嫌いだからこそわかる「村上春樹」の正しい読み方

【サイゾーpremium】より  今月11日に発表されたノーベル文学賞で、またしても賞を逃してしまった作家の村上春樹氏。近年、ノーベル文学賞の最有力候補とされながらも、いまだ受賞できずにおります。がっくりと肩を落とす村上春樹ファンも多い中、実は春樹嫌いな識者の方々も一定数いるようで……。しかし、大手メディアではなかなか取り上げられない"村上春樹"批判。そこで、今こそ『嫌いだからこそわかる「村上春樹」の正しい読み方』を教えてしんぜます! 村上春樹の真価やいかに――!? ※当記事は「サイゾー」2009年7月号掲載のものとなります。
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――『1Q84』がミリオンを突破した村上春樹。しかし、完璧な絶望が存在しないように、完璧な村上春樹などというものもまた存在しない――というわけで、もはや国民的作家と言っても過言ではない彼が、なぜだか一部では徹底的に嫌われる理由を探った。  2009年、デビュー30周年を迎えた村上春樹。彼をめぐる話題が続いている。08年7月には『ノルウェイの森』が10年に映画化されることが発表され、09年2月には、エルサレム国際ブックフェア認定の「社会の中の個人の自由のためのエルサレム賞」(エルサレム賞)を受賞。エルサレムを首都に持つイスラエルのパレスチナ・ガザ地区侵攻を理由に、受賞決定当時、市民団体らが賞を辞退するよう要求する「騒動」も起きたが、村上は授賞式に出席。イスラエル要人を前に「高くて固い壁(=イスラエル軍)があり、それにぶつかって壊れる卵(=ガザ市民)があるとしたら、私は常に卵側に立つ」とイスラエル批判とも取れるスピーチをし、話題をさらってみせた。  そして3月に、04年の『アフターダーク』以来の書き下ろし長編『1Q84』の発売を発表すると予約が殺到。新潮社は発売前に1・2巻合わせて10万部増刷という異例の措置をとり、5月29日全国発売初日に68万部(1・2巻合計)を出荷したが、完売店が相次ぎ、その後も増刷を続けた結果、09年6月4日時点で、1巻51万部、2巻45万部という驚異的な売り上げを記録しているのはご存知のとおりだ。 「物語の内容を事前には一切公表せず、読者の飢餓感を煽ったのも爆発的な売れ行きの一因でしょう。新潮社内でも、担当編集と上層部の一部しか内容を知らなかったというくらい情報が徹底管理されていたそうです」(大手出版社編集者)  確かに、平易ながらも斬新な文体、多層的な読みが可能な世界観といった点で村上の作品群は評価され、一般読者にも受け入れられてきた。評論家・福田和也も「夏目漱石以降の最重要作家」と語るなど、村上を評価する論者も多い。あるいは、ノーベル賞発表時期には、必ず文学賞候補と噂されては、落選したと報じられる(ノーベル賞候補者は非公開。本当に候補だったかなど知る由もないのだが)ため、素人目には、村上はさもスゴい作家に見える。だが、その一方で村上ほど批判渦巻く作家はいないのもまた事実なのだ。 ■田中康夫がズバリ!「春樹は心智が卑しい」
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作品から見る「村上春樹の人となり」
 後出する比較文学者の小谷野敦氏が「日本人はアメリカ好きだから(笑)」と指摘するとおり、国内の村上人気の理由のひとつに、いち早く国内文学作品に米文学的ノリを取り入れた点が挙げられる。  作家の丸谷才一が、79年上期の芥川賞の選評で『風の歌を聴け』を「アメリカ小説の影響を受けながら自分の個性を示さうとしてゐます」(「文藝春秋」79年9月号)と語るなど、村上がアメリカ文学を血肉としていることは、一定の評価を受けているのは間違いない。しかし、その一方で同じ選考委員の瀧井孝作は「ハイカラなバタくさい作だ」(同)とバッサリ。80年上期に『1973年のピンボール』が同賞候補になったときも、評論家の中村光夫が「アメリカ化した風俗も、たしかに描くに足る題材かも知れない。しかしそれを風俗しか見えぬ浅薄な眼で揃へてゐては、文学は生れ得ない」(同80年9月号)としている(両年とも村上は落選)。  大出世作だけに『ノルウェイの森』は、多くの評価を集めるとともに、最も批判も呼んだ一冊だろう。哲学者・中島義道は『私の嫌いな10の言葉』(新潮社)の中で、同作を「『デブでブスで誰にももてずに』とか『三流大学さえ受からないアタマで』とか『父親に殴られて育って』とかいう具体的な悩み」のない「知的にも肉体的にも並以上、いや恵まれた」人物が「抽象的な理由で自殺したり(中略)抽象的に他人を世間を恐れ」る「非現実的」で「相当ひどい話」と評している。  評論家の斎藤美奈子は『ノルウェイの森』をはじめ、一連の村上作品を「主人公の知力・体力・武力がレベルアップしていくにしたがって、次々と新たなモンスターとの戦いが待っているロール・プレイング・ゲーム」(『文壇アイドル論』岩波書店)的だと分析。裏技探しに熱狂するゲームオタクに似た「文学プロパーのゴタク心を非常にくすぐ」るプロットが、彼らに「『ノルウェイの森』というタイトルの由来は何かといったトリビアルな(クソの役にも立たない)推理を得意げに披露」させるとコテンパンに批判している。  思想家・柄谷行人も村上作品の風景は「人工的」(『終焉をめぐって』講談社学術文庫)であり、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』などには、コンピュータゲーム同様「『神話や儀礼』に近いロマンス」が臆面もなく盛り込まれるため「注意すべき」と語っている。  なお、斎藤は「壁と卵」のスピーチについても「こういう場合に『自分は壁の側に立つ』と表明する人がいるだろうか(中略)作家はもちろん、政治家だって『卵の側に立つ』というのではないか」(「朝日新聞」09年2月25日付夕刊)と批判、それを受けて田中康夫も「村上春樹氏の心智の卑しさを冒頭で看破」(「週刊SPA!」09年3月17日号)と斎藤に喝采を送った。  出せば売れるドル箱作家ゆえ「村上叩きは、文芸界隈のタブーに近い」(小谷野氏)だけに、前記のような批判は、一般にはなかなか届きにくかった側面もあるだろう。しかし『ノルウェイの森』が20年以上を費やして870万部売れた一方、『1Q84』の発行部数は、わずか数週間程度で100万。『ノルウェイの森』に並んで村上の代表作になる可能性が高く、近いうちに作品解釈をめぐり、誰の耳にも聞こえるほどの論争が起こることも予想される。1000ページ超の大作をムリに読む必要はないが、新聞、雑誌、ネットで繰り広げられるだろう「春樹論争」を眺める価値は十分ある。名うての論客同士の罵り合いから、珍論奇論の応酬まで、あらゆるケンカ模様を楽しめるはずだ。 【「サイゾーpremium」ではハルキストも唸る!村上春樹関連記事が満載!】有名編集者への憎悪、怒り、怨念......原稿流出騒動から垣間見える「春樹の暗部」文芸評論家、渡部直己と小谷野敦に直撃! 「私が村上春樹を嫌うワケ」『1Q84』をめぐる考察は続く──なぜ"1984"であったのか?
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韓国”ネトウヨ・ネトサヨ”の真の脅威朴槿恵の大統領就任で反日運動が激化!?

【サイゾーpremiumより】
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『「反日」の正体』(文芸社文庫)
「MB、独島(竹島)を電撃訪問」──。  終戦記念日を目前に控えた8月10日、MB【編註:明博(Myung-Bak)のイニシャルから韓国でこう呼ばれる】こと李明博大統領のとった行動は、韓国メディアにとっても大きなサプライズだった。実効支配している強みから、「日本との間に領土問題は存在しない」との立場を貫く韓国政府は、竹島問題を外交の俎上に載せるのを避けてきたからである。  日本から見ると、竹島の領有権や日本海(韓国では東海)の呼称問題で、韓国は自国の立場を世界に向けて無遠慮にアピールしている印象があるが、実は、そうした活動を担っているのはほとんど民間団体なのだ。  中でも図抜けた行動力を持っているのが、「VANK(Voluntary Agency Network of Korea)」というNGO組織である。  その名は日本のネトウヨなどの間でも知られており、ネットで検索すると、「韓国最大のネット右翼」「サイバーテロ集団」などの言葉にぶつかる。「日本海」「竹島」などと表記された海外の文献や地図を見つけるや、「独島」「東海」への修正を求めるメールを会員が一斉に送付し、それが受け入れられるまで続けるため、「サイバーストーカー集団」などと呼ぶ向きもある。2010年には、日本のネットユーザーが韓国フィギュアスケート界の妖精金姸兒に対する中傷を書き込んだことをきっかけに、「日韓サイバー戦争」が勃発。2ちゃんねるをアクセス不能にさせられた日本側のユーザーたちが、VANKのウェブサイトを主な報復対象にしたこともあった。  こんな説明を受けてしまうと、外国人排斥を掲げ、路上にも繰り出してヘイトクライムまがいのデモを行う日本のネトウヨとイメージがかぶってしまうかもしれないが、その実像は著しく異なる。  そもそも、韓国における右翼・左翼のあり方は、日本とはかなり異なっている。ごくごく大ざっぱに言うと、韓国には日本からの独立以来、「日本支配下の親日派=保守=右翼」、「日本支配下の独立運動勢力=革新=左翼」という流れがあるのだ。そして日本とは違い、破天荒な活動を展開するのは主にネトサヨであり、ネトウヨは”リアルな優等生エリート集団”が頭脳戦を展開させている。  実際、彼らと同様の主義主張を展開する韓国の民族派団体の関係者にVANK会員の評判を問うと、「とにかく礼儀正しく、知識が豊富」(独島博物館李元徽学芸研究士)、「純真でひたむき。彼らを見ていると癒やされる」(民族問題研究所の趙世烈事務総長)などと、まさに学校の優等生に向けられる評価そのものだった。  ただ、そんな礼儀正しく純真な彼らの活動が、きわめて大きな”破壊力”を持っているのも事実である。VANKはナショナル・ジオグラフィック、ヤフー、米国務省、ユニセフ、WHO、グリーンピース、コロンビア百科事典、米中央情報局などに粘り強くメール攻勢を続けており、これまで少なくとも300のウェブサイト、1000点の教科書の表記を「修正」させたという。  そのパワーの源泉としては、伸び続ける会員数が第一にある。竹島問題がヒートアップするさなか、VANKの朴基台団長に直撃した。 「現在の会員数は7万5000人で、ここ約5年間で5倍に増えました。このうち常時500~600人ほどが、オンライン上で独島などの表記修正を働きかける作業や、韓国に関する正しい知識を海外に普及させる広報活動に携わっています。また、学校の夏休み期間には1500人規模のオフライン会合が全国で頻繁に行われていますよ」  現在、VANKは大統領直々の指示により、政府から支援金を得ており、同団体への加入は、学歴社会である韓国の受験戦争にも有利に働くようになってきているという。というのも、彼らは、12段階のテストをクリアした、”エリート”たちのみを正会員として迎えているのだ。  1段階目の設問は「気に入った韓国広報サイトを見つける」「自分の故郷の文化や観光地を紹介した文章を作る」など比較的容易だが、2段階目以降は「英語で自己紹介する」「英語で(表記の)修正要請文を作る」などと、中学・高校生にはハードルが高いと思われるような項目が登場する。さらに段階を進めると「海外に知り合いを何人作ったか」「その時、どのように韓国を宣伝したか」など実践度が増していく。そして、サイバー外交官への最後の難関には「抗議すべきサイトとその発見方法」や「国際書簡(親書、協力要請書簡)を送る」など、本物の外交官顔負けの課題が用意されている。 「会員のうち約5万人が学生です。大学入試の勉強と並行してテストを受ける高校生も多いですよ。外国籍の会員も約1万5000人いて、50人ほどと少数ながら日本人もいます。ですから、韓国語と英語のみならず、世界のほとんどの主要言語に対応できる。今のペースでいくと、会員数は近い将来100万人規模になると思うのですが、そうなれば必然的に、VANKが育てあげた”サイバー外交官”の中から、本物の外交官が生まれる、ということになっていくでしょうね」(朴団長)  となれば、100万人のネトウヨが一斉に日本へ攻勢をかける、という事態も起こりうるのだろうか? 「そんなことはありませんよ。私たちは右翼とか民族主義者とかに誤解されがちですが、目的はあくまで韓国について”正しく”知ってもらうこと。東日本大震災のときも、会員たちが義援金を送っていますし。VANKが過激であるかのように言われるのは本意ではありません」(同) ■内閣総辞職させる脅威日本の敵はネトサヨ?  2ちゃんねるの騒動はあったものの、韓国メディアの関係者たちに意見を求めてみても、皆一様に「VANKは悪質なサイバーテロを行うような団体ではない」と答えた。  同国の情報当局者によれば、「何か大きな騒ぎを起こす勢力がいるとすれば、韓国では右翼よりもむしろ左翼のほうだ」という。韓国のネット左翼は、革新派の市民団体や世論と密接な連携を持っている。政界の保守勢力や旧体制派のメディアは、言論関係の法律解釈で彼らの活動を封じようとしたこともあったが、あまり功を奏していない。むしろ、ネット左翼の影響力は、ますます強まっているのだ。  実際、牛海綿状脳症(BSE)問題を受けて停止されていた米国産牛肉の輸入再開を韓国政府が決定(08年4月)した際には、ネトサヨらの呼びかけで大規模な抗議運動が発生。一時は首都機能がマヒ寸前となり、政権を内閣総辞職にまで追い込んだ。  また、03年の盧武鉉政権の誕生も象徴的といえる。前年の大統領選挙において、脱地縁、脱学閥などを訴え、既存の選挙システムに依存しないことを公言した盧陣営だったが、予想通り苦しい戦いを強いられた。ただ、盧武鉉の政策が韓国の構造的な転換につながると支持した勢力は、新しい選挙戦の形を模索する。そこで利用されたのが、インターネットだった。結果、中でも「ノモサ」という団体に所属する左派の若年層が中心となり、ネットをフルに活用してほかの有力候補者を蹴散らすこととなったのである。  そして、そんな勢いに乗る韓国の左翼が最も闘志を燃やすのは反米運動においてだが、それがいつ日本に向かってこないとも限らない。  たとえば、今年末の大統領選で最有力候補といわれている与党セヌリ党の朴槿恵元代表は、父である朴正熙元大統領が旧日本軍の将校出身であることなどから、左翼からは「親日派の末裔」と見られている。韓国人ジャーナリストが言う。 「現在の従軍慰安婦問題のこじれは、朴正熙元大統領の結んだ日韓基本条約に端を発している側面があるため、保守派からの政権奪還を目指す”ネトサヨ”は当然、朴槿恵元代表を親日派として指弾するでしょう。  仮に、朴槿恵元代表が竹島問題で『弱腰』と見られる態度を取れば、ネトサヨによる親日派攻撃はいっそう大きく燃え上がるでしょう。ハッキリ言って、右翼が中心になってきた従来の反日運動はまだまだ甘い。街頭の反米デモで火炎瓶を振りかざし、戦闘警察(機動隊)との流血沙汰を繰り返してきた左翼陣営が本気で反日に転じたら、今までとは次元の違う騒ぎが起きる可能性がある」  ネトウヨ・ネトサヨ、いずれにせよ、韓国社会に大きな影響力を持つ彼らの活動が激化すれば、現在の危うい日韓関係にまでその力が及ばないとも限らない。竹島問題をはじめ、これ以上、トラブルが大きくならないことを願うばかりだ。 (文/河 鐘基) ■ネトウヨ・ネトサヨ 韓国では、ネットの住人を指して「ネチズン=ヌリクン」という。これは、2000年頃、左派=革新派勢力が中心となって形成されたものであり、彼らがネット左翼(ネトサヨ)の源流と言われる。対して、ネット上で旧体制派の保守勢力的な発言をする人たちを、ネット右翼(ネトウヨ)と呼ぶ。 【「サイゾーpremium」ではこの他にも日韓領土問題に迫った記事が満載!】慰安婦問題でも大統領の保身のためでもない! 竹島問題が加熱した本当の理由なぜ国境の島のウェザーニュースを報じないのか?領土問題にはパフォーマンスで応じろ!ナショナリストな左翼が選ぶ安直な"右翼"に対処する 懐が深い"左翼"本のススメ
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それでもグーグルには勝てない? LINE、NAVERまとめのNHN Japan台頭の裏

【サイゾーpremiumより】
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『LINEを100倍楽しむ本』(アスペク
トムック)
──今年8月、スマートフォン向けインスタントメッセンジャーアプリ「LINE」のユーザー数が世界で5000万人を突破したと報じられた。このアプリを開発したのは、日本のIT企業・NHN Japanだ。韓国では検索エンジンにおいてグーグルを上回るシェアを持つというNHN社の日本支社だが、LINEの開発をはじめ、キュレーションサービス「NAVERまとめ」などで昨今その知名度を急激に伸ばしている。2010年にはライブドアを買収し、今年頭に完全統合を果たしてますます勢いに乗る同社だが、この急成長に落とし穴はないのだろうか?  ここ最近、日本のIT業界関係者の間で、頻繁に話題になる会社がある。それが、新宿区と品川区大崎にオフィスを置く、NHN Japan社だ。しかしこの会社の場合、一般には社名よりも、運営するサービス名のほうが広く知られていることだろう。インスタントメッセンジャーアプリの「LINE」、個人向けキュレーションサービス「NAVERまとめ」、そしてオンラインゲームの「ハンゲーム」などである。この名前を聞けばピンとくる読者も多いのではないだろうか。サービス名が先立ち、会社としての存在感はやや薄いが、実はあのライブドアも2010年に同社に買収されており、資本金約125億・全従業員1000名ほどのそこそこ大きなIT企業なのだ。  NHN Japanは、韓国内でトップのシェアを誇るIT企業・NHNの日本支社である。00年9月に日本に初めて上陸したときの社名は「ハンゲーム・ジャパン」。オンラインゲーム大国である韓国のサービスが日本にも上陸したとして、当初かなり話題になった。そうして下地を作った後、ネイバージャパン株式会社を立ち上げ、01年には検索ポータル「NAVER」を日本でスタートさせた。詳細は91ページに譲るが、「NAVER」は検索・ポータル機能において韓国で実に7割のシェアを持つ巨大サービスだ。日本で言うところのYahoo!のような存在である。しかしこの日本進出は失敗に終わった。 「当時の『NAVER』は、日本語へのローカライズが全然うまくいっておらず、検索精度が低すぎた記憶があります。それではむろんポータルサイトのほうも根付かない。03年にネイバージャパンはハンゲームと合併してNHN Japanになりましたが、『NAVER』自体の定着は結局一度諦めて、05年に閉鎖しました」(ITジャーナリスト)  しかしNHNはゲーム以外の日本市場を諦めたわけではなかった。09年、今度はNHN Japanの子会社としてネイバージャパン株式会社を再び立ち上げ、サービスを再開。そして10年5月にはNHN Japanはライブドアを買収し子会社化するという速攻を見せた。買収から4カ月後の9月には、ライブドアの検索エンジンが「NAVER」に置き換わっている。 ■日本発! LINEがここまで普及したカラクリ  そして、同社の中で今最も注目を集めているサービスは「LINE」だろう。スマートフォン向けインスタントメッセンジャーアプリで、テキストチャットと無料音声通話が主な機能になっている。同アプリは韓国からの輸入ではなく、日本法人が独自開発したもの。11年6月にサービスを開始し、1年余りで中東や東南アジアなどにも広がりを見せ、世界で5000万人のユーザーを抱える巨大サービスに成長した。その成功の理由について、『Google+ 次世代SNS戦争のゆくえ』(ソフトバンク新書)などの著書を持つ株式会社モディファイCEOの小川浩氏はこう語る。 「AndroidやiOS上で、無料通話とメッセンジャー機能に絞り込んだシンプルなサービスを提供していることが『LINE』の魅力です。加えて、スマートフォンの電話帳をベースに、そこに登録されている知人を仲間に引き込む仕掛けが優れている。サービスモデルとして韓国のカカオトーク【編注:同様のメッセンジャー&無料通話アプリ。同国のベンチャー企業が開発した。韓国のスマホユーザーの95%が使っているという情報も】という先行者がありました。それを良い意味で改良コピーするという戦略を取ることができ、さらにNHN自体が強力な資金を有しているため、いわば後出しジャンケンと資金力でカカオトークを抜き去ったと言えます」  そして「LINE」の人気を支えるのが「スタンプ」だ。前ページ上部のサービス紹介を見てほしいが、いわば従来のケータイメールにおける絵文字をさらに大きくしたようなもので、キャラクターの種類や表情、イラストのタッチも豊富。無料のものと有料のものがあり、有料ならば一律170円で、コンテンツや商品とのコラボレーションスタンプも多く配布されている。筆者も、映画『アメイジング・スパイダーマン』(12年6月公開)やゲーム『ドラゴンクエストⅹ』(同8月発売)、日清チキンラーメンなどのスタンプを利用している。8月末現在、スタンプをダウンロードできる「スタンプショップ」のランキング1位は『エヴァンゲリオン』(有料)だ。 「オリジナルスタンプを製作・配布する際は、最低で1000万円からかかるそうです。また、企業向けに『LINE公式アカウント』も提供しています。このアカウントを”友だち”に追加したユーザーに、クーポン情報や店舗情報などを直接メッセージで配信できるサービスです。こちらは初期費用が200万円で、月額は150万円から。どちらも決して安くはないですが、国内の2000万人近いユーザーに届く可能性を考えたら、広告としては悪くない。しかもスタンプのキャラクターには一定の親しみが抱かれますし、ユーザー間で送り合うことで話題にもなる。十分、元は取れるでしょう」(前出・ITジャーナリスト) ■“出会い”目的が出るのはSNSの宿命だが……  今後のNHN Japanの成長に不安材料があるとすれば、それはやはりこの台頭を後押しした当の「LINE」がどこかで躓くことだろう。同サービスの今後を左右することになるであろう次の一手として、7月3日に開催された初の「LINE」カンファレンスで発表されたのは、「ホーム」機能と「タイムライン」機能の導入だった。前者は、自分が撮った写真や動画、位置情報などを使って近況をアップデートできる機能で、後者は「LINE」でつながる友人たちがそれぞれに「ホーム」でアップデートした近況をタイムライン形式で閲覧し、コメントやリアクションをつけることができる機能だ。Androidには8月6日から、iPhoneでは同13日から実際に機能が追加されたが、この展開に対しては懐疑的な見方も多い。 「これまで『LINE』は、ウェブ上ではなくスマートフォン上でのネイティブアプリに特化することで、広範囲な人脈作りというよりはクローズドな人間関係のコミュニケーションに絞ってきました。SNS化することはフェイスブックとのユーザーの奪い合いになる可能性があり、戦略的に正しいとは思えませんね。ライトユーザーを失いかねません」(前出・小川氏)  実際、まだ大きく浸透はしていないようで、「LINE」上の”友だち”が約50人の筆者のタイムラインでも、8月6日の機能開始以降、4件しか投稿がないといった有様である。  さらに、こうしたコミュニケーションサービスにとっては避けがたいことに、「LINE」を出会い系として利用するユーザーも増えてきた。すでに7月には、奈良市の会社員の男(32)が「LINE」を利用して知り合った中学3年生女子とみだらな行為をしたとして滋賀県青少年健全育成条例違反容疑で逮捕されている。この事件で発覚したが、どこか別の掲示板やSNSで「LINE」のID情報と居住地域などを晒し、連絡を待つという手法が”出会い”目的利用のメインになっているようなのだ。過去、こうした”出会い”目的のユーザーをはびこらせないためにGREEやミクシィなどのSNSでは監視を厳しくし、個人あてのメッセージであっても電話番号の交換を行うとアカウントごと停止されるようになっているが、IDの交換では単なるアルファベットの並びゆえ検出も難しい。ユーザー数の急激な増加に伴ってこうした事件が続けば、かねてよりスマホ向けのフィルタリング強化を進めようとしている政府にとっては、格好の規制対象になるだろう。かつてGREEやミクシィが通ってきたのと同じように、「LINE」に対する世間の批判の目も強まるはずだ。  ことほどさように、今や看板サービスとなった「LINE」において不安材料も抱えながら、躍進を続けるNHN Japan。中東やアジア圏での「LINE」人気を追い風に、ネットサービスの本場である欧米をも巻き込んだプラットフォームを築き上げていくことはできるのだろうか? 「フェイスブックやグーグルのような大規模プラットフォームに発展させることは難しいでしょうね。会社自体は収益的には当面死角は見当たりませんが、この2社などのライバルとしてグローバル化できるか? という点においては、やはり韓国や日本のネット事情に特化することで収益力を保っているという見方ができます。ですから、真のグローバルプラットフォーマーには成り得ないでしょう」(前出・小川氏)  果たしてNHN JapanはIT業界を変える存在に成り得るのか? 本特集では、いまだその全貌が世に知られていないであろう同社を解剖しながら、その将来を占っていきたい。 (取材・文/松井哲朗) 【「サイゾーpremium」ではこの他にもNHN Japan躍進の裏側に迫った記事が満載!】韓国国民の7割が「NAVER」を利用? 不正操作疑惑もなんのその韓国NHNは今日も磐石いしたにまさきに訊くNHN Japanブレイクの理由「ライブドア買収にNHNの本気を見た!」濱野智史に訊くNHN Japanブレイクの理由「スタンプとAAはよく似てる!? LINEの台頭は必然」
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放射線検査をしないコメが市場に流通──不安視される食品業界のタブー構造

【サイゾーpremiumより】
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『食品業界は今日も、やりたい放題』
(三五館)
──福島県産農作物が売れているという。  原発事故の影響で、首都圏ではスーパーなどの小売店で福島県産農作物を見る機会はほとんどない。当然出荷量もガタ落ちのはず……と思いきや、日経新聞などの報道では2011年度のコメの出荷量は、例年の7割程度を確保しているという。店頭では見かけることがないのに、いったいどこに出荷しているのだろうか? 「福島県産米は、主に首都圏の外食店やせんべいなどの加工食品メーカーで使用されているんです」 と話すのは、ジャーナリストの吾妻博勝氏。『コメほど汚い世界はない』(宝島社)を執筆したコメ流通のエキスパートだ。  いまや日本では、手軽で安価な食品が氾濫している。オペレーションシステムの改善や人件費の削減などの企業努力で、1円でも商品の原価を切り詰め価格競争に立ち向かう食品産業にとって、味自体は問題がなく、値段も割安となった福島県産農作物は、まさに渡りに船。消費者としても、11年にはサンプリング調査だった放射性物質の検査が、全袋検査へと移行し、しっかりとした検査を行っているんだから大丈夫だと安心する向きもあるが、吾妻氏は「あれだけ検査の様子が報道されれば、すべてのコメが検査されていると〝誤解〟する方も多いのではないでしょうか」と話す。 「今年度米で全袋検査をしたのは、8月に収穫した早場米の一部だけ。さらに、9月下旬から収穫が始まる米で全袋検査されるのは、主としてJA経由の流通米のみです。農家が業者に直接販売する米は全体の5割以上にも上り、それらは検査もされずに流通するものが多い。業者が農家にトラックを横付けして直接買い取り、そのまま激安居酒屋や、加工食品業界へ出荷されるんです」(吾妻氏)と、非正規のルートでコメや農作物が流通しているというのだ。中間マージンを削るため、農家と直接契約を謳っている企業も多い。 「食の安全」が叫ばれて久しいが、O-157など頻発する食中毒や発がん性物質の混入など、消費者は食に対して疑心暗鬼にならざるを得ない状況が続いている。特に「デフレ食品」とさえ呼べる一連の激安フードは、その安さと引き換えに、こうした安全性が不透明な製品も使用されている。  例えば、かねてから発がん性物質などの危険性が指摘されている食品添加物は、激安フードにとってなくてはならない存在。ハムやベーコン、そしてハンバーグなどの加工食肉には保存料をふんだんに使用することで、流通経費や廃棄リスクを抑制し、合成着色料で新鮮な見た目を演出、化学調味料で味を調えている。合成甘味料のズルチンや合成保存料のフリルフラマイドなど、即座に健康に被害が及ぶものに対しては、厚生労働省も規制を行なってきたが、”ただちに健康に被害がない”ものには、審査も甘い。長期的に摂取し続けた場合や、ほかの添加物と混ぜ合わせた場合のリスクに関しては、安全性が疑問視されるデータが民間の機関から出ていても、そのままにされているものが多い。  また、いまだに安全性が疑問視される遺伝子組み換え農作物も、激安価格を実現するためには欠かせない。通常の作物よりも生命力が強靭で、収穫量も高いことから価格が安いのだが、その不信感は根強く、一部からはアレルギー、臓器異常、不妊、発がん性などの可能性も指摘されている。  遺伝子組み換え作物については、アメリカの農薬会社モンサントの日本進出が話題となっている。同社はすでに茨城県に実験農場を建設している。内部で見たことを口外しないという誓約書を書かされた上で、この農場を見学した人物は、その内部の様子を振り返った。 「周囲から完全に隔離された施設の内部には遺伝子組み換えの作物と、普通の作物が並んでいました。除草剤の効果で、普通の作物はほとんど枯れているのに対し、遺伝子組み換えのほうはピンピンしていた。『どうですか?』と自信満々に聞かれましたが、正直気持ちが悪かった」  作物が枯れてしまうほど強力な農薬が残っているかもしれないのに、本当に人体にとっても安全なのか、十分に議論・検証する必要があるだろう。また、現段階ではその多くに使用表示の義務があるので、日本人が直接口にすることは少ないように思えるが、実は、牛や豚などの家畜飼料として、大量に輸入されており、これらは表示義務がない。結果、我々も間接的にそれらを摂取しているのだ。 ■デフレ食品批判映画が圧力で潰された!?  こうした「安さのヒミツ」は、一部の書籍や雑誌などで報道される程度にとどまっている。自らも製薬会社・食品メーカーで添加物の研究や食品の開発にかかわりながら、『食品業界は今日も、やりたい放題』(三五館)などの著書もある小薮浩二郎氏は、業界からの圧力を指摘する。 「味の素などの大手食品メーカーが加盟する『日本食品添加物協会』は、食品企業幹部や国立大教授などの退職後の受け皿として機能しています。食品添加物に否定的な書籍や記述に対しては強固に反論を行うんです。かつて、食品に関するある書籍が爆発的にヒットした際、同協会から相当強いクレームが飛んだことがあります」  大企業や食品会社を後ろ盾に持つ同協会は、厚生労働省や消費者庁にさえ抗議を行い、その力は「消費者庁が潰れても、添加物協会は潰れないと言われている」(同)ほど。そして、同協会に対して尻尾を振っているのが、添加物を監視・監督する立場にある厚労省だという。特に食品業界に対しては、国は消費者よりもメーカー保護の立場。森永ヒ素ミルク中毒事件やカネミ油症事件くらい重大なトラブルが起きない限り、国の機関でも添加物に対してネガティブな研究は行っていないのだという。  では、自由に研究ができそうな大学機関などでの研究は進んでいるのだろうか? 「現在、大学には『産学協同』の風潮があり、企業の論理にのっとった研究が奨励される傾向にあります。一方、製品の欠陥について研究すると、学生の就職に如実に影響があるので、理系大学生の就職先の多くを占める食品メーカーにとって不利益となる研究は、積極的には行いません」(同)  このように産学官に守られ、食品会社は今日も我々に添加物満載の食品を提供しているのだ。  また、「食の安全」を脅かす彼らを無視し、自主規制を行うメディア側の弱腰姿勢も浮かび上がってくる。 『ありあまるごちそう』など、食の安全をテーマにしたドキュメンタリーを配給するアンプラグド代表取締役の加藤武史氏が『フード・インク』のキャンペーンの際に直面した事件は、この態度を端的に象徴したものだったという。 「普段エコやナチュラルフードを推進している、あるラジオ局に『フード・インク』のキャンペーンを手伝ってほしいという話を持っていったところ、DJの方々は非常に興味を持ってくれたのですが、局側は『一方的であり、応援をすることはもちろん、扱うこともできない』と激怒され、即却下されました。後日知ったところによると、この放送局の一番のスポンサーはコンビニとハンバーガーチェーンだった(笑)」  映画『スーパーサイズ・ミー』などでも描かれたように、マクドナルドやコカ・コーラには、人体に影響する物質が入っているなどとし、その安全性が疑問視されている。それらの企業が、安全でも割高になるナチュラルフードを推奨する映画に協力できないのは、なるほどと思うところがあるだろう。11年に食品業界がマスコミにばらまいた宣伝広告費は2660億円と、日本の広告費用における1割を占めている(電通「日本の広告費」)。大手食品メーカーの広告宣伝費にがんじがらめとなっている大手メディアもまた、食品業界の闇を告発することなどするはずもないだろう。  このような状況に「食品を取り巻く組織が硬直化している」と憤る加藤氏は、農林水産省から受けたある「圧力」も明かした。 「08年から農水省が主導した食料自給率アップを目指した『フード・アクション・ニッポン』というキャンペーンがあり、そのHP上に『フード・インク』の公開情報を掲載してもらうよう掛け合いました。運営を受託する電通とやりとりをし、情報を掲載してもらったのですが、その途端、農水省から『一方的で好ましくない』という圧力がかかり、ホームページから映画の情報を削除されそうになりました」  結局、この件は電通によって削除されずに済んだが、食に対して真摯に向き合ったドキュメンタリーを「好ましくない」の一言で排除する農水省の姿勢は、この国にはびこる食品事情を象徴している。 「食品の裏側を知ると、モノが売れなくなるという恐怖が、メーカー、小売店、外食チェーンにはあるのでしょう。冷静に考えたら、値段が安すぎる食品は多いし、お寿司やサラダが3日も日持ちするのもおかしい。そのような疑問の芽を、食品を取り巻く組織は必死で摘んでいくんです。『食品について何も考えるな』『黙って買え』というのが、彼らの本音ではないでしょうか」(加藤氏)  我々にとって身近な存在だからこそ、触れづらい食品業界。自主規制を撤廃し、不当な圧力を打ち消すといった努力がなされなければ、「食の安全」など、空虚なスローガンにすぎないのだろう。 (取材・文/萩原雄太) 【明日から食事をするのが怖くなる!? 「サイゾーpremium」では食品業界の闇に迫った記事が満載!】観たら外食ができなくなる? 食の安全を追求する海外傑作ドキュメンタリー味の素や牛角に直撃!! “激安食品”にまつわる怪しい噂は本当か?郡司和夫氏が食品添加物から分析──ラーメンの"うま味"調味料が怖い
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放射線検査をしないコメが市場に流通──不安視される食品業界のタブー構造

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──福島県産農作物が売れているという。  原発事故の影響で、首都圏ではスーパーなどの小売店で福島県産農作物を見る機会はほとんどない。当然出荷量もガタ落ちのはず……と思いきや、日経新聞などの報道では2011年度のコメの出荷量は、例年の7割程度を確保しているという。店頭では見かけることがないのに、いったいどこに出荷しているのだろうか? 「福島県産米は、主に首都圏の外食店やせんべいなどの加工食品メーカーで使用されているんです」 と話すのは、ジャーナリストの吾妻博勝氏。『コメほど汚い世界はない』(宝島社)を執筆したコメ流通のエキスパートだ。  いまや日本では、手軽で安価な食品が氾濫している。オペレーションシステムの改善や人件費の削減などの企業努力で、1円でも商品の原価を切り詰め価格競争に立ち向かう食品産業にとって、味自体は問題がなく、値段も割安となった福島県産農作物は、まさに渡りに船。消費者としても、11年にはサンプリング調査だった放射性物質の検査が、全袋検査へと移行し、しっかりとした検査を行っているんだから大丈夫だと安心する向きもあるが、吾妻氏は「あれだけ検査の様子が報道されれば、すべてのコメが検査されていると〝誤解〟する方も多いのではないでしょうか」と話す。 「今年度米で全袋検査をしたのは、8月に収穫した早場米の一部だけ。さらに、9月下旬から収穫が始まる米で全袋検査されるのは、主としてJA経由の流通米のみです。農家が業者に直接販売する米は全体の5割以上にも上り、それらは検査もされずに流通するものが多い。業者が農家にトラックを横付けして直接買い取り、そのまま激安居酒屋や、加工食品業界へ出荷されるんです」(吾妻氏)と、非正規のルートでコメや農作物が流通しているというのだ。中間マージンを削るため、農家と直接契約を謳っている企業も多い。 「食の安全」が叫ばれて久しいが、O-157など頻発する食中毒や発がん性物質の混入など、消費者は食に対して疑心暗鬼にならざるを得ない状況が続いている。特に「デフレ食品」とさえ呼べる一連の激安フードは、その安さと引き換えに、こうした安全性が不透明な製品も使用されている。  例えば、かねてから発がん性物質などの危険性が指摘されている食品添加物は、激安フードにとってなくてはならない存在。ハムやベーコン、そしてハンバーグなどの加工食肉には保存料をふんだんに使用することで、流通経費や廃棄リスクを抑制し、合成着色料で新鮮な見た目を演出、化学調味料で味を調えている。合成甘味料のズルチンや合成保存料のフリルフラマイドなど、即座に健康に被害が及ぶものに対しては、厚生労働省も規制を行なってきたが、”ただちに健康に被害がない”ものには、審査も甘い。長期的に摂取し続けた場合や、ほかの添加物と混ぜ合わせた場合のリスクに関しては、安全性が疑問視されるデータが民間の機関から出ていても、そのままにされているものが多い。  また、いまだに安全性が疑問視される遺伝子組み換え農作物も、激安価格を実現するためには欠かせない。通常の作物よりも生命力が強靭で、収穫量も高いことから価格が安いのだが、その不信感は根強く、一部からはアレルギー、臓器異常、不妊、発がん性などの可能性も指摘されている。  遺伝子組み換え作物については、アメリカの農薬会社モンサントの日本進出が話題となっている。同社はすでに茨城県に実験農場を建設している。内部で見たことを口外しないという誓約書を書かされた上で、この農場を見学した人物は、その内部の様子を振り返った。 「周囲から完全に隔離された施設の内部には遺伝子組み換えの作物と、普通の作物が並んでいました。除草剤の効果で、普通の作物はほとんど枯れているのに対し、遺伝子組み換えのほうはピンピンしていた。『どうですか?』と自信満々に聞かれましたが、正直気持ちが悪かった」  作物が枯れてしまうほど強力な農薬が残っているかもしれないのに、本当に人体にとっても安全なのか、十分に議論・検証する必要があるだろう。また、現段階ではその多くに使用表示の義務があるので、日本人が直接口にすることは少ないように思えるが、実は、牛や豚などの家畜飼料として、大量に輸入されており、これらは表示義務がない。結果、我々も間接的にそれらを摂取しているのだ。 ■デフレ食品批判映画が圧力で潰された!?  こうした「安さのヒミツ」は、一部の書籍や雑誌などで報道される程度にとどまっている。自らも製薬会社・食品メーカーで添加物の研究や食品の開発にかかわりながら、『食品業界は今日も、やりたい放題』(三五館)などの著書もある小薮浩二郎氏は、業界からの圧力を指摘する。 「味の素などの大手食品メーカーが加盟する『日本食品添加物協会』は、食品企業幹部や国立大教授などの退職後の受け皿として機能しています。食品添加物に否定的な書籍や記述に対しては強固に反論を行うんです。かつて、食品に関するある書籍が爆発的にヒットした際、同協会から相当強いクレームが飛んだことがあります」  大企業や食品会社を後ろ盾に持つ同協会は、厚生労働省や消費者庁にさえ抗議を行い、その力は「消費者庁が潰れても、添加物協会は潰れないと言われている」(同)ほど。そして、同協会に対して尻尾を振っているのが、添加物を監視・監督する立場にある厚労省だという。特に食品業界に対しては、国は消費者よりもメーカー保護の立場。森永ヒ素ミルク中毒事件やカネミ油症事件くらい重大なトラブルが起きない限り、国の機関でも添加物に対してネガティブな研究は行っていないのだという。  では、自由に研究ができそうな大学機関などでの研究は進んでいるのだろうか? 「現在、大学には『産学協同』の風潮があり、企業の論理にのっとった研究が奨励される傾向にあります。一方、製品の欠陥について研究すると、学生の就職に如実に影響があるので、理系大学生の就職先の多くを占める食品メーカーにとって不利益となる研究は、積極的には行いません」(同)  このように産学官に守られ、食品会社は今日も我々に添加物満載の食品を提供しているのだ。  また、「食の安全」を脅かす彼らを無視し、自主規制を行うメディア側の弱腰姿勢も浮かび上がってくる。 『ありあまるごちそう』など、食の安全をテーマにしたドキュメンタリーを配給するアンプラグド代表取締役の加藤武史氏が『フード・インク』のキャンペーンの際に直面した事件は、この態度を端的に象徴したものだったという。 「普段エコやナチュラルフードを推進している、あるラジオ局に『フード・インク』のキャンペーンを手伝ってほしいという話を持っていったところ、DJの方々は非常に興味を持ってくれたのですが、局側は『一方的であり、応援をすることはもちろん、扱うこともできない』と激怒され、即却下されました。後日知ったところによると、この放送局の一番のスポンサーはコンビニとハンバーガーチェーンだった(笑)」  映画『スーパーサイズ・ミー』などでも描かれたように、マクドナルドやコカ・コーラには、人体に影響する物質が入っているなどとし、その安全性が疑問視されている。それらの企業が、安全でも割高になるナチュラルフードを推奨する映画に協力できないのは、なるほどと思うところがあるだろう。11年に食品業界がマスコミにばらまいた宣伝広告費は2660億円と、日本の広告費用における1割を占めている(電通「日本の広告費」)。大手食品メーカーの広告宣伝費にがんじがらめとなっている大手メディアもまた、食品業界の闇を告発することなどするはずもないだろう。  このような状況に「食品を取り巻く組織が硬直化している」と憤る加藤氏は、農林水産省から受けたある「圧力」も明かした。 「08年から農水省が主導した食料自給率アップを目指した『フード・アクション・ニッポン』というキャンペーンがあり、そのHP上に『フード・インク』の公開情報を掲載してもらうよう掛け合いました。運営を受託する電通とやりとりをし、情報を掲載してもらったのですが、その途端、農水省から『一方的で好ましくない』という圧力がかかり、ホームページから映画の情報を削除されそうになりました」  結局、この件は電通によって削除されずに済んだが、食に対して真摯に向き合ったドキュメンタリーを「好ましくない」の一言で排除する農水省の姿勢は、この国にはびこる食品事情を象徴している。 「食品の裏側を知ると、モノが売れなくなるという恐怖が、メーカー、小売店、外食チェーンにはあるのでしょう。冷静に考えたら、値段が安すぎる食品は多いし、お寿司やサラダが3日も日持ちするのもおかしい。そのような疑問の芽を、食品を取り巻く組織は必死で摘んでいくんです。『食品について何も考えるな』『黙って買え』というのが、彼らの本音ではないでしょうか」(加藤氏)  我々にとって身近な存在だからこそ、触れづらい食品業界。自主規制を撤廃し、不当な圧力を打ち消すといった努力がなされなければ、「食の安全」など、空虚なスローガンにすぎないのだろう。 (取材・文/萩原雄太) 【明日から食事をするのが怖くなる!? 「サイゾーpremium」では食品業界の闇に迫った記事が満載!】観たら外食ができなくなる? 食の安全を追求する海外傑作ドキュメンタリー味の素や牛角に直撃!! “激安食品”にまつわる怪しい噂は本当か?郡司和夫氏が食品添加物から分析──ラーメンの"うま味"調味料が怖い
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──福島県産農作物が売れているという。  原発事故の影響で、首都圏ではスーパーなどの小売店で福島県産農作物を見る機会はほとんどない。当然出荷量もガタ落ちのはず……と思いきや、日経新聞などの報道では2011年度のコメの出荷量は、例年の7割程度を確保しているという。店頭では見かけることがないのに、いったいどこに出荷しているのだろうか? 「福島県産米は、主に首都圏の外食店やせんべいなどの加工食品メーカーで使用されているんです」 と話すのは、ジャーナリストの吾妻博勝氏。『コメほど汚い世界はない』(宝島社)を執筆したコメ流通のエキスパートだ。  いまや日本では、手軽で安価な食品が氾濫している。オペレーションシステムの改善や人件費の削減などの企業努力で、1円でも商品の原価を切り詰め価格競争に立ち向かう食品産業にとって、味自体は問題がなく、値段も割安となった福島県産農作物は、まさに渡りに船。消費者としても、11年にはサンプリング調査だった放射性物質の検査が、全袋検査へと移行し、しっかりとした検査を行っているんだから大丈夫だと安心する向きもあるが、吾妻氏は「あれだけ検査の様子が報道されれば、すべてのコメが検査されていると〝誤解〟する方も多いのではないでしょうか」と話す。 「今年度米で全袋検査をしたのは、8月に収穫した早場米の一部だけ。さらに、9月下旬から収穫が始まる米で全袋検査されるのは、主としてJA経由の流通米のみです。農家が業者に直接販売する米は全体の5割以上にも上り、それらは検査もされずに流通するものが多い。業者が農家にトラックを横付けして直接買い取り、そのまま激安居酒屋や、加工食品業界へ出荷されるんです」(吾妻氏)と、非正規のルートでコメや農作物が流通しているというのだ。中間マージンを削るため、農家と直接契約を謳っている企業も多い。 「食の安全」が叫ばれて久しいが、O-157など頻発する食中毒や発がん性物質の混入など、消費者は食に対して疑心暗鬼にならざるを得ない状況が続いている。特に「デフレ食品」とさえ呼べる一連の激安フードは、その安さと引き換えに、こうした安全性が不透明な製品も使用されている。  例えば、かねてから発がん性物質などの危険性が指摘されている食品添加物は、激安フードにとってなくてはならない存在。ハムやベーコン、そしてハンバーグなどの加工食肉には保存料をふんだんに使用することで、流通経費や廃棄リスクを抑制し、合成着色料で新鮮な見た目を演出、化学調味料で味を調えている。合成甘味料のズルチンや合成保存料のフリルフラマイドなど、即座に健康に被害が及ぶものに対しては、厚生労働省も規制を行なってきたが、”ただちに健康に被害がない”ものには、審査も甘い。長期的に摂取し続けた場合や、ほかの添加物と混ぜ合わせた場合のリスクに関しては、安全性が疑問視されるデータが民間の機関から出ていても、そのままにされているものが多い。  また、いまだに安全性が疑問視される遺伝子組み換え農作物も、激安価格を実現するためには欠かせない。通常の作物よりも生命力が強靭で、収穫量も高いことから価格が安いのだが、その不信感は根強く、一部からはアレルギー、臓器異常、不妊、発がん性などの可能性も指摘されている。  遺伝子組み換え作物については、アメリカの農薬会社モンサントの日本進出が話題となっている。同社はすでに茨城県に実験農場を建設している。内部で見たことを口外しないという誓約書を書かされた上で、この農場を見学した人物は、その内部の様子を振り返った。 「周囲から完全に隔離された施設の内部には遺伝子組み換えの作物と、普通の作物が並んでいました。除草剤の効果で、普通の作物はほとんど枯れているのに対し、遺伝子組み換えのほうはピンピンしていた。『どうですか?』と自信満々に聞かれましたが、正直気持ちが悪かった」  作物が枯れてしまうほど強力な農薬が残っているかもしれないのに、本当に人体にとっても安全なのか、十分に議論・検証する必要があるだろう。また、現段階ではその多くに使用表示の義務があるので、日本人が直接口にすることは少ないように思えるが、実は、牛や豚などの家畜飼料として、大量に輸入されており、これらは表示義務がない。結果、我々も間接的にそれらを摂取しているのだ。 ■デフレ食品批判映画が圧力で潰された!?  こうした「安さのヒミツ」は、一部の書籍や雑誌などで報道される程度にとどまっている。自らも製薬会社・食品メーカーで添加物の研究や食品の開発にかかわりながら、『食品業界は今日も、やりたい放題』(三五館)などの著書もある小薮浩二郎氏は、業界からの圧力を指摘する。 「味の素などの大手食品メーカーが加盟する『日本食品添加物協会』は、食品企業幹部や国立大教授などの退職後の受け皿として機能しています。食品添加物に否定的な書籍や記述に対しては強固に反論を行うんです。かつて、食品に関するある書籍が爆発的にヒットした際、同協会から相当強いクレームが飛んだことがあります」  大企業や食品会社を後ろ盾に持つ同協会は、厚生労働省や消費者庁にさえ抗議を行い、その力は「消費者庁が潰れても、添加物協会は潰れないと言われている」(同)ほど。そして、同協会に対して尻尾を振っているのが、添加物を監視・監督する立場にある厚労省だという。特に食品業界に対しては、国は消費者よりもメーカー保護の立場。森永ヒ素ミルク中毒事件やカネミ油症事件くらい重大なトラブルが起きない限り、国の機関でも添加物に対してネガティブな研究は行っていないのだという。  では、自由に研究ができそうな大学機関などでの研究は進んでいるのだろうか? 「現在、大学には『産学協同』の風潮があり、企業の論理にのっとった研究が奨励される傾向にあります。一方、製品の欠陥について研究すると、学生の就職に如実に影響があるので、理系大学生の就職先の多くを占める食品メーカーにとって不利益となる研究は、積極的には行いません」(同)  このように産学官に守られ、食品会社は今日も我々に添加物満載の食品を提供しているのだ。  また、「食の安全」を脅かす彼らを無視し、自主規制を行うメディア側の弱腰姿勢も浮かび上がってくる。 『ありあまるごちそう』など、食の安全をテーマにしたドキュメンタリーを配給するアンプラグド代表取締役の加藤武史氏が『フード・インク』のキャンペーンの際に直面した事件は、この態度を端的に象徴したものだったという。 「普段エコやナチュラルフードを推進している、あるラジオ局に『フード・インク』のキャンペーンを手伝ってほしいという話を持っていったところ、DJの方々は非常に興味を持ってくれたのですが、局側は『一方的であり、応援をすることはもちろん、扱うこともできない』と激怒され、即却下されました。後日知ったところによると、この放送局の一番のスポンサーはコンビニとハンバーガーチェーンだった(笑)」  映画『スーパーサイズ・ミー』などでも描かれたように、マクドナルドやコカ・コーラには、人体に影響する物質が入っているなどとし、その安全性が疑問視されている。それらの企業が、安全でも割高になるナチュラルフードを推奨する映画に協力できないのは、なるほどと思うところがあるだろう。11年に食品業界がマスコミにばらまいた宣伝広告費は2660億円と、日本の広告費用における1割を占めている(電通「日本の広告費」)。大手食品メーカーの広告宣伝費にがんじがらめとなっている大手メディアもまた、食品業界の闇を告発することなどするはずもないだろう。  このような状況に「食品を取り巻く組織が硬直化している」と憤る加藤氏は、農林水産省から受けたある「圧力」も明かした。 「08年から農水省が主導した食料自給率アップを目指した『フード・アクション・ニッポン』というキャンペーンがあり、そのHP上に『フード・インク』の公開情報を掲載してもらうよう掛け合いました。運営を受託する電通とやりとりをし、情報を掲載してもらったのですが、その途端、農水省から『一方的で好ましくない』という圧力がかかり、ホームページから映画の情報を削除されそうになりました」  結局、この件は電通によって削除されずに済んだが、食に対して真摯に向き合ったドキュメンタリーを「好ましくない」の一言で排除する農水省の姿勢は、この国にはびこる食品事情を象徴している。 「食品の裏側を知ると、モノが売れなくなるという恐怖が、メーカー、小売店、外食チェーンにはあるのでしょう。冷静に考えたら、値段が安すぎる食品は多いし、お寿司やサラダが3日も日持ちするのもおかしい。そのような疑問の芽を、食品を取り巻く組織は必死で摘んでいくんです。『食品について何も考えるな』『黙って買え』というのが、彼らの本音ではないでしょうか」(加藤氏)  我々にとって身近な存在だからこそ、触れづらい食品業界。自主規制を撤廃し、不当な圧力を打ち消すといった努力がなされなければ、「食の安全」など、空虚なスローガンにすぎないのだろう。 (取材・文/萩原雄太) 【明日から食事をするのが怖くなる!? 「サイゾーpremium」では食品業界の闇に迫った記事が満載!】観たら外食ができなくなる? 食の安全を追求する海外傑作ドキュメンタリー味の素や牛角に直撃!! “激安食品”にまつわる怪しい噂は本当か?郡司和夫氏が食品添加物から分析──ラーメンの"うま味"調味料が怖い
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『食品業界は今日も、やりたい放題』
(三五館)
──福島県産農作物が売れているという。  原発事故の影響で、首都圏ではスーパーなどの小売店で福島県産農作物を見る機会はほとんどない。当然出荷量もガタ落ちのはず……と思いきや、日経新聞などの報道では2011年度のコメの出荷量は、例年の7割程度を確保しているという。店頭では見かけることがないのに、いったいどこに出荷しているのだろうか? 「福島県産米は、主に首都圏の外食店やせんべいなどの加工食品メーカーで使用されているんです」 と話すのは、ジャーナリストの吾妻博勝氏。『コメほど汚い世界はない』(宝島社)を執筆したコメ流通のエキスパートだ。  いまや日本では、手軽で安価な食品が氾濫している。オペレーションシステムの改善や人件費の削減などの企業努力で、1円でも商品の原価を切り詰め価格競争に立ち向かう食品産業にとって、味自体は問題がなく、値段も割安となった福島県産農作物は、まさに渡りに船。消費者としても、11年にはサンプリング調査だった放射性物質の検査が、全袋検査へと移行し、しっかりとした検査を行っているんだから大丈夫だと安心する向きもあるが、吾妻氏は「あれだけ検査の様子が報道されれば、すべてのコメが検査されていると〝誤解〟する方も多いのではないでしょうか」と話す。 「今年度米で全袋検査をしたのは、8月に収穫した早場米の一部だけ。さらに、9月下旬から収穫が始まる米で全袋検査されるのは、主としてJA経由の流通米のみです。農家が業者に直接販売する米は全体の5割以上にも上り、それらは検査もされずに流通するものが多い。業者が農家にトラックを横付けして直接買い取り、そのまま激安居酒屋や、加工食品業界へ出荷されるんです」(吾妻氏)と、非正規のルートでコメや農作物が流通しているというのだ。中間マージンを削るため、農家と直接契約を謳っている企業も多い。 「食の安全」が叫ばれて久しいが、O-157など頻発する食中毒や発がん性物質の混入など、消費者は食に対して疑心暗鬼にならざるを得ない状況が続いている。特に「デフレ食品」とさえ呼べる一連の激安フードは、その安さと引き換えに、こうした安全性が不透明な製品も使用されている。  例えば、かねてから発がん性物質などの危険性が指摘されている食品添加物は、激安フードにとってなくてはならない存在。ハムやベーコン、そしてハンバーグなどの加工食肉には保存料をふんだんに使用することで、流通経費や廃棄リスクを抑制し、合成着色料で新鮮な見た目を演出、化学調味料で味を調えている。合成甘味料のズルチンや合成保存料のフリルフラマイドなど、即座に健康に被害が及ぶものに対しては、厚生労働省も規制を行なってきたが、”ただちに健康に被害がない”ものには、審査も甘い。長期的に摂取し続けた場合や、ほかの添加物と混ぜ合わせた場合のリスクに関しては、安全性が疑問視されるデータが民間の機関から出ていても、そのままにされているものが多い。  また、いまだに安全性が疑問視される遺伝子組み換え農作物も、激安価格を実現するためには欠かせない。通常の作物よりも生命力が強靭で、収穫量も高いことから価格が安いのだが、その不信感は根強く、一部からはアレルギー、臓器異常、不妊、発がん性などの可能性も指摘されている。  遺伝子組み換え作物については、アメリカの農薬会社モンサントの日本進出が話題となっている。同社はすでに茨城県に実験農場を建設している。内部で見たことを口外しないという誓約書を書かされた上で、この農場を見学した人物は、その内部の様子を振り返った。 「周囲から完全に隔離された施設の内部には遺伝子組み換えの作物と、普通の作物が並んでいました。除草剤の効果で、普通の作物はほとんど枯れているのに対し、遺伝子組み換えのほうはピンピンしていた。『どうですか?』と自信満々に聞かれましたが、正直気持ちが悪かった」  作物が枯れてしまうほど強力な農薬が残っているかもしれないのに、本当に人体にとっても安全なのか、十分に議論・検証する必要があるだろう。また、現段階ではその多くに使用表示の義務があるので、日本人が直接口にすることは少ないように思えるが、実は、牛や豚などの家畜飼料として、大量に輸入されており、これらは表示義務がない。結果、我々も間接的にそれらを摂取しているのだ。 ■デフレ食品批判映画が圧力で潰された!?  こうした「安さのヒミツ」は、一部の書籍や雑誌などで報道される程度にとどまっている。自らも製薬会社・食品メーカーで添加物の研究や食品の開発にかかわりながら、『食品業界は今日も、やりたい放題』(三五館)などの著書もある小薮浩二郎氏は、業界からの圧力を指摘する。 「味の素などの大手食品メーカーが加盟する『日本食品添加物協会』は、食品企業幹部や国立大教授などの退職後の受け皿として機能しています。食品添加物に否定的な書籍や記述に対しては強固に反論を行うんです。かつて、食品に関するある書籍が爆発的にヒットした際、同協会から相当強いクレームが飛んだことがあります」  大企業や食品会社を後ろ盾に持つ同協会は、厚生労働省や消費者庁にさえ抗議を行い、その力は「消費者庁が潰れても、添加物協会は潰れないと言われている」(同)ほど。そして、同協会に対して尻尾を振っているのが、添加物を監視・監督する立場にある厚労省だという。特に食品業界に対しては、国は消費者よりもメーカー保護の立場。森永ヒ素ミルク中毒事件やカネミ油症事件くらい重大なトラブルが起きない限り、国の機関でも添加物に対してネガティブな研究は行っていないのだという。  では、自由に研究ができそうな大学機関などでの研究は進んでいるのだろうか? 「現在、大学には『産学協同』の風潮があり、企業の論理にのっとった研究が奨励される傾向にあります。一方、製品の欠陥について研究すると、学生の就職に如実に影響があるので、理系大学生の就職先の多くを占める食品メーカーにとって不利益となる研究は、積極的には行いません」(同)  このように産学官に守られ、食品会社は今日も我々に添加物満載の食品を提供しているのだ。  また、「食の安全」を脅かす彼らを無視し、自主規制を行うメディア側の弱腰姿勢も浮かび上がってくる。 『ありあまるごちそう』など、食の安全をテーマにしたドキュメンタリーを配給するアンプラグド代表取締役の加藤武史氏が『フード・インク』のキャンペーンの際に直面した事件は、この態度を端的に象徴したものだったという。 「普段エコやナチュラルフードを推進している、あるラジオ局に『フード・インク』のキャンペーンを手伝ってほしいという話を持っていったところ、DJの方々は非常に興味を持ってくれたのですが、局側は『一方的であり、応援をすることはもちろん、扱うこともできない』と激怒され、即却下されました。後日知ったところによると、この放送局の一番のスポンサーはコンビニとハンバーガーチェーンだった(笑)」  映画『スーパーサイズ・ミー』などでも描かれたように、マクドナルドやコカ・コーラには、人体に影響する物質が入っているなどとし、その安全性が疑問視されている。それらの企業が、安全でも割高になるナチュラルフードを推奨する映画に協力できないのは、なるほどと思うところがあるだろう。11年に食品業界がマスコミにばらまいた宣伝広告費は2660億円と、日本の広告費用における1割を占めている(電通「日本の広告費」)。大手食品メーカーの広告宣伝費にがんじがらめとなっている大手メディアもまた、食品業界の闇を告発することなどするはずもないだろう。  このような状況に「食品を取り巻く組織が硬直化している」と憤る加藤氏は、農林水産省から受けたある「圧力」も明かした。 「08年から農水省が主導した食料自給率アップを目指した『フード・アクション・ニッポン』というキャンペーンがあり、そのHP上に『フード・インク』の公開情報を掲載してもらうよう掛け合いました。運営を受託する電通とやりとりをし、情報を掲載してもらったのですが、その途端、農水省から『一方的で好ましくない』という圧力がかかり、ホームページから映画の情報を削除されそうになりました」  結局、この件は電通によって削除されずに済んだが、食に対して真摯に向き合ったドキュメンタリーを「好ましくない」の一言で排除する農水省の姿勢は、この国にはびこる食品事情を象徴している。 「食品の裏側を知ると、モノが売れなくなるという恐怖が、メーカー、小売店、外食チェーンにはあるのでしょう。冷静に考えたら、値段が安すぎる食品は多いし、お寿司やサラダが3日も日持ちするのもおかしい。そのような疑問の芽を、食品を取り巻く組織は必死で摘んでいくんです。『食品について何も考えるな』『黙って買え』というのが、彼らの本音ではないでしょうか」(加藤氏)  我々にとって身近な存在だからこそ、触れづらい食品業界。自主規制を撤廃し、不当な圧力を打ち消すといった努力がなされなければ、「食の安全」など、空虚なスローガンにすぎないのだろう。 (取材・文/萩原雄太) 【明日から食事をするのが怖くなる!? 「サイゾーpremium」では食品業界の闇に迫った記事が満載!】観たら外食ができなくなる? 食の安全を追求する海外傑作ドキュメンタリー味の素や牛角に直撃!! “激安食品”にまつわる怪しい噂は本当か?郡司和夫氏が食品添加物から分析──ラーメンの"うま味"調味料が怖い
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不祥事で人気声優が移籍!? アニメ誌が絶対書かない、隠されたオタク業界の”闇”

【サイゾーpremiumより】  日本を代表する文化であるアニメ、ゲームといった”オタク”文化だが、これらオタク業界のゴシップやタブーといった話題がメディアの俎上に上ることはそう多くない。業界内で封殺されることも多いというオタク界隈のタブーを、関係各所に聞いて集めてみた――。
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シリーズ初のMMO(大人数同時参加型オンライン)
RPGとして、今夏発売された『ドラゴンクエストX』。
"ダイス賭博"といった微妙な問題も取り沙汰され
たが、業界内外では評判も高い。
 アニメ、声優、ゲームといったオタク文化が、日本を代表する文化と呼ばれるようになって久しい。  テレビアニメ『けいおん!!』の主題歌CDが2010年8月16日付のオリコン週間ランキング2位を獲得するなど、アニメや声優のCDがチャート上位を席巻することは、もはや珍しくない。『NHK紅白歌合戦』にも3回連続出場している人気声優・水樹奈々は、10年に声優として史上初のオリコンシングルチャート1位を獲得。さらに11年末、東京ドームで2日間にわたるコンサートを成功させた。  その勢いは映画業界にも及んでいる。現在公開中のアニメ映画『おおかみこどもの雨と雪』は公開1カ月で興行収入30億円を突破。12年の映画の年間興行成績ランキングでトップ10入りするのはほぼ確実視されている。さらに、ハリウッドでは『メタルギアソリッド』『ワンダと巨像』など、国産ゲームを題材とした実写映画が続々と製作決定している状況だ。  また、今年8月には、国民的RPGの『ドラゴンクエストX』がシリーズ初のオンラインゲームとして発売され、わずか3週間で50万本以上を売り上げた。同記録はパッケージでのソフト販売を行うオンラインゲームとしては異例の数字で、コアユーザー向けと思われていたオンラインゲームを一般層に普及させることで、ゲーム業界のさらなる鉱脈を切り開くことが期待されている。  そのほか、『らき☆すた』の埼玉県久喜市鷲宮や『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の同県秩父市などを筆頭に、アニメの舞台となった街が「聖地」として観光PRに利用されるなど、オタク文化の一般社会への貢献は著しいものとなってきた。  そんな華やかなニュースが続くオタク業界だが、同業界のゴシップやタブーに触れた話は、広告を入れてもらい、宣材や取材を取り計らってもらう立場であるアニメ誌やゲーム誌といった専門誌で書かれることは当然ない。せいぜい信ぴょう性の薄いネットでの流言をお目にかかるぐらいだろう。だが、不況下で好調を呈し、産業として巨大化しているのならば、表に出てこない黒い噂のひとつや2つあってもおかしくないはず……。 「アニメ業界に顕著ですが、制作現場では同業者間の交流が多いため、悪い噂などが広がりやすい環境です。なので、業界全体で、悪評が立つ人物などは自然と業界を干されるという”自浄作用”が働いているといえるかもしれません。  一方で、オタク業界は『夢を売る』業界であり、『イメージ』を最も重要視するため、ゴシップなどを内々で処理してしまう傾向も見受けられます。声優のスキャンダルは声優事務所同士がスクラムを組んで外に漏れないようにするなど、閉鎖的な世界を作っていると感じることも多いです。事実、人気アニメ『けいおん!』に出演していた声優が不祥事を起こして事務所を放出されたものの、外に向けては単純な移籍と報じられましたから」  そう語るのは、アニメ・声優系業界関係者。オタク業界では、”二次元の夢”を守るため、業界全体が軌を一にしている部分があるという。  そんな中、関係各所への聞き込みを通じて見えてきた、「イメージ」というヴェールの向こう側にある「タブー」をご開陳。”オタク業界のタブー”を、とくとご覧あれ。 (文/菅 桂真) 【続きはこちらから!! 「サイゾーpremium」では他にもオタク業界のタブーをぶった斬る記事が満載!】「歌ってみた」に群がる素人と芸能界――芸能事務所にも所属済み! ニコ動”歌い手”たちの傲慢と嘘【完全保存版!?】声優の恋愛事情に、消された作品たち……オタク業界のタブー「紅白出場」声優アーティスト・水樹奈々が登場! 「二股活動」にかけるオモイとは?
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株価半値のフェイスブック”最強代理店”電通はLINEへ乗り換え!?

【サイゾーpremiumより】
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「週刊ダイヤモンド」2011年1月29日号
 9月1日、アメリカの株式市場「ナスダック」において、投資家たちがため息を漏らした。今年5月の株式公開後ずっと値下がりを続けていたフェイスブック(以下、FB)の株価が19ドルまで下落、ついに公開価格の半値を切ってしまったからだ。  アップルが時価総額で世界一の企業となったように、20世紀末以降のアメリカ経済はIT産業が牽引してきた。多くのIT企業が株式公開し、その後の株価上昇によって莫大な利益が生み出されてきたのである。 「マイクロソフトやグーグルなど著名なIT企業があらかた株式公開してしまった中、9億人が利用する世界最大のSNSという『最後の大物IT企業』。当然投資家たちも大きな期待を寄せ、ヘッジファンドから個人投資家までが、FBの公開株に殺到しました」(証券アナリスト)  ところがFBの株価は、上場初日こそ38ドルという公募価格を上回ったものの、その後は連日最安値を更新し続け、わずか4カ月足らずで半値にまで下落した。上場時で約1000億ドル(約7兆8000億円)だった時価総額は、9月には約400億ドル(約3兆1000億円)にまで下落してしまったわけだ。  その要因としては、スマートフォンへの対応の遅れや創業者マーク・ザッカーバーグの経営手腕への不安などが挙げられている。しかし、最も大きいとされるのが、FB上での広告の収益力の弱さである。 「SNSを活用した広告は、従来のマス広告よりも購買行動につながりやすいといわれている。企業の宣伝よりも友人からの推薦のほうが信頼できるから、というわけですね。ところが、FBの広告は思ったよりも効果がないとして、米ゼネラル・モーターズがFBでの広告を打ち切ってしまったんです」(同)  このFBの株価騒動を、太平洋を挟んだ日本から不安げに見つめる企業がある。日本最大の広告代理店である電通だ。同社は、日本におけるFB掲載広告を一手に取り仕切っている。FBのページにはいくつかの広告が掲載される設定になっているが、電通は日本ユーザー向けの広告表示枠をすべて買い切る独占的な契約【1】をFBと締結。このため、日本企業がFBで日本人向けに広告を出すためには、すべて電通を通す必要があるのだ。  インターネットにおける広告は、グーグルでおなじみの「キーワード広告」のように、低価格かつ低単価で、中小企業でも手軽に宣伝が行えるのが特徴だった。このため「ウチの会社は、テレビCMや大型キャンペーン広告など、大きな予算がつく広告がメインです。それに比べるとネット広告の予算は小さいので、ウチの会社では積極的には扱ってきませんでした」と、ある電通社員は説明する。しかし、テレビ・新聞・雑誌・ラジオという、いわゆる4大マス媒体のメディアパワーが下がり、一方でネットがメディアとしても広告媒体としても大きく伸びてくると、ネット広告に消極的だった電通は、大きく出遅れる結果となった。 「完全にネット広告に出遅れたため、会社全体にもかなりの危機感がありましたね」(電通社員)  その起死回生の手段が、FB広告枠の買い切りだったというわけだ。 ■“センス”がない電通という企業  しかし、2010年の時点で米国ではすでにSNSの最大手となっていたFBだが、日本ではミクシィやモバゲーなど国内企業によるSNSが大きく普及しており、FBの躍進は困難に見えた。そこで電通は、FBを「ビジネスユーザーのための最新鋭サービス」と定義して売り込む作戦に出た。具体的には、経済系ニュース番組や雑誌などに、FBを大きく扱うよう売り込んだのだ。10〜11年にかけて、「週刊ダイヤモンド」から「GQ」「anan」に至る複数の雑誌で、「FB大特集」が繰り返されたことを覚えている読者も多いだろう。そのウラには、FBの認知度を高めたい電通による、メディアの熱心な誘導があったのだ。もちろん、取り上げる側のメディアにもメリットはある。FBと近しい距離にある電通が取材の便宜を図ることによって、それまであまり日本メディアには露出しなかったFB日本支社、さらにはFBを活用している企業の取材が可能になったのだ。さらに、”天下の電通”ならばこそ、他のページに入る広告に関しても、なんらかの優遇策を”おまけ”としてつけるなどしていることも容易に想像できるだろう。  電通によるこうした売り込み、そしてFB自体が他のSNSよりも使いやすいこともあって、日本でのユーザー数は11年末には1000万人を突破、12年8月末時点では1500万人を超えたといわれている。またユーザー層も、各メディアへの大量露出の効果もあって、20代後半から40代前半の働く世代が過半数を占めており、可処分所得の高い層が集まるSNSという、電通の狙い通りの広告媒体に育ちつつある。  そうした折も折に起こったのが、5月のFB上場であり、その後の株価下落だったのである。 「ウチの会社はしょせん”日本的”な営業の会社。ITやネットを活用することは不向きなんです。先物買いのつもりでFBに投資しましたが、このままでは持ち出しに終わってしまいそうですよ」(電通社員)  ところが、電通も懲りずに次の狙いを定めているという。それがスマホでヒットしているチャットアプリ「LINE」だ。韓国系企業NHNの日本支社が開発したアプリで、高校生や大学生、女性などを中心に急速に普及している(詳細は「サイゾーpremium」で9月28日より更新予定のNHN特集を参照)。そのLINEの広告は当初、博報堂がメインで扱っていた。ところが、LINEが成功を収めつつあるのを見た電通が、「ウチにもやらせろ」と食い込もうとしているというのだ。 「海の向こうのFBよりはコントロールしやすそうということで、目をつけたようです。だけど問題は、そもそもネットのセンスに電通がついていけてないことなんですよ。FBのように国内メディアを総動員して知名度を上げたところで、『広告媒体としてあんまり価値がなかった』ではねえ……」(同)  社員が呆れるほどネットのセンスに欠けているという電通。テレビや新聞など旧来型の媒体が本格的に崩壊する前に新たな広告枠を、とネットに飛びついているが、FBについては失敗に終わる気配が濃厚である。  ネット上では、”アヤしい”宣伝活動はすべて「電通の陰謀」「ステマ」などと揶揄されがちだ。しかし、FBにおける同社の暗躍を見れば、それもあながちデマではないということになる。いわば、火のないところに煙は立たぬ。しかし、その火も実は、風前のともし火なのかもしれないのである。 (三森黒介)
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【1】独占的な契約 広告枠の「買い切り」は、電通に限らず大手広告代理店がよく行う手法である。人気のテレビ番組や新聞の紙面広告、雑誌の裏表紙など、多くの人の目に触れやすく、広告を出す側にも人気が高い広告のスペース、いわゆる”枠”をまるごと買い切って独占することで、広告料金をコントロールし、高値を維持しやすくなるのである。 ■下落し続けるフェイスブックの株価 「久しぶりの大型株上場」「第2、第3のアップル、グーグル」。鳴り物入りで5月18日に上場したフェイスブック。公募価格38ドルに対し一時は45ドルまで上昇したが、結局同日は38・23ドルで終了。メディアでは、一気に「期待はずれ」感が広まった。その後は30ドル前後をうろうろしていたが、8月以降は20ドル台前半にまで低迷していたのだ。 【「サイゾーpremium」では他にも話題のニュース記事が満載!】ブランド価値”1500億円”日経 の失態 読売と「リーク元公開」で業界騒然!第2のリクルート事件?”疑惑にまみれた”JAL再上場の舞台裏“脱税””隠し子”騒動でGACKTがピンチ! ベールは剥がされるのか
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ハードコア番組『BAZOOKA!!!』演出家が考えるテレビ界のタブー 地上波はもはや”テレビの墓場”

【サイゾーpremiumより】
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(写真/佃 大平)
 BSスカパーで毎週月曜22時から1時間生放送で『BAZOOKA!!!』という番組が放送されている。出演陣はMCに芸人の小籔千豊と俳優の真木蔵人。脇を固めるのは、エリイ(Chim↑Pom)、高垣勇二(格闘家・モデル)。このメンバーを見ただけで、何かヤバいことが起きるに違いない! とピンとくる人も多いだろう──。  まず今回インタビューを受けていただいた岡宗秀吾氏が演出を手がける『BAZOOKA!!!』(BSスカパー)について説明しよう。放送禁止スレスレの芸人たちを集めた「放送NG演芸」や、「FUCK風営法」と題して、風俗営業法違反でクラブが摘発される事案を受けて、クラブ界の重鎮・大貫憲章やラッパーのZeebraなどが風営法のあり方について考えるなど、多彩かつアナーキーな企画でテレビ好事家に大きな支持を受けている番組である。そこで岡宗氏にテレビ界の現状やテレビにおけるタブーについて伺った。 ──今回の特集テーマは各メディアのタブーなんですが、テレビの現場でタブーを感じることはありますか? 岡宗 取材依頼をいただいたので考えてみたんですけど、結局タブーがあったとしても、ボクら現場のディレクターが線を引くわけじゃないんですよ。プロデューサーや放送局がどう対応するかっていう問題で。たとえばボクが今かかわっている『BAZOOKA!!!』も、過激に見えますけど、局側と了解がとれているからできることなんですね。むしろスカパーさんに「なんであんな番組やってるんですか?」って聞いてほしいぐらい(笑)。 ──企画自体はスムーズに通ったんですか? 岡宗 もともと5~6年前から原型となる企画はあったんです。それで去年10月にBSスカパーが開局するにあたって自前の番組を作りたいという話があり、そこにハマったんです。BSって視聴者に選択されないと見てもらえない環境ですから、だったら少し刺激的な内容で「こんな番組もやってますよ!」ってアピールしたいということだと思います。 ──毎回、ゲストのキャスティングが攻めてますが、上祐史浩氏が出演された時は、「何で出すんだ?」みたいな声があったりはしませんでしたか? 岡宗 そうした反響があったことは確かです。ボク自身、今でもよかったのか悪かったのか悩むところです。彼は、95年に起きた一連のオウム真理教事件の時はロシアにいたので実行犯ではないし、重要犯罪の罪にも問われていない。けど、同時に現在も公安警察にマークされてる宗教団体(ひかりの輪)の代表でもある。この状況で世間が「いっさい彼の話を聞くつもりはない」ということでいいのか? っていう問題もありますよね。ただ、『BAZOOKA!!!』はエンタテインメント色が強いし、音楽ライブまで一緒に流しちゃうんで、罪作りな部分もある放送だったとは思います。でも、ボクとしてはオモロくないってのはイヤだし、やっぱりセンセーショナリズムっていうスケベ心もある。それにアブない部分を削って、排除して、安心して観れるようにガチガチに固めるっていうのも違うと思って。そこは常に自分の中の倫理や正義と向き合いながら作るしかないんですね。特に上祐さんの時はスタッフ内でも意見が割れましたから。 ──最終的に決断するのは岡宗さんなんですか? 岡宗 いや、そこで判断したり、覚悟するのはプロデューサーですね。ボクらはあくまで「この素材、使えますか?」って聞く料理人の立場で。 ──上祐氏については「いいよ」と。 岡宗 そういうことです。実はスカパーのプロデューサー陣って、多くが地上波の局からの出向なんです。そこが面白くて。つまり、彼らはテレビにおける規制の問題をよくわかった上で、ボクらにゴーサインを出しているんですから。 ──BSやCSが多少、治外法権的な場所になっているということでしょうか? 岡宗 ……という部分も多少はあるのかもしれないですね。だからこそ、むしろボクらはマナーよくしなきゃとも思ってますね。 ──先日(8月13日)放送された「熱演AV女優チャック下ろす前に大賞!」では、絡みシーンまでちょこっと流れたのが衝撃でした(笑)。 岡宗 ウチの和田英智ってディレクターが担当したんですけど、ボクも意外でした(笑)。ボクとしては、セックスを見せるのは本意ではないんですけど、乳首はいいんじゃないかと思うんです。今、地上波では、乳首はNGなんですね。でも、ネットで過激なエロが、子どもでも閲覧できてしまう時代じゃないですか。それに比べたらボクらなんて、乳首しか見せられないし、ガチの喧嘩も見せないし、現役の暴力団も呼んでないし……タブー云々、以前の話ですよ(笑)。 ■「テレビが面白くなくなった」という物言いは本当か? ──昔はNHKだってヤクザのドキュメンタリーを流していたんですけどねえ。 岡宗 山口組と一和会の抗争とかね(笑)。あれこそ、今は絶対タブーでしょう。あと、そういうわかりやすいのだけじゃなくて、知らないうちにダメよってことが増えているのも事実ですね。ある局では「罰ゲーム」って言葉がNGで、「お仕置き」に変えてくださいとか。 ──そういう言葉でイジメが助長されると? 岡宗 そう、「罰をゲームにしちゃ、ダメ」って。でもそのストップもだいたいが自主規制で、結局はプロデューサーが腹くくるつもりあるのか? いや、そんな言葉一個で腹くくる訳ないじゃないか! とか、そういうことだったりするので(笑)。 ──何を恐れての自主規制なんですかね。 岡宗 一番大きいのはクレームですよね。クレームもいろんな次元のものがありますけど、「クレームがあった」っていうことが、社内の低評価につながり、クライアントも嫌がるところがあるんでしょうね。 ──そこは番組作りの足かせになったりするんですか? 岡宗 なくはないですけど、ボクは規制をなくしたいとか、変えようとか、そういうことではなくて、まず「面白い」ってことが先にあって、それを実現したいだけなんですよ。さらに構造的なことに突っ込んで言うと、よく「テレビが面白くなくなった」っていう話がありますけど、実際はそんなことないと思うんです。むしろ見せ方の技術については進化していて、3年前の番組ですら今観ると古く感じるぐらいです。じゃ、何が変わったのかというと、その「テレビが面白くなくなった」と言いがちな20代後半~40代の男性向けの番組が減ってるんですよね。 ――それには理由があるんですか? 岡宗 理由はいくつかあると思いますが、かつて視聴率ってビデオリサーチとニールセンの2社が調査していたので、2%ぐらいの誤差があったんですね。それが00年にニールセンが撤退し、指標が1つになった。しかも毎分グラフや年齢性別なども細かく出し、数値が絶対化したんですね。だから、テレビマンがそのゾーンにボールを放ってみても、ネットでは盛り上がってるように見えたとしても、全体の視聴率では、そこにお客さんはあまりいないことが明らかで。だってそのゾーンはゴールデンタイムにテレビの前にいないんだもん(笑)。深夜番組だってゴールデンに行こうと意識して作りますし、そうなるとよっぽどのことがないと、数字の取れない「男向けのオモロい企画」は当然、通りにくいんですよ。 ──面白いだけじゃなく、ターゲットが見えないとダメっていう。 岡宗 テレビ制作のお金の流れを考えればそれは当たり前の理屈なんですけどね。まぁそれでも成功例がゼロではないし、頑張ります! としか言えないです(笑)。 (構成/九龍ジョー) 岡宗秀吾(おかむね・しゅうご) 1973年、神戸生まれ。演出家。代表作にDVD『全日本コール選手権』シリーズ、『とにかく金がないテレビwithYOU』、『相談バカ一代』(共にテレビ東京)。参加番組として『クイズ☆タレント名鑑』(TBS)など。また、バナナマン単独ライブのディレクターを8年務め、大根仁氏(演出家、映画監督)と「テレビマンズ」というユニットを組み、トークイベントなどを行っている。 【「サイゾーpremium」では他にも世に有り余るタブーをぶった斬る記事が満載!】「雑誌界の墓場」ことサイゾー編集部が勝手に提言! テレビ界が抱える悩ましきウィークポイント朝日新聞・奥山俊宏記者に訊く! すべてを露わにするタブーなき調査報道愛するものは、仏像、ダム、ウルトラセブン! 女子アナ・小林悠の"タブー"を恐れぬ気骨に迫る!
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