誇り高きヤリマン女子大生の姿に、清々しさすら覚える『愛よりも速く』

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『愛より速く』(新潮社)

 男性には、愛と性欲を切り離して考えている人が多い。既婚者や、特定の恋人がいる人の中にも、風俗通いをする男性が割と多いというのも、その1つの証拠である。対して女性はどうだろう? 男性に比べ、愛と性欲を切り離せない場合が多い気がする。“ヤリマン”であっても、仲間内での自分の立場を優位にしたかったり、コミュニティ内で一番ちやほやされたかったり、誰かの視線を意識しているという話も聞く。もちろん“ヤリチン”にもそういった人はいるだろうが、単純に性欲を満たしたいゆえにセックスに駆られるのは、男性の方が圧倒的に多いのではないだろうか。

 今回ご紹介する『愛より速く』(新潮社)は、著者である斎藤綾子氏の体験を元にした19編の短編小説集だ。舞台は1980年代、23歳の女子大生である綾子は、中学生から中年まで、幅広い年齢の男性と体を重ねている。

不倫を“された側”は、かわいそうな存在なのか? 夫の不貞を許し続ける妻の心理

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『夫と妻と女たち』(幻冬舎文庫)

 今年のワイドショーで一番のキーワードとなっているのが「不倫」である。清純派タレントとミュージシャンとの不倫劇を皮切りに、ご意見番的なタレントやイクメン政治家や大御所タレントなど、多数の不倫騒動が勃発した。

 テレビで報道されているのは、不倫を“した側”の謝罪のみ。ネットでは、不倫を“された側”は徹底的に守られ、援護される。不倫をされた妻、夫は100%被害者で、同情される存在であることが常だ。しかしもしかすると、不倫をされた側にも、人に言えない秘密を抱えているかもしれない。

ラブホテルという非日常で育った女の“節目”を描いた『ホテルローヤル』

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『ホテルローヤル』/集英社

■今回の官能小説
『ホテルローヤル』(桜木紫乃、集英社)

 「ラブホテル」という場所がある。それがどういう場所なのか知らなかった子どもの頃は、おもちゃのような原色のお城を指差して、「あのお城、なあに?」と、無邪気に両親に訊ねたりしたこともあった。今思い返すと、何ともばつの悪い空気が流れていたことだろう。

 「ラブホテル」とは、ふと冷静に考えると非常に不可思議な場所である。なぜなら、男と女が、ただセックスをするためだけに集結する場所だからだ。不倫カップルがたまの逢瀬をむさぼる部屋もあれば、性欲を満たすだけにホテトル嬢を呼んでいる部屋もある。目的とする行為は1つだけれど、それに至るまでの物語は、壁1枚を隔てて十人十色――それぞれの部屋で、わずか数時間ばかりの、男と女のさまざまなドラマが繰り広げられている。
 
 今回ご紹介する『ホテルローヤル』(集英社)は、北海道の片田舎にあるラブホテルが舞台となる連作短編集である。1年のほとんどが厚い雲で覆われ、寒さから身を守るように人々が身体を寄せ合って生きている――そんな人のぬくもりが人一倍恋しくなるような北海道の片隅に、ひっそりと「ホテルローヤル」は建っている。

ラブホテルという非日常で育った女の“節目”を描いた『ホテルローヤル』

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『ホテルローヤル』/集英社

■今回の官能小説
『ホテルローヤル』(桜木紫乃、集英社)

 「ラブホテル」という場所がある。それがどういう場所なのか知らなかった子どもの頃は、おもちゃのような原色のお城を指差して、「あのお城、なあに?」と、無邪気に両親に訊ねたりしたこともあった。今思い返すと、何ともばつの悪い空気が流れていたことだろう。

 「ラブホテル」とは、ふと冷静に考えると非常に不可思議な場所である。なぜなら、男と女が、ただセックスをするためだけに集結する場所だからだ。不倫カップルがたまの逢瀬をむさぼる部屋もあれば、性欲を満たすだけにホテトル嬢を呼んでいる部屋もある。目的とする行為は1つだけれど、それに至るまでの物語は、壁1枚を隔てて十人十色――それぞれの部屋で、わずか数時間ばかりの、男と女のさまざまなドラマが繰り広げられている。
 
 今回ご紹介する『ホテルローヤル』(集英社)は、北海道の片田舎にあるラブホテルが舞台となる連作短編集である。1年のほとんどが厚い雲で覆われ、寒さから身を守るように人々が身体を寄せ合って生きている――そんな人のぬくもりが人一倍恋しくなるような北海道の片隅に、ひっそりと「ホテルローヤル」は建っている。

発端は教授のセックステープ――京女たちのセックスの表裏を描いた『女の庭』

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『女の庭』/幻冬舎

■今回の官能小説
『女の庭』(花房観音、幻冬舎)

 女の欲望は、男の欲望とはまったく違うものである。セックスの時、男が女に欲しているものは快楽のみ。その裏に潜むものなど目もくれずに、ただひたすら無邪気に天国だけを目指す。けれど女はそこまで快楽に対して能天気ではいられない。「恋愛とセックスは天国と地獄が表裏一体」だと、女は知っているのだ。
 
 街全体を高い山々に囲まれた、箱庭のような古都・京都。今回ご紹介する『女の庭』(幻冬舎)は、外敵から守られ、ひっそりと独自の時間軸を持ちつづける京都に住む5人の女たちの物語だ。

女を「神格化」する男との、25年ものすれ違いを描いた『サヨナライツカ』

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『サヨナライツカ』/幻冬舎

■今回の官能小説
『サヨナライツカ』(辻仁成、幻冬舎)

 男は、強く愛した女を神格化することがある。それが叶わない恋ならばなおさらで、まるで女を「女神」のように崇めてしまうのだ。けれど、どれだけ神格化しようと、女は所詮、ただの女。男に崇められれば崇められるほど、女は恋愛に酔うことなく、冷静に相手を愛し続けるため、すれ違いが生じてしまう。

 今回ご紹介する『サヨナライツカ』(幻冬舎)の舞台は、1975年のバンコク。婚約者を日本に残してバンコクで働く東垣内豊は、謎の美女・真中沓子と出会う。豊のもとへ突然現れた沓子は、彼の返事も聞かずに室内に上がり込み、ノースリーブのシャツとスカートを脱ぎ、豊をベッドへと導いた。小柄だけれど弾力があり、成熟している沓子の身体。そして、黒目がちで大きな瞳――美しい沓子の誘いに、豊は光子という貞淑な婚約者がいながらも、あっさりと応じてしまう。

 “好青年”というニックネームを付けられるほど堅実だった豊は、奔放で美しい沓子の魅力に溺れてゆく。旧華族出身の母親を持ち、謙虚でエレガントな雰囲気を携える光子は、ベッドの中では怯えた小動物のように恥じらい、ぴったりと両足を閉じ続ける。しかし、沓子は違う。まるで獣の交尾のような大胆さを持っていた。

旅の醍醐味は男と女の恋愛にも通ずる、ご当地エロス小説『美女紀行』

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『美女紀行』/双葉社

■今回の官能小説
『美女紀行』
睦月影郎、霧原一輝、橘真児、川奈まり子、葉月奏太、柚木郁人、とみさわ千夏(双葉社)

 人は相手を見る時、なぜその背景にある「土地」に魅せられるのだろう? 函館、博多……訪れたことのない地名を聞くと心が浮き足立ち、故郷や、両親・祖父母にゆかりのある地名を聞くと、とたんに親近感が沸いてしまう。

 また、その土地に根付いた「方言」も、魅力の1つとなりえる。地元民にしてみれば何とも感じない、むしろ恥ずかしいとすら感じるかもしれない方言だが、その土地を知らない者からすると、それはそれはぞくっとするほど暖かくて可愛らしい、その人の強い魅力となるのだ。

大人の女は童貞の夢を打ち砕く? 成長譚としての官能小説『彼女はいいなり』

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『彼女はいいなり』/角川書店

■今回の官能小説
『彼女はいいなり』サタミシュウ(角川書店)

 童貞喪失は早い方がカッコいい。思春期の性として、女性の処女喪失よりも、男性の童貞喪失の方が、より死活問題に関わる。もっと言うと、かっこいいよりも、早く「ヤリたい」という気持ちが強いのかもしれない。10代に突入した頃からオナニーを経験し、朝晩の歯磨きと並ぶ頻度でそれを繰り返している10代男子。だからこそ、セックスに対しての並々ならぬ希望と期待、そして憧れが強いはずだ。

 誰彼かまわず、とにかく早く体験したい。でもやっぱり、好きな女のコとしたい。女が想像している以上に、思春期の少年は繊細でロマンチスト、しかも端から見れば想像も付かないほどの高いプライド、その両方持っている。その反動で、大きなコンプレックスも抱えやすい……思春期の少年は、思春期少女以上に、複雑で厄介な生き物だ。

就職難がテーマに!? 官能小説的就職活動は、身体を張ってナンボ

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『写真館』/幻冬舎アウトロー文庫

■今回の官能小説
『写真館』吉沢華(幻冬舎アウトロー文庫)

 官能小説を読んだことのない人が、「官能小説」と聞いて、パッと思い浮かぶシチュエーションは、だいたい決まっていると思う。人妻モノ、痴漢モノ、SMモノ……その中でも、官能小説的職業と言えば、即答できるのはナースと教師くらいではないだろうか?

 数えられる程度のありきたりなパターンしか存在しなかったのは、昔の話。昨今の官能小説には、実にさまざまなジャンルやシチュエーションが登場して来ている。

 今回ご紹介する『写真館』(幻冬舎アウトロー文庫)は、女子大生の就職活動がテーマとなっている。就職氷河期の現代では、履歴書に貼る写真1つも採用を左右する大きな要素となる――そんな一般的な就職活動から一歩離れた、“官能小説的就活”とは、いったいどんなものだろう?

男に選ばれることに疲弊した女へ、元AV女優が送る『人妻、洗います』

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『人妻、洗います。』/双葉文庫

■今回の官能小説
『人妻、洗います。』川奈まり子(双葉文庫)

 女は男に選ばれるもの――果たしてそうだろうか?

 男が好みそうな服をまとい、髪の毛は柔らかに巻いて、清楚さを際立たせ、無言で男を誘う……そんな記号化された「モテ」の定義に躍らされている女性も少なくない。しかし、そんな定義を勝手に作り出したのも、もしかしたら私たち女なのかもしれない。実態のない「男目線」に振り回され続け、結果として、男に選ばれればラッキーだが、一方で選ばれなかった女たちは、どうするのか? さらに、今は、元気のない男たちがはびこる時代である。ぼけっと待っているだけでは、なかなか男は捕まえてくれない。目の前を何人もの男が通り過ぎてゆくたびに、次第に自信を喪失してゆく女たち。卑屈になり、殻にこもって「どうせ、私なんて選ばれない」が口癖になってしまう。

 しかし、男から選ばれないのならば、自ら男を選べばいいのではないだろうか。かつて、AV女優として人気を博した川奈まり子の官能小説『人妻、洗います。』(双葉文庫)には、そんな女性としての自信を失った人妻たちの成長が描かれている。