
『試着室』(吉沢華、幻冬舎)
中学生のころに仲が良かった三姉妹の末っ子は、兄と二人兄妹の私には想像ができない独特なセオリーを持ってた。姉の言うことはゼッタイ。末っ子の選んだ服はもちろん、彼氏までも、姉ふたりが厳しくチェックして判断を下す「姉ゲート」を通さなければならないのだ。そんな彼女を「虐げられてるんじゃない?」なんて傍観していたのだけれど、本人にとってはそれが日常。虐げられてるなんて微塵も感じず、姉二人の言うことは絶対だと信じてた。逆に「姉」は、妹に対して「それっておせっかいじゃない?」ってくらい、妹が選ぶ物事を心配したりジャッジしたりする。姉は、母親以上に愛情を込めて妹を育てる。独特で不思議な主従関係が、姉妹間では当然のように成立している。ハタから見れば仲良し姉妹のほほ笑ましい光景だけれど、そこには、異性間の恋愛の延長上にある「男が女を育てる」純粋な楽しさとは異なり、自分と相手との「幸せ」の比較という問題が絡んでいる。


