「アイドルに会える」といったって…… ギャラ低下で中堅が最も苦境!?グラビアカメラマン【悲】物語


【プレミアサイゾーより】 ──アイドルに会えて出版社のカネで海外に行けて、その上ギャラもガッポガッポ......は、もはや昔の話......。AKB48隆盛の一方で、ジリ貧なグラビア業界の影響をモロに受け、苦境に立たされるグラビア系カメラマンの今を追う!!

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前田敦子の最新写真集『不器用』(小学
館)。
書店の片隅で怪しい輝きを放つ、アイドル写真集。セーラー服やビキニ姿の女の子たちがポーズを決めるそれらの表紙は、男性諸氏にとってはどうしても人目が気になってしまい、立ち読みするのにも勇気がいるシロモノであろう。  しかし、写真集で注目されるのは、被写体のアイドルばかり。撮影者であるカメラマンの名前が意識されることは、少なくとも一般読者にとってはほとんどあるまい。そこで本稿では、そんな「カメラマン」という存在に着目、そこからうかがい知れる、アイドル写真集の業界事情を眺めてみたい。  まず最初に、「大御所」「中堅・若手」「亜流&作家系」と、グラビア系カメラマンを大きく3ジャンルに分け、まとめたものが上記の図表だ。とはいえ、そもそもここに列挙されているのは、人気アイドルの写真集を撮影できるような"一線級"の人たち。その下には、雑誌のグラビアなどを単発的に撮っている名もなきカメラマンたちが無数に存在する。  そんなカメラマン業界だが、折からの出版不況で写真集の出版点数が減り、さらには「サブラ」(小学館)や「月刊」シリーズ(新潮社)といったグラビア雑誌もどんどん休刊しているため、活躍の場が縮小。それに伴い、業界にもさまざまな変化が起きているという。「不況によって出版社が冒険を嫌うようになってきており、アイドル写真集を作る際は、ネームバリューがあって仕事のクオリティも保証されている大御所系のカメラマンに依頼するケースが増えています」と語るのは、ある出版社で写真集の制作を数多く手掛けている編集者のA氏。かつては中堅や若手に下りていたような小規模の仕事ですら、安定性を求めて大御所に流れていくという。 「アイドル誌『B・L・T・』(東京ニュース通信社)巻頭の篠山紀信さんのグラビアなんか、毎回ライティングも一緒で、紀信さん自身もルーティンでやっているのがよくわかる。そもそも紀信さんは、芸能プロダクションや出版社に写真のチェックすらさせないような"御大"ですが、それでも、若手を使ってカッコいい写真を狙うより、『篠山紀信』というブランドが巻頭に存在することのほうが重要なんですよ」(同) ■業界を襲う不況で中堅カメラマンが苦境!?  前述の通り、その影響をモロに受けているのが、「中堅」に位置するカメラマンたち。逆に、「若手」と呼ばれるカメラマンたちにはチャンスが回ってきているという。これはどういうことなのだろうか? 自らもカメラマン経験のあるグラビア誌の関係者・B氏はこう証言する。
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『月刊池脇千鶴』。
「大御所にいい仕事が流れてしまうと、残るのはギャラの安い仕事ということになりますよね。発注サイドにしてみれば、そういう仕事って、中途半端にキャリアのある中堅どころには、逆に頼みづらいんですよ。中堅カメラマンも実績とプライドがあるので、簡単にはギャラを落とせない。そうなると、安くても受けてくれるような若手カメラマンに仕事が流れていきますよね。結果的に中堅の出番が減り、若手にはチャンスが巡ってくるという状況になるわけです。とはいえ、安い仕事なので、若手だって苦しいことには変わりないんですが......」  また、この苦境に輪をかけているのが、他ジャンルからの参入。かつてであれば、大御所カメラマンに弟子入りし、アシスタントとしての一定期間の修業を経て独立、というのが、一般的なグラビアカメラマンのお決まりのコースだった。例えば、渡辺達生の下には「矢西誠二→楽満直城」という師弟ラインが存在し、写真スタイルも受け継がれていたりする。また、自社スタジオを持っているような大手出版社のスタジオで修業を積むというコースもあり、小塚毅之や熊谷貫は「集英社スタジオ」の出身者だ。しかし最近では、写真に個性を出したいという編集者の思惑もあり、こういった王道のカメラマン以外にも、広告やファッションといった"異世界"で撮っていたカメラマンがこぞってアイドル写真集の業界に参入しているという。 「広告写真家として有名な半沢克夫さんも『HANZO』名義でアイドルを撮っているし、谷村美月の写真集『花美月』(集英社)で高い評価を得た女性フォトグラファーの関めぐみさんも、もともとは「ku:nel(クウネル)」や「GINZA」(共にマガジンハウス)といった一流誌で活躍していた方です。そういった他ジャンルのカメラマンによって、グラビア写真のパイが奪われていることは事実でしょう。とはいえ、そのことによってアイドルグラビアが"オシャレ"になり、業界が多様化した結果、写真のレベルが上がってきていることも確かですね」(B氏)  こうして仕事を奪われてしまったアイドルグラビア系カメラマンの中には、アイドルDVDのパッケージ写真を大量に撮ったりして食いつないでいる者もいるという。これは、特別なセンスやクリエイティビティを必要としない、いわば"誰が撮ってもいい"写真であるため、カメラマンとしては、「プライドとお金を天秤にかけるような仕事」(同)なのだとか。 ■生き残るために特定の芸能プロと結託!?
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新潮社の『月刊』シリーズで、グラビア業界
に新風を巻き起こしたのが、藤代冥砂。"作
家系"の代表格だが、相当な女好きとの噂も
......。(写真『月刊真木ようこ』)
 ともあれ、大御所の復権、中堅の苦労、他ジャンルからの参入など、出版不況の影響はかなり深いところまで浸透しているといえそうだ。当然、そのフトコロ事情も気になるところだが......。 「写真集というのは、基本的に肖像権はタレント、著作権がカメラマンに帰属します。なので、カメラマンには印税収入が入るわけですが、最近では払い切りのギャラで支払われるケースも多いようです。今の時代、一冊撮って10~20万円と、かなり安めの仕事も珍しくない。海外ロケに出かけた場合でも、3日間拘束で50万円くらい出ればまあまあといったところだと思います」(前出・A氏)  制作費は縮小傾向なのに、写真集などの大きな仕事ほどギャラの高い大御所に流れる。その分は、若手のギャラを抑えることで調整されているのが現状だとか。"超大御所"の篠山紀信クラスになるとギャラの額もひと桁ケタ上がり、逆にそこまでなりきれなかったベテランのひとりである宮澤正明など、出版社、芸能プロダクションの許可を取り、グラビア写真を独自にケータイ向けのコンテンツ化して儲けている例もある。ともあれ、大御所とそれ以下の格差は広がるばかりのようだ。 「2000年代以降のデジタルカメラの普及も、苦しさに拍車をかけているかもしれません。フィルム時代は、フィルム代やプリント代を『感材費』と呼び、経費として出版社に請求できました。これをいくらか多めに請求することはこの業界では暗黙の了解だったのですが、デジタルではこれができません。さらに、デジタルだと、フィルムほど写真に差が出づらいので、仕事を取るには技術やセンスよりも"営業力"がモノをいうんです。藤代冥砂さんなんか、新潮社の『月刊』シリーズ全盛の頃は、グラビアアイドルを集めてよく飲み会をしていたと聞きますし、新垣結衣などが所属するレプロと仲の良い小池伸一郎さんや、安田美沙子などが所属するピラミッドとよく仕事をしている鯨井康雄さんのように、特定の芸能プロと密な関係を築いているカメラマンもいます。野村誠一さんなんか、奥さんが芸能プロダクションを経営していて、そこに所属しているタレントとセットで売り込んだりしていますね」(同)  また、前出のB氏も、こんなジレンマを吐露する。 「アイドル写真集ももちろん撮りたいですが、ギャラがいいのは広告の仕事なんですよ。できるなら、そっち方面の仕事にも広げていきたいのが本音です。でも、『グラビアカメラマン』の色がつきすぎると、広告業界では一段下に見られ、敬遠される傾向がある。グラビア業界でバンバン撮っていくか、あるいは広告の仕事も取るために、それをセーブするか......悩みどころですね」  カメラマンは、シャッターを押すだけでお金を生み出す打ち出の小槌!? しかもアイドルを間近で撮影できてウハウハ!? そんなイメージを抱かれがちなグラビア業界のカメラマン。しかし、今やその内実は想像以上に厳しいようだ。 (文/清田隆之 BLOCKBUSTER)
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■プレミアサイゾーとは? 雑誌「サイゾー」のほぼ全記事が、
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批評家・佐々木敦が選ぶ3冊 エイズで亡くなった"幻のアーティスト"伝記

──批評家による禁断のアーティスト本、大宅賞作家が選んだ禁忌な一冊、さらには、ネット発のカリスマバンドメンバーから人気グラビアアイドルまで、今年の賢人たちが選んだヤバい本を一気にレビュー![10年11月臨時増刊号所収]
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佐々木 敦(ささき・あつし) 64年、愛知県生まれ。批評家、HEADZ主宰。雑誌「エクス・ポ」、「ヒアホン」編集人。新聞、雑誌で文芸批評を行うほか、早稲田大学、武蔵野美術大学の非常勤講師を務める。近著に『ニッポンの思想』(講談社現代新書)、『文学拡張マニュアル ゼロ年代を超えるためのブックガイド』(青土社)など。

■モンドマンガ的遅咲きの異才、音楽の鬼才、哲学の異端が面白い  今回選んだ3冊は、それぞれに違った意味でヤバい本です。  1冊目は『洞窟ゲーム』【1】というマンガで、作者は「月刊漫画ガロ」の後継である「アックス」(共に青林工藝舎)で活躍中のまどの一哉。マンガはよく読むほうではないのですが、書店でたまたま見つけて、編集者・マンガ原作者の竹熊健太郎さんとSF作家の北野勇作さんが帯で褒めていたことから手に取りました。  ポイントは、まず作者が76年にデビューしており、34年目にして初の単行本であること。それゆえ、絵柄がまったく今風ではなく、劇画とマンガが区別できていなかった当時を偲ばせます。また内容的には、良い意味で精緻に構築されたSFとは異なり、どこか投げやりなところにヤバさがあります。  ガロ系作家の特徴はシュールさですが、これは適当さに換言することができるでしょう。マンガ家では蛭子能収、小説家では中原昌也にいえることだと思いますが、作者がいろんな理由で適当に書いたものが、なぜか不条理に見えてくる。「アックス」に掲載されたインタビューを読むと、まどの氏が至って真面目な人物であることがわかります。しかし、なぜかストーリーが途中からアサッテの方向に駆け出してしまう(笑)。最初から適当な作家とは違い、本人が真剣であることが巧まざる笑いを生み、いい具合のシュールさにつながっているのだと思います。  90年代、作者は真剣だけれどアンバランスな作風であるモンドマンガがブームになりましたが、そこですくい上げられることがなかった人がまだいて、この201 0年になって突然、特に話題になることもなく世に出てきたことも面白い。内容も、全体的に70年代──筒井康隆さんなどが元気だった頃の雰囲気を彷彿とさせます。  続いて、『アーサー・ラッセル ニューヨーク、音楽、その大いなる冒険』【2】。これは、92年にエイズで他界した、作曲家・チェロ奏者のアーサー・ラッセルの伝記です。彼はニューヨークのクラブシーンの最前線にいながら、フィリップ・グラスらと交流する現代音楽の作曲家でもあり、シンガーソングライターとしても良作を発表していましたが、どの活動もマニアックな評価を得ながらも、最後までほとんど売れませんでした。当時からアメリカ音楽界のキーパーソンとして知られていたものの、リリースがあまりなかったこともあり、なかなか音源が手に入らない幻のアーティストでした。しかしゼロ年代に入り、彼の音源を専門に復刻するレーベルが登場。リリースが相次ぎ、亡くなってから評価が追いついてきた人だといえます。  今では日本でもほとんどの作品を聴くことができますが、オムニバスでさまざまな作品が楽しめる『ザ・ワールド・オブ・アーサー・ラッセル』、エコーを最大限に上げた状態でチェロの弾き語りをした異色作『ワールド・オブ・エコー』などがオススメです。  この本にはさまざまなヤバさがあるのですが、そもそもこの音楽書が売れない時代に、わざわざ幻のアーティストの本を翻訳して出したのがスゴい(笑)。音楽書を専門に手掛ける「P-Vi ne」ならではの蛮勇です。  本の内容も刺激的です。アーサーは音楽に関して雑食で、広い分野の知識を持って時代の最先端を走っていましたが、それは「快楽」に関しても同じでした。不特定多数の同性とセックスをしているうちにエイズに感染し、病状が進んだ晩年には、がんと認知症を併発。そんな中で、彼がヘッドフォンで自分の曲を聴きながら、ニューヨークの街を徘徊していたことなどが生々しく描かれています。彼の葬儀には、各界の大物が集まり、初めて彼自身の偉大さが明らかになったそうです。  この本を読んで、あらためてアーサーの楽曲を聴いてみると、刺激的でカッコよく、先進的なものが多い。アカデミックな現代音楽とクラブミュージックは別物だと思われがちですが、その両方でしっかり立っている彼は、まさに偉大な音楽家。彼の評価はまだ始まったばかりで、その音楽的なヤバさは汲み尽くされていません。この本によって注目が集まってほしいと思います。  余談ですが、この本のヤバさとしては、近年まれに見るウルトラ直訳も挙げられます。というか、部分的にはほとんど日本語になっていない(笑)。読むことにスゴく抵抗感がある訳文なのに、それを補うに余りある内容だったので、なおさらおすすめしたいですね。  最後は、『ポストモダンの共産主義』【3】。スロベニア出身の精神分析家、思想家のスラヴォイ・ジジェクが09年出版(原著)したばかりの本です。本書で彼は、「今こそコミュニズムの時代だ」と主張しています。まずは、それがスゴいと思う。  東西対立の構造もなくなり、右翼/左翼という区別がナンセンスになって久しい時代ですが、一方で、ワーキングプア問題やロスジェネの議論があり、雇用問題でデモが起こるようにもなった。湯浅誠さんや雨宮処凛さんらが注目を集め、左翼的な感覚がリアルなものになっている。また他方で、「資本主義が過剰に進んだ結果、リーマンショックが起きたけれど、結局は資本主義でいくしかない」という意見もある。でも僕には、それらは資本主義をめぐる議論の裏表にしか思えないんです。ジジェクは、ちゃんと問題を相対化した上で、それでも「マルクスをやってやろう」と言ってる(笑)。  完全に平等で理想的な共産主義が確立されたらいいだろうけれど、それは現実的に考えて不可能ですよね。だからジジェクの主張は強引なんですが、同時に貴重さを感じます。彼の非現実的な主張は決して無意味ではなく、アリなんじゃないかと思わされるのです。  かつては「大きな物語」があって、それが崩壊したのがポストモダン。そして現在は、「大きな物語」が「小さな物語」になり、それが「より小さな物語」に......と、細分化が進んだ挙げ句、最終的に「自分の得になるように行動すればいいや」という状況です。日本でも「功利主義的な発想が蔓延する中で、皆がエゴイスティックに振る舞ってもうまく回るような社会を作らなければならない」という議論がありますが、そのための方向性として示されている道は、おそらく2つ。ひとつは東浩紀さん以降のアーキテクチャの発想で、人々が好き勝手に動いても、全体としてうまくいく調整機能を持った不可視のシステムを作る。もうひとつは、宮台真司さんなどが主張しているエリート官僚主義で、まずは衆愚を認めて、優れた人たちが市民の行動を調整するやり方です。  そんな中でジジェクは、「いやいや、共産主義でしょ」と言う。最初は「このオッサン、何を言ってるんだ?」と思うのだけど、読み進めると「本気だな」ということがわかる。柄谷行人も10年に刊行した『世界史の構造』(岩波書店)の中で、「暴力なしの世界同時革命」を謳っていますが、一見して実現不可能なことを理論的にしっかり補強しながら、強弁することのヤバさを感じます。  ジジェクの本は、「暗号の解読書が暗号化されている」ような、煙に巻かれるような内容のものが多いのですが、この本に限ってはかなりわかりやすい。こうしたアクチュアルな哲学書を、学生でも買える新書で出したことも評価したいですね。 (構成/神谷弘一 blueprint、G.B.) 【1】『洞窟ゲーム』 まどの一哉/青林工藝舎(10年)/1365円 不条理な世界観でコアなファンを抱える、まどの一哉の処女短編集。雑誌「アックス」に発表した短編の中から、「洞窟ゲーム」「プロペラ」など、よりすぐりの作品を収録。

【2】『アーサー・ラッセル ニューヨーク、音楽、その大いなる冒険』 ティム・ローレンス著、野田努監修、山根夏実訳/ P‐Vine BOOks(10年)/3465円 70~80年代のニューヨーク、アンダーグラウンドの音楽シーンを代表する"伝説的アーティスト"、アーサー・ラッセルの伝記。

【3】『ポストモダンの共産主義 はじめは悲劇として、二度めは笑劇として』 スラヴォイ・ジジェク著、栗原百代訳/ちくま新書(10年)/945円 闘う思想家=ジジェクが、混迷の2000年代を分析。資本主義イデオロギーの限界と、世界を変革に導く「まったく新しいコミュニズム」。

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批評家・佐々木敦が選ぶ3冊 エイズで亡くなった"幻のアーティスト"伝記

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──批評家による禁断のアーティスト本、大宅賞作家が選んだ禁忌な一冊、さらには、ネット発のカリスマバンドメンバーから人気グラビアアイドルまで、今年の賢人たちが選んだヤバい本を一気にレビュー![10年11月臨時増刊号所収]

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佐々木 敦(ささき・あつし) 64年、愛知県生まれ。批評家、HEADZ主宰。雑誌「エクス・ポ」、「ヒアホン」編集人。新聞、雑誌で文芸批評を行うほか、早稲田大学、武蔵野美術大学の非常勤講師を務める。近著に『ニッポンの思想』(講談社現代新書)、『文学拡張マニュアル ゼロ年代を超えるためのブックガイド』(青土社)など。

■モンドマンガ的遅咲きの異才、音楽の鬼才、哲学の異端が面白い  今回選んだ3冊は、それぞれに違った意味でヤバい本です。  1冊目は『洞窟ゲーム』【1】というマンガで、作者は「月刊漫画ガロ」の後継である「アックス」(共に青林工藝舎)で活躍中のまどの一哉。マンガはよく読むほうではないのですが、書店でたまたま見つけて、編集者・マンガ原作者の竹熊健太郎さんとSF作家の北野勇作さんが帯で褒めていたことから手に取りました。  ポイントは、まず作者が76年にデビューしており、34年目にして初の単行本であること。それゆえ、絵柄がまったく今風ではなく、劇画とマンガが区別できていなかった当時を偲ばせます。また内容的には、良い意味で精緻に構築されたSFとは異なり、どこか投げやりなところにヤバさがあります。  ガロ系作家の特徴はシュールさですが、これは適当さに換言することができるでしょう。マンガ家では蛭子能収、小説家では中原昌也にいえることだと思いますが、作者がいろんな理由で適当に書いたものが、なぜか不条理に見えてくる。「アックス」に掲載されたインタビューを読むと、まどの氏が至って真面目な人物であることがわかります。しかし、なぜかストーリーが途中からアサッテの方向に駆け出してしまう(笑)。最初から適当な作家とは違い、本人が真剣であることが巧まざる笑いを生み、いい具合のシュールさにつながっているのだと思います。  90年代、作者は真剣だけれどアンバランスな作風であるモンドマンガがブームになりましたが、そこですくい上げられることがなかった人がまだいて、この201 0年になって突然、特に話題になることもなく世に出てきたことも面白い。内容も、全体的に70年代──筒井康隆さんなどが元気だった頃の雰囲気を彷彿とさせます。  続いて、『アーサー・ラッセル ニューヨーク、音楽、その大いなる冒険』【2】。これは、92年にエイズで他界した、作曲家・チェロ奏者のアーサー・ラッセルの伝記です。彼はニューヨークのクラブシーンの最前線にいながら、フィリップ・グラスらと交流する現代音楽の作曲家でもあり、シンガーソングライターとしても良作を発表していましたが、どの活動もマニアックな評価を得ながらも、最後までほとんど売れませんでした。当時からアメリカ音楽界のキーパーソンとして知られていたものの、リリースがあまりなかったこともあり、なかなか音源が手に入らない幻のアーティストでした。しかしゼロ年代に入り、彼の音源を専門に復刻するレーベルが登場。リリースが相次ぎ、亡くなってから評価が追いついてきた人だといえます。  今では日本でもほとんどの作品を聴くことができますが、オムニバスでさまざまな作品が楽しめる『ザ・ワールド・オブ・アーサー・ラッセル』、エコーを最大限に上げた状態でチェロの弾き語りをした異色作『ワールド・オブ・エコー』などがオススメです。  この本にはさまざまなヤバさがあるのですが、そもそもこの音楽書が売れない時代に、わざわざ幻のアーティストの本を翻訳して出したのがスゴい(笑)。音楽書を専門に手掛ける「P-Vi ne」ならではの蛮勇です。  本の内容も刺激的です。アーサーは音楽に関して雑食で、広い分野の知識を持って時代の最先端を走っていましたが、それは「快楽」に関しても同じでした。不特定多数の同性とセックスをしているうちにエイズに感染し、病状が進んだ晩年には、がんと認知症を併発。そんな中で、彼がヘッドフォンで自分の曲を聴きながら、ニューヨークの街を徘徊していたことなどが生々しく描かれています。彼の葬儀には、各界の大物が集まり、初めて彼自身の偉大さが明らかになったそうです。  この本を読んで、あらためてアーサーの楽曲を聴いてみると、刺激的でカッコよく、先進的なものが多い。アカデミックな現代音楽とクラブミュージックは別物だと思われがちですが、その両方でしっかり立っている彼は、まさに偉大な音楽家。彼の評価はまだ始まったばかりで、その音楽的なヤバさは汲み尽くされていません。この本によって注目が集まってほしいと思います。  余談ですが、この本のヤバさとしては、近年まれに見るウルトラ直訳も挙げられます。というか、部分的にはほとんど日本語になっていない(笑)。読むことにスゴく抵抗感がある訳文なのに、それを補うに余りある内容だったので、なおさらおすすめしたいですね。  最後は、『ポストモダンの共産主義』【3】。スロベニア出身の精神分析家、思想家のスラヴォイ・ジジェクが09年出版(原著)したばかりの本です。本書で彼は、「今こそコミュニズムの時代だ」と主張しています。まずは、それがスゴいと思う。  東西対立の構造もなくなり、右翼/左翼という区別がナンセンスになって久しい時代ですが、一方で、ワーキングプア問題やロスジェネの議論があり、雇用問題でデモが起こるようにもなった。湯浅誠さんや雨宮処凛さんらが注目を集め、左翼的な感覚がリアルなものになっている。また他方で、「資本主義が過剰に進んだ結果、リーマンショックが起きたけれど、結局は資本主義でいくしかない」という意見もある。でも僕には、それらは資本主義をめぐる議論の裏表にしか思えないんです。ジジェクは、ちゃんと問題を相対化した上で、それでも「マルクスをやってやろう」と言ってる(笑)。  完全に平等で理想的な共産主義が確立されたらいいだろうけれど、それは現実的に考えて不可能ですよね。だからジジェクの主張は強引なんですが、同時に貴重さを感じます。彼の非現実的な主張は決して無意味ではなく、アリなんじゃないかと思わされるのです。  かつては「大きな物語」があって、それが崩壊したのがポストモダン。そして現在は、「大きな物語」が「小さな物語」になり、それが「より小さな物語」に......と、細分化が進んだ挙げ句、最終的に「自分の得になるように行動すればいいや」という状況です。日本でも「功利主義的な発想が蔓延する中で、皆がエゴイスティックに振る舞ってもうまく回るような社会を作らなければならない」という議論がありますが、そのための方向性として示されている道は、おそらく2つ。ひとつは東浩紀さん以降のアーキテクチャの発想で、人々が好き勝手に動いても、全体としてうまくいく調整機能を持った不可視のシステムを作る。もうひとつは、宮台真司さんなどが主張しているエリート官僚主義で、まずは衆愚を認めて、優れた人たちが市民の行動を調整するやり方です。  そんな中でジジェクは、「いやいや、共産主義でしょ」と言う。最初は「このオッサン、何を言ってるんだ?」と思うのだけど、読み進めると「本気だな」ということがわかる。柄谷行人も10年に刊行した『世界史の構造』(岩波書店)の中で、「暴力なしの世界同時革命」を謳っていますが、一見して実現不可能なことを理論的にしっかり補強しながら、強弁することのヤバさを感じます。  ジジェクの本は、「暗号の解読書が暗号化されている」ような、煙に巻かれるような内容のものが多いのですが、この本に限ってはかなりわかりやすい。こうしたアクチュアルな哲学書を、学生でも買える新書で出したことも評価したいですね。 (構成/神谷弘一 blueprint、G.B.) 【1】『洞窟ゲーム』 まどの一哉/青林工藝舎(10年)/1365円 不条理な世界観でコアなファンを抱える、まどの一哉の処女短編集。雑誌「アックス」に発表した短編の中から、「洞窟ゲーム」「プロペラ」など、よりすぐりの作品を収録。

【2】『アーサー・ラッセル ニューヨーク、音楽、その大いなる冒険』 ティム・ローレンス著、野田努監修、山根夏実訳/ P‐Vine BOOks(10年)/3465円 70~80年代のニューヨーク、アンダーグラウンドの音楽シーンを代表する"伝説的アーティスト"、アーサー・ラッセルの伝記。

【3】『ポストモダンの共産主義 はじめは悲劇として、二度めは笑劇として』 スラヴォイ・ジジェク著、栗原百代訳/ちくま新書(10年)/945円 闘う思想家=ジジェクが、混迷の2000年代を分析。資本主義イデオロギーの限界と、世界を変革に導く「まったく新しいコミュニズム」。

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■プレミアサイゾーとは? 雑誌「サイゾー」のほぼ全記事が、
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電通・みずほ・トヨタ・ANA……経済評論家・佐高信に聞く、巨大企業の「裏の顔」とは?

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──言わずもがな、マスコミ最大のタブーは、広告という「飯のタネ」を提供してくれる数々の大手企業のスキャンダルだ。特に就職先としても人気の高い優良企業は、膨大な広告費を持つゆえ、いいイメージばかりが流布される。「裏の顔」があることは誰もがわかっているのに......では、そんな虚飾に満ちた企業の実態を知るに最適な本はないものか?[07年6月号所収]

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(正木 猛/写真)
 そこで、"企業に最も嫌われている評論家"として、忌憚ない企業批判を展開してきた佐高信氏の元を訪ねた──。 佐高(以下、) そもそも、いまだに若者には、企業、特に日本を代表するような大企業は素晴らしいものだという誤解があるよね。でも、企業は、封建制で成り立っているもの。江戸時代の藩と一緒なんだよ。トヨタ藩であり、松下藩である。だから社長は世襲が多いし、従業員には言論の自由もないから、企業にとって不都合な情報は表に出にくい。そんな中で、企業の実態を知るために読むべきなのが、経済小説だね。 ──でも、小説ということは、フィクションですよね?  いや。経済小説は、基本的に実在する企業や人物をモチーフにしているし、ノンフィクションより緻密な取材をしている。売れっ子作家は、取材費もそれなりにかけられるから、情報も濃い。一方、ルポやノンフィクションの場合は、広報部を通して企業内部を取材をすることがほとんどだ。そのほうが楽だし、訴訟などのトラブルも避けられる。雑誌を持つ大手出版社は、広告的な付き合いもあるしね。でも、それじゃ、企業側に都合の悪いことは書けっこない。 ──小説のほうが、ノンフィクションより真実に近いという、ねじれ現象が起きていると。  そう。小説なら、企業名や人名を変えることで、ギリギリのことが書ける。特に故・城山三郎さん、清水一行さんという作家は、周辺取材だけで、作品に登場する人物のモデルには会わないんだよね。会わないからこそ、遠慮なく事実に迫ることができる。もちろん、脚色された部分はあるけど、本質的な部分は、事実とそう異ならない。だから、結局は名誉毀損で訴えられたり、抗議を受けるのも、小説のほうが多いんだよ。かつては、故・梶山季之の『生贄』(徳間書店)という本があった。日本のインドネシア賠償に絡んだ汚職をモチーフにしたものだけど、インドネシアへの"生贄"として、日本人女性が大統領に嫁ぐんだ。モデルはもちろん、デヴィ夫人だけど、その後、彼女に訴えられて絶版になった。高杉良さんの『濁流』【1】では、ある政界フィクサーをモデルにしてるけど、「週刊朝日」(朝日新聞出版)連載中にモデル本人から内容証明郵便が山ほど届き、連載中に主人公の名前を変更したことがある。だけど、どちらも、すごく面白い。 ──経済小説は、ジャーナリズムでもあると。  その側面は強いね。日本の小説というのは、明治以来、私小説の類ばかりで、サラリーマンからすれば、そんな青っちょろい話は読めないでしょ。病気になった奥さんの下着を洗うような話とか。そこで、ジャーナリスティックな書き手による経済小説が生まれた。企業というのは日々、権力争いやら不正やらが行われているドラマの宝庫だからね。しかも、そうした闇を表に出すことは、社会的に意味があるわけだから。 ──なるほど。ちなみに、リクルートの就職人気企業ランキング(08年度)のトップは、みずほフィナンシャルグループで、2位が全日空、3位に三菱東京UFJ銀行です。これらの企業に関する経済小説で、お勧めの作品はありますか?  銀行が1位と3位? 驚きだね。銀行なんて、封建社会の最たるもの。こんなところに入りたいバカがいるかっていう話だよ。いかに、銀行の実態が知られていないかがわかるね。経済小説の舞台でいちばん多いのは、銀行なんだ。なぜなら、いちばん腐っているから(笑)。でも、銀行はイメージ産業だから、その腐敗ぶりを隠そうとする。そこにつけ込むのが、総会屋。結局、銀行内で権力を握る者は、闇社会との付き合いも必然的に生まれる。こうした企業と闇社会との話が、経済小説の大きな流れのひとつだな。城山さんの出世作は、総会屋を描いた『総会屋錦城』【2】。清水さんの出世作『虚業集団』【3】のモデルは、芳賀龍臥。芳賀といえば、のちに西武の利益供与事件で逮捕される総会屋だよね。みずほに触れた作品の代表格である、高杉良さんの『金融腐蝕列島』(角川文庫)も、みずほの前身・第一勧業銀行をモデルに、銀行と総会屋など闇の勢力とのつながりを描いている。同行は、第一銀行系と勧業銀行系が、たすきがけで人事を決めていた。そこに総会屋がつけ入るスキができたわけ。それを教訓に、次の合併では、第一勧銀と富士銀行と日本興業銀行の3行合併をした。3行なら、たすきがけができないからね。それでも、頭取をどこが出すかでモメて、ATMの主導権争いでトラブルも起こした。こうした経緯は、高杉さんの『銀行大統合』【4】に詳しいよ。 ──ランキング2位の全日空は?  これも信じがたい。日本航空よりはマシということか(笑)。航空会社というのは、ポリティカル・カンパニーなんだよ。つまり、政治に首根っこ押さえられているのね。日航には政官界工作のため、族議員に100枚綴りの無料航空券を配り歩く部隊があったし、全日空にはロッキード事件があった。そこでは、右翼の黒幕・児玉誉士夫とのつながりまでがあったわけだ。こうした舞台裏は、本所次郎さんの『金色の翼』【5】に書かれている。 ■信じるに足る経済小説の選び方 ──さらに、4位はトヨタ、日立が5位、6位が電通です。  日立でいえば、三好徹の『白昼の迷路』【6】というのがある。IBM産業スパイ事件の話なんだけど、この話を書くキッカケは、三好さんの友人の息子さんの自殺なんだよ。日立に入った彼は、新入社員の時に政治的な意識もなく、労働組合の大会をふと覗いた。するとその後、会社側から、社員寮で私物検査をやられる。「おかしいじゃないか」と抗議をしたら、問題社員のレッテルをはられ、さんざん追及された。挙げ句に精神に変調を来して、自殺をするという悲劇を生んだんだ。そこで、義憤に駆られた三好さんが、日立の問題を書くことになった。 ──そのほかの2社、トヨタは広告出稿量が日本一の企業、電通はその広告を分配する元締め。まさに、マスコミの2大タブー企業ですね。  この2社は、出版社からしたら小説としても扱いづらいようで、お勧めできるのは、大下英治の『小説電通』【7】くらいかな。まさに電通が広告という飴を使って、メディアをコントロールしているさまを描いている。あとは、小説ではなく、手前味噌になるけど、(佐高氏が発行人を務める)「週刊金曜日」(金曜日)でのルポをまとめた『トヨタの正体』【8】と『電通の正体』【9】は読んでほしいね。巨大化と合理化によってさまざまな弊害を生み出すトヨタと、広告に汚染された現代社会で隠然たる力を持つ電通の実態に迫っているから。いずれにせよ、就活中の学生には、会社案内やリクルート本だけじゃなくて、経済小説も読んでもらいたいな。もちろん、社会人にとっても最低限の常識だよ。 ──経済小説を読むことの意味はわかりました。しかし、読んでみると、ちょうちん小説だったりすることも多いんです。いい経済小説を選ぶ基準ってありますか?  作家で選ぶのは、重要だよね。城山、清水、高杉。売れっ子の中でいちばんダメなのは、江上剛(苦笑)。 ──江上さんは元第一勧銀マンですが、佐高さんもかつて推薦していませんでしたっけ?  最初は、オレと高杉さんは推したんだけど、そのあと、木村剛が創設した日本振興銀行の社外取締役に就任したんだ。表向きは、まったく関係がないように見せているけどね。この前、朝日新聞の城山三郎さん追悼記事に、江上がコメントを寄せていてびっくりしたよ。彼は城山さんが、いちばん嫌うタイプだよ。そのときの朝日の記事は、ひどかった。江上のほかに、牛尾治朗ウシオ電機会長や、平岩外四元経団連会長に、城山作品を語らせている。牛尾は、リクルート事件で失脚していた人。平岩は、城山さんの作品の中で、『粗にして野だが卑ではない』(文春文庫)を推しているんだけど、この作品は勲章を拒否した実業家・石田礼助の話だよ。それを、勲章を喜々としてもらった平岩が推薦してどうする? 朝日の経済部も、もう少し経済小説を読んだほうがいいわな。 (和田キヨシ/文) 【1】『濁流 企業社会・悪の連鎖』(上・下巻) 高杉良/角川文庫(02年)/各680円 経済誌のオーナー・杉野は、新興宗教にハマる大物フィクサー。大企業や財界人の弱みにつけ込んでは、広告料などの名目で巨額のカネを集める杉野に、政官財界は翻弄され続ける。

【2】『総会屋錦城』 城山三郎/新潮文庫(63年)/620円 「どの大企業にも、数匹、数十匹のダニがついている。用といえば、年に二回の総会ですごんだ声をかけるだけ」。株主総会やその裏で暗躍する総会屋のボスを描く直木賞受賞作品。

【3】『虚業集団』 清水一行/集英社文庫(77年)/377円 戦後の混乱期に戸籍を消された上条健策は、独特の手口で手形の回った企業をそっくり食い続ける知能ギャング。モデルは、後に西武総会屋利益供与事件で逮捕される芳賀龍臥。

【4】『銀行大統合』 高杉 良/講談社文庫(04年)/770円 第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の各トップは、金融界の大再編に着手した──。トップ同士の調整や会談など、メガバンク誕生の真相に迫る。

【5】『金色の翼 暴かれた航空機商戦』(上・下巻) 本所次郎/読売新聞社(97年)/各1470円 運輸行政の裏で、米国の航空機メーカーからのリベートに群がる政官財の大物たち。ロッキード事件をモチーフに、元総理逮捕へと拡大する航空会社を舞台にした汚職を描く。

【6】『白昼の迷路』 三好 徹/文藝春秋(86年)/1050円 1982年に起こった、IBMの機密を盗んだとして、日立製作所の社員が逮捕された産業スパイ事件がモチーフ。スパイ事件で明らかになった、企業と社員の冷酷なる関係を描く。

【7】『小説電通』 大下英治/ぶんか社(03年)/1575円 メディアへの影響力を駆使して、ほかの代理店をメインにすえる企業をクライアントとして奪う、巨大広告代理店の実態を描く。四半世紀前の小説だが、業界構造は今も変わらず。

【8】『トヨタの正体 マスコミ最大のパトロン』 横田一ほか/金曜日(06年)/1050円 〈プリウスは環境に優しくない〉〈最高級車レクサスと、100万円以上も安いマークXの構造は同じ〉〈格差が歴然とした労働環境〉......暴走する"世界のトヨタ"を徹底批判。

【9】『電通の正体 マスコミ最大のタブー』 週刊金曜日取材班/金曜日(06年)/1260円 テレビや新聞、雑誌といったマスメディアのみならず、五輪や万博、そして、選挙や政局までも動かす力を持つまでに成長した電通の知られざるバックグラウンドをレポート。

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木村元彦×岡田康宏──中田英寿はいずれ大山倍達に!? "作られたヒーロー"の虚像を壊せ

──人種問題、商業主義、スターシステム......。スポーツ界には触れてはいけない領域が数多く存在する。『オシムの言葉』著者・木村元彦と、「サポティスタ」の編集人・岡田康宏が、タブーなスポーツ本をめぐって徹底議論![08年6月号所収]
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負けたのに、五輪出場を決めた谷亮子。
そしてそこに、なんら突っ込みを入れない
メディア。トヨタという巨大企業の威光を背
景にした、まさにスポーツタブーである。
──北京五輪(08年7月当時)が近づいていますし、スポーツ関連の書籍が、多く出回るかもしれません。しかし、ここ数年はスポーツもので目立った本は見当たらないような気がしますね。 木村 スポーツライティングは、取材対象のアスリート個人に寄っていくものが多い。ただ、今のスポーツ界の現状だと、選手本人がいて、代理人がいて、チームがいて、それらすべてのチェックが通らなければ本にはならない。こういった現状だと、スポーツジャーナリズムとしてタブーを破るような本は、世に出にくいですよね。 岡田 木村さんは、原稿チェックとかどうしているんですか? 木村 基本的には「ゲラを見せてほしい」という選手の取材はやりません。原稿チェックがどうしても必要な場合でも、事実関係以外は変えません。そういう意味だと、『大山倍達正伝』は幾多も出版されたひとりの人物ノンフィクションの終着点です。大山倍達の本は、『空手バカ一代』をはじめ数多く出ているけど、彼の実像をきちんと描いている本はほとんどなかったから、すごいですよね。 岡田 あの『空手バカ一代』でさえ、「事実を基にした話」という形で出されていました(笑)。 木村『大山倍達正伝』で指摘されているように、大山倍達は在日コリアン。にもかかわらず、『空手バカ一代』では「日本人として生まれ、日の丸をつけ、アメリカに渡り、日系人の心の支えになった」っていう話にまで膨らんでいる。力道山と一緒で、出自から作り上げられたヒーローですね。『大山倍達正伝』では、その虚構を一つひとつ剥がしているところが、魅力です。 ──最近のスポーツ選手で「作られたヒーロー」といえば、中田英寿が思い浮かぶのですが......。 岡田 所属事務所のサニーサイドアップが「中田をどうプロデュースしたのか?」というタネ明かしをしている『NAKATAビジネス』(次原悦子著/講談社)なる本までありますよね。 木村 中田に関して言うと、戦略上、メディア露出を抑えているので、彼の肉声を取ることが利権になっていますね。有名スポーツ選手が「信頼しているライターにしか話さない」ってよく言うけれど、「信頼しているライター」っていうのは、選手にとってゲラを全部見せてくれる都合の良いライターなのでしょうか。少しずれるけど朝青龍バッシングがあったとき、中田が「頑張れ! 朝青龍」と応援している一方で、所属事務所は、朝青龍がモンゴルでサッカーをしているビデオをマスコミに有料で貸し出していたのが、マッチポンプで奇妙でした(笑)。 ■人間的な深みがない「スポーツバカ」が多い
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岡田康宏氏。
──スポーツジャーナリズムにおいてさえ、自由に書くことが難しくなってきているのでしょうか? 岡田 好き勝手書く場合には、必ずリスクが伴いますからね。 木村 リスクを冒すという意味では、スポーツ関連ではないけれど、『プーチニズム 報道されないロシアの現実』を書いたアンナ・ポリトコフスカヤは本当に尊敬しています。ご存知の通り、自宅マンションのエレベーターで彼女は暗殺されてしまうのですが、命をかけてこの本を書いたアンナを私はリスペクトしたい。日本だと『食肉の帝王』(講談社+α文庫)を執筆した溝口敦さんですね。『食肉の帝王』では、ハンナンやフジチクなどの食肉業者と政、財、官のみならすプロ野球選手との関係にも触れられています。溝口さんは、山口組、サラ金、細木数子......アンタッチャブルなモノに斬り込んでいく。自分だけでなく、息子さんが刺されても決して信念を曲げないっていうのは、並の精神じゃないでしょう。スポーツを伝える上でもアンタッチャブルを作らない覚悟はいると思います。 岡田 結局、スポーツそのものだけじゃなく、その裏にある政治や社会的な背景までわからないとダメですよね。たとえば、僕がお薦めしたいのは、『実況席のサッカー論』。山本浩アナ(NHK)と倉敷保雄アナ(フリー)の対談本なんですけど、興味深いのがドイツW杯のときの話です。代表チームは、選手とスタッフを合わせて50名で構成されるのですが、ドイツ代表は選手のメンタルをケアするために、カトリックとプロテスタントの聖職者をひとりずつ連れていった。一方、日本代表は、スポンサーの広告看板をチェックするために代理店の人間を連れていった。こういう話が、サラッと出てきている。 木村 アナウンサーがそれを言うのは面白いね。広告代理店の本だと『電通の正体』を薦めたい。やっぱり今の日本のスポーツ界はビジネス・広告主導になっている部分が大いにある。また、ジャーナリストと称している人がCMに出るのは論外だと思うんです。スポンサーに対する配慮で、自由に書けなくなってしまう危険性があるでしょう。 岡田 木村さんにはCMの話は来ないんですか? 木村 来ないですねえ(笑)。 岡田 (笑)。 木村 オシムに関して言えば、彼は一切CMには出なかった。もちろん、プロフェッショナルの監督がCMに出るのも、普及の方法だとは思うけど、オシムはサッカー監督業以外の収入は、額も見ずに全部故国ボスニアに寄付していた。 岡田 そういう面も含めて、オシムやストイコビッチは取材対象として面白いですよね。日本のスポーツ界だと、選手自身に人間的な深みがない場合が多い。正直「スポーツバカ」と言ってもいい選手がほとんどです。そんな中、日本サッカー協会専務理事(当時)・田嶋幸三氏の著書『「言語技術」が日本のサッカーを変える』の中に、「日本のサッカーが今後、世界と互角に勝負するためには、『スポーツバカ』では通用しません!」と、身もフタもないことをはっきり書いている。 ■アウトサイダーこそ内部に深く食い込める
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木村元彦氏。
──スポーツ界の閉塞的な状況に果敢に挑んでいる雑誌といえば、岡田さんが挙げた『サッカー批評』ですね。 岡田 アスリート、特にサッカー選手は、ピッチの外に触れられるのを嫌がる傾向がある。そんな中、選手のバックグラウンドにまで切り込んでいるのは、「サッカー批評」くらいじゃないかな。最近の「サッカー批評」で一押しの書き手は、大泉実成さんですね。 木村 彼は大学の同級生ですが、この前の大泉氏の記事、「Jリーガーと『性』」なんて、サッカー専門誌のタイトルとは思えない(笑)。 岡田 (笑)。サッカーについて僕が「面白い」と感じる書き手は、小田嶋隆さんや山崎浩一さんなんですよ。けれど彼らは基本的にはスポーツとは直接関係のない分野の人なんですよね。木村さんにしても、大泉さんにしても、スポーツ界からするとアウトサイダー。そういうスポーツ界の外にいる人間にしか、内側に切り込めないっていう、すごく逆説的な問題もあります。 木村 あとは、『菊とバット』のロバート・ホワイティングやセバスチャン・モフェットなど、外国人の書き手は状況を相対化できます。スポーツを専門としてない門外漢が、中に入り込むことで、問題が浮き彫りとなる場合が多々ある。ただジャーナリストとしての食い扶持を別の世界に持っているからこそ、思いきって書いてしまえる、というやり方もあるのでしょうが、それは本末転倒で専門誌がむしろきちんと批評していくべきです。先ほど言った大泉氏のように(エホバの証人やオウム真理教の)内部に入り込んで書くという方法があって、そのメソッドの先駆けとなったギュンター・ヴァルラフの『最底辺 トルコ人に変身して見た祖国・西ドイツ』が傑作。元トルコ代表、イルハン・マンスズのことを書いたときも、参考に読み直しました。 岡田 そこまで深く斬り込めてはいないかもしれませんが、『Jリーグクラブをつくろう!』は良書ですね。地道な取材を続けて、サッカーの地域リーグの全国28クラブを回っているのですが、地域リーグは取材規制が少ないから、面白いものができる。それだけに、恵まれていない環境にあるスポーツの厳しさが、よくわかります。 木村 スポーツに限らず、ジャーナリズムとは、検証作業のこと。最近の例で言えば、女子柔道の谷亮子。彼女が代表選考会で負けても、北京五輪に選出されたのはなぜか? どういう議論がなされたのか? オープンにされないならば、その裏では、どういう力学が働いているのか? 谷本人のためにも必要な、そういった検証作業が行われないまま、プレビュー業(勝敗などの事前予想)に終始してしまっている。予想はあるけど、反省がない。 ──木村さんが挙げた『オリンピックヒーローたちの眠れない夜』は、検証の要素も大きいですよね。 木村 なにしろ、選手の肉声をちゃんと取っているよね。中にモントリオール五輪で金メダルを取った体操チームの話がありますが、ケガをした藤本俊が医務室に行って痛み止めを打とうとするんだけれど、チトフというソ連(当時)の重鎮が入ってきて、痛み止めが打てなくなり、軟禁までされてしまう。本人たちにしか知りえない、冷徹な戦いが描かれている。窮地を乗り越えるということを美談にしてほしくないという佐藤のコメントからは、ドラマ仕立てにされることを嫌ったアスリートの衿持を感じます。 ■メディア戦略によって隠される真実の中田英寿 岡田 肉声という意味だと「28年目のハーフタイム」(金子達仁著/文春文庫)はどうでしょう? 木村 きっちりと証言を取り、取材されていて構成も巧みで、エポックになったノンフィクションで素晴らしいと思います。しかし後追いというか、それ以降、出版界は若いサッカー選手の人物評伝が続くのです。五輪代表とかで少し活躍しても日本の20歳前後の選手にそんなに奥行きがあるはずもなく、まだ何も成し遂げていないのに『本』にするのはどうかと思います。TBSが構築した亀田兄弟ではないですが、スターシステムの消費サイクルに入っていっても本の寿命が短くなるだけだと思うのです。 岡田 スター選手ばかりに注目してしまうと、スポーツの見方は明らかにゆがみますよね。 木村 スターシステムとは真逆の方法論で書かれたのが『サッカーという至福』。チリ代表のツートップのサラスとサモラノという選手を「兄弟仁義」としてとらえていたりして、見方が面白いですね。武智さんの書く物には誠実な目線を感じます。漢語の素養があるのか、言葉の使い方が巧みです。 岡田 スポーツ専門のジャーナリストよりも、「アウトサイダーが面白い」と僕はさっき言いましたが、スポーツヘの新たな視点を提示してくれる本がもっとあっていいですよね。 木村 日本では、スポーツを「物語」として流通させてしまったことに問題があるのでしょう。力道山や大山倍達、長嶋茂雄といった人たちが、その象徴でしょうか。もしかしたら、彼らの描かれ方が、日本のスポーツライティングのゆがんだ雛形になってしまったのかもしれない。たとえば、力道山や大山倍達を真摯に書こうとしたら、彼らの出自は切っても切り離せないでしょう。けれど、昔は、今以上に在日朝鮮人に対する差別はきつかったから、そういった意識が、スポーツ界においてもタブーとなって当然影響していたのでしょう。サルコジのフランスでも、ジダンがアルジェリア系というのは公然ですが、日本だとまだきついのかな。 ──現在でも、王貞治、長嶋茂雄はアンタッチャブルとなっていますし、中田英寿にしても真実の姿は見えてきませんよね。 木村 もしかすると、『大山倍達正伝』のように、何十年先かわからないけれど、所属事務所のメディア戦略という呪縛が解けて、初めて「人間・中田英寿」を垣間見ることができる本が出版されるのかもしれないね。 (構成/黄 慈権) 木村元彦(きむら・ゆきひこ) 1962年、愛知県生まれ。中央大学文学部卒。ジャーナリスト。東欧の民族問題やスポーツを中心に取材・執筆活動を展開。著書に『誇り─ドラガン・ストイコビッチの軌跡』『悪者見参─ユーゴスラビアサッカー戦記』(共に集英社文庫)、『終わらぬ「民族浄化」セルビア・モンテネグロ』(集英社新書)、『オシムの言葉』(集英社インターナショナル)など。 岡田康宏(おかだ・やすひろ) 1976年、東京都生まれ。「サッカー瞬間誌サポティスタ」編集人。http://supportista.jp/『TALKING LOFT 3世』(LOFT BOOKS)などサブカルチャー系の編集者からいつのまにかサッカーの仕事に。著書に『サッカー馬鹿につける薬』(駒草出版)、『タレコミW杯』(編著/流星社)。
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["伊賀の里"出身の女]佐藤聖羅(SKE48)── 小中時代は、ジュニアオリンピックに出てました。


──ナイスバディなグラビアタレントさんの下着や水着へのこだわりを拝聴し、げに理解しがたきオンナゴコロに迫りませう!!

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(写真/三浦太輔 go relax E more)
 SKE48のライブの自己紹介で、以前「三重県伊賀の忍者の里からやってきました。佐藤聖羅です。せ~の、にんにん」っていうのをやってたんですよ。なので今日は、「くのいち」がテーマの水着を着ちゃいました。刀や手裏剣まで使ってて、結構キマってないですか? 今まで着た水着の中でも一番布の面積が小さかったので、正直ちょっと不安だったけど、でも黒は好きな色なので、着てみたらとっても気に入りました。  普段からモノトーンのファッションが好きなんですよ。だからビキニでも、柄が入ってたりフリルがついたりしてるものより、一色でシンプルなデザインのほうがいい。ただ、友達と遊びにいくなら、やっぱり豹柄やゼブラ柄かな。だってプールや海って、目立ったもん勝ちじゃないですか? といいつつ、プライベートでは水着は一着も持ってないけど......。実は日焼けがイヤで、物心ついてから今まで、水着で遊びにいったことがないんですよね。実家は海から徒歩3分の場所にあるんですけどね(笑)。  あ、でも競泳水着なら一着だけ持ってますよ~。私、幼稚園の年長組から高1くらいまで、ずっと水泳をやってたんです。小学校から中学校までで2回、ジュニアオリンピック(国内の18歳以下を対象とした水泳競技大会)に、個人メドレーで出場しました。クロールで三重県の新記録を出したこともあるんですよ。そんなふうに小さい頃からハイレグでピチピチした競泳水着を着てガチで泳いでいたので、水着グラビアに対してまったく抵抗はなくなっちゃってますね。  いや、むしろ、ずっと以前からグラビアアイドルになりたかったんですよ。小学生の頃に佐藤江梨子さんに憧れて、その頃からグラビアに出たくてたまらなくなって。今は熊田曜子さんが大好きです。熊田さんって、程よく筋肉がついてて、でも脂肪もつくべきところにちゃんとあって、水着姿がカッコいいんですよね。写真集も買って、何回も繰り返し見て勉強してます。この間テレビ番組でご一緒したんですけど、まだこの気持ちを伝えられてはいません。いつか「写真集持ってます、憧れてます!」って伝えられたらうれしいです。  同じSKEの中だと、グラビア向きなのはチームSの出口陽ちゃんですかね。歩くフェロモンみたいな存在で、セクシーな雰囲気を醸し出してるんです。ナイスバディで、フォルムが丸くて女性らしい、きれいなカラダしてるんですよね。AKBだと、チームB増田有華さんのカラダが程よく筋肉質で、素敵だと思います。  今回を入れて単独の水着グラビアはまだ4回目ですけど、写真集の発売を目指して、これからどんどん雑誌グラビアに出ていきたいです! 「まずは月刊誌に出させてもらうのが目標! それが叶ったら 次は徐々に週刊誌にも......」って、お母さんと一緒に目標を定めたりしています(笑)。今って、グラドルだと吉木りささんの人気がすごいじゃないですか? だから私も、吉木さんみたいに活躍できる、立派なグラドルになりたいですね。 (構成/岡島紳士) (スタイリング/久林ひとみ) (ヘア&メイク/KEIKO MORISAKI STIJL) 佐藤聖羅(さとう・せいら) 1992年4月30日、三重県生まれ。身長158センチ、B88W60H89。SKE48チームKIIのメンバー。水泳にはかなりの自信があり、「アイドルの水泳大会があったら絶対出たいです! ブッチ切りで勝っちゃいます。負ける気がしません!」とのこと。 SKE48オフィシャルサイト〈http://www.ske48.co.jp/〉 佐藤聖羅オフィシャルブログ「発掘!!聖羅のジュラ紀」〈http://www.ske48.co.jp/blog/?writer=sato_seira
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SKE48『片想いFinally』(avex trax) 発売初週に49万6000枚を売り上げ、週刊シングルランキング首位を獲得した、SKE48の8thシングル。MVではメンバー同士がキスをしたり平手打ちをしたりと、衝撃的な内容となっている。 価格/1600円(税込)
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サイゾー 2012年 3・4月合併号

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["伊賀の里"出身の女]佐藤聖羅(SKE48)── 小中時代は、ジュニアオリンピックに出てました。

──ナイスバディなグラビアタレントさんの下着や水着へのこだわりを拝聴し、げに理解しがたきオンナゴコロに迫りませう!!
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(写真/三浦太輔 go relax E more)
 SKE48のライブの自己紹介で、以前「三重県伊賀の忍者の里からやってきました。佐藤聖羅です。せ~の、にんにん」っていうのをやってたんですよ。なので今日は、「くのいち」がテーマの水着を着ちゃいました。刀や手裏剣まで使ってて、結構キマってないですか? 今まで着た水着の中でも一番布の面積が小さかったので、正直ちょっと不安だったけど、でも黒は好きな色なので、着てみたらとっても気に入りました。  普段からモノトーンのファッションが好きなんですよ。だからビキニでも、柄が入ってたりフリルがついたりしてるものより、一色でシンプルなデザインのほうがいい。ただ、友達と遊びにいくなら、やっぱり豹柄やゼブラ柄かな。だってプールや海って、目立ったもん勝ちじゃないですか? といいつつ、プライベートでは水着は一着も持ってないけど......。実は日焼けがイヤで、物心ついてから今まで、水着で遊びにいったことがないんですよね。実家は海から徒歩3分の場所にあるんですけどね(笑)。  あ、でも競泳水着なら一着だけ持ってますよ~。私、幼稚園の年長組から高1くらいまで、ずっと水泳をやってたんです。小学校から中学校までで2回、ジュニアオリンピック(国内の18歳以下を対象とした水泳競技大会)に、個人メドレーで出場しました。クロールで三重県の新記録を出したこともあるんですよ。そんなふうに小さい頃からハイレグでピチピチした競泳水着を着てガチで泳いでいたので、水着グラビアに対してまったく抵抗はなくなっちゃってますね。  いや、むしろ、ずっと以前からグラビアアイドルになりたかったんですよ。小学生の頃に佐藤江梨子さんに憧れて、その頃からグラビアに出たくてたまらなくなって。今は熊田曜子さんが大好きです。熊田さんって、程よく筋肉がついてて、でも脂肪もつくべきところにちゃんとあって、水着姿がカッコいいんですよね。写真集も買って、何回も繰り返し見て勉強してます。この間テレビ番組でご一緒したんですけど、まだこの気持ちを伝えられてはいません。いつか「写真集持ってます、憧れてます!」って伝えられたらうれしいです。  同じSKEの中だと、グラビア向きなのはチームSの出口陽ちゃんですかね。歩くフェロモンみたいな存在で、セクシーな雰囲気を醸し出してるんです。ナイスバディで、フォルムが丸くて女性らしい、きれいなカラダしてるんですよね。AKBだと、チームB増田有華さんのカラダが程よく筋肉質で、素敵だと思います。  今回を入れて単独の水着グラビアはまだ4回目ですけど、写真集の発売を目指して、これからどんどん雑誌グラビアに出ていきたいです! 「まずは月刊誌に出させてもらうのが目標! それが叶ったら 次は徐々に週刊誌にも......」って、お母さんと一緒に目標を定めたりしています(笑)。今って、グラドルだと吉木りささんの人気がすごいじゃないですか? だから私も、吉木さんみたいに活躍できる、立派なグラドルになりたいですね。 (構成/岡島紳士) (スタイリング/久林ひとみ) (ヘア&メイク/KEIKO MORISAKI STIJL) 佐藤聖羅(さとう・せいら) 1992年4月30日、三重県生まれ。身長158センチ、B88W60H89。SKE48チームKIIのメンバー。水泳にはかなりの自信があり、「アイドルの水泳大会があったら絶対出たいです! ブッチ切りで勝っちゃいます。負ける気がしません!」とのこと。 SKE48オフィシャルサイト〈http://www.ske48.co.jp/〉 佐藤聖羅オフィシャルブログ「発掘!!聖羅のジュラ紀」〈http://www.ske48.co.jp/blog/?writer=sato_seira
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SKE48『片想いFinally』(avex trax) 発売初週に49万6000枚を売り上げ、週刊シングルランキング首位を獲得した、SKE48の8thシングル。MVではメンバー同士がキスをしたり平手打ちをしたりと、衝撃的な内容となっている。 価格/1600円(税込)
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キンドルに勝てないアップルが編み出した電子書籍の新概念

──激変するITビジネス&カルチャーの深層を抉る!  日本でも2011年が電子書籍元年と呼ばれ、新潮流が動きだしているが、世界的に見ればこの市場で独り勝ちを続けているのはアマゾンのキンドルだ。iPadで対抗するアップルにしてみれば、この事態は当然看過できない。そこで同社が打った新たな一手とは?
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副教材は児童1人に1台iPad......そん
な時代が来るのかもしれない。
 アップルが1月、iBooks Authorという誰でも簡単に電子書籍が制作できるMac向けアプリを発表した。無料である。「すごく使いやすい」「完成度が高い」「出来上がった電子書籍が美しい」と、インターネットでは称賛の声が飛び交っている。しかし実はこのiBooks Authorの意味は、そのようにアプリ単体で考えるべきではない。そこにはもっと戦略的で重要な意味が込められている。  それは何か。  ひとことで言えば、アップルは電子書籍を垂直統合化しようとしているのだ。そしてその垂直統合への野望は、アマゾンに対抗する戦略として生み出されたものである。  現在の電子書籍は、レイヤー化が進んでいる。コンテンツは出版社が編集する場合もあれば、著者がアマゾンのキンドルダイレクトパブリッシング(KDP)で直接出版する場合もある。また配信システムは、キンドルストアが寡占していて、6~8割の市場シェアを奪っているといわれている。続くiBookストアとGoogleブックスはいずれも1~2割程度。  配信された電子書籍を読むツールは、多様化が進んでいる。なぜかといえば、市場をリードしているアマゾンがマルチデバイス戦略を採っているからだ。キンドルは電子ペーパーのキンドルリーダーだけでなく、iPadやiPh one、Android、Windows、Macなどさまざまなデバイス向けにアプリが用意されていて、自分の好きなデバイスでキンドル本を読むことができる。これはアマゾンがキンドルリーダーというハードウェアを販売して儲けるのではなく、クラウドに置かれた電子書籍のコンテンツを販売して儲けるということにマネタイズの主眼を置いているからだ。  現在のところハードウェア市場に関しては、アップルとアマゾンは拮抗しているとみられている。2011年後半の数字で、アップルのiPadの累計出荷台数は約4000万台だった。アマゾンはキンドルの出荷台数を発表していないが、これに近い数字とみられている。ただ先ほども書いたように、キンドルはハードウェアをビジネスの中心には置いていない。アップルがいくらiPadを売っても、キンドルには対抗できない。なぜならiPadが売れれば売れるほど、キンドルのiPad向けリーダーも普及し、さらにキンドルストアの書籍の売り上げが増えるという構図になっているからだ。  これはアップルにとっては非常に悔しい構造だ。そこでアップストアのコントロールを強めて、アプリ内で勝手に課金することを禁止するようになった。この制限が厳密に実行されると、アマゾンはアップストアで無料配布しているキンドルアプリを経由して本を販売することができなくなってしまう。そこで今度はアマゾンは、キンドルクラウドリーダーというブラウザベースのリーダーアプリを出してきた。これはアップストア経由ではなく、iPadに標準搭載されているウェブブラウザ「サファリ」上で書籍が読めてしまうというものだ。さすがにアップルもブラウザの中までは口を出せないから、この回避策は実に巧みだった。  電子書籍のプラットフォーム争いではこのように、キンドルがかなり有利な立場を取り続けている。そしてアップルはプラットフォームのポジションを取り損ね、今やiPadというハードウェアを提供するだけのベンダーに成り下がってしまっているというのが現状だ。これはアップルにとってはあまりうれしくない市場構図だろう。  コンテンツのプラットフォームビジネスを俯瞰すると、アップルは音楽の市場をプラットフォーム化し、00年以降着実に支配してきた。今後はこの流れが動画と書籍の分野に及ぶと考えられている。書籍では先ほども書いたようにアマゾンが一歩リードし、動画ではアップルとグーグル、それに映画業界連合などが混線状態となっている。アップルは今年新たなテレビ受像機を市場に投入すると噂されているが、まだ市場がどう帰するかはまったく不透明だ。アップルが今後も成長を続けていこうとするのであれば、このどちらの分野でも負けるわけにはいかない。しかし両市場とも、アップルにとってはかなりの厳しい戦いが強いられそうというのが現時点での可能性だ。 

アップルの垂直統合はガラパゴス化につながる?

 そういう状況の中で、iBooks Authorがリリースされた。このiBooks Authorはよくできているけれども、いくつか重要な制限がかけられている。ひとつは、iBooks Authorを使って制作した電子書籍は、有料で販売する際にはアップルのiBookストアを経由することが使用許諾条件で義務づけられているということ(無償の場合は、自由にウェブサイトなどで配布できる)。そしてもうひとつは、iBooks Authorで制作した電子書籍はiPadでしか読めないということだ。  つまりはコンテンツ制作と配信システム、そしてリーダー機器という3つのレイヤーが、iBooks AuthorとiBookストア、iPadによって垂直統合されてしまっているのである。  しかしキンドルが主導権を握っている電子書籍市場で、市場シェアを取れていない企業がいきなり垂直統合を狙ったとしても、単なる「ガラパゴス化」にしかならない。市場シェアを増やせる可能性はないということだ。  そこでアップルは、iBooks Authorで電子書籍の概念をがらりと変えていく方向に打って出た。つまり、従来のキンドルが提供していたような、紙の書籍をそのまま電子ペーパー上に移し替えて文字だけを読んでいく電子書籍ではなく、文章・図形・グラフ・イラスト・動画・プレゼンデータなどをなんでも流し込み、アニメーション効果も使える電子書籍という新たなコンテンツのあり方だ。  これは「エキスパンドブック」などと呼ばれ、それこそ日本の電子書籍のパイオニアであるボイジャー社が90年代末から取り組んでいた方向性だ。当時はCD-ROM媒体の容量やインターネットの回線の帯域、端末のCPUパワーなどさまざまな障壁があり、市場に普及するというところまでは進まなかった。しかし最新鋭のiPadであれば、このようなことは軽々と実現してしまえる。  しかもこのアップルの新しい垂直統合は、コンテンツの生成部分までも取り込んでしまっている。  アマゾンはKDPで成功しつつあり、11年のキンドルストアのベストセラー上位10作品のうちなんと3作品はKDP経由のセルフパブリッシングだ。おそらく今後の電子書籍は「出版社抜き」のセルフパブリッシングが大きな部分を占めるようになっていくことは間違いない。  しかしアマゾンのKDPが扱っているのは、あくまでも紙の書籍の代替物としてのテキスト中心の電子書籍である。動画や画像、音声、インタラクティブ性を含んだウェブ的な書籍を制作するのには適していない。そう考えれば、エキスパンドブック分野のコンテンツ生成というまったく新しいブルーオーシャン市場を、アップルが奪える可能性はきわめて大きい。特に教育分野では非常な有望株だろう。だからこそアップルは、iBooks Authorの記者発表会を「教育関連の発表」として事前告知していたのである。  これが市場としてどのぐらい成り立ち、どのような文化圏が広がってくるのか。教育や辞典辞書だけでなく、文芸やノンフィクションなどの一般書籍分野にも拡大していくのか。その時にどんなイノベーションが書籍の世界に生まれるのか。今後の展開が非常に楽しみだ。 【佐々木俊尚の「ITインサイド・レポート」 プレミアバックナンバー】広告業界の煽り商売にご用心! ソーシャルメディア はもうインフラだ情報を自ら取りに行くか否か?ソーシャルデバイド誕生の高い可能性「反グローバリズムデモが世界席巻」? 勘違いも甚だしい報道の甘言
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■プレミアサイゾーとは? 雑誌「サイゾー」のほぼ全記事が、
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サイゾー 2012年 3・4月合併号

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キンドルに勝てないアップルが編み出した電子書籍の新概念

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な時代が来るのかもしれない。
 アップルが1月、iBooks Authorという誰でも簡単に電子書籍が制作できるMac向けアプリを発表した。無料である。「すごく使いやすい」「完成度が高い」「出来上がった電子書籍が美しい」と、インターネットでは称賛の声が飛び交っている。しかし実はこのiBooks Authorの意味は、そのようにアプリ単体で考えるべきではない。そこにはもっと戦略的で重要な意味が込められている。  それは何か。  ひとことで言えば、アップルは電子書籍を垂直統合化しようとしているのだ。そしてその垂直統合への野望は、アマゾンに対抗する戦略として生み出されたものである。  現在の電子書籍は、レイヤー化が進んでいる。コンテンツは出版社が編集する場合もあれば、著者がアマゾンのキンドルダイレクトパブリッシング(KDP)で直接出版する場合もある。また配信システムは、キンドルストアが寡占していて、6~8割の市場シェアを奪っているといわれている。続くiBookストアとGoogleブックスはいずれも1~2割程度。  配信された電子書籍を読むツールは、多様化が進んでいる。なぜかといえば、市場をリードしているアマゾンがマルチデバイス戦略を採っているからだ。キンドルは電子ペーパーのキンドルリーダーだけでなく、iPadやiPh one、Android、Windows、Macなどさまざまなデバイス向けにアプリが用意されていて、自分の好きなデバイスでキンドル本を読むことができる。これはアマゾンがキンドルリーダーというハードウェアを販売して儲けるのではなく、クラウドに置かれた電子書籍のコンテンツを販売して儲けるということにマネタイズの主眼を置いているからだ。  現在のところハードウェア市場に関しては、アップルとアマゾンは拮抗しているとみられている。2011年後半の数字で、アップルのiPadの累計出荷台数は約4000万台だった。アマゾンはキンドルの出荷台数を発表していないが、これに近い数字とみられている。ただ先ほども書いたように、キンドルはハードウェアをビジネスの中心には置いていない。アップルがいくらiPadを売っても、キンドルには対抗できない。なぜならiPadが売れれば売れるほど、キンドルのiPad向けリーダーも普及し、さらにキンドルストアの書籍の売り上げが増えるという構図になっているからだ。  これはアップルにとっては非常に悔しい構造だ。そこでアップストアのコントロールを強めて、アプリ内で勝手に課金することを禁止するようになった。この制限が厳密に実行されると、アマゾンはアップストアで無料配布しているキンドルアプリを経由して本を販売することができなくなってしまう。そこで今度はアマゾンは、キンドルクラウドリーダーというブラウザベースのリーダーアプリを出してきた。これはアップストア経由ではなく、iPadに標準搭載されているウェブブラウザ「サファリ」上で書籍が読めてしまうというものだ。さすがにアップルもブラウザの中までは口を出せないから、この回避策は実に巧みだった。  電子書籍のプラットフォーム争いではこのように、キンドルがかなり有利な立場を取り続けている。そしてアップルはプラットフォームのポジションを取り損ね、今やiPadというハードウェアを提供するだけのベンダーに成り下がってしまっているというのが現状だ。これはアップルにとってはあまりうれしくない市場構図だろう。  コンテンツのプラットフォームビジネスを俯瞰すると、アップルは音楽の市場をプラットフォーム化し、00年以降着実に支配してきた。今後はこの流れが動画と書籍の分野に及ぶと考えられている。書籍では先ほども書いたようにアマゾンが一歩リードし、動画ではアップルとグーグル、それに映画業界連合などが混線状態となっている。アップルは今年新たなテレビ受像機を市場に投入すると噂されているが、まだ市場がどう帰するかはまったく不透明だ。アップルが今後も成長を続けていこうとするのであれば、このどちらの分野でも負けるわけにはいかない。しかし両市場とも、アップルにとってはかなりの厳しい戦いが強いられそうというのが現時点での可能性だ。 

アップルの垂直統合はガラパゴス化につながる?

 そういう状況の中で、iBooks Authorがリリースされた。このiBooks Authorはよくできているけれども、いくつか重要な制限がかけられている。ひとつは、iBooks Authorを使って制作した電子書籍は、有料で販売する際にはアップルのiBookストアを経由することが使用許諾条件で義務づけられているということ(無償の場合は、自由にウェブサイトなどで配布できる)。そしてもうひとつは、iBooks Authorで制作した電子書籍はiPadでしか読めないということだ。  つまりはコンテンツ制作と配信システム、そしてリーダー機器という3つのレイヤーが、iBooks AuthorとiBookストア、iPadによって垂直統合されてしまっているのである。  しかしキンドルが主導権を握っている電子書籍市場で、市場シェアを取れていない企業がいきなり垂直統合を狙ったとしても、単なる「ガラパゴス化」にしかならない。市場シェアを増やせる可能性はないということだ。  そこでアップルは、iBooks Authorで電子書籍の概念をがらりと変えていく方向に打って出た。つまり、従来のキンドルが提供していたような、紙の書籍をそのまま電子ペーパー上に移し替えて文字だけを読んでいく電子書籍ではなく、文章・図形・グラフ・イラスト・動画・プレゼンデータなどをなんでも流し込み、アニメーション効果も使える電子書籍という新たなコンテンツのあり方だ。  これは「エキスパンドブック」などと呼ばれ、それこそ日本の電子書籍のパイオニアであるボイジャー社が90年代末から取り組んでいた方向性だ。当時はCD-ROM媒体の容量やインターネットの回線の帯域、端末のCPUパワーなどさまざまな障壁があり、市場に普及するというところまでは進まなかった。しかし最新鋭のiPadであれば、このようなことは軽々と実現してしまえる。  しかもこのアップルの新しい垂直統合は、コンテンツの生成部分までも取り込んでしまっている。  アマゾンはKDPで成功しつつあり、11年のキンドルストアのベストセラー上位10作品のうちなんと3作品はKDP経由のセルフパブリッシングだ。おそらく今後の電子書籍は「出版社抜き」のセルフパブリッシングが大きな部分を占めるようになっていくことは間違いない。  しかしアマゾンのKDPが扱っているのは、あくまでも紙の書籍の代替物としてのテキスト中心の電子書籍である。動画や画像、音声、インタラクティブ性を含んだウェブ的な書籍を制作するのには適していない。そう考えれば、エキスパンドブック分野のコンテンツ生成というまったく新しいブルーオーシャン市場を、アップルが奪える可能性はきわめて大きい。特に教育分野では非常な有望株だろう。だからこそアップルは、iBooks Authorの記者発表会を「教育関連の発表」として事前告知していたのである。  これが市場としてどのぐらい成り立ち、どのような文化圏が広がってくるのか。教育や辞典辞書だけでなく、文芸やノンフィクションなどの一般書籍分野にも拡大していくのか。その時にどんなイノベーションが書籍の世界に生まれるのか。今後の展開が非常に楽しみだ。 【佐々木俊尚の「ITインサイド・レポート」 プレミアバックナンバー】広告業界の煽り商売にご用心! ソーシャルメディア はもうインフラだ情報を自ら取りに行くか否か?ソーシャルデバイド誕生の高い可能性「反グローバリズムデモが世界席巻」? 勘違いも甚だしい報道の甘言
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「Windows Phone」か、「新・週刊フジテレビ批評」か……IT業界における次なる風雲児とは?

【プレミアサイゾーより】
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『スティーブ・ジョブズ I』(講談
社)。
──ITの台頭と一般化は、20年余りで最も革新的な出来事だった。近年に限っても、スマートフォンとソーシャルメディアの爆発的普及に伴う変化は目覚ましい。この0世界で、次に革命を起こすのは誰か? 業界のウラ側まで知り尽くした賢者たちと、今後社会にインパクトを与えそうなサービスとその立役者を探る。 現在、世界で一番めまぐるしく進化している分野といえば、ITをおいてほかにない。2011年に急逝したアップル創業者のスティーブ・ジョブズや、世界最大のSNSであるフェイスブックを創ったマーク・ザッカーバーグを代表に、社会に大きなインパクトを与えるカリスマ的なイノベーターが群雄割拠するジャンルでもある。  だが、かつては技術大国として世界に名を馳せた日本は、この流れにイマイチ乗れていない。iPodがウォークマンに取って代わり、国産携帯電話がガラケーと呼ばれるようになった今では、グローバルな影響力を持つ日本発の製品やサービスはほとんど皆無だとまでいわれている。日本のIT業界には、本当に革命家はいないのだろうか? そこで、日米のIT業界に精通し、アップルやグーグルのイノベーション精神を知るジャーナリストの林信行氏に、日本のIT業界の最新事情と、知られざる未来の革命家について聞いた。 「今後、社会的に強烈なインパクトを与えそうな技術といえば3Dの進化、それも平面じゃなくて立体の進化ですね。僕が今注目しているのは、原雄司さんという人がやっている『ケイズデザインラボ』をハブとした多分野の活動です。いわゆる3Dプリントというとフィギュアや建築物の模型などを想像しますが、彼らは本当に何でも立体造形してしまう。  用途としては、例えば医療の世界では3Dプリントで人体を再現する技術がどんどん進んでいます。人間の臓器を3Dモデリングしたデータから臓器や胎児の精密模型を作ったりするんですが、この分野では日本は先進的ですよ。ロボット工学で有名な大阪大学の石黒浩教授や、神戸大学の杉本真樹先生といった方たちが第一人者なんですが、こうした動きを調べると、必ず同社の名前が出てきます。ほかにも名和晃平さんという若手アーティストとコラボレーションしてものすごく複雑な造形物を作ったりと、アートの分野への影響も強くなっていくはず。そのうち国宝級の文化財なんかはすべて3Dモデリングされて、データとして保存されるようになるでしょうね。個人的には、佐賀大学の中山功一教授らが研究している、『スフェロイド』という人体に移植可能な細胞を使って人工内臓や血管などを作る"バイオ・プリンティング技術"の進化も楽しみです」  日本の3D技術によってディスプレーの中と外が他分野でつながれば、それは確かに大きな革新になりそうではある。また、林氏は国内の先進的なクリエイターたちの"中央離れ"についても指摘する。 「正直なところ、ここ最近東京で話題になっているようなIT企業はどこもビジネス主導的すぎて、イノベーションを生み出そうという気概を感じられるサービスや人物はほとんど見当たらないです。誰もがお金にこだわりすぎていて、成功したモデルのフォローばかり。ただ、国内でも地方のIT企業は面白くなってきているなという手応えがあります。iPhoneやiPadを活用して、現実の生活や労働の中にIT技術を浸透させようとする動きが活発になっているんですよ。そうしたイノベーティブな動きは、今のところまだビジネスとしては小規模かもしれませんが、海外で紹介した時の反応は大きく、将来の展開を考えると大きな希望が持てます」(林氏)  変化のきっかけは、iPadをはじめとするタブレットデバイスの普及だ。国内でそれをいち早くビジネスに取り入れつつあるのが、関西をはじめとする地方のIT企業だという。  例えば、大阪にあるベンチャー企業「デジタルファッション」は、iPad上でアパレルブランドのカタログを再現し、好きなコーディネートを3DCGで確認しながら探せるといったサービスを広めつつある。飲食店向けのITソリューションを開発し、iPadを使った低コストなオーダーシステムの特許を獲得した「ファインフーズ」も大阪が本拠地。ほかにも、フェイスブックに搭載できるショッピングカートアプリを開発して話題となった「アラタナ」が宮崎県で起業したりと、中央に固執しない若い才能も目立ち始めている。その土地の有力者などパトロン的なエンジェルの投資を受けやすいという要因もあるが、これまでITが存在していなかった領域へアプローチする発想は、Webサービスで一攫千金を狙う都心のIT企業のオフィスからは生まれづらいのかもしれない。 ■タブレット端末の普及でまた新たな革命が起きる  とはいえ、我々がイメージするITの現場は、まだまだWebが中心。PCやスマートフォンを使ったWebの分野で、革命的な技術やサービスを開発している人物はいないのだろうか? 情報通信サービスの最新動向に詳しいクロサカタツヤ氏は、こう語る。 「インターネット、およびWebという分野に関しては、80年代に活躍したレジェンド的な技術者たちの背中が大きすぎて、それを超える人物というのは......ちょっと難しい部分はありますね。"日本のインターネットの父"と呼ばれる村井純先生とか、分散コンピューティングの"TRONプロジェクト"を提唱した坂村健先生とか、世界的な有名人がたくさんいるので。あとは、当時の梁山泊的な場所だったアスキー創業者の西和彦さん、古川享さん【註:共にマイクロソフトの日本での展開を支え、パソコン文化を日本に呼び込んだ2人】もやっぱり別格で、世の中を変えた人だと思います。それまで一部の技術者のものだったコンピューターをダウンサイジングしてネットワークでつなげたという衝撃は、簡単に超えられないものがありますよ」  確かに、それまでゼロだったものを1にするインパクトは大きい。そう考えると現在のWebの姿は、20年以上前にデザインされた原型から大きく変わってはいないとも言える。 「それを踏まえて、我々が今使っているWebの歴史を振り返ると、普及期に入ってからたかだか10年ちょっとしかない。さらに言えば、Webを実生活に活かしている日本人ってまだ人口の30%くらいだと思うんですよ。『楽天』の年間売り上げが5300億円でスゴイといっても、全国のデパートは6兆円とか売ってるわけで、まだまだそんな規模。その一方で、Webサービスの中でも目ぼしい分野は、すでにやり尽くされてしまった感もあります。グローバルな大手の寡占状態で、新規参入者がビッグビジネスを作るというのは、なかなか厳しいんじゃないかと。  ただし、それは『PCとWeb』の組み合わせが主流だったこれまでの10年間の話です。"Webはスマホやタブレットで使うもの、PCなんてよくわからない"という若い世代がすでに登場していて、上にはもともとデジタルなものが苦手な高齢者層がいて、逆にPCが使えて当たり前という30~40代が特異的な世代になりつつある。その点、タブレット端末は、老人でも赤ちゃんでも使えるのが特徴。遠くない将来、一億人がタブレットを使う時代がやってきたとき、これまでのWebの前提が覆されて、いろいろリセットされる気がしています」(クロサカ氏)  つまり、PCをベースとしたWebの世界は成熟しつつあるものの、ネットデバイスの主流がタブレットにスライドするときに、革命のチャンスがあるということか。 「今のPC中心のWebと、タブレット中心の新しいネットワークの架け橋になれる技術を開発できたら、その可能性は大きいでしょうね。OSなどの本質的な部分は難しくても、よりお茶の間的というか、例えばUI(ユーザーインターフェース)の分野でPCとタブレットをつなぐ技術なんかは狙い目だと思いますよ。そのとき誰が出てくるかはまだわかりませんが、そういう意味でタブレットも包括して家庭のIT機器のハブになりそうな『スマートテレビ』の動向には注目しています」(同)  ハードウェアの進化がネットの形を変えていく以上、「ものづくり日本」の底力にも期待したいところだが、今の国内メーカーにグローバル市場で戦える力はあるのだろうか? 「個人的には、日本には工業デザインや建築、アートなどの分野で、優れた才能を持つ個人がたくさんいると思っています。ここに新しいIT技術を組み合わせることで、革新を起こす余地は十分あるはず。ただ、その個性を活かせる組織なり企業があまりに少ないんですよ。大手の家電メーカーは、CEATEC(毎年日本で開かれる映像・情報・通信関連の国際展示会)やCES(毎年1月に米ラスベガスで開催される家電見本市)といった、決まったタイミングのイベントに追われすぎていて余裕がない。これは日本企業の体質というか、狭い業界内でのつまらない競争に走ってしまうことの影響が大きいです。仕様書のスペックを満たすことばかりに躍起になるから、小手先のサービスの作り込みはうまいけど革新が生まれない。過去の成功体験のせいで、ハードウェアに力を注ぎすぎる傾向があるのも難点です。iPhoneが世界中に受け入れられた理由のひとつがiOSの手触りだったように、UIをはじめとするソフトウェアの研究を深めたほうがいい。本来、それは日本人の得意分野だったはずなんです」(林氏) 「ガラケーとかiモードだって今では批判されがちですけど、UIとして純粋に評価すると、決して使いづらくはない。むしろよくできてるなぁ、と感心する部分も多いんですが、日本のものづくりって伝統的にやりすぎというか、極めすぎる方向に走っちゃうところがあるんです。ハイブリッドカーだって、日本の自動車開発の精髄みたいに言われてますけど、もともとは水素エンジンとか電気自動車までの"つなぎ"の技術だったはずなのに、頑張りすぎてメインになってしまった(笑)。ガラケーの問題点もそこだったと思うので、次はうまくやってほしいです」(クロサカ氏)  ガラケーの中でも極め付きにわかりやすいUIにこだわった富士通「らくらくホン」のスマートフォン版を、海外の高齢者向けに世界展開しようという動きが注目されつつある。ほかにも日本独特の技術の中に、グローバルな競争力がまだまだ眠っている可能性はありそうだ。 「日本において大企業の硬直化やイノベーションシップの欠落はよく指摘されますが、それを打ち破って個性を発揮できる人材、スタンドプレイができる異端児って意外といると思うんです。スマホ業界でいえば、11年のKDDIがあれだけ大掛かりにAndroidをプッシュしている時期に、あえて日本独自の『Windows Phone』をプロデュースした佐藤毅さんなんかは、大企業にいながら個性的な仕事をしていますよね。大手メディアの中にも『新・週刊フジテレビ批評』のプロデューサー・福原伸治さんみたいに、既存メディアとWebの壁をなくそうと頑張ってる人がいたり、AIST(産業技術総合研究所)の江渡浩一郎さんのように、世界的に評価されているメディアアーティストとしての知見を活かしつつ、ITによるコラボレーションの先端的な研究を手がける人もいる。Webやソーシャルを通じて人々がつながっていく中で、こういう人たちの仕事が少しずつ世の中を変えていっているんじゃないでしょうか」(同)  ジョブズがアップルを創ってから36年、ザッカーバーグがフェイスブックを創ってから8年が経つ。ネットの常識が変わり始めたとき、次世代の革命家は姿を現すかもしれない。 (文/呉 琢磨) 【プレミア関連記事】WEBメディアの仕掛人「WIRED.jp」田端信太郎×「TechWave」増田真樹が語るSNSの未来とは?ネットストア創設者のITベンチャーキャピタルから、日本の大手通販サイトまで! IT周りの新動向
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