
背中に背負ったテープレコーダーから音楽を流し、マイクを持って歌いながら哀れみを請う母子
中国の首都・北京の地下鉄では最近、子どもの物乞いが増えていると、複数の中国メディアが伝えている。この子どもたちのほとんどが中国内陸部にある甘粛省の山間部から来ており、7月になって学校が夏休みに入るとともに、母親と一緒に北京にやってきて物乞いをしてお金を稼いでいるのだという。
「そういえば、夏になってから地下鉄の電車内で物乞いをする子どもの数が増えましたね。下は小学校低学年くらいから、上は中学生くらいまで。一人だったり兄弟一緒だったり。母子でやっているのも見かけます」(北京在住の商社系駐在員)

乗客の前でお辞儀をする女の子。しっかりと物乞いとしての訓練を積んでいるようだ
地下鉄車内での物乞いというと、弱々しく歩いて乗客の前で立ち止まっては小銭の入った缶カラを振ってお金を要求し、無視されると悲しげに立ち去るというのが普通だが、この子たちのやり方はもっとアグレッシブ。座席に座っている乗客の前でお辞儀をしたり、ひざまずいたりして哀れさを演出。それでもお金を恵んでもらえないと、乗客の膝を抱え込み、お金をもらえるまで離さないという強行手段に出る子もいるようだ。

同じ村から来た複数の母子が、助け合いながら物乞いをしている。20代前半の若い母親も多い
北京の地下鉄では、今年5月から地下鉄内で物乞い行動をした者には最高で1,000元(約2万円)の罰金を科す規則が制定されたが、物乞いの数は一向に減る気配を見せないという。
「北京青年報」の報道によると、この子たちは親と一緒に北京に出てきており、中には3年連続して夏休みに北京に来ては物乞いをしている子もいるという。大人が物乞いで捕まると罰金を科せられる危険性があるが、子どもの場合、捕まってもすぐに無罪放免になることが多いからだ。親はその間、地下鉄路線内のどこかの駅で、子どもたちが稼いでくるのを待っている。
彼らは夏休みが終わって新学期が始まる頃には田舎に戻り、また学校に通い始める。いわば夏休みのアルバイトのようなものだが、遊び盛りの子どもたちが夏休みにこんなことをしなくてはならないのは、家が貧しいから。山間部の農村では、一家がやっと食べていけるくらいの収入しかない。そこで、子どもの学費や生活費を稼ぐために、夏休みになると母子で北京にやってきて物乞いをするのだ。

こうされてしまったら、もうお金を渡すしか方法がない
ただ、1日の稼ぎは50~60元(約1,000~1,200円)で、中には月に1万元(約20万円)以上稼ぐツワモノもいるというから、彼らにとってはなかなか割のいいアルバイトといえそうだ。
「都会に住んでいる子どもたちは、夏休みともなれば親に旅行に連れていってもらったりするのに、辺ぴな農村に生まれたというだけでロクに学校にも通えない子もいる。あまりにも貧富の差が激しすぎます。だからつい、物乞いの子にお金をあげたくなってしまうこともあるのですが、物乞いだけで1万元を稼ぐとか、お金は大人に巻き上げられるだけなんていう話も聞いているから、躊躇してしまいます」(前出・駐在員)
日本に来て爆買いしている中国人などというのは、ほんの一部の人たち。その豊かさが中国全土に行き渡るのは、まだまだ先のようだ。
(文=佐久間賢三)