日本映画のポスターがダサいのは原因があった!? 『獣道』プロデューサー、アダム・トレルが大放談

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 日本映画ってポスターやフライヤーがダサい。そう感じたことはないだろうか? ネットなどで海外の映画のポスタービジュアルを見ていると、すごくオシャレでかっこいいのに、なんでこうも違うのか。そんな疑問に答えてくれたのは、英国出身の映画プロデューサーであるアダム・トレル氏。日本のインディペンデント映画の秀作を海外へ配給する一方、現代版“男はつらいよ”の世界を描いた藤田容介監督の『福福荘の福ちゃん』(14)や原発問題に真正面から斬り込んだ園子温監督の『希望の国』(12)といった話題作をプロデュースしている。単館系でロングランヒットを記録した『下衆の愛』(16)の内田英治監督と再びタッグを組んだ最新プロデュース作『獣道』は、7月15日より東京での公開が始まったばかり。日本映画をこよなく愛するがゆえに辛辣な意見も口から飛び出すトレル氏に、日本映画界のいい面とダメな面について語ってもらった。  東京で始めたのは2014年からだが、独学で学んだという日本語は流暢で気っ風がいい。まずは日本映画界の“いい面”について。 アダム・トレル「日本人は、みんな映画は映画館へ観に行く。これは素晴しいこと。映画はまず映画館で公開され、半年後にDVD化され、さらにその後にオンデマンド化されるようになっています。日本では昔からのルールが今も守られている。でも、欧米ではNetflixが大きな力を持ち、映画の公開とネットでの配信が同時になっています。みんな自宅で映画を観るようになり、DVDレンタル店はすっかり減り、街から映画館もどんどん消えています。その点、日本では映画館で映画を楽しむという文化が守られている。しかも、日本はインドやハリウッドに次ぐ映画製作本数を誇り、まぁこれは多すぎだと思うけど、『下衆の愛』や今回の『獣道』のような低予算の映画でも、面白い作品は2~3週間やそれ以上上映してくれる。映画館に通って、インディーズ映画を応援する日本の映画ファンは本当に素晴しい」
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映画プロデューサーのアダム・トレル氏。12~13歳で深作欣二や鈴木清順にハマり、日本映画に魅了されたという。
 ゼロ年代の個性豊かな日本映画を英国で配給してきたトレル氏は、園監督が資金集めに苦戦した『希望の国』をきっかけにプロデューサーとして日本映画の製作現場に足を踏み入れるようになった。だが、そこで驚いたのが“製作委員会方式”という日本映画界ならではのシステム。映画会社だけでなくテレビ局、出版社、ビデオメーカーなど様々な企業が製作費を分担し、興行リスクを減らすために編み出されたものだが、映画の内容に興味のない人たちが委員会に参加していることには違和感を覚えたという。 トレル「人気アイドル事務所の誰々が出演すればファンを動員できるとか、製作委員会の参加者はお金のことしか関心がない。クリエイティヴィティなことには興味を持っていない。映画への愛情が感じられない。何十億円も投じた大作映画なら分かるけれど、2,000万~3,000万円規模のインディペンデント作品でも製作委員会方式になっていることにはびっくりした。製作委員会ではA、B、C、D……とフォーミュラ(慣習的やり方)で仕事が進んでいく。製作委員会方式では面白い映画はつくれないと思う。もし、面白い映画ができたとしたら、それは単なる偶然。製作委員会方式が嫌で、内田監督の『下衆の愛』は自主映画として作った。製作費は5万ドル以下で、俺の家や行きつけの居酒屋で撮影した。お金はなかったけど、愛とパッションで撮った映画。海外の映画祭で上映されたし、米国、ドイツ、台湾、香港、中国、韓国へ配給でき、イタリアでのリメイクも決まった。映画が面白いかどうかは、製作費がどれだけあるかではなく、愛とパッションがあるかどうかだよ」 ■日本人も知らない日本文化を伝えたい  内田監督との2度目のタッグ作『獣道』は、愛とパッションに加え、映画的な面白さが溢れた作品だ。地方都市を舞台に、カルト教団で育った少女・愛依(伊藤沙莉)が自分の居場所を求めて、ヤンキーコミュニティーに溶け込こんでいく姿が描かれる。カルト教団や崩壊した家庭といった要素は、園監督の大ブレイク作『愛のむきだし』(08)を彷彿させる。また、英国人プロデューサーのアダム氏がヤンキーカルチャーを題材にした映画を製作するというのもユニークだ。
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現在公開中の『獣道』。どこにも居場所のない愛依(伊藤沙莉)は髪を金髪にして、ヤンキー一家の一員となる。
アダム「園監督の『愛のむきだし』を海外で配給したところ、大変な人気になった。それまでの園監督は『自殺サークル』(02)などエクストリーム系の監督のひとりくらいにしか欧州では認識されていなかったけど、『愛のむきだし』が大ヒットし、『冷たい熱帯魚』『ヒミズ』(11)も当たった。内田監督から『獣道』の内容を最初に聞いたとき、俺も『愛のむきだし』と似ているなと感じた。海外ではカルト宗教は人気の題材なので、すごくいいと思った。『獣道』の英題は『Love and Other Cults』。ヤンキー文化に関しては、俺は素養があった。『ビー・バップ・ハイスクール』(85)や『スケバン刑事』(フジテレビ系)を子どもの頃に観ていたしね。海外の不良はギャングっぽくて怖いけど、日本のヤンキーはどこか可愛げがある。それにヤンキー文化は英国のモッズカルチャーと通じるところがある。どちらも労働者階級の文化で、彼らは月曜から金曜まで一生懸命働いて、週末は稼いだお金でバイクを改造したりファッションに使って、みんなでツーリングする。モッズは黒人音楽が好きで、ヤンキーは永ちゃんが好き。音楽が重要なのも一緒(笑)。すごく通じるところがある。俺、70~80年代の日本のアイドルグループも大好きで、ピンクレディやキャンディーズのグッズをコレクションしていた。メジャーなアイドルだけじゃなくて、キャンディーズの妹分だったトライアングル、フィーバー、キャンキャンまで集めてた。日本人も知らない日本の文化をみんなに伝えたい。自分でもおかしいと思うよ。ヤバいよね(笑)」
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元人気子役の伊藤沙莉と須賀健太がそのポテンシャルを遺憾なく発揮。閉塞的な社会に喘ぐ若者像をリアルに演じている。
 上映時間237分だった『愛のむきだし』に対し、『獣道』は94分で家族や社会に翻弄されながら生きていくヒロイン・愛依の過酷な青春が濃密に描かれていく。愛依を演じた伊藤沙莉はテレビドラマで活躍した人気子役出身だが、『獣道』では金髪に染めてのヤンキーファッション、清純そうな中流家庭風ファッションなど自分を受けいれてくれる環境に応じて次々と擬態していく。自分の居場所を失いたくないために上半身裸になるシーンもあり、まさに体当たりの熱演で『獣道』を完走してみせた。 アダム「伊藤沙莉は本当にヤバいよ(笑)。彼女は女優としてもちろん人気もあるけど、大事なのは人気よりも演技ができるということ。彼女が脱ぐシーンは、脱ぐことで自分の心を見せる重要な場面だった。逆にSEXシーンでは脱いでない。彼女はちゃんとそのことを理解してくれて演じてくれた。彼女の所属事務所は、タレントではなく俳優をマネージメントしている、映画に対して理解のある会社でよかった。これが製作委員会方式だったら、『もっと有名なアイドルを使え』とか言ってきて、その結果このシーンもなくなっていたかもしれない。もしくはセールスのためにヌードシーンを増やすよう言われたかもしれない。内田監督は女優の演出がうまいし、キャスティングのセンスもいい。今回もすごくいいキャストが集まった。ヤンキー役の吉村界人もいいし、演技は初めてのアントニーも悪くない。子役時代も含めて長いキャリアのある須賀健太は安定していて、もう何も言うことがない(笑)。最初の編集段階での『獣道』はすごく長かったけど、俺は編集に関しては厳しい。最近の日本映画はダラダラしたのが多すぎる。映画は映像と音も大事だけど、テンポをよくしないと海外では観てもらえない。最初から最後まで監督と一緒になって映画をよくするための努力を惜しまない、それがプロデューサー」
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ヤンキー映画をプロデュースしたアダム氏に「ヤンキー座り、お願いします」と頼んだところ、こんな感じに……。
■日本のコメディは海外にも需要がある  これまで海外では、日本映画といえば三池崇史監督の『オーディション』(00)をはじめとするエクストリーム系か中田秀夫監督の『リング』(98)のようなホラー作品しか知られていなかったが、日本のインディペンデント系のコメディ作品には個性的な作品が多く、海外でも需要があると話す。 アダム「藤田監督の前作『全然大丈夫』(08)はロンドンで劇場公開されるほど人気が高かったから、『福福荘の福ちゃん』もつくった。三木聡監督も英国で人気がある。三木監督の『亀は意外と速く泳ぐ』(05)、『転々』(07)、『インスタント沼』(09)をDVD-BOXにしたら、すごく売れた。三木監督も藤田監督もモンティパイソンを見て育った世代で、彼らのちょっとブラックな笑いは英国人も大好き。日本のインディペンデント系監督のコメディはとても個性的で、海外でもっと売れる可能性がある。藤田監督や三木監督のオリジナル作品を求めているファンは海外に多い。日本には才能のある監督が他にもたくさんいる」  最後になったが、冒頭で触れた「日本映画のポスターがダサいのはなぜか」という問題について。アダム氏が運営する配給会社「Third Window Films」のwebサイトには日本のポスターとは異なる、オシャレな英語版のポスタービジュアルが並んでいる。日本と海外とでポスターがこうも違うのはどうしてなのか? アダム「日本の映画のポスターやフライヤーはすごく説明的。出演者は誰々で、どんなストーリーかも文字でびっしり説明されている。予告編もそう。日本のフライヤーと予告編を見たら、内容がだいたい分かってしまう。『これはどんな映画なんだろう』と見た人がもっとミステリアスに感じ、興味を持たせるようなものにしないとダメ。海外では日本の出演者が誰かということには興味が持たれないので、日本版のポスターをそのままは使えない。今後はますますオンデマンドが主流化していくから、キービジュルはより重要になってくる。それに映画はアートなんだから、ポスターやフライヤーもアートじゃないとね。日本映画のポスターやフライヤーがダサいのはデザイナーの責任ではなく、ディレクションしている映画会社の宣伝担当者の問題であり、ポスターやフライヤーにまで口を出してくる芸能事務所が大きな問題。主人公だけ映ったポスターを予定していたら、『うちの俳優もポスターに入れろ』『斜めじゃなくて、正面から顔が映ったものにしろ』とか文句を言ってくる。日本映画のポスターがどれもこれも同じように、出演者の顔だらけなのはそのため。映画のクリエイティヴな面にまで口を挟んでくる日本の芸能事務所はおかしい。まぁ、『獣道』のポスターはやり過ぎかもしれないけどね(笑)」  前作『下衆の愛』の上映期間中は、都内の上映館のエントランスにアダム氏が立ち、手作りのポストカードを入場者にひとりずつ配る姿が連日続いた。お客さんと話すことが楽しいし、お客さんから映画の感想や意見を聞いて、次回作はよりよいものにしたいという想いからだった。『獣道』でも都内での上映期間中は基本、映画館でお客さんを出迎え、見送るつもりだという。『獣道』をスクリーンで楽しんだ後は、ぜひアダム氏の生トークにも触れてみてほしい。 (取材・文=長野辰次/撮影=尾藤能暢)
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『獣道』 監督・脚本/内田英治 プロデューサー/アダム・トレル 主題歌/餓鬼連合(餓鬼レンジャーwith伊藤沙莉) 出演/伊藤沙莉、須賀健太、アントニー、吉村界人、韓英恵、冨手麻妙、松本花奈、川上奈々美、毎熊克哉、マシュー・チョジック、矢部太郎、でんでん、広田レオナ、近藤芳正、篠原篤、日高七海、大島葉子、アベラヒデノブ、川籠石駿平、根矢涼香、衣緒菜、森本のぶ、水澤紳吾、松井薫平 配給/スタイルジャム 7月15日よりシネマート新宿ほか全国順次公開中 (c)third window films http://www.kemono-michi.com ●アダム・トレル 1982年英国ロンドン生まれ。22歳のときに配給会社「Third Window Films」を立ち上げる。園子温監督の『愛のむきだし』(08)、『冷たい熱帯魚』『ヒミズ』(11)、『ラブ&ピース』(15)などを英国で配給し、園監督の海外での人気を高めた。資金集めが難航した園監督の『希望の国』(12)には共同プロデューサーとして参加。2014年より日本に来日しての映画製作も始め、『福福荘の福ちゃん』(14)や『下衆の愛』(16)をプロデュースしている。

「ブレーク芸人」大量輩出中のTBSラジオ『ラフターナイト』──その“選球眼”の秘密を聞いた!

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 ひところ、「テレビのネタ番組が減った」とよく言われた。それに伴い、若手芸人がテレビに出る機会が減少した、とも。だが、2015年の『M-1グランプリ』復活あたりから潮目が変わり、深夜にネタ番組が増加。『内村てらす』(日本テレビ系)、『こそこそチャップリン』(テレビ東京系/今年4月より『にちようチャップリン』にリニューアル)、『有田チルドレン』『有田ジェネレーション』(TBS系)、『お願い!ランキング』(テレビ朝日系)内「お願い!マンピンコン」、『新しい波24』(フジテレビ系)など、各局が活きのいい若手を次々と出演させている。  そんな中にあって、お笑い好きの間で注目度の高いネタ番組が、テレビではなくラジオにある。毎週金曜24時からTBSラジオで放送されている『マイナビLaughter Night』(ラフターナイト)だ。 『ラフターナイト』は15年4月に開始した。毎月40組の芸人がオンエアを争うネタバトルに参加し、観覧客の投票によって20組がオンエアを獲得する。放送後、ホームページで受け付けているリスナー投票と、TBSラジオ・JUNK総合プロデューサーの宮嵜守史氏、『水曜日のダウンタウン』プロデューサー・藤井健太郎氏、『おぎやはぎのメガネびいき』等を担当する放送作家・鈴木工務店氏による番組審査員の審査に基づいて、「月間チャンピオン」が決定する。  当初は毎週土曜日24時から30分間の番組だったが、今年4月から金曜24~25時の1時間枠に拡大。前半30分が5組のネタをオンエア、後半30分が結成6年目のコンビ・空気階段による「空気階段の踊り場」という構成になった『ラフターナイト』がお笑い好きから注目されている理由は、その“選球眼”にある。  歴代月間チャンピオンには、カミナリ、メイプル超合金、相席スタートなどが並ぶ。いずれも『M-1グランプリ』出場前で、ライブに足を運ぶようなお笑いファンにはその実力が知られていたものの、世間的にはまったくの無名だった時期だ。彼ら以外にも、その『M-1グランプリ』をはじめ『キングオブコント』や『R-1ぐらんぷり』ファイナリスト候補と目される若手芸人たちが、月間チャンピオンに輝いている。  コアなお笑いファンを納得させるラインナップは、どのようにして実現しているのか? 同番組を担当する越崎恭平ディレクターに聞いた。
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TBSラジオ『マイナビLaughter Night』の越崎恭平ディレクター
――毎週楽しみに聴いています。毎回出演している芸人さんのラインナップが“的確”すぎて感心するのですが、出場者はどうやって集めているんですか? 越崎恭平氏(以下、越崎) オンエア争奪ライブ自体がオーディションなので、かなり間口を広く受け入れています。ホームページからのエントリー制で、各事務所のマネージャーさんが応募してきますし、フリーランスの芸人さんは自分で送ってきますね。それに加えて、自分がお笑いライブに通って、そこで面白かった人に出場を打診するケースもあります。初めてのメディア出演が『ラフターナイト』という芸人さんも結構いますよ。放送は20組ですが、争奪ライブには40組出られるので、厳選して絞り込んで……ということはしないで済むのが強みですね。 ――ディレクター自らライブに足を運んでいるんですね。確かに、ロビンソンズやエル・カブキ、ヤーレンズなど、ライブシーンで定評のある人が多く出ているな、と思っていました。
越崎 常連になっている芸人さんもいますね。でも、3~4回連続でオンエアを逃していても、出てもらっている人もいます。カミナリも、(所属の)グレープカンパニーの事務所ライブで観て声をかけたんですけど、最初の3~4回くらいは全然オンエアにならなかったんですよ。でもある時、急にドカンとウケて、月間チャンピオンになって。何がそんなに変わったのか、本人たちもあんまりピンと来てなかったみたいですけど(笑)。  テレビのネタ番組だと、やっぱり「ウチの番組から発掘した」と言いたいから、他番組に出ている人にはあまり声をかけなかったりするケースもあるみたいですが、『ラフターナイト』はそのこだわりが全然ないので、テレビで初めて観て面白かった人にも、すぐに連絡してます。もちろん、ウチの番組も最終的にはチャンピオンを決めるので、発掘感は大事なんですが、今のTBSラジオは正直『オールナイトニッポンR』(ニッポン放送)のような若手芸人のお試し枠があるわけではないので、出てもらった人をいっぱい使うという約束はできない。なので、「こういう芸人がいますよ」とお客さんや業界の人に見せる、ショーケースのような役割を果たせればと。 ――それにしても、オンエアを獲得したネタも、テレビだったら放送できないようなギリギリのものが多いように感じます。観覧のお客さんから悲鳴が上がりそうなネタが普通にオンエアされていますし、それで月間チャンピオンになる人もいますよね。それをお客さんが投票で選んでいるというのはすごいと思います。 越崎 ラジオリスナーの方が公開収録に来ているので、ほかのライブ会場と空気が違うというのはあると思います。これは僕たちが操作しているわけでは当然なくて、『ラフターナイト』のお客さんの特性だと思うんですが、コアなネタでもすごく笑っていただけるんですよ。それこそ空気階段も、初めてヨシモト∞ホールで観たときは、客席がシーンとしてたんです。でも面白かったので争奪ライブに呼んでみたら、1回目から大爆笑でした。芸人さんにも、「初めてこのネタでウケました」とよく言われます。本当に毎回温かいお客さんが来てくれるので、ありがたいですね。 ――以前に一度観覧に行ったときは、かなり年齢層が幅広くて、普段若手芸人のライブで見かける客層とはちょっと違うな、と驚きました。 越崎 10代の学生もいるし、年配の方もいますね。アンケートを読むと、「初めて生でお笑いを観た」という人も結構多いです。慣れていない人からすれば、ライブハウスは行きづらいのかもしれません。ラジオの観覧という形であれば来やすいですよね。 ――確かに、高校生がいきなり新宿バティオス(歌舞伎町のライブハウス。よく若手芸人のライブが行われている)に行くのはハードルが高いですもんね。「さすがにこのネタはNG」という線引きは設けているんですか? 越崎 テレビに比べたら相当ユルいと思いますよ。『ラフターナイト』でやったネタを、テレビのオーディションに持っていったらすごく変えられた、という話も芸人さんからよく聞きます。ただ、「ラジオで聴いてわかるように工夫してほしい」というのは事前に伝えていますね。どれだけ面白くても、何が起こっているのかわからないネタは、聴いている人にとってすごくストレスなので。 ――芸人さん側にとっても、自由度が高いのでやりやすそうですね。 越崎 今いちばんスッと出やすい番組だと思ってると思いますよ。テレビだと、ディレクターや作家さんの前でネタ見せをして、後日連絡来なくて落ちて……みたいなのを繰り返しますけど、オンエアになるかは別として『ラフターナイト』は収録にはすぐ出られますから。お笑いライブの関係者の人から「芸人さんたち、楽屋でラフターナイトの話をよくしてますよ」と言われたことがあります。結構力を入れてくれてるんだなぁ、と思えてうれしいですね。それと、TBS局内で収録しているので、普段お客さんが10人くらいのライブハウスに出ている人からすると、すごい気合いが入るそうです。「やっと地上に出てきた感じがします」と。 ――ネタ以外の部分で、番組を作る上でこだわっているところはありますか? 越崎 オンエアには乗らない部分ですが、収録では5組ずつにブロックを分けてネタを披露してもらっていて、その後に5組そろっての告知のコーナーがあるんです。そこを楽しみに来てくれるお客さんも多いし、実際かなりこだわって5組の組み合わせを考えてますね。もちろんコント・漫才・ピン芸とネタの種類のバランスもあるんですが、芸人さんがどういう人なのかわかるように出てもらいたくて。台本もないし事前の打ち合わせもないので、出たとこ勝負ではあるんですが、「このコンビは今は別の事務所だけどNSC(吉本の養成所)通ってたのか。じゃあこの人と同期同士で一緒にしてみよう」とか「この人たち、見た目が似てるな」とか「ツイッターフォローしあってるから実は仲良いのかな」とか、なるべく盛り上がるように設定しています。小森園ひろしさんと、ピーマンズスタンダードの南川さんが高校の同級生だったって情報見つけて組み合わせてみたり、鬼越トマホークの坂井さんとルシファー吉岡さんのスキンヘッド2人で出してみる、とかそれぐらいなんですけど(笑)。 ――「◯◯と△△が実は昔から知り合い」とか、養成所時代の同期・先輩・後輩関係をチェックするのもお笑いファンは好きですよね。 越崎 初めての人にも楽しんでもらいたいのはもちろんですが、お笑いファンにも刺さるように作りたいですからね。「この組み合わせが観られるんだ!」って思ってほしい。 ――今年の4月からは放送枠が拡大になり、後半30分は空気階段の冠番組『空気階段の踊り場』になっていますよね。同じ平日24時台は、火曜がアルコ&ピース、水曜がうしろシティ、木曜がハライチで、圧倒的に知名度のない空気階段がここに並んでいるのはすごい抜擢だと思うのですが。
越崎 2016年のチャンピオン大会で優勝して、その特典として2時間の冠特番『空気階段のRADIO ESCALATOR』を昨年12月に放送したんです。それが好評で、編成部長にも「特番が面白かった」と言ってもらって。『ラフターナイト』の枠拡大に伴って後半30分を誰に任せるか、という話になった時に、「じゃあ空気階段でいこう」と。 ――『RADIO ESCALATOR』は確かに面白かったですが、レギュラーにするのはかなりの冒険だったのでは? と勝手に心配していました。 越崎「やっていいの!?」と正直思いました。相当な思い切りですよね。全然華もないし(笑)。 ――2016年チャンピオン大会にはカミナリも出ていますし、第1回チャンピオン大会(2015年)はニューヨーク、メイプル超合金やANZEN漫才、相席スタートと、その後ブレークした方も多いですよね。ファンとしては、空気階段も同じような勢いで駆け上がってほしいんですが……。 越崎 うーん、どうですかね。もうちょっと時間がかかるんじゃないでしょうか……華もないし、清潔感がないですからね(笑)。 (取材・文=斎藤岬) ●『マイナビLaughter Night』(ラフターナイト) 放送/TBSラジオにて、毎週金曜24~25時 https://www.tbsradio.jp/warai954/index.html 「第3回チャンピオンLIVE」 日時:2017年10月14日 16時開演 場所:ニッショーホール MC:山里亮太、伊東楓(TBSアナウンサー) ゲスト:アルコ&ピース チケット:前売3,500円 イープラス・チケットぴあ・ローソンチケットにて発売中 ●越崎恭平(こしざき・きょうへい) 1987年生まれ。TBSプロネックス所属。現在の担当番組は『爆笑問題カーボーイ』『爆笑問題の日曜サンデー』ほか。

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 ひところ、「テレビのネタ番組が減った」とよく言われた。それに伴い、若手芸人がテレビに出る機会が減少した、とも。だが、2015年の『M-1グランプリ』復活あたりから潮目が変わり、深夜にネタ番組が増加。『内村てらす』(日本テレビ系)、『こそこそチャップリン』(テレビ東京系/今年4月より『にちようチャップリン』にリニューアル)、『有田チルドレン』『有田ジェネレーション』(TBS系)、『お願い!ランキング』(テレビ朝日系)内「お願い!マンピンコン」、『新しい波24』(フジテレビ系)など、各局が活きのいい若手を次々と出演させている。  そんな中にあって、お笑い好きの間で注目度の高いネタ番組が、テレビではなくラジオにある。毎週金曜24時からTBSラジオで放送されている『マイナビLaughter Night』(ラフターナイト)だ。 『ラフターナイト』は15年4月に開始した。毎月40組の芸人がオンエアを争うネタバトルに参加し、観覧客の投票によって20組がオンエアを獲得する。放送後、ホームページで受け付けているリスナー投票と、TBSラジオ・JUNK総合プロデューサーの宮嵜守史氏、『水曜日のダウンタウン』プロデューサー・藤井健太郎氏、『おぎやはぎのメガネびいき』等を担当する放送作家・鈴木工務店氏による番組審査員の審査に基づいて、「月間チャンピオン」が決定する。  当初は毎週土曜日24時から30分間の番組だったが、今年4月から金曜24~25時の1時間枠に拡大。前半30分が5組のネタをオンエア、後半30分が結成6年目のコンビ・空気階段による「空気階段の踊り場」という構成になった『ラフターナイト』がお笑い好きから注目されている理由は、その“選球眼”にある。  歴代月間チャンピオンには、カミナリ、メイプル超合金、相席スタートなどが並ぶ。いずれも『M-1グランプリ』出場前で、ライブに足を運ぶようなお笑いファンにはその実力が知られていたものの、世間的にはまったくの無名だった時期だ。彼ら以外にも、その『M-1グランプリ』をはじめ『キングオブコント』や『R-1ぐらんぷり』ファイナリスト候補と目される若手芸人たちが、月間チャンピオンに輝いている。  コアなお笑いファンを納得させるラインナップは、どのようにして実現しているのか? 同番組を担当する越崎恭平ディレクターに聞いた。
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TBSラジオ『マイナビLaughter Night』の越崎恭平ディレクター
――毎週楽しみに聴いています。毎回出演している芸人さんのラインナップが“的確”すぎて感心するのですが、出場者はどうやって集めているんですか? 越崎恭平氏(以下、越崎) オンエア争奪ライブ自体がオーディションなので、かなり間口を広く受け入れています。ホームページからのエントリー制で、各事務所のマネージャーさんが応募してきますし、フリーランスの芸人さんは自分で送ってきますね。それに加えて、自分がお笑いライブに通って、そこで面白かった人に出場を打診するケースもあります。初めてのメディア出演が『ラフターナイト』という芸人さんも結構いますよ。放送は20組ですが、争奪ライブには40組出られるので、厳選して絞り込んで……ということはしないで済むのが強みですね。 ――ディレクター自らライブに足を運んでいるんですね。確かに、ロビンソンズやエル・カブキ、ヤーレンズなど、ライブシーンで定評のある人が多く出ているな、と思っていました。
越崎 常連になっている芸人さんもいますね。でも、3~4回連続でオンエアを逃していても、出てもらっている人もいます。カミナリも、(所属の)グレープカンパニーの事務所ライブで観て声をかけたんですけど、最初の3~4回くらいは全然オンエアにならなかったんですよ。でもある時、急にドカンとウケて、月間チャンピオンになって。何がそんなに変わったのか、本人たちもあんまりピンと来てなかったみたいですけど(笑)。  テレビのネタ番組だと、やっぱり「ウチの番組から発掘した」と言いたいから、他番組に出ている人にはあまり声をかけなかったりするケースもあるみたいですが、『ラフターナイト』はそのこだわりが全然ないので、テレビで初めて観て面白かった人にも、すぐに連絡してます。もちろん、ウチの番組も最終的にはチャンピオンを決めるので、発掘感は大事なんですが、今のTBSラジオは正直『オールナイトニッポンR』(ニッポン放送)のような若手芸人のお試し枠があるわけではないので、出てもらった人をいっぱい使うという約束はできない。なので、「こういう芸人がいますよ」とお客さんや業界の人に見せる、ショーケースのような役割を果たせればと。 ――それにしても、オンエアを獲得したネタも、テレビだったら放送できないようなギリギリのものが多いように感じます。観覧のお客さんから悲鳴が上がりそうなネタが普通にオンエアされていますし、それで月間チャンピオンになる人もいますよね。それをお客さんが投票で選んでいるというのはすごいと思います。 越崎 ラジオリスナーの方が公開収録に来ているので、ほかのライブ会場と空気が違うというのはあると思います。これは僕たちが操作しているわけでは当然なくて、『ラフターナイト』のお客さんの特性だと思うんですが、コアなネタでもすごく笑っていただけるんですよ。それこそ空気階段も、初めてヨシモト∞ホールで観たときは、客席がシーンとしてたんです。でも面白かったので争奪ライブに呼んでみたら、1回目から大爆笑でした。芸人さんにも、「初めてこのネタでウケました」とよく言われます。本当に毎回温かいお客さんが来てくれるので、ありがたいですね。 ――以前に一度観覧に行ったときは、かなり年齢層が幅広くて、普段若手芸人のライブで見かける客層とはちょっと違うな、と驚きました。 越崎 10代の学生もいるし、年配の方もいますね。アンケートを読むと、「初めて生でお笑いを観た」という人も結構多いです。慣れていない人からすれば、ライブハウスは行きづらいのかもしれません。ラジオの観覧という形であれば来やすいですよね。 ――確かに、高校生がいきなり新宿バティオス(歌舞伎町のライブハウス。よく若手芸人のライブが行われている)に行くのはハードルが高いですもんね。「さすがにこのネタはNG」という線引きは設けているんですか? 越崎 テレビに比べたら相当ユルいと思いますよ。『ラフターナイト』でやったネタを、テレビのオーディションに持っていったらすごく変えられた、という話も芸人さんからよく聞きます。ただ、「ラジオで聴いてわかるように工夫してほしい」というのは事前に伝えていますね。どれだけ面白くても、何が起こっているのかわからないネタは、聴いている人にとってすごくストレスなので。 ――芸人さん側にとっても、自由度が高いのでやりやすそうですね。 越崎 今いちばんスッと出やすい番組だと思ってると思いますよ。テレビだと、ディレクターや作家さんの前でネタ見せをして、後日連絡来なくて落ちて……みたいなのを繰り返しますけど、オンエアになるかは別として『ラフターナイト』は収録にはすぐ出られますから。お笑いライブの関係者の人から「芸人さんたち、楽屋でラフターナイトの話をよくしてますよ」と言われたことがあります。結構力を入れてくれてるんだなぁ、と思えてうれしいですね。それと、TBS局内で収録しているので、普段お客さんが10人くらいのライブハウスに出ている人からすると、すごい気合いが入るそうです。「やっと地上に出てきた感じがします」と。 ――ネタ以外の部分で、番組を作る上でこだわっているところはありますか? 越崎 オンエアには乗らない部分ですが、収録では5組ずつにブロックを分けてネタを披露してもらっていて、その後に5組そろっての告知のコーナーがあるんです。そこを楽しみに来てくれるお客さんも多いし、実際かなりこだわって5組の組み合わせを考えてますね。もちろんコント・漫才・ピン芸とネタの種類のバランスもあるんですが、芸人さんがどういう人なのかわかるように出てもらいたくて。台本もないし事前の打ち合わせもないので、出たとこ勝負ではあるんですが、「このコンビは今は別の事務所だけどNSC(吉本の養成所)通ってたのか。じゃあこの人と同期同士で一緒にしてみよう」とか「この人たち、見た目が似てるな」とか「ツイッターフォローしあってるから実は仲良いのかな」とか、なるべく盛り上がるように設定しています。小森園ひろしさんと、ピーマンズスタンダードの南川さんが高校の同級生だったって情報見つけて組み合わせてみたり、鬼越トマホークの坂井さんとルシファー吉岡さんのスキンヘッド2人で出してみる、とかそれぐらいなんですけど(笑)。 ――「◯◯と△△が実は昔から知り合い」とか、養成所時代の同期・先輩・後輩関係をチェックするのもお笑いファンは好きですよね。 越崎 初めての人にも楽しんでもらいたいのはもちろんですが、お笑いファンにも刺さるように作りたいですからね。「この組み合わせが観られるんだ!」って思ってほしい。 ――今年の4月からは放送枠が拡大になり、後半30分は空気階段の冠番組『空気階段の踊り場』になっていますよね。同じ平日24時台は、火曜がアルコ&ピース、水曜がうしろシティ、木曜がハライチで、圧倒的に知名度のない空気階段がここに並んでいるのはすごい抜擢だと思うのですが。
越崎 2016年のチャンピオン大会で優勝して、その特典として2時間の冠特番『空気階段のRADIO ESCALATOR』を昨年12月に放送したんです。それが好評で、編成部長にも「特番が面白かった」と言ってもらって。『ラフターナイト』の枠拡大に伴って後半30分を誰に任せるか、という話になった時に、「じゃあ空気階段でいこう」と。 ――『RADIO ESCALATOR』は確かに面白かったですが、レギュラーにするのはかなりの冒険だったのでは? と勝手に心配していました。 越崎越崎「やっていいの!?」と正直思いました。相当な思い切りですよね。全然華もないし(笑)。 ――2016年チャンピオン大会にはカミナリも出ていますし、第1回チャンピオン大会(2015年)はニューヨーク、メイプル超合金やANZEN漫才、相席スタートと、その後ブレークした方も多いですよね。ファンとしては、空気階段も同じような勢いで駆け上がってほしいんですが……。 越崎 うーん、どうですかね。もうちょっと時間がかかるんじゃないでしょうか……華もないし、清潔感がないですからね(笑)。 (取材・文=斉藤岬) ●『マイナビLaughter Night』(ラフターナイト) 放送/TBSラジオにて、毎週金曜24~25時 https://www.tbsradio.jp/warai954/index.html 「第3回チャンピオンLIVE」 日時:2017年10月14日 16時開演 場所:ニッショーホール MC:山里亮太、伊東楓(TBSアナウンサー) ゲスト:アルコ&ピース チケット:前売3,500円 イープラス・チケットぴあ・ローソンチケットにて発売中 ●越崎恭平(こしざき・きょうへい) 1987年生まれ。TBSプロネックス所属。現在の担当番組は『爆笑問題カーボーイ』『爆笑問題の日曜サンデー』ほか。

「すべては新喜劇と家族のため!」吉本新喜劇の頭脳・小籔千豊がブレないワケ

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 小籔千豊には2つの顔がある。伝統ある吉本新喜劇で最年少の座長になり、今なお屋台骨としてステージを支える新喜劇の顔。そしてもうひとつは、バラエティ番組などで時に辛辣なコメントを放つピン芸人としての顔。その2つの顔を、小籔自身はどう操っているのだろうか? 細身の長身にスーツを着こなし、まるで敏腕ビジネスマンのようなスタイルでインタビュー会場に現れた小籔。その口から語られる話もまた、芸人のイメージを突き破るものだった。 *** ――小籔座長東京公演2017、今回は銀座のブロッサム中央会館。吉本の劇場ではないところでの公演ですね。 小籔千豊(以下、小籔) 東京所属になった理由の、大きな柱の3つのうちの1つとして「東京の、よその劇場でやる」ということがあるんです。ルミネとかではなくてね。東京の方々に大阪の純粋な新喜劇を見ていただきたいということで、北海道物産展的なノリでやらせていただいております。北海道まで行くのは大変ですが、ぜひ東京でウニ、イクラ、とうもろこしを食べてもらいたい。僕らも大阪になかなか来られない関東の方々に、こちらから出向かせていただきますので、ぜひこの機会に一口食べていただけたらと思っております。 ――ということは、東京風にアレンジしたものではなく、大阪の味をそのまま……ということですね。 小籔 はい、そのまま持ってきました。 ――大阪でやるのと東京でやるのと、気持ちに違いはありますか? 小籔 やっぱり劇場が違うので、客席の幅とか奥行きとか、ステージの広さとかも違うので、物理的なものは変えたりもしますけど、それ以外、お笑いの質とか中身を変えるといったことは一切しないです。 ――お客さんの反応の違いは? 小籔 東京のほうが優しいですね。東京は、よそもんに優しい。大阪は愛されているなと感じる分、シビアな部分もあります(笑)。東京のお客さんはいつも温かい拍手で迎えてくれるので、ありがたいなと思いますね。 ――先日、吉本新喜劇に初の女性座長が誕生されたということで、ニュースになっていましたが、そのときの小籔さんのコメントが、すごく印象的でした。「リーダーに必要な公正さを持っている」というところが。ご自身は最年少で座長になられて、座長職の難しさもたくさん感じてこられたのではないでしょうか? 小籔 新喜劇を自分の劇団と勘違いして、私物化してしまいそうになる恐れは常にあると思います。でも、たとえばほかの劇団の座長って、だいたいが自分でその劇団を作った人なんですよね。そこから座員に給料を払ってたり、ごはん食べさせてたりする。だけど新喜劇の場合、僕が作ったものでもなければ給料を僕が払っているわけでもないので、座長とは呼ばれてますけど、よその座長とは全然違うんです。たまたま今は僕がやらせてもらっているだけなので、「新喜劇」という市の「市長」みたいな感じだと思う。自分が市長の間は、この市がもっと良くなるように頑張らなければならない。だから、個人的な好き嫌いとか、えこひいきだけでキャスティングしてはいけないと思うんです。 ――なるほど。
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小籔 「性格悪いから使わへん」、これ僕はあっていいと思うんですよ。下をいじめる可能性があるやつは排除する、それは組織のためですよね。だけど「俺の言うことあんま聞けへんから外す」っていうのは、ナシですね。そういう部分でいうと、新座長の(酒井)藍ちゃんなんかは、ゴマすることもなければ、きっとゴマすられることも喜ばない子やと思うんです。組織にとっていいキャスティング、公正なジャッジをしてくれる人材なんじゃないかなと。 ――だからこそ、選ばれたんですね。 小籔 そうです。よく人を見てますし、誰が何を言ってるのか、ちゃんと聞いてる。自分自分じゃない感じがすごくしますね。僕は内場(勝則)さんに抜擢してもらって、めっちゃいい役をやらせてもらったんですよ。それがきっかけで、座長にならせてもらったんです。これは藍ちゃんにも言ったんですけど「僕は先輩にいい役をおごってもらった。だから僕は、後輩にいい役をおごらないといけない。藍ちゃんも下におごり返さないといけない」と。藍ちゃんは言わんでもわかってると思いますけどね。 ――これからは、周りの引き立て役にも回らないといけない。 小籔 かわいらしいし、太ってるし、見た目インパクトあるし、面白いし……っていうところで座長になって、そこがこの子のいいところだと思うんですけど、僕はやっぱり持って生まれた賢さと公平さがすごいと思うし、それは今後座長として生かされてくると思います。 ――たとえば、自分より年上が「部下」になるって、会社などではちょっとやりにくいことだと思うのですが、新喜劇においてはどうでしょうか? 小籔 座長って、いわゆる「上司」じゃないんですよ。僕より(池乃)めだかさんのほうが偉いし、桑原(和男)師匠のほうが偉い。なので、野球でいう「選手会長」に近いんじゃないでしょうか。たとえば巨人の選手会長は長野(久義)ですけど、長野が主将の阿部(慎之助)より偉いのかといったら、そうではない。選手の中心になって若手をフォローしたり、ベテランに声かけたりする役回りですよね。あの感じに似てると思う。偉くなるわけではない分、気が楽な部分もありますけど、大変なことも多い。台本とか、方向性決めさせてもらってますので。 ――なるほど。 小籔 だから一番嫌なのは、僕が生まれる前から新喜劇やってる大先輩方を、僕のせいでスベらす可能性があるということなんです。それが本当につらい。全体スベったときに「これは小籔のせいや」って思われてるのが一番つらい。 ――そういう苦行を、これから酒井さんも味わっていくということですね。 小籔 今までだったらスベっても「藍ちゃんスベったな」、ウケても「藍ちゃんすごいな」だったと思うんですけど、これからはウケたらウケたで「自分だけでええんか」ってなりますし、スベったらそれこそ「あんなやつが座長でええんか」となる。だから僕らは、心のケアではないですけど、彼女のサポートしてあげなとは思いますね。
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――小籔さんは新喜劇座長という立場の一方で、今バラエティ番組では姿を見ない日はないほど活躍されていますよね。本当に一言しゃべれば、すぐニュースになるくらい……。 小籔 それは変なこと言うからですよ(笑)。ただ、たまに間違ってたりとか、はしょられて「それ意味ちゃうやん!」とか、そういうときは「ええ?」って思いますけど、ある程度はしゃーないかなって。僕のことをよく思っていない人が、この世に何十%とおるわけじゃないですか。その人ら全員に好かれようと思ったらそれは無理なんで、近しい人に失礼のないように生きていけば、なんとかなるんじゃないかなとは思ってますね。 ――私が言うのもなんですけど、テキストにされる怖さありますよね……。 小籔 でも、それでご飯食べてる人もいるわけだし、好きにしてくれたらいいと思いますけどね。ただ「ちゃうやん、それ……」は、正直あります(笑)。 ――「毒舌」という枠に、くくられることについては? 小籔 そう呼ばれているんだったらしゃーないとは思いますけど、自分では毒を吐いているつもりはないんです。僕はたぶん、昔のおっちゃんおばちゃんみたいなことを言うキャラなんじゃないですかね。だから「ウザイねん、あいつ」っていうのは全然イヤじゃない。「めんどくさいわ」「考え方、古いねん」とかは、もう自覚してやらしてもらってますから。 ――ご意見番と呼ばれることについては、どうですか? 小籔 ご意見番なんてねぇ……。でも、こう言うと「おまえ、いろいろ言うとるやん」とか言われるんですけど、そりゃ仕事でコメント求められたら言うわ(笑)。毒舌も、ちゃんと売れてる毒舌の方もいらっしゃるんで、有吉(弘行)さんとかマツコ(・デラックス)さんとか坂上(忍)さんとか。そういう人らと並べんとってやと。仕事量も、もろてる額も全然ちゃうわ(笑)。 ――昨今すぐ「炎上」しますから、タレントさんもいろんな方向に目配せしながら話さなきゃいけないし、そうなると最終的に何かを話しているようで何も話してない……みたいな状態になりますよね。 小籔 スパーンと言えなくはなってますよね。今はね、2つに分かれてる気がしますね。 ――どのように? 小籔 一般の人も、ブログやTwitterなどで、強く意見を発表するようになってきた。たとえば自分の心の中で「そばも好きやけど、やっぱりうどんがうまいなぁ」と思っていたところに、誰かが「そばのほうがうまい」って言っても、そんなに腹立たないと思うんですよ。ただみんなの前で「俺うどん好きです!」って、めっちゃ語ってまうとするじゃないですか。その後に「いや、そばのほうがうまい」っていう人出てきたら、かっこ悪く思ってしまうんですよ。うどんのほうがうまいって言ってる自分が。そうなると、今度は「そばうまい」って言ってたやつを否定しだす。 ――あぁ、ありますね……。
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小籔 芸人がテレビや劇場で「犬派か猫派か」みたいなコーナーをやって、やっぱり犬派が多ければ猫派にいきますよ。目立ちたいから。僕もずっとそうやってきましたけど、それをホンマのバトルだと思ってマネしてるんだなって、若い子らのTwitterとか見てると思いますね。まぁでも、インターネットというパンドラの箱を開けてしまった時点で、こうなりますよね。 ――パンドラの箱。 小籔 ブログがはやったときに、びっくりしたんですよ。当時、僕バーでバイトしてたんですけどね、お客さんに「普段休みの日、何してんの?」って聞くと「ネットサーフィンして、あとブログ見る」「ブログって何?」「人の日記」「へぇ、有名な人?」「ううん、知らん人」「え? 会ったこともない人の日記見てんの?」みたいな。ビックリしたんですよ。「それ何書いてあるの?」「朝起きて、こんなん食べて、会社行って……とか」「見てどうすんの?」「コメント残すねん」「なんて?」「「いいですね~」とか「おいしそうですね~」とか」「知らん人に? で、向こうは、なんて言うの?」「ありがとうって」「……ありがとう?」「その人が今度は私のブログに来て、コメントしてくれる」「……それ、うれしい?」「めっちゃうれしい」。 ――(爆笑) 小籔 そのとき、この世の終わりが来たかと思いました。変ですよ。 ――その「変」は、ブログからTwitterやFacebookやインスタになっても、あまり変わってない。 小籔 もうインターネットがはやった時点で、決まっていたんじゃないでしょうか。便利さの副作用ちゃいますか。 ――承認欲求という。 小籔 そうですね。やっぱり、自分の仕事で近い人に認められるようになるのが大切かなぁとは思いますけど。でももう、しゃーないことなんでしょう。新しいメディアが出てきても、たぶん根っこの「変」は変わらないと思うし。僕だって、今ではネットめっちゃ見て、新幹線乗ってても阪神が勝ったかどうか、鳥谷がナンボ打ったか、わかるわけですし、難しい本読んでてわからん言葉があるとウィキペディアとか見ちゃいますし、入学式ってどんな格好すればいいのか迷ったら「入学式 服装 マナー」とか調べてますしね(笑)。ありがたさはすごい感じてます。
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――ネットでの炎上や揶揄を恐れず、ブレずに仕事ができるのも、やはり新喜劇が関係しているのでしょうか? 小籔 僕は本当にずっと貧乏だったけど、やっと新喜劇の座長になって、大阪のいくつかのレギュラーを手に入れたので、これは絶対に放したくはなかったんですよ。東京所属になるということは、大阪のレギュラーはおろか、新喜劇のレギュラーの回数もちょっと減るんで。もしかしたら「座長」も手放すことになってしまうかもしれない。それはすごくイヤやったんですけど、新喜劇という劇団が大きくなることがうちの家族にとってもいいわけですよね。生活費を得るチャンスが確実に高くなるわけですから。新喜劇がつぶれたら、うちの家族は路頭に迷ってしまう。だから大きくせなあかん。  ただ、新喜劇のウィークポイントのひとつは、名古屋から西にしか轟いてないということなんです。名古屋から東の人々は、ほとんど知らない。ということは、この劇団のマーケットは日本の半分しかない。アホすぎますよね。だったら全国に市場を広げて、その中で、見に来ていただける方を増やしていけばいい。だから東京の皆さんにも新喜劇のことを知ってもらって、好きになってもらうチャンスを増やすというのが、僕の仕事なのかなって。 ――ビジネスマンみたいです。 小籔 僕だって正直、ほかの誰かがやってくれたらいいな~って思ってましたよ、その仕事は。だけど、誰もやらない。なんなら会社もやろうとしない。そんなときに、運よく『(人志松本の)すべらない話』(フジテレビ系)に出られたので、じゃあ東京所属になって、僕が新喜劇の広報活動をしに行くか……と。だから基本的にはテレビやラジオ、こういう取材もすべて「新喜劇の広報活動」っていう気持ちでやらせてもらってます。ありがたいことに、10年前に比べると格段に、東京の方に知られるようになったと思う。めだかさんチャーリー(浜)さん島木(譲二)さんくらいしか知られてないところに、すっちーだ、藍ちゃんだ、ギター弾くやつだと、知名度は本当に上がってる。そこで今回、こうして銀座で5日も公演ができる。 ――本当にすべて、新喜劇と家族のためなんですね。 小籔 どこのお父さんも一緒だと思いますよ。僕なんて特に安定してない仕事だから。早く子どもたちが巣立って、夫婦だけになって、ささやかなお金だけで生きていけるようになりたいです。しんどいですもん……。 ――でも、そういう核がしっかりしてるから、外野にやいのやいの言われてもグラつかない……。 小籔 生活費さえもらえたら、正直なんでもいいですわ(笑)。 (取材・文=西澤千央/撮影=尾藤能暢) ●『吉本新喜劇 小籔座長東京公演2017』 【日程】2017年8月9日(水)~13日(日) 【会場】銀座ブロッサム中央会館(東京都中央区銀座2丁目15番6号) 【公演スケジュール】 8/9(水) 18:30開場/19:00開演 8/10(木)18:30開場/19:00開演 8/11(金・祝)[1]14:00開場/14:30開演 [2]17:00開場/17:30開演 8/12(土)[1]14:00開場/14:30開演 [2]17:00開場/17:30開演  8/13(日)16:30開場/17:00開演 【トークゲスト】 8/ 9(水)中川家 8/10(木)スーパーマラドーナ 8/11(金・祝)コロコロチキチキペッパーズ、ゆりやんレトリィバァ 8/12(土)野性爆弾、天竺鼠&藤崎マーケット 8/13(日)ダイアン 【チケット】※( )内は中人 全席指定  前売り5,000(3,000)円/当日5,500(3,500)円  ※大人:高校生以上  中人:5歳~中学生  ※5歳以上は有料。4歳以下はひざ上のみ無料、ただし、お席が必要な場合は有料。 <チケットに関するお問い合わせ先> チケットよしもと予約問い合わせダイヤル 0570-550-100[24時間受付(※お問い合わせは10:00~19:00]

ザ・グレート・サスケが芸能界、プロレス界をメッタ斬り! 元SMAP、小出恵介、須藤凛々花、濱松恵、大仁田厚……そして成宮寛貴氏

ザ・グレート・サスケが芸能界、プロレス界をメッタ斬り!元SMAP、小出恵介、須藤凛々花、成宮寛貴氏、濱松恵、大仁田厚……の画像1
 プロレス界きっての“芸能界通”として知られるザ・グレート・サスケ氏。今年2月に行ったインタビュー(記事参照)が大好評だったことを受け、大放談第2弾をお届けします。テーマは元SMAP、小出恵介、NMB48・須藤凛々花、成宮寛貴氏、濱松恵、大仁田厚などで、芸能界、プロレス界をメッタ斬りしてもらった。(取材・文=ミカエル・コバタ) ――元SMAPメンバーの中で、草なぎ剛、稲垣吾郎、香取慎吾の3人がジャニーズ事務所を退所することになりましたね……。 サスケ 中居(正広)さんがジャニーズを辞めないのが意外ですね。はたから見たら、中居さんが先頭切って辞めると思ってましたから。ただ、レギュラー番組を多数抱えてる中居さんだから、すぐには辞められないんじゃないかと思いますね。 ――独立するメンバーはテレビへの出演は難しいという見方もあります。 サスケ そうですね。しがらみですね。ジャニーズ帝国がテレビ局を牛耳ってるわけですから。ただ、それは一時的なものじゃないでしょうか。永久に干されるというのはないでしょうね。ジャニーズのように見えて、実はジャニーズじゃないというイケメンの芸能人もたくさんいますからね。長期的に見れば、影響はないと思います。 ――将来的に一時的なSMAPの再結成を期待されますか? サスケ もちろん。そうです。もともとは6人だったんでしょうけど、5人そろってのSMAP復活もあるでしょうね。何十年先かわかりませんが、そういうときが来るんじゃないでしょうか。 ――17歳少女との飲酒、淫行騒動で無期限活動停止となった小出恵介については、どう思われますか? サスケ 第一印象は、そもそもロリコンなのかよ! って感じですね。17歳の女の子と深夜まで酒を飲んで、口説いてっていうこと自体が気持ち悪い。小出さんは33歳ですか? その年で、そういうことやって、「気持ち悪い」の一言に尽きます。昔だったら、男33歳なら、子どもがいて当たり前。30過ぎて、独身なんて言ったら、「おかしい」と言われたくらいです。33歳にもなって、17歳の女の子を口説こうとすること自体が気持ち悪い。でも、それも性癖ですから、性癖は責められないか……。 ――写真週刊誌に記事が出たのは、少女サイドが持ち込んだからとも言われているようですが……。 サスケ 女の子側が「カネになるんじゃないか?」と思って、吹き込んだ人も周りにいたみたいだけど、そういうことを含めてね……。どっちからアプローチしたか根本的な部分はわからないんですけど……。17歳の女の子が、悪知恵を吹き込んでくる大人たちを含めて、そういうふうに立ち回るという異常性に寒気がします。マスコミに持ち込んだらいくらになるとか、示談金を小出さんと交渉しようとか、そういう立ち回りをする17歳に背筋が寒くなる思いですね、そんな世の中にしてしまった大人がいけない。 ――関係者ではなく、一般の素人が、情報を売ったり、示談金交渉をしたりって、そういう発想をもつことがですか? サスケ そうですね。 ――時が経って、小出は復帰してもいいでしょうか? サスケ もちろん、いいと思います。相手が未成年で少女だから重罪とは思いますけど、芸能人なんだから、女性と遊ぶのも芸の肥やしでしょうから。少女はダメですが、それくらいのことは大いにやるべきだと思います。そうやって演技の幅も広くなるんでしょうからね。 ――6月17日に開催された「AKB総選挙」で、20位に入ったNMB48の須藤凛々花が「結婚します」と発言して波紋を呼んでいますが……。 サスケ 驚きましたね。しかも、翌日には胸に「くそったれ(DAMN)」と書かれたTシャツを着て出てきたんですよね? 絶対あのTシャツはなんらかのメッセージをもってますよ。でなければ、わざわざあんなTシャツを着て出てこないでしょうから。結婚宣言して、バッシングされて、それが「くそったれ」Tシャツなんでしょうかね? 彼女は20歳ですか。相手の男性はファンの人ですか? ――ファンではない一般男性のようです。その男性と交際しているという現場写真を撮られて、マスコミに出ることになったので、ああいう発言につながったのでは? という見方もされているようです。 サスケ そうなんですか。だったら、ちょっと見方が変わりますね。マスコミの動きがなければ、あの発言はなかったかもしれないんですね。 ――そうだったかもしれないですね……。 サスケ 古くは、「アイドルは永遠に独身であってほしい。オナラやトイレもしないものだ」といった昭和の時代がありました。そういった時代から考えると、アイドルが結婚をサプライズで発表するなんて、時代は変わったな~と思いますね。いくら、報道の先手を打ったとしても……。でも、やっぱり女性って結婚なんだなと、改めて思いました。マスコミの動きがなかったとしても、須藤さんは公表したと思いますよ。遅かれ早かれ。私はある意味健全だと思います。「結婚します」「うれしい」「みんなに発表したい」……そういう女の子の気持ちが。バッシングする人はいるでしょうけど、私はほほ笑ましいと思います。でも所属事務所サイドとしては、大変迷惑な話ですね。 ――AKBグループに限らず、アイドル全般……多くの芸能事務所が所属タレントには、一定年齢まで“恋愛禁止”を謳っていると思いますが、その点についてはどうですか?
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サスケ 夢を売る商売だから、プライベートは神秘的であるべき。アイドルなら恋愛御法度は当たり前。でも、その一方で、今回の一件は男性目線から見ると、「アイドルと結婚できるんだ」という思いを抱かせてくれましたね。 ――サスケさんのみちのくプロレスに女子部はありませんけど、女子プロ界には、今でも「○○歳まで、恋愛禁止」とかあるんでしょうか? サスケ 今はまったくないでしょうね。昔は全日本女子プロレスが、25歳定年制を敷いていて、それまでは恋愛も酒もタバコも禁止でした。ああいうシステムは見直すべきですね。大きく掲げる縛りごとは……。プロレス界はもちろん、芸能界でも。もっとも私がみちプロの社長時代は、35歳定年制にして、それまでは恋愛禁止にしようとか考えたこともありましたが。 ――時代の流れで、恋愛禁止はいかがなものかという考えですか? サスケ うーん。でも、基本的にはアイドルの恋愛禁止には賛成ですよ。やっぱり夢を売る商売ですから。 ――昨今、仲間由紀恵の夫である田中哲司の件など、芸能界、アナウンサー界では、不倫がはやっていますが、それに関してどう思われますか? サスケ 今こそ石田純一さんの言葉が光る時代になったんじゃないかと思います(笑)。「不倫は文化だ」って……。不倫は昔からあったんじゃないかと思いますけど、今は情報網の発達で、不倫現場が押さえられやすくなったんでしょうね。1億総芸能リポーターみたいな感じで。みんながカメラが付いているスマホを持っているし、みんなが情報を発信してるし、受信することもできる。なんか不倫がバッシングされる時代ですよね。テレビとかで、コメンテーターとかで出てる人たちは、もう不倫は重大犯罪だって勢いで言ってたりしますよね。そういう人たちには、「オマエ、どんだけ聖人君子な生き方してんだ?」って言いたいですね。時にはいいじゃないですか。違う女性とお酒を飲んだり、デートをしても。本当に私のような男にとっては、生きにくい時代になりましたね(笑)。 ――人気商売で、トップレスラーのサスケさんも狙われる対象になりますもんね。今の週刊誌や写真誌のように、意図的にスキャンダルを狙っていくという風潮をどう思われますか? サスケ これは永遠の戦いなんでしょうね。追うマスコミと、追われる有名人との。それを見たがる大衆側がいて、その関係性を否定するつもりはないですが……。おもしろいんでしょうね。他人の不幸は蜜の味ですから。 ――網の目をかいくぐって遊ぶしかない? サスケ そうですね。私みたいに堂々と遊べばいいんですよ。私なんか、逃げも隠れもできない顔(マスク姿)してるんで、この顔で堂々と遊んでますから(笑)。そんなこと言い切っていいのか不安になっちゃいましたけど(笑)。 ――昨年12月、ご子息がハラスメントを受けたとして、大騒動になった成宮寛貴氏についてですが、何か新しい情報はありますか? サスケ 帰国したという情報もあり、まだ帰ってきていないという情報もありますね。あれから、もう半年経ってますからね。ひそかに帰ってきてるんじゃないですかね? 最近は情報が入ってこなくなりましたね。3カ月くらい前までは、原宿にいたとか、渋谷にいたとかいう情報はありましたね。でも、それは事務所サイドがガセ情報を流したという説もありますね。都内にいると思わせといて、実はまだ海外にいると……。当時、そんなウワサは流れましたね。 ――サスケさんとしては、当初の発言通り、成宮氏には復帰してほしい?
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サスケ そうですね。私は芸能界に戻るべき人間だと思います。スターなんですから。ファンもいっぱいいるわけだし。 ――ゲイだとか、気にする必要はないと? サスケ ゲイでもいいじゃないですか。むしろゲイの人たちの目標となる人物になればいいわけだし。ゲイの人たちに元気、勇気、夢を与える立場になるでしょうから。 ――今年3月、サスケさんの同業者である女子プロレスラーのミス・モンゴルさんと事実婚状態である東京03の豊本明長さんが、濱松恵と浮気をしたとして、写真週刊誌にLINEが流出した問題がありました。これは、濱松の自作自演との説もありますが、どう思われましたか? サスケ 豊本さんとは仕事で、ご一緒したりする仲ですから、記事が出てから、心配になって連絡もしました。自作自演なのか、本人が言うように相談した友人に裏切られて記事になったのかもしれない。それはなんとも言えません。ただ、根本的な問題は、本人が言ってる「恋愛体質」じゃないですかね。バッシングされてるけど、私は同情しますよ。34歳で、シングルマザーで、パニック障害だったりするようですから。頼れる男性がほしくて、寂しかったんじゃないでしょうかね。濱松さんのような女性はたくさんいると思いますよ。 ――彼女は過去にも、既婚時代の狩野英孝や、川崎麻世とも浮き名を流していますが……。 サスケ 豊本さんのような頼れる男性を求めていたら、たまたまいつも相手は既婚者だったということなんじゃないですかね。私は、むしろかわいそうに思えます。私が独身でリッチマンなら面倒見てあげたいって思いますよ(笑)。 ――モンゴルさんの心労も大変なものだったようですが……。 サスケ でもモンゴルさんは立派ですよ。達観してるし、肝が据わってます。芸人にとって、「女遊びは芸の肥やし」とか言いますけど、サバサバしたもんです。芸人と婚約した時点で、こういうことも想定内の出来事だったんじゃないですかね? この2人は、きっと幸せになると思いますよ。 ――濱松は、子役時代にNHK大河ドラマにも出演したりしてましたが、現在は仕事がうまくいっていないため、こういったことにつながってしまうのでしょうか? サスケ こういうことは、自分の首を絞める行為でもありますよね。仕事がうまくいってなければ、私生活もなかなかうまくいかない。早くいい人を見つけて、幸せになってほしいですね。私は最近、お見合いの世話役をやったりするんですが、お金持ちのいい男性を紹介してあげたいくらいですよ(笑)。 ――それでは、話は変わりまして、本業のプロレスのことをお伺いしたいと思います。今のプロレス界は新日本プロレスの独走状態で、全体的に見れば、決して健全ではないと思いますが……。 サスケ 私は逆に、新日本さんの一強状態でいいと思いますね、業界のパワーバランスとしては現状でいいと思います。世間的に見れば、「プロレスって何?」と言えば、新日本さんでしょう。あとは「その他」。決してメジャーではない我々も含めて、いろいろな団体が新日本のほかにあるというのがいいと思う。最近ではローカルプロレス団体が多く、全国のあらゆる地域に点在していますよね。以前はメジャーかインディーというくくりで言ってましたが、これからは新日本かローカルプロレスという比べ方になるんじゃないでしょうか。 ――新日本の独走や、団体分裂の影響もあるでしょうが、メジャーと呼ばれた全日本プロレスやプロレスリング・ノアが、新日本とはかなり水を開けられてしまいました。この2団体にも、もうちょっとがんばってほしいと思うのですが……。 サスケ うーん。もうがんばらなくてもいいと思うんです(笑)。全日本もノアも、どこかのローカル色を出せばいい。全日本なんて、ケーブルテレビ山形が出資者に付いたんなら、「山形・全日本プロレス」でいいじゃないですか。ノアもどこかに拠点を移して、「○○ノア・プロレス」とか、ローカル色を打ち出すしかない。私は何十年も前から言ってますけど、これからはローカルプロレスの時代ですよ。同時にインターネット社会ですから、どこに行っても情報は発信できる。ちょっとプロレス業界が方法論を考えないとダメ。ネット時代に則したやり方を考えないと。 ――みちプロは別として、メジャー、インディーのカテゴリーに分けると、インディーに分類されるDDTや大日本プロレスなんかががんばってますね。 サスケ そうですね。がんばってて、すごいと思いますね、全国を巡業で回ってるんですから。 ――DDTはエンターテインメント色が強い団体ですが、それもひとつの方法論ですかね? サスケ それもアリだと思いますよ。それでちゃんと結果を出して成功してるんですから。つまり、そういったニーズがあるということです。 ――みちプロは来年3月で旗揚げ25周年になります。まさに地域密着プロレス団体の先駆けです。25周年を迎えるにあたって、盛岡、岩手、東北をベースにして、東京などに出稼ぎに行くというスタンスに変わりはないですか?
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サスケ ないでしょうね。私はもう団体の中身にはタッチしてないんですが、現在の経営陣も、そこは引き継いでやっていくでしょうね。それこそが、プロレス業界における差別化であり、存在意義だと思います。 ――設立当初は、盛岡に拠点を置いて、東北以外には基本的に出て行かない。「みちプロが見たければ、東北に見に来てください!」というスタンスでした。それでは、存続は難しいのではないかといった意見も多かった。しかし、後発のローカルプロレス団体もありましたが、25年も存続できたのは、やはりサスケさんの経営手腕が大きかったのでは? サスケ いやいや、そんなことはないですよ。我々がラッキーだったのは、東北という土地だったからですね。これが北海道や沖縄では、難しかったと思います。東北は、東京から近くもなく、だからと言って遠すぎず。その距離感がちょうどよかったんでしょうね。 ――2011年3月11日の東日本大震災の際は、道場も被害を受けたでしょうし、興行も打ちづらくなった。みちプロが受けた被害は小さくなかったと思いますが……。 サスケ 当時もう私は経営から離れていましたので、詳細な内情は把握していないんですが、相当大変だったようです。ザックリ計算すると、2,000万円ぐらいの損害があったようです。震災の後のゴールデンウイークとか夏に、大きな被害を受けた沿岸地区での興行を予定していましたが、すべてできなくなりました。震災直後に、毎年恒例の出稼ぎシリーズがあって、九州に行ったんですけど、たくさんの義援金をいただいたのが印象に残ってます。すごく感動しましたね。義援金は宮城県と岩手県に寄付させてもらいました。 ――ところで、サスケさんと何かと縁がある大仁田厚さんが、いよいよ10月31日で引退します。かねて、サスケさんは「もう1度、大仁田さんと過去最大規模の電流爆破デスマッチをやりたい」と発言されていましたが、その気持ちに変わりはないですか? サスケ 変わらないですよ! ――残された期間はあと4カ月。リミットが迫っていますが、気持ちを伝えるようなことはされたんですか? サスケ 大仁田さんとは芸能の所属事務所(アルファ・ジャパンプロモーション)が同じですから、事務所を通じて、伝えてはいるのですが……進展はないですね。アクションをどう起こすか、自分の頭の中で描けていないですね。もう日程的は、かなり試合も決まっているでしょうからね。だったら、引退までにできないなら、逆に「次の大仁田さんの復帰戦の相手はオレだぞ!」と名乗りを挙げたいですね(笑)。復帰戦で史上最大規模の電流爆破をやりたいですね。 ――大仁田さんも「今回は本当に引退」と言っていますから、難しいとは思いますが……。仮に、大仁田さんとの電流爆破が、もう1度実現したら、やはり岩手での開催にこだわりますか? サスケ ハイ。ただ、その一方で、1994年、2003年にやった電流爆破は2回とも岩手でしたから、岩手でやりすぎた感もありますし、そこまでこだわってないですね。だったら仙台でもいいですし……。東北にはこだわりたいと思います。 ●ザ・グレート・サスケ 1969年7月18日生まれ、岩手県盛岡市出身。高校卒業後、プロレスラーを目指して上京し、90年3月1日、後楽園ホールでのユニバーサル・プロレス旗揚げ戦でデビュー(当時は素顔)。メキシコでの修行を経てマスクマンとなり、92年8月より現在のリングネームを名乗る。同10月に独立し、みちのくプロレスを設立。以後、同団体のエースとして君臨し、“東北の英雄”と呼ばれる。また、団体枠にとらわれず、日本プロレス界の“ジュニアの雄”として活躍。2003年3月には、岩手県議会議員選挙の盛岡選挙区に出馬しトップ当選を果たす。現在はみちプロ経営の第一線から退き、会長職を務める。獲得タイトルはジュニア8冠王座、IWGPジュニア・ヘビー級、IWGPジュニアタッグ、東北ジュニア・ヘビー級、東北タッグ、UWA世界ウエルター級、インディペンデント・ワールド世界ジュニア・ヘビー級など ●ザ・グレート・サスケ公式ブログ http://ameblo.jp/thegreatsasuke/ ★みちのくプロレス試合日程 http://www.michipro.jp/schedule/index.html ●取材協力 広島お好み焼き・鉄板焼き「おっこん」 東京都文京区後楽1-1-15-B1 [営業時間] 月曜~土曜/17:00~2:00 日曜・祝日/17:00~0:00 材料がなくなり次第終了 (予告無く変更する場合がございます) TEL:03-3814-4432 http://okkon.yokochou.com

ザ・グレート・サスケが芸能界、プロレス界をメッタ斬り! 元SMAP、小出恵介、須藤凛々花、濱松恵、大仁田厚……そして成宮寛貴氏

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 プロレス界きっての“芸能界通”として知られるザ・グレート・サスケ氏。今年2月に行ったインタビュー(記事参照)が大好評だったことを受け、大放談第2弾をお届けします。テーマは元SMAP、小出恵介、NMB48・須藤凛々花、成宮寛貴氏、濱松恵、大仁田厚などで、芸能界、プロレス界をメッタ斬りしてもらった。(取材・文=ミカエル・コバタ) ――元SMAPメンバーの中で、草なぎ剛、稲垣吾郎、香取慎吾の3人がジャニーズ事務所を退所することになりましたね……。 サスケ 中居(正広)さんがジャニーズを辞めないのが意外ですね。はたから見たら、中居さんが先頭切って辞めると思ってましたから。ただ、レギュラー番組を多数抱えてる中居さんだから、すぐには辞められないんじゃないかと思いますね。 ――独立するメンバーはテレビへの出演は難しいという見方もあります。 サスケ そうですね。しがらみですね。ジャニーズ帝国がテレビ局を牛耳ってるわけですから。ただ、それは一時的なものじゃないでしょうか。永久に干されるというのはないでしょうね。ジャニーズのように見えて、実はジャニーズじゃないというイケメンの芸能人もたくさんいますからね。長期的に見れば、影響はないと思います。 ――将来的に一時的なSMAPの再結成を期待されますか? サスケ もちろん。そうです。もともとは6人だったんでしょうけど、5人そろってのSMAP復活もあるでしょうね。何十年先かわかりませんが、そういうときが来るんじゃないでしょうか。 ――17歳少女との飲酒、淫行騒動で無期限活動停止となった小出恵介については、どう思われますか? サスケ 第一印象は、そもそもロリコンなのかよ! って感じですね。17歳の女の子と深夜まで酒を飲んで、口説いてっていうこと自体が気持ち悪い。小出さんは33歳ですか? その年で、そういうことやって、「気持ち悪い」の一言に尽きます。昔だったら、男33歳なら、子どもがいて当たり前。30過ぎて、独身なんて言ったら、「おかしい」と言われたくらいです。33歳にもなって、17歳の女の子を口説こうとすること自体が気持ち悪い。でも、それも性癖ですから、性癖は責められないか……。 ――写真週刊誌に記事が出たのは、少女サイドが持ち込んだからとも言われているようですが……。 サスケ 女の子側が「カネになるんじゃないか?」と思って、吹き込んだ人も周りにいたみたいだけど、そういうことを含めてね……。どっちからアプローチしたか根本的な部分はわからないんですけど……。17歳の女の子が、悪知恵を吹き込んでくる大人たちを含めて、そういうふうに立ち回るという異常性に寒気がします。マスコミに持ち込んだらいくらになるとか、示談金を小出さんと交渉しようとか、そういう立ち回りをする17歳に背筋が寒くなる思いですね、そんな世の中にしてしまった大人がいけない。 ――関係者ではなく、一般の素人が、情報を売ったり、示談金交渉をしたりって、そういう発想をもつことがですか? サスケ そうですね。 ――時が経って、小出は復帰してもいいでしょうか? サスケ もちろん、いいと思います。相手が未成年で少女だから重罪とは思いますけど、芸能人なんだから、女性と遊ぶのも芸の肥やしでしょうから。少女はダメですが、それくらいのことは大いにやるべきだと思います。そうやって演技の幅も広くなるんでしょうからね。 ――6月17日に開催された「AKB総選挙」で、20位に入ったNMB48の須藤凛々花が「結婚します」と発言して波紋を呼んでいますが……。 サスケ 驚きましたね。しかも、翌日には胸に「くそったれ(DAMN)」と書かれたTシャツを着て出てきたんですよね? 絶対あのTシャツはなんらかのメッセージをもってますよ。でなければ、わざわざあんなTシャツを着て出てこないでしょうから。結婚宣言して、バッシングされて、それが「くそったれ」Tシャツなんでしょうかね? 彼女は20歳ですか。相手の男性はファンの人ですか? ――ファンではない一般男性のようです。その男性と交際しているという現場写真を撮られて、マスコミに出ることになったので、ああいう発言につながったのでは? という見方もされているようです。 サスケ そうなんですか。だったら、ちょっと見方が変わりますね。マスコミの動きがなければ、あの発言はなかったかもしれないんですね。 ――そうだったかもしれないですね……。 サスケ 古くは、「アイドルは永遠に独身であってほしい。オナラやトイレもしないものだ」といった昭和の時代がありました。そういった時代から考えると、アイドルが結婚をサプライズで発表するなんて、時代は変わったな~と思いますね。いくら、報道の先手を打ったとしても……。でも、やっぱり女性って結婚なんだなと、改めて思いました。マスコミの動きがなかったとしても、須藤さんは公表したと思いますよ。遅かれ早かれ。私はある意味健全だと思います。「結婚します」「うれしい」「みんなに発表したい」……そういう女の子の気持ちが。バッシングする人はいるでしょうけど、私はほほ笑ましいと思います。でも所属事務所サイドとしては、大変迷惑な話ですね。 ――AKBグループに限らず、アイドル全般……多くの芸能事務所が所属タレントには、一定年齢まで“恋愛禁止”を謳っていると思いますが、その点についてはどうですか?
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サスケ 夢を売る商売だから、プライベートは神秘的であるべき。アイドルなら恋愛御法度は当たり前。でも、その一方で、今回の一件は男性目線から見ると、「アイドルと結婚できるんだ」という思いを抱かせてくれましたね。 ――サスケさんのみちのくプロレスに女子部はありませんけど、女子プロ界には、今でも「○○歳まで、恋愛禁止」とかあるんでしょうか? サスケ 今はまったくないでしょうね。昔は全日本女子プロレスが、25歳定年制を敷いていて、それまでは恋愛も酒もタバコも禁止でした。ああいうシステムは見直すべきですね。大きく掲げる縛りごとは……。プロレス界はもちろん、芸能界でも。もっとも私がみちプロの社長時代は、35歳定年制にして、それまでは恋愛禁止にしようとか考えたこともありましたが。 ――時代の流れで、恋愛禁止はいかがなものかという考えですか? サスケ うーん。でも、基本的にはアイドルの恋愛禁止には賛成ですよ。やっぱり夢を売る商売ですから。 ――昨今、仲間由紀恵の夫である田中哲司の件など、芸能界、アナウンサー界では、不倫がはやっていますが、それに関してどう思われますか? サスケ 今こそ石田純一さんの言葉が光る時代になったんじゃないかと思います(笑)。「不倫は文化だ」って……。不倫は昔からあったんじゃないかと思いますけど、今は情報網の発達で、不倫現場が押さえられやすくなったんでしょうね。1億総芸能リポーターみたいな感じで。みんながカメラが付いているスマホを持っているし、みんなが情報を発信してるし、受信することもできる。なんか不倫がバッシングされる時代ですよね。テレビとかで、コメンテーターとかで出てる人たちは、もう不倫は重大犯罪だって勢いで言ってたりしますよね。そういう人たちには、「オマエ、どんだけ聖人君子な生き方してんだ?」って言いたいですね。時にはいいじゃないですか。違う女性とお酒を飲んだり、デートをしても。本当に私のような男にとっては、生きにくい時代になりましたね(笑)。 ――人気商売で、トップレスラーのサスケさんも狙われる対象になりますもんね。今の週刊誌や写真誌のように、意図的にスキャンダルを狙っていくという風潮をどう思われますか? サスケ これは永遠の戦いなんでしょうね。追うマスコミと、追われる有名人との。それを見たがる大衆側がいて、その関係性を否定するつもりはないですが……。おもしろいんでしょうね。他人の不幸は蜜の味ですから。 ――網の目をかいくぐって遊ぶしかない? サスケ そうですね。私みたいに堂々と遊べばいいんですよ。私なんか、逃げも隠れもできない顔(マスク姿)してるんで、この顔で堂々と遊んでますから(笑)。そんなこと言い切っていいのか不安になっちゃいましたけど(笑)。 ――昨年12月、ご子息がハラスメントを受けたとして、大騒動になった成宮寛貴氏についてですが、何か新しい情報はありますか? サスケ 帰国したという情報もあり、まだ帰ってきていないという情報もありますね。あれから、もう半年経ってますからね。ひそかに帰ってきてるんじゃないですかね? 最近は情報が入ってこなくなりましたね。3カ月くらい前までは、原宿にいたとか、渋谷にいたとかいう情報はありましたね。でも、それは事務所サイドがガセ情報を流したという説もありますね。都内にいると思わせといて、実はまだ海外にいると……。当時、そんなウワサは流れましたね。 ――サスケさんとしては、当初の発言通り、成宮氏には復帰してほしい?
ザ・グレート・サスケが芸能界、プロレス界をメッタ斬り!元SMAP、小出恵介、須藤凛々花、成宮寛貴氏、濱松恵、大仁田厚……の画像3
サスケ そうですね。私は芸能界に戻るべき人間だと思います。スターなんですから。ファンもいっぱいいるわけだし。 ――ゲイだとか、気にする必要はないと? サスケ ゲイでもいいじゃないですか。むしろゲイの人たちの目標となる人物になればいいわけだし。ゲイの人たちに元気、勇気、夢を与える立場になるでしょうから。 ――今年3月、サスケさんの同業者である女子プロレスラーのミス・モンゴルさんと事実婚状態である東京03の豊本明長さんが、濱松恵と浮気をしたとして、写真週刊誌にLINEが流出した問題がありました。これは、濱松の自作自演との説もありますが、どう思われましたか? サスケ 豊本さんとは仕事で、ご一緒したりする仲ですから、記事が出てから、心配になって連絡もしました。自作自演なのか、本人が言うように相談した友人に裏切られて記事になったのかもしれない。それはなんとも言えません。ただ、根本的な問題は、本人が言ってる「恋愛体質」じゃないですかね。バッシングされてるけど、私は同情しますよ。34歳で、シングルマザーで、パニック障害だったりするようですから。頼れる男性がほしくて、寂しかったんじゃないでしょうかね。濱松さんのような女性はたくさんいると思いますよ。 ――彼女は過去にも、既婚時代の狩野英孝や、川崎麻世とも浮き名を流していますが……。 サスケ 豊本さんのような頼れる男性を求めていたら、たまたまいつも相手は既婚者だったということなんじゃないですかね。私は、むしろかわいそうに思えます。私が独身でリッチマンなら面倒見てあげたいって思いますよ(笑)。 ――モンゴルさんの心労も大変なものだったようですが……。 サスケ でもモンゴルさんは立派ですよ。達観してるし、肝が据わってます。芸人にとって、「女遊びは芸の肥やし」とか言いますけど、サバサバしたもんです。芸人と婚約した時点で、こういうことも想定内の出来事だったんじゃないですかね? この2人は、きっと幸せになると思いますよ。 ――濱松は、子役時代にNHK大河ドラマにも出演したりしてましたが、現在は仕事がうまくいっていないため、こういったことにつながってしまうのでしょうか? サスケ こういうことは、自分の首を絞める行為でもありますよね。仕事がうまくいってなければ、私生活もなかなかうまくいかない。早くいい人を見つけて、幸せになってほしいですね。私は最近、お見合いの世話役をやったりするんですが、お金持ちのいい男性を紹介してあげたいくらいですよ(笑)。 ――それでは、話は変わりまして、本業のプロレスのことをお伺いしたいと思います。今のプロレス界は新日本プロレスの独走状態で、全体的に見れば、決して健全ではないと思いますが……。 サスケ 私は逆に、新日本さんの一強状態でいいと思いますね、業界のパワーバランスとしては現状でいいと思います。世間的に見れば、「プロレスって何?」と言えば、新日本さんでしょう。あとは「その他」。決してメジャーではない我々も含めて、いろいろな団体が新日本のほかにあるというのがいいと思う。最近ではローカルプロレス団体が多く、全国のあらゆる地域に点在していますよね。以前はメジャーかインディーというくくりで言ってましたが、これからは新日本かローカルプロレスという比べ方になるんじゃないでしょうか。 ――新日本の独走や、団体分裂の影響もあるでしょうが、メジャーと呼ばれた全日本プロレスやプロレスリング・ノアが、新日本とはかなり水を開けられてしまいました。この2団体にも、もうちょっとがんばってほしいと思うのですが……。 サスケ うーん。もうがんばらなくてもいいと思うんです(笑)。全日本もノアも、どこかのローカル色を出せばいい。全日本なんて、ケーブルテレビ山形が出資者に付いたんなら、「山形・全日本プロレス」でいいじゃないですか。ノアもどこかに拠点を移して、「○○ノア・プロレス」とか、ローカル色を打ち出すしかない。私は何十年も前から言ってますけど、これからはローカルプロレスの時代ですよ。同時にインターネット社会ですから、どこに行っても情報は発信できる。ちょっとプロレス業界が方法論を考えないとダメ。ネット時代に則したやり方を考えないと。 ――みちプロは別として、メジャー、インディーのカテゴリーに分けると、インディーに分類されるDDTや大日本プロレスなんかががんばってますね。 サスケ そうですね。がんばってて、すごいと思いますね、全国を巡業で回ってるんですから。 ――DDTはエンターテインメント色が強い団体ですが、それもひとつの方法論ですかね? サスケ それもアリだと思いますよ。それでちゃんと結果を出して成功してるんですから。つまり、そういったニーズがあるということです。 ――みちプロは来年3月で旗揚げ25周年になります。まさに地域密着プロレス団体の先駆けです。25周年を迎えるにあたって、盛岡、岩手、東北をベースにして、東京などに出稼ぎに行くというスタンスに変わりはないですか?
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サスケ ないでしょうね。私はもう団体の中身にはタッチしてないんですが、現在の経営陣も、そこは引き継いでやっていくでしょうね。それこそが、プロレス業界における差別化であり、存在意義だと思います。 ――設立当初は、盛岡に拠点を置いて、東北以外には基本的に出て行かない。「みちプロが見たければ、東北に見に来てください!」というスタンスでした。それでは、存続は難しいのではないかといった意見も多かった。しかし、後発のローカルプロレス団体もありましたが、25年も存続できたのは、やはりサスケさんの経営手腕が大きかったのでは? サスケ いやいや、そんなことはないですよ。我々がラッキーだったのは、東北という土地だったからですね。これが北海道や沖縄では、難しかったと思います。東北は、東京から近くもなく、だからと言って遠すぎず。その距離感がちょうどよかったんでしょうね。 ――2011年3月11日の東日本大震災の際は、道場も被害を受けたでしょうし、興行も打ちづらくなった。みちプロが受けた被害は小さくなかったと思いますが……。 サスケ 当時もう私は経営から離れていましたので、詳細な内情は把握していないんですが、相当大変だったようです。ザックリ計算すると、2,000万円ぐらいの損害があったようです。震災の後のゴールデンウイークとか夏に、大きな被害を受けた沿岸地区での興行を予定していましたが、すべてできなくなりました。震災直後に、毎年恒例の出稼ぎシリーズがあって、九州に行ったんですけど、たくさんの義援金をいただいたのが印象に残ってます。すごく感動しましたね。義援金は宮城県と岩手県に寄付させてもらいました。 ――ところで、サスケさんと何かと縁がある大仁田厚さんが、いよいよ10月31日で引退します。かねて、サスケさんは「もう1度、大仁田さんと過去最大規模の電流爆破デスマッチをやりたい」と発言されていましたが、その気持ちに変わりはないですか? サスケ 変わらないですよ! ――残された期間はあと4カ月。リミットが迫っていますが、気持ちを伝えるようなことはされたんですか? サスケ 大仁田さんとは芸能の所属事務所(アルファ・ジャパンプロモーション)が同じですから、事務所を通じて、伝えてはいるのですが……進展はないですね。アクションをどう起こすか、自分の頭の中で描けていないですね。もう日程的は、かなり試合も決まっているでしょうからね。だったら、引退までにできないなら、逆に「次の大仁田さんの復帰戦の相手はオレだぞ!」と名乗りを挙げたいですね(笑)。復帰戦で史上最大規模の電流爆破をやりたいですね。 ――大仁田さんも「今回は本当に引退」と言っていますから、難しいとは思いますが……。仮に、大仁田さんとの電流爆破が、もう1度実現したら、やはり岩手での開催にこだわりますか? サスケ ハイ。ただ、その一方で、1994年、2003年にやった電流爆破は2回とも岩手でしたから、岩手でやりすぎた感もありますし、そこまでこだわってないですね。だったら仙台でもいいですし……。東北にはこだわりたいと思います。 ●ザ・グレート・サスケ 1969年7月18日生まれ、岩手県盛岡市出身。高校卒業後、プロレスラーを目指して上京し、90年3月1日、後楽園ホールでのユニバーサル・プロレス旗揚げ戦でデビュー(当時は素顔)。メキシコでの修行を経てマスクマンとなり、92年8月より現在のリングネームを名乗る。同10月に独立し、みちのくプロレスを設立。以後、同団体のエースとして君臨し、“東北の英雄”と呼ばれる。また、団体枠にとらわれず、日本プロレス界の“ジュニアの雄”として活躍。2003年3月には、岩手県議会議員選挙の盛岡選挙区に出馬しトップ当選を果たす。現在はみちプロ経営の第一線から退き、会長職を務める。獲得タイトルはジュニア8冠王座、IWGPジュニア・ヘビー級、IWGPジュニアタッグ、東北ジュニア・ヘビー級、東北タッグ、UWA世界ウエルター級、インディペンデント・ワールド世界ジュニア・ヘビー級など ●ザ・グレート・サスケ公式ブログ http://ameblo.jp/thegreatsasuke/ ★みちのくプロレス試合日程 http://www.michipro.jp/schedule/index.html ●取材協力 広島お好み焼き・鉄板焼き「おっこん」 東京都文京区後楽1-1-15-B1 [営業時間] 月曜~土曜/17:00~2:00 日曜・祝日/17:00~0:00 材料がなくなり次第終了 (予告無く変更する場合がございます) TEL:03-3814-4432 http://okkon.yokochou.com

「佐藤秀峰さんには頭が上らない……」『やれたかも委員会』吉田貴司の屈辱の日々と、ウェブ漫画家としての生きる道

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(c)吉田貴司
 最近ではウェブ上での展開を中心にしている漫画も増えてきたが、その中でも異彩を放つ作風で話題となっているのが『やれたかも委員会』だ。  あの時、もう一歩踏み出していたら、あの娘とやれたんじゃ……。  そんな甘酸っぱ~い思い出を『やれたかも委員会』が「やれた」のか「やれたとは言えない」のか判定するというこの作品は、新作が公開されるたびに「いや、やれただろう!」「ねーよ!」などのザ・不毛な議論がネット上でヒートアップし、作品外での盛り上がりも見せている。  有料サイトで連載され、それをまとめた第1巻が双葉社より6月28日に発売。さらに2巻に向けての制作費を募るクラウドファンディングもスタートと、紙の雑誌で連載して原稿料をもらうという形ではない、ネット発のヒット作となった『やれたかも委員会』。  ネット時代の漫画家は、どうやって生き抜くべきなのか!? そしてネット漫画で本当に食えるの? ……などなど、作者の吉田貴司氏に聞いた。

■「ハンバーグはおいしかったけど、それでいいんですか?」

――まず、どんな漫画を読んで育つと、こういう作風になるのかを聞きたいんですが。 吉田貴司氏(以下、吉田) 小学校の時に初めて買った漫画が『ドラゴンボール』です。それから『幽☆遊☆白書』『3×3EYES』などを読んできて……。19歳でフリーターになり、その期間にすごく漫画を読んでいましたね。星里もちるさんのラブコメとか、福本伸行さんの『カイジ』とか、だんだんと青年漫画を読むようになって。だから、自分で漫画を描く時も青年誌っぽい作品になりました。 ――投稿を始めたのも、その頃? 吉田 21歳で持ち込みを始めました。大阪出身なんで、夜行バスで東京まで出て出版社を回ったんですけど、どこに行っても全然ダメでしたね。そのまま、22歳になっても一向に漫画家になれなくて。彼女にも「漫画あきらめたほうがいいよ」なんて言われて、ハンバーグ屋さんに就職したんです。そしたら福岡県の店に転勤になって、タコ部屋……もとい社員寮で暮らしながら、朝から晩まで働いていました。 ――社員寮じゃ、漫画を描くのは難しいですよね。 吉田 描けなかったですね。フリーター時代に親友が2人いたんですよ。ひとりは音楽やってて、もうひとりが漫画描いてて。誰かの家に行って、この間読んだ本がああだこうだって話をするような仲間だったんです。僕が就職して、九州に行ってしばらくした頃に2人が店に来て、うれしくてハンバーグをごちそうしたんですけど、アンケートに「ハンバーグおいしかったです。でも、吉田くんはそれで本当にいいんですか?」って書いてあって。 ――青春ですね! クリエイター志向の3人だったのに、それでいいのかよと。 吉田 それを伝えに九州まで来てくれたというのに感動したのかなんなのか、その後いろいろ悩んだ末に仕事は辞めることにしました。それで、大阪に戻ってまたバイトをしながら漫画を描いていたんですが、「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で初めて「これ面白いね」って言ってもらえたんですよ。その漫画で努力賞1万円をもらって、うれしくって東京に出てきました。 ――え、1万円もらっただけで!? 吉田 編集者も「何しに来たの?」って言ってましたね(笑)。それから日雇いバイトとかやりながらネームを描いたら「増刊に載っけてあげる」ということになってトントン拍子にデビューできて、このまま行けるのかなーと思ってたら……なんともならなかったですね。その頃、担当から「佐藤秀峰さんがスタッフ募集しているけど、行く?」って言われて、作画スタッフになりました。 ――絵柄も何も、全然違うじゃないですか! 吉田 佐藤さんが僕のデビュー作を読んで「すごい面白かった」と言ってくれたらしくて。佐藤さんにはそれから10年以上たった今でも、お世話になりっぱなしですね。絵柄も何も違いますがなんとか雇ってもらえて、ご飯が食べれました。もちろん、仕事は厳しい面もありましたが。 ――佐藤さんのところで、何を描いてたんですか? 吉田 紙コップとか(笑)。お察しの通り、僕は絵がヘタなんで、なんにも描けないんです。佐藤さんのところって、雇用期間が3年間なんですよ。3年たってダメだったら、漫画家の道をどうするか考えなさいという方針で。でも、僕は1年、2年たってもうまくならないし、下にうまいスタッフがドンドン入ってくるし。絵は毎日リテイクの繰り返しだし、2年半たった頃が地獄でしたね。 ――その頃、自分の漫画は描いていたんですか? 吉田 スタッフに入った当初は佐藤さんの原稿を目の当たりにして、自信喪失してしまいました。「こりゃもう何を描いても仕方ないな」と。みんな陥るらしいですけどね。でも、作画スタッフの仕事がまったくうまくいかないので、逃避のために自分の作品を描きたくなるんですよ。それで描いたものを「モーニング」(講談社)に送ったら、ちばてつや賞の準入選をもらえて。その後、『フィンランド・サガ(性)』という作品で連載させてもらえることになりました。 ――おお、初連載ですね。それで、佐藤さんのところから独立できたんですか? 吉田 しばらくは兼業で描いてたんですけど、2年10カ月目くらいで辞めさせていただきました。月刊連載で20ページ、20万円もらえたので、1人で描いてる分には食べていけたので。でも、それも3巻くらいで終わっちゃって。すぐに次が始まると思って余裕かましてたら全然ネームが通らないし、ほかのところに持っていっても、賞には入っても連載できないみたいな、3年ぐらいそんな生活でしたね。
「佐藤秀峰さんには頭が上らない……」『やれたかも委員会』吉田貴司の屈辱の日々と、ウェブ漫画家としての生きる道の画像2

■作画家・編集者とモメて泥沼の展開に

――そんな時期に『やれたかも委員会』も描いていたんですよね。 吉田 そうなんですよ。第1話は2013年に描いています。くすぶっている時期に読み切りをたくさん描いていて、その中の1つでした。『やれたかも委員会』は「ビッグコミックスペリオール」(小学館)で奨励賞をもらったんですが、連載にはならなかったですね。あの形式だと、どうしてもオチがワンパターンになっちゃうと言われて……。 それから別の作品を描き始めて、15年に「これは面白いぞ」というものができたんですね。その『シェアバディ』という作品で連載をやれることになったんです。……絵がダメだから、原作者として。 ――それまでの期間って、何をやって食べていたんですか? 吉田 『フィンランド・サガ(性)』が終わってからは工場で働いていたんですけど、その工場も1年くらいで潰れちゃって。困り果てて、佐藤さんのところに行ったら「ウェブの仕事だったらあるけど、やる?」って言っていただけて。でも、1年くらいたった頃に『シェアバディ』の連載が決まったんで辞めました。 ――勝手ですねー! 吉田田 本当に申し訳ないです。でも初の週刊連載だし、ここは勝負かけようと思ってしまいまして。……その『シェアバディ』も、半年で打ち切られるんですけどね。作画家・編集者とモメるという泥沼の展開になっちゃいまして。 僕は話をじっくり考えたかったんで、持ち込む前に100ページ、連載が始まるまでに200ページ描きためていたんですよ。ところが、始まったら「人気がドベだから話を変えろ」っていうことになって。それまでは絶賛してたくせに。でも、先まで決まってるし、変えられないですよ。別案を作っても、元のクオリティーを下回るのがわかってますから。そしたら、作画家・編集者とで勝手に話を変えちゃったんです。 ――え、そんなことあるんですか! 吉田 そうなんですよ。原作者の僕が知らないキャラを出されても、困るじゃないですか! だから、最後の3巻は読んでもいないですね。……思い出したら、泣きたくなってきました。 それで連載が終わって、また佐藤さんのところに頭を下げに行って……。 ――ええーっ! 吉田 辞めて半年で戻っちゃって(笑)。頭が上がりませんよ、もう。
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■『やれたかも委員会』が話題になってザマア!

――再び佐藤さんのところで働きつつ、自分の作品も描いていた? 吉田 描いてはいたんですけど、『シェアバディ』の泥沼で心が折れ、もう編集者と何かをするのがイヤになっちゃって。だったら、ネットで描いて自分で電子書籍を出せばいいんじゃないかなと思うようになりました。 ――ネットでの展開というのは、佐藤さんの影響も大きいんじゃないですか? 吉田 そうですね。佐藤さんのところで電子書籍の仕事を担当してたので、電子書籍のストアのことや契約の仕方など、見て勉強させていただきました。それで、自分でネット展開するに当たって、どうすればいいかなと考えて、まあ考えてもわからないので、とりあえずTwitterに1ページ漫画を毎日上げるというノルマを課しました。それが16年の2月くらいのことです。 ――それ、お金にはならないですよね? 吉田 ならないですね。とりあえずいろいろと発信して、フォロワーを増やそうとしました。それから同人誌とか作って、500人くらいに売れるようになれば、別にいいかな……と思ってました。でも、最初はフォロワー700人くらいしかいなかったし、知り合いばっかりだったんで、作品を載せてもぜんぜん反応ないんですよ。毎日スベリ倒しで、心がバキバキに折れました。 ――それでも、編集者と一緒にやるよりはマシだと? 吉田 そうですね。 ――Twitterで初めて反応があったのは、いつ頃ですか? 吉田 『やれたかも委員会』がバズッたのが16年の9月なんですけど、それまでほとんど無反応でしたね。女の子がおじさんの気持ちを言う、みたいな漫画が1000RTいったくらいで。それから、9月に1万RTいったネタがあり、そのタイミングで過去の『やれたかも委員会』をネットの有名人の方が見つけてくれて、おかげでものすごく拡散しましたね。  13年にはブログとnoteに上げていたんですけど、それまではまったく無反応でしたから。16年4月に続編として『やれたかも委員会2』を描いて、noteで100円で販売したんですけど、それも4個しか売れず。 ――400円……。 吉田 振り込み手数料を引かれるから、振り込まれもしないんですよ。 ――でも、Twitterに漫画を上げ続けていたことによって、やっと『やれたかも委員会』に日の目が当たったと。 吉田 はい、「1」が20万PVいって、「2」も300個くらい売れて。「なるほどー、バズると、こういうことになるのか」と。そのタイミングでいろんな版元さんから「連載しませんか?」「書籍化しませんか?」って声をかけていただきました。ただ、連載をして原稿料をもらえるというのは魅力的だったんですが、やっぱり……電子書籍の権利を自分で持ちたかったんですね。それを要求したら、どこも通らなかったです。 ――佐藤秀峰さんレベルが要求したら通るけど……。 吉田 まあ、普通に考えて紙書籍のみで「原稿料が回収できるくらい利益になる」と思われないと、その条件はのんでもらえませんよね。打ち合わせで電子書籍の権利の話を出すと、みんな顔色変わるんですよ。「吉田さんと、そんな話はしたくなかった」と。 ――連載の話がナシになっても、電子書籍の権利は押さえたかった? 吉田 やっぱり、収入面についてももちろんそうですが、いろんな側面から電子書籍の権利を持つのは重要だと思います。実は、『フィンランド・サガ(性)』は佐藤さんの会社経由で電子書籍化してるんですよ。その時は電子書籍のことが出版契約書に盛り込まれていなかったので、自分で権利を持ってたんですね。一度、佐藤さんの漫画がセールでバーンと売れたことがあったんですが、僕の漫画もついでに売れて、100万円くらい収入がありました。その経験があったので、これを他人に渡しちゃう手はないなと。 ――とはいえ、noteの有料課金では、3万円くらいしか入っていないわけじゃないですか。原稿料のほうがよかったんじゃないですか? 吉田 いろんな人がその目先にとらわれて、契約に縛られたり、打ち切られたりしているのを見ているんですよ。権利を自分で持って継続して販売していけば、そのうち原稿料分はペイできるのではないかと思います。最初は苦しいけど、試してみる価値は十分あります。 ――ああー。お金以上に、出版社の都合で打ち切られたりしたくないと。 吉田 そうですね。絶対にあっちの都合で変えられたくないというのもあります。でも単行本って、あくまで出版社の商品なので、例えば「セリフを勝手に変えないで」って言っても、向こうの商品だから変える権利があるという理屈は残念ながら通ります。「じゃあ電子は自分でやりますよ。口出さないでください」となります。「スピリッツ」の担当者の時に散々な目に遭いましたからね。私は復讐鬼と化しています。 ――『やれたかも委員会』が話題になって、ザマアみたいな気持ちも……。 吉田 そりゃ、普通にあります。それからは、noteで自主的に連載する形を続けて、非独占だったらほかのサイトに転載してもらっても構わない、というスタンスでやっています。有料サイトのcakesさんからも話が来たんですが、あそこはPV数によってお金がもらえるんですよ。だからnoteで1話200円で販売しつつ、遅れてcakesで1週間限定で無料展開するというやり方にしたら、それが当たりましたね。noteだと、僕のことを好きな人が課金して読んでくれるだけだったけど、cakesで無料公開にすると話題になって、続きを読みたい人がnoteで課金してくれるという流れを作れたんです。 ――お金的には、どのくらいもらえるもんですか? 吉田 cakesとnote合わせて、月に12万円くらいですね。BuzzFeedさんなどのニュースサイトに取り上げられた時には、noteだけで10万とか15万とかいきました。 ――ああ、結構いいですね! まだ、佐藤さんのところの仕事も続けているんですか? 吉田 本当に申し訳ないのですが、先月末に辞めさせていただきました。 もちろんこのまま簡単にうまくいくとは思っていませんが、『やれたかも委員会』の書籍も出るし、クラウドファンディングも始まるし。忙しくなって、仕事がおざなりになっちゃうと申し訳ないと思ったので。
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■『やれたかも委員会』は純愛!?

――『やれたかも委員会』の中身の話もしたいんですが、この漫画のフォーマットって、ツッコミのある『BOYS BE...』ですよね。 吉田 確かに。僕は『BOYS BE...』あんまり読んでないんですけど、そういう青春! 純愛!みたいなものをガッツリやりたいのに、照れ隠しでこういう形式で描いているのかも知れませんね。先日対談させていただいた小説家の保坂和志さんに「今、純愛をそのまま描くとバカだと思われるから、みんな避けるんだけど、この形だと読者も純愛を照れずに読めるよね」って言っていただいて、確かにそうかもなーって思いました。 ――いろんな「やれたかも」な体験談が出てきますけど、吉田さん自身が一番好きな体験談はどれですか? 吉田 うーん、2話目の、ママさんバレーをやっている主婦ですかね……ああいう、女性からグイグイ来るタイプに弱いですね。自分からどう迫ったらいいのかわからない、っていうのもありますが。 ――「あの時、自分から行ってればやれたのに……」みたいな後悔が、たくさんある? 吉田 20代の頃はデートが終わって家に帰ってから「何やってんだろー」って、延々と蛍光灯眺めるみたいな、そんなのばっかりでしたよ。いまだに全然女性との距離の取り方がわからないところはあります。例えば、仕事で知り合った女性とプライベートで食事に行く……なんてことになったら、どうしたらいいのかわからないですもん。ファミレスだとあまりにも味気ないですし、ガッツリ間接照明みたいなところだと「口説く気か?」と警戒されて変な空気になるじゃないですか……。普通にご飯を食べたい時は、どこに行くのが正解なんですか!? ――「やれるかも」という期待が100%なければ、喫茶店でいいですもんね。 吉田 僕は、普通にご飯を食べられればいいと思ってるんです。でも、もしも女性側がアリだったとしたら、それはそれで話が変わってくるというか……。別の問題が出てきますよね? もしかして、最低なこと言ってる気がしてきましたが……すみません。 ――最新作では、初めて女性の体験談が出てきますが、そこでいきなり判定がゆるくなっている気がするんですが? 吉田 ゆるくなってますか? そうですか。特に自分では、そういう気持ちはなかったですが。女性が男性の体験談に対して「やれた」判定を出すことって、正直なかなかないと思うんですよ。女性のほうから「あの時やれたよ」って軽々しく言っちゃう作品なんか描いたら、性犯罪を助長しそうだし……。 ――そんなこと心配しているんですか! 吉田 でも、作品を通して、女性の性欲についても無視はしたくないわけです。僕は男なので、しょせん男都合の漫画しか描けないんですが、ギリギリまで女性の気持ちを考慮できたら面白いんじゃないかと思って描いています。  もちろん、女性の体験談でも「やれたとはいえない」ケースも出てくると思います。女性からアピールしたとしても、男側がダメってケースがあるじゃないですか。特に10代男子って「付き合わないと、やっちゃいけない」とか考えてたりするんで。 ――童貞相手だと、なかなか難しいですよね。 吉田 若い頃は「自分の中ルール」みたいなのが、やはり多い傾向がありますからね。 ――今後の展開ですが、自分の好きなことを描いて、読みたい人が課金してくれればいいというスタイルを続けていくんでしょうか? 吉田 そういう方向に行きたいとは思っています。「吉田さんの漫画だったら買います」という人が1000人くらいいてくれたら、ちょいちょい貯蓄しながらやっていけば大丈夫かなと思うんですよ。とりあえず、今年いっぱいは、書籍の印税も入るし、電子印税も入るし、グッズを作ったりスタンプを作ったりもしようと思ってるんで、食べていけるかなと。『やれたかも委員会』の単行本は年内にもう1冊くらい出したいんですけど、それと同時に新企画も立ち上げて、noteで動かしていこうと考えています。 (取材・文=北村ヂン)
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『やれたかも委員会 1巻』 本日発売! 「佐藤秀峰さんには頭が上らない……」『やれたかも委員会』吉田貴司の屈辱の日々と、ウェブ漫画家としての生きる道の画像6

“元アウトローのカリスマ”瓜田純士にディズニー映画『美女と野獣』を見せたら、魔法にかかっちゃった!

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 新宿の鬼と恐れられた男に、心温まるディズニー映画を見せたらどうなるのか?――“元アウトローのカリスマ”こと瓜田純士(37)が、森羅万象を批評する不定期連載。今回は、大ヒット中の映画『美女と野獣』を観賞してもらったところ、なんと、瓜田自身も魔法のような変身を遂げた!  日本での上半期映画興収ランキングで1位となり、現在も上映が続く『美女と野獣』。1991年にディズニーが製作した同タイトルの大ヒットアニメを現代風にアレンジしつつ3D実写化したファンタジーロマンスで、美しい心を持った女性ベル(エマ・ワトソン)と醜い野獣(ダン・スティーヴンス)の恋の行方が描かれている。  観賞当日は、風が吹き荒れる雨模様。ボロボロになったビニール傘片手にズブ濡れで映画館に現れた瓜田は、開口一番、往時を偲ばせる暴力的な言葉で記者を威嚇した。 「よりによって、こんな悪天候の日に呼び出しやがって。これで映画がつまらなかったら、この傘で突き刺しますからね」  しかし、映画が終わった頃には、外はすっかり雨がやみ、瓜田もすっきり晴れやかな表情になっていた。  凶器として使う予定だった壊れたビニール傘を几帳面にゴミ箱へ捨て終えた瓜田と、同伴者の奥様に、さっそく感想を聞いてみる。 ――いかがでしたでしょうか? 瓜田純士(以下/純士) すげえ感動しました。こいつは不朽の名作ですよ。さすがディズニー。世界の一流クリエイターが集まって本気を出すと、ここまで素晴らしい作品に仕上がるんですね。 ――奥様、涙目じゃないですか。 瓜田麗子(以下/麗子) 拭いても拭いても涙が止まらへん。ポケットティッシュをほぼすべて使い切ってしまいました。 ――瓜田さんがこれまで見た中で、ベストの映画と言えますか? 純士 スタローンのロッキーシリーズには敵いませんし、一点、惜しい部分もあったので、ベストとまではいきませんが、それでもディズニー映画の中ではダントツですね。 ――ということは、ディズニー映画をけっこうご覧になっているんですか? 純士 けっこうどころか、ほぼすべて見てますよ。もっぱらDVDですけどね。だから、今回はものすごく楽しみにしてたんです。3Dでディズニー映画を見るのは初めてでしたから。序盤は3Dの字幕に戸惑ってしまい、何が原因で彼が野獣になったのかは正直うろ覚えなんですけど、とにかくいい映画でした。 ――具体的に、何がどうよかったですか? 純士 まず、野獣のキャラがよかったです。一見粗暴なんだけど、実は繊細でいい奴だというね。彼のあの繊細な部分。それだけでもうハートをつかまれてしまいました。 麗子 野獣がけがしてしょぼくれて寝込んでるシーンを見て、吹き出しましたよ。これ、純士そのままやん、と。普段は短気で暴れん坊でも、実はへちょくて、すぐ風邪とかで寝込んじゃうところが、ホンマに純士そっくりやったな(笑)。 純士 でも野獣の行動って、なんだかんだでレディーファーストだし、男前なんですよ。ベルに愛を告げようとするけど、あの見た目ゆえ、フラれて傷つくことを恐れるじゃないですか。それでも周囲の家具や食器たちに応援されて、愛を確かめ合うところまでいくけど、「こんな場所に囚われたままで幸せはあるの?」みたいなことを彼女から言われ、この子を解放しなくちゃいけないと気づいて送り出す場面の潔さ。あれ、超カッコよかったです。で、そのあとのシーンが、さらにシビレました。 ――どんなシーンですか? 純士 ベルと離れ離れになった野獣が、ひとりで塔の上をグルグルさまよいながら、彼女への思いを歌うシーンがとても素敵で、泣けました。あそこが一番好きな場面ですね。 ――前回『ラ・ラ・ランド』を鑑賞時に、「ミュージカルは嫌い」とおっしゃっていたので(記事参照)、本作もお気に召さないと思ったのですが。
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純士 基本、ミュージカルは好きじゃないです。しょうもない奴らのミュージカルを見ると殺意が芽生えるんですけど、同じことをディズニーがやると、どういうわけか感動するし、鳥肌もんになるんですよ。作り手も演じる側も音楽も世界一のメンツが集まって、レベルの違うことをやってくるから、感服するほかないんでしょうね。本作でも、村人たちが歌い踊るシーンなんかは大きな見せ場で、見ててほっこりしましたよ。 ――瓜田さんがそこまでディズニー好きだとは知りませんでした。 純士 ディズニーへの見識が浅かったころの俺は、バンドに例えると、花形のボーカルやギターにしか目がいかなかった。ベースとドラムなんか知らねえよと、主役ばっかり追っちゃうところがあったんです。ところが最近はディズニーのおかげで、ポット夫人やチップくんなど、ああいう脇役たちがいかに主役を引き立ててるのかってことや、脇役たちそれぞれにもドラマがあるんだってところにまで目がいくようになった。 ――ディズニーのおかげ、とは? 純士 ディズニーってどの作品も、脇役にも感情移入しやすいよう丁寧に作られてるんですよ。だから、主役にも余計に気持ちが入るんです。それがほかの映画にはない魅力だと思います。とにかく無駄がないんですよ。「こいつを生かすために、こいつを殺してしまえ」ってことがない。 麗子 悪者さえも愛すべきキャラにしてしまうようなところがあるねんな。 純士 そう。今回のガストン(ルーク・エヴァンズ)も、いい役だなと思った。ああいう奴を見ると、昔は「コンチクショウ!」と思ったんですけど、今では「これっていい役だな」と。映画では憎まれ役だったけど、エンドロールで顔を出して、最後ニコッとしてね。いい役じゃないですか。ガストンが森に入っていったのは、結婚したいという下心もあったでしょうけど、みんなの前で放っておけないという義侠心も多少はあったんじゃないかな。だけど後半疲れてきて、だんだん悪いほうへ傾いていく心理がよく描かれてて。ガストンにはガストンの物語がある。ああいうタイプの男は、周囲の環境次第で、よくも悪くも転ぶんだろうな、とか思いながら見てました。 ――ストーリーはどうでしたか?(以下、ネタバレあり) 純士 ハッピーに終わるじゃないですか。それがよかったんですけど、一箇所だけ惜しいと思ったのは、「イケメンの登場が早すぎる」ということ。できれば、戻らないでほしかったかな。これは原作にケチをつけることになってしまうのかもしれないけど、あのまんまの姿で結ばれて終わったほうが、作品のテーマ的にも正解だったんじゃないでしょうか。 ――確かに。 純士 本当に醜くてコンプレックスを持ってる人って世の中に大勢にいるはずなので、あのまんまの姿でハッピーエンドを迎えたほうが、「オーッ!」となるじゃないですか。なのに、イケメンが急に出て来やがって、勝手にイチャコラして終わるという(笑)。「おまえ、ふざけんなよ!」と思った人も中にはいるかもしれません。 ――ベルもイケメンを見て、心なしかテンションが上がっていたような。 純士 そう、それが残念。「あのまんまのあなたでいいのよ」ってところがほしかった。戻してもいいけど、戻すタイミングが早いんですよ。ベルの優しい気持ちにうれしくなった魔女が、数年後、あえて時間差で戻してあげるとか。そういうオシャレな展開があれば最高だったんですけどね。ベルが野獣を受け入れると完全に腹をくくった描写をしっかり見せて、見てる人を一度は安心させて欲しかった。じゃないと、『美女と野獣』というのがきれいごとになっちゃう。 ――なるほど、納得です。 純士 とはいえ、映像の美しさや、アリアナ・グランデの歌を含め、本当にいい映画でした。「ディズニー映画は子どもの教育上いい」と聞いたことあるけど、その意味がよくわかります。 ――どうしてですか?
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純士 俺も昔はディズニー映画を完全にバカにしてて、見たことなんてなかったんですが、今の嫁と結婚してから、家でDVDを無理やり見せられるようになりまして(笑)。最初の頃は俺、ブツクサ文句を言いながら見てたんだけど、だんだんそのよさがわかってきたというね。 麗子 この人に愛を教えたくて、私はあえてディズニー作品を見せ続けたんですよ。知り合った頃の純士は人間不信の塊で、自分のことしか考えてないような男でしたから。自分の嫁のことを「下の下の下」としか見てない最低の男やったんですよ。 純士 確かに(笑)。 麗子 きっとこの人は愛を知らへんのやろうな、と思って。せやから嫌がる純士に頼みまくって、愛にあふれたディズニー映画を何本も借りて一緒に見てもらううちに、ちょっとずつ変わってきたんですよ。悪魔が人間になってきたというか。 純士 それまでの俺は『スカーフェイス』とか韓国のヤクザ映画とか、殺し合いに溢れたアンハッピーな映画ばかりを好んでたんですが、あるときから感性が変わったんです。どう変わったのかというと、格好つけのヤクザ映画やバイオレンス映画を幼稚くさいと思うようになったんですよ。 ――ディズニーのほうが、幼稚くさくないですか? 純士 いや、逆ですよ。逆だということに気づいたんです。子どもたちにちゃんとした愛を教えようと思って、大人たちが英知を結集して作るディズニー映画は、子どもでも楽しめる内容だから一見幼稚っぽいかもしれないけど、作り手たちは超大人。本当の意味で成熟してる大人たちが真剣に作ってるので、全然幼稚なんかじゃない。逆に、過激な暴力描写がウリの映画を作ってるような人たちは、いいトシこいてワルぶったり、愛を語ることに照れたりしてる半端者と言えますから、そっちのほうがよっぽど幼稚でしょう。 ――もはや完全なるディズニー信者ですね。 純士 ええ、そう呼んでもらって構いません。老人から小さな子どもまで楽しめて、みんながハッピーになれる作品を提供する。それが本当の意味で「いい物作りをしてる」ってことなんじゃないでしょうか。世界一ですよ。ディズニーは。 ――奥様が、瓜田さんを変えたんですね。 麗子 ディズニー映画を教材にしつつ、4年がかりで夫をここまで変身させました。純士はクーラーの効いた映画館に入ると鼻が詰まる体質で、以前やったら途中で「苦しいから帰ろう」と言うてたはずですけど、今日は口呼吸だけでフンガフンガ言いつつも、ちゃんと最後まで見とった。それだけ映画が面白かったいうことやし、私の教育も成功してるいうことやと思います。 ――もう教育は完了しましたか? 麗子 いや、まだまだですね。天候や体調や気分が悪いと、急に昔の姿に戻ることがあるので、油断は禁物です。  * * *  魔法が解けたら厄介だ。瓜田が野獣に戻る前に、記者はそそくさと退散した。 (取材・文=岡林敬太/撮影=おひよ) ※日刊サイゾーでは瓜田純士の最新情報をほぼ月イチペースでお届けしています。 http://www.cyzo.com/cat8/outlaw_charisma/ ※瓜田純士&麗子 Instagram https://www.instagram.com/junshi.reiko/

“元アウトローのカリスマ”瓜田純士にディズニー映画『美女と野獣』を見せたら、魔法にかかっちゃった!

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 新宿の鬼と恐れられた男に、心温まるディズニー映画を見せたらどうなるのか?――“元アウトローのカリスマ”こと瓜田純士(37)が、森羅万象を批評する不定期連載。今回は、大ヒット中の映画『美女と野獣』を観賞してもらったところ、なんと、瓜田自身も魔法のような変身を遂げた!  日本での上半期映画興収ランキングで1位となり、現在も上映が続く『美女と野獣』。1991年にディズニーが製作した同タイトルの大ヒットアニメを現代風にアレンジしつつ3D実写化したファンタジーロマンスで、美しい心を持った女性ベル(エマ・ワトソン)と醜い野獣(ダン・スティーヴンス)の恋の行方が描かれている。  観賞当日は、風が吹き荒れる雨模様。ボロボロになったビニール傘片手にズブ濡れで映画館に現れた瓜田は、開口一番、往時を偲ばせる暴力的な言葉で記者を威嚇した。 「よりによって、こんな悪天候の日に呼び出しやがって。これで映画がつまらなかったら、この傘で突き刺しますからね」  しかし、映画が終わった頃には、外はすっかり雨がやみ、瓜田もすっきり晴れやかな表情になっていた。  凶器として使う予定だった壊れたビニール傘を几帳面にゴミ箱へ捨て終えた瓜田と、同伴者の奥様に、さっそく感想を聞いてみる。 ――いかがでしたでしょうか? 瓜田純士(以下/純士) すげえ感動しました。こいつは不朽の名作ですよ。さすがディズニー。世界の一流クリエイターが集まって本気を出すと、ここまで素晴らしい作品に仕上がるんですね。 ――奥様、涙目じゃないですか。 瓜田麗子(以下/麗子) 拭いても拭いても涙が止まらへん。ポケットティッシュをほぼすべて使い切ってしまいました。 ――瓜田さんがこれまで見た中で、ベストの映画と言えますか? 純士 スタローンのロッキーシリーズには敵いませんし、一点、惜しい部分もあったので、ベストとまではいきませんが、それでもディズニー映画の中ではダントツですね。 ――ということは、ディズニー映画をけっこうご覧になっているんですか? 純士 けっこうどころか、ほぼすべて見てますよ。もっぱらDVDですけどね。だから、今回はものすごく楽しみにしてたんです。3Dでディズニー映画を見るのは初めてでしたから。序盤は3Dの字幕に戸惑ってしまい、何が原因で彼が野獣になったのかは正直うろ覚えなんですけど、とにかくいい映画でした。 ――具体的に、何がどうよかったですか? 純士 まず、野獣のキャラがよかったです。一見粗暴なんだけど、実は繊細でいい奴だというね。彼のあの繊細な部分。それだけでもうハートをつかまれてしまいました。 麗子 野獣がけがしてしょぼくれて寝込んでるシーンを見て、吹き出しましたよ。これ、純士そのままやん、と。普段は短気で暴れん坊でも、実はへちょくて、すぐ風邪とかで寝込んじゃうところが、ホンマに純士そっくりやったな(笑)。 純士 でも野獣の行動って、なんだかんだでレディーファーストだし、男前なんですよ。ベルに愛を告げようとするけど、あの見た目ゆえ、フラれて傷つくことを恐れるじゃないですか。それでも周囲の家具や食器たちに応援されて、愛を確かめ合うところまでいくけど、「こんな場所に囚われたままで幸せはあるの?」みたいなことを彼女から言われ、この子を解放しなくちゃいけないと気づいて送り出す場面の潔さ。あれ、超カッコよかったです。で、そのあとのシーンが、さらにシビレました。 ――どんなシーンですか? 純士 ベルと離れ離れになった野獣が、ひとりで塔の上をグルグルさまよいながら、彼女への思いを歌うシーンがとても素敵で、泣けました。あそこが一番好きな場面ですね。 ――前回『ラ・ラ・ランド』を鑑賞時に、「ミュージカルは嫌い」とおっしゃっていたので(記事参照)、本作もお気に召さないと思ったのですが。
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純士 基本、ミュージカルは好きじゃないです。しょうもない奴らのミュージカルを見ると殺意が芽生えるんですけど、同じことをディズニーがやると、どういうわけか感動するし、鳥肌もんになるんですよ。作り手も演じる側も音楽も世界一のメンツが集まって、レベルの違うことをやってくるから、感服するほかないんでしょうね。本作でも、村人たちが歌い踊るシーンなんかは大きな見せ場で、見ててほっこりしましたよ。 ――瓜田さんがそこまでディズニー好きだとは知りませんでした。 純士 ディズニーへの見識が浅かったころの俺は、バンドに例えると、花形のボーカルやギターにしか目がいかなかった。ベースとドラムなんか知らねえよと、主役ばっかり追っちゃうところがあったんです。ところが最近はディズニーのおかげで、ポット夫人やチップくんなど、ああいう脇役たちがいかに主役を引き立ててるのかってことや、脇役たちそれぞれにもドラマがあるんだってところにまで目がいくようになった。 ――ディズニーのおかげ、とは? 純士 ディズニーってどの作品も、脇役にも感情移入しやすいよう丁寧に作られてるんですよ。だから、主役にも余計に気持ちが入るんです。それがほかの映画にはない魅力だと思います。とにかく無駄がないんですよ。「こいつを生かすために、こいつを殺してしまえ」ってことがない。 麗子 悪者さえも愛すべきキャラにしてしまうようなところがあるねんな。 純士 そう。今回のガストン(ルーク・エヴァンズ)も、いい役だなと思った。ああいう奴を見ると、昔は「コンチクショウ!」と思ったんですけど、今では「これっていい役だな」と。映画では憎まれ役だったけど、エンドロールで顔を出して、最後ニコッとしてね。いい役じゃないですか。ガストンが森に入っていったのは、結婚したいという下心もあったでしょうけど、みんなの前で放っておけないという義侠心も多少はあったんじゃないかな。だけど後半疲れてきて、だんだん悪いほうへ傾いていく心理がよく描かれてて。ガストンにはガストンの物語がある。ああいうタイプの男は、周囲の環境次第で、よくも悪くも転ぶんだろうな、とか思いながら見てました。 ――ストーリーはどうでしたか?(以下、ネタバレあり) 純士 ハッピーに終わるじゃないですか。それがよかったんですけど、一箇所だけ惜しいと思ったのは、「イケメンの登場が早すぎる」ということ。できれば、戻らないでほしかったかな。これは原作にケチをつけることになってしまうのかもしれないけど、あのまんまの姿で結ばれて終わったほうが、作品のテーマ的にも正解だったんじゃないでしょうか。 ――確かに。 純士 本当に醜くてコンプレックスを持ってる人って世の中に大勢にいるはずなので、あのまんまの姿でハッピーエンドを迎えたほうが、「オーッ!」となるじゃないですか。なのに、イケメンが急に出て来やがって、勝手にイチャコラして終わるという(笑)。「おまえ、ふざけんなよ!」と思った人も中にはいるかもしれません。 ――ベルもイケメンを見て、心なしかテンションが上がっていたような。 純士 そう、それが残念。「あのまんまのあなたでいいのよ」ってところがほしかった。戻してもいいけど、戻すタイミングが早いんですよ。ベルの優しい気持ちにうれしくなった魔女が、数年後、あえて時間差で戻してあげるとか。そういうオシャレな展開があれば最高だったんですけどね。ベルが野獣を受け入れると完全に腹をくくった描写をしっかり見せて、見てる人を一度は安心させて欲しかった。じゃないと、『美女と野獣』というのがきれいごとになっちゃう。 ――なるほど、納得です。 純士 とはいえ、映像の美しさや、アリアナ・グランデの歌を含め、本当にいい映画でした。「ディズニー映画は子どもの教育上いい」と聞いたことあるけど、その意味がよくわかります。 ――どうしてですか?
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純士 俺も昔はディズニー映画を完全にバカにしてて、見たことなんてなかったんですが、今の嫁と結婚してから、家でDVDを無理やり見せられるようになりまして(笑)。最初の頃は俺、ブツクサ文句を言いながら見てたんだけど、だんだんそのよさがわかってきたというね。 麗子 この人に愛を教えたくて、私はあえてディズニー作品を見せ続けたんですよ。知り合った頃の純士は人間不信の塊で、自分のことしか考えてないような男でしたから。自分の嫁のことを「下の下の下」としか見てない最低の男やったんですよ。 純士 確かに(笑)。 麗子 きっとこの人は愛を知らへんのやろうな、と思って。せやから嫌がる純士に頼みまくって、愛にあふれたディズニー映画を何本も借りて一緒に見てもらううちに、ちょっとずつ変わってきたんですよ。悪魔が人間になってきたというか。 純士 それまでの俺は『スカーフェイス』とか韓国のヤクザ映画とか、殺し合いに溢れたアンハッピーな映画ばかりを好んでたんですが、あるときから感性が変わったんです。どう変わったのかというと、格好つけのヤクザ映画やバイオレンス映画を幼稚くさいと思うようになったんですよ。 ――ディズニーのほうが、幼稚くさくないですか? 純士 いや、逆ですよ。逆だということに気づいたんです。子どもたちにちゃんとした愛を教えようと思って、大人たちが英知を結集して作るディズニー映画は、子どもでも楽しめる内容だから一見幼稚っぽいかもしれないけど、作り手たちは超大人。本当の意味で成熟してる大人たちが真剣に作ってるので、全然幼稚なんかじゃない。逆に、過激な暴力描写がウリの映画を作ってるような人たちは、いいトシこいてワルぶったり、愛を語ることに照れたりしてる半端者と言えますから、そっちのほうがよっぽど幼稚でしょう。 ――もはや完全なるディズニー信者ですね。 純士 ええ、そう呼んでもらって構いません。老人から小さな子どもまで楽しめて、みんながハッピーになれる作品を提供する。それが本当の意味で「いい物作りをしてる」ってことなんじゃないでしょうか。世界一ですよ。ディズニーは。 ――奥様が、瓜田さんを変えたんですね。 麗子 ディズニー映画を教材にしつつ、4年がかりで夫をここまで変身させました。純士はクーラーの効いた映画館に入ると鼻が詰まる体質で、以前やったら途中で「苦しいから帰ろう」と言うてたはずですけど、今日は口呼吸だけでフンガフンガ言いつつも、ちゃんと最後まで見とった。それだけ映画が面白かったいうことやし、私の教育も成功してるいうことやと思います。 ――もう教育は完了しましたか? 麗子 いや、まだまだですね。天候や体調や気分が悪いと、急に昔の姿に戻ることがあるので、油断は禁物です。  * * *  魔法が解けたら厄介だ。瓜田が野獣に戻る前に、記者はそそくさと退散した。 (取材・文=岡林敬太/撮影=おひよ) ※日刊サイゾーでは瓜田純士の最新情報をほぼ月イチペースでお届けしています。 http://www.cyzo.com/cat8/outlaw_charisma/ ※瓜田純士&麗子 Instagram https://www.instagram.com/junshi.reiko/

卑屈、逆ギレ、責任転嫁……「今もバイトで怒られてる」サブカル界の新星・トリプルファイヤー吉田靖直とは?

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撮影=尾藤能暢
 大喜利イベント「ダイナマイト関西」の準決勝では笑い飯・西田幸治と互角に渡り合い、秀逸な「一言あるあるネタ」を発表。テレビ東京の特番『共感百景』では、麒麟・川島明、ブラックマヨネーズ・吉田敬らと共に爆笑を生み、今春には『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)にも出演し、タモリから絶賛を浴びた吉田靖直(30)。このようにバラエティで大活躍している彼だが、お笑い芸人ではない。インディーズバンド「トリプルファイヤー」のボーカルで、意味不明なバイトをテーマにした楽曲「スキルアップ」では「ピーッて 笛が鳴ったんで 一番大きいボタンを押した/天井の穴を塞いでいた弁が開いて 三色のボールがそこから転がってくる」、他人からしたり顔で言われたらイラッとする発言を歌い上げた「SEXはダサい」では「結局 関根勤が一番面白い/本当の実力で言うと 関根勤が一番面白い」と、珍妙な歌詞のオンパレード。  いったい、サブカル界が注目するその才能は、どのように育まれたのか? 本人を直撃した(なお、そのビジュアルは「残念な星野源」とも評されている……)。 *** ――吉田さんは、バンド「トリプルファイヤー」のボーカルでありながら、『共感百景』や『タモリ倶楽部』など、バラエティ番組にも引っ張りだこになり、注目度も高まっています。 吉田靖直(以下、吉田) 最初、仕事のお話を頂いた時は、『タモリ倶楽部』にしても『共感百景』にしても、かなりテンションが上ったんです。これで人生が変わるんじゃないかと思いました。けど、実際のところ、あんまり変わっていません。まだ、日雇いバイトしていますし……。 ――え、日雇いバイト!? 吉田 この前やったのは、化粧品を入れるパッケージをひたすらレーンに置いていくという仕事でした。けど、30分くらいした時に、なぜかパッケージを逆向きに置いてしまっていたんです。そのせいで機械が止まり、上の人から激しく怒られてしまいました……。 ――とてもテレビに出ている人とは思えない生活ぶりですね! でも、箱の向きをそろえて置くだけの仕事ですよね? 間違えようがないと思うんですが……。 吉田 人が当たり前にできることが、僕はなぜかできないんです。この日雇いの仕事も、やっているうちにゲシュタルト崩壊みたいになってしまい、何が正しいのかわからなくなってしまった。ただ、人間って普通、1時間に何回か間違えますよね。それなのに、間違えることのない前提で工場は動いている。1回間違えただけで、こんなに怒られるなんて……そっちのほうがおかしくないですか? ――逆ギレ! では、テレビに出るようになって変わった部分はありますか? 吉田 人から少しナメられづらくなったことでしょうか。そもそも僕は、人とうまくコミュニケーションが取れないし、人間としてのレベルも低い。前はバンドでライブに出ても、対バン相手すら僕に興味を持ってくれませんでした。でも、最近は、ようやく人間らしい扱いをしてもらえる機会が増えてきましたね。
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――(笑)。そもそも吉田さんは、子どもの頃から「人間としてのレベルが低い」感じだったのでしょうか? 吉田 うーん……小学生くらいの頃から、僕がどんなに真面目にやっていても、周りはニヤニヤして見ていました。そんな視線のせいで、自分は何をやっても滑稽に見えるんだと思うようになって、それに自分を寄せていくようになってしまったんです。だから、僕がこういう人間になった責任の一端は、周りの反応にもあると思っています。 ――周囲の視線が今の吉田さんを作った(笑)。しかし、“サブカル界の新星”などと騒がれる今、ご本人の実感としてはいかがでしょうか? 吉田 幹が細い、という不安がありますね。本来の音楽活動でしっかりと認められ、活動の枝葉としてバラエティ番組に出るという形ならいいんですが、バンドとしての評価も知名度もまだまだですからね。 ――奥田民生にしても電気グルーヴにしても、「面白い」と言われながら、しっかりと音楽的にも評価とセールスを上げていますね。 吉田 テレビを見ていても、何をやっているかわからない人っているじゃないですか? ホラン千秋とか。本職がなんなのか、よくわからないですよね。 ――(笑)。 吉田 僕が知らないだけで、きっと本職があるのかもしれないですけど……(編注:ホラン千秋の本職は女優)。 ――吉田さんの活躍から、トリプルファイヤーも徐々に注目を集め始めています。リソッドな演奏だけでなく、吉田さんが描く歌詞の独特な世界観が魅力になっていますね。 吉田 例えば、「トラックに轢かれた」っていう曲は、トラックに轢かれる曲なんですけど……。 ――そのまんまの説明ですね……。 吉田 「40代なのに 20代に見えた トラックに轢かれた/一番自分に似合う髪形をよくわかっていた トラックに轢かれた」と、こだわりを持ってる人間がトラックに轢かれる瞬間を描いています。トラックに轢かれちゃえば、世間では素晴らしいとされるこだわりも、まったく無価値になるじゃないですか。 ――そんな無価値を「トラックに轢かれた」という言葉で表現するのが、吉田さんの奥深さですね。 吉田 だって、トラックに轢かれている映像って面白くないですか? ――……。 吉田 ギャグマンガとかでトラックに轢かれたりするじゃないですか。そうすると、マジメに死んでるはずなのに、なんか面白い感じになっちゃうんです。 ――では、そんな吉田さんの世界観は、どのようにして生み出されるんでしょうか? 吉田 歌詞を書く時は、難しい本を読んでから書くようにしています。例えば、ドストエフスキーやオーストリアの哲学者・ウィトゲンシュタインを読んでから書いたりしていますね。 ――難解な小説や哲学書が「トラックに轢かれた」につながる……? 吉田 ドストエフスキーは、普通に生きていて見過ごされたり、世間では暗黙の了解で進んでいるようなことを書いています。僕も、自分で感じているはずなのに、いつの間にかスルーしてしまっているような感情や風景を表現したいんです。ただ、難しい言葉やシリアスな感じは出したくない。だから、くだらない言葉を意識的に使っています。そこは、お笑いや吉田戦車さんなどギャグ漫画の影響もあると思いますね。哲学書は一応読んでいますが、その時々で適当な場所をちょっとずつしか読まないので、全体的な意味はわかってないことが多いです。
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――以前から、このような歌詞ばかりを手がけていたんですか? 吉田 バンドを始めた当初は、ごく普通のありきたりな歌詞でした。スピッツっぽい、意味ありげなやつを目指していました。中身は特にないんですが、深く考えているんじゃないかと思わせるような、思わせぶりな歌詞でしたね。 ――どんな歌詞だったんですか? 吉田 ……ちょっと言えません。 ――黒歴史なんですね(笑)。では、歌詞を書く時や大喜利のネタのアイデアは、どこから生まれてくるんですか? 吉田 たぶん、常に誰かを批判的に見たり、うがった見方をする癖がついてるんです。「こいつの今の発言、気持ち悪かったな」「これはイラッとしたな」っていうことを覚えておくと、歌詞や大喜利に役立つこともありますね。 ――具体的には、どんなことにイラッとするのでしょう? 吉田 最近だと、町中の屋台で食べ物を買ったら、20分も待たされた挙げ句、注文を忘れられていたんです。途中、屋台のお兄さんの友達みたいな女性がやって来て、ダラダラとしゃべっていたのに……。結局、20分くらいして、彼は注文を忘れていたことに気づいたんですが、ほとんど謝るそぶりもない……。これ、おかしいですよね? ――激怒してもおかしくないですよ、それは。 吉田 あまりに怒りすぎて、鼓動が速くなったんですが、結局、何も言わずに帰りました。 ――え、どうして? 吉田 もしもあそこでキレていたら、キレすぎて、声が震えちゃっていたと思います。それに、僕、怒ると泣きそうになっちゃうんですよ。そうなったら、メチャメチャ恥ずかしいじゃないですか! ――キレ慣れていない人のキレ方ですね(笑)。では、今後の吉田さんの目標は? 吉田 特にありませんが、金銭に余裕がある、まともな大人になりたいです。先日、幼なじみの結婚式に行ったんですが、受け取ったメッセージカードには「おばあちゃんに恥じないように生きろ」と書かれていました。いつも、普通に楽しく話している幼なじみなんですが、きっと裏では僕の生き方に対して、何か感じているモノがあるんでしょう……。 ――気心知れた幼なじみにすら、猜疑心が湧いていますね……。 吉田 だから……まあ、頑張りますっていう感じです。 ――その言葉から察するに、今後も、今まで通り頑張らないと思います(笑)。 (取材・文=萩原雄太[かもめマシーン]) ●トリプルファイヤー 2006年、早稲田大学の音楽サークルで知り合った吉田靖直(ボーカル・ギター)、山本慶幸(ベース)、大垣翔(ドラム)の3人で結成。10年、鳥居真道(ギター)が加入。現在の編成に至る。ソリッドなビートと等身大の歌詞で人気を集める。http://triplefirefirefire.tumblr.com/