
『さんかれあ』公式サイトより
ありとあらゆる性癖を貪欲に飲み込み、一般化していく昨今の「萌え」カルチャー。たとえば、三次元でのセクシャリティは一点の曇りもなくノンケな男子が、二次元を消費する際には女装した美少年(いわゆる「男の娘」)に萌え狂っている様子も、もはや珍しい風景ではなくなった。時はまさに性器末、もとい世紀末といった感じである。21世紀はまだ最初の10年を少し過ぎたばかりだけれども。
現在放送中のアニメ『さんかれあ』(TBS系)では、特殊性癖の中でもかなりエクストリーム寄りな、ネクロフィリア(屍体愛好)が作品のテーマになっている。子供の頃からの筋金入りのゾンビ映画オタクで(余談だが、タイトルの元ネタである『サンゲリア』を筆頭に、本作にはゾンビ映画オマージュネタが満載)、ゾンビ化した女の子との恋愛願望を長年抱き続けてきた主人公が、ひょんなことからゾンビになってしまった世間知らずのお嬢様と繰り広げる、甘酸っぱくて少し切ないドキドキ同居ラブストーリーが毎週地上波でオンエアされているというのは、驚くべき事態だというほかない。もともと原作コミック(はっとりみつる作、講談社刊)が人気を集めていたとはいえ、まさに性器(以下略)である。
……と、ひとくさり良識派ぶってみたものの、ゾンビになってしまったヒロインの散華 礼弥(さんか・れあ)ちゃんは実にかわいいのである。性格も声もかわいいが、なんといっても、ゾンビ化したことが原因の青白い肌と真っ赤な瞳がたまらない。ほかにも、死後硬直してしまったり、ときおり理性を失ってみたり、脳のリミッターが外れているせいで馬鹿力を発揮してみたり、ゾンビならではの魅力がひしひしと作品から伝わってくる。二次元の世界でなら、ネクロフィリアもいけるかもしれない。「匂い」という、リアル死姦での最大のハードルもないし。思わずそんなことを考えてしまうだけの説得力がある。
本作が初監督作である畠山守は、『荒川アンダー ザ ブリッジ』『魔法少女まどか☆マギカ』など、新房昭之監督作品に「小俣真一」名義で参加していた。色でキーアイテムを際立たせる鮮烈な色彩設計や、雄弁に情報を物語る象徴的な画面構成など、どこか新房からの影響を意識させるスタイリッシュさがあることも、ゾンビに萌えることへの抵抗感を薄れさせているように思える。
ここから、日本社会にネクロフィリアがライトなフェティッシュとして根付くのかもしれない……ゾンビ娘ブームに乗り遅れるな!
ぞんび とても いいです
かわゆい
うま
(文=麻枝雅彦)
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「燃え上がれ、俺の小宇宙よ!」前作ファンもニヤリ『聖闘士星矢Ω』

『聖闘士星矢Ω-セイントセイヤオメガ』
公式サイト
「フッ」
「ザシャアァッ!」
「なっ!」
「バァァァァン!」
「聖闘士には同じ技は二度通じん!」
「燃えろ! 小宇宙(コスモ)よ!」
「あじゃぱぁ~!」
などなど、なんのこっちゃよく分からないが、とにかく胸が熱くなるそんな熱血フレーズが画面狭しと躍る伝説のアニメ『聖闘士星矢』の続編にあたる新作アニメ『聖闘士星矢Ω(オメガ)』が、4月よりテレビ朝日系列で放送スタートした。
『聖闘士星矢』といえば、地上の平和を守る女神・アテナのために戦う聖闘士(セイント)となるべく運命づけられた主人公・星矢たちの過酷な戦いを描いたバトルファンタジー作品であり、1985年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載をスタートするやたちまち大きな反響を呼び、同年、異例の早さでテレビアニメ化。
バンダイから発売された星座をモチーフとしたプロテクター「聖衣(クロス)」のカッコよさと、神話をベースにした壮大なストーリー。そして原作者・車田正美による迫力のバトルシーンが話題を呼び、驚異的なヒットを記録した、少年マンガ史に燦然と輝く歴史的な作品だ。
■古き良き東映マインドと今風のタッチが融合したキャラデザ
その待望の続編である『Ω』は、次世代の若き聖闘士・ペガサス座の光牙たちと、地球支配を企む火星の守護者・マルスとの戦いが描かれるアニメ・オリジナル作品であるが、本作の制作が発表された当初、ファンの間では期待よりも不安の声が多く上がった。
前作のアニメ版『聖闘士星矢』の魅力の一つに、荒木伸吾、姫野美智両氏による気品あふれる美形キャラクターたちが挙げられるが、多くのファンは『Ω』でも同様のキャラクターデザインを期待していたのだろう。
しかし、『Ω』のキャラデザは『おジャ魔女どれみ』シリーズや、『ハートキャッチプリキュア!』などの女児向けアニメでキャラデザを手掛けた馬越嘉彦。その丸みを帯びたかわいらしい聖闘士たちの姿に、多くのファンが拒否反応を起こした。
だが、彼はアニメ『北斗の拳』でエクストリームなキャラクターを多く描いた羽山淳一に憧れて東映動画の門を叩いた、熱血アクション派アニメーターである。
そんな自身のルーツを証明するかのように、『ハートキャッチプリキュア!』では荒木・姫野イズムを受け継ぐかのような強烈なパースを効かせた決めポーズや大胆なアクションシーン、「両手を後ろに広げての前傾姿勢ダッシュ」などを描き出していたことを覚えているアニメファンも少なくはないだろう。
筆者としては、古き良き東映動画のセンスを現代風の柔らかな画風にマッチさせるだけの技量を持つ馬越氏以外に現代の『星矢』を描ける人材はいないのでは、とすら思っている。
現在放送中の『Ω』を見れば、「かつて自分たちが見ていた『星矢』」のイメージと遜色なく、それでいて古臭さを感じさせない洗練された世界観を感じることができるはずだ。
また、主人公の光牙とライバル関係にある仔獅子座の蒼摩の泥臭さは、旧シリーズでは星矢のライバルになりそこねた残念キャラ・一角獣座の邪武を彷彿とさせるものがある。
旧シリーズで描ききれなかった初期プロットへのリベンジも感じさせる蒼摩というキャラは、馬越氏をはじめとする『Ω』スタッフの『星矢』という作品に対するリスペクトと、挑戦の証として注目していきたい。
■ファンなら「ニヤリ」のこだわりポイント
絵作り以外にもこだわりポイントはある。
『聖闘士星矢』といえば、様式美とすらいえる芝居がかった「車田節」とでもいうべきセリフの応酬を忘れてはならない。
冒頭にもあるような、大見得を切りつつ繰り広げられるバトルは、歌舞伎にも通じるケレン味満点である。『Ω』でも、このノリは健在。新世代聖闘士たちは、相変わらずド派手な名乗りと技解説を交えつつ、一進一退の攻防を繰り広げる。この勢いで、
「笑止!」
「燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんとはまさにこのことだ」
「オレのセブンセンシズよ 燃えろ!」
などのような、上級の車田節も登場させてほしいものである。
また、前作主人公・星矢が伝説の聖闘士として登場したり、龍座の紫龍とその恋人・春麗の息子・龍峰が次世代の龍座の聖闘士として登場するほか、大熊座の檄、「勝負は常に顔で決まるのだよ!」のセリフも有名なヒドラの市など通好みなキャラクターが準レギュラーとして登場、前作ではいま一つ活躍しきれなかった彼らのファンにはうれしいサービスも盛り込まれている。
■賛否両論の新聖衣
このように見どころ満載な『聖闘士星矢Ω』だが、手放しで褒めるのもステルスマーケティング臭がするので、いくつか気になる点も挙げておこう。
まず、なんといっても「聖衣(クロス)」の概念が変わってしまったことについて、突っ込まないわけにはいかない。星座をモチーフとしたオブジェが分解しプロテクターとなるというギミックがなくなり、本作では星座の力を借りて着用する変身スーツのような存在となっている。これは非常に残念である。『聖闘士星矢』といえば、物語が進むごとに進化するデザインや、想像もつかない合体変形でプロテクターとなるギミックなど男子心を燃やす聖衣の魅力は欠かせないはずだ。その代わりに本作では各キャラクターに「属性」の概念を新たに導入。火・風・雷・土・水・光・闇の7属性の力を持つ聖闘士の活躍が描かれる。今のところ、星座設定と属性設定が効果的に劇中に反映されている……とは言い難い。物語も序盤ということで、どのようにこれらの設定が盛り上げていくのか、注目したいところだ。
ともあれ、21世紀に入って新たな『聖闘士星矢』のアニメが見られるだけでも、ファンとしては僥倖(ぎょうこう)といったところだろう。
まだ見たことのない前作ファンは一度チャンネルを合わせてみて、変わらぬ『聖闘士星矢』スピリットと新たな挑戦に臨むスタッフの意気込み……もとい小宇宙を感じてみてはいかがだろうか。
(文=龍崎珠樹)
■バックナンバー
【第10回】「見たかったのはコレジャナイ!?」声優アイドルアニメ『夏色キセキ』に早くも黄色信号
【第9回】大コケの『機動戦士ガンダムAGE』を徹底検証! 求められる新たな「ガンダム像」とは?
【第8回】アニメ業界の新トレンド!? “分割2クール作品”急増の裏事情
【第7回】ついに世代交代!? 若手アイドル声優が続々歌手デビュー
【第6回】AKB48 vs 声優アイドルユニット アニメ界もついにアイドル戦国時代突入か!?
【第5回】一流アニメファンなら女児向け作品もチェックせよ!? 『スマイルプリキュア!』
【第4回】過激なピンク描写が男子の下半身を直撃!『アマガミSS+ plus』
【第3回】今クール話題の学園モノを徹底分析!『男子高校生の日常』『Another』
【第2回】ロボット好き必見! 洗練されたメカたちが大活躍『輪廻のラグランジェ』
【第1回】水樹奈々が歌いながらバトル!? 「戦うヒロイン」アニメに大注目!
「燃え上がれ、俺の小宇宙よ!」前作ファンもニヤリ『聖闘士星矢Ω』

『聖闘士星矢Ω-セイントセイヤオメガ』
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「フッ」
「ザシャアァッ!」
「なっ!」
「バァァァァン!」
「聖闘士には同じ技は二度通じん!」
「燃えろ! 小宇宙(コスモ)よ!」
「あじゃぱぁ~!」
などなど、なんのこっちゃよく分からないが、とにかく胸が熱くなるそんな熱血フレーズが画面狭しと躍る伝説のアニメ『聖闘士星矢』の続編にあたる新作アニメ『聖闘士星矢Ω(オメガ)』が、4月よりテレビ朝日系列で放送スタートした。
『聖闘士星矢』といえば、地上の平和を守る女神・アテナのために戦う聖闘士(セイント)となるべく運命づけられた主人公・星矢たちの過酷な戦いを描いたバトルファンタジー作品であり、1985年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載をスタートするやたちまち大きな反響を呼び、同年、異例の早さでテレビアニメ化。
バンダイから発売された星座をモチーフとしたプロテクター「聖衣(クロス)」のカッコよさと、神話をベースにした壮大なストーリー。そして原作者・車田正美による迫力のバトルシーンが話題を呼び、驚異的なヒットを記録した、少年マンガ史に燦然と輝く歴史的な作品だ。
■古き良き東映マインドと今風のタッチが融合したキャラデザ
その待望の続編である『Ω』は、次世代の若き聖闘士・ペガサス座の光牙たちと、地球支配を企む火星の守護者・マルスとの戦いが描かれるアニメ・オリジナル作品であるが、本作の制作が発表された当初、ファンの間では期待よりも不安の声が多く上がった。
前作のアニメ版『聖闘士星矢』の魅力の一つに、荒木伸吾、姫野美智両氏による気品あふれる美形キャラクターたちが挙げられるが、多くのファンは『Ω』でも同様のキャラクターデザインを期待していたのだろう。
しかし、『Ω』のキャラデザは『おジャ魔女どれみ』シリーズや、『ハートキャッチプリキュア!』などの女児向けアニメでキャラデザを手掛けた馬越嘉彦。その丸みを帯びたかわいらしい聖闘士たちの姿に、多くのファンが拒否反応を起こした。
だが、彼はアニメ『北斗の拳』でエクストリームなキャラクターを多く描いた羽山淳一に憧れて東映動画の門を叩いた、熱血アクション派アニメーターである。
そんな自身のルーツを証明するかのように、『ハートキャッチプリキュア!』では荒木・姫野イズムを受け継ぐかのような強烈なパースを効かせた決めポーズや大胆なアクションシーン、「両手を後ろに広げての前傾姿勢ダッシュ」などを描き出していたことを覚えているアニメファンも少なくはないだろう。
筆者としては、古き良き東映動画のセンスを現代風の柔らかな画風にマッチさせるだけの技量を持つ馬越氏以外に現代の『星矢』を描ける人材はいないのでは、とすら思っている。
現在放送中の『Ω』を見れば、「かつて自分たちが見ていた『星矢』」のイメージと遜色なく、それでいて古臭さを感じさせない洗練された世界観を感じることができるはずだ。
また、主人公の光牙とライバル関係にある仔獅子座の蒼摩の泥臭さは、旧シリーズでは星矢のライバルになりそこねた残念キャラ・一角獣座の邪武を彷彿とさせるものがある。
旧シリーズで描ききれなかった初期プロットへのリベンジも感じさせる蒼摩というキャラは、馬越氏をはじめとする『Ω』スタッフの『星矢』という作品に対するリスペクトと、挑戦の証として注目していきたい。
■ファンなら「ニヤリ」のこだわりポイント
絵作り以外にもこだわりポイントはある。
『聖闘士星矢』といえば、様式美とすらいえる芝居がかった「車田節」とでもいうべきセリフの応酬を忘れてはならない。
冒頭にもあるような、大見得を切りつつ繰り広げられるバトルは、歌舞伎にも通じるケレン味満点である。『Ω』でも、このノリは健在。新世代聖闘士たちは、相変わらずド派手な名乗りと技解説を交えつつ、一進一退の攻防を繰り広げる。この勢いで、
「笑止!」
「燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんとはまさにこのことだ」
「オレのセブンセンシズよ 燃えろ!」
などのような、上級の車田節も登場させてほしいものである。
また、前作主人公・星矢が伝説の聖闘士として登場したり、龍座の紫龍とその恋人・春麗の息子・龍峰が次世代の龍座の聖闘士として登場するほか、大熊座の檄、「勝負は常に顔で決まるのだよ!」のセリフも有名なヒドラの市など通好みなキャラクターが準レギュラーとして登場、前作ではいま一つ活躍しきれなかった彼らのファンにはうれしいサービスも盛り込まれている。
■賛否両論の新聖衣
このように見どころ満載な『聖闘士星矢Ω』だが、手放しで褒めるのもステルスマーケティング臭がするので、いくつか気になる点も挙げておこう。
まず、なんといっても「聖衣(クロス)」の概念が変わってしまったことについて、突っ込まないわけにはいかない。星座をモチーフとしたオブジェが分解しプロテクターとなるというギミックがなくなり、本作では星座の力を借りて着用する変身スーツのような存在となっている。これは非常に残念である。『聖闘士星矢』といえば、物語が進むごとに進化するデザインや、想像もつかない合体変形でプロテクターとなるギミックなど男子心を燃やす聖衣の魅力は欠かせないはずだ。その代わりに本作では各キャラクターに「属性」の概念を新たに導入。火・風・雷・土・水・光・闇の7属性の力を持つ聖闘士の活躍が描かれる。今のところ、星座設定と属性設定が効果的に劇中に反映されている……とは言い難い。物語も序盤ということで、どのようにこれらの設定が盛り上げていくのか、注目したいところだ。
ともあれ、21世紀に入って新たな『聖闘士星矢』のアニメが見られるだけでも、ファンとしては僥倖(ぎょうこう)といったところだろう。
まだ見たことのない前作ファンは一度チャンネルを合わせてみて、変わらぬ『聖闘士星矢』スピリットと新たな挑戦に臨むスタッフの意気込み……もとい小宇宙を感じてみてはいかがだろうか。
(文=龍崎珠樹)
■バックナンバー
【第10回】「見たかったのはコレジャナイ!?」声優アイドルアニメ『夏色キセキ』に早くも黄色信号
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【第5回】一流アニメファンなら女児向け作品もチェックせよ!? 『スマイルプリキュア!』
【第4回】過激なピンク描写が男子の下半身を直撃!『アマガミSS+ plus』
【第3回】今クール話題の学園モノを徹底分析!『男子高校生の日常』『Another』
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【第1回】水樹奈々が歌いながらバトル!? 「戦うヒロイン」アニメに大注目!
新時代の『ルパン三世』は規制緩和の使者?『LUPIN the Third ―峰不二子という女―』

『LUPIN the Third ―峰不二子という女―』
公式サイトより
モンキー・パンチ原作の人気アニメ『ルパン三世』の、テレビシリーズとしては27年ぶりの新作『LUPIN the Third ―峰不二子という女―』(日本テレビ系)が放送中だ。
タイトルからもわかるように、本作の主人公はルパン三世ではなく、シリーズの名脇役である峰不二子。監督に山本沙代、シリーズ構成に岡田麿里ら女性スタッフを据え、日本の“ファム・ファタール”を代表するキャラクターの生き様を掘り下げていく。そんな内容からは、新世代の『ルパン三世』を作ろうという企画サイドの強い意気込みが感じられる。一方で本作は、スーパーアニメーター・小池健によるキャラクターデザインを軸に、これまでで最も原作コミックのイメージに近いビジュアルを作り上げたアニメ『ルパン三世』でもある。本作で初めて「新作テレビシリーズとしての『ルパン三世』」に触れる若い視聴者にも、シリーズのコアなファンにも訴求することを目指した、志の高いタイトルだといえよう。
前回のテレビスペシャルから登板の、不二子、石川五ェ門、銭形警部らの新キャストも旧キャスト陣に引けを取らぬ好演で、菊地成孔による音楽も最高にクールな仕上がり。欲をいえばもう少しストーリーには捻りがほしいところではあるものの、現在放送中のテレビアニメの中で、最重要作品のひとつであることは間違いない。
さて、そんな『峰不二子という女』には、もうひとつ注目すべき点がある。
「乳首」だ。
深夜帯に放送されているテレビアニメには、画面に不自然な光や影の入る作品が多い。これらは放送局の基準に則って、放送不可な描写に対してかけるマスクである。主に対象となるのはエログロ描写で、中でも最も厳しく規制されるのが女性の胸である。
たとえば、女性の胸描写に対する強いこだわりで知られるアニメーター・金子ひらくが監督を務めた『聖痕のクェイサー』『魔乳秘剣帖』といった作品では、乳首が描かれているカットに、画面の3分の2以上を覆う真っ白な光が被せられていた。両作ともに、物語の重要なシーンで必然性をもって乳首が描かれるため、放映版ではストーリーの細部が追えなくなるほどだった。このケースは極端だとしても、直近の作品でいえば『境界線上のホライゾン』など、「着衣の上から胸を触る」描写にすら規制がかかった作品も多く、いささかやりすぎの感は否めない。
ところが、『峰不二子という女』では、乳首が堂々と画面に登場するのである。毎回放映されるオープニング映像からバンバンと描かれ、本編でも惜しげもなく晒される。感覚としてはファッションショーでモデルが晒すものに近く、そこまで扇情的な印象は受けないものの、規制の厳しいその他の深夜アニメを見慣れているアニメファンとしては、驚かずにはいられない。さらに第4話では、コミカルで直接的な描写ではないものの、嬌声をあげて交わる不二子と銭形のセックスシーンが放送されもした。
これは「ルパン三世」というブランドの力が可能にした、例外的なことなのだろうか。それとも今後、深夜アニメに規制緩和の波が訪れるのだろうか。モニタの向こうでもこちら側でも、しばらくお騒がせな怪盗たちの行状から目が離せそうにない。
(文=御船藤四郎)
新時代の『ルパン三世』は規制緩和の使者?『LUPIN the Third ―峰不二子という女―』

『LUPIN the Third ―峰不二子という女―』
公式サイトより
モンキー・パンチ原作の人気アニメ『ルパン三世』の、テレビシリーズとしては27年ぶりの新作『LUPIN the Third ―峰不二子という女―』(日本テレビ系)が放送中だ。
タイトルからもわかるように、本作の主人公はルパン三世ではなく、シリーズの名脇役である峰不二子。監督に山本沙代、シリーズ構成に岡田麿里ら女性スタッフを据え、日本の“ファム・ファタール”を代表するキャラクターの生き様を掘り下げていく。そんな内容からは、新世代の『ルパン三世』を作ろうという企画サイドの強い意気込みが感じられる。一方で本作は、スーパーアニメーター・小池健によるキャラクターデザインを軸に、これまでで最も原作コミックのイメージに近いビジュアルを作り上げたアニメ『ルパン三世』でもある。本作で初めて「新作テレビシリーズとしての『ルパン三世』」に触れる若い視聴者にも、シリーズのコアなファンにも訴求することを目指した、志の高いタイトルだといえよう。
前回のテレビスペシャルから登板の、不二子、石川五ェ門、銭形警部らの新キャストも旧キャスト陣に引けを取らぬ好演で、菊地成孔による音楽も最高にクールな仕上がり。欲をいえばもう少しストーリーには捻りがほしいところではあるものの、現在放送中のテレビアニメの中で、最重要作品のひとつであることは間違いない。
さて、そんな『峰不二子という女』には、もうひとつ注目すべき点がある。
「乳首」だ。
深夜帯に放送されているテレビアニメには、画面に不自然な光や影の入る作品が多い。これらは放送局の基準に則って、放送不可な描写に対してかけるマスクである。主に対象となるのはエログロ描写で、中でも最も厳しく規制されるのが女性の胸である。
たとえば、女性の胸描写に対する強いこだわりで知られるアニメーター・金子ひらくが監督を務めた『聖痕のクェイサー』『魔乳秘剣帖』といった作品では、乳首が描かれているカットに、画面の3分の2以上を覆う真っ白な光が被せられていた。両作ともに、物語の重要なシーンで必然性をもって乳首が描かれるため、放映版ではストーリーの細部が追えなくなるほどだった。このケースは極端だとしても、直近の作品でいえば『境界線上のホライゾン』など、「着衣の上から胸を触る」描写にすら規制がかかった作品も多く、いささかやりすぎの感は否めない。
ところが、『峰不二子という女』では、乳首が堂々と画面に登場するのである。毎回放映されるオープニング映像からバンバンと描かれ、本編でも惜しげもなく晒される。感覚としてはファッションショーでモデルが晒すものに近く、そこまで扇情的な印象は受けないものの、規制の厳しいその他の深夜アニメを見慣れているアニメファンとしては、驚かずにはいられない。さらに第4話では、コミカルで直接的な描写ではないものの、嬌声をあげて交わる不二子と銭形のセックスシーンが放送されもした。
これは「ルパン三世」というブランドの力が可能にした、例外的なことなのだろうか。それとも今後、深夜アニメに規制緩和の波が訪れるのだろうか。モニタの向こうでもこちら側でも、しばらくお騒がせな怪盗たちの行状から目が離せそうにない。
(文=御船藤四郎)
クールジャパンは成功するのか? 外国人にウケるのは商品の「物語」だった
去る4月6日、秋葉原UDXにて「クールかどうかは外国人に聞け!~英国のクリエイティブ産業とクールブリタニア~」が、クールジャパン・イノベーション研究会主催で開催された。
この研究会の目的はずばり、自分たちで日本の文化や製品がカッコイイと言い合うだけの状況から一歩先に進んで、外国から「カッコイイね」と言われる部分を再発見しようというもの。昨年、経済産業省に設けられたクールジャパン室は、やはり日本の伝統工芸と外国ブランドのコラボ商品の開発の後押しを志向するなど、日本の文化や製品を自画自賛することからの脱却を図っている。官でも民でも立場は変わらず、従来の「クールジャパン」のもう一歩先に、進まなければならないと思っているわけだ。
最初に登壇した三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 芸術・文化政策センター センター長・太下義之氏は「《クール・ブリタニア》再考」と題して講演した。そもそもイギリスが「クール・ブリタニア」として注目されたきっかけは、「ニューズウィーク」が1996年11月号の巻頭特集「ロンドン式」で、「ロンドンが世界で最もCoolな首都である」と掲載したこと。そして、「Varity Fair」が97年3月号の「COOL BRITANIA London Swings! Again!」と題した特集記事で、「60年代半ばと同じように、イギリスの首都ロンドンは文化的な先駆者であり、藝術・ポップス・ファッション・食文化、そして映画等の分野において、新しくて若々しいアイコンに満ちている。政治家さえもがクールだ」と評したことに始まる。これに加えて、97年5月にはトニー・ブレアがイギリス首相に選出されたこともイギリスのイメージ転換を後押しした。就任当時ブレアは43歳、労働党出身にもかかわらず、それまでの労働党の出身者とは一線を画すファッショナブルなスタイルが注目を集めることとなった。
これに時期を併せるように、イギリスの独立系シンクタンク「DEMOS」のマーク・レナード研究員は「複数の政府機関とビジネスが共同して、肯定的なアイデンティティーを発信することができれば、英国の経済に大きな利益をもたらすことになる」と提言する。当時、イギリスは香港の返還や、ダイアナ妃の死去など、国のブランドイメージが低下する事件が相次いでいた時期だ。首相に就任したブレアは、さっそくレナードの考え方を取り入れ、「クール・ブリタニア」をキャッチフレーズとする国家ブランディング戦略を展開していくことになる。
こうして当初は一時的なブームに過ぎなかった「クール・ブリタニア」がクリエイティブ産業振興政策へと発展していったわけである。この政策は、主として外務・英連邦省が所管するパブリック・ディプロマシー政策、文化・メディア・スポーツ省と貿易産業省によるクリエイティブ産業輸出政策、文化・メディア・スポーツ省が所管する、クリエイティブ産業振興政策の三本柱で行われた。
しかし、この政策は思ったほど成果を挙げることができなかった。
その理由は、イギリスを取り巻く内政と外政の両方が大きく変化したことにある。99年にはスコットランドとウェールズで独自の議会が設置される。さらに2001年の911以降、イギリスを含めて欧米諸国は、自らの文化に否定的な勢力が存在していることを痛感する。つまり、先進諸国が総じて世界は多文化主義的であることを認めざるを得ず、多様性を重視する志向へと変化した。これによって「要は、イギリスだけがカッコイイとは言えなくなった」のだと、大下氏は指摘する。
さて、こうした一連の流れを聞いた上で重要なのが、なぜイギリスが(あるいはブレア政権が)、クリエイティブ産業振興策を打ち出すに至ったかである。大下氏は、イギリスが文化産業に注目した理由を、「美しいストーリーではなく、産業構造が劇的に変化したため」だと指摘する。具体的には、製造業が海外に流出したことだ。ひとつの産業セクターが失われれば、当然、その分の雇用を確保しなければならなくなる。その方策として、「仮想フロンティア」としてのクリエイティブ産業が重視されたというわけだ。
この点から見ても、日本の「クールジャパン」に絡む政策は、イギリスの政策を反省点を踏まえながら後追いをしていると見てよいだろう。日本の政策がイギリスと異なる点は、政策で扱う産業の多様性だ。この政策で振興が目指されるのは文化産業だが、日本では、観光・食・住の要素までもが含まれる。つまり、イギリスに比べて幅広い産業に「日本ブランド」の要素をもたらすことができると言える。
その方法を示唆したのが、続いて講演した株式会社ちん里う本店のゾェルゲル・ニコラ氏だ(なんの会社かと思ったら、小田原にある梅干しの老舗だそうで「妻が社長です」と自己紹介)。ニコラ氏は、日本には「老舗」と呼ばれる店舗が山のように存在することを取り上げ、日本の製品の特徴を「物語のあるもの」だと指摘する。具体例として、ニコラ氏は甲州印伝の名刺入れを取り出し、「これは、もともとは鎧の部品だった。“あなたの鎧の一部になります”という物語を作ることもできるし、珍しいものを持っているに至った物語を伝えることもできるんです」と話す。さらに、熊本象眼や、狗張り子なども取り上げて日本の製品の持つ「物語」の豊富さを次々と指摘した。
日常生活において、衣服でも文房具でも、単に見てくれのよいものよりは伝統や開発に至るまでの物語があるもの、あるいは、フェラーリのように所有することに手間も金もかかるもののほうが「買ってよかった」という感覚を抱かせるはず。それは、世界共通なのではないかと考えた。
(取材・文=昼間たかし)
クールジャパンは成功するのか? 外国人にウケるのは商品の「物語」だった
去る4月6日、秋葉原UDXにて「クールかどうかは外国人に聞け!~英国のクリエイティブ産業とクールブリタニア~」が、クールジャパン・イノベーション研究会主催で開催された。
この研究会の目的はずばり、自分たちで日本の文化や製品がカッコイイと言い合うだけの状況から一歩先に進んで、外国から「カッコイイね」と言われる部分を再発見しようというもの。昨年、経済産業省に設けられたクールジャパン室は、やはり日本の伝統工芸と外国ブランドのコラボ商品の開発の後押しを志向するなど、日本の文化や製品を自画自賛することからの脱却を図っている。官でも民でも立場は変わらず、従来の「クールジャパン」のもう一歩先に、進まなければならないと思っているわけだ。
最初に登壇した三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 芸術・文化政策センター センター長・太下義之氏は「《クール・ブリタニア》再考」と題して講演した。そもそもイギリスが「クール・ブリタニア」として注目されたきっかけは、「ニューズウィーク」が1996年11月号の巻頭特集「ロンドン式」で、「ロンドンが世界で最もCoolな首都である」と掲載したこと。そして、「Varity Fair」が97年3月号の「COOL BRITANIA London Swings! Again!」と題した特集記事で、「60年代半ばと同じように、イギリスの首都ロンドンは文化的な先駆者であり、藝術・ポップス・ファッション・食文化、そして映画等の分野において、新しくて若々しいアイコンに満ちている。政治家さえもがクールだ」と評したことに始まる。これに加えて、97年5月にはトニー・ブレアがイギリス首相に選出されたこともイギリスのイメージ転換を後押しした。就任当時ブレアは43歳、労働党出身にもかかわらず、それまでの労働党の出身者とは一線を画すファッショナブルなスタイルが注目を集めることとなった。
これに時期を併せるように、イギリスの独立系シンクタンク「DEMOS」のマーク・レナード研究員は「複数の政府機関とビジネスが共同して、肯定的なアイデンティティーを発信することができれば、英国の経済に大きな利益をもたらすことになる」と提言する。当時、イギリスは香港の返還や、ダイアナ妃の死去など、国のブランドイメージが低下する事件が相次いでいた時期だ。首相に就任したブレアは、さっそくレナードの考え方を取り入れ、「クール・ブリタニア」をキャッチフレーズとする国家ブランディング戦略を展開していくことになる。
こうして当初は一時的なブームに過ぎなかった「クール・ブリタニア」がクリエイティブ産業振興政策へと発展していったわけである。この政策は、主として外務・英連邦省が所管するパブリック・ディプロマシー政策、文化・メディア・スポーツ省と貿易産業省によるクリエイティブ産業輸出政策、文化・メディア・スポーツ省が所管する、クリエイティブ産業振興政策の三本柱で行われた。
しかし、この政策は思ったほど成果を挙げることができなかった。
その理由は、イギリスを取り巻く内政と外政の両方が大きく変化したことにある。99年にはスコットランドとウェールズで独自の議会が設置される。さらに2001年の911以降、イギリスを含めて欧米諸国は、自らの文化に否定的な勢力が存在していることを痛感する。つまり、先進諸国が総じて世界は多文化主義的であることを認めざるを得ず、多様性を重視する志向へと変化した。これによって「要は、イギリスだけがカッコイイとは言えなくなった」のだと、大下氏は指摘する。
さて、こうした一連の流れを聞いた上で重要なのが、なぜイギリスが(あるいはブレア政権が)、クリエイティブ産業振興策を打ち出すに至ったかである。大下氏は、イギリスが文化産業に注目した理由を、「美しいストーリーではなく、産業構造が劇的に変化したため」だと指摘する。具体的には、製造業が海外に流出したことだ。ひとつの産業セクターが失われれば、当然、その分の雇用を確保しなければならなくなる。その方策として、「仮想フロンティア」としてのクリエイティブ産業が重視されたというわけだ。
この点から見ても、日本の「クールジャパン」に絡む政策は、イギリスの政策を反省点を踏まえながら後追いをしていると見てよいだろう。日本の政策がイギリスと異なる点は、政策で扱う産業の多様性だ。この政策で振興が目指されるのは文化産業だが、日本では、観光・食・住の要素までもが含まれる。つまり、イギリスに比べて幅広い産業に「日本ブランド」の要素をもたらすことができると言える。
その方法を示唆したのが、続いて講演した株式会社ちん里う本店のゾェルゲル・ニコラ氏だ(なんの会社かと思ったら、小田原にある梅干しの老舗だそうで「妻が社長です」と自己紹介)。ニコラ氏は、日本には「老舗」と呼ばれる店舗が山のように存在することを取り上げ、日本の製品の特徴を「物語のあるもの」だと指摘する。具体例として、ニコラ氏は甲州印伝の名刺入れを取り出し、「これは、もともとは鎧の部品だった。“あなたの鎧の一部になります”という物語を作ることもできるし、珍しいものを持っているに至った物語を伝えることもできるんです」と話す。さらに、熊本象眼や、狗張り子なども取り上げて日本の製品の持つ「物語」の豊富さを次々と指摘した。
日常生活において、衣服でも文房具でも、単に見てくれのよいものよりは伝統や開発に至るまでの物語があるもの、あるいは、フェラーリのように所有することに手間も金もかかるもののほうが「買ってよかった」という感覚を抱かせるはず。それは、世界共通なのではないかと考えた。
(取材・文=昼間たかし)
一晩でシリーズを総ざらえ! 『交響詩篇エウレカセブン』オールナイト上映会

三瓶由布子(左)、名塚佳織(右)
4月14日夜から15日朝にかけて、東京・テアトル新宿にて『交響詩篇エウレカセブン』オールナイト上映会が催された。
これは4月期の新作アニメ『エウレカセブンAO』(MBS・TBSほか)第1話の放送を記念し、その第1話と、2005年放送のテレビシリーズ『交響詩篇エウレカセブン』のうち11話分、そして劇場版『交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい』を一挙に上映しようというもの。
一晩でシリーズを総ざらえする贅沢なイベントで、上映前には集まったファンの高ぶる気持ちをほぐし、また作品の記憶を取り戻させるかのように、メインキャストのふたり、レントン・サーストン役の三瓶由布子とエウレカ役の名塚佳織が登壇、トークショーを行った。
三瓶が「こんなに作品自体が成長していくのはなかなかないことだから、本当にみんなに愛されているなということを実感しています」と語ると、名塚も「7年経って、今日このオールナイトにこれだけ集まってくださって、立見のお客様までいる」と感慨深げ。
トークは、事前に回収されたアンケートの結果を見ながら進められた。
●好きなキャラクターランキング
1位 エウレカ 25.2%
2位 レントン、アネモネ 各22.6%(同票)
4位 ホランド 14.3%
5位 ドミニク 13.9%
レントン/エウレカと対になるカップルともいえるドミニク/アネモネとで、ほぼ票を分け合った恰好。三瓶は「レントンとしてはエウレカが1位でうれしいです」と、男の子目線で控えめなコメント。一方の名塚は、「当時のアネモネ人気はすごかった。衣裳が難しそうなのにコスプレしてくれる人が多かった」と、自分たちを脅かす(?)ライバルの人気を認めた様子だった。
自分以外で一票入れるとしたら、と問われた三瓶は「それはエウレカですよ」と、ここでも付き従うレントンの気持ちで答えるが、エウレカ役の名塚は「私はもう、ジョブスですよ」と、やや食い違いを見せる。ジョブスが好きな理由には、ミステリアスな側面もあるが、スキンヘッドが好きだからでもあるとか。演者である志村知幸とキャラクターのギャップにも魅力を感じているという。
●好きなメカランキング
1位 ニルヴァーシュ type ZERO 40.8%
2位 ターミナス type B303 デビルフィッシュ 25.2%
3位 ニルヴァーシュ type the END 22.6%
4位 月光号 3.4%
5位 スピアヘッド SH101 3.0%
好きなメカの投票は、メインで戦っていた3つの機体に集中。ニルヴァーシュについては、名塚は「何かあるとニルヴァーシュに相談してたもんね。(レントンとエウレカの)ふたりというよりは3人、という感じ」、三瓶は「劇場版に至ってはしゃべっちゃったよ!? ロボットの域を超えている感じがするんです。生き物感がある。一緒に旅をしてきた仲間という感じがしますね」と、もはやメカというよりキャラクターとしての距離感なのだなと思わせる言葉が飛び出してきた。
●テレビ版上映話数発表
1位 48話 バレエ・メカニック 26.9%
2位 26話 モーニング・グローリー 23.0%
3位 50話 星に願いを 17.4%
4位 28話 メメントモリ 各9.0%(以下、同票)
46話 プラネット・ロック
6位 2話 ブルースカイ・フィッシュ 各6.0%(以下、同票)
25話 ワールズ・エンド・ガーデン
32話 スタート・イット・アップ
33話 パシフィック・ステイト
39話 ジョイン・ザ・フューチャー
49話 シャウト・トゥ・ザ・トップ!
アンケートの最後の項目は、どの回を上映するか決めるための希望を募ったもの。ドミニクとアネモネの思いが通じ合う48話が1位という結果に、「まあ、1位はね。そうかなと思ってたけど」(三瓶)、「信じたくはなかった」(名塚)と、覚悟はしていたものの、やや肩を落としていた。投票したファンの声も、もちろん「悲しい。悲しいけどカッコイイ」「アネモネの独白が胸にぐさりときます」との賞賛が続く。三瓶も名塚も泣いたというから、やはり1位にふさわしい回だったのだ。
三瓶が「でも、あの感動的な落ちてくるシーンあるじゃん、あれ26話パクられたよね」とおどけてみせたのが唯一の抵抗といえば抵抗だったかも!?
なお、39話は伝説のサッカー回。まるまる一話を本筋と直接関係のないストーリーに費やした話数を劇場の大きなスクリーンで見ることのできる、貴重な機会となった。
最後の質問コーナーでも思い出話が弾んだ。もし自分の役と会話ができるとしたら、という質問には、京田知己監督が作品HPに「最終回を経て、もしもう一度会うことができたら、おかえりと言ってあげたいという気持ちはすごくありました」と書いたことを引き合いに出し、レントンにおかえりと言ってあげたいと三瓶は答えた。
「男らしくなったなぁ、と」(三瓶)
一方の名塚も、「レントンと出会って恋する気持ちというものが芽生えたので、やっぱり女子トークというか、一緒に買い物にいったり、(劇中で)化粧を教わっていましたけど、それこそ化粧品を買いに行ったりとか、一緒に女友だちとして遊んでみたい」と、自分の演じたキャラクターでありながらも年下の別人というスタンスで、優しい視線を投げかけていた。
すると、三瓶のエウレカ愛が爆発して「(エウレカに)かわいいって言ってあげたい。でもかわいい、を通り越して好きだ! って言うかもしれない(笑)」と激白。
これだけ役者とファンに愛され、年数をかけて成長したロボットアニメーションというのも、そうはないだろう。
現在、新たに発信する役目は新作の『エウレカセブンAO』に受け継がれている。前作メインキャストのふたりも『AO』に期待し、早くもハマっているようで、三瓶は「もう、毎回(アフレコに)行っちゃおうか。本城(雄太郎)くんに嫌がられるかもしれないけど(笑)」というほどの熱の入れよう。名塚も「エウレカの今までの世界観が残りつつも新しいものとして走り出しているのは、いち視聴者としてうれしい。アオがどんな成長を遂げてくれるのか、一緒に最後まで応援していきたい」と、ファンを代表するコメントを残した。
前作から最新話までを一気に駆け抜けた上映会。『エウレカセブン』シリーズを見守り続ける人々の存在を実感させるイベントだった。
(取材・文=後藤勝)
“金づる視聴者”卒業!『おもしろいアニメとつまらないアニメの見分け方』

『「おもしろい」アニメと「つまらない」
アニメの見分け方』
(キネマ旬報社)
「全米ナンバーワンヒット」というキャッチコピーに何度だまされたことだろうか。小説は出だしの3行を読めばわかる、なんてよく言われるけれども、映画だとそうはいかない。1,800円を払い、2時間、暗い場内で苦痛の時間を過ごすことになる。テレビアニメの場合だと、ヤメ時がわからず、「これから急展開が待っているのかも」と、つまらないアニメを1クール延々と見続ける……なんてことも、ままある。
ビジュアルはカッコイイけど、ストーリーはつまらない。一見判断しがたいアニメの“おもしろさ”だが、名作には共通した普遍的法則が存在している。『「おもしろい」アニメと「つまらない」アニメの見分け方』(キネマ旬報社)は、脚本家の沼田やすひろ氏が、おもしろいアニメの法則とその構造について言及した本だ。『天空の城ラピュタ』や『トイ・ストーリー』『輪るピングドラム』などのおもしろさを論理的に解説している。その一方、『フラクタル』などにはかなり辛口な評価をしており、同作を監督したヤマカンこと山本寛氏が自身のTwitterで怒りをあらわにしたという、業界で話題沸騰中の本だ。
では、沼田氏の考える“おもしろさ”とは一体何なのか? アニメの第一印象は「キービジュアル」「画創り」「ミスペンス」「論理骨折がないこと」の4点がポイントになるという。「キービジュアル」「画創り」は魅力的な絵柄や構図、「ミスペンス」はミステリーとサスペンスを合わせた造語で、ストーリーに“危機のある謎”があるか、「論理骨折」はストーリーや世界観に矛盾点があり、論理的に破たんしていることを指す。例えば『フラクタル』でいうと、主人公の父親は“交易の仕事をしている”のに、この世界は“仕事をしなくてもいい”と説明される。解決されない矛盾=論理骨折があり、素直に物語を楽しめなくなってしまうのだ。
上記4点に加えて、“安心から恐怖へ”“拒絶から受容へ”という感情のゆさぶりを画創りで表現する「リマインダー」の要素や、“対立→葛藤→変化”といったキャラクターの変化を13段階の流れで示す「13フェイズ構造」も、おもしろさを判別する大きな指標となる。この構造に適っていない作品、――例えば『ゲド戦記』のような、理由のない唐突な変化や成長は、視聴者に強い違和感を与え、途端“つまらない”作品となってしまうのだという。なお、同作については、約20ページにわたり“つまらなさ”の構造が語られており、駄作に金銭と時間を浪費した著者の怨念さえ感じられる。
「――アニメの創り方を知らない後進が、『売れるはず』という思い込みのレッテルだけでプロデューサーに創作の機会を与えられ、結果『つまらない』、商業作品でない実験作が、商品として平然と世に出てしまっているのです。正直、そんな作品を観るのはお金と時間のムダです。『おもしろさ』の本質をとらえることのできない商業リマインダー主義のアニメ制作システムに、踊らされているだけです。もう、彼らの『金づる視聴者』でいることをやめませんか」(本文より)
現在のアニメ・テレビ業界のヒサンな状況をつくっているのは、われわれ視聴者自身であるのかもしれない。
(文=平野遼)
『銀河鉄道999』はアップル並みのインパクト? 韓国の催眠術的ポートレイト

(c)Seungyea Park
『AKIRA』『ドラゴンボール』『ドラえもん』......子どものころ、僕らの心をアツくさせた漫画やアニメが、海の向こうに住むアジアの子どもたちの心にも火をつけていた。今や日本人だけのものではなくなった、ジャパニーズ・ポップカルチャー。その影響を受けて育った、アジアの才能豊かなクリエーターたちを紹介します。
第26回
アーティスト
スンイェ・パク(Seungyea Park )
非常に繊細で、写実主義を極めた筆致で描かれたポートレイト。でも、何かが変。もう一度見る。えも言われぬ不安感に襲われつつ、今度は細部を見極めようと、見入ってしまう。そして普通の「人」のポートレイトにはあり得ないモノや部分を見つけては、恐怖や、嫌悪感にも似た感情が湧き出るのを押さえることができない。それなのに、シュール感と現実感が絶妙なバランスで共存している彼女の人物画を前にすると、この「人」たちの存在も簡単に受け入れてしまいそうになるのだ。
韓国のアーティスト、Seungyea Park(スンイェ・パク)は、そんな自分の作品を「催眠術的ポートレイト」と称している。

(c)Seungyea Park
スンイェの作品はほとんどが人物画だ。中性紙の上に、アクリルとボールペンを使って彼女が描き出したいのは「人の内面に棲むモンスターと、外部に現れたモンスター」。
「本当は誰にでも見えているかもしれないモノなのに、私たちは実は何も見ていない、あるいは、現実をそのまま受け入れようとしない、ということを表現したいのです」
スンイェは最近、20代のほとんどを過ごしたアメリカから、家族のいる韓国に戻って来た。
「韓国は私の生まれた場所で、現在の私の生活と活動の場でもあります。刺激的で、特殊なトレンドが生まれるところ。一方で、あらゆる種類のニーズに対するたくさんのチャンスがある場所でもあります」

(c)Seungyea Park

(c)Seungyea Park
作品を韓国で売るのは簡単なことではないが、展覧会企画やアーティスト・イン・レジデンス、助成金などが、彼女の活動を支えているという。
そして、自分の作品に影響を与えるのは、どこか特定の国の文化ではない、としながらも、アメリカと日本の文化の存在は大きい、という。
「だって、それらはもはやほぼ世界中に広がっているものだから。子どものころは、『銀河鉄道999』や『鉄腕アトム』を見て、バービー人形と遊んで育ちました。21世紀のアップルが世界中に与えたインパクトと同様、巨大産業の影響からは逃れられないということです」
「アメリカには、韓国的なもの、アメリカ的なもの、日本的なもの、中国的なもの、そしてヨーロッパ的なものが混在しています。学校や友人、仕事の現場に、それらは普通にあり、確実に言えるのは、そうしたさまざまなカルチャーが、私の中にミックスされているということです」

(c)Seungyea Park
彼女に、ポートレイトを描き続ける理由を聞いてみた。
「人を描くのが好きなんです。顔は、その人の背景にある多くの歴史的なものを表している。それは美しく、壊れた大きな鏡――システムとも言えるし、私たちが属する社会とも言える――のかけらのようでもあります」
人々の中に、外に、巣食うモンスターたち。それは、彼らの暮らす生活や社会のひずみともいえるのかもしれない。そして、そうしたものを、スンイェは視覚化するのだ。
「私の絵は、モンスターたちが争う戦場みたいなものかもしれませんね」
現在所属するNational Art studio of Koreaは「自分が人々に向けて、自分が何を打ち出していくべきかを考えるのに適したところ」だというスンイェ。年末には、ソウル市のスポンサーによる個展の計画も進んでいる。
これからは、インスタレーションや書籍、ビデオなど、自分のドローイングをより多くの媒体を使って、メディアミックスの形でプレゼンテーションしていきたいという。
「とにかく、もっともっと作品作りを楽しみたいんです」
私たちの内面と外面にいるモンスターたち。スンイェにしか見えないそれらを、その作品を通して、もっと見せてほしいと思うのは、筆者だけではないはずだ。
(取材・文=中西多香[ASHU]
●スンイェ・パク
ソウルで生まれ育つ。高校卒業後、アメリカに渡り、ニューヨークのSouthampton Longisland UniversityでBFA(美術学士)を、C.W .POST of Southampton Long Island Universityで修士を取得後、アーティストとして活動を開始。現在はソウルをベースに、展覧会や出版を通じて作品の発表を続ける。2011年、Sovereign Asian Art Prize のTOP30 ファイナリストに選出される。
<http://blog.yahoo.com/artpark>
<http://www.saatchionline.com/spunkyzoe>
●なかにし・たか
アジアのデザイナー、アーティストの日本におけるマネジメント、プロデュースを行なう「ASHU」代表。日本のクリエーターをアジア各国に紹介するプロジェクトにも従事している。著書に『香港特別藝術区』(技術評論社)がある。<http://www.ashu-nk.com >
オンラインTシャツオンデマンド「Tee Party」<http://teeparty.jp/ashu/>
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