「イジれる芸人がいない……」板尾創路がバラエティから“干された”ワケと、俳優路線の功罪とは

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吉本興業公式サイトより
「周囲はもうお笑い芸人というよりは俳優さんという認識じゃないですかね。実際、お笑い芸人としてのレギュラー番組は1本だけですからね。本人はバラエティに出たいみたいですけど、事務所は俳優路線に転身させたいみたいですよ」(ドラマスタッフ)  嵐の松本潤が主演を務めるTBS系の日曜劇場『99.9-刑事専門弁護士-』の第4話にゲスト出演したお笑い芸人の板尾創路。現在、WOWOWで放送中の『沈まぬ太陽』にも出演しており、もはや彼を“お笑い芸人”と呼ぶ人は少ない。 「実際、バラエティの世界からは干され始めてるようで、天才的な彼のボケを拾ってうまくイジれる芸人がいないことが問題のようです。彼を生かすことができるのは、ダウンタウンさんや今田耕司さん、東野幸治さんにキム兄くらいじゃないですか。ある程度ベテランなのでギャラも高いし、若手の番組にはキャスティングしにくいんですよ」(バラエティスタッフ)  その結果、NHKの『着信御礼! ケータイ大喜利』が唯一のレギュラー番組となっている。 「まだ特番では起用されますが、今後もバラエティのレギュラーは厳しいかもしれませんね。その代わり、ドラマや映画などはかなりいい役で抜擢されているので、俳優泣かせですよ。松尾スズキさんも彼のことを絶賛してますし、40~50代くらいの有名どころの俳優さんは、みんなライバルだと思ってるみたいです。佐々木蔵之介さんとか西村雅彦さんのように、脇に必ず欲しいという役者さんとは、いつもキャスティングでバッティングしているようですよ」(映画関係者)  このまま俳優業が順調に進めば、ますますバラエティの世界からは遠ざかりそうだ。

板尾創路の“デング熱陰謀論”に異議を唱えた小倉智昭 ネット上では「オヅラの頭が陰謀説」の声も

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『とくダネ!』フジテレビ
 お笑いタレントの板尾創路が6日、デング熱に関する報道や政府の対応に疑問を呈するコメントを自身のTwitterに投稿して、ネット上で話題を呼んでいる。  板尾は「ニュース番組であっても鵜呑みしてはいけません。冷静に自分の身は自分で守ってください!政府というのは恐ろしいです…」とツイート。何を指すか具体的には言及していないが、ツイートと同時に「デング熱報道で隠したかったものとは?」と題したブログのリンクを紹介していることから、デング熱騒動は政府の陰謀だと主張したかったようだ。  このブログによると、デング熱が騒がれている背景には、9月に代々木公園で予定されている反原発集会や内閣改造などから国民の目をそらす目的があるのではないか、というもの。  板尾の“デング熱陰謀論”はSNSなどネットを中心に賛同を集めたが、これに異議を唱えたのがキャスターの小倉智昭。9日放送の自身がメーンキャスターを務める情報番組『とくダネ!』(フジテレビ系)で「そうじゃないでしょ」と、デング熱陰謀論に苦笑した。  ネット掲示板では「オヅラの頭が陰謀説、真実を見せろ」や「オヅラの頭が『そうじゃないでしょ』」という声があったものの、「怪しいブログの陰謀論を鵜呑みにするなんて情けねーよ」「板尾は、エボラは欧米の陰謀と言って医師団を襲撃するアフリカ土人と同レベルw」「こればかりはオヅラが正しい」「山本太郎の原発妄想みたいだな」と、多くのネットユーザーらは板尾ではなく小倉を支持。挙げ句の果てには、「板尾って昔、極楽の山本みたいなことやらなかったっけ?」「さすが中学生と淫行して捕まる糞芸人」などと、板尾が過去に起こした淫行事件まで持ち出される始末。 「そういえば、フリーアナウンサーの吉田照美も、放射能では全然騒がないのにデング熱でこんなに大騒ぎをしているのは変だと、ラジオで叫んでいましたね。板尾に限らず、陰謀論を主張する著名人が存在することは事実」(スポーツ紙記者)  だが、「デング熱陰謀論を唱える人たちは、そもそも今回の騒動の本質をわかっていない」と指摘するのは、全国紙の社会部記者。 「陰謀論を口にする人たちの根拠というのが、デング熱の発症例は昨年の249人だったのに対し、今年は81人。昨年はまったく報じられなかったのにもかかわらず、今年になって大騒ぎするのはおかしい、というもの。しかし、今年8月26日に確認されたのは、戦後初のデング熱国内発生なんです。これまでのデング熱は、外国から持ち込まれた輸入症例。つまり、今騒がれているのは“戦後初”“国内発生”という理由だからなんです。去年の症例数なんて関係ない。今まで国内で発生しなかった病気が、今年になって発生したのだから、そりゃ騒ぎになるのも当然ですよね。代々木公園を封鎖までするのも、感染したとされている人たちの相当数が海外渡航歴もなく、代々木公園やその周辺に行ったと証言しているから。感染場所と考えられる代々木公園を放置しておくなんて考えられません。反原発集会なんて関係ないですよ」  東日本大震災を機にネット上では多くの陰謀論が流布されたが、板尾の唱えるデング熱陰謀論もその類いのひとつと言ってよさそうだ。

「ナベプロに行く」板尾創路のネタ発言に"ギャラ遅配疑惑"の吉本はピリピリムード


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『月光ノ仮面』HP
 吉本興業所属の板尾創路が監督・主演を務めた映画『月光ノ仮面』の初日舞台あいさつが14日、都内で行われた。板尾のほか、出演した浅野忠信、石原さとみらが出席したが、板尾の口から思わぬ発言が飛び出し、スポーツ紙やニュースサイトで大きく取り上げられた。 「司会者が今年の抱負を聞き、それを出席者たちがフリップに書き込んだが、板尾は『たいしたことないんですけど......』と前置きしながら、『ナベプロに行く』と書き込んだフリップを掲げた。出席者たちは『たいしたことありますよ』と色めき立ったが、板尾はどこ吹く風のような表情で『仕事のスタンスは変わらないんですけど、ナベプロいいなと思って』、『ナベプロに興味があります! 吉本しか知らないので......』と淡々と話したという」(スポーツ紙デスク)  板尾の口から出た「ナベプロ」とは、1960年代から70年代にかけて芸能界を席巻し、「当時は『ナベプロにあらずんば、人にあらず』という言葉もあったほど」(ベテラン芸能記者)という「渡辺プロダクション」。2000年に同プロの組織改編によって、芸能プロを分社化し、現在、その中核をなすのは「ワタナベエンターテインメント」。ネプチューン、ホンジャマカ、中山秀征、中川翔子ら売れっ子を抱え、安定した経営を誇っているが、時期が時期だけに板尾の発言はシャレにならなかったというのだ。 「吉本といえば、新年早々、大崎洋社長が公の場で島田紳助の復帰を熱望し『全社員、全タレントの総意』と言い切り大激震が走った。それだけならばまだいいが、『週刊文春』(文藝春秋)と『週刊新潮』(新潮社)の同日発売の1月19日号で所属タレントへのギャラ遅配が報じられた。そんな報道もあっただけに、大喜利的な"ネタ"とはいえ、板尾の発言は『やはり遅配はあるのか?』という印象を与えても仕方ないような"失言"だった。担当マネージャーは大目玉を食らうことになるだろう」(芸能プロ関係者)  「文春」によると、ギャラの遅配が始まったのは昨年秋ごろからで、事前説明もなく、中には半年以上滞ったケースも。タレントが社員に苦情を言うと、「震災の影響」「テレビ局の支払いが遅れている」など理由を付けられ、昨年12月にまとめて支払われたという。  一方、「新潮」によると、関西圏では名の通った「しましまんず」の池山心が競馬専門誌「競馬ブック」(ケイバブック)に連載しているコラムで、「出演ギャラと手売りしたチケットのキックバック20%を上乗せして振り込まれる約束でした。が、振り込まれたギャラの明細書をみると、合計が賞金の額に満たないものでした」と内情を暴露した。  いずれの記事に対しても吉本は否定。しかし、「イベントは失敗続きで、劇場の閉鎖も相次ぎ、平成23年度3月期の決算報告書では約39億円の当期純損失を計上するなど、経営状態は厳しい」(同)というだけに、今後、同社がどうやって経営を建て直すかが注目される。
板尾日記7 ナベプロ板尾も見てみたい!? amazon_associate_logo.jpg
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「俺はいってぇ誰なんだ?」板尾創路監督が第2作で魅せた妙味『月光ノ仮面』

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(C)2011『月光ノ仮面』製作委員会 / 配給: 角川映画
 今週は、クラシカルな題材の現代的な翻案、日常に浸食する非日常、キャスティングの妙が味わい深い日米の新作映画2本を紹介したい。  まず1本目は、1月7日公開のホラーアクション『フライトナイト/恐怖の夜』(2D/3D上映)。ラスベガス郊外で母と暮らし、美人の彼女エイミーと楽しく過ごしていた高校生チャーリー。だが、隣家に魅力的な男ジェリーが引っ越してきてから、級友や町の住民たちが次々と行方不明に。かつてのオタク仲間から、頻発する失踪事件がバンパイアのジェリーの仕業だと知らされたチャーリーは、母と恋人を守るため、ジェリーとの戦いを決意する。  85年の伝説的カルト映画『フライトナイト』(トム・ホランド監督)を、『ラースと、その彼女』(2007)のクレイグ・ギレスピー監督が最新の視覚効果と3D映像でリメーク。主演のアントン・イェルチンは、『スター・トレック』『ターミネーター4』(ともに09)といったSF大作や、堀北真希の恋人役を演じた『誰かが私にキスをした』(10)などへの出演が記憶に新しい。タフガイ役の多いコリン・ファレルのバンパイアも意外にハマっているが、エイミー役の新進女優イモージェン・プーツも派手な目鼻立ちとキュートな笑顔が印象的で、今後の活躍を期待したい。オリジナルを尊重し全体にオーソドックスな展開だが、3D特有の臨場感と没入感でテーマパークのアトラクション的にスリルと興奮を味わえる娯楽作だ。  続いては、板尾創路が監督・脚本・主演の『月光ノ仮面』(1月14日公開)。日本が敗戦から立ち直り始めた昭和22年、ボロボロの軍服に顔じゅう包帯の男が寄席小屋のある町に帰ってくる。男は一切の記憶をなくしているが、どうやらかつての若手人気落語家・森乃家うさぎらしい。古典落語『粗忽(そこつ)長屋』を呪文のようにつぶやく男は、森乃家一門に支えられ、やがて高座に復帰するが......。  板尾監督作品としては『板尾創路の脱獄王』(10)に続く第2作。浅野忠信、石原さとみ、前田吟、木村祐一、宮迫博之といった個性派出演陣をそろえ、テレビでもおなじみのシュールな世界観とナンセンスな笑いをディープに展開。浅野、六角精児、矢部太郎らが劇中で聞かせる達者な噺も、落語ファンにはうれしいポイント。じわじわと溜まっていた不条理が一気に爆発するかのような終盤のクライマックスと、『粗忽長屋』の筋とリンクする不確かなアイデンティティーの妙味が余韻を残す異色作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『フライトナイト 恐怖の夜』作品情報 <http://eiga.com/movie/56859/> 『月光ノ仮面』作品情報 <http://eiga.com/movie/56010/>
しんぼる ホントの"天才"は松っちゃんじゃなかったようで。 amazon_associate_logo.jpg
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特撮ヒーロー=童貞の概念を破る! 井口監督の集大成『電人ザボーガー』

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海外でも熱狂的なファンを持つ井口昇監督。
最新作『電人ザボーガー』は挫折感を抱えた
男たちが、愛する者を守るために再び立ち
上がる感動作だ。
 「今回はボクにとって通過儀礼となる作品なんです」。日本が世界に誇る"奇才"井口昇はそう言った。また、責任という言葉を何度か口にした。これまで『クルシメさん』(98)、『片腕マシンガール』(07)、『ロボゲイシャ』(09)などの井口監督ならではの天衣無縫な演出を楽しんできたファンにとっては「おやおや」と驚く言葉ではないか。製作費3億円を投じたことでも話題となった井口監督史上最大のSF大作『電人ザボーガー』がいよいよ公開される。主演の板尾創路をはじめ、キャストも今までの井口作品に比べちょっぴりメジャー寄りの人たちが並ぶ。でも、心配はご無用。これまで以上の過激さに笑えて、でもホロリとさせられ、最後には爽快感が残る快作に仕上がっているのだ。「ザボーガーって何?」という人がうっかり劇場に入っても、すぐさま作品のはらむ異様な熱気に巻き込まれるはずだ。しかし、井口監督の中で何かが変わりつつあるらしい。井口監督への単独インタビューで、その部分にググッと迫ってみた。 ――1974~75年にフジテレビ系で放映されたピー・プロダクション製作の特撮ドラマ『電人ザボーガー』の劇場版リメイク。『新世紀エヴァンゲリオン』の大月俊倫プロデューサーからのオファーだそうですね。 井口昇監督(以下、井口) そうです。大月プロデューサーはピープロ作品の権利を全部持っていて、(『古代少女ドグちゃん』を撮っていた)ボクに「リメイクしてみない?」と声を掛けてもらったんです。「えぇっ、ザボーガーをやらせてもらえるんですか?」と驚きながらも即答でOKしました。そのときはどんなふうにリメイクするか全然考えはなかったけど。でも、やっぱりピープロ作品は大好きだったので、やりたかった。他の特撮ものの製作会社とピープロは違った質感があるんです。『快傑ライオン丸』(72)とか『鉄人タイガーセブン』(73)とか、なぜかヒーローが動物顔だったりと特異性があって、子供心に印象に残ってました。『ザボーガー』を見ていたのは幼稚園の頃でしたけど、ロボットがバイクに変形するシーンはすごくインパクトがあったことを覚えていますね。
製作費3億円を投じられた特撮大作『電人
ザボーガー』。主人公・大門豊の半生を
第1部青年編、第2部熟年編からなる異例
の2部構成で描く。(c)2011「電人ザボーガー」
フィルム・パートナーズ (c)ピー・プロダクション
――『ウルトラマン』シリーズの円谷プロに比べ、ピープロ作品は見るからにB級感が漂っているのが幼心にも感じられました。 井口 そうですね。ボク、駄菓子屋の息子なんです。店で『仮面ライダー』とかの特撮ヒーローのブロマイドを売ってたんですが、駄菓子屋の中でもピープロのキャラクターは"駄菓子屋感"が漂ってました(笑)。そのことから、いっそう親近感が湧いたんです。自分が駄菓子屋の息子ということもあり、自分の作品には『猫目小僧』(05)、『片腕マシンガール』『ロボゲイシャ』など駄菓子屋感を注入したくなるんです(笑)。安~いお菓子を食べて育った世代。そーゆー人間だからこそ描けるものって、あるんじゃないかと思うんです。そういう意味でも今回の『ザボーガー』はボクの中ですごくぴったりハマった企画でした。 ――『片腕マシンガール』が世界的に大ヒットして、その次の『ロボゲイシャ』も井口監督らしいイマジネーションが炸裂した独創性の高い作品。正直、ここらへんでファン層の拡大を狙った企画に挑む時期かなと思っていたんです。今年、『富江 アンリミテッド』『電人ザボーガー』とリメイクものが続いたのはやや意外でした。 井口 今年はたまたまリメイク作品が2本続いた形になりました。もちろん、『富江』も原作や過去のシリーズが大好きでした。自分の好きな題材を撮らせてもらえて、すごく幸せでした。監督という仕事を選んだ人間の歩む道は、それぞれだと思うんですが、ボクとしては将来的には"人間ドラマ"を撮りたいと考えているんです。特撮も大好きだけど、同じように日本映画も観て育ってきたんです。今回の『ザボーガー』は自分にとっては"通過儀礼"だと思っています。ただの特撮もののリメイクではなく、ひとりの男がさまざまな体験をして人間として成長する姿を描きたかったんです。それに加えて、『ザボーガー』のリメイクには運命的なものを感じていました。生まれて最初にボクが手にしたソフビ人形がザボーガーだったし、自分が映像の仕事を始めるようになってからも、仕事に行き詰まるとピープロの作品のオープニングばかり集めたビデオを栄養ドリンク代わりに観ていました。ピープロ作品に励まされてここまで来たんです。ある意味、今回の『ザボーガー』で自分のキャリアが終わってもいい、くらいの高揚感を感じながら作っていました。
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男に棄てられた恨みを持って甦った
悪のサイボーグ、ミスボーグ
(山崎真実)。敵であるはずの
大門豊の純粋さに心が動かされる
ことに。
――"通過儀礼"ですか。これまでの井口ワールドの集大成と思っていいんでしょうか? 井口 そうですね。ボクも42歳になり、今年の春に結婚して、家庭を持ちました。40歳まで生きたら、やっぱり20代の頃に思い描いていた夢とは異なる壁にもぶち当たるんです。挫折感も覚えるし、自分の限界も見えてくると思うんです。多分、オリジナル版の『ザボーガー』を観ていた世代は、みんなそうなんじゃないかな。家庭を持った人もいるだろうけど、健康を害した人もいるだろうし、うつ病になった人や、会社をリストラされちゃった人もいると思うんです。そういう人生の節目に立つ人たちを励ますものにしたかった。いわば、SF版『ロッキー』なんです。第2部の熟年編の主人公を演じているのは板尾創路さんなんですが、糖尿病の注射を打ちながら戦うという設定になっています。これはボク自身が撮影中、自分は糖尿病なんじゃないかという不安と闘っていたんです。今春、健康診断を受けたら、糖尿病じゃないことが分かり、ホッとしました(笑)。映画の中の糖尿病の注射シーンは、ギャグじゃなくて、ボクにとっては切実な問題だったんです(苦笑)。 ――いつになく、井口監督の話しぶりも熱いですね! 井口 自分にとっては分岐点になる作品だと感じてます。42歳、男の厄年。思うところがやっぱりありますよ。オリジナル版の『ザボーガー』が作られていた時代は、まだ何かを信じることができた。自分の中の正義を信じて、熱くなることができた時代だったと思うんです。今こそ、その熱さをもう一度甦らせるときなんじゃないかなと。奇しくも今年3月に大震災が起き、自分の考えていた"日本人よ、立ち上がれ"というテーマと今の日本社会とがシンクロしたことに驚いているんです。「どうして今、ザボーガーなの?」とよく尋ねられるんですけど、今を生きている人にこそ観てほしいという気持ちで撮り上げた作品なんです。 ■ミスボーグは、男の子にとってのセクスアリス ――井口監督の表情も、今日はキリッとされてますもんね。井口版『ザボーガー』ですが、悪の組織シグマの手先のミスボーグ(山崎真実)が輝いていますね。見事なほどの"悪の華"っぷり。笑顔でムチを打つシーンなどの山崎真実の表情は今まで見せたことのない新しい顔でしょうね。
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熟年期の大門を演じた板尾創路。愛するもの
を失ったトラウマと闘いながら、シグマの
総帥・悪之宮博士(柄本明)を追い詰める。
井口 ありがとうございます。山崎さんとは一度、WEBで一緒に仕事をしたことがあり、そのときに「動物的勘の持ち主だなぁ」と思ったんです。山口雄大監督の短編映画『魁!みっちゃん』(09)に主演して、ジャッキー・チェンばりのアクションを披露してたんです。そのギラギラ感がすごく良かった。今回のアクション監督のカラサワ イサオさんは『魁!みっちゃん』も手掛けていて、「山崎真実はすごい。坂口拓を本気で殴って『参った』と言わせたのは男も女もアイツだけだ」と推されたこともありますね。運動神経がすごくいいんです。 ――オリジナル版のミスボーグを演じたのは藤山律子さん。『愛の戦士レインボーマン』(72~73)で演じていた「死ね死ね団」の悪の秘書オルガに比べ、昔の宇宙人みたいな衣装がキツいなぁ~と子供心に感じてたんですが、井口版のミスボーグは現代風にそれなりにアレンジを加えてありますね。 井口 本当は昔のままのコスチュームも考えたんですが、当時のままだとただのお笑いになってしまう。モジモジくんみたいになってしまうんで、ちょっとだけ現代風にしています。でも、70年代のB級感は残したかったので、あのツノだけは外せませんでした。ツノを付けたままで大マジメに芝居をしてくれる女優をずいぶん探しましたが、なかなか決まらなかった。それで「山崎さんはどうだろう」と直感的に思い付いて、頼んだら、すごくうまく行きましたね。本人はコスチュームを最初に着たときはゲラゲラ笑ってましたけど、でもあのコスチュームが様になるのは彼女の力。すごいと思います。あと、今回、裏テーマがありまして、劇場に親子で観にきた子供たちをドキッとさせたいんです。
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自分の信じる正義がわからなくなった大門の
前に現われた謎の美少女・アキコ(佐津川
愛美)。『ダークナイト』ばりのハードな
ドラマが展開。
――『ルパン三世』の峰不二子っぽく、男の子たちにヰタ・セクスアリス体験をさせようと? 井口 そうです(笑)。ミスボーグがムチ責めに遭うシーンで、子供たちにドキッとして欲しいなぁと。劇場で映画を観る"後ろめたさ"を感じてほしいんです。最近の映画って、なかなかそういう後ろめたさがないなぁと思うんです。ボクが子供の頃に親と一緒に映画を観にいって、突然のキスシーンやヌードシーンに気まずさを感じた体験を、今の子供たちにも味じあわせてあげたいなぁと思うんですよ。映画で感じる気まずさって、とても大切なものが含まれているとボクは考えているんです。 ■井口監督の恋愛観、女性観を投影したセリフ ――青年期の大門豊(古原靖久)とミスボーグが禁断の愛に陥り、その後、ミスボーグから「あなたに話さなくちゃいけないことがあるの」と言われるシーンは大人の男もドキッとしますよ。 井口 人生はいろんなことがあるんだよってことを描きたかったんです(笑)。大門って純粋な男。正義のため、父親(竹中直人)の復讐のためだけに生きてきた男。そんな男が、使命以外のことを知ったらどーなるのか。もし、オリジナル版の大門が現代社会に生きていたら、どーなるのか、と考えたんです。多分、組織やら会社に疎まれ、つまはじきになって、うつ病になっちゃうんじゃないかと思うんです。 ――あぁ、正義一直線だと、現代社会では"空気の読めないヤツ"になっちゃう。 井口 そうです。大門が考える正義以外にも、企業にとっての正義とか、いろんな正義があることに大門は直面する。そこで大門に様々な体験をさせ、人間として成長していくドラマにしたかったんです。AVや舞台や映画など、ボクがこれまでにいろんな現場で経験してきたことが反映されていると思います。 ――第1部の終盤でのミスボーグ「女はすべてを壊さないと愛を実感できないのよ」、大門「そんなの分かりたくないよ」というやりとりはシビアな男女の会話ですね。井口監督の恋愛観、女性観が集約されているように感じます。 井口 あのシーンに言及してくれる人、あんまりいないんで、うれしいです! "大門は童貞である"というのがボクの解釈なんです。それで自分が童貞だったときに言われて困ったセリフって何だっけなぁと思いながら考えたシーンなんです。今回の『ザボーガー』に出てくる女性はほとんどサイボーグばっかりなんですけど、女たちはみんな、男に向かって過酷なことを要求するんです。 ――自分の信念を貫くのか、愛を選ぶのか、大門の悩みは男全員にとって"究極の選択"ですね。 井口 そうなんです、そうなんです(苦笑)。人生って、しがらみなんです。仕事を取るのか、彼女を選ぶのか。さらに大門が信じる正義にも、いろんな種類の正義が存在することが見えてくる。大門はいろんなものの板挟みになっていくんです。
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NYで井口作品が上映されると、会場はマニア
熱で覆われる。「すごく、うれしい。でも、
その状況に甘えちゃダメだと思うんです」
と堅実なコメント。
――脚本を書いているときは、ご自身の結婚話が進んでいた頃なんでしょうか? 井口 もう付き合い始めてましたけど、まだ具体的な結婚話はしてなかったかな。でも、この作品を撮りながらも感じたことだし、最近もよく思うのが"責任"という言葉ですね。やっぱり、ひとりの女性と一緒に生きていく上で、人としての任務というか責任が生じると思うんです。恋人を自分の家族にするというのは、やっぱりそれはボクの責任だと思うし。大門なら正義をまっとうするという使命があるし。そういうことは、脚本を書きながらも撮影中もずっと考えていましたね。 ――最後に井口ワールドは今後どうなるのか教えてください。マニアックな道を極めるのか、メジャー路線へとシフトチェンジしていくのか? 井口 オファーがあれば何でも撮りたいというのが、ボクのスタンスなんです。自分としては先ほど話したみたいに、人間ドラマを撮りたいんです。ドラマの演出をするのはすごく好きだし、役者さんと芝居を模索しながら作れるものがやりたいですね。今、考えているのは思春期の少年少女を主人公にしたもの。特撮なしで考えています。それに、おじいさんやおばあさんが観ても「面白い」と思ってもらえる作品を撮りたい。高齢化社会と言われているけど、意外とおじいちゃん・おばあちゃんが楽しめる作品は少ないんじゃないかと思うんです。社会問題をテーマに、笑ったり泣いたりできる娯楽作品を撮っていきたいですね。「スシタイフーン」レーベルで作った新作ゾンビもの『ゾンビアス』(2012年2月公開予定)も、もうすぐ完成します。幅広く作品を撮っていきたいなと思っています。意外とまっとうなことを考えているんですよ(笑)。『片腕マシンガール』や『ロボゲイシャ』を撮っているんで、どうしても非常識でアナーキーな人間だと思われがちですけど、そんなことはないんです。信号はちゃんと青になってから渡りますし、ゴミが落ちていたら拾いますよ。常識がないと、逆にハチャメチャな作品は撮れないんです。そのことは声を大にして言いたいですね(笑)。 (取材・文=長野辰次) 『電人ザボーガー』 監督・脚本/井口昇 特殊造型・キャラクターデザイン/西村喜廣 アクション監督/カラサワ イサオ VFXスーパーバイザー/鹿角剛司 出演/板尾創路、古原靖久、山崎真実、宮下雄也(RUN&GUN)、佐津川愛美、木下ほうか、渡辺裕之、竹中直人、柄本明  配給/キングレコード、ティ・ジョイ 10月15日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー公開 <http://www.zaborgar.com> ●いぐち・のぼる 1969年東京都生まれ。8ミリ作品『わびしゃび』(88)がイメージフォーラムフェスティバルで審査員賞を受賞。平野勝之監督らのもとで撮影現場を経験する一方、松尾スズキが主宰する劇団「大人計画」の舞台でも役者として活躍。主な監督作に『クルシメさん』(98)、『恋する幼虫』(03)、楳図かずおの人気コミックを映画化した『猫目小僧』(05)、『まだらの少女』(05)、谷崎潤一郎の文芸作品を映画化した『卍(まんじ)』(06)、永井豪原作コミックをスプラッター化した『おいら女蛮』(06)、北米で爆発的セールスを記録した『片腕マシンガール』(07)、井口流過激なガールズムービー『ロボゲイシャ』(09)、伊藤潤二の原作イメージに近い『富江 アンリミテッド』(11)などがある。TVシリーズ『栞と紙魚子の怪奇事件簿』(日本テレビ)、『ケータイ刑事 銭形命』(BS-TBS)、『古代少女ドグちゃん』(毎日放送)などのチーフディレクターも務めた。自伝的エッセイ集『恋の腹痛、見ちゃイヤ!イヤ』(太田出版)は古書店で見つけたら、ぜひ手に入れたい名著。
片腕マシンガール 世界が認めた才能。 amazon_associate_logo.jpg
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「複雑な感情を、複雑な感情で演じた」『電人ザボーガー』と俳優・板尾創路の複雑な関係

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「お話をいただいた時は、『僕みたいなおっさんでもヒーロー映画の主役ができるんだ』と思うとうれしかったですね」  "ルミネtheよしもと"の控え室、「吉本新喜劇」の出番を終えた彼は、葉巻たばこをふかしながらこう話した。  1974年から全52話がテレビ放送された『電人ザボーガー』(フジテレビ系)が、36年のときを経て劇場版として蘇る。主役の大門豊を演じるのは、芸人一の演技派と賞される板尾創路。 「コミカルで笑える映画でもあるんですが、そういう要素は作品自体が本来持ってるチープさや、強引な設定などに十分詰まっているので、僕は大門豊として感情移入してマジメに演じました。バイクスタントやワイヤーアクションなど、危険な撮影もできるだけ自分でやりましたよ」   そういえば、伝説のコント番組『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)でも、板尾は度々ヒーロー役を演じていた。そこには"熱血漢"とは無縁の板尾が演じることで漂う奥深さがあり、そのことは今回の起用理由にも共通しているのだろう。  かといって、『電人ザボーガー』がコントちっくなものかといえば、まったく違う。平和を守るため悪に立ち向かい、全力でキックやパンチを繰り出す板尾の姿は、正真正銘のヒーローであった。 「映画は2部構成になっています。古原靖久くん主演の第1部(青年期)は、36年前のアナログっぽさを残しながら撮られていて、僕が出ている第2部(熟年期)は、CG技術やVFXを駆使して作られている。前作をリスペクトしつつもメリハリが効いていて、すごくバランスがいい作品だと思います」 itao100702.jpg  監督は、『ロボゲイシャ』や『片腕マシンガール』の井口昇。過去の井口作品とはケタ違いの総製作費がかけられており、テレビ版からの大胆かつ繊細な調理も、井口ならではの殊功といえよう。近年、映画監督として活躍する板尾も、そんな井口の世界観を賞賛する一人だ。 「以前から井口監督の作品を見て、『ブレのない監督さんやな』と思ってました。自分のやりたいことを最大限にやって、他に類を見ない"井口ワールド"が成立している。作品は独特ですが、ご本人はとても礼儀正しいマジメな方ですよ」  大門とザボーガーの最後の決戦、悲し過ぎるシチュエーションの中で、"正義感"や"無償の愛"などさまざまな感情がぐちゃぐちゃにもつれ合う。そんな壮絶なシーンを、やはり板尾も複雑な心情で演じていたという。 「いわゆる修羅場のシーンですよね。"正義"を信じながらもいろいろな気持ちが入り混じる大門を、僕もとても複雑な感情で演じました。でもこのときの大門は、特に"愛情"が強かったんやないかな」  「普段の僕は、大門を演じているときと違ってイキイキしてないです」と話すクールな板尾だが、ネット上では、『舞台出演中に、客席で具合の悪くなった人を助けたことがあるらしい』との熱いエピソードがうわさされていた。  これを半信半疑で本人にぶつけてみたところ、「3~4年前だったと思います。僕がルミネで新喜劇に出てる最中、客席で男性が倒れていて、舞台から降りて助けに行きました」と、真実であることが判明した。  そんな元来のヒーロー気質(?)である板尾創路主演『電人ザボーガー』は、10月15日よりロードショー。ザボーガーと犯罪組織Σ団の攻防戦はもちろん、サイボーグと人間の奇妙な性描写にも注目だ。 「『ザボーガー』というヒーローをまったく知らなくても、子どもから大人まで楽しめる作品になっています。ぜひ、家族で映画館に見に来てください」 (取材・文=林タモツ) itao100703.jpg 『電人ザボーガー』 監督・脚本/井口昇 特殊造型・キャラクターデザイン/西村喜廣 アクション監督/カラサワ イサオ VFXスーパーバイザー/鹿角剛司 出演/板尾創路、古原靖久、山崎真美、宮下雄也(RUN&GUN)、佐津川愛美、木下ほうか、渡辺裕之、竹中直人、柄本明  配給/キングレコード、ティ・ジョイ 10月15日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー公開 <http://www.zaborgar.com> (c)2011「電人ザボーガー」フィルム・パートナーズ ●いたお・いつじ 1963年、大阪府出身。吉本総合芸能学院(NSC)4期生。91年より『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)にレギュラー出演し、全国区に。バラエティーやコントだけでなく、俳優としても数々のドラマ・映画に出演している。映画監督として『板尾創路の脱獄王』(2010)、『月光ノ仮面』(12年1月公開予定)。
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