
“硬座”の車内。3人がけ座席の真ん中など、圧迫感がハンパではない
中国は広い。そのため都市間の移動も長時間にわたることが多く、乗車時間が30時間を超える2泊3日の長距離列車などざらにある。もちろん飛行機に乗ればひとっ飛びなのだが、お金に余裕がない人は、運賃が安い列車に乗らざるを得ない。
「硬座」と呼ばれる二等座席などはリクライニングもなく、しかも対面式のボックス席なので足を前に伸ばすこともできず、ゆっくり寝ることもできない。列車という密閉された空間に長いこと押し込まれ、ただただ時間が過ぎていくのを待つのみ。列車内での盗難も相次いでおり、気を緩めることすらできない。

北京から重慶までは距離にして2078km、約24時間30分かかる。料金は硬座で229元(約4350円)
そんな中、北京から重慶に向かう列車の中で、乗客同士の大乱闘が起こったと、9月19日の地元紙「重慶晨報」などが伝えた。
報道によると、北京を出発して6時間ほどたった夜9時ごろ、硬座に座っていた20代の女性、張さんは異臭を感じた。見ると、目の前に座っている中年女性が靴を脱いでいた。あまりの臭さに我慢できず、張さんは靴を履くよう頼んだのだが、中年女性は聞く耳を持たなかった。
そこで張さんは仕方なくティッシュを丸めて鼻に詰めたのだが、それが中年女性の怒りを買ったようで、いきなり口汚く罵り始めた。侮辱された張さんが自分のクッションを相手に投げつけると、中年女性が予飛びかかってきて、張さんの髪の毛をつかむなど、取っ組み合いのケンカになった。
知らせを受けた乗警(列車内の治安維持を担当する警察官)によってこのケンカはすぐさま収められ、事情聴取後、それぞれ自分の過ちを認め、中年女性が張さんに1,500元(約3万円)の迷惑料を支払うことで解決した。

寝台車は、ベッドに横になって眠れるので比較的快適。スペースもゆったりしている
「中国の長距離列車はワキガ臭や加齢臭、子どもの糞尿臭が蔓延しています。ここに、さらに屠畜された直後の豚の足、田舎の母の手作り料理、鼻を突く干物や謎の薬酒などなど、異臭が重なり、カオス常態です。思い出しただけで吐き気がしてきました……」(中国大陸を旅した日本人バックパッカー)
イライラした乗客同士によるケンカはレアなケースのようだが、それでも、長時間にわたる緊張感により、列車を降りたとたんに精神に異常を来す人も増えている。本サイトでも、いきなり駅で服を脱ぎだした若い女性の事件をお伝えしたばかり(
参照記事) 。中国の長距離列車の旅は、まさに苦行の旅でもあるようだ。
(文=佐久間賢三)