
警察に踏み込まれた売春の現場
中国東部の江蘇省泰州市で、15の省と市にまたがる巨大な売春紹介ネットワークが警察によって摘発された。容疑者の数は3,500人以上、金額は数千万元(数億円)にも及んでいるという。「新華報業ネット」(1月7日付)などが伝えた。
今回の摘発のきっかけは、まったく別の事件に関する捜査からだった。昨年2月、上海に住む女性が、泰州市に住む姪っ子の夫に1,700万元(約3億円)をだまし取られたとして、同市の警察に訴え出た。その男は姿をくらましていたのだが、3月になって妻がまもなく出産するという時に、こっそり戻ってきたところを詐欺罪の容疑で逮捕された。

昨年3月に逮捕された“外囲女”の喬聖依などは「準ミス・ワールドに選ばれた」という記事まででっち上げ、ネットに掲載していた
警察が男を取り調べたところ、1,700万元は高利貸しからの借金の返済や高級車の購入、そして女性タレントやファッションモデルの買春で使い切ってしまったという。この“女性タレントの買春”について警察がさらに問いただしたところ、この男は半年の間に160人以上の女性タレントやモデルを相手に買春し、280万元(約5,000万円)も使ったという。それを突破口に警察は捜査を進め、数カ月後、中国各地にまたがる巨大な売春紹介ネットワークを摘発することに成功したというわけだ。
逮捕された女性たちは、実際には本物のタレントでもモデルでもなく、いわゆる「外囲女」と呼ばれる女性たちだった。この外囲女というのは、タレントやファッションモデルを自称しているが、実際のところはそれをウリにして高額で売春を行っている女性たちのこと。モデル業界の外囲(周辺)でこっそりとうごめいていることから、「外囲女」と呼ばれるようだ。
この「外囲女」について、中国事情に詳しいフリーライターの吉井透氏は、こう説明する。

でっち上げの写真。いかにも本物っぽく、これにだまされた人も多いという
「“外囲女”という言葉が世間に知られるようになったのは、2013年。中国南部のリゾート地・海南島で金持ちのボンボンたちがパーティーを開いて若い女性たちを相手に乱痴気騒ぎを起こしていたことが明るみになり、この時の女性たちというのが、いわゆる“外囲女”だったんです。半年くらい前から再びニュースでたびたびこの言葉を見かけるようになったので、またぞろこういった売春形態がはやってきたのかもしれません」
どうやら最近は、この外囲女の世界に自ら望んで飛び込んでいく女性が多いようで、今回捕まった外囲女の一人などは、名門大学を卒業したばかりの才女だった。彼女の学生時代の成績は抜群で、そこそこ裕福な家のお嬢さんだったが、周りの同級生たちはもっと金持ちで、彼女らが高級スポーツカーに乗って通学しているのを見て嫉妬。もっと金持ちになってスポーツカーに乗りたいという気持ちから、外囲女の世界に入っていた。泰州市の警察によると、この女性のように見栄や虚栄心から高学歴の女性が外囲女になるケースも少なくないという。
売春ネットワークの中には、女性に韓国で整形手術を受けさせて有名タレントに似た顔立ちにさせるだけではなく、そのタレントの名前と写真が入った身分証明証まで偽造して、女性に持たせて商売させるところも。さらには、ニュース記事をでっち上げ、ネットで配信、女性を本物のタレントやモデルのように見せかけるケースもあるという。
何が本物で何がニセモノなのかわからない、中国の夜の世界。それは中国らしいともいえるのだが、いずれにしても、こういった女性にうかつに手を出さないほうが身のためなのは確かなようだ。
(取材・文=佐久間賢三)