【C84】規制反対にコミケも動く──夏コミ会場でマンガ規制反対をテーマに講演会開催が急遽決定

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東京ビッグサイト
 児童ポルノ法改定問題などをめぐり、危機感の高まるマンガやアニメの表現の自由。8月1日、コミックマーケット準備会が夏コミ2日目の8月11日に、アメリカで漫画表現の自由を求めて活動している「コミック弁護財団(CBLDF)」の事務局長であるチャールズ・ブラウンスタイン氏を招いて、講演会「日本では何ができるのか――北米でのコミック表現規制とCBLDFの取組」を開催することを発表した。コミックマーケット準備会が、会期中にこうした催しを行うことは前例がない。  ブラウンスタイン氏は、アメリカでコミック雑誌編集者・ライターとして活動。また、コミコン・インターナショナルのプログラミングディレクターを務めるなど、アメリカのコミック文化振興に尽力する人物である。彼が事務局長を務める「コミック弁護財団(CBLDF)」は、作者や書店、読者や表現の自由を守るための非営利団体である。これまで、おとり捜査によって逮捕されたコミック店主の弁護をはじめ、検閲やさまざまな側面で起こるマンガ・アニメへの権力の抑圧に抗するべく、実効性のある活動を行っている。ブラウンスタイル氏が来日し、講演するのは昨年に続いて2回目のことだ。今回の講演では、アメリカにおけるマンガなどの表現規制の現状と、それに対する「コミック弁護財団(CBLDF)」の取り組みが話される予定だ。  コミックマーケット準備会では「サークル・一般を問わず、一人でも多くの参加者にお集まりいただければと考えております」としている。  また、コミケ会期後の8月13日には、文京シビックセンターにて、これまでも表現の自由をテーマにシンポジウムを開催してきたNPO法人うぐいすリボンの主催で「マンガ文化の自由を考える国際シンポジウム」が開催される。  こちらは、ブラウンスタイン氏のほか、全米反検閲連盟・事業担当役員のスヴェトラーナ・ミンチェバ氏が「性的ファンタジーに対する法的制限は認められるべきか-合衆国とその他の地域における歴史的、法的、政治的な視点から考察する」の演題で講演する予定だ。  TPPから児童ポルノ法改定問題まで、マンガ・アニメ文化は危機に晒されているといわれるが、新たな規制に反対する声がイマイチ盛り上がりに欠ける状況は、変わっていない。今回の2回にわたる講演を契機に、状況は変化するのだろうか。 (文=昼間たかし) <集会案内> 日本では何ができるのか――北米でのコミック表現規制とCBLDFの取組 チャールズ・ブラウンスタイン氏講演会 日時:2013年8月11日(日)17:00~18:00 会場:東京ビッグサイト西アトリウム http://www.comiket.co.jp/info-a/C84/lecture/ マンガ文化の自由を考える国際シンポジウム 日時:平成25年8月13日(火)13:00~17:00 会場:文京シビックセンター26階・スカイホール http://kokucheese.com/event/index/104499/

「人権侵害だから、本のタイトルも教えない」閲覧禁止の児童ポルノ開示請求に対し、国会図書館から返答

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 いよいよ本格的に、規制が強化される形での改定が危惧される児童ポルノ法。この法律が現行でも抱えている最大の問題点が、「そもそも児童ポルノとはなんなのか?」という定義。全裸はまずいのか? あるいは、水着を着ていてもまずいのか? 基準は明確ではない。そして「これが児童ポルノですよ」という指標になる現物を見ることはできない。販売や提供が禁じられている以上、児童虐待などの調査目的でも、児童ポルノとされるものを、容易に見ることはできないのだ。  現在、児童ポルノとされている書籍を最も多く収蔵しているのは、国立国会図書館だと考えられる。ここには、納本制度によって収蔵されたものが多数存在するからだ。  しかし、収蔵された児童ポルノと思われる書籍は、閲覧することはおろか、存在すら確認することはできない。  その理由は2004年、法務省が国会図書館に対して、児童ポルノとされ得る蔵書を閲覧する行為が、提供の罪に当たる可能性があると指摘したためだ。これを受け、国会図書館は05年から閲覧制限を開始。06年には内規を設定し、検索からも完全に排除したのだ。過去の報道によれば、国会図書館が閲覧禁止にしている蔵書は写真集118点と雑誌2タイトルだとされる。  閲覧はおろか、検索からも排除されたことは、むしろ悪影響しか及ぼしていない。タイトルもわからなければ、一体どういったものが児童ポルノに当たると国会図書館が判断しているのか、まったく見えないからだ。そして、その判断が妥当かも検証することはできない。  児童ポルノ法改定問題がにぎわい始めていた5月、筆者はタイトルだけでも確認すべく、国会図書館にアポイントメントを取った。  筆者の要望は2点。ひとつは、閲覧禁止にしている蔵書の書誌データ。もうひとつは、該当する蔵書の閲覧請求である。  対応したレファレンスの担当者は、こちらの要望に、明らかに戸惑っていた。いわく、「そういうお問い合わせは初めてです」という。何度も電話を保留にされた挙げ句、先方からの回答は、 「閲覧禁止にしているもののリストはありません。情報公開請求してください」 とのことであった。これを受け、早速、情報公開請求を求める書類を送付した。一度、開示決定の延長を知らせる書類が届き、待たされること2カ月あまり。ようやく届いた開示通知書の内容は、驚くべきものだった。  簡単に述べれば「決定過程の会議の資料は公開する。だが、閲覧禁止図書は閲覧させないし、書誌データを教えることはできない」というものだったのだ。  文書の中で、国会図書館は書誌データなどを公開できない理由を次のように述べる。 「被写体となった児童の人権への配慮は言うまでもなく、全国のほかの図書館で同様の措置が取られることを期待するものではないこと、出版社等の過剰な自主規制等を促す目的ではないこと、利用制限措置が決定された資料であっても、概ね3年ごとに再審査(見直し)を行った上で利用制限延長の要否を決定していること等が挙げられる」  さらに「本件書誌情報を一覧できる形で公表することにより、さまざまな介入を招き、利用制限措置の要否に関する意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある」ともしている。  閲覧不可は、想定内(そもそも、情報公開請求は事務文書に対するもので蔵書は対象外)だったが、まさか書誌データも公開しないとは、驚くばかりだ。  この文書からみるに、国会図書館は自分たちが閲覧禁止図書のリストを公開した時の弊害を、非常に気にしていることがわかる。その背景には、国会図書館自体も、法務省からの罪に問われる「脅し」を受けて、仕方なく導入しているものであり、ほかの図書館が同様の措置を取ることを危惧している事情もある。  国会図書館がこのような措置を取らざるを得ないのは、児童ポルノの定義が曖昧なままで放置されているからにほかならない。  実のところ、国会図書館では閲覧禁止にしている蔵書に掲載されている写真は、雑誌などにも転載されている(閲覧禁止なので、あくまで推測である)。それらの雑誌に掲載された写真には、堂々と18歳未満であることが記述され、性器に修正が施されていないものも含むにもかかわらず、閲覧禁止にもなっていないし摘発された事例もない。そして、それらの雑誌は国会図書館でも自由に閲覧できるという矛盾を抱えていたりする。  確かに興味本位で閲覧を求める人もいるかもしれないが、国会図書館が、児童ポルノとされる蔵書の閲覧を禁止するばかり、書誌データを公開しないのは、児童ポルノが何かを知る機会を奪うことになる。何が児童ポルノか妥当な判断基準がないのに禁止とすることは、むしろ児童の権利保護にとっては有害でしかないだろう。今後も、筆者は書誌データの公開と閲覧を求めて取材を進めていく予定だ。 (取材・文=昼間たかし)

規制強化へ大きく前進……? 参院選・自民党圧勝で新段階に入った児ポ法改定問題

jipoposter0721.jpg  自民党の圧勝に終わった参院選投票日を前にした7月16日、コミックマーケット準備会と全国同人誌即売会連絡会は、児童ポルノ禁止法改定案について、提出者の自民党の高市早苗政調会長に対して陳情を行った。  陳情には、全国同人誌即売会連絡会の世話人である中村公彦氏(コミティア実行委員会代表)と、コミックマーケット準備会共同代表・安田かほる氏、日本SF大会関係者も同行。あらためて「政府は、児童ポルノに類する漫画等(漫画、アニメ、CG、擬似児童ポルノ等を言う)と児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究を推進する」とする、附則第二条への反対の意思を伝えた。  報告によれば、高市政調会長からは「『児童ポルノ禁止法』は、そもそも実在児童の保護を目的としたものです。単純所持については改定を進めていきますが、漫画・アニメ・ゲームなどに関する部分については今後、自民党・公明党の間で新しく話し合いを行い、いただいたご懸念のないよう、検討します」との回答があったという。  今回の陳情は、報告されていることがすべてである。関係者も「報告されていること以上に語るべきことはない」という。  では、参院選で自民圧勝が予測された投票直前に、陳情が行われた目的とは何か? それは、ひとえに参院選後の状況を見据えた動きだと理解することができる。  衆参両院で与党が絶対多数を得たことによって、児童ポルノ法改定問題は規制強化の方向へ大きく前進した。今年4月に、自民党が新たに改定案を提出する意向を示してから、規制に反対の声を上げる人々による与党への働きかけは強くなった。  市民団体やNPOなどとの対話をあまり重視しない自民党に対して、門戸を開けることはかなり至難の業。しかし、漫画家の赤松健氏の行動をはじめ、成果は確実に出てきている。実のところ、今回のコミックマーケット準備会らの陳情や赤松氏の活動は、さまざまな働きかけの中の、ほんの一握りの部分に過ぎない。水面下では、さまざまな活動が続いているのである。  しかし、それでもなお規制の勢いを押しとどめるのは難しい。今、児童ポルノ法改定問題で規制に反対する人々が危惧するのは、大きく2点である。一つが「児童ポルノ」そのものの所持を禁止する、「単純所持」禁止の導入の問題。もう一つが、付帯事項に記載された、3年後をめどに漫画やアニメなどの創作物が、実際の事件に影響を及ぼすか否かを調査研究する項目である。  従来、規制強化に反対する運動は、「単純所持」に対するものが優先事項になっていた。しかし、今年の4月以降、まずは漫画やアニメに規制がかかるのを防ぎ、それを突破口にしようという方向へシフトしている。  「単純所持」をめぐっては、すでにこれを導入している国々で、不当な逮捕事例や冤罪が続出するも起きている。ゆえに、安易な導入は許されないものである。しかしながら、その危惧は、権力に対する危機感を知る人々の間でしか共有できていない。政治不信が当たり前になりながらも「警察権力が不当な逮捕を行う」ようなことが、我が身に降りかかってくることを、リアリティを持って語ることができる人は少ないのだ。  対して、漫画やアニメの表現が、規制への懸念から萎縮する可能性は、まだ万人が理解しやすいといえるだろう。ここ数年の間に、日本の漫画やアニメが(さほど、大きな市場ではないものの)世界の国々で支持を受けていることは、多くの人が知るようになった。それが「規制されるかもしれない」という危惧は、まだ受け入れやすいといえる。  しかし、そこにも問題はある。さほど事情に詳しくない人々は、素朴に「よい漫画と悪い漫画がある」ことを信じている。また「非実在青少年」というインパクトのある言葉を権力の側が提供してくれた2010年の東京都青少年健全育成条例改定問題に比べて、児童ポルノ法改定問題が率直に「反対」と言いづらい問題であることは明らかだ。  今、児童ポルノ法改定による単純所持の導入と、漫画・アニメの調査項目に関する付帯事項の記載は、避けられなくなったと考えたほうがよい。現状は、その上で最悪の状況を、いかにして防ぐか考える段階に入っている。 (文=昼間たかし)

有名人との親密な関係は事実か? ニコ生発の児ポ法反対組織「日本創作文化消費者連盟(仮)」への疑問

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自転車会館(GoogleMapより)
 港区赤坂。アメリカ大使館前に建つ自転車会館は自由民主党の派閥・宏池会が事務所があることで知られている。その、権力の館に30名あまりのオタクが集まったのは、6月30日の日曜日のことであった。  この小さな集会を呼びかけたのは、青木文鷹なる人物である。『TPPが日本を壊す』監修。『世界はマネーに殺される』執筆(いずれも扶桑社新書)と2冊の書籍に携わっており、メディアを通してTPP問題に詳しいアナリストと見られている人物である。  彼がオタクを集めた理由、それは「圧力団体」結成の呼びかけだった。  ニコニコ生放送で繰り返し児ポ法反対を説いていた青木は6月中旬に「読者(視聴者)団体」の立ち上げを呼びかけてニコ生を行った。放送の中で青木は、「既存の表現規制に反対している団体が啓蒙活動に終始している」と批判し、金と票を集めて政治家に圧力をかけることのできる圧力団体を設立する旨を述べた。「日本創作文化消費者連盟(仮)設立準備委員会」と名付けられたコミュニティの登録者は、すぐに500人を超えた。そして、「与党による児ポ法改定案が成立してしまうまで時間がない」と叫ぶ青木は、設立準備のためのミーティングを呼びかけたのである。  ミーティングは、ほとんど青木の独壇場であった。白いジャケットの襟と脇の下に大きな汗染みをつくりながら、とうとうと自分が考える「団体」について述べた。  青木は、そこでも「時間がない」と繰り返し、「金と会員を集めて票になることを示せば、政治家はいうことを聞く」と説いたのだ。  それと共に、彼が語ったのは、自転車会館がどういう場所かということである。 「安倍首相の前でレクチャーしたこともある」  と、語る青木は、ここが権力の館であること述べ、入居する組織の有力者とも面識があるという。さらに、従来より表現の自由の問題について発言している人気マンガ家や弁護士、ニコ動界隈で名前の知られる僧侶などの名前も挙げ 「協力してもらえることになっているのです」  とも話した。  その上で、青木は「日本創作文化消費者連盟(仮)」の設立に向けたスケジュールを説明した。7月中に立ち上げて、8月には第一回総会を開催。その前に、コミケでチラシをまき会員を募るというものだ。そこでも、改めて前述の人気マンガ家の名前をあげ 「彼のサークルスペースでもチラシを配布してもらえるはずです」  と、関係性の強さを強調したのである。加えて、彼は団体が法人格を得るという構想も示した。 「できれば財団法人にしたいのです。そして、ゆくゆくは公益財団法人の認証を取得したいと思います。活動費として会員から月500円ほどを徴収します。会員は、いまニコ生のコミュニティが500人を超えましたから、まず25万円。また、クラウドファンディングも申し込んでいます。これでチラシを配布して、会員を集めたいと考えています。政治家に圧力をかけるために、戦うための組織ですから、会費を払う人にしか用はありません」  「表現の自由」の問題は、ネットで騒ぐ人は多いが、実際に活動家として参入する人は少ない。いったい、なぜこのような人物が、今まで眠っていたのか? 事情を聞こうと、青木が幾度も名前を出した人物に電話したところ、答えはこうだった。 「実は、困っているんです。なぜか名前が使われているんですが、飲み会で2回ほどあったことしかないんです」  ほかの幾人かの人物からも「会ったことがない」と述べるか、名前を勝手に使われたことに憤慨する答えが返ってきたのだ。  この青木文鷹という人物は、何者なのか。彼はTwitterで自身を次のように紹介する。 <(株)AIGIS代表 情報分析、戦略立案に関するコンサルタント。日本では珍しい民間の科学鑑定士で、民事に関する鑑定を始め刑事事件の弁護側鑑定なども行う。そのほかTVラジオ出演、講演、執筆等々。>  前述のように、監修と執筆で2作の著作があり、RFラジオ日本の金曜深夜1時から放送されている『ラジオ時事対談』内で「青木文鷹の日本を救え」というコーナーを持っている。しかし、アナリストや鑑定士として、どのような経歴を辿ってきたのかはGoogleで検索しても、まったく出てこない。主要新聞や雑誌を検索しても、彼の来歴に辿り着くことはできない。  それもそのはずだ。彼の名前は本名ではないのだ。  青木の本名は、青木郁剛であることが会社登記簿などから確認できる。  この名前から過去の新聞記事を追っていくと、ある事件に行き当たる。が、すでに十数年前の出来事であるので、ここでは触れない。  迷走する「日本創作文化消費者連盟(仮)」は、表現規制の問題は、政治の絡む問題であり、そこには常に魑魅魍魎が跋扈する世界であることを示した。かつて、規制強化を唱える野田聖子衆議院議員の主催した勉強会に、ジュベネイル・ガイドという京都のNPOの理事長が出席し、規制強化を唱えるプレゼンをしたことがあった。後日、この理事長はアダルトゲームの倫理団体であるコンピュータソフトウェア倫理機構(ソフ倫)の元理事長で、自身もアダルトゲーム制作会社を経営していた酒井(長岡)道子であることが明らかになった。ここまで大きな芝居ではないが、規制反対の側にも何かの意図をもって接近する者は日常的に存在する。表現規制の問題も、恐ろしい泥濘からは逃れることはできないのだ。 (取材・文=昼間たかし)

【論点整理】2013年児童ポルノ法改定案は、何が問題なのか

jipoposter0621.jpg  「表現の自由」をめぐって注目された、児童ポルノ法改定問題。今年4月から自民党を中心に進められた規制を強化する形での改定案は、多くの人々の働きかけによって、どうにか国会会期末まで審議されることもないまま終わりを迎えそうだ。  だが、夏の参院選で与党優勢が伝えられる中、再び改定案が浮上すれば、あっという間に成立してしまう可能性もある。  そこで、今回はあらためて改定案の問題点を整理してみたい。  今回の改定案は、2009年に自民・公明両党が提出したものと大差はない。そこで挙げられる問題点は、大きく3つに分かれる。 1:単純所持の禁止 第六条二項を新設 何人も、みだりに、児童ポルノを所持し、又は第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管してはならない。(罰則なし)  単純所持を禁止する国では、冤罪の発生が相次いでいる。アメリカのコネチカット州では、離婚裁判中の妻が夫のノートPCに児童ポルノを仕込むという事件が発生(アクセス時間に夫が旅行中だったため、すぐに冤罪が発覚)。また、家族の写真を現像に出した際に、自分の娘の裸が写っていたため通報されるという、冗談のような事件は無数に発生している。イギリスでは、反戦運動のシンボル的存在だったロックバンド「Massive Attack」のメンバー・3Dが、イラク戦争の直前に児童ポルノ閲覧の容疑で逮捕され、後に証拠不十分で釈放という事件もあり、新たな予防拘禁の手段としても使われている可能性が高い。  日本でも児童ポルノ法第二条のあいまいな定義が覆されない以上は、同様の事例が起こることが懸念される。 2:漫画・アニメ規制のための調査研究 附則の第二条の新設 政府は、漫画、アニメーション、コンピュータを利用して作成された映像、外見上児童の姿態であると認められる児童以外の者の姿態を描写した写真等であって児童ポルノに類するもの(次項において「児童ポルノに類する漫画等」という)と児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究を推進するとともに、インターネットを利用した児童ポルノに係る情報の閲覧等を制限するための措置(次項において「インターネットによる閲覧の制限」という)に関する技術の開発促進について十分な配慮をするものとする。 2 児童ポルノに類する漫画等の規制及びインターネットによる閲覧の制限については、この法律の施行後三年を目途として、前項に規定する調査研究及び技術の開発の状況等を勘案しつつ検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。  一部の国では漫画・アニメも「児童ポルノ」と判断され、有罪判決を受ける事例がある。代表的な事例は、スウェーデンの漫画翻訳家であるシモン・ルンドストローム氏の事件である。  ルンドストローム氏は、離婚した元妻と親権を争う裁判を行っていたのだが、その過程で元妻が裁判を有利に進めるためか、彼を「幼児性愛者である」と警察に通報。家宅捜索の結果、パソコンに保存されていたネットから拾った日本人が作成したとおぼしきイラストが「児童ポルノ」であるとされ、逮捕。一審・二審では有罪を宣告され罰金刑となったが昨年、スウェーデン最高裁は「(問題となった39点のイラストのうち)1枚はリアルに描かれているため、有罪になる可能性も考えられる」としながらも、「犯罪として成立し得るものではない」と、無罪判決を下した。この過程では、スウェーデン警察の児童ポルノ担当者が同地の新聞に「実際に性的虐待などの被害を受けている児童がいる中で、漫画を取り締まっている場合でない」と発言するなど、スウェーデン国内では大きな議論を呼び起こした。  また、裁判の過程でルンドストローム氏は出版社から仕事を切られるなど、実害も受けている。 3:児童ポルノ取り締まりのためのネット事業者の努力義務規定  インターネットを利用した不特定多数の者に対する情報の発信又はその情報の閲覧等のために必要な電気通信役務(電気通信事業法〔昭和五十九年法律第八十六号〕)第二条第三号に規定する電気通信役務をいう)を提供する事業者は、児童ポルノの所持、提供等の行為による被害がインターネットを通じて容易に拡大し、これにより一旦国内外に児童ポルノが拡散した場合においてはその廃棄、削除等による児童の権利回復は著しく困難になることに鑑み、捜査機関への協力、当該事業者が有する管理権限に基づき児童ポルノに係る情報送信を防止する措置その他インターネットを利用したこれらの行為の防止に資するための措置を講ずるよう努めるものとする。  多摩大学情報社会学研究所研究員の中川譲氏によれば、「インターネットのブロッキングが一歩前に進む」という。現在、日本国内のインターネットサービスプロバイダ(ISP)は人権侵害に対する緊急避難措置として、児童ポルノが掲載されている疑いがあるサイトのブロッキングを行っている。この条文の追加によって、緊急避難ではなく正当な業務行為となる。ISPでは、誰が児童ポルノを掲載しているサイトにアクセスしたかも把握することができる。捜査機関からの「児童ポルノの取り締まりのために必要」という要求に対して、ログを開示するISPが現れる可能性もある。3つの問題点の中では直近の効果は少ないが、将来的にネットで誰がどこにアクセスしているかを国家が監視するための土台になり得る可能性がある。  これらの点からも、児童ポルノ法改定案が冤罪を生み出す可能性を持ち、漫画・アニメなどの文化産業の萎縮効果をもたらすことは明らかだ。  筆者は今回の児童ポルノ法改定案の浮上に際して、中心人物である自民党の高市早苗政調会長にさまざまな媒体を通じて取材を申し込んでいるが、多忙を理由に拒否されている。ただ、秘書を通じて「前回とスタンスに変化はない」との発言は得られている。  08年に高市政調会長に取材した際には「個人の性的好奇心を満たす目的による児童ポルノへの『需要』に歯止めをかけない限り、『供給』の根絶は困難です。また、児童ポルノの被写体になった被害者の生涯にわたる苦悩、第三者が画像を持ち続けることへの苦痛や拡散への不安を考えると、規制はやむを得ないと考えています」と、所持の禁止に対するスタンスの説明を受けている。この時も、冤罪の可能性については聞いたが「電子メールで送りつけられるような本人の意図しない所持については罪にならないように、条文の文言に十分な配慮を行っています」という。確かに、新設がもくろまれている第六条二項には「みだりに」の4文字が入っているが、これが十分な配慮とは考えがたい。  以上が、今回の自民・公明・維新の会によって提出された改定案の大まかな問題点である。  今回、4年ぶりに改定案が提出された背景には、自公政権の復活により表現規制と情報統制のための措置や立法が次々と現実になっていることが挙げられる(これらの全体像については、上智大学教授の田島泰彦氏が出版業界誌「出版ニュース」13年3月下旬号でも述べている)。こうした措置や立法の先にあるのが、自民党の改憲草案である。改憲をめぐっても、意見は大きく分かれるところだろう。99年の青少年有害社会環境対策基本法案以来、自民党には立法や改憲などによって、社会を引き締めることが国家の利益につながると信じてやまない議員が常に一定数存在する。だが、亡国の危惧が高まるTPPを推進しながら、一方では亡国の危機を防ぐために社会を引き締める措置を行おうと考えているわけで、やっていることはとてつもなくちぐはぐだと言わざるを得ない。 (文=昼間たかし)

「絶対に負けちゃダメだ」児童ポルノ法改定問題 スウェーデンからのメッセージ

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昨年の来日時、東方ソングを熱唱するルンドストローム氏
 「表現の自由」をめぐり危惧の続く児童ポルノ法改定問題。マンガ・アニメも規制されれば、表現の萎縮効果のみならず、冤罪まで発生するのではないかという危惧が強まっている。  規制を推進する人々は、改定案で冤罪が発生することには否定的だ。しかし、海外ではすでにマンガが理由で逮捕された事例も発生している。そうした中でも、もっとも衝撃的なのがスウェーデンで発生した日本マンガの翻訳者が、児童ポルノ所持容疑で逮捕された事件。  しかも、捜査されたきっかけが娘の親権を争っていた元妻からの通報だというから、さらに驚く。  『日刊サイゾー』でも随時報じてきたこの事件は、昨年、スウェーデン最高裁で無罪判決が下った。今回、日本でも危惧が高まる中で元被告のシモン・ルンドストローム氏から改めて話を聞いた。 ──いま、日本では児童ポルノ法改定問題を通じて、今後マンガ・アニメまでもが規制されるのではないかと危機感が広がっています。海外のマンガ・アニメの愛好者としてどう考えていますか? ルンドストローム氏 「マンガ・アニメの愛好者」としてではなく、僕は一人の人間として「書く、描く内容を規制する」こと自体は、頭がどうかしているとしか思えない。「広める」つまり「広告に出してもいいかどうか」という判断基準にだったら制限をかけてもいいけど、書く、描く、出版すること自体を規制するのは自由主義、民主主義社会ではあってはならないこと。それを罵倒したい気持ちは、僕の日本語の言語能力を尽くしても足りないくらいだ。民主主義が聞いてあきれる。民主主義の中でその基本を破ってもいいと思うやつが「歩く」「話す」ことができるなんて奇跡だ。それくらい彼ら(規制派)の頭脳は機能していないとしか思えない。 ──「児童ポルノ」の所持を禁止することが、実際の犯罪を取り締まることに役立つと思いますか? ルンドストローム氏 それは「児童ポルノ」の定義による。実写だったら役に立つと思う。「児童ポルノ」を「性的に未発達な子供が性行動を行うような画像」という定義だったら、それを所持しただけで、そのような画像の「需要」に参加しているということになる。需要があるということは供給もついてくる。そのような画像を作ること自体が犯罪なので、その画像を所持するというのは、その犯罪に加担していることになる。よって、実写だったら、単純所持でも犯罪にしていいと思う。  「性行動を行っていない、単純な裸だけ」の画像や「18歳未満だけど、性的に未発達ではない」という女性の実写も、ややこしいけど。人間のほとんどは14~15歳で性的な発育が完了しているが、社会的に弱い存在なので、そういう画像を自由にしたら、権力とお金で悪用する雑誌が絶対に出てくるし、それも問題である。  でも、最近思うことは、とある説によるとどうやら「裸が見たい」という衝動は性衝動とつながっているものの、別物だそうで、要するに、見たいだけで、別にエッチがしたいということではない。だとすれば「若い子の裸を全面禁止」にしたら、その「見たい」という衝動が、もしかしたらもっと悪い方向に行ってしまうのではないかということだ。それが本当なら、逆に15歳でも裸だけならOKということにした方が、本当の犯罪を軽減できるということになる。それが裏付けられるのなら、規制しない方が子どもを守れるという、矛盾が生じる。なんの証拠もないけど、一応可能性として考えておいた方がいいと思う。なぜなら、手段で目的を見失わない方がいいからだ。目的はあくまでも「若い人を守る」であるべきで、「若い人の裸を見たい人を罰する」ではないはずだ。 ──マンガやアニメの愛好者が、性犯罪を起こすと考えている人は、スウェーデンでも多いのでしょうか? ルンドストローム氏 多くない。マンガ、アニメに対する知識がほとんど皆無だからだ。だけど「日本のマンガ、アニメってエッチだな」という偏見の持ち主は少なからずいる。「それを読んでいるのは犯罪者だけ」という意見はない。  実際、マンガを読んで犯罪に走ったためしがないからだ。実際、そういう写真を持った人でも、犯罪に走る人の確率は別に上がらないという最近の説がある。そういう写真を持った人について冷静に研究した人が少ないから、誤解が多い。 ──最後に、日本のマンガ・アニメファンに対してメッセージがあれば。 ルンドストローム氏 表現の自由は定義上「有る」か「無い」か、二つに一つしかあり得ない。「表現の自由がちょっとだけある」は「表現の自由が無い」とまったく同義語。必ず絶対的に自由でないと、意味を成さない自由だ。  あと、「他人の(表現の)自由を奪う表現」を規制するのは表現の自由の一部であって、その自由自体を守る必要不可欠なルールであって、それを脅かすルールではないので「じゃ、他人を『殺すよ』と言ってもいいのね?」という屁理屈には負けないでください。  表現の自由は民主主義の一番重要な要であって、しかも「世間の大半が賛成しないことについての表現」こそのためにあるもの。よって、誰かが表現の自由を規制に成功したその瞬間、民主主義が崩れる。絶対に負けちゃダメだ。  * * *  なお、昨年報じた無罪判決後も警察が押収した東方のセーブデーターが入ったハードディスクが返却されない件だが、その後返却されたハードディスクはデーターが消されていたという。そのことをルンドストローム氏は、今も怒っている。 (文=昼間たかし)

児童ポルノ法改定問題 過去の取材データから探る、高市早苗衆議院議員の本音

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高市早苗(たかいちさなえ)HPより
 児童ポルノ改定案が国会に提出され、ようやくさまざまなメディアも注目するようになってきた。筆者も「週刊プレイボーイ」(6月3日発売号/集英社)、「出版ニュース」(6月10日発売号/出版ニュース社)で、この問題に関する記事を執筆している(宣伝)。  前者のほうでも記しているが、今回、法案提出の中心人物である自民党政調会長の高市早苗衆議院議員は、多忙のため取材に応じることはできないという。その上で、高市議員は2008年当時と、意見は変わっていないという。  そこで今回は、08年当時の高市議員の意見を示す資料を掲載することにする。これは、筆者の送付した質問に高市議員が文書にて回答したものである。今後の議論の上で、多くの人々に役立ててもらいたい。 問1:「児童ポルノ」の定義についてどのようにお考えですか? 【回答】 現行法(平成11年「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」)の第二条3項の定義通り。 第二条3項;「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。[1]児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態、[2]他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの、[3]衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの 問2:「児童ポルノ」の単純所持禁止について賛成ですか、反対ですか? また、その理由についてお聞かせください。 【回答】 「児童ポルノ単純所持禁止」に賛成 理由[1];個人の性的好奇心を満たす目的による児童ポルノへの「需要」に歯止めをかけない限り、「供給」の根絶は困難であること。 理由[2];単純所持を禁止することで、過去に取得した児童ポルノも廃棄されることになる。児童ポルノの被写体になった被害者の生涯に渡る苦悩(第三者が画像を持ち続けることへの苦痛や拡散への不安)を考えると、規制はやむを得ないと考える。 理由[3];現行法では、平成16年に「附則」として、法律の施行状況や国際的動向を勘案して「施行後3年を目途として」と見直し規定が入っている。ロシアを除くG8諸国では単純所持を禁止する法制度が整備されており、韓国も最近禁止した。 理由[4];内閣府世論調査でも単純所持禁止を求める世論が圧倒的である。 問3:「児童ポルノ」の単純所持禁止により、冤罪が発生する可能性や、スキャンダルや陰謀に利用される可能性が指摘されていますが、その点についてはどのようにお考えになりますか? 【回答】  現在、与党PT(プロジェクトチーム)で検討中の改正案では、本人の意図しない所持(送りつけ等)については罪にならないように、条文の文言に十分な配慮を行っている。 問4:共謀罪などと同じく、警察権力の悪用が起こる可能性も指摘されています。その点についてはどのようにお考えになりますか? 【回答】  そもそも「共謀罪」については警察権力の悪用が目的だとは考えていないが、児童ポルノ禁止法改正の目的も警察権力の悪用ではなく、主に被害者救済である。 問5:漫画・アニメ等の創作物を児童ポルノ法で取り締まるべきという主張をどう受け止められていますか? 【回答】  個人的には、児童ポルノ法での取り締まりは困難だと考えている。理由は、現行の児童ポルノ法では児童の定義を「18歳未満」としており(児童虐待防止法や児童福祉法などと同様)、実在する児童を対象としたものではない漫画やアニメでは、年齢要件を判定できないから。  カナダ、フランス、イタリア、ドイツなど、「実在しない児童をモデルとするもの」についても法規制の対象としている国があることも承知しているし、「漫画やアニメも、児童ポルノを愛好する風潮を助長するものである」とのご意見が多いのも承知しているが、現在の児童ポルノ法が実現しようとしている法益や諸定義から見ると、一部改正ではとても対応できない課題である。  与党PTでは、今後、政府が調査研究する課題として附則に書き込む案が出ている。 問6:改正に向けて拙速な議論が続いており、実際の児童保護の問題が疎かになっているのでは? という批判については、どうお考えでしょうか? 【回答】  「単純所持禁止」については、自民党では1998年、1999年、2003年、2004年と、数次に渡って国会提出に挑戦しており、拙速な議論ではないと思う。主目的は児童保護である。 問7:改正が急がれる理由として「サミットに間に合わせたい」「今後の衆院解散総選挙を睨んだ選挙民へのアピール」があるという声も聞かれますが、どうお考えですか? 【回答】  政調会長に法改正検討の必要性を申し出た一人でもあるが、個人的にはサミットの時期や選挙については考えたこともなかった(むしろ作業を始めてからは嫌がらせの方が多いので、票になるとも思えない)。昨夏まで青少年施策の担当大臣でもあったことから児童が巻き込まれる性的犯罪等に強い問題意識を持っていたが、本法は議員立法案件なので、閣僚の仕事が終わったら取り組んでみたいと考えていた。 問8:一部の議員から「私が不快だから取り締まるべき」との発言もありますが、こうした発言についてはどうお考えでしょうか? 【回答】  自民党の小委員会メンバーや与党PTのメンバーは、個人的な感情ではなく、公益を考えて取り組んでいると思う。 問9:与党PTが単純所持規制の方針を打ち出した際に高市先生は「これは第一弾」と発言されていらっしゃいましたが、第二弾は、高市先生の考えられている有害図書規制を国で行うための新立法と考えてよいでしょうか? 【回答】  そういう意味での発言ではない。今回の法改正内容は「単純所持の禁止」に限定されるだろうが、児童ポルノ禁止法について自民党の小委員会メンバーや公明党から出たご意見(擬似児童ポルノやアニメ等への対処)については、今回の法改正では入れられないだろうという見通しを語ったもの(つまり、将来に向けての調査研究課題とせざるを得ない)だった。  いわゆる有害図書を規制する法案は提出予定無し。 問10:児ポ法や有害図書規制の強化によって、コンテンツ産業振興が阻害される可能性については、どうお考えでしょうか? 【回答】  児童ポルノの提供は、現行法でも禁止されている違法行為であり、コンテンツ産業振興とは関係ない。 問11:児童ポルノを根絶するためには、どのような方法が有効と考えていますか? 持論をお聞かせください。 【回答】  現行法で、提供目的の製造、所持、運搬、輸出入は禁止されているが、単純所持についても禁止すること。  インターネット関係事業者の捜査機関への協力や児童ポルノ流通防止措置。  インターネット上のものについては、「ブロッキング」が効果的だと思う。民間事業者とも意見交換をしたが、技術開発も含めて積極的に対応していただけると考えている。児童ポルノの提供等を禁止していない国もあり、世界的に「根絶」するまでには遠い道程だと思うが、各国が先進的手法について情報を共有しながら取り組みを進めるしかないと思う。 (文=昼間たかし)

「単純所持の禁止の導入を検討」でも、やっぱり復興優先 宮城県「児童ポルノ」規制のゆくえ

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 先月18日、宮城県で震災以来中断していた「児童ポルノ」の単純所持禁止などを検討する「女性と子どもの安全・安心社会づくり懇談会」が2年ぶりに再開された。懇談会では、2年前に検討されていた性犯罪前歴者のGPS監視を断念する一方で、単純所持の禁止は引き続き検討することが決められた。 「児童ポルノ」を規制する条例は、奈良・京都をはじめとした自治体でも導入されている。そうした中で、この懇談会では単純所持の禁止と性犯罪前歴者へのGPS装着などをテーマとして盛り込んでおり、注目を集めた。当初、宮城県は2011年度中にも懇談会の結果を受けて、児童ポルノに関する条例制定を目指すとしていたが、東日本大震災もあり、懇談会は休止されていた。  今回、2年ぶりに懇談会が再開された理由を、環境生活部共同参画社会推進課の担当者は次のように語る。 「村井嘉浩知事は、検討したかったが手をつけられないでいました。宮城県の震災復興計画では、今後の10年間を復旧期(3年)、再生期(4年)、発展期(3年)と考えています。今後の復興をにらんで、安全で安心して暮らせる街づくりは必要だろうという意識で、再開することになったんです」  再開された懇親会でまず村井知事は、性犯罪前歴者のGPS監視は震災からの復旧・復興が最優先課題になる中で、人手も財源もかかるとして、断念する旨を表明した。もう一つの重要なテーマである児童ポルノの単純所持禁止については、今後も懇談会で検討していく方針だ。ここでは、すでに導入されている奈良・京都などの条例を参考にしながら有識者らの意見を聞いて、条例の必要性を検討する予定だ。ただ、現時点では、まったく白紙の部分が多い。 「(奈良・京都などの条例と)同じような内容になるかも含めて、検討していく予定です」 と、前述の県の担当者は話す。それらを検討する場である懇談会だが、次回開催の予定は「まったく決まっていない」(同)という。  そもそも、宮城県でも、この問題への関心度は限りなく低いようだ。 「マスコミの方から問い合わせはあるのですが、県民の方からはありません。マスコミからの問い合わせも、もう少しあると思ったのですが……」(同)  宮城県としても10年がかりの復興計画など現実的な問題が山積みの中で、効果に疑問のある単純所持の禁止を今すぐやる必要があるのか? ということは当然考えているようだ。 (取材・文=昼間たかし)

ロリ漫画規制に国民の58.9%が賛成している!「政府が調査研究したら、こうなった」

jipoposter0531.jpg  いよいよ国会に提出された児童ポルノ法改定案。その問題点として挙げられているのが、児童ポルノの単純所持の禁止と、附則で触れられた、漫画などが実際の事件に影響を及ぼすのか3年後を目途に調査研究する、という2つの項目だ。  この2つの項目が、共に「表現の自由」の規制を目指すものであるのは、ほぼ間違いない。ところが、この後者の部分を「調査研究を行うのであれば、いいではないか」という見方をする意見も存在する。調査の結果、漫画が影響を及ぼさない、という結果が出ればいいではないかというわけである。  だが、そのような「表現の自由」を守る側にとって都合のよい結果が出ることは、おおよそ考えにくい。その裏付けになるのが、2007年に内閣府が行った「有害情報に関する特別世論調査」だ。  この調査では「実在しない子どもの性行為等を描いた漫画や絵の規制について」規制の「対象とすべきである」と回答した人が58.9%、「どちらかといえば対象とすべきである」と回答した人が27.6%と、調査対象者の9割近くが漫画などを規制してもよいと回答しているのだ。  また、児童ポルノの単純所持についても、「規制すべきである」が59.5%、「どちらかといえば規制すべきである」が21%となっている。  いったい、なぜこのような結果が出たのか? それは、調査の方法にある。  この調査は、調査員による面接形式で行われた。そして内閣府が公開した資料では、回答をしてもらう前に次のような手順であったことが資料から明らかになっている。この資料を引用してみよう。 (資料5を提示して、対象者によく読んでもらってから質問する。) 【資料5】 近年、子どもたちに悪影響を与える恐れのある以下に示すような情報(「有害情報」と言います。)が多くなっています。 (1) わいせつ画像などの性的な情報 (2) 暴力的な描写や残虐な情報 (3) 自殺や犯罪を誘発する情報 (4) 薬物や危険物の使用を誘発する情報 など 雑誌、DVD、ビデオ、ゲームソフトなどの有害情報に対しては、現在、ほとんどの都道府県で条例により、有害図書類等の指定や青少年への販売禁止などの制限がありますが、罰則が弱い、各都道府県により規制がばらばらであるなどの指摘があります。また、インターネットの世界でも通信事業者やネットカフェ業者による自主規制などが行われていますが、業界団体に属していない業者は規制の対象外となっています。子どもがインターネット上の有害情報に携帯電話等でアクセスして被害にあうケースも増えています。 一方、表現の自由等に配慮して、どのような情報であっても規制すべきでないという意見もあります。 政府では、こうした状況を踏まえ、様々な取組を行ってきたとともに、平成19年7月に「有害情報から子どもを守るための検討会」を立ち上げ、 1 国の姿勢を示す 2 社会全体として取り組む 3 有害情報を適切に把握する 4 有害情報の特性等に応じた対応策を講ずる 5 表現の自由等に配慮する の5原則を掲げて検討を進めているところです。  つまり資料からうかがえるのは「表現の自由」の問題など、規制によって起こり得る問題点を説明することなく、あたかも「有害情報」が蔓延している先入観を植え付けて回答を誘導したという疑念である。  国民の中で「有害情報」や「児童ポルノ」と聞いた時に、それがどういう問題なのかを明確に知る人は限られている。そうした「無知」を利用して作られたのが、前述の調査結果なのである。  そして、この調査結果は09年に児童ポルノ法改定が論議された際にも法務委員会に資料として提出されている。すなわち、調査研究を行うことが附則に含まれれば、3年後には、規制を進める側にとって都合のよい証拠を突き付けながら、漫画などの規制が正当化される可能性が極めて高い。「調査研究ならば、いいではないか」と考えている人々は、あまりにも楽観的すぎる。 (文=昼間たかし)

コミケも児童ポルノ法改正案に反対を決定! 全国同人誌即売会連絡会が反対声明を発表

FLEWIURFT4WEO.jpg  同人誌業界も児童ポルノ法改“悪”案に「NO」を突き付けた。  29日、自民、公明、日本維新の会の3党によって提出された児童ポルノ禁止法改“悪”案。これを受け日本雑誌協会、日本書籍出版協会は連名で反対声明を発表。日本漫画家協会も反対声明を発表し、30日には、ちばてつや氏、松本零士氏が自民党と民主党に陳情を行う予定になっている。また、日本図書館協会も反対声明を準備中とのことで、表現の自由と国民の知る権利を守る戦いが、瞬く間に広がっている。  そうした中、コミックマーケット準備会やコミティア実行委員会など各地の同人誌即売会主催者で構成される「全国同人誌即売会連絡会」も、反対声明を発表した。声明では、単純所持違法化に対する冤罪の発生を懸念するとともに、附則に記された漫画などへの関連性に関する調査研究に対して「すでに結論ありき」と真っ向から非難し、「日本のコンテンツ文化に与えるダメージは深く、ましてや法律による規制が実際に行われた場合の影響は計り知れません」とし、会としての反対を打ち出している。  全国同人誌即売会連絡会は発足以来、継続して「表現の自由」の問題と深く関わってきた。しかし、あくまで連絡会であるとの立場から、組織として明確に「反対」を打ち出すことは避けてきた。もちろん、2008年に行われた「創作物の規制/単純所持規制に反対する請願署名」では全面的な協力は惜しまなかった。また、10年の東京都青少年健全育成育成条例改正問題でも、大規模集会に協賛するなど常に表現規制反対にコミットしてきたが、「あくまで第三者として」のスタンスを取るなど一歩引いた形での支援を主としてきた。  今回、以前よりも旗手を鮮明にしているところに、同人誌業界の児童ポルノ法改正案に対する危機感が表れている。  今回、同会が明確に「反対」の二文字を打ち出したことはコミックマーケットをはじめ、児童ポルノ法が改“悪”が、多様な表現の場である同人誌即売会を滅ぼす可能性が極めて高いことを示唆している。  いわゆるオタクの間でも、規制されるのは「COMIC LO」(茜新社)のようなロリだけだろうといった、他人事の意識は極めて高い。だが、ロリだろうがBLだろうが、すべてが消滅してしまう可能性もあるのだ。  名だたる即売会主催者が参加した声明を契機に、危機感は怒濤の勢いで広がっていくと考えられる。 (取材・文=昼間たかし) 全国同人誌即売会連絡会 <http://sokubaikairenrakukai.com/index.html> 「児童ポルノ禁止法」改正案への反対声明 <http://sokubaikairenrakukai.com/news1305.html