監督メル・ギブソンが描く沖縄地上戦の地獄絵図!! 戦場を丸腰で闘った男の記録『ハクソー・リッジ』

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『沈黙 サイレンス』(16)にも主演したアンドリュー・ガーフィールド。衛生兵役で、再び日本人の恐ろしさに直面する。
 戦争とは国の命令で行なわれる人と人との殺し合いだが、人命を救うことを目的に戦争に参加したおかしな一人の男がいた。太平洋戦争末期、壮絶さを極めた沖縄戦において米軍の第77師団に“衛生兵”として従軍したデズモンド・ドスがその人だ。『ブレイブハート』(95)でアカデミー賞作品賞・監督賞を受賞したメル・ギブソン監督は、米軍で変人扱いされ続けたデズモンドを主人公にした嘘のような本当の話を『ハクソー・リッジ』として映画化している。  主人公となる若者デズモンド(アンドリュー・ガーフィールド)は米国バージニア州出身。彼のプロフィールを語る上で重要となってくるのは、イエス・キリストの再誕を信じる「セブンスデー・アドベンチスト教会」の敬虔な信者だったということ。第一次世界大戦に従軍した父トム(ヒューゴ・ウィーヴィング)は戦場からの帰還後はアルコール依存症となり、家庭内での口論や暴力が絶えなかった。聖書を心の拠り所にした少年期を過ごしたデズモンドは、年頃になって病院で出逢った看護士ドロシー(テリーサ・パーマー)と恋に陥る。折しも第二次世界大戦が本格化し、自分だけが幸せになることにデズモンドは疑問を感じ、ドロシーや戦場の恐ろしさを知るトムの大反対を押し切って、志願入隊してしまう。「なんじ、殺すことなかれ」と説く聖書の教えを守るため、衛生兵としての入隊だった。  グローヴァー大尉(サム・ワーシントン)率いるライフル部隊に配属されたデズモンドだが、聖書の教えを貫き、頑なに銃を手にしようとしない。安息日には演習にも参加せず、祈りを捧げるだけ。当然ながら、部隊内でデズモンドはいじめの標的となる。夜宿舎のベッドで眠っていると、『フルメタル・ジャケット』(87)のおちこぼれのデブのように、毛布の上からボコボコにされる。最初の休日にドロシーと結婚式を挙げる約束を交わしていたが、ライフルの演習がまだ済んでいないという理由から休日を取り消されてしまう。上官たちから「早く除隊したほうが、君のためだ」と忠告されるも、デズモンドの決心は揺るがない。ついには軍法会議に呼び出される騒ぎとなる。  異民族による人間狩りの恐怖を描いた『アポカリプト』(06)以来の監督作となったメル・ギブソンだが、軍隊内のいじめ描写はいっさい手加減なし。さらにメル・ギブソンは初代『マッドマックス』(79)らしく、物語後半からはフルスロットルでバイオレンス描写のレッドゾーンへと飛び込んでいく。それまでの軍隊内でのいじめが、ほんのままごとのように思えてくる。沖縄に向かったデズモンドたちは、暴力の果てしない無限地獄へと転がり落ちていく。
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恋人ドロシー(テリーサ・パーマー)と婚約して幸せの絶頂にあったデズモンドだが、みずから地獄行きを選ぶ。
 沖縄戦において日本軍が選んだ戦術とは、沖縄の住民たちを守るための防衛戦ではなく、本土決戦を1日でも遅らせるための捨て石作戦だった。米軍がハクソー・リッジ(のこぎり崖)と呼んだ絶壁上にある前田高地には、深い深い地下壕が掘られ、米軍をあえて上陸させた上で、至近距離からの白兵戦を日本軍は挑む。双方の機関銃から鉄の雨が吹きつける中、米兵・日本兵の肉塊が次々と山積みとなっていく。手足は千切れ、顔や内臓が砕け散る。生きるか死ぬかは、もはや運次第。前田高地に送り込まれた兵隊たちは、米兵も日本兵もルーレットの上を転がり続ける球のようなものだった。一発で即死できた者は幸運だった。そんな狂気の生き地獄にいながら、デズモンドはあくまでも衛生兵としての職務をまっとうしようとする。  多大な犠牲を払って前田高地を制圧した米軍だったが、そこはまだ地獄のエントランスでしかなかった。夜が更け、デズモンドたちが浅い眠りに就いていると、アリの巣のように縦横無尽に張り巡らされた地下壕から日本兵が日本刀や手榴弾を手に肉弾戦を仕掛けてきた。堪らず米軍に撤退命令が下される。ところが、ここでまたデズモンドは軍の命令に背く。死体だらけの前田高地に独断で残り、米兵・日本兵を問わず、息のある負傷兵をロープに吊るして150メートルある崖下へと下ろす作業を一昼夜にわたって続ける。『アメイジング・スパイダーマン』(12)に主演したアンドリュー・ガーフィールドだけに、ロープさばきが実に鮮やかだ。  メル・ギブソンは監督作『パッション』(04)でゴルゴダの丘で処刑されたイエス・キリストの最期を描いたが、『ハクソー・リッジ』のデズモンドこそ現実世界に現われた救世主だった。アンドリュー・ガーフィールドは鎖国時代の日本を舞台にした『沈黙 サイレンス』(16)にも主演しているが、『沈黙』の神様が最後まで無言だったように、『ハクソー・リッジ』でもやはり神様は傷ついた者たちを決して救うことはしない。ただ、神の存在を根っから信じるひとりの人間が傷ついた人々を救うことになる。
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沖縄に上陸した米軍は前田高地(浦添市)で日本軍と激突。『プライベート・ライアン』(98)を上回る残酷描写が延々と続く。
 米軍内で鼻つまみ者扱いされ続けたデズモンドは、75名もの負傷兵を救ったことから、良心的兵役拒否者として米軍史上初となる勲章を授与される。本作で描かれる沖縄戦はここまでだが、前田高地での戦いから投入された火炎放射器はその後の沖縄戦でも猛威を振るい、日本軍の言いつけを守ってガマ(鍾乳洞)に息を潜めて隠れていた沖縄市民をその炎で呑み込んでいく。また、デズモンドと同じように看護要員として動員されていた地元の女子校生たちによる「ひめゆり部隊」も命を散らすことになる。  飲酒してのトラブルや差別的発言が多いことから、大スターでありながらメル・ギブソンはハリウッドでは嫌われ者となっている。だが、戦場の狂気をここまでリアルに再現してみせる現役監督も、彼の他にはそうそういない。 (文=長野辰次)
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『ハクソー・リッジ』 監督/メル・ギブソン  出演/アンドリュー・ガーフィールド、サム・ワーシントン、テリーサ・パーマー、ルーク・ブレイシー、ヒューゴ・ウィーヴィング、ヴィンス・ヴォーン 配給/キノフィルムズ PG12 6月24日(土)より全国ロードショー (C)Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016 http://hacksawridge.jp

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人身売買、二重婚、売春斡旋、すべては家族のため『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』

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北朝鮮を脱北後、中国の農村に外人妻として売られたマダム・ベー。彼女自身も闇ブローカーとして暗躍する。
 堕ちていく女は、劇映画としてはとても魅力的な題材だ。社会のシステムから転げ落ちていくことで、虚飾をはぎ取られ、ひとりの女としての生々しい素顔がさらけ出されていく。キム・ギドク監督の『悪い男』(04)や園子温監督の『恋の罪』(11)のヒロインは、堕ちるところまで堕ち、聖女のような輝きを放つことになる。だが、女優が演じる劇映画ではなく、現実世界を切り取ってみせるドキュメンタリーの場合はどうだろうか? 韓国とフランスとの合作ドキュメンタリー映画『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』は生きていくため、家族を食べさせるためなら、法を破り、命を危険にさらすことも厭わない、平凡なひとりの主婦の変身ぶりを追いかけていく。  ドキュメンタリー映画の醍醐味は、シナリオのない意外性のあるストーリー展開にある。『マダム・ベー』はカメラを回している韓国人監督ユン・ジェホすら予測できない、驚愕のゴールが待ち受けている。主人公となるマダム・ベーは、「えっ、この人がヒロイン?」と思うほど垢抜けないオバさんなのだが、我々には到底マネできない決断力と行動力を発揮し、ユン・ジェホ監督に「私を撮りなさい」と告げる。  本作の序盤は、まず中国の寒村から始まる。北朝鮮出身の主婦マダム・ベー(仮名)は10年前にここへ売られてきた。北朝鮮で夫、2人の息子と一緒に暮らしていたが、生活苦から脱北して1年間限定のつもりで中国へ出稼ぎに向かった。ところが鴨緑江を渡って着いた中国の村で、「仕事があるよ」と騙されて遠く離れた農村へ外人妻として売り飛ばされてしまう。プレス資料によると、20~24歳の女性は日本円で約11万円、25~30歳は8万円、30歳以上だと5万円で売買されているらしい。マダム・ベーは当時37歳だったから、わずか5万円。安い……。  マダム・ベーが嫁として売られた中国の農家は見るからにビンボーそうな、中国夫・義父・義母との共同生活。マダム・ベーは腹を括って、ここでお金を稼いでから、帰郷することに決める。だが、働けど働けど、生活は楽にはならず。マダム・ベーはカメラに向かって告白する。「脱北者は身分証がないから、働いても安い。だから悪いことにも手を出すようになる」と。  マダム・ベーは自分と同じような脱北者たちを中国経由で韓国へ送り出す手引きをする闇ブローカーとしてお金を稼ぎ、また北朝鮮で製造された覚醒剤の売買にも手を染めたと語る。脱北してきた若い女性たちをカラオケボックスに派遣して、性サービスをさせる女衒業にも乗り出す。北朝鮮から売られてきた家族想いの平凡な主婦だったマダム・ベーが、ギラギラと生命力をたぎらせるヤリ手ババアへと覚醒していく。欲望まみれのマダム・ベーには、不幸な過去を背負った弱々しい影はみじんも感じられない。
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中国夫と義母。彼らにしてみれば、人身売買は犯罪ではなく「お金を払った上に脱北者を受け入れた」行為だった。
 マダム・ベーの中国の農村での生活だが、貧しいながらマダム・ベーは中国夫や義母から気遣われていることが分かる。マダム・ベーが闇ブローカー業に精を出している間、中国夫は「オヤジ、お前はもっと働け」と実の父をどやしつける。義母からも「嫁が嫌がるから、室内でタバコを吸うんじゃないよ」と責められる。義父は脱北妻よりも立場が弱い。カメラに向かって話すシワシワ顔の義母の言葉が泣かせる。「息子は4人いて、3人には中国人の嫁を見つけることができたが、この子には見つけることができなかった」。お金で買われて連れてこられた中国の農村だったが、マダム・ベーは人間扱いされた生活を送っていた。北朝鮮と中国に2つの家族を持つ、マダム・ベーの奇妙な二重生活をカメラは収める。  中盤以降はまるで予測できない展開に。マダム・ベーはやはり北朝鮮に残してきた2人の息子のことが気になる。母子一緒に暮らすため、まずは息子たちに北朝鮮から韓国へと脱北するよう指示を出す。さらにはマダム・ベー自身が韓国を目指すことに。親身に接してくれた中国夫と義母に事情を話すマダム・ベー。脱北者は国籍がないから、今のままでは中国夫と正式に結婚することができない。だから一度韓国へ行き、そこで脱北者として認められれば韓国籍が手に入る。そうすれば中国夫の正式な嫁になれると。こんな口約束を誰が信じるんだろうと思っていたら、中国夫と義母はあっさりOKした!! 彼らは人を疑うことを知らないのか、それともマダム・ベーのことを心から信頼しているのか……。  マダム・ベーが進む脱北ルートが壮大だ。中国大陸をずんずんと南下して、ラオスやタイの国境を越えるというもの。そしてタイから空路もしくは海路で韓国を目指す。『西遊記』の三蔵法師も、『深夜特急』の沢木耕太郎もびっくりの“シルクロード”ならぬ“脱北ロード”。しかもマダム・ベーは、同じように脱北してきた女性たち(中には子連れも)を伴ってのキャラバンを組む。なぜかカメラを持っていたユン・ジェホ監督も巻き込まれて、マダム・ベーたちと一緒にラオスの険しい山々を越え、タイの危険な“黄金の三角地帯”を潜り抜け、河を渡る超絶サバイバルツアーに挑む。フジテレビの『NONFIX』がいつのまにか『水曜スペシャル 川口探検隊』へとシフトチェンジ! ジェホ監督は一行についていくので精一杯で、カメラを回す余裕はほとんどない。
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韓国のソウルで実の息子と暮らすことになったマダム・ベー。多大な労力とお金を支払って手に入れた幸せだったが……。
 大冒険ツアーの結果、マダム・ベーはタイへの不法入国を果たし、目論みどおりにバンコクの難民支援センター経由で、韓国へ送られることに。韓国では国家情報院から北朝鮮のスパイでないかどうかの尋問を受けた後、念願叶ってソウルで息子たちと一緒に暮らすことになる。バンコクの難民支援センターで別れてから2年後、ジェホ監督はソウルでマダム・ベーと再会する。浄水器の清掃業をしている彼女は、ソウルにどこにでもいる生活に疲れきった主婦となっており、中国で闇ブローカーとして目をギラギラさせ、ラオスやタイの国境を命懸けで越えてきたマダム・ベーとは別人のようだった。息子たちと一緒に暮らすという夢を実現させ、電化製品に囲まれた豊かな生活を送るマダム・ベーだが、もはやあの猥雑さを感じさせる生命力の輝きはどこにもない。  ギャスパー・ノエ監督の『アレックス』(02)は人生のドン底からいちばん美しかった時代へと時間を巻き戻してみせたが、マダム・ベーの場合は彼女の人生のピークは一体どこにあったのだろうか。彼女の人生は喜びと哀しみが複雑にマーブル状に入り交じっており、簡単には判別できない。物語の終盤、マダム・ベーはテレビ電話で、今も中国の農村で暮らす中国夫と会話を交わす。そのときの彼女は生活に疲れた退屈な主婦から、声を弾ませたひとりの女に戻っている。 (文=長野辰次)
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『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』 監督/ユン・ジェホ 撮影/ユン・ジェホ、タワン・アルン  配給/33BLOCKS 6月10日(土)より渋谷イメージフォーラムほか全国順次公開 (c)Zorba Production, Su:m http://www.mrsb-movie.com

記録よりも記憶に残る裏方夫婦の映画年代記! 『ハロルドとリリアン』がいたから名作は生まれたの画像5
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橋爪遼容疑者逮捕で上映打ち切りの『たたら侍』 約1億3,000万円の税金を投入したロケ地・島根県からは悲鳴が…… 

橋爪遼容疑者逮捕で上映打ち切りの『たたら侍』 約1億3,000万円もの税金を投入したロケ地・島根県からは悲鳴が…… の画像1
 警視庁に覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで逮捕された俳優、橋爪遼容疑者(30)の後始末がエラいことになっている。橋爪容疑者が出演する、5月20日に全国公開されたばかりの映画『たたら侍』(錦織良成監督)は6月9日をもって上映打ち切りが決定。だが、映画の舞台となった自治体が約1億3,000万円もの税金を投入していたのだ。ロケ地周辺 ではすでに1万枚以上もの前売券が流通、田舎で数少ないシネコンには客が殺到して「オープン以来、初めて満席になった」(地元シネマ関係者)とか。そんな中、突然の打ち切りに地元は戸惑いを隠せないようだが、製作サイドは、ある“裏技”で乗り切ろうとしているという。  捜査関係者によると、今回の一件は、橋爪容疑者が“本星”ではなかった。警視庁はかねてから目をつけた埼玉県内に住む男を捜査していた過程で、一緒にいた橋爪容疑者を男の自宅で発見し、逮捕に至った。捜査関係者は「どうも、コレの関係のようだ」と、手を反対側の 頬に当てながら明かす。つまり、埼玉の男と橋爪容疑者はゲイ仲間だ というのだ。  ゲイ疑惑もさることながら、日本を代表する大物俳優の父、橋爪功(75)もカバーできないであろう巨額の損失をもたらした。  『たたら侍』は戦国の末期、玉鋼を作る製鉄技術「たたら吹き」をめぐる若侍たちの物語。LDHのHIROが「本物の日本を世界へ」という想いのもと、初めてプロデュースを手掛け、EXILEのメンバーらが出演。橋爪容疑者は鍛冶大工の手子(てこ)、熊吉役で出演している。  製作サイドは5日夜、9日限りで の上映打ち切りを発表した。一方、舞台となった島根県とロケ地周辺自治体は3年前から計1億3,000万円を製作費として助成し、7月15日からはロケのセットを使った、飲食もできるテーマパーク「出雲たたら村」もオープンする予定だった 。 「田舎特有の地縁を生かした売り方で、前売り 券を広範囲でさばいていた。さすがに地元が舞台なので、みんな喜んで買っていた」(地元有力者)といい、その数たるや、すでに1万枚以上にも達しているという。  一方、島根県内での上映館は、ショッピングモール内のシネコンの、合計2つのスクリーンしかない。ここでそれぞれ 1 日4~6回というヘビーローテーションで上映しているが、公開から2週間余りで打ち切りが決定するや、前売り券を持った客が殺到。映画館前は長蛇の列となっている。  しかし、7日になって製作サイドは公式ホームページで「再編集を行い、上映再開できるようスタッフ一丸となり鋭意努力しております」と報告。「上映再開の目途が立ちましたら改めて告知させて頂きます」としている。前売券は、とりあえず手元に持っておいたほうがよさそうだ。  ただ、「橋爪がチョイ役ならよかったが、ストーリーに絡む役柄で、出演シーンは多い」(同)といい、製作サイドの力量が試されることになりそうだ が、果たして……。

記録よりも記憶に残る“裏方夫婦”の映画年代記! 『ハロルドとリリアン』がいたから名作は生まれた

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ハロルド&リリアン・マイケルソン夫妻。ヒッチコックもコッポラもハリウッドの監督たちはこぞって、この夫婦に協力を求めた。
 日本語の“裏方さん”にあたる外国語を調べたことがあるが、なかなかピンとくる言葉に出逢えなかった。英語だとunsung heroという言い回しがあるが、どうも脚光を浴びそびれた人、記録に残らなかった人、という残念な意味合いが感じられてしまう。日本語の“裏方さん”には親しみと敬意が込められているが、欧米文化にはそういった感覚はないのか。そんな疑問に答えてくれたのが、現在公開中のドキュメンタリー映画『ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー』だった。 『ハロルドとリリアン』の主人公であるハロルド・マイケルソン&リリアン・マイケルソンは、それぞれ絵コンテ作家、リサーチャーとして戦後のハリウッド黄金時代に大活躍した伝説の裏方夫婦だった。夫ハロルドの絵コンテ作家としての凄さがよく分かるのは、旧約聖書の出エジプト記を実写化した『十戒』(56)の海がまっぷたつに割れるシーン。映画史に残るこの名シーンを、イメージボードにしてまず描いてみせたのがハロルドだった。  第二次世界大戦中、欧州戦線で爆撃機に乗ったハロルドはそのときの体験から、あらゆる事物を俯瞰した視点から描く感覚を身に付けていた。『十戒』が大ヒットしたことから、ハロルドの評判はうなぎ昇りとなり、ロバート・ワイズ監督の『ウエスト・サイド物語』(61)、ヒッチコック監督の『鳥』(63)、マイク・ニコルズ監督の『卒業』(68)などで素晴しい絵コンテを生み出すことになる。とりわけ動物パニックものの先駆作『鳥』はハロルドの鳥瞰的視点が大きな役割を果たしていることが、彼の絵コンテと『鳥』の名シーンを見比べてみることでよく分かる。  ハロルドと同じ米国南部マイアミ生まれのリリアンは幼い頃に親から虐待され施設で育ったものの、読書好きな利発な女の子だった。戦争から故郷に戻ってきたハロルドはリリアンと交際するようになるが、施設育ちであることを理由にハロルドの親族は2人の交際に大反対。逆にそれが火に油を注ぐことになり、ハロルドとリリアンは新天地を求めて知人がいないハリウッドへ移り住む。大手映画会社の美術部門の見習いスタッフとしてハロルドは働き始め、ビンボーだったけど、2人は3人の子宝に恵まれる。やがて絵コンテ作家として活躍し始めたハロルドの紹介で、リリアンは映画会社内にあるライブラリーでボランティアとして働くことに。  このライブラリーで、リリアンは類い稀なる才能を発揮する。ただ映画スタッフに頼まれた資料を用意するだけでなく、リリアンは映画監督がどんな資料を欲しているのか、またどんな資料があれば映画にリアリティーがもたらされ、面白い映画に膨らんでいくのかを的確に把握していた。ホラーサスペンス『ローズマリーの赤ちゃん』(68)ではブードゥー教など世界中に伝わる怪しい宗教や呪術について丹念にリサーチした。資料がなければ自分で資料を作成し、麻薬王の一代記『スカーフェイス』(83)では裏社会の人間を取材することで麻薬コネクションの内情を入手した。もちろん、夫ハロルドの絵コンテの参考になる情報を提供することも怠らない。2人がタッグを組むことで、普通のスタッフが請け負うよりも数倍もの相乗効果が作品にもたらせられた。
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絵コンテ作家として目覚ましい才能を発揮したハロルド。脚本にはない視覚的なアイデアを絵コンテに詰め込んだ。
 ハリウッドの黄金時代も終わり、かつてのスタジオシステムは弱体化していくことになるが、それに反比例するかのようにハロルドとリリアンは映画業界に欠かせない存在となっていく。スタジオシステムが機能していた時代は、撮影スタジオに行けばスタジオ内には多彩なスタッフが常駐しており、新作映画の情報が入るやいなや、有能なスタッフが様々なアイデアと共に馳せ参じてくれた。スタジオシステムが縮小していく中で、ハロルドとリリアンは夫婦でその役割を果たす。退屈なシナリオを抱えて困っていた監督も、この夫婦にお願いすれば、ハロルドがイマジネーション溢れるイメージボードを描き、リリアンが物語に深みを持たせる面白い資料を用意してくれた。困ったときの神頼みならぬ、ハロルド&リリアン頼みだった。  ヒッチコック監督の代表作『サイコ』(60)のシャワーシーンの絵コンテを描いたことでソール・バスは有名だが、ハロルドは彼ほど世間には名前を知られてはいない。ソール・バスは映画タイトルや映画ポスターの他にも幅広く商業デザイナーとして活躍し、ひとりのアーティストとして認識されていたが、ハロルドは映画界の裏方職人に徹していたからだ。また、絵コンテ作家は裏方中の裏方であり、実写映画では絵コンテ作家の名前はクレジットされなかった。映画監督たちの多くは、できれば名シーンを考えた手柄を自分のものにしておきたかった。リリアンも同じだった。ライブラリーで黙々と資料集めに尽力するリサーチャーも、エンドロールにクレジットされる機会は少ない。でも、面白い映画ができ、ギャランティーが支払われ、家族が食べていける、慎ましい幸せをハロルド&リリアンは望んだ。  裏方人生を歩んできたハロルドに転機が訪れる。撮影用のセットが崩壊する事故が起き、ハロルドは両足に大きな傷を負い、撮影現場に出るのが難しくなってしまう。一時期は酒に溺れたハロルドだが、リリアンから「酒をやめないと離婚よ」と脅されて、あっさり更生。若手の面倒見もよかったことから、ハロルドはプロダクションデザイナーとして美術部門を統括する立場に格上げされることに。SF映画『スター・トレック』(79)で、晴れてハロルドはアカデミー賞美術賞に初ノミネートされる。「アカデミー賞にノミネートされたお陰で、いろんな仕事がくるようになった。成功作がひとつあれば、他の失敗作を黙っていられるからいい」とユーモアたっぷりに語る様子もまた、ハロルドらしい。
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リサーチャーとして監督たちから絶大な信頼を得たリリアン。彼女のライブラリーは今も美術監督組合内に併設されている。
 一方のリリアンはスタジオシステムが縮小されていく中、自分でライブラリーを運営することを決意する。リリアンのライブラリーには、資料を探しにくる若いスタッフや、明るい性格のリリアンとの談話を楽しみにしている映画監督たちが集まり、サロン的な役割も果たすようになる。しゃがれ声で有名なミュージシャンのトム・ウエイツも若い頃に出入りし、デヴィッド・リンチ監督は借りた資料を丁寧に元にあった棚に戻そうと努めた。リリアンに呼び出された元麻薬王と麻薬取締官がお互いの素性を知らずに鉢合わせることもあった。リリアンが司書を務める映画図書館を舞台に、三谷幸喜あたりがワンシチュエーションの脚本を書いたら、すっごく面白いドラマになりそうだ。  ハロルドが87歳で亡くなるまで、60年間にわたって夫婦生活を続けたハロルドとリリアン。恋愛映画の主人公カップルと同じくらい、顔合わせがコロコロと変わるハリウッドでは非常に珍しい。ハロルドとリリアンの夫婦仲を深く結びつけたのは3人の息子たちだった。中でも長男が自閉症だったことから、夫婦は人一倍の愛情を子どもたちに注いだ。そして仕事仲間に対しても家族のように接し、彼らが手掛ける新しい映画に喜んで参加した。ハロルド&リリアンと長く親友として交流を続けたコメディ監督のメル・ブルックスや俳優のダニー・デヴィートらは、楽しげに夫婦のこと、作品づくりのことを振り返る。ハロルド&リリアンは、記録ではなく記憶に残るハリウッドカップルだった。  裏方さんのことを英語ではunsung hero、歌に歌われることのない英雄と呼ぶ。でもハロルドとリリアンが作品づくりに励んでいる姿は、まるで2人でお気に入りの歌をハモっているかのようだ。歌に歌われるよりも、歌を歌うほうがずっと楽しい。ハロルド&リリアンはすごく当たり前のことに気づかせてくれる。『ハロルドとリリアン』には裏方さんに対する最上級の敬意と愛情が込められている。 (文=長野辰次)
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『ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー』 エグゼクティブ・プロデューサー/ダニー・デヴィート 監督・脚本/ダニエル・レイム 出演/ハロルド&リリアン・マイケルソン、フランシス・F・コッポラ、メル・ブルックス、ダニー・デヴィート、アルフレッド・ヒッチコック、デヴィッド・リンチ 配給/ココロヲ・動かす・映画社 5月27日より恵比寿YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー中 (C)2015 ADAMA FILMS All Rights Reserved http://www.harold-lillian.com

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その人気に陰り? 福士蒼汰主演映画『ちょっと今から仕事やめてくる』が爆死で、7月期ドラマにも暗雲漂う

その人気にかげり? 福士蒼汰主演映画『ちょっと今から仕事やめてくる』が爆死で、7月期ドラマにも暗雲漂うの画像1
映画『ちょっと今から仕事やめてくる』番組サイトより
 福士蒼汰主演映画『ちょっと今から仕事やめてくる』が5月27日に公開されたが、かなり厳しいスタートとなったようだ。  同27日、28日の「週末観客動員ランキング」(興行通信社調べ)では、6週連続トップの『美女と野獣』、同じ1週目の『家族はつらいよ2』に次いで、初登場で3位にランクイン。一見まずまずの発進のように思えるが、問題なのはその中身。土日2日間の観客動員は10万2,000人、興行収入は1億4,000万円と低調だ。  最近封切になった主な邦画の1週目の興行成績は、菅田将暉主演『帝一の國』が16万6,000人、2億1,400万円(動員、興収/以下同)。福士も出演した木村拓哉主演『無限の住人』が14万5,000人、1億8,900万円。岡田准一主演『追憶』が18万人、2億2,700万円。唐沢寿明主演『ラストコップ THE MOVIE』が8万1,000人、9,600万円。Hey!Say!JUMP・伊野尾慧主演『ピーチガール』が12万人、1億4,300円といったところ。 『仕事やめてくる』は、早くから大コケが予想されていた『ラストコップ』に次いでワースト2位の惨状。特に1週目の興行成績で、客層が限られそうな伊野尾と山本美月のコンビによる『ピーチガール』にも負けてしまったのは、なんとも痛い。  福士自身の主演映画では、有村架純とのW主演で最終的に23億2,000万円の興収を上げてそこそこヒットした『ストロボ・エッジ』(2015年3月公開)の1週目が、28万6,450人、3億3,243万7,800円だったことを思えば、『仕事やめてくる』は動員、興収共にその半分以下だ。 『仕事やめてくる』は、ブラック企業で心身共に疲弊した新米サラリーマンが、ナゾめいた男との出会いを通して立ち直り、人生を見つめ直していく姿を描いた作品。原作は70万部を突破するベストセラーとなった北川恵海の同名小説(KADOKAWA)で、漫画化(同)もされており、原作、漫画のファンからは一定の期待感があったはず。福士以外の主要キャストは工藤阿須加、黒木華、吉田鋼太郎、小池栄子、森口瑤子、池田成志で、なかなかの豪華メンバー。これで不振となれば、製作委員会も福士もショックを隠せないだろう。  福士は、13年前期のNHK連続テレビ小説『あまちゃん』でブレーク。その後出演した『きょうは会社休みます。』(日本テレビ系)では、主演・綾瀬はるかの年下の恋人役を好演し、人気はうなぎ上りとなった。ところが、ゴールデン帯での連ドラ初主演となった月9ドラマ『恋仲』(フジテレビ系)は平均10.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)で、当時の月9としてはイマイチ。『お迎えデス。』(日本テレビ系)は平均7.9%と大爆死してしまった。その直後の同6月25日と26日にオンエアされたスペシャルドラマ『モンタージュ三億円事件奇譚』(フジテレビ系)でも主演を務めるも、前編8.3%、後編7.7%と、これまた大コケ。  主演ドラマが相次いで爆死したことで、その人気にも陰りが見えていたが、『仕事やめてくる』も不振とあっては、この先の活動に不安がよぎる。7月期には、日曜ドラマ『愛してたって、秘密はある。』(日本テレビ系)で『お迎えデス。』以来の連ドラ主演が決まっているが、大きな暗雲が垂れ込めてしまった。 (文=田中七男)

リリー・フランキー、橋本愛が宇宙人として覚醒!? 三島由紀夫のSF小説『美しい星』を映像翻訳化!!

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お天気キャスターの大杉重一郎(リリー・フランキー)は火星人として目覚め、テレビのお天気コーナーで人類の危機を訴える。
 天才の考えていることは、よく分からない。自伝的小説『仮面の告白』を24歳のときに執筆し、若くして成功を収めた三島由紀夫は、やりたいことをやり、書きたいことを書き、そして市ヶ谷の自衛隊駐屯地で割腹自殺を遂げ、45年間の生涯の幕を閉じた。ノーベル文学賞の候補に挙げられる一方、自衛隊の演習機に乗って子どものようにはしゃぐ童心を持ち合わせていた。空飛ぶ円盤の観測にハマっていた時期もあり、そんな天才作家・三島由紀夫が唯一のSF小説として発表したのが『美しい星』だった。コメディなのか、マジなのか、判別できない奇妙な味わいのある1冊である。  三島文学を語る際にスルーされることの多い『美しい星』だが、1980年代に入って、鹿児島から上京してきたひとりの青年がその奇妙さに魅了される。大学で映画サークルに所属していたその青年は卒業後、CMディレクターとしてキャリアを積み、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07)で監督デビューを果たし、『桐島、部活やめるってよ』(12)、『紙の月』(14)とヒット作を連発するようになった。吉田大八監督である。原作小説を読んでから30年、吉田大八監督は念願の『美しい星』を映画化した。  凡人がぼんやり読むと、ぽか~んとしてしまいかねない原作小説『美しい星』を三島由紀夫が書いたのは1962年。キューバ危機が起き、米国とソ連との間で核戦争が起きるかどうかという一触即発状態にあった時代だ。核ミサイル攻撃で、人類が滅亡する過程をシミュレートしてみせた東宝特撮映画『世界大戦争』(61)なども当時は公開されている。人類は自分たちの手で破滅を招いてしまうかもしれない。そんなキナ臭い世相を、三島由紀夫は“宇宙人”という視点からユーモラスかつシニカルに描いている。  吉田大八監督によって現代に舞台を移し替えた映画『美しい星』はこんなストーリーだ。都内でのほほんと暮らす大杉家だったが、ある日、自分たちは宇宙人であることに突然目覚める。最初に目覚めたのは、まるで当たらないと評判のお天気キャスターの重一郎(リリー・フランキー)。アシスタントの女の子とゲス不倫で忙しかった重一郎だったが、真夜中にUFOと遭遇したことから自分は“火星人”だと自覚するようになる。大学卒業後はフリーターをしていた長男の一雄(亀梨和也)は“水星人”として目覚め、国会議員秘書の黒木(佐々木蔵之介)のもとで働くようになる。長女の暁子(橋本愛)は“金星人”、母・伊余子(中嶋朋子)は“地球人”として目覚める。かくして覚醒を遂げた大杉家の人々は、民族・国家・企業レベルで争いを続ける人類をそれぞれのアプローチ方法で救済しようと奔走する。
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娘の暁子(橋本愛)は金星人として覚醒。おかしなポージングで、金星から飛来してきたUFOとコンタクトをとり始める。
 お天気キャスターである重一郎は、ニュースショーのお天気コーナーで人類滅亡の危機を訴えるヤバいおじさんとなっていく。娘の暁子は金星人を自称するストリートミュージシャンの若宮(若葉竜也)と出会い、手も握らずに処女懐妊するはめに。世間一般から見れば、大杉家の人々はみんなイカレポンチである。テレビの生放送中、重一郎はUFOを呼び出そうと奇妙奇天烈なポージングをとるが、彼が懸命にポージングすればするほど、ドン・キホーテのようなおかしみと誰からも理解されない哀しみとが彼の頭上に降り注いでいく。人類が滅亡に近づいているのは間違いないのに。  と、ここまでは頭のおかしな残念な一家を主人公にしたブラックコメディなわけだが、吉田大八監督は本作を様々な解釈が可能なドラマへと仕立てみせた。重一郎は重い病に冒されていることが後半わかるが、地球人としての肉体は滅びても、自分の使命を全力でまっとうしたことから魂は宇宙レベルで救済されることになる。重一郎役のリリー・フランキーは、かつて過激アニメ『サウスパーク』でイエス・キリストを演じていたことを思い出させる。長い間、自分の美しさをうまく受け入れることができずに悩んでいた暁子だったが、金星人として目覚めたことから「美しさとは強さである」と気づき、入院中の父・重一郎に本当の病名を告げる勇気を持つ。このときの橋本愛は、サイコーに美しい。それまでバラバラだった大杉家は、本当の家族として覚醒を果たす。
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大物代議士の秘書をつとめる黒木(佐々木蔵之介)は、伊余子(中嶋朋子)だけでなく大杉家全員の行動を掌握していた。
 吉田大八監督は今の映画界において、とても希有な存在だ。代表作である『桐島、部活やめるってよ』を例にすると、彼の描く世界は何層ものレイヤー状に分かれており、どのレイヤーから眺めるかによって世界はまったく別物に映る──という独特の視点で映画を撮り続けていることが分かる。実話をベースにした『クヒオ大佐』(09)の結婚詐欺師(堺雅人)は女たちを騙し、女たちはそれを幸せとして受け入れた。『紙の月』の真面目な銀行員(宮沢りえ)は破滅の道を走りながら、生の輝きを放った。今にも底が抜け落ちそうな不安定な世界で、それぞれの作品の登場キャラクターたちは自分たちなりの幸せを手に入れようと苦闘する。吉田大八監督が描く世界は、とても美しく、そしてそれと同じくらい残酷である。  天才作家・三島由紀夫が書き記した異色小説が、吉田大八監督という素晴しい映像翻訳家の手によって、味わい深い現代ドラマとして蘇った。実相寺昭雄監督&金城哲夫脚本による『ウルトラセブン』(67~68年、TBS系)の名エピソード「狙われた街」で、メトロン星人とモロボシ・ダン(ウルトラセブン)がちゃぶ台を挟んで人類の存亡について討論するシーンを少年時代に見たときと同じような驚き、センス・オブ・ワンダーが映画版『美しい星』にも感じられる。 (文=長野辰次)
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『美しい星』 原作/三島由紀夫 脚本/吉田大八、甲斐聖太郎 監督/吉田大八  出演/リリー・フランキー、亀梨和也、橋本愛、中嶋朋子、羽場裕一、春日純一、友利恵、若葉竜也、坂口辰平、藤原季節、赤間麻里子、武藤心平、川島潤哉、板橋駿谷、佐々木蔵之介 配給/ギャガ 5月26日(金)よりTOHOシネマズ日本橋ほか全国ロードショー (c)2017「美しい星」製作委員会 http://gaga.ne.jp/hoshi

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他言語を学ぶとは新しい世界観を手に入れること。新時代の扉を開ける宇宙からの福音『メッセージ』

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これまで実在の社会問題を題材にしてきたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が、新作『メッセージ』では問題の解決法を提示している。
 かつてアメリカ大陸はインディアンが自由を謳歌する楽園だったが、白人入植者たちの勘違いによって長い長い殺戮の歴史が始まった。インディアンには土地を所有するという概念がなく、白人入植者たちが土地を譲渡してもらう代わりに渡した銃やナイフをプレゼントだと思って喜んで受け取った。ところがインディアンがいつまでも土地から出ていかなかったため、契約違反だと怒った白人たちはインディアンの大量虐殺を始めた。人類はそんなコミュニケーションの行き違いによる悲劇を何度何度も繰り返してきた。『ブレードランナー2049』(10月公開)でも注目されるドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のSF大作『メッセージ』(原題『ARRIVAL』)は、人類と地球外生命体とのファーストコンタクトを描いたもの。SFファン以外にも様々なインスピレーションを与えてくれる魅力に溢れた作品となっている。 『メッセージ』の主人公はひとりの女性言語学者。ルイーズ・バンクス(エイミー・アダムス)は別れた夫との間にひとり娘ハンナがいたが、病いによってハンナは若くしてこの世を去った。心にぽっかり空いた穴を埋めるべく言語学の研究に勤しんでいたルイーズのもとに、米軍大佐のウェバー(フォレスト・ウィテカー)が現われ、米軍の極秘調査に協力して欲しいと頼む。折しも世間は宇宙から飛来した巨大飛行体のニュースで大騒ぎとなっており、その宇宙人とのコミュニケーション方法をルイーズに考えてほしいという依頼だった。ウェバー大佐が持ってきた音声データだけでは、宇宙人が何をしゃべっているのか見当もつかない。エイミーは宇宙人と直接会うこと以外に彼らの言語を理解する方法はないと進言する。  ルイーズはウェバー大佐、さらに数学者のイアン(ジェレミー・レナー)と共に大平原に浮かぶ巨大な宇宙船へと近づく。緊張で震えるルイーズたちの前に、ついに七本脚の宇宙人“ヘプタポッド”が出現する。「HUMAN(私たちは人間)」と書いた手描きのボードに、身ぶり手ぶりを交え、2体のヘプタポッドと懸命にコミュニケーションを図るルイーズ。高い知能を有するヘプタポッドは、円形状の不思議なデザインを描いて応える。表意文字ならぬ、表義文字が彼らの伝達手段だった。未知なる文明を持つ彼らの言語は、一度では到底理解することは不可能。だが、ルイーズはコミュニケーションを重ね、分析することで少しずつ彼らの言葉を理解し、それと同時に今まで感じたことのない不思議な感覚を身に付けることになる。
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言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は考えるうる限りの方法で、宇宙人たちとの会話を試みる。
 中国系米国人テッド・チャンの短編小説『あなたの人生の物語』は理数系人間好みの難解なSFストーリーだが、カナダのケベック州(フランス語圏)出身のヴィルヌーヴ監督は見事な映像化に成功している。敵か味方か分からない、謎の地球外生命体と試行錯誤しながらコミュニケーションを図る過程がドラマとして描かれるというハリウッド大作向けではない地味な内容ながら、昨年公開された北米では興行的な成功を収め、数々の映画賞に輝いた。ひどく哲学的内容に感じられる『メッセージ』だが、極めて簡単に言ってしまえば【母国語以外の言語を学ぶということは、母国以外の価値観と世界観を受け入れるということ】という外国語を学ぶ人にとっての基本的な心構えをドラマ化しているということだ。  巨大宇宙船は米国以外にも世界各地に出没しており、どの国もいち早く宇宙人が何の目的で地球に現われたのかを知ろうとする。中国政府は麻雀パイを使って宇宙人とのコミュニケーションを図ろうとするが、このことを知ったルイーズは強く反対する。勝者と敗者を決める麻雀の概念を使って彼らとコミュニケーションすることは、あまりにも危険だからだ。そして、彼らヘプタポッドが地球に現われたのも、そのためだった。勝者が敗者を食い物にするという人類が延々と続けてきた“ゼロサムゲーム”の歴史から、人類を解放しようと彼らはしていた。そのためにルイーズは、ヘプタポッドからある“武器”を与えられることになる。
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宇宙人が書き記した宇宙語の文字。宇宙語を学ぶことで、ルイーズの思考性に大きな変化が現われる。
 娘を亡くした心の傷を負いながらも気丈に振る舞う言語学者役を、実力派女優エイミー・アダムスがさすがの好演。大小2体のヘプタポッドのことを「アボットとコステロ」と親しみを込めて呼び、交流を重ねていく姿は微笑ましくもある。そして何よりも、本作を撮ったのがヴィルヌーヴ監督であることが重要だろう。1989年にモントリオール理工科大学で女性嫌いの青年が女子大生14人を銃殺した実在の事件を再現した『静かなる叫び』(09)でヴィルヌーヴ監督はカナダ国内で注目を集め、中東紛争で女性や子どもたちが虐待されてきた歴史をドラマ化した『灼熱の魂』(10)がアカデミー賞外国語賞にノミネートされ、国際舞台へとジャンプアップした。  さらにハリウッドでは、幼児拉致監禁事件を題材にした『プリズナーズ』(13)、麻薬カルテルとFBI捜査官との壮絶な麻薬戦争を描いた『ボーダーライン』(15)と着実にキャリアを刻んできた。ヴィルヌーヴ監督は現代社会に渦巻くシリアスな問題から目をそむけることなく、激しいバイオレンスを交えて、リアルな作品に仕立ててきた。そんな禍々しい現実を見つめてきたヴィルヌーヴ監督が、本作ではヘプタポッドから学んだ新しい概念によってあらゆる問題を解決することを試みている。ヴィルヌーヴ監督がこれまで描いてきた悲劇の数々は、本作の主人公であるルイーズが目覚めたことで、すべて救われることになる。ルイーズがどのように目覚めたのかは、この記事を読んだあなた自身の目で劇場で確かめてみてほしい。  勝者と敗者に分ける二者択一の窮屈な世界から、もっと自由で広大な宇宙へ。ヴィルヌーヴ監督が撮った『メッセージ』は新しい世界への招待状となっている。 (文=長野辰次)
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『メッセージ』 原作/テッド・チャン 脚色/エリック・ハイセラー 監督/ドゥニ・ヴィルヌーヴ 出演/エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー、マイケル・スタールバーグ、マーク・オブライエン 配給/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 5月19日(金)より公開 http://www.message-movie.jp

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絶不調の日ハム・栗山監督、更迭なら大泉洋が大ショック!? 今冬公開『探偵はBarにいる3』極秘出演で……

絶不調の日ハム・栗山監督、更迭なら大泉洋が大ショック!? 今冬公開『探偵はBarにいる3』極秘出演で……の画像1
日本ハムファイターズ公式サイトより
「最下位は脱出したものの、まだそんなに差がないですからね。4月には10連敗して最下位に沈むなど開幕ダッシュに失敗するし、何より大谷翔平のケガが誤算でしょうね。現時点で復帰の目処が立っていないのはつらいところですよ。監督にとっても、今年はどうしても優勝しないといけない理由がありますからね」(スポーツ紙記者)  昨年のプロ野球日本一のチーム、北海道日本ハムファイターズが苦戦を強いられている。 「今年はWBCの影響で主力選手の中田翔やケガの大谷などがオープン戦に出場していなかったこともあって、開幕前からチームに覇気が感じられませんでした。そのまま開幕ダッシュに失敗して、5月に入った今も立て直しを図っている最中ですね」(テレビ局関係者)  栗山英樹監督が就任してからというもの、就任初年の2012年にはリーグ制覇、翌13年には最下位、そして昨年は日本一と順位は激しく乱高下している。 「当然、2年続けて結果を残すのは難しいですが、今年も最下位に沈むようなことがあれば、進退問題につながりかねません。しかも、実は監督は、今年12月に公開の映画『探偵はBarにいる3』に本人役で出演してるんです。主演の大泉洋さんが北海道出身で、作品の舞台も北海道ということもあって、北海道を盛り上げたいと製作サイドから球団に出演オファーがあったそうです」(芸能事務所関係者)  確かに公開直前に日本一にでもなれば、北海道がお祭り騒ぎになるのは間違いないが、現状の成績だと雲行きは怪しい。肝心の役どころはというと……。 「札幌市内でのインタビューシーンでセリフもありますし、周囲でアクションシーンもある重要な場面なので、今さらカットはできません。最悪なのは、途中で成績不振で更迭されることです。少なくとも今年いっぱいは監督を務めてもらわないと……。映画スタッフも、今の日ハムの成績には頭を抱えてますよ。それ以上に監督は、出演を後悔してるかもしれませんね」(映画関係者)  バーにいるのは探偵ではなく、ヤケ酒をあおっている栗山監督かもしれない。

イタリアでは日本のアニメが猛烈な人気だった!? 永井豪が大好きな映画監督にその内情を聞いてみた

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超人化したエンツォ(クラウディオ・サンタマリア)をアレッシア(イレニア・パストレッリ)は『鋼鉄ジーグ』の主人公と混同する。
『マジンガーZ』『キューティーハニー』など、TVアニメのジャンルでも数々の傑作を残してきた天才漫画家・永井豪。欧州での人気も高いとウワサには聞いていたが、これほどだったとは!? イタリアで大ヒットした実写映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』は、1970年代にイタリアでもテレビ放映された永井豪原作アニメ『鋼鉄ジーグ』(英題『Jeeg Robot』)がきっかけで、ローマで暮らすケチなチンピラ男が正義のヒーローへと目覚めていくというユニークなアクションドラマ。イタリアでは2016年の年間興収ベスト5にランキングされ、その年のイタリア国内の映画賞を席巻するなど、多くのイタリア人の心に突き刺さった作品なのだ。来日したガブリエーレ・マイネッティ監督にイタリアでの永井豪作品の人気ぶり、そしてイタリアでこれまでスーパーヒーローものが生まれなかった社会背景について尋ねた。 ──イタリアで日本産TVアニメの放映が始まったのは1978年から。中でも永井豪原作の『UFOロボ グレンダイザー』(英題『Goldrake』)は凄まじい人気を呼び、翌年には『鋼鉄ジーグ』が放映されることになったそうですね。1976年生まれのガブリエーレ監督は当時まだ3歳だったわけですが……。 ガブリエーレ・マイネッティ イタリアでも「君の年齢で『鋼鉄ジーグ』を知っているのか?」と驚かれることがあります(笑)。でも、『鋼鉄ジーグ』はイタリアでも人気だったので、何度も夕方に再放送されていたんです。僕らの世代や僕らよりちょっと上の世代にとっては、日本のアニメーションは特別な存在。日本のアニメーションは僕らの心の中に根づいていると言っていいくらいです。最近ではテレビの地上波で日本のアニメが流れることは少なくなりましたが、ケーブルTVのアニメ専門チャンネルでは、今でも『鋼鉄ジーグ』が放送されているんです。 ──永井豪作品の中では『鋼鉄ジーグ』は、それほど評価の高い作品ではありません。ガブリエーレ監督は『鋼鉄ジーグ』のどこに魅了されたんですか? ガブリエーレ 永井豪の作品はどれも魅力的です! バイオレンスに満ちあふれていて、しかも道徳的ではありません。子どもの頃の僕は暴れん坊だったこともあって、永井豪作品の正義を押しつけようとしない作風にはとても親しみを感じました。『鋼鉄ジーグ』は日本ではあまり人気がないということも知っています。イタリアでも、より人気が高いのは『マジンガーZ』。米国ではヒーロー気取りの人間のことを『スーパーマンかよ』と揶揄しますが、イタリアでは『マジンガーかよ』と言うほど定着しているんです(笑)。でも、『鋼鉄ジーグ』は僕にとって特別な存在。『鋼鉄ジーグ』の主人公・司馬宙はいつも暴走気味で、失敗もするけど、最終的には正しいことをする。イタズラ好きだった少年時代の自分を肯定されているように思えたんです。それに磁石で手足が自由にくっついたり離れたりする、ジーグロボの玩具も素晴しかった。『ジーグ』はつまんねぇというヤツがもしいれば、僕は決闘を申し込みたい。そのくらい、僕は『ジーグ』のことを愛して止みません(笑)。『ジーグ』のことを愛しているのは僕だけではありません。イタリアのあるドキュメンタリー番組は、社会にはびこる不正を正すという内容のものなんですが、その番組のテーマ曲として『鋼鉄ジーグ』の主題歌が流れるんです。このことからも、『鋼鉄ジーグ』をはじめとする日本のアニメをイタリア人がいかに熱烈に愛しているかが分かってもらえるんじゃないでしょうか。 ──処女作には監督のすべてが込められていると言われますが、長編デビュー作に『鋼鉄ジーグ』をモチーフにすることは最初から考えていた? ガブリエーレ 最初はそうではありませんでした。イタリアでいちばん人気のある『グレンダイザー』をモチーフにできないかと考えていたんです(笑)。でも、ストーリーを考えていくうちに、自分のことしか考えないダメな主人公が内面的に徐々に変化していくという映画の内容に相応しいのは、『鋼鉄ジーグ』しかないと思うようになっていったんです。
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毛糸で編んだジーグロボのマスクを手にしたガブリエーレ・マイネッティ監督。「永井豪先生は神のような存在です」。
■明るいイタリア人の知られざる国民性とは……? ──主人公のエンツォ(クラウディオ・サンタマリア)はローマの下町で暮らすゴロツキ野郎。置き引きなどのケチな犯罪でお金を稼ぎ、後は自宅のアパートでエロDVDを観ているという最下流人生を送っている。そんなエンツォは川に不法投棄された放射性廃棄物の影響で、未知のパワーを得ることに。陽気な国イタリアのダークな部分がディテールたっぷりに描かれているのも印象的です。 ガブリエーレ 警察に追われたエンツォが飛び込むのは、テヴェレ川です。ローマ市を二分する川で、しかもローマ神話ではローマの街の始まりとなったとされているエリアでもあるんです。そんな神話の言い伝えられる川で、エンツォは洗礼を受けて生まれ変わるわけです。実際問題として、イタリアの水質汚染や土壌汚染は大変な事態になっています。かつてはテヴェレ川で子どもたちは泳いだりしたんですが、水質汚染で遊泳することは法律で禁じられています。また、ローマ市郊外の荒廃した貧しい地区では、水道代を払えない人たちが下水をシャワー代わりに浴びたりしていましたが、それも禁じられています。汚染物質がまったく処理されないまま、川などに棄てられ、深刻な環境汚染を招いている状況なんです。ナポリのあるカンパニア州では土壌汚染が酷く、ガン発生率がとんでもない数値になっています。そういう社会背景もあって、テヴェレ川に棄てられた放射性物質の影響で主人公は超人パワーを得るというアイディアを思いついたんです。 ──主人公エンツォはイタリア市民の怒りを具現化した存在でもあるんですね。イタリアではこれまで国産のスーパーヒーローが存在しなかったと聞いています。スーパーヒーローが過剰気味の日本から見ると不思議に思えるんですが、ガブリエーレ監督はその理由をどう考えていますか? ガブリエーレ スーパーヒーローものをどうすれば現代のイタリア社会で成立させることができるかを本作の脚本を書く際に熟考したのですが、素晴しいスーパーパワーが手に入った場合、すぐに社会正義をなすだろうかということがいちばんの疑問でした。実際にそんな能力が使えたら、他人のためじゃなくて自分のために使うんだろうなと(笑)。イタリア人をひとつに括ることはできませんが、イタリア人の傾向としてエゴイストな性質があると思うんです。自分や自分の身内さえよければいいと。社会問題が起きると、何かスケープゴートになるものを見つけて、それを叩くことで満足してしまう。もちろん、政治の世界などではカリスマ性のある指導者は過去に存在したと思うけれど、現代のイタリアにはスーパーヒーローと呼べる存在はいません。それなら映像文化と共に育ってきた自分たちの世代が自分たちに相応しいスーパーヒーロー像を考えてみよう、ということで生まれたのが本作。スーパーパワーを手に入れたエンツォは最初はATMを丸ごと盗むなどの犯罪行為を重ねますが、ヒロインと出逢うことで徐々に内面的に変わっていく。そして、そのヒロインが熱狂的に愛するアニメが『鋼鉄ジーグ』だったという内容になったんです。 ──付き合う女によって男が変わっていく──というドラマ展開のほうがイタリア人にはリアルだったんですね。怪力自慢の自己チュー男と頭の弱いヒロインという組み合わせはイタリア映画界の名匠フェデリコ・フェリーニの『道』(54)を彷彿させ、ホロッときます。 ガブリエーレ 確かにそうですね。イタリア人にとってはフェリーニ監督の『道』はとても特別な作品です。でも、今回の作品は『道』を意識したわけではありません。どちらかというとリュック・ベッソン監督の『レオン』(94)に近い。本作の主人公エンツォは自分のお気に入りの甘いヨーグルトばかり食べているけど、『レオン』の大男ジャン・レノが子どもみたいにミルクを飲んでいるみたいなもの。あのときのナタリー・ポートマンは少女だったけど、大人の女性のような魅力を持っていた。本作のヒロインであるアレッシア(イレニア・パストレッリ)は身体は大人の女性なんだけど、頭の中は無垢な少女のまま。『レオン』のヒロインとは対称的な設定になっているんです。
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ヴィラン役のジンガロ(ルカ・マリネッリ)。ナルシストチックな狂乱演技で物語の後半を大いに盛り上げる。
■欲望に忠実な永井豪ワールドの住人たち ──イタリアでは永井豪原作の巨大ロボットものが大人気だったようですが、日本では『デビルマン』や『キューティーハニー』は時代を越えて今も愛され続けています。他の永井豪作品はどうですか? ガブリエーレ 『キューティーハニー』は変身中に洋服が破けちゃうシーンが忘れられません(笑)。『キューティーハニー』は残念ながら、イタリアでは地上波では放映されませんでしたね。永井豪作品にはポルノチックな要素もあり、もちろんそこも大きな魅力です。『デビルマン』に関しては時間がどれだけあっても語り足りないくらい、僕は大好きです。アニメ版もコミック版もどちらの『デビルマン』も大好き。スーパーヒーローが正義のために戦うのはすっごくストレスを感じることだと思うけど、でもデビルマンは怒りのパワーが悪と戦うための原動力になっている。永井豪作品を観る度に「お前は正しい。お前はお前のままでいいんだ」と自分を肯定してもらっているように思えてくるんです。僕が映像表現の世界に進んだのは、子どもの頃に観たそういった日本のアニメーションに感動したからなんです。 ──2012年にガブリエーレ監督が撮った短編映画『Tiger Boy』は覆面を被ったプロレスラーに憧れる少年の成長ドラマでした。「強い人間になりたい」という変身願望がガブリエーレ監督作品のテーマとなっているようですね。 ガブリエーレ 『Tiger Boy』は『タイガーマスク』をモチーフにしたものです(笑)。“変身”というテーマは自分では意識していませんでしたが、そうかもしれません。僕自身は恐がりなので、強い人間になりたいという気持ちから映画を撮っている部分があるようです。スーパーヒーローのような強い人間は僕らに勇気を与えてくれますが、でもその勇気を本当に自分のものにするためには、自分自身が変わることが必要です。ようやく新作の脚本を書き終えたところで、新作は日本のアニメーションをモチーフにはしていませんが、やはり主人公に勇気を与えてくれる人物が登場します。僕が描く作品の主人公たちは変身するきっかけを探し求めているのかもしれませんね。日本は『鋼鉄ジーグ』が生まれた、僕にとっては特別な国です。日本のみなさんにも、日本のアニメで育った僕の作品に関心を持っていただけると嬉しいです。 (取材・文=長野辰次)
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『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』 監督・音楽・製作/ガブリエーレ・マイネッティ 出演/クラウディオ・サンタマリア、ルカ・マリネッリ、イレニア・パストレッリ、ステファノ・アンブロジ 配給/ザジフィルムズ 5月20日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかロードショー http://www.zaziefilms.com/jeegmovie ●ガブリエーレ・マイネッティ 1976年ローマ生まれ。ニューヨークのティッシュ・スクール・オブ・アートで演出・脚本・撮影などを学ぶ。舞台、映画、テレビなどで俳優としてのキャリアを築く一方、2011年に製作会社「Goon Films」を設立。第一弾作品として短編映画『Tiger Boy』を監督し、ブレスト・ヨーロピアン映画祭など各国の映画祭の短編部門で映画賞を受賞。長編デビュー作となった『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』はイタリアのアカデミー賞と呼ばれる「ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞」で最多16部門にノミネートされ、新人監督賞をはじめ最多7部門での受賞を遂げた。

イタリアでは日本のアニメが猛烈な人気だった!? 永井豪が大好きな映画監督にその内情を聞いてみた

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超人化したエンツォ(クラウディオ・サンタマリア)をアレッシア(イレニア・パストレッリ)は『鋼鉄ジーグ』の主人公と混同する。
『マジンガーZ』『キューティーハニー』など、TVアニメのジャンルでも数々の傑作を残してきた天才漫画家・永井豪。欧州での人気も高いとウワサには聞いていたが、これほどだったとは!? イタリアで大ヒットした実写映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』は、1970年代にイタリアでもテレビ放映された永井豪原作アニメ『鋼鉄ジーグ』(英題『Jeeg Robot』)がきっかけで、ローマで暮らすケチなチンピラ男が正義のヒーローへと目覚めていくというユニークなアクションドラマ。イタリアでは2016年の年間興収ベスト5にランキングされ、その年のイタリア国内の映画賞を席巻するなど、多くのイタリア人の心に突き刺さった作品なのだ。来日したガブリエーレ・マイネッティ監督にイタリアでの永井豪作品の人気ぶり、そしてイタリアでこれまでスーパーヒーローものが生まれなかった社会背景について尋ねた。 ──イタリアで日本産TVアニメの放映が始まったのは1978年から。中でも永井豪原作の『UFOロボ グレンダイザー』(英題『Goldrake』)は凄まじい人気を呼び、翌年には『鋼鉄ジーグ』が放映されることになったそうですね。1976年生まれのガブリエーレ監督は当時まだ3歳だったわけですが……。 ガブリエーレ・マイネッティ イタリアでも「君の年齢で『鋼鉄ジーグ』を知っているのか?」と驚かれることがあります(笑)。でも、『鋼鉄ジーグ』はイタリアでも人気だったので、何度も夕方に再放送されていたんです。僕らの世代や僕らよりちょっと上の世代にとっては、日本のアニメーションは特別な存在。日本のアニメーションは僕らの心の中に根づいていると言っていいくらいです。最近ではテレビの地上波で日本のアニメが流れることは少なくなりましたが、ケーブルTVのアニメ専門チャンネルでは、今でも『鋼鉄ジーグ』が放送されているんです。 ──永井豪作品の中では『鋼鉄ジーグ』は、それほど評価の高い作品ではありません。ガブリエーレ監督は『鋼鉄ジーグ』のどこに魅了されたんですか? ガブリエーレ 永井豪の作品はどれも魅力的です! バイオレンスに満ちあふれていて、しかも道徳的ではありません。子どもの頃の僕は暴れん坊だったこともあって、永井豪作品の正義を押しつけようとしない作風にはとても親しみを感じました。『鋼鉄ジーグ』は日本ではあまり人気がないということも知っています。イタリアでも、より人気が高いのは『マジンガーZ』。米国ではヒーロー気取りの人間のことを『スーパーマンかよ』と揶揄しますが、イタリアでは『マジンガーかよ』と言うほど定着しているんです(笑)。でも、『鋼鉄ジーグ』は僕にとって特別な存在。『鋼鉄ジーグ』の主人公・司馬宙はいつも暴走気味で、失敗もするけど、最終的には正しいことをする。イタズラ好きだった少年時代の自分を肯定されているように思えたんです。それに磁石で手足が自由にくっついたり離れたりする、ジーグロボの玩具も素晴しかった。『ジーグ』はつまんねぇというヤツがもしいれば、僕は決闘を申し込みたい。そのくらい、僕は『ジーグ』のことを愛して止みません(笑)。『ジーグ』のことを愛しているのは僕だけではありません。イタリアのあるドキュメンタリー番組は、社会にはびこる不正を正すという内容のものなんですが、その番組のテーマ曲として『鋼鉄ジーグ』の主題歌が流れるんです。このことからも、『鋼鉄ジーグ』をはじめとする日本のアニメをイタリア人がいかに熱烈に愛しているかが分かってもらえるんじゃないでしょうか。 ──処女作には監督のすべてが込められていると言われますが、長編デビュー作に『鋼鉄ジーグ』をモチーフにすることは最初から考えていた? ガブリエーレ 最初はそうではありませんでした。イタリアでいちばん人気のある『グレンダイザー』をモチーフにできないかと考えていたんです(笑)。でも、ストーリーを考えていくうちに、自分のことしか考えないダメな主人公が内面的に徐々に変化していくという映画の内容に相応しいのは、『鋼鉄ジーグ』しかないと思うようになっていったんです。
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毛糸で編んだジーグロボのマスクを手にしたガブリエーレ・マイネッティ監督。「永井豪先生は神のような存在です」。
■明るいイタリア人の知られざる国民性とは……? ──主人公のエンツォ(クラウディオ・サンタマリア)はローマの下町で暮らすゴロツキ野郎。置き引きなどのケチな犯罪でお金を稼ぎ、後は自宅のアパートでエロDVDを観ているという最下流人生を送っている。そんなエンツォは川に不法投棄された放射性廃棄物の影響で、未知のパワーを得ることに。陽気な国イタリアのダークな部分がディテールたっぷりに描かれているのも印象的です。 ガブリエーレ 警察に追われたエンツォが飛び込むのは、テヴェレ川です。ローマ市を二分する川で、しかもローマ神話ではローマの街の始まりとなったとされているエリアでもあるんです。そんな神話の言い伝えられる川で、エンツォは洗礼を受けて生まれ変わるわけです。実際問題として、イタリアの水質汚染や土壌汚染は大変な事態になっています。かつてはテヴェレ川で子どもたちは泳いだりしたんですが、水質汚染で遊泳することは法律で禁じられています。また、ローマ市郊外の荒廃した貧しい地区では、水道代を払えない人たちが下水をシャワー代わりに浴びたりしていましたが、それも禁じられています。汚染物質がまったく処理されないまま、川などに棄てられ、深刻な環境汚染を招いている状況なんです。ナポリのあるカンパニア州では土壌汚染が酷く、ガン発生率がとんでもない数値になっています。そういう社会背景もあって、テヴェレ川に棄てられた放射性物質の影響で主人公は超人パワーを得るというアイディアを思いついたんです。 ──主人公エンツォはイタリア市民の怒りを具現化した存在でもあるんですね。イタリアではこれまで国産のスーパーヒーローが存在しなかったと聞いています。スーパーヒーローが過剰気味の日本から見ると不思議に思えるんですが、ガブリエーレ監督はその理由をどう考えていますか? ガブリエーレ スーパーヒーローものをどうすれば現代のイタリア社会で成立させることができるかを本作の脚本を書く際に熟考したのですが、素晴しいスーパーパワーが手に入った場合、すぐに社会正義をなすだろうかということがいちばんの疑問でした。実際にそんな能力が使えたら、他人のためじゃなくて自分のために使うんだろうなと(笑)。イタリア人をひとつに括ることはできませんが、イタリア人の傾向としてエゴイストな性質があると思うんです。自分や自分の身内さえよければいいと。社会問題が起きると、何かスケープゴートになるものを見つけて、それを叩くことで満足してしまう。もちろん、政治の世界などではカリスマ性のある指導者は過去に存在したと思うけれど、現代のイタリアにはスーパーヒーローと呼べる存在はいません。それなら映像文化と共に育ってきた自分たちの世代が自分たちに相応しいスーパーヒーロー像を考えてみよう、ということで生まれたのが本作。スーパーパワーを手に入れたエンツォは最初はATMを丸ごと盗むなどの犯罪行為を重ねますが、ヒロインと出逢うことで徐々に内面的に変わっていく。そして、そのヒロインが熱狂的に愛するアニメが『鋼鉄ジーグ』だったという内容になったんです。 ──付き合う女によって男が変わっていく──というドラマ展開のほうがイタリア人にはリアルだったんですね。怪力自慢の自己チュー男と頭の弱いヒロインという組み合わせはイタリア映画界の名匠フェデリコ・フェリーニの『道』(54)を彷彿させ、ホロッときます。 ガブリエーレ 確かにそうですね。イタリア人にとってはフェリーニ監督の『道』はとても特別な作品です。でも、今回の作品は『道』を意識したわけではありません。どちらかというとリュック・ベッソン監督の『レオン』(94)に近い。本作の主人公エンツォは自分のお気に入りの甘いヨーグルトばかり食べているけど、『レオン』の大男ジャン・レノが子どもみたいにミルクを飲んでいるみたいなもの。あのときのナタリー・ポートマンは少女だったけど、大人の女性のような魅力を持っていた。本作のヒロインであるアレッシア(イレニア・パストレッリ)は身体は大人の女性なんだけど、頭の中は無垢な少女のまま。『レオン』のヒロインとは対称的な設定になっているんです。
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ヴィラン役のジンガロ(ルカ・マリネッリ)。ナルシストチックな狂乱演技で物語の後半を大いに盛り上げる。
■欲望に忠実な永井豪ワールドの住人たち ──イタリアでは永井豪原作の巨大ロボットものが大人気だったようですが、日本では『デビルマン』や『キューティーハニー』は時代を越えて今も愛され続けています。他の永井豪作品はどうですか? ガブリエーレ 『キューティーハニー』は変身中に洋服が破けちゃうシーンが忘れられません(笑)。『キューティーハニー』は残念ながら、イタリアでは地上波では放映されませんでしたね。永井豪作品にはポルノチックな要素もあり、もちろんそこも大きな魅力です。『デビルマン』に関しては時間がどれだけあっても語り足りないくらい、僕は大好きです。アニメ版もコミック版もどちらの『デビルマン』も大好き。スーパーヒーローが正義のために戦うのはすっごくストレスを感じることだと思うけど、でもデビルマンは怒りのパワーが悪と戦うための原動力になっている。永井豪作品を観る度に「お前は正しい。お前はお前のままでいいんだ」と自分を肯定してもらっているように思えてくるんです。僕が映像表現の世界に進んだのは、子どもの頃に観たそういった日本のアニメーションに感動したからなんです。 ──2012年にガブリエーレ監督が撮った短編映画『Tiger Boy』は覆面を被ったプロレスラーに憧れる少年の成長ドラマでした。「強い人間になりたい」という変身願望がガブリエーレ監督作品のテーマとなっているようですね。 ガブリエーレ 『Tiger Boy』は『タイガーマスク』をモチーフにしたものです(笑)。“変身”というテーマは自分では意識していませんでしたが、そうかもしれません。僕自身は恐がりなので、強い人間になりたいという気持ちから映画を撮っている部分があるようです。スーパーヒーローのような強い人間は僕らに勇気を与えてくれますが、でもその勇気を本当に自分のものにするためには、自分自身が変わることが必要です。ようやく新作の脚本を書き終えたところで、新作は日本のアニメーションをモチーフにはしていませんが、やはり主人公に勇気を与えてくれる人物が登場します。僕が描く作品の主人公たちは変身するきっかけを探し求めているのかもしれませんね。日本は『鋼鉄ジーグ』が生まれた、僕にとっては特別な国です。日本のみなさんにも、日本のアニメで育った僕の作品に関心を持っていただけると嬉しいです。 (取材・文=長野辰次)
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『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』 監督・音楽・製作/ガブリエーレ・マイネッティ 出演/クラウディオ・サンタマリア、ルカ・マリネッリ、イレニア・パストレッリ、ステファノ・アンブロジ 配給/ザジフィルムズ 5月20日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかロードショー http://www.zaziefilms.com/jeegmovie ●ガブリエーレ・マイネッティ 1976年ローマ生まれ。ニューヨークのティッシュ・スクール・オブ・アートで演出・脚本・撮影などを学ぶ。舞台、映画、テレビなどで俳優としてのキャリアを築く一方、2011年に製作会社「Goon Films」を設立。第一弾作品として短編映画『Tiger Boy』を監督し、ブレスト・ヨーロピアン映画祭など各国の映画祭の短編部門で映画賞を受賞。長編デビュー作となった『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』はイタリアのアカデミー賞と呼ばれる「ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞」で最多16部門にノミネートされ、新人監督賞をはじめ最多7部門での受賞を遂げた。