福祉から無視され続ける社会的弱者としての売春少女たち【前編】

若手専門家による、半熟社会をアップデートする戦略提言
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■今回の提言 「就学期間中に社会へ包摂し、売春に落ちる子を救い出す」 ゲスト/鈴木大介[ルポライター] ──今月のゲストは、裏社会の住人たちを中心に、ディープな"現場"での取材を続けるルポライターの鈴木大介氏。大メディアでは取りあげられることのほとんどない、路上に生きる女性たちによる"売春"という問題をテーマに据えて、同じく売春の量的調査を進めるチキさんと、がっぷり四つで論じてもらいました。 荻上 この連載では前々回、自殺の問題を取り上げました。昨今、自殺、ホームレス、ネットカフェ難民、失業による貧困化といった問題を、いかに社会的に解決していくのか、ということがようやくテーマに挙げられるようになっています。それ自体は前進であるものの、こうした問題は、その多くを「男性」が占めるものであり、社会問題化のジェンダーギャップがあるのもまた事実です。では、女性の場合、同種の問題がどこに表れているか。そのひとつに、昨今ではなかなか語られることのない、(風俗系ではない)「売春」の問題があります。典型的なケースでいえば、貧困、厳しい家庭環境、教育からの排除などを背景に、仕事も得られず、加えて精神疾患などを併発している女性が一定のボリュームで存在している。そうした女性が、政策的なケアを受けられず、社会的包摂から外れていった挙げ句、風俗産業の外にある売春行為に陥っていくというルートが存在しています。  僕は今、出会い系・テレクラ・出会い喫茶などを主なチャンネルとして、現代日本の売春についての量的調査や聞き取り調査を進めていますが、今回は、『出会い系のシングルマザーたち』などの著作でいち早くこの現実に注目されてきた、ルポライターの鈴木大介さんをお招きしました。対象にがっつり密着し、より不可視化された層へディープに切り込んでいく鈴木さんの取材アプローチは僕とは全く異なり、とてもまねできるものではありませんが、それでも見ている風景、伝えようとしている事実はかなり一致しています。  この数十年、売春という問題は、抽象的な自由や権利を絡めた象徴闘争の場ではあっても、それ自体を分析し、実態を明らかにしなくてはならないという対象からは外されていました。そこで、最前線で取材を続ける鈴木さんとの情報交換も兼ね、現状への理解を共有できればと思っています。 鈴木 最近では、「別冊宝島」に向けて、知的障害を持っていて路上生活をしながら売春をしている子を3人取材しました。ひとりは、「彼氏」と一緒にカラオケボックスで生活してる子。なぜその子を取材しようと思ったかというと、サイトで「車の中でフェラチオして2000円」という募集をしてたんですね。毎日何回かそれを書いていて、明らかに価格設定もおかしいのでアクセスしみたら、案の定、障害を持っていた。  何度かアタックしてみたところ、その子の彼氏と称する男からサイトを通して直接電話がかかってきた。会ってみて驚きましたね。最初は、ヒモ男のように売春させてるのかと思ったんですが、本当にカップルなんですよ。カラオケで話をしたら、女の子のほうはかなり重度の知的障害で、ほぼ日本語が通じないというか語る気力もなさそうな感じで、そのうち彼氏の膝枕で寝始めちゃって(笑)。それでほとんど彼氏のほうに話してもらう取材になりました。
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東電の情報公開はネットの勝利なのか? 政治の本質を無視した集合知の幻想を暴く!!

国家とは、権力とは、そして暴力とはなんなのか......気鋭の哲学者・萱野稔人が、知的実践の手法を用いて、世の中の出来事を解説する──。
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今月の副読本 『社会契約論』 ルソー著/岩波文庫(54年)/720円 フランス革命の原動力になったとも言われる、ジャン=ジャック・ルソーの代表作。一般意思を説きながらも、政治の本質を強調し、肯定する同書の思想は、現代までにつながる民主主義に多大な影響を与えた。  前回は、インターネットを通じた情報の暴露や漏洩が、政治にどのような影響をもたらすのかを考えました。ウィキリークスのような暴露サイトまで存在するようになったことで、各国の政府は今後、情報の公開を前提として行動せざるを得なくなります。たとえ特定の情報を機密にするにしても、政府はなぜその情報が機密扱いとなったのかを潜在的には説明する責任を負わなくてはならなくなりました。機密情報もまた、常に暴露や漏洩によって公開される可能性にさらされているからです。  このことは各国政府に限った話ではありません。社会的な影響力を持つ民間企業も、政府と同じように情報の公開を前提とせざるを得ない状況に置かれつつあります。2010年11月には、ウィキリークスの創始者ジュリアン・アサンジ氏が、次のターゲットは米国のメガバンクだ、と米経済誌「フォーブス」のインタビューで語ったことを受け、そのターゲットだと憶測されたバンク・オブ・アメリカの株価が下落しました。  もちろんこうした状況は、ウィキリークスに狙われようが狙われなかろうが変わりません。典型的なのは、今回の福島第一原発事故で見せた東京電力の対応です。3月27日に東電は、福島第一原発2号機のタービン建屋内にたまった水から通常の炉内の1000万倍の放射能を検出したと発表しました。これが本当なら非常に危険な状態です。しかし夜になり東電は「違う物質と間違えた」とその発表を訂正。武藤栄副社長は、分析内容の吟味が十分ではなかったと、その理由を釈明しました。つまり東電は、十分な分析を行うよりも情報の公表を優先させたわけですね。それが日本だけでなく世界を震撼させるような誤報につながりました。このときの誤報で東電の広報担当者が漏らした言葉が、問題の本質を表しています。「測定結果が不確実な可能性があっても、公表しなければ、後から『隠していた』と批判を浴びる」(朝日新聞の記事より)。変に情報を操作するより、初めからバレるものとして情報を開示しておくほうがリスクが少ない。経済産業省の原子力安全・保安院も、同じ理由で公表を優先したということです。
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今こそ考える自然エネルギーと原発の呪縛から逃れる方法

──ビデオジャーナリストと社会学者が紡ぐ、ネットの新境地
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3月11日に起こった東日本大震災は、数多くの被害を国内外にもたらしたが、その中でも福島原発問題は、震災から1カ月が経った現在でも収束する兆しは見えない。こうした中、原子力発電の必要性があらゆる所で議論されているが、原子力発電所や電力会社に詳しい飯田哲也氏は、瀬戸内海の島に建設が予定されている上関原発の問題点から、新しいエネルギーのあり方を提案している。いびつな電力会社の経営状況と原発の運営方法、そして民主党によるエネルギー政策の欺瞞とともに、今だからこそ考えるべき自然エネルギーについて考察してみたい。 (※本鼎談は、東日本大震災の発生前に収録されたものです) 今月のゲスト 飯田哲也[環境エネルギー政策研究所所長] 神保 今回は、自然エネルギーが専門で原子力発電所の問題にも詳しい、NGO環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也さんをゲストに迎え、現在中国電力が建設を計画している山口県熊毛郡上関町・上関原子力発電所の建設現場で起きている反対運動を取り上げます。  私は先日、上関原発、およびその対岸に位置する祝島で取材を行いました。祝島は人口500人で、平均年齢がおよそ79歳という、高齢者が多い島ですが、現地の漁業協同組合は、原発建設に対する補償金の受け取りを拒否し、工事への反対運動を行っています。漁師の方々が船を出して、原発の建設予定地に建設資材を運ぶ船舶をブロックすることで、辛うじて工事が止まっている状況です。加えて、普天間基地の移設先とされた沖縄の辺野古の反対運動のように、全国から「虹のカヤック隊」と呼ばれるカヌー乗りの若者たちが集まり、祝島の漁師さんたちの反対運動を支援しています。しかし、2月に入ってからは、中電が工事を強引に進めるような動きを見せており、現場では繰り返し衝突が起きています。   飯田 原発の工事が本格化すれば、周辺の漁業は壊滅的なダメージを受けますから、漁協関係者の方は必死です。そして、同じくらい大事なのは、上関原発建設予定地である「田ノ浦の浜」には、世界遺産級の自然が残っているということ。同地は、世界唯一のカンムリウミスズメの生息地であり、瀬戸内海中を探しても、あれだけの自然が残っている場所はありません。 神保 またカヤック隊の皆さんはこの問題がテレビや新聞ではほとんど報道されない中、インターネットで知り、抗議運動への参加を決めたと話していました。彼らは現在、自分たちの活動をUSTR EAMで配信しています。飯田さんは、この祝島の反対運動について、従来の原発反対運動とは異なる性格を持っていると言われていますが、まずその理由からお話しください。 飯田 中電は現在、電力を余らせている状態です。なおかつ、島根原発3号機がもうすぐ完成するので、電力はますます余る。販売電力は減ってきているのに、その中でさらに原発を造ろうとしているんです。今回の原発計画は経営的に見ても、電力収支から見ても、恐ろしく非合理なもの。六ヶ所再処理工場と並ぶ、最もナンセンスで、無意味な原子力計画だといえます。現在、中電は"電力融通"という形で、関西電力を中心に余った電力を買ってもらっている。そして、この先も電力需要が下がっていくことは確かなのに、彼らはいきなり業績が回復するかのような空想的な計画を描いています。 神保 つまり、この原発計画はそもそも電力需要の点から必要がない上に、中電という企業にとっても過大な負担になる可能性が大きいから、原発への賛成反対を度外視してもやるべきではないと。中電による「将来電力需要が増えるという根拠」が、今後、中国地方の経済が飛躍的に伸びるという前提の上に立ったものであることに不安を覚えます。
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震災報道で浮き彫りになったソーシャル時代のジャーナリズム

──激変するITビジネス&カルチャーの深層を抉る!
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決定的瞬間でなくとも広がりは生み出せる
──災害は報道の形を問い直す。
 3月11日に発生した東日本大震災は、私たちの生活をガラリと変えてしまった。この影響は一時的なものでなく、社会のあり方を問い直す機になるはずだ。そこでは、メディアもまた例外ではない。今回は、ソーシャルメディア時代のジャーナリズムを考える。  3月に発生した東日本大震災に際して、ワイドショーの震災報道はあまりにも画一的だ。被災地は広範囲にわたり、孤立した避難所もあちこちにまだ多く存在している。そうした状況は、現地に入っているボランティア団体などに取材すればすぐにわかるはずだが、多くのマスコミは気仙沼や陸前高田など、津波の被害が甚大で「絵」になりやすい「有名被災地」に取材陣を集中させてしまい、見た目の被害がはっきりしない茨城県や千葉県などは、ほとんど放置されてしまっている。  そして被災地での報道も、実に扇情的だ。例えば27日の朝には、日本テレビ系の『The サンデーNEXT』で、岩手県大船渡市立大船渡中学校の卒業式が報じられた。死者・行方不明者が400人を超える同市で、大船渡中の生徒・教職員たちは全員が無事だったという。そして106人の卒業生に卒業証書が手渡された。卒業式が終わり、卒業生たちはその足で学校内の体育館の避難所へ。そして全員で「ふるさと」などを被災者たちのために合唱した。大きな打撃を受けた街を思い、みな涙を流す光景が撮影され、放送される。  これはもちろん胸を打たれる光景であり、それに対して何も言うべき言葉はない。しかしこの映像がテレビで流れたことには、若干の違和感も私は感じた。どんな違和感かといえば、そこにテレビ局側の「押しつけがましさ」のような演出を感じたという点だ。大げさなナレーション、涙を流している人たちへのカメラのクローズアップ、感情をかき立てようとする字幕。  もしこの映像が、そこに偶然居合わせたボランティアや被災者、あるいは大船渡中の生徒、教師、保護者といった人たちが撮影し、YouTubeに流したものだったら、きっと私が受けた感覚はかなり異なるものだったのではないかと思う。実際、震災後に多くの情報を収集する中で感銘を受けたのは、被災した方々が撮影したYouTubeや本人の言葉によるツイッターであり、現地に入ったボランティアや看護師、医師、自衛隊員たちのブログやツイッターだった。    ではこうした人たちの発信と、マスコミとでは、何が異なるのだろうか?  ここで最も重要な視点は、「当事者/傍観者」というポイントである。これは、マスメディアが傍観者的に取材し、当事者意識が欠如しているというような単純な批判だけでない。実は今のメディア空間を取り巻いている重大な内在的問題が、震災をきっかけに噴出してきたということなのだ。
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大物監督逝去に声優のバラドル化──激動のアニメ業界は今どうなっている!?

──「日刊サイゾー」で話題のあの記事をただ読む以上に、さらなる知識を知りたいそんなアナタのために、話が100倍(当社比)膨らむ" プレミアム"な記事をサイゾー目線で厳選レビュー!
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『魔法少女まどか☆マギカ』の公式HPより。
 テレビ番組の改編が行われ、番組表のラインナップが一新する4月。ドラマやバラエティとともに、新たなアニメ番組も軒並み始まり、お子様から大きなお友達までを楽しませています。最近では軽音楽部のゆるふわな日常を描いた『けいおん!』や、救いのない展開の連続で従来の魔法少女アニメとは一線を画す『魔法少女まどか☆マギカ』(共にTBS系)をはじめ、丁寧な心理描写や"ジェンダートラブル"といった深みのあるテーマ、社会問題と呼応した設定などで大人も楽しめる良作アニメが続々と登場。そうした中で、ニコニコ動画では、アニメの最新話を1週間無料配信するといった試みも定着し、多様な視聴環境が整いはじめています。  一方で、アニメ業界も明るいニュースばかりではありません。今月17日に『あしたのジョー』(フジテレビ系)や『ベルサイユのばら』(日本テレビ系)で知られる出崎統監督が逝去。昨年の8月には『パプリカ』や『千年女優』の今敏監督もお亡くなりになり、日本の誇る大物アニメ監督の度重なる訃報に業界内外が悲しみに暮れました。ほかにも、東京都青少年育成条例を受けて各社が東京国際アニメフェアをボイコットするなど、現在アニメ業界は激動の時期を迎えているといえるでしょう。(2011年3月24~27日に予定されていた東京国際アニメフェアは東日本大震災の影響で開催中止となりました)  そこで今回は、要注目のアニメ記事を硬軟とりまぜてピックアップ! OVA『かってに改蔵』の豪華声優陣からのコメントに、声優兼アイドルの平野綾・徹底分析、生前の出崎統監督インタビューまで──なにかと話題に事欠かないアニメ業界。アニメは子どもとオタクのものなんて考えはもう古い!! 今からでもまだ間に合う、最新アニメ事情を知りたい方はこちらをお読みください! 【プレミアムな関連記事】 [レベル1:話題のアニメをディープに知る] 『まど☆マギ』視聴難民がネットに殺到! オタク業界変革期を直撃した震災の余波 2011年3月31日(日刊サイゾー) 大ヒットの残酷魔法少女アニメがテレビ離れを引き起こす!? 悩める闘魂"あいぽん"5年間の足跡を語りつくす 2010年1月14日(日刊サイゾー) 『魔法少女まどか☆マギカ』の声優・野中藍さんインタビュー。 彼女の「天然じゃない」発言の真意とは? 『電波女と青春男』キャストが語る電波っぷり!! 2011年3月27日(日刊サイゾー) 登場人物もスタッフも電波な人しかいないみたい......。 新世代破天荒バンド神聖かまってちゃん 病んだ叫びがむき出しの、危険なライブ 2010年3月号(プレミアサイゾー) 『電波女と青春男』のOP曲を手がける神聖かまってちゃん。 ただただお騒がせするだけのバンドじゃないんです。 SKE48の大人のための2次元講座 アニメ版の見どころは"ヌルヌル"と"プルンプルン" 2011年4月号(プレミアサイゾー) 6月には4年ぶりに新刊が出る「涼宮ハルヒ」シリーズ。 SKE48もあの揺れに夢中!? 事務所&ファン批判で自爆! オタクを見捨てた"平野綾"はどこへ行く? 2011年1月号(プレミアサイゾー) ツイッターでつぶやくたびにネットニュースになる人気者! [レベル2:地上波ではできない過激なアニメ] 『さよなら絶望先生』に連なる久米田康治の快作『かってに改蔵』がついにアニメ化! 2011年2月10日(日刊サイゾー) OVAだからアニメ化できたヤバい作品を若手豪華キャストが語る。 全体的に危ないセリフばかりで回答できないことも......。 [レベル3:注目すべきアニメ脚本家の実力] 萌えアニメは『おとめ妖怪ざくろ』を見習うべき! 脚本家・岡田麿里のすごさとは? 2011年3月号(プレミアサイゾー) 今期では『花咲くいろは』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』を手がける気鋭の脚本家。 評者たちが彼女を絶賛する理由って? [レベル4:巨匠を偲ぶ] 「人間を甘く見ている」巨匠・出崎統が"萌え"を斬る!(前編) 「人間を甘く見ている」巨匠・出崎統が"萌え"を斬る!(後編) 2009年1月13日(日刊サイゾー) 『あしたのジョー』ばりにアニメと闘い続けた男。 [レベル5:真面目に考えるアニメ市場] 【TIAF2010autumn】アニメ市場動向と動画環境の未来を斬る! 2010年11月1日(日刊サイゾー) 地デジでアニメが変わっちゃう!? プレミアサイゾー http://www.premiumcyzo.com/
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尽きない外見改善への欲求 美容食品、包茎手術の集金力

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ヒアルロン酸は飲んだり塗ったりした
だけじゃダメだよね、ともちん!
 何度失敗談が出回ろうとも、その勢いが衰えることのない美容ビジネス。コラーゲンドリンクに始まる美容食品市場は順調に拡大し続け、包茎手術に始まったコンプレックス改善医療は相変わらずブームを生み続けている。なぜ人はそこまで外見に執着するのか。改めてその魔力を検証したい──。  女性に向けて、外見の美しさをサポートすることをうたった食品──いわゆる「美容食品」の売れ行きが好調だ。2011年2月に富士経済が発表した〝健康・美容食品の市場規模〟に関する調査結果によると、10年の同市場規模は1兆7807億円で、6年ぶりのプラス成長に転じると見込まれている。それを大きく牽引したのが〝美肌効果〟を訴求した食品で、中でもコラーゲンやヒアルロン酸などを配合したドリンク類は、前年比12・7%の大幅な増加が見込まれるという。  確かにコンビニやドラッグストアに行くと、栄養ドリンクやゼリー飲料に混じり、そうした美容ドリンクも当たり前に見かけるようになった。価格帯は1本200〜400円前後で、栄養ドリンクとさほど変わらないものの、「それを購入する女性の心理がよくわからない」という男性読者も多いだろう。そのカラクリについて、数々の美容商品の開発に携わっているコスメティックプランナーの恩田雅世氏は、次のように語る。 「コンビニでヒアルロン酸配合の美容ドリンクを買ったり、鍋料理店でコラーゲンボール【編註:コラーゲンを球状に固めたもの】を注文する女性たちの多くは、『これかわいい』っていう女子的な"条件反射"が働いているんです。もちろん、効果を期待する気持ちはあると思いますが、"コラーゲン=肌に良い"という印象だけで、実効性について深く考えたりはしていないでしょう」  そうした女性的感覚を刺激しようとしてか、美容ドリンクのボトルは、いかにも女性ウケしそうなデザインが多い。しかし、実際のところ、本当に効果はあるのだろうか? 「私は医師や科学者ではないので、はっきりとしたことは言えないのですが(当特集【3】参照)......例えばコラーゲンを経口摂取した場合、体内で吸収する時にはアミノ酸に分解されてしまいます。アミノ酸は身体のさまざまな機能調節に使われますから、必ずしも肌に作用するとは限らない。ただ、医薬品と違って効能があいまい......むしろ"どう効果を実感するかわからない"というグレーゾーンの代物であることこそが、コラーゲンが流行しているゆえんだと思います。スキンケアに割く時間や労力が費やせなくても、『コラーゲン摂ったから大丈夫』という気休めになりますから」(同)  とはいえ、何も各企業が足並みを揃えて"気休め商品"を作る必要はないはず。"本当に美肌効果のある商品"よりも"気休め商品"が市場で先行しているのはなぜなのか? 「マーケティングの視点からいうと、美容商品というのは"事実を突き付けたところで売れるとは限らないもの"なんです。最近では、鮭や鯛に含まれるアスタキサンチンを配合したドリンクや、アミノ酸を顆粒にしたサプリメントなど、優秀な美肌効果が期待されている商品もたくさんありますが、〝コラーゲン=美肌〟というイメージがすっかり定着してしまったため、『アスタキサンチン配合』よりも『コラーゲン配合』のほうが絶対に売れる。どんなに性能が高くても、後発である限り、初めにブームを作ったものに勝つことは難しいんですよ」(同)  そうした背景により、最近ではプラセンタ【編註:女性の胎盤から抽出される成長因子やほかの栄養素のこと】やビタミンCといった、科学的に効果が実証されている成分とコラーゲンを調合した"抱き合わせ商品"が増えているという。また、コラーゲンの分子サイズをナノ化、ピコ化と小さくして、体内での吸収率の良さをうたった商品も登場するなど、"コラーゲン頼み"の傾向は加速するばかり。それだけ女性の購買意欲を駆り立てる力があるのだろう。
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本橋成一×上原善広 部落産業・屠場の写真集は根深いタブーを超えたのか?

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上原善広氏。
 2011年3月、写真家・本橋成一氏による写真集『屠場〈とば〉』(平凡社)が出版された。1968年、九州や北海道の炭鉱で働く人々を追った写真集『炭鉱〈ヤマ〉』(現代書館)で高い評価を得て、その後も市井の人々に惹かれるままシャッターを押し続けた本橋氏。そんな彼が、意欲的に取り組んだ被写体が"屠場"だった。いわれなき職業差別と身分差別に抗いながら、大阪・松原の屠場で働く人々に迫った最新作について、被差別部落出身のジャーナリスト・上原善広氏が話を聞いた。 上原善広(以下、上原) 『屠場』を手に取って、最初は文章を読まずに写真だけ見たんです。すると、屠場の中には見覚えのあるタイル張りの床、外観には僕が住んでいた団地が写っている。幼少期を過ごした大阪府松原市の「旧屠場」だと、すぐにわかりました。文章を読むと80年代、松原市営時代の旧屠場から、現在の(南大阪食肉市場株式会社に再編された)新しい屠場まで、約30年間にわたる写真が収められている。これはすごいと思いました。

 それに、タイトルの読ませ方が"とば"なのがいいですね。一般的には"とじょう"と呼ぶことが多いけれど、地元ではこう呼んでいた。毎朝、牛や豚の悲鳴が聞こえてきたことを思い出しました。 本橋成一(以下、本橋) タイトルをつけるときに、屠場のみんなに「"とじょう"にしようと思う」と言ったら、「ちゃんと"とば"と呼んでくれよ」と返されたんです(笑)。 上原 それにしても、よくこれだけの写真が撮れましたね。知っている顔が何人もいるけれど、笑顔で写っているのがすごい。この前、作家の西村賢太さん(『苦役列車』(新潮社)で第144回芥川賞を受賞)にお会いして、「屠場労働者は世界的に見て、肉体労働の中でも最底辺に位置付けられているんじゃないか」という話をしたんです。ヨーロッパでも"革なめし"の仕事が底辺に見られているし、日本の屠場はさらに被差別部落の問題も絡んでいる。取材、ましてや写真を撮られるのなんて、みんな嫌がるだろう、と思うのが普通です。 本橋 周りからどう見られようと、彼らは職人としての誇りを持っているんです。松原の屠場は、市営から南大阪食肉市場に再編される過程で、一度は官民共同出資の第三セクターになったことがありました。そこで屠場の職人たちは何人も配置換えになり、市の清掃の仕事に就くことになった。市の人たちは「これで屠場の仕事から離れられるぞ、よかったな」と言ったけれど、職人たちは「屠場の仕事を、なんだと思っているんだ」と憤慨した、というエピソードがあります。 上原 確かに、屠場で働いていることを隠したがるのは、被差別部落で育った人ではなく、外の"一般人"ですね。例えば、都立芝浦や横浜の屠場では働き手の9割が一般の人だといわれているので、なかなか取材ができない。日本で一番うるさいって評判です。 本橋 僕も行ったことがないから、一度見学したいと思っています。 上原 労働組合が一筋縄ではいきません。例えば、筑紫哲也さんが「経費削減により、ニューヨークが警察の数を減らす」というニュースについて、「ニューヨークが屠場みたいになってしまう」と言ってしまった際に、激しく糾弾されていました。松原はもちろん、ほかの屠場の人はほとんど関心を示さなかったという話もある。屠場のイメージについて、一般人ほど神経質になっている部分もあるのでしょう。 本橋 僕の場合、ライフワークとしてずっと、松原の屠場を撮り続けてきました。そして、写真集の制作に向けて撮影を再開するときに、一応、部落解放同盟に話をしたんです。けれど、なかなか話を通してくれない。そこで、南大阪食肉市場の村上幸春社長を訪ねたら、「撮っていいよ」と。 ──屠場は長らく部落産業とされていたせいか、これまでメディアが触れてこなかった一種のタブーでもあります。この写真集を出すに当たって、出版元の平凡社からはすんなりOKが出たんですか? 本橋 被差別部落の問題が絡むと、どの媒体もやはり怖がるし、躊躇しますよ。でも今回は、「僕がすべての責任を持ちます。頼むから出させてよ」と言って、現場で写っている方にお断りして、あとは早かったですね。  写真集に文章を寄稿してくださった部落解放同盟松原支部の吉田明さんも「もう亡くなったおばあちゃんも屠場に娘が残っているから、断りを入れておくよ」と対応してくれたし、屠場のみんなもすごく喜んでくれて。完成した本をすぐに持って行ったら、中身も見ずに「表紙も堅いし、立派な本だな。うれしい」と言ってくれましたね(笑)。写っている人に喜んでもらえるのが一番です。 上原 30年間も撮影を続けてきたからこそ、できたことですね。若いカメラマンだったら、きっと同じことはできなかったでしょう。 本橋 撮りたい写真を撮るには、「なぜ撮るのか」をしっかり伝えて、被写体との信頼関係を作らなければいけません。例えば、僕は屠場のナイフ使いの人に惚れ込んで、「ナイフ一本で牛をさばく様子が、本当に見事だ」ということを、何度も伝えました。そうすると、相手も「この人なら裏切らないだろう」と考えてくれるようになる。大手の新聞社の名刺でも持っていれば楽なのだけど、フリーの身ですからね。上原さんも、取材して原稿を書く際には、「この人は、自分を裏切るような記事は書かないだろう」と信頼されるために、いろいろと努力をしているでしょう? 上原 僕の場合は、時々は裏切ってしまいますけど(笑)。
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噛めば噛むほどびしょ濡れに! 芸人おかもとまりが、開拓した新境地

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拡大写真は「プレミアサイゾー」でご覧になれます。
「できれば、あんまり見てほしくないんですよね......」  芸人・おかもとまりがそう語るのは、4月27日発売の最新DVD『びしょ濡れレポーターおかもとまり』のこと。本作では、かねてから「将来の夢はレポーター」と語っていた彼女が、故郷の群馬で念願のレポーター業に挑戦。でも、なぜか露出度の高い水着を着せられたり、セリフを噛むたびに水をかけられたりと、理不尽な目に遭うハードな内容となっている。見てほしくないと語る理由は、そこに見せたくない自分の姿が映っているから。 「かなりストレスを感じて、素の自分が出ちゃってますね。怒ってる部分もあるんですけど、どこまで本気でどこから演技なのか、自分でもわからない状態です(笑)」  一見気が弱そうなおかもとは、精神的に追い込まれながらも、このハードなロケをやり遂げた。彼女にとって、レポーターは本当にやりたい仕事だからだ。
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欧米は大成功、日本では苦戦? グルーポンが陥った"落とし穴"と"胸算用"

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百花繚乱のクーポンサイト。
──50%を超える大幅な割引率や「おせち事件」など、良くも悪くも話題を振りまくグルーポン。現在では、多くの類似サイトが立ち上がった共同購入型のクーポンビジネスだが、その展望は明るいのだろうか?  『クーポン・プロモーション戦略』(ラッセル・D・ボーマン著/ビジネス社)によると、世界で初めて割引券という形のクーポンが発行されたのは1895年。アメリカの大手シリアルメーカー「C・W・Post」社(現ゼネラルフーズ)が「クレープ・ナッツ」という商品を販売する際、インセンティブとして1セントの割引クーポンをユーザーに配布したのが発端だ。その後アメリカでは、第2次世界大戦後の大量生産・消費時代を迎えてマーケティングの需要が高まり、クーポンはセールス・プロモーションの一環として生活に浸透していった。  一方日本では、1984年よりクーポン券が登場したという記録があるが、普及の契機が訪れたのは87年10月1日。公正取引委員が「雑誌業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約第7条および同規約施行規則第8条第3号についての運用基準」において「クーポン付き広告の掲載に関するガイドライン」を施行・制定した時だ。これはクーポン広告の掲載に関する規制緩和であり、90年になると新聞でも「クーポン付き広告に関する規則」が承認されたことで、各雑誌媒体や朝日、読売といった大手新聞がクーポンを掲載するようになる。そして、96年にインターネットグルメサイト「ぐるなび」、99年にはぴあの「グルメぴあ」、00年にはリクルートの「ホットペッパー」と、クーポン雑誌やウェブサイトが続々と登場して一般に浸透していった。  そして08年、アメリカでグルーポンが産声を上げ、短期間でサービスを販売するフラッシュマーケティングによるクーポンビジネスがスタート。一定数の購入者が集まれば、50%もの割引となるそのサービスは、10年4月、日本でも「グルーポン」に影響を受けて、フラッシュマーケティングの手法を導入した「ピク」が登場。同年6月にはグルーポンが共同購入サイト「Q:pod」を運営するクーポッドを買収して日本参入を果たしたのを皮切りに、同年7月にはリクルート「ポンパレ」、8月にはUSEN「ピタチケット」とシェアリー&SBIインベストメント&光通信「シェアリー」、10月には一休の「一休マーケット」、12月には日本テレビ「日テレぐるチケ」と、わずか1年足らずで雨後の筍のように共同購入型クーポンサイトが林立した。 「新しいサービスとはいえ、ほとんどが既存のテクノロジーを応用したものです。販売している商品を購入する人が増えれば増えるほど安くなるという『共同購入(ギャザリング)』は楽天やヤフーのようなショッピングサイトで行われていて、そこに『フラッシュ(短時間)』という概念を組み込んだだけ。あとは商材を確保する営業力があれば、小資本でも始めることができます」(リクルート関係者)  もちろん、サイトの知名度を高めてユーザーを集めるための広告費は必要(後述)だが、この手軽さからSNSに次ぐビジネスチャンスを求めていたIT企業が飛びついたのだろう。とにもかくにも、雑誌やウェブの"枠"を売っていた既存のビジネス形態の中に、クーポンの販売手数料を徴収するという新サービスが誕生し、活況を呈するに至った。
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政府の説明責任が問われる時代! ウィキリークスは国家主権を揺るがすのか!?

国家とは、権力とは、そして暴力とはなんなのか......気鋭の哲学者・萱野稔人が、知的実践の手法を用いて、世の中の出来事を解説する──。 第9回テーマ「ネットの台頭で崩壊する情報の独占」
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今月の副読本 『技術への問い』 マルティン・ハイデッガー著/平凡社(09年)/2940円  ドイツの哲学者・ハイデッガーによる、公演や論文をまとめた論集。技術が先鋭化の一途をたどる近現代において、時代の根本にあるもの、そしてその正体を見極めるべく、"技術の本質"に哲学的に迫った一冊。

 2010年はインターネットを通じた情報漏洩事件が立て続けに起こった年でした。日本でも、10月に国際テロに関する警視庁公安部の捜査資料がインターネットに流出したり、11月には、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件の映像が、海上保安官の手によって動画共有サイトに公開され、流出しました。世界中にインパクトを与えたのは、なんといっても、ウィキリークスが10月下旬に40万点にも上るイラク戦争関連のアメリカ軍資料を、11月下旬には25万点に上るアメリカ外交公電を暴露したことでしょう。この暴露に対して、クリントン国務長官はただちに「暴露は米国の外交上の利益に対する攻撃というだけではなく、国際社会、同盟国、パートナーに対する攻撃でもある」とウィキリークスを非難しました(11月29日の記者会見)。イタリアのフラティニ外相に至っては、これを「世界の外交における『9・11』のようだ」とまで評しました。  ここで考えたいのは、インターネットを通じたこうした機密情報の漏洩が、政治の枠組みをどのように変容させるのか、ということです。ネットを通じた情報の暴露や漏洩は、ある意味でITが高度に整備された情報社会では不可避なことです。現代では、ほとんどの情報の保存や伝達はデジタル化によってなされており、それは情報がクリックひとつで複製され、多くの人に伝播されてしまうリスクをもたらしました。  20世紀ドイツの哲学者、マルティン・ハイデッガーが『技術への問い』の中で述べているように、こうした技術の進展に人間が抗うことはできません。そもそも技術、テクノロジーというのは、人間が自らの意思でコントロールできるものではなく、逆に人間がその進展によって、ものの知覚の仕方から、考え方、社会関係のあり方に至るまで規定されてしまうものなのです。したがって、政治の枠組みも、情報のデジタル化とネットワーク化によってなんらかの変容を被らざるを得ません。その変容の中身が今回、ここで取り上げたい問題です。  まず言えることは、各政府は今後、情報の公表を前提として行動せざるを得なくなるだろう、ということです。ウィキリークスのようなサイトが登場したことで、政府の情報は常に暴露や漏洩のリスクに晒されていることが広く認識されました。このリスクはもちろん、管理体制の強化によってある程度は小さくすることができます。しかし、今述べたように、そのリスクは高度情報化社会においては不可避的なものである以上、情報の暴露や漏洩は常にあり得るという態度で行動するのが、各政府にとっての賢明で合理的な選択とならざるを得ません。  では、政府が情報の公表を前提として行動することで何が変わるのでしょうか。それは、政府のアカウンタビリティ(説明責任)がより求められるようになる、という変化です。たとえば今回ウィキリークスによって暴露されたアメリカ外交公電の中には、イタリアのベルルスコーニ首相について「無能で空っぽ。現代欧州のリーダーとしての影響力なし」といった人物評や、イスラエルのネタニヤフ首相について「約束を決して守らない」といった人物評が含まれていました。どちらもアメリカの同盟国の国家元首をコケにしているわけですから、アメリカにとっては完全に面目丸つぶれです。しかし、情報の公表が前提とされるなら、こうした人物評が外交公電で流れることはなくなり、そのときは、たとえ漏洩しても説明責任が果たせるような情報に基づいて外交政策が立案されるようになるでしょう。このことは、情報の中身が単なる人物評ではなく、密約のようなトップシークレットである場合を考えると、ものすごい変化だというべきです。表には決して出せない裏の取引で外交が進められる余地が小さくなっていくわけですから。情報の公表が前提とされると、外交でも内政でも、裏の事情で物事が遂行されにくくなっていくのです。  もちろん、だからといって政治の世界から機密が完全になくなったり、裏のやり取りが消滅したりするわけではありません。どんな世界にも秘密や裏の事情というのはあります。重要なのは、たとえ政治の世界から機密や裏のやり取りがなくならないとしても、それらもまた、表に出たときに説明責任が果たされるような形で処理されていく、ということです。ウラがオモテ化していくわけですね。
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