『ドラがたり』が読み解く「社会のインフラ」となったドラえもんと、“のび太系男子”の功罪

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『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)
 誰もが子どもの頃に一度は通り、そして大人になっても愛する心をどこかに持っている──それが『ドラえもん』だ。『ドラえもん』は、ダメなのび太とそれを助けるドラえもんの友情物語であり、2014年の映画『STAND BY MEドラえもん』のような泣けるコンテンツであり、そして現在新作映画『のび太の南極カチコチ大冒険』が公開中であるように、今の子どもたちにも愛される、世代を超えた名作である。  だが実は、そんな『ドラえもん』が全盛期だった頃に子ども時代を過ごした世代の男子には、恐るべき特徴があるという。このたび編集者・ライターの稲田豊史氏が上梓した『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)には、そんな鋭い見立てが詰まっている。「てんとう虫コミックスは全巻頭に入っている」という同氏が、この本で読み解こうとした“のび太系男子”の正体とは? ――3月に稲田さんが上梓された『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』は、『ドラえもん』をテーマにした、これまでにない切り口の書籍となっていますね。 稲田豊史(以下、稲田) 2015年の7月から「PLANETS」のメールマガジンで連載を始めたものですが、やっぱり『ドラえもん』は、作品論としても藤子・F・不二雄論としても、もう語られ尽くしてる。その中であえて語るとしたら、今だからこそ書ける『ドラえもん』論じゃないとダメだと思いました。僕も含めた今の30代から40代は、原作が一番元気だった頃の『ドラえもん』を共通原体験として育った世代です。そんな彼らに『ドラえもん』が自分たちに与えた影響をなんとなくわかってもらえたらいいな、というのが目的です。  この本には大きく3つの柱があって、ひとつは『ドラえもん』の作品論。もうひとつは、作者の藤子・F・不二雄論。そして3つ目が、今言った“のび太系男子”にまつわる世代論です。 ――“のび太系男子”は、この本のサブタイトルにもなっていますね。日刊サイゾー読者のために、“のび太系男子”を簡単に説明してもらっていいですか? 稲田 リスクや責任を負うのが嫌で、「果報は寝て待て」みたいな考え方の人ですね。ダメな自分を恥ずかしく思って自己変革するんじゃなくて、ダメな自分をさらけ出すことこそが誠実で、「それでいいじゃん」って言ってしまうのが“のび太系男子”。のび太はたまに努力するんですけど、『ドラえもん』が日常を描く作品である以上、次の話ではまたダメ人間に戻っていて、結局は変わらない。それと一緒で、誠実で優しいことこそが一番の美徳で、いい年こいて「僕は繊細で弱いんだ」って言ってれば、いつかしずかちゃんみたいなマドンナが現れるに違いない……と思っちゃってるような人のことです。 ――本書では30~40代男性、団塊ジュニアとポスト団塊ジュニアに“のび太系男子”が多いと指摘されています。 稲田 僕も含めた、いわゆる「文化系男子」に限ってですけどね。共通して言えることとして、決断が非常に苦手なんですよ。だから、婚期が遅れがちな人が多い(笑)。  彼らのひとつ上の世代はバブル世代で、「早く結婚する奴は馬鹿だ」とか「もっと独身で遊べばいいじゃん」と言って享楽的にお金を使っている先輩や上司がたくさんいました。我々は直近の先輩である彼らをロールモデルにするしかなかったけれど、社会状況や経済状況が変化して、それは許されなくなった。それでも「趣味に生きるのは控えて、将来設計して、貯金して、結婚を考えよう」みたいな決断ができないまま、今に来てしまっている。  こうした精神性を決定づける上で一番大きかったのは、04年に『「のび太」という生きかた』(アスコム)という本が出たことです。あの本以降、「のび太って良いよね」と、のび太に同調する男性が僕の周りでもすごく多くなった。それ以前からも、のび太がいい奴に描かれている『ドラえもん』の傑作選がよく売れていたこともあって、のび太再評価の気運が土壌としてありました。 ――00年頭あたりで、ヴィレッジヴァンガードのようなサブカル書店で『ドラえもん』の「泣ける話」といった傑作選がよく販売されていた印象があります。 稲田 そこでサブカル男子のプライドをうまくくすぐった側面もあるでしょう。自分が小さい頃に好きだったコンテンツが再評価されるのは誰だってうれしい。「『ドラえもん』を好きな俺が好き」って感じにもなった。 ――「婚期が遅れている」ということですが、そんな“のび太系男子”の問題点とは? 稲田 う~ん……いっぱいあり過ぎますね(笑)。とりあえず、状況を切り開いていくファイトが弱い気がします。団塊ジュニア世代は人口も多くて、競争社会でずっと生きてきたから、いい加減疲れちゃってるんですよ。あとは、自分たちが割をくってるという意識が強い。すぐ上のバブル世代が甘い汁を吸ってるのを目の当たりにしてるのに、自分たちは吸えなかったから、被害者意識も強い。……という感じで、なんでも時代や社会状況のせいにしがち(笑)。 ――“のび太系男子”しかり、本書では、『ドラえもん』を「未成熟な男子の欲望の物語」とも見なしています。では、現代社会における“成熟”とは、どういったものなのでしょう? 稲田 『ドラえもん』は、どこかに必ず「正解」が存在する世界だと思うんですよ。その「正解」を最短のプロセスで探すソリューションツールが、ドラえもんという22世紀から来たお世話ロボットです。ただ、“のび太系男子”が小さい頃、『ドラえもん』を読みふけっていた30年前なんかはまだそういう世界だったけど、今は集団や状況によって「正解」は違う。絶対的な「正解」が存在しない複雑な世界になってしまった。そうすると、「正解を探す」という考え方自体が、間違いなわけです。  そんな時代における“成熟”というのは、今の複雑な状況を複雑なままで受け止めて、その中で「どう快適に生きていくか」という、いわば“瞬間瞬間で息をするための技術”を見つけるということでしかない。そういうパラダイム・シフトを受け入れ、「今は昔とは違う世界なんだ」と認められる人が、成熟した人間ではないでしょうか。 ――『ドラえもん』という物語の中では、まだ「正解のある世界」という共同幻想が生きていた? 稲田 『ドラえもん』は、藤子・F・不二雄先生が亡くなった96年に終わっている昔の作品ですからね。しかも90年代の新作は年1本の大長編がメインで、短編はぽつぽつしか描かれていない。みんなが知っている『ドラえもん』の日常話はほぼ80年代、つまり30年近く前に描き切られているんです。  だから、今を生きるのに『ドラえもん』は役に立たないはずなんです。『ドラえもん』は、もっとおとぎ話扱いしなきゃいけない。80年代に「コロコロコミック」(小学館)や単行本で『ドラえもん』をいっぱい読んでいた大人にとって、その頃の思い出や染み付いた価値観はなかなか抜けきらないので、厄介ですが……。
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『ドラえもん』第1巻は1974年の刊行だった
■ドラえもんは日本社会の「インフラ」だ! ――『ドラがたり』では、“のび太系男子”だけでなく、しずかちゃんを打算的な姫タイプの女子、ジャイ子をサブカル文化系の女子としても分析していますね。 稲田 “のび太系男子”と思しき読者の方からは「胸が痛い」という反響があって、そこまでは大体予想していたんです。でも、文化系女子としてのジャイ子の生き方について、「私もジャイ子でした」と共感してくれる女性がけっこういたのは意外でしたね。この本の中では、ひとつの語り口の方法というか、ある種の思考実験として文化系女子をジャイ子に見立てているだけですから、ジャイ子がすごくリアルに現代の文化系女子を表しているとは思わないんですけど。ともかく、男女問わずみんなジャイ子が大好きなんだな、というのはわかりました。 ――“のび太系男子”や“ジャイ子系女子”だけでなく、うるさ型の『ドラえもん』好きからも反響はありましたか? 稲田 うるさ型の『ドラえもん』好き(笑)。ウワサによると、世の『ドラえもん』発言を常に巡回サーチしている“ドラえもん警察”っぽい集団もあるらしいのですが……。その人たちにはまだ見つかってないと思います(笑)。  そもそも僕は、『ドラえもん』は日本における最強のインフラだと思ってるんですよ。だって、こんなに全世代が内容も含めて熟知しているコンテンツって、他にないでしょう。「主要登場人物5人の名前は?」と聞かれたら、団塊世代も未就学児も、多分8~9割の人は言えると思う。『ドラゴンボール』やジブリ作品と比べても、図抜けた知名度です。『ドラえもん』は誰もが意識しないくらい、国民の生活に浸透している。それって、もはやインフラです。  誰もが日常で触れているインフラだけに、作品について僕より詳しい人は世の中にたくさんいます。それもあって、この本では「巷では言われているけど、検証されていないこと」はなるべく書いてません。たとえば、「ドラえもんの諸設定を考えたのは、当時チーフアシスタントだった方倉陽二さん」という話が流布していますが、どの設定が彼の手によるもので、どの設定がF先生も了解していたかは細かく確認できないので、言及しませんでした。極力、公式の原典にたどれるものについてだけ書きました。やっぱり“ドラえもん警察”が怖いんで(笑)。 ――「『ドラえもん』はインフラになっている」という指摘は、興味深いですね。 稲田 面白いのは、世代によって作品の受け取り方がけっこう違うということ。これは長らく感じてました。だから、『ドラがたり』の第1章では、学年誌に掲載された同時期の作品を“水平”に、時系列順の作品を“垂直”にとって、『ドラえもん』の作品性をマッピングしています。アニメ版でも、観ていたのが(現在のアニメで声優を務める水田わさび版の)“水田ドラ”なのか、“大山(のぶ代版)ドラ”なのかでドラえもんに抱く印象が大きく違いますし、リアルタイムで原作を読んでいたかどうかでも違う。その他にも、ザワっとする章タイトルや見出しをぶっこんでおいたので、目次を見ただけで百家争鳴の議論が湧き上がると思います。結果的に、そういう本に仕上がって良かったです。  あと、絶対に言及したかったのは、「エコドラ」ですね。 ■プリウスに東京メトロ……ドラえもんをめぐるイメージ ――エコ(環境問題)を呼びかけるドラえもんのことですね。本書を読むと、その部分は特に稲田さんの筆にも力が入っているのがわかります(笑)。 稲田 環境問題に傾倒した時期の『ドラえもん』が本当にイヤでイヤで。84年くらいからですね。“ぼくたち地球人”というスローガンを掲げて、お行儀が良くて、品行方正で……。極めつけは、大長編『のび太とアニマル惑星』でまるで“放射脳”化したみたいな、のび太のママです。あれは、ひどい。 「エコドラ」に対する嫌悪感をはっきり打ち出した書籍にお目にかかったことがなかったので、この気持ち悪さはどうしても書いておきたかったんです。読者の反響でも「私も嫌だった」って人がわりといて、うれしかったですね。F先生自身も、作品によってはエコに寄り過ぎたことをあとで反省してたらしいんですけど。 ――そういったクリーンなイメージからか、近年でもドラえもんを使ったタイアップは盛んですよね。 稲田 (俳優を起用した実写CMの)トヨタはまあ、わかるんですよ。“のび太系男子”にそろそろ家族ができて、エコ色の強いプリウスをファミリーカーとして買わせたいってことなので。ドラえもん役の俳優にジャン・レノが起用されてますけど、“のび太系男子”は彼の主演した映画『レオン』(96年公開)が響く層でしょう(笑)。この世代の文化系男子は皆、ナタリー・ポートマンの演じた黒髪おかっぱの美少女・マチルダが大好きですからね。  昔は日産も、ラシーンという若者向けの車のCMで「新・ぼくたちのどこでもドア」と謳って、『ドラえもん』を起用していました。それが20年くらい前で、“のび太系男子”の一番上の世代が免許を取ったくらいの時期です。当時はまだ、大学生が車を買う発想があった時代でしたからね。  あとは今、東京メトロが『ドラえもん』を起用して「すすメトロ!」というキャンペーンをやってますが、イラストレーターが描いたオシャレクソなドラえもんが、個人的にはちょっと癇に障ります(笑)。普通に原作かアニメの絵でやればいいのに、なんでフラットデザインのオシャレ絵なんでしょうか、あれ。 ――毒気の抜けたドラえもんですよね(笑)。 稲田 ドラえもんというキャラクターは、デザイン的にものすごくうまくできているんです。特にF先生による原作タッチ、円の組み合わせによるバランスは完璧で、時代を経てもぜんぜん古臭さを帯びません。また、原作とアニメのタッチは全然違うのに、青・白・黄・赤のカラーリングさえしてあれば、アイコンとして成立する。だからこそオシャレ絵にもアレンジしやすいし、アパレル展開なんかで女子受けするような方向性に持っていくのも、わかるんですけど。  実は今回、本に書こうと思って書かなかったのが、「文化系アラサー女子、『ドラえもんが好き』って言っておけばOK問題」です。ほら、「このキャラクターが好きな自分」を打ち出すアピールのやり方ってあるじゃないですか。例えば、『ムーミン』のスナフキンが好きだったら、「北欧にも目配せしてる自由人気質」。ディズニーキャラが好きなら、ちょっとマイルドヤンキー文化にも踏み込んだ「平和的なウェイ系」。サンリオのキティ好きなら、周りからどう思われようと「夢の国の住人」として全身ピンクを着まくるとか。でも、ディズニーとかサンリオ好きって公言すると、ディスられる可能性がありますよね、「サイゾー」みたいな意地悪なメディアに(笑)。 ――稲田さんが「サイゾー」本誌の連載で言ってるだけですよ(笑)。 稲田 とにかく、「『ドラえもん』が好き」なら、全方位で安全なんです。思想的にも中立中庸でニュートラルだし、キャラとしての可愛さもある。さらに、原作に顕著ですが「実はちょっと毒がある」みたいなマニアックなアプローチもできる。そういった深い戦略を踏まえた“ドラえもん好き女子”が、世には結構いるわけですよ! だから、郵便局で『ドラえもん』グッズを売り出せば飛ぶように売れるし、(劇場版最新作の)『のび太の南極カチコチ大冒険』にも若い女子が乗っかれる。身につけてもギリギリ恥ずかしくないキャラとしてのドラえもん。そうやって一大マーケットができているんですよね。
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公開中の『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』
■“虚淵ドラ”だっていいじゃないか! 今後の大長編 ――今、話にも出ましたが、『南極カチコチ大冒険』はいかがでしたか? 稲田 公開直後、ネット上では「クトゥルフ神話っぽい」といった絶賛の意見もよく見られましたが、すみません、僕としては「普通」でした(笑)。偉そうにごめんなさい。もちろん、時間ギミックのアイデアは良かったし、パオパオの登場や『のび太の魔界大冒険』を彷彿とさせるミスリードといった、オールドファンがぐっと来る仕掛けも良かった。導入部はそこそこに、物語がすぐ動き出すなど、子どもたちを飽きさせない工夫もできていました。  でも、原作のない映画オリジナルの『ドラえもん』は、脚本家の力量でもっとぶっ壊してもいいと思うんです。アメコミだってそうでしょう。何十年も前に誕生して、描き手がどんどん変わって、新しい要素や時代性を作品に取り込んだ結果、新規の読者を常に獲得しています。見た目が大きく変わったとしても、最低限の世界観さえ守っていれば、『バットマン』や『スパイダーマン』を名乗れる。それこそ『ドラがたり』にも書いたように、「大長編ドラえもんコード」(大長編の『ドラえもん』を成立させている要件)さえ守っていれば、誰がどう書いたって長編の『ドラえもん』になるんです。 『ドラえもん』は、05年の声優リニューアルで確実に20年は延命したと思いますが、これからさらに延命させたいのなら、新しい脚本家をどんどん起用していけばいいんじゃないでしょうか。それこそ、虚淵玄さんが脚本の映画『ドラえもん』を観てみたい。個人的には、ドラえもんの動力源が原子力だってことをネタにした作品ができると面白いのになと。「体内の原子炉がメルトダウンして、さあ大変。ドラえもんが販売元からリコールされちゃう!」みたいな。 ――最後に、これを読んで久しぶりに『ドラえもん』を読み返したいと思った「日刊サイゾー」読者に、オススメの『ドラえもん』エピソードはありますか? 稲田 やっぱり、大長編の『のび太の魔界大冒険』かな。オールド世代にとって不動のナンバー1・2は、『魔界大冒険』と『のび太と鉄人兵団』。異論は認めん(笑)。 『魔界大冒険』がすごいのは、伏線とその回収です。最初に登場した謎が、その1時間後とかに、小学校低学年が見ても理解できるよう、きっちり解ける。SFのプロットとして図抜けた完成度の高さが魅力です。さらに、「タイムマシン」や「石ころぼうし」といった、ドラえもんの道具の万能性が破られる恐怖もすごい。敵のメジューサからはタイムマシンでも逃げられない。時間を超えてのび太とドラえもんを追跡してくる。このくだりが最高にホラーだっていう意見は、本当に多いんですよ。しかも、『魔界大冒険』は、しずかちゃんのスカートめくりで物語が動き出して、スカートめくりで終わる(笑)。エロスもアドベンチャーも全部入り。完璧です。  原作の大長編『ドラえもん』は、単行本たった1冊分なので、大長編というよりは中編ですが、この短さでアドベンチャーの起承転結が過不足なく描かれています。この見事な構成技術は、僭越ながら僕がものを書いて商売していく上でも、とても役に立っているんですよ。何分くらいで読めるものを、どういうスピード感で語るのが一番快適か。そういうのを小学生のときから感覚として刷り込んでくれたのが、F先生の初期の大長編です。今、読み返してもコマ運びにまったく無駄がない。大河ドラマを得意とした手塚治虫とはまた違った、中短編で光るウェルメイドの素晴らしさが、藤子・F・不二雄作品にはあると思っています。 (構成=須賀原みち) ■稲田豊史(いなだとよし) 1974年、愛知県生まれ。編集者/ライター。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経てフリーランスに。著書に『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)、編著に『ヤンキーマンガガイドブック』(DU BOOKS)、編集担当書籍に『押井言論2012-2015』(サイゾー)など。<http://inadatoyoshi.com/>
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おかしくなっちゃった!? NHKらしくないトーク番組『ねほりんぱほりん』が証明した“人間のおもしろさ”

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NHK Eテレ『ねほりんぱほりん』番組サイトより
 毎回、ワケあって顔出しNGのゲストが登場し、「パリピ」「偽造キラキラ女子」などの知られざる人々の生態を解明するトークバラエティ『ねほりんぱほりん』(NHK Eテレ)。MCの山里亮太(南海キャンディーズ)、YOUが自身にそっくりなモグラ人形に扮し、文字通り根掘り葉掘り突っ込んでいくさまが大好評だ。 「メス感を出す」、「先イエーイ!」などゲストから飛び出すパワーワードの数々に、SNSでは「NHKがおかしくなっちゃった!」「尖りすぎ」などと反響の嵐。先月、惜しまれつつ最終回を迎えた同番組だが、ひそかに放送再開のウワサも……。そんな“NHKらしくない”同番組のディレクター・藤江千紘氏に話を聞いた。
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撮影=尾藤能暢
――番組のスタートには、どんな経緯があったんでしょうか? 藤江千紘(以下、藤江) 2014年くらいに、ネットを見ていてテレビを見ていないような人たちが見るような番組を作ってほしいという局内の要望があったんです。それで、ネットのブロガーの人とか、論客の人に出演してもらって、SNS上などで話題になったトピックなどについて過激に語るトークショーのような番組ができないかなと思いまして。私がネットのことについて全然わからなかったので、30~40人の論客やブロガーの方々と実際にお会いし、お話をし、実感したのはやっぱり顔出しだと話せないし、話すことも丸まっちゃう。じゃあ、顔出ししないで出てもらうのがいいなと思って、顔が出せないなら人形にしちゃえばいいんじゃないかなというのがきっかけですね。それで、そのあとにネット上で話題になっているけど、実際には誰も詳しく知らないっていうことをNHKが徹底的に取材したら、ネットにあるものを後追いしてテレビにするよりも、ネットにはなじむんじゃないかと。テレビに顔出しできない人たちに、人形になってもらって実のところはどうなの? というところを取り上げようというのが、スタートです。 ――いわゆるネット世代が、テレビを見ていないというのは感知していたんですか? 藤江 NHKの視聴者のほとんどが、70代以上ということがわかっていました。なんとかして壮年期以下の視聴者を獲得しないとまずいという問題意識が、この5~10年NHK内部であったんです。同世代や下の年代の友達でテレビを持っていない人も多いので、見られていないな、というのは私自身もすごく感じていました。 ――“ぶっちゃけ系”の番組が流行する中で、人形劇というのが大きな差異だと思うんですけど、アイデアは、どのようにして出てきたんですか? 藤江 思いつきです(笑)。顔がうつらないようなカメラアングルで撮影したり、モザイクにすると悪い人感や下世話というか、アングラな感じが際立っちゃう。だったら、いっそ、ぬいぐるみみたいなかわいい感じにしちゃえば見た目がほのぼのして、不思議でおもしろい感じになるんじゃないかって、家でぼーっと企画を考えているときに、ふと思いつきました。 ――キャラクターのデザインは、MCの山里亮太さんとYOUさんに寄せてデザインしたんですか? 藤江 タイトルが先に決まって、その後に山里さんとYOUさんのMCが決まって、それから人形がモグラとブタに決まりました。ねほりんは、マジメにスコップをもってねほりはほりするピュアなイメージで、ぱほりんは電動ドリルで楽して掘るけど、時々掘ったときの掘り当て方がすごいみたいなイメージ。YOUさんのちょっとけだるそうな感じをイメージして、ぱほりんは半目になるようにしたり、よくワンピースや袖のない服を着ている印象なので、衣装を寄せたりしました。ブタのほうは、実はいろいろと迷ったんです。宇宙人とか架空のものにするかっていう議論があったんですけど、わかりやすくファンタジー感が出るものがいいねって話になり、じゃあなんの動物がいいだろう? ということで、 “タブーを話してもらうからブタ”かなって、オヤジギャグで決まりました。 ――最終回を迎えましたが、ずばり放送再開はあるんですか?
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撮影=尾藤能暢
藤江 先のことなので、私たちもはっきり言えないんですけど、準備はしてます。 ――「尖りすぎ」「NHKらしくない」などSNSの反響がありますが、現場では、どのように捉えていますか? 藤江 NHKではナンパ塾に通う人や、偽装キラキラ女子みたいな、そういう人たちを取り上げること自体が、あんまりないんですね。取り上げるテーマがNHKらしくないという意味で、NHK内の人からちょっと変わっているね、攻めてるねと言われることはあります。でも、番組としては、人間にはいろんな人がいて、全然どんな人かわからないような人や自分とは遠い世界だろうなと思ったような人でも話を聞いてみれば、共通点や、私と近いじゃん! みたいなことがあったり、悪そうだなと思われている人でも、愛おしいところとか憎めないところとか、いろんな部分があって、そういうのも含めて“人間って面白い”って部分を打ち出しています。それについては、大人のための教養番組として、NHKが本来やることの中からそんなに外れてないのではと個人的に思っています。だから、尖っている部分とそうでない部分と両方ある。でも、自分たちとしては、普遍的なものにつながると信じてやっているし、ただ、それが知りたいからやっているというスタンスです。 ――視聴率を狙ってないということですが。 藤江 最終的な目標が視聴率じゃないんです。それよりも少数の人に深く刺さるコンテンツ。「こんなのあったよ」って、ざわざわしてもらうことを目指しています。そういったことがネットニュースになって、番組を知って見てくれる人が増えることになれば、もちろんいいんですけど。 ――テーマはどのように決めているんですか? 藤江 基本的にはその本人に出演してもらって、その人の人生について話してもらうんです。人の噂話を顔を隠してやると、なんでも言えちゃうので、そうではなくて当事者に“自分の話”をしてもらうのが大きなポイント。その上で、先方に断られることがなければ、取材をします。例えば、元犯罪者のように、その人を出すことで誰かが傷つくかもしれないテーマは、今は避けてはいます。 ――ぶっちゃけ、リサーチめちゃくちゃ大変ですよね? 藤江 めちゃくちゃ大変です(笑)。番組のスタートから30ネタくらいを並行して調べて、やっている途中でおもしろいなって思ったネタは、どんどん足して、足して。この人、主人公にできるなって人が見つかった順で放送しています。本当、自転車操業です(笑)。番組の終わりに「人間っておもしろい」ってテロップが出るんですけど、それが番組で一番大事にしていることで、この人の話を聞けば、「人間っておもしろい」ということが描けるなっていう確信が担当のディレクターの中で持てたら、収録をする流れです。 ――放送を見た人がSNSを、逆にSNSで番組を知った人が放送を……といった、SNSと番組で補完されるような構成だと思います。そういった視聴者の導線って、考えているんでしょうか。
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撮影=尾藤能暢
藤江 考えていますね。パイロット版を2015年に作ったときに、一時的に話題になったんですよ。でも、その人たちが内容を知りたいと思っても番組HPになにも書いてないし、何も情報がない。そうした興味を持ってくれた人の受け皿になるものを作ろうと思って、サイトに動画を載せたり、まとめ記事を作っていたんですけど、それも番組HPの存在を知らない人は、たどり着けないじゃないですか。私もそうなんですけど、ほとんどの人はSNSで情報収集していると思うので、YouTubeやSNSになるべく情報を載せて、そこから興味を持ってくれた人が番組を見てくれるようにしています。あとは、番組のおまけというコンテンツを作っているんですけど、それもサイトまで来てくれた人に、「ありがとう」とおもてなしみたいな気持ちでやろうと思って始めました。番組の価値を放送以外でもいろんな所で出して、その中のどこかのチャンネルでひっかかってもらって、番組に愛着を持ってくれる人が増えたらいいなと思っています。 ――そういった試みは、NHKでやってこなかったんですか? 藤江 まったくではないですけど、そんなにやってきてないと思います。「プロ彼女」の放送のときに、胸を強調して「メス感を出すのが大事」ってゲストの発言に反応して、SNSで「メス感」って言葉が盛り上がって、ゲストならではの言葉に反応する人が多かった。私たちも、そういったそのゲストしか言えない、ゲストならではの言葉を引き出すのを大事にしていたので、テロップを入れて、名言っぽくしたスクリーンショットの画像付きツイートをすることにしました。 ――「パリピ」みたいに、事前にある程度のイメージしやすい人でも、取材をしてイメージと違うことって多いですか? 藤江 「先イエーイ」っていうのがあって、「イエーイ!」って言っておけば、「イエーイ!」的なできごとが後からついてくるっていうパリピの言葉なんですけど、聞いてみると想像以上に意外に深かったり、はっとするような人生哲学が見つかる、と思うようなこともありますね。あとは、やっぱりイメージしやすいような人でも山里さんとYOUさんの前だと、意外な話が出てくるってことかもしれないですね。聞いたことがない話や価値観を掘り当てられるかを大切にしています。 ――宝探しみたいですね。 藤江 まさにそうですね。どこに金が埋まっているかわからない荒野……荒野って言ったら失礼なんですけど(笑)。草原みたいなところで、ここかな? ここかな? って金を掘り当てるみたいな感じ。だから、見つけたとき、“人間っておもしろい”ってなるんです。 (取材・文=編集部) ●『ねほりんぱほりん』  NHK、Eテレの顔出しNGの訳ありゲストはブタに、聞き手の山里亮太とYOUはモグラの人形にふんすることで「そんなこと聞いちゃっていいの~?」という話を“ねほりはほり”聞き出す新感覚のトークショー。作りに作り込んだEテレお得意の人形劇と、聞いたこともないような人生の“裏話”が合体した人形劇×赤裸々トークをお楽しみください!

ケンカ全勝の兄・未来と、読書家の弟・海──総合格闘技界の超新星「朝倉兄弟」に迫る!

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兄・未来(左)/弟・海(右)(c)ROAD FC
「俺たちは、つまらない試合はしない」  そう公言して憚らない総合格闘家の「朝倉兄弟」が、有言実行の“スカ勝ち”を積み重ね、国内外で人気を高めている。あまりの強さに地元ではケンカ相手がいなくなり、プロ格闘技の世界で獲物を探し求めるようになった兄・未来(みくる)。その兄に才能を見出され、プロ格闘家になった弟・海(かい)。性格や特長は異なるものの、「常にフィニッシュ勝利を目指す」というのが、兄弟一致のポリシーだ。  両者とも超攻撃的なファイトスタイルで快進撃を続け、先月韓国で行われた『ROAD FC』では、敵地の観衆をも魅了する圧勝を収めた(下記動画参照)。
 好戦的かつ挑発的な言動が目立つため、時には反感も買うが、すべての批判を「勝つこと」で封じ込めてきた2人。その強さは、いかなる環境で育まれたのか? そして彼らは今後、どこへ向かおうとしているのか? それぞれに電話インタビューを行った。
ケンカ全勝の兄・未来と、読書家の弟・海──総合格闘技界の超新星「朝倉兄弟」に迫る!の画像2
(C)ROAD FC
【兄】朝倉未来(24歳) ――『ROAD FC』での完勝、おめでとうございます。対戦相手のオ・ドゥソク選手(韓国)は、ボクシングの元OPBFランカーで、WBOアジア太平洋ライト級の元王者であり、キックでも2団体の韓国王者となっているストライカーですが、戦前にはどういう印象を抱いていましたか? 朝倉未来(以下/未来) 試合動画を1試合見ただけですけど、「総合(格闘技)の打撃に全然対応できてないな」というのが第一印象で、「これは勝てるな」と思いました。 ――韓国の会場で韓国人選手と戦ったわけですが、アウェイ感は? 未来 相手の名前がコールされたときのほうが歓声は大きかったですけど、試合中に攻められた瞬間がなかったので全然気にならなかったし、緊張もまったくなかったですね。強いて不安だった点を挙げるなら、俺、視力が0.02しかないから、入場のときに会場の雰囲気や花道がよく見えなかったことぐらいかな(笑)。試合が始まれば何も問題はなかったです。『ROAD FC』は韓国の地上波でも放映されたので、試合後は韓国のファンが増えましたね。会場ではUFCファイターのカン・ギョンホ(韓国)からも声をかけられました。日本でもYouTubeとFacebookで生中継され、新規のファンが増えました。兄弟ともインパクトを残せてよかったです。 ――視力0.02で、敵のパンチが見えるんですか? 未来 見えますよ。俺、今まで練習でも試合でも一度もダウンした経験がないんですけど、視力は悪くても、たぶん動体視力がいいんだと思います。ほとんどの技にカウンターを合わせられるんで。 ――実際、オ・ドゥソク選手のパンチを食らう場面は、ほぼなかったですね。 未来 総合の打撃とボクシングの打撃って、まったくの別物なんですよ。違う競技と言っても過言じゃないぐらい。相手がボクシングのチャンピオンレベルだとしても、総合の打撃だったら俺は負けない。なんでかというと、総合はキックやタックルもあるし、グローブも小さいから、ボクシングのガード技術がほとんど使えないんです。だから総合は打撃一発で決まっちゃうことも多く、 つまりは“当て勘勝負”になってくる。そこに俺は、絶対的な自信を持ってるんですよ。 ――その自信の根拠を教えてください。 未来 まず、普通の人よりもビビらない覚悟がある。相手の打撃をギリギリまで避けずに見る覚悟です。それと、どの体勢から打っても左右両方のパンチが強いというのも俺の取り柄ですね。だから相手の動きに合わせたカウンターで、KO勝ちをすることが多い。あとは日頃の練習方法でしょうか。あらゆる試合展開を想定し、どういう場面になっても慌てず冷静に動けるように練習しています。 ――未来選手はストライカーのイメージが強いですが、寝技対策は? 未来 実はここ2~3年は打撃よりも、寝技とレスリングの練習に多くの時間を割いてます。テイクダウンを取られないための練習と、倒されてもすぐに立ち上がる練習を延々と繰り返してますから、キメられない自信が強いですね。今は他の仕事もしてるから、1日2時間程度しか練習できないけど、練習時間がもっと増えれば、さらに強くなるでしょう。 ――これでプロとして5戦5勝となった未来選手ですが、もともとは不良の格闘技大会『THE OUTSIDER』で格闘家デビューした経歴からもわかるように、地元の愛知県では有名な不良だったそうですね。 未来 ケンカがとにかく大好きで、毎日のように誰かとタイマンを張ってました。俺のケンカは必ず1対1。弱い奴とやってもつまんないから、強そうな奴をいつも探し求めてました。 ――ストリートファイトでは負け知らずだったんですか? 未来 数え切れないぐらいケンカをしたけど、一度も負けたことがないです。最初は地元・豊橋の強い奴をどんどん倒してって、地元に敵がいなくなったら、隣の市まで遠征したり。 ――どうやってケンカ相手を探していたんですか? 未来 強そうな奴を見つけたらガンガン睨みつけて、かかってきたらブッ倒す。で、そいつに「もっと強い奴を教えろ」と言うと、どんどん強い奴が出てくるんです。 ――格闘RPGみたいですね(笑)。 未来 自分の住んでる街と名前をあちこちに告げながら相手を募集してたから、俺を倒したがる奴らからガンガン電話もかかってくる。1日に2戦したこともありますよ。隣の市に強い奴がいると聞いて、意気込んで行ったのに、一発で終わっちゃってつまんないから、豊橋に帰って来てから地元のクラブに行って、新たな相手を見つけて2戦目をしたり。そんな毎日だったので、何戦やったのかまでは覚えてません。 ――なぜそこまでケンカが好きだったのでしょう? 未来 刺激が欲しかったのかな。真面目に勉強して真面目に就職して、そのままトシ取って死ぬのもつまらんな、と思ってて。当時の俺の趣味は「命をかけること」でした。 ――そんな生活を送っていて、ご両親から叱られませんでしたか? 未来 オヤジは俺と似たタイプなので、「ケンカする前には準備運動をしっかりしとけ」とか、よくアドバイスをしてくれました(笑)。母親は諦めてましたね。怒っても俺が聞かないってことを知ってるんで。
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ケンカ屋だった16歳の頃の朝倉未来
――警察に捕まったことは? 未来 ケンカだけじゃなく、無免許で毎日バイクを乗り回してましたから、マークされてたらしく、ある日、家に帰ったら、四方八方から警官が出て来て、捕まえられました。で、16歳から少年院に1年半入って、出て来てからもちょこちょこ暴れてたんですけど、強くて有名になりすぎてたから、そのうちケンカの相手をしてくれる奴がいなくなり、寂しくなっちゃって……。ちょうどその頃、『THE OUTSIDER』 の存在を知り、じゃあ格闘技の世界で暴れてやるかと思ってジムに通い始めたんですよ。 ――ジムで、ケンカの技術は通用しましたか? 未来 初めて体験に行った日はガスを吸ったまま行ったんで、息ハァハァで、通用しませんでした。打撃では劣ってなかったけど、寝技で押さえつけられたら、もうダメ。ジムには、ストリートの技術だけじゃ勝てない相手がゴロゴロいました。でも、強い奴を見ると倒したくてワクワクする性格なので、熱心にジム通いするようになり、今に至るという感じですね。 ――『THE OUTSIDER』では2階級王者になり、13戦11勝1敗1ノーコンテストという好成績を収めた未来選手。「強いだけじゃなく、試合が面白い」と評されることが多いですが、戦うときに意識していることは? 未来 格闘技って、お客さんありきのものだと思うんです。見る人がいなければただのケンカと一緒で価値がないけど、お客さんや期待する人の数が多ければ多いほど、それに比例して価値が高くなっていく。お客さんが見たい試合をできなければ、選手としての価値はないも同然だし、格闘技をやる意味がないとさえ思います。なぜ今このリングに立てて、何を求められてるのか。そこんところをいつもしっかり考えてます。結論としては、面白い試合をするしかないじゃないですか。 ――弟の海選手も、同様の考えなのでしょうか? 未来 弟も一緒だと思います。ただ、性格は全然違いますね。弟のほうが真面目だし、人付き合いも上手いです。そこが俺とは正反対。 ――プロアマ通じて1敗しかしておらず、その1敗した相手(樋口武大選手)とのリベンジマッチにも勝利している未来選手。勝ち続けることで、「負けられない」というプレッシャーを感じることは? 未来 まったくないですね。実力があるのは自分たちである程度理解してるんですけど、純粋な格闘技ファンからは評価が低いし、批判とかもされるから、逆に今の段階では気持ちがラクですね。 ――「相手が弱いから連勝できる」「川尻や五味レベルの選手になってから大口を叩け」などの批判もありますが、それらに対する反論は? 未来 あの人たちのいつの時代と比べてるのかは知らないけど、俺たち兄弟は今、1日に2時間程度しか練習できてないのに、それでここまでの結果を残してますんで。まだ20代前半だし、1日8時間練習できるようになったら、何倍も強くなれる自信ある。そこから比較して欲しいですね。 ――いつも自信満々ですが、弱点はありますか? 未来 特に思い浮かばないです。視力についても、今後レーシックをする予定だし。寝技の強い人と練習すると、たまにキメられることもある。課題はそれぐらいかな。俺、身体能力がもともと高いんですよ。小さい頃からマラソン大会ではいつも1位だったし、それ以外のどんな運動も得意なんです。総合は全部できないとダメなんで、まさに俺向けの競技と言えますし、伸びしろは無限大と思ってます。 ――今後の目標を教えてください。 未来 『ROAD FC』フェザー級王者のチェ・ムギョム(韓国)を倒したいし、日本の格闘技界を盛り上げたいです。そのためにも、地上波の『RIZIN』に出たい。俺たち兄弟はものすごい可能性を秘めてますんで、チャンスを与えて欲しいです。 ――『RIZIN』で活躍中の山本アーセン選手に対し、Twitterでいきなり対戦要求をしたこともありましたね。アーセン選手は結局、未来選手の挑発には乗ってきませんでしたが。 未来 あぁ、そんなこともありましたね。俺からしたら、面白くない奴だな、みたいな。あれ以上煽っても煽り甲斐がない奴なんで、冷めましたけどね。試合も面白くないのにああいうところで盛り上げられないんじゃもう、格闘家も終わりだな、と思います。 ――今の発言は書いて大丈夫ですか? 未来 書いていいですよ。やるならいつでもやってやるし。 ――『RIZIN』で注目を集めている那須川天心選手について思うことは? 未来 階級は弟と近い選手だけど、俺も注目してますよ。打撃のスピードもあるし、すごく頭もいいし、考えられた戦い方だし、なおかつ動体視力もいい。天才だなと思います。ただ、総合はすぐにマスターできるもんじゃないので、弟とやったらだいぶ差があると思いますね。 ――最後に、ファンへメッセージをお願いします。 未来 俺たち兄弟はこれからどんどん活躍して頭角を現していくんで、今知った人も、もとから知ってる人も、目を離さずに応援してくれたらうれしいです。この先、いろんな邪魔者を片っ端からなぎ倒していくんで、楽しみにしててください。
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【弟】朝倉海(23歳) ――『ROAD FC』でアラテン・ヘイリ選手(中国)を秒殺した海選手。これで何連勝になりましたか? 朝倉海(以下/海) 『THE OUTSIDER』の戦績を入れると、13か14連勝ぐらいですね。プロでの戦績は8戦8勝で、6KOに、2サブミッション。今んとこ全部フィニッシュ勝利です。 ――ヘイリ選手も6連勝中の強敵でしたが、海選手のヒザ蹴りで病院送りに。あの一撃で彼は、アゴの骨が折れたらしいですね。  ヘイリは中国のフライ級で一番強いと言われ、去年の11月には『ROAD FC』の元王者のジョン・ナムジン(韓国)と王座挑戦権をかけた試合で引き分けた、かなり有名な選手です。YouTubeに過去の試合動画がたくさん上がってたので、事前に研究して対策を練ることができたし、冷静に試合することができました。最後のヒザも狙い澄ました一撃です。日頃から階段ダッシュで鍛えてるから、ヒザ蹴りの威力には自信があるんですよ。 ――前回の中国に続き、海外は2戦目でしたが、韓国の空気はいかがだったでしょう?  韓国のファンの方はあったかいな、と感じました。普通に入場時も応援してくれたし、試合後もたくさん声をかけてくれた。韓国の選手やファンから、大会後にFacebookの友達申請がめちゃくちゃ来ましたね。 ――その一方で、複数の選手から宣戦布告もされているようですね。ナムジン選手は、海選手の写真をビリビリに破っている画像をインターネット上に公開しています。  あれ見て、笑っちゃいましたよ。わざわざ俺の写真を検索して、印刷して、破るところを撮影するという一連の作業を想像すると可笑しくて。有名な人なので、すごい宣伝にもなりますし、ありがたいですけどね(笑)。フライ級現王者のソン・ミンジョン(韓国)もFacebookで俺と戦いたいと言ってます。 ――『ROAD FC』における今後の展開が楽しみですね。  次がタイトルマッチになるのか、それとも2番目に強いナムジンみたいな選手とやるのか。まだわかりませんけど、早く強い奴と試合をしたくてたまらないです。 ――過去に話題を移しますが、そもそも海選手はなぜ、格闘家になろうと思ったのでしょう?  始めたのは高校卒業間近の頃です。先に格闘技を始めてた兄貴が、ジム以外で実力を試したくなったらしく、俺に向かって急に「相手をしろ」と言ってきたんですよ。で、俺を庭に呼び出し、グローブを着けさせ、いきなり襲いかかってきた。構え方とか知らなかったけど、俺は目がいいから、兄貴のパンチや蹴りを全部避けたら、「お前、センスあるから格闘技をやったほうがいい」と誘われました(笑)。 ――お兄さんはそのとき、手加減を?  いや、ガチでしたね。
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(C)ROAD FC
――海選手のスポーツ経験は?  小学校のときに空手と相撲を。中学時代はバレーボールをやってました。 ――お兄さんは無類のケンカ好きだったらしいですが、弟の海選手は?  たまに盛り場でケンカをすることもありましたけど、兄貴みたく法律に触れるような悪さをやった覚えはないです。兄貴の悪かった姿を見て、俺はそうなっちゃいけないと思ってましたから。性格も兄貴とは真逆だと思います。俺は日常生活でキレることはまずないですから。 ――兄弟仲はいいんですか?  いいですよ。いつも「禅道会豊橋道場」で仲良く練習……というか、ガチで殴り合ってます(笑)。俺も兄貴同様、今はまだ普通の仕事をやってるんで、毎日2~3時間しか練習できませんけど、集中して頑張ってます。 ――いつもポーカーフェイスですが、精神鍛錬法はありますか?  精神鍛錬というほど大げさなもんじゃないけど、本をけっこう読みますね。推理小説とか。推理小説って、読んでるときは集中するし、頭を使うじゃないですか。それを習慣化することによって、格闘技の技を覚える吸収力が上がったり、試合中の集中力が上がったり、ってことにつながってる気がします。ちなみに兄貴も、ああ見えて読書家ですよ。週に1冊ペースでいろんな本を読んでるみたいです。 ――兄弟それぞれの格闘技上の長所を教えてください。  兄貴のいいところは、カウンターの当て勘が特出してるのと、打撃の技が多彩な点です。俺はけっこう自分から攻めるタイプで、一発当てたら、そこから一気に仕留め切るのが兄貴よりも上手いです。 ――海選手に弱点はありますか?  弱点がないように練習してます。自分と戦うのが怖いですね。 ――今、一番戦いたい相手は?  『ROAD FC』フライ級王者のソン・ミンジョンです。 ――『THE OUTSIDER』で海選手に土をつけた渋谷莉孔選手が現在、海外の『ONE Championship』で頑張っていますが、彼と再戦したい気持ちはありますか?  できればやりたいですし、今なら倒せる自信もありますけど、あの敗北は格闘技を始めて日が浅かった頃の話ですから、そこまで執着はしてません。 ――『ROAD FC』で実績を積んだ先のビジョンはありますか?  兄貴と一緒に『RIZIN』に出たいですね。俺たち兄弟で国内の格闘技を盛り上げたいという思いが強いんですよ。あとは、国内の各プロ団体のチャンピオンを倒したいです。 ――最後に、ファンへメッセージをお願いします。  判定って、つまらないじゃないですか。俺たち兄弟は相手を絶対倒すし、派手な試合を見せるんで、そこを楽しんでもらえたらと思います。 (取材・文=岡林敬太)

ケンカ全勝の兄・未来と、読書家の弟・海──総合格闘技界の超新星「朝倉兄弟」に迫る!

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兄・未来(左)/弟・海(右)(c)ROAD FC
「俺たちは、つまらない試合はしない」  そう公言して憚らない総合格闘家の「朝倉兄弟」が、有言実行の“スカ勝ち”を積み重ね、国内外で人気を高めている。あまりの強さに地元ではケンカ相手がいなくなり、プロ格闘技の世界で獲物を探し求めるようになった兄・未来(みくる)。その兄に才能を見出され、プロ格闘家になった弟・海(かい)。性格や特長は異なるものの、「常にフィニッシュ勝利を目指す」というのが、兄弟一致のポリシーだ。  両者とも超攻撃的なファイトスタイルで快進撃を続け、先月韓国で行われた『ROAD FC』では、敵地の観衆をも魅了する圧勝を収めた(下記動画参照)。
 好戦的かつ挑発的な言動が目立つため、時には反感も買うが、すべての批判を「勝つこと」で封じ込めてきた2人。その強さは、いかなる環境で育まれたのか? そして彼らは今後、どこへ向かおうとしているのか? それぞれに電話インタビューを行った。
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【兄】朝倉未来(24歳) ――『ROAD FC』での完勝、おめでとうございます。対戦相手のオ・ドゥソク選手(韓国)は、ボクシングの元OPBFランカーで、WBOアジア太平洋ライト級の元王者であり、キックでも2団体の韓国王者となっているストライカーですが、戦前にはどういう印象を抱いていましたか? 朝倉未来(以下/未来) 試合動画を1試合見ただけですけど、「総合(格闘技)の打撃に全然対応できてないな」というのが第一印象で、「これは勝てるな」と思いました。 ――韓国の会場で韓国人選手と戦ったわけですが、アウェイ感は? 未来 相手の名前がコールされたときのほうが歓声は大きかったですけど、試合中に攻められた瞬間がなかったので全然気にならなかったし、緊張もまったくなかったですね。強いて不安だった点を挙げるなら、俺、視力が0.02しかないから、入場のときに会場の雰囲気や花道がよく見えなかったことぐらいかな(笑)。試合が始まれば何も問題はなかったです。『ROAD FC』は韓国の地上波でも放映されたので、試合後は韓国のファンが増えましたね。会場ではUFCファイターのカン・ギョンホ(韓国)からも声をかけられました。日本でもYouTubeとFacebookで生中継され、新規のファンが増えました。兄弟ともインパクトを残せてよかったです。 ――視力0.02で、敵のパンチが見えるんですか? 未来 見えますよ。俺、今まで練習でも試合でも一度もダウンした経験がないんですけど、視力は悪くても、たぶん動体視力がいいんだと思います。ほとんどの技にカウンターを合わせられるんで。 ――実際、オ・ドゥソク選手のパンチを食らう場面は、ほぼなかったですね。 未来 総合の打撃とボクシングの打撃って、まったくの別物なんですよ。違う競技と言っても過言じゃないぐらい。相手がボクシングのチャンピオンレベルだとしても、総合の打撃だったら俺は負けない。なんでかというと、総合はキックやタックルもあるし、グローブも小さいから、ボクシングのガード技術がほとんど使えないんです。だから総合は打撃一発で決まっちゃうことも多く、 つまりは“当て勘勝負”になってくる。そこに俺は、絶対的な自信を持ってるんですよ。 ――その自信の根拠を教えてください。 未来 まず、普通の人よりもビビらない覚悟がある。相手の打撃をギリギリまで避けずに見る覚悟です。それと、どの体勢から打っても左右両方のパンチが強いというのも俺の取り柄ですね。だから相手の動きに合わせたカウンターで、KO勝ちをすることが多い。あとは日頃の練習方法でしょうか。あらゆる試合展開を想定し、どういう場面になっても慌てず冷静に動けるように練習しています。 ――未来選手はストライカーのイメージが強いですが、寝技対策は? 未来 実はここ2~3年は打撃よりも、寝技とレスリングの練習に多くの時間を割いてます。テイクダウンを取られないための練習と、倒されてもすぐに立ち上がる練習を延々と繰り返してますから、キメられない自信が強いですね。今は他の仕事もしてるから、1日2時間程度しか練習できないけど、練習時間がもっと増えれば、さらに強くなるでしょう。 ――これでプロとして5戦5勝となった未来選手ですが、もともとは不良の格闘技大会『THE OUTSIDER』で格闘家デビューした経歴からもわかるように、地元の愛知県では有名な不良だったそうですね。 未来 ケンカがとにかく大好きで、毎日のように誰かとタイマンを張ってました。俺のケンカは必ず1対1。弱い奴とやってもつまんないから、強そうな奴をいつも探し求めてました。 ――ストリートファイトでは負け知らずだったんですか? 未来 数え切れないぐらいケンカをしたけど、一度も負けたことがないです。最初は地元・豊橋の強い奴をどんどん倒してって、地元に敵がいなくなったら、隣の市まで遠征したり。 ――どうやってケンカ相手を探していたんですか? 未来 強そうな奴を見つけたらガンガン睨みつけて、かかってきたらブッ倒す。で、そいつに「もっと強い奴を教えろ」と言うと、どんどん強い奴が出てくるんです。 ――格闘RPGみたいですね(笑)。 未来 自分の住んでる街と名前をあちこちに告げながら相手を募集してたから、俺を倒したがる奴らからガンガン電話もかかってくる。1日に2戦したこともありますよ。隣の市に強い奴がいると聞いて、意気込んで行ったのに、一発で終わっちゃってつまんないから、豊橋に帰って来てから地元のクラブに行って、新たな相手を見つけて2戦目をしたり。そんな毎日だったので、何戦やったのかまでは覚えてません。 ――なぜそこまでケンカが好きだったのでしょう? 未来 刺激が欲しかったのかな。真面目に勉強して真面目に就職して、そのままトシ取って死ぬのもつまらんな、と思ってて。当時の俺の趣味は「命をかけること」でした。 ――そんな生活を送っていて、ご両親から叱られませんでしたか? 未来 オヤジは俺と似たタイプなので、「ケンカする前には準備運動をしっかりしとけ」とか、よくアドバイスをしてくれました(笑)。母親は諦めてましたね。怒っても俺が聞かないってことを知ってるんで。
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ケンカ屋だった16歳の頃の朝倉未来
――警察に捕まったことは? 未来 ケンカだけじゃなく、無免許で毎日バイクを乗り回してましたから、マークされてたらしく、ある日、家に帰ったら、四方八方から警官が出て来て、捕まえられました。で、16歳から少年院に1年半入って、出て来てからもちょこちょこ暴れてたんですけど、強くて有名になりすぎてたから、そのうちケンカの相手をしてくれる奴がいなくなり、寂しくなっちゃって……。ちょうどその頃、『THE OUTSIDER』 の存在を知り、じゃあ格闘技の世界で暴れてやるかと思ってジムに通い始めたんですよ。 ――ジムで、ケンカの技術は通用しましたか? 未来 初めて体験に行った日はガスを吸ったまま行ったんで、息ハァハァで、通用しませんでした。打撃では劣ってなかったけど、寝技で押さえつけられたら、もうダメ。ジムには、ストリートの技術だけじゃ勝てない相手がゴロゴロいました。でも、強い奴を見ると倒したくてワクワクする性格なので、熱心にジム通いするようになり、今に至るという感じですね。 ――『THE OUTSIDER』では2階級王者になり、13戦11勝1敗1ノーコンテストという好成績を収めた未来選手。「強いだけじゃなく、試合が面白い」と評されることが多いですが、戦うときに意識していることは? 未来 格闘技って、お客さんありきのものだと思うんです。見る人がいなければただのケンカと一緒で価値がないけど、お客さんや期待する人の数が多ければ多いほど、それに比例して価値が高くなっていく。お客さんが見たい試合をできなければ、選手としての価値はないも同然だし、格闘技をやる意味がないとさえ思います。なぜ今このリングに立てて、何を求められてるのか。そこんところをいつもしっかり考えてます。結論としては、面白い試合をするしかないじゃないですか。 ――弟の海選手も、同様の考えなのでしょうか? 未来 弟も一緒だと思います。ただ、性格は全然違いますね。弟のほうが真面目だし、人付き合いも上手いです。そこが俺とは正反対。 ――プロアマ通じて1敗しかしておらず、その1敗した相手(樋口武大選手)とのリベンジマッチにも勝利している未来選手。勝ち続けることで、「負けられない」というプレッシャーを感じることは? 未来 まったくないですね。実力があるのは自分たちである程度理解してるんですけど、純粋な格闘技ファンからは評価が低いし、批判とかもされるから、逆に今の段階では気持ちがラクですね。 ――「相手が弱いから連勝できる」「川尻や五味レベルの選手になってから大口を叩け」などの批判もありますが、それらに対する反論は? 未来 あの人たちのいつの時代と比べてるのかは知らないけど、俺たち兄弟は今、1日に2時間程度しか練習できてないのに、それでここまでの結果を残してますんで。まだ20代前半だし、1日8時間練習できるようになったら、何倍も強くなれる自信ある。そこから比較して欲しいですね。 ――いつも自信満々ですが、弱点はありますか? 未来 特に思い浮かばないです。視力についても、今後レーシックをする予定だし。寝技の強い人と練習すると、たまにキメられることもある。課題はそれぐらいかな。俺、身体能力がもともと高いんですよ。小さい頃からマラソン大会ではいつも1位だったし、それ以外のどんな運動も得意なんです。総合は全部できないとダメなんで、まさに俺向けの競技と言えますし、伸びしろは無限大と思ってます。 ――今後の目標を教えてください。 未来 『ROAD FC』フェザー級王者のチェ・ムギョム(韓国)を倒したいし、日本の格闘技界を盛り上げたいです。そのためにも、地上波の『RIZIN』に出たい。俺たち兄弟はものすごい可能性を秘めてますんで、チャンスを与えて欲しいです。 ――『RIZIN』で活躍中の山本アーセン選手に対し、Twitterでいきなり対戦要求をしたこともありましたね。アーセン選手は結局、未来選手の挑発には乗ってきませんでしたが。 未来 あぁ、そんなこともありましたね。俺からしたら、面白くない奴だな、みたいな。あれ以上煽っても煽り甲斐がない奴なんで、冷めましたけどね。試合も面白くないのにああいうところで盛り上げられないんじゃもう、格闘家も終わりだな、と思います。 ――今の発言は書いて大丈夫ですか? 未来 書いていいですよ。やるならいつでもやってやるし。 ――『RIZIN』で注目を集めている那須川天心選手について思うことは? 未来 階級は弟と近い選手だけど、俺も注目してますよ。打撃のスピードもあるし、すごく頭もいいし、考えられた戦い方だし、なおかつ動体視力もいい。天才だなと思います。ただ、総合はすぐにマスターできるもんじゃないので、弟とやったらだいぶ差があると思いますね。 ――最後に、ファンへメッセージをお願いします。 未来 俺たち兄弟はこれからどんどん活躍して頭角を現していくんで、今知った人も、もとから知ってる人も、目を離さずに応援してくれたらうれしいです。この先、いろんな邪魔者を片っ端からなぎ倒していくんで、楽しみにしててください。
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【弟】朝倉海(23歳) ――『ROAD FC』でアラテン・ヘイリ選手(中国)を秒殺した海選手。これで何連勝になりましたか? 朝倉海(以下/海) 『THE OUTSIDER』の戦績を入れると、13か14連勝ぐらいですね。プロでの戦績は8戦8勝で、6KOに、2サブミッション。今んとこ全部フィニッシュ勝利です。 ――ヘイリ選手も6連勝中の強敵でしたが、海選手のヒザ蹴りで病院送りに。あの一撃で彼は、アゴの骨が折れたらしいですね。  ヘイリは中国のフライ級で一番強いと言われ、去年の11月には『ROAD FC』の元王者のジョン・ナムジン(韓国)と王座挑戦権をかけた試合で引き分けた、かなり有名な選手です。YouTubeに過去の試合動画がたくさん上がってたので、事前に研究して対策を練ることができたし、冷静に試合することができました。最後のヒザも狙い澄ました一撃です。日頃から階段ダッシュで鍛えてるから、ヒザ蹴りの威力には自信があるんですよ。 ――前回の中国に続き、海外は2戦目でしたが、韓国の空気はいかがだったでしょう?  韓国のファンの方はあったかいな、と感じました。普通に入場時も応援してくれたし、試合後もたくさん声をかけてくれた。韓国の選手やファンから、大会後にFacebookの友達申請がめちゃくちゃ来ましたね。 ――その一方で、複数の選手から宣戦布告もされているようですね。ナムジン選手は、海選手の写真をビリビリに破っている画像をインターネット上に公開しています。  あれ見て、笑っちゃいましたよ。わざわざ俺の写真を検索して、印刷して、破るところを撮影するという一連の作業を想像すると可笑しくて。有名な人なので、すごい宣伝にもなりますし、ありがたいですけどね(笑)。フライ級現王者のソン・ミンジョン(韓国)もFacebookで俺と戦いたいと言ってます。 ――『ROAD FC』における今後の展開が楽しみですね。  次がタイトルマッチになるのか、それとも2番目に強いナムジンみたいな選手とやるのか。まだわかりませんけど、早く強い奴と試合をしたくてたまらないです。 ――過去に話題を移しますが、そもそも海選手はなぜ、格闘家になろうと思ったのでしょう?  始めたのは高校卒業間近の頃です。先に格闘技を始めてた兄貴が、ジム以外で実力を試したくなったらしく、俺に向かって急に「相手をしろ」と言ってきたんですよ。で、俺を庭に呼び出し、グローブを着けさせ、いきなり襲いかかってきた。構え方とか知らなかったけど、俺は目がいいから、兄貴のパンチや蹴りを全部避けたら、「お前、センスあるから格闘技をやったほうがいい」と誘われました(笑)。 ――お兄さんはそのとき、手加減を?  いや、ガチでしたね。
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――海選手のスポーツ経験は?  小学校のときに空手と相撲を。中学時代はバレーボールをやってました。 ――お兄さんは無類のケンカ好きだったらしいですが、弟の海選手は?  たまに盛り場でケンカをすることもありましたけど、兄貴みたく法律に触れるような悪さをやった覚えはないです。兄貴の悪かった姿を見て、俺はそうなっちゃいけないと思ってましたから。性格も兄貴とは真逆だと思います。俺は日常生活でキレることはまずないですから。 ――兄弟仲はいいんですか?  いいですよ。いつも「禅道会豊橋道場」で仲良く練習……というか、ガチで殴り合ってます(笑)。俺も兄貴同様、今はまだ普通の仕事をやってるんで、毎日2~3時間しか練習できませんけど、集中して頑張ってます。 ――いつもポーカーフェイスですが、精神鍛錬法はありますか?  精神鍛錬というほど大げさなもんじゃないけど、本をけっこう読みますね。推理小説とか。推理小説って、読んでるときは集中するし、頭を使うじゃないですか。それを習慣化することによって、格闘技の技を覚える吸収力が上がったり、試合中の集中力が上がったり、ってことにつながってる気がします。ちなみに兄貴も、ああ見えて読書家ですよ。週に1冊ペースでいろんな本を読んでるみたいです。 ――兄弟それぞれの格闘技上の長所を教えてください。  兄貴のいいところは、カウンターの当て勘が特出してるのと、打撃の技が多彩な点です。俺はけっこう自分から攻めるタイプで、一発当てたら、そこから一気に仕留め切るのが兄貴よりも上手いです。 ――海選手に弱点はありますか?  弱点がないように練習してます。自分と戦うのが怖いですね。 ――今、一番戦いたい相手は?  『ROAD FC』フライ級王者のソン・ミンジョンです。 ――『THE OUTSIDER』で海選手に土をつけた渋谷莉孔選手が現在、海外の『ONE Championship』で頑張っていますが、彼と再戦したい気持ちはありますか?  できればやりたいですし、今なら倒せる自信もありますけど、あの敗北は格闘技を始めて日が浅かった頃の話ですから、そこまで執着はしてません。 ――『ROAD FC』で実績を積んだ先のビジョンはありますか?  兄貴と一緒に『RIZIN』に出たいですね。俺たち兄弟で国内の格闘技を盛り上げたいという思いが強いんですよ。あとは、国内の各プロ団体のチャンピオンを倒したいです。 ――最後に、ファンへメッセージをお願いします。  判定って、つまらないじゃないですか。俺たち兄弟は相手を絶対倒すし、派手な試合を見せるんで、そこを楽しんでもらえたらと思います。 (取材・文=岡林敬太)

「ガツガツしないで時を待つ」東京っ子コンビ・ライスが醸し出す“ゆとり感”

「ガツガツしないで時を待つ」東京っ子コンビ・ライスが醸し出すゆとり感の画像1
左・関町知弘、右・田所仁(撮影=尾藤能暢)
「なんかの雑誌の優勝予想で、ダントツに最下位でした(関町)」。2016年の「キングオブコント」。前評判を覆し、当時まだテレビの露出もほとんどなかったライスが優勝。しかし、お笑い好きにとって、その結果は意外でもなんでもなかった。シュールかつ毒の効いた世界観は、一度見たらクセになる。地味なんじゃない、ノームコア。キャラ全盛の時代に、控えめ都会派の彼らは、果たしてどう生き残っていくのか――。 *** ――「キングオブコント2016」優勝後、環境は変わりましたか? 関町 仕事も今までとは全然違う量になりましたし、早く起きる仕事っていうことがそもそもなかったんですよ。 田所 5時、6時起きのね。 関町 朝一の空港とかにいると、仕事してます感あるよね。 田所 ちょっと売れてる気分になる。 ――地方の営業も増えて。 田所 増えましたね。でも、だいたい日帰りなんですよ。 関町 この前、北海道に行ったんですけど、普通にとんかつ弁当でしたからね。ぜんぜん楽しめてない。 田所 でもありがたいのは、「キングオブコント」優勝後、お客さんの反応が全然違うっていうことですね。 関町 今まで営業行っても、有名な芸人さんの付き添い的な感じだったから。 田所 もしくは若手セット。 関町 それが最初に「みんな、拍手してくれぃ!」って「キングオブコント」のときのネタで言ったりすると、スゲェ笑ってくれて。 ――うれしいですね。 田所 やっぱり影響力はすごいと思う。子どもに「握手してください!」とか、今まで言われたことなかったもんな~。 ――ずっと「キングオブコント」を目標にしてきて、いざ優勝を果たしてしまうと、次に何を目指すのか、ちょっと宙ぶらりんになったりしませんか? 田所 そうなんですよね……。 関町 僕ら、ずっと「キングオブコント」に向けて単独ライブをやってきて、そろそろ結果出さないと……っていうときに、一旦単独ライブをやめたんですよ。 田所 それまでは賞レースに向けたネタづくりをしてたんで、4分の間に笑いどころも多くして、設定もわかりやすくして……みたいな。これからは変な話、自由にネタが作れるなと。確かに目標はなくなった感じしますけど、やることは増えた気がします。 関町 単独ライブを定期的にやっていた頃は、特に「キングオブコント」の結果が悪かった(笑)。もう、賞レースに向かないネタばっかりだったから。 田所 そういうネタが、お互い好きだからね。でも、ちょっと我慢しようと。 関町 「キングオブコント」の決勝に出て、いろんな人に見にきてもらえる状態になったら、また単独やろうって決めて……5年かかっちゃった(笑)。 田所 正直、2年くらいかなぁとは思ってた(笑)。 ――でも、5年で結果を出したのは、本当にすごいことだと思います。 関町 本当、それまで惜しくもなんともなかったんで。 田所 みんな「あと一歩で決勝だった」みたいな感じなのに、僕らだけまったくでしたから。2015年も、結構序盤で落ちてるし(笑)。 関町 普段漫才しかやってないコンビのほうが成績良かったり。
「ガツガツしないで時を待つ」東京っ子コンビ・ライスが醸し出すゆとり感の画像2
――それはショックですね(笑)。今までと今回は、何が違ったんでしょう。 関町 今まで「キングオブコント」を意識しすぎて、視野がめちゃめちゃ狭くなってたんですよ。 田所 それこそ、“調整ライブ”みたいなものを何カ月もやったり。 関町 そうするとどうなるかっていうと、「ここまで準備したんだから、絶対落ちるわけにはいかないぞ」っていう、ものすごいプレッシャーがかかってくる。 田所 とにかくプレッシャーに弱いんだ、俺らは。 関町 背負いすぎて、もうカッチカチの状態で予選やってたんだよね。 田所 だから2016年は「あえて気楽にいこう」と。新ネタライブも調整ライブもやらずに、なんなら準決勝の前に芸人仲間と旅行に行ったりして、だいぶゆるい気持ちでやったら優勝できたんですよ。そんなもんなんですね~。 ――旅行!? 関町 猪苗代のほうに。飲んで、食って、風呂入って(笑)。 田所 結構周りの芸人から「チャンピオン史上、一番遊んでたんじゃないか」って。 関町 夏フェスも行ったね。 ――充実した私生活(笑)。今、テレビでの活動はいかがですか? 関町 テレビは……年末からパパパーっと入れていただいて、年明けて今、落ち着いてきましたけど。 田所 毎月、何本かは出させてもらってますね。ネタの番組とか。 関町 ありがたいです。テレビでいろんなネタできるのは。ただ「次はキングオブコント2016チャンピオンのネタとなります!!」みたいな呼び込みされると……。 田所 それ、本当多いんだよね(笑)。 関町 ちょっと、余計なこと言わないでよって(笑)。 田所 うれしいしけど、そこで一気にハードルが上がっちゃう。同じネタやるわけにはいかないし。 ――少しずつまたネタ番組も増えていますが、それでもまだバラエティ番組はトークが主流で、ネタよりキャラが重視されがちですよね。 関町 そこなんですよ。 田所 僕らほんと見た目にも特徴がないんで、自分でも、ただの浪人生なんじゃないかと思うときあります。 関町 髪を緑色とかにしないと、こっち向いてももらえない。イジリようがない。 田所 僕らには、チャンピオンっていう肩書しかないんですよ。 ――十分すぎる肩書ですよ! ちなみに、ご家族は、芸人という仕事に対して理解はありますか? 関町 うちの親はちょっとイタイ親というか……方々に「うちの息子芸人やってるんですけど」って、自分から言っちゃう(笑)。「この前優勝したライスって知ってます?」とか。 ――グイグイですね(笑)。 関町 そういうのを風のウワサで聞くとマジやめてくれって思いますけど、でもまぁうれしいんでしょうね。芸人始めて13年、何もなかったから、親としては心配じゃないですか。しかも、30くらいまで実家住んでたんで。親からしたら「育て方、間違った~」ってなりますよね。 田所 どうすんだろう? とは思われてたよね。反対はされなかったけど。
「ガツガツしないで時を待つ」東京っ子コンビ・ライスが醸し出すゆとり感の画像3
――なんというか、生温かい目で見守られている。 田所 「生温かい」って、なんかいいっすね(笑)。 関町 なんかちょっと湿気のあるあったかさ(笑)。僕らの同期にしずるやハリセンボンがいるんですけど、そういう売れてるやつらがうちに遊びに来ると、母親には「いつかこの子も、こういう人たちみたいになれるのかしら……」みたいな夢を見させていた気はします。ただ、あいつらがあまりにも売れすぎてるから「あんたはいつ有名になるの?」ともなる。 田所 だよね(笑)。 関町 そういうこと言われるたびに「チッうっせーな」と。 ――中二!! 田所 うちの両親はお笑いが好きで、僕らの単独ライブも毎回欠かさず見に来てて、親戚連れて来たり。それでも、ここ数年は「そろそろ、将来のこと考えなきゃいけないんじゃない?」みたいな感じだったんだけど、優勝してからは「私はわかってたよ。ネタは評価されてたもんね~」みたいなこと言いだした(笑)。 関町 僕らが「キングオブコント」で優勝するまで芸人続けてこられたのは、単純に東京に実家があったからです! 田所 ぬくぬくと芸人ができました。 関町 もっと早く実家出てたら、もっと早く結果出せてたかもしれないけど(笑)。 ――お2人は、さまぁ~ずさんと同じ高校ご出身ですよね。お話を伺っていると、さまぁ~ずさんにも通じる「東京っ子」感、あるなぁと。あんまりガツガツせず、周囲が認めてくれるまで待つ、みたいな。 田所 のんびりと待つ(笑)。 関町 東京03の角田さんも、同じ高校なんですよ! ――お笑い名門校! 関町 もしかしたら、あの学校の校風が、こういう人間を作るのかもしれない。 ――後輩にアドバイスするとしたらそれですね。 関町 まずは、東海大高輪に入学して……。 田所 そこからは、親のすねをかじり倒しなさい。 関町 さまぁ~ずさん、かじってたかわからないだろ! 田所 かじってるだろ~。 ――そのゆとり感が、逆コンプレックスになったりすることはありませんか? 関町 あぁ、特に吉本は、大阪から来てる芸人さんが多いですからね。 田所 でもしょうがないよね、そこに実家があるんだから。 関町 勝手にそっちが大阪から来たんだから。 田所 めちゃくちゃだな(笑) ――単独ライブについて教えてください。5年ぶりということで、楽しみです。 関町 5年ぶりなんで、どうやって単独ってやってたんだろう……というのが本音で。 田所 そんなマイナスからのスタート(笑)。 関町 今回タイトルを「ブラン』にしたんですけど、「白」という意味の。本当にまっさらな気持ちで挑みたいと思ってます。 田所 初心に帰ってってことですね。チャンピオンになって1年目という気持ち。 関町 だからお客さんにも、1年目の芸人の単独を見に来るつもりでお願いしたい。 田所 すげぇハードル下げるな。 関町 生温かい目で。 (取材・文=西澤千央) ●ライス単独ライブ「ブラン」 日時: 7月7日(金)19:30開演 7月8日(土)14:00開演 19:00開演 7月9日(日)13:00開演 17:00開演 会場:CBGKシブゲキ!! 料金:前売5000円 当日5500円

「ガツガツしないで時を待つ」東京っ子コンビ・ライスが醸し出す“ゆとり感”

「ガツガツしないで時を待つ」東京っ子コンビ・ライスが醸し出すゆとり感の画像1
左・関町知弘、右・田所仁(撮影=尾藤能暢)
「なんかの雑誌の優勝予想で、ダントツに最下位でした(関町)」。2016年の「キングオブコント」。前評判を覆し、当時まだテレビの露出もほとんどなかったライスが優勝。しかし、お笑い好きにとって、その結果は意外でもなんでもなかった。シュールかつ毒の効いた世界観は、一度見たらクセになる。地味なんじゃない、ノームコア。キャラ全盛の時代に、控えめ都会派の彼らは、果たしてどう生き残っていくのか――。 *** ――「キングオブコント2016」優勝後、環境は変わりましたか? 関町 仕事も今までとは全然違う量になりましたし、早く起きる仕事っていうことがそもそもなかったんですよ。 田所 5時、6時起きのね。 関町 朝一の空港とかにいると、仕事してます感あるよね。 田所 ちょっと売れてる気分になる。 ――地方の営業も増えて。 田所 増えましたね。でも、だいたい日帰りなんですよ。 関町 この前、北海道に行ったんですけど、普通にとんかつ弁当でしたからね。ぜんぜん楽しめてない。 田所 でもありがたいのは、「キングオブコント」優勝後、お客さんの反応が全然違うっていうことですね。 関町 今まで営業行っても、有名な芸人さんの付き添い的な感じだったから。 田所 もしくは若手セット。 関町 それが最初に「みんな、拍手してくれぃ!」って「キングオブコント」のときのネタで言ったりすると、スゲェ笑ってくれて。 ――うれしいですね。 田所 やっぱり影響力はすごいと思う。子どもに「握手してください!」とか、今まで言われたことなかったもんな~。 ――ずっと「キングオブコント」を目標にしてきて、いざ優勝を果たしてしまうと、次に何を目指すのか、ちょっと宙ぶらりんになったりしませんか? 田所 そうなんですよね……。 関町 僕ら、ずっと「キングオブコント」に向けて単独ライブをやってきて、そろそろ結果出さないと……っていうときに、一旦単独ライブをやめたんですよ。 田所 それまでは賞レースに向けたネタづくりをしてたんで、4分の間に笑いどころも多くして、設定もわかりやすくして……みたいな。これからは変な話、自由にネタが作れるなと。確かに目標はなくなった感じしますけど、やることは増えた気がします。 関町 単独ライブを定期的にやっていた頃は、特に「キングオブコント」の結果が悪かった(笑)。もう、賞レースに向かないネタばっかりだったから。 田所 そういうネタが、お互い好きだからね。でも、ちょっと我慢しようと。 関町 「キングオブコント」の決勝に出て、いろんな人に見にきてもらえる状態になったら、また単独やろうって決めて……5年かかっちゃった(笑)。 田所 正直、2年くらいかなぁとは思ってた(笑)。 ――でも、5年で結果を出したのは、本当にすごいことだと思います。 関町 本当、それまで惜しくもなんともなかったんで。 田所 みんな「あと一歩で決勝だった」みたいな感じなのに、僕らだけまったくでしたから。2015年も、結構序盤で落ちてるし(笑)。 関町 普段漫才しかやってないコンビのほうが成績良かったり。
「ガツガツしないで時を待つ」東京っ子コンビ・ライスが醸し出すゆとり感の画像2
――それはショックですね(笑)。今までと今回は、何が違ったんでしょう。 関町 今まで「キングオブコント」を意識しすぎて、視野がめちゃめちゃ狭くなってたんですよ。 田所 それこそ、“調整ライブ”みたいなものを何カ月もやったり。 関町 そうするとどうなるかっていうと、「ここまで準備したんだから、絶対落ちるわけにはいかないぞ」っていう、ものすごいプレッシャーがかかってくる。 田所 とにかくプレッシャーに弱いんだ、俺らは。 関町 背負いすぎて、もうカッチカチの状態で予選やってたんだよね。 田所 だから2016年は「あえて気楽にいこう」と。新ネタライブも調整ライブもやらずに、なんなら準決勝の前に芸人仲間と旅行に行ったりして、だいぶゆるい気持ちでやったら優勝できたんですよ。そんなもんなんですね~。 ――旅行!? 関町 猪苗代のほうに。飲んで、食って、風呂入って(笑)。 田所 結構周りの芸人から「チャンピオン史上、一番遊んでたんじゃないか」って。 関町 夏フェスも行ったね。 ――充実した私生活(笑)。今、テレビでの活動はいかがですか? 関町 テレビは……年末からパパパーっと入れていただいて、年明けて今、落ち着いてきましたけど。 田所 毎月、何本かは出させてもらってますね。ネタの番組とか。 関町 ありがたいです。テレビでいろんなネタできるのは。ただ「次はキングオブコント2016チャンピオンのネタとなります!!」みたいな呼び込みされると……。 田所 それ、本当多いんだよね(笑)。 関町 ちょっと、余計なこと言わないでよって(笑)。 田所 うれしいしけど、そこで一気にハードルが上がっちゃう。同じネタやるわけにはいかないし。 ――少しずつまたネタ番組も増えていますが、それでもまだバラエティ番組はトークが主流で、ネタよりキャラが重視されがちですよね。 関町 そこなんですよ。 田所 僕らほんと見た目にも特徴がないんで、自分でも、ただの浪人生なんじゃないかと思うときあります。 関町 髪を緑色とかにしないと、こっち向いてももらえない。イジリようがない。 田所 僕らには、チャンピオンっていう肩書しかないんですよ。 ――十分すぎる肩書ですよ! ちなみに、ご家族は、芸人という仕事に対して理解はありますか? 関町 うちの親はちょっとイタイ親というか……方々に「うちの息子芸人やってるんですけど」って、自分から言っちゃう(笑)。「この前優勝したライスって知ってます?」とか。 ――グイグイですね(笑)。 関町 そういうのを風のウワサで聞くとマジやめてくれって思いますけど、でもまぁうれしいんでしょうね。芸人始めて13年、何もなかったから、親としては心配じゃないですか。しかも、30くらいまで実家住んでたんで。親からしたら「育て方、間違った~」ってなりますよね。 田所 どうすんだろう? とは思われてたよね。反対はされなかったけど。
「ガツガツしないで時を待つ」東京っ子コンビ・ライスが醸し出すゆとり感の画像3
――なんというか、生温かい目で見守られている。 田所 「生温かい」って、なんかいいっすね(笑)。 関町 なんかちょっと湿気のあるあったかさ(笑)。僕らの同期にしずるやハリセンボンがいるんですけど、そういう売れてるやつらがうちに遊びに来ると、母親には「いつかこの子も、こういう人たちみたいになれるのかしら……」みたいな夢を見させていた気はします。ただ、あいつらがあまりにも売れすぎてるから「あんたはいつ有名になるの?」ともなる。 田所 だよね(笑)。 関町 そういうこと言われるたびに「チッうっせーな」と。 ――中二!! 田所 うちの両親はお笑いが好きで、僕らの単独ライブも毎回欠かさず見に来てて、親戚連れて来たり。それでも、ここ数年は「そろそろ、将来のこと考えなきゃいけないんじゃない?」みたいな感じだったんだけど、優勝してからは「私はわかってたよ。ネタは評価されてたもんね~」みたいなこと言いだした(笑)。 関町 僕らが「キングオブコント」で優勝するまで芸人続けてこられたのは、単純に東京に実家があったからです! 田所 ぬくぬくと芸人ができました。 関町 もっと早く実家出てたら、もっと早く結果出せてたかもしれないけど(笑)。 ――お2人は、さまぁ~ずさんと同じ高校ご出身ですよね。お話を伺っていると、さまぁ~ずさんにも通じる「東京っ子」感、あるなぁと。あんまりガツガツせず、周囲が認めてくれるまで待つ、みたいな。 田所 のんびりと待つ(笑)。 関町 東京03の角田さんも、同じ高校なんですよ! ――お笑い名門校! 関町 もしかしたら、あの学校の校風が、こういう人間を作るのかもしれない。 ――後輩にアドバイスするとしたらそれですね。 関町 まずは、東海大高輪に入学して……。 田所 そこからは、親のすねをかじり倒しなさい。 関町 さまぁ~ずさん、かじってたかわからないだろ! 田所 かじってるだろ~。 ――そのゆとり感が、逆コンプレックスになったりすることはありませんか? 関町 あぁ、特に吉本は、大阪から来てる芸人さんが多いですからね。 田所 でもしょうがないよね、そこに実家があるんだから。 関町 勝手にそっちが大阪から来たんだから。 田所 めちゃくちゃだな(笑) ――単独ライブについて教えてください。5年ぶりということで、楽しみです。 関町 5年ぶりなんで、どうやって単独ってやってたんだろう……というのが本音で。 田所 そんなマイナスからのスタート(笑)。 関町 今回タイトルを「ブラン』にしたんですけど、「白」という意味の。本当にまっさらな気持ちで挑みたいと思ってます。 田所 初心に帰ってってことですね。チャンピオンになって1年目という気持ち。 関町 だからお客さんにも、1年目の芸人の単独を見に来るつもりでお願いしたい。 田所 すげぇハードル下げるな。 関町 生温かい目で。 (取材・文=西澤千央) ●ライス単独ライブ「ブラン」 日時: 7月7日(金)19:30開演 7月8日(土)14:00開演 19:00開演 7月9日(日)13:00開演 17:00開演 会場:CBGKシブゲキ!! 料金:前売5000円 当日5500円

「魂を削る思いで書きました」唯一無二の小説家・紗倉まなが向き合った、自身の“闇”と“病み”の正体

「魂を削る思いで書きました」唯一無二の小説家・紗倉まなが向き合った、自身の闇と病みの正体の画像1
 人気AV女優・紗倉まなの2作目となる小説『凹凸』(KADOKAWA)が、3月18日に発売になった。4人のAV女優を描いた短編集『最低。』(同)で鮮烈な文壇デビューを飾ったのが、昨年2月。それから1年、初の長編となった新作の筆致には一切の迷いがなく、読者に「伝わっていること」への確信に満ちていた。  物語の主人公・栞と同じ24歳になったばかりの紗倉まなに、話を聞きに行った。あいかわらず天真爛漫な笑顔を振りまきながら、作家は「今回は自由に書いた」「書きたかったことを書いた」と繰り返した。そして「魂を削る思いで書いた」とも──。  このインタビューでは、前半に『凹凸』に込めた思い、後半には処女作『最低。』の映像化と、紗倉まなが“唯一無二の小説家”である所以について話を聞いた。
「魂を削る思いで書きました」唯一無二の小説家・紗倉まなが向き合った、自身の闇と病みの正体の画像2
『凹凸』(KADOKAWA)
──2作目となりますが、OKが出て脱稿した瞬間の気持ちって、1作目に比べてどうですか? 紗倉 正直、今回のほうが前回より喜びが全然大きかった気がします。前回は自信がなかったし、自分の職業を題材にすることで「イコール自分のこと」と思われちゃうことに囚われていた部分もあって。今回は自分が書きたかったものだし、家族がテーマだし、自由に表現できる分だけ、出し切れた、絞り出せたっていう感覚がすごく大きかったです。出来上がったときは「産み落とせたー!」みたいな、大きな感情がありました。 ──主人公・栞は紗倉さん本人にプロフィールを寄せて描かれています。作品に登場する栞の家族も、実際の紗倉さんのご家族をモチーフにしているのでしょうか? 紗倉 家族構成も一緒ですし、離婚の時期だったり、母が13年くらい子どもができなくて私を産んでくれたこともそうですし、設定は私の家族を元に書いています。もちろん自叙伝ではなく物語なので、人物の行動は事実もあれば想像もあるんですけど、参考にはさせてもらいました。 ──では、栞の母・絹子を描写しているときは、実際のお母さんの顔が浮かんでいた? 紗倉 そうですね。だいぶ美化された母が浮かんでいました。でもやっぱり、両親と本当に向き合ってしまうことが苦しいなって思う瞬間があったりして、途中からは自分のキャラクターとして、父親も母親も動かしていました。おおまかな器だけお借りしました、みたいな感じです。 ──読み進めていくうちに、鮮烈なイメージを伴ったシーンが現れます。栞の祖父、絹子の父である辰夫という人物が自殺を遂げますが、その方法がもう、ちょっと想像の範疇を超えているというか……。 紗倉 祖父の話は、小さいときになんとなく聞いていたんですが、断片的な記憶しかなくて、それを両親にも深く聞けなかったんです。どんな風に死んでいったのかとか……。でも、昔ながらの生粋の下町っ子というか、ギャンブル好きで、自分でも馬を買っちゃって、スクラップ屋を経営していて、そういう要素を重ねたときに、たやすく死なないだろうな、と思ったんですよ。 ──なるほど、ここまでの方法じゃないと、死にそうもないという。 紗倉 だろうな、と思って。あと、自分は自殺したことはないですけど、自殺する人って慢性的に死にたいと思っているか、刹那的な瞬間で死ぬキッカケがあったとか……死との向き合い方を考えることが、すごく難しいなと思っていて、もし辰夫のような死に方があったら、拍手喝采だなと。 ──あ、拍手喝采なんですね。 紗倉 あははは、闇が深い……。 ──では、自分が作ったキャラクターが壮絶な自殺を遂げたり、目を覆いたくような狂い方をしたりするシーンって、書いていてちょっと気持ちいいんじゃないですか? 紗倉 あっ、気持ちいいですね~。なんか、生きてるぅー! って感じがします。生かしてやってるし、殺してやってるしっていう。人は人を操縦できないけど、物語はやっぱり自分が操縦できるっていうのが気持ちいいし、苦しいし、楽しいしっていう……なんかこう、ホントに病みますね(笑)。 ──けっこうニヤニヤしながら書いてたんだろうなっていうのは、伝わってきます。 紗倉 そうですね、逆に書きすぎて、担当さんとかには、「すごい暴れてますね」って言われたこともあって。なんか、けっこう、ほんとに(笑)。
「魂を削る思いで書きました」唯一無二の小説家・紗倉まなが向き合った、自身の闇と病みの正体の画像3
■家族の死と、堕胎された命の“重み”とは ──その辰夫が亡くなったあとの妻・孝子(栞の祖母)もそうですし、栞の父・正幸もそうですが、登場人物たちが家族が亡くなったことをきっかけに大きく変化するというか、狂ってしまいます。この物語の中では、人が変化する瞬間が、常に家族が死ぬことによって訪れますね。 紗倉 今、私それを聞いて、発見というか、家族が死ぬことで変わるって、確かにそうだったって。自分で書いていたんですけど、無意識だったかもしれないです。赤ちゃんもそうですよね。 ──栞の堕胎を恋人・智嗣が見つけることで、関係が進展していきます。逆にいうと、家族が死なないと人は変わっていけないという意識が、紗倉さんの中にあるんでしょうか? 「家族に死んでほしい」というほどじゃないですが、家族が死んだら自分が大きく変化するのかな、みたいな思いが。 紗倉 それはすごいあります。すっごいあります。私は母子家庭で一人っ子で、母親のことは大好きだし愛してるし、いなかったらすっごい苦しいけど、その方が気が楽だなと思うことも多くて。今後、介護していかなきゃいけないとか、老いておかしくなっていく瞬間にも立ち会わなきゃいけないじゃないですか。それはもう自分の宿命というか、背負わされてる感じは間違いなくあって。家族って大事だけど大事じゃないみたいな、切り離し方がすごく残酷だなって、ずっと思ってて。 ──一方で栞は、堕胎を繰り返して、人の親になることを拒み続けています。この堕胎されていく命というのを、例えばお母さんの命と比べて、どういう風に見ているのか教えてください。 紗倉 私は出産って経験したことがないですけど、世の中ってクルマの運転をする人が当たり前にたくさんいるじゃないですか。私、出産と似ているなと思っていて、私たちが生まれたときから世の中の人はみんな運転しているけれど、自分が運転しようとしたときに免許を取るのはすごく大変だし、でも当然自分もできるでしょ、みたいな感じで試験を受けていたんです。出産も、もちろん価値の大きさは違いますけど、みんなが産んでいるし、自分も産まれてきているんだから、自分も産めるでしょ、母親になれるでしょって思われている気がするんですね。でも、私にとってはすごく違和感があって、子どもをおろすことより産むことの方が信じられない行為なんです。なんでできるんだろう、なんで為し得てしまうんだろうって、ずっと思っていて。 ──それは、「なんでこんな難しいことができるの?」というのと、「なんでそんな無責任なことができるの?」というのも。 紗倉 うんうんうん、ありますね確かに。両方、どっちもありますよね。出産も堕胎も、どっちも「何、無責任なことしてるの?」だし、「なんでそんな難しいことができるの?」だし。「おろすのなんて絶対無理」って言う人もいれば、「おろさざるを得ないからおろすね」って言う人もいる。向き不向きっていうのは絶対あるし、そこについて「命は尊いんだ」みたいなことを言うのは、そういうことじゃないんじゃないかなと思います。自分の身体の中から肉の塊を出すことが、どれくらい怖くて大変なことなのかっていうのは、きっと他人に言われる筋合いのないことなんじゃないかなって思います。
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■「ヤリマンになりたい」思いは成就したか ──前回の『最低。』の際にインタビューさせていただいたとき(記事参照)、書籍の話をしているのに、唐突に「ヤリマンになりたいんです!」と言い出したのって、覚えてます? 紗倉 あー、言ったかもしれないです。なんか、枯渇していた時期ですか? ──それは知りませんが、『凹凸』の栞も彼氏がいるのにバイト先の男の子と平気で寝たり、ある意味ではヤリマンだと思うんですが、紗倉さんがあのとき言っていたヤリマンとは違いますよね? 紗倉 栞はどちらかというと、コミュニケーションを取れない子で、息を吸う感覚でやっていることなんだと思うんです。たまたま流れるように出会った人たちと、そういう行為を繰り返すことで生きている実感を得たりだとか、さりげないものなんですよね、きっと。 ──紗倉さんが目指すヤリマンは、これではない? 紗倉 そうですね。すごい寂しいヤリマンじゃないですか、栞の気質って。孤独なヤリマンは嫌なんです。それは超寂しいじゃないですか。 ──孤独なヤリマン。 紗倉 私が目指すのは孤独なヤリマンじゃなくて、パコリンナイト……パコリンナイトは変か。なんかそういう、「フー!」みたいな、充実した陽気なヤリマンになりたいんです。……私は、充実っていう感覚がよくわからなくて、今まで、どれだけ忙しくても、どれだけ楽しくても、充実っていうのが実感しにくいことだったので、もしかしたら、ないものねだりなだけかもしれないです。充実っていうのは、自分がそうだって思い込まないと、いつまでたっても実感できないことなのかもしれないです。 ──それでも、凹と凸の物語は、ささやかなハッピーエンドを迎えます。そこに充実があるんじゃないかっていうところに落ち着いたように読めましたが。 紗倉 着地点はそうですよね。でも……ハッピーエンドなのかな、どうなのかな。 ──そもそも、なぜ物語を書くのか、という話を伺えますか? すごく面倒だし、ストレートにエッセイとして本音を出すことだってできたはずなんです。なぜ物語を作るのか、物語にしか乗せられないものがあるのか。 紗倉 やっぱり、都合がいいからだと思います。物語なら嘘もつけるし、本当のこともいえる。実は、小説のほうが自分を赤裸々にして、書きたいことが書ける。「だって、私じゃない」って言っちゃえばいいことだから。それに、小説なら「自分のことを知ってほしい」ではなく「物語を楽しんでほしい」っていう気持ちで書けるから、自己満足の仕方が違うんだなって思いましたね。
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■処女作『最低。』映像化と“唯一無二の小説家”紗倉まなの存在 ──『最低。』が瀬々敬久監督で映画化されると聞きました。おめでとうございます。 紗倉 ありがとうございます。瀬々監督とはクランクインの日に少しお話をさせていただきましたが、自分の作品を大切に思ってくださっていることが感じられて、ありがたかったです。 ──『最低。』に関しては、各方面から絶賛の声が相次いだと思います。だから、あのAVを見たときに、「すげえな……」と思ったんですよ。SOD版『最低。』って、あったじゃないですか。タイガー小堺監督の。AVの。 紗倉 ふほほほほほほ。すっげえ性格悪い女優を演じるやつですよね。 ──そうそう、「最低のAV女優を演じる」という。あれは本人じゃなかったら、大変なことだと思うんですよ。一生懸命書いたのに。 紗倉 うんうんうんうん。 ──あのAVは、なんだったんでしょう……。 紗倉 あれはホントに……ちょっと聞いてくださいよ! 高橋がなりさんっていらっしゃるじゃないですか。がなりさんが、紗倉が『最低。』を出版したし、「最低」っていうのにまつわるテーマで、じゃあ「最低のAV女優」を演じろみたいな。 ──確かに、SODらしい企画だなとは思ったんですけど、あの小説をあのように扱われるっていうのは……。 紗倉 ふははははは。 ──非常に特殊な環境に置かれた小説家だなと思ったんです。完全に唯一無二だし、前代未聞だと思うんですよ。自分で著作と同タイトルのAVが作れるというのは。 紗倉 私も本当は「ちょっとー!」って思いましたけど、口が裂けてもそんなこと言えないですから。私は自分の身を置いている場所がSODだから、それは許容することだなと思っていて。なんか楽しく演じられちゃったのもあって、複雑な心境でしたね。そこに乗り気になっちゃう自分は、やっぱりSODの人だなって感じたし、別にそれでもいいなって、ちょっと思いました。でもこれ、そもそもはじめはカッパのAVを撮る企画だったんですよ。 ──カッパ? 紗倉 カッパの企画だったんです。3回くらいカッパのメークテストして、「カッパはマンコがついてないから、タピオカを生み落せ」みたいなことを言われたんです。 ──SODstarで、そんなことやっている女優さんいましたっけ? 紗倉 いないです……。 ──でも、『凹凸』も重版が決まったそうですし、知名度が上がればAV版の話が出てくる可能性もありますね。 紗倉 そしたらもう、『凹凸』なんて「身体で表現しろ」とか言われますよ。「凹でーす! 凸でーす!」みたいな。挿れた瞬間に「おうとつー!」って叫ぶみたいな。絶対そっちですよ……。でも、やったほうがいいのかなー。やっちゃおうかなー。 ──出たら買いますよ。 紗倉 じゃあ、いいものにします。せめて。 ──作家業とAV女優って、両方紗倉まなであるとは思うんですけど、交わらないラインだと思ってたんです。あまりに小説の出来がよかったから。作家がこれだけ魂を削ってるのに、うわべだけでやられちゃう感じ、おもしろいなーと思って、やっぱりすごい人ですよ。存在というか、表現者としてすごいです。 紗倉 そっすか、お恥ずかしい限りですけど、本当に。 (取材・文=編集部/撮影=尾藤能暢)
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●『凹凸』 結婚13年目で待望の娘・栞が生まれた一家に、ある異変が起きていた。“あの日”を境に夫と決別した絹子は、娘を守ろうと母親としての自分を貫こうとする。しかし、24歳になった栞は“ある日”の出来事に縛られ続け、恋人の智嗣に父親の姿を重ねている自分に気付く…。家族であり、女同士でもある母と娘、二代にわたる性と愛の物語。 ●紗倉まな 1993年3月23日、千葉県生まれ。工業高等専門学校在学中の2012年にSODクリエイトの専属女優としてAVデビュー。2015年には「スカパー! アダルト放送大賞」で史上初の三冠を達成する。テレビ出演や雑誌グラビアでも活躍し、「週刊プレイボーイ」(集英社)、『messy』(サイゾー)でコラム連載。著書に今秋の実写映画化を控える処女小説『最低。』(KADOKAWA)、エッセイ集『高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職』(宝島社)、スタイルブック『MANA』(サイゾー)がある。 金属系女子・紗倉まなの「愛ってなんですか?」(messy) http://mess-y.com/archives/category/column/sakuramana
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「魂を削る思いで書きました」唯一無二の小説家・紗倉まなが向き合った、自身の“闇”と“病み”の正体

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 人気AV女優・紗倉まなの2作目となる小説『凹凸』(KADOKAWA)が、3月18日に発売になった。4人のAV女優を描いた短編集『最低。』(同)で鮮烈な文壇デビューを飾ったのが、昨年2月。それから1年、初の長編となった新作の筆致には一切の迷いがなく、読者に「伝わっていること」への確信に満ちていた。  物語の主人公・栞と同じ24歳になったばかりの紗倉まなに、話を聞きに行った。あいかわらず天真爛漫な笑顔を振りまきながら、作家は「今回は自由に書いた」「書きたかったことを書いた」と繰り返した。そして「魂を削る思いで書いた」とも──。  このインタビューでは、前半に『凹凸』に込めた思い、後半には処女作『最低。』の映像化と、紗倉まなが“唯一無二の小説家”である所以について話を聞いた。
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『凹凸』(KADOKAWA)
──2作目となりますが、OKが出て脱稿した瞬間の気持ちって、1作目に比べてどうですか? 紗倉 正直、今回のほうが前回より喜びが全然大きかった気がします。前回は自信がなかったし、自分の職業を題材にすることで「イコール自分のこと」と思われちゃうことに囚われていた部分もあって。今回は自分が書きたかったものだし、家族がテーマだし、自由に表現できる分だけ、出し切れた、絞り出せたっていう感覚がすごく大きかったです。出来上がったときは「産み落とせたー!」みたいな、大きな感情がありました。 ──主人公・栞は紗倉さん本人にプロフィールを寄せて描かれています。作品に登場する栞の家族も、実際の紗倉さんのご家族をモチーフにしているのでしょうか? 紗倉 家族構成も一緒ですし、離婚の時期だったり、母が13年くらい子どもができなくて私を産んでくれたこともそうですし、設定は私の家族を元に書いています。もちろん自叙伝ではなく物語なので、人物の行動は事実もあれば想像もあるんですけど、参考にはさせてもらいました。 ──では、栞の母・絹子を描写しているときは、実際のお母さんの顔が浮かんでいた? 紗倉 そうですね。だいぶ美化された母が浮かんでいました。でもやっぱり、両親と本当に向き合ってしまうことが苦しいなって思う瞬間があったりして、途中からは自分のキャラクターとして、父親も母親も動かしていました。おおまかな器だけお借りしました、みたいな感じです。 ──読み進めていくうちに、鮮烈なイメージを伴ったシーンが現れます。栞の祖父、絹子の父である辰夫という人物が自殺を遂げますが、その方法がもう、ちょっと想像の範疇を超えているというか……。 紗倉 祖父の話は、小さいときになんとなく聞いていたんですが、断片的な記憶しかなくて、それを両親にも深く聞けなかったんです。どんな風に死んでいったのかとか……。でも、昔ながらの生粋の下町っ子というか、ギャンブル好きで、自分でも馬を買っちゃって、スクラップ屋を経営していて、そういう要素を重ねたときに、たやすく死なないだろうな、と思ったんですよ。 ──なるほど、ここまでの方法じゃないと、死にそうもないという。 紗倉 だろうな、と思って。あと、自分は自殺したことはないですけど、自殺する人って慢性的に死にたいと思っているか、刹那的な瞬間で死ぬキッカケがあったとか……死との向き合い方を考えることが、すごく難しいなと思っていて、もし辰夫のような死に方があったら、拍手喝采だなと。 ──あ、拍手喝采なんですね。 紗倉 あははは、闇が深い……。 ──では、自分が作ったキャラクターが壮絶な自殺を遂げたり、目を覆いたくような狂い方をしたりするシーンって、書いていてちょっと気持ちいいんじゃないですか? 紗倉 あっ、気持ちいいですね~。なんか、生きてるぅー! って感じがします。生かしてやってるし、殺してやってるしっていう。人は人を操縦できないけど、物語はやっぱり自分が操縦できるっていうのが気持ちいいし、苦しいし、楽しいしっていう……なんかこう、ホントに病みますね(笑)。 ──けっこうニヤニヤしながら書いてたんだろうなっていうのは、伝わってきます。 紗倉 そうですね、逆に書きすぎて、担当さんとかには、「すごい暴れてますね」って言われたこともあって。なんか、けっこう、ほんとに(笑)。
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■家族の死と、堕胎された命の“重み”とは ──その辰夫が亡くなったあとの妻・孝子(栞の祖母)もそうですし、栞の父・正幸もそうですが、登場人物たちが家族が亡くなったことをきっかけに大きく変化するというか、狂ってしまいます。この物語の中では、人が変化する瞬間が、常に家族が死ぬことによって訪れますね。 紗倉 今、私それを聞いて、発見というか、家族が死ぬことで変わるって、確かにそうだったって。自分で書いていたんですけど、無意識だったかもしれないです。赤ちゃんもそうですよね。 ──栞の堕胎を恋人・智嗣が見つけることで、関係が進展していきます。逆にいうと、家族が死なないと人は変わっていけないという意識が、紗倉さんの中にあるんでしょうか? 「家族に死んでほしい」というほどじゃないですが、家族が死んだら自分が大きく変化するのかな、みたいな思いが。 紗倉 それはすごいあります。すっごいあります。私は母子家庭で一人っ子で、母親のことは大好きだし愛してるし、いなかったらすっごい苦しいけど、その方が気が楽だなと思うことも多くて。今後、介護していかなきゃいけないとか、老いておかしくなっていく瞬間にも立ち会わなきゃいけないじゃないですか。それはもう自分の宿命というか、背負わされてる感じは間違いなくあって。家族って大事だけど大事じゃないみたいな、切り離し方がすごく残酷だなって、ずっと思ってて。 ──一方で栞は、堕胎を繰り返して、人の親になることを拒み続けています。この堕胎されていく命というのを、例えばお母さんの命と比べて、どういう風に見ているのか教えてください。 紗倉 私は出産って経験したことがないですけど、世の中ってクルマの運転をする人が当たり前にたくさんいるじゃないですか。私、出産と似ているなと思っていて、私たちが生まれたときから世の中の人はみんな運転しているけれど、自分が運転しようとしたときに免許を取るのはすごく大変だし、でも当然自分もできるでしょ、みたいな感じで試験を受けていたんです。出産も、もちろん価値の大きさは違いますけど、みんなが産んでいるし、自分も産まれてきているんだから、自分も産めるでしょ、母親になれるでしょって思われている気がするんですね。でも、私にとってはすごく違和感があって、子どもをおろすことより産むことの方が信じられない行為なんです。なんでできるんだろう、なんで為し得てしまうんだろうって、ずっと思っていて。 ──それは、「なんでこんな難しいことができるの?」というのと、「なんでそんな無責任なことができるの?」というのも。 紗倉 うんうんうん、ありますね確かに。両方、どっちもありますよね。出産も堕胎も、どっちも「何、無責任なことしてるの?」だし、「なんでそんな難しいことができるの?」だし。「おろすのなんて絶対無理」って言う人もいれば、「おろさざるを得ないからおろすね」って言う人もいる。向き不向きっていうのは絶対あるし、そこについて「命は尊いんだ」みたいなことを言うのは、そういうことじゃないんじゃないかなと思います。自分の身体の中から肉の塊を出すことが、どれくらい怖くて大変なことなのかっていうのは、きっと他人に言われる筋合いのないことなんじゃないかなって思います。
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■「ヤリマンになりたい」思いは成就したか ──前回の『最低。』の際にインタビューさせていただいたとき(記事参照)、書籍の話をしているのに、唐突に「ヤリマンになりたいんです!」と言い出したのって、覚えてます? 紗倉 あー、言ったかもしれないです。なんか、枯渇していた時期ですか? ──それは知りませんが、『凹凸』の栞も彼氏がいるのにバイト先の男の子と平気で寝たり、ある意味ではヤリマンだと思うんですが、紗倉さんがあのとき言っていたヤリマンとは違いますよね? 紗倉 栞はどちらかというと、コミュニケーションを取れない子で、息を吸う感覚でやっていることなんだと思うんです。たまたま流れるように出会った人たちと、そういう行為を繰り返すことで生きている実感を得たりだとか、さりげないものなんですよね、きっと。 ──紗倉さんが目指すヤリマンは、これではない? 紗倉 そうですね。すごい寂しいヤリマンじゃないですか、栞の気質って。孤独なヤリマンは嫌なんです。それは超寂しいじゃないですか。 ──孤独なヤリマン。 紗倉 私が目指すのは孤独なヤリマンじゃなくて、パコリンナイト……パコリンナイトは変か。なんかそういう、「フー!」みたいな、充実した陽気なヤリマンになりたいんです。……私は、充実っていう感覚がよくわからなくて、今まで、どれだけ忙しくても、どれだけ楽しくても、充実っていうのが実感しにくいことだったので、もしかしたら、ないものねだりなだけかもしれないです。充実っていうのは、自分がそうだって思い込まないと、いつまでたっても実感できないことなのかもしれないです。 ──それでも、凹と凸の物語は、ささやかなハッピーエンドを迎えます。そこに充実があるんじゃないかっていうところに落ち着いたように読めましたが。 紗倉 着地点はそうですよね。でも……ハッピーエンドなのかな、どうなのかな。 ──そもそも、なぜ物語を書くのか、という話を伺えますか? すごく面倒だし、ストレートにエッセイとして本音を出すことだってできたはずなんです。なぜ物語を作るのか、物語にしか乗せられないものがあるのか。 紗倉 やっぱり、都合がいいからだと思います。物語なら嘘もつけるし、本当のこともいえる。実は、小説のほうが自分を赤裸々にして、書きたいことが書ける。「だって、私じゃない」って言っちゃえばいいことだから。それに、小説なら「自分のことを知ってほしい」ではなく「物語を楽しんでほしい」っていう気持ちで書けるから、自己満足の仕方が違うんだなって思いましたね。
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■処女作『最低。』映像化と“唯一無二の小説家”紗倉まなの存在 ──『最低。』が瀬々敬久監督で映画化されると聞きました。おめでとうございます。 紗倉 ありがとうございます。瀬々監督とはクランクインの日に少しお話をさせていただきましたが、自分の作品を大切に思ってくださっていることが感じられて、ありがたかったです。 ──『最低。』に関しては、各方面から絶賛の声が相次いだと思います。だから、あのAVを見たときに、「すげえな……」と思ったんですよ。SOD版『最低。』って、あったじゃないですか。タイガー小堺監督の。AVの。 紗倉 ふほほほほほほ。すっげえ性格悪い女優を演じるやつですよね。 ──そうそう、「最低のAV女優を演じる」という。あれは本人じゃなかったら、大変なことだと思うんですよ。一生懸命書いたのに。 紗倉 うんうんうんうん。 ──あのAVは、なんだったんでしょう……。 紗倉 あれはホントに……ちょっと聞いてくださいよ! 高橋がなりさんっていらっしゃるじゃないですか。がなりさんが、紗倉が『最低。』を出版したし、「最低」っていうのにまつわるテーマで、じゃあ「最低のAV女優」を演じろみたいな。 ──確かに、SODらしい企画だなとは思ったんですけど、あの小説をあのように扱われるっていうのは……。 紗倉 ふははははは。 ──非常に特殊な環境に置かれた小説家だなと思ったんです。完全に唯一無二だし、前代未聞だと思うんですよ。自分で著作と同タイトルのAVが作れるというのは。 紗倉 私も本当は「ちょっとー!」って思いましたけど、口が裂けてもそんなこと言えないですから。私は自分の身を置いている場所がSODだから、それは許容することだなと思っていて。なんか楽しく演じられちゃったのもあって、複雑な心境でしたね。そこに乗り気になっちゃう自分は、やっぱりSODの人だなって感じたし、別にそれでもいいなって、ちょっと思いました。でもこれ、そもそもはじめはカッパのAVを撮る企画だったんですよ。 ──カッパ? 紗倉 カッパの企画だったんです。3回くらいカッパのメークテストして、「カッパはマンコがついてないから、タピオカを生み落せ」みたいなことを言われたんです。 ──SODstarで、そんなことやっている女優さんいましたっけ? 紗倉 いないです……。 ──でも、『凹凸』も重版が決まったそうですし、知名度が上がればAV版の話が出てくる可能性もありますね。 紗倉 そしたらもう、『凹凸』なんて「身体で表現しろ」とか言われますよ。「凹でーす! 凸でーす!」みたいな。挿れた瞬間に「おうとつー!」って叫ぶみたいな。絶対そっちですよ……。でも、やったほうがいいのかなー。やっちゃおうかなー。 ──出たら買いますよ。 紗倉 じゃあ、いいものにします。せめて。 ──作家業とAV女優って、両方紗倉まなであるとは思うんですけど、交わらないラインだと思ってたんです。あまりに小説の出来がよかったから。作家がこれだけ魂を削ってるのに、うわべだけでやられちゃう感じ、おもしろいなーと思って、やっぱりすごい人ですよ。存在というか、表現者としてすごいです。 紗倉 そっすか、お恥ずかしい限りですけど、本当に。 (取材・文=編集部/撮影=尾藤能暢)
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●『凹凸』 結婚13年目で待望の娘・栞が生まれた一家に、ある異変が起きていた。“あの日”を境に夫と決別した絹子は、娘を守ろうと母親としての自分を貫こうとする。しかし、24歳になった栞は“ある日”の出来事に縛られ続け、恋人の智嗣に父親の姿を重ねている自分に気付く…。家族であり、女同士でもある母と娘、二代にわたる性と愛の物語。 ●紗倉まな 1993年3月23日、千葉県生まれ。工業高等専門学校在学中の2012年にSODクリエイトの専属女優としてAVデビュー。2015年には「スカパー! アダルト放送大賞」で史上初の三冠を達成する。テレビ出演や雑誌グラビアでも活躍し、「週刊プレイボーイ」(集英社)、『messy』(サイゾー)でコラム連載。著書に今秋の実写映画化を控える処女小説『最低。』(KADOKAWA)、エッセイ集『高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職』(宝島社)、スタイルブック『MANA』(サイゾー)がある。 金属系女子・紗倉まなの「愛ってなんですか?」(messy) http://mess-y.com/archives/category/column/sakuramana
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凹凸 まなてぃの恐るべき才能 「魂を削る思いで書きました」唯一無二の小説家・紗倉まなが向き合った、自身の闇と病みの正体の画像8

マイナス25kgのダイエットに成功した元地下アイドル! 清純派の18歳・天海こころがAVデビュー

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 古き良き日本の田舎風景を舞台に、清純女学生の性を描くソフト・オン・デマンドのレーベル「青春時代」から18歳の元地下アイドル、天海こころが『「私、可愛くなりたいんです。」天海こころ 18歳 SOD専属AVデビュー』でデビューを果たす。学生時代、肥満が原因で暗い青春を送っていたという天海は、自分を変えるために上京して某アイドルグループに。その後、グループ解散を機にさらに自分を飛躍させたいとAVデビューを決意。本作で新しい自分をさらけ出す。今回はそんな天海にデビュー前の心境を聞いてきた。 ──地下アイドルをやっていたのに、いきなりのAVデビュー。抵抗はなかったんですか? 天海 特になかったです。昔からわたし、結構太っていて、暗い人生を送っていたんです。その頃からすれば、自分をいろんな人に知ってもらえる華やかなお仕事につけることは、ありがたいなって。 ──自分に自信をつけるためにアイドル活動を始めたと聞きました。 天海 ずっと引っ込み思案で暗い自分だったので、いろんな人に見てもらえる環境に入って、自分を変えたかったんです。 ──地下アイドル活動は、どんな感じだったんですか? 天海 3人組のアイドルグループをやっていたんです。週5くらいのペースでライブなんかをやっていました。わけあって3カ月くらいで解散しちゃったんですけど。 ──その後、AVデビューを決意。アイドル活動では物足りない部分があったということですか 天海 週5、6ペースでライブは辛いっていう体力的な問題もあったんですけど、インディーズではなく、大きなレーベルから自分の名前がついた作品をリリースできることのほうが、わたしにとっては大きなステップだって思えたんです。 ──なるほど。AVには、もともと詳しかったんですか? 天海 そんなに詳しくないです。でも、あるとき、明日花キララさんを知って、その名前にすごくインパクトを感じていろいろ調べるようになって……。わたし、かわいい人が好きなんです。桃乃木かなさんとか、小島みなみさん、天使もえさんとか。この3人は鉄板だなって思っています。自分にAVの話が来たのも、何かのご縁だと思いました。ぜひ、チャレンジしてみようって。 ──でも、脱がなきゃいけないんですよ? 天海 大丈夫です。とにかく目立つところに出ることで、いろんな人に天海こころという名前を知ってもらいたいんです。 ──太っていたということですが、写真を見る限り、そんなに太っている印象はないですよ。
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天海 これよりもっと太っていたんです。20キロ以上。太っていた頃、好きな人がいたんですけど、告白してフラれたり……。太っていた頃はろくなことがなかったです。高校時代、唯一男子の友達がいたんですけど、その人に「わたしのこと周りの人はどう思っているのかな」って聞いてみたら、「俺の仲間、全員デブとかブスって言ってるよ」って。え? って。ショックでした。彼のいう友達の中に、わたしの好きな人もいたんです。 ──当時は、どういうタイプの人が好きだったんですか? 天海 話していて気が合う人ですね。あと、わたしを引っ張っていってくれそうな人。自分自身が何かを決めたりすることがすごく苦手だったので、一緒に遊びに行っても、「どこでもいいんじゃない?」じゃなくて、きちんと行き先を決めてくれるような人がいいなって。 ──体重は当時より20キロ落ちたんですか? 天海 はい。一汁一菜を心がけて(笑)。おばあちゃんに教えてもらったんです。お味噌汁とご飯で一汁。あとは根菜類をって。それを続けていたら少しずつ……。 ──痩せて人生変わりました? 天海 自分の中では、すごく。痩せたのは高校時代、地下アイドルの頃がちょうどその途中。やっぱり自信がつきました。 ──SODの「青春時代」から今回デビュー。田舎が舞台で、清純な天海さんにはぴったりのレーベルです。 天海 撮影も楽しかったです。ロケ先は山がいっぱい。車に乗っていたら野生の猿が出てきたり(笑)。 ──和室でエッチのシーンもあるみたいですね。和室でエッチは初めだったんですか? 天海 そうです。でも、ちょっと和室の、あの真っ白い布団には馴染めなかったかな……。 ──なぜ? 天海 わたしにはあからさますぎるというか、いかにも「するぞ」というふうに見えたんです。どちらかといえばベッドのほうが好きかな(笑)。 ──セーラー服も着ていますね。 天海 学校時代はリボンなしのブレザーだったんです。うれしかったです。一番かわいいと思っていた服が着れて。 ──撮影は緊張しましたか?
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天海 あの白い布団を見るまでは大丈夫だろうって余裕な感じがあったんですけど、でもあの白い布団を見てしまったら……。「やるぞ」って空気感の中に入ったら、震えが止まらなくなってしまって。昼間だし、明るいしって。一気にパニックです(笑)。そんなに経験もないのにって。頭の中が真っ白になってしまって。 ──経験といえば、付き合った人は1人、エッチをした人も1人なんですよね? 天海 そうです。同じ人です。アルバイトをしていたときで、1つ年上の人です。でも、彼とは2回くらいしかエッチはしなかったんです。おとなしい感じの方だったので。その方も経験はあんまりなくて……。 ──なるほど。そこからいきなりプロの男優さんにステップアップしたわけですか。 天海 撮影が始まったら、何も覚えていないくらい頭の中が真っ白になりました。気がついたのが、監督さんの「カット」で、「大丈夫だった? よかったよ」って。そのときに、初めて目を覚ました感じでした。男優さんに聞いたら、ずっと固まっていたみたいで。「わたしどうでしたか?」って聞いたら「それでいいんだよ、慣れなくていいんだよ」って。それで少し安心しましたけど。 ──フェラチオとか、知らない人とエッチするのに抵抗はなかった? 天海 最初の絡みは迫られる感じが怖いと思って緊張したんですけど、2回目からは大丈夫でした。 ──ちなみに裸になってみて、自分の体ではどこが一番魅力的だと思いましたか? 天海 胸は小さいけど、小さいなりの良い形をしているんじゃないかなって。そこですかね。 ──今回はオナニーシーンはあったんですか? 天海 なかったです。やったことはあるんですけど。人に見せるものじゃないし、ちょっと恥ずかしいですね。 ──撮影を通じて自分の性感帯に気づけたりしました? 天海 性感帯……首とかかな。くすぐったいのが快感になったりするので。でもわたしの場合はテクニックを重視するというより。好きだから感じるという派。男優さんとしても好きではないから、心から気持ちいいという感じではなかったです。下手でも好きな人のほうが感じるという感じがしました。 ──正直ですね。今後はどういう作品に出てみたいですか?
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天海 徐々に慣らしていって、だんだん大人の方向にステップアップしていければいいなって思っています。今までかわいい服とかを着たことがなかったので、メイドさんとかの衣装を着て出てみたいです。 ──コスプレはアイドル時代はあまりしなかった? 天海 しなかったです。だからこれを機に、巫女さんとかナースとかいろいろ着てみたいなって。 ──趣味がボクササイズ(ボクシングでダイエット)。 天海 ダイエットをしているときに始めたんです。週一程度通って。 ──ボクササイズ以外だと、普段はどんなことに興味があるの? 天海 映画とか友達とお茶したりとか……できれば人と触れ合っている方がわたしは幸せ。カフェでダラダラ話すのが一番幸せだったりします。みなさんにはAVを通じて、わたしがいかに平凡で、どこにでもいる女の子なんだってことが伝わればいいなと思っているんです。 ──なるほど。では最後にこれから天海さんを知る人にアピールを。 天海 ツイッター(Twitter@2017kokoro)とかもやっているので、作品だけでなくイベントやいろいろな活動を通じてたくさんの人に知ってもらいたいです。活動を通じて素のわたしやわたしの名前だけでも知ってもらえたらいいなって。一年後には今以上に成長していたいです。よろしくお願いします! (取材・文=名鹿祥史)
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「私、もっと気持ちいいことが知りたいです」天海こころ 初めて尽くし4本番(着用済みパンツ 俺たちも知りたい マイナス25kgのダイエットに成功した元地下アイドル! 清純派の18歳・天海こころがAVデビューの画像6

“元アウトローのカリスマ”瓜田純士が『ラ・ラ・ランド』に悶絶!? 「過呼吸になりかけた」理由とは

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 繊細な元ヤクザが、映画館の暗がりの中でパニック寸前に!――“元アウトローのカリスマ”こと作家の瓜田純士(37)が、話題の映画に因縁をつける不定期連載。今回は、アカデミー賞最多6部門受賞のミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』(デイミアン・チャゼル監督)を鑑賞してもらったところ、上映中、苦しげに悶え始めた。カリスマの身に何が起きたのか……?  鑑賞当日、映画館に現れた瓜田。まずはいつものように文句のオンパレードから始まった。 「前々回は『この世界の片隅に』で、前回は『君の名は。』。アニメ、アニメと続いたから、次もどうせアニメだろう。でも『ひるね姫』はあえて外して、ディズニーの『モアナと伝説の海』で来るんじゃないか。そう予想して楽しみにしてたんですよ。こう見えて俺、ディズニーアニメが好きですからね。ここ数日は完全に“モアナ脳”になってて、グッズ見ながらワクワクしてたところに、『次はラ・ラ・ランドでお願いします』という連絡が来て、電話を放り投げましたよ。センスねえセレクトしやがって」 『ラ・ラ・ランド』の存在は、予告などを通じて認知していたが、ジャンル的にお気に召さないらしい。 「アカデミーの授賞式のときに発表ミスがあったミュージカル映画ですよね? 興味ねえよ、アメ公のダンスなんて。どうせ『ムーラン・ルージュ』(2001年製作のアメリカのミュージカル映画)の二の舞だろ。『ムーラン・ルージュ』は20代のときに、当時付き合ってた女と見たんですよ。最悪でしたよ。映画も、その女も」  さんざん毒づきながら劇場入りした瓜田だが、映画が始まるやいなや、呼吸が乱れ、そわそわと落ち着かない様子になり、隣に座っていた麗子夫人から何度も「大丈夫?」と心配されていた。いったい何が起きたのか? 終了後にじっくり話をうかがおう。  * * * ――大丈夫ですか? 序盤、様子がおかしかったですが。 瓜田純士(以下/純士) 主役の一人であるミア(エマ・ストーン)が、すっごい垢抜けないじゃないですか。俺ね、あいつがブス過ぎるせいで、パニック発作が起きそうになったんですよ。冗談じゃなく、マジで。 ――一昨年にパニック障害を克服した瓜田さんですが(記事参照)、この映画が原因で、それが再発しそうになったんですか? 純士 ええ。最初のオーディションのシーンで、ミアがドアップになった瞬間から動悸が早まって、過呼吸になりかけた。「ヤバい、久々に(パニック障害の症状が)来たな」となって、そこからあいつの顔を見るのが怖くなってしまったんです。あと5分で終わりとかなら大丈夫なんだけど、あの暗闇の中、「まだここに2時間いないといけない」という状況が、パニック発作を呼び込むんです。だから、あいつが大写しになるたびに、スクリーンから目を逸らしてました。 ――そんなにツラい思いをするぐらいなら、途中で退出してもらってもよかったのに……。 純士 まぁ最近は、回避方法を心得てるんでね。原因になったものを見ないようにしながら、冷静に呼吸を整えれば大丈夫。隣に嫁もいたので、途中からは落ち着きを取り戻すことができて、終盤にはあの顔も平気になってきた。ブスは2時間で慣れる、ってことですかね。ブサメンだなと思ったもう一人の主人公のセブ(ライアン・ゴズリング)も、後半からイケメンに見えてきましたから。 ――エマ・ストーンって、そんなにブスですかね?
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純士 昔から俺、あの手の女が苦手なんですよ。“アンネの日記系”っていうのかな。色白で、ソバカスができそうで、下着の通販カタログに出てくるような、あの手の女がとにかくダメで、正視できない。でも、そのほかの部分はちゃんと見てたから、ストーリーは理解してるつもりです。 ――映画として、いかがでしたか? 純士 一番コメントに困るパターンなんだけど、すげえ面白くもなく、すげえつまんなくもないんですよ。だから、絶賛も酷評もできない、って感じですね。 瓜田麗子(以下/麗子) ホンマに? ウチは、スーパーおもんなかったわ。退屈で退屈でしょうがなかったでぇ。 ――冒頭の渋滞のシーンが“ツカミ”として高評価を受けているのですが、いかがだったでしょう? 純士 ああいうこれ見よがしな場面は嫌いですね。うるせえよ、早く終われよ、と思いながら見てました。そのあとに苛立ったのは、セブの態度ですね。求める音楽性とやる音楽性の違いで悩むじゃないですか。ホント青くせえ奴だな、と。売れたもん勝ちの世界で何言ってんだ、バカじゃねえかと。やりたいことなんか売れてからやりゃいいんだから、うだうだ抜かしてねえで、ガッツ石松に感謝しろよと思いました。 ――ガッツ石松? 純士 メジャー志向のジャズバンドに引き抜いてくれたボーカルの黒人(ジョン・レジェンド)のことですよ。そのガッツが、セブに向かって名言を残すんですよ。「お前が憧れてるアーティストたちは革命を起こしたんだ。革命を起こすには、古い歴史にとらわれてたらダメなんだ。ジャズは未来なんだ。だから俺たちは新しいことをやっていくんだ」みたいなこと言うでしょう。いいこと言うな、と思いました。でもやってる音楽は全然新しくないから、笑っちゃいましたけどね。 ――えっ? 瓜田さんって、ジャズに詳しいんですか? 純士 いや、全然。でもあいつらのライブの音楽を聴いた瞬間に、こう思ったんですよ。「TKに負けてるじゃねえか」と。 ――TKって、まさか、小室哲哉のことですか?
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純士 そう。TKは、20年前にもっとすごいことをやってる。2017年の今、あんなジャズバンドが新しいって言うんなら、「90年代にTKがやってたことはどうなんだよ、オイ!」と言いたくなりましたね。ガッツも、セブも、TKを聴いたら尻尾巻いて逃げ出しますって。まぁでもセブは、なんやかんやで好感が持てる男ですよ。いい彼氏だな、と思いました。 ――その理由は? 純士 一途だし、彼のほうがミアよりも、ちょっと大人なんですよ。夢と現実の折り合いをつけながら自らのキャリアを積む一方で、役者として芽が出なくて落ち込んでる彼女のためにあれこれ世話を焼いてあげたからこそ、ああいう未来があったわけで。そのことをわかってないとしか思えない行動を取ったミアに対して俺は、「お前、死ねよ」と言いたくなりました。だからお前はその顔なんだよ。日本人にパニック発作を起こさせるようなドブスが! 麗子 純士は「The End」と出た瞬間、ソッコー出ようとしとったけど、ほとんどの人はエンドロールが終わるまで残っとったわ。 純士 エンドロールを最後まで見たいって奴は、「1,800円払ったんだから最後の最後まで見ないと損をする」という貧乏人か、「キャストの詳細を知りたい」とかいう映画通ぶったバカだけですよ。 麗子 最後の最後まで見た人も、全員感動しとるわけではなかったようやな。終わったあと、トイレで女の子の二人組が文句言うとったでぇ。「結局、何が言いたかってんやろなぁ?」「よぅわからんなぁ」って。 純士 俺は具合が悪くなりつつも、監督の言いたいことは、だいたい読み取ったつもりだけどね。夢を追いかけてるときの二人と、その後の二人。それらを凝縮したのが、あのシーンでしょ。「二人が求めてた本当の夢」みたいなもんを、監督はあの曲に乗せてああいう形で表現したかったんでしょう。 ――あの曲は好きですか? 純士 よくわかんない。でも、あの謎のピアノ、彼の旋律とでもいうのかな。ミアと出会ったときや、篠山紀信みたいなジジイに唇噛まされたときも弾いてた、あの大切な曲をもう一度弾くとしたら、あそこしかなかったんでしょうね。彼がそのタイミングを待ってたかどうかはわからないけどね。 ――泣いている観客もチラホラいました。
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純士 やっぱ、夢を追いかける映画は、大衆の心を打ちますよ。子どものときって誰もが一度は、スポーツ選手や、宇宙飛行士や、芸能人に憧れるじゃないですか。俺はロックスターになりたかったのに、どこでどう間違ったか、不良界のスーパースターになってしまったわけですが、今でも音楽の世界に憧れはあります。だから、ショービズの世界を志すカップルの成長記みたいにとらえれば、この映画は楽しめました。ただ、そう見ると、ちょっと飽きちゃう部分もあるんですけどね。成長記にしては、試練が足りないし、二人の生い立ちや家族関係の描写も浅かったから。 ――そうすることで、テンポのよさを出したかったのかもしれませんね。 純士 この映画はあくまでミュージカル仕立てだから、ストーリーの細部を見ちゃいけないのかな。大雑把な起承転結だけをわからせて、あとは音楽で感動させてやるぜ的なもんなのかも。 麗子 こんなん、感動できへん。つまらん授業受けとるのと変わらん。アップダウンの幅が狭いから、4回くらい寝落ちしそうになったわ。後味も悪くて嫌いや。 純士 まぁでも、アメリカで映画賞を総ナメにした理由はよくわかりますよ。 ――それは何でしょう? 純士 アメ公って、ちっちゃい頃からミュージカルに慣れ親しんでるじゃないですか。だからこういう作品を受け入れやすいんですよ。それに、あっちはショービズで食っていきたいって人間が、日本の何倍も多いと思うんです。オーディションで落ちた経験を持つ人が大勢いるショービズの先進国なら、そりゃヒットするでしょう。多くのアメ公にとってこれはきっと、忘れかけてたほろ苦い青春時代を思い出させてくれる作品なんですよ。 ――なるほど。 純士 ガッツ石松バンドのメンバー間のやりとりや、難しそうな顔した脚本家みたいな審査員がオーディションで即座に「帰れ!」とか言ってるのを見て、宮本亜門じゃあるまいし、こんな連中が本当にいるのかよ、と笑いそうになってしまいましたが、映画で誇張されてるとはいえ、やっぱ向こうはそれに近い世界が現実にあるんじゃないかな。日本でもここ最近は、ダンスや音楽で食っていきたいということを公言するYouTuberみたいな出たがりが増えたけど、それでも欧米に比べたらまだまだその人口は少ないはず。高嶺の花は追いかけない、みたいな感覚が根強い国ですからね。それに日本人って、ミュージカルに対する免疫もないはずだから、本来は『ラ・ラ・ランド』が流行る土壌なんて、ほとんどないと思うんですけどね。 ――でも日本でも大人気です。今日は平日の日中だったのに、ほぼ満席でした。学生が春休みだからでしょうか? 純士 さぁ。1年中プラチナウィークの俺には、春休みの時期なんてわかりませんよ。だけど、日本でもヒットしてる理由はなんとなくわかります。「ミュージカルがわかる僕たち私たちって、オシャレじゃない?」そう思いたい連中が多いだけのことでしょう。そいつらのオナニー的感覚がSNSやTwitterで拡散されて、勝手にヒットになってるだけですよ。どいつもこいつもミュージカルなんか見たことないくせに、わかったフリしやがって。 麗子 ちゃうちゃうちゃう! 関西人はちっちゃいときから、宝塚でミュージカルに慣れ親しんでるわ! 純士 あ、そうか(笑)。先を行ってたわ、関西は。 麗子 アメリカのミュージカルはノリがちゃうねん。宝塚には宝塚のよさがあんねや。 純士 リーゼントに肩パットみたいな女たちが「すみれの花咲く頃」とか言ってるもんな。なるほど。あれは日本独自の世界観かもしれない。 ――ではそろそろ、総括のコメントをお願いします。 純士 この監督は前作でもドラムの教官と生徒の物語を描いてたらしいので、きっと本当は自分自身も音楽の世界でスターになりたかった人なんでしょう。だからショービズを志す若者の気持ちをわかってるつもりなんだろうけど、まだまだオナニーだわ。だって、日本人の心をわかってねえもん。だからこの監督には、「日本で真の共感を得たかったら、日本の宝塚を学びに来い!」と言いたいですね。「俺も見たことないから、一緒に行こうぜ!」と。これは俺からのオファーです。 (取材・文=岡林敬太/撮影=おひよ)
元アウトローのカリスマ瓜田純士が『ラ・ラ・ランド』に悶絶!?「過呼吸になりかけた」理由とはの画像5
※日刊サイゾーでは瓜田純士の最新情報をほぼ月イチペースでお届けしています。 http://www.cyzo.com/cat8/outlaw_charisma/ ※瓜田純士&麗子 Instagram  https://www.instagram.com/junshi.reiko/