巨大オタクビルの中に博物館「北九州市漫画ミュージアム」に行きたい!

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この巨大なビルが新たなマンガとアニメの聖地になるのか。うん、巨大すぎる……
 全国各地で展開されている、マンガやアニメによる地域振興。そうした中、全国初となる自治体が直接運営するマンガ博物館がオープン間近と聞き、早速取材に向かった。  これだけマンガやアニメによる地域振興が叫ばれながら、自治体が直接運営する博物館がなかったのも驚きだが、さらに驚くのはオープンする場所だ。場所は、北九州のJR小倉駅前。ここに8月3日オープンするのが、北九州市が運営する「北九州市漫画ミュージアム」だ。  小倉駅前の商業ビルの一部を使用するこの施設。一体どんなところなのだろうかと、行ってみて驚いた。現在準備中のミュージアムが入る階以外の各階では、すでにマンガ・アニメ系ショップが絶賛営業中なのだ。この建物、最上階の7階には劇場。5・6階にはミュージアムが入るのだが、その下の階の充実ぶりがすさまじい。「まんだらけ」「アニメイト」「ゲーマーズ」「メロンブックス」「らしんばん」と名だたるショップが一堂に集結。さらに、全国でもここ以外は徳島市にしかない『Fate/Zero』ショップに、日本初のアニソン専門カフェである「ANIMAX MUSIX CAFE」も入居している。  どう表現すればよいだろう、オタク系ショップが各種入居していることで知られる中野ブロードウェイが、さらに濃く内容も充実して、かつキレイになって登場した、というスタイルなのだ。  なんにしても、世界的なオタクの中心地である秋葉原にもないショップが出店しているのはすごい……。
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中は完全にオタク系ショップばかりの筋の通った感じがたまらない

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さすがに平日の正午頃だったので客は少なかった
 だが、北九州市がミュージアムを立ち上げるのは、単にアニメ・マンガで地域振興を図りたいがためだけではない。古くから栄えた北九州市は、多くの文化人をも輩出してきた。マンガだけに限っても松本零士氏、畑中純氏、わたせせいぞう氏、北条司氏と著名なマンガ家を数多く輩出している。
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内部はまだ工事中だが。告知用の壁紙が、かなりキテていい感じの仕上がりに……

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このセンスの独特さが新たな可能性を感じさせてくれるのだ
「北九州という街は、少女マンガから青年マンガまで、さまざまなマンガ家を輩出してきた街でもあります。これまでも、松本先生や畑中先生にも協力していただき、準備を進めてきました。北九州市の文化の幅の広さを見ることのできる施設になると思います」  と、これまで同館の立ち上げに携わってきた専門研究員の表智之氏は語る。同館は、単に展示を行うだけでなく、数万冊のマンガ単行本を閲覧できるコーナー、マンガ教室などを想定したイベントコーナーなども設けており、創意工夫を凝らした試みが行われていくことになりそうだ。何より、いわゆる「オタクビル」に入居していることの価値は高い。
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やはり松本先生といえば『男おいどん』だよ。
筆者もまだ、おいどんみたいな暮らしっぷりだよ

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子供から大人まで楽しめる施設が充実しているのがいいよね
「各種のショップが入居しているので、ビル全体にミュージアムも機能を持たせることができるんですよ」(表氏)  文字通り、過去から最新のマンガまでを閲覧できる施設になるわけだ。  北九州市といえば、『無法松の一生』ヨロシクな荒くれ者の集う街かと思っていたのだが、こんなに文化事業に熱心だとは知らなかった(今回の取材まで、筆者の北九州市の知識は『無法松の一生』と『花と龍』)。  市内には、北九州市ゆかりの文豪の資料を展示する「北九州市立文学館」や「松本清張記念館」といった文化施設も数多くあるし、レトロな風景まで残っていて魅力は尽きない。
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なんともレトロな雰囲気の市場が。こういうのが残っている街は間違いなくアタリだ

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内部にも活気が。失われたなにかを思い出したよ……

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きっと、この街の人々はフランクで付き合いやすいに違いない

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レトロな映画館が残る街にハズレはない

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アヤしげな雰囲気の場所も。知らない街の歓楽街で
カメラを出す勇気はありませんでした
 おそらくは九州最大のマンガ・アニメ文化の拠点になるであろう北九州市の動向から、目が離せない。 (取材・文=昼間たかし) この取材の直後に畑中純先生が逝去されました。改めてご冥福をお祈り申し上げます。 <ミュージアム概要> 開館日:8月3日(金) 住所:北九州市小倉北区浅野二丁目14-5 あるあるCity5・6階 開館時間:11時~19時(夏休みなどは~20時) 休館日:火曜日 最新情報はコチラから: <http://www.city.kitakyushu.lg.jp/shimin/02101004.html>

巨大オタクビルの中に博物館「北九州市漫画ミュージアム」に行きたい!

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この巨大なビルが新たなマンガとアニメの聖地になるのか。うん、巨大すぎる……
 全国各地で展開されている、マンガやアニメによる地域振興。そうした中、全国初となる自治体が直接運営するマンガ博物館がオープン間近と聞き、早速取材に向かった。  これだけマンガやアニメによる地域振興が叫ばれながら、自治体が直接運営する博物館がなかったのも驚きだが、さらに驚くのはオープンする場所だ。場所は、北九州のJR小倉駅前。ここに8月3日オープンするのが、北九州市が運営する「北九州市漫画ミュージアム」だ。  小倉駅前の商業ビルの一部を使用するこの施設。一体どんなところなのだろうかと、行ってみて驚いた。現在準備中のミュージアムが入る階以外の各階では、すでにマンガ・アニメ系ショップが絶賛営業中なのだ。この建物、最上階の7階には劇場。5・6階にはミュージアムが入るのだが、その下の階の充実ぶりがすさまじい。「まんだらけ」「アニメイト」「ゲーマーズ」「メロンブックス」「らしんばん」と名だたるショップが一堂に集結。さらに、全国でもここ以外は徳島市にしかない『Fate/Zero』ショップに、日本初のアニソン専門カフェである「ANIMAX MUSIX CAFE」も入居している。  どう表現すればよいだろう、オタク系ショップが各種入居していることで知られる中野ブロードウェイが、さらに濃く内容も充実して、かつキレイになって登場した、というスタイルなのだ。  なんにしても、世界的なオタクの中心地である秋葉原にもないショップが出店しているのはすごい……。
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中は完全にオタク系ショップばかりの筋の通った感じがたまらない

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さすがに平日の正午頃だったので客は少なかった
 だが、北九州市がミュージアムを立ち上げるのは、単にアニメ・マンガで地域振興を図りたいがためだけではない。古くから栄えた北九州市は、多くの文化人をも輩出してきた。マンガだけに限っても松本零士氏、畑中純氏、わたせせいぞう氏、北条司氏と著名なマンガ家を数多く輩出している。
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内部はまだ工事中だが。告知用の壁紙が、かなりキテていい感じの仕上がりに……

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このセンスの独特さが新たな可能性を感じさせてくれるのだ
「北九州という街は、少女マンガから青年マンガまで、さまざまなマンガ家を輩出してきた街でもあります。これまでも、松本先生や畑中先生にも協力していただき、準備を進めてきました。北九州市の文化の幅の広さを見ることのできる施設になると思います」  と、これまで同館の立ち上げに携わってきた専門研究員の表智之氏は語る。同館は、単に展示を行うだけでなく、数万冊のマンガ単行本を閲覧できるコーナー、マンガ教室などを想定したイベントコーナーなども設けており、創意工夫を凝らした試みが行われていくことになりそうだ。何より、いわゆる「オタクビル」に入居していることの価値は高い。
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やはり松本先生といえば『男おいどん』だよ。
筆者もまだ、おいどんみたいな暮らしっぷりだよ

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子供から大人まで楽しめる施設が充実しているのがいいよね
「各種のショップが入居しているので、ビル全体にミュージアムも機能を持たせることができるんですよ」(表氏)  文字通り、過去から最新のマンガまでを閲覧できる施設になるわけだ。  北九州市といえば、『無法松の一生』ヨロシクな荒くれ者の集う街かと思っていたのだが、こんなに文化事業に熱心だとは知らなかった(今回の取材まで、筆者の北九州市の知識は『無法松の一生』と『花と龍』)。  市内には、北九州市ゆかりの文豪の資料を展示する「北九州市立文学館」や「松本清張記念館」といった文化施設も数多くあるし、レトロな風景まで残っていて魅力は尽きない。
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なんともレトロな雰囲気の市場が。こういうのが残っている街は間違いなくアタリだ

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内部にも活気が。失われたなにかを思い出したよ……

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きっと、この街の人々はフランクで付き合いやすいに違いない

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レトロな映画館が残る街にハズレはない

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アヤしげな雰囲気の場所も。知らない街の歓楽街で
カメラを出す勇気はありませんでした
 おそらくは九州最大のマンガ・アニメ文化の拠点になるであろう北九州市の動向から、目が離せない。 (取材・文=昼間たかし) この取材の直後に畑中純先生が逝去されました。改めてご冥福をお祈り申し上げます。 <ミュージアム概要> 開館日:8月3日(金) 住所:北九州市小倉北区浅野二丁目14-5 あるあるCity5・6階 開館時間:11時~19時(夏休みなどは~20時) 休館日:火曜日 最新情報はコチラから: <http://www.city.kitakyushu.lg.jp/shimin/02101004.html>

香港フィギュアブームの火付け役! ‟『AKIRA』にヤラれた”作家が手がける近未来物語

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「Apexplorers character T-rex 」(c)Winson Ma
 『AKIRA』『ドラゴンボール』『ドラえもん』......子どものころ、僕らの心をアツくさせた漫画やアニメが、海の向こうに住むアジアの子どもたちの心にも火をつけていた。今や日本人だけのものではなくなった、日本のポップカルチャー。その影響を受けて育った、アジアの才能豊かなクリエーターたちを紹介します。 第28回 キャラクター・デザイナー ウィンソン・マー(Winson Ma)  鉄人兄弟(brothersfree) 。アクション・フィギュア好きの人なら、一度は聞いたことがあるだろう。香港のマイケル・ラウ、エリック・ソーと並んで、2000年代初頭に旋風を巻き起こした「香港アクション・フィギュア」ブームの一翼を担い、今もなお世界中に根強いファンを持つ、アクション・フィギュア・クリエイティブユニットだ。  ウィンソン・マーが、友人のケニー・ウォン、ウィリアム・ツァンと共に「鉄人兄弟」をスタートさせたのは2000年。香港で、彼らのごく身近な存在である工事現場の労働者たちをモチーフにしたアクション・フィギュアのシリーズ「brothersworker」は、衝撃的なデビューを遂げた。「フィギュアはアートだ」と、誰しもが実感せずにはいられないほどの世界観と高いクオリティを持った彼らの作品は、フィギュア界に確実に新しいエポックを残した。  しかし06年、「広告代理店のクリエイティブ・ディレクターとしての待遇を捨て、貯金を削ってまで自分たちのアクション・フィギュアを作りたかった」鉄人兄弟の3人は、それぞれの道を選ぶことになる。  「カルチャーとかデザインとかの枠を超えて、あの時期、鉄人兄弟は、頂点に駆け上った。3人でやるべきことのすべてを成し遂げた結果だし、何より僕たちの作品が多くの人に受け入れられたことが自信になった」というウィンソンは、その後、自身の会社Winson Classic Creationを設立。自身初のオリジナル・シリーズ作品「Apexplorers(エイプクスプローラーズ)」を発表する。自らストーリーを作り、全キャラクターデザインを手がけた近未来物語。フィギュアだけでなく、ムービー、イラストなど、メディアミックスで展開されている。
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「Apexplorers character Ice & Laser」(c)Winson Ma
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「Apexplorers character Otto」(c)Winson Ma
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「Apexplorers character Otto & Ice」(c)Winson Ma
「世界初めて三極(北極、南極、エベレスト登頂)を極めた香港の女性冒険家、レベッカ・リーが、探検先から地球に関する貴重な資料をたくさん持ち帰った。彼女は僕の友人なんだけど、鉄人兄弟を立ち上げる前に、彼女のプロジェクトに協力したこともあって……。Apexplorersは、彼女の冒険談や、環境保護データを基にした物語なんです」  鉄人兄弟時代とはかなりかけ離れたコンセプトだったため、ウィンソン自身も「環境をテーマにしてフィギュアをデザインすることが果たして正しいことなのか、迷った」という。「鉄人兄弟のスタート以降、この10年の間に、アクション・フィギュア・ブームも、何度も引き潮を迎えていたし」  しかし、ウィンソンの迷いは杞憂に終わる。 「ラッキーだよ。香港だけでなく、台湾、日本、アメリカ、中国などの市場で受け入れられ、多くのメディアが話題にしてくれた」
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「Apexplorers Fashion product 2012」(c)Winson Ma
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「hand made Adam  figure @ 2004」(c)Winson Ma
 ウィンソンに、どんなジャパニーズカルチャーの影響を受けたのか、聞いてみた。 「アニメ、SF映画にゲーム……とくに日本のキャラクターデザインとストーリー作りにはすごいものがある。例えば『Dr.スランプ』のラブリーなキャラクターとクレイジーで笑えるストーリー、『バイオハザード』のエキサイティングな展開と人物像。『AKIRA』は、アニメもコミックも、両方ヤラれました。スクリーニングの表現方法はショックの連続で、広告代理店で働いていた頃は、資料としていつも手元に置いていました」  そして、彼の敬愛する日本のアーティスト、空山基。 「すごくセクシーで、大胆なところがたまらない」
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「Ice & Laser sketch」(c)Winson Ma
 彼の描く近未来ストーリーやキャラクターの端々には、そうした要素をウィンソン流に咀嚼した片鱗がうかがえる。しかし、それはもはやジャパニーズカルチャーの模倣ではなく、ウィンソン・オリジナルになっている。  昨年、鉄人兄弟誕生10周年を記念する展覧会が香港で行われ、多くのファンが駆けつけた。そのことを喜びながらも、ウィンソンは、将来に向けての自分の計画に焦点を合わせている。目下、中国最大のウェブショップ「Taobao.com」とのコラボ企画であるApexplorersミニフィギュアがローンチを控えているという。
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「Taobao 2012 project @ China」(c)Winson Ma
「その後は、Apexplorersのエピソード2を年内に発表し、来年には、Apexplorersファッションブランドを立ち上げたい。それと並行して、中国で僕のブランドをアップグレードするために、もっとたくさんのコラボレーション企画に参加したいと考えています」  かつてウィンソンに大きな影響を与えた『AKIRA』のように、香港発のApexplorersが、さまざまなメディアを通して、中国、そして世界の人たちに衝撃を与え続けている。 (取材・文=中西多香[ASHU]) Winson-portrait.jpg ●ウィンソン・マー 香港生まれ。コマーシャル・アート業界で経験を積み、2000年にケニー・ウォン、ウィリアム・ツァンと共に鉄人兄弟(brothersfree)を設立。アクション・フィギュアのデザインや、著名ブランドとのコラボレーションに従事。05年にWinson Classic Creation設立。自身がデザインしたキャラクター「Apexplorers/Jungle」が、07年HKDA Awardsの銀賞を受賞。リーバイス、ノキア、コカ・コーラ、キヤノンなど、国内外のブランドとのコラボレーションも多く手がける。 <http://www.winsoncreation.com/> ●なかにし・たか アジアのデザイナー、アーティストの日本におけるマネジメント、プロデュースを行なう「ASHU」代表。日本のクリエーターをアジア各国に紹介するプロジェクトにも従事している。著書に『香港特別藝術区』(技術評論社)がある。<http://www.ashu-nk.com > オンラインTシャツオンデマンド「Tee Party」<http://teeparty.jp/ashu/> ■バックナンバー 【vol.27】“田名網チルドレン”続々……アジア各地で熱烈支持されるサイケデリック・マスター 【vol.26】『銀河鉄道999』はアップル並みのインパクト? 韓国の催眠術的ポートレイト 【vol.25】ネタ元は日本の特撮ヒーロー? インドネシア式ファンタジー 【vol.24】"80後"世代の代弁者 中国売れっ子写真家の「未来系アート」 【vol.23】「ヤクルトとカップヌードルに洗礼?」MOJOKOのユーモラスな世界 【vol.22】「狂気とポップカルチャーが融合!?」香港のアーティストが追求する"不完全な美" 【vol.21】「人間の欲望を視覚化?」香港人気キャラの生みの親が追求する"醜さの美学" 【vol.20】「故郷・ボルネオ島での原体験が創造力の源」世界で活躍するマレーシアの"ケンヂ" 【vol.19】「人生に起きるすべてのことを細かく観察したい」中国ネット世代のアーティスト 【vol.18】「ヒーローは宮崎駿と奈良美智」シンガポールのマルチスタイル・アーティスト 【vol.17】「ルーツは『天空の城 ラピュタ』」ウォン・カーウァイに見い出された香港の若き才能 【vol.16】怖かわいい魑魅魍魎が暴れ回る! ヤン・ウェイの妖魔的異界 【vol.15】「原点は日本のコミック」東南アジアを席巻する都会派クリエーター 【vol.14】エロ×宗教×故事が混在!? 中国版・寺山修司が造り出すカオスな世界 【vol.13】昼間はOL、夜は寡黙なアーティスト ソン・ニが描く秘密の快楽の世界 【vol.12】まるで初期アニメ ローテクを駆使する南国のアート・ユニット「トロマラマ」 【vol.11】「造形師・竹谷隆之に憧れて......」 1000の触手を持つ、マレーシアのモンスター 【vol.10】"中国のガロ系"!? 80年代以降を代表するコミック・リーダー ヤン・コン 【vol.9】大のラーメンおたく!? シンガポールデザイン界を率いる兄貴、クリス・リー 【vol.8】メイド・イン・ジャパンに憧れて...... 香港の文学系コミック作家・智海 【vol.7】「血眼になってマンガを追いかけた」海賊版文化が育んだ中国の新しい才能 【vol.6】裸人間がわらわら 香港ピクセル・アートティストが放つ"アナログデジタル"な世界 【vol.5】ダメでも笑い飛ばせ! 香港の国民性を体現したグラフィック・ノベリスト 【vol.4】「教科書はガンダムの落書きだらけだった」 香港・原色の魔術師の意外な原点 【vol.3】「懐かしいのに、新しい」 読むほどにクセになる"タイ初の日本漫画家"タムくん 【vol.2】 マイブームはBL!? 香港の腐女子が描きとめる、消えゆく都市の記憶 【vol.1】「 :phunk版ガッチャマンが作りたい」 シンガポール発のデザイン集団が描く夢

キーワードはホモソーシャルな描写!? 今夏は「乙女ゲーム原作アニメ」が熱い!

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『アルカナ・ファミリア』公式サイトより
 春アニメが続々とクライマックスを迎えるこの時期だが、我々アニメファンには終わった作品の余韻に浸る間などない。7月に入れば、また新たなアニメが次々とスタートする。  ライトノベル原作アニメが豊作ということで話題沸騰の今夏スタートのアニメ作品たちだが、この夏イチオシなのが「乙女ゲーム原作アニメ」だ。「乙女ゲーム原作アニメなんてスイーツ(笑)な女性ファンしか楽しめないんじゃないの?」と思うなかれ。女性が理想とする男性キャラが数多く登場する「乙女ゲーム原作アニメ」には、男性から見ても魅力的な要素が盛りだくさんなのだ。  大人気作品『Fate/Zero』(TOKYO MX・MBSほか)を例に挙げると、髭面マッチョなライダーと最高に守ってあげたい男性ヒロイン・ウェイバー君のカップル、もといコンビにはその熱い友情と主従関係に燃える男性ファンもいれば、思わずほっこりする二人のやり取りに萌える女性ファン(あと、腐った妄想を抱く女性ファンも……)もいるように。また、冬クール作品『男子高校生の日常』(テレビ東京系)の灰色の高校生ライフをゲラゲラ笑う男性ファンもいれば、女性がほとんど介入しない作品世界で思う存分妄想の翼を広げる女性ファンもいるように、ここ最近は以前にも増してホモソーシャルな描写を、そのベクトルは異なるとはいえ、男女問わずエンジョイするアニメファンが増えているように感じる。近年、ますます喪失されつつある力強い男性性に男性自身は憧れ、女性はそのような男性を求めているのだ! とかなんとか妄言をこれ以上重ねるとフェミニストな方々に怒られそうなので、この辺りで切り上げるとして、さっそく今夏スタートの期待の乙女ゲーム原作アニメをチェックしてみよう。  まず紹介するのは、「乙女ゲーム×少年マンガ」という文字面だけでも「ああ~」と納得できてしまうコンセプトの『アルカナ・ファミリア』(tvkほか)だ。  イタリアのとある島の自警組織「アルカナ・ファミリア」のボスの座と、次期トップの座をめぐって、「アルカナ能力」という特殊能力を操る主人公たちが「アルカナ・デュエロ」という大会でバトルを繰り広げるという、あらすじだけを見ると「どこの黄金の風だ?」と言いたくなるような本作。  男社会の中で繰り広げられるトップ争いというプロットは、少年マンガの王道。そこにヒロインとのロマンス成分をちょっぴりブレンドすることで、乙女要素も追加したという『アルカナ・ファミリア』のスタッフには、『ひぐらしのなく頃に』『のだめカンタービレ』『おとめ妖怪 ざくろ』など群像劇に定評のある今千秋監督、『とある魔術の禁書目録』シリーズのシリーズ構成を手掛けた赤星政尚など、J.C.STAFFではおなじみの実力派が並ぶ。どんなバトル・アンド・ロマンスが展開するのか、期待が募る。  そして、『薄桜鬼 黎明録』(TOKYO MXほか)も忘れてはいけない。幕末を舞台に新選組の活躍を描く本作は、2008年のゲーム第1弾の発売以来、着実にファンを増やし続け、2作のテレビアニメ、全5巻のOVAシリーズはいずれも大ヒット。10年には早乙女太一・主演で舞台化。今年4月にはミュージカルにもなるなど、破竹の快進撃を続ける人気タイトルだ。  第3シリーズとなる今回のテレビアニメシリーズは、従来のスタッフ&キャストで制作されることが発表されている。信念を貫く男たちの生き様には、男女問わず燃えること必至の本作。こちらも要チェックである。  ふだん乙女ゲーム原作アニメを見ない男性アニメファンも、この夏は思い切って新たな世界に踏み込んでみてはいかがだろうか? きっと、より豊かなアニメライフが送れるはずだ! (文=龍崎珠樹) ■バックナンバー 【第14回】「まるで90年代の夕方6時枠アニメ!?」『モーレツ宇宙海賊』の大器晩成ぶり 【第13回】もはや“声優アイドルフェス”!? アニソン重鎮不在の「アニサマ2012」に不安の声 【第12回】「期待外れ?」「これぞ京アニ?」 賛否両論『氷菓』の本当の見どころ 【第11回】「燃え上がれ、俺の小宇宙よ!」前作ファンもニヤリ『聖闘士星矢Ω』 【第10回】「見たかったのはコレジャナイ!?」声優アイドルアニメ『夏色キセキ』に早くも黄色信号 【第9回】大コケの『機動戦士ガンダムAGE』を徹底検証! 求められる新たな「ガンダム像」とは? 【第8回】アニメ業界の新トレンド!? “分割2クール作品”急増の裏事情 【第7回】ついに世代交代!? 若手アイドル声優が続々歌手デビュー 【第6回】AKB48 vs 声優アイドルユニット アニメ界もついにアイドル戦国時代突入か!? 【第5回】一流アニメファンなら女児向け作品もチェックせよ!? 『スマイルプリキュア!』 【第4回】過激なピンク描写が男子の下半身を直撃!『アマガミSS+ plus』 【第3回】今クール話題の学園モノを徹底分析!『男子高校生の日常』『Another』 【第2回】ロボット好き必見! 洗練されたメカたちが大活躍『輪廻のラグランジェ』 【第1回】水樹奈々が歌いながらバトル!? 「戦うヒロイン」アニメに大注目!

キーワードはホモソーシャルな描写!? 今夏は「乙女ゲーム原作アニメ」が熱い!

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『アルカナ・ファミリア』公式サイトより
 春アニメが続々とクライマックスを迎えるこの時期だが、我々アニメファンには終わった作品の余韻に浸る間などない。7月に入れば、また新たなアニメが次々とスタートする。  ライトノベル原作アニメが豊作ということで話題沸騰の今夏スタートのアニメ作品たちだが、この夏イチオシなのが「乙女ゲーム原作アニメ」だ。「乙女ゲーム原作アニメなんてスイーツ(笑)な女性ファンしか楽しめないんじゃないの?」と思うなかれ。女性が理想とする男性キャラが数多く登場する「乙女ゲーム原作アニメ」には、男性から見ても魅力的な要素が盛りだくさんなのだ。  大人気作品『Fate/Zero』(TOKYO MX・MBSほか)を例に挙げると、髭面マッチョなライダーと最高に守ってあげたい男性ヒロイン・ウェイバー君のカップル、もといコンビにはその熱い友情と主従関係に燃える男性ファンもいれば、思わずほっこりする二人のやり取りに萌える女性ファン(あと、腐った妄想を抱く女性ファンも……)もいるように。また、冬クール作品『男子高校生の日常』(テレビ東京系)の灰色の高校生ライフをゲラゲラ笑う男性ファンもいれば、女性がほとんど介入しない作品世界で思う存分妄想の翼を広げる女性ファンもいるように、ここ最近は以前にも増してホモソーシャルな描写を、そのベクトルは異なるとはいえ、男女問わずエンジョイするアニメファンが増えているように感じる。近年、ますます喪失されつつある力強い男性性に男性自身は憧れ、女性はそのような男性を求めているのだ! とかなんとか妄言をこれ以上重ねるとフェミニストな方々に怒られそうなので、この辺りで切り上げるとして、さっそく今夏スタートの期待の乙女ゲーム原作アニメをチェックしてみよう。  まず紹介するのは、「乙女ゲーム×少年マンガ」という文字面だけでも「ああ~」と納得できてしまうコンセプトの『アルカナ・ファミリア』(tvkほか)だ。  イタリアのとある島の自警組織「アルカナ・ファミリア」のボスの座と、次期トップの座をめぐって、「アルカナ能力」という特殊能力を操る主人公たちが「アルカナ・デュエロ」という大会でバトルを繰り広げるという、あらすじだけを見ると「どこの黄金の風だ?」と言いたくなるような本作。  男社会の中で繰り広げられるトップ争いというプロットは、少年マンガの王道。そこにヒロインとのロマンス成分をちょっぴりブレンドすることで、乙女要素も追加したという『アルカナ・ファミリア』のスタッフには、『ひぐらしのなく頃に』『のだめカンタービレ』『おとめ妖怪 ざくろ』など群像劇に定評のある今千秋監督、『とある魔術の禁書目録』シリーズのシリーズ構成を手掛けた赤星政尚など、J.C.STAFFではおなじみの実力派が並ぶ。どんなバトル・アンド・ロマンスが展開するのか、期待が募る。  そして、『薄桜鬼 黎明録』(TOKYO MXほか)も忘れてはいけない。幕末を舞台に新選組の活躍を描く本作は、2008年のゲーム第1弾の発売以来、着実にファンを増やし続け、2作のテレビアニメ、全5巻のOVAシリーズはいずれも大ヒット。10年には早乙女太一・主演で舞台化。今年4月にはミュージカルにもなるなど、破竹の快進撃を続ける人気タイトルだ。  第3シリーズとなる今回のテレビアニメシリーズは、従来のスタッフ&キャストで制作されることが発表されている。信念を貫く男たちの生き様には、男女問わず燃えること必至の本作。こちらも要チェックである。  ふだん乙女ゲーム原作アニメを見ない男性アニメファンも、この夏は思い切って新たな世界に踏み込んでみてはいかがだろうか? きっと、より豊かなアニメライフが送れるはずだ! (文=龍崎珠樹) ■バックナンバー 【第14回】「まるで90年代の夕方6時枠アニメ!?」『モーレツ宇宙海賊』の大器晩成ぶり 【第13回】もはや“声優アイドルフェス”!? アニソン重鎮不在の「アニサマ2012」に不安の声 【第12回】「期待外れ?」「これぞ京アニ?」 賛否両論『氷菓』の本当の見どころ 【第11回】「燃え上がれ、俺の小宇宙よ!」前作ファンもニヤリ『聖闘士星矢Ω』 【第10回】「見たかったのはコレジャナイ!?」声優アイドルアニメ『夏色キセキ』に早くも黄色信号 【第9回】大コケの『機動戦士ガンダムAGE』を徹底検証! 求められる新たな「ガンダム像」とは? 【第8回】アニメ業界の新トレンド!? “分割2クール作品”急増の裏事情 【第7回】ついに世代交代!? 若手アイドル声優が続々歌手デビュー 【第6回】AKB48 vs 声優アイドルユニット アニメ界もついにアイドル戦国時代突入か!? 【第5回】一流アニメファンなら女児向け作品もチェックせよ!? 『スマイルプリキュア!』 【第4回】過激なピンク描写が男子の下半身を直撃!『アマガミSS+ plus』 【第3回】今クール話題の学園モノを徹底分析!『男子高校生の日常』『Another』 【第2回】ロボット好き必見! 洗練されたメカたちが大活躍『輪廻のラグランジェ』 【第1回】水樹奈々が歌いながらバトル!? 「戦うヒロイン」アニメに大注目!

ダメ過ぎてキッチュな魅力アリ!? アルコール推奨アニメ『AKB0048』

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『AKB0048』公式サイトより
 総選挙の盛り上がり、指原莉乃のスキャンダルも記憶に新しいAKB48。CD売り上げランキング上位の大半を関連楽曲が占め続け、ドラマにCMに雑誌のグラビアにと、いまやその姿を見掛けない日はない。国内のエンターテインメント産業は、もはやAKB48なしでは回らないといっても過言ではないだろう。  そんな彼女たちの存在をアニメ業界も見逃すわけがなく、現在、『AKB0048』という、AKB48を題材にしたアニメが放送中だ。  舞台は、世界大戦を経て荒廃した地球を捨て、人類が宇宙へとその居を移した未来。AKB48は襲名制のユニット「AKB0048」へと形を変え、芸能が禁止された世界で、星から星へと芸能を届ける非合法アイドル――「会いに行けるアイドル」ではなく「会いに行くアイドル」――として活動している。テロリスト呼ばわりされ、権力による攻撃を受けながらも、練習に励み、夢と希望を高らかに歌い続けるアイドルたちの、汗と涙の日々を描いた青春スポ根美少女SFアニメ、それが『AKB0048』なのだ。  ……と、いちおう説明してみたが、正直なところ「なんのこっちゃ?」な話ではなかろうか。書いた当人もいまひとつわからないというのが本音だ。芸能禁止とはどういうことだろうか。公式サイト(http://akb0048.jp/)の用語集から説明を引けば、 「星間航法の開発により、宇宙へ生活の場を移した人類だったが、間もなくして、深銀河貿易機構(D.G.T.O)の支配・統制がはじまる。 軍事政権が実権を握る背景として、『異星人及び生命体との遭遇戦闘に備えなければならない』という考えがある。この思想の元、強固な軍隊が組織された。 また、同時に“芸能”や“歌”が『人のココロを乱すもの』として、『芸能禁止条例』や『芸能禁止法』が成立。 (中略) D.G.T.Oの勢力圏内では、芸能活動するものをテロリストと認定。それらを拘束するために強制鎮圧を行う。 そのための特殊部隊がDES(デス)である。 AKB0048のゲリラライブもDES軍の攻撃に合うことが多い。」(原文ママ)  ……だそうだが、ナチス・ドイツでもあるまいし、未来の世界ならもうちょいスマートな支配の方法があるんじゃないの? などと思ってしまうのは野暮だろうか。しかも、その設定の割に、AKB0048のメンバーはテロリストなのに日々歌と踊りのレッスンに励み、それなりに呑気に生きている。「芸能絶対防衛圏」という特区で生活しているから、ということのようだが、テロリストが潜伏しているところが特区だからといって見逃してもらえる世界観というのは、ちょっとどうだろう。随分甘い軍事政権である。  百歩譲って、そうしたSF設定を全部受け入れるとしよう。しかし、肝心のAKB0048の芸能活動描写が、AKB48にまつわるもろもろの事象からキレイな部分だけを取り出して、さらにそれを何重にもオブラートで包んだようなものであることに、やはり奇妙さを感じてしまう。『0048』の世界には、キモオタやアンチはいちおう登場する。しかし、総選挙のためにCDを大量購入するような行為は描かれないし、握手会は描かれても、ひとりで何周もするようなファンや、メンバー間での人数格差といった部分は登場しない。AKB48メンバー間の所属事務所の力関係にともなったメディア露出の多寡といった要素も出てこないし、グラビアでオナニーする童貞中高生ファンの姿も、見事に作品から捨象されている。「週刊少年マガジン」(講談社)に連載されている『AKB49~恋愛禁止条例~』ですらヌルいと思っていたが、『AKB0048』と比べればはるかにマシだ。  要するに、ライトなAKB48ファンからしてみれば基本設定のハードルが高く、コアなファンからしてみれば描写がヌルく、アニメファンからしてみればSF設定やドラマ面でツッコミどころが多く、下世話なファンからしてみればキレイごと過ぎて萎える。『AKB0048』は、そんな「誰得」なアニメになってしまっているのだ。  しかし、ここまで企画的に大外しをしていることで、逆に作品にキッチュな魅力が宿っているというのも、否定しがたいところだ。大体、数年前、秋葉原の小さな劇場で活動を始めた頃のAKB48に対するオタクの失笑ぶり(「秋元康みたいな時代遅れの男が秋葉原に目をつけたってさ。秋葉原の盛り上がりも、もう終わりかもね(笑)」「秋葉原=えーけーびー、ってセンスのないネーミングだよな(笑)」)を思い出してみれば、ある意味で、このアニメのダメっぷりはプロジェクトとして正しいような気もしてくる。ダメといえば、声のキャストとして出演しているAKBメンバーの熱演のへなちょこっぷりも味があるし。  というわけで、結論としては「見よう!」なのである。できれば、大人数でアルコールでも入れながら深夜に見るといいと思う。 (文=御船藤四郎)

「まるで90年代の夕方6時枠アニメ!?」『モーレツ宇宙海賊』の大器晩成ぶり

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StarChild『モーレツ宇宙海賊』
 番組改編期目前の6月が到来したということで、これから月末に向けて多くのアニメが続々とフィナーレを迎えることになる。その中でも、現在とくにアツい展開を見せているのが『モーレツ宇宙海賊』(MBSほか)だ。  ごく普通の女子高校生だった主人公・茉莉香が、死んだ父親が船長を務めていた海賊船・弁天丸の船長となり宇宙海賊として活躍するというスペースオペラ作品である本作は、放送開始当初こそ「地味だ」「展開が遅い」「古くさい」という意見が多勢を占め、Blu-ray&DVD第1巻の初動売り上げもそこそこヒットレベルの作品であった。  しかし、茉莉香が宇宙海賊として生きていくことを決意する序盤のヤマ場である第5話から、物語はグイグイと急展開。評判もじわじわと上昇。さらに通常は巻を追うごとに売り上げが下がっていくBlu-ray&DVDの初動売り上げ枚数は右肩上がりで増加するという、大器晩成ぶりを見せている。  そんな『モーレツ宇宙海賊』の魅力を挙げるとするならば、やはり丁寧な描写という点に尽きるだろう。何かとスピード感重視の昨今、アニメも第1話で視聴者の興味を引くようなネタを詰め込まないといけない、という暗黙の了解が制作側のみならずアニメファンの間にも定着しているように感じられるが、そんな時代の風潮に左右されることなく茉莉香が宇宙海賊になるまでを、実に序盤の5話を使ってじっくり描いている点がまず驚きである。確かにスロースタートとなった本作だが、そのおかげで茉莉香のみならず、弁天丸クルーのキャラクターもじっくり描くことが可能となり、後の物語に深みを持たせることに成功している。  また、アニメでは大ざっぱに処理されがちな電子戦や戦術、組織の描写、作品世界の歴史などをじっくりと描いている点も、スペースオペラ的に高ポイントである。練りに練られた設定や、リアルなSF描写にロマンを感じる視聴者も少なくないだろう。  これらの要素を2クールにわたってじっくり描き続けた本作は現在、物語最大のヤマ場を迎えている。海賊船を狙う謎の敵が宇宙を跋扈する中、茉莉香はスタンドプレーが基本の宇宙海賊を招集し、組織化することで状況に立ち向かおうとする。第1話ではまだどこにでもいる普通の女子高校生だった彼女が、いまや海賊たちを束ねるリーダーとして人心を集めているのだ。  物語のスタート時点からは想像もつかない展開となっているが、そこに至るまでの心情や成長が丁寧に描かれているため、この展開に違和感は少ない。むしろ茉莉香の成長ぶりに、ここまで作品に付き合ってきた視聴者は感動すら覚えるはずだ。  冒頭でも「古くさい」という視聴者のコメントもある、と紹介したが、確かに本作はテンポのいい会話劇や、女性キャラが多い作品にありがちな百合描写、カタルシスを得るためのトンデモ展開など、今のアニメならあって然るべき「お約束」は現行の他作品に比べれば少なめ。むしろ骨太なSFドラマや謀略劇。はたまた泥臭い学園ドラマなど、例えるならば「90年代の夕方6時枠」を思わせるちょっぴり懐かしい肌触りの作風となっている。だが、それをもって本作がつまらないと切り捨ててもいいのだろうか?  軽薄短小が良しとされる今のアニメシーンの中で、ここ最近は『Fate/Zero』『境界線上のホライゾン』『ヨルムンガンド』といった熱く重厚なドラマが展開されるテレビアニメが増えつつあり、好評を博している。またOVA作品の『機動戦士ガンダムUC』もガンダムブランドという強力なバックボーンもさることながら、劇中の歴史を脚本や舞台設定にうまく取り入れることでドラマに奥行きを持たせることに成功し、大ヒットを記録している。  そう考えると、じわじわと上がっている『モーレツ宇宙海賊』のソフト売り上げと評価は、見応えある丁寧な作品に対する期待と、ゆるい萌え&日常系アニメは飽きてきたよ、というアニメファンからの無言のメッセージというのは深読みのしすぎだろうか。  放送開始時点と現在の『モーレツ宇宙海賊』の評価の転換は、アニメファンの求める作品像の変化の兆しなのかもしれない。 (文=龍崎珠樹) ■バックナンバー 【第13回】もはや“声優アイドルフェス”!? アニソン重鎮不在の「アニサマ2012」に不安の声 【第12回】「期待外れ?」「これぞ京アニ?」 賛否両論『氷菓』の本当の見どころ 【第11回】「燃え上がれ、俺の小宇宙よ!」前作ファンもニヤリ『聖闘士星矢Ω』 【第10回】「見たかったのはコレジャナイ!?」声優アイドルアニメ『夏色キセキ』に早くも黄色信号 【第9回】大コケの『機動戦士ガンダムAGE』を徹底検証! 求められる新たな「ガンダム像」とは? 【第8回】アニメ業界の新トレンド!? “分割2クール作品”急増の裏事情 【第7回】ついに世代交代!? 若手アイドル声優が続々歌手デビュー 【第6回】AKB48 vs 声優アイドルユニット アニメ界もついにアイドル戦国時代突入か!? 【第5回】一流アニメファンなら女児向け作品もチェックせよ!? 『スマイルプリキュア!』 【第4回】過激なピンク描写が男子の下半身を直撃!『アマガミSS+ plus』 【第3回】今クール話題の学園モノを徹底分析!『男子高校生の日常』『Another』 【第2回】ロボット好き必見! 洗練されたメカたちが大活躍『輪廻のラグランジェ』 【第1回】水樹奈々が歌いながらバトル!? 「戦うヒロイン」アニメに大注目!

「まるで90年代の夕方6時枠アニメ!?」『モーレツ宇宙海賊』の大器晩成ぶり

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StarChild『モーレツ宇宙海賊』
 番組改編期目前の6月が到来したということで、これから月末に向けて多くのアニメが続々とフィナーレを迎えることになる。その中でも、現在とくにアツい展開を見せているのが『モーレツ宇宙海賊』(MBSほか)だ。  ごく普通の女子高校生だった主人公・茉莉香が、死んだ父親が船長を務めていた海賊船・弁天丸の船長となり宇宙海賊として活躍するというスペースオペラ作品である本作は、放送開始当初こそ「地味だ」「展開が遅い」「古くさい」という意見が多勢を占め、Blu-ray&DVD第1巻の初動売り上げもそこそこヒットレベルの作品であった。  しかし、茉莉香が宇宙海賊として生きていくことを決意する序盤のヤマ場である第5話から、物語はグイグイと急展開。評判もじわじわと上昇。さらに通常は巻を追うごとに売り上げが下がっていくBlu-ray&DVDの初動売り上げ枚数は右肩上がりで増加するという、大器晩成ぶりを見せている。  そんな『モーレツ宇宙海賊』の魅力を挙げるとするならば、やはり丁寧な描写という点に尽きるだろう。何かとスピード感重視の昨今、アニメも第1話で視聴者の興味を引くようなネタを詰め込まないといけない、という暗黙の了解が制作側のみならずアニメファンの間にも定着しているように感じられるが、そんな時代の風潮に左右されることなく茉莉香が宇宙海賊になるまでを、実に序盤の5話を使ってじっくり描いている点がまず驚きである。確かにスロースタートとなった本作だが、そのおかげで茉莉香のみならず、弁天丸クルーのキャラクターもじっくり描くことが可能となり、後の物語に深みを持たせることに成功している。  また、アニメでは大ざっぱに処理されがちな電子戦や戦術、組織の描写、作品世界の歴史などをじっくりと描いている点も、スペースオペラ的に高ポイントである。練りに練られた設定や、リアルなSF描写にロマンを感じる視聴者も少なくないだろう。  これらの要素を2クールにわたってじっくり描き続けた本作は現在、物語最大のヤマ場を迎えている。海賊船を狙う謎の敵が宇宙を跋扈する中、茉莉香はスタンドプレーが基本の宇宙海賊を招集し、組織化することで状況に立ち向かおうとする。第1話ではまだどこにでもいる普通の女子高校生だった彼女が、いまや海賊たちを束ねるリーダーとして人心を集めているのだ。  物語のスタート時点からは想像もつかない展開となっているが、そこに至るまでの心情や成長が丁寧に描かれているため、この展開に違和感は少ない。むしろ茉莉香の成長ぶりに、ここまで作品に付き合ってきた視聴者は感動すら覚えるはずだ。  冒頭でも「古くさい」という視聴者のコメントもある、と紹介したが、確かに本作はテンポのいい会話劇や、女性キャラが多い作品にありがちな百合描写、カタルシスを得るためのトンデモ展開など、今のアニメならあって然るべき「お約束」は現行の他作品に比べれば少なめ。むしろ骨太なSFドラマや謀略劇。はたまた泥臭い学園ドラマなど、例えるならば「90年代の夕方6時枠」を思わせるちょっぴり懐かしい肌触りの作風となっている。だが、それをもって本作がつまらないと切り捨ててもいいのだろうか?  軽薄短小が良しとされる今のアニメシーンの中で、ここ最近は『Fate/Zero』『境界線上のホライゾン』『ヨルムンガンド』といった熱く重厚なドラマが展開されるテレビアニメが増えつつあり、好評を博している。またOVA作品の『機動戦士ガンダムUC』もガンダムブランドという強力なバックボーンもさることながら、劇中の歴史を脚本や舞台設定にうまく取り入れることでドラマに奥行きを持たせることに成功し、大ヒットを記録している。  そう考えると、じわじわと上がっている『モーレツ宇宙海賊』のソフト売り上げと評価は、見応えある丁寧な作品に対する期待と、ゆるい萌え&日常系アニメは飽きてきたよ、というアニメファンからの無言のメッセージというのは深読みのしすぎだろうか。  放送開始時点と現在の『モーレツ宇宙海賊』の評価の転換は、アニメファンの求める作品像の変化の兆しなのかもしれない。 (文=龍崎珠樹) ■バックナンバー 【第13回】もはや“声優アイドルフェス”!? アニソン重鎮不在の「アニサマ2012」に不安の声 【第12回】「期待外れ?」「これぞ京アニ?」 賛否両論『氷菓』の本当の見どころ 【第11回】「燃え上がれ、俺の小宇宙よ!」前作ファンもニヤリ『聖闘士星矢Ω』 【第10回】「見たかったのはコレジャナイ!?」声優アイドルアニメ『夏色キセキ』に早くも黄色信号 【第9回】大コケの『機動戦士ガンダムAGE』を徹底検証! 求められる新たな「ガンダム像」とは? 【第8回】アニメ業界の新トレンド!? “分割2クール作品”急増の裏事情 【第7回】ついに世代交代!? 若手アイドル声優が続々歌手デビュー 【第6回】AKB48 vs 声優アイドルユニット アニメ界もついにアイドル戦国時代突入か!? 【第5回】一流アニメファンなら女児向け作品もチェックせよ!? 『スマイルプリキュア!』 【第4回】過激なピンク描写が男子の下半身を直撃!『アマガミSS+ plus』 【第3回】今クール話題の学園モノを徹底分析!『男子高校生の日常』『Another』 【第2回】ロボット好き必見! 洗練されたメカたちが大活躍『輪廻のラグランジェ』 【第1回】水樹奈々が歌いながらバトル!? 「戦うヒロイン」アニメに大注目!

もはや“声優アイドルフェス”!? アニソン重鎮不在の「アニサマ2012」に不安の声

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「Animelo Summer Live 」公式サイトより
 アニメソングファンの真夏の恒例イベント「Animelo Summer Live」(アニサマ)が、今年も「Animelo Summer Live 2012 -INFINITY∞-」と題して8月25日、26日の2日間にわたってさいたまスーパーアリーナで開催される。  2005年に代々木体育館にて開催された「Animelo Summer Live 2005 -THE BRIDGE-」を皮切りに、毎年動員人数を増やし続け、08年より現在のさいたまスーパーアリーナで開催。今年も2日間にわたって5万人以上の動員が予想されている。  そんな日本のアニメ文化の盛り上がりを象徴するアニサマだが、今年の出演アーティスト・ラインナップに対して、ファンから不安視する声が上がっている。  それは、まずアニサマに初回から参加し続けたJAM Projectと水樹奈々が、今年は不参加であるためだ。  JAM Projectといえば、『ドラゴンボールZ』主題歌を歌った影山ヒロノブ、『ONE PIECE』主題歌を歌ったきただにひろしなど、アニソン界の大御所が集ったボーカルユニット。二人以外にも、遠藤正明、奥井雅美、福山芳樹といった80年代から90年代にかけて多くのアニソンを歌ってきた、いわば「古き良き正統派アニソン歌手」の系譜にある存在である。  一方の水樹は、3年連続紅白歌合戦への出場を達成した、人気・実力ともに声優界の歌姫と呼べる存在である。毎回アニサマのトリを務め、いわばアニソン界のアイコン的存在である彼らが今年は不参加ということで、「一体誰が今年のアニサマのラストを務めるのか」という声がオンライン、オフライン問わずファンの間で話題となっている。  両者以上に老若男女問わず支持されるアニソン歌手はいないと言っても過言ではない。そんな彼らがいない今年のアニサマは、不完全燃焼に終わってしまうのでは……ファンが不安がるのも無理はない。  もう一点、出演アーティストの過半数が声優である、という点においても疑問の声が上がっている。  声優がCDをリリースし、ライブを行うというスタイルがかつてないほど定着した昨今、彼らが出演するアニメの主題歌を歌う機会も非常に増えてきたことから、「声優ソング」と「アニソン」が同列に語られることも珍しくなくなってきたが、やはり「プロのアニソン歌手と、歌うことが本業ではない声優の歌を一緒にはできない」と主張するファンがいるのも事実である。  とはいえ、声優がさながらアイドルのようにメディアに取り上げられる現在のアニメシーンにおいて、ストイックなアニソン歌手が駆逐され声優がシーンを席巻するのは無理からぬこと。この流れは、90年代後半から現在に至るまで続く「アイドルがドラマに出演し、その主題歌を歌う」という日本のドラマと音楽業界の関係によく似ていると感じるのは筆者だけだろうか。  さらに言えば、昨年よりとりわけ顕著になってきた、アイドル声優ユニットの出演数増加が、よりファンを不安にさせているのだろう。アイドル声優を売るためにユニットを結成し、アニソンという体で楽曲を売る。つまり、アニメのために作られた主題歌を歌う、というファンがもっとも重要視する大前提が、「アニサマ」というアニソンの祭典においても崩壊し始めている、という疑念が今年のラインナップに対する不安として現れているのではないだろうか。  しかし、「歌は世につれ」とはよく言ったもので、時代や世相が変わればはやる歌も変わる。音楽の消費のされ方も移り変わっていくものであり、アニサマの変革も時代の変化を受け入れ、イベントの新陳代謝を図っていく上で必要だったのだろう。そういう意味では、今後のアニソンのトレンドを読みとる上で、今年の「Animelo Summer Live 2012 -INFINITY∞-」は非常に重要なイベントとなるはずである。 (文=龍崎珠樹) ■バックナンバー 【第12回】「期待外れ?」「これぞ京アニ?」 賛否両論『氷菓』の本当の見どころ 【第11回】「燃え上がれ、俺の小宇宙よ!」前作ファンもニヤリ『聖闘士星矢Ω』 【第10回】「見たかったのはコレジャナイ!?」声優アイドルアニメ『夏色キセキ』に早くも黄色信号 【第9回】大コケの『機動戦士ガンダムAGE』を徹底検証! 求められる新たな「ガンダム像」とは? 【第8回】アニメ業界の新トレンド!? “分割2クール作品”急増の裏事情 【第7回】ついに世代交代!? 若手アイドル声優が続々歌手デビュー 【第6回】AKB48 vs 声優アイドルユニット アニメ界もついにアイドル戦国時代突入か!? 【第5回】一流アニメファンなら女児向け作品もチェックせよ!? 『スマイルプリキュア!』 【第4回】過激なピンク描写が男子の下半身を直撃!『アマガミSS+ plus』 【第3回】今クール話題の学園モノを徹底分析!『男子高校生の日常』『Another』 【第2回】ロボット好き必見! 洗練されたメカたちが大活躍『輪廻のラグランジェ』 【第1回】水樹奈々が歌いながらバトル!? 「戦うヒロイン」アニメに大注目!

ネクロフィリアの波がアニメにも!? ゾンビに萌えろ『さんかれあ』

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『さんかれあ』公式サイトより
 ありとあらゆる性癖を貪欲に飲み込み、一般化していく昨今の「萌え」カルチャー。たとえば、三次元でのセクシャリティは一点の曇りもなくノンケな男子が、二次元を消費する際には女装した美少年(いわゆる「男の娘」)に萌え狂っている様子も、もはや珍しい風景ではなくなった。時はまさに性器末、もとい世紀末といった感じである。21世紀はまだ最初の10年を少し過ぎたばかりだけれども。  現在放送中のアニメ『さんかれあ』(TBS系)では、特殊性癖の中でもかなりエクストリーム寄りな、ネクロフィリア(屍体愛好)が作品のテーマになっている。子供の頃からの筋金入りのゾンビ映画オタクで(余談だが、タイトルの元ネタである『サンゲリア』を筆頭に、本作にはゾンビ映画オマージュネタが満載)、ゾンビ化した女の子との恋愛願望を長年抱き続けてきた主人公が、ひょんなことからゾンビになってしまった世間知らずのお嬢様と繰り広げる、甘酸っぱくて少し切ないドキドキ同居ラブストーリーが毎週地上波でオンエアされているというのは、驚くべき事態だというほかない。もともと原作コミック(はっとりみつる作、講談社刊)が人気を集めていたとはいえ、まさに性器(以下略)である。  ……と、ひとくさり良識派ぶってみたものの、ゾンビになってしまったヒロインの散華 礼弥(さんか・れあ)ちゃんは実にかわいいのである。性格も声もかわいいが、なんといっても、ゾンビ化したことが原因の青白い肌と真っ赤な瞳がたまらない。ほかにも、死後硬直してしまったり、ときおり理性を失ってみたり、脳のリミッターが外れているせいで馬鹿力を発揮してみたり、ゾンビならではの魅力がひしひしと作品から伝わってくる。二次元の世界でなら、ネクロフィリアもいけるかもしれない。「匂い」という、リアル死姦での最大のハードルもないし。思わずそんなことを考えてしまうだけの説得力がある。  本作が初監督作である畠山守は、『荒川アンダー ザ ブリッジ』『魔法少女まどか☆マギカ』など、新房昭之監督作品に「小俣真一」名義で参加していた。色でキーアイテムを際立たせる鮮烈な色彩設計や、雄弁に情報を物語る象徴的な画面構成など、どこか新房からの影響を意識させるスタイリッシュさがあることも、ゾンビに萌えることへの抵抗感を薄れさせているように思える。  ここから、日本社会にネクロフィリアがライトなフェティッシュとして根付くのかもしれない……ゾンビ娘ブームに乗り遅れるな!  ぞんび とても いいです  かわゆい  うま (文=麻枝雅彦)