が見込める上に、後のパチンコ展開で人気復活も期待できる、ということでパチンコマネーが利益を回収するひとつの手段となってきています」。このように分析するのは『パチンコがアニメだらけになった理由』(洋泉社)を著したジャーナリスト・安藤健二氏だ。安藤氏は「製作委員会は、『○○製作委員会』などとまとめて表記されることが多いので、パチンコメーカーがこっそり参入していることもあるようです」と続ける。  アニメとパチンコの接近が象徴するように、今やアニメ業界全体が18歳以上に向けたビジネスとして志向されているように思われる。エロを際立たせたアニメも、お金を落としてくれるアニメファンの心をつかむために必要不可欠なのかもしれない。  また、アニメ誌で活躍するライター・多根清史氏が「規制すらも演出として取り入れる現在のアニメは、表現としてかなり成熟したところまできています。無茶なことをして人気を博していた、昔のバラエティ番組のメソッドを読み込んでいるようだ」と語るように、逆境を新たな表現として昇華させてきた日本のアニメに新風を呼び込む潮流として、エロ規制描写を評価する向きもある。  今まで見てきたような過激化するテレビアニメのエロ描写を、規制を逆手に取った新たな販売戦略ととるか、それともテレビ局や製作委員会が黙認する"炎上マーケティング"ととるか。考えてみたいところだ。 (文=有田俊/「プレミアサイゾー」より) ■プレミアサイゾーとは? 雑誌「サイゾー」のほぼ全記事が、月額525円読み放題! (バックナンバー含む) 1lineimg.jpg
「聖痕のクェイサーII」ディレクターズカット版Vol.1 [DVD] 観たい......。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・"AKB商法"が的中!? 『映画けいおん!』はコケまくり松竹の救世主か革命的アニメ『TIGER & BUNNY』大ブレークの種明かし警察まで巻き込み......『あの花』聖地巡礼で盛り上がる秩父市の"仕掛け"