
JBC職員を監禁・暴行したとして提訴された亀田興毅
7日正午ごろ、司法記者クラブがある東京地裁の廊下で、その場にそぐわない怒号が響いた。
「てめえ、何やってんだ!」
同クラブの部屋から出てきた一行の記者ひとりを2人組の男が取り囲み、威圧した態度でこう言った。
「俺は、亀田兄弟と業務提携しているケイダッシュのもんだ。こんなことやめろ。おまえ、どうなるか教えてやろうか」
男らはしばらく何やら言葉を発し続け、異変を感じた一行の別の人間が割って入るなど周囲は騒然となった。絡まれた一行は直前、プロボクシングの亀田兄弟を監禁などで民事提訴する記者会見を開いており、男らはそのことで相手側の関係者を名乗り、抗議をしたとみられる。
会見は、日本ボクシングコミッション(JBC)の職員が昨年9月の亀田大毅の世界戦会見後、亀田兄弟らに監禁されて精神的苦痛を受けたとして、損害賠償訴訟を起こしたもの。訴えられたのは亀田興毅、和毅とマネジャーらの計4名。訴状によると、興毅らは職員に権限がないにもかかわらず、使用グローブの変更を強く求め、嫌がる職員をビデオ撮影し、さらに部屋から出ようとしたところ腕を引っ張ったり、首や肩、胸などを数発小突くなど暴行があったという。
これに対し亀田側は、代理人の北村晴男弁護士が「JBC職員の退室を妨害したり、脅迫行為や暴行行為に及んだ事実は一切ない」と全面否定している。
男らに絡まれた記者は、この会見に同席したジャーナリストの片岡亮氏。前出の監禁騒動をブログに書いていたことで、亀田兄弟から名誉毀損だとして、2,000万円の損害賠償を請求する訴訟を起こされており、JBC職員はその片岡氏の記事が事実であったと裏付けるために提訴したとしている。しかし、現場は思わぬ乱入者に危険な空気に包まれた。
現場にいたジャーナリストの山田厚俊氏は、この暴挙を目撃。自身のブログに「誰かに頼まれたことなのか、本人の独断なのか。いずれにせよ、許せない行為」と記した。
山田氏は、片岡氏が起こされた訴訟に関してもいち早く報じた記者で、その訴訟自体が“恫喝訴訟”の異名を持つ「スラップ訴訟」だとしている。スラップ訴訟というのは、経済的に優位にある者がそれに劣る弱者に対して、言論を封じるなど報復的な目的で起こす恫喝的な訴訟で、高額な裁判費用を相手にかけさせるため、請求額が高いことで知られる。海外では、これを法律で禁じたところもあるほどだ。
実際、弁護士のホームページではおおよその費用相場が掲載されており、複数のサイトをチェックしたところ、名誉毀損の被告に対する報酬の相場は、着手金が請求額の5%で、成功報酬が10%とされている。仮にその通り算出すれば、2,000万円の訴訟に対して、弁護士に支払う着手金は100万円。勝訴した場合は200万円の報酬となるため、ほか実費などを含めると、片岡氏はたとえ訴えを退けたとしても300万円以上の出費があり、敗訴すればそれ以上の支払いをすることになる。また、控訴審ではさらに費用が上乗せされる。
山田氏によると、片岡氏が書いた監禁騒動は東京スポーツでも先に報じられており、こちら新聞記事には訴えがなかったことで「片岡氏を狙い撃ちにしたものだ」としている。
ただ、その圧力めいたものが訴訟だけではなく実力行使にも及んだとするなら大問題。片岡氏やJBC職員からは「身の危険を感じる」という声も上がっているが、目撃者らによると、片岡氏を威圧したのは30~40代の体格のいい男。その後も地裁から出る片岡氏を追い、腕をあげてにらみつけるなどしていたという。一部の記者からは彼らを「見たことがある」という声が上がっており、特定されそうな気配がある。
(文=和田修二)
【編集部追記】
本記事掲載後、当日現場で片岡氏らに語りかけた本人から連絡を受け「脅迫はしていない」との指摘がありましたので、見出しおよび本文から「脅迫まがい」という記述を削除いたしました。また、以下に事実関係について、その本人の主張を記載させていただきます。
「自分は、ケイダッシュの川村会長に亀田興毅を紹介した関係で、今回亀田兄弟らが訴えを起こされた監禁・暴行事件について事実関係を確かめるために裁判所を訪れ、会見場から出てきた片岡氏に質問をした。その際、片岡氏を『おまえ』などと呼んでしまったため、小競り合いが起きたような形になってしまったが、脅迫はしていない。その証拠もある」