菅野の指名拒否問題の裏側 スカウトや選手の人生を翻弄したドラフト事件史

【プレミアサイゾーより】 ──11月21日、北海道日本ハムファイターズからドラフト1位で指名された東海大の菅野智之投手が、同球団への入団を拒否し、野球浪人を発表した。球界を賑わせたこの騒動、周知の通り、菅野が原辰徳巨人軍監督の甥であったことからも巨人単独指名が濃厚と見られていた中、日ハムが突如ドラフト会議で指名したことが発端だった。
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『別冊野球小僧 2011ドラフト総決
算号』
(白夜書房)
 菅野の祖父であり、東海大学野球部総監督の原貢氏が「(事前に日ハムから)指名の挨拶がなかった!」と激怒したことが報じられたが、当然、挨拶がなかっただけで指名してはいけないという"決まりごと"はない。だが、そこはプロの世界。スカウトならではの慣習が横行しているという。ある球団関係者の話。 「今のような逆指名のないドラフト制度の中で新人と契約を取り付ける際、本人の意思はもちろんですが、家族や大学・高校の監督、親戚周りとのつながりは非常に重要。そのために各球団のスカウトは年中各地を回り、情報収集に奔走している。つまるところ彼らの仕事は、才能のある選手を見つけることだけではなく、選手に影響力のある人間との関係を作ることでもあるんだ」  プロから目をつけられる選手とはいえ、高校生はもちろん、大学4年生といえども、百戦錬磨のスカウトや球団幹部にかかってしまえば、「目当ての球団にしか入りたくない!」という堅い意志など、コロッと崩れてしまう。そんな選手の将来を考え、サポートするのが親族であり、監督の役割でもあるのだ。スポーツ紙デスクが菅野の件を振り返る。 「彼は当初、12月に入ったら意思表明をすると言っていた。それなのに、11月21日の段階でプロ入り拒否の声明を発表。これが前倒しされたこと自体驚きですが、どうも日ハムの説明を受けた菅野本人が『日ハムに入ってもいいかな......』という雰囲気になってしまった。菅野が尊敬してやまない投手はダルビッシュ有で、彼と一緒に投げようと言われれば、それ以上の誘い文句はない。12月まで待ってしまえば、それこそ菅野が日ハム入りの意思を固めてしまう可能性すらあった。だけど、彼の意向を断固として認めさせなかったのが、原貢氏と東海大の関係者だったとか。彼らは『日ハムの誠意が感じられなかった』などキレイごとを言っていますが、要は選手の気持ちは無視で、自分たちのメンツを保ちたかったのでしょう。ドラフト前、巨人に対して『ほかには行かせません』などと威勢よく口約束したという話もあり、ここで日ハムに入団させてしまうと、東海大学と巨人の"太いライン"に悪影響を及ぼしますからね」  学校と球団の"ライン"については後述するが、本人を口説き落とす前に周りを口説き落とすことは、交渉をスムーズに運ばせるための鉄則。元球団スカウトが、大物揃いだった4年前のドラフトについて口を開く。 「大阪桐蔭・中田翔(日ハム)、成田高校・唐川侑己(ロッテ)、仙台育英・佐藤由規(ヤクルト)というBIG3が高校野球を沸かせた07年、3人ともドラフトでは1位指名確実だったし、当然、12球団の全スカウトが甲子園のバックネットに集まっていたけど、双眼鏡で見ていたのは"親"。選手の親が誰と仲がいいのかとか、どんな人とよく話しているのかばかりを注視していたんだ。話題性があったことからも、特に中田に関しては真剣そのもの、それこそスカウトは皆、父親の一挙手一投足まで凝視していた」 ■監督との意見相違がドラフトを狂わせる?  そんな彼らは、球団によって多少異なるものの、おおむね"プロ担当""アマチュア担当"と分かれている。  プロ担当は、球団間のトレードやトライアウトなどに参加するプロ選手を相手にしているが、球団によっては彼らが独立リーグを回ることもあるという。もちろん、春と秋に行われるキャンプの視察や、開幕すれば1軍の試合のみならず2軍の試合にも足を運び、自分の球団にどこのポジションが足りなくて、どこのポジションが欲しいかなどを検討しながら選手の動向を視察する。  一方のアマチュア担当は、高校生や大学生、社会人など、ドラフトに直接かかわってくる選手をチェックする役回り。もちろん全国の高校、大学を見て回るのは不可能であり、おおよそ、北海道、東北、関東など、地域によって担当が分かれているケースが多い。だが、「情報化の進んでいるこのご時世、自分の足で探して『これは逸材!』という選手はそういない。有力選手というのは、すでに皆に知れ渡っているもの」と、前出の元球団スカウトは続ける。 「高校、大学時代にプロ級といわれている人はごくわずか。社会人に至っては『即戦力という逸材自体が稀』とも言われている。08年にJR東日本東北からソフトバンクに入団した摂津正投手も、『2~3年使えれば良い』くらいの感覚で獲ったそうだけど、大化けしたタイプ。そもそも、即戦力で使える選手だったら、社会人リーグには進まず、とっくにプロ入りしているからね」  だが、球団の将来を担う若手を見つけ、入団にこぎ着けたとしても、新たな問題が勃発することがあるという。それが「監督との方針の違い」だと、前出の元スカウトは語る。 「今や監督ですら2~3年契約がザラ。Bクラスになろうものなら、契約期間中でも解雇の文字が飛び交う。だから監督はスカウトに即戦力を求めてくるワケだけど、監督が代わってもスカウトはそのまま残るから、我々にとって5年後、チームがどうなっているかを考えることのほうが重要。例えば今年はヤクルトの青木宣親、西武の中島裕之がメジャー挑戦を表明したけど、数年前からメジャー志向があるのは球団もわかっていたはず。彼らのような主軸がいなくなっても対応できるように、将来、伸びそうな高校生を獲るのがスカウトの戦略なんですよ。ドラフトでいえば、1~2位指名は監督の意向に沿った即戦力を、4~5位指名あたりに数年後の主力になり得る選手をスカウト主導で指名するというのが慣例で、ヤクルトの青木は4位指名、西武の中島は5位指名だった」(同)  こうした戦略を練るために、スカウトは即戦力が期待できる"大型新人"のところにだけ顔を出すわけにはいかないのだが、各所を回るのは情報収集という点でもメリットがあるという。 「大学や社会人の監督と顔をつないでおくと、掘り出しものを教えてくれることもある。今回、日ハムに7位で指名された早稲田大学ソフトボール部の大嶋匠なんかはその好例だろう。監督自らがプロ志向のある大嶋を日ハムスカウトに紹介したって話だけど、将来性のみならず、話題性も十分だよ」(同)  もちろん大嶋のような例はレアケース。しかし、大学、社会人の監督にとっても売り込みは重要だと、ある大学野球の関係者は語る。 「今の高校や大学の監督にとっては、甲子園出場や六大学野球制覇同様、『何人の選手をプロに行かせることができたのか』ということが評価につながる。有力校では教職を持たず、学校と特別な契約を交わしている監督がほとんどなので、選手権で結果が出なければ即座にクビ。契約継続のためにも、躍起になって選手を売り込みにかかるんです」(同)  そこで出てくるのが、前述した、いわゆる球団と学校をつなぐ"ライン"というもの。冒頭の関係者は「監督契約のためにも、プロではとても通用しないような選手を、球団にねじ込むケースだってある」と続けるが、当然球団側も菅野のような逸材が出てきたときに交渉をスムーズに進めるため、彼らを受け入れるメリットはある。  ここで菅野の話に戻ろう。「原監督の出身校である東海大学と巨人軍の"ライン"つまり"関係"は強固なもの」(同)というのは、もはや球界では常識。そのため、菅野が日ハムに気持ちがなびいても、周囲が止めに入るのは火を見るよりも明らかだったのだ。では、なぜ日ハムは強行指名に走ったのだろうか? 「球団の事情もあるでしょうが、10年、巨人に入団した中央大学の澤村拓一投手のケースが大きい。当時、MAX157キロの豪腕を持つ澤村は、どの球団も欲しがった逸材。だが、ドラフト直前になって『巨人以外ならメジャー』という記事が出た。あれは巨人以外の球団を牽制するためで、本人の口からではなく周囲がマスコミにリークしたというのが定説。菅野の件では、仮に日ハムが原貢氏へ事前に挨拶に出向いたら、沢村同様、その情報はマスコミに流されてしまう。もちろんそんなことがはびこってしまえば、ドラフトはデキレースと化すし、巨人の思うようにさせては球界がダメになるという思いが日ハムにもあったのでしょう」(前出・スポーツ紙デスク)  菅野選手が選択した1年間の野球浪人というのは、同様の経験をした元巨人軍・江川卓投手が「カンを取り戻すのに3年かかった」と語るように、リスクはあまりに大きい。  しかし、フロントや周囲の都合に翻弄される選手本人も哀れだが、その陰には、彼らを球団に誘うスカウトたちの、決して表には出てこない努力や駆け引きがあるのだ。 (文/編集部) 【プレミアサイゾー関連記事】 特集:プロ野球、ドラフト【裏】物語"入団したくない球団"ナンバーワンは千葉ロッテ!? 12球団ドラフトの傾向と実力田淵幸一強奪事件から、菅野の指名拒否問題まで! スカウトや選手の人生を翻弄したドラフト事件史菅野事件"はKK事件の再来か──制度改革は"球界の盟主"のさじ加減? 読売巨人軍裏面史「ドラフト1位以外は、どーせコネだろ!」ハマの裏番長が語るスカウトの裏側台湾、韓国、キューバ、イタリア......「完全ウェーバー方式は万能じゃない! 海外4リーグが抱える病巣」
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【柴田英嗣】──"スクールガール・コンプレックス"の女子高生に、妄想爆発!?

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(写真/田中まこと)
 制服のスカートからのぞく太もも、伸びをしたときに無防備にさらされるヘソ......。女子高生が垣間見せるフェティッシュな肖像を切り取った写真集『SCHOOLGIRL COMPLEX』(イースト・プレス)が、映像作品となった。「高校はほぼ男子校状態で、女子高生なんて幻想の世界だった」と語るアンタッチャブルの柴田英嗣に、同作を見てもらうと......。 「最初はAVかと思って見てたんですが、いつまでたっても顔も映さないし、おっかしいなーって(笑)。でも、何も起こらないのに、映像が印象に残る。一緒に見ていた後輩と(女子高生が服を脱ぐシーンを見て)『これ、絶対彼氏に頼まれて脱いでるよな!』なんて妄想して盛り上がってました」と、芸人のさがなのか、新たな楽しみ方を発見していたという。普通とは違った視点から、対象の面白さを見つけて楽しむという意味では、お笑いもフェチも似ているのかも。 「これはフェチの入門編ですよね。自分がなんのフェチを持っているかわからない人が見たら、いろんなフェチを見つけられると思う」  そう語る柴田自身は、老若男女問わない"ほっぺたフェチ"だとか。「コンビでなくなった分、できることも増えた」と語るように、Vシネマ出演など活動の幅を広げる彼の、入門編を超える深~いフェチトークを聴ける日も近い!? (文/小林 聖) 柴田英嗣(しばたひでつぐ) 1975年7月15日、静岡県生まれ。94年にお笑いコンビ「アンタッチャブル」を結成。04年には、『M-1グランプリ』で優勝を飾るも、10年に体調不良により無期限の活動休止に入る。今年1月より芸能活動を再開。現在は、ソロで精力的な活動を行っている。出演しているVシネマ『麻雀飛龍伝説 天牌 -TENPAI- 元禄闘牌決戦史』が、全国のローソンで発売中。 『SCHOOLGIRL COMPLEX"M"』 女子高生の姿をフェティシズムにあふれた視点からとらえて話題となった写真『SCHOOLGIRL COMPLEX』(イースト・プレス)が、待望のDVD、Blu-ray化。映像特典として、女子高生の口を借りて青山裕企監督がインタビューに答える「SCHOOLGIRL COMPLEX DOCUMENTARY」を収録。さらにBlu-ray版には、特製オリジナルフォトブック「SCHOOLGIRL COMPLEX "B"」が限定封入特典としてついてくる。発売/ポニーキャニオン 価格/DVD版 3990円 Blu-ray版 4935円(共に税込)
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SCHOOL GIRL COMPLEX"M"(Blu-ray Disc) みんな女子高生好きね。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・アンタッチャブルの「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける童貞時代の複雑な感情が蘇る! エロいけどヌケない写真詩集『思春期』「甘酸っぱい思い出のシンボル......」僕らの愛したブルマーは今どこに

もう、テレビで野球は見れないのか? "独裁運営"ナベツネに殺された「巨人戦中継」

──ここ数年、目立った話題もなかった読売ジャイアンツに、"お家騒動"が勃発した。この事件、実は巨人戦が地上波から消えてしまったこととも無関係ではないようで......久しぶりに姿を表したナベツネの独裁による、巨人軍崩壊の歴史とテレビの関係をひもときながら検証してみたい。
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(絵/都築 潤)
「2000年くらいまで、確かに巨人戦は"キラーコンテンツ"だったんです。当時は1試合の中継で、放映権料やスポンサー料など、球団には億単位の収入がありました。00年に『YOMIURI ONLINE』で初めて宮崎キャンプの動画配信を行った際も、NTTから3日で数千万円の広告費をもらいましたし、巨人戦を全試合放送していた系列のラジオ局『ラジオ日本』では、同年の中継枠の年間スポンサー料が8億円ほどにまで上っていたという話ですよ」(読売新聞関係者)  そう、巨人戦中継は、90年代末までは平均視聴率20%超えをキープする鉄板コンテンツだった。しかし、例えば今年10月の巨人×中日戦(TBS)などでは番組平均視聴率6%と激減(ビデオリサーチ/関東地区調べ)。テレビではスポンサーも次々と離れ、巨人戦中継は消滅の危機に瀕している。  そんな中で起きたのが、ナベツネこと読売巨人軍会長・渡邉恒雄氏を、球団代表でゼネラルマネジャーの清武英利氏が公の場で糾弾したお家騒動。ここ数年めっきり話題に上らなくなった巨人が、久しぶりにテレビを賑わしたと思ったらこのありさまかと嘆くファンもいるだろうが、実はこのお家騒動も、元をたどれば巨人の人気低迷に端を発している。 「まだ巨人がキラーコンテンツとされていた10年前だったら、清武もあんなことはできなかったはずですよ。有名な話ですが、読売の社内には管理職以外巨人ファンなんてほとんどいない。だけど"アンチ・ナベツネ"は、もっとあり得ないんです。下手なことを言うとすぐに異動命令が来るので、ナベツネが運営する巨人に関しても、誰も触れないようにしてるんです」(元読売新聞社会部記者)  運営に誰も口出ししない、ナベツネの球界における"独裁改革"が始まったのは、同氏が巨人経営に参加した89年にさかのぼる。巨人の球界に対する影響力を背景にチームオーナー会の実権を握り、自ら主導して制度改革を行った。その代表的なものが、93年に導入されたドラフト逆指名制度とフリーエージェント(FA)制度だ。しかし、これらの制度によって、契約金や年俸が高く人気のある巨人に、有力選手の一極集中が始まった。結果、有力選手獲得の競り合いによる高年俸化を招き、資金力の低い球団の経営を圧迫。04年には"プロ野球再編問題"を招いてしまう。同時に、同年のドラフトの目玉だった一場靖弘(現ヤクルト)に対し、"栄養費"と称した金を巨人を含む3球団が支払っていたことが発覚。ナベツネ自身も自らがまいた種により、オーナーを辞任せざるを得なくなった。  こうして続出した問題は、読売の"私欲"を露見させ、ファンからの信用や支持も失ってしまった。実際、冒頭で述べた通り、00年以降巨人戦の視聴率低下は歯止めが利かず、スポンサーも激減。系列会社の日本テレビでさえ、今年は巨人のホームゲーム61試合中22試合、うちナイター中継は7試合の放送にとどまった。 ■ナベツネがこだわったスポンサー主導運営  さて、視聴率以外にも、プロ野球が地上波から消されてしまった背景にはもうひとつ、日本独特の"企業スポーツ"というシステムの問題点がある。早稲田大学スポーツ科学学術院教授でスポーツマーケティングの研究をする原田宗彦氏は言う。 「かつての企業スポーツは、社員の福利厚生のために使われてきました。つまり、娯楽や息抜きとして、みんなでやるためのもの。それが、時代とともに広告宣伝に変わっていった」  当然、企業スポーツは資本を親会社に頼らなければならないため、親会社の意向に影響されやすい。 「出資する企業にとって、所有しているスポーツは、最も目立つアイコンですよね。しかし、会社の業績が悪化した時に所有するチームを休廃部すると、株主に対してわかりやすく努力している姿を見せることができる。だから90年代以降、社会人野球を含めて300以上の企業スポーツ団体が廃部に追いやられています。プロ野球でも、ダイエーや近鉄が野球団の所有を諦めました」(同)  親会社の意向がチーム運営に大きな影響を与えるという点においては、03年に巨人の原辰徳監督が成績低迷によって解任された例がわかりやすいかもしれない。記者会見の席でナベツネは、この解任について、「読売グループ内の人事異動だ」と発言したのだ。さらに、今回のお家騒動も、プロ野球が企業スポーツ体質に染まっていることに起因していると、野球解説者の江本孟紀氏は指摘する。 「メジャーリーグだと、複数の投資家が共同出資しているケースが多く、社長は球団運営の専門家で、GMは野球をよく知っている、チームマネジメントできる人間がやらなければいけない。ナベツネさんだって清武だって、元は読売新聞の記者で、専門家ではないでしょう? 本来、球団を使って新聞を売ることしか考えていないんだから、野球を知らない人間が運営しても発展しない」  ここに、企業スポーツにおける、親会社の傲慢さが見てとれる。野球の専門家ではないナベツネが中心となっての球団運営は、プロ野球の発展よりも、広告塔として、より注目を集めるための球団作りにしかなりようがなかったのだ。  それにしても、なぜプロ野球球団は単一の企業が保有することにこだわるのか。そこには、日本のプロ野球界の特殊な事情がある。54年に国税庁長官から出された「職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取扱について」という通達によると、親会社が球団に支出したお金のうち、"広告宣伝費"と認められるものについては、"損金"に算入されるという。つまりプロ野球チームが「読売ジャイアンツ」のように企業名を名乗り、ユニホームに企業名を入れている限りは、親会社が球団に支出した予算はすべて免税されるというのだ。この通達は複数企業に対しては適用されないため、親会社が単独で球団を持たざるを得ない。  そして、実はこの、ナベツネがこだわった"企業名入りユニホーム"が、03年の松井秀喜のメジャー行きを促したのではないか? という噂がある。巨人は02年、ビジター用ユニフォームの胸ロゴを「TOKYO」から「YOMIURI」に変更した。そのことに対し、「なぜ巨人の伝統を大事にしないのかなぁ」と松井がコメントしたとスポーツ報知が報じ、ナベツネが激怒したという。 「その記事を書いたのが、松井の通訳として知られる広岡勲。当時彼は巨人担当をしていて、松井とも近しい仲だった。で、問題の記事に対してナベツネがクレームを入れたことで、彼は担当記者を外されたんです。記者仲間の中では『僕がナベツネの最初の被害者です!』と言っているくらい、この時は冷や飯を食わされたって話でね。ところが、問題はここから。松井はメジャーに行くに当たって、なぜ、最初からヤンキース一択だったのか。実はここに、広岡が絡んでるのではないかとにらむ記者が結構いるんです。つまり、当時禁止されていた入団の"事前交渉"を、松井を巨人からFAさせるために広岡が積極的に行ったのではないかと。もちろん、本人は『うん』とは言わないし、タンパリングは憶測ではあるけれど、実際彼は、その後松井と一緒に米国に渡って、松井の通訳とヤンキースの広報担当をやってるからね」(元週刊誌記者)  もちろん、これはあくまで推測の域を出ないが、松井の移籍が、その後の巨人の人気低下に大きく影響したのは間違いない。 ■地方の勝者・ソフトバンク全国放送で消えた巨人
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ソフトバンクホークスは、日本シリーズ優
勝のビールかけの模様をUSTREAMで配信。
 こうしたナベツネの"企業スポーツ"へのこだわりは、93年のJリーグ開幕時、当時Jリーグチェアマンだった川淵三郎氏との対立も招いている。実は日本でも、Jリーグのほとんどのクラブは企業の共同出資で成り立っている。川淵氏はヨーロッパサッカーのシステムに倣って、親会社主導ではなく、地域密着型のスポーツ産業を日本に根付かせようとしていた。そのため、各チームに企業名ではなく地域名を名乗るよう義務付けたのである。しかし、企業名を前面に出すことで、サッカーでも前述の国税庁通達を適用させようとしていたナベツネは、「(地域密着型という)空疎で抽象的な理念を掲げていてはスポーツは育たない」と激怒したという。Jリーグ開幕から数年間、ヴェルディだけが「川崎」ではなく「読売」と記載していたことなどは、ナベツネの意地だったのだろう。しかし、一時は巨人同様に有力選手を買い集め、Jリーグバブルに花を添えたヴェルディだったが、たちまち経営が悪化し、読売はスポンサーを降りた。  ここに、今後プロ野球にも課せられるであろう、企業スポーツか地域密着スポーツかの対立が見て取れる。ヒントは、地方局の存在だ。もともと巨人戦による放映権料の分配もなく、自分たちの力で盛り上げていかざるを得なかったパ・リーグは、04年に日本ハムが北海道移転、05年に仙台に楽天創設と、各地方に分散したことで地域密着を試みるようになる。07年にはパ・リーグ6球団出資でパシフィックリーグマーケティングを設立し、共同のライセンス管理やマーケティングも開始した。放映権の管理は各球団が管理しているが、ホームゲームの放映権料を地方局に格安で売ることで、ファンの拡大に積極的に取り組んでいるのだ。その成果は、今年の日本シリーズの最終戦で、優勝したソフトバンクの福岡地区の平均視聴率が44・4%、瞬間最高視聴率が62・6%を記録したことにも表れている。  詳しくは当特集【2】のコラムをご覧いただきたいが、今後プロ野球中継は、こうした地方局のほかに、CSやBSのスポーツ専門チャンネル、さらには09年より楽天の専門チャンネルを構えるニコ生などに細分化されていくだろう。実はこのことは、放映権料重視でやってきた巨人にとって、致命傷になりかねない。巨人は東京が本拠地であるがために、地元に地方局が存在しない。巨人だけが地上波テレビから完全に消滅しかねない状態だ。  今回のお家騒動は、ナベツネを中心とした読売巨人軍の組織としての脆弱さを露見した。かつての栄光と放映権ビジネスに甘えて企業努力を怠った結果、地上波から巨人が消え、新規ファン獲得のチャンスを失う危機に瀕している。しかし、ナベツネも御年85歳。彼が引退した後の巨人はどうなるのか? 原田氏は言う。 「読売新聞と共に価値を上げていった巨人が、新聞の部数低下で落ちていっている。スポーツビジネスは新しい時代のもの。その時代に合った企業がスポーツを支えればよい。ファンの立場から言えば、読売がなくなっても巨人はなくならないのです」  そう遠くない未来、"カカクコム"ジャイアンツや"DMM"ジャイアンツの誕生もあり得るかもしれない。 (文/大熊 信) 【プレミアにはこんな記事も!】もう、テレビで野球は見れないのか? "独裁運営"ナベツネに殺された「巨人戦中継」「読売新聞が売れれば、オールオッケイ!」ナベツネがプロ野球中継を殺した5つの理由元阪神の"トラブル番長"江本孟紀が吠える!「野球中継の減少で、有名解説者はテレビからいなくなる!!」
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【特別対談】西岡智×上原善広──橋下徹から解放運動まで部落解放同盟の重鎮、同和問題を語る

──西岡智、80歳──。一般にはあまり馴染みのない名前かもしれないが、被差別部落出身者に対する冤罪疑惑事件を糾弾した「狭山差別裁判糾弾闘争」を牽引し、部落解放同盟大阪府連書記長、中央本部書記次長などを歴任した、かつての部落解放同盟の重鎮である。そんな西岡氏に、被差別部落出身のノンフィクション作家・上原善広氏が昨今の同和問題、そして解放運動の"今"をたずねた──。
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上原善広氏。
 2012年3月に前身である全国水平社の創立90周年という節目を迎える部落解放同盟。その長い歴史の中で行われてきた部落差別撤廃への闘争により、差別の実態も大きく変わってきた。今回は戦後の部落解放運動を牽引し、その生き証人である西岡智氏に、ノンフィクション作家の上原善広氏が話を聞いた。自身が体験してきた部落解放運動とその現状、出自が話題になった橋下徹氏、そして運動の今後のあり方とは? 上原 今回は部落解放同盟で数々の要職を歴任し、狭山差別糾弾闘争を牽引してこられた西岡智さんに、怒られるために来ました(笑)。  今の解放運動に喝を入れられるのは、西岡さんしかいないと思ってます。「同和地区出身」と語った橋下徹(元大阪府知事)氏の話は後ほど伺うとして、10月には岐阜で行われた部落解放研究第45回全国集会に"鳥取ループ【註1】"という、鳥取や滋賀の部落地域をインターネット上で公開して物議を醸したサイトの管理人たちが現れるという事件がありました。彼らは大勢の解放同盟関係者の前で自らの行動の正当性について発言したのですが、司会を務めていた部落解放同盟大阪府連合会委員長の北口末広氏はじめ、参加者たちは糾弾どころかまともな反論もできなかったと聞いています。 西岡 なんやそれ。 上原 また、今年の3月には奈良の水平社博物館の前で"在特会"【註2】という右翼に所属する男がハンドマイクを使って「"エッタ"出てこい!」など差別発言を繰り返すという事件があったのですが、そんな演説を聞いていながらも、奈良県連の誰も出て行かずに言わせ放題だった。そういうことが続いて、解放同盟も舐められていると言われています。 西岡 信じられん......。事実とすれば、徹底糾弾ものだし、今の解放同盟はただのお人よし集団と見られても仕方ない。 上原 しかし、一方で糾弾という手段は、部落が怖いものというイメージを持たれる元凶という批判もあります。糾弾闘争をしてきた西岡さんはどう思われますか? 西岡 そもそも糾弾とは、差別者を解放者にするのが本当の糾弾で、ただ相手をやっつければいいというもんじゃない。教師と生徒の関係と一緒でね、相手に伝わらんかったら教える側に問題や責任がある。説得であり、教育なんや。僕の師匠である松本治一郎【註3】さんも言うてたけど、解放同盟から糾弾を除いたら、それは歌を忘れたカナリヤと一緒や。差別、迫害を受けてハングリー精神が出て、そこから解放のための糾弾闘争で人が育ってきたんやから。弱虫、泣き虫、本の虫だった僕も、解放運動の中で成長してきた。 上原 西岡さんは僕の生まれた松原・更池の隣、大和川を挟んだ向こう側にある矢田の部落出身ですよね。 西岡 そう、矢田部落(現在の大阪市東住吉区あたり)や。戦時中は愛国少年団の団長。もう1年戦争が続いていたら、神風特攻隊に志願していた。そんな愛国少年だった。労働は中学から。行商やくず買い。朝、学校に行く前に市場に仕入れに行くんやけど、その道中に自転車に乗りながら勉強した。リズムに乗ってよく覚えられる。今でも書く字が小さいのは、自転車の上で勉強してた時の癖や。その後、定時制の高校に通っている時に「戦争とは、いったいなんだったんだ」という思いや疲労から虚無主義に陥った。藤村操というエリート学生が(将来を悲観して)華厳の滝に飛び込んで自殺したやろ? 彼に憧れたりして自殺志願者が増えた時代で、僕もその傾向が出てきた。ただ、長男である自分がもし死んだら、父は体が弱かったし、母や弟や姉妹たちが困る。それで4~5回は自殺しかけたが、なんとか思いとどまった。 上原 まだまだ差別が厳しい時代ですよね。どんな差別体験がありましたか? 西岡 同じ地元に女優の山本陽子さんに似た初恋の人がおったんやけど、その人が東北の大地主のせがれと結婚する前に、相手の親が身元調査を行い、部落出身ということで別れさせられて、首を吊って自殺をした。その子のお父さんも、娘の自殺を悲観して野井戸に飛び込んでな。すごいショックやったよ。そういうことがあって、慶應義塾大学法学部の通信制に在籍していた頃、治一郎さんのところに駆け込んだわけや。住み込みの書生みたいな感じで。自殺願望もあったせいか、治一郎さんには「君はそのままだと死ぬぞ」と言われて鍛えられた。治一郎さんに教えられた「山より大きな猪は出ない【註4】」という言葉が、どんな時もずっと頭の中にあった。言うなれば、革命的楽観主義。治一郎さんは、僕の師匠であると同時に恩人や。 上原 西岡さんの地元・矢田支部ができたのは、大阪の中でもとても早かった。当時は、やはり仕事がなくて、グレてヤクザになるような人も多かったんですか? 西岡 多かった。あとはとにかく、ヒロポンやってるやつばかりやった。売人で「ヒロポンの王様」って呼ばれているやつがおって。そいつがヒロポンのやりすぎで体から膿がいっぱい出て、死にかけたのを助けてやった。病院に連れていって、ちゃんとした家に住まわしてね。それで、命が助かったそいつが「ご恩返しをしたい」と、これまで自分がヒロポンを売り歩いた家を一軒一軒「俺みたいになったらいかん」って言って回って、結果、ヒロポンは絶滅した。 上原 更池でも元極道の人が「わしのようになったらアカン」と言って回ってたと聞きます。 西岡 そうそう。それでヒロポンを止めさせた次にやったのが、自動車学校を作ること。 上原 車友会【註5】ですね。 西岡 その頃、西成が空襲で焼けてたやろ。だから西成でやっていた皮革製品の下請けを矢田でやるようになっていた。職人たちはその仕事で一本道を西成まで単車に乗って往復するわけやけど、みんな無免許やから、そこで張ってる警察にいつも捕まる。罰金は親方と若い職人が半分ずつ払うことになっていたから揉めごとばかり起こっていて、日当も罰金でほとんどなくなってしまう。それで、若い者たちに免許を取らす運動を始めたんや。それは若い職人と親方の双方の要求、つまり民衆の要求を組織したんや。すべて民衆のための奉仕。それが運動で一番大事な根本やろ。免許があればできる仕事も増えるし、警察としても、若い者が免許を取ってカタギの仕事をするようになればヤクザにならんでいいと、僕の運動を認めてくれて、時間制限で地元の公園を開放して運転の練習をさせてくれたよ。字が読めんやつには明星や平凡といった雑誌やマンガで勉強させたな。 上原 西岡さんは矢田教育差別事件【註6】など、教育問題に取り組んだのも早かったですね。 西岡 解放運動は、教育に始まって教育に終わると思ってるから。城は石垣、事業は人なりや。人がすべてを決定すんのやから。 ■今こそ光るべき──解放運動の現状
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西岡智氏。
上原 事業といえば、大阪市長選で話題を呼んだ橋下徹氏に注目が集まっています【編註:本対談が行われたのは大阪市長選の結果が出る以前の11月15日】。僕も「新潮45」(新潮社)で、橋下氏の出自や生い立ちを追った記事を発表しました。 西岡 橋下さんは、民衆を扇動する名人やね。勘が鋭い。今の市役所見てみ、役人の3分の1は遊んでるよ。市民はもう信頼してない。二重行政もひどいもんや。彼は、そこをピシーッと突いてるわけや。大阪市は切開手術してがんを全部取り除かなきゃいかんちゅうことがわかってる。現職の市長はええ人やと思うけど、手遅れやなと。いざ選挙となって、今はものすごく闘志を燃やしてやってるけど、最初からあの調子でいかなあかん。橋下さんの選挙カー見たけどな、勢いが違ったよ。あれは勝つ車やね(笑)。大衆が、わかりやすい英雄を求めてるってことやろうね。僕は彼を独裁者やと思うけど、やらせてみたらええ。切開手術が必要なのは解放同盟も同じやけどな。 上原 うーん、どこまでも僕と同意見で驚きます(笑) だから西岡さんは組織内で煙たがられ、僕は一匹狼になってしまったのかもしれません。大阪といえば、近年では解放同盟は飛鳥会事件【註7】などで大きな批判を浴びました。 西岡 あの小西邦彦という男は、大賀正行さん【註8】に憧れて解放同盟に入ったという話だった。それを考えれば、あの問題は大賀さんにも大きな責任がある。小西は飛鳥支部長として10年の間、一度も支部大会やってないんやで。それは上の人間が、指示なり注意なりせなあかんやろ。大賀さんは、そういうことも一度もしてない。それと、市役所と銀行が彼を利用していたということも読まなきゃならんよ。市役所には、エセ同和やら利権を狙ったやつらがいろいろタカリに来るやろ。それを調整・整理してくれる人が欲しいわけや。それで小西を使ってた。銀行は銀行で、借金の取り立てをするのに小西に口利きを頼んでいた。(07年11月に小西が死去し)死人に口がないからって、飛鳥会の責任をすべて小西に押し付けるのはいかんと思う。 上原 それと最近で言えば、松本治一郎の孫で部落解放同盟副委員長でもある松本龍氏【註9】が岩手、宮城の両知事への失言によって、復興相と防災相を辞任するという事件もありました。 西岡 実は僕は彼が学生の時分、よう面倒見とったんや。彼は僕に頭上がらへんよ(笑)。だからって何も龍君の肩を持つ気はひとつもないけどね、あの発言については自治体が復興について"おんぶに抱っこ"で来てたから、「それは自治体も考えなければいかん!」ということを言うつもりやったんやろ。それを居丈高な態度で言うからね、マスコミに狙われたんや。もともとは素質のええ子で、環境大臣の頃は期待の星やった。責任感が強くて人間が真面目すぎるから、僕みたいな革命的楽観主義になれんで、いろいろ考えすぎたんや。それに、解放同盟の福岡県連にも責任はある。自分のとこの土壌が彼を作ったのに、失言後、何もしないで龍君にすべてを押し付けてんねん。ちゃんと自分たちの組織のあり方を、もう一度考えなあかん。今からでも遅くない。一兵卒になってガレキ拾いをするなら、僕もお供するけど(笑)。 上原 解放同盟の中でも「武闘派」として知られる西岡さんにとって、解放運動とはどうあるべきものですか。 西岡 井の中の蛙やなしに、大海を知って、より魅力のある活動をするべき。人の世に熱あれ、人間に光あれ【註10】の言葉通り、全人類解放の希望の星にならなきゃいかん。今こそね、解放同盟は輝くべきで、「ピンチはチャンス」なんや。あと、僕は武闘派じゃなくて穏健派。 上原 水平社宣言の頃の初心に戻れということですね。「ピンチはチャンス」もいい言葉ですね。 西岡 そもそも「実るほど頭を垂れる稲穂かな」というように、本来は謙虚な気持ちで運動をやってかないかんのに傲慢無礼になってるよ、今は。10年7月の参院選で(部落解放同盟中央書記長の)松岡徹君【註11】が落選したでしょ。あの時彼は「自分の不徳の致すところです」なんて通り一遍のこと言ってたけど、彼はずっと順風満帆で、地獄の底を見てないところがある。だからいつも高いところからものを言う。要するに傲慢。誰が見てもわかるよ。もっと民衆の中に入っていかな。治一郎さんは、ずっとそうやった。変革とか改革、革命っちゅうのは民衆が立ち上がったときに起きてるわけやろ? 松岡君の地元の西成の支部も、足元が全然固まってへん。全国的に民主党が負けたというのは外因。地元をちゃんとオルグできてなかったのが内因や。 ■部落解放同盟は解体して出直すべし!? 上原 現在の若い世代では、解放運動や部落差別を知らないという人も多くなってきています。こうした若い人たちに対して、思うことはありますか? 西岡 若い人たちはええんよ。それより、若い人たちを引っ張るリーダーが問題。阪神淡路大震災や今回の東北の大震災でも、若者はボランティアに飛んで行ってるやん。そういう若者たちを引っ張って、震災復興から継続発展させて、町おこし、村おこし、人づくりの中心にしていかなあかん。僕が好きな言葉で言うと、若者という点を線にし、面にして一点突破、全面展開や。それができるリーダーがいないことがいかんねん。若い人たちに責任があるんやないよ。 上原 それは解放同盟についても同じことがいえると思います。 西岡 そう。それぞれの地域に、すごい若者もたくさんいる。それをバンバン引き抜いて出直さな。僕の持論では、解放同盟の中央は賞味期限切れや。解体的に出直さなあかんよ。本来なら運動家は民衆の中へ入っていって、差別され、圧迫されている人たちの側に常に身を置くもんや。ところが、今は上しか見ないヒラメ人間ばっかりや。組坂繁之中央執行委員長もね、調整能力は抜群よ。ヒゲも似てるしリトル松本治一郎みたいなもんや(笑)。ただ、洞察力や先見の明に欠けてるところがあると思う。 上原 僕も解放同盟が解散して、新たに組織されるような"解体的出直し論"は賛成ですが、そういうこと言うと、嫌われるんですよね。これは関係者から聞いたのですが、部落解放研究所の出版部門「解放出版社」と関係の深い小林健治氏にも嫌われてるらしいです。 西岡 小林健治さんも、ちょっとわかってないところがあるよな。ええ機会やから、「西岡のおっさんがそう言うてる」ってちゃんと書いとけ。文句あるならいつでも僕のとこに来いと。 上原 西岡さんにそこまで言ってもらえるとは思わなかったな(笑)。今後、解放同盟はどういった行動を起こすべきだと思いますか? 西岡 12年は解放同盟の90周年やろ。それを契機にして勇退の道を開いてね、上層部がみんな一回引いたらええ。お人よしのヒラメ人間ばかりじゃ、先はないよ。僕の信念でもあるんだけど、道のないところに道を開き、道ができたら後輩に道を譲るべき。もし失敗したら、その失敗から学ばせればええ。ただ、一部の解放同盟幹部が揉めていて、組織が真っ二つに割れる、という話も耳にしている。 上原 内輪揉めをしている場合ではないですよね。 西岡 もうすでに2つに分かれて揉めてる支部もある。 上原 これで来年、組織が割れたら、解放同盟は完全に終わりですね。 西岡 だから、そんなことにならんように、来年までにいろいろタマ込めて準備せんとね。 上原 西岡さんがそういう言い方すると、本気だけに迫力ありますね(笑)。 西岡 3~4年前か、大賀正行さんに「改革のために一期だけ書記長をやってくれ。僕が委員長になったる」なんて話したこともあったんやけどね。そしたら大賀さんも喜んで、普段彼はあまり酒を飲まないんだけど、祝いの乾杯したな。結局、その話は立ち消えになったけど......。 上原 西岡さんは、これからどのように運動にかかわっていかれるのですか? 西岡 タイのチェンマイに行こうと思ってるねん。ただの静養やないよ。昔の矢田みたいにヒロポンが蔓延しているところがあるというから、自分のかつての経験を生かして、そういう青年らを助けにいく。タイは微笑みの国なんていわれてるけど、本当に寛容の精神が高いところやねん。僕はそこに惚れてね。第二の故郷として現地の青年を救うことを受け皿にして、チェンマイから新たな解放運動ののろしを上げていこう思うてる。これからは、国際的な視野から見ていかんとダメなんや。 上原 確かにそういう意味での視野の広さというのは必要ですよね。活動は地道にやらなきゃいけないんだけど、視野はあくまでも広くないといけない。だけど西岡さんが海外に出てしまうのは、ちょっと寂しい。まだまだお元気ですしね。仕方ないのかもしれませんが。 西岡 僕は人に年を聞かれたら38歳って答えるようにしてるんやけど、そう言い続けてるとその気になってしまうねん。精神年齢はまだまだ若いよ(笑)。 上原 38歳ってというと、ちょうど僕と同い年ですね(笑)。 (構成/橋富政彦) 上原善広(うえはら・よしひろ) 1973年、大阪府生まれ。ノンフィクション作家。被差別部落からNYハーレムの路地まで、国内外のルポを寄稿。『日本の路地を旅する』(文藝春秋)で第41回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。主な著作に『被差別の食卓』『異形の日本人』(いずれも新潮新書)、『私家版 差別語辞典』(新潮選書)など。 西岡智(にしおか・さとる) 1931年、大和川に近い、矢田の被差別部落に生まれる。中学時代から行商しながら勉学し、松本治一郎宅に寄宿。慶応大学法学部通信課程中退。58年に部落解放同盟矢田支部を結成し、初代書記長に就任。以来、大阪府連書記長、副委員長、中央本部執行委員、書記次長などを歴任。狭山事件では狭山闘争中央本部事務局長として差別糾弾闘争を牽引するなど、戦後の部落解放同盟の運動における大きな功労者のひとり。 [注釈] 【註1】 鳥取ループ
「差別をネタに行政や企業にたかる行為全般を追うジャーナリスト」を自称し、同和地区、同和行政にかかわる情報の公開を求めて活動中。
【註2】 在特会 「在日特権を許さない市民の会」。在日朝鮮人、在日韓国人が"在日特権"を保有しているとし、その剥奪を目的とする右翼団体で過激な抗議活動で知られる。当該事件で在特会は「水平社博物館前の抗議活動は在特会としての活動ではなく個人のもの」と主張している。水平社博物館は、名誉毀損で男を提訴した。 【註3】 松本治一郎 政治家。戦前の全国水平社中央委員議長であり、戦後も部落解放同盟の初代委員長を務め、"解放の父"とも呼ばれた部落解放運動の指導者。66年に死去。 【註4】 山より大きな猪は出ない ことわざ。その人の許容範囲を超える物事は、その人に起こらない。つまり、どんな試練でも自分に解決できるものしかやってこないの意。 【註5】 車友会 西岡智氏が55年に始めた自動車学校。学科の勉強は識字運動にもつながった。 【註6】 矢田教育差別事件 69年、大阪市の教職員組合の役員選挙に立候補した教師の挨拶状を、部落解放同盟の大阪府連矢田支部が「差別文書」として認定。解放同盟による教師への糾弾、教師による解放同盟への刑事告訴など事態は紛糾し、教師の側についた共産党が解放同盟を「暴力集団」と非難する文書を配布。この事件により、部落解放同盟と共産党の対立は決定的なものとなった。 【註7】 飛鳥会事件 財団法人「飛鳥会」の小西邦彦元理事長が、大阪市開発公社から業務委託された西中島駐車場の収益を不正に着服した業務上横領罪、暴力団元組長らの健康保険証を詐取した詐欺罪などの罪で06年に逮捕された事件。小西被告が元暴力団幹部だった経歴など、暴力団との癒着が大きく報道され、この事件を機に大阪市は同和行政全般の見直しに着手した。 【註8】 大賀正行 部落解放・人権研究所名誉理事。部落解放同盟大阪府連合会日之出支部長を32年間務め、大阪府連書記長、大阪府同和事業促進協議会会長、部落解放同盟中央執行委員などを歴任。 【註9】 松本龍 政治家。部落解放同盟副委員長。衆議院環境委員長、環境大臣(第15代)、内閣府特命担当大臣(防災担当)などを歴任。11年7月、東日本大震災の被災地入りした際の、岩手・宮城両知事への発言が問題視されて大臣を辞任した。 【註10】 人の世に熱あれ、人間に光あれ 22年に全国各地の部落代表者2000人が集まって結成された全国水平社による、解放のための決意「水平社宣言」の結びの言葉。 【註11】 松岡徹 政治家。部落解放同盟中央書記長。04年に参議院議員通挙に民主党公認で比例区より立候補して初当選を果たした。10年7月、参議院議選挙で再選を目指し、民主党公認で比例区より立候補したものの、落選する。
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吉本、ジャニーズ…… 人気番組のキャスティングに見る"芸能プロ枠"のカラクリ

──テレビ番組へのタレント出演決定権は、大手芸能プロが牛耳っている!? ドラマの研音、バラエティの吉本などなど、数々の芸能プロの間で繰り広げられる「キャスティング行政」の闇に迫る!!
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『芸能界ベストセレクション』(オリ
コン)。
いつも似たような顔ぶればかりのテレビ番組。それらのタレントは、研音、スターダストプロモーション、オスカープロモーション、ホリプロ、アミューズ、そして吉本興業に渡辺プロダクションと、誰もが知っているような大手芸能プロに所属していることが多い。もしかして大手プロのタレントは、優先的に出演できる専用の枠を持っているんじゃないだろうか?  ところが、芸能関係者に聞くと、「芸能プロが好き放題にキャスティングできるような"芸能プロ枠"なんて、基本的には存在しません」と口を揃えて証言する。ただし、「テレビ局側は、数字を持っている人(=高視聴率が取れる人)に出てもらいたいと考えている。そしてそれは、視聴者も同じではないでしょうか」とも語る。つまり、高い視聴率が取れる人気タレントは、生き残りを賭けるテレビ局にとっても、面白い番組を求める視聴者にとってもテレビに出てほしい存在。そういうタレントは大手プロ所属のことが多いから、結果としてそういう事務所に所属するタレントをテレビで観る機会が多くなるだけ、という論理である。  しかし、そうした"人気タレント"だってたくさんいる。やはり、ある特定のタレントを出演させるために、テレビ局と芸能プロとの間に"不適切な関係"はないのだろうか? これに対しても、バラエティとドラマどちらの関係者も、「ゴシップ誌を賑わすようなそうした"癒着"は、まずない」と断言する。 「確かにバブルの頃は、キャスティング権を握るプロデューサーに対し、芸能プロから実弾(現金)が贈られ、それで『家が建った』などと言われたことがありました。でも、今はどの局もコンプライアンスが厳しくなり、バレたら飛ばされるだけなので、まず起こらないことだと思います」(大手芸能プロ関係者)  と、ごく健全な業務上のお付き合いであると強調する。 「ただ、以前から親しくしていたり、良い業績を上げたりした事務所とプロデューサーや制作会社が繰り返しタッグを組むことはありますよ。でも、それはテレビ業界に限らずどの業種も同じですよね」(同)  その"同じメンバーと繰り返しタッグを組む"ということが、外側から見ると、特定の"芸能プロ枠"と映るのかもしれない。特にバラエティで、その傾向は強いという。 「例えば、フジテレビのバラエティ制作センターには、5~6ほどの派閥があります。『めちゃ×2イケてるッ!』に携わるナインティナインと親しい片岡飛鳥さん、『クイズ!ヘキサゴンⅡ』に携わり島田紳助と親しかった神原孝さん、石田弘さんやとんねるずと近い港浩一さんらの"港班"などです。その誰が担当するかによって、キャスティングがだいたい決まってきます。各プロデューサーは、『○○は必ず押さえられます』とタレント名を編成局にアピールし、自分の企画を通しやすくするわけです」(構成作家)  超大物級のダウンタウン、ナインティナイン、明石家さんまらは、そうした人脈によって自動的にキャスティングが決まっていく。すなわち、"プロデューサー=タレント枠"である。その下のクラスのロンドンブーツ1号2号、今田耕司、東野幸治、爆笑問題あたりになると、特定のプロデューサーと強いつながりを持っている、というほどのことはなく、ある程度自由に交渉してキャスティングできるという。さらに下のひな壇クラスのタレントは、企画の方向性や番組内の各事務所のバランスを考えて、適宜選ばれていく。つまり、タレントのランクによってキャスティング方法が異なるのだ。  またバラエティの場合、芸能プロが社内に制作部隊を持っていたり、あるいは制作会社を子会社に持っていたりすることも多い。その場合、必然的にその芸能プロのタレントが多く出演することになる。 「例えば、『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)は田辺エージェンシー、『ネプリーグ』(フジテレビ系)はワタナベエンターテインメントの制作部隊がそれぞれプロデューサーとして加わっています。日曜お昼の『ウチくる!?』(同)は、かつて放送されていた『クイズ・ドレミファドン!』の時代から伝統的にナベプロが企画制作、出演する"ナベプロ枠"と決まっています」(テレビ関係者)  正真正銘の"芸能プロ枠"があるとすれば、まさにこれ。事務所とテレビ局の長い付き合いの中で生まれたものである。  そのほか、メイン司会者がキャスティングにかかわる場合もある。 「出演者をすべて自分で決めていた島田紳助などは極端な例だとしても、人気司会者になればなるほど、キャスティングにある程度口を挟むことはよくあります。例えばビートたけしは、いまだに企画にきっちり意見をすることで有名。たけしが『この人と共演したい』と言えば、ノーと言えるスタッフはいませんね。松本人志もかつてはその傾向があり、『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)ではキャスティングにかなり口を出していましたが、芸人として"上がった"今は、わりと誰でもいいらしく、『爆笑 大日本アカン警察』(フジテレビ系)なんかでは何も言わないそう(笑)」(事情通)  この場合は、プロデューサーや事務所よりもタレントの立場が強い"タレント個人枠"である。 ■所属タレントに有無を言わせない研音  一方ドラマにおいては、とにもかくにもまず主役。人気俳優・女優は、1年ほど前からスケジュールが押さえられているという。 「プライムタイムに放送されるようなドラマの場合、企画が決まっていない段階から、主役と相手役はほぼ決まっています。編成局、プロデューサー、事務所の幹部クラスの話し合いやあうんの呼吸によって決まっていくもので、現場のマネージャーレベルではよくわからない(笑)。所属プロの俳優が主演に起用されたら、脇に新人を入れてもらったり、主題歌に所属アーティストを起用してもらうといったバーター(抱き合わせ出演)はよくある話です」(芸能関係者)  ただし、それをもって、事務所の力をかさに着た「芸能プロ枠」などと言われるのは「心外だ」と関係者は語る。なぜならば、たまたまその時その事務所の俳優が主演に起用されたからできた交渉ごとであって、事務所の思い通りにいつも俳優をねじ込めるような"枠"が用意されているわけではないからだ。 「仮に主演のオファーがあっても、事務所によっては役者の意向を尊重して、『企画が出来上がるまでなんとも言えない』と返事をすることもあるんです。例えば、福山雅治や上野樹里、吉高由里子らが所属するアミューズや、松雪泰子や中谷美紀らが所属するスターダストは、わりとタレントの意向を尊重するタイプの芸能プロ。逆に研音は役者をコントロールするのがうまく、土壇場で断ることがまずないので、制作側も安心して先々までキャスティングできる。『研音枠』といわれるほどドラマで研音が強いのには、そういう事情もあるんです」(事情通) 「噂によると、研音は歩率(俳優のギャラの取り分)が良いらしいんです。なので、企画その他に多少気に入らないことがあっても、役者は出演をOKするんです」(芸能関係者)  天海祐希や菅野美穂ら研音の俳優が毎クールどこかしらに出ているのも、りょうが身重の体を押しても1月クールの連ドラに出演するのも、そういった事情があるわけだ。  また、ジャニーズタレントが毎クール出演していたり、バーニング系のヴィジョンファクトリー所属の観月ありさが1年に1度は必ず連ドラ主演があるというのも、視聴者から見れば芸能プロの力による「ゴリ押し」のようにも見えるが、「なんだかんだで、ジャニーズタレントも観月ありさも"数字を持っている"のは否定できません」(芸能関係者)という。必ず"枠"が用意されているということは、すなわちそれだけ視聴率が取れるということも意味しているわけだ。 「ジャニー喜多川氏の一言で決まるような"トップ会談"によるゴリ押しも皆無とはいいません。けれど、大部分のキャスティングは、もっとシビアなもの。だって、知らないタレントじゃ視聴者も見ないでしょう? 11年4月期放送の『鈴木先生』(テレビ東京系)なんて、人気マンガが原作で、批評家からは評価が高かったけれど、当時まだ名が浸透してなかった長谷川博己(ヒラタオフィス)が主演で、平均視聴率はゴールデンタイムのドラマ史上最低レベルの2・16%。華やかな"スター枠"は、ある程度必要なものだと思いますよ」(テレビ関係者)  不景気、テレビ離れ、そんな不穏な空気の中、局が手堅く稼ぐための"安心枠"。それで実際にそこそこ視聴率が取れるのだから、制作側は「やはりこれでいいのだ」と安易に考えても仕方ない。大手芸能プロによる"キャスティング至上主義"に異議を唱えるなら、まずは視聴者の側に、キャスティングにとらわれず「本当に面白い」番組を選んで見る目が必要とされるのかもしれない。 (文/安楽由紀子) 【プレミアにはこんな記事も!】『ウチくる!?』はナベプロの"豪腕"利権? 最新ドラマ・バラエティに見るキャスティングの"裏側"
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【市道真央】──ゴーカイイエローは、"干物女"!?

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(写真/江森康之)
 柔らかな冬の光の中たたずむ少女はその実、敵はおろか味方にまで「バッカじゃないの?」と吐き捨てる、スーパー戦隊シリーズ史上もっとも口の悪いヒロインとして『海賊戦隊ゴーカイジャー』で女優デビューを飾った市道真央ちゃん。 「ゴーカイイエローに変身するルカ・ミルフィは、私と真逆の性格だったので、最初は『こんな乱暴なセリフですみませんっ』って恐縮したんですが、そのうち『これでいいんだ』って吹っ切れました(笑)。私の憧れの女性は気が強くてサバサバした、アニメキャラでいうと『もののけ姫』のサンなので、ルカも私の理想像なんです」  早速アニメの話になりましたが、それもそのはず、真央ちゃんは「週刊少年ジャンプ」(集英社)を愛読するマンガ・アニメヲタだとか。 「休みの日は、化粧もせずジャージのままマンガ読んだり、ニコ動の歌い手さんとかボーカロイドの動画ばかりチェックしてますね」  そんな干物女な真央ちゃんだけに、クリスマスイブに行われるDVDの発売イベントも、望むところですかね? 「そうですね。ケーキさえ食べられれば。あ、でも最近は、疲れからか生クリームも食べられないので、お団子くらいが程よいかも」  なるほど。では差し入れはお団子ってことで、関係者の方はよろしくです。 (文/熊山 准) 市道真央(いちみちまお) 1992年2月1日、大阪府生まれ。O型。10年夏の上京後、11年に『海賊戦隊ゴーカイジャー』のゴーカイイエロー、ルカ・ミルフィ役で女優デビュー。スーパー戦隊シリーズ35作品目のメモリアルイヤーとあって、テレビ出演のほか劇場版にも多数出演。12年初春には、最新作『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』の公開が控える。雑誌、バラエティでも活躍中で、『サキよみ ジャンBANG!』(テレビ東京系)のインフォマーシャルコーナーにレギュラー出演中。 公式ブログ〈http://ameblo.jp/ichimichi-mao/
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DVD『Apartment』(東映ビデオ) 写真集『Afternoon tea』(東映ビデオ/ムービック) 水着シーンをはじめピアノ演奏、ダンス、男装など、これまで見せたことのない市道真央の七変化を、北海道函館で撮影したセカンドDVD『Apartment』が好評発売&レンタル中。12年1月24日には、可愛い表情から大人っぽい表情まで、さまざまなキャラの真央ちゃんを詰め込んだ写真集『Afternoon tea』がリリースされる。
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『グラゼニ』森高夕次×『砂の栄冠』三田紀房──「『ドカベン』は描かなかった 球界とカネ事情」


【プレミアサイゾーより】 ──プロ野球界で年俸事情を軸に据え、選手たちが右往左往するさまを描く『グラゼニ』と、1000万円を預かった公立校のエースが、その金を元手に甲子園を目指す異色の高校野球マンガ『砂の栄冠』。マンガ史に燦然と輝く野球マンガの名作は数あれど、「野球と金」をテーマに据えた作品はこの2作が初であろう。両作の作者、森高夕次と三田紀房が、裏金や栄養費問題など、金をめぐるタブーの存在が囁かれる野球界への思いを語る!

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(写真/田中まこと)
三田(以下、)『グラゼニ』は「週刊モーニング」の連載で毎週追って読んでるんですけど、今日は「どうしてくれるんだ」って森高さんに訴えに来たんです。 森高(以下、) え!?  実はプロ野球の裏側を描くストーリーは、僕も狙ってたんです(笑)。ひそかにプロ関係の人に会ったり選手や球団を取材して、「これは面白い、いける!」って踏んでたんですけど、『グラゼニ』が始まって先を越されて、しかもすごく面白いから、全部おジャンですよ(笑)。  それはすみません(笑)。僕は逆に、『砂の栄冠』のような作品は描けないというか、発想もなかったですね。単行本で一気に読みたくて、これまであえて連載は読まないようにしてたんです。今回いい機会だということで拝読したら、ストーリーもやっぱり三田流に楽しませつつ一気に引き込まれるし、何より巻末のコラムと合わせて「コミックスの商品性」がすごい。あそこまで裏側を書けるってことは、巻末コラムを書かれてる田尻賢誉さん(スポーツジャーナリスト)含めて相当取材なさってますよね?  でも、あのコラムに出てる話って、取材で得た情報のうちの、ほんの10分の1くらいなんですよ。表には出せないエゲツない話が多いから、これでも削りに削って、当たり障りのないレベルに落として書いてるんです。『グラゼニ』は、よく中継ぎピッチャーの話で連載に持っていったな、と感心しますね。中継ぎが主人公って本当に画期的なことで、そんな地味なものは企画段階でまず「連載にならない」と編集部にハネられるはずなんですよ。そこをこじ開けた功績は相当大きいと思います。  実際そこまで深く考えたわけではなくて、『グラゼニ』はぶっちゃけ、ほかの雑誌用に描いて眠っていたネームがあったんです。もともと僕自身のパッションというか、「これが描きたいんだ!」というのが強くあって、それを出しただけというか。  なるほど、個人的な動機が大きかったんですね。僕も高校野球はずっと描きたくて、『クロカン』や『甲子園へ行こう!』【2】の後、『ドラゴン桜』【3】を描いてる時も、春夏必ず甲子園には行ってたんですよ。でも単純に「高校野球を描きたい」と言っても、今時どこの雑誌も、洟も引っかけてくれない。何かしら読者を惹きつけるフックが必要だったから、表向きは爽やかで純粋だと思われている世界の裏側を見せながらストーリーを展開していこうと。  僕は『砂の栄冠』は、主人公チームのサクセス物語だと読んだんですけど、画期的に新しい点は、主人公率いる弱小公立校が「21世紀枠」を狙うところなんですよね。そういう実践的な戦略を立てて、弱小チームが強くなっていくプロセスを一つひとつ見せていく作りが三田マンガの真骨頂というか。  ロールプレイングゲームじゃないですけど、一個一個アイテムを揃えていってキャラクターが強くなっていくと、楽しいじゃないですか。アイテムを揃えてレベルアップした田舎の弱小校が、強豪校を打ち倒すっていう感覚はありますね。  あと、演出に結構な頻度で動物が出てくるとこも三田流だなと。  それは僕のオリジナルというか、単に僕が「週刊漫画ゴラク」(日本文芸社)の出身だからですよ。 『ミナミの帝王』【4】イズムですか(笑)。  やっぱり「ゴラク」で生き抜くためには、『ミナミの帝王』のテイストが必須だから(笑)。  冒頭で主人公がグラウンドの中に1000万円の札束を埋めるシーンも、そう考えれば「ゴラク」テイストかもしれませんね。  最初にその絵が浮かんだところから、あの作品は出発してます。冒頭にそんな象徴的なシーンがあれば、後のストーリーはどうにでも転がっていくものじゃないですか。それに、野球の裏側を知れば知るほど、お金の話はやっぱり絡んできますからね。 ■裏金も監督バックもアリ!? 爽やかじゃない高校野球 ――「グラウンドに札束を埋める」ということでいえば、森高さんの『グラゼニ』のタイトルも「グラウンドにはゼニが埋まってる」という野球界の常套句から来てるんですよね?
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森高夕次氏。
 物理的にと概念的にとで違いはあるけど、ある意味、丸かぶりですよね(笑)。でも『グラゼニ』も、別にテーマが「お金」というわけではないんです。プロ野球を球場観戦すると、どうしてもだんだん試合以外のものが見えてくるものなんですよ。特に僕はヤクルトファンなので神宮球場によく行くんですが、あそこなんかブルペンが丸見えなもんだから、ブルペンキャッチャーとかコーチとかのさまざまな人間模様が見てとれて、それをドラマにしたいと思ったのがきっかけです。で、そうした場合に、お給料の話が出てこないわけにはいかないといいますか。  主人公の凡田は年俸1800万円ですが、あのへんは選手に取材されて生の声を反映してるんですか?  いえ、僕は観戦以外の取材はしてないんです。  そうなんですか!? 確かに想像力で描いたほうが真実を突くことはありますが。  まあ、あまりに角が立ちすぎる話題なんで、取材しにくいというのもあります。でも例えば1800万円のピッチャーが1億8000万円のバッターと勝負したら、画面上では普通に対戦してるだけに見えるかもしれないですけど、給料のこと考えたら、何かおかしいじゃないですか。それでも勝負する時は1対1だというドラマを描きたいから、あえて年俸を全面に出してみたんです。そこは『砂の栄冠』の主人公が強化費1000万円をグラウンドに埋めるのと同じで、「ゼニ」とか「年俸」が出てくるとマンガとしての「引き」があるだろうと。  でもあの1000万円って数字は、実はリアルではないんです。マンガのストーリー的にそのくらいが妥当だろうと、あの金額にしたんですけど、高校野球の関係者が読むと「1000万円じゃ何もできないよ」って、みんな口を揃えますね。  やっぱりそうなんですか。 「3カ月くらいでなくなるよ」ってバッサリ。やっぱり遠征が一番金かかるみたいで、一回で300万円は超えちゃうらしいんです。  取材してると、そういう裏側の声ってどんどん聞こえてくるものなんですか?  甲子園のバックネット裏席や記者席は、裏話の宝庫ですよ! もうほんと、書けないことだらけで。 ――04年の一場問題のようなスカウトの裏金問題や、選手の契約金の何割かは出身校の監督の懐に入るという話は、世間的にもよく聞く噂ですが......。  記者なんかと話してると、たまにそういう噂も耳にしたりしますよね。ただ、そういうお金も、世間のイメージみたいに監督が懐に入れて私腹を肥やすっていうんじゃなくて、ほとんどは野球部の強化費で設備投資に使われてるって噂ですけどね。  そうなんですね。  あと、プロ志望届を出したのに、ドラフトに引っかからない選手がいるんですよ。そこで漏れちゃうと、大学や社会人はもう締め切られていて宙ぶらりんになっちゃう場合が多い。そういう浪人確定の生徒に、当面の生活費として、そうした金からいくらか渡したりするって話も聞いたことあります。というのも、中学生をスカウトする時に、監督が「俺の顔で絶対プロに入れますから」って親御さんたちを口説く場合が多いみたいなんです。逆に言えば、それくらいやらないと、名門校の監督は務まらないんじゃないですか。  名門校の監督って、クセの強い人が多くないですか? ある意味、感覚が浮世離れしてるというか。  本当にそう、強豪校の監督ってすごいですよ。何十年もずーっとグラウンドで過ごしてるから「王様」なんです。しかも地元じゃ名士ですからね。横柄な人も少なくないです。『砂の栄冠』でもガーソというイヤな監督が出てくるんですが、まあだいたいあんな感じになる(笑)。  高校野球の監督って、アマチュアイズムと体育会系の権化なんですよね。プロに来る人は草食系もオタクもいるんだけど、アマチュアだと、体育会系的な価値観に染まらないとやっていけない面もあると思う。だから妙に草食系でマスコミ対応なんかにも気を使える監督を見てると、「ひょっとしたら、現場ではうまく指導できてないんじゃないか」って不安になっちゃうんですけど。  そうですね、そういう人は大体地方予選の準決勝ぐらいで負けます。  (笑)  いや、ベスト8ぐらいかな......一生懸命に子どもたちと向き合ってる良い人のほうが勝てない。監督だけじゃなくて高校球児も、プロを目指してる子は『砂の栄冠』の主人公の七嶋のように腹黒いですよ。強豪校の選手なんかだと、一般社会で生きてくことを捨ててますからね。むしろ監督が「勉強なんかしてんじゃねぇ」って指導してる。で、プロに上がると、具体的にお金を稼いでいく『グラゼニ』の世界になる。 ■「本当はお金の問題はあるし皆そこに興味があるはず」
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三田紀房氏。
 プロにとって、やはり年俸は切実な問題ですからね。それに、この時代的に「現役のうちに、できるだけ稼ぎたい」と多分思ってるんだろうなっていう考えが、『グラゼニ』の根っこにはある。  再就職も厳しい時代ですからね。元プロ選手が解説者に転身してはみたものの......という現実も、『グラゼニ』はリアルに描いてますよね。  昭和世代のプロ選手は「辞めても何かで食っていけるんじゃないか」って感じはあったと思うんですよ。社会的にもそうだったと思うし。でも今は普通の人だってなかなか正社員になれない時代に、「野球しかしたことがない俺が、どうやって第二の人生やっていくんだ」っていう不安が大きいと思うんです。 『グラゼニ』の中で、神宮球場の売店に再就職してる元ドラフト1位の選手が出てくるじゃないですか。あれってモデルはいるんですか?  いるような......いないような......。『グラゼニ』の登場人物は誰かを想像できるような、できないような......というバランス感覚で書いているつもりなんで、そこは読者に勝手に想像してもらいたいんです。  でも引退後の身の振り方とか、そのへんはこれまでの野球マンガじゃ全然描かれてきませんでしたよね。日本人は全般的にお金に対してアレルギー体質みたいなところがあるからな。  だから『ドカベン』の中には契約更改は出てこないんですよ。山田たちはとんでもない成績を上げてて、皆10億円ぐらいもらっててもおかしくないけど、決して契約更改は描かれない(笑)。  これまでの野球マンガは、「お金」に触れないようにしてきたと思います。でも僕らは、「そうはいっても、現実にはこういう一面も存在するんだよ」ってことを提示してる。下世話なところもあるけど、そこには皆、実は興味あるんだしね。  それと、的外れかもしれないけどサイゾー的な分析をしてみるなら、社会状況的にそこに切実な関心があるってことなのかもしれない。『グラゼニ』は最初、自営業者に向けて「自営はつらいよね」という意味で描いてる面があったんですよ。でもネットの書き込みとか見てると、むしろサラリーマンの人たちの「共感できる」って声のほうが大きくて。  何かわかる気がするなぁ。  「サラリーマン向けじゃないのになぁ」って自営組の作者としては思ってたんですが(笑)、でも考えてみれば、今は正社員でも首切りにおびえてて、一歩踏み外せば格差社会の下のほうに落っこちちゃうって不安を抱えてる。それがプロ野球選手の抱えてる「今の仕事を辞めちゃったら、次はない」って感覚と通じてるんじゃないかって。  我々が描いている青年誌ってジャンル、実際は読者層がそういう勤労者じゃないですか。だからどこかで読者が作品を自己問題化しないと、支持を得られない面はありますよね。「これは自分の問題だ」と主人公ないし登場人物や物語にシンクロできないと、人気が出ない。『砂の栄冠』がサラリーマンの共感を得たところは、監督のガーソなんです。これは全国の高校野球指導者のイヤな部分を煮詰めたようなダメ監督なんだけど、読者の反応は「ウチの上司そっくりです!」と。意図して描いたわけではないけど、勝手なこと言うわ、敵前逃亡するわ、選手に責任転嫁はするわ、こういう人間ってどこの会社にもいるみたいで(笑)。  ガーソの描き方、中間管理職の生態として、すごいリアルなんだよなぁ。ああいう思考回路の人って、本当に世の中に多いですよね。「当たり障りのないこと言っておけば失敗しないだろう」とか、失敗したくないってところが、すべての思考の元になってるタイプ。  だから『グラゼニ』も同じだと思いますよ。「こんなに毎日中継ぎでがんばって馬車馬のように働いてるのに、たった1800万円か」という主人公の葛藤が、「毎日残業してるのに給料上がらない俺と一緒じゃん」って共感を得てるんだと思う。  そうかもしれないですね。  まあ何にせよ、僕ら世代のマンガ家は野球を描くとなると、水島新司先生が刈りきった、草一本生えてない砂漠をさまよってる状態なんで、あの手この手でやっていかないと。  オアシスを求めていろいろ模索していかなきゃならないから、大変ですよね(笑)。 (構成/鈴木ユーリ) 森高夕次(もりたか・ゆうじ) 1963年生まれ。マンガ家・コージィ城倉氏の、原作者としてのペンネームである。マンガ家として『砂漠の野球部』【6】、『かんとく』【7】、原作者として『おさなづま』【8】などの代表作がある。野球マンガを多く描いており、現在は『おれはキャプテン』【9】を連載中。10月17日に第27巻刊行。

三田紀房(みた・のりふさ) 1958年生まれ。『ドラゴン桜』『エンゼルバンク』等のビジネス・教育系の作風で知られるが、野球等のスポーツマンガも数多く描いている。『砂の栄冠』最新刊6巻は11月4日に刊行。

『砂の栄冠』1~6巻 三田紀房/講談社「週刊ヤングマガジン」/各580円
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埼玉県西部の県立樫野高校野球部は、創立100周年記念の夏に、地区予選決勝までコマを進めるが、逆転負けを喫して甲子園を逃す。その後新キャプテンとなったエース・七嶋は、野球部の練習を見に来ている地元の老人から、「野球部のために」と1000万円を手渡される。額面の大きさにビビりながらも、采配のできない監督(通称ガーソ)や選手を顧みない学校&OB会の様子に、七嶋は「自分ひとりでチームを作ってみせる」と腹をくくり、この金を使いながら21世紀枠で春のセンバツを目指す。 『グラゼニ』1~2巻 森高夕次(原作)、アダチケイジ(作画)/講談社「週刊モーニング」/各580円
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プロ野球チーム・神宮スパイダース1軍に所属する投手、凡田夏之介(年俸1800万円)。中継ぎ投手の彼は、「プロは金がすべて」と考える年俸マニアだ。その趣味ゆえに、相対したバッターの年俸を必ず思い出し、自分より下なら調子よく、そうでない選手には萎縮して打たれがち。そんな彼の目から、職業としてのプロ野球選手という立場や、解説者の苦労、球団フロント事情など、試合だけではない球界のドラマを見せる。タイトルは、「グラウンドにはゼニが埋まってる」という夏之介の座右の銘より。 ■プレミアサイゾーとは? 雑誌「サイゾー」のほぼ全記事が、月額525円読み放題! (バックナンバー含む) 【プレミアにはこんな記事も!】清原和博独白!! 「ピアスに込めた怒りと巨人の裏切り、そして伊良部の死」一番ダークなスポーツは野球!? 切っても切れないスポーツと闇社会野球、ラグビーは地盤沈下? 大学スポーツ"ハンカチ王子"の知られざる憂鬱

教祖じゃありません!巨匠・美内すずえ『ガラスの仮面』に込めた宇宙メッセージを語る

【プレミアサイゾーより】 ──1975年に連載がスタートした、少女マンガ界を代表する作品『ガラスの仮面』。今年の7月には、連載開始から36年目にしてついに47巻が発売され、大きな話題を呼んだ。その作者であり、さまざまな神秘現象の体験者としても知られる美内すずえ先生に、いよいよクライマックスにさしかかった同作への思いと、初めて明かされる過去の"新宗教・教祖説"の真相について、語っていただいた。
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(写真/田中まこと)
──今年7月に発売された『ガラスの仮面』47巻では、連載36年目でついに、北島マヤと速水真澄が、お互いの気持ちを確認し合うことになりました。待ち望んでいたファンも多いと思いますが、ファンからの反応はいかがでしたか? 美内すずえ(以下、美内) 反応はとても良かったですよ。「30年間読んできて、やっとここまできたと思ったら涙が出ました」というお便りやメールをたくさん頂きました。マヤと亜弓が目指す『紅天女』がどうなるかということより、真澄とマヤの恋がどうなるのか、はらはらしながら待っている方が予想以上に多いことに驚きました。そういえば以前、「私が死ぬまでになんとか完結させて欲しい」と、70代のイタリアの方からメールを頂きましたが、その方も2人の恋の熱心な応援者でした。 ──『ガラスの仮面』の作中でマヤたちが演じる戯曲は、『若草物語』などの有名な作品から、先生がオリジナルで考えたものまでさまざまです。中でも、作品の軸であり、ついに試演目前となった『紅天女』【註1】は、やはり、先生にとっても思い入れの強い作品なんですか? 美内 『紅天女』に関しては、不思議な話がたくさんあるんですね。連載当初(1975年)からストーリーの大まかな設定は決めていたんですが、その舞台をどこにするかが、なかなか決まらなくて。そして、忘れもしない85年11月2日、たまたま人に勧められて奈良県の奥吉野にある天河神社を訪れたんですが、神社に着いた瞬間、なんだか都に来たような、とても雅な感じを受けて。空気の中に音楽が溢れていて、(空気を)ぷつっとつつくとピューッと音楽が溢れ出しそうな......不思議な感覚でした。宮司さんにお話を聞くと、その神社は南朝と深いかかわりがあって、当時の天皇もお参りされた場所だと。都に来たような感覚になったのはそのせいなのかもしれませんね。おまけに、ここは芸能の神様が祀られていて、昔から能楽師がよくお参りに来られるとか。かの世阿弥【註2】が佐渡に流された際も、息子の観世元雅がそれを解いてもらおうと尉面【註3】をそこに奉納した歴史があり、今でも宝物庫に収められています。『ガラスの仮面』も演劇の作品ですから、すべてがつながって、ここを紅天女の故郷にしようと決めました。 ──それは、不思議な話ですね......。 美内 『紅天女』にまつわる不思議な話は、ほかにもあるんですよ。95年の阪神淡路大震災の直後に、「大黒正宗酒造」という神戸の灘で2番目に古い造り酒屋の奥さんと知り合って、「『紅天女』のお酒を造りましょう」という話になったんです。ご主人に話を聞くと、儲けるためではなく、震災から立ち直るきっかけになるようなお酒を造りたいとおっしゃった。だったら、「お酒の原点に戻って造りませんか」と提案したんです。お酒はお米から造りますよね。そしてそのお米は、太陽の恵みと土の恵み、水の恵みで造られる。かつてお酒は、そんな自然に感謝し、田植えや稲刈りの時期にお祭りをして神様に捧げたんです。そんな話をしたら、ご主人が、「じゃあ、昔のように機械を使わず、すべて手造りで造りましょう」とおっしゃって。  それで、最初のお酒ができ上がった頃、大黒正宗の奥さんが京都に旅行されたんですね。屋号に合わせて大黒様にお参りしようと、たまたま乗ったタクシーの運転手さんに「どこか良い大黒様をお祀りしているところはないですか」と尋ねると、嵯峨野のあるお寺に案内された。その参拝が済んだ直後に、奥さんは私に電話をしてきたんですが、その話を聞いてびっくり。住職さんの話によると、その寺に祀られている高さ150センチほどもある大黒天像の由来が、『紅天女』のストーリーそっくりなんですよ。応仁の乱の頃、都が荒れているのを非常に憂えていた時の天皇が、ある日夢を見るんです。マンガの『紅天女』は南北朝の頃で、天皇の夢に現れるのは美しい天女なんですが、こちらは大きな大黒天。その大黒天が、「我が姿を彫って奉れば、世は平和になるだろう」とマンガそっくりなお告げをする。それで、戦火で燃え残った京都御所の大黒柱で彫らせたのが、そのお寺の大黒天像なんです。しかも作品中、天女像を彫る仏師が住んでいるのは、嵯峨野の設定。なんだか出来すぎてますよね? 偶然ではないような気がしました。以来、私も時々そのお寺にお参りさせていただいて、今では大きな大黒天像の前に、『ガラスの仮面』の全巻と『紅天女』のお酒がお供えされているんです(笑)。 ──マンガと現実がつながっていた、と。実は、作品中、美内先生自身とつながる部分も感じました。38巻で、月影千草が「天地一切の万物がわたしと同じものであり、わたしと天地一切の万物が同じものである」と、仏教の悟りを思わせる言葉を語ります。あれは"創造者"である先生ご自身の心境なのでしょうか?
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■プレミアサイゾーとは? 雑誌サイゾーのほぼ全記事が、月額525円で読み放題!(バックナンバー含む) 【プレミアにはこんな記事も!】 ・『DEATH NOTE』と『聖☆おにいさん』は宗教タブー!? さとうふみやが初めて語る幸福の科学と『金田一少年』【前編】『DEATH NOTE』と『聖☆おにいさん』は宗教タブー!? さとうふみやが初めて語る幸福の科学と『金田一少年』【後編】『金田一少年』も悪霊に狙われてる!? 加速する宗教のネタ化で見えた "信仰とマンガ"の親密度

映画化の旨みは一切ナシ! 年間20~30本大量生産されるマンガ原作映画の功罪

【プレミアサイゾーより】 ──2011年も『GANTZ』というマンガ界の大作の映画化を皮切りに、『あしたのジョー』『パラダイス・キス』など、次々と人気のマンガ作品が実写映画化された。しかし、そのどれもが話題性に比例することなく、公開後には忘れられていく。"原作レイプ"と揶揄されるマンガ原作映画は、いつまで続くのか?
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大根仁監督の作家性も色濃い『モテキ』。
大根はインタビューで、「原作は久保さ
んのものだが、映画は俺のもの」と話す。
一方、期待された『GANTZ』は、映画が
完全に負けていたが......。
『GANTZ』【1】『あしたのジョー』(高森朝雄原作)『モテキ』【2】──今年の公開作だけでも話題作が目白押しだったように、マンガ原作の映画化が止まらない。すでに2012年に公開が予定されている作品も、『宇宙兄弟』(小山宙哉原作)『荒川アンダー ザ ブリッジ』(中村光原作)『闇金ウシジマくん』【3】『ヒミズ』【4】『テルマエ・ロマエ』(ヤマザキマリ原作)といった人気作ばかり。ヒットメーカー候補として、マンガは邦画界の熱い視線を集め続けている。ただ、本誌でも再三指摘してきたように、マンガ界と映画界がWin-Winな関係を築いているかというと、そこには留保をつけざるを得ない。最近の日本映画では、広告代理店やテレビ局、出版社が相乗りして出資する「製作委員会システム」が横行。結果として、マス向けにストーリー改変、キャラクター変更が行われることも多い。そしてこれを、"原作レイプ"とバッシングするネットユーザーもいる。それもそのはず、複数のスポンサーのお眼鏡にかなう作品となれば、社会的な表現は緩和され、エンタメ色が重視されてしまう。これはドラマの話だが、『ハガネの女 season2』(テレビ朝日)では、原作とかけ離れすぎた脚本に原作者が不快感を表明。クレジット削除を要望するという話題もあった。 「製作側に"マンガ原作は映画化企画を通しやすい"という認識があるのは確かですね。原作の認知度が高ければ製作発表そのものが話題になるし、発行部数は観客動員の裏づけとなり、マーケティングもしやすい」  そう語ってくれたのは、「映画秘宝」(洋泉社)編集長の松崎憲晃氏。松崎氏によると、企画立案から監督決定、キャスティングを経て製作発表に至るまでは最短でも1~2年。このため、ヒットの芽が見えたマンガには、いち早くオファーがかかるという。さらに、映画・マンガライターの奈良崎コロスケ氏も、マンガ原作の消費加速を嘆くひとりだ。 「大手映画会社のプロデューサーの机には『このマンガがすごい!』(宝島社)の1~20位に入ったコミックスがズラリ。部下に読ませて次の映画化ネタを探している、というエピソードを聞いたことがあります。実際、『このマンガ~』の11年版1位(オトコ編)に輝いた『進撃の巨人』(諫山創原作)も、映画化が発表されたばかりですしね」(奈良崎氏)  しかし、マンガ原作が期待されるようになったのはいつからなのか。奈良崎氏によると、映画界がマンガ原作を乱獲し始めたのは90年代後半。ホラーマンガ、少女マンガというジャンル作品が突破口になったという。 「まず、『リング』に始まるJホラーブーム。小説の候補作はあっという間に払底し、映画界はマンガに触手を伸ばしました。『富江』などの伊藤潤二作品、『神の左手悪魔の右手』をはじめとした楳図かずお作品などが実写化され、映画会社は、最初から客の動員が見込めるマンガの原作が楽なことに気づいたんです。ゼロ年代に入ってからは、ベタな恋愛ものがヒットし、『NANA』(矢沢あい原作)をはじめとする少女マンガ原作が次々映画化されました。この2つの流れが合流してほかのマンガも続々映画化。『海猿』(佐藤秀峰原作)『DEATH NOTE』(大場つぐみ原作)などのヒット作を経て、年間20~30本のマンガ原作映画が作られる現在に至ります」(同)  これらのヒットは、元気のなかった邦画界に喝を入れた。『青い春』(松本大洋原作)、『殺し屋1』(山本英夫原作)などの佳作が続出。マンガ原作のインディーズ系映画に活況をもたらした、と奈良崎氏。しかし、メジャー映画会社が乗り込むようになり、作家性の強いマンガに映像で新たな解釈を加えようという気概はどこへやら。後には、原作の青田買いというフローだけが残されている。 「確かに、"このマンガをどうしても実写化したい"という、監督なり、プロデューサーの熱い想いがほとばしっている作品は少なくなりました。製作委員会システムでは、それぞれの企業の意向を反映しなければならず、メッセージ性や情念はゼロに近いほど希釈されます。『映画秘宝』でも取り上げた問題ですが、『BECK』【5】の、美声を持つ主人公の歌をボーカルレスにするという演出は、"なんだったんだろう"感が拭い去れません。でも、例え映画が大惨事になっても、結果的にそのツケは製作委員会ではなく、名前の出ている現場の人々に回る。外から見ていると、メディアミックスの名の下、現場の立場が弱くなる一方に思えます。静かな小品が得意な監督を、いきなりSF大作に起用してみたりとか、本来の資質を生かしているのか微妙なスタッフ構成を見たりすると、ただただ切ない、の一言です」(松崎氏)  そんな中、希望が持てる萌芽もある、と両氏は語る。
「プレミアサイゾー」で続きを読む
■プレミアサイゾーとは? 雑誌サイゾーのほぼ全記事が、月額525円で読み放題!(バックナンバー含む) 【プレミアにはこんな記事も!】 ・『GANTZ』『大奥』に『あしたのジョー』......人気マンガ続々実写映画化の悲劇なんと 『あしたのジョー』 に続編!? 仕掛人が語る 「衝撃の物語」「QuickJapan」好きサブカル人のしょっぱい自意識に引きずられた『モテキ』

「ヤンジャン」は他誌の2倍!! マンガ誌が愛す"グラビア登場回数"AKB48ランキング

【プレミアサイゾーより】 ──マンガ誌のグラビアを飾りまくるAKB48のメンバー。ここでは「ヤングジャンプ」「ヤングマガジン」など、メジャーなマンガ雑誌のグラビアを調査し、彼女たちの登場回数を加点式で数値化、ランク付けしてみた。すると、総選挙とは違う結果が......。 ※「ヤングジャンプ」「ヤングマガジン」「少年マガジン」「少年サンデー」「少年チャンピオン」「ビッグコミックスピリッツ」(いずれも2011年1月1日〜10月25日までに発売された雑誌)の6誌を調査。巻頭グラビア&表紙掲載のソロ出演を「5点」、巻頭グラビアのみのソロ出演を「4点」、巻頭グラビア&表紙の複数出演、巻中・巻末グラビアのソロ出演をそれぞれ「3点」、巻中グラビアの複数出演を「2点」、巻末グラビアの複数出演を「1点」として、総合点を算出。 清純派アイドルの金字塔
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[登場加点1位] ■渡辺麻友 76点 (表紙&巻頭ソロ4回/巻頭ソロ1回/表紙&巻頭複数16回/巻中ソロ1回/巻末ソロ0回/巻中複数0回/巻末複数1回) 秋元康に「正統派アイドル」と言わしめ、2011年の総選挙では5位に。「渡り廊下走り隊7」の中心人物であり、同グループを含む表紙&巻頭の登場回数はメンバー最多の16回を記録。 AKB48が誇る巨乳!?
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[登場加点2位] ■柏木由紀 74点 (表紙&巻頭ソロ6回/巻頭ソロ1回/表紙&巻頭複数13回/巻中ソロ0回/巻末ソロ0回/巻中複数0回/巻末複数1回) 09年9月に発売されたソロ写真集の『以上、柏木由紀でしたっ』(東京ニュース通信社)で、萌え系のルックスからは想像もできない美麗なボディラインを披露したグラビア向きの逸材。巻頭ソロは少年マンガ誌での起用が多く、メンバー最多となる6回を記録した。 マガジン系に出場多数
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[登場加点3位] ■板野友美 71点 (表紙&巻頭ソロ6回/巻頭ソロ1回/表紙&巻頭複数11回/巻中ソロ1回/巻末ソロ0回/巻中複数0回/巻末複数1回) 2011年の総選挙は前年よりも順位を落として8位となったが、依然として人気が衰えないスター性の持ち主。表紙&巻頭のソロ出演が目立ち、講談社の「少年マガジン」「ヤングマガジン」が多い。
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■プレミアサイゾーとは? 雑誌サイゾーのほぼ全記事が、月額525円で読み放題!(バックナンバー含む) 【プレミアにはこんな記事も!】 ・雑誌に登場した回数から"潜在人気ランキング"も集計! 雑誌とAKB48の"ただならぬ"関係1000億円市場のグラビアアイドル市場は、すでに崩壊間近!?カメラマン藤代冥砂×「月刊」シリーズ編集長 宮本和英 「月刊」シリーズはなぜ"売れた"のか!?