“熱盛ジャパン”稲葉篤紀の侍監督を後押し!? 『報ステ』スポーツコーナーの攻めの姿勢

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「週刊ベースボール増刊 稲葉篤紀引退記念号 2014年9/28号」(ベースボール・マガジン社)
 野球日本代表「侍ジャパン」の新監督に就任する、と報じられている元北海道日本ハムファイターズの稲葉篤紀(いなば・あつのり)氏。これを受け、SNS上ではこんな声が湧き上がっている。 「熱盛ジャパンの誕生だ!」  篤紀ジャパンでも、もちろん稲葉ジャパンでもなく、“熱盛ジャパン”。これ、『報道ステーション』(テレビ朝日系)を見ていないとワケがわからない。  稲葉といえば、2014年シーズン限りで現役を引退した後、翌年から『報道ステーション』のプロ野球コメンテーターに就任。野球シーズンは、ほぼ週1ペースで出演を続けている。そして、このスポーツコーナーで今季から始まった新ミニコーナーが「きょうの熱盛」だ。  野球ニュースの名物コーナーといえば、『報ステ』の前身番組、『ニュースステーション』時代にあった「プロ野球1分勝負」を思い出す人は多いだろう。「きょうの熱盛」も「1分勝負」同様、約1分間の短い尺で“その日のプロ野球で熱く盛り上がったシーン”を振り返ろう、というもの。  ただ、「1分勝負」が主に勝敗とホームランを振り返るコンセプトだったのに対して、「熱盛」は勝敗度外視で(というか、勝敗に関係のないシーンから)好プレーを凝縮して見せてくれる。比較的ファインプレーが切り取られることが多いのだが、ときに珍プレーや走塁などの玄人受けする場面、観客のファウルボールナイスキャッチ、さらには審判、ランナーコーチなど、従来のスポーツコーナーではまずお目にかかれないシーンが出てくるとあって、野球ファンの間で好評を博しているのだ。  野球ニュースは、どの局、どの番組であっても、勝敗にかかわったプレーを元にコーナーを構成する。それはもちろん正しいのだが、プロ野球がこれほどのファンを獲得し、下位チームであっても観客動員数の新記録を更新し続けているのは、“勝敗を度外視した魅力”があるからにほかならない。「きょうの熱盛」は、そんな野球ファンのニーズと合致し、人気となったわけだ。  稲葉の『報ステ』出演は週1のため、熱盛=稲葉のコーナー、というわけではない。むしろ、「熱盛」の進行をレギュラーで務めるテレ朝の寺川俊平アナこそ“熱盛男”。ただ、狙ったのか、たまたまなのか、名前が似ている(アツノリとアツモリ)こともあって、稲葉=熱盛という認知が広まっているのも事実だ。  実際、7月17日に放送された『とんねるずのスポーツ王は俺だ!!2017夏の決戦スペシャル』(同)で、名物コーナー「リアル野球BAN」に出場した稲葉に対して、「“熱盛”見せてくださいよ」といった野次が飛び交い、試合終盤に稲葉のバットから決勝打が生まれると、『報ステ』と同じ熱盛ロゴが登場し、SNSはにぎわいを見せていた。  さて、ここから“稲葉篤紀、侍ジャパン監督就任”に話を戻そう。今回の報道を受け、「また監督経験のない人物が日本代表を率いるのか」といった批判的な声も一部からは聞こえてくる。稲葉はこれまで、『報ステ』出演を続けながら侍ジャパンの打撃コーチを務め、また、古巣であるファイターズで「スポーツ・コミュニティ・オフィサー」なる肩書でスポーツ文化振興の旗振り役を務めているが、純然たる指導経験は確かにない。  今春のWBCまで侍ジャパンを率いた小久保裕紀前監督も、同様に指導者歴がまったくない状況から代表監督に就任。結果としては目標の「世界一奪還」を果たせなかったこともあって、こうした声がやむことはないだろう。  一方で、SNSでの「熱盛ジャパン」の声を見るにつけ感じるのが、「これほど愛される代表監督は初めてなのでは」ということだ。  それもちろん、野球ファンから愛される、ということが第一義。そして、球界関係者からも稲葉に対しては否定的な声がほとんど聞こえてこない。むしろ人格者として知られ、あのイチローも「稲葉さんだから」と、かつて独占インタビューに応じたことがあった。球界から愛されている男が代表監督を務める……これほど頼もしいことはない。  実際に「熱盛ジャパン」の名称が定着することはないとは思うが、現役時代を振り返れば、「稲葉ジャンプ」の熱烈応援で、ファイターズファン以外にも広く認知され、引退する際には各球場で、敵チームのファンからも惜別の稲葉ジャンプが湧き起こったほど。侍ジャパンの試合でも「稲葉ジャンプ」が復活するとしたら、今まで以上に応援も盛り上がるのではないだろうか?  ちなみに、『報ステ』スポーツコーナーでは、この「稲葉ジャンプ」を元ネタに、稲葉が一週間で注目した選手を掘り下げる特集コーナー「週間稲葉ジャンプ」という、某少年漫画誌をモチーフにした新コーナーも今季から始まっている。「熱盛」といい「稲葉ジャンプ」といい、いろいろ攻めの姿勢を続ける『報道ステ』スポーツコーナーに、侍監督就任後も稲葉は出演を続けるのか? この点も、今後の大きな注目点になりそうだ。 (文=オグマナオト)

“熱盛ジャパン”稲葉篤紀の侍監督を後押し!? 『報ステ』スポーツコーナーの攻めの姿勢

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「週刊ベースボール増刊 稲葉篤紀引退記念号 2014年9/28号」(ベースボール・マガジン社)
 野球日本代表「侍ジャパン」の新監督に就任する、と報じられている元北海道日本ハムファイターズの稲葉篤紀(いなば・あつのり)氏。これを受け、SNS上ではこんな声が湧き上がっている。 「熱盛ジャパンの誕生だ!」  篤紀ジャパンでも、もちろん稲葉ジャパンでもなく、“熱盛ジャパン”。これ、『報道ステーション』(テレビ朝日系)を見ていないとワケがわからない。  稲葉といえば、2014年シーズン限りで現役を引退した後、翌年から『報道ステーション』のプロ野球コメンテーターに就任。野球シーズンは、ほぼ週1ペースで出演を続けている。そして、このスポーツコーナーで今季から始まった新ミニコーナーが「きょうの熱盛」だ。  野球ニュースの名物コーナーといえば、『報ステ』の前身番組、『ニュースステーション』時代にあった「プロ野球1分勝負」を思い出す人は多いだろう。「きょうの熱盛」も「1分勝負」同様、約1分間の短い尺で“その日のプロ野球で熱く盛り上がったシーン”を振り返ろう、というもの。  ただ、「1分勝負」が主に勝敗とホームランを振り返るコンセプトだったのに対して、「熱盛」は勝敗度外視で(というか、勝敗に関係のないシーンから)好プレーを凝縮して見せてくれる。比較的ファインプレーが切り取られることが多いのだが、ときに珍プレーや走塁などの玄人受けする場面、観客のファウルボールナイスキャッチ、さらには審判、ランナーコーチなど、従来のスポーツコーナーではまずお目にかかれないシーンが出てくるとあって、野球ファンの間で好評を博しているのだ。  野球ニュースは、どの局、どの番組であっても、勝敗にかかわったプレーを元にコーナーを構成する。それはもちろん正しいのだが、プロ野球がこれほどのファンを獲得し、下位チームであっても観客動員数の新記録を更新し続けているのは、“勝敗を度外視した魅力”があるからにほかならない。「きょうの熱盛」は、そんな野球ファンのニーズと合致し、人気となったわけだ。  稲葉の『報ステ』出演は週1のため、熱盛=稲葉のコーナー、というわけではない。むしろ、「熱盛」の進行をレギュラーで務めるテレ朝の寺川俊平アナこそ“熱盛男”。ただ、狙ったのか、たまたまなのか、名前が似ている(アツノリとアツモリ)こともあって、稲葉=熱盛という認知が広まっているのも事実だ。  実際、7月17日に放送された『とんねるずのスポーツ王は俺だ!!2017夏の決戦スペシャル』(同)で、名物コーナー「リアル野球BAN」に出場した稲葉に対して、「“熱盛”見せてくださいよ」といった野次が飛び交い、試合終盤に稲葉のバットから決勝打が生まれると、『報ステ』と同じ熱盛ロゴが登場し、SNSはにぎわいを見せていた。  さて、ここから“稲葉篤紀、侍ジャパン監督就任”に話を戻そう。今回の報道を受け、「また監督経験のない人物が日本代表を率いるのか」といった批判的な声も一部からは聞こえてくる。稲葉はこれまで、『報ステ』出演を続けながら侍ジャパンの打撃コーチを務め、また、古巣であるファイターズで「スポーツ・コミュニティ・オフィサー」なる肩書でスポーツ文化振興の旗振り役を務めているが、純然たる指導経験は確かにない。  今春のWBCまで侍ジャパンを率いた小久保裕紀前監督も、同様に指導者歴がまったくない状況から代表監督に就任。結果としては目標の「世界一奪還」を果たせなかったこともあって、こうした声がやむことはないだろう。  一方で、SNSでの「熱盛ジャパン」の声を見るにつけ感じるのが、「これほど愛される代表監督は初めてなのでは」ということだ。  それもちろん、野球ファンから愛される、ということが第一義。そして、球界関係者からも稲葉に対しては否定的な声がほとんど聞こえてこない。むしろ人格者として知られ、あのイチローも「稲葉さんだから」と、かつて独占インタビューに応じたことがあった。球界から愛されている男が代表監督を務める……これほど頼もしいことはない。  実際に「熱盛ジャパン」の名称が定着することはないとは思うが、現役時代を振り返れば、「稲葉ジャンプ」の熱烈応援で、ファイターズファン以外にも広く認知され、引退する際には各球場で、敵チームのファンからも惜別の稲葉ジャンプが湧き起こったほど。侍ジャパンの試合でも「稲葉ジャンプ」が復活するとしたら、今まで以上に応援も盛り上がるのではないだろうか?  ちなみに、『報ステ』スポーツコーナーでは、この「稲葉ジャンプ」を元ネタに、稲葉が一週間で注目した選手を掘り下げる特集コーナー「週間稲葉ジャンプ」という、某少年漫画誌をモチーフにした新コーナーも今季から始まっている。「熱盛」といい「稲葉ジャンプ」といい、いろいろ攻めの姿勢を続ける『報道ステ』スポーツコーナーに、侍監督就任後も稲葉は出演を続けるのか? この点も、今後の大きな注目点になりそうだ。 (文=オグマナオト)

スポーツ番組にもユルさを! さまぁ~ず『さまスポ』に学ぶ、スポーツの多様性

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『さまスポ』テレビ東京
 これからの時代、スポーツにも「ユルさ」が必要……そんなことを考えさせられる事象が、ここのところ多い。  象徴的だったのは、スポーツ庁が示した「スポーツが嫌いな中学生を現在の半分に減らす」という目標設定に、各方面から反発の声が上がったこと。『久保みねヒャダ こじらせナイト』(フジテレビ系)で「体育への恨みつらみ川柳」なるコーナーを持つ久保ミツロウ、能町みね子、ヒャダインがその急先鋒だ。  そりゃあ反発するよ、と思う。そもそもスポーツ庁のいう「スポーツ」は体育の延長線上でしかなく、あまりに十把一絡げ。スポーツには<「する」スポーツ>もあれば<「見る」スポーツ>も<「語る」スポーツ>も、いろいろあるはずなのだから。その懐の深さこそがスポーツの魅力なのだ。 筆者個人としては熱闘や熱血も大好物なわけだが、別軸から攻める「ユルいスポーツ番組」が増えると、スポーツの楽しみ方はもっと柔軟に、多様性が出てくると思う。  そこでオススメしたいのが、テレビ東京系で4月から始まった『さまスポ』(毎週土曜夕方6時〜)。さまぁ~ず初のスポーツ番組だ。  さまぁ~ずの2人がさまざまなスポーツに体当たりで挑戦し、その魅力を学んでいく、というコンセプト。ただ、「体当たり」といっても、そこはやはりさまぁ~ず。ある意味、「熱血」とか「精神論」といったものと対極に存在しそうな2人を起用したところに、この番組の意義がある。一歩間違うとグダグダになりそうな……それでいてなぜか心地いい、さまぁ~ずの世界観がスポーツを題材にしても成り立っているのだ。  お笑い芸人がスポーツ番組を持つ、というのはもはや見慣れた光景。ただ、その多くは芸人としてのトークスキルやまわしの技術を生かして、スタジオでアスリートの素を引き出す、という企画が多かった。言うなれば、バラエティのフォーマットの中でスポーツやアスリートを扱う、というものだ。  一方の『さまスポ』は、あくまでも“スポーツ番組”を標榜。スタジオ収録ではなく、各競技の現場に出向き、アスリートの「技」や「身体」にスポットを当てていく。  実はテレビ東京、今もっともスポーツに力を入れている民放局、といっても過言ではない。先月末から今月頭にかけては「世界卓球×全仏テニス」の二大世界大会を生放送。卓球では、テレビ東京が今年放送した全番組の中で最高視聴率となる13.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)、5月29日から6月4日のゴールデンタイムの週間平均視聴率は8.6%を記録。1964年の開局以来、初の民放3位に輝いたことがニュースとなった。  ある意味、スポーツに社運を懸けているテレビ東京だからこそ、『さまスポ』におけるアスリートのキャスティングに妥協がないのも好印象だ。ここまで登場したのは、卓球・リオ五輪銀メダリストの水谷隼。レスリング・リオ五輪金メダリストの登坂絵莉と土性沙羅。プロバスケットボールBリーグのアルバルク東京。野球界のレジェンド・山本昌。プロボクシング・ロンドン五輪銅メダリストの清水聡……この豪華一流アスリートたちの「技」が見られるのだから、それだけでも十分楽しめる。  番組の製作総指揮を務めるのは、『モヤモヤさまぁ~ず2』でもさまぁ~ずとコンビを組む伊藤隆行。その伊藤が「ザテレビジョン」(KADOKAWA)のインタビューで、こんな言葉を述べていた。 《僕は、これからのテレビは『素直』がキーワードだと思っていて。素直に面白い、素直にすごい、というストレートな感性で番組を作っていかないと。今のテレビって、勝手にいろんな心配をしてヤスリで削っていっちゃうんですよ。万人に受けるように、どんどんおとなしい番組になっちゃう。だからそのための『勇気』も必要かもしれない。テレビに必要なのは『素直』と『勇気』ですね》 『さまスポ』も、まさに「素直」を軸にした番組。アスリートの技と身体を「素直」に訴求しているからこそ、さまぁ~ずのリアクションも生きてくるわけだ。  むしろ、今以上にアスリートや競技の持つ魅力だけで勝負してほしいほど。ボクシング回では、パンチがヒットするタイミングで“当たる音”を後から加えていたのは明らかだったが、そういった編集すら不要だと思う。その点は、もっともっと勇気を持った編集を目指してほしい。  というわけで、いま、スポーツ庁の方々に見てほしいのが『さまスポ』だ。なんなら、鈴木大地スポーツ庁長官のゲスト回なんてどうだろう。あえて今、バサロ泳法を学ぶさまぁ~ず、ちょっと面白いと思うのだが。 (文=オグマナオト)

スポーツ番組にもユルさを! さまぁ~ず『さまスポ』に学ぶ、スポーツの多様性

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『さまスポ』テレビ東京
 これからの時代、スポーツにも「ユルさ」が必要……そんなことを考えさせられる事象が、ここのところ多い。  象徴的だったのは、スポーツ庁が示した「スポーツが嫌いな中学生を現在の半分に減らす」という目標設定に、各方面から反発の声が上がったこと。『久保みねヒャダ こじらせナイト』(フジテレビ系)で「体育への恨みつらみ川柳」なるコーナーを持つ久保ミツロウ、能町みね子、ヒャダインがその急先鋒だ。  そりゃあ反発するよ、と思う。そもそもスポーツ庁のいう「スポーツ」は体育の延長線上でしかなく、あまりに十把一絡げ。スポーツには<「する」スポーツ>もあれば<「見る」スポーツ>も<「語る」スポーツ>も、いろいろあるはずなのだから。その懐の深さこそがスポーツの魅力なのだ。 筆者個人としては熱闘や熱血も大好物なわけだが、別軸から攻める「ユルいスポーツ番組」が増えると、スポーツの楽しみ方はもっと柔軟に、多様性が出てくると思う。  そこでオススメしたいのが、テレビ東京系で4月から始まった『さまスポ』(毎週土曜夕方6時〜)。さまぁ~ず初のスポーツ番組だ。  さまぁ~ずの2人がさまざまなスポーツに体当たりで挑戦し、その魅力を学んでいく、というコンセプト。ただ、「体当たり」といっても、そこはやはりさまぁ~ず。ある意味、「熱血」とか「精神論」といったものと対極に存在しそうな2人を起用したところに、この番組の意義がある。一歩間違うとグダグダになりそうな……それでいてなぜか心地いい、さまぁ~ずの世界観がスポーツを題材にしても成り立っているのだ。  お笑い芸人がスポーツ番組を持つ、というのはもはや見慣れた光景。ただ、その多くは芸人としてのトークスキルやまわしの技術を生かして、スタジオでアスリートの素を引き出す、という企画が多かった。言うなれば、バラエティのフォーマットの中でスポーツやアスリートを扱う、というものだ。  一方の『さまスポ』は、あくまでも“スポーツ番組”を標榜。スタジオ収録ではなく、各競技の現場に出向き、アスリートの「技」や「身体」にスポットを当てていく。  実はテレビ東京、今もっともスポーツに力を入れている民放局、といっても過言ではない。先月末から今月頭にかけては「世界卓球×全仏テニス」の二大世界大会を生放送。卓球では、テレビ東京が今年放送した全番組の中で最高視聴率となる13.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)、5月29日から6月4日のゴールデンタイムの週間平均視聴率は8.6%を記録。1964年の開局以来、初の民放3位に輝いたことがニュースとなった。  ある意味、スポーツに社運を懸けているテレビ東京だからこそ、『さまスポ』におけるアスリートのキャスティングに妥協がないのも好印象だ。ここまで登場したのは、卓球・リオ五輪銀メダリストの水谷隼。レスリング・リオ五輪金メダリストの登坂絵莉と土性沙羅。プロバスケットボールBリーグのアルバルク東京。野球界のレジェンド・山本昌。プロボクシング・ロンドン五輪銅メダリストの清水聡……この豪華一流アスリートたちの「技」が見られるのだから、それだけでも十分楽しめる。  番組の製作総指揮を務めるのは、『モヤモヤさまぁ~ず2』でもさまぁ~ずとコンビを組む伊藤隆行。その伊藤が「ザテレビジョン」(KADOKAWA)のインタビューで、こんな言葉を述べていた。 《僕は、これからのテレビは『素直』がキーワードだと思っていて。素直に面白い、素直にすごい、というストレートな感性で番組を作っていかないと。今のテレビって、勝手にいろんな心配をしてヤスリで削っていっちゃうんですよ。万人に受けるように、どんどんおとなしい番組になっちゃう。だからそのための『勇気』も必要かもしれない。テレビに必要なのは『素直』と『勇気』ですね》 『さまスポ』も、まさに「素直」を軸にした番組。アスリートの技と身体を「素直」に訴求しているからこそ、さまぁ~ずのリアクションも生きてくるわけだ。  むしろ、今以上にアスリートや競技の持つ魅力だけで勝負してほしいほど。ボクシング回では、パンチがヒットするタイミングで“当たる音”を後から加えていたのは明らかだったが、そういった編集すら不要だと思う。その点は、もっともっと勇気を持った編集を目指してほしい。  というわけで、いま、スポーツ庁の方々に見てほしいのが『さまスポ』だ。なんなら、鈴木大地スポーツ庁長官のゲスト回なんてどうだろう。あえて今、バサロ泳法を学ぶさまぁ~ず、ちょっと面白いと思うのだが。 (文=オグマナオト)

群雄割拠の土日深夜スポーツ番組 王者・上田晋也に挑むピース又吉&ビビる大木に「足りないもの」

群雄割拠の土日深夜スポーツ番組 王者・上田晋也に挑むピース又吉&ビビる大木に「足りないもの」の画像1
『追跡 LIVE! SPORTS ウォッチャー』(テレビ東京)
 土・日の深夜といえば、スポーツニュース番組の最激戦区だ。民放各局では昨年度からずっと、下記4番組がほぼ同時間帯でしのぎを削っている。 『Going! Sports&News』(日本テレビ系/土・日:23時55分~) 『S☆1』(TBS系/土:24時30分~、日:24時~) 『追跡LIVE! SPORTSウォッチャー』(テレビ東京系/土:23時〜、日:22時54分~) 『スポーツLIFE HERO'S』(フジテレビ系/土:24時35分~、日:23時15分~)  この春、改編期に合わせて4者4様の衣替えを済ませた。それぞれの変化と狙いを見ていきたい。

■タレントを排したTBS、あくまでもタレントで攻めるテレ東

 今回の改編期に合わせ、最も様相が変わったのがTBS『S☆1』だ。爆笑問題の田中裕二、小島瑠璃子のMC2人が卒業し、伊藤隆佑アナと上村彩子アナ、局アナだけの進行に切り替わった。  一見すると、予算削減? 規模縮小? と感じてしまうが、リニューアル初週は二夜連続でイチローに独占インタビュー。企画・構成は、イチローに関する著書も多いスポーツライター・石田雄太とあって、掘り下げ方も独自の視点も、実に素晴らしかった。  第一夜は「43歳の衰えぬ体」。第二夜が「常識を超えた打撃」。 (周囲からの「年齢による衰えがくるはず」という言葉に対して) 「『そうであってほしい』という解釈ですよね。これから僕の絶頂期が来るって、どうして考えられないんだろう」 (パワーに依存しない体作りについて聞かれ) 「随分遠回りはしましたけど、随分無駄なことはしましたけど、やっぱりそうなんだ、って」 と、イチロー節も全開だった。  2週目はマスターズ中継のために短縮放送となったが、1週目の濃度がこのまま続くのかはまだ読めない。ただ、単なる予算削減ではなく、タレントのギャラ分で良質な取材が増えるのならば、その狙いは大歓迎だ。  一方で、あくまでもタレントによる番組作りを進めているのがテレ東の『SPORTSウォッチャー』だ。これまではピースの2人がMCを務めていたが、ニューヨークに渡る(予定の)綾部祐二に代わって、ビビる大木が新MCに加わった。  ビビる大木といえば筋金入りの巨人ファンだが、初登場となった8・9日の放送でも、やはりというか案の定というか、メイン企画は巨人について。特に9日の放送では、ゲストに阪神ファンでおなじみの千秋を招いて「巨人・阪神戦」の特集を組むなど、MCありきの番組構成になっていた感は否めない。  なお、9日のスポーツ番組で、トップニュースで「体操・内村航平10連覇」を扱わなかったのは『SPORTSウォッチャー』のみ。スポーツニュースの主役はあくまでも「スポーツの結果」か「アスリート」であるべきはずなのだが……。新MCというかせに縛られた番組作りが今後どうなっていくのか、心配な点ではある。  同番組では、『やべっちF.C.』(テレビ朝日系)以降、スポーツ番組でもすっかりおなじみになったワイプ芸も多用されているわけだが、正直なところ、矢部浩之ほど効果的とは思えない。野球知識が豊富な大木と、サッカー元大阪府代表だったという又吉直樹。それぞれの強みがもっと番組作りに生きてくることを願うばかり。マニー・ラミレスに独占密着した特集企画「Human watcher」など魅せる企画もあるだけに、タレントに頼らない企画を、もっともっと深めてもらいたい。

■新コーナーで攻める『Going!』と『HERO'S』の明暗

 アナウンサー陣の交代はあったものの、メインMCは代わらず、新コーナーで新年度を迎えたのが、『Going!』(日本テレビ系)と『HERO'S』(フジテレビ系)だ。 『HERO'S』の新コーナーは「影乃英雄」。勝利を裏側で支えたもう一人のヒーローにも目を向けよう、という内容。とても真摯でいい企画のはずなのだが、現状、ちょっと地味な印象も否めない。そりゃ、あえて「影」を取り上げているのだから致し方ない気もするのだが、今後、「このコーナーで取り上げられたい」という選手が増えて定着してくると、より深みが増してくるはず。粘り強く続けてもらいたい。  一方、解説陣のキャラクターをうまく生かした新コーナーを展開しているのが『Going!』。土曜日は元阪神・赤星憲広による「入り込み解説」。日曜日は江川卓による「昭和の怪物・江川が選ぶ、この選手『買物(かいぶつ)』です」。企画・目線の面白さもさることながら、結局のところ、『Going!』が飽きない理由は、MC上田晋也のコメント力によるところが大きい。『SPORTSウォッチャー』のビビる大木も又吉も、用意されたカンペを“読んでいる”感がアリアリとわかる。だから、ワイプでのコメントも視聴者に響いてこないのだ。  現状、視聴率では圧倒的な支持を集めている日曜夜の日本テレビ。その流れもあって、『Going!』の盤石さは今後も続いていきそうだ。 ***  日曜日夜のスポーツ番組といえば、NHKの『サンデースポーツ』に、この春20周年を迎えたテレ朝『Get Sports』、サッカーなら『やべっちF.C.』 と、ほかにも固定ファンのいる番組がひしめいている。だからこそ、それぞれ独自の切り口で、もっともっとスポーツファンをうならせてほしい。TBSの「イチロー特集」しかり、テレ東の「マニー・ラミレス特集」しかり。志と取材力のある企画には、視聴者もきっと食いついてくれるはずだ。 (文=オグマナオト) 熱血!スポーツ野郎』過去記事はこちらから

群雄割拠の土日深夜スポーツ番組 王者・上田晋也に挑むピース又吉&ビビる大木に「足りないもの」

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『追跡 LIVE! SPORTS ウォッチャー』(テレビ東京)
 土・日の深夜といえば、スポーツニュース番組の最激戦区だ。民放各局では昨年度からずっと、下記4番組がほぼ同時間帯でしのぎを削っている。 『Going! Sports&News』(日本テレビ系/土・日:23時55分~) 『S☆1』(TBS系/土:24時30分~、日:24時~) 『追跡LIVE! SPORTSウォッチャー』(テレビ東京系/土:23時〜、日:22時54分~) 『スポーツLIFE HERO'S』(フジテレビ系/土:24時35分~、日:23時15分~)  この春、改編期に合わせて4者4様の衣替えを済ませた。それぞれの変化と狙いを見ていきたい。

■タレントを排したTBS、あくまでもタレントで攻めるテレ東

 今回の改編期に合わせ、最も様相が変わったのがTBS『S☆1』だ。爆笑問題の田中裕二、小島瑠璃子のMC2人が卒業し、伊藤隆佑アナと上村彩子アナ、局アナだけの進行に切り替わった。  一見すると、予算削減? 規模縮小? と感じてしまうが、リニューアル初週は二夜連続でイチローに独占インタビュー。企画・構成は、イチローに関する著書も多いスポーツライター・石田雄太とあって、掘り下げ方も独自の視点も、実に素晴らしかった。  第一夜は「43歳の衰えぬ体」。第二夜が「常識を超えた打撃」。 (周囲からの「年齢による衰えがくるはず」という言葉に対して) 「『そうであってほしい』という解釈ですよね。これから僕の絶頂期が来るって、どうして考えられないんだろう」 (パワーに依存しない体作りについて聞かれ) 「随分遠回りはしましたけど、随分無駄なことはしましたけど、やっぱりそうなんだ、って」 と、イチロー節も全開だった。  2週目はマスターズ中継のために短縮放送となったが、1週目の濃度がこのまま続くのかはまだ読めない。ただ、単なる予算削減ではなく、タレントのギャラ分で良質な取材が増えるのならば、その狙いは大歓迎だ。  一方で、あくまでもタレントによる番組作りを進めているのがテレ東の『SPORTSウォッチャー』だ。これまではピースの2人がMCを務めていたが、ニューヨークに渡る(予定の)綾部祐二に代わって、ビビる大木が新MCに加わった。  ビビる大木といえば筋金入りの巨人ファンだが、初登場となった8・9日の放送でも、やはりというか案の定というか、メイン企画は巨人について。特に9日の放送では、ゲストに阪神ファンでおなじみの千秋を招いて「巨人・阪神戦」の特集を組むなど、MCありきの番組構成になっていた感は否めない。  なお、9日のスポーツ番組で、トップニュースで「体操・内村航平10連覇」を扱わなかったのは『SPORTSウォッチャー』のみ。スポーツニュースの主役はあくまでも「スポーツの結果」か「アスリート」であるべきはずなのだが……。新MCというかせに縛られた番組作りが今後どうなっていくのか、心配な点ではある。  同番組では、『やべっちF.C.』(テレビ朝日系)以降、スポーツ番組でもすっかりおなじみになったワイプ芸も多用されているわけだが、正直なところ、矢部浩之ほど効果的とは思えない。野球知識が豊富な大木と、サッカー元大阪府代表だったという又吉直樹。それぞれの強みがもっと番組作りに生きてくることを願うばかり。マニー・ラミレスに独占密着した特集企画「Human watcher」など魅せる企画もあるだけに、タレントに頼らない企画を、もっともっと深めてもらいたい。

■新コーナーで攻める『Going!』と『HERO'S』の明暗

 アナウンサー陣の交代はあったものの、メインMCは代わらず、新コーナーで新年度を迎えたのが、『Going!』(日本テレビ系)と『HERO'S』(フジテレビ系)だ。 『HERO'S』の新コーナーは「影乃英雄」。勝利を裏側で支えたもう一人のヒーローにも目を向けよう、という内容。とても真摯でいい企画のはずなのだが、現状、ちょっと地味な印象も否めない。そりゃ、あえて「影」を取り上げているのだから致し方ない気もするのだが、今後、「このコーナーで取り上げられたい」という選手が増えて定着してくると、より深みが増してくるはず。粘り強く続けてもらいたい。  一方、解説陣のキャラクターをうまく生かした新コーナーを展開しているのが『Going!』。土曜日は元阪神・赤星憲広による「入り込み解説」。日曜日は江川卓による「昭和の怪物・江川が選ぶ、この選手『買物(かいぶつ)』です」。企画・目線の面白さもさることながら、結局のところ、『Going!』が飽きない理由は、MC上田晋也のコメント力によるところが大きい。『SPORTSウォッチャー』のビビる大木も又吉も、用意されたカンペを“読んでいる”感がアリアリとわかる。だから、ワイプでのコメントも視聴者に響いてこないのだ。  現状、視聴率では圧倒的な支持を集めている日曜夜の日本テレビ。その流れもあって、『Going!』の盤石さは今後も続いていきそうだ。 ***  日曜日夜のスポーツ番組といえば、NHKの『サンデースポーツ』に、この春20周年を迎えたテレ朝『Get Sports』、サッカーなら『やべっちF.C.』 と、ほかにも固定ファンのいる番組がひしめいている。だからこそ、それぞれ独自の切り口で、もっともっとスポーツファンをうならせてほしい。TBSの「イチロー特集」しかり、テレ東の「マニー・ラミレス特集」しかり。志と取材力のある企画には、視聴者もきっと食いついてくれるはずだ。 (文=オグマナオト) 熱血!スポーツ野郎』過去記事はこちらから

終わらないクルクル、強制退会メール……不具合だらけの「DAZN」が起こす“本当に恐ろしい問題”とは

終わらないクルクル、強制退会メール……不具合だらけの「DAZN」が起こす本当に恐ろしい問題とはの画像1
DAZN公式サイトより
 10年間で2,100億円という莫大な金額でJリーグの放映権を取得したイギリスのライブストリーミングサービスDAZN(ダゾーン)。月額1,890円(税込)で、サッカーだけでも伊セリエA、独ブンデスリーガ、仏リーグ1、ブラジル全国選手権など、数え切れないほどのコンテンツが視聴可能だ。他にも野球、バスケットボール、テニス、ダーツ、格闘技と、全世界のスポーツ全てを網羅できると話題になっている。  しかし、スポーツファンの期待を一身に受けたDAZNだったが、今シーズンJ1の開幕戦で不具合が相次ぎ、2試合が視聴不可能。これについてDAZNは謝罪会見を開き、特殊なエラーが生じたためであり、サーバーのキャパシティの問題ではないと釈明した。その後、ミスなのか故意なのかはハッキリしないが、退会ボタンが消えてしまうという不具合も発生している。  そして第2節が終了した4日、JリーグがDAZNは「J1、J2ともに第2節全試合のライブ配信、見逃し配信で不具合は発生しなかった」と発表した。しかし、本当に不具合は発生しなかったのだろうか? 「不具合とは何かという問題ですよね。確かに配信中止になった試合はありませんでした。しかし、ネット環境が完璧ではない利用者からは『読み込み中にすぐになってしまい、クルクル(進捗インジケータ)ばかり見せ続けられた』という声が多々上がっています。Jリーグの試合が行われるスタジアムに作られたDAZN特設ブースの大型テレビでも、ずっとクルクルが回っており、スタッフさんも気まずそうでしたよ」(スポーツライター)  さらにDAZNの問題は続く。一部の利用者に“退会完了メール”を送ってしまったのだ。これに関しては対応が早かったために事なきを得たが、Jリーグが開幕して2週間でこの不具合の数は多すぎる。本当にDAZNに任せて大丈夫なのだろうか? 「視聴環境自体は、さすがに良くなっていくはずです。他の国ではあまり聞かれない不具合ばかりですから。ですが、実は問題はそこではないんですよ。現在、DAZNはヨーロッパチャンピオンズリーグの放映権も、スカパー!から奪おうとしていると言われています。今シーズンからJリーグを奪われ、チャンピオンズリーグを奪われ、他のスポーツも放送されたのではなスカパー!はたまらないでしょう。スカパー!のスポーツチャンネルは廃れてしまうかもしれません。そうなると、Jは契約が切れる10年後、現在の年間210億円ではなく、DAZNにとんでもない安価で買い叩かれてしまうかもしれないんですよ。何せ競合相手がいなくなってしまうんですから。今は巨額のDAZNマネーでウハウハの日本サッカー界ですが、もしかしたら暗黒の未来が待っているかもしれませんよ」(同)  10年間で2,100億円という金額は、残念ながらJリーグでは採算が取れないと言われており、10年後にDAZNが同じ契約をしてくれるとは考えづらい。現在、大物外国人を獲得するなど、Jリーグには“DAZNバブル”が起きている。しかし、このバブルは将来的に日本サッカーを苦しめる10年間になってしまうかもしれない。 (文=沢野奈津夫)

当時の実況音源で蘇る、三浦知良の「サッカー人生で最も“重い”ゴール」

当時の実況音源が蘇らせた、三浦知良の「サッカー人生の中で最も重いゴール」の画像1
『神様に選ばれた試合』テレビ朝日
 イチローと三浦知良。年齢の壁を超えて光り輝く2人のスーパースターを特集したスポーツ・ドキュメント『神様に選ばれた試合』(テレビ朝日系)が5日に放送された。  過去にも、「田中将大 日本最後の15球」(2013年)、「PL対横浜 甲子園延長17回の死闘」(1998年)、「ジョホールバルの歓喜」(97年)など、日本スポーツ史に燦然と輝く名場面を取り上げ、当事者たちの証言を元に「この試合」「この一球」を振り返ってきた良質なスポーツ・ドキュメンタリー。不定期とはいえ、にぎやかしタレントも一切出ない番組をプライムタイムで放送するところに、テレ朝がスポーツにかける並々ならぬ決意を感じる。  今回の『神様に選ばれた試合』で取り上げたのは、第2回WBCで日本を世界一に導く決勝打を放ったイチローの苦闘。そして、先日50歳を迎えたカズと、日本サッカーの歩んできた道。特にカズ自身が「最も重いゴールとカズダンス」と語った11年の震災復興支援チャリティーマッチでのゴールについてピックアップしていた。  とても良質な番組だっただけに、細かな演出で気になる点があった。「実況」の扱い方についてだ。  イチロー編において、第2回WBC決勝戦映像が流れる際の実況の声は、テレビ朝日・清水俊輔アナウンサー。テレビ朝日が中継する日本シリーズでマイクを握るのはもちろん、前回のWBCでもテレビ朝日担当試合ではすべて実況を担当。テレ朝スポーツのエースだ。だが、連覇のかかった09年WBC決勝戦の中継はTBS。つまり、今回の番組で流れた清水アナの実況は「アフレコ」ということになる。  TBSの映像(実況)を使わなかった理由はいくつもあるのだろう。単純に権利関係かもしれないし、TBSの中継ではスペシャル・コメンテーターに清原和博を起用していたため、編集上の問題で使えなかった、という可能性も高い。  自局で中継していない場合、あとから実況をかぶせるというスタイルはよくあることだ。しかし、結果を知っているアナウンサーの声に緊張感が宿らず、結果として場面に入り込めなくなってしまうケースが多々ある。  その点、清水アナのアフレコ実況は、適度な緊張感をにじませるものだった。さすがはテレ朝のエース。だが、違和感を覚えたのは「実況:韓国も守る!名勝負になりました」といった、実況を強調したテロップが何度か流れたこと。この実況は当然、試合のときにはなかったもの。目に余る実況テロップはなかったとはいえ、スポーツ・ドキュメンタリーとしては過剰演出になっていた、ともいえる。  一方、「当時の実況音源」にこだわっていたのが三浦知良編だった。「ドーハの悲劇」「ジョホールバルの歓喜」「震災復興支援チャリティーマッチ」の3試合に焦点を絞ってカズが歩んできた道を振り返ったわけだが、それぞれの試合で流れていた実況は、ラジオのニッポン放送が実際に中継した音源(ドーハとジョホールバルは師岡正雄アナ、震災復興マッチは煙山光紀アナ)だった。  93年の「ドーハの悲劇」を中継したのはテレビ東京。地方出身だった筆者の地域でテレビ東京は映らず、ラジオにくぎ付けにならざるを得なかった。そんな私にとって、あの試合の思い出は師岡アナの声で記憶されている。そんなスポーツファン、サッカーファンは少なくないはずだ。  かつてのヒット曲を聴くと当時の思い出が脳裏に甦る……という経験は多くの人があるだろう。同じことが、スポーツファンにとって実況アナウンサーの声で起きることがある。だからこそ、こういった振り返りのスポーツ・ドキュメントでは「当時の実況音源」を大切にしてほしいのだ。サッカー編でできたのだから、野球編でだって方法はあったはずだ。  震災復興支援チャリティーマッチの実況を担当したニッポン放送の煙山アナウンサーに以前、あの試合における実況の意味を聞いたことがある。 「『復興支援チャリティーマッチ』って、テレビで見た人とラジオで聴いた人とではまったく違う印象なんですよ。テレビはたぶん、ああいう試合だし、一部では開催自体に批判もあったから、ちょっとかしこまってやったんです。でも、ラジオのほうは僕がもう入場時から半泣きになっていて、試合中も泣きそうになりながらしゃべっていて。ピッチレベルの音もサポーターの声もしっかり響いて、ものすごく盛り上がった試合でした。そんなふうに、同じものを伝えても違うものになる……そこが、ラジオのひとつの腕の見せどころなんじゃないかと思います」  今回の『神様に選ばれた試合』では、そのラジオの魅力と映像の持つ説得力とが見事にかけ算となり、カズの偉大さをより際出たせていたと思う。  それだけに、番組最後で「なぜ?」と思うことがもう1点あった。エンドクレジットの「協力」にニッポン放送の名がなかったことだ。いや、私が気にすることではないのかもしれないが、もっと「実況の著作権」について大切にしてほしい。スポーツ紙を出すときに紙名と日付を出すように、実況についてもどこかでクレジットを出してもいいはずだ。 (文=オグマナオト) ■『熱血!スポーツ野郎』過去記事はこちらから

“日テレ・スポーツの顔”上田晋也に期待したい、障害者スポーツの伝え方

日テレ・スポーツの顔上田晋也に期待したい、障害者スポーツの伝え方の画像1
BS日テレ『ストロングポイント』番組サイトより
 くりぃむしちゅー・上田晋也の、“日テレ・スポーツの顔”化が止まらない。  週末の『Going! Sports&News』に、未来のメダリストを取り上げる『上田晋也の日本メダル話』、24日放送の「金曜ロードShow!」枠では、スポーツエンタテインメント特番『人生が二度あれば 運命の選択』で大トリのナビゲーターも務めた。  そんな上田が関わる日テレ系スポーツ番組で、もっと知られるべきだと思うのが、BS日テレの『ストロングポイント』(毎週土曜17時30分~)だ。上田がナレーションを務める「民放BS初のレギュラー障がい者スポーツ番組」が、この2月末で1周年を迎えた。  年々、注目度が高まっているパラスポーツということもあって、地上波でも『PARA DO!』(フジテレビ系)や『勇気のシルシ~パラアスリートの挑戦~』(TBS系)といった番組が始まっている。だが、こちらはどちらも5分に満たないミニ番組。その中にあって、毎週30分、一人のアスリートをじっくり掘り下げる『ストロングポイント』は、パラスポーツを知る手がかりとして貴重な存在だ。  パラスポーツはクラス分けが複雑だったり、個々の抱える障害がどう競技に影響を及ぼしているのか、言葉では伝わりにくい場合も多い。だからこそ、ルール解説から含め、丁寧に競技特性を伝えてくれるのも、この番組の魅力のひとつといえる。  ただまあ、気になる点もある。良くも悪くも、上田のナレーションだ。どうにも「カッコつけすぎる」のだ。ちょっと想像してほしい。もはや懐かしい「うんちく王・上田」の決めゼリフのときのような、あのドヤ顔をしているに違いないという低音ボイスで番組が始まる。もういきなり重い。そこから少しずつ冗談も交えながら、軽いナレーションに切り替わっていくのだが、番組内容やコンセプトがいいだけに、入り方はもうちょっとどうにかしていただきたい。  それと比べて、ごくまれにあるロケの回は、もう抜群に面白い。パラアスリートのスゴさを、上田ならではの純粋な驚きで表現してくれる。  筆者自身、パラアスリートに取材する機会があるのだが、彼ら・彼女らは普段なかなか注目されないからこそ、語りたがりであることが多い。そして、健常者アスリート同様、世界で戦っている選手たちは常軌を逸した「超人性」を秘めている。その「素の部分」と「超人性」を的確に表現できるのは、例えツッコミの元祖ともいえる上田ならではだ。  特に1月放送のブラインドサッカー回は、その魅力が顕著だった。この回では、上田のほかに横浜F・マリノスの新10番・齋藤学がロケに参加し、上田とともにブラインドサッカーに初挑戦。期待通りのズッコケプレーを見せる上田に対して、齋藤は目隠し状態でも足元の感覚だけでスムーズなドリブルを披露するという、J屈指の技術の高さを見せつける形となった。そして、その齋藤も舌を巻く、ブラインドサッカー選手の「視覚に頼らない空間把握能力」という異能ぶり。ひとつの放送で、パラアスリートとサッカー日本代表の技術力を証明する形となったのだ。  加えて、齋藤がミスをすると、おなじみ「ぶはははは!」の大爆笑。障害者番組で、ここまで笑いがあふれるのは珍しい。  障害者をテーマにする番組は、往々にして真面目すぎたり、変に「感動」の方向性に持っていこうとしがちだ。もちろん、それはそれで正しいのだが、時には、とことんふざけた一面を見せてもいい。『ストロングポイント』はそのへんのバランス感覚にも優れているから、毎週見ていて、変におなかいっぱいにならない。上田のバランス感覚の妙もあるはずだ。  だからこそ、上田晋也にというか、日本テレビに期待したいことがある。  ひとつは、もっと『Going! Sports&News』でもパラスポーツを取り上げてほしいということ。もちろん、相対的な注目度からいって時間を割けない、というのはわかる。だが、19日の『Going! Sports&News』では亀梨和也の4月からの新ドラマの話題をわざわざニュース枠で取り上げ、上田が「スポーツ番組ですけどぉ!」と声を荒らげる場面があった。  上田の発言はもちろんポーズではあるだろうが、上田の憤りを「その通り」と思った視聴者も多いに違いない。だって、その時間で、もっとほかの競技について扱うことができるから。  特にこの日は、パラアスリートの中では知名度の高い成田緑夢と山本篤が、障害者スノボ全国大会に出場。成田が連覇を達成したニュースは、NHK『サンデースポーツ』も取り上げる大きなネタだった。山本に至っては『ストロングポイント』の最多出演者。上田ならではのコメントだって出せたはずだ。プロ野球のペナントレースが始まれば、もっともっと野球一辺倒になっていくのが目に見える『Going! Sports&News』なだけに、オフシーズンの今くらいは、適度なバランス感覚を保持してほしい。  そしてもうひとつ、切実に期待したいのが『24時間テレビ』における障害者の取り上げ方だ。「感動ポルノ」と批判されて久しい『24時間テレビ』にこそ、『ストロングポイント』の真摯な番組作りを見習ってほしい。なんならこの番組をベースにして『24時間テレビ』をやってみてはどうだろうか? いや、本気で。 (文=オグマナオト)

『アメトーーク!』は物足りなかった!? 相撲ブームの今こそ再注目したい、ナイツ塙の相撲愛

『アメトーーク!』は物足りなかった!? 相撲ブームの今こそ再注目したい、ナイツ塙の相撲愛の画像1
マセキ芸能社公式サイトより
「大谷翔平スゴイぞ芸人」「スクール☆ウォーズ芸人」に続いての、スポーツネタ3連発となった『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「相撲大好き芸人」(12日放送)。新横綱・稀勢の里ブームに沸く大相撲だが、番組企画は初場所での稀勢の里優勝前だったというから、そのあたりの時流を読む巧さはさすがだ。  芸人たちの話術以上に、相撲の「画力」で見せていた番組構成は非常に好感が持てた。相撲ライトユーザーも、コアなファンも、双方楽しめる内容になっていたのではないだろうか。やはり『アメトーーク!』は、マニアックなネタを大衆向けにマイルドにしていく企画よりも、大相撲のような誰もが知ってはいるけれど……というネタに真正面から切り込んでいくほうが面白い。  それはさておき、12日の放送では、大相撲中継でゲスト解説を務めることもあるデーモン閣下、そして曙×イチロー、白鵬×旭鷲山の知られざるエピソードを語ったキンボシ西田の2人の独壇場だったように思う。  それだけに、リーダーを務めたナイツ・塙宣之のおとなしさが、ちょっともったいなく思えてしまった。もっと塙の“相撲話芸”を披露してほしかったのだ。放送でカットされている分はあるだろうし、リーダーとして、ほかの芸人(特に、普段ラジオなどで名前だけはやたらと紹介しているキンボシ西田)の話を引き出そうとしていた部分はあるだろう。だが、特にこの1年、芸能界で最も相撲人気に貢献していたのは塙宣之であり、ナイツだと思う。  たとえば、ちょうど1年前、2016年2月放送の『炎の体育会TV』(TBS系)では「大相撲が100倍楽しくなるスゴ技映像ベスト3」を熱烈プレゼン。小錦の突っ張り、琴奨菊のがぶり寄り、霧島のうっちゃりについて、映像とともに熱く語り倒していた。  5月29日の『ワイドナショー』(フジテレビ系)では、「相撲界で話題の宇良に迫る」と題して、十両・宇良の珍しい決まり手を、なぜか塙が解説。塙といえば、「ご存じでしょ」とばかりに浅草芸人の名を次々連ねるのがおなじみだが、この日の『ワイドナショー』では同様に、「ご存じでしょ」と十両力士の名を笑いなしで語り続け、「情報量が多すぎる(笑)。宇良君に詳しすぎて笑ってしまう(笑)」という松本人志のコメントを引き出していた。  年末放送のNHK特番『大相撲この一年』では、北の富士、舞の海と並んで角界の1年間を総まとめ。ご意見番2人に負けず劣らずの相撲知識を披露していた。また、相撲における優勝の難しさと、漫才の賞レースで勝つことの難しさについて問われた際には「優勝候補といわれると、自分をよく見せようと思っちゃって、そうじゃないリラックスしているコンビに優勝をかっさらわれるとかありますね。ただ、優勝したいという気迫もないと優勝できない」とコメント。さすがの分析力だった。  ついでに言うと、BS・CSの優れた番組や企画に贈られる「衛星放送協会オリジナル番組アワード2016」のバラエティ部門最優秀賞は、塙がナレーションを担当するフジテレビONE『大相撲いぶし銀列伝』だ。  塙が素晴らしいのは、相撲への愛情や敬意が常に感じられる点はもちろん、番組で披露する相撲話に、“かぶりネタ”が少ない点にある。 『アメトーーク!』芸人に少なからずあるのが、「違う番組でしゃべってたネタ、ここでもまた使ってるな」という場面だ。一度目は面白くても、何度も聞かされると飽きてしまうもの(もっともこれは、芸人の問題よりも、番組サイドの「あの面白い話、またお願いします」というオーダーもあったりするのだろうが)。だが、番組ごとに少しずつ視点を替え、取り組みを替え、力士を替えて相撲の魅力を語る塙を見ていると、その話芸の巧みさと、大相撲の奥深さを知ることができる。  加えてここ最近は、バラエティやスポーツ系番組以外、つまり本業の寄席やテレビ番組で披露する漫才でも「相撲ネタ」が増えてきた印象がある。かつて、「野球はなんにでも例えられる」と語っていた塙だが、同様に、相撲や力士もなんにでも例えることができるようだ。そして、もちろん、この相撲漫才がすこぶる面白い。地方の寄席では、その土地ごとに出身力士の話題を枕に使い、場を盛り上げているという。  新横綱・稀勢の里の誕生に沸く今、やっと来た相撲ブーム。この時流に合わせて、ナイツ塙の相撲ネタ・相撲漫才を披露する機会が、もっともっと増えてほしいと願うばかりだ。 (文=オグマナオト) ◆「熱血!スポーツ野郎」過去記事はこちらから◆