日本ゲーム業界の「ガリバー」である任天堂が、インターネット企業であるDeNAと業務・資本提携を発表してから、はや半年以上が過ぎている。10月末には任天堂が年内リリースを予定していた初のスマートデバイス向けアプリ『Miitomo(ミートモ)』の発表を来年に延期したと発表し、株価が一時急落していたが……。 そもそもこの『Miitomo』は、社長の君島達己氏がいうには「ネタふりコミュニケーション」だそう。友だちの知らなかった意外な一面や、思いがけない共通点を発見できるアプリということだが、ネット上や期待していたファンの間では「マリオじゃないのか」「ゲームなのかこれは」「アメーバピグの真似事」など散々な意見ばかりが目立つ。リリース延期と合わせ、多くの人が失望を感じたということだろう。 『スーパーマリオブラザーズ』や『ゼルダの伝説』などのような、任天堂が誇るゲーム界の「最強コンテンツ」に多くの人が期待するのは当然のこと。任天堂の動きを“温存”と見る向きもあるが、不満が出るのも仕方なしか。 「『マリオ』がどうというより、ゲーム会社として『Miitomo』のようなコミュニケーションツールよりではなく、純粋なゲームを出すべきだったとは思いますね。『マリオカート』などヒット間違いなしのコンテンツがあるのに出さないのは、自社製品である『NX』『Wii U』などハード機の売上への影響を懸念して、出せないのか……何にせよ、釈然としませんね」(ゲーム記者) そもそも、任天堂はゲーム機とそれに付随するゲームソフトで確固たる地位を築いた企業だが、端的にいえばそれは開発してリリースしたらそれで“終了”ということ。一方、DeNAの主戦場であるスマホゲームは、課金率や売上に応じてスピーディに改良を重ねる必要があるという点で大きく異なる。任天堂としても今はスマホゲーム市場の“常識”をインプットしているころなのかもしれないが、一朝一夕で体制を整えることは難しいに違いない。 「DeNAとしては任天堂の、それこそマリオやゼルダなど圧倒的な知的財産を利用するという点で大きなメリットがあります。最低でも数本、任天堂がこれまで出したゲームのスマホ版をリリースさせることは間違いないでしょうね。ある程度のヒットは問題なく見込めますから」 スマホゲームの帝王である『パズドラ』のガンホーや『モンスターストライク』でV字回復を果たしたmixiも、任天堂という究極のネームバリューは当然無視できないはずだ。 ただ、どうもスマホゲームに挑戦する任天堂の姿からは、不安が消えない。 来年、株式会社ポケモンよりリリースされる、現実の街を舞台に歩き回って「ポケモン」をプレーできる、スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」にも任天堂が開発に参加しているが、腕時計サイズの端末を開発して「歩きスマホ」防止をアピールしているものの、それだけでトラブルを軽減できるのかと疑問の声も多い。さらに、『ニンテンドーDS』や『Wii』を生み出した天才・岩田聡社長が今年3月に没し、その後継となった三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)出身であり、ゲーム業界としては“門外漢”の現・君島社長の手腕にも、心配な声が多いのが現状だ。 過去のヒット作を流用するだけでも、一定の結果を出せるのが想像に容易い任天堂のスマホゲーム。どうせなら、「これぞ任天堂」というゲームを開発して、DeNAとともに業界をひっくり返すところが見たい。任天堂公式サイト
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裸人間がわらわら 香港ピクセル・アートティストが放つ"アナログデジタル"な世界
『AKIRA』『ドラゴンボール』『ドラえもん』......子どもの頃、僕らの心をアツくさせた漫画やアニメが、海の向こうに住むアジアの子どもたちの心にも火を付けていた。今や日本人だけのものではなくなった、ジャパニーズ・ポップカルチャー。その影響を受けて育った、アジアの才能豊かなクリエーターたちを紹介します。
第5回
ウェブデザイナー&ピクセルアーティスト
フランシス・ラム
画面をちょろちょろと動きまわるNudemen(ヌードメン)。ウェブデザイナーであり、ピクセル・アートのカリスマ的存在、フランシス・ラムが生んだ人気キャラクターだ。蟻んこのようなNudemenがわらわらと沸き出て、人文字のメッセージを作ったり(Nudemessenger)、時計になって時を刻んだり(NudemenClock)。裸男たちの動きが、妙にキモ可愛らしくて、ついハマってしまう。
フランシスは、ネット上のポルノサイトに影響を受けて、このNudemenを作ったという。実は、フランシスの出身地である香港では、性表現に対する規制が日本に比べてとても厳しい。彼がNudemenを作った頃、香港の大学生が発行する新聞が自分たちのセックスライフに関する記事を掲載し、当局から告発されたというニュースが大手の日刊紙の見出しを飾ったことがあるほどだ。その時フランシスは、「自分たちの日常生活にごく普通にあることなのに、公に口にすると社会的パニックになってしまうなんて!」と、大いに憤ったらしい。フランシスのピクセル・グラフィック作品にやたらと登場する「裸男」や「裸女」たち、そして、カーソルをあわせると「Don't touch me! (触るな!)」とか「Leave me alone!(ほっといてよ!)」というセリフを残して逃げていくウェブ上のNudemenたちは、そんなフランシスの気持ちを、皮肉をこめて代弁しているのかもしれない。
背後で走る超高度なプログラムに繰られた、手作り感のあるピクセル・グラフィックが作りだす、"アナログデジタル"的な、懐かしくも不思議な世界。自分の作品のスタイルを、フランシスは「ビデオゲームへのノスタルジーから生まれている部分が大きいと思う」と自己分析する。余計なものをそぎ落とした「形」の美しさに取り付かれて、限られた□(ピクセル)だけを使ってアート制作をしているのだと。
フランシスがピクセルの美しさや楽しさに目覚めるきっかけとなったのが、任天堂の『スーパーマリオブラザーズ』。
「子どもの頃の僕には、とにかく衝撃でした。僕の人生そのものに影響を与えたと言ってもいいぐらい」
世界中の大人も子どもも夢中にさせて、社会現象とも言える空前の大ブームを巻き起こしたこのゲームの、何にフランシスは惹かれたのだろう。
「シンプルさ、ユーモア、そしてロマンスがあるところ。今でも、作品を作るときのインスピレーションになっています」
また、「単純でありながら、ディティールにまで気を配ったハイレベルな"質"を保ち続けるという本質的なことは、日本の文化から学んだと思う」とも。
現在は上海にもベースを持ち、活動の幅がぐんと広がっているようだ。つい最近発表したiPhoneのアプリは『Bitboxland (サウンド・トイ&音楽演奏ツール)』 と『Goldfish Music Box (インタラクティブ音楽生成ツール)』 で、いずれもフランシスの超人プログラミングスキルと遊び心が満載されたインタラクティブ・アプリ。自分が子どものころに体験したピクセル・ゲームの楽しさが、そのままiPhoneで再現されている。
さらに、そうした"デジタル"活動の傍ら、なんと、上海に、ファニチャーショップをオープンさせたという。木製のシンプルな家具を中心に扱うお店で、「一見、デジタルの世界とは真逆なんだけど、ピクセルと木片には、何か通じるところがあると思わない?」。確かに。両者に共通するのは、"アナログデジタル"な懐かしさと温かさ。フランシスの中では、その二つは、喧嘩をせずに共存しているものなのだ。
(文=中西多香[ASHU])
●Francis Lam(フランシス・ラム)
香港出身のウェブデザイナー&ピクセル・アーティスト。独自のユーモアセンスと、デジタルメディアの美的、社会的側面に焦点をあてたアートワークで、多くの関心を集める。MIT Media Laboratoryにて、Sociable Media Group学位取得。さまざまな出版物で作品が紹介されており、オーストリア、香港、日本、台湾、アメリカでのエキシビションにも参加している。オリジナルウェブサイト「db-db loves you」は、同じ感性を持つ個人個人をつなぐ、新しいブログツールとプラットフォームの実現を目指す。
<http://db-db.com/loves/francis/>
●なかにし・たか
アジアのデザイナー、アーティストの日本におけるマネジメント、プロデュースを行なう「ASHU」代表。日本のクリエーターをアジア各国に紹介するプロジェクトにも従事している。著書に『香港特別藝術区』(技術評論社)がある。<http://www.ashu-nk.com >
オンラインTシャツオンデマンド「Tee Party」<http://teeparty.jp/ashu/>
スーパーマリオブラザーズ
ビヨ~ン!

■バックナンバー 【vol.5】ダメでも笑い飛ばせ! 香港の国民性を体現したグラフィック・ノベリスト 【vol.4】「教科書はガンダムの落書きだらけだった」 香港・原色の魔術師の意外な原点 【vol.3】「懐かしいのに、新しい」 読むほどにクセになる"タイ初の日本漫画家"タムくん 【vol.2】 マイブームはBL!? 香港の腐女子が描きとめる、消えゆく都市の記憶 【vol.1】 「 :phunk版ガッチャマンが作りたい」 シンガポール発のデザイン集団が描く夢

「ENJOY THE PLANET,2003」
●Francis Lam(フランシス・ラム)
香港出身のウェブデザイナー&ピクセル・アーティスト。独自のユーモアセンスと、デジタルメディアの美的、社会的側面に焦点をあてたアートワークで、多くの関心を集める。MIT Media Laboratoryにて、Sociable Media Group学位取得。さまざまな出版物で作品が紹介されており、オーストリア、香港、日本、台湾、アメリカでのエキシビションにも参加している。オリジナルウェブサイト「db-db loves you」は、同じ感性を持つ個人個人をつなぐ、新しいブログツールとプラットフォームの実現を目指す。
<http://db-db.com/loves/francis/>
●なかにし・たか
アジアのデザイナー、アーティストの日本におけるマネジメント、プロデュースを行なう「ASHU」代表。日本のクリエーターをアジア各国に紹介するプロジェクトにも従事している。著書に『香港特別藝術区』(技術評論社)がある。<http://www.ashu-nk.com >
オンラインTシャツオンデマンド「Tee Party」<http://teeparty.jp/ashu/>
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