「人を食う」はOKで「おっぱいポロリ」はNG? 世界の「R-18」をTokyo Otaku Modeに聞く

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「Tokyo Otaku Mode」ホームページより。米国のフィギュア週間ランキング(2017年10月)
 日本のオタク文化はクールジャパンとして世界で大人気」――言葉としては聞くが、実態はどうなのだろうか?  日本のオタクグッズを海外に販売する通販サイト「Tokyo Otaku Mode」を2012年から運営している、Tokyo Otaku Mode Inc.共同創業者・秋山卓哉氏、MDチーム・高橋裕氏に前編(http://www.cyzo.com/2017/10/post_34943.html)から話を聞いている。こちらの後編では、「海外のオタクイベントの様子」や「世界のR-18の尺度の違い」について伺っていく。 ■海外のオタクイベントは来場者の半数近くがコスプレをしている? ――前編ではフィギュアが一番人気、と伺いましたが、Tokyo Otaku Modeでは書籍も扱っているんですか? 高橋裕氏(以下、高橋) はい。マンガではなく画集ですと、日本語のままで販売もできますので。日本のイラストレーターの画集の場合、むしろ海外のコレクターにとっては、オリジナル版である日本語の方が「コレクションとして価値がある」というのはあると思いますね。 ――「オリジナルを所有したい」というオタク、マニア心は万国共通なんですね。欧米でもオタクイベントは行われていますよね。例えば日本の『コミックマーケット』などと比べ、どのような雰囲気なのでしょうか? 高橋 海外のイベントは日本のイベントより来場者の方がコスプレをしていることが多いな、と思いますね。日本だとコスプレをする人はコスプレをしに、買い物をする人は買い物に、と目的が分かれている感じがしますが、欧米だとそこがいっしょくたになっている印象はあります。なによりコスプレをしている人数が多いですね。来場者の半数くらいがコスプレをしているようにも見えます。 ――会場は東京ビッグサイトぐらいの広さなのでしょうか? 秋山卓哉氏(以下、秋山) 大型イベントはそのくらいの会場で行っていますね。有名どころとして、ロサンゼルスで開催される『アニメエキスポ』は、4日間で30~35万人が来場するといわれています。フランスの『ジャパンエキスポ』も規模は同じくらいです。そういった大型イベントではコミケ同様、大きな企業ブースがあったりもします。日本のメーカーさん、版元さんも見かけますよ。 ――コミケが3日間で50万人強(杉並区の全人口くらい)ですから、コミケほどではないにしろ、大した動員力ですね。イベント参加者の半数近くがコスプレをしている、というのは日本だとない感覚ですよね。コスプレがここまで広がっているのはなぜだと思いますか? 高橋 米国は日本よりずっとハロウィンの文化が根付いていますから、仮装への敷居が低いというのはあると思います。オタク系イベントに限らず、スターウオーズやマーベルの新作映画が公開されると、ダースベーダーなどのコスプレをした人が映画館でずらりと並んでいたりしますから。 ――「コスプレ」というと日本が先進国のように思えますが、考えてみれば「仮装」は、ここ数年でハロウィンが一部で定着しだした日本より、米国の方がはるかに先輩ですよね。米国のオタクイベントでは、どういった日本のアニメやマンガのキャラクターがコスプレされていますか? 秋山 ほんとうに時期、トレンドによりますね。何年か前の『ニューヨークコミコン』では『進撃の巨人』が多かったです。 ■「ギャルの水着の上の部分がはだけてイヤ~ン」は、R-18か? ――Tokyo Otaku Modeでは扱わない商材はあるのでしょうか? 秋山 R-18は今のところ扱っていないですね。 ――なぜなのでしょうか? 秋山 性描写の規制は国によってルールが違いますし、国や地域によって宗教、文化的な背景や価値観に違いがあります。そのあたりを把握しないまま、相手国の文化的タブーに触れてしまえば国際問題にもなりかねません。そこまできめ細やかにみていくヒューマンリソースが今は社内にないので、そういったものに触れない範疇で扱っていますね。 ――日本の性表現はかなり過激とは言われていますよね。少女マンガでも掲載誌によってはセックスシーンがありますし。それに慣れてしまうと他国の「常識」が見えにくくなりますが、例えば他国のR-18事情はどんな感じなのでしょう? 秋山 例えば、シンガポールはヌードがNGです。 ――「ギャルの水着の上の部分がはだけてイヤ~ン」は、小学生が読むような週刊少年マンガ誌にも掲載される、古典的表現の一つですが、これもNGなんでしょうか。 秋山 NGですね。 ――「セックスシーンじゃないからいい」とか、そういう“文脈”の話ではないんですね。おっぱいポロリはアウトだと。 秋山 はい。ですので、ある一国を対象にするというのでなく、グローバルに展開するという場合「性的な表現」はとても難しい問題なんです。他にも、例えばゲームでは、結構露出度の高いコスチュームを着ている女性キャラクターがよくいますよね。 ――ビキニの水着に少し装飾がついたようなコスチュームの女性キャラクターは、「あるある」ですよね。 秋山 はい。そういったキャラクターのフィギュアを販売する際に写真つきでメルマガで告知したところ、読者である米国の子供のお母さんから「こういう情報が来ると、親としては戸惑ってしまう」というご意見をいただいたこともありました。 ――米国のAmazonを見ると『進撃の巨人』『東京喰種』が人気です。人を食うのがOKなら、ビキニみたいな衣装のひとつやふたつ……、と思ってしまいそうになりますね。 秋山 あと、日本のアニメやマンガの女性キャラクターは、特に欧米の方には幼く見えるというのもありますね。 ――小児性愛に関するさまざまな規制については、日本がゆるいのか、米国が厳しいのかというのはありますが、歴然な「差」がありますよね。 秋山 はい。グローバルに展開するサービスでは、法律の違いもそうですが、宗教観や文化の違いなどにも敏感でないといけないと思います。 ■2020年は、日本が世界に注目してもらうラストチャンス? ――Tokyo Otaku Modeさんが今後広げていきたい事業はありますか? 秋山 イベントへの出展に加え、店舗など、直接、リアルにお客様と接点を持てる場を増やしていきたいですね。 ――2020年のオリンピックに向け、日本への注目は上がっていますね。 秋山 今後数十年を見ても、2020年ほど日本が世界から注目される機会はおそらくないでしょう。2020年に向けいかに世界中の人に日本は楽しいか、また、行ってみたいと思ってもらえるかが、2020年以降においてもとても大切だと思います。このチャンスを逃さないようにしたいですね。  当社が今まで培ってきたノウハウなどを活かし、新しく海外に向けて日本のオタクグッズを製造、販売したい、という会社の支援も行っています。 ――それは「競合他社の育成」になってしまうように思えますが……? 秋山 いえ、オタクグッズは本当に商材が多彩ですから。一緒に2020年に向けて盛り上げられればと思います。 (文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/]) 「Tokyo Otaku Mode」ホームページ https://otakumode.com/

「人を食う」はOKで「おっぱいポロリ」はNG? 世界の「R-18」をTokyo Otaku Modeに聞く

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「Tokyo Otaku Mode」ホームページより。米国のフィギュア週間ランキング(2017年10月)
 日本のオタク文化はクールジャパンとして世界で大人気」――言葉としては聞くが、実態はどうなのだろうか?  日本のオタクグッズを海外に販売する通販サイト「Tokyo Otaku Mode」を2012年から運営している、Tokyo Otaku Mode Inc.共同創業者・秋山卓哉氏、MDチーム・高橋裕氏に前編(http://www.cyzo.com/2017/10/post_34943.html)から話を聞いている。こちらの後編では、「海外のオタクイベントの様子」や「世界のR-18の尺度の違い」について伺っていく。 ■海外のオタクイベントは来場者の半数近くがコスプレをしている? ――前編ではフィギュアが一番人気、と伺いましたが、Tokyo Otaku Modeでは書籍も扱っているんですか? 高橋裕氏(以下、高橋) はい。マンガではなく画集ですと、日本語のままで販売もできますので。日本のイラストレーターの画集の場合、むしろ海外のコレクターにとっては、オリジナル版である日本語の方が「コレクションとして価値がある」というのはあると思いますね。 ――「オリジナルを所有したい」というオタク、マニア心は万国共通なんですね。欧米でもオタクイベントは行われていますよね。例えば日本の『コミックマーケット』などと比べ、どのような雰囲気なのでしょうか? 高橋 海外のイベントは日本のイベントより来場者の方がコスプレをしていることが多いな、と思いますね。日本だとコスプレをする人はコスプレをしに、買い物をする人は買い物に、と目的が分かれている感じがしますが、欧米だとそこがいっしょくたになっている印象はあります。なによりコスプレをしている人数が多いですね。来場者の半数くらいがコスプレをしているようにも見えます。 ――会場は東京ビッグサイトぐらいの広さなのでしょうか? 秋山卓哉氏(以下、秋山) 大型イベントはそのくらいの会場で行っていますね。有名どころとして、ロサンゼルスで開催される『アニメエキスポ』は、4日間で30~35万人が来場するといわれています。フランスの『ジャパンエキスポ』も規模は同じくらいです。そういった大型イベントではコミケ同様、大きな企業ブースがあったりもします。日本のメーカーさん、版元さんも見かけますよ。 ――コミケが3日間で50万人強(杉並区の全人口くらい)ですから、コミケほどではないにしろ、大した動員力ですね。イベント参加者の半数近くがコスプレをしている、というのは日本だとない感覚ですよね。コスプレがここまで広がっているのはなぜだと思いますか? 高橋 米国は日本よりずっとハロウィンの文化が根付いていますから、仮装への敷居が低いというのはあると思います。オタク系イベントに限らず、スターウオーズやマーベルの新作映画が公開されると、ダースベーダーなどのコスプレをした人が映画館でずらりと並んでいたりしますから。 ――「コスプレ」というと日本が先進国のように思えますが、考えてみれば「仮装」は、ここ数年でハロウィンが一部で定着しだした日本より、米国の方がはるかに先輩ですよね。米国のオタクイベントでは、どういった日本のアニメやマンガのキャラクターがコスプレされていますか? 秋山 ほんとうに時期、トレンドによりますね。何年か前の『ニューヨークコミコン』では『進撃の巨人』が多かったです。 ■「ギャルの水着の上の部分がはだけてイヤ~ン」は、R-18か? ――Tokyo Otaku Modeでは扱わない商材はあるのでしょうか? 秋山 R-18は今のところ扱っていないですね。 ――なぜなのでしょうか? 秋山 性描写の規制は国によってルールが違いますし、国や地域によって宗教、文化的な背景や価値観に違いがあります。そのあたりを把握しないまま、相手国の文化的タブーに触れてしまえば国際問題にもなりかねません。そこまできめ細やかにみていくヒューマンリソースが今は社内にないので、そういったものに触れない範疇で扱っていますね。 ――日本の性表現はかなり過激とは言われていますよね。少女マンガでも掲載誌によってはセックスシーンがありますし。それに慣れてしまうと他国の「常識」が見えにくくなりますが、例えば他国のR-18事情はどんな感じなのでしょう? 秋山 例えば、シンガポールはヌードがNGです。 ――「ギャルの水着の上の部分がはだけてイヤ~ン」は、小学生が読むような週刊少年マンガ誌にも掲載される、古典的表現の一つですが、これもNGなんでしょうか。 秋山 NGですね。 ――「セックスシーンじゃないからいい」とか、そういう“文脈”の話ではないんですね。おっぱいポロリはアウトだと。 秋山 はい。ですので、ある一国を対象にするというのでなく、グローバルに展開するという場合「性的な表現」はとても難しい問題なんです。他にも、例えばゲームでは、結構露出度の高いコスチュームを着ている女性キャラクターがよくいますよね。 ――ビキニの水着に少し装飾がついたようなコスチュームの女性キャラクターは、「あるある」ですよね。 秋山 はい。そういったキャラクターのフィギュアを販売する際に写真つきでメルマガで告知したところ、読者である米国の子供のお母さんから「こういう情報が来ると、親としては戸惑ってしまう」というご意見をいただいたこともありました。 ――米国のAmazonを見ると『進撃の巨人』『東京喰種』が人気です。人を食うのがOKなら、ビキニみたいな衣装のひとつやふたつ……、と思ってしまいそうになりますね。 秋山 あと、日本のアニメやマンガの女性キャラクターは、特に欧米の方には幼く見えるというのもありますね。 ――小児性愛に関するさまざまな規制については、日本がゆるいのか、米国が厳しいのかというのはありますが、歴然な「差」がありますよね。 秋山 はい。グローバルに展開するサービスでは、法律の違いもそうですが、宗教観や文化の違いなどにも敏感でないといけないと思います。 ■2020年は、日本が世界に注目してもらうラストチャンス? ――Tokyo Otaku Modeさんが今後広げていきたい事業はありますか? 秋山 イベントへの出展に加え、店舗など、直接、リアルにお客様と接点を持てる場を増やしていきたいですね。 ――2020年のオリンピックに向け、日本への注目は上がっていますね。 秋山 今後数十年を見ても、2020年ほど日本が世界から注目される機会はおそらくないでしょう。2020年に向けいかに世界中の人に日本は楽しいか、また、行ってみたいと思ってもらえるかが、2020年以降においてもとても大切だと思います。このチャンスを逃さないようにしたいですね。  当社が今まで培ってきたノウハウなどを活かし、新しく海外に向けて日本のオタクグッズを製造、販売したい、という会社の支援も行っています。 ――それは「競合他社の育成」になってしまうように思えますが……? 秋山 いえ、オタクグッズは本当に商材が多彩ですから。一緒に2020年に向けて盛り上げられればと思います。 (文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/]) 「Tokyo Otaku Mode」ホームページ https://otakumode.com/

世界130カ国にオタクグッズを配送! 世界のオタク事情をTokyo Otaku Modeに聞く

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「Tokyo Otaku Mode」ホームページより。米国でも人気な『ソードアート・オンライン』の商品の一部
「日本のオタク文化はクールジャパンとして世界で大人気」――言葉としては聞くが、実態はどうなのだろうか?  どの国の人が、どんな作品の、どんなグッズを購入しているのか? 日本のオタクグッズを海外に販売する通販サイト「Tokyo Otaku Mode」を2012年から運営している、Tokyo Otaku Mode Inc.共同創業者・秋山卓哉氏、MDチーム・高橋裕氏に話を聞いた。 ■130カ国、5大陸すべてにオタクグッズ販売実績あり ――Tokyo Otaku Modeでは、どの国に対してオタクグッズを販売しているのでしょうか? 秋山卓哉氏(以下、秋山) 配送はEMS(Express Mail Service:日本郵便が提供する国際郵便サービス)を利用しており、EMSが利用できる地域であればどこでも発送可能です。すでに130カ国、5大陸すべてに配送実績があります。 ――日本が承認している国が196カ国ですから、かなりの割合ですね。アジア圏、北米、フランスなどはオタク文化の人気が高い印象がありましたが、130カ国と聞くと、想像を超えて世界中なんですね。 秋山 「こんな国名初めて見た」という国の方にも配送したことがあります。例えば、カリブ海のマルティニークっていうフランス領の島とか。 ――マルティニーク、初めて聞きました。Tokyo Otaku Modeのホームページは英語ですが、130カ国、というと英語圏でない利用者も多いかと思います。 秋山 ECサイトは、今は基本的には英語だけですね。商品点数が何万件もあるので、全てを多言語対応にするのは社内のリソース的に難しくて。決済の部分など重要な部分から多言語化を進めています。中国向けには、中国のECモールに出店しており、そちらは全て中国語対応です。 ――確かに、お金周りのことについて利用者は母国語で把握したいですよね。商品はどのエリアで特に売れているのでしょうか? 秋山 割合でいくと、北米が圧倒的です。米国が一番ですね。 ――海外の人に販売をしていて、こんなこと日本人はしないな、と思ったことはありますか? 秋山 セールをはじめたときに、セール前に買われた方が「差額を返して」と連絡してきて、驚いたことがありますね。 ■日本のオタクグッズを自由に海外で販売できるというわけではない ――オタクグッズを海外に販売するにあたって、大変なことは何でしょうか? 秋山 販売のための調整ですね。メーカーさんがマンガやアニメのキャラクターをもとにしたグッズを作るときに、版元さんにこういう商品をつくりたい、と申請するのですが、そのときに「販売する地域」も合わせて申請するのが一般的です。  メーカーさんが国内展開しか考えていない場合は、契約を見直すことが必要です。こういった手続きにはとても時間がかかってしまうんですね。  また、「この地域向けにはすでにディストリビューター(販売代理店)がいるので、現地で仕入れてください」というケースも多くあります。単純に「日本で仕入れたものを世界で自由に売れる」というわけではないのです。 ――商品一つ一つにおいて、気が遠くなるような調整が必要になるんですね。そうなると、その「契約」がネックになり扱えない商品というのも多いのでしょうね。 秋山 はい。当社は渋谷の本社のほか、米国のオレゴンにもオフィスがあります。なぜ米国にもオフィスを作ったかというと、米国で販売権を持つ卸の会社さんから仕入れ、米国内で販売するのは問題ないためです。 ――日本のオタクグッズを販売する代理店が米国に存在する、ということは米国内でオタクグッズの普及は進んでいるとも言えます。一方で、それだけでは足りないから、通販を行うTokyo Otaku Modeさんへの注文があるのでしょうね。 秋山 はい。情報はネットにより世界中に瞬時に行き渡るようになりましたが、モノはまだまだ追いついていません。ですので、「ネットで情報は見たものの、購入できる場所がないので、Tokyo Otaku Modeで取り扱って欲しい」という問い合わせはよくいただきますね。それに、オタクグッズは商材の幅がとても広いですから。 ――ネットが普及する前の「情報すら分からずもどかしい」でなく、「分かっているのに手に入れることができない」という別のもどかしさが今はあるのですね。 ■「日常系」「キャラ推し」は米国では今一つ? 世界のオタク事情 ――北米圏が売上の中心と伺いましたが、北米のオタクと日本のオタクの好みに「ずれ」を感じることはありますか? 高橋裕氏(以下、高橋) 北米では日常系や、キャラクター推しの男性向けのタイトルは爆発的にはヒットしない印象ですね。文化的に好きなキャラクターに違いがあるように感じます。一方、中国、韓国などアジア各国はだいたい日本と流行る作品は似ています。 ――そうなると、北米圏で人気の作品はなんでしょうか? 秋山 『進撃の巨人』『東京喰種』『ソードアート・オンライン』は人気が高かったです。最近ですと『僕のヒーローアカデミア』ですね。 高橋 『僕のヒーローアカデミア』は北米人気が高いですね。マーベル(『スパイダーマン』などアメコミ作品を展開する米国の出版社)の話でも、いじめられっ子がヒーローになる、という“成り上がり”は定番のストーリーです。『僕のヒーローアカデミア』は米国の文化的にフィットするものがあったのだと思います。 ――冴えない主人公が成長していく物語は、日米ともに支持される定番なのですね。では、Tokyo Otaku Modeでの人気商品は何でしょうか? 高橋 フィギュアですね。売上個数で見るとぬいぐるみも結構売れているのですが、フィギュアは単価が高いですから。売上額でのランキングの上位はフィギュアが占めています。「フィギュアは世界で人気」というのは各社さんも分かっていますので、正規のルートでフィギュアを購入できる地域は広がっています。  ただ、フィギュアの場合すごくクオリティが低い偽物もあるので、当社を含め「本物を提供している」ことがひとつの価値になると思います。フィギュアは高いものでは2万円くらいするものもあります。そうなると、正規か分からないサイトで購入するのは怖いですよね。 ――買うからには正規品が欲しいですよね。利用者の性年代などはどうなっているでしょうか? 高橋 20代が一番多く、次が10代ですね。この2世代で60%ほどを占めます。男女比は、購入で見ると男性がちょっと多いくらいですね。 ――そう考えると、女性も結構多いのですね。 * * *  後編では引き続き秋山氏と高橋氏に「海外のオタクイベントの様子」や、「日本と海外のR-18の違い」などを伺っていく。 (文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/]) 「Tokyo Otaku Mode」ホームページ https://otakumode.com/

9月25日午後8時、たつき監督はなぜツイートをしたのか──『けものフレンズ』わからなかったこと、そして、わかったこと。

9月25日午後8時、たつき監督はなぜツイートをしたのか──『けものフレンズ』わからなかったこと、そして、わかったこと。の画像1
『けものフレンズ』プロジェクト公式サイト
 大勢の人がドリンクを手にしていた。すでに次の仕事を抱えて、忙しい中で駆けつけた者。まだ、次の仕事で組む相手を探している者。いずれにしても、一つの仕事が大成功に終わったことに、万感の思いはあった。単なる生活の糧を得るための作業だったはず。それが、空前のヒットとなったのは驚きだった。自分が関わったのが、わずかの部分に過ぎないとしても、ボクは、ワタシは、ヤツガレは「アレをやったんですよ」と言えるのは、自慢だった。世の中では注目され、尊敬されるかと思いきや、内実は決して陽の当たることのない職業。「儲かりもしないのに、よくやってるよ」「どうしてそんな仕事を?」口には出さなくても、家族や友人の目が、そんな言葉を語っていることがある。でも、今回ばかりは、そんな想いも吹き飛んだ。作業の最中だって、嫌なことは数え切れないほどあった。でも、作品はヒットした。別に、作品がヒットしたからといって、自分の名前がグンと大きくクレジットされるわけではない。給料だって増えるわけじゃない。でも、作品のヒットは、そうした俗な想いを吹き飛ばしてくれるのだと思った。これから先の人生はわからない。でも、ひとまずは今日は会場に集うみんなと、一つの仕事を終えた感動を共有しよう。誰もが、そんなことを考えていた。  刹那、会場の雰囲気が変わったのは、ひとりの男が入ってきた時だった。その男……作品の立役者の一人であるアニメ制作会社・ヤオヨロズの福原慶匡。プロデューサーとして、箸にも棒にもかからない作品を、成功へと導いた中心的人物の一人。何より、そのきっかけとなった才能を見いだした人物。当然、誰もが駆け寄り、一言挨拶の言葉をかけたかったのは言うまでもない。むしろ、福原のほうが、時間の限りを尽して、スタッフ一人ひとりにねぎらいの言葉をかけて歩く立場だった。そのはずなのに、福原は、どこか声をかけづらい空気を身に纏っていた。それが、大勢の人が詰めかける会場の空気を変えているのだと、勘のよい者は気付いていた。  幾人かが、その見えない壁を乗り越えて、声をかけようと勇気を振り絞った時だった。  福原が、ポケットからスマートフォンを取り出した。着信音をオフにしていたけれども、誰かからの着信だとわかった。  こんな時に電話をかけてくるなんて、間の悪いヤツもいるものだな。勇気を振り絞った者たちは、少し遠巻きに福原の様子を見た。  でも、その見えない壁は、一瞬にして高くなったのもわかった。画面に表示される名前を見て、サッと福原の顔に沈痛の陰がかかったのである。  誰にするとなく会釈して、電話の相手に応答しながら、福原は外に出て行った。そして、そのまま3時間の宴の最中、福原が帰って来ることはなかった。 「たつき監督は、ずっと福原さんに『打ち上げにいかないでくれ』と言っていたそうなんです。でも、プロデューサーが欠席するわけにはいかないと、福原さんが打ち上げの会場に駆けつけたら、たつき監督から電話が掛かってきて……結局、誰も一言も、福原さんと話をすることができなかったんだそうです……」  関係者は、私を前に、そんな風に打ち上げで起こった顛末を語った。あの場にいた者なら、誰もが気付いていたことである。それでも、自分がそんなことを、私に話したのがバレたらどうしよう。そんな一抹の不安を抱えて、落ち着かないようだった。  何度か頷いてから、私は質問を続けた。 「その打ち上げは、何月何日に、どこで……会場は……参加した人数は……」  食らいつくように細部を尋ねた私に、この関係者は一転して態度を変えた。 「いや、それは……。ああ、彼も参加していたから……」  そうして、共通の知人でもある、もっと福原に近しい関係者の名前を挙げた。一文の得にもならないのだから、これ以上話させるな、察しろ。長年、アニメ業界の一角で、華やかな部分と、その何十倍もあるドス黒いものを見てきたことが刻まれた顔が、そんなことを語っていた。  9月25日午後8時の、ひとつのツイート。それが、すべての始まりだった。  私のTwitterのタイムラインでも、このツイートが、幾人ものアカウントを通じて流れてきた。でも、私には何も、驚きも感慨もなかった。なぜなら『けものフレンズ』という作品を、見たことがなかったからである。正確には、放送中の半ばの頃。大勢の人が『けものフレンズ』がいかに素晴らしい作品か力説していた頃に、第1話を見てみた。  いったい、なにが面白いのだろうか。まったくわからなかった。5分ほど見て、そっと画面を閉じた。その後も、夏のコミックマーケットへの、たつき監督の出展など、『けものフレンズ』という作品のムーブメント。「すっごーい」などという言い回しの流行を目にする機会は多かった。けれども、私には、なんら<ひっかかり>を感じなかった。  それは、たつき監督のツイートが騒動となり、あちこちが、その話題に埋め尽くされても同じであった。なるほど、ずいぶんと大勢の人が見ている作品だったのだな……程度に考えていた。<ひっかかり>を感じないのは、今は燃え上がっている話題も、じきに忘れられた話になっていくと思ったからだ。何かの事故調査報告書のように、明確にどこで何があったかが関係者の証言によって明らかになることはない。「御用」が当たり前のアニメ情報誌は、もちろん扱わない。数多のオタクネタを扱うネットニュースは、ネットに転がっている情報を再構成して消費し尽くすだけで終わるのだろうと。  そのはずなのに、私の中で何かの<ひっかかり>ができたのは、翌日のことだった。  翌日の午前中から、電話やLINE、Facebookのメッセンジャーで、さまざまな人が、この話題を振ってきていた。私自身、最近のアニメはさほど見てはいない。けれども、いつの頃からか親しく付き合う業界の関係者は増えた。互いに「ネタ元」であるとか、何か表では語れない問題がある時には、利用できる便利なメディアの関係者という意識もあるかもしれない。でも、そんな利用し合うような関係性であれば、長続きするはずもない。相互に、相手を信用しているからこそ、まだ表には出ていないような情報を交えながら、たわいもない話を繰り返す日常は続いている。この騒動もまた、雑談のような形で、語られていた。 「8月には、もう決まっていたんですけどね」  いつものように、LINEでアレコレと話していた関係者が『けものフレンズ』の話題になった時に、最初に語ったのは、そんな一言だった。まあ、そんなものだろう。みんな本当に『けものフレンズ』の話題が好きだな……。そんな感じで、あまり興味なく「へえ」とか「うむ」とか返事をしていた。でも、打ち上げで起こった顛末が、LINE上に表示された時に、突然、私の<ひっかかり>が、噴出した。インターネットの中で展開する世論は、この騒動の原因を求めて止まなかった。どうして、たつき監督が降板しなくてはならなかったのか。「戦犯」は誰なのか。  KADOKAWAが悪い。いや、ヤオヨロズに問題があった。はたまた、総監督としてクレジットされている吉崎観音が悪い。その間には、多くのノイズもあった。あるアニメ関連企業に所属する人物は、ほかの作品で、KADOKAWAの対応の悪さにイラついたことを語る。ヤオヨロズの親会社であるジャストプロの体質から語り始める者もいた。だが、そんなことは、私にはどうでもいいことだった。私が感じた<ひっかかり>は、ただ一つのことだけだった。  なぜ、たつき監督は、あんなツイートをしてしまったのか。  そのことだけを知りたいと思った。  打ち上げの顛末を聞いた時に、こんな文章が頭に浮かんだ。  ……どうしても、気持ちの整理が出来なかった。なぜ、福原さんは打ち上げに行ってしまったのか。俺の気持ちをわかってくれなかったのか。最初に出会った時の、福原さんの顔が、幾度も浮かんでは消えていった。名刺を渡された時は半信半疑だった。でも、何度か出会い、話をするうちに気持ちは変わっていった。この人は、俺の作品をもっと大勢の人が見てくれる機会を与えてくれる人だ。俺のために、こんなにも時間を割いて、魂を捧げてくれる。だから、俺もその想いに応えたい。そう思って頑張ってきた。そして、俺の心血を注いだ作品は、大ヒットした。自分の人生の大切な時間を刻んで注いだ魂。俺の魂の欠片が溶け込んでいるから、あんなにみんなが賞讃してくれる作品になったんだ。なのに、どこか置いてけぼりな感じがする。もっと、もっと『けものフレンズ』でやりたいことがある。やりたいことが多くて、いつも身体は熱くなってしまう。人生には限られた時間しかない。だから、この熱が冷めてしまわないうちに、1日でも早く、いま、自分の身体の中に渦巻いている熱を作品にしたい。でも、それをしようと思うと待ったがかけられる。福原さんも、そうだ。俺のことを信じて、俺の情熱を愛してくれているはずなのに。「作品がヒットしたのは、俺がいたからでしょう」そんな思い上がったことを言うつもりはない。わかっている。アニメには製作委員会というものがあって、いろんな会社が出資していて……。でも、福原さんは、ヒットすればするほど、グチャグチャになる俺の心を理解して、寄り添っていてくれているのだと信じていたのに。信頼という2文字が、今はとても憎い……。ふと、気がつくと、グチャグチャなまま、スマホの住所録から、福原さんの番号を表示させ、赤い電話のマークを押していた。数回のコール。少し焦った口調で福原さんは電話に出た……。  打ち上げに出席していた関係者。中でも、福原と関係の深い人物。思いあたったのは、打ち上げの顛末を教えてくれた関係者が口にしたのと同じ名前だった。電話をするべきか、メールを送るべきか。逡巡してから、LINEにすることにした。オタク業界の片隅で、真冬でも夏のように熱い情熱を燃やしているこの男。幸いにして彼のほうから、幾つかのメディアの報道について、彼視点での感想を話しかけてきていたからだ。  何か、いろいろと話したいことがあるのに、話せないのか。LINEだというのに、いくつかの長文を送ってきた彼への返事を短文で送った。 「というか、福原さん紹介してください。ちゃんとしたルポを書きましょう」  すぐに返事が来た。 「いやー福原さんめっちゃちゃんとしてたからなぁ。あれをハンドリング不足というのは僕にはできない」  そんなことは、どうでもいいこと。私が知りたいのは、たつき監督の内面の紀行なのだ。そういうことを、何度かに分けて、LINEで読みやすいように、少し文章を短くして送った。はぐらかすようなやりとりが何度か続いて、既読スルーになった。  翌日、別の話題をLINEで話しかけてみると、愉快な返事が来た。既読スルーにしている理由は、明らかだった。  また、取材は行き詰まった。  でも、その間に、もう一人の事情を知っているはずの関係者に思い当たっていた。すぐに、コンタクトを取ってみた。 「おっさんから、一言……勘違いにも、ほどがある」  いつも、資料がパンパンに詰まった鞄を抱えて、あちこちの会社と会議の日々を送っている彼は、私が聞いた限り関係者としては初めて、たつき監督批判を口にした。もちろん、その前に『けものフレンズ』が多くの問題を抱えた作品だったことも、きちんと語ってくれていた。  アニメがヒットするまで『けものフレンズ』は、完全に失敗したコンテンツであった。 「関係者なら知っていますが、もともと『けものフレンズ』は、某社が立案した吉崎観音先生案件だったわけです。でも、ご存じのようにコケにコケまくっていました。ゲームは2016年末で終了してしまうというのに、アニメは2017年……」  製作委員会に出資する各社の分担で、KADOKAWAが版権窓口になっていた。なったものの、実質的な業務など、ほとんどないだろうと思われていた。とりあえず、スケジュール通り、アニメを放送するだけ。あとは、互いに損の少ないように、うまく畳むだけ。だらだらと、どうでもいいような会議も打ち合わせも少ない。でも、顔を合わせる時間が少ないだけに、必要なコミュニケーションも取ることはできていなかった。どうせ、終わるコンテンツなのだから、精緻な座組も必要ではないと思っていた。  なのに作品はヒットしてしまった。それは、天の采配だったのか。たつき監督の才能ゆえだったのか。おそらく、後者による部分は大きかっただろう。ここで不幸だったのは、たつき監督が自由に暴走した果てに、目を見張るような作品を生み出す才能の持ち主だったことだった。コントロール不能。誰も止めることはできない。製作委員会の中には、その才能の裏にある危険が見えていた人も、いたかもしれない。でも、幕を下ろす準備のままに進んでいた座組では、それを止めることはできなかった。 「才能があるのでしたら、周囲に実害が出ない場所で活躍してほしいですね。実害を被るのは、普通の人なので……」  ふと、彼が漏らした言葉に、すべての問題が集約されていると思った。自由に作品をつくることができたのは、たつき監督にとっては、幸運でもあったし不幸でもあったのだと思った。 「なんとか、もっとディテールを知りたいのですが……」  いつも、ルポルタージュが出来上がっていく過程には、先人たちの膨大な作品群がある。今、自分が試している方法論は、それらを現代風に仕立て直したものに、ほかならない。その時、私の脳裏にあったのは、かれこれ50年以上前に「エスクワイア」に掲載された、ゲイ・タリーズの『フランク・シナトラは風邪をひいている。』であった。はるばる西海岸にやってきたのに、シナトラにインタヴューを断られたタリーズ。でも、始まりはそこからだった。タリーズは、シナトラを知る膨大な数の人々に出会い、シナトラの人物像を生き生きと描いた。その偉大な書き手の手法を援用すれば、福原にも、たつき監督にも会えずとも、どうにかなるのではないかと思った。 「やってみましょう」  そして、数日が流れた。まったく芳しくない答えが返ってきた。 「ダメですね。ちょっと話題に出そうしても、みんな口ごもるんですよ。どうも『週刊文春』が動いているみたいで……」  取材は、もう無理だと思った。彼は、こう言葉を続けた。 「ところで、たつき監督にはコンタクトは取りました?」  返事は来ないと思ったけれども、メールだけは送っていた。記事にするかどうかもわからないが、あなたに会ってみたいと記して。当然、返事は来ていなかった。きっと膨大なファン、そして、メディアが送ったであろうメールの中に埋もれているのだろうと思っていた。  ここで一旦取材は諦めることにした。それから数日後、ポツポツと情報を教えてくれた中の幾人かと、なんとはなしに会って飲むことになった。  中央線沿線の駅前にある古ぼけた飲食街。その片隅にある場末感の漂う焼き鳥屋に、私たちは集まった。最近のエロレイヤー事情だとか、口説いている声優の話だとか、その場限りの笑い話で、こわばった身体をほぐしていた。  ふと、隣の席を見た。四人掛けの席の、壁側のほうに一人、引き締まった身体の見栄えだけはいい、30歳くらいの男が座っていた。向かいには、平凡な雰囲気のロングヘアの若い女を挟むようにして、気弱そうな髭面の若い男と、虚勢を張った金髪の、そばかすが目立つ男が座っていた。劇団員か何かだろうかと思った。 「俺さあ、みんな東大とか当たり前に行く高校に通ってたんだよ。俺だけだぜ、大学に行かなかったのは~」  見栄えだけはよい男の自慢話を、窮屈に座った男女3人は、有り難そうに聞いていた。でも、3人が本当に見ているものは、まったく違っているように見えた。女は、見栄えだけいい男から、何かを得ようと虎視眈々と狙っているようだった。髭面は、自慢話を腹の中ではバカにしていた。そして、金髪は、早く帰りたそうにしていた。 「ああ、これだ」  私の中で、たつき監督のツイートに至る光景が浮かんだ。それは、私自身の人生での、痛い思い出とリンクして。  人生論をぶつまでもない。人は誰もが、実力を過信するものだ。とりわけ、努力の結果を成し遂げた時はそうだ。私も、それで幾度か失敗と反省をしている。格段に楽なものとはいえ、倍率の高い試験を突破して東京大学大学院情報学環教育部に入学した時のこと。あるいは過去、ほかの仕事を断ってまで心血を注いだ本を上梓した時のこと。自分の成果を自分で誇り、もっと賞讃されたいと思った時に、他人はそうは思ってくれないものだ。その浮ついた気持ちは、注意されても気づかない。むしろ、思ったように賞讃してくれない周囲には憎しみが募り、真摯な忠告も耳には入らなくなる。それはやがて、悲惨な末路へと至る。失うものなど、ないはずがないのに。すべてを失った気分になって、破壊をしたくなる衝動へと至るのだ。  あの、9月25日の、たつき監督のツイートは、まさにそれだったのだ。  でも、それから僅かな時間の間に、たつき監督は自身の愚かさに気づき、成長したのだろうか。  10月9日の、たつき監督のツイートを見て、そう思った。  黒も白もなく。すべては、人が何かを成し遂げたいという思いゆえのこと。誰かを名指しして、あげつらうことなどできようはずもない。  ただ、いつかは、たつき監督の心の旅路を彼自身の口から聞いてみたいと思っている。 (取材・文=昼間たかし)

9月25日午後8時、たつき監督はなぜツイートをしたのか──『けものフレンズ』わからなかったこと、そして、わかったこと。

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『けものフレンズ』プロジェクト公式サイト
 大勢の人がドリンクを手にしていた。すでに次の仕事を抱えて、忙しい中で駆けつけた者。まだ、次の仕事で組む相手を探している者。いずれにしても、一つの仕事が大成功に終わったことに、万感の思いはあった。単なる生活の糧を得るための作業だったはず。それが、空前のヒットとなったのは驚きだった。自分が関わったのが、わずかの部分に過ぎないとしても、ボクは、ワタシは、ヤツガレは「アレをやったんですよ」と言えるのは、自慢だった。世の中では注目され、尊敬されるかと思いきや、内実は決して陽の当たることのない職業。「儲かりもしないのに、よくやってるよ」「どうしてそんな仕事を?」口には出さなくても、家族や友人の目が、そんな言葉を語っていることがある。でも、今回ばかりは、そんな想いも吹き飛んだ。作業の最中だって、嫌なことは数え切れないほどあった。でも、作品はヒットした。別に、作品がヒットしたからといって、自分の名前がグンと大きくクレジットされるわけではない。給料だって増えるわけじゃない。でも、作品のヒットは、そうした俗な想いを吹き飛ばしてくれるのだと思った。これから先の人生はわからない。でも、ひとまずは今日は会場に集うみんなと、一つの仕事を終えた感動を共有しよう。誰もが、そんなことを考えていた。  刹那、会場の雰囲気が変わったのは、ひとりの男が入ってきた時だった。その男……作品の立役者の一人であるアニメ制作会社・ヤオヨロズの福原慶匡。プロデューサーとして、箸にも棒にもかからない作品を、成功へと導いた中心的人物の一人。何より、そのきっかけとなった才能を見いだした人物。当然、誰もが駆け寄り、一言挨拶の言葉をかけたかったのは言うまでもない。むしろ、福原のほうが、時間の限りを尽して、スタッフ一人ひとりにねぎらいの言葉をかけて歩く立場だった。そのはずなのに、福原は、どこか声をかけづらい空気を身に纏っていた。それが、大勢の人が詰めかける会場の空気を変えているのだと、勘のよい者は気付いていた。  幾人かが、その見えない壁を乗り越えて、声をかけようと勇気を振り絞った時だった。  福原が、ポケットからスマートフォンを取り出した。着信音をオフにしていたけれども、誰かからの着信だとわかった。  こんな時に電話をかけてくるなんて、間の悪いヤツもいるものだな。勇気を振り絞った者たちは、少し遠巻きに福原の様子を見た。  でも、その見えない壁は、一瞬にして高くなったのもわかった。画面に表示される名前を見て、サッと福原の顔に沈痛の陰がかかったのである。  誰にするとなく会釈して、電話の相手に応答しながら、福原は外に出て行った。そして、そのまま3時間の宴の最中、福原が帰って来ることはなかった。 「たつき監督は、ずっと福原さんに『打ち上げにいかないでくれ』と言っていたそうなんです。でも、プロデューサーが欠席するわけにはいかないと、福原さんが打ち上げの会場に駆けつけたら、たつき監督から電話が掛かってきて……結局、誰も一言も、福原さんと話をすることができなかったんだそうです……」  関係者は、私を前に、そんな風に打ち上げで起こった顛末を語った。あの場にいた者なら、誰もが気付いていたことである。それでも、自分がそんなことを、私に話したのがバレたらどうしよう。そんな一抹の不安を抱えて、落ち着かないようだった。  何度か頷いてから、私は質問を続けた。 「その打ち上げは、何月何日に、どこで……会場は……参加した人数は……」  食らいつくように細部を尋ねた私に、この関係者は一転して態度を変えた。 「いや、それは……。ああ、彼も参加していたから……」  そうして、共通の知人でもある、もっと福原に近しい関係者の名前を挙げた。一文の得にもならないのだから、これ以上話させるな、察しろ。長年、アニメ業界の一角で、華やかな部分と、その何十倍もあるドス黒いものを見てきたことが刻まれた顔が、そんなことを語っていた。  9月25日午後8時の、ひとつのツイート。それが、すべての始まりだった。  私のTwitterのタイムラインでも、このツイートが、幾人ものアカウントを通じて流れてきた。でも、私には何も、驚きも感慨もなかった。なぜなら『けものフレンズ』という作品を、見たことがなかったからである。正確には、放送中の半ばの頃。大勢の人が『けものフレンズ』がいかに素晴らしい作品か力説していた頃に、第1話を見てみた。  いったい、なにが面白いのだろうか。まったくわからなかった。5分ほど見て、そっと画面を閉じた。その後も、夏のコミックマーケットへの、たつき監督の出展など、『けものフレンズ』という作品のムーブメント。「すっごーい」などという言い回しの流行を目にする機会は多かった。けれども、私には、なんら<ひっかかり>を感じなかった。  それは、たつき監督のツイートが騒動となり、あちこちが、その話題に埋め尽くされても同じであった。なるほど、ずいぶんと大勢の人が見ている作品だったのだな……程度に考えていた。<ひっかかり>を感じないのは、今は燃え上がっている話題も、じきに忘れられた話になっていくと思ったからだ。何かの事故調査報告書のように、明確にどこで何があったかが関係者の証言によって明らかになることはない。「御用」が当たり前のアニメ情報誌は、もちろん扱わない。数多のオタクネタを扱うネットニュースは、ネットに転がっている情報を再構成して消費し尽くすだけで終わるのだろうと。  そのはずなのに、私の中で何かの<ひっかかり>ができたのは、翌日のことだった。  翌日の午前中から、電話やLINE、Facebookのメッセンジャーで、さまざまな人が、この話題を振ってきていた。私自身、最近のアニメはさほど見てはいない。けれども、いつの頃からか親しく付き合う業界の関係者は増えた。互いに「ネタ元」であるとか、何か表では語れない問題がある時には、利用できる便利なメディアの関係者という意識もあるかもしれない。でも、そんな利用し合うような関係性であれば、長続きするはずもない。相互に、相手を信用しているからこそ、まだ表には出ていないような情報を交えながら、たわいもない話を繰り返す日常は続いている。この騒動もまた、雑談のような形で、語られていた。 「8月には、もう決まっていたんですけどね」  いつものように、LINEでアレコレと話していた関係者が『けものフレンズ』の話題になった時に、最初に語ったのは、そんな一言だった。まあ、そんなものだろう。みんな本当に『けものフレンズ』の話題が好きだな……。そんな感じで、あまり興味なく「へえ」とか「うむ」とか返事をしていた。でも、打ち上げで起こった顛末が、LINE上に表示された時に、突然、私の<ひっかかり>が、噴出した。インターネットの中で展開する世論は、この騒動の原因を求めて止まなかった。どうして、たつき監督が降板しなくてはならなかったのか。「戦犯」は誰なのか。  KADOKAWAが悪い。いや、ヤオヨロズに問題があった。はたまた、総監督としてクレジットされている吉崎観音が悪い。その間には、多くのノイズもあった。あるアニメ関連企業に所属する人物は、ほかの作品で、KADOKAWAの対応の悪さにイラついたことを語る。ヤオヨロズの親会社であるジャストプロの体質から語り始める者もいた。だが、そんなことは、私にはどうでもいいことだった。私が感じた<ひっかかり>は、ただ一つのことだけだった。  なぜ、たつき監督は、あんなツイートをしてしまったのか。  そのことだけを知りたいと思った。  打ち上げの顛末を聞いた時に、こんな文章が頭に浮かんだ。  ……どうしても、気持ちの整理が出来なかった。なぜ、福原さんは打ち上げに行ってしまったのか。俺の気持ちをわかってくれなかったのか。最初に出会った時の、福原さんの顔が、幾度も浮かんでは消えていった。名刺を渡された時は半信半疑だった。でも、何度か出会い、話をするうちに気持ちは変わっていった。この人は、俺の作品をもっと大勢の人が見てくれる機会を与えてくれる人だ。俺のために、こんなにも時間を割いて、魂を捧げてくれる。だから、俺もその想いに応えたい。そう思って頑張ってきた。そして、俺の心血を注いだ作品は、大ヒットした。自分の人生の大切な時間を刻んで注いだ魂。俺の魂の欠片が溶け込んでいるから、あんなにみんなが賞讃してくれる作品になったんだ。なのに、どこか置いてけぼりな感じがする。もっと、もっと『けものフレンズ』でやりたいことがある。やりたいことが多くて、いつも身体は熱くなってしまう。人生には限られた時間しかない。だから、この熱が冷めてしまわないうちに、1日でも早く、いま、自分の身体の中に渦巻いている熱を作品にしたい。でも、それをしようと思うと待ったがかけられる。福原さんも、そうだ。俺のことを信じて、俺の情熱を愛してくれているはずなのに。「作品がヒットしたのは、俺がいたからでしょう」そんな思い上がったことを言うつもりはない。わかっている。アニメには製作委員会というものがあって、いろんな会社が出資していて……。でも、福原さんは、ヒットすればするほど、グチャグチャになる俺の心を理解して、寄り添っていてくれているのだと信じていたのに。信頼という2文字が、今はとても憎い……。ふと、気がつくと、グチャグチャなまま、スマホの住所録から、福原さんの番号を表示させ、赤い電話のマークを押していた。数回のコール。少し焦った口調で福原さんは電話に出た……。  打ち上げに出席していた関係者。中でも、福原と関係の深い人物。思いあたったのは、打ち上げの顛末を教えてくれた関係者が口にしたのと同じ名前だった。電話をするべきか、メールを送るべきか。逡巡してから、LINEにすることにした。オタク業界の片隅で、真冬でも夏のように熱い情熱を燃やしているこの男。幸いにして彼のほうから、幾つかのメディアの報道について、彼視点での感想を話しかけてきていたからだ。  何か、いろいろと話したいことがあるのに、話せないのか。LINEだというのに、いくつかの長文を送ってきた彼への返事を短文で送った。 「というか、福原さん紹介してください。ちゃんとしたルポを書きましょう」  すぐに返事が来た。 「いやー福原さんめっちゃちゃんとしてたからなぁ。あれをハンドリング不足というのは僕にはできない」  そんなことは、どうでもいいこと。私が知りたいのは、たつき監督の内面の紀行なのだ。そういうことを、何度かに分けて、LINEで読みやすいように、少し文章を短くして送った。はぐらかすようなやりとりが何度か続いて、既読スルーになった。  翌日、別の話題をLINEで話しかけてみると、愉快な返事が来た。既読スルーにしている理由は、明らかだった。  また、取材は行き詰まった。  でも、その間に、もう一人の事情を知っているはずの関係者に思い当たっていた。すぐに、コンタクトを取ってみた。 「おっさんから、一言……勘違いにも、ほどがある」  いつも、資料がパンパンに詰まった鞄を抱えて、あちこちの会社と会議の日々を送っている彼は、私が聞いた限り関係者としては初めて、たつき監督批判を口にした。もちろん、その前に『けものフレンズ』が多くの問題を抱えた作品だったことも、きちんと語ってくれていた。  アニメがヒットするまで『けものフレンズ』は、完全に失敗したコンテンツであった。 「関係者なら知っていますが、もともと『けものフレンズ』は、某社が立案した吉崎観音先生案件だったわけです。でも、ご存じのようにコケにコケまくっていました。ゲームは2016年末で終了してしまうというのに、アニメは2017年……」  製作委員会に出資する各社の分担で、KADOKAWAが版権窓口になっていた。なったものの、実質的な業務など、ほとんどないだろうと思われていた。とりあえず、スケジュール通り、アニメを放送するだけ。あとは、互いに損の少ないように、うまく畳むだけ。だらだらと、どうでもいいような会議も打ち合わせも少ない。でも、顔を合わせる時間が少ないだけに、必要なコミュニケーションも取ることはできていなかった。どうせ、終わるコンテンツなのだから、精緻な座組も必要ではないと思っていた。  なのに作品はヒットしてしまった。それは、天の采配だったのか。たつき監督の才能ゆえだったのか。おそらく、後者による部分は大きかっただろう。ここで不幸だったのは、たつき監督が自由に暴走した果てに、目を見張るような作品を生み出す才能の持ち主だったことだった。コントロール不能。誰も止めることはできない。製作委員会の中には、その才能の裏にある危険が見えていた人も、いたかもしれない。でも、幕を下ろす準備のままに進んでいた座組では、それを止めることはできなかった。 「才能があるのでしたら、周囲に実害が出ない場所で活躍してほしいですね。実害を被るのは、普通の人なので……」  ふと、彼が漏らした言葉に、すべての問題が集約されていると思った。自由に作品をつくることができたのは、たつき監督にとっては、幸運でもあったし不幸でもあったのだと思った。 「なんとか、もっとディテールを知りたいのですが……」  いつも、ルポルタージュが出来上がっていく過程には、先人たちの膨大な作品群がある。今、自分が試している方法論は、それらを現代風に仕立て直したものに、ほかならない。その時、私の脳裏にあったのは、かれこれ50年以上前に「エスクワイア」に掲載された、ゲイ・タリーズの『フランク・シナトラは風邪をひいている。』であった。はるばる西海岸にやってきたのに、シナトラにインタヴューを断られたタリーズ。でも、始まりはそこからだった。タリーズは、シナトラを知る膨大な数の人々に出会い、シナトラの人物像を生き生きと描いた。その偉大な書き手の手法を援用すれば、福原にも、たつき監督にも会えずとも、どうにかなるのではないかと思った。 「やってみましょう」  そして、数日が流れた。まったく芳しくない答えが返ってきた。 「ダメですね。ちょっと話題に出そうしても、みんな口ごもるんですよ。どうも『週刊文春』が動いているみたいで……」  取材は、もう無理だと思った。彼は、こう言葉を続けた。 「ところで、たつき監督にはコンタクトは取りました?」  返事は来ないと思ったけれども、メールだけは送っていた。記事にするかどうかもわからないが、あなたに会ってみたいと記して。当然、返事は来ていなかった。きっと膨大なファン、そして、メディアが送ったであろうメールの中に埋もれているのだろうと思っていた。  ここで一旦取材は諦めることにした。それから数日後、ポツポツと情報を教えてくれた中の幾人かと、なんとはなしに会って飲むことになった。  中央線沿線の駅前にある古ぼけた飲食街。その片隅にある場末感の漂う焼き鳥屋に、私たちは集まった。最近のエロレイヤー事情だとか、口説いている声優の話だとか、その場限りの笑い話で、こわばった身体をほぐしていた。  ふと、隣の席を見た。四人掛けの席の、壁側のほうに一人、引き締まった身体の見栄えだけはいい、30歳くらいの男が座っていた。向かいには、平凡な雰囲気のロングヘアの若い女を挟むようにして、気弱そうな髭面の若い男と、虚勢を張った金髪の、そばかすが目立つ男が座っていた。劇団員か何かだろうかと思った。 「俺さあ、みんな東大とか当たり前に行く高校に通ってたんだよ。俺だけだぜ、大学に行かなかったのは~」  見栄えだけはよい男の自慢話を、窮屈に座った男女3人は、有り難そうに聞いていた。でも、3人が本当に見ているものは、まったく違っているように見えた。女は、見栄えだけいい男から、何かを得ようと虎視眈々と狙っているようだった。髭面は、自慢話を腹の中ではバカにしていた。そして、金髪は、早く帰りたそうにしていた。 「ああ、これだ」  私の中で、たつき監督のツイートに至る光景が浮かんだ。それは、私自身の人生での、痛い思い出とリンクして。  人生論をぶつまでもない。人は誰もが、実力を過信するものだ。とりわけ、努力の結果を成し遂げた時はそうだ。私も、それで幾度か失敗と反省をしている。格段に楽なものとはいえ、倍率の高い試験を突破して東京大学大学院情報学環教育部に入学した時のこと。あるいは過去、ほかの仕事を断ってまで心血を注いだ本を上梓した時のこと。自分の成果を自分で誇り、もっと賞讃されたいと思った時に、他人はそうは思ってくれないものだ。その浮ついた気持ちは、注意されても気づかない。むしろ、思ったように賞讃してくれない周囲には憎しみが募り、真摯な忠告も耳には入らなくなる。それはやがて、悲惨な末路へと至る。失うものなど、ないはずがないのに。すべてを失った気分になって、破壊をしたくなる衝動へと至るのだ。  あの、9月25日の、たつき監督のツイートは、まさにそれだったのだ。  でも、それから僅かな時間の間に、たつき監督は自身の愚かさに気づき、成長したのだろうか。  10月9日の、たつき監督のツイートを見て、そう思った。  黒も白もなく。すべては、人が何かを成し遂げたいという思いゆえのこと。誰かを名指しして、あげつらうことなどできようはずもない。  ただ、いつかは、たつき監督の心の旅路を彼自身の口から聞いてみたいと思っている。 (取材・文=昼間たかし)

『けものフレンズ』監督解任騒動が山崎賢人&広瀬アリス出演映画にも波及!?「けもフレとセフレで……」

『けものフレンズ』監督解任騒動が山崎賢人&広瀬アリス出演映画にも波及!?「けもフレとセフレで……」の画像1
映画『氷菓』公式サイトより
 アニメの話だけで済めばいいが……。9月25日、人気アニメ『けものフレンズ』(テレビ東京系)を手がけた、たつき監督が制作から外れることを自身のTwitterで発表し、大騒動となっている。 「たつき監督は『残念』と述べ、解任された理由について、アニメの権利を持つ『カドカワさん方面よりのお達しみたい』だったと説明したため、ファンは大激怒。同社には抗議電話が殺到し、東証のKADOKAWA株も軟調に。すると2日後に、製作委員会が声明を発表。『アニメーション制作を担当していたヤオヨロズ(編註: たつき監督の所属会社)側に、関係各所への情報共有や連絡がないままでの作品利用があった』と反論し、両者の言い分は食い違いを見せています」(芸能ライター)  製作委員会が声明を出した後も、依然としてKADOKAWAへの批判は収まらず、同社のウィキペディアには「指定暴力団」「爆破するしかないところ」といった過激な書き込みが1分ごとに更新される始末。あげくには、KADOKAWAの関連商品の不買を呼びかけるツイートが拡散し続けている。  そんな中、戦々恐々となっているのが、角川映画に出演するタレントを抱える芸能関係者だという。映画ライターが明かす。 「11月3日に公開される山崎賢人と広瀬アリスのダブル主演の『氷菓』は、2012年にアニメ化されたことで熱狂的なファンも多い。実写化するにあたって配給のKADOKAWAも、かなり力を入れていた。もし、『けものフレンズ』ファンの不買運動が想定以上の広がりを見せれば、実写作品までも敬遠されてしまう可能性もあります。正直、関係者らは“勘弁してくれ”という心境でしょう。また、『氷菓』には“顔面パンティ不倫”で話題を呼んだ斉藤由貴も出演しています。『けもフレ』と『セフレ』で足を引っ張られるとは、皮肉なものですね」  若者から絶大な支持を受ける山崎&広瀬コンビによるミステリー映画。もし、コケたとしたら、その謎はあっさり解けそうだ。

『けもフレ』たつき監督降板騒動で甦る25年前の怒り……誰ひとり「コミックコンプ」の恨みは忘れちゃいない!!

『けもフレ』たつき監督降板騒動で甦る25年前の怒り……誰ひとり「コミックコンプ」の恨みは忘れちゃいない!!の画像1
『宇宙英雄物語 1』(KADOKAWA)
 一大騒動となっている、アニメ『けものフレンズ』たつき監督降板騒動。ファンの怒りは日本だけでなく世界へと広がり、署名活動も始まった。降板が明らかになった直後から、ニコニコ動画のプレミアム会員解約をツイートする人も急増。カドカワ株式会社の株価が一時急落する事態ともなり、投資家の注目を集めている。  この騒動と共に、30代後半以上のファンが思い出すのが、あの忌まわしい25年前の記憶である。  それは、1992年12月のこと。  当時、角川書店の最有力マンガ月刊誌であった「月刊コミックコンプ」の発売日を、読者は今か今かと待っていた。何しろ『サイレントメビウス』は、ロイが殺され香津美が失踪する急展開。いよいよ連載も佳境に入った『宇宙英雄物語』は、アニメ化も発表されて徐々に情報が解禁されていたからだ。  だが、発売日。ワクワクしながらページを開いた読者は凍り付き、しばらく事態を飲み込めなかった。楽しみにしていたはずの連載が『銀河戦国群雄伝ライ』を除いては、掲載されていない。その代わりに、なんだかよくわからないマンガばかりでページが埋められている。記事ページに掲載されている編集者の名前も、まったく知らないものになっている。  事態がのみ込めず、唖然とする読者の目に飛び込んできたのは、書店でその横に陳列されていた、見たことのない雑誌「月刊電撃コミックGAO!」。何かを感じて、そちらのページをめくってみると「コンプ」に載っていたハズの連載が、タイトルを微妙に弄ったりして、そのまま掲載されているではないか。  それは「コンプ」だけではなかった。「コンプティーク」も「マル勝スーパーファミコン」も、すべてが、初めて見る「電撃」の名を冠した雑誌と中身が入れ替わっているではないか!!  まだ、インターネットもない時代。何かが起こって、会社が分裂したのだろう程度しか想像することはできなかった。次第に事態が明らかになるのは、角川春樹社長(当時)が麻薬取締法違反などで逮捕され騒動になったこと。その報道の中で、ようやく読者は、春樹氏の弟・角川歴彦が角川書店から独立し、新会社メディアワークスを立ち上げて分裂した“お家騒動”の経緯を知るに至ったのである。  その後、歴彦は古巣へと復帰。メディアワークスとの両輪によって会社はさらに発展していくことになる。  けれども、それは読者、あるいはマンガ家にとっては、いまだに許すことのできないことである。今か今かと期待していた『宇宙英雄物語』のOVAは立ち消えとなった。『サイレントメビウス』も絶好調のところで中断(「電撃~」では現在“本作の第0巻”になっている『メビウスクライン』を連載開始)されたため、読者は一気に冷や水を浴びせられた。正直、移籍した連載陣の中には今単行本で読み直しても、明らかにテンションが下がっているものもある。  どうしようもなさの中で、惰性で両方の雑誌を買い続けていた筆者だが「コンプ」の方は正直同人誌レベル……その中で唯一光っていた広江礼威の『翡翠峡奇譚』も廃刊と共に打ち切り……。  そんな忘れもしない読者への裏切りが、たつき監督降板騒動と共に甦ってきたのだ。  そう、当時の読者は誰一人として、あの恨みを忘れちゃいないのだ。とりわけ少ない小遣いで雑誌を楽しみにしていた中高生たちは。  だからこそ、今再びのファンへの裏切りは、燃え上がる……。 (文=昼間たかし)

『けもフレ』たつき監督降板騒動で甦る25年前の怒り……誰ひとり「コミックコンプ」の恨みは忘れちゃいない!!

『けもフレ』たつき監督降板騒動で甦る25年前の怒り……誰ひとり「コミックコンプ」の恨みは忘れちゃいない!!の画像1
『宇宙英雄物語 1』(KADOKAWA)
 一大騒動となっている、アニメ『けものフレンズ』たつき監督降板騒動。ファンの怒りは日本だけでなく世界へと広がり、署名活動も始まった。降板が明らかになった直後から、ニコニコ動画のプレミアム会員解約をツイートする人も急増。カドカワ株式会社の株価が一時急落する事態ともなり、投資家の注目を集めている。  この騒動と共に30代後半以上のファンが思い出すのが、あの忌まわしい25年前の記憶である。  それは、1992年12月のこと。  当時、角川書店の最有力マンガ月刊誌であった「月刊コミックコンプ」の発売日を、読者は今か今かと待っていた。何しろ『サイレントメビウス』は、ロイが殺され香津美が失踪する急展開。いよいよ連載も佳境に入った『宇宙英雄物語』は、アニメ化も発表されて徐々に情報が解禁されていたからだ。  だが、発売日。ワクワクしながらページを開いた読者は凍りついた。楽しみにしていたはずの連載が、『銀河戦国群雄伝ライ』を除いては掲載されていない。その代わりに、なんだかよくわからないマンガばかりでページが埋められている。記事ページに掲載されている編集者の名前も、まったく知らないものになっている。  事態が飲み込めず、唖然とする読者の目に飛び込んできたのは、書店でその横に陳列されていた、見たことのない雑誌「月刊電撃コミックGAO!」。そちらのページをめくってみると「コンプ」に載っていたはずの連載が、タイトルを微妙にいじったりして、そのまま掲載されているではないか。  それは「コンプ」だけではなかった。「コンプティーク」も「マル勝スーパーファミコン」も、すべてが、初めて見る「電撃」の名を冠した雑誌と中身が入れ替わっているではないか!!  まだ、インターネットもない時代。何かが起こって、会社が分裂したのだろう程度しか想像することはできなかった。次第に事態が明らかになるのは、角川春樹社長(当時)が麻薬取締法違反などで逮捕され騒動になったこと。その報道の中で、ようやく読者は、春樹氏の弟・角川歴彦が角川書店から独立し、新会社メディアワークスを立ち上げて分裂した“お家騒動”の経緯を知るに至ったのである。  その後、歴彦は古巣へと復帰。メディアワークスとの両輪によって会社はさらに発展していくことになる。  けれども、それは読者、あるいはマンガ家にとっては、いまだに許すことのできないことである。今か今かと期待していた『宇宙英雄物語』のOVAは立ち消えとなった。『サイレントメビウス』も絶好調のところで中断(「電撃~」では現在“本作の第0巻”になっている『メビウスクライン』を連載開始)されたため、読者は一気に冷や水を浴びせられた。正直、移籍した連載陣の中には今単行本で読み直しても、明らかにテンションが下がっているものもある。  どうしようもなさの中で、惰性で両方の雑誌を買い続けていた筆者だが、「コンプ」は正直、同人誌レベル……。その中で唯一、光っていた広江礼威の『翡翠峡奇譚』も廃刊と共に打ち切り……。  そんな忘れもしない読者への裏切りが、たつき監督降板騒動と共に甦ってきたのだ。  そう、当時の読者は誰一人として、あの恨みを忘れちゃいないのだ。とりわけ、少ない小遣いで雑誌を楽しみにしていた中高生たちは。  だからこそ、今再びのファンへの裏切りは燃え上がる……。 (文=昼間たかし)

「今、流行っているという……」堀江由衣も出演の“乙女ゲーム風”岡山県広報アニメ『きび男子』制作意図とは?

「今、流行っているという……」堀江由衣も出演の乙女ゲーム風岡山県広報アニメ『きび男子』制作意図とは?の画像1
岡山県政PR動画公式サイトより
 岡山県始まったな!!  岡山県が8月25日から公開しているアニメPR動画『きび男子(だんご)』が、注目を集めている。  このアニメPR動画は、岡山県の晴之国学園に転校してきた女子高生・ももをヒロインに、イケメン男子たちがさまざまな県の広報を語りかけていくという「乙女ゲー」スタイル。冒頭、転校してきたヒロイン・ももが、初日に同級生の生徒会長・犬飼と出会うところから始まり、定番の展開で物語は進んでいく。  防災をテーマにした今回の動画では、生徒会役員の猿彦や神鳥も登場し、次々と身近な防災の知識を教えてくれる。そのキャラクターを演じる声優も、堀江由衣・梶裕貴・村瀬歩という豪華な仕様だ。  スタイルは完全に「乙女ゲー」なのに、話しているのは防災の広報。かつ、人気声優が出演というシュールなテイストに、再生回数は右肩上がりとなっている。  おまけに、背景に描かれる晴之国学園の門は、県下の名門・岡山県立岡山朝日高校と、聖地巡礼を狙ったかのような要素も含まれている。  いったい、どういう経緯でこんな動画が生まれたのか。  昨年度まで、岡山県ではデフォルメキャラを用いたアニメPR動画『みんなのおかやま犬』を展開していた。 「これは、誰でも見てくれるテイストで人気を集めました。しかし、若い世代との意見交換では、高校生・大学生には届いていないのではないかという意見も出ました。そこで今年は、これまで伸びていなかった層にターゲットを絞って動画を制作することにしたのです」(県公聴広報課)  ただし予算は限られている。その範囲でできることを制作会社とディスカッションした結果「今、流行っていると聞いている乙女ゲーム」の形で制作することが決定。ターゲットとする世代に影響力のある声優として3人を選んだのだという。  その最初のテーマに選ばれたのが「防災」。実のところ、岡山県は全国トップクラスで災害の少ない地域である。にもかかわらず「防災」をテーマに選んだのはなぜか。 「地震も、大きくて震度4程度で、(岡山では)災害はあまり起こりません。だからこそ、何かが起きたときの備え……3日分は備蓄を用意しておくことを知っていただくことが必要と考えたんです」(同)  そうして制作されたアニメだが、県担当者が「これは外せない」としたのが、実際の風景を用いることだった。 「やはり啓発したい世代に関係があるものを動画の中に取り入れる必要があると思ったのです。そうなると、学園モノですから、実際の学校ということになります。そこで、教育委員会と撮影可能な学校を相談して、岡山朝日高校を使わせてもらうことになりました」(同)  公開からすでに話題沸騰の動画。ただ、今年は9月に公開する第2話で終了なのだとか。 「アニメ以外に3つ制作予定があるのです。さすがに初年度から5本ともアニメにする勇気はなくて……」(同)  反響次第では、来年度にはさらにパワーアップした動画も登場しそう。まずは、9月公開予定の第2話が楽しみである。  なお、昨年まで展開していた『みんなのおかやま犬』には伊原木隆太県知事自らがキャラになって出演していたが、今回は「若い世代にはピンとこないので」出演はないとのことである。 (文=昼間たかし)

『君の名は。』中国で90億円突破も、実入りは3億円だけ……“クールジャパン”の課題とは

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『君の名は。』公式サイトより
 今夏に公開された新海誠監督のアニメ映画『君の名は。』が、12月2日に中国でも公開され、日本でのヒット作という前評判も手伝って公開初日にアニメ映画としては歴代2位の224万人を動員する大ヒット。その翌日の興行収入で早くも24億円に達し、公開2週間で日本アニメの同国での最高益87億円を記録した『STAND BY ME ドラえもん』を超える90億円を突破した。  しかし、映画関係者からは「おそらく、どれほど収益を上げようと、日本に入ってくる利益はわずか2,000万元(約3億3,000万円)だといわれている」という話が出ている。興行収入と比べて、あまりに少ない額なのはなぜか? 「中国の映画輸入システムは、諸外国にとってかなり不利なんです。中国で放映される海外作品は主に、あらかじめ分配率を定めるロイヤリティ方式と、一定額で買い取ってしまう2種類があるんですが、それぞれに年間の本数制限が設けられて、ロイヤリティを選びたくても枠が埋まっていて仕方なく買い取りを選ぶケースもあります。映画の場合、ヒットするかどうか不透明な部分もあるので高値が付きにくいんですが、聞いたところ『君の名は。』は買い取り式で、中国映画製作大手の光線伝媒が権利を獲得して、中国でどんなにヒットしても日本サイドに大金が落ちてこないそうです」(同)  政府がクールジャパンで海外にコンテンツを売り出すことをぶち上げているが、自国にまっとうな利益が落ちる仕組み作りには着手できていないようだ。 「しょせん、海外戦略なんていってもその程度。アメリカのディズニーみたいにバカ高い著作料を取るようなビジネスができていないのは、特に中国のような特殊な国だと民間企業ではどうにもならない部分が多く、それこそ政府に助けてほしいんですよ」(同)  そもそも中国では、当局の情報統制が強いことから興行関係には制約が多く、日本企業が自力で現地商売をするのは、ほぼ不可能。プロレスや格闘技の大会、音楽コンサートの分野でも、開催直前に役人の茶々が入って中止に追い込まれたことが何度もある。ただ、そもそも日本側が海外相手の商売を不得手とする部分も大きい。「そこは昭和の時代から変わっていない」と話すのは、古いアニメ制作会社の経営者だ。 「その昔、鉄腕アトムがアメリカで『アストロボーイ』として放映されたとき、原作者の手塚治虫には1円も報酬が入ってこなかったということがありました。これは、アメリカの権利会社から『アメリカの法律で一部の表現が問題視され契約違反だ』という難癖がつき、屈したから。このあたりのいきさつは当時、アトムのシナリオライターだった豊田有恒さんが自著にも詳しく書き残していますよ」(同)  アトムの海外ヒットは結果的に手塚治虫の名を世界中に知らしめ、現在の日本アニメの世界的人気となる礎を築いたとはいえるのだが、「もともと外交下手な日本の政府も、この部分には特に無関心」と経営者。  実際、著作権を中心とした知的財産を売るコンテンツビジネスは、日本が苦手といわれてきた分野でもある。日本のアニメやマンガを海外に売り込む際、その権利を行使するノウハウがアメリカなどに比べてもかなり弱く、正当な利益を還元できていないというケースはいくらでもある。 「日本人は、良いものを作れば、あとは勝手に売れてくれる、というビジネス交渉に無頓着な職人気質があって、そのノウハウを成熟させてこなかったんですよね。いろいろなジャンルで先進国とは思えないパクリが横行していても、コンテンツを売る側に専門知識がなく、やられ損になることが多いのは、権利の管理が下手だからでしょう」(同)  著作権の認識が発達していなかった60年前ならともかく、この現在でもお人好しな商売のおかげで製作費を下回る金額でコンテンツを手離し、他人にばかり儲けさせているのは傍目にももどかしく、ただでさえ苦しいアニメ制作現場をより疲弊させることにもつながる。この点はまったく「クール」ではない話ではないか。 (文=藤堂香貴/NEWSIDER Tokyo)