性の秘密を共有する女性同士の関係を描いた『二人のひとりあそび』

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『蜜の競艶』/河出書房新社

■今回の官能小説
『二人のひとりあそび』森奈津子(女流官能アンソロジー『蜜の競艶』/河出書房新社より)

 エロにおいて男と女でもっともかけ離れたスタンスに位置しているものが「オナニー」ではないだろうか。それがあってるかは別として、世の中的に男のオナニーは必需行為という位置づけに対して、女のオナニーは嗜好行為と位置づけられているから。

 幼いころから開けっぴろげに話題にできる男とは違い、女は仲良くなればなるほど封印するネタのひとつかもしれない。それはたぶん、「自慰」という文字どおり、オナニーをする女=モテない女というレッテルを貼られてしまいがちだから。では、女同士のNGワードを打ち明けた先には、いったいどんな関係性が生まれるのだろう?

「ヤリたいだけの女」を高らかに宣言した、岩井志麻子の『チャイ・コイ』

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『チャイ・コイ』(中公文庫)

■今回の官能小説
『チャイ・コイ』岩井志麻子

 男はセックスに意味を持たせたがる。たとえば知り合って間もない女から突然ベッドに誘われれば「俺のこと好きなんじゃないか?」とか「失恋したばかりか?」と、余計な勘ぐりをする。セックスで女の愛や人生に付箋を付けたつもりでいるなら、おこがましい。男が感じるように、女だって「このオトコとヤリたい!」と感じるときがあるのだ。

 岩井志麻子の自伝とも言われている『チャイ・コイ』は、ひとり旅で訪れたベトナムを舞台に、若い現地の男とアラフォー作家との物語が描かれている。

"セックスに振りまわされる生き物"の本質を描いた『文字に溺れて』

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『sex』(講談社 )

■今回の官能小説
『文字に溺れて』石田衣良(『sex』に収録)

 自身の性の目覚めを覚えているだろうか? 土手に捨てられていたエロ本、両親の寝室、のぼり棒......それらを体感したときのことを思い返すと、「見たい」「聞きたい」という前のめりな感情と同じくらい「イケないこと」という認識がある。だから大人になってからのセックスも、どこかいびつな照れくささや後ろめたさを引きずるのだろうか? 

 直木賞作家・石田衣良の官能的な短編12作品を収録している『sex』(講談社)は、どの作品も、痛々しいくらい、セックスに対して真っ直ぐだ。なかでも『文字に溺れて』は、そんな「イケないこと」と「気持ちいいこと」の狭間でぎこちなさを感じている、多感な少年少女のみずみずしい性が描かれている。

"モラルを超えた行為"からにじみでるエロスを描いた『ホテル・アイリス』

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『ホテル・アイリス』(幻冬舎文庫)

■今回の官能小説
小川洋子『ホテル・アイリス』

 モラルとセックスは決して正比例するわけではない。たとえば倫理的に外れた関係性だとしても、互いに至高な快楽が得られたとすれば、モラルなんて基準に置くことができないのではないだろうか?

恋なのか業なのか、消極的な男を追いかける女を描いた「18歳24歳30歳」

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■今回の官能小説
南綾子『夜を駆けるバージン』(光文社)収録作品
「18歳24歳30歳」

 厄介なことに、女という生き物は、男が感じている以上に執念深い生き物で、また、男が感じている以上に身勝手な生き物でもある。例えば、多少色っぽい関係になった男女間で、男が多少引いてしまうと、女は尻に火が点いたように襲いにかかる。それはたぶん、女の性なのだろう。女として産まれたからには、食われてナンボ。もし腰が引けてしまうような男と出会ったら、その腰を押し付けられるまで追っかけたくなる。それは、女のプライドを守るためだから。

SMは趣向ではない!? 有名作家が別名で書いた『私の奴隷になりなさい』

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『私の奴隷になりなさい』(角川書
店)

 飲み会でお約束として飛び交う、「あたしSなの」「俺Mなんだよね」という話題。ほとんど自己紹介の延長みたいなものになっている。Sだと自己申告すれば、気の強いオンナをアピールできそうだし、Mだと言えば、なんとなく気弱なオンナだと思ってもらえそう......SとMって、一般的にはそんな表層の肩書きとしての認知度しかないのではないだろうか。

非日常的なセックスであぶり出された「性」と「生」。生々しい欲望を描く「ミクマリ」

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『ふがいない僕は空を見た』(窪美
澄、新潮社)

■今回の官能小説
窪美澄『ふがいない僕は空を見た』収録作品「ミクマリ」

 2011年本屋大賞第2位、山本周五郎賞......新潮社が窪美澄という作家を世に送り出したとき、まさかこれほど急成長するとは思わなかっただろう。新潮社主催の「女による女のためのR-18文学賞」を受賞したのは、この書籍の最初に収録されている「ミクマリ」。主人公の男子高校生と人妻との、痛々しいほど真っすぐなセックスが描かれている。

いつまでも若く、キレイで従順……男性が描く「イイ女」の限界

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『不倫純愛』(新堂冬樹、新潮社)

 ちょっと前に車のCMで「私たち、主婦で、ママで、女です」なんてキャッチコピーがあった。「VERY」「STORY」(いずれも光文社)を愛読し、バッチリメークに、デカサングラスかけた巻き髪、白のクロップドパンツにハイヒールで、片手にコーチのバッグ、もう片手に子どもをぶら下げているオサレ妻。ひと昔前は「いねーよ!」って思っていたけど、ふと子連れママを見かけると、きちんとオンナしてる奥さまが意外と多い。

いつまでも若く、キレイで従順……男性が描く「イイ女」の限界

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『不倫純愛』(新堂冬樹、新潮社)

 ちょっと前に車のCMで「私たち、主婦で、ママで、女です」なんてキャッチコピーがあった。「VERY」「STORY」(いずれも光文社)を愛読し、バッチリメークに、デカサングラスかけた巻き髪、白のクロップドパンツにハイヒールで、片手にコーチのバッグ、もう片手に子どもをぶら下げているオサレ妻。ひと昔前は「いねーよ!」って思っていたけど、ふと子連れママを見かけると、きちんとオンナしてる奥さまが意外と多い。

少女マンガ風の展開とねっちりした性描写で女性にも読みやすい『恋人』

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『恋人』(松崎詩織、幻冬舎)

 草食系という言葉がすっかり定着した昨今、その実害がついに官能小説業界にも表れつつある。官能小説の新刊、減ってきてるらしい。やっぱり官能小説って男性のアソコを上向きにさせるツールだもの、草食草食言われてる今の時代、右肩下がりになるのは仕方ない。とはいえ、なんともつまらない時代になったモンだ。男子たるもの、いつの時代もオンナを追っ掛けるくらいの元気がなきゃ。